説明

ベルトユニット、及びベルトユニットを備えた画像形成装置

【課題】この発明は、ベルトの品質を劣化させる物質の濃度分布が高濃度になる側で、ベルトの品質が著しく劣化することを防ぐことができるベルトユニットを提供する。
【解決手段】NBRゴムの品質を劣化させる放電生成物は、装置の背面側に設けられた排気口から排気される。このため、装置の前面側から背面側に向かって、放電生成物の濃度分布が低濃度から高濃度へ変化する。NBRゴム製の二次転写ベルト32は、図3,4に示すように、駆動ローラ33を含む複数のローラに張架されている。複数のローラの軸方向は、装置の前面側から背面側へ向かう方向に一致する。駆動ローラ33の軸方向を傾斜させることで、二次転写ベルト32は、装置の背面側に向かって偏倚する。二次転写ベルト32は、内周面の両端部にEPDMゴム製のガイドリブ32A,32Bが取り付けられており、装置の前面側でガイドリブ32Aが駆動ローラ33の軸方向の片側端部に摺接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ベルトの品質を劣化させる物質の濃度分布が変化する空間に配置されたベルトユニット及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置には、像担持体の表面をコロナ放電によって帯電する帯電器や、像担持体上に形成された静電潜像をトナー像へ可視化する現像手段や、像担持体上のトナー像が転写される用紙を搬送する搬送ベルト等を備えているものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載の画像形成装置の搬送ベルトは、駆動ローラ及び従動ローラ等に張架される無端状のベルトである。駆動ローラ及び従動ローラは、それぞれ、軸線が例えばハの字状になるように非平行に配設され、それぞれの軸線間の距離が離れた一端部側に溝が設けられている。この溝には、搬送ベルトの周長が長い側に固着されたベルトリブが嵌め入れられている。搬送ベルトは、ベルトリブが固着された一端部側が他端部側より、駆動ローラ及び従動ローラとの間に生じるテンションが弱くなるため、他端部側に向かって偏倚する。この偏倚は、ベルトリブが溝に当接する位置で規制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭64−002070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
搬送ベルトには、NBRゴム製のベルトやポリイミドを含むベルトが用いられることがある。NBRゴム製のベルトは、コロナ放電時に帯電器から発生するオゾンやNOx等の放電生成物により品質が劣化する。放電生成物は、通常、画像形成装置の背面側に設けられた排気口から排出される。このため、放電生成物の濃度分布は、装置の前面側より背面側で高濃度になる。
【0006】
また、ポリイミド製のベルトは、吸水性が高いため、画像形成時に生じる装置内部の温度や湿度の変化に応じて品質が変化する。装置内部の温度や湿度は、排気口に向かって空気が流れるため、装置の前面側と背面側とで変化する。
【0007】
特許文献1に記載の画像形成装置の搬送ベルトは、ベルトリブと溝とが当接した状態で走行するため、ベルトリブが固着された一端部側に負荷がかかる。搬送ベルトは、ベルトの品質を劣化させる物質の濃度分布が高濃度になる側に、ベルトリブが固着された一端部側が配置されると、一端部側の品質が著しく劣化する。
【0008】
この発明は、ベルトの品質を劣化させる物質の濃度分布が高濃度になる側において、ベルトへの負荷を低減することで、ベルトの著しい劣化を防ぐことができるベルトユニット、及びベルトユニットを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のベルトユニットは、ベルトの品質の劣化を促進する物質の濃度分布が、所定の方向に向かって低濃度から高濃度へ変化する空間に配置されている。ベルトユニットは、無端状のベルトと、規制手段と、偏倚手段とを備える。無端状のベルトは、所定の方向と複数のローラの軸方向を一致させて、軸方向における第1の端部が低濃度側に、第2の端部が高濃度側に配置され、複数のローラに回転自在に張架される。規制手段は、第1の端部に配置され、無端状のベルトの蛇行を規制する。偏倚手段は、規制手段に無端状のベルトが摺接するように無端状のベルトを軸方向に偏倚させる。
