説明

ベンゾアゾール骨格を含む有機材料及びそれを用いた発光素子

【課題】安定したアモルファス薄膜を形成できる、広いバンドギャップをもつ材料を提供する。また、このような化合物を用いた、発光効率が高い有機電界発光素子を提供する。
【解決手段】脱水縮合反応、カップリング反応、またはそれらの組み合わせを利用し、有機電子材料に適用可能である新規なベンゾアゾール誘導体


を効率よく合成できることを見出た。さらにこの化合物を用いて高効率な青色燐光発光素子を作製できることを見出し、本発明を完成するに至った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンゾアゾール骨格をもつ有機π電子系材料、及びそれを用いた発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子、特に電界発光機能を備えた有機電界発光素子は、次世代平面ディスプレイとして注目されている。この有機電界発光素子を用いることにより、例えば、低消費電力、広視野角、自発光、高速応答性などの特徴を有するフルカラー高解像度ディスプレイの実現が可能である。
【0003】
従来の有機電界発光素子の発光は、主に蛍光を利用したものであった。すなわち、発光層を挟んで電極を設け、両電極から電子及びホールを注入すると、それらが対電極に向かい、発光層においてある割合で再結合して励起子を生成し、その励起子の励起状態が基底状態に戻るときに発光が生じる。この励起状態には、電子スピンの向きが反平行である一重項励起状態と、電子スピンの向きが平行である三重項励起状態とがある。蛍光はこの一重項励起状態のみが関与する発光形態である。単純な量子力学的推論から、一重項励起状態と三重項励起状態の生成比率は1:3であるので、蛍光を利用した有機電界発光素子の場合には、内部量子効率の最大値は25%となる。つまり、励起状態の75%は発光に使用されないことになる。
【0004】
さらに、有機電界発光素子に用いられる有機材料の屈折率(n)は約1.6〜1.7であり、また、外部への取り出し効率(ηext)は、古典光学における反射と屈折の法則からηext=1/(2n2)≒0.2、つまり20%程度である。そのため、蛍光を利用した有機電界発光素子においては、その外部量子効率は、内部量子効率(25%)×取り出し効率(20%)となり、最大5%程度と見積もられる。
【0005】
このため、外部量子効率をさらに向上させるためには、励起状態のうち75%を占める三重項励起状態からの発光、すなわち燐光も利用する必要がある。燐光の利用が可能となれば、外部量子効率を最大20%程度まで向上させることができる。
【0006】
そこで、最近では、燐光型有機電界発光素子の開発が進められており、燐光型発光材料を用いることで従来の蛍光素子の外部量子効率における理論限界の5%を超え、緑色では外部量子効率が19%にも達する高効率素子が報告されている(非特許文献1,2)。
【0007】
燐光発光を利用した燐光型発光材料の開発は、高効率発光の観点から活発に研究がされている。緑色、赤色燐光発光材料については、高い色純度を実現する材料が報告されている。また、青色燐光発光材料についても、これを用いた有機電界発光素子が、例えば、非特許文献3〜5に報告されている。
【0008】
ベンゾアゾール化合物は電子親和性の高いアゾール骨格により、低い最低空軌道をもつことが知られており、高い電子注入特性を示すことが期待される化合物群である。これまでにベンゾアゾールおよびそれに隣接するπ共役置換基からなる骨格を有機EL素子に用いた例としては、ベンゾアゾール骨格をもつトリアジン誘導体を用いた発光素子(特許文献1〜3)や、Sp炭素骨格で連結されたビスベンゾアゾールを用いた発光素子(特許文献4)などがある。
【非特許文献1】J. Appl. Phys.,第90巻(2001年)、第5048頁
【非特許文献2】Appl. Phys. Lett.,第79巻(2001年)、第156頁
【非特許文献3】Appl.Phys.Lett.,第79巻(2001年)、第2082頁
【非特許文献4】Appl.Phys.Lett.,第82巻(2003年)、第2422頁
【非特許文献5】Appl.Phys.Lett.,第83巻(2003年)、第569頁
【特許文献1】特開平7−157473公報
【特許文献2】特開2002−212181公報
【特許文献3】特開2005−129310公報
【特許文献4】特開平11−283746公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
有機電界発光素子としては、前記の通り、これまでに種々のものが開発されている。しかし、燐光発光型の素子として、広いバンドギャップの励起を要する青色の発光に成功したものは、限られた例しか知られていない。
【0010】
例えば、上述の特許文献1〜4は、蛍光発光用の素子であり、燐光を対象としたものではなかった。非特許文献1,2は燐光を利用して、高いエネルギー効率を達成した例であるが、バンドギャップが中程度の緑色の発光を対象としたものであり、青色の発光は達成されていない。
【0011】
一方、非特許文献3〜5では、燐光ドーパントのホスト材料として、4,4’−ビスカルバゾリルビフェニル(以下CBPと表記)という、カルバゾール系の誘導体(下式)
【0012】
【化13】

