説明

ベンズイミダゾール誘導体

本発明は、式(I)の化合物
【化1】


(式中、
は、未置換であるか、又は1、2若しくは3個の置換基により置換されたアリールを表し、当該置換基は、(C1−4)アルキル、(C1−4)アルコキシ、ハロゲン及びトリフルオロメチルから成る群より独立に選択され;
は、水素又は−CO−R21を表し;
21は、(C1−5)アルキル、(C1−3)フルオロアルキル又は(C3−6)シクロアルキルを表し;
mは、整数の2又は3を表し;
pは、整数の2又は3を表し;そして
は、水素又は(C1−5)アルキルを表す。)
及びそのような化合物の薬学的に許容される塩に関する。これらの化合物は、カルシウムチャンネルブロッカーとして有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なベンズイミダゾール誘導体、及び慢性安定狭心症、高血圧、(腎臓及び心臓の)虚血、心房細動を含む不整脈、心肥大又はうっ血性心不全の治療又は予防における強力なカルシウムチャンネルブロッカーとしてのそれらの使用、これらの誘導体を含有する医薬組成物及びそれらの製造のための方法に関する。本発明のベンズイミダゾール誘導体はまた、単独で、又は医薬組成物中で、人及び他の哺乳類における腎臓病、糖尿病及びその合併症、高アルドステロン症、てんかん、神経因性疼痛又は癌の治療のために使用してもよい。
【背景技術】
【0002】
多くの心血管疾患は、心臓及び血管平滑筋細胞の細胞膜を介した、異常に上昇したカルシウムの流入の結果としてのカルシウム過負荷と関連づけられる。細胞外カルシウムがこれらの細胞内に入る3つの主要な経路がある:1)受容体―活性化型カルシウムチャンネル、2)リガンド依存型カルシウムチャンネル、3)電圧駆動型カルシウムチャンネル(VOCs)。
【0003】
VOCsは、6つの主要なカテゴリーに分類される:L(Long−lasting)、T(Transient)、N(Neuronal)、P(プルキンエ細胞)、Q(Pの後)及びR(Remaining又はResistant)。
【0004】
L型カルシウムチャンネルは、カルシウムの内側への移動を司り、心臓及び血管平滑筋細胞の収縮を引き起こすため、心血管系分野における、これらのチャンネルのブロッカーの適用が示唆される。このような見地から、L型カルシウムチャンネルは、60年代初期より、医療において用いられており、現在、収縮期拡張期高血圧及び狭心症の一次治療として推奨されている。
【0005】
T型カルシウムチャンネルは、冠状及び抹消脈管、洞結節及びプルキンエ繊維、脳、副腎等の種々の組織及び腎臓において見られる。この広範な分布は、T型カルシウムチャンネルが心血管保護作用を有し、睡眠障害、気分障害、うつ病、偏頭痛、高アルドステロン血症、早期分娩、尿失禁、アルツハイマー病等の脳老化又は神経変性障害に対し効果を有することを示唆する。
【0006】
Mibefradil(Posicor(登録商標))、最初のL型及びT型カルシウムチャンネルブロッカーは、主にLチャンネルを標的とするカルシウムチャンネルブロッカーに対し優位な効果を示した。Mibefradilは、Lチャンネルブロッカーでよく見られる、変力作用、反射性頻脈、血管収縮性ホルモンの分泌又は末梢性浮腫等の好ましくない副作用を示すことなく、高血圧及び狭心症の治療に用いられた。加えて、mibefradilは、潜在的な心筋保護効果(Villame、Cardiovascular Drugs and Therapy 15、41−28、2001;Ramires、J Mol Cell Cardiol 30、475−83、1998)、腎保護作用(Honda、Hypertension 19、2031−37、2001)を示し、また、心不全の治療において有効な効果を示した(Clozel、Proceedings Association American Physicians 111、429−37、1999)。
【0007】
このようなプロファイルを持つ化合物に対する大きな需要にもかかわらず、許容できないCYP 3A4薬物間相互作用のため、mibefradilは、1998年に(上市から1年後)市場から回収された。さらに、ECG異常(すなわち、QT延長)及びMDR−1介在ジゴキシン流出との相互作用も報告された(du Souich、Clin Pharmacol Ther 67、249−57、2000;Wandel、Drug Metab Dispos 28、895−8、2000)。
【0008】
T/L型カルシウムチャンネルブロッカーとして作用するが、mibefradilよりも改善された安全性を有する新規化合物に対する需要が明らかに存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の化合物は、強力なT/Lチャンネルブロッカーであり、従ってT及びLの両チャンネルが関与する疾病において有用である。
【0010】
i) 本発明の第一の態様は、式(I)のベンズイミダゾール誘導体から成る。
【0011】
【化1】

【0012】
式中、
は、未置換であるか、又は1、2若しくは3個の置換基により置換されたアリールを表し、当該置換基は、(C1−4)アルキル、(C1−4)アルコキシ、ハロゲン及びトリフルオロメチルから成る群より独立に選択され;
は、水素又は−CO−R21を表し;
21は、(C1−5)アルキル、(C1−3)フルオロアルキル又は(C3−6)シクロアルキルを表し;
mは、整数の2又は3を表し;
pは、整数の2又は3を表し;そして
は、水素又は(C1−5)アルキルを表す。
【0013】
以下の段落では、本発明の化合物の種々の化学的部分の定義をしており、他の表現によりなされた定義が、より広い又はより狭い定義を与えない限り、当該定義は、本明細書及び請求項を通じて、一律に適用されることを意図している。
【0014】
「(C1−5)アルキル」という用語は、1〜5個の炭素原子を持つ直鎖又は分岐鎖アルキル基を意味する。好ましくは、1〜4個の炭素原子を持つ基である。「(Cx−y)アルキル」(x及びyは整数である。)という用語は、x〜y個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐鎖アルキル基を意味する。(C1−5)アルキル基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert.−ブチル、イソブチル、n−ペンチル及びイソペンチルである。好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル及びイソプロピルである。最も好ましくは、メチルである。置換基R21としては、イソプロピルが最も好ましい。
【0015】
「(C1−3)フルオロアルキル」という用語は、1〜7個のフッ素原子で置換された、直鎖又は分岐鎖(C1−3)アルキル基を意味する。(C1−3)フルオロアルキル基の例は、トリフルオロメチル、2−フルオロエチル、2,2−ジフルオロエチル、2,2,2−トリフルオロエチル及びペンタフルオロエチルである。好ましくは、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル及びペンタフルオロエチルである。最も好ましくはトリフルオロメチルである。置換基R21としては、2,2,2−トリフルオロエチルが最も好ましい。
【0016】
「(C3−6)シクロアルキル」という用語は、3〜6個の炭素原子を持つ、飽和環状アルキル基を意味する。(C3−6)シクロアルキル基の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルである。置換基R21としては、シクロプロピルが最も好ましい。
【0017】
「(C1−5)アルコキシ」という用語は、用語(C1−5)アルキルが、前記の意味を有する式(C1−5)アルキル−O−の基を意味する。用語「(Cx−y)アルコキシ」(x及びyは整数である。)は、x〜y個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐鎖アルコキシ基を意味する。(C1−5)アルコキシ基の例は、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ及びtert.−ブトキシである。好ましくは、メトキシ及びエトキシである。
【0018】
「ハロゲン」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨード、特にフルオロ又はクロロを意味する。
【0019】
