説明

ベルト固定金具および固縛具

【課題】金具本体に対して傾斜する方向にベルトの張力が作用する場合においても、レール板との接触部に作用する圧力を低減して、レール板や金具本体の損傷を防止する。
【解決手段】ベルト3の端部に取り付けられる、側面視略U字状に2つ折りに湾曲された金属板からなる金具本体6を備え、該金具本体6の幅方向の両端面に、金具本体6がレール板4に板厚方向に貫通して設けられた矩形状の貫通孔5に挿入された状態で、レール板4を挿入状態に配置する溝9,10がそれぞれ設けられ、これら2つの溝9,10は、これらの溝9,10内にレール板4を配置した状態で該レール板4の表面に対して金具本体6が倒れることを許容するとともに、最大限に倒れたときに、これらの溝9,10の側壁9a,10aの板厚方向の端縁が、略同時にレール板4の表面に接触する溝形状を有するベルト固定金具1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト固定金具および固縛具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トラック等の車輌に搭載される箱形の搬送コンテナにおいては、対向する内側面のそれぞれに長さ方向に沿ってレール板が配置されている。レール板には、長さ方向に間隔をあけて複数の同一矩形状の貫通孔が設けられており、荷崩れ防止用のベルトの端部に取り付けたベルト固定金具を係合させることができるようになっている。
荷崩れ防止用のベルトは、両端のベルト固定金具をレール板の貫通孔にそれぞれ係合させた状態で、長さ方向の途中位置に設けたベルト巻き取り機構を備えたバックルによって巻き取って張力をかけ、それによって積荷を固縛するようになっている。
【0003】
従来のベルト固定金具は、側面視略U字状に2つ折りに湾曲された金属板からなる金具本体と、該金具本体のU字状の金属板の間に揺動可能に取り付けられたストッパ部材とを備えている。
金具本体は、レール板の貫通孔の横幅寸法より若干小さい厚さ寸法と、貫通孔の縦幅寸法より所定の寸法差だけ大きな幅寸法とを有している。また、金具本体は、幅方向の両端面の長さ方向の途中位置に厚さ方向に沿って、レール板の板厚より大きな溝幅寸法を有する溝を備えている。
【0004】
一方の溝(以下、固定溝という。)は、上記寸法差より小さい深さ寸法を有するとともに、レール板の板厚より若干大きな溝幅を有している。
他方の溝(以下、可変溝という。)は、上述した寸法差より大きな深さ寸法を有するとともに、レール板の板厚より若干大きな溝幅寸法から開口端に向かって次第に広がる形状を有している。これにより、この可変溝側がレール板に向かうように金具本体を傾斜させてレール板の貫通孔に挿入し、この可変溝よりも先端側の部分をレール板の裏側に潜り込ませる際に、この可変溝内にレール板を容易に挿入することができるようになっている。
【0005】
また、ストッパ部材は、この可変溝内にその溝幅方向に進退可能に設けられ、該可変溝内に突出させられたときに、該可変溝の深さ寸法を上記寸法差より小さい深さ寸法まで低減するようになっている。このストッパ部材は、バネによって可変溝内に突出する方向に付勢されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
そして、ベルト固定金具を貫通孔に係合させる際には、ストッパ部材を可変溝内から待避させた状態で、この可変溝の奥までレール板が挿入されるようにベルト固定金具を貫通孔内に挿入する。次いで、固定溝側も貫通孔内に挿入して固定溝内にレール板を挿入し、ストッパ部材を解放して、可変溝の深さ寸法を低減する。これにより、ストッパ部材を操作しない限り、レール板の貫通孔からベルト固定金具を取り外すことができないように保持される。
【0007】
そして、ベルトに張力が付与されて、ベルト固定金具にレール板に直交する方向に張力が作用する場合には、レール板の裏側に配置された2つの溝の溝壁全体がレール板の裏面に突き当たって張力を受けるので、圧力が分散されて、非常に高い張力が作用したとしても、これを安定して支持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3574339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、ベルトによって荷物を固縛する多くの場合には、ベルト面によって荷物を押さえる方向に力を発生させるために、荷物によってベルトを湾曲させた状態で張力をかける必要がある。この場合には、ベルトの両端に設けられたベルト固定金具の少なくとも一方において、金具本体の長手方向に対してベルトが傾斜した状態となり、金具本体には、レール板に対して金具本体を倒す方向に大きな荷重が掛かることになる。
