説明

ベンゾアセピン誘導体の合成方法

本開示は、置換ベンゾアゼピン誘導体の合成方法について記載する。本開示による好ましい方法によって、低レベルの金属不純物を有するベンゾアゼピン化合物の大規模調製が可能となる。いくつかの実施形態において、本開示による好ましい方法により、クロマトグラフィー精製方法を使用せずに、このような化合物を調製するために以前に使用された方法よりも良好な収率でのベンゾアゼピン誘導体の調製が可能となる。本明細書に開示する方法は、合成有機化学ならびに医薬品化学に有用性が見出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願との相互参照)
本願は、米国特許法§119(e)に基づき、2008年11月6日に出願された米国仮特許出願第61/112,081号に対する優先権を主張する。この仮特許出願の開示は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は概して、置換ベンゾアゼピン化合物を合成するのに好適な方法に関するものである。本発明はたとえば、合成有機化学および医薬品科学の分野で有用性が見出される。
【背景技術】
【0003】
免疫調節物質化合物および組成物の探索が近年、多くの注目を集めたのは、免疫系が防御または有害生理応答を生じる機構がより周知になっているためである。先天免疫および適応免疫のどちらかまたは両方の刺激を含む、免疫系の刺激に関与する生物学的経路は複雑であり、治療的処置の開発のための多くの機会を与える。たとえば病原体関連分子パターン(PAMP)の受容体として先天免疫に関与すると考えられた、トル様受容体(TLR)として公知の受容体タンパク質のファミリが最近発見されたことによって、このような受容体の治療的調節に好適な化合物の開発が関心を集めている。TLRの説明および免疫応答におけるその機能は、特許文献1に見出すことができる。TLRの調節物質は、たとえば自己免疫、炎症、アレルギー、喘息、移植片拒絶、移植片対宿主病(GvHD)、感染症、癌、および免疫不全を含む状態を処置するための治療剤として潜在的に好適である。
【0004】
置換ベンゾアゼピン誘導体は、免疫刺激薬として標的とされている化合物のクラスである。特にベンゾアゼピンの2−アミノ−4−カルボキシラート誘導体は、TLRを調節する、およびそうでなければ所望の免疫治療応答を提供するその能力が認識されている。
【0005】
特許文献2は、2−アミノベンゾアゼピン誘導体の調製について記載している。この化合物は、たとえば顆粒球および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子の産生を刺激することによって、免疫抑制の処置に有用であるとして記載されている。縮合環、官能基などを含む多様な置換基を有する2−アミノベンゾアゼピン誘導体が記載されている。この参考文献は、骨髄抑制の処置でのこのような化合物の使用についても記載している。
【0006】
特許文献1は、TLR調節物質としての8置換ベンゾアゼピンの調製について記載している。(1E,4E)−エチル−2−アミノ−8−(4−(ピロリジン−1−カルボニル)フェニル)−3H−ベンゾ[b]アゼピン−4−カルボキシラートを調製する手順が開示される。この手順は7つのステップを含み、最後から2番目のステップとして、(1E,4E)−エチル−8−ブロモ−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3H−ベンゾ[b]アゼピン−4−カルボキシラートと4−(ピロリジン−1−カルボニル)フェニルボロン酸との間のパラジウム触媒クロスカップリング反応を含む。クロスカップリング反応からの反応生成物を分取LCによって精製する。精製後に、TFA:DCMを使用してN−BOC脱保護ステップを行う。
【0007】
金属触媒クロスカップリング反応の使用により、8置換ベンゾアゼピン誘導体、たとえば(1E,4E)−エチル−2−アミノ−8−(4−(ピロリジン−1−カルボニル)フェニル)−3H−ベンゾ[b]アゼピン−4−カルボキシラートなどの調製が可能になる。しかしこのような反応で使用するパラジウム触媒は、困難な精製上の障害を引き起こす。たとえばベンゾアゼピン生成物が製薬活性剤として使用される場合、パラジウム金属の濃度が製薬組成物に許容され得るレベル以内となるように、鈴木反応の後に残った残留パラジウム廃棄物を除去する必要がある。ベンゾアゼピン誘導体を合成する理想的な方法はたとえば、金属汚染のレベルが低い生成物化合物を高い収率で提供するであろう。好ましくはこのような方法は、クロマトグラフィー法による精製の使用を回避または最小化するであろう。本発明は、これらの所望の特色の1つ以上を提供することを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2007/024612号
【特許文献2】欧州特許出願公開0825186号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、置換ベンゾアゼピン化合物を調製する方法について記載する。1実施形態において、たとえば本開示は{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミド(本明細書では「HG4」)を調製する方法について記載している。このような方法によって、低レベルの金属不純物を有するHG4の調製および/またはクロマトグラフィーによる精製の必要がない大規模なHG4の調製が可能になることが好ましい。
【0010】
1実施形態において、ここで本開示は、{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドを調製するための改良された方法について説明する。改良は、(tert−ブトキシ)−N−{4−(N,N−ジプロピルカルバモイル)−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル](3H−ベンゾ[f]アゼピン−2−イル)}カルボキサミドの溶液をパラジウム捕捉剤と混合することによって、溶液を精製することを含む。(tert−ブトキシ)−N−{4−(N,N−ジプロピルカルバモイル)−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル](3H−ベンゾ[f]アゼピン−2−イル)}カルボキサミドは保護基除去剤と反応して、{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドを与える。パラジウム捕捉剤は:(i)−(CH−NH、−(CH−SH、−(CH−NH−C(=S)−NHMe、および−(CH−NH−(CH−NH−(CH−NHから選択される官能基によって官能化されたシリカビーズ;(ii)−CH−NH−C(=S)−NHおよび−C−CH−NHから選択される官能基によって官能化されたポリスチレンビーズ;ならびに(iii)少なくとも約1200m/gの表面積、約1nmの平均孔径、および約0.3mm〜約0.8mmの粒径を有する多孔質炭素粒子から選択される。
【0011】
別の実施形態において、本開示は、精製{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドを合成する方法を提供し、この方法は:(a){2−[(tert−ブトキシ)カルボニルアミノ]−8−ブロモ−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドを4−ピロリジニルカルボニルフェニルボロン酸と、Pd(OAc)およびエタノールの存在下で接触させて、(tert−ブトキシ)−N−{4−(N,N−ジプロピルカルバモイル)−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル](3H−ベンゾ[f]アゼピン−2−イル)}カルボキサミド、エタノールおよび不純物を含む粗生成物を形成することと;(b)粗生成物をパラジウム捕捉剤で処理することと;(c)処理した粗生成物を濾過して、精製(tert−ブトキシ)−N−{4−(N,N−ジプロピルカルバモイル)−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル](3H−ベンゾ[f]アゼピン−2−イル)}カルボキサミドを得ることと;(d)(tert−ブトキシ)−N−{4−(N,N−ジプロピルカルバモイル)−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル](3H−ベンゾ[f]アゼピン−2−イル)}カルボキサミドを保護基除去剤と接触させて、精製{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドを得ることとを含み、パラジウム捕捉剤は:(i)−(CH−NH、−(CH−SH、−(CH−NH−C(=S)−NHMe、および−(CH−NH−(CH−NH−(CH−NHから選択される官能基によって官能化されたシリカビーズ;(ii)−CH−NH−C(=S)−NHおよび−C−CH−NHから選択される官能基によって官能化されたポリスチレンビーズ;ならびに(iii)少なくとも約1200m/gの表面積、約1nmの平均孔径、および約0.3mm〜約0.8mmの粒径を有する多孔質炭素粒子から選択される。いくつかのこのような実施形態において、精製{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドは、HPLCで測定したように少なくとも98%の純度を有する。他のこのような実施形態において、精製{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドには、1つ以下の不純物が約0.5%を超える量で存在する。
【0012】
別の実施形態において、本開示は、精製{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドを合成する方法について記載する。この方法は、{2−[(tert−ブトキシ)カルボニルアミノ]−8−ブロモ−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドを4−ピロリジニルカルボニルフェニルボロン酸と、Pd(OAc)およびエタノールの存在下で接触させて、(tert−ブトキシ)−N−{4−(N,N−ジプロピルカルバモイル)−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル](3H−ベンゾ[f]アゼピン−2−イル)}カルボキサミド、エタノールおよび不純物を含む粗生成物を形成することを含む。粗生成物はパラジウム捕捉剤によって処理する。処理した粗生成物を次に濾過して、精製(tert−ブトキシ)−N−{4−(N,N−ジプロピルカルバモイル)−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル](3H−ベンゾ[f]アゼピン−2−イル)}カルボキサミドを得る。次に(tert−ブトキシ)−N−{4−(N,N−ジプロピルカルバモイル)−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル](3H−ベンゾ[f]アゼピン−2−イル)}カルボキサミドを保護基除去剤と接触させて、精製{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドを得る。
【0013】
別の実施形態において、本開示は、{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドおよび1つ以上のパラジウム含有混入物を含む組成物について記載する。{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドは、パラジウム触媒カップリング反応を使用して調製され、パラジウムは、ICP−OESにより20ppm未満の濃度で存在する。
【0014】
別の実施形態において、本開示は、少なくとも98%の{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドおよび20ppm以下のパラジウム化合物またはパラジウム含有化合物からなる組成物を提供する。
【0015】
なお別の実施形態において、本開示は、{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドを調製する方法について記載する。本方法は、実質的に無水条件下にてハロゲン化ベンゾアゼピンをボロン酸と、パラジウム触媒の存在下でならびに場合によりリガンドおよび塩基の存在下で接触させて、アリール置換ベンゾアゼピンを生成することを含む。アリール置換ベンゾアゼピンは、パラジウム捕捉剤を添加することによって精製される。パラジウム捕捉剤は:(i)−(CH−NH、−(CH−SH、−(CH−NH−C(=S)−NHMe、および−(CH−NH−(CH−NH−(CH−NHから選択される官能基によって官能化されたシリカビーズ;(ii)−CH−NH−C(=S)−NHおよび−C−CH−NHから選択される官能基によって官能化されたポリスチレンビーズ;ならびに(iii)少なくとも約1200m/gの表面積、約1nmの平均孔径、および約0.3mm〜約0.8mmの粒径を有する多孔質炭素粒子から選択される。
【0016】
さらなる実施形態において、本開示は組成物を調製する方法を提供する。本方法は、ハロ置換ベンゾアゼピンをボロン酸と、パラジウム触媒の存在下で接触させて、置換ベンゾアゼピンおよび1つ以上のパラジウム混入物を含む粗生成物を得ることを含む。パラジウム捕捉剤は所定の時間にわたって粗組成物に添加される。次にパラジウム捕捉剤を除去して、置換ベンゾアゼピンおよびパラジウム混入物を含む精製組成物を得る。パラジウム混入物は、ICP−OESにより50ppm未満(またはたとえば20ppm未満)の濃度で存在する。
【0017】
さらなる実施形態において,本開示は、{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドを調製する方法を提供する。本方法は、実質的に無水条件下にてハロゲン化ベンゾアゼピンをボロン酸と、パラジウム触媒の存在下でならびに場合によりリガンドおよび塩基の存在下で接触させて、アリール置換ベンゾアゼピンを生成することを含む。アリール置換ベンゾアゼピン生成物は、本明細書に記載するように、パラジウム捕捉剤を添加することによって精製される。1実施形態において、ハロゲン化ベンゾアゼピンは{2−[(tert−ブトキシ)カルボニルアミノ]−8−ブロモ−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドであり、ボロン酸は4−ピロリジニルカルボニルフェニルボロン酸であり、パラジウム触媒はPd(OAc)であり、リガンドおよび塩基が存在し、リガンドは4,4’−(フェニルホスフィニデン)ビス(ベンゼンスルホン酸)2カリウム塩水和物であり、塩基はNaCOである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本明細書で開示する{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドを調製する方法の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
別途指摘しない限り、本開示は特定の手順、開始物質などに限定されず、したがって変化し得る。本明細書で使用する用語は、特定の実施形態のみを説明する目的のためであり、制限するものではないことも理解されるべきである。
【0020】
明細書および添付請求項で使用する場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。それゆえたとえば「反応物質」への言及は単一の反応物質だけでなく、2つ以上の異なる反応物質の組合せまたは混合物も含み、「置換基」への言及は単一の置換基ならびに2個以上の置換基を含むなどである。