【0013】
が採用され、青色燐光の発光が観測されている。ただし、CBPをホスト材料とした有機電界発光素子は、エネルギー効率が高いとは言えず、これらの文献中にエネルギー効率の具体的な記載もない。また、CBPは高い結晶性を有する化合物であるので、安定した膜を得ることが難しい場合があった。
【0014】
このような状況に鑑み、有機電界素子、特に青色燐光発光用に供する、高効率で耐久性の高いホスト材料、及びそれを用いた素子が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、式(1)で表される、ビス(トリフルオロメチル)メチレン骨格を有するベンゾアゾール誘導体
【0016】
【化14】

【0017】
を見出した。すなわち、当化合物は、公知の化合物を原料とし、脱水縮合反応、カップリング反応等の手法を組み合わせて、効率的に合成できることを見出した。
【0018】
このビス(トリフルオロメチル)メチレン骨格を有するベンゾアゾール誘導体は、有機電界発光素子において、従来品よりも耐久性が優れたホスト材料として機能することが判った。特に、青色燐光発光する有機電界発光素子用のホスト材料として好適に機能し、従来品であるCBPをホスト材料に用いた場合に比べ、高い耐久性、エネルギー効率を有する、青色燐光発光用の有機電界発光素子が得られた。
【0019】
本発明に係るベンゾアゾール誘導体は、Sp炭素及びヘテロ原子から形成されるπ電子の共鳴構造(π共役)が、分子の中央に存在するSp炭素(メチレン連結基)によって断ち切られた構造である。このため、π共役が短くなり、この結果、HOMOとLUMOの間のバンドギャップが十分大きくなり、青色燐光用のホストとして有効に機能することになったと考えられる。
【0020】
一般に、バンドギャップが広くなると、エネルギー状態の励起は困難になることが多い。ところが、本発明のビス(トリフルオロメチル)メチレン骨格を有するベンゾアゾール化合物をホストとして用いた場合、従来のCBP系に比べ有意に大きいエネルギー効率を示した。このような良好な物性は、
(a)Sp3カーボンにトリフルオロメチル基を導入したことによる効果(HOMOの低下、電子注入性の向上)、
(b)分子中にオキサゾール基を導入したことによる、最低空軌道(LUMO)の低下、
(c)Sp3カーボンの導入による、分子の柔軟性(アモルファス性)が向上し、それにより、発光層全体の耐久性が向上したこと、
等の効果が、複合した結果と考えられる。
【0021】
本発明者らはさらに、上記、式(1)で表されるベンゾアゾール誘導体の中でも、特に好ましい誘導体に想到した。また、特定の態様、特定の条件で、本発明のベンゾアゾール誘導体を使用することが、特に好ましいことを見出し、発明の完成に到達した。
【0022】
すなわち、本発明は、次の発明1〜発明12を含み、ベンゾアゾール骨格を含む有機材料及びそれを用いた発光素子を提供する。
【0023】
[発明1]一対の電極間に、少なくとも一層の有機発光層を有する有機電界発光素子であって、一般式(1)で表されるベンゾアゾール誘導体
【0024】
【化15】

