説明

ベルト式脱水機

【課題】ローラによる押し付け力を調節して脱水率を大幅に高めるとともに濾布の横滑りによる蛇行を低減することができる安価で簡単な構造のベルト式脱水機を提供する。
【解決手段】ベルト式脱水機は本体フレームに設置される固定ローラ4a〜4h、絞りローラ5a〜5h及び圧搾ローラ6と、上段の固定ローラ4a〜4c及び絞りローラ5a〜5dと圧搾ローラ6に巻回される無端状の濾布ベルト3aと、下段の固定ローラ4d〜4h及び絞りローラ5e〜5hに巻回される無端状の濾布ベルト3bと、固定ローラ4a〜4cを昇降させるエアシリンダ7a〜7d,8a〜8dと、エアシリンダ7a〜7d,8a〜8dに圧縮空気を供給してピストンロッドを伸縮させるポンプと、固定ローラ4a〜4hを駆動する回転駆動用動力源と、絞りローラ5dの後方であって濾布ベルト3bの上方に設置される投入部1を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砕砂製造工程で発生する水分を含んだ汚泥を脱水処理するベルト式脱水機に係り、特に、脱水効率に優れ、安価で簡単な構造のベルト式脱水機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、天然砂に代わるものとして人工砂がコンクリートの骨材に用いられている。人工砂は山や河川等から採取した岩石から製造される。その工程はクラッシャ等による破砕工程、破砕物を粉砕あるいは研磨する製砂工程、砕砂を選別して取り出す分級工程等に分けられる。なお、製砂工程や分級工程では微粒粉を取り除くために水が加えられることが多く、これらの工程で発生する微粒粉の混じった泥水は最終的に汚水処理設備において処理される。
一般に、汚水処理設備は凝集剤が加えられた泥水から重力や遠心力の作用により固体物を分離するシックナーと呼ばれる非濾過分離装置と、シックナーの底部に沈降した濃縮廃泥(スラッジ)を高圧ポンプによって濾過室に送り込んで脱水するフィルタープレスと呼ばれる加圧脱水装置などから構成されている。しかし、このように構成された汚水処理設備は高価であり、また、広い設置スペースを必要とする。なお、人工砂の製造工程で発生する泥水に限らず、都市排水や工業排水等の下水を処理する設備においても同様な課題を有している。そのため、従来、いろいろな分野において汚水処理設備の小型化及び低価格化に関して盛んに研究や開発が行われており、それに関して既に幾つかの発明や考案が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1には「汚泥脱水処理装置」という名称で、多数の円板が回転軸方向に配列された回転濾過体が交接列をなして複数並設された濾体列を備え、この濾体列は脱水処理槽の上下二段に対向配置され、供給される汚泥液を回転濾過体の回転によって濾過脱水し、脱水ケーキとして脱水処理外へ排出する多重円板型の汚泥脱水処理装置及びこの装置を用いた汚泥脱水処理方法の改良技術に関する発明が開示されている。
特許文献1に開示された発明は、上記回転濾過体の回転によって汚泥液を濾過脱水しながら搬送し、脱水ケーキとして排出口から排出するように構成された脱水処理槽と、排出口を遮る抵抗板によって脱水ケーキの排出量を制限して汚泥液の脱水圧を調整するように構成された脱水圧調整手段とを備え、エアシリンダー等の加圧手段を用いて抵抗板を上昇又は下降させることにより排出口の開口面積を連続的に調整可能とするものである。
このような構造によれば、排出口の開口面積に応じて脱水ケーキの排出量が連続的に変化するため、汚泥液の脱水圧を緻密に調整することができる。従って、脱水ケーキの含水率を高精度に調整することが可能となる。また、自動制御された他の装置と連動させることにより、装置全体の自動化を計ることができる。
【0004】
次に、特許文献2には「汚泥の脱水方法およびベルトプレス脱水機」という名称で、下水を生物的浄化処理する過程で生じる汚泥の脱水に係り、特に、脱水後の汚泥の含水率を従来よりも低減することができるベルトプレス脱水機に関する発明が開示されている。
特許文献2に開示された発明は、回動する一対の無端濾布を対向配置して、その間に汚泥を挟持させるとともに、回動を停止している間に汚泥挟持濾布部分を複数箇所において加圧するものであり、少なくとも1段目の加圧圧力を2kgf/cm以下または2段目の加圧圧力を4kgf/cm以下とすることを特徴としている。
