説明

ベルトサイズ調整具

【課題】ベルトを分断状態にしなくても掛け外しが可能であること、雌雄ボタンの係合が不要であること、着用者の肌にほとんど触れないことを特徴とするサイズ調整具を提供する。
【解決手段】上側ベルト(22)と下側ベルト(21)に分断されたベルト(2)の重なり部分の長さを調節可能とするベルトサイズ調整具(3)である。前記下側ベルト(21)に固定したガイドレール(4)と、前記ガイドレール(4)上をスライド可能かつ特定位置で固定可能なスライダー(5)と、前記上側ベルト(22)に設けられた複数の調節孔(23)に選択的に係合可能な止めピン(63)を有するバックル(6)とからなる。前記スライダー(5)と前記バックル(6)は一体化している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトサイズ調整具に関する。本発明は、サンダル等、踵部分をバンドで固定する形式の婦人靴のサイズ調整具に関して開発されたものであるが、他に腰ベルト等、一般のベルトについても適用可能である。以下の説明では、婦人靴のサイズ調整具を例にとって説明する。
【背景技術】
【0002】
踵部分をバンドで固定する形式の婦人靴はバンドの長さが調整可能となっていることが多く、その目的のために腰ベルトのバックルに似た器具が用いられている。例えば、下記特許文献1のようなものである。この従来技術は、バックルと雌雄スナップボタンを一体化させたものであり、前者によりベルトの長さ調節を行い、後者により、分断されたベルト両端の掛け外しを行っている。
【特許文献1】実開平6−55407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1のサイズ調節具では、ベルト両端の掛け外しはスナップボタンの脱着で行うので、外したときには、ベルトがだらしなく垂れ下がってしまい、見栄えが悪かった。また、着用者は体を傾けながら上から手を伸ばしてスナップボタンを係合させるのであるが、うまく留められなかったり、姿勢を崩したりすることがあった。さらにスナップボタンは打付け機械によりベルトに打ち込まれるので、ボタンの裏座(多くは金属製である)が直接着用者の肌に当たっていた。
【0004】
そこで、本発明は、ベルトを分断状態にしなくても掛け外しが可能であること、雌雄ボタンの係合が不要であること、着用者の肌にほとんど触れないことを特徴とする婦人靴用サイズ調整具を提供することを目的とする。さらに本発明では、そのような特殊用途を離れて一般に、比較的にベルトサイズの調節距離が長い調整具を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上側ベルトと下側ベルトに分断されたベルトの重なり部分の長さを調節可能とするベルトサイズ調整具であって、上下何れかのベルトに固定したガイドレールと、このガイドレール上をスライド可能かつ特定位置で固定可能なスライダーと、前記ベルトと反対側のベルトに設けられた複数の調節孔に選択的に係合可能な止めピンを有するバックルとからなり、前記スライダーと前記バックルが一体化していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、ガイドレールとスライダーとの選択的な位置固定により、ベルトの長さ調節が可能である。さらに、バックルの調節孔と上側ベルトの選択的な係合によっても、ベルトの長さ調節が可能である。したがって、ベルトの長さ調節は二重に可能となっているので、それぞれ単独の場合と比較すると、調節距離が長くなっている。
【0007】
また、本発明では、雌雄スナップボタンを使用しないので、ベルトを分断状態にするにはバックルからベルトを外さなければならず、そのようなことは意識的に行わない限りありえない。そのため、ボタンを外したときの見苦しさはなくなると共に、ボタンの係合という作業も不要となる。
【0008】
さらに、本発明を婦人靴に適用したとき、スライダー及びバックルの下方には必ず下側ベルトが位置する。したがって、スライダー及びバックルが靴着用者の足に直接当たることはないので、足を痛めることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
ガイドレールとしては、次のようなものが使用可能である。
(1)レールの長手方向に垂直な方向に伸びる複数の突条を平行に並べたもの(例えば、実公平6−13211号、特許第3486834号、特許第3430307号、特許第3440260号、特開2001−131816、特開2001−146619参照)
(2)レールの長手方向に1列又は2列の浅い四角柱状の係止歯を断続的に並べたもの(例えば、特許第2860446号参照)
(3)レールの長手方向に1列又は2列の浅い三角柱状の係止歯を断続的に並べたもの(後記実施例1参照)
