説明

ベルト蛇行量測定手段及びそれを用いたベルトの蛇行測定方法。

【課題】ベルトの蛇行量を数値化することによって、蛇行量の判定において人による差をなくし、蛇行量の限度を設定することで適正検査とし、発音等の問題が発生せずなおかつ問題が発生しない程度の少量の蛇行量を有するベルトをスクラップにすることがなく、屑量を低減できるベルトの蛇行測定方法を提供する。
【解決手段】ベルトの蛇行量を測定する手段であって、少なくとも一つの固定された第1プーリ8と、固定されていない第2プーリ9と、該第2プーリ9の水平又は鉛直からの角度を測定する為の指針13と、指針13の傾きを測定する為の測定具を有したベルト蛇行量測定手段10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置などの動力伝動に用いられる動力伝動ベルトの蛇行測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常ベルトを製造する際には、ドラム状にてベルトを製造し、歯付ベルトであれば所定の幅にカットし、VベルトやVリブドベルトのような摩擦伝動ベルトにおいては、V形状の数や、所定のリブ数にてドラムをカットし、無端状のベルトとしている。ここで、ドラム状のベルトを成形するときに、心線である抗張体を金型上或いは金型に巻きつけたゴムシート上に巻きつけていくが、心線の巻き始めと巻き終わりの張力が不安定となり、これが原因で、ドラムの両端部のベルトについては、心線の張力の低い側にベルトが湾曲する為に、ベルトに湾曲が発生する。
【0003】
このように湾曲したベルトを使用すると、例えばVリブドベルトの場合は、プーリ溝にVリブが斜めに入るようになり、プーリ溝とVリブの干渉が起こり、発音が発生し、更にひどくなるとVリブのプーリ溝からの脱落が発生していた。
【0004】
これらのベルトの蛇行については、従来は目視で確認しており、少しでも蛇行が発生していると不合格とし、ベルトのスクラップ屑が多量に発生していた。
【0005】
又、ベルトの蛇行を検知、測定し、防止する方法として特許文献1に記載の方法があるが、装置が大掛かりになることと、費用が掛かることより、現実的ではなかった。
【0006】
【特許文献1】特開2004−359379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
又、現行の蛇行量の判定は目視でおこなっていたので、人による差があり、蛇行の判定基準もばらばらであった。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、ベルトの蛇行量を数値化することによって、蛇行量の判定において人による差をなくし、蛇行量の限度を設定することで適正検査とし、発音等の問題が発生せずなおかつ問題が発生しない程度の少量の蛇行量を有するベルトをスクラップにすることがなく、屑量を低減できる簡易でコストの掛からないベルトの蛇行測定方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ベルト蛇行量測定手段及びそれを使用したベルトの蛇行測定方法に係り、ベルトの蛇行量を測定する手段であって、少なくとも一つの固定されたプーリと、固定されていない第2プーリと、該第2プーリの水平又は鉛直からの角度を測定する為の指針と、指針の傾きを測定する為の測定具を有したベルト蛇行量測定手段にある。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記第2プーリの円周面には、前記ベルト幅と同幅の溝が刻設されている請求項1に記載のベルト蛇行量測定手段にある。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記ベルトが少なくとも伸張部と圧縮部を有し、該伸張部にはベルト長手方向に沿って心線を埋設したVリブドベルトである請求項1又は2に記載のベルト蛇行量測定手段にある。
【0012】
請求項4に記載の発明は、ベルトの蛇行量を測定する方法であって、少なくとも一方が固定されている一対のプーリにベルトを懸架するときに、固定されたプーリにベルトを懸けた後、ベルトの内周側に他方の第2プーリを鉛直方向に吊るし、該第2プーリの鉛直方向からの傾き角度或いは水平方向からの傾き角度を測定することによって、ベルトの蛇行量を測定するベルトの蛇行測定方法にある。
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記第2プーリの円周面には、前記ベルト幅と同幅の溝が刻設されている請求項4に記載のベルトの蛇行測定方法にある。
【0014】