【0010】
一般的に、無端状のベルトは、無端状のベルトの品質を劣化させる物質の濃度分布が高濃度になる箇所や、無端状のベルトの蛇行を規制する規制手段が無端状のベルトに摺接する箇所で、劣化する。この構成では、無端状のベルトの品質の劣化を促進する物質の濃度分布が、所定の方向に向かって低濃度から高濃度になる空間に、無端状のベルトと規制手段と偏倚手段とが設けられている。無端状のベルトは、複数のローラの軸方向が所定の方向に一致し、軸方向における第1の端部が低濃度側に、第2の端部が高濃度側になるように配置されている。無端状のベルトの蛇行を規制する規制手段は、ベルトの品質の劣化を促進する物質の濃度分布が低濃度になる第1の端部に配置されている。偏倚手段は、規制手段に無端状のベルトが第1の端部に摺接するように、無端状のベルトを偏倚させる。
【0011】
この発明の画像形成装置は、電子写真方式によって像担持体にトナー像を形成して、トナー像を用紙へ転写する。画像形成装置は、ベルトユニットと、帯電手段と、濃度分布変化手段と、を備える。帯電手段は、像担持体をコロナ放電により帯電させる。濃度分布変化手段は、コロナ放電時に帯電手段によって生成される放電生成物の濃度分布が、複数のローラの軸方向における第1の端部から第2の端部に向かって高濃度になるように変化させる。
【0012】
画像形成装置が備える無端状のベルトは、放電生成物の濃度分布が高濃度になる箇所や、規制手段が無端状のベルトに摺接する箇所で、劣化するものがある。この構成では、電子写真方式によって像担持体にトナー像を形成している。帯電手段は、像担持体を帯電させるためのコロナ放電時に、オゾンやNOx等の放電生成物も生成する。濃度分布変化手段は、複数のローラの軸方向における第1の端部から第2の端部に向かって放電生成物の濃度分布が高濃度になるように、放電生成物の濃度分布を変化させる。偏倚手段は、放電生成物の濃度分布が高濃度になる第1の端部で規制手段に無端状のベルトが摺接するように、無端状のベルトを偏倚させる。
【0013】
これにより、画像形成装置は、放電生成物の濃度分布が低濃度になる第1の端部において無端状のベルトの蛇行を規制する規制手段に無端状のベルトが摺接するように、無端状のベルトを偏倚させるため、放電生成物の濃度分布が高濃度になる第2の端部において無端状のベルトが著しく劣化することを防ぐことができる。
【0014】
無端状のベルトは、内周面で且つ軸方向の両端部の少なくとも1方の全周域にガイドリブが形成されている構成であることが好ましい。この場合、規制手段は、ガイドリブに摺接する、複数のローラの少なくとも1つのローラの軸方向の片側端部である。
【0015】
この構成では、無端状のベルトは、内周面にガイドリブが形成されている。このガイドリブは、軸方向の両端部の少なくとも1方の全周域に形成されている。偏倚手段は、複数のローラの少なくとも1つのローラの軸方向の片側端部に、ガイドリブが摺接するように、無端状のベルトを偏倚させている。
【0016】
これにより、画像形成装置は、ローラの軸方向の片側端部と無端状のベルトのガイドリブとを摺接させるという簡素な構成で、無端状のベルトの蛇行を規制することができる。
【0017】
規制手段は、ガイドリブを嵌入して摺接する、複数のローラの少なくとも1つローラの、軸方向の片側端部の全周面に形成された溝部である構成であることが好ましい。
【0018】
この構成では、偏倚手段は、複数のローラの少なくとも1つのローラの軸方向の片側端部に形成された溝部に、ガイドリブを嵌め入れて摺接させるように、無端状のベルトを偏倚させている。
【0019】
これにより、画像形成装置は、ローラの軸方向の片側端部に形成された溝部に無端状のベルトのガイドリブを嵌め入れて摺接させることで、確実に無端状のベルトの蛇行を規制することができる。
【0020】
規制手段は、複数のローラの少なくとも1つのローラとの間に無端状のベルトを挟むことで、無端状のベルトを摺接する部材である構成であることが好ましい。
【0021】
この構成では、偏倚手段は、複数のローラの少なくとも1つのローラと規制手段との間に、無端状のベルトを挟むことで、規制手段に無端状のベルトが摺接するように、無端状のベルトを偏倚させている。
【0022】