【0010】
いずれも突条や係止歯が断続的に並べられているので、サイズ調節が終わったあとでは、至近位置の突条や係止歯がストッパーとなり、その位置で固定される。 上記(3)の三角柱状の係止歯は傾斜辺を有するので、後記する機構により、縮まる方向には、上側ベルトを引っ張るだけで締められるという特別の効果が得られる。
【0011】
レールは細長い板状であるのが普通なので、強度を高める上で、長手方向の両脇は肉厚部としておくことが好ましい。
【0012】
スライダーとしては、前段落で引用した特許・実用新案公報に図示されているようなものが使用可能である。
【0013】
スライダーとバックルを一体化する方法としては、次のような方法がある。
(1)スライダー側から爪を立てて、その爪でバックルの外枠又は中央横断棒と係合させる(後記実施例1参照)。
(2)バックル側から爪を立てて、その爪でスライダーの外枠と係合させる。
(3)バックルとスライダーとをつなぐ独立した連結具を用いる。
【0014】
部品としてのバックルは既に多様なデザインのものが市販されており、しかも、バックルとスライダーの固定は、例えば上記のように、爪による押圧固定だけであるので、工場生産段階において、バックルのみを他のデザインのものへと設計変更するのは極めて容易である。
【実施例1】
【0015】
以下、添付の図面に基づき、本発明の1実施例を説明する。
【0016】
図1は、本発明のサイズ調整具を使用した婦人靴1の斜視図である。使用者の踵に固定する靴ベルト2の長さ調節を行う調整具3が設けられている。図2は、図1の2−2断面図、図3(a)は、調整具3の拡大平面図(自然状態)で、(b)は縦断面図、図4(a)は調整具3の拡大平面図(調整中)で、(b)は同縦断面図である。
【0017】
図1及び図2に示すように、この靴ベルト2は、分断個所で3層になっている。下側ベルト21と上側ベルト22は、分断された靴ベルト2の重なり部分である。中間層はガイドレール4であって、その両端41,42は下層21に固着されている。ガイドレール4上にはスライド及び位置固定が可能なスライダー5が取り付けられている。スライダー5には、止めピン63を有するバックル6が固定されている。止めピン63は上側ベルト22に設けられた複数の調節孔23(図1)に対して選択的に係合可能である。
【0018】
それぞれの構成要素をさらに詳しく見ると、ガイドレール4は、図3、4に示すように、合成樹脂製の細長い基板43で、片面の長手方向中央に三角柱の浅い係止歯44が断続的に一列に設けられている。ガイドレール4の長手方向両脇は肉厚部45となってガイドレール基板43の強度を高めている。
【0019】
バックル6は、図1〜4に示すように、中央に横断棒62が固定された四角い外枠61を有し、横断棒62から止めピン63が旋回可能に突出している。その横断棒62は、スライダー5から突出する2本のフック状の爪52によって押さえつけられているので、バックル6はスライダー5と一体化している。
【0020】
スライダー5は、中空の四角い箱51であり、左右側部及び上部にそれぞれ開口53,54がある。左右側部の開口53はガイドレール4の通路であって、ここを通じてスライダー5の中をガイドレール4が貫通している。上部の開口54からは、押動片55のプレス用頭部551と頸部552が突出している。押動片本体553は、スライダー箱51の中に収容され、プレス用頭部551の押圧により上下動が可能である。押動片本体553の底部はU字型反転部554を形成しており、最下部とスライダー箱底部の間に設けられた二脚バネ56により、常態では上方に付勢されている(図3の状態)が、プレス用頭部551が押し下げられたとき、押動片本体553は、バネ56の力に抗して下方に移動する。
【0021】
常態では、U字型反転部554の先端555は、スライダー箱51の中で、ガイドレール4の係止歯44と接触し、スライダー5がガイドレール4の特定位置で固定されている(図3(b)参照)。この位置を変更するには、プレス用頭部551を押し下げて、U字型反転部の先端555と係止歯44の接触を解除すればよい(図4(b)参照)。そうすることにより、スライダー5は再びガイドレール4に沿って移動可能となる。適当な位置を選択してプレス用頭部551への押圧を止めれば、その位置で再びスライダー5がガイドレール4に固定される。
【0022】
このように、本実施例では、プレス用頭部551を押し下げて、ベルト2(21,22)がゆるむ方向へスライダー5をスライドさせるだけで、サイズ調整が可能となる。したがって、着用者が靴を脱ぐときも、バックル6から上側ベルト22を外す必要はなく、プレス用頭部551を押し下げて、ベルトがゆるむ方向へスライダー5をスライドさせるだけで、足がベルトから外れる。
【0023】