「アリール」という用語は、フェニル又はナフチル基を意味する。好ましくはフェニル基である。アリール基は、未置換であっても、1、2又は3個の置換基により置換されていてもよく、当該置換基は、(C1−4)アルキル、(C1−4)アルコキシ、ハロゲン及びトリフルオロメチルから成る群より独立に選択される。亜態様において、アリール基は、好ましくは未置換である。「アリール」基の例は、フェニル、ナフチル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、2−メトキシフェニル、3−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、2,3−ジメトキシフェニル、3,4−ジメトキシフェニル、2−フルオロフェニル、3−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、3,4−ジフルオロフェニル、3−クロロフェニル、2,3−ジクロロフェニル、3,4−ジクロロフェニル、2−トリフルオロメチルフェニル、3−トリフルオロメチルフェニル及び4−トリフルオロメチルフェニルである。好ましくはフェニルである。
【0020】
以下に、本発明のさらなる態様を記載する:
ii) 本発明のさらなる態様は、架橋シクロヘキセン部分の配置が、R−O−置換基とシクロヘキセン部分の架橋−(CH−が、cisの関係にあるような(すなわち、絶対配置が、下記の式(IE1)又は式(IE2)に示されるような)、態様i)に従う式(I)の化合物に関する。
【0021】
iii) 本発明のさらなる態様は、絶対配置が、式(IE1
【0022】
【化2】

【0023】
に示されるような、態様i)に従う式(I)の化合物に関する。
【0024】
iv) 本発明のさらなる態様は、絶対配置が、式(IE2
【0025】
【化3】

【0026】
に示されるような、態様i)に従う式(I)の化合物に関する。
【0027】
v) 本発明のさらなる態様は、Rが未置換のフェニルを表す、態様i)〜iv)のいずれか1項に従う式(I)の化合物に関する。
【0028】
vi) 本発明のさらなる態様は、pが整数の2を表す、態様i)〜v)のいずれか1項に従う式(I)の化合物に関する。
【0029】
vii) 本発明のさらなる態様は、pが整数の3を表す、態様i)〜v)のいずれか1項に従う式(I)の化合物に関する。
【0030】
viii) 本発明のさらなる態様は、Rが−CO−R21を表す、態様i)〜vii)のいずれか1項に従う式(I)の化合物に関する。
【0031】
ix) 本発明のさらなる態様は、R21が、(C1−5)アルキル又は(C3−6)シクロアルキルを表す、態様i)〜viii)のいずれか1項に従う式(I)の化合物に関する。
【0032】
x) 本発明のさらなる態様は、R21が、(C1−5)アルキル(特に、イソプロピル)を表す、態様i)〜ix)のいずれか1項に従う式(I)の化合物に関する。
【0033】
xi) 本発明のさらなる態様は、Rが水素を表す、態様i)〜vii)のいずれか1項に従う式(I)の化合物に関する。
【0034】
xii) 本発明のさらなる態様は、mが、整数の3を表す、態様i)〜xi)のいずれか1項に従う式(I)の化合物に関する。
【0035】
xiii) 本発明のさらなる態様は、Rが水素を表す、態様i)〜xii)のいずれか1項に従う式(I)の化合物に関する。
【0036】
xiv) 本発明のさらなる態様は、Rが、(C1−5)アルキル(特にメチル)を表す、態様i)〜xii)のいずれか1項に従う式(I)の化合物に関する。
【0037】
式(I)の化合物は、不斉炭素原子等のキラル又は不斉中心を含む。従って、式(I)の化合物は、立体異性体の混合物として、又は、好ましくは純粋な立体異性体として存在してもよい。立体異性体の混合物は当業者に知られた方法で分離してもよい。
【0038】
式(I)の好ましい化合物の例は、下記の化合物から成るより選択される:
(1R,2R,4R)−2−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−オール((1R,2R,4R)−2−(2−{[3−(4,7−Dimethoxy−1H−benzoimidazol−2−yl)−propyl]−methyl−amino}−ethyl)−5−phenyl−bicyclo[2.2.2]oct−5−en−2−ol);
(1S,2S,4S)−2−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−オール;及び
(1R,5R,6R)−6−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−8−フェニル−ビシクロ[3.2.2]ノン−8−エン−6−オール。
【0039】
加えて、態様i)に従う、式(I)のさらなる好ましい化合物は、下記の化合物から成る群より選択される:
イソ酪酸(1R,2R,4R)−2−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イルエステル;
イソ酪酸(1S,2S,4S)−2−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イルエステル;及び
イソ酪酸(1R,5R,6R)−6−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−8−フェニル−ビシクロ[3.2.2]ノン−8−エン−6−イルエステル。
【0040】
立体異性体の相対配置は以下のように示される:例えば、イソ酪酸(1R,5R,6R)−6−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−8−フェニル−ビシクロ[3.2.2]ノン−8−エン−6−イルエステルは、
イソ酪酸(1R,5R,6R)−6−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−8−フェニル−ビシクロ[3.2.2]ノン−8−エン−6−イルエステル、
イソ酪酸(1S,5S,6S)−6−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−8−フェニル−ビシクロ[3.2.2]ノン−8−エン−6−イルエステル、
又はこれらの2種のエナンチオマーの混合物を意味する。
【0041】
化合物、塩、医薬組成物、疾病等について複数形が使用される場合は、単数の化合物、塩等をも意味することが意図されている。
【0042】
式(I)、(IE1)及び/又は(IE2)の化合物に対するいかなる言及も、適宜かつ好都合に、そのような化合物の塩(及び、特に、薬学的に許容される塩)にも言及しているものと理解されるべきである。
【0043】
「薬学的に許容される塩」という用語は、無毒性の無機若しくは有機酸及び/又は塩基付加塩を意味する。「Salt selection for basic drugs」、Int. J. Pharm.(1986)、33、201−217を参照してもよい。
【0044】
式(I)、(IE1)及び/又は(IE2)の化合物及びこれらの化合物の薬学的に許容される塩は、医薬として、例えば経腸又は非経口投与のための医薬組成物の形態で使用することができる。
【0045】
医薬組成物の製造は、いずれの当業者によく知られた様式で(例えば、Remington、The Science and Practice of Pharmacy、21st Edition(2005)、Part 5、「Pharmaceutical Manufacturing」[published by Lippincott Williams & Wilkins]を参照されたい。)、記述された式(I)の化合物又はこれらの薬学的に許容される塩を、任意にその他の治療的に有益な物質と組み合わせて、適切な無毒の不活性な薬学的に許容される固体又は液体の担体材料及び、必要に応じて通常の薬学的アジュバントと共に、製剤投与形態とすることにより遂行することができる。
【0046】
式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩は、
−慢性安定狭心症、高血圧、(腎臓及び心臓の)虚血、心房細動を含む不整脈、心肥大又はうっ血性心不全の治療又は予防のための医薬の製造において有用である。
【0047】
さらにまた、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩は、以下の疾病群の単独の疾病又はそれらの任意の組み合わせのための、以下の目的の医薬の製造に有用である:
−人及び他の哺乳類における腎臓病、糖尿病及びその合併症、高アルドステロン症、てんかん、神経因性疼痛又は癌の治療用;
−抗細動薬、抗喘息薬、抗動脈硬化薬、肺バイパス用心停止液の添加剤、血栓溶解療法の補助薬としての、抗凝集薬としての、又は、不安定性狭心症の治療薬としての使用のため;
−高血圧、特に、門脈圧亢進、エリスロポエチンによる治療に続発する高血圧及び低レニン性高血圧の治療又は予防のため;
−低酸素性又は虚血性疾患における使用、又は、例えば、(例えば、心肺バイパス手術後に起こる)心、腎及び脳虚血及び再灌流、冠動脈及び脳血管れん縮等の治療のための抗虚血薬としての使用、抹消血管疾患(例えば、レイノー病、間欠は行、高安病)、疼痛クリーゼの初発及び/又は進展を含む鎌状赤血球症の治療における使用のため;
−急性及び慢性腎不全、糖尿病性ネフローゼ、高血圧によるネフローゼ、糸球体傷害、老化又は透析に関連する腎障害、腎硬化症、造影剤及びシクロスポリンに関連する腎毒性、腎虚血、原発性膀胱尿管逆流症又は糸球体硬化症を含む、腎、糸球体及びメサンギウム細胞機能に関連する疾患の治療又は予防のため;