【0025】
[式中、R1は炭素数1〜18のアリール基、ヘテロアリール基、オリゴアリール基、オリゴヘテロアリール基、アセン基(ただし、これらは炭素数1〜6のアルキル基、パーフルオロアルキル基、アルコキシ基、パーフルオロアルコキシ基、アリールオキシ基、シアノ基、シリル基、アミノ基、ボリル基、スタンニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい)、水素原子、ハロゲン原子、またはその組み合わせからなり、YはO、S、またはN-R’[R’は炭素数1〜18のアリール基、ヘテロアリール基、オリゴアリール基、オリゴヘテロアリール基、アセン基(ただし、これらは炭素数1〜6のアルキル基、パーフルオロアルキル基、アルコキシ基、パーフルオロアルコキシ基、アリールオキシ基、シアノ基、シリル基、アミノ基、ボリル基、スタンニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい)、炭素数1〜6のアルキル基、パーフルオロアルキル基、アルコキシ基、パーフルオロアルコキシ基、アリールオキシ基、シアノ基、シリル基、アミノ基、ボリル基、スタンニル基、ニトロ基、水素原子、またはハロゲン原子を示す]
を、前記有機発光層中に含むことを特徴とする、有機電界発光素子。
【0026】
[発明2]発明1において、前記有機発光層にはホスト材料および青色燐光ドーパント材料を含み、該ホスト材料が、発明1に記載のベンゾアゾール誘導体である、青色燐光発光を用いた有機電界発光素子。
【0027】
[発明3]前記有機電界発光素子が、さらに正孔輸送層、電子ブロック層、電子輸送層および正孔ブロック層を含む、発明2に記載の有機電界発光素子。
【0028】
[発明4]発明1乃至発明3の何れかにおいて、前記ベンゾアゾール誘導体が、一般式(2)
【0029】
【化16】

【0030】
[式中、R1は一般式(1)と同じ]で表されるベンゾオキサゾール誘導体であることを特徴とする、発明1乃至発明3の何れかに記載の有機電界発光素子。
【0031】
[発明5]前記ベンゾオキサゾール誘導体が、下記式で表される2,2‐ビス[2‐(2‐トリフルオロメチル)フェニルベンゾオキサゾール‐5‐イル]1,1,1‐3,3,3‐ヘキサフルオロプロパン
【0032】
【化17】

【0033】
である、発明4に記載の有機電界発光素子。
【0034】
[発明6]一対の電極間に、少なくとも一層の有機発光層を有する、青色燐光発光を用いた有機電界発光素子であって、
有機電界発光素子が、さらに正孔輸送層、電子ブロック層、電子輸送層および正孔ブロック層を含み、
前記有機発光層にはホスト材料および青色燐光ドーパント材料を含み、
該ホスト材料が、下記式で表される2,2‐ビス[2‐(2‐トリフルオロメチル)フェニルベンゾオキサゾール‐5‐イル]1,1,1‐3,3,3‐ヘキサフルオロプロパン
【0035】
【化18】