【0010】
従来のベルト固定金具の場合には、金具本体に設けた固定溝をレール板の板厚より若干大きな溝幅寸法を有するものとし、可動溝についてはそれよりも十分に大きな溝幅寸法を有するものとしているため、金具本体を倒す方向に力が作用すると、固定溝とレール板との隙間分だけレール板に対して固定金具が倒れた状態で、固定溝の溝壁がレール板の表面および裏面に接触することによりその力が受けられる。
【0011】
しかしながら、レール板に対して固定金具が倒れる方向に選るとの張力が作用した場合の固定溝の溝壁とレール板との接触は、レール板の表面と裏面においてそれぞれ1箇所ずつの線接触となるため、接触部に作用する圧力は過大なものとなるという不都合がある。特に、軽量化を図るためにレール板をアルミニウム等の軽金属によって構成する場合には、十分な強度を得ることができず、レール面に圧痕が形成されたり、レール板が湾曲したりする不都合がある。
【0012】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、金具本体に対して傾斜する方向にベルトの張力が作用する場合においても、レール板との接触部に作用する圧力を低減して、レール板や金具本体の損傷を防止することができるベルト固定金具および固縛具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、ベルトの端部に取り付けられる、側面視略U字状に2つ折りに湾曲された金属板からなる金具本体を備え、該金具本体の幅方向の両端面に、前記金具本体がレール板に板厚方向に貫通して設けられた矩形状の貫通孔に挿入された状態で、レール板を挿入状態に配置する溝がそれぞれ設けられ、これら2つの溝は、これらの溝内に前記レール板を配置した状態で該レール板の表面に対して前記金具本体が倒れることを許容するとともに、最大限に倒れたときに、これらの溝の側壁の前記板厚方向の端縁が、略同時に前記レール板の表面に接触する溝形状を有するベルト固定金具を提供する。
【0014】
本発明によれば、金具本体をレール板の貫通孔に挿入して、幅方向の両端面に設けられている溝内にレール板が挿入された状態で、金具本体の長さ方向に対して傾斜する方向にベルトの張力が作用すると、レール板に対して金具本体が傾斜する。金具本体の固定溝および可動溝は、最大限に倒れたときに、これらの溝の側壁の端縁が、略同時にレール板の表面に接触する溝形状を有しているので、ベルトの張力は、2つの溝に分散されて受けられる。これにより、固定金具とレール板との接触部における圧力を略半分に低減することができ、レール板や固定金具の損傷を未然に防止することができる。
【0015】
上記発明においては、前記金具本体の幅寸法が、前記貫通孔の幅寸法より所定の寸法差だけ大きく、前記溝の一方が、前記寸法差より大きな深さ寸法を有し、前記溝の他方が、前記寸法差より小さい深さ寸法を有し、前記他方の溝が、前記一方の溝の深さ方向の途中位置までの形状と略同一形状を有していてもよい。
【0016】
このようにすることで、固定金具を貫通孔に挿入する際に、深い方の溝にレール板を挿入してから浅い方の溝にレール板を挿入することで、容易に両溝内にレール板を挿入した状態に配置することができる。そして、固定金具の長手方向に対して傾斜した方向にベルトの張力が作用した際には、レール板に対して固定金具を傾斜させて、固定金具の両端面に形成された2つの溝の端縁を、より確実にレール板の表面に同時に接触させることができ、固定金具とレール板との接触部における圧力を半減させて、レール板や固定金具の損傷を未然に防止することができる。
【0017】
また、上記発明においては、前記金具本体の幅寸法が、前記貫通孔の幅寸法より所定の寸法差だけ大きく、前記溝の一方が、前記寸法差より大きな深さ寸法を有し、前記溝の他方が、前記寸法差より小さい深さ寸法を有し、前記他方の溝が、溝底における前記レール板の板厚より若干大きな寸法から、開口端における前記一方の溝の溝幅より大きな寸法まで漸次広がる溝形状を有していてもよい。