上記発明においては、汚泥の加圧時に一旦濾布を静止させ一方向にのみ加圧する構成となっているため、濾布にせん断力が加わらない。従って、従来のベルトプレス脱水機に比べて濾布の寿命が長くなるという作用を有する。また、1段目または2段目の加圧時に汚泥フロックが潰れ難く、水の流路が確保され易いため、3段目以降の加圧力を1段目または2段目よりも高く設定した場合でも横漏れや目抜け(濾布の裏側への漏れ)が発生し難い。これにより、汚泥フロックを十分に脱水することが可能となる。
【0005】
特許文献3には「ベルトプレス脱水装置」という名称で、ベルトが損耗し難く、かつ、凝集処理済汚泥又は汚泥脱水ケーキを押圧して効果的に脱水することができるベルトプレス装置に関する考案が開示されている。
特許文献3に開示された考案は、従来のベルトプレス脱水装置において相互に間隔を空けて下段に設置される2基の圧密ローラと、この2基の圧密ローラのほぼ中央上段に設置される1基の圧密ローラと、下段の2基の圧密ローラと上段の1基の圧密ローラの間に設置される2個のメッシュベルトと、3基の圧密ローラにそれぞれ取り付けられたスプリング調整軸とを備えるものである。
このような構造によれば、2個のメッシュベルトの間に挟まれた状態の汚泥脱水ケーキがメッシュベルトによって上下から押圧されながら進行する。また、圧密ローラによる押圧力はスプリング調整軸によって調整される。すなわち、汚泥脱水ケーキに加わる押圧力や汚泥脱水ケーキの脱水状況に応じてスプリング調整軸を調整することができる。これにより、汚泥脱水ケーキを十分に脱水することが可能となる。
【0006】
【特許文献1】特開2002−35799号公報
【特許文献2】特開2000−334499号公報
【特許文献3】実開平6−66890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の従来技術である特許文献1に開示された発明は、汚泥液を濾布によって濾過する構成ではないため、微粒粉を濾過することができない。すなわち、本発明は砕砂を製造する際に発生する汚水から微粒粉を分離する工程に対しては適用できないという課題があった。
【0008】
また、特許文献2に開示された発明は、汚泥の加圧時に一旦濾布を静止させる必要があり、脱水処理の効率が悪いという課題があった。また、ローラに対する濾布の横滑りによる蛇行を低減できないという課題があった。
【0009】
特許文献3に開示された考案は、搬送中の汚泥脱水ケーキに対して異なる大きさの押し付け力を段階的に加えることができないという課題があった。また、濾布の横滑りによる蛇行を低減できないという課題があった。
【0010】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、ローラによる押し付け力を調節して脱水率を大幅に高めるとともに濾布の横滑りによる蛇行を低減することができる安価で簡単な構造のベルト式脱水機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明であるベルト式脱水機は、上下二段に対向して本体フレームに設置される無端状の上段濾布ベルト及び下段濾布ベルトと、この上段濾布ベルト及び下段濾布ベルトがそれぞれ巻回される複数の上段固定ローラ及び下段固定ローラと、この上段固定ローラとともに上段濾布ベルトが巻回される上段絞りローラと、この上段絞りローラに対向配置され下段固定ローラとともに下段濾布ベルトが巻回される下段絞りローラと、上段絞りローラ及び下段絞りローラのうち少なくともいずれか一方を昇降自在に駆動する昇降手段とを備え、下段濾布ベルトは上面に供給された汚泥を上段濾布ベルトとで挟みつつ搬送し、上段絞りローラ及び下段絞りローラは上段濾布ベルト及び下段濾布ベルトを介して汚泥を押圧可能に対向配置されることを特徴とするものである。
このような構造のベルト式脱水機においては、上段絞りローラと下段絞りローラによって少しずつ加圧することで汚泥に含まれている水が徐々に、かつ、確実に脱水されるという作用を有する。