これにより、画像形成装置は、1つのローラと規制手段との間に無端状のベルトを挟んで、無端状のベルトを規制手段に摺接させるという簡素な構成で、無端状のベルトの蛇行を規制することができる。
【0023】
無端状のベルトは、像担持体からトナー像を一次転写する中間転写ベルト、又は中間転写ベルトとの間を通過する用紙に対して中間転写ベルトからトナー像を二次転写する二次転写ユニットの二次転写ベルトに適用することができる。
【0024】
この構成では、無端状のベルトは、中間転写ベルト、又は二次転写ベルトである。これにより、この発明は、像担持体から中間転写ベルトへトナー像を一次転写し、中間転写ベルトから用紙へトナー像を二次転写する画像形成装置に適用することができる。
【0025】
無端状のベルトは、像担持体と用紙へトナー像を転写する転写手段との間に配置される用紙搬送ベルトであって、用紙が搬送される用紙搬送ベルトに適用することができる。
【0026】
この構成では、無端状のベルトは、像担持体からトナー像を転写する用紙を搬送する用紙搬送ベルトである。これにより、この発明は、用紙搬送ベルトを挟んで、像担持体と転写手段とが対向する位置に配置され、用紙搬送ベルト上の用紙へ像担持体からトナー像を転写する画像形成装置に適用することができる。
【発明の効果】
【0027】
この発明のベルトユニットは、ベルトの品質を劣化させる物質の濃度分布が低濃度になる側で、ベルトの蛇行を規制する規制手段とベルトとを摺接させることで、ベルトの品質を劣化させる物質の濃度分布が高濃度になる側で、ベルトの品質が著しく劣化することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】画像形成装置の概略の正面断面図である。
【図2】帯電器の概略図である。
【図3】二次転写ユニットの概略の上面図である。
【図4】二次転写ユニットの概略の側面図である。
【図5】実施例2の二次転写ユニットの概略の側面図である。
【図6】他の画像形成装置の画像形成部の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0029】
図1に示すように、画像形成装置100は、給紙部80、画像読取部90、画像形成部110を備え、原稿から読み取った画像データを用いて、記録媒体である用紙に電子写真方式による多色又は単色の画像形成処理を行う。なお、画像形成装置100は、外部装置から入力される画像データに基づく画像形成処理をも行うものであってもよい。
【0030】
画像読取部90は、自動原稿搬送装置120の原稿搬送機能によって自動的に原稿台92上に載置された原稿、又はオペレータによる自動原稿搬送装置120の開閉操作を伴う手動によって原稿台92上に載置された原稿から画像データを読み取る。
【0031】
画像形成部110は、露光ユニット1、単色画像形成部10A〜10D、中間転写ユニット60、二次転写ユニット(本発明のベルトユニットに相当する。)30、定着ユニット70を備えている。
【0032】
単色画像形成部10Aは、現像器2A、感光体ドラム(本発明の像担持体に相当する。)3A、クリーナユニット4A、帯電器(本発明の帯電手段に相当する。)5Aを備え、ブラック(Bk)の単色の画像を形成する。帯電器5Aは、感光体ドラム3Aの表面を所定の電位に均一に帯電させる。現像器2Aはそれぞれの感光体ドラム3A上に形成された静電潜像を単色のトナー像に顕像化する。クリーナユニット4Aは、感光体ドラム3Aの周面に残留したトナーを回収する。単色画像形成部10B〜10Dは単色画像形成部10Aと同一の構成を有し、それぞれシアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)の単色の画像を形成する。
【0033】
露光ユニット1は、半導体レーザ、ポリゴンミラー、fθレンズ及び反射ミラー等の光学系部品を備えたレーザスキャニングユニットである。露光ユニット1は、Bk、C、M、Yのそれぞれの画像データで変調されたレーザ光のそれぞれで単色画像形成部10A〜10Dの各感光体ドラム3A〜3Dの表面を軸方向に沿って露光走査し、静電潜像を形成する。
【0034】
中間転写ユニット60は、中間転写ベルト61、駆動ローラ62、従動ローラ63、一次転写ローラ64A〜64D、クリーニングユニット65、及びテンションローラ66を有している。中間転写ベルト61は、駆動ローラ62、従動ローラ63、及びテンションローラ66に張架された無端状のベルトである。