【0021】
本明細書で使用する場合、「たとえば(for example)」、「たとえば(for instance)」、「たとえば(such as)」、または「含む(including)」という句は、より一般的な主題をさらに明らかにする例を導入することを意味する。これらの例は、本開示を理解するための助けとしてのみ提供され、いかなる方法によっても制限するものではない。さらに本明細書で使用する場合、「〜し得る(may)」、「任意の(optional)」、「場合により」、または「場合により〜し得る」という用語は、続いて記載された状況が起こり得る、または起こり得ないため、状況が起こる例および状況が起こらない例を記載が含むことを意味する。たとえば「場合により存在する」という句は、物体が存在し得るまたは存在し得ないことを意味し、それゆえ記載は物体が存在する例および物体が存在しない例を含む。
【0022】
本発明を記載および主張するに当って、以下の用語は以下に述べる定義に従って使用されるであろう。
【0023】
本明細書で使用する場合、「式を有する」または「構造を有する」という句は、制限するものではなく、「含む」という用語が一般に使用されるのと同じ方法で使用される。「から独立して選択される」という用語は、列挙した要素、たとえばR基などが同一であることまたは異なることができることを示すために本明細書で使用される。
【0024】
「アルキル」という用語は本明細書で使用する場合、必ずというわけではないが通例1〜約24個の炭素原子を含有する分枝または非分枝飽和炭化水素基、たとえばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、オクチル、デシルなど、ならびにシクロアルキル基、たとえばシクロペンチル、シクロヘキシルなどを指す。概して、必ずというわけではないが、アルキル基は本明細書で1〜約18個の炭素原子を含有し得て、このような基は1〜約12個の炭素原子を含有し得る。「低級アルキル」という用語は、1〜6個の炭素原子、たとえば1、2、3、4、5、または6個の炭素原子のアルキル基を意味する。「置換アルキル」は、1個以上の置換基によって置換されたアルキルを指し、「ヘテロ原子含有アルキル」および「ヘテロアルキル」という用語は、下でさらに詳細に記載するように、少なくとも1個の炭素原子がヘテロ原子に代わったアルキル置換基を指す。別途指摘しない場合、「アルキル」および「低級アルキル」という用語は、直鎖、分枝、環式、非置換、置換、および/またはヘテロ原子含有アルキルまたは低級アルキルをそれぞれ含む。
【0025】
「アルケニル」という用語は本明細書で使用する場合、少なくとも1個の2重結合を含有する、2〜約24個の炭素原子の直鎖、分枝または環式炭化水素基、たとえばエテニル、n−プロペニル、イソプロペニル、n−ブテニル、イソブテニル、オクテニル、デセニル、テトラデセニル、ヘキサデセニル、エイコセニル、テトラコセニルなどを指す。概して、再度必ずというわけではないが、アルケニル基は本明細書では2〜約18個の炭素原子を含有し得て、たとえば2〜12個の炭素原子を含有し得る。「低級アルケニル」という用語は、2〜6個の炭素原子のアルケニル基を意味する。「置換アルケニル」という用語は、1個以上の置換基によって置換されたアルケニルを指し、「ヘテロ原子含有アルケニル」および「ヘテロアルケニル」という用語は、少なくとも1個の炭素原子がヘテロ原子に代わったアルケニルを指す。別途指摘しない場合、「アルケニル」および「低級アルケニル」という用語は、直鎖、分枝、環式、非置換、置換、および/またはヘテロ原子含有アルケニルおよび低級アルケニルをそれぞれ含む。
【0026】
「アルキニル」という用語は本明細書で使用する場合、少なくとも1個の3重結合を含有する、2〜24個の炭素原子の直鎖または分枝炭化水素基、たとえばエチニル、n−プロピニルなどを指す。概して、再度必ずというわけではないが、アルキニル基は本明細書では2〜約18個の炭素原子を含有し得て、このような基は2〜12個の炭素原子を含有し得る。「低級アルキニル」という用語は、2〜6個の炭素原子のアルキニル基を意味する。「置換アルキニル」という用語は、1個以上の置換基によって置換されたアルキニルを指し、「ヘテロ原子含有アルキニル」および「ヘテロアルキニル」という用語は、少なくとも1個の炭素原子がヘテロ原子に代わったアルキニルを指す。別途指摘しない場合、「アルキニル」および「低級アルキニル」という用語は、直鎖、分枝、非置換、置換、および/またはヘテロ原子含有アルキニルおよび低級アルキニルをそれぞれ含む。
【0027】
「アルコキシ」という用語は本明細書で使用する場合、単一の末端エーテル結合を介して結合されたアルキル基を意味する;すなわち「アルコキシ」基は−O−アルキルとして表され得て、アルキルは上で定義した通りである。「低級アルコキシ」基は1〜6個の炭素原子を含有するアルコキシ基を意味して、たとえばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、t−ブチルオキシなどを含む。本明細書で「C−Cアルコキシ」または「低級アルコキシ」として特定される置換基はたとえば1〜3個の炭素原子を含有し得て、さらなる例として、このような置換基は1〜2個の炭素原子(すなわちメトキシおよびエトキシ)を含有し得る。
【0028】
「アリール」という用語は本明細書で使用する場合および別途規定しない限り、概して、必ずというわけではないが、5〜30個の炭素原子を含有し、単一の芳香環または(異なる芳香環が共通の基、たとえばメチレンまたはエチレン部分に結合されるように)共に縮合された、直接結合されたもしくは間接的に結合された複数の芳香環を含有する、芳香族置換基を指す。アリール基はたとえば5〜20個の炭素原子を含有し、さらなる例として、アリール基は5〜12個の炭素原子を含有し得る。たとえばアリール基は1個の芳香環または2個の縮合もしくは結合芳香族環、たとえばフェニル、ナフチル、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルアミン、ベンゾフェノンなどを含有し得る。「置換アリール」は、1個以上の置換基によって置換されたアリール部分を指し、「ヘテロ原子含有アリール」および「ヘテロアリール」という用語は、下でさらに詳細に記載するように、少なくとも1個の炭素原子がヘテロ原子に代わったアリール置換基を指す。別途指摘しない場合、「アリール」という用語は、非置換、置換、および/またはヘテロ原子含有芳香族置換基を含む。
【0029】
「アラルキル」という用語は、アリール置換基を有するアルキル基を指し、「アルカリール」という用語は、アルキル置換基を有するアリールを指し、ここで「アルキル」および「アリール」は上で定義した通りである。概して、アラルキル基およびアルカリール基は本明細書では6〜30個の炭素原子を含有する。アラルキル基およびアルカリール基はたとえば6〜20個の炭素原子を含有し得て、さらなる例としてこのような基は6〜12個の炭素原子を含有し得る。
【0030】
「アミノ」という用語は本明細書では基−NZを指し、ここでZおよびZは水素または非水素置換基であり、非水素置換基はたとえばアルキル、アリール、アルケニル、アラルキル、ならびにその置換および/またはヘテロ原子含有変形を含む。
【0031】
「ハロ」および「ハロゲン」という用語は従来の意味で使用されてクロロ、ブロモ、フルオロまたはヨード置換基を指す。
【0032】
「ヘテロ原子含有」という用語は、「ヘテロ原子含有アルキル基」(「ヘテロアルキル」基とも呼ばれる)または「ヘテロ原子含有アリール基」(「ヘテロアリール」基とも呼ばれる)においてと同様に、1個以上の炭素原子が炭素以外の原子、たとえば窒素、酸素、硫黄、リンまたはケイ素、通例、窒素、酸素または硫黄に代わった分子、結合または置換基を指す。同様に「ヘテロアルキル」という用語は、ヘテロ原子を含有するアルキル置換基を指し、「複素環式」という用語はヘテロ原子を含有する環式置換基を指し、「ヘテロアリール」および「芳香族複素」という用語はそれぞれ、ヘテロ原子を含有する「アリール」および「芳香族」置換基を指すなどである。ヘテロアルキル基の例は、アルコキシアリール、アルキルスルファニル置換アルキル、N−アルキル化アミノアルキルなどを含む。ヘテロアリール置換基の例は、ピロリル、ピロリジニル、ピリジニル、キノリニル、インドリル、フリル、ピリミジニル、イミダゾリル、1,2,4−トリアゾリル、テトラゾリルなどを含み、ヘテロ原子含有脂環基の例はピロリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、ピペリジノ、テトラヒドロフラニルなどである。
【0033】
「ヒドロカルビル」は、1〜約30個の炭素原子を含有する、1〜約24個の炭素原子含む、1〜約18個の炭素原子をさらに含む、および1〜12個の炭素原子をさらに含み、直鎖、分枝、環式、飽和および不飽和種を含む1価ヒドロカルビルラジカル、たとえばアルキル基、アルケニル基、アリール基などを指す。「置換ヒドロカルビル」は、1個以上の置換基によって置換されたヒドロカルビルを指し、「ヘテロ原子含有ヒドロカルビル」という用語は、少なくとも1個の炭素原子がヘテロ原子に代わったヒドロカルビルを指す。別途指摘しない限り、「ヒドロカルビル」という用語は置換および/またはヘテロ原子含有ヒドロカルビル部分を含むとして解釈されるべきである。
【0034】
「置換ヒドロカルビル」、「置換アルキル」、「置換アリール」などにおける「置換」とは、上述の定義のいくつかで示唆されているように、ヒドロカルビル、アルキル、アリール、または他の部分において、炭素(または他の)原子に結合された少なくとも1個の水素原子が1個以上の非水素置換基に代わったことを意味する。このような置換基の例は、制限なく、官能基ならびにヒドロカルビル部分C−C24アルキル(C−C18アルキルを含む、C−C12アルキルをさらに含む、およびC−Cアルキルをさらに含む)、C−C24アルケニル(C−C18アルケニルを含む、C−C12アルケニルをさらに含む、およびC−Cアルケニルをさらに含む)、C−C24アルキニル(C−C18アルキニルを含む、C−C12アルキニルをさらに含む、およびC−Cアルキニルをさらに含む)、C−C30アリール(C−C20アリールを含む、およびC−C12アリールをさらに含む)、およびC−C30アラルキル(C−C20アラルキルを含む、およびC−C12アラルキルをさらに含む)を含む。
【0035】
「官能基」とは、上述の定義のいくつかで示唆されているように、1個以上の非炭化水素官能基を含む非水素基を意味する。官能基の例は、制限なく:ハロ、ヒドロキシル、スルフヒドリル、C−C24アルコキシ、C−C24アルケニルオキシ、C−C24アルキニルオキシ、C−C20アリールオキシ、アシル(C−C24アルキルカルボニル(−CO−アルキル)およびC−C20アリールカルボニル(−CO−アリール)を含む)、アシルオキシ(−O−アシル)、C−C24アルコキシカルボニル(−(CO)−O−アルキル)、C−C20アリールオキシカルボニル(−(CO)−O−アリール)、ハロカルボニル(−CO)−X、ここでXはハロである)、C−C24アルキルカルボナート(−O−(CO)−O−アルキル)、C−C20アリールカルボナート(−O−(CO)−O−アリール)、カルボキシ(−COOH)、カルボキシラート(−COO)、カルバモイル(−(CO)−NH)、モノ置換C−C24アルキルカルバモイル(−(CO)−NH(C−C24アルキル))、ジ置換アルキルカルバモイル(−(CO)−N(C−C24アルキル))、モノ置換アリールカルバモイル(−(CO)−NH−アリール)、チオカルバモイル(−(CS)−NH)、カルバミド(−NH−(CO)−NH)、シアノ(−C≡N)、イソシアノ(−N≡C)、シアナート(−O−C≡N)、イソシアナート(−O−N≡C)、イソチオシアナート(−S−C≡N)、アジド(−N=N=N)、ホルミル(−(CO)−H)、チオホルミル(−(CS)−H)、アミノ(−NH)、モノ−およびジ−(C−C24アルキル)−置換アミノ、モノ−およびジ−(C−C20アリール)−置換アミノ、C−C24アルキルアミド(−NH−(CO)−アルキル)、C−C20アリールアミド(−NH−(CO)−アリール)、イミノ(−CR=NH、ここでR=水素、C−C24アルキル、C−C20アリール、C−C20アルカリール、C−C20アラルキルなど)、アルキルイミノ(−CR=N(アルキル)、ここでR=水素、アルキル、アリール、アルカリールなど)、アリールイミノ(−CR=N(アリール)、式中、R=水素、アルキル、アリール、アルカリールなど)、ニトロ(−NO)、ニトロソ(−NO)、スルホ(−SO−OH)、スルホナート(−SO−O)、C−C24アルキルスルファニル(−S−アルキル;「アルキルチオ」とも呼ばれる)、アリールスルファニル(−S−アリール;「アリール」チオとも呼ばれる)、C−C24アルキルスルフィニル(−(SO)−アルキル)、C−C20アリールスルフィニル(−(SO)−アリール)、C−C24アルキルスルホニル(−SO−アルキル)、C−C20アリールスルホニル(−SO−アリール)、ホスホノ(−P(O)(OH))、ホスホナート(−P(O)(O)、ホスフィナート(−P(O)(O))、ホスホ(−PO)、およびホスフィノ(−PH)、モノ−およびジ−(C−C24アルキル)−置換ホスフィノ、モノ−およびジ−(C−C20アリール)−置換ホスフィノ;ならびにヒドロカルビル部分C−C24アルキル(C−C18アルキルを含む、C−C12アルキルをさらに含む、およびC−Cアルキルをさらに含む)、C−C24アルケニル(C−C18アルケニルを含む、C−C12アルケニルをさらに含む、およびC−Cアルケニルをさらに含む)、C−C24アルキニル(C−C18アルキニルを含む、C−C12アルキニルをさらに含む、およびC−Cアルキニルをさらに含む)、C−C30アリール(C−C20アリールを含む、およびC−C12アリールをさらに含む)、およびC−C30アラルキル(C−C20アラルキルを含む、およびC−C12アラルキルをさらに含む)を含む。さらに上述の官能基は、特定の基が許せば、1個以上の追加の官能基によって、または1個以上のヒドロカルビル部分、たとえば特に上で挙げたようなヒドロカルビル部分によってさらに置換され得る。同様に、上述のヒドロカルビル部分は、1個以上の官能基または追加のヒドロカルビル部分、たとえば特に上で挙げたようなヒドロカルビル部分によってさらに置換され得る。
【0036】
上述の定義のいくつかは、いくつかの化学的部分が1を超える定義に含まれ得るように重複し得ることが認識されるであろう。
【0037】
「置換」という用語が考えられる置換基の一覧の前に現れるとき、この用語はその基の各構成要素に適用されることを意味する。たとえば「置換アルキルおよびアリール」という句は、「置換アルキルおよび置換アリール」として解釈されるべきである。
【0038】
「連結」されている2個の部分とは、2個の部分が相互に直接結合されている例、ならびにリンカ部分が2個の部分の間に存在する例を含むことを意味する。リンカ部分は、基、たとえばヘテロ原子、C−C24アルキレン(C−C18アルキレンを含む、C−C12アルキレンをさらに含む、およびC−Cアルキレンをさらに含む)、C−C24アルケニレン(C−C18アルケニレンを含む、C−C12アルケニレンをさらに含む、およびC−Cアルケニレンをさらに含む)、C−C24アルキニレン(C−C18アルキニレンを含む、C−C12アルキニレンをさらに含む、およびC−Cアルキニレンをさらに含む)、C−C30アリーレン(C−C20アリーレンを含む、およびC−C12アリーレンをさらに含む)、およびC−C30アラルキレン(C−C20アラルキレンを含む、およびC−C12アラルキレンをさらに含む)を含み得る。
【0039】
本開示は、置換ベンゾアゼピン、特にアリール置換2−アミノベンゾアゼピンの合成方法を提供する。ある態様において、ここで本発明は、式(I)の構造を有する化合物の調製方法を提供し:
【0040】
【化1】