このようにすることで、レール板の板厚より若干大きな溝幅を有する溝底部分の溝壁が、レール板に板厚方向に突き当たって、レール板に対して金具本体がレール板の板厚方向にガタつくのを防止することができる。
【0018】
また、上記発明においては、前記金具本体の幅寸法が、前記貫通孔の幅寸法より所定の寸法差だけ大きく、前記溝の一方が、前記寸法差より大きな深さ寸法を有し、前記溝の他方が、前記寸法差より小さい深さ寸法を有し、前記他方の溝が、溝底における前記レール板の板厚より若干大きな寸法から、開口端における前記一方の溝の溝幅より若干小さい寸法まで漸次広がり、かつ、前記板厚方向の端縁が面取りされた形状を有していてもよい。
【0019】
このようにすることで、レール板の板厚より若干大きな溝幅を有する溝底部分の溝壁が、レール板に板厚方向に突き当たって、レール板に対して金具本体がレール板の板厚方向にガタつくのを防止することができる。また、端縁における面取り部分によって、レール板に対して金具本体が傾斜したときに、レール板と金具本体とを面接触させることができ、固定金具とレール板との接触部における圧力をさらに低減して、レール板や固定金具の損傷を未然に防止できる。
【0020】
また、本発明は、上記いずれかのベルト固定金具と、該ベルト固定金具を端部に取り付けたベルトとを備える固縛具を提供する。
本発明によれば、レール板に直交する方向に対して傾斜した方向にベルトを掛け渡し、ベルトに大きな張力を加えても、ベルト固定金具やレール板の破損を防止することができ、より確実に荷物を固定することができる。
【0021】
また、本発明は、ベルトの端部に取り付けられる、直方体ブロック状の金具本体を備え、該金具本体の幅方向の両端面に、前記金具本体がレール板に板厚方向に貫通して設けられた矩形状の貫通孔に挿入された状態で、レール板を挿入状態に配置する溝がそれぞれ設けられ、これら2つの溝は、これらの溝内に前記レール板を配置した状態で該レール板の表面に対して前記金具本体が倒れることを許容するとともに、最大限に倒れたときに、これらの溝の側壁の前記板厚方向の端縁が、略同時に前記レール板の表面に接触する溝形状を有するベルト固定金具を提供する。
本発明によれば、直方体ブロック状の金具本体が、レール板に対して最大限に倒れたときに、固定溝および可動溝の側壁の端縁が、略同時にレール板の表面に接触するので、固定金具とレール板との接触部が分散される。これにより、レール板や固定金具にかかる圧力が低減され、レール板や固定金具の損傷を未然に防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、金具本体に対して傾斜する方向にベルトの張力が作用する場合においても、レール板との接触部に作用する圧力を低減して、レール板や金具本体の損傷を防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る固縛具を示す斜視図である。
【図2】図1の固縛具に備えられる本実施形態に係るベルト固定金具を示す(a)側面図、(b)正面図である。
【図3】図2のベルト固定金具をレール板の貫通孔に係合させる工程を説明する(a)挿入初期、(b)挿入途中、(c)挿入完了時のレール板の縦断面と共に示す正面図である。
【図4】図2のベルト固定金具に(a)レール板の表面に直交する方向に力がかかったとき、(b)レール板の表面に対して傾斜する方向に力がかかったときのレール板から受ける反力を示す模式図である。
【図5】図2のベルト固定金具の第1の変形例を示す正面図である。
【図6】図2のベルト固定金具の第2の変形例を示す正面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るベルト固定金具を示す斜視図である。
【図8】図7のベルト固定金具の正面図である。
【図9】図7のベルト固定金具の上視図である。
【図10】図7のベルト固定金具の左側側面図である。
【図11】図7のベルト固定金具の右側側面図である。