また請求項6の発明は、前記ベルトが伸張部と圧縮部を有し、該伸張部にはベルト長手方向に沿って心線を埋設したVリブドベルトである請求項4又は5に記載のベルトの蛇行測定方法にある。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、ベルトの蛇行量を測定する手段であって、少なくとも一つの固定されたプーリと、固定されていない第2プーリと、該第2プーリの水平又は鉛直からの角度を測定する為の指針と、指針の傾きを測定する為の測定具を有したベルト蛇行量測定手段であることから、ベルトの蛇行量を数値化でき、蛇行量の判定において人による差をなくし、蛇行量の限度を設定することで適正検査とすることができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によると、前記第2プーリの円周面には、前記ベルト幅と同幅の溝が刻設されている請求項1に記載のベルト蛇行量測定手段であることから、ベルトがプーリから外れることがなく、正確にベルトの蛇行量を測定することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によると、前記ベルトが伸張部と圧縮部を有し、該伸張部にはベルト長手方向に沿って心線を埋設したVリブドベルトである請求項1又は2に記載のベルトの蛇行測定方法であることから、湾曲による蛇行でVリブとプーリ溝との干渉が起こり発音し易いVリブドベルトに特に効果がある。
【0018】
請求項4に記載の発明によると、ベルトの蛇行量を測定する方法であって、少なくとも一方が固定されている一対のプーリにベルトを懸架するときに、固定されたプーリにベルトを懸けた後、ベルトの内周側に他方の第2プーリを鉛直方向に吊るし、該第2プーリの鉛直方向からの傾き角度或いは水平方向からの傾き角度を測定することによって、ベルトの蛇行量を測定するベルトの蛇行測定方法であることから、ベルトの蛇行量を数値化でき、蛇行量の判定において人による差をなくし、蛇行量の限度を設定することで適正検査とすることができるという効果がある。
【0019】
請求項5に記載の発明によると、前記第2プーリの円周面には、前記ベルト幅と同幅の溝が刻設されている請求項4に記載のベルトの蛇行測定方法であることから、ベルトがプーリから外れることがなく、正確にベルトの蛇行量を測定することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明によると、前記ベルトが伸張部と圧縮部を有し、該伸張部にはベルト長手方向に沿って心線を埋設したVリブドベルトであることから、湾曲による蛇行でVリブとプーリ溝との干渉が起こり発音し易いVリブドベルトに特に効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は本発明の方法を用いる動力伝動用ベルトの一実施形態の断面斜視図である。図1は、動力伝動用ベルトの中でもVリブドベルト1を例示している。Vリブドベルト1は、カバー帆布3からなる伸張部2と、心線4を埋設した接着ゴム層5、その下側に弾性体層である圧縮部6からなっている。この圧縮部6は、ベルト長手方向に延びる断面略三角形である台形の複数のリブ7を有している。ここで、心線4と接するゴム層は接着ゴム層5を構成するゴム層をいう。
【0022】
本発明で使用する心線3は、例えばポリアリレート繊維、ポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維などのポリエステル繊維、アラミド繊維、ガラス繊維などのコードを用いることができる。ガラス繊維の組成は、Eガラス、Sガラス(高強度ガラス)のいずれでもよく、フィラメントの太さ及びフィラメントの収束本数及びストランド本数に制限されない。
【0023】
上記圧縮部6及び伸張部2には、天然ゴム、スチレン‐ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アルキル化クロロスルフォン化ポリエチレン、水素化ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩との混合ポリマー等のゴム材の単独、又はこれらの混合物に、例えばパラ系アラミド繊維(商品名:トワロン、ケプラー、テクノーラ)単独、或いはパラ系アラミド繊維とナイロンとの混合したものがゴム中に混入され、ベルト幅方向へ配向している。具体的には、パラ系アラミド繊維とナイロンとの混合したものがゴム中に混入され、ベルト幅方向へ配向している。この短繊維の添加量は、ゴム100質量部に対して5〜40質量部、好ましくは8〜15質量部である。
【0024】
接着ゴム層5には、上記短繊維を含めてもよいが、好ましくは含めない。
【0025】
カバー帆布3は織物、編物、不織布などから選択される繊維基材である。構成する繊維素材としては、公知公用のものが使用できるが、例えば綿、麻等の天然繊維や、金属繊維、ガラス繊維等の無機繊維、そしてポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリフロルエチレン、ポリアクリル、ポリビニルアルコール、全芳香族ポリエステル、アラミド等の有機繊維が挙げられる。織物の場合は、これらの糸を平織り、綾織、朱子織等することにより製織される。