−心筋梗塞の治療、心肥大、原発性及び二次性肺高血圧症の治療、繊維化の阻害、左心室肥大、リモデリング及び不全の阻害を含むうっ血性心不全、又は血管形成術若しくはステント後の再狭窄の治療における使用のため;
−内毒血症若しくはエンドトキシンショック、又は出血性ショックの治療のため;
−生殖器、特に海綿体への血流を改善することによる、男性(例えば、糖尿病、脊髄損傷、前立腺全摘除、心理的要因及び他の原因による勃起不全)及び女性双方における性機能障害の治療のため;
−癌又は細胞増殖に関連する臓器障害の予防及び/若しくは縮小のため;
−代謝障害又は慢性炎症性疾患、インスリン依存性又は非インスリン依存性糖尿病及びその合併症(例えば、神経障害、網膜症)、高アルドステロン症、骨リモデリング、乾癬、関節炎、関節リウマチ、変形性関節症サルコイドーシス又は湿疹性皮膚炎の治療のため;
−肝毒性及び突然死、合併症(例えば、肝毒性、繊維化、硬変)を含む初期及び進行肝疾患及び障害、血管外皮細胞腫に起因する高血圧等の腫瘍の有害な影響、尿路及び/又は膀胱の痙攣性疾患、肝腎症候群、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、混合型クリオグロブリン血症等の血管炎に関連する免疫疾患、腎不全及び肝毒性に関連する繊維化の治療のため;
−潰瘍性大腸炎、クローン病、胃粘膜損傷、潰瘍炎症性腸疾患及び虚血性腸疾患等の胃腸疾患、胆管炎等の胆嚢若しくは胆管に基づく疾患、膵炎、細胞増殖の制御、前立腺肥大症又は移植における使用のため、又は止痢薬としての使用のため;
−気管支収縮に関連する疾患、又は閉塞性肺疾患及び成人窮迫症候群等の慢性若しくは急性の炎症性障害の治療のため;
−神経因性疼痛、末梢性の痛み、及び前立腺癌又は骨癌に関連する痛み等の癌に関連する痛みを含む痛みの緩和のため;
−脳梗塞、一過性脳虚血発作、偏頭痛及びクモ膜下出血等の中枢神経系血管障害、中枢神経系行動障害の治療、アルツハイマー型痴呆、老人性痴呆及び血管性痴呆等を含む痴呆、てんかん又は睡眠障害の治療のため;又は
−上記の使用の結果としての一般罹患率及び/又は死亡率の減少のため。
【0048】
本発明はまた、薬学的に活性な量の式(I)の化合物を対象に投与することを含む、ここに言及した疾患又は障害の予防又は治療のための方法に関する。
【0049】
さらに、式(I)の化合物はまた、好ましくは、スタチン等の高脂血症薬、クマリン等の抗凝固薬、クロピドグレル等の抗血栓薬、β−ブロッカー及び他の心保護薬から選択される1又は2以上の薬剤と組み合わせて使用してもよい。
【0050】
さらに、式Iの化合物(化合物自体、それらの塩、当該化合物又はそれらの塩を含む組成物、当該化合物又はそれらの塩の使用、その他であるかを問わない)に対して示された好適性は、式(IE1)及び/又は式(IE2)の化合物に準用され、その逆も可である。
【0051】
式(I)の化合物の製造:
本発明の更なる側面は、本発明の式(I)の化合物の製造のための方法である。得られた化合物はまた、それ自体知られた方法で、その薬学的に許容される塩に変換してもよい。
【0052】
一般的に、すべての化学的変換は、文献に記載され、又は以下のスキーム1〜3に要約される手順に記載される、よく知られた標準的な方法に従って行われる。別段の記載が無ければ、包括的な基又は整数、R、R、R及びmは、式(I)に対して定義した通りである。使用される他の略語は、実験の部に定義される。幾つかの場合においては、包括的な基、R、R、Rは、下記のスキームに図示した製法に適合しないため、保護基(PG)の使用が必要となる。保護基の使用は、技術分野においてよく知られている(例えば、「Protective Groups in Organic Synthesis」、T.W.Greene、P.G.M. Wuts、Wiley−Interscience、1999を見よ。)。この議論の目的のために、そのような必要な保護基が適切に導入されているものと仮定する。
【0053】
式(I)の化合物は、以下のスキーム1に概説される手順に従って製造される。
【0054】
がHを表す式(I)の化合物は、エタノール、メタノール、THF若しくは水等の溶媒中、rtにて、LiOH若しくはNaOH等の標準的な塩基性条件を用いて、又は、エタノール、メタノール、THF、DCM若しくは水等の溶媒中、rtにてaq.HCl又はTFA等の標準的な酸性条件を用いて、エステルKのけん化により製造することができ、酸誘導体1.1を与える。次いで、NEt又はDIPEA等の塩基の存在下、THF、DCM又はDMF等の溶媒中、好ましくはrtで、EDC、HOBt又はPyBOP等の標準的なカップリング試薬を用いて、この酸をベンズイミダゾール誘導体BBとカップリングすることにより、アミド誘導体1.2が得られる。次いで、トルエン等の適宜な溶媒中、0℃とrtの間の温度にて、LiAlH又はRed−Al等の標準的な還元剤を用い、アミド1.2は還元され、RがHを表す所望の式(I)の化合物を与える。
【0055】
【化4】

【0056】
がHを表す式(I)の化合物のアルコールは、必要であれば、MgBr等のルイス酸の存在下、又はNEt等の塩基の存在下、DCM又はTHF等の不活性溶媒中、0℃と65℃の間の温度にて、酸塩化物、酸無水物、クロロフォーメート、イソシアネート又はカルバモイルクロリド等の標準的な試薬を用いてアシル化することができ、Rが−COR21を表す式(I)の化合物を与える。
【0057】
中間体Kは、スキーム2に従って製造される。ジケトン2.1及びモノ保護ケトン2.2は、既知の方法に従って製造することができる(Can.J.Chem.1992、70、974−980、Can.J.Chem.1968、46、3713−17、JOC 1978、43、4648−4650)。
【0058】
【化5】

【0059】
EtO又はTHF等の適宜な溶媒中における、−78℃とrtの間の温度での、フェニルマグネシウムブロミド等のGrignard試薬又はリチウム化試薬(対応する臭素化化合物から、例えばブチルリチウムを用いて、標準的な反応条件を用いて製造。)等の求核試薬による、ケトン2.2のアルキル化により、アルコール2.3が得られる。
【0060】
アルコール誘導体2.3のケタールの加水分解、及び、アセトン等の適宜な溶媒中における、好ましくはrtでの、TsOH等の標準的な脱水試薬及び手順を用いた、続く水の除去により、ケトン2.4が得られる。
【0061】
あるいは、この脱保護/脱離反応は、二工程で行うこともできる。アルコール誘導体2.3のケタールは、TsOH等のプロトン性条件を用いて、アセトン等の溶媒中、rtにて、上記のように加水分解され、ケトン誘導体2.5を与える。水の脱離は、Ms−Cl等の標準的な条件を用いて、NEt等の塩基の存在下、DCM等の適宜な溶媒中、0℃とrtの間の温度にて、又はBurgess試薬を用いて、THF等の適宜な溶媒中、0℃とrtの間の温度にて行うことができ、ケトン誘導体2.4を与える。
【0062】
別の変形においては、Grignard試薬等の適宜な求核試薬により、EtO又はTHF等の標準的な溶媒中、約0℃の温度にて、ジケトン2.1は、直接ケトン誘導体2.5に選択的にモノアルキル化される。次いで、上記と同じ条件を適用して、水の除去を行うことができる。
【0063】
−50℃とrtの間の温度における、Grignard試薬、又は酢酸リチウム化tert.−ブチル(トルエン−THF又はヘキサン−THF等の適宜な溶媒混合物中、−50℃の温度にて、tert.−ブチルブロモアセテート、n−ブチルリチウム及びDIPAを用いて、in situで製造。)のようなリチウム化アルキル基等の求核試薬の添加により、ケトン誘導体2.4は、所望の重要な中間体Kに変換される。
【0064】
ベンズイミダゾール誘導体BB(スキーム1)の合成を、スキーム3に概説する。標準的な手順に従って、又は、下記の実験の部に記載された方法に従って、例えば、1,4−ジメトキシ−2,3−ジニトロ−ベンゼンから合成される、適宜に置換されたジアニリン誘導体3.1(Eur.J.Org.Chem.2006、2786−2794)は、DIPEA、NEt、DMAP等の塩基の存在下、THF、DCM等の溶媒中で、rtにて、標準的なカップリング試薬、及びEDC/HOBt等の条件を用いて、そのように保護された購入可能なN−アルキルアミノ−アルカン酸誘導体とカップリングされ、PGが、Cbz又はBOC等のアミノ保護基を意味するアニリン誘導体3.2を与える。好ましくはマイクロ波条件下で、3.2を、ニートで、又はトルエン若しくは酢酸等の適宜な溶媒中で、約150℃に加熱することにより、保護されたアミノアルキル ベンズイミダゾール誘導体3.3が得られる。任意に、Rがアルキルの場合には、NaH又はKCO等の塩基の存在下、アセトン、DMF又はTHF等の溶媒中、約0℃の温度にて、適宜なアルキルハロゲニドを用いたアルキル化等の標準的な反応を用いて、置換基を導入することができる。標準的な脱保護手順(PG=Cbzに対しては水素化;PG=BOCに対してはTFA又はHCl)を用いた脱保護により、所望のアミノアルキル ベンズイミダゾール誘導体BBが得られる。