【図12】図7のベルト固定金具に(a)レール板の表面に直交する方向に力がかかったとき、(b)レール板の表面に対して傾斜する方向に力がかかったときのレール板から受ける反力を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係るベルト固定金具1および固縛具2について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る固縛具2は、図1に示されるように、ベルト3と、該ベルト3の少なくとも一端に取り付けたベルト固定金具1と、ベルト3を巻き取って張力を掛けるバックル(図示略)とを備えている。
【0025】
本実施形態に係るベルト固定金具1は、搬送コンテナ等の対向する内側面のそれぞれに長さ方向に沿って配置されたレール板4に、長さ方向に間隔をあけて複数設けられた矩形状の貫通孔5に挿入されて固定されるものである。このベルト固定金具1は、図2(a)および図2(b)に示されるように、金属板を側面視略U字状に2つ折りに湾曲させた形状の金具本体6と、該金具本体6を構成する金属板の隙間に、該金属板の板厚方向に延びる軸線A回りに揺動可能に取り付けられたストッパ部材7とを備えている。
【0026】
また、金具本体6には、金属板の湾曲部6aとは逆側の端部近傍に、幅方向に沿って延びる長孔8が設けられている。長孔8は、ベルト3を挿入可能な長さ寸法および幅寸法を有している。ベルト3は、長孔8を通過させた端部をそれ自体の長さ方向の途中位置に縫合等することによりベルト固定金具1を端部に固定することができるようになっている。
【0027】
金具本体6は、レール板4に設けられた矩形状の貫通孔5の横幅寸法Xより若干小さい厚さ寸法と、図3(c)に示されるように、貫通孔5の縦幅寸法Yより所定の寸法差Δだけ大きな幅寸法とを有するとともに、幅方向の両端面の長さ方向の途中位置に厚さ方向に沿って、レール板4の板厚より大きな溝幅寸法を有する溝9,10を備えている。
【0028】
一方の溝(以下、固定溝)9は、金具本体6の幅寸法と貫通孔5の縦幅寸法との寸法差Δより小さい深さ寸法を有している。他方の溝(以下、可変溝)10は、上記寸法差Δより大きい深さ寸法を有している。
可変溝10には、ストッパ部材7が、その溝幅方向に進退可能に配置されている。ストッパ部材7が可変溝10内に突出させられたときには、可変溝10の深さ寸法が上記寸法差Δより小さい深さ寸法まで低減されるようになっている。ストッパ部材7は、図示しないバネによって可変溝10内に突出する方向に付勢されている。
【0029】
可変溝10は、レール板4の板厚より若干大きな溝幅寸法から開口端に向かって次第に広がる形状を有している。これにより、図3(a)に示されるように、可変溝10内からストッパ部材7を待避させた状態で、この可変溝10側がレール板4に向かうように金具本体6を傾斜させてレール板4の貫通孔5に挿入し、この可変溝10よりも先端の湾曲部6a側の部分をレール板4の裏側に潜り込ませる際に、この可変溝10内にレール板4を容易に挿入することができるようになっている。
【0030】
また、可変溝10が金具本体6の幅寸法と貫通孔5の縦幅寸法との寸法差Δより大きい深さ寸法を有しているので、この可変溝10の奥までレール板4が挿入されることにより、図3(b)に示されるように、固定溝9側の金具本体6の端部も貫通孔5に挿入することができるようになる。そして、固定溝9および可変溝10の両方にレール板4が挿入された状態で、図3(c)に示されるように、ストッパ部材7を解放して、バネの弾性復元力により可変溝10内に突出させることによって、可変溝10の深さ寸法が上記寸法差Δより小さくなる。これにより、ベルト固定金具1がレール板4の貫通孔5から外れないように保持されるようになっている。
【0031】
本実施形態においては、固定溝9の溝形状が、図2(b)に破線で示される可変溝10の溝形状の深さ方向の途中位置までの形状を左右反転させた略対称な形状を有している。
すなわち、ストッパ部材7が可変溝10内に突出させられた状態で形成される可変溝10の溝形状は、上記寸法差Δより小さい深さ寸法と、レール板4の板厚より十分に大きな溝幅寸法と、一方の溝壁9aが開口端に向かって広がる方向に傾斜した形状とを有している。
【0032】