【0012】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載のベルト式脱水機において、複数設置される上段絞りローラ及び下段絞りローラのうち少なくともいずれか一方に、互いに独立して駆動可能に昇降手段を各々個別に設置したことを特徴とするものである。
このような構造のベルト式脱水機においては、上段濾布ベルトを汚泥に接触させるために行う上段絞りローラ又は下段絞りローラの高さ調節が容易となる。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のベルト式脱水機において、上段絞りローラ及び下段絞りローラのうち少なくともいずれか一方に、その両端を互いに独立して駆動可能に昇降手段をそれぞれ設置したことを特徴とするものである。
このような構造のベルト式脱水機においては、上段絞りローラ又は下段絞りローラを傾斜させることによって、幅方向で厚さが異なる汚泥に対して上段濾布ベルト又は下段濾布ベルトの接触面積が広くなるという作用を有する。また、上段絞りローラ又は下段絞りローラを傾斜させることにより、上段濾布ベルト又は下段濾布ベルトを左右いずれかの方向に移動させるような力が発生するという作用を有する。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項3記載のベルト式脱水機において、上段濾布ベルト又は下段濾布ベルトについて幅方向の位置ずれを検知する位置ずれ検知手段と、この位置ずれ検知手段から送られる位置ずれ検知信号に基づいて昇降手段の動作を制御することにより上段絞りローラ及び下段絞りローラのうち少なくともいずれか一方を駆動して傾斜させることを特徴とするものである。
このような構造のベルト式脱水機によれば、上段絞りローラ又は下段絞りローラにおいて上段濾布ベルト及び下段濾布ベルトの位置ずれが発生した側の端部を下降させることで位置ずれを修正する方向に上段濾布ベルト及び下段濾布ベルト濾布ベルトを移動させるような力が発生するという作用を有する。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のベルト式脱水機において、汚泥に対する上段濾布ベルトの接触の有無を検知する接触検知手段と、この接触検知手段から送られる接触検知信号に基づいて昇降手段の動作を制御することにより上段絞りローラを下降させ、あるいは下段絞りローラを上昇させる第二制御部を備えたことを特徴とするものである。
このような構造のベルト式脱水機においては、汚泥の表面に上段濾布ベルト又は下段濾布ベルトが接触するように上段絞りローラ又は下段絞りローラの高さを調節する際に、その移動量が制限されるという作用を有する。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明の請求項1記載のベルト式脱水機においては、装置の構造が簡単であることから、装置の小型化や低価格化を図ることが可能である。
【0017】
本発明の請求項2記載のベルト式脱水機においては、汚泥の厚さに応じて上段絞りローラ又は下段絞りローラの高さを調節することで脱水処理の効率を向上させることができる。また、上段絞りローラ又は下段絞りローラの高さを個別に変更して下段濾布ベルトに対する上段濾布ベルトの傾きを変更することにより、汚泥の脱水率を調節することが可能である。
【0018】
本発明の請求項3記載のベルト式脱水機においては、幅方向で厚さが異なる汚泥に対しても上段絞りローラ又は下段絞りローラの押し付け力を幅方向にわたって略均等に作用させることができる。また、上段濾布ベルト又は下段濾布ベルトの横滑りによる位置ずれを修正し、それに伴って発生する蛇行を低減することが可能である。
【0019】
本発明の請求項4記載のベルト式脱水機においては、上段濾布ベルト及び下段濾布ベルトの位置ずれを的確に修正し、その位置ずれに伴う蛇行の発生を確実に低減させることが可能である。
【0020】