【0036】
であり、
該青色燐光ドーパントが、下記式で表されるFIr6
【0037】
【化19】

【0038】
または下記式で表されるFIrpic
【0039】
【化20】

【0040】
である、青色燐光発光を用いた有機電界発光素子。
【0041】
[発明7]一般式(1)で表されるベンゾアゾール誘導体。
【0042】
【化21】

【0043】
[式中、R1は炭素数1〜18のアリール基、ヘテロアリール基、オリゴアリール基、オリゴヘテロアリール基、アセン基(ただし、これらは炭素数1〜6のアルキル基、パーフルオロアルキル基、アルコキシ基、パーフルオロアルコキシ基、アリールオキシ基、シアノ基、シリル基、アミノ基、ボリル基、スタンニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい)、水素原子、ハロゲン原子、またはその組み合わせからなり、YはO、S、またはN-R’[R’は炭素数1〜18のアリール基、ヘテロアリール基、オリゴアリール基、オリゴヘテロアリール基、アセン基(ただし、これらは炭素数1〜6のアルキル基、パーフルオロアルキル基、アルコキシ基、パーフルオロアルコキシ基、アリールオキシ基、シアノ基、シリル基、アミノ基、ボリル基、スタンニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい)、炭素数1〜6のアルキル基、パーフルオロアルキル基、アルコキシ基、パーフルオロアルコキシ基、アリールオキシ基、シアノ基、シリル基、アミノ基、ボリル基、スタンニル基、ニトロ基、水素原子、またはハロゲン原子を示す]
[発明8]発明7に記載のベンゾアゾール誘導体であって、一般式(2)
【0044】
【化22】

【0045】
[式中、R1は一般式(1)と同じ]で表されるベンゾオキサゾール誘導体。
【0046】
[発明9]発明8に記載のベンゾオキサゾール誘導体であって、一般式(3)
【0047】
【化23】

【0048】
[式中、R2は炭素数1〜18のアリール基、ヘテロアリール基、オリゴアリール基、オリゴヘテロアリール基、アセン基、アルキル基、パーフルオロアルキル基、アルコキシ基、パーフルオロアルコキシ基、シリル基、スタンニル基、アミノ基、ホスフィノ基、ホスフィンオキサイド基、ボリル基、スルフィド基、水素原子またはハロゲン原子を示す。Z1〜Z4はそれぞれC−HまたはNであることを示す]で表されるベンゾオキサゾール誘導体。
【0049】
[発明10]発明8に記載のベンゾオキサゾール誘導体であって、一般式(4)
【0050】
【化24】

【0051】
[式中、R2は一般式(3)と同じ]で表されるベンゾオキサゾール誘導体。
【0052】
[発明11]発明8に記載のベンゾオキサゾール誘導体であって、一般式(5)
【0053】
【化25】

【0054】
[式中、R2は一般式(3)と同じ]で表されるベンゾオキサゾール誘導体。
【0055】
[発明12]発明8に記載のベンゾオキサゾール誘導体であって、下記式
【0056】
【化26】

【0057】
で表されるベンゾオキサゾール誘導体。
【発明の効果】
【0058】
本発明は、ビス(トリフルオロメチル)メチレン基で連結されたベンゾアゾール骨格を有する、新規な誘導体を提供する。当該ベンゾアゾール誘導体は、低い最低空軌道をもち、かつ広いバンドギャップを持つ。特に、この化合物を有機電界発光素子の材料に用いることにより、発光効率の高い有機電界発光素子等を実現することが可能となる。とりわけ、当該化合物は、青色燐光用の、有機電界素子のホスト材料に用いることが有用であり、発光効率が高い有機電界素子が実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
[実施形態1:ベンゾアゾール誘導体の合成]
本発明の実施の形態について説明すると以下の通りである。
【0060】
本発明におけるベンゾアゾール誘導体は、下記の反応式に示すように合成できる。すなわち、下記一般式(6)の化合物と、一般式(11)の化合物を脱水縮合反応させることによって得られる。
【0061】
【化27】

【0062】
ここで、一般式(11)及び(1)において、Yは酸素原子、硫黄原子、置換窒素原子をとりうるが、低い最低空軌道(LUMO)をもつためには、酸素原子、硫黄原子であることが好ましく、広いバンドギャップを保つことができる酸素原子がより好ましい。
【0063】
また一般式(6)及び(1)において、R1は炭素数1〜18のアリール基、ヘテロアリール基、オリゴアリール基、オリゴヘテロアリール基、アセン基(ただしこれらは炭素数1〜6のアルキル基、パーフルオロアルキル基、アルコキシ基、パーフルオロアルコキシ基、アリールオキシ基、シアノ基、シリル基、アミノ基、ボリル基、スタンニル基で置換されていてもよい)、炭素数1〜6のアルキル基、パーフルオロアルキル基、アルコキシ基、パーフルオロアルコキシ基、アリールオキシ基、シアノ基、シリル基、アミノ基、ボリル基、スタンニル基、ニトロ基、水素原子、ハロゲン原子、またはその組み合わせからなるが、生成物である一般式(1)の高いアモルファス性や広いバンドギャップを有するためには、2−置換フェニル基または2−置換ピリジル基が好ましい。
【0064】
以下に、一般式(1)において、Yが酸素原子である一般式(2)で表されるベンゾオキサゾール誘導体
【0065】
【化28】