このように構成された本実施形態に係る固縛具2およびベルト固定金具1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係るベルト固定金具1を用いてベルト3をレール板4に固定するには、ストッパ部材7を可変溝10外に待避させた状態で、図3(a)に示されるように、上記寸法差Δより大きい深さ寸法を有する可変溝10がレール板4に向かうように金具本体6を傾斜させてレール板4の貫通孔5に挿入する。可変溝10の奥までレール板4が挿入されることにより、図3(b)に示されるように、固定溝9側の金具本体6の端部も貫通孔5に挿入することができるようになるので、図3(c)に示されるように、ベルト固定金具1全体を貫通孔5に挿入して、レール板4を固定溝9内にも挿入する。
【0033】
この状態で、ストッパ部材7を解放することにより、ストッパ部材7がバネによって可変溝10内に突出し、可変溝10の深さ寸法を小さくする。これにより、ベルト固定金具1を貫通孔5に取り外し不可に係合させることができる。
【0034】
このようにして貫通孔5に係合させたベルト固定金具1に、図4(a)に示されるように、レール板4に対して直交する方向に沿う力Fが作用した場合には、固定溝9および可変溝10の金具本体6の先端側に配されている溝壁9b,10bが、レール板4の裏面に押し当てられて、その反力fによって、この力Fを受ける。金具本体6がU字状に湾曲された金属板により構成されているので、固定溝9側および可変溝10側の両方とも2箇所において溝壁9b,10bとレール板4の裏面とが面接触させられる。これにより、レール板4にかかる圧力は十分に低減される。
【0035】
次に、貫通孔5に係合させたベルト固定金具1に、レール板4に直交する方向に対して傾斜する方向に力Fが作用した場合には、図4(b)に示されるように、金具本体6にモーメントが作用し、レール板4に対して金具本体6が力Fの方向に倒れる。ここで、本実施形態においては、固定溝9および可変溝10が略対称の形状で、かつ、レール板4の板厚より十分に大きな溝幅寸法を有しているので、金具本体6は従来のものよりも大きく倒れることになる。
【0036】
そして、金具本体6は、固定溝9および可変溝10の溝壁の端縁がレール板4の表面に接触するまで倒れることができる。このとき、レール板4の裏面側においては、固定溝9および可変溝10のベルト固定金具1の厚さ方向の逆側の端縁がレール板4の裏面に接触している。したがって、金具本体6に作用するモーメントは、レール板4の表面および裏面の離れた2点の接触部に発生する反力fによって支持されることになる。
【0037】
この場合において、本実施形態に係るベルト固定金具1によれば、固定溝9および可変溝10が略対称の溝形状を有しているので、金具本体6が倒れたときに、固定溝9および可変溝10の両方の溝壁の端縁がレール板4の表面に略同時に接触する。その結果、金具本体6に作用するモーメントは、金具本体6の幅方向両端の2箇所で支持されるので、従来、固定溝9側の1箇所で支持していた場合と比較して、各接触部に加わる圧力を半減させることができる。
【0038】
その結果、このようなベルト固定金具1をベルト3の端部に備えた固縛具2によれば、レール板4の直交方向に対して傾斜する方向にベルト3が掛け渡されても、ベルト3の大きな張力を掛けることができ、その際に、レール板4の損傷を防止することができる。特に、レール板4としてアルミニウム合金等を使用しても、その表面に圧痕が残ったり変形したりすることを防止することができ、軽量化を図ることができる。また、金具本体6に過大な力を掛けずに済み、金具本体6の破損をも防止することができる。
【0039】
なお、本実施形態においては、レール板4の貫通孔5への挿入容易性を考慮して幅広に形成せざるを得ない可変溝10の幅広の溝形状に合わせて固定溝9も形成しているので、両溝9,10内にレール板4を挿入した状態で、溝9,10とレール板4との間の隙間が大きく、ガタつきが発生する。このガタつき自体に性能上の問題はないが、使用上の違和感がある場合がある。そこで、このガタつきを防止するための固定溝9の形状について以下に説明する。
【0040】
すなわち、図5に示されるように、鎖線で示される可変溝10の形状と比較して、溝底位置におけるレール板4の板厚より若干大きな溝幅寸法から、開口端位置における可変溝10の開口端の溝幅寸法より大きな溝幅寸法まで次第に略直線状に広がる傾斜した側壁9aを有するような溝形状を採用してもよい。このようにすることで、レール板4が溝底近傍に配置された状態で溝9とレール板4との隙間を小さくしてガタつきを防止することができる。