式(I)において:
、R、R、R、R、およびRは、H、C−C24ヒドロカルビル、および官能基から独立して選択され;
は、−ORおよび−N(R)(R)から選択され、ここでR、R、およびRは、H、およびC−C24ヒドロカルビルから選択され;ならびに
Arはアリール部分である。
【0041】
好ましい実施形態において、R、R、R、R、R、およびRは、H、C−C24アルキル(C−C18アルキルを含む、C−C12アルキルをさらに含む、およびC−Cアルキルをさらに含む)、C−C24アルケニル(C−C18アルケニルを含む、C−C12アルケニルをさらに含む、およびC−Cアルケニルをさらに含む)、C−C24アルキニル(C−C18アルキニルを含む、C−C12アルキニルをさらに含む、およびC−Cアルキニルをさらに含む)、C−C30アリール(C−C20アリールを含む、およびC−C12アリールをさらに含む)、およびC−C30アラルキル(C−C20アラルキルを含む、およびC−C12アラルキルをさらに含む)から独立して選択され、そのいずれも1、2、3個以上のヘテロ原子によってヘテロ含有であり得る、および/または1、2、3個以上の置換基によって置換され得る。好ましい1実施形態において、R、R、R、R、R、およびRは、それぞれHである。
【0042】
好ましい実施形態において、Xは−N(R)(R)であり、ここでRおよびRは低級アルキル基である。たとえば1実施形態において、RおよびRはどちらもn−プロピル基である。別の実施形態において、RおよびRはどちらもエチル基である。
【0043】
好ましい実施形態において、Arは、置換または非置換C−C30アリーレン(C−C20アリーレンを含む、およびC−C12アリーレンをさらに含む)および置換または非置換C−C30ヘテロアリーレン(C−C20ヘテロアリーレンを含む、およびC−C12ヘテロアリーレンをさらに含む)から選択される。Arが置換されているとき、1〜5個の置換基が存在し得て、いずれかの2個以上の置換基はひとまとめにされて1個以上の縮合環を形成し得る。置換基は、本明細書で上述した基のいずれか、たとえば官能基およびヒドロカルビル部分から選択され得る。好ましい実施形態において、Arは置換フェニル基である。たとえばArは式
【0044】
【化2】

を有し、
式中、R11、R12、R13、R14、およびR15は、H、C−C24ヒドロカルビル、および官能基から独立して選択される。好ましい実施形態において、Arがパラ置換フェニル環であるように、R11、R12、R14、およびR15はHであり、R13は非水素である。このように好ましい1実施形態において、R13はピロリジニルカルボニルである。
【0045】
式(I)の構造を有する化合物は好ましくは、有機ホウ素化合物および式(Ia)の構造を有する化合物との間の金属触媒クロスカップリング反応によって調製され:
【0046】
【化3】

式中、式(Ia)において:
、R、R、R、R、R、およびXは、上で定義した通りであり;
はアミン保護基であり;ならびに
Yは、電子求引部分である。
【0047】
各種のアミン保護基が公知であり、化学文献に記載されている。たとえばこのような基は、Greene,T.W.,and Wuts,P.,“Protective Group in Organic Synthesis,”3rd Ed.,Wiley,New York,1999に記載されている。好ましい実施形態において、XはBOC(すなわちt−ブチルカルバメート)基である。
【0048】
好ましい実施形態において、Yはハロ基およびトリフルオロメタン−スルホナート(トリフレート)基から選択される。好ましい実施形態において、YはBrまたはIであり、Brが特に好ましい。
【0049】
好ましい実施形態において、有機ホウ素化合物は構造Ar−B(OR10を有し、ここでArは上で定義した通りであり、ならびにここで各R10はHおよび低級アルキルから選択され、ならびにさらにここで2個のR10基はひとまとめにされて環を形成し得る。2個のR10基がひとまとめにされて環を形成するとき、環は脂環式または芳香族であり得て、および置換または非置換であり得る。好ましい実施形態において、どちらのR10基もHである。
【0050】
金属触媒クロスカップリング反応は好ましくは、Pd(0)もしくはPd(II)触媒またはその前駆体を含む。好ましくはパラジウム触媒は、Pd(AcO)、Pd(PPh、およびPdCl(PPhであり、Pd(AcO)は特に好ましい。
【0051】
特にPd(O)またはPd(II)前駆体触媒が使用されるとき、クロスカップリング反応は反応混合物へのリガンドの付加をさらに包含し得る。トリアリールホスフィンリガンドは、クロスカップリング反応に特に好適であり、好ましい実施形態において、リガンドは4,4’−(フェニルホスフィニデン)ビス(ベンゼンスルホン酸)2カリウム塩水和物である。
【0052】
クロスカップリング反応は、反応混合物への塩基の付加をさらに包含し得る。たとえば好ましい塩基は、NaCOおよびKCOから選択される。当分野で公知の他の塩基、たとえばナトリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム、またはカリウムの炭酸塩、重炭酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩および水酸化物が使用され得る。
【0053】
クロスカップリング反応は好ましくは、極性溶媒、たとえばエタノール中で行われる。好ましい1実施形態において、反応はおおむね無水条件下で行われる。たとえばエタノールが反応溶媒であるとき、「おおむね無水」条件は、200プルーフのエタノールを使用することによって、および反応にバルク水を添加しないことによって取得され得る。好ましい実施形態において、エタノールは約0.5%未満の水、さらに好ましくは約0.2%未満の水を含有する。
【0054】
クロスカップリングの反応の代わりの実施形態は、以下の刊行物:Miyauraら(1995),“Palladium−Catalyzed Cross−Coupling Reactions of Organoboron Compounds,”Chem.Rev.,95:2457−2483;およびSuzuki(1999),“Recent Advances in the Cross−Coupling Reactions of Organoboron Derivatives with Organic Electrophiles,1995−1998,”J.Organomet.Chem.,516:147−168への参照によっても説明される。
【0055】
広範囲の反応条件がクロスカップリング反応生成物を提供するのに好適であるが、ある反応条件が最も好ましいのは、この条件が最大量の生成物を生じる、および/または最高の純度を有する生成物を提供するためであることが認識されるであろう。特にPd(OAc)および4,4’−(フェニルホスフィニデン)ビス(ベンゼンスルホン酸)2カリウム塩水和物はそれぞれ、好ましい触媒およびリガンドである。触媒のリガンドに対する最も好ましい比は、約1:2〜約1:1の範囲内である。
【0056】
脱保護反応が式(Ia)の化合物の式(I)の化合物への変換を完了するために必要であることが認識されるであろう。特にアミン保護基Xは、式(I)に存在する遊離アミンを得るために除去する必要がある。それゆえ1実施形態において、上記のクロスカップリング反応は、式(Ia)の構造を有するアミン保護ベンゾアゼピン誘導体を用いて行われる。続いてクロスカップリング反応による生成物を脱保護することによって、対応する2−アミノベンゾアゼピン誘導体を得る。
【0057】
本開示に従って行ったクロスカップリング反応によって、所望の生成物、反応溶媒、残留パラジウム、および他の不純物を含む粗生成物が生成される。他の不純物がたとえば未反応開始物質、塩、溶媒などを含み得ることが認識されるであろう。残留パラジウムは未反応Pd(0)またはPd(II)触媒ならびにパラジウム廃棄生成物(たとえば酸化パラジウム、パラジウム塩など)を含み得ることがさらに認識されるであろう。
【0058】
いくつかの実施形態において、クロスカップリング反応によって、所望の生成物ならびにラクタム不純物を含む粗生成物が生成される。ラクタム不純物は、構造
【0059】
【化4】