本発明の請求項5記載のベルト式脱水機においては、上段絞りローラ又は下段絞りローラの暴走による故障を防ぐことができる。また、上段絞りローラ及び下段絞りローラが複数設置されている場合に、動作が制御される上段絞りローラ又は下段絞りローラの移動量に基づいて残りの上段絞りローラ又は下段絞りローラ移動量を、それらのローラの表面を走行する上段濾布ベルト及び下段濾布ベルトが略同一平面を形成するようにそれぞれ設定することにより、汚泥を段階的に効率よく加圧脱水することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の最良の実施の形態に係るベルト式脱水機について図1乃至図5を用いて説明する。なお、本願発明のベルト式脱水機は前述のシックナーとともに汚水処理設備の一部を構成するものであり、シックナーで処理された汚泥を、対向配置された2枚の無端状濾布ベルトで挟み込んで加圧脱水した後、脱水ケーキとして排出する装置である。
【実施例1】
【0022】
実施例1のベルト式脱水機について図1乃至図4を用いて説明する(特に、請求項1乃至請求項3に対応)。
図1(a)は本発明の実施の形態に係るベルト式脱水機の実施例1の構造を模式的に示した斜視図であり、(b)は同図(a)の側面図において絞りローラ近傍を部分的に拡大した図である。ベルト式脱水機を部分的に拡大した側面図である。図2(a)及び(b)はそれぞれ実施例1のベルト式脱水機の絞りローラとピストンロッドの連結部近傍を部分的に拡大した正面図及び側面図であり、(c)は同図(a)及び(b)の連結部の変形例を示した外観斜視図である。なお、図1(b)ではエアシリンダの図示を省略している。また、図1(b)はエアシリンダに駆動された絞りローラが矢印Dで示す方向に一点鎖線で示した位置から実線で示した位置まで移動する様子を示している。
図1(a)に示すように、本実施例のベルト式脱水機は本体フレーム(図示せず)に設置される固定ローラ4a〜4h、絞りローラ5a〜5h及び圧搾ローラ6と、上段の固定ローラ4a〜4c及び絞りローラ5a〜5dと圧搾ローラ6に巻回される無端状の濾布ベルト3aと、下段の固定ローラ4d〜4h及び絞りローラ5e〜5hに巻回される無端状の濾布ベルト3bと、固定ローラ4a〜4cを上昇又は下降させるエアシリンダ7a〜7d,8a〜8dと、エアシリンダ7a〜7d,8a〜8dに圧縮空気を供給してピストンロッド(図示せず)を伸縮させるポンプ(図示せず)と、固定ローラ4a〜4hにチェーンベルト(図示せず)を介して駆動力を伝達する回転駆動用動力源(図示せず)と、絞りローラ5dの後方かつ濾布ベルト3bの上方に設置される投入部1を備えている。
また、濾布ベルト3a,3bは合成樹脂製であり、メッシュの大きさは5〜50μm程度である。そして、濾布ベルト3a,3bには固定ローラ4a〜4h及びテンショナー(図示せず)等によって所望の張力がかけられている。
なお、本実施例では固定ローラ4a〜4hの全てを駆動する構成としているが、これに限定されるものではない。すなわち、上段の固定ローラ4a〜4cのうちの少なくとも一つ及び下段の固定ローラ4d〜4hのうちの少なくとも一つを駆動するように構成しても良い。また、絞りローラ5a〜5hや圧搾ローラ6を駆動することもできる。ただし、圧搾ローラ6は下段の濾布ベルト3b側には設置されていないため、圧搾ローラ6のみを駆動するような構成にすると、濾布ベルト3b側の回転が困難となるおそれがある。従って、圧搾ローラ6を駆動する場合には濾布ベルト3b側の他のローラも一緒に駆動させることが望ましい。
【0023】
図1(b)に示すように、絞りローラ5a,5bはその両端がエアシリンダ7a(8a),7b(8b)から垂下されるピストンロッド9,9の先端に連結されるとともに、回転軸11aを中心として回転自在となっている。これにより、絞りローラ5a,5bはピストンロッド9,9の伸縮に伴い、ピストンロッド9,9と一体となって移動する。なお、図1(b)にはエアシリンダ7a(8a),7b(8b)のピストンロッド9,9のみが図示されているが、他のエアシリンダ7c(8c),7d(8d)のピストンロッド9,9の先端にも同様に絞りローラ5c,5dの両端が回転軸11aを中心として回転自在にそれぞれ連結されている。従って、絞りローラ5c,5dもピストンロッド9,9の伸縮に伴ってピストンロッド9,9と一体的に移動する。すなわち、前述のポンプとエアシリンダ7a〜7d,8a〜8dは絞りローラ5a〜5dを駆動して上昇又は下降させる昇降手段を構成している。なお、固定ローラ4a〜4h、絞りローラ5a〜5h及び圧搾ローラ6は全て金属製であるが、絞りローラ5a〜5hは表面がさらに弾性を有するウレタン樹脂10によって被覆されている。
【0024】