【0041】
そして、このような形態を採用することにより、レール板4に対してベルト固定金具1が倒れたときには、固定溝9の傾斜した側壁9aの端縁のいずれかの位置がレール板4の表面に接触するのと略同時に、可変溝10の側壁の端縁をレール板4の表面に接触させるように構成することができる。これにより、上記と同様にして、金具本体6がレール板4に対して倒れたときに、各接触部に加わる圧力を半減させることができ、レール板4や金具本体6の損傷を防止することができる。
【0042】
また、図6に示されるように、鎖線で示される可変溝10の形状と比較して、溝底位置におけるレール板4の板厚より若干大きな溝幅寸法から、開口端位置における可変溝10の開口端の溝幅寸法より小さな溝幅寸法まで次第に略直線状に広がる傾斜し、かつ、厚さ方向の端縁が面取りされた側壁9aを有するような溝形状を採用してもよい。このようにすることによっても、レール板4が溝底近傍に配置された状態で溝9とレール板4との隙間を小さくしてガタつきを防止することができる。しかも、金具本体6がレール板4に対して倒れたときに、面取りされた側壁9aが、レール板4の表面に面接触するので、各接触部に加わる圧力をさらに低減することができ、レール板4や金具本体6の損傷を防止することができる。
【0043】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態に係るベルト固定金具21について図面を参照して説明する。本実施形態の説明において、第1の実施形態に係るベルト固定金具1と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
本実施形態に係るベルト固定金具21が第1の実施形態に係るベルト固定金具1と異なる点は、金属板を側面視略U字状に2つ折りに湾曲させて金具本体6を成形するのではなく、例えばロストワックス鋳造により直方体ブロック状の金具本体6を一体的に成形した点である。
【0044】
金具本体6は、図7、図8に示されるように、内部にストッパ部材7を軸線A回りに揺動可能に収容可能な中空の筐体であり、可変溝10の位置には、ストッパ部材7の一部を突出させる開口部が設けられている。一方、金具本体6の固定溝9側の側壁および先端6b側の側壁は、板厚方向に連続して閉塞されている。
【0045】
固定溝9および可変溝10の湾曲部6a側の側壁には、図7に示されるように、平坦な単一の閉塞面23,26がそれぞれ形成されている。
固定溝9および可変溝10の側壁の全ての端縁には、図7、図10、図11に示されるように、角部を丸めることにより、曲面24,27,31,33がそれぞれ形成されている。
【0046】
上記構成を有する本実施形態のベルト固定金具21の作用について以下に説明する。
貫通孔5に係合させたベルト固定金具21に、図12(a)に示されるように、レール板4に対して直交する方向に沿う力Fが作用した場合には、金具本体6の厚さ方向に連続する固定溝9および可変溝10の閉塞面23,26が、レール板4の裏面に押し当てられて、その反力fによって、この力Fが受けられる。すなわち、固定溝9側および可変溝10側の両方とも、第1の実施形態に係るベルト固定金具1よりも広い接触面積で閉塞面23,26とレール板4の裏面とが面接触させられる。これにより、レール板4にかかる圧力をより低減することができる。
【0047】
次に、貫通孔5に係合させたベルト固定金具21に、レール板4に直交する方向に対して傾斜する方向に力Fが作用した場合には、図12(b)に示されるように、金具本体6にモーメントが作用し、レール板4に対して金具本体6が力Fの方向に倒れる。このとき、レール板4の裏面側においては、固定溝9および可変溝10の金具本体6の厚さ方向の逆側の曲面がレール板4の裏面に接触する。したがって、金具本体6に作用するモーメントは、レール板4の表面および裏面の離れた2点の接触部に発生する反力fによって支持される。
【0048】
この場合において、本実施形態に係るベルト固定金具21によれば、レール板4の表面および裏面と、金具本体6の曲面24,27,31,33とが接触することとなるため、溝壁端縁の角部とレール板4とを接触させる第1の実施形態に係るベルト固定金具1に比べて、レール板4との接触面積を拡大して、レール板4にかかる圧力をより低減することができる。
【0049】