【0066】
を具体例に挙げて、詳細に説明する。
【0067】
一般式(2)で表されるベンゾオキサゾール誘導体は、下記一般式(6)で示されるカルボン酸誘導体またはアルデヒドと、下式(7)で示される2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン)(以下、本明細書においてBIS-AP-AFとも呼ぶ)との縮合反応によって製造できる。
【0068】
【化29】

【0069】
上記式において、R1は炭素数1〜18のアリール基、ヘテロアリール基、オリゴアリール基、オリゴヘテロアリール基、アセン基(ただし、これらは炭素数1〜6のアルキル基、パーフルオロアルキル基、アルコキシ基、パーフルオロアルコキシ基、アリールオキシ基、シアノ基、シリル基、アミノ基、ボリル基、スタンニル基で置換されていてもよい)、炭素数1〜6のアルキル基、パーフルオロアルキル基、アルコキシ基、パーフルオロアルコキシ基、アリールオキシ基、シアノ基、シリル基、アミノ基、ボリル基、スタンニル基、ニトロ基、水素原子、ハロゲン原子、またはその組み合わせからなるが、置換または無置換のフェニル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、ナフチル基、フルオレニル基、アセナフテニル基、アントリル基、アクリジル基、ピレニル基、フェナントリル基、クリセニル基、フルオランテニル基、チエニル基などが挙げられる。好ましくは、フェニル基、3−ピリジル基、2−ピリジル基である。また、Aはヒドロキシ基、ハロゲン原子、または水素原子である。
【0070】
縮合反応としては、次のような公知の手法を採用できる。
[1] 一般式(6)で表される化合物と(7)で表される化合物を、ホウ酸存在下加熱還流する方法。
[2] 一般式(6)で表される化合物と(7)で表される化合物を、ポリリン酸中で加熱する方法。
[3] 一般式(6)で表される化合物と(7)で表される化合物を、活性炭素と酸素共存下で反応させる方法。
【0071】
何れの方法によっても、目的とする一般式(2)で表されるベンゾオキサゾール誘導体を得ることができるが、高効率で目的物を得るためには、ポリリン酸を用いる[2]の手法が特に好ましい(下式)。
【0072】
【化30】

【0073】
また上記式において、例えば、一般式(6)で表される化合物として、2−ブロモ安息香酸や、2−クロロニコチン酸などを用いた場合、下記式に示すような、末端アリール基のオルト位にハロゲンが導入されたベンゾオキサゾール誘導体(ハロゲン化ベンゾオキサゾール誘導体)を得ることができる。
【0074】
【化31】

【0075】
これらのハロゲン化ベンゾオキサゾール誘導体はさらにクロスカップリング反応や求核置換反応を用いることで、末端アリール基のオルト位が置換された種々のベンゾオキサゾール誘導体に変換することが可能である。すなわち、ハロゲン化ベンゾオキサゾール誘導体に対して、一般式(9)で表される化合物
【0076】
【化32】