【0035】
中間転写ベルト61は、移動経路の外側に単色画像形成部10A〜10Dを配置し、移動経路の内側に一次転写ローラ64A〜64Dを配置する。一次転写ローラ64A〜64Dは、それぞれ単色画像形成部10A〜10Dに対応して設けられており、中間転写ベルトを挟んで感光体ドラム3A〜3Dに対向する位置に配置されている。一次転写ローラ64A〜64Dは、それぞれ感光体ドラム3A〜3Dの周面に形成されたトナー像を中間転写ベルト61の表面に一次転写する。
【0036】
二次転写ユニット30は、二次転写ローラ31及び二次転写ベルト32を備え、一次転写ローラ64Aの下流側に配置される。二次転写ベルト32は、NBRゴム製からなり、複数のローラに張架された無端状のベルトである。二次転写ローラ31は、駆動ローラ62との間に二次転写ベルト32及び中間転写ベルト61を挟持する。
【0037】
カラー画像形成時には、中間転写ベルト61が単色画像形成部10A〜10Dを順次通過する間に、Bk、C、M、Yの単色のトナー像が中間転写ベルト61の表面の同一位置に順次一次転写され、減法混色によってカラー画像が形成される。モノクロ画像形成時には、中間転写ベルト61が単色画像形成部10Aを通過して、Bkの単色のトナー像が中間転写ベルト61の表面に一次転写され、モノクロ画像が形成される。
【0038】
二次転写ユニット30は、中間転写ベルト61の表面のトナー像を二次転写する。クリーニングユニット65は、中間転写ベルト61の表面に残留したトナーを回収する。
【0039】
定着ユニット70は、中間転写ベルト61と二次転写ベルト32との間を通過してトナー像が転写された用紙を加熱及び加圧する。用紙に転写されたトナー像が、用紙の表面に堅牢に定着する。定着ユニット70を通過した用紙は、画像形成部110の上方に配置された排紙トレイ91に排出される。
【0040】
給紙部80は、給紙カセット81及び手差しトレイ82を備えている。給紙カセット81は、印刷処理に使用する複数枚の用紙を収納しており、露光ユニット1の下側に設けられている。手差しトレイ82は、画像形成装置100の側面に装備されている。給紙部80は、ピックアップローラ83又は84の回転により、給紙カセット81又は手差しトレイ82から用紙を1枚ずつ用紙搬送路40に給紙する。用紙搬送路40は、給紙部80から中間転写ベルト61と二次転写ユニット30との間及び定着ユニット70を経由して排紙トレイ91に至る間に形成されている。
【0041】
帯電器5A〜5Dは、コロナ放電器であり、それぞれ、感光体ドラム3A〜3Dの表面を帯電する。図2に示すように、帯電器5Aは、筐体51、グリッド電極部材52、コロナ電極部材53を有する。なお、帯電器5B〜5Dは、帯電器5Aと同一の構成からなる。
【0042】
筐体51は、導電性シールド板により形成され、感光体ドラム3Aの軸方向を長手方向とする直方体形状を呈する。筐体51は、感光体ドラム3Aに対向する面に開放端を形成している。筐体51の開放端には、中央部に開口が設けられた枠状のグリッド電極部材52が取り付けられている。コロナ電極部材53は、グリッド電極部材52との間隔が等間隔となるように、筐体51内に配置されている。
【0043】
グリッド電極部材52及びコロナ電極部材53には、所定の電圧差(例えば、−4KV)が生じるように電源ユニット(不図示)を介して直流電圧がそれぞれ印加される。グリッド電極部材52には、プラス極性の直流電圧が印加され、コロナ電極部材53にはマイナス極性の直流電圧が印加される。
【0044】
これにより、コロナ電極部材53の先端に電界が集中し、放電が始まる。この放電による放電領域では、酸素などの気体が電離し、負に帯電したイオン(荷電粒子)の他に、酸素が解離・結合したオゾン、窒素酸化物(NOx)等の放電生成物も生成される。放電領域において生成されたイオンは、グリッド電極部材52にコロナ電極部材53に印加した電圧よりも弱い電圧が印加されているため、コロナ電極部材53からグリッド電極部材52に向かって移動し、感光体ドラム3Aまで到達して、感光体ドラム3Aの表面を負に帯電させる。
【0045】