図2(a)及び(b)に示すように、エアシリンダ7a〜7d,8a〜8dのピストンロッド9の先端は、絞りローラ5a〜5dの端部が挿通される貫通孔12aを有する軸受12の上部にピン13によって回転軸11bを中心として回転可能に連結されている。なお、回転軸11bは、絞りローラ5a〜5dの回転軸11aとピストンロッド9の中心軸9aとで形成される平面に対して直交している。また、絞りローラ5a〜5dは軸受12によって貫通孔12aの内部で回転軸11aの方向に摺動自在に保持される。
このような構造によれば、エアシリンダ7a〜7dとエアシリンダ8a〜8dを個別に伸縮させることにより、絞りローラ5a〜5dの両端の高さがそれぞれ調節されるという作用を有する。
なお、ピストンロッド9と軸受12の連結は図2(a)及び(b)に示した方法に限定されるものではない。例えば、図2(c)に示すように、ピストンロッド9の先端を自在継手(ユニバーサルジョイント)14によって軸受12の上部に連結しても良い。
【0025】
上記構造のベルト式脱水機では、回転駆動用動力源(図示せず)によって駆動される固定ローラ4a〜4d及び固定ローラ4e〜4hが図1(a)に示されるように矢印A及び矢印Bで示す方向にそれぞれ回転すると、絞りローラ5a〜5dと絞りローラ5e〜5hに挟まれた部分において濾布ベルト3a,3bがともに矢印Cで示す方向に走行する。これにより、投入部1から濾布ベルト3bの上面に投入された汚泥2aは濾布ベルト3a,3bによって上下から挟まれた状態で矢印Cの方向に搬送され、絞りローラ5a〜5hによって汚泥2aが少しずつ加圧脱水された後、圧搾ローラ6によってさらに加圧脱水され、脱水ケーキ2bとなって固定ローラ4a,4dの間から排出される。このように、圧搾ローラ6による最終的な脱水処理の前に絞りローラ5a〜5hによって少しずつ加圧することで汚泥2aに含まれている水が徐々に、かつ、確実に脱水される。また、絞りローラ5a〜5hによって汚泥2aを上下から加圧する際、ウレタン樹脂10は汚泥2aの表面の微小な凹凸の影響を吸収して濾布ベルト3aの汚泥2aへの接触面積を広くするという作用を有する。
【0026】
次に、絞りローラ5a〜5hの動作について図3及び図4を用いて詳しく説明する。
図3(a)及び(b)は図1(a)において絞りローラ5a〜5hの近傍を部分的に拡大した側面図である。また、図4(a)乃至(c)は図1(a)のX−X線矢視断面図である。なお、図1及び図2に示した構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
濾布ベルト3b上に供給された汚泥2aの厚さが薄いと、例えば、図3(a)に示すように絞りローラ5c,5dの箇所では加圧されずに素通りしてしまうという状態が起こりうる。しかしながら、前述のとおり、本実施例のベルト式脱水機では絞りローラ5a〜5dの高さを変更可能であり、エアシリンダ7a〜7d及びエアシリンダ8a〜8dを操作して絞りローラ5a〜5dをそれぞれ所望の距離だけ下降させることができる。従って、図3(b)に示すように絞りローラ5c,5dの箇所において濾布ベルト3aを汚泥2aに接触させるために行う絞りローラ5c,5dの高さの調節が容易になる。そして、このように絞りローラ5c,5dの高さを調節することにより絞りローラ5a〜5hの全てが汚泥2aの脱水処理に関与することになる。従って、脱水処理の効率が向上する。なお、絞りローラ5a〜5dの高さは個別に変更可能であるため、濾布ベルト3aを濾布ベルト3bに対して傾きを変更しつつ近づけることが可能である。そして、濾布ベルト3bに対する濾布ベルト3aの傾きが大きい場合には、汚泥2aの含水率の変化が大きくなり、濾布ベルト3bに対する濾布ベルト3aの傾きが小さい場合には、汚泥2aの含水率の変化が小さくなる。すなわち、本実施例のベルト式脱水機においては、絞りローラ5a〜5dの高さを個別に変更して濾布ベルト3bに対する濾布ベルト3aの傾きや濾布ベルト3a,3b間の距離を変更することにより、汚泥2aの脱水率を調節することが可能である。
さらに、絞りローラ5a〜5dの両端をエアシリンダ7a〜7dとエアシリンダ8a〜8dによって互いに独立に駆動して傾斜させることにより、幅方向で厚さが異なる汚泥2aに対して濾布ベルト3aの接触面積を広くすることができる。この場合、汚泥2aに対してローラ5a〜5dの押し付け力が濾布ベルト3aの幅方向にわたって略均等に作用する。