【0065】
【化6】

【0066】
式(I)の化合物がエナンチオマーの混合物の形態で得られる場合には常に、エナンチオマーは、当業者に知られた方法、例えばジアステレオマー塩の形成及び分離、又はRegis Whelk−O1(R,R)(10μm)カラム、Daicel ChiralCel OD−H(5−10μm)カラム、又はDaicel ChiralPak IA(10μm)若しくはAD−H(5μm)カラム等のキラル固定相上のHPLC、を用いて分離することができる。キラルHPLCの典型的な条件は、0.8から150mL/分の流速における、溶出液A(EtOH。NEt、ジエチルアミン等のアミンの存在下又は非存在下で)及び溶出液B(ヘキサン)の無勾配混合物である。
【0067】
実験の部
以下の実施例は本発明を説明するが、その範囲をまったく限定するものではない。
【0068】
温度はすべて℃で示した。化合物は、H−NMRによって(400MHz)又は13C−NMR(100MHz)(Bruker;化学シフトは、使用する溶媒と関連して、ppmで示してある;多重度:s=一重項、d=二重項、t=三重項、q=四重項、p=五重項、hex=六重項、hept=七重項、m=多重項、b=広域、結合定数はHzで示してある。);LC−MS(HP 1100 Binary Pump及びDADを備えたFinnigan Navigator、カラム:4.6x50mm、Zorbax SB−AQ、5μm、120Å、勾配:5〜95%のアセトニトリルの水溶液、1分、0.04%のトリフルオロ酢酸を含む、流速:4.5mL/分)により、tは、分で示してある;TLCによって(MerckからのTLC−プレート、Silica gel 60 F254);又は融点によって特徴付けてある。化合物は、分取用HPLCによって(カラム:X−terra RP18、50×19mm、5μm、勾配:0.5%のギ酸を含む10〜95%のアセトニトリルの水溶液)又はシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーによって精製される。ラセミ体は、分取用HPLC(好ましい条件:Daicel、ChiralCel OD 20x250mm、10μm、ヘキサン中4%エタノール、流速:10−20mL/min)によってそのエナンチオマーに分離することができる。
【0069】
(この項において、又は明細書のこれまでの部分において使用される)略語:
aq. 水性
Ac アセチル
anh. 無水
Boc tert−ブトキシカルボニル
BSA ウシ血清アルブミン
Bu ブチル
Cbz ベンジルオキシカルボニル
CC シリカゲル上カラムクロマトグラフィー
Burgess試薬 (メトキシカルボニルスルファモイル)トリエチル
アンモニウムヒドロキシド
d 日
DCM ジクロロメタン
dil. 希釈した
DIPA ジイソプロピルアミン
DIPEA N,N−ジイソプロピルエチルアミン、Huenigの塩基、
エチル−ジイソプロピルアミン
DMAP 4−ジメチルアミノピリジン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
EDC N−(3−ジメチルアミノプロピル)−
N’−エチルカルボジイミド
eq. 当量
Et エチル
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
EtO ジエチルエーテル
h 時間
Hept ヘプタン
Hex ヘキサン
HOBT 1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
LC−MS 液体クロマトグラフィー−質量分析
Me メチル
MeCN アセトニトリル
MeOH メタノール
min 分
Ms メタンスルホニル
NEt トリエチルアミン
Pd/C 炭素上パラジウム
prep. 分取用
PyBOP ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−
ピロリジノ−ホスホニウム−ヘキサフルオロ−ホスファート
sat. 飽和
tert.− 三級(tert.−ブチル=t−ブチル=三級ブチル)
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TLC 薄層クロマトグラフィー
Red−Al 水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム
rt 室温
保持時間
Ts p−トルエンスルホニル
TsOH パラ−トルエンスルホン酸
【0070】
中間体の合成
重要な中間体Kの製造のための一般的手順:
ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イル又はビシクロ[3.2.2]ノン−8−エン−6−イル誘導体である重要な中間体K1A及びK2Aは、相対配置(R,R,R)を持つ主ラセミ体(すなわち、シクロヘキセン部分の架橋−(CH−が、ヒドロキシである基−ORに対してcisである。)と、それぞれ相対配置(R,S,R)又は(R,R,S)を持つ副ラセミ体(すなわち、シクロヘキセン部分の架橋−(CH−(式中、pは、それぞれ2又は3を表す。)が、ヒドロキシである基−ORに対してtransである。)の混合物として得られる。主及び副ラセミ体は、手順A1.5において、重要な中間体K1Aに対して記載したように分離することができる。別段の記載が無い限り、主ラセミ体のみが単離され、下記の実施例の製造において用いられる。
【0071】
K1A:rac−(1R,2R,4R)−(2−ヒドロキシ−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イル)−酢酸 tert.−ブチルエステル
K1A.1(手順A1.1):rac−(1R,4R)−ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,5−ジオン
25mLの2−(トリメチルシリルオキシ)−1,3−シクロヘキサジエンと13mLのα−アセトキシアクリロニトリルを混合し、封止した容器中で、150℃にて、22h加熱した。得られた暗オレンジ色の粘ちょうな油状物を、200mLのMeOHに溶解した。2.2gのナトリウムメトキシドの、150mLのMeOH中の溶液を滴下した後、反応混合物を、rtにて3h攪拌し、氷/水中に注ぎ、DCMで抽出した。有機相を真空濃縮し、粗製残渣を、EtOAc−Hept(1:2)を用いたCCにより精製し、7.9gのrac−(1R,4R)−ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,5−ジオンを得た。LC−MS:t=0.44min。
【0072】
K1A.2(手順A1.2):rac−(1R,4R)−スピロ[ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,2’−[1,3]ジオキソラン]−5−オン
120mLのトルエンに溶解した、4.0gのrac−(1R,4R)−ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,5−ジオン(中間体K1A.1)に、1.7mLのエチレングリコール及び0.27gのTsOHを添加し、溶液を、激しく攪拌しながら、3.5h還流加熱した。反応混合物をrtに冷却し、飽和aq.NaHCOでクェンチし、EtOで抽出し、そして有機相を蒸発させた。粗生成物を、Hex−EtOAc(7:3)を用いたCCにより精製し、2.41gのrac−(1R,4R)−スピロ[ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,2’−[1,3]ジオキソラン]−5−オンを、黄色の油状物として得た。LC−MS:t=0.64min;[M+H+CHCN]:224.35。
【0073】
K1A.3(手順A1.3):rac−(7R,8R,10R)とrac−(7R,8S,10R)−7,10−(1,2−エチレン)−8−フェニル−1,4−ジオキサ−スピロ[4.5]デカン−8−オールの混合物
2.41gのrac−(1R,4R)−スピロ[ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,2’−[1,3]ジオキソラン]−5−オン(中間体K1A.2)の、80mLのEtO中の溶液に、14.5mLのフェニルマグネシウムブロミド溶液(EtO中1M)を10minに渡って滴下した。反応混合物をrtにて4h攪拌した。次いで、混合物を氷で注意深くクェンチし、8mLの2N HClを添加し、そして相を分離した。有機相を蒸発させ、粗生成物を、Hept−EtOAC(7:3)を用いたCCにより精製し、0.37gの7,10−(1,2−エチレン)−8−フェニル−1,4−ジオキサ−スピロ[4.5]デカン−8−オールを、無色の油状物として得た。(CCによるジアステレオマーの分離は可能であるが、記載がある場合にのみ行った。)LC−MS:t=0.84min;[M−HO+H]:243.34。
【0074】