【0077】
[式中、R2は炭素数1〜18のアリール基、ヘテロアリール基、オリゴアリール基、オリゴヘテロアリール基、アセン基、アルキル基、アルコキシ基、シリル基、スタンニル基、アミノ基、ホスフィノ基、ホスフィンオキサイド基、ボリル基、スルフィド基、水素原子またはハロゲン原子を示す。Mはハロゲン化マグネシウム、ハロゲン化亜鉛、ボロン酸、ボロン酸エステル、アルキルシラン、アルキルすず、水素原子またはハロゲン原子を示す]
を反応させ、R基を導入することができる。このためには、次の各種の方法のうち、何れを採用してもよい。
【0078】
1)一般式(9)で表される化合物と、上記ハロゲン化ベンゾオキサゾール誘導体とを、遷移金属触媒存在下、クロスカップリング反応させる方法。
【0079】
2)上記ハロゲン化ベンゾオキサゾール誘導体をアルキルリチウムでリチオ化し、ついで一般式(9)の化合物を反応させる方法。
【0080】
3)上記ハロゲン化ベンゾオキサゾール誘導体をアルキルリチウムでリチオ化した後、アルキルグリニヤール試薬、アルキルマグネシウムアミド、などの有機マグネシウム試薬、あるいは亜鉛試薬等の金属交換試薬で処理して金属交換したのち、ついでパラジウム触媒の存在下で、一般式(9)の化合物をクロスカップリング反応させる方法。
【0081】
上記2)、3)の方法において、アルキルリチウムとしてはn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムなどが挙げられるが、tert−ブチルリチウムを用いると反応が高収率で進行するため、tert−ブチルリチウムが特に好ましい。
【0082】
また上記3)の方法における金属交換試薬としては塩化亜鉛、塩化マグネシウム、塩化ニッケル、ホウ酸エステル、塩化アルキルシリル、塩化アルキルスタンニルなどが挙げられるが、塩化亜鉛、塩化マグネシウム、ホウ酸エステルが好ましい。
【0083】
上記1)の方法におけるクロスカップリング反応用の触媒としては、鉄系触媒、銅触媒、コバルト触媒、ニッケル触媒やパラジウム触媒、ルテニウム触媒、ロジウム触媒などの遷移金属触媒が挙げられるが、ニッケル触媒、パラジウム触媒、銅触媒が好ましく、パラジウム触媒がさらに好ましい。
【0084】
パラジウム触媒としては、例えばパラジウムブロマイド、パラジウムクロライド、パラジウムヨージド、パラジウムシアニド、パラジウムアセテート、パラジウムトリフルオロアセテート、パラジウムアセチルアセトナト[Pd(acac)]、ジアセテートビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム[Pd(OAc)(PPh]、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム[Pd(PPh]、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム[Pd(CHCN)Cl]、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム[Pd(PhCN)Cl]、ジクロロ[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム[Pd(dppe)Cl]、ジクロロ[1,1−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム[Pd(dppf)Cl]、ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム〔Pd[P(C11Cl〕、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム[Pd(PPhCl]、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム[Pd(dba)]、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム[Pd(dba)]、等が挙げられるが、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム[Pd(PPh]、ジクロロ[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム[Pd(dppe)Cl]、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム[Pd(PPhCl]等のホスフィン系触媒が好ましい。
【0085】
上記の他にパラジウム触媒として、反応系中においてパラジウム錯体と配位子の反応により合成されるパラジウム触媒を用いることができる。配位子としては、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリス(n−ブチル)ホスフィン、トリス(tert−ブチル)ホスフィン、ビス(tert−ブチル)メチルホスフィン、トリス(i−プロピル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリス(o−トリル)ホスフィン、トリス(2−フリル)ホスフィン、2−ジシクロヘキシルホスフィノビフェニル、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−メチルビフェニル、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピル−1,1’−ビフェニル、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−(N,N’−ジメチルアミノ)ビフェニル、2−ジフェニルホスフィノ−2’−(N,N’−ジメチルアミノ)ビフェニル、2−(ジ−tert−ブチル)ホスフィノ−2’−(N,N’−ジメチルアミノ)ビフェニル、2−(ジ−tert−ブチル)ホスフィノビフェニル、2−(ジ−tert−ブチル)ホスフィノ−2’−メチルビフェニル、ジフェニルホスフィノエタン、ジフェニルホスフィノプロパン、ジフェニルホスフィノブタン、ジフェニルホスフィノエチレン、ジフェニルホスフィノフェロセン、エチレンジアミン、N,N’,N’’,N’’’−テトラメチルエチレンジアミン、2,2’−ビピリジル、1,3−ジフェニルジヒドロイミダゾリリデン、1,3−ジメチルジヒドロイミダゾリリデン、ジエチルジヒドロイミダゾリリデン、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)ジヒドロイミダゾリリデン、1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)ジヒドロイミダゾリリデンが挙げられ、これらの配位子のいずれかが配位したパラジウム触媒をクロスカップリング触媒として用いることができる。