【0027】
なお、図4(a)に示すように、濾布ベルト3a,3bが汚泥2aを挟んだ状態で固定ローラ4a〜4hや絞りローラ5a〜5h上を走行している場合、濾布ベルト3a,3bが矢印E又は矢印Fで示す方向に横滑りし、時には蛇行することがある。通常、濾布ベルト3a,3bと汚泥2aの間の摩擦力は濾布ベルト3a,3bと上記ローラとの間の摩擦力よりも大きいため、濾布ベルト3a,3bと汚泥2aは一体となって同じ方向に移動する。
例えば、図4(b)に示すように濾布ベルト3a,3bが矢印Eで示す方向にずれている場合、絞りローラ5aのエアシリンダ7a側の端部が低くなるように傾斜させることによれば、汚泥2aを押し付ける力Pが鉛直方向15に対して傾斜し、濾布ベルト3a,3b及び汚泥2aを矢印Fの方向へ移動させるような分力が発生する。また、図4(c)に示すように濾布ベルト3a,3bが矢印Fで示す方向にずれている場合、絞りローラ5aのエアシリンダ8a側の端部が低くなるように傾斜させることによれば、汚泥2aを押し付ける力Pが鉛直方向15に対して傾斜し、濾布ベルト3a,3b及び汚泥2aを矢印Eの方向へ移動させるような分力が発生する。
なお、図4では絞りローラ5aのみが図示されているが、絞りローラ5aに関する上述の作用は絞りローラ5b〜5dにおいても同様に発揮される。すなわち、本実施例のベルト式脱水機においては、絞りローラ5a〜5dを傾けた状態で汚泥2aを加圧することにより、濾布ベルト3a,3bを左右いずれかの方向に移動させるような力が発生するという作用を有する。
【0028】
以上説明したように、本実施例のベルト式脱水機においては、圧搾ローラ6による脱水処理の前に絞りローラ5a〜5hによる脱水処理が行われるという簡単な構造により、汚泥2aを効果的に脱水することができる。そして、装置の構造が簡単であることから、装置の小型化や低価格化を図ることが可能である。また、汚泥2aの厚さや含水率に応じて濾布ベルト3bに対する濾布ベルト3aの傾きや距離を調節することにより効率よく脱水処理を行うことが可能である。さらに、汚泥2aの形状に応じてローラ5a〜5dを傾けて濾布ベルト3aと汚泥2aとの接触面積を広くすることにより、濾布ベルト3aの幅方向にわたってローラ5a〜5dの押し付け力を汚泥2aに対して略均等に作用させることができる。加えて、濾布ベルト3a,3bの横滑りによる位置ずれを修正し、それに伴う濾布ベルト3a,3bの蛇行を低減することが可能である。
【0029】
本実施例ではエアシリンダ7a〜7d,8a〜8dによって絞りローラ5a〜5dを駆動して上昇又は下降させる構成となっているが、これに限定されるものではなく、エアシリンダ7a〜7d,8a〜8dによって絞りローラ5e〜5hを駆動する構成としても良いし、また、絞りローラ5a〜5dと絞りローラ5e〜5hの両方をエアシリンダ7a〜7d,8a〜8dによって駆動する構成としても良い。この場合、本実施例の場合と同様の作用及び効果が発揮されるものの、本実施例に比べて装置の構造が複雑になる。また、固定ローラ4a〜4h、絞りローラ5a〜5h及び圧搾ローラ6の設置箇所や設置個数は本実施例に示す場合に限定されるものではなく、適宜変更可能である。さらに、絞りローラ5a〜5hの表面をウレタン樹脂10以外の弾性材料によって被覆しても良い。
【実施例2】
【0030】
実施例2について図5を用いて説明する(特に、請求項4及び請求項5に対応)。
図5(a)は実施例2のベルト式脱水機において汚泥2aが投入される側の絞りローラ5d,5hの近傍を部分的に拡大した斜視図であり、(b)は同図(a)をY方向に見た構造を模式的に示した図である。なお、図1乃至図4に示した構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
図5(a)及び(b)に示すように、本実施例のベルト式脱水機は、実施例1において、濾布ベルト3a,3bについて幅方向の位置ずれ及び濾布ベルト3a,3bの汚泥2aに対する接触の有無を検知する光電センサと、この光電センサから送られる検知信号に基づいてエアシリンダ7d,8dの動作を制御することにより絞りローラ5dを駆動して傾斜させる制御部19を備えたことを特徴とする。