K1A.4(手順A1.4):rac−(1R,4R)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−オン
0.54gの7,10−(1,2−エチレン)−8−フェニル−1,4−ジオキサ−スピロ[4.5]デカン−8−オール(中間体K1A.3)の、20mLのアセトン中の溶液に、200mgのTsOHを添加し、次いで、混合物をrtにて2日間攪拌した。反応混合物を、sat.aq.NaHCOでクェンチし、EtOACで抽出し、有機相を蒸発させた。粗生成物を、Hept−EtOAC(7:3)を用いたCCにより精製し、0.34gのrac−(1R,4R)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−オンを、無色の油状物として得た。LC−MS:t=0.93min;[M+H+CHCN]:240.11。
【0075】
K1A.5(手順A1.5):rac−(1R,2R,4R)−(2−ヒドロキシ−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イル)−酢酸 tert.−ブチルエステル及びrac−(1R,2S,4R)−(2−ヒドロキシ−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イル)−酢酸 tert.−ブチルエステル
0.51mLのDIPAの、0.5mLのTHF中の溶液に、2.2mLのn−ブチルリチウム(Hex中1.6M)を−20℃にて滴下した。10min後、0.5mLのトルエンを添加し、溶液を30min攪拌した。混合物を−50℃に冷却し、0.73mLのtert.−ブチルアセテートを添加し、攪拌を、−50℃にて1h継続した。次いで、1mLのTHFに溶解した、0.32gのrac−(1R,4R)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−オン(中間体K1A.4)を添加し、溶液を、−50〜−20℃にて、2.5hに渡って攪拌した。反応混合物を、氷/aq.HClに注ぎ、有機相を分離し、洗浄し、蒸発させた。粗製反応生成物を、Hept−EtOAc(9:1)を用いたCCにより精製し、0.30gの主ラセミ体、rac−(1R,2R,4R)−2−ヒドロキシ−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イル)−酢酸 tert.−ブチルエステルを、白色の固体として、そして0.07gの副ラセミ体、rac−(1R,2S,4R)−2−ヒドロキシ−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イル)−酢酸 tert.−ブチルエステルを、無色の油状物として得た。
【0076】
LC−MS(主ラセミ体):t=1.06min;[M−(CH−HO+H]:241.11。LC−MS(副ラセミ体):t=1.05min;[M+H]:315.18。
【0077】
K1A.6:(1S,2S,4S)−(2−ヒドロキシ−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イル)−酢酸 tert.−ブチルエステル及び(1R,2R,4R)−(2−ヒドロキシ−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イル)−酢酸 tert.−ブチルエステル
rac−(1R,2R,4R)−(2−ヒドロキシ−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イル)−酢酸 tert.−ブチルエステルを、分取用キラルHPLCを用いて、それぞれのエナンチオマーに分離した。(カラム:Daicel ChiralPak AD−H、20x250mm、5μm;Hex/EtOH 95:5、流速16mL/min)。
【0078】
キラル分析用HPLC(Daicel ChiralPak AD−H、4.6x250mm、5μm;Hex/EtOH 95:5、流速0.8mL/min):
エナンチオマーA:t=6.70min。
エナンチオマーB:t=7.93min。
【0079】
K2A:rac−(1R,5R,6R)−(6−ヒドロキシ−8−フェニル−ビシクロ[3.2.2]ノン−8−エン−6−イル)−酢酸 tert.−ブチルエステル
K2A.1(手順A1.6):rac−(1R,5R,8R)とrac−(1R,5R,8S)−8−ヒドロキシ−8−フェニル−ビシクロ[3.2.2]ノナン−6−オンの混合物
1.4gのrac−(1R,5R)−ビシクロ[3.2.2]ノナン−6,8−ジオン(既知の手順に従って製造:Can.J.Chem.1968、46、3713−3717)の、45mLのEtO中の懸濁液に、10.3mLのフェニルマグネシウムブロミド溶液(THF中1M)を、0℃にて15min間に、連続的に添加し、そして混合物を、rtにて2h攪拌した。次いで、反応混合物を0℃に冷却し、氷−水でクェンチし、aq.HClで酸性化し、そしてEtOで抽出した。有機相を塩水(brine)で洗浄し、MgSO上で乾燥し、そして真空濃縮して、粗製の表題化合物を黄色の油状物として得た。LC−MS:t=0.79min;[M+H+CHCN]:272.33。
【0080】
K2A.2(手順A1.7):rac−(1R,5R)−8−フェニル−ビシクロ[3.2.2]ノン−8−エン−6−オン
上記の粗製8−ヒドロキシ−8−フェニル−ビシクロ[3.2.2]ノナン−6−オン(中間体K2A.1)を55mLのアセトンに溶解し、1.7gのTsOHを添加し、そして混合物をrtにて一晩攪拌した。3.5gのTsOHをさらに添加し、そして攪拌をさらに5h続けた。次いで、反応混合物をEtOAcで希釈し、有機相をsat.aq.NaHCOで洗浄し、そして溶媒を蒸発させた。粗製物質を、Hept−EtOAc(4:1)を用いてCCで精製して、0.9gのrac−(1R,5R)−8−フェニル−ビシクロ[3.2.2]ノン−8−エン−6−オンを黄色がかった油状物として得た。LC−MS:t=0.99min;[M+H]:213.11。
【0081】
K2A.3:rac−(1R,5R,6R)−(6−ヒドロキシ−8−フェニル−ビシクロ[3.2.2]ノン−8−エン−6−イル)−酢酸 tert.−ブチルエステル
rac−(1R,5R)−8−フェニル−ビシクロ[3.2.2]ノン−8−エン−6−オン(中間体K2A.2)から、手順A1.5を用いて製造。LC−MS(主たるラセミ体):t=1.11min;[M−(CH−HO+H]:254.02。
【0082】
BB. [3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミン
BB.1 3,6−ジメトキシ−ベンゼン−1,2−ジアミン
6.0gの1,4−ジメトキシ−2,3−ジニトロ−ベンゼン(Eur.J.Org.Chem.2006、2786−2794)を220mLのEtOHに溶解し、Nで3回脱気し、そして600mgの10wt%Pd/Cを添加することにより、3,6−ジメトキシ−ベンゼン−1,2−ジアミンを合成した。反応液を、H雰囲気(バルーン)下で攪拌した。2日後に、300mgの10wt%Pd/Cをさらに添加し、そして混合物をさらに24h攪拌した。セライトのパッド上でのろ過、そしてEtOH及びEtOAcを用いた洗浄により、真空濃縮の後、4.3gの3,6−ジメトキシ−ベンゼン−1,2−ジアミンを、黒色の固体として得た。LC−MS:t=0.48min;[M+H]:169.09。
【0083】
BB.2 [3−(2−アミノ−3,6−ジメトキシ−フェニルカルバモイル)−プロピル]−メチル−カルバミン酸 ベンジルエステル
3.1gの4−(ベンジルオキシカルボニル−メチル−アミノ)−酪酸の、80mLのDCM中の溶液に、6.5mLのDIPEA、1.8gのHOBt、2.6gのEDC及び154mgのDMAPを添加した。10min攪拌した後、20mLのDCMに溶解した、2.1gの3,6−ジメトキシ−ベンゼン−1,2−ジアミンを添加し、そして混合物をrtにて一晩攪拌した。反応を、sat.aq.NaHCOでクェンチし、相を分離し、そして有機相を塩水で洗浄し、MgSO上で乾燥し、そして真空濃縮して、粗製の表題化合物を黒色の油状物として得た。LC−MS:t=0.88min;[M+H]:402.06。
【0084】
BB.3 [3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−カルバミン酸 ベンジルエステル
上記の粗製3−(2−アミノ−3,6−ジメトキシ−フェニルカルバモイル)−プロピル]−メチル−カルバミン酸 ベンジルエステルの、16mLのトルエン中の混合物に、4mLのDMFと1.9gのTsOHを添加し、そして反応液を、マイクロ波中で150℃に2h加熱した。Sat.aq.NaHCOを添加し、そして相を分離した。有機相を塩水で洗浄し、MgSO上で乾燥し、真空濃縮し、シリカゲルのショートパッド上でEtOAcを用いてろ過し、そして再び濃縮した。EtOAcを用いたCCによる精製により、2.7gの3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−カルバミン酸 ベンジルエステルを、茶色の樹脂として得た。LC−MS:t=0.85min;[M+H]:384.62。