この実施例では、係止歯44は三角柱状であって傾斜辺441を有する。スライダー5のU字型反転部の先端555は、傾斜辺441に接触すると、その上に乗り上がり、スライドするので、縮まる方向(図3(a)、図4(a)の左方向)に対しては、上側ベルト22を左方向に引っ張るだけで締められる。
【0024】
本発明では、ガイドレール4とスライダー5との選択的な係合により、ベルトの長さ調節が可能である。さらに、いうまでもなく、バックル6の調節孔と上側ベルト22の選択的な係合によっても、ベルトの長さ調節が可能である。したがって、ベルトの長さ調節は二重に可能となっているので、それぞれ単独の場合と比較すると、調節距離が長くなっている。
【0025】
本発明では、雌雄スナップボタンを使用しないので、ベルトを分断状態にするにはバックルからベルトを外さなければならず、そのようなことは意識的に行わない限りありえない。そのため、ボタンを外したときの見苦しさはなくなると共に、ボタンの係合という作業も不要となる。
【0026】
さらに、図2に示すように、本発明では、スライダー5及びバックル6の下方には必ず下側ベルト21が位置する。したがって、スライダー5及びバックル6が靴着用者の足に直接当たることはない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のサイズ調整具を使用した婦人靴1の斜視図である。
【図2】図1の2−2断面図である。
【図3】(a)は、調整具3の拡大平面図(自然状態)で、(b)は縦断面図である。
【図4】(a)は調整具3の拡大平面図(調整中)で、(b)は同縦断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 婦人靴
2 靴ベルト
21 下側ベルト
22 上側ベルト
23 調節孔
3 調整具
4 ガイドレール
43 ガイドレール基板
44 三角柱状の係止歯
441 傾斜辺
45 肉厚部
5 スライダー
51 スライダー箱
52 爪
53 側部開口
54 上部開口
55 押動片
551 プレス用頭部
552 頸部
553 押動片本体
554 字型反転部
555 先端
56 二脚バネ
6 バックル
61 四角枠
62 横断棒
63 止めピン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側ベルト(22)と下側ベルト(21)に分断されたベルト(2)の重なり部分の長さを調節可能とするベルトサイズ調整具(3)であって、
上下何れかのベルト(21)に固定したガイドレール(4)と、
前記ガイドレール(4)上をスライド可能かつ特定位置で固定可能なスライダー(5)と、
前記ベルト(21)と反対側のベルト(22)に設けられた複数の調節孔(23)に選択的に係合可能な止めピン(63)を有するバックル(6)とからなり、
前記スライダー(5)と前記バックル(6)が一体化していることを特徴とするベルトサイズ調整具(3)。
【請求項2】
前記スライダー(5)と前記バックル(6)を一体化させるために、スライダー側(5)から爪(52)を立てて、その爪(52)でバックル(6)の外枠(61)又は中央横断棒(62)と係合させている請求項1記載のベルトサイズ調整具(3)。
【請求項3】
前記スライダー(5)と前記バックル(6)を一体化させるために、バックル側から爪を立てて、その爪でスライダーの外枠と係合させている請求項1記載のベルトサイズ調整具。
【請求項4】
前記スライダー(5)と前記バックル(6)を一体化させるために、バックルとスライダーとをつなぐ独立した連結具を用いる請求項1記載のベルトサイズ調整具。
【請求項5】
前記ガイドレール(4)がレールの長手方向に垂直な方向に伸びる複数の突条を平行に並べたものである請求項1ないし4のいずれかに記載のベルトサイズ調整具。
【請求項6】
前記ガイドレール(4)がレールの長手方向に少なくとも1列の浅い四角柱状の係止歯を断続的に並べたものである請求項1ないし4のいずれかに記載のベルトサイズ調整具。
【請求項7】
前記ガイドレール(4)がレールの長手方向に少なくとも1列の浅い三角柱状の係止歯を断続的に並べたものである請求項1ないし4のいずれかに記載のベルトサイズ調整具。
【請求項8】
前記ガイドレール(4)は、長手方向の両脇が肉厚部(45)を形成している請求項1ないし7のいずれかに記載のベルトサイズ調節具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−61901(P2008−61901A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−244638(P2006−244638)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(000114606)モリト株式会社 (198)
【Fターム(参考)】