なお、本実施例で使用する光電センサは投光部16a〜16c、受光部17a〜17c及び信号処理部(図示せず)とから構成され、投光部16a〜16cには光源(投光素子)としてLED(発光ダイオード)が使用され、受光部17a〜17cには受光素子としてフォトトランジスタ、フォトダイオード、PSD(位置検出用フォトダイオード)等が使用されている。また、投光部16a及び受光部17aは光路20aが濾布ベルト3aの表面近傍に所定の距離を空けて形成されるように、エアシリンダ7d,8dの下方にそれぞれ設置されており、投光部16b,16c及び受光部17b,17cは絞りローラ5hの両端の下方及び絞りローラ5dの両端の上方であって、濾布ベルト3a,3bの横滑り等による位置ずれが発生した場合に光路20b,20cが遮断されるような箇所にそれぞれに設置されている。
【0031】
そして、光路20aが汚泥2aによって遮断されると、受光部17aから検知信号21aが制御部19に送られ、光路20b,20cが濾布ベルト3a,3bによって遮断されると受光部17b,17cから検知信号21b,21cがそれぞれ制御部19に送られる。制御部19は検知信号21aを受けると、ポンプ18に指令信号22aを送り、この指令信号22aに従ってポンプ18はエアシリンダ7d,8dへの圧縮空気23の供給を停止する。
また、制御部19は検知信号21bを受けると、ポンプ18に指令信号22bを送り、ポンプ18は指令信号22bに従ってエアシリンダ7dへ所望量の圧縮空気23を供給する。そして、制御部19は検知信号21cを受けると、ポンプ18に指令信号22cを送り、ポンプ18は指令信号22cに従ってエアシリンダ8dへ所望量の圧縮空気23を供給する。
このような構造のベルト式脱水機においては、汚泥2aの表面に濾布ベルト3aが接触するように絞りローラ5dを下降させる際に、その下降量が制限されるという作用を有する。これにより、絞りローラ5dの暴走による故障を防ぐことができる。また、絞りローラ5dの下降量に基づいて絞りローラ5a〜5cの下降量が容易に決定される。すなわち、絞りローラ5a〜5d及び圧搾ローラ6の表面を走行する濾布ベルト3aが略同一平面を形成するように絞りローラ5a〜5cの下降量をそれぞれ設定することによれば、絞りローラ5a〜5hによって汚泥2aを段階的に効率よく加圧脱水することが可能である。
また、本実施例のベルト式脱水機においては、濾布ベルト3a,3bが幅方向に位置ずれした場合に、絞りローラ5dの位置ずれが発生した側の端部が下降することにより、位置ずれを修正する方向に濾布ベルト3a,3bを移動させるような力が発生するという作用を有する。この場合、濾布ベルト3a,3bの位置ずれが的確に修正されるため、濾布ベルト3a,3bの横滑りに伴う蛇行を実施例1の場合よりもさらに確実に低減させることが可能である。
【0032】
なお、濾布ベルト3a,3bについて幅方向の位置ずれ及び濾布ベルト3a,3bの汚泥2aに対する接触の有無を検知するセンサは、本実施例に示すものに限定されるものではない。すなわち、他の種類の光電センサであっても良いし、光電センサの代わりに渦電流等を利用した近接センサであっても良い。また、投光部16a〜16c、受光部17a〜17cを絞りローラ5a〜5cに対しても設置して制御部19によって絞りローラ5a〜5cの動作を制御する構成とすることもできる。さらに、投光部16a〜16c、受光部17a〜17cは本実施例のままとして、絞りローラ5dの下降量に基づいて制御部19が絞りローラ5a〜5cの下降量を制御する構成としても良い。また、制御部を2つ設置して、検知信号21aと検知信号21b,21cに基づく絞りローラ5dの動作の制御をそれぞれの制御部で分担して行う構成とすることもできる。この場合、本実施例よりも制御部の構造が簡単でありながら、本実施例と同様の作用及び効果が発揮される。
【産業上の利用可能性】
【0033】
請求項1乃至請求項5に記載された発明は、人工砂の製造工程で発生する泥水に限らず、都市排水や工業排水等の下水を処理する場合についても利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】(a)は本発明の実施の形態に係るベルト式脱水機の実施例1の構造を模式的に示した斜視図であり、(b)は同図(a)の側面図において絞りローラ近傍を部分的に拡大した図である。