【0085】
BB.4 [3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミン
2.6gの3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−カルバミン酸 ベンジルエステルの、60mLのEtOH中の溶液を、Nで3回脱気した後、260mgの10wt%Pd/Cを添加した。次いで、反応混合物を、H雰囲気下(バルーン)、rtにて5h攪拌した。セライトのパッド上でのろ過、そしてEtOHでの洗浄により、真空濃縮後、1.7gの3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミンを、茶色のフォームとして得た。LC−MS:t=0.57min;[M+H]:250.13。
【0086】
実施例の製造
実施例1:rac−(1R,2R,4R)−2−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−オール
1.1(手順P1.1):rac−(1R,2R,4R)−(2−ヒドロキシ−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イル)−酢酸
4.0gのrac−(1R,2R,4R)−(2−ヒドロキシ−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イル)−酢酸 tert.−ブチルエステルの、25mLのEtOH中の溶液に、2.1gのLiOH.HO、8mLのHO及び22mLのMeOHを添加した。反応混合物をrtにて3d攪拌し、次いで濃縮した。残渣を、水とEtOの間で分画した。水層を分離し、そして1N HClで酸性化することにより、白色の固体が生成した。固形物をろ過し、5mLのdil.HClで希釈し、そして真空乾燥して、3.2gのrac−(1R,2R,4R)−(2−ヒドロキシ−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イル)−酢酸を白色の固体として得た。LC−MS:t=0.86min;[M−HO+H]:241.28。
【0087】
1.2(手順P1.2):rac−(1R,2R,4R)−N−[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−2−(2−ヒドロキシ−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イル)−N−メチル−アセタミド
280mgのrac−(1R,2R,4R)−(2−ヒドロキシ−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イル)−酢酸の、7mLのTHF中の溶液に、0.58mLのDIPEA、175mgのHOBt及び250mgのEDCを、rtにて添加した。10min攪拌した後、270mgの3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミンを添加し、そして反応混合物をrtにて一晩攪拌した。反応混合物をsat.aq.NaHCOでクェンチし、相を分離し、そして有機相を水と塩水で洗浄し、MgSO上で乾燥し、そして真空濃縮した。EtOAc−MeOH(5:1から2:1へ)を用いたCCによる精製により、475mgのrac−(1R,2R,4R)−N−[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−2−(2−ヒドロキシ−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イル)−N−メチル−アセタミドを、白色のフォームとして得た。LC−MS:t=0.91min;[M+H]:490.06。
【0088】
1.3(手順P1.3):rac−(1R,2R,4R)−2−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−オール
310mgのrac−(1R,2R,4R)−N−[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−2−(2−ヒドロキシ−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イル)−N−メチル−アセタミドの、8mLのトルエン中の溶液に、0.77mLのRed−Al溶液(トルエン中65%)を0℃にて滴下した。0℃にて10min攪拌した後、冷却バスを除き、そして攪拌をrtにて3h続けた。次いで、反応混合物を、1M NaOH/ice混合物中に注意深く注ぎ、そして10min攪拌した。水相をトルエンで抽出し、合わせた有機相を塩水で洗浄し、MgSO上で乾燥し、そして真空濃縮した。EtOAc−MeOH(2:1)を用いたCCによる精製により、230mgのrac−(1R,2R,4R)−2−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−オールを、白色のフォームとして得た。LC−MS:t=0.79min;[M+H]:476.13。
【0089】
実施例1A:rac−イソ酪酸(1R,2R,4R)−2−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イルエステル
1A.1(手順P1.4):rac−イソ酪酸(1R,2R,4R)−2−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イルエステル
199mgのrac−(1R,2R,4R)−2−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−オールの、4mLのDCM中の溶液に、0.2mLのNEtと0.1mLのイソブチリルクロリドを、0℃にて添加した。反応混合物を一晩攪拌して、温度をゆっくりとrtに到達させた。反応をsat.aq.NaHCOでクェンチし、相を分離し、そして水相をDCMで再抽出した。合わせた有機相を塩水で洗浄し、MgSO上で乾燥し、そして真空濃縮した。残渣を3mLのEtOAcに再溶解し、シリカゲルと1.5mLのMeOHを添加し、そして混合物を、7d激しく攪拌した。混合物をろ過し、EtOAc−MeOH(2:1)で徹底的に洗浄し、そして溶媒を蒸発させた。EtOAc−MeOH(5:1から3:1+0.1%NEtへ)を用いたCCによる精製により、186mgのrac−イソ酪酸(1R,2R,4R)−2−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イルエステルをベージュ色のフォームとして得た。LC−MS:t=0.90min;[M+H]:546.23。
【0090】
1A.2(手順P1.5):rac−イソ酪酸(1R,2R,4R)−2−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イルエステル 二塩酸塩
上記の生成物は、下記の手順を用いて、対応する二塩酸塩に変換してもよい。
【0091】
186mgのrac−イソ酪酸(1R,2R,4R)−2−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イルエステルの、2mLのEtOAc中の溶液に、EtOAc中3M HCl、0.3mLを0℃にて添加した。反応混合物を、加熱せずに蒸発乾固して、199mgのrac−イソ酪酸(1R,2R,4R)−2−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イルエステルを、二塩酸塩として得た。
【0092】
実施例2:(1R,2R,4R)−2−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−オール又は(1S,2S,4S)−2−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−オール
2.1:(1R,2R,4R)−(2−ヒドロキシ−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イル)−酢酸又は(1S,2S,4S)−(2−ヒドロキシ−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イル)−酢酸
実施例1の手順P1.1に従い、rac−(1R,2R,4R)−(2−ヒドロキシ−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イル)−酢酸 tert.−ブチルエステルのエナンチオマーBを用いて製造(K1A.6を見よ。)。LC−MS:t=0.91min;[M−HO+H]:241.10。
【0093】