【0086】
カップリング反応の反応溶媒としては、反応に影響を及ぼさない限り特に限定されないが、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、トリエチルアミン、ジエチルアミン等のアミン類、塩化メチル、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジブロモエタン等のハロゲン化炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトニトリル等のニトリル類、ジメチルスルホキシド、水等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても、二種以上適宜組み合わせて用いてもよい。またこれらの溶媒はあらかじめ乾燥、脱気処理を行うことが望ましい。
【0087】
本発明のベンゾアゾール誘導体の紫外・可視吸収スペクトルを測定することにより、光特性を調べることができる。一般式(1)において、Yが酸素原子であり、Rがフェニル基、3−ピリジル基、2−メチル−3−ピリジル基、2−トリフルオロメチルフェニル基、2−トリフルオロメチル−3−ピリジル基、ビフェニル−2−イル基、2−(3−ピリジル)フェニル基、2−ナフチルフェニル基のベンゾオキサゾール誘導体では、355nm以下の短波長に吸収端を示し、光学バンドギャップは3.6eV以上であった。これは、青色燐光ドーパント(バンドギャップ3eV程度)のホスト材料として用いた場合、ドーパントのエネルギーを閉じこめるのに十分効果的であることを示している。
【0088】
[実施形態2:有機電界発光素子]
次に、本発明の実施形態1に係るベンゾアゾール誘導体を使用した有機電界発光素子の実施形態について説明する。
【0089】
図1は、有機電界発光素子の概略断面構造の一例を示す。ガラス、プラスチック等の透明基板には、ITO(Indium Tin Oxide)等を用いて透明電極が形成される。透明電極は、ここでは陽極として機能する。透明電極上には少なくとも1層の有機層が形成されている。
【0090】
有機層は、少なくとも発光層を備え、当該発光層中に、本発明のベンゾアゾール誘導体が、少なくとも含まれる。
【0091】
本発明の有機電界発光素子は、用いる有機化合物の機能等によって異なる層構造のものを採用することができる。発光層の単層構造の他、正孔輸送層/発光層、発光層/電子輸送層、正孔輸送層/発光層/電子輸送層、等の多層構造を採用することが可能である。本実施形態では、透明電極側から順に、正孔輸送層/電子ブロック層/発光層/正孔ブロック層/電子輸送層が積層されている。
【0092】
有機層上には、金属電極が形成されている。金属電極は、ここでは陰極として機能する。この金属電極は、例えば、図1に示すようにLiF層(電子注入層)とAl電極等との積層体により構成することができる。また、Al電極の単独層により金属電極を構成することもできる。また、Alの他にも、例えば、Mg−Ag合金、Al−Li合金等を使用することができる。また、図示しないが、透明電極と正孔輸送層との間には銅フタロシアニン(CuPc)、スターバーストアミン、酸化バナジウム等を用いて正孔注入層を形成してもよい。
【0093】
また、正孔輸送層と発光層との間には、Irppz, TCTA(後述)等を用いて電子ブロック層を形成してもよい。
【0094】
本実施形態2では、以上のような構成の有機電界発光素子において、上記実施形態1で説明したベンゾアゾール誘導体を用いる。このベンゾアゾール誘導体は、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、発光層、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層等の有機薄膜用の材料として用いることができるが、特に発光層の材料として用いることが好ましい。前記ベンゾアゾール誘導体は、単独で発光層の材料として用いることもできるが、発光効率、駆動電力の低減、発光色の色純度向上等の観点より、ホスト材料として用いて、ドーパント材料(蛍光発光物質または燐光発光物質)を所定量ドープして発光層とすることが好ましい。特に、本願発明のベンゾアゾール誘導体は、青色燐光材料に対するホスト材料として、特に優れた機能を発揮するため、青色燐光発光型有機電界発光素子の発光層の材料として用いると、高効率で耐久性の高い素子を実現することができる。
【0095】
すなわち、図面にも現されるように、青色燐光材料をドープ剤とし、それに対するホスト材料として本願発明のベンゾアゾール誘導体を使用して発光層とし、この発光層を、[陽極/正孔輸送層/電子ブロック層/発光層/正孔ブロック層/電子輸送層/陰極]の順序で構成された有機電界素子の中で用いることは特に好ましい態様の1つである。
【0096】
なお、本発明において「青色燐光」とは、いわゆる純青色の燐光発光や、水色の燐光発光など、概ね400nm〜480nmにピーク波長をもつ、燐光ドーパントに基づく発光を指す。
【0097】
もっとも、本発明のベンゾアゾール誘導体の用途はこれに限られず、緑色、或いは赤色の燐光発光用の有機電界素子としても有効に機能する。また、青色、緑色、或いは赤色の蛍光発光用の有機電界素子としても有効に機能する。
【0098】
次に、実施形態1に係るベンゾアゾール誘導体と共に有機電界発光素子の有機層に使用可能な材料の例を説明する。まず、発光層のホスト材料として、例えば一般式(2)のベンゾオキサゾール誘導体を用いる場合に、ドーパント材料としては、純青色燐光用としては例えば下記式(12)に示すFIr6のような化合物、水色燐光用としては例えば下記式(13)に示すFIrpicのような化合物が挙げられる。緑色燐光用としては例えば下記式(14)に示すIr(ppy)(tris(2-phenylpyridine) iridium(III))が挙げられる。赤色燐光用としては例えば下記式(15)に示すIr(piq)(tris(2-phenylisoquinoline) iridium(III))が挙げられる。
【0099】
【化33】