【図2】(a)及び(b)はそれぞれ実施例1のベルト式脱水機の絞りローラとピストンロッドの連結部近傍を部分的に拡大した正面図及び側面図であり、(c)は同図(a)及び(b)の連結部の変形例を示した外観斜視図である。
【図3】(a)及び(b)は図1(a)において絞りローラの近傍を部分的に拡大した側面図である。
【図4】(a)乃至(c)は図1(a)のX−X線矢視断面図である。
【図5】(a)は実施例2のベルト式脱水機において汚泥が投入される側の絞りローラの近傍を部分的に拡大した斜視図であり、(b)は同図(a)をY方向に見た構造を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0035】
1…投入部 2a…汚泥 2b…脱水ケーキ 3a,3b…濾布ベルト 4a〜4h…固定ローラ 5a〜5h…絞りローラ 6…圧搾ローラ 7a〜7d…エアシリンダ 8a〜8d…エアシリンダ 9…ピストンロッド 9a…中心軸 10…ウレタン樹脂 11a,11b…回転軸 12…軸受 12a…貫通孔 13…ピン 14…自在継手(ユニバーサルジョイント) 15…鉛直方向 16a〜16c…投光部 17a〜17c…受光部 18…ポンプ 19…制御部 20a〜20c…光路 21a〜21c…検知信号 22a〜22c…指令信号 23…圧縮空気 A〜F…矢印


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下二段に対向して本体フレームに設置される無端状の上段濾布ベルト及び下段濾布ベルトと、この上段濾布ベルト及び下段濾布ベルトがそれぞれ巻回される複数の上段固定ローラ及び下段固定ローラと、この上段固定ローラとともに前記上段濾布ベルトが巻回される上段絞りローラと、この上段絞りローラに対向配置され前記下段固定ローラとともに前記下段濾布ベルトが巻回される下段絞りローラと、前記上段絞りローラ及び前記下段絞りローラのうち少なくともいずれか一方を昇降自在に駆動する昇降手段とを備え、前記下段濾布ベルトは上面に供給された汚泥を前記上段濾布ベルトとで挟みつつ搬送し、前記上段絞りローラ及び前記下段絞りローラは前記上段濾布ベルト及び前記下段濾布ベルトを介して前記汚泥を押圧可能に対向配置されることを特徴とするベルト式脱水機。
【請求項2】
複数設置される前記上段絞りローラ及び前記下段絞りローラのうち少なくともいずれか一方に、互いに独立して駆動可能に前記昇降手段を各々個別に設置したことを特徴とする請求項1記載のベルト式脱水機。
【請求項3】
前記上段絞りローラ及び前記下段絞りローラのうち少なくともいずれか一方に、その両端を互いに独立して駆動可能に前記昇降手段をそれぞれ設置したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のベルト式脱水機。
【請求項4】
前記上段濾布ベルト又は前記下段濾布ベルトについて幅方向の位置ずれを検知する位置ずれ検知手段と、この位置ずれ検知手段から送られる位置ずれ検知信号に基づいて前記昇降手段の動作を制御することにより前記上段絞りローラ及び前記下段絞りローラのうち少なくともいずれか一方を駆動して傾斜させる第一制御部を備えたことを特徴とする請求項3記載のベルト式脱水機。
【請求項5】
前記汚泥に対する前記上段濾布ベルトの接触の有無を検知する接触検知手段と、この接触検知手段から送られる接触検知信号に基づいて前記昇降手段の動作を制御することにより前記上段絞りローラを下降させ、あるいは前記下段絞りローラを上昇させる第二制御部を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のベルト式脱水機。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−131801(P2009−131801A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−310901(P2007−310901)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(394010193)宇部テクノエンジ株式会社 (37)
【Fターム(参考)】