一方、放電生成物は、NBRゴムの品質を劣化させるため、画像形成装置100の背面側に設けられた排気口(不図示)から排気される。排気口(本発明の濃度分布変化手段に相当する。)は、ファン(不図示)を備えている。ファンを動作させることにより,画像形成装置100内の空気とともに放電生成物が排気口から排気される。なお、画像形成装置100は、周囲の隙間から内部に空気が取り込まれるが、画像形成装置100の前面側に空気を取り込む吸入口を設けてもよい。また、排気口は、放電生成物を除去するフィルタを備えてもよい。
【0046】
放電生成物は、画像形成装置100の背面側に排気口を設けているため、画像形成装置100の前面側から背面側に向かって集まる。このため、画像形成装置100の前面側から背面側に向かって、放電生成物の濃度分布が低濃度から高濃度へ変化する。画像形成装置100の背面側は、前面側に比べて放電生成物が高濃度になるため、NBRゴム製の二次転写ベルト32の品質の劣化がより進む傾向がある。
【0047】
二次転写ベルト32は、図3,4に示すように、駆動ローラ33、従動ローラ34を含む複数のローラに回転自在に張架されている。複数のローラは、画像形成装置100の前面側から背面側へ向かう方向に軸方向が一致するよう配置されている。駆動ローラ33の軸方向は、画像形成装置100の前面側が背面側より下方に位置するため、従動ローラ34の軸方向の平行線から所定角度傾斜している。この傾斜により、二次転写ベルト32は、画像形成装置100の前面側に向かって偏倚する。
【0048】
二次転写ベルト32の幅方向(二次転写ベルトの走行面に平行で、二次転写ベルトの走行方向と直交する方向)の長さL3は、二次転写ベルト32を張架する複数のローラの軸方向の長さL1より長く形成されている。二次転写ベルト32は、内周面の両端部の全周域にEPDMゴム製のガイドリブ32A,32Bが取り付けられている。ガイドリブ32A、32B間の距離L2は、二次転写ベルト32を張架する複数のローラの軸方向の長さL1より長く設けられている。なお、ガイドリブ32A,32Bは、EPDMゴム製に限らず、中程度の体積抵抗(1012〜1015程度の体積抵抗)を有する材質であればよい。二次転写ベルト32は、画像形成装置100の前面側に向かって偏倚するため、画像形成装置100の前面側でガイドリブ32Aが駆動ローラ33の軸方向の片側端部に摺接する。この状態で、駆動ローラ33及び従動ローラ34が回転すると、二次転写ベルト32は、蛇行せずに走行することができる。
【0049】
走行時、二次転写ベルト32は、ガイドリブ32Aと駆動ローラ33との間に摩擦力が生じるため、摩耗する。しかし、二次転写ベルト32は、放電生成物が低濃度になる前面側で、ガイドリブ32Aと駆動ローラ33との間に摩擦力が生じるため、放電生成物が高濃度になる背面側で、ガイドリブ32Aと駆動ローラ33との間に摩擦力が生じるより、品質が著しく劣化することを防ぐことができる。
【0050】
また、二次転写ベルト32は、両端にガイドリブ32A、32Bが取り付けられている。このため、二次転写ベルト32を張架する複数のローラに二次転写ベルト32を取り付ける際には、画像形成装置100の前面側又は背面側のどちらにもガイドリブ32Aを取り付けることができる。
【0051】
さらに、二次転写ベルト32は、ガイドリブ32Aが駆動ローラ33との摩擦力により摩耗しても、画像形成装置100の前面側にガイドリブ32Bを取り付け直すことで、新たな二次転写ベルト32に取り換えずに使用することができる。これにより、二次転写ベルト32の使用期間を長くすることができる。
【実施例2】
【0052】
実施例2の画像形成装置100Aは、実施例1の画像形成装置100と二次転写ユニット30の構成が一部異なる。以下に、相違点についてのみ説明する。
【0053】
図5(A)に示すように、二次転写ベルト32を張架する複数のローラは、画像形成装置100の前面側から背面側へ向かう方向に軸方向が一致するよう配置されている。駆動ローラ33の軸方向は、画像形成装置100の前面側が背面側より上方に位置し、従動ローラ34の軸方向の平行線から所定角度傾斜している。この傾斜により、二次転写ベルト32は、画像形成装置100の背面側に向かって偏倚する。
【0054】
二次転写ベルト32を張架する複数のローラは、軸方向の前面側の端部に溝部35が形成されている。
【0055】