2.2:(1R,2R,4R)−2−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−オール又は(1S,2S,4S)−2−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−オール
実施例1の手順P1.2〜P1.3に従い、上記の(2−ヒドロキシ−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イル)−酢酸を用いて製造。LC−MS:t=0.78min;[M+H]:476.09。
【0094】
実施例2A:イソ酪酸(1R,2R,4R)−2−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イルエステル又はイソ酪酸(1S,2S,4S)−2−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イルエステル
実施例1Aの手順P1.4に従い、上記の2−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−オール(実施例2の化合物)を用いて製造。LC−MS:t=0.89min;[M+H]:546.19。
【0095】
実施例3:(1R,2R,4R)−2−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−オール又は(1S,2S,4S)−2−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−オール
3.1:(1R,2R,4R)−(2−ヒドロキシ−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イル)−酢酸又は(1S,2S,4S)−(2−ヒドロキシ−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イル)−酢酸
実施例1の手順P1.1に従い、rac−(1R,2R,4R)−(2−ヒドロキシ−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イル)−酢酸 tert.−ブチルエステルのエナンチオマーAを用いて製造(K1A.6を見よ。)。LC−MS:t=0.91min;[M−HO+H]:241.16。
【0096】
3.2:(1R,2R,4R)−2−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−オール又は(1S,2S,4S)−2−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−オール
実施例1の手順P1.2〜P1.3に従い、上記の(2−ヒドロキシ−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イル)−酢酸を用いて製造。LC−MS:t=0.79min;[M+H]:476.09。
【0097】
実施例3A:イソ酪酸(1R,2R,4R)−2−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イルエステル又はイソ酪酸(1S,2S,4S)−2−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イルエステル
実施例1Aの手順P1.4に従い、上記の2−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−オール(実施例3の化合物)を用いて製造。LC−MS:t=0.89min;[M+H]:546.11。
【0098】
実施例4:rac−(1R,5R,6R)−6−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−8−フェニル−ビシクロ[3.2.2]ノン−8−エン−6−オール
4.1:rac−(1R,5R,6R)−(6−ヒドロキシ−8−フェニル−ビシクロ[3.2.2]ノン−8−エン−6−イル)−酢酸
実施例1の手順P1.1に従い、rac−(1R,5R,6R)−6−ヒドロキシ−8−フェニル−ビシクロ[3.2.2]ノン−8−エン−6−イル)−酢酸 tert.−ブチルエステルを用いて製造(K2A.3を見よ。)。LC−MS:t=0.96min;[M+Na+H]:296.10。
【0099】
4.2:rac−(1R,5R,6R)−6−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−8−フェニル−ビシクロ[3.2.2]ノン−8−エン−6−オール
実施例1の手順P1.2〜P1.3に従い、rac−(1R,5R,6R)−(6−ヒドロキシ−8−フェニル−ビシクロ[3.2.2]ノン−8−エン−6−イル)−酢酸を用いて製造。LC−MS:t=0.80min;[M+H]:490.06。
【0100】
実施例4A:rac−イソ酪酸(1R,5R,6R)−6−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−8−フェニル−ビシクロ[3.2.2]ノン−8−エン−6−イルエステル
実施例1Aの手順P1.4に従い、rac−(1R,5R,6R)−6−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−8−フェニル−ビシクロ[3.2.2]ノン−8−エン−6−オールを用いて製造。LC−MS:t=0.91min;[M+H]:560.05。
【0101】
生物学的試験
インビトロアッセイ Lチャンネル
式(I)の化合物のLチャンネル拮抗活性(IC50値)を、下記の実験法に従って測定した。補助サブユニットβ−2a及びα2δ−1に加え、ヒトCa1.2チャンネルを発現するヒト胎児由来腎臓(HEK293)細胞を、培地(10%の熱非働化ウシ胎児血清(FCS)、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、100μg/mlのG418、40μg/mlのゼオシン及び100μg/mlのハイグロマイシンを含むDMEM)で培養する。細胞を、384穴ブラッククリアボトム滅菌済プレート(poly−L−lysine−コート、Becton Dickinson)に、20.000細胞/ウェルにてシードする。シードしたプレートを、37℃、5% COにて、一晩インキュベートする。アッセイにおいて20mMの最終濃度で使用するため、アッセイバッファー(0.1%のBSA、20mMのHEPES、0.375g/lのNaHCOを含み、NaOHでpH7.4に調整したHBSS)中の80mMストックソリューションとして、KCl溶液を調製する。拮抗薬は、DMSO中の10mMストックソリューションとして調製し、384穴プレート内で、まずDMSOで、次にアッセイバッファーで希釈し、3xのストックを得る。アッセイの日に、25μlの染色バッファー(20mMのHEPES、0.375g/lのNaHCO及び3μMの蛍光性カルシウム指示薬fluo−4 AM(10%のpluronicを含む、DMSO中の1mMストックソリューション)を含むHBSS)を、シードしたプレートの各ウェルに添加する。384穴セルプレートを、37℃、5%COで60minインキュベートした後、各ウェルを、50μlのアッセイバッファーで2回洗浄し、各ウェルにつき50μlの同バッファーを、室温での平衡化(30−60分)のために残しておく。Fluorescent Imaging Plate Reader(FLIPR、Molecular Devices)内で、各ウェルにつき25μlの拮抗薬をプレートに添加し、3minインキュベートし、最後に、細胞の脱分極のために、各ウェルにつき25μlのKCl溶液を添加する。各ウェルについて、2秒のインターバルで8分間、蛍光を測定し、各蛍光ピークの曲線下の面積を、拮抗剤の代わりにビークルを用いた場合に、20mM KClにより誘導される蛍光ピークの面積と比較する。各拮抗薬について、IC50値(KCl−により誘導される蛍光反応の50%を阻害するのに必要な化合物の(nMで表した)濃度)を、10μMまで測定する。
【0102】
このアッセイにおいては、実施例の化合物1、2、3、4については試験を行わなかった。実施例化合物1A、2A、3A及び4AのIC50値は、156〜439nMの範囲内であり、平均は305nMである。
【0103】
インビトロアッセイ Tチャンネル:
式(I)の化合物のTチャンネル拮抗活性(IC50値)を、下記の実験法に従って測定し、データを表1に示す。
【0104】