以上のように、本実施形態に係るベルト固定金具21によれば、貫通孔5に係合させたベルト固定金具21に、レール板4に対して直交する方向に沿う力Fが作用した場合と、レール板4に直交する方向に対して傾斜する方向に力Fが作用した場合のいずれの場合においても、レール板4や金具本体6にかかる圧力をより低減することができ、レール板4や金具本体6の損傷を防止することができる。
【0050】
なお、本実施形態において、金具本体6を例えばロストワックス鋳造により一体的に成形することとして説明したが、これに代えて、第1の実施形態と同様に、金属板を側面視略U字状に2つ折りに湾曲させ、固定溝9および可変溝10の側壁を構成する2枚の金属板を溶接等により一体化する等、任意の製法によって構成してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1,21 ベルト固定金具
2 固縛具
3 ベルト
4 レール板
5 貫通孔
6 金具本体
9 固定溝(溝)
9a,10a 側壁
10 可変溝(溝)
Δ 寸法差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトの端部に取り付けられる、側面視略U字状に2つ折りに湾曲された金属板からなる金具本体を備え、
該金具本体の幅方向の両端面に、前記金具本体がレール板に板厚方向に貫通して設けられた矩形状の貫通孔に挿入された状態で、レール板を挿入状態に配置する溝がそれぞれ設けられ、
これら2つの溝は、これらの溝内に前記レール板を配置した状態で該レール板の表面に対して前記金具本体が倒れることを許容するとともに、最大限に倒れたときに、これらの溝の側壁の前記板厚方向の端縁が、略同時に前記レール板の表面に接触する溝形状を有するベルト固定金具。
【請求項2】
前記金具本体の幅寸法が、前記貫通孔の幅寸法より所定の寸法差だけ大きく、
前記溝の一方が、前記寸法差より大きな深さ寸法を有し、前記溝の他方が、前記寸法差より小さい深さ寸法を有し、
前記他方の溝が、前記一方の溝の深さ方向の途中位置までの形状と略同一形状を有する請求項1に記載のベルト固定金具。
【請求項3】
前記金具本体の幅寸法が、前記貫通孔の幅寸法より所定の寸法差だけ大きく、
前記溝の一方が、前記寸法差より大きな深さ寸法を有し、前記溝の他方が、前記寸法差より小さい深さ寸法を有し、
前記他方の溝が、溝底における前記レール板の板厚より若干大きな寸法から、開口端における前記一方の溝の溝幅より大きな寸法まで漸次広がる溝形状を有する請求項1に記載のベルト固定金具。
【請求項4】
前記金具本体の幅寸法が、前記貫通孔の幅寸法より所定の寸法差だけ大きく、
前記溝の一方が、前記寸法差より大きな深さ寸法を有し、前記溝の他方が、前記寸法差より小さい深さ寸法を有し、
前記他方の溝が、溝底における前記レール板の板厚より若干大きな寸法から、開口端における前記一方の溝の溝幅より若干小さい寸法まで漸次広がり、かつ、前記板厚方向の端縁が面取りされた形状を有する請求項1に記載のベルト固定金具。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のベルト固定金具と、該ベルト固定金具を端部に取り付けたベルトとを備える固縛具。
【請求項6】
ベルトの端部に取り付けられる、直方体ブロック状の金具本体を備え、
該金具本体の幅方向の両端面に、前記金具本体がレール板に板厚方向に貫通して設けられた矩形状の貫通孔に挿入された状態で、レール板を挿入状態に配置する溝がそれぞれ設けられ、
これら2つの溝は、これらの溝内に前記レール板を配置した状態で該レール板の表面に対して前記金具本体が倒れることを許容するとともに、最大限に倒れたときに、これらの溝の側壁の前記板厚方向の端縁が、略同時に前記レール板の表面に接触する溝形状を有するベルト固定金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−254269(P2010−254269A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141450(P2009−141450)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(594016768)アンクラジャパン株式会社 (17)
【Fターム(参考)】