二次転写ベルト32の幅方向の長さL3は、二次転写ベルト32を張架する複数のローラの軸方向の背面側の端部から溝部35の背面側の面までの長さL4より長く形成されている。二次転写ベルト32は、内周面の両端部の全周域にEPDMゴム製のガイドリブ32A,32Bが取り付けられている。ガイドリブ32A、32B間の距離L2は、二次転写ベルト32を張架する複数のローラの軸方向の背面側の端部から溝部35の背面側の面までの長さL4より長く設けられている。ガイドリブ32Aは、溝部35に嵌め入れられる。二次転写ベルト32は、画像形成装置100の背面側に向かって偏倚するため、画像形成装置100の前面側でガイドリブ32Aが駆動ローラ33の溝部35の背面側の面に摺接する。この状態で、駆動ローラ33及び従動ローラ34が回転すると、二次転写ベルト32は、蛇行せずに走行することができる。
【0056】
走行時、二次転写ベルト32は、ガイドリブ32Aと駆動ローラ33の溝部35との間に摩擦力が生じるため、摩耗する。しかし、二次転写ベルト32は、放電生成物が低濃度になる画像形成装置100の前面側で、ガイドリブ32Aと駆動ローラ33との間に摩擦力が生じるため、放電生成物が高濃度になる画像形成装置100の背面側で、ガイドリブ32Aと駆動ローラ33との間に摩擦力が生じるより、品質が著しく劣化することを防ぐことができる。
【0057】
また、二次転写ベルト32は、両端にガイドリブ32A、32Bが取り付けられている。このため、二次転写ベルト32を張架する複数のローラに二次転写ベルト32を取り付ける際には、画像形成装置100の前面側又は背面側のどちらにもガイドリブ32Aを取り付けることができる。
【0058】
さらに、二次転写ベルト32は、ガイドリブ32Aが駆動ローラ33と摩擦力により摩耗しても、画像形成装置100の前面側にガイドリブ32Bを取り付け直すことで、新たな二次転写ベルト32に取り換えずに使用することができる。これにより、二次転写ベルト32の使用期間を長くすることができる。
【0059】
なお、上述の実施例2では、二次転写ベルト32を張架する複数のローラには、軸方向の前面側の端部のみに溝部35が形成されている。これは、図5(B)に示すように、複数のローラの軸方向の前面側及び背面側の端部に溝部35、36が形成した場合。ガイドリブ32A、32Bは、それぞれが、溝部35、35に嵌め入れられ、駆動ローラ33の溝部35、36に摺接する。この結果、駆動ローラ33の軸方向の中心に向かって力が作用するため、二次転写ベルト32が中心に行くほど駆動ローラ33の表面から浮いて離れてしまうからである。
【0060】
なお、上述の実施例2では、二次転写ベルト32を画像形成装置100の背面側に向かって偏倚させた。しかし、二次転写ベルト32を、二次転写ベルト32を前面側に向かって偏倚させて、画像形成装置100の前面側で、ガイドリブ32Aが駆動ローラ33の溝部35の前面側の面に摺接する構成にしてもよい。この場合、駆動ローラ33の軸方向は、画像形成装置100の前面側が背面側より下方に位置し、従動ローラ34の軸方向の平行線から所定角度傾斜させればよい。これにより、二次転写ユニット30二次転写ベルト32を前面側に向かって偏倚させることで、放電生成物の濃度分布が低濃度な場所に二次転写ベルト32を位置させることができる。
【0061】
なお、上述の実施例では、二次転写ベルト32の両端部にガイドリブ32A,32Bを取り付けたが、二次転写ベルト32の片側端部のみにガイドリブ32Aを取り付けてもよい。
【0062】
なお、上述の実施例では、二次転写ベルト32を劣化させる物質として、放電生成物を例に挙げて説明したが、温度や湿度に応じて劣化するとしてもよい。この場合、二次転写ベルト32は、吸水性の高いポリイミド製のベルトからなる。画像形成装置100、100Aは、画像形成時に温度や湿度が変化して、装置内部の水蒸気量が変わる。また、画像形成装置100、100Aは、背面側に排気口を配置しているため、前面側から背面側に向かって水蒸気量が変化する。ポリイミド製のベルトは、水蒸気量の多い側で、品質が劣化する。そこで、ベルトは、水蒸気量の少ない側に、ガイドリブ32Aと駆動ローラ33とを摺接させることで、品質が著しく劣化することを防ぐことができる。
【0063】
なお、上述の実施例では、二次転写ベルト32をNBRゴム製として、放電生成物が低濃度になる前面側でガイドリブ32Aと駆動ローラ33とが摺接する構成とした。二次転写ベルト32の他に、中間転写ベルト61をNBRゴム製とし、放電生成物が低濃度になる前面側でガイドリブ32Aと駆動ローラ33とが摺接する構成としてもよい。