【0026】
上記カバー帆布3は、公知技術に従って、RFL液に浸漬することが好ましい。またRFL液に浸漬後、未加硫ゴムをカバー帆布に擦り込むフリクションを行ったり、ゴムを溶剤に溶かしたソーキング液に浸漬処理することができる。尚、RFL液には適宜カーボンブラック液を混合して処理反を黒染めしたり、公知の界面活性剤を0.1〜5.0質量部加えても良い。
【0027】
本発明のベルト蛇行量測定手段は、まず、プーリ支持台を垂直に接合した基盤を床面に設置し、さらに、該基盤を水準器にて床面との水平度を調整する。そして、該支持台に少なくとも一つの第1プーリ8を固定し、さらに固定されていない第2プーリ9を準備する。ここで、第2プーリ9は錘としての機能も有する。そして、該第2プーリ9の水平又は鉛直からの角度を測定する為の指針13と、指針13の傾きを測定する為の測定具を準備する。該指針13は、プーリの中心点に設置するのが好ましい。
測定具は、指針13の背面に分度器を床面と垂直に設置されたプーリ支持台に固定して水平器を用いて正確に設置する。又、測定具としては、デジタル水平器を使用することもできる。
【0028】
本発明のベルト蛇行量測定手段は、ベルトとしては、25〜70インチの長さのベルト、Vリブドベルトに使用する場合は、2〜10リブに適用される。又使用される一例として、プーリ径は60mm、錘として使用する第2プーリは1.0kgfのものを使用するが、これに限られるものではない。
【0029】
ベルト蛇行量の測定方法は、少なくとも一つの固定された基準面11を有する第1プーリ8にベルトを該基準面11に当接して懸け、さらにベルト内周側に固定されていない第2プーリ9を載置する。該第2プーリ9はその略中央部に指針13を有し、該第2プーリ9が傾くと指針13も傾く。そして、床面に設置され、水準器にて床面と水平に設置された基盤と垂直に接合されたプーリ支持台に分度器を設置する。そしてその分度器によって、該指針13の水平面からの傾き角度或いは垂直方向からの傾き角度を読み取る。そして、その読み取った角度をベルトの蛇行量とし、一定値を超えると、そのベルトは蛇行ベルトとして不良品として廃棄される。該傾き角度はデジタル水平器を使用して測定しても良い。デジタル水平器を使用する場合の一例としては、デジタル社製のWYLERを使用する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る動力伝動用ベルトの断面斜視図である。
【図2】本発明のベルト蛇行量測定手段を示した概略図である。
【図3】本発明のベルト蛇行量測定手段を示した概略図で、ベルト蛇行量が大のベルトを懸けたときの図である。
【符号の説明】
【0031】
1 Vリブドベルト
2 伸張部
3 ベルト背面
4 心線
5 接着ゴム層
6 圧縮部
7 リブ
8 第1プーリ
9 第2プーリ
10 ベルト蛇行量測定手段
11 基準面
13 指針
15 分度器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトの蛇行量を測定する手段であって、少なくとも一つの固定された第1プーリと、固定されていない第2プーリと、該第2プーリの水平又は鉛直からの角度を測定する為の指針と、指針の傾きを測定する為の測定具を有したことを特徴とするベルト蛇行量測定手段。
【請求項2】
前記第2プーリの円周面には、前記ベルト幅と同幅の溝が刻設されている請求項1に記載のベルト蛇行量測定手段。
【請求項3】
前記ベルトが少なくとも伸張部と圧縮部を有し、該伸張部にはベルト長手方向に沿って心線を埋設したVリブドベルトである請求項1又は2に記載のベルト蛇行量測定手段。
【請求項4】
ベルトの蛇行量を測定する方法であって、少なくとも一方が固定されている一対のプーリにベルトを懸架するときに、固定された第1プーリにベルトを懸けた後、ベルトの内周側に他方の第2プーリを鉛直方向に吊るし、該第2プーリの鉛直方向からの傾き角度或いは水平方向からの傾き角度を測定することによって、ベルトの蛇行量を測定することを特徴とするベルトの蛇行測定方法。
【請求項5】
前記第2プーリの円周面には、前記ベルト幅と同幅の溝が刻設されている請求項4に記載のベルトの蛇行測定方法。
【請求項6】
前記ベルトが少なくとも伸張部と圧縮部を有し、該伸張部にはベルト長手方向に沿って心線を埋設したVリブドベルトである請求項4又は5に記載のベルトの蛇行測定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−292735(P2006−292735A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−70503(P2006−70503)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】