を有すると考えられる。ラクタム不純物の形成は、反応条件およびワークアップ条件が上記のようにおおむね無水である場合に最小限に抑えることができる。代わりにまたは加えて、ラクタム不純物を生成物から除去することができる。ラクタム不純物を除去する便利な方法は、室温にて酢酸エチルでの粉砕を使用してラクタムを沈殿させることと、続いてのラクタムを除去するための濾過を含む。
【0060】
残留パラジウムの除去は、パラジウム捕捉剤を使用して達成され得る。パラジウム捕捉剤は反応のワークアップにおいていずれの適切な段階でも使用される。概してこのことにより、粗生成物を溶媒に溶解させることが必要である。たとえばパラジウム捕捉剤は、粗生成物が適切な方法、たとえば珪藻土(たとえばCELITE(登録商標))による濾過によって浄化した後に、または所望の生成物を反応溶媒から別の溶媒に移動させるために溶媒交換を行った後に添加され得る。たとえばクロスカップリング反応が無水エタノール中で行われるとき、パラジウム捕捉剤は浄化した粗生成物に直接添加され得る。代わりに、およびさらなる例として、粗生成物は浄化され、次にエタノール反応溶媒が酢酸エチルに代わるように、溶媒交換を受ける。ここでパラジウム捕捉剤を生じた酢酸エチル溶液に添加する。
【0061】
残留パラジウムはそれゆえ所望の生成物および溶媒を含有する溶液にパラジウム捕捉剤を添加することと、得られたスラリをかき混ぜること(agitating)(たとえば撹拌すること(stirring))とによって除去される。パラジウム捕捉剤は好ましくは、単一バッチ添加で添加される。かき混ぜは概して、パラジウム濃度を平衡化するのに十分な期間、好ましくは約4時間にわたる。得られたスラリは、たとえば珪藻土(たとえばCELITE(登録商標))または他の濾過剤による濾過によって浄化される。
【0062】
パラジウム捕捉剤は、残留パラジウム濃度を約50ppm以下、または約30ppm以下、または約25ppm以下、または約20ppm以下の濃度に低下させるのに有効であるべきである。精製で使用するパラジウム捕捉剤の量は、たとえば所望の精製度、および捕捉剤の特性によって変わるであろう。
【0063】
1実施形態において、適切なパラジウム捕捉剤は、官能化シリカビーズおよび官能化ポリスチレンビーズから選択される。
【0064】
1実施形態において、浄化された粗生成物(すなわち所望の生成物および残留パラジウムを含む浄化されたエタノール性溶液)に直接添加するのに好適なパラジウム捕捉剤は、官能化球状シリカビーズからなる組成物である。好ましい実施形態において、シリカビーズは、約500m/gを超える、たとえば約715m/gなどの表面積、および100μm未満の、たとえば約50〜55μmなどの平均粒径を有する。これらの特徴を満足する物質は、商標QUADRASIL(商標)で販売されている。好ましい1実施形態において、シリカビーズはメルカプトプロピル官能化(たとえばQUADRASIL(商標)MP)であり、最も好ましい実施形態において、シリカビーズはアミノプロピル官能化(たとえばQUADRASIL(商標)AP)である。浄化された粗生成物を精製するのに好適な別のパラジウム捕捉剤は、大きい表面積(すなわち1000m/gを超える、たとえば約1200m/g、または少なくとも約1200m/g、または約1500〜1700m/gを含む)、約5nm未満の平均孔径(たとえば約1nmを含む)、および約0.3mm〜約0.8mmの直径を有する正回転楕円球を持つ、多孔質球状非官能性炭素粒子からなる組成物である。これらの特徴を満足する好適な物質は、商標QUADRAPURE(商標)Cで販売されている。いくつかの好ましい実施形態において、このような捕捉剤は、1000重量/重量%までの(カップリング反応における反応物質、たとえばHGlなどに関して)、または約50〜650重量/重量%の範囲内の、または約100〜650重量/重量%の、または約200〜650重量/重量%の量で使用されるであろう。代わりに、精製で使用する捕捉剤の量は濃度として測定できる。いくつかの実施形態において、捕捉剤は約10mg/mL〜約100mg/mLの、または約25mg/mL〜約75mg/mLの、または約50mg/mLの濃度で使用され得る。
【0065】
所望の生成物および残留パラジウムを含む酢酸エチル溶液(すなわちエタノールからの溶媒交換を完了した後の粗生成物)に添加するのに好適なパラジウム捕捉剤は、先に記載した物理的特徴を有する官能化球状シリカビーズからなる。好ましい実施形態において、シリカビーズは、アミノプロピル(すなわち−(CH−NH)、メルカプトプロピル(すなわち−(CH−SH)、メチルチオ尿素(すなわち−(CH−NH−C(=S)−NHMe)、およびトリアミン(すなわち−(CH−NH−(CH−NH−(CH−NH)から選択される官能基によって官能化される。このような物質の例は、それぞれ商標QUADRASIL(商標)AP、QUADRASIL(商標)MP、QUADRASIL(商標)MTU、およびQUADRASIL(商標)TAで販売されている。これらの条件下での別の好適なパラジウム捕捉剤は、約700μm未満の、たとえば約450〜600μmの範囲などの平均直径を有する官能化マクロ多孔質ポリスチレンビーズからなる組成物である。これらの特徴を満足する物質は、商標QUADRAPURE(商標)で販売されている。好ましい実施形態において、ポリスチレン粒子は、ベンジルアミン官能化(たとえばQUADRAPURE(商標)BZA)であり、最も好ましい実施形態において、ポリスチレンビーズはチオ尿素官能化(たとえばQUADRAPURE(商標)TU)である。再び、好ましい実施形態において、このような捕捉剤は、上述のような量(すなわち重量/重量範囲または濃度)で使用される。
【0066】
上記の方法の代わりに、クロスカップリング反応の生成物にさらなる合成ステップ、たとえばアミン保護基の除去を進めた後に、パラジウム捕捉剤による精製が行われ得る。
【0067】
2−アミノベンゾアゼピンを調製する方法は、さらなる精製ステップを含み得る。たとえばアミン保護基(すなわちX)の除去後に、式(I)の化合物は1回以上再結晶され得る、および/または1回以上粉砕され得る。精製の他の方法は、たとえば溶媒切換技法およびクロマトグラフィーを含む。しかし好ましい実施形態において、クロマトグラフィーステップは、本明細書に記載するような2−アミノベンゾアゼピンからのパラジウム不純物の除去には包含されない。
【0068】
本発明の好ましい1実施形態を図1に示す。図は、{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミド(すなわちHG4)を調製するための改良された方法を示す。反応(i)〜(x)は以下の開示に記載する。
【0069】
図1の反応(i)を参照すると、(E)−1−(4−ブロモ−2−ニトロスチリル)ピロリジン(すなわちHF3)は、4−ブロモ−2−ニトロトルエンをN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール、ピロリジン、およびジメチルホルムアミドと化合させることによって調製される。
【0070】
続いて図1の反応(ii)を参照すると、1,4−ブロモ−2−ニトロベンズアルデヒド(すなわちHF4)は、HF3をNaIOと接触させることによって調製され、接触は溶液中で行われる。図1に示す詳細な実施形態において、反応はTHF:HO(1:1)溶液中で行われる。
【0071】
エナミン形成(すなわち反応(i))および酸化反応(すなわち反応(ii))において、操作温度は常時110℃未満に維持される。
【0072】
別個に図1の反応(iii)を参照して、エチル−3−シアノ−2−(トリフェニルホスファニリジン)プロパノアート(すなわちHF6)は、(カルボエトキシメチレン)トリフェニルホスホラン(すなわちHF5)をBrCHCNと接触させることにより調製され、接触は溶液中で行われる。図1に示す詳細な実施形態において、反応は酢酸エチル中で行われる。
【0073】
続いて図1の反応(iv)を参照すると、(E)−エチル−3−(4−ブロモ−2−ニトロフェニル)−2−(シアノメチル)アクリレート(すなわちHF7)は、HF4をHF6と接触させることによって調製され、接触は溶液中で約20℃〜約25℃の範囲内の温度で行われる。図1に示す詳細な実施形態において、反応はトルエン中で行われる。本明細書に記載する好ましい方法において、HF7のカラムクロマトグラフィーによる精製は不要である。
【0074】
続いて図1の反応(v)を参照すると、(1E,4E)−エチル−2−アミノ−8−ブロモ−3H−ベンゾ[b]アゼピン−4−カルボキシラート(すなわちHF8)は、還元および分子内環化を引き起こすのに有効な条件下で、HF7をFeと接触させることによって調製される。図1に示す詳細な実施形態において、反応は85℃の温度にて酢酸中で行われる。好ましい実施形態において、カラムクロマトグラフィーによるHF8の精製は不要である。
【0075】
Fe還元反応の好ましい実施形態において、Feの最小量が使用される。それゆえ約3当量のFeを使用することによって、より多い量を使用する反応と比較して、改善された結果を得ることができる。理論に束縛されることを望むものではないが、過剰なFeは生成物に結合することによって、生成物の収率を低下させると考えられる。いくつかの生成物は、精製の間にFeが除去するときに失われる。
【0076】
続いて図1の反応(vi)を参照すると、エチル2−[(tert−ブトキシ)カルボニルアミノ]−8−ブロモ−3H−ベンゾ[b]アゼピン−4−カルボキシラート(すなわちHF9)は、HF8をジ−tert−ブチルジカーボネートと接触させることによって調製され、接触は溶液中で行われる。図1に示す詳細な実施形態において、反応はジクロロメタン中で行われる。
【0077】
続いて図1の反応(vii)を参照すると、2−[(tert−ブトキシ)カルボニルアミノ]−8−ブロモ−3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−カルボン酸(すなわちHG0)は、HF9を水酸化ナトリウムと接触させることによって調製され、接触は溶液中で行われる。図1に示す詳細な実施形態において、反応はTHF中で1M NaOHを使用して行われる。
【0078】
NaOHの使用により、他の塩基、たとえばLiOHの使用と比較して、酸の形成に好ましい方法が提供される。さらに、塩基加水分解反応の好ましい実施形態において、酢酸エチル中でのHG0生成物のスラリの形成および続いての濾過によって、HG0生成物の純度を上昇させるための改良された方法が示される。
【0079】
続いて図1の反応(viii)を参照すると、{2−[(tert−ブトキシ)カルボニルアミノ]−8−ブロモ−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミド(すなわちHG1)は、HG0をジイソプロピルアミンと1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミドヒドロクロリド(すなわちEDC)およびHOBt(ヒドロキシベンゾトリアゾール)の存在下で接触させることによって調製され、接触は溶液中で行われる。図1に示す詳細な実施形態において、反応はジクロロメタン中で行われる。
【0080】
金属触媒クロスカップリング反応(クロスカップリング反応の記載については、以下の反応(ix)についての記載を参照)を行う前のアミドの形成は、代わりのスキームよりも好ましい方法、すなわちクロスカップリング反応を行った後のアミドの形成に相当する。アミドは、対応するエステル化合物(たとえばHF9)より高い効率でクロスカップリング反応を受ける。
【0081】
続いて図1の反応(ix)を参照すると、(tert−ブトキシ)−N−{4−(N,N−ジプロピルカルバモイル)−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル](3H−ベンゾ[f]アゼピン−2−イル)}カルボキサミド(すなわちHG3)は、クロスカップリング反応によって調製される。それゆえHG1をパラジウム触媒の存在下で、ならびに場合によりリガンドおよび塩基の存在下で4−ピロリジニルカルボニルフェニルボロン酸(HG2)と接触させる。接触は、HG3および残留パラジウム混入物を含む粗溶液が調製されるように、溶媒中で実質的に無水条件下で行われる。図1に示す詳細な実施形態において、溶媒は200プルーフのエタノールであり、触媒はPd(OAc)であり、リガンドは存在して4,4’−(フェニルホスフィニデン)ビス(ベンゼンスルホン酸)2カリウム塩水和物であり、塩基は存在してNaCOである。反応は還流条件下で行われる。
【0082】
本明細書に記載するように、反応は無水条件下で優先的に行われる。好ましい条件下では、無水および変性エタノールが溶媒として使用される。このことは、生成物がより純粋であり、より高い収率で調製されるため、水の存在下で行われるクロスカップリング反応よりも好ましい方法に相当する。さらに好ましい方法において、クロスカップリング反応生成物は、溶媒切換(以下でさらに詳細に記載するような)を行い、それによりボロン酸を沈殿させることによって部分的に精製される。
【0083】
HG3の粗溶液は、HG3および残留パラジウムを含み、本明細書に記載するようにパラジウム捕捉剤を使用して精製される。本明細書に記載するような好ましい実施形態において、HG3のエタノール性溶液に対する精製は、アミノプロピル−官能化球状シリカビーズ(たとえばQUADRASIL(商標)AP)または活性炭組成物、たとえばQUADRAPURE(商標)Cからなる組成物を使用して行われる。別の好ましい実施形態において、および本明細書に記載するように、溶媒交換手順は、HG3の粗溶液に対して行われ、それゆえHG3の酢酸エチル溶液が得られる。精製は次に、HG3の酢酸エチル溶液に対して、アミノプロピル(すなわち−(CH−NH)、メルカプトプロピル(すなわち−(CH−SH)、メチルチオ尿素(すなわち−(CH−NH−C(=S)−NHMe)、およびトリアミン(すなわち−(CH−NH−(CH−NH−(CH−NH)から選択される官能基によって官能化されたメソ多孔質球状シリカビーズ、またはチオ尿素官能化ポリスチレンビーズを使用して行われる。いくつかの好ましい実施形態において、HG3に対する脱パラジウム化は、QUADRASIL(商標)MP(すなわちメルカプトプロピル基によって官能化された球状シリカビーズ)を使用して行われる。いくつかの好ましい実施形態において、HG3に対する脱パラジウム化は、QUADRASIL(商標)TA(すなわちトリアミン基によって官能化された球状シリカビーズ)を使用して行われる。いくつかの好ましい実施形態において、HG3に対する脱パラジウム化は、QUADRASIL(商標)MTU(すなわちメチルチオ尿素基によって官能化された球状シリカビーズ)を使用して行われる。いくつかの好ましい実施形態において、HG3に対する脱パラジウム化は、QUADRASIL(商標)AP(すなわちアミノプロピル基によって官能化された球状シリカビーズ)を使用して行われる。いくつかの好ましい実施形態において、HG3に対する脱パラジウム化は、QUADRAPURE(商標)TU(すなわちチオ尿素基によって官能化されたポリスチレンビーズ)を使用して行われる。いくつかの好ましい実施形態において、HG3に対する脱パラジウム化は、QUADRAPURE(商標)C(すなわち約1200m/gの表面積を有する活性炭)を使用して行われる。いくつかの好ましい実施形態において、HG3に対する脱パラジウム化は、QUADRAPURE(商標)BZA(すなわちベンジルアミン基によって官能化されたポリスチレンビーズ)を使用して行われる。
【0084】
続いて図1の反応(x)を参照すると、HG3は保護基除去剤と反応して、HG4を与える。図1に示す詳細な実施形態において、保護基除去剤はトリフルオロ酢酸であり、反応はジクロロメタン溶媒中で行われる。反応が完了に達したとき、バッチ体積は、反応で使用したHG1の元の量に対して約1体積のDMCまで減少する。HG4生成物は、室温の4体積のEtOAcの添加により溶液から沈殿する。生成物は濾過により単離され、EtOAcおよびヘプタンで洗浄される。場合により、生成物はDCM/EtOAc(1:4)を用いた粉砕によりさらに精製することができる。
【0085】
場合により、単離HG4生成物は1回以上の再結晶によってさらに精製することさえできる。好ましい実施形態において、DCM/シクロヘキサン溶媒系を使用して生成物を再結晶させる。次に生成物をEtOAc中で繰り返し粉砕して、所望の純度に達するまでEtOAcおよびシクロヘキサンで洗浄する。
【0086】
好ましい実施形態において、HG1からHG4への変換は、HG4がHG1から少なくとも15%の、または少なくとも20%の、または少なくとも25%の収率で得られるように行われる。加えて好ましい実施形態に従って調製したHG4は、HPLCで測定されるように少なくとも98%、または少なくとも98.5%の純度を有する。さらに好ましい実施形態に従って調製したHG4は、約0.5%を超える量で存在する2つ以上の不純物を含有しない。たとえば好ましい実施形態において、1つの不純物は0.2%を超える量で存在し、他のすべての不純物は0.2%未満の量で存在する。いくつかの好ましい実施形態において、本発明に従って調製した最終HG4は、ラクタム不純物を0.62%以下の量で含み(実施例で本明細書に記載するようにHPLCで測定)、0.20%を超える量の他の不純物を含まない。いくつかの好ましい実施形態において、本発明に従って調製した最終HG4は、ラクタム不純物を0.60%以下の量で含み(実施例で本明細書に記載するようにHPLCで測定)、0.20%を超える量の他の不純物を含まない。
【0087】
本明細書で開示する方法の好ましい実施形態において、方法は、{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドおよびパラジウム残留物を含む組成物を提供し、ここでパラジウムは誘導結合プラズマ発光分析(ICP−OES)により、約50ppm未満の、または約30ppm未満の、または約20ppm未満の、または約15ppm未満の、または約10ppm未満の濃度で存在する。
【0088】
本明細書で開示される方法が、所望の化合物の大規模および小規模調製のどちらにも好適であることが認識されるであろう。本明細書に記載する方法の好ましい実施形態において、ベンゾアゼピンは、実験/研究所規模よりはむしろ大規模で、たとえば工業生産規模で調製され得る。たとえば本開示の方法によるバッチ型プロセスにより、ベンゾアゼピン生成物の少なくとも1gの、または少なくとも5gの、または少なくとも10gの、または少なくとも100gの、または少なくとも1kgの、または少なくとも100kgのバッチの調製が可能となる。さらに本方法により、HPLCで測定されるように少なくとも98%、または少なくとも98.5%の純度を有するベンゾアゼピン生成物の調製が可能となる。さらに本方法により、約0.5%を超える量で存在する2つ以上の不純物を含有しないベンゾアゼピン生成物の調製が可能となる。たとえば好ましい実施形態において、1つの不純物は0.2%を超える量で存在し、他のすべての不純物は0.2%未満の量で存在する。本開示による好ましい実施形態において、これらの生成物は、いかなる形のクロマトグラフィー(たとえばガスクロマトグラフィー、HPLC、分取LC、サイズ排除クロマトグラフィーなど)による精製も含まない反応シーケンスで得られる。
【0089】
本明細書に挙げるすべての特許、特許出願および刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み入れらている。しかし明示的な定義を含む特許、特許出願、または刊行物が参照により組み入れられている場合、これらの明示的な定義は、その明示的な定義が見出される組み入れられた特許、特許出願、または刊行物に適用され、本出願の残りのテキスト、特に本出願の請求項には適用されないことが理解されるべきである。
【0090】
本発明は、その好ましい詳細な実施形態と併せて記載されているが、上の記載ならびに続いての実施例は本発明の範囲を例証するものであり、制限するものでないことが理解されるべきである。当業者によって、本発明の範囲から逸脱せずに各種の変更が行われ得て、均等物が置き換えられ得ることと、他の態様、利点および修正が本発明が関する分野の当業者に明らかであることとが理解されるであろう。
【実施例】
【0091】
(実施例1)
4−ブロモ−2−ニトロトルエンからのエナミンHF3の調製
250gバッチ2個をDMF−DMA、DMF、ピロリジンを使用して、96〜100℃で4時間行った。一般的な手順は以下の通りであった:加熱マントル内の3口丸底フラスコに機械式スターラー、凝縮器、温度計、および窒素入口を装備する。ジメチルホルムアミドおよび4−ブロモ−2−ニトロトルエンをフラスコに添加して、溶液が形成されるまで内容物を撹拌した。フラスコにピロリジンを、続いてDMF−DMAを投入した。反応物を加熱して還流させ(96℃〜100℃)、還流にて約4時間維持した。反応物をTLCによって監視した。完成した反応混合物を回転蒸発器(50℃)で、生成物に対して約2体積まで濃縮した。生成物の単離は2つの異なる方法によって行った。第1に、濃縮したバッチを高速でかき混ぜているメタノール(2体積)中に分配し、第2に、高速でかき混ぜ中の濃縮したバッチ混合物にメタノール(2体積)を投入した。どちらの例においても、得られたバッチ媒体は濃厚懸濁物であった。濾過して真空下、35℃にて乾燥させた。この作業により、HF3の2つの290g(84%収率、H NMRアッセイにより98.2%または95.8重量/重量%)試料を得た(表2)。
【0092】
96〜100℃での約4時間の加熱の後に、完全変換が見られた。完成した反応混合物を周囲温度にて3日の期間にわたって静置すると、HF3のHPLC純度の変化が観察されなかったため、安定性が示された。
【0093】
開始物質および生成物のどちらもアリールニトロ部分を含有する。HF2およびHF3の示差走査熱量測定(DSC)データを取込んで、合成プロセスが記録された開始温度のあまりに近くで行われないようにした(表1)。どちらの物質も高エネルギー性であることが見出された。観察されたHF3の低い開始温度:125℃および観察されたHF2:1843J/gおよびHF3:1549J/gの高いエネルギーのために、ステップ1の操作温度(100〜105℃)は、プロセスの間のいずれの時点でも110℃を超えることは許容されなかった。
【0094】
【表1】