【0064】
また、図6(A)に示すように、用紙搬送ベルト67を挟んで、感光体ドラム3Aと一次転写ローラ64Aとを対向する位置に配置し、用紙搬送ベルト67上を搬送される用紙に、モノクロの画像を形成する画像形成装置にも適用できる。この場合、用紙搬送ベルト67をNBRゴム製として、放電生成物が低濃度になる前面側でガイドリブと駆動ローラ33とが摺接する構成としてもよい。
【0065】
さらに、図6(B)に示すように、用紙搬送ベルト67を挟んで、感光体ドラム3A〜3Dと一次転写ローラ64A〜64Dとをそれぞれ対向する位置に配置し、用紙搬送ベルト67上を搬送される用紙に、カラーの画像を形成する画像形成装置にも適用できる。この場合、用紙搬送ベルト67をNBRゴム製として、放電生成物が低濃度になる前面側でガイドリブと駆動ローラ33とが摺接する構成としてもよい。
【0066】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0067】
5A〜5D…帯電器
30…二次転写ユニット
32…二次転写ベルト
32A,32B…ガイドリブ
33…駆動ローラ
100,100A…画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトの品質の劣化を促進する物質の濃度分布が、所定の方向に向かって低濃度から高濃度へ変化する空間に配置されたベルトユニットであって、
前記所定の方向と複数のローラの軸方向を一致させて、前記軸方向における第1の端部が低濃度側に、第2の端部が高濃度側に配置され、前記複数のローラに回転自在に張架された無端状のベルトと、
前記第1の端部に配置され、前記無端状のベルトの蛇行を規制する規制手段と、
前記規制手段に前記無端状のベルトが摺接するように前記無端状のベルトを前記軸方向に偏倚させる偏倚手段と、を備えるベルトユニット。
【請求項2】
電子写真方式によって像担持体にトナー像を形成して、前記トナー像を用紙へ転写する画像形成装置であって、
請求項1に記載のベルトユニットと、
前記像担持体をコロナ放電により帯電させる帯電手段と、
コロナ放電時に前記帯電手段によって生成される放電生成物の濃度分布が、前記複数のローラの軸方向における前記第1の端部から前記第2の端部に向かって高濃度になるように変化させる濃度分布変化手段と、を備える画像形成装置。
【請求項3】
前記無端状のベルトは、内周面で且つ前記軸方向の両端部の少なくとも1方の全周域にガイドリブが形成されており、
前記規制手段は、前記ガイドリブに摺接する、前記複数のローラの少なくとも1つのローラの軸方向の片側端部である請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記規制手段は、前記ガイドリブを嵌入して摺接する、前記複数のローラの少なくとも1つローラの軸方向の片側端部の全周面に形成された溝部である請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記規制手段は、前記複数のローラの少なくとも1つのローラとの間に前記無端状のベルトを挟むことで、前記無端状のベルトを摺接する部材である請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記無端状のベルトは、前記像担持体から前記トナー像を一次転写する中間転写ベルト、又は前記中間転写ベルトとの間を通過する用紙に対して前記中間転写ベルトから前記トナー像を転写する二次転写ユニットの二次転写ベルトである請求項2〜5の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記無端状のベルトは、前記像担持体と用紙へ前記トナー像を転写する転写手段との間に配置される用紙搬送ベルトであって、前記用紙が搬送される用紙搬送ベルトである請求項2〜5の何れかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−220869(P2012−220869A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88985(P2011−88985)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】