ヒトCa3.1、Ca3.2又はCa3.3チャンネルをそれぞれ発現するヒト胎児由来腎臓(HEK293)細胞を、培地(10%の熱非働化ウシ胎児血清(FCS)、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン及び1mg/mlのG418を含むDMEM)で培養する。細胞を、384穴ブラッククリアボトム滅菌済プレート(poly−L−lysine−コート、Becton Dickinson)に、20.000細胞/ウェルにてシードする。シードしたプレートを、37℃、5% COにて、一晩インキュベートする。アッセイにおいて10mMの最終濃度で使用するため、TEA−ヒドロキシドでpH7.2に調整した、100mMのテトラメチルアンモニウムクロリド(TEA−クロリド)、50mMのHEPES、2.5mMのCaCl、5mMのKCl、1mMのMgCl中の100mMストックソリューションとして、Ca2+溶液を調製する。拮抗薬は、DMSO中の10mMストックソリューションとして調製し、384穴プレート内で、まずDMSOで、次にTEA−ヒドロキシドでpH7.2に調整した、100mMのTEA−クロリド、50mMのHEPES、2.5mMのCaCl、5mMのKCl、1mMのMgClで希釈し、9xのストックを得る。アッセイの日に、25μlの染色バッファー(20mMのHEPES、0.375g/lのNaHCO及び3μMの蛍光性カルシウム指示薬fluo−4 AM(10%のpluronicを含む、DMSO中の1mMストックソリューション)を含むHBSS)を、シードしたプレートの各ウェルに添加する。384穴セルプレートを、37℃、5%COで60minインキュベートした後、各ウェルを、0.1%のBSA、20mMのHEPES、0.375g/lのNaHCOを含むHBSS、50μlを用いて2回洗浄し、各ウェルにつき50μlの同バッファーを、室温での平衡化(30−60分)のために残しておく。Fluorescent Imaging Plate Reader(FLIPR、Molecular Devices)内で、各ウェルにつき6.25μlの拮抗薬をプレートに添加し、3minインキュベートし、最後に、各ウェルにつき6.25μlのCa2+溶液を添加する。各ウェルについて、2秒のインターバルで8分間、蛍光を測定し、各蛍光ピークの曲線下の面積を、拮抗剤の代わりにビークルを用いた場合に、10mM Ca2+により誘導される蛍光ピークの面積と比較する。各拮抗薬について、IC50値(Ca2+により誘導される蛍光反応の50%を阻害するのに必要な化合物の(nMで表した)濃度)を、10μMまで測定する。
【0105】
【表1】

【0106】
Langendorff法(Lgdff)による単離した心臓に対する効果
化合物を、それらの血圧降下作用及び心筋収縮に対するそれらの効果について試験した。単離したマウスの心臓に対するEC50を、文献(Doring HJ.、The isolated perfused heart according to Langendorff technique−−function−−application, Physiol. Bohemoslov. 1990、39(6)、481−504;Kligfield P、Horner H、Brachfeld N.、A model of graded ischemia in the isolated perfused rat heart、J.Appl.Physiol.1976 Jun、40(6)、1004−8)に従って測定した。
【0107】
上記のLangendorff試験について記載した手順を用い、実施例1Aの化合物については、5nMのEC50が測定された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物、又はそのような化合物の塩:
【化1】

式中、
は、未置換であるか、又は1、2若しくは3個の置換基により置換されたアリールを表し、当該置換基は、(C1−4)アルキル、(C1−4)アルコキシ、ハロゲン及びトリフルオロメチルから成る群より独立に選択され;
は、水素又は−CO−R21を表し;
21は、(C1−5)アルキル、(C1−3)フルオロアルキル又は(C3−6)シクロアルキルを表し;
mは、整数の2又は3を表し;
pは、整数の2又は3を表し;そして
は、水素又は(C1−5)アルキルを表す。
【請求項2】
架橋シクロヘキセン部分の配置が、R−O−置換基とシクロヘキセン部分の架橋−(CH−が、cisの関係にあるような配置である、請求項1に記載の式(I)の化合物、又はそのような化合物の塩。
【請求項3】
が未置換のフェニルを表す、請求項1又は2に記載の式(I)の化合物、又はそのような化合物の塩。
【請求項4】
が−CO−R21を表す、請求項1〜3のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、又はそのような化合物の塩。
【請求項5】
21が(C1−5)アルキルを表す、請求項1〜4のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、又はそのような化合物の塩。
【請求項6】
mが整数の3を表す、請求項1〜5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、又はそのような化合物の塩。
【請求項7】
が水素を表す、請求項1〜6のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、又はそのような化合物の塩。
【請求項8】
下記の化合物から選択される、請求項1に記載の式(I)の化合物、又はそのような化合物の塩:
イソ酪酸(1R,2R,4R)−2−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イルエステル;
イソ酪酸(1S,2S,4S)−2−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−イルエステル;
イソ酪酸(1R,5R,6R)−6−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−8−フェニル−ビシクロ[3.2.2]ノン−8−エン−6−イルエステル;及び
イソ酪酸(1S,5S,6S)−6−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−8−フェニル−ビシクロ[3.2.2]ノン−8−エン−6−イルエステル。
【請求項9】
下記の化合物から選択される、請求項1に記載の式(I)の化合物、又はそのような化合物の塩:
(1R,2R,4R)−2−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−オール;
(1S,2S,4S)−2−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−5−フェニル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2−オール;
(1R,5R,6R)−6−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−8−フェニル−ビシクロ[3.2.2]ノン−8−エン−6−オール;及び
(1S,5S,6S)−6−(2−{[3−(4,7−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−プロピル]−メチル−アミノ}−エチル)−8−フェニル−ビシクロ[3.2.2]ノン−8−エン−6−オール。
【請求項10】
医薬として使用するための、請求項1〜9のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩を、活性成分として、そして少なくとも1つの治療的に不活性な賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項12】
慢性安定狭心症、高血圧、(腎臓及び心臓の)虚血、心房細動を含む不整脈、心肥大又はうっ血性心不全の治療又は予防のための医薬の製造のための、請求項1〜9のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、若しくはその薬学的に許容される塩の、又は請求項11に記載の医薬組成物の使用。
【請求項13】
慢性安定狭心症、高血圧、(腎臓及び心臓の)虚血、心房細動を含む不整脈、心肥大又はうっ血性心不全の治療又は予防のための請求項1〜9のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩。

【公表番号】特表2011−518821(P2011−518821A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505634(P2011−505634)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際出願番号】PCT/IB2009/051668
【国際公開番号】WO2009/130679
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(500226786)アクテリオン ファーマシューティカルズ リミテッド (151)
【氏名又は名称原語表記】Actelion Pharmaceuticals Ltd
【住所又は居所原語表記】Gewerbestrass 16,CH−4123 Allschwil,Switzerland
【Fターム(参考)】