【0095】
【表2】

(実施例2)
4−ブロモ−2−ベンズアルデヒドを得るためのエナミンHF3の酸化切断
実験手順は、以下の条件を含んでいた:NaIO、THF:HO、0から5〜25℃、18時間。一般的な手順は以下の通りである。冷却槽内の3口丸底フラスコに機械式スターラーおよび熱電対を装備した。水および過ヨウ素酸ナトリウムをフラスコに投入して、10分間撹拌した。氷/水浴を使用して反応物を約10℃に冷却した。反応物にTHFを一度に添加した。反応物を0℃〜5℃で冷却し続けた。(E)−1−(4−ブロモ−2−ニトロスチリル)ピロリジン(1160g、3.90mol)をTHF(3L)に溶解させることによって溶液を調製した。この溶液を5℃未満の反応物に細流として添加した。一晩かけて反応混合物を室温に加温した。反応物をTLCによって監視した。開始物質が観察されない場合、反応は完了している。濾過して固体を除去することにより、生成物を単離した。酢酸エチルで固体を2回洗浄した。濾液すべてを分離漏斗内で合せて、層を分離させて、有機層を収集した。水層はEtOAcで3回抽出した。合せた有機物を水および塩水で洗浄した。有機溶液を硫酸マグネシウムおよび木炭で脱水し、濾過して、濾液を濃縮して濃厚黄色懸濁物とした。固体をエチルエーテル中でスラリ化して、−10℃〜−20℃に冷却した。濾過して固体を収集して、冷(−20℃)エチルエーテルで洗浄した。周囲温度で黄色粉末として乾燥した。
【0096】
エナミン550gに対してバッチを行った。この作業により生成物340.9gが得られ、これには6.5重量/重量%の水が含有されていた(H NMR、DMSO−d)。したがって最終計算質量318.7g(収率74%、HPLCにより99.4%a/a)を得た。
【0097】
反応の進行はTLC(ヘプタン中20%EtOAc)およびHPLCによって監視した。完全変換は、バッチ温度を0〜5℃から20〜25℃に上昇させながら、バッチを一晩かき混ぜたときに観察された。開始物質および生成物のどちらもアリールニトロ部分を含有する。HF3およびHF4の示差走査熱量測定(DSC)データを取込んで、合成プロセスが記録された開始温度のあまりに近くで行われないようにした(表3を参照)。表4に製造したアルデヒドHF4の概要を提供する。
【0098】
【表3】

【0099】
【表4】

(実施例3)
ホスホランHF6の調製
以下の条件を使用して、ウィッティグ前駆体HF6を調製した:BrCHCN、EtOAc、還流。加熱マントル内の、機械式スターラー、凝縮器、熱電対、窒素入口、および乾燥管を装備したフラスコに、酢酸エチル(7.8体積)およびエチル2−(トリフェニルホスファニリデン)アセテート(HF5)を添加した。ブロモアセトニトリルを投入して、反応物を加熱して還流させ(77℃)、還流下で一晩維持した。HPLCによって反応の進行を監視した。3%未満の開始物質が観察される場合、反応は完了している。
【0100】
生成物を単離するために、反応物を室温に冷却し、濾過して固体を除去して、固体を酢酸エチルで2回洗浄した。蒸発させて溶媒の約半分を除去した。有機濃縮物を塩水で洗浄した。硫酸マグネシウムで有機物を脱水し;濾過して、真空下で蒸発させて濃縮溶液を得た。真空を中断して、残留物を撹拌しながら固体が沈殿するまでエチルエーテルで希釈した(約40分間)。機械式スターラーを装備した2ガロンのバケツにスラリを移動した。スラリをヘプタンでさらに希釈して、さらに30〜60分間撹拌した。固体を13インチクロックフィルタで濾過して、1:1のヘプタン/エチルエーテルで2回洗浄した。真空下、30℃〜35℃にて乾燥させた。
【0101】
酢酸エチルの希釈は7.8体積から2.6体積に減少させることができた。より濃縮された条件を使用すると、生成物の品質に対する負の影響はなかった。HF5 1159gに基づいて、単離HF6質量588g(収率91%、HPLCにより98%a/a超)を得た。
【0102】
反応の間に反応で形成されたHBrを捕捉するために、エチル2−(トリフェニルホスファニリデン)アセテート1当量が消費される。トリアルキルアミン塩基の包含により、効率は向上され得る。
【0103】
反応はHF5の3.2gスケールで完了した。反応の進行はTLC(ヘプタン中60%EtOAc)およびHPLCによって監視した。
【0104】
大規模反応は、HF5 1159gおよびBrCHCN約200g、ならびにEtOAc 3L(HF5に対して約2.6体積)を使用した。TLCおよびHPLCによる反応進行の監視によって、より濃縮されたバッチの実行の結果として、生成物の品質に対する負の影響は示されなかった。
【0105】
表5および表6に示すように、HF5およびHF6の示差走査熱量測定(DSC)データおよび製造データが得られた。
【0106】
【表5】

【0107】
【表6】

(実施例4)
アクリレートHF7を得るためのホスホランHF6およびアルデヒドHF4のウィッティヒ反応
トルエン溶媒中でウィッティヒカップリングを行った。反応は、HF4の消費を監視しながら、高温にてまたは20〜25℃に維持して行った。低温手順により、HF7を収率87%で得た。このバッチでは純度は決定されなかった。
【0108】
一般的な手順は以下の通りである。機械式スターラー、窒素入口、乾燥管、熱電対プローブおよび還流凝縮器を備えた加熱マントル内の3口丸底フラスコに4−ブロモ−2−ニトロベンズアルデヒド(1.0当量)、トルエン(16体積)およびエチル3−シアノ−2−(トリフェニリリデン)プロパノアート(1.1当量)を投入した。暗褐色透明反応混合物を高温または室温のどちらかで2時間にわたって加熱および撹拌した。開始物質が観察されない場合、反応は完了している。未溶解塩を除去するために、反応混合物を約26℃に冷却して濾過することによって生成物を単離して;フィルタをトルエンで2回すすいだ。回転蒸発器により減圧下にて、水浴温度約45℃で、濾液を蒸発乾固させて暗褐色半固体とした。ヘプタンで粉砕して、手動で短時間撹拌した。ヘプタンの大部分をデカントしてから、混合物を残りを濾過して固体を収集する。ヘプタンで2回すすぎ、2時間空気乾燥させた。粗生成物をメタノールに懸濁させて、室温にて30分間撹拌した。すべての固体塊が崩壊するまで撹拌を続けると、微細固体の希薄なスラリが残った。懸濁物を冷凍庫に一晩静置した。濾過してオフホワイト色の固体を収集して、事前に冷却しておいた(−20℃)MeOHで2回すすいだ。生成物を真空下、30℃にて5時間乾燥させた;室温にて乾燥を続けた。
【0109】
高温法では、開始物質HF4およびHF6をトルエン中で合せて、100〜105℃に加熱した。HF4供給原料は6.5重量/重量%の水を含有していた。初期のバッチ加熱の間に、過剰な水を共沸により除去した。反応塊は通例、100℃に加熱するときに黒色を呈した。反応の進行はTLC(ヘプタン中66%EtOAc)およびHPLCによって監視した。これによりHF7を収率約48〜53%で得た。単離した収量は主として、粗バッチ混合物中のHF7生成物の低アッセイに起因した。改良された内部アッセイ(所望のHF7の95%a/a超)は、ウィッティヒ化学作用が20〜25℃で行われたときに達成された。改良されたHF7アッセイにより、最終単離溶媒(MeOH)中での生成物の便宜的な結晶化およびきわめてより高い単離収率(87%)が得られた。低温法では、いくつかの実施形態において、HF4供給原料は低い含水率(すなわち低いKF値)を有するべきである。得られたデータを表7に示す。
【0110】
【表7】

(実施例5)
アミジンHF8を得るためのニトロ化合物HF7のFe還元および環化
HF7のFe還元および中間アニリンの分子内環化によって、所望のアミジンHF8を得た。HF7のFe還元を以下の条件下で行った:Fe粉末(約325メッシュ)3.0当量、AcOH、80〜85℃。HF7 47.5gから開始して、単離HF8質量38.2g(収率88%、HPLCにより96.1%a/a)を得た。
【0111】
一般的な手順は以下の通りであった:加熱マントル内の3口丸底フラスコに機械式スターラー、窒素入口、乾燥管、熱電対プローブおよび還流凝縮器を装備した。フラスコにHF7(1.0当量)および氷酢酸(19体積)を投入して、淡黄色透明溶液を80℃〜85℃に加熱した。反応温度を90℃未満に維持しながら、鉄粉(325メッシュ、6.2当量)を数回に分けて2時間にわたって添加して、オフホワイト色懸濁物を80℃〜85℃でさらに3時間撹拌した。20〜30分間隔で早期の添加を行う。発熱が弱まった後に、添加速度を上昇することができる。反応の進行をTLCによって監視した。2%未満の開始物質が残存している場合、反応は完了している。生成物の単離は、反応混合物を室温まで冷却し、セライトパッドで濾過して、次に氷酢酸で3回すすぐことによって達成された。回転蒸発器により減圧下にて、合せた濾液を蒸発させて油とした。冷水で希釈して、飽和重炭酸ナトリウム溶液を用いてpHが8を超えるように調整した。オフホワイト色から淡褐色の懸濁物に酢酸エチルを撹拌しながら添加した。ポリパッドを使用したクロックフィルタによって酢酸エチルおよび水混合物を濾過した。酢酸エチルを用いて褐色からオフホワイト色の固体を3回スラリ化および再濾過した。すべての濾液を合せ、水層を除去して、合せた有機層を重炭酸ナトリウム飽和溶液、次に塩水で洗浄した。水層を合せ、酢酸エチルによって2回逆抽出した。この有機層を塩水で洗浄した。すべての有機層を合せ、MgSOで脱水し、濾過して、酢酸エチルで2回すすいだ。回転蒸発器で濾液を濃縮して、淡黄色固体スラリを得た。ジエチルエーテルで希釈し、濾過して固体を収集して、固体をジエチルエーテルで2回すすいだ。生成物を周囲温度にて一晩空気乾燥させた。得られたDSCデータを表8に示す。
【0112】
【表8】

Fe 3.0当量の使用により、バッチへのFe粉末の第1投入量の添加の約3時間以内に、ニトロ部分の完全還元が促進された。バッチをさらに3〜5時間加熱(80〜85℃)することによって、所望のアミジンへの環化が完了した。この最初の作業によって、HF8 38.2g(収率88%)が得られ、96.1%a/aの最終HPLC純度が示された。
【0113】
バッチの冷却中および水性ワークアップを通じて、Fe由来塩のゼラチン状沈殿が発生し得る。この沈殿は、最初の濾過の前にセライト(HF7に対して100重量/重量%)を冷却バッチ混合物に添加したときには観察されなかった。さらなるバッチは下の表に示すように行った(表9)。
【0114】
【表9】

(実施例6)
エステルHF9を得るためのHF8のN−BOC保護
アミジンHF8のN−BOC保護を以下の条件に従って行った:(Boc)O、TEA、DCM、0から5〜25℃。反応の進行はHPLCを使用して監視した。HF8 34.0gから開始して、単離HF9を質量34.5g(収率77%、HPLCにより94.3%a/a)で得た。
【0115】
一般的な手順は以下の通りであった。冷却槽内の3口丸底フラスコに機械式スターラー、窒素入口、乾燥管、熱電対プローブおよび添加漏斗を装備した。フラスコにHF8(1.0当量)およびジクロロメタン(10体積)を投入して、オフホワイト色懸濁物を室温にて10分間撹拌した。約0℃に冷却して、0℃〜4℃のトリエチルアミン(1.5当量)を10分間にわたって添加漏斗を介して添加した;−5℃〜0℃で30分間撹拌した。ジ−tert−ブチルジカーボネート(1.5当量)のジクロロメタンによる−5℃〜0℃の溶液を添加漏斗を介して30分間にわたって(細流として)滴加した。冷浴を取外し、室温にて36時間撹拌した。反応の進行をTLCおよびHPLCによって監視した。2%未満の開始物質が残存している場合、反応は完了している。反応混合物を水によって反応停止することによって、生成物を単離した。有機層を分離して、水層をジクロロメタンで抽出した。合せた有機層を重炭酸ナトリウム飽和溶液で2回、塩水で1回洗浄した。水層を合せ、ジクロロメタンで2回逆抽出した。この有機層を塩水で洗浄した。すべての有機層を合せ、MgSOで脱水し、木炭を添加して、濾過して、ジクロロメタンで2回すすいだ。真空下で濾液を濃縮して、淡黄色固体を得た。粗化合物をヘプタンで粉砕して、最低1時間撹拌した。固体を濾過により収集して、ヘプタンで2回すすいだ。生成物を周囲温度にて一晩空気乾燥させた。
【0116】
通例の反応により、24時間かき混ぜた後に、約75%の所望の生成物への変換が示された。すべてのアミジン供給原料を消費するには、さらに12〜18時間が必要であった。合成の間に観察された主要な不純物(HF9に対してRRt 0.96)は、ラクタム副生成物であった。得られたデータを表10に示す。
【0117】
【表10】

(実施例7)
HG0を得るためのエステルHF9の塩基加水分解
エステルHF9の1M NaOHによる加水分解を以下の条件を使用して行った:THF、−15℃〜20−25℃。反応の進行はHPLCを使用して監視した。反応は通例、18時間かき混ぜた後に完了した。
【0118】
一般的な手順は以下の通りであった。冷却槽内の3口丸底フラスコに機械式スターラー、窒素入口、熱電対プローブおよび添加漏斗を装備した。フラスコにHF9(1.0当量)およびテトラヒドロフラン(13体積)を投入した;撹拌して淡黄色透明溶液を得た。約−15℃(ドライアイス−メタノール浴)に冷却して−15℃〜−5℃の1M水酸化ナトリウム水溶液(1.5当量)を60分間にわたって細流として滴加した。冷浴(cooling)を取外し、周囲温度にて18時間撹拌した。反応の進行をHPLCによって監視した。2%未満の開始物質が残存している場合、反応は完了している。反応混合物を半量ずつに分けて、各半量を2個の分離漏斗内の氷冷水に注入して、0.5N塩酸溶液によってpHを5〜6に調整した。各漏斗を酢酸エチルで2回抽出して、有機層を合せた。塩化ナトリウム固体を水層に添加して、10分間撹拌し、酢酸エチルで抽出した。すべての有機層を合せ、各漏斗を塩水で洗浄して、MgSOで脱水し、木炭を添加して、両方の有機混合物を濾過して、フィルタを酢酸エチルで2回すすいだ。真空下で濾液を濃縮して、淡黄色固体を得た。粗化合物をアセトニトリルで粉砕して、濾過して固体を収集し、ジエチルエーテルで2回すすいだ。生成物を周囲温度にて一晩乾燥させた。最終ケーキの洗浄は当体積のtert−ブチルメチルエーテル(MTBE)によって行うことができ、最終ジエチルエーテル洗浄は省略することができる。単離HG0ケーキは、ACNで濡れているときに、MTBEへの高い溶解度を示した。
【0119】
HF9から開始して、単離HG0生成物(収率45%、HPLCにより52.6%a/a)を得た。EtOAc(300mL)中でのHG0ケーキの高温(60℃)粉砕により、HG0(81.8%a/a)を得た。HG0試料をEtOAc中で再スラリ化したときに、純度の有意な増大(たとえば52.6%a/a〜81.6%a/a)が達成された。得られたデータを表11に示す。
【0120】
【表11】

(実施例8)
アミドHG1を得るための酸HG0のHNPr2とのカップリング
酸HG0とHNPrとの間のアミド調製を以下の条件に従って行った:EDC、HOBt、DCM、−15℃〜20−25℃(表13)。
【0121】
一般的な手順は以下の通りであった。冷却槽内の3口丸底フラスコに機械式スターラー、窒素入口、および熱電対プローブを装備した。フラスコにジプロピルアミン(1.2当量)およびジクロロメタン(10体積)を投入して、透明溶液を−10℃に冷却した(ドライアイス−メタノール浴)。−15℃のN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミドHCl(1.2当量)、続いてN,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.3当量)を5分間にわたって添加して、反応混合物を−15℃〜−5℃で40分間撹拌した。−15℃に冷却して、HG0(1.0当量)、続いて1−ヒドロキシベンゾトリアゾール1水和物(1.2当量)を5分間にわたって添加して、内部温度を−15℃〜−12℃に維持した。冷浴を取外し、周囲温度にて14時間撹拌した。反応の進行をHPLCによって監視した。残存している開始物質が1%未満のとき、反応を停止することができる。反応混合物を分離漏斗内の水に注入して、有機層を分離することによって生成物を単離した。水層をジクロロメタンで抽出した。合せた有機層を氷冷0.5N塩酸溶液で2回洗浄した。ジクロロメタンによって水層を逆抽出して2回洗浄した。合せた有機層を重炭酸ナトリウム飽和溶液で2回、塩水で1回洗浄した。水層を合せ、ジクロロメタンで洗浄および逆抽出を2回行った。この有機層を塩水で洗浄した。すべての有機層を合せ、MgSOで脱水し、木炭を添加して、濾過して、ジクロロメタンで2回すすいだ。回転蒸発器により真空下で濾液を濃縮して、淡黄色泡状/ゴム状固体を得た。固体を乾燥トレーに移し、生成物を周囲温度にて一晩、真空下で窒素流を用いて乾燥させた。
【0122】
ジエチルエーテルまたはMTBE、続いての冷却(−20℃、12時間、Ref%1077−JJ−166)の使用時に、固体沈殿は観察されなかった。
【0123】
HG0 29.5gから開始して、単離HG1質量35.9g(収率100%、HPLCにより88.5%a/a)を得た。得られたデータを表12に示す。
【0124】
【表12】

HG1の粗単離純度は68〜88%a/aであり、鈴木カップリングの所望の開始純度は90%a/a超であった。純度の実質的な上昇は、カラムクロマトグラフィーまたは粉砕(シクロヘキサン/DCM)によって得ることができた。HG1のさらなる精製は、2つの別個の方法によって証明された。第1に、HG1試料(88.5%a/a)3.0gを、シリカゲルによるカラムクロマトグラフィー(75g、70〜230メッシュ)によって、DCM中のMTBEの増加勾配(0〜50体積/体積%)を使用して精製した。画分の溶離を監視して(TLC)、シングルスポット画分をプールして、真空中で濃縮して、HPLC純度94.5%a/aを示す、薄黄色固体2.4g(回収80%)を得た。第2に、HG1試料(88.5%a/a)13.0gをシクロヘキサンおよびヘプタン(10:1、体積/体積)からの再結晶によって精製して、HPLC純度92%を有する泡9.5g(回収73%)を得た。この例では、濃縮されたHG1は、濾液の濃縮時に実際に得られる。不純物は単離ケーキ中に捕捉される。
【0125】
(実施例9)
HG3を得るための臭化アリールHG1とボロン酸HG2との鈴木カップリング、HG4を得るためのHG3の脱パラジウム化およびHG3のN−BOC脱保護
臭化アリールHG1およびボロン酸HG2の鈴木カップリングは、以下にまとめた実験条件に従って行った:HG1:1当量、HG2:1.2当量、Pd(OAc):0.025当量、リガンド(4,4’−(フェニルホスフィニデン)ビス(ベンゼンスルホン酸)2カリウム塩水和物):0.05当量、NaCO:3当量、EtOH:10体積、還流、4時間。反応の進行はHPLCを使用して監視した。脱パラジウム化はQUADRASIL(商標)AP(www.reaxa.com)を使用して行った。HG4を得るためのHG3のN−BOC保護は、以下の手順に従って行った。
【0126】
250mLの3口丸底フラスコに機械式スターラー、温度計、ガス拡散管、および添加漏斗を装備した。フラスコにHG1(7.0g)およびエタノール(70mL、無水グレード)を投入した。窒素を用いて脱気しながらバッチをかき混ぜて(40分間)、透明溶液を得た。バッチ媒体をさらに30分間絶えず脱気しながら、バッチにPd(OAc)(86mg、0.025当量)、リガンド(377mg、0.05当量)、HG2(3.96g、1.2当量)、およびNaCO(4.83g、3当量)を投入した。黄色懸濁物を還流(75〜78℃)まで加熱して、その間にHG1の消費をHPLC分析によって監視した(IPC 110−C、HG3に対する残留HG1:4時間後に1.9%)。4時間後、バッチを周囲温度に冷却して、セライト(1.4g、HG1に対して20重量/重量%)を投入した。バッチをさらにかき混ぜ(1時間、20〜25℃)、焼結ガラス漏斗で濾過した。ケーキをエタノール(2×7mL、無水グレード)で洗浄した。回転蒸発器を使用して、エタノール性濾液を2体積に濃縮した。蒸留残留物を酢酸エチル(14ml)に再溶解させて、1体積に減少させた。残留物を酢酸エチル(70mL)に再溶解させ、30分間かき混ぜて(20〜25℃)、濾過により浄化して、ラクタム不純物を除去した。ケーキを酢酸エチル(2×7mL)によって洗浄した。収集した濾液にQUADRASIL(商標)AP(350mg)を投入して、かき混ぜ(3時間、20〜25℃)、焼結ガラス漏斗で濾過した。収集したケーキを酢酸エチル(2×7mL)によって洗浄した。濾液から試料採取して残留パラジウム(192−1)を決定した。濾液を1体積(7mL)に濃縮して、シクロヘキサン(35mL)に再溶解させた。バッチを1体積(7mL)に濃縮して、ジクロロメタン(50mL)に再溶解させた。褐色溶液を−20〜−25℃に冷却した。内部温度を−20〜−25℃の範囲に維持しながら、トリフルオロ酢酸(14.2g、10当量)のDCM(20mL)による溶液をバッチに30分間にわたって添加した。冷浴を除去せずに、バッチを一晩で20〜25℃に加温した。IPC(HG4に対する残留HG3)のために、バッチから試料採取した。バッチを水(150mL、5℃)に投入して、かき混ぜ(15分)、相を分離した。水相をDCM(30mL)によって逆抽出した。合せたDCM抽出物を10%NaHCO溶液(4×60mL、各洗浄ごとにかき混ぜ10分間)によって塩基性化した。合せた水相(aqueous)をDCM(30mL)によって逆抽出した。合せたDCM層を塩水(60mL)で洗浄して、乾燥させ(NaSO、1.5g)、回転蒸発器で1体積(HG1に対して)に濃縮した。残留物(ピンク色スラリ)を酢酸エチル(28mL、2時間、20〜25℃)によって粉砕し、濾過して、酢酸エチル(2×4mL)およびヘプタン(2×4mL)ですすいだ。HG4ケーキを減圧下で乾燥させた。これによりHG4 2.15g(95.6%a/a ロット番号193−1)を得た。HG4試料(2時間、20〜25℃)をDCM(5mL)および酢酸エチル(20mL)中で粉砕して、濾過し、減圧下で乾燥させて、1.85g(収率29%、97.35%a/a、ロット番号193−2)を得た。
【0127】
通例の水性ワークアップによって処理した粗HG4(HG1 2.5gより得た、74.9%a/a ロット番号190−1)DCM 10mLによる溶液を使用する、HG4のさらなる精製方法を開発した。シクロヘキサン(30mL)(20〜25℃)を投入して、懸濁物をさらに1時間かき混ぜた。得られたピンク色懸濁物を濾過して、シクロヘキサン(5mL)ですすいだ。単離ケーキ(1.15g、ロット番号196−1)は95.9%a/aの純度を示した。ケーキ196−1試料20mgをEtOAc(1mL、1時間、20〜25℃)中でさらに粉砕して濾過した。単離固体(196−2)は純度99.7%a/aの純度を示した。ケーキ196−2からのHPLC純度の結果を検討した後、ケーキ196−1の残りの1.1gをEtOAc(10mL、16時間、20〜25℃)中で粉砕した。懸濁物を濾過して、単離ケーキをEtOAc(2mL)およびシクロヘキサン(2mL)で洗浄した。HG4試料を40℃の真空乾燥器で一晩乾燥させて、HG4 0.95g(HG1から収率51%、ロット番号196−3)を得た。HPLCによる分析により、99.36%a/aの最終純度が明らかになった。
【0128】
表13に異なる反応条件を使用したHG3の調製の概要を示す。LC MSによって同定されたような粗反応混合物中の主な不純物は、アミジンの加水分解生成物(本明細書では「ラクタム」または「ラクタム不純物」と呼ぶ)であった。ラクタム(RRt 1.02、M+460)は粗反応混合物に15〜25%a/aの範囲で存在する。粗HG3生成物中のラクタム不純物のレベルを制御する2つの方法が好適である。第1に、ラクタムは、酢酸エチル(30分、20〜25℃)中での粉砕を使用して粗HG3生成物から部分的に沈殿させて、濾過により除去することができる。第2に、反応条件およびワークアップ条件がほぼ無水に維持される場合は、ラクタムの形成を鈴木カップリングの間に制御することができる。したがって、鈴木カップリングがエタノール(10体積)中のみで行われた場合、より低いレベルのラクタム(5〜10%a/a対15〜25%a/a)が観察された。
【0129】
【表13−1】

【0130】
【表13−2】

(実施例10)
鈴木生成物HG3の脱パラジウム化
鈴木バッチ混合物の非水性ワークアップの間に、正常な脱パラジウム化を完了することができる。浄化した(セライト、濾過)エタノール性HG3バッチ混合物の処理またはエタノールから酢酸エチルへの溶媒交換後の適切なPd捕捉剤による処理のどちらかによって、満足な結果が得られる。
【0131】
エタノール中で行った正常な鈴木カップリングの完了時に(HG1 5.0g、実験番号184)、粗HG3バッチ混合物をセライトによる濾過によって浄化した。得られたエタノール性HG3濾液を最終体積200mL(25mg/mL)に希釈して、各100mLの2つの分量に分割した。一方の分量をさらに4mLの一定分量にさらに細分して、表14に概説するように処理した。完了した試験物質を濾過して(0.5pm PTFEフィルタ)、濾液を残留パラジウム含有量について分析した(ICP−OESを使用)。
【0132】
【表14】

表14から、許容され得るPdの結果は、QUADRAPURE(商標)C、QUADRASIL(商標)APおよびDARCO(登録商標)KB−G(Norit Americas,Inc.から入手可能)で得られた。しかしHPLCを使用する正常な試料のさらなる分析によって、DARCO(登録商標)KB−G(ロット番号186−10)によって処理したHG3試料は完全な分解を受けていたことが示された。したがって本試験は、エタノール性HG3溶液を正常に処理するために使用できる2つの捕捉剤の選択肢を明らかにした。
【0133】
第2の手法は、HG3/酢酸エチル生成物流を捕捉剤の同一の選択によって処理することであった。この処理は最初に、HG3の第2のエタノール性部分の一定分量50mLにエタノールの酢酸エチルへの溶媒交換(回転蒸発器)を受けさせることによって達成した。酢酸エチルの最終体積を50mLに調整した。この溶液を浄化して、4mLの一定分量に細分して、表15に概説するように処理した。完成した試験物質を濾過して(0.5pm PTFEフィルタ)、濾液を残留パラジウム含有量について分析した。
【0134】
【表15】

表15から、許容され得るPdの結果は、QUADRAPURE(商標)TU、QUADRASIL(商標)MTU、QUADRASIL(商標)MP、QUADRASIL(商標)AP、QUADRASIL(商標)TAおよびDARCO(登録商標)KB−Gによって得られた。前に観察したように、Darco IU3−G(ロット番号187−10)処理試料のHPLC純度の分析により、試料が完全に分解していたことが確認された。したがって本試験は、酢酸エチルによるHG3溶液を正常に処理するために使用できる5つの捕捉剤の選択肢を明らかにした。
【0135】
鈴木バッチ混合物からのパラジウムの除去は、EtOHまたは酢酸エチルのどちらかの中で便利に行うことができる。またこのプロセスは、比較的短期間で1回の処理によって完了することができる。
【0136】
(実施例11)
標的HG4を得るためのHG3のN−BOC脱保護
N−BOC保護基の除去は、以下の手順に従って、トリフルオロ酢酸(TFA、10当量)をDCM(15体積、−25〜25℃、24時間)中で使用して達成された。TFAの溶液を等量のDCM中で調製して、バッチ温度を20℃未満に維持しながら、HG3の冷(−25℃)溶液に1時間の期間にわたって添加した。添加完了時に、バッチの温度を20〜25℃に上昇させた。完了した反応混合物を冷(0〜5℃)水で希釈する。相分離および水層の逆抽出の後に、バッチのpHを10%NaHCO溶液によって調整して、過剰なTFAを除去した。有機相を塩水でさらに洗浄して、脱水し(MgSO)、濾過して、濃縮して淡黄色スラリを得た。スラリをEtOAc(11.6体積、2時間、20〜25℃)中で粉砕して、濾過して淡ピンク色固体を得た。ケーキをEtOAc(各1.5体積で2回分)で洗浄し、最後にヘプタンで洗浄した(各1.5体積で2回分)。最終化合物を真空乾燥器で乾燥させた(40℃、48時間)。
【0137】
この手順を使用してHG3の脱保護を行った。反応の進行はHPLCを使用して監視した。代表的な脱保護をHG3(560mg、1mmol、74.9%a/a)に対して行った。この試験物質からHG4(98.6%a/a)320mg(収率92.3%)を単離した。
【0138】
これらの実験では、酢酸エチルの添加前にバッチ体積をHG1に対してDCM約1体積に減少させて、HG4生成物を沈殿させた。
【0139】
(実施例12)
HG4の調製
鈴木カップリングステップおよび脱保護ステップをHG1(91.25%a/a)7.0gスケールで行った。鈴木カップリングを以下の無水条件下で行った:HG1 1当量、HG2 1.2当量、Pd(OAc) 0.025当量、リガンド(4,4’−(フェニルホスフィニデン)ビス(ベンゼンスルホン酸)2カリウム塩水和物)0.05当量、NaCO 3当量、EtOH 10体積、75〜78℃、4時間。還流下での加熱4時間後のHG3に対する残留HG1は1.9%であった。冷却した鈴木バッチ混合物にセライト(HG1に対して20重量/重量%)を投入し、かき混ぜて、濾過した。HG3のエタノール性溶液に、エタノールから酢酸エチルへの溶媒交換を受けさせた(最終体積:70mL)。このプロセスによって、HG3に由来するラクタム不純物を沈殿させた。バッチを濾過して、ラクタム不純物を除去した。
【0140】
HG3を含有する酢酸エチル濾液をQUADRASIL(商標)AP(350mg、3時間、20〜25℃)で処理して、濾過した。濾液体積をHG1に対して約1体積に減少させて、濃縮物をシクロヘキサン(5体積)で希釈し、再びHG1に対して約1体積に減少させた。このプロセスの結果は、水性ワークアップまたはカラムクロマトグラフィーによる半精製を受けていないHG3(55.6%a/a)のシクロヘキサン約1体積による溶液であった。このHG3溶液で実施例11で概説したような脱保護ステップを進めた。塩基性化および水性ワークアップの後に、バッチの体積をHG1に対してDCM約1体積に減少させた。HG4生成物をEtOAc(4体積、2時間、20〜25℃)によって沈殿させた。生成物を濾過によって収集して、EtOAc(8mL)およびヘプタン(8mL)で洗浄した。このプロセスにより、HG4 2.15g(収率34%)が得られ、95.6%a/aのHPLC純度を示した。この試料をDCM/EtOAc(1:4、25mL、2時間)によってさらに粉砕した。再単離により、HG4 1.85g(収率29%)が得られ、97.3%a/aのHPLC純度を示した。
【0141】
純度が98%を超えるHG4を得るために、さらなる結晶化を行った(表16)。濾液の不純物含有量および生成物消失について検査することに特に重点を置いて、4つの異なる溶媒系をアッセイした。シクロヘキサンを貧溶媒として使用して最良の結果が得られたのは、この濾液が観察された最低レベルのHG4および最高レベルの合せた不純物を含有しているためであった。この精製方法を、通例の水性ワークアップによって処理された粗HG4(HG1 2.5gから得た、74.9%a/a)のDCM 10mLによる溶液で評価した。シクロヘキサン(30mL)(20〜25℃)を投入して、懸濁物をさらに1時間かき混ぜた。得られたピンク色懸濁物を濾過して、シクロヘキサン(5mL)ですすいだ。単離ケーキ(1.15g)は95.9%a/aの純度を示した。ケーキ196−1試料20mgをEtOAc(1mL、1時間、20〜25℃)中でさらに粉砕して濾過した。単離固体はHPLCにより99.7%a/aの純度を示した。ケーキ196−2からのHPLC純度の結果を検討した後、ケーキ196−1の残りの1.1gをEtOAc(10mL、16時間、20〜25℃)中で粉砕した。懸濁物を濾過して、単離ケーキをEtOAc(2mL)およびシクロヘキサン(2mL)で洗浄した。HG4試料を40℃の真空乾燥器で一晩乾燥させて、HG4 0.95g(HG1から収率51%)を得た。HPLCによる分析により、99.36%a/aの最終純度が明らかになった。
【0142】
【表16】

(実施例13)
HG4の調製
鈴木カップリングステップおよび脱保護ステップを再度、HG1(92.7%a/a)6.1gスケールに基づいて行った。鈴木カップリングを再度、無水条件下で行った(HGl:1当量、HG2:1.2当量、Pd(OAc):0.025当量、リガンド(4,4’−(フェニルホスフィニデン)ビス(ベンゼンスルホン酸)2カリウム塩水和物):0.05当量、NaCO:3当量、EtOH:10体積、75〜78℃、4〜6時間)。還流下での加熱6時間後に、HPLCによってHG1は検出されなかった。冷却した鈴木バッチ混合物にHyflo SuperCel NF(HG1に対して20重量/重量%)を投入し、かき混ぜて、濾過した。HG3のエタノール性溶液に、エタノールから酢酸エチルへの溶媒交換を受けさせた(最終体積:60mL)。酢酸エチル中の得られたHG3溶液の分析(H NMR)によって、バッチ中のエタノールは検出されなかった。バッチをこの段階で濾過して、収集したケーキをHPLCによって分析し、主にHG2(50%a/a)、HG3(14%a/a)およびラクタム不純物(6%a/a)で構成されることが見出された。
【0143】
HG3を含有する酢酸エチル濾液を表17に示すようにQUADRASIL(商標)APで順次に処理した。最初のパラジウムレベルは溶液で364ppmにて測定された。これは固体で5700ppmに外挿された。作業ではHG1に対して650重量/重量%の最終のQUADRASIL(商標)の投入を用いた。
【0144】
【表17】

脱保護ステップを行う前に、内部標準を使用したHG3のH NMR(DMSO−d)アッセイによって、処理済みプロセス流中のHG3 1.94g(ロット番号127−2)が明らかになった。この溶液に、最初に約1体積へ濃縮する(回転蒸発器)ことによって、DCMへの溶媒交換を受けさせた。バッチにシクロヘキサン(50mL)を投入してかき混ぜた。得られた溶液を約1体積まで再濃縮した。バッチを第2の分量のシクロヘキサン(50mL)中で再スラリ化して、再濃縮して残留物(3.7g)とした。この物質をDCM(37mL)に再溶解させて、TFAで処理した。最終IPCクロマトグラム(HPLC)によって、HG4(87.1%a/a)に対する残留HG3(1.2%a/a)が1.4%であることが明らかになった。バッチに通例の水性ワークアップ、およびWhatman濾紙による浄化を受けさせた。収集した濾液を最終体積10mLに濃縮した。粗HG4生成物はシクロヘキサン(36mL)を使用して沈殿させて、バッチをさらに1時間かき混ぜた。HG4生成物を濾過によって収集して、ケーキをシクロヘキサン(12mL)で洗浄した。この作業によりHG4(HPLCにより98.2%a/a、ロット番号133−1)1.65g(収率106%、湿潤)を得た。ケーキ全体を酢酸エチル(10体積、16時間、20〜25℃)によって粉砕して、濾過により収集した。
【0145】
ケーキを酢酸エチル(12mL)、シクロヘキサン(12mL)およびヘプタン(16mL)によって洗浄した。この作業によりHG4(ロット番号135−1)1.31gを得た。この物質の試料(200mg)を予備試験のための取出し、残りを乾燥器で乾燥させた。ロット番号135−1のHPLC純度は96.7%a/aであり、残留パラジウムのレベルは44ppmであると決定された。したがって我々は、脱保護ステップの間にパラジウムの消耗を観察しなかった。窒素流を乾燥器に入れながら、最終HG4試料を真空乾燥器(−28〜−29インチHg)で乾燥させた。乾燥の進行はH NMRで追跡した。試料を最初の48時間は40℃で乾燥させた。さらに48時間にわたって温度を50℃まで上昇させ、さらなる分析によって試料が3.3重量/重量%の酢酸エチルを含有していることが明らかになった。乾燥器の温度を60〜62℃に上昇させて、試料をさらに72時間乾燥させた。最終分析(NMR)によって、残留酢酸エチルレベルが0.46重量/重量%に低下したことが明らかになった。それゆえ乾燥HG4試料(0.99g、収率64%、ロット番号140−1)に最終生成物試験(HPLC純度、残留TFA、残留溶媒、表18を参照)を受けさせた。98.7%a/aのHPLC純度が得られ、1つの不純物(RRt1.13)のみが0.5%a/a未満を超えていた。
【0146】
Si−チオール(すなわちシリカ1−プロパンチオール、2重量/重量%、DCM、20〜25℃)をパラジウム捕捉剤として使用して製造した試料と並行して、HG4に対する最終生成物試験を行った。Si−チオールを3回に分けて添加して、各添加の後に6時間の期間にわたってかき混ぜた。木炭(10重量/重量%、10分間のかき混ぜ)の最終投入および濾過によってプロセスが完了した。Si−チオール精製試料(378−15)は並行して試験され、98.0%a/aの純度を示した。どちらの試料も非常に似た不純物プロフィールを示し、RRt1.13不純物を同じレベル(0.6%a/a)で含有していた。残留TFA限界は140−1物質において微量(500ppm未満)であることが決定され、すべての残留溶媒はICHガイドライン値を下回っていることが見出された。ロット番号378−15の量は、残留TFAおよび残留溶媒の試験を行うには不十分であった。全体としてこの方法により、HG4(ロット番号140−1)試料1gはHG1から約23%の収率で調製された。最終HG4試料により98.7%a/aのHPLC純度が示され、1つの不純物のみが0.5%a/a未満の範囲外にあった。この不純物は、HG3に由来するラクタム不純物であると仮定される。分析試験によって、残留TFA限界および残留溶媒限界がどちらも満足されていることが示された。残留パラジウムレベルは44ppmであった。キャラクタリゼーションデータを表18に示す。
【0147】
【表18】

(実施例12)
クロスカップリング反応のさらなる例
HG1(1当量)をHG2(1.2当量)、パラジウム担持炭素(10%0.10%当量)、および炭酸ナトリウム(3当量)と、65℃のメタノール:水中で1グラムスケールで反応させた。HPLC反応チェックによって、数時間の還流後に反応は示されなかった。
【0148】
HG1(1当量)をHG2(1.3当量)、酢酸パラジウム(0.10当量)、4,4’(フェニルホスフィニデン)ビスベンゼンスルホン酸2カリウム塩水和物(0.20当量)および炭酸ナトリウム(3当量)と、60℃〜65℃の水およびエタノール中で1時間にわたって5.0gスケールで反応させて、HG3(ロット26−1、収率100%、HPLC:83%の生成物およびさらに13%の既知のラクタム不純物を示す)6.0gを単離した。H−NMRによって構造を確認した。
【0149】
HG1(1当量)をHG2(1.3当量)、酢酸パラジウム(0.05当量)、4,4’(フェニルホスフィニデン)ビスベンゼンスルホン酸2カリウム塩水和物(0.10当量)および炭酸ナトリウム(3当量)と、60℃〜65℃の水およびNMP中で1時間にわたって1.0gスケールで、続いてさらに5gスケールで反応させた。粗HG3(ロット26−1、収率97%、HPLC:82%の生成物およびさらに9.6%の既知のラクタム不純物を示す)7.0gを単離した。H−NMRによって構造を確認した。
【0150】
HG1(1当量)をHG2(1.2当量)、酢酸パラジウム(0.10当量)、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムサルフェート(0.20当量)および炭酸ナトリウム(3当量)と、65℃のエタノール:水中で1gスケールで反応させた。HPLC反応チェックによって、数時間の還流後に反応は示されなかった。
【0151】
HG1(1当量)をHG2(1.2当量)、酢酸パラジウム(0.025当量)、4,4’(フェニルホスフィニデン)ビスベンゼンスルホン酸2カリウム塩水和物(0.05当量)および炭酸ナトリウム(3.0当量)と、70℃〜75℃の水および(8体積)およびエタノール(20体積)中で反応させた。これを10gスケールで、続いて100gスケールで行った。粗HG3(ロット38−1、収率98%、HPLC:87.0%およびH−NMRによって構造を確認した)130gを単離した。
【0152】
さらなるクロスカップリング反応を、Pd(OAc)(12g、0.054mol、0.1当量)、および4,4’(フェニルホスフィニデン)ビスベンゼンスルホン酸2カリウム塩水和物(3g、0.006mol、0.01当量)を使用して行った。HG3の収率:38〜43%、純度91〜92%。
【0153】
さらなるクロスカップリング反応を、Pd(OAc)(19g、0.05当量)、および4,4’(フェニルホスフィニデン)ビスベンゼンスルホン酸2カリウム塩水和物(43g、0.05当量)を使用して行った。HG3の収率:カラムクロマトグラフィーの後に49%、純度88%。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドを調製する方法において、改良が:(a)(tert−ブトキシ)−N−{4−(N,N−ジプロピルカルバモイル)−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル](3H−ベンゾ[f]アゼピン−2−イル)}カルボキサミドの溶液を、該溶液とパラジウム捕捉剤とを混合することによって精製することと;(b)該(tert−ブトキシ)−N−{4−(N,N−ジプロピルカルバモイル)−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル](3H−ベンゾ[f]アゼピン−2−イル)}カルボキサミドを保護基除去剤と反応させて{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドを提供することとを含み、該パラジウム捕捉剤が(i)−(CH−NH、−(CH−SH、−(CH−NH−C(=S)−NHMe、および−(CH−NH−(CH−NH−(CH−NHから選択される官能基によって官能化されたシリカビーズ;(ii)−CH−NH−C(=S)−NHおよび−C−CH−NHから選択される官能基によって官能化されたポリスチレンビーズ;ならびに(iii)少なくとも約1200m/gの表面積、約1nmの平均孔径、および約0.3mm〜約0.8mmの粒径を有する多孔質炭素粒子から選択される方法。
【請求項2】
(tert−ブトキシ)−N−{4−(N,N−ジプロピルカルバモイル)−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル](3H−ベンゾ[f]アゼピン−2−イル)}カルボキサミドの前記溶液が、{2−[(tert−ブトキシ)カルボニルアミノ]−8−ブロモ−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドに4−ピロリジニルカルボニルフェニルボロン酸をパラジウム触媒の存在下で、および場合によりリガンドの存在下で接触させることによって調製され、該接触が溶媒中で、実質的に無水条件下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記任意のリガンドが存在して、4,4’−(フェニルホスフィニデン)ビス(ベンゼンスルホン酸)2カリウム塩水和物である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記溶媒がエタノールであり、塩基が炭酸ナトリウムであり、前記触媒が酢酸パラジウム(II)である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
{2−[(tert−ブトキシ)カルボニルアミノ]−8−ブロモ−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドが2−[(tert−ブトキシ)カルボニルアミノ]−8−ブロモ−3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−カルボン酸をジイソプロピルアミンと1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミドヒドロクロリドおよびHOBtの存在下で接触させることによって調製され、前記接触が溶液中で行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
2−[(tert−ブトキシ)カルボニルアミノ]−8−ブロモ−3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−カルボン酸がエチル2−[(tert−ブトキシ)カルボニルアミノ]−8−ブロモ−3H−ベンゾ[b]アゼピン−4−カルボキシラートを水酸化ナトリウムと接触させることによって調製され、前記接触が溶液中で行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
エチル2−[(tert−ブトキシ)カルボニルアミノ]−8−ブロモ−3H−ベンゾ[b]アゼピン−4−カルボキシラートが(1E,4E)−エチル−2−アミノ−8−ブロモ−3H−ベンゾ[b]アゼピン−4−カルボキシラートをジ−tert−ブチルジカーボネートと接触させることによって調製され、前記接触が溶液中で行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
(1E,4E)−エチル−2−アミノ−8−ブロモ−3H−ベンゾ[b]アゼピン−4−カルボキシラートが(E)−エチル−3−(4−ブロモ−2−ニトロフェニル)−2−(シアノメチル)アクリレートをFeと、(1E,4E)−エチル−2−アミノ−8−ブロモ−3H−ベンゾ[b]アゼピン−4−カルボキシラートの分子内環化および形成を引き起こすのに有効な条件下で接触させることによって調製される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
(E)−エチル−3−(4−ブロモ−2−ニトロフェニル)−2−(シアノメチル)アクリレートが4−ブロモ−2−ニトロベンズアルデヒドをエチル−3−シアノ−2−(トリフェニルホスファニリジン)プロパノアートと接触させることによって調製され、前記接触が溶液中にて約20℃〜約25℃の範囲内の温度で行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
エチル−3−シアノ−2−(トリフェニルホスファニリジン)プロパノアートが(カルボエトキシメチレン)トリフェニルホスホランをBrCHCNと接触させることによって調製され、前記接触が溶液中で行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
4−ブロモ−2−ニトロベンズアルデヒドが(E)−1−(ブロモ−2−ニトロスチリル)ピロリジンをNaIOと接触させることによって調製され、前記接触が溶液中で行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
(E)−1−(ブロモ−2−ニトロスチリル)ピロリジンが4−ブロモ−2−ニトロトルエンをN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタールと、ジメチルホルムアミドおよびピロリジンの存在下で接触させることによって調製される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドを調製する方法であって:(a)ハロゲン化ベンゾアゼピンをボロン酸と、パラジウム触媒の存在下で、ならびに場合によりリガンドおよび塩基の存在下で実質的に無水条件下で接触させてアリール置換ベンゾアゼピンを生成することと;(b)パラジウム捕捉剤を添加することによって(a)からの該アリール置換ベンゾアゼピンを精製することとを含み、前記パラジウム捕捉剤が:(i)−(CH−NH、−(CH−SH、−(CH−NH−C(=S)−NHMe、および−(CH−NH−(CH−NH−(CH−NHから選択される官能基によって官能化されたシリカビーズ;(ii)−CH−NH−C(=S)−NHおよび−C−CH−NHから選択される官能基によって官能化されたポリスチレンビーズ;ならびに(iii)少なくとも約1200m/gの表面積、約1nmの平均孔径、および約0.3mm〜約0.8mmの粒径を有する多孔質炭素粒子から選択される方法。
【請求項14】
前記ハロゲン化ベンゾアゼピンが{2−[(tert−ブトキシ)カルボニルアミノ]−8−ブロモ−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドであり、前記ボロン酸が4−ピロリジニルカルボニルフェニルボロン酸であり、前記パラジウム触媒がPd(OAc)である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記リガンドが存在して、4,4’−(フェニルホスフィニデン)ビス(ベンゼンスルホン酸)2カリウム塩水和物であり、前記塩基が存在してNaCOである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
(a)ハロ置換ベンゾアゼピンをボロン酸と、パラジウム触媒の存在下で接触させて、置換ベンゾアゼピンおよび1つ以上のパラジウム混入物を含む粗生成物を得ることと;(b)パラジウム捕捉剤を該粗組成物に所定の時間にわたって添加することと;(c)該パラジウム捕捉剤を除去して、置換ベンゾアゼピンおよびパラジウム混入物を含む精製組成物を得ることと;を含み、該精製組成物中の該パラジウム混入物がICP−OESにより50ppm未満の濃度で存在する、組成物を調製する方法。
【請求項17】
前記所定の時間が約4時間以下である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記パラジウム捕捉剤が濾過によって除去される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記接触がエタノールおよび約0.5%未満の水を含む溶媒中で行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記方法が前記パラジウム捕捉剤を添加する前に、珪藻土による濾過によって前記粗生成物を浄化することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記パラジウム捕捉剤が官能化シリカ粒子および活性炭粒子から選択され、前記官能化シリカ粒子がアミノプロピルおよびメルカプトプロピルから選択される官能基を含み、前記活性炭が約1200m/gの表面積、約1nmの平均孔径、および約0.3mm〜約0.8mmの粒径を備えた多孔質球状非官能性炭素粒子を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記方法が前記パラジウム捕捉剤を添加する前に、エタノールから酢酸エチルへの溶媒切換を行うことをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記パラジウム捕捉剤が官能化シリカ粒子および官能化ポリスチレン粒子から選択され、該官能化シリカビーズがアミノプロピル、メルカプトプロピル、メチルチオ尿素、およびトリアミンから選択される官能基を含み、該官能化ポリスチレン粒子がベンジルアミンおよびチオ尿素から選択される官能基を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記精製組成物がICP−OESによる20ppm未満の濃度のパラジウム混入物を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記ハロ置換ベンゾアゼピンが保護アミン基によってさらに置換され、N,N−ジプロピルアミド基によってさらに置換されている、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
前記接触がリガンドの存在下でさらに行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項27】
前記パラジウム触媒がPd(OAc)であり、前記リガンドが4,4’−(フェニルホスフィニデン)ビス(ベンゼンスルホン酸)2カリウム塩水和物であり、触媒のリガンドに対するモル比が1:2〜1:1の範囲内である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドおよび1つ以上のパラジウム含有混入物を含む組成物であって、前記パラジウムがICP−OESにより20ppm未満の濃度で存在する組成物。
【請求項29】
前記パラジウムが15ppm未満の濃度で存在する、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記{2−アミノ−8−[4−(ピロリジニルカルボニル)フェニル]−(3H−ベンゾ[f]アゼピン−4−イル)}−N,N−ジプロピルカルボキサミドがパラジウム触媒カップリング反応を使用して調製される、請求項28に記載の組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2012−508248(P2012−508248A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535695(P2011−535695)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【国際出願番号】PCT/US2009/063577
【国際公開番号】WO2010/054215
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(511027770)ベンティアールエックス ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (4)
【出願人】(504344509)アレイ バイオファーマ、インコーポレイテッド (87)
【Fターム(参考)】