【0100】
【化34】

【0101】
【化35】

【0102】
【化36】

【0103】
また、正孔輸送層に用いる材料としては、正孔輸送機能を備えていれば特に限定されないが、例えば、トリフェニルアミンの多量体を使用することができ、一例としては下記式(16)に示すα−NPD、下記式(17)に示すTPTE(triphenylaminetetramer)を使用することができる。
【0104】
【化37】

【0105】
【化38】

【0106】
電子輸送層に用いる材料としては、電子輸送機能を備えていれば特に限定されないが、例えば、下記式(18)に示すアルミキノリノール錯体(Alq: Tris(8-hydroxyquinolinato)aluminum(III)))、下記式(19)に示すバソクプロイン(BCP)等を使用することができる。
【0107】
【化39】

【0108】
【化40】

【0109】
ところで、発光層のホスト材料として用いる上記実施形態1に係るベンゾアゾール誘導体は、バイポーラ性を有することが多い。発光層のホスト材料としてバイポーラ性の化合物を用いる場合、発光層から電子輸送層に正孔が流れ出てしまうことを防止するために発光層と電子輸送層との間に正孔ブロック層を形成することが好適である。電子輸送層にAlqなどを用いている場合に電位輸送層に正孔が流れ込むことでこのAlqなどが発光したり、正孔を発光層に閉じ込めることができずに発光効率が低下するなどといった問題を防止することができる。正孔ブロック層に用いる材料としては、下記式(20)に示すTPBI、下記式(21)に示すBAlq(Aluminum(III)bis(2-methyl-8-quinolinato)4-phenylphenolate)、バソクプロイン(BCP)等を挙げることができる。
【0110】
【化41】

【0111】
【化42】

【0112】
発光層から正孔輸送層に電子が流れ出てしまうことを防止するために発光層と正孔輸送層との間に電子ブロック層を形成することが好適である。電子ブロック層に用いる材料としては、下記式(22)に示すIrppz、下記式(23)に示すTCTA等を使用することができる。
【0113】
【化43】

【0114】
【化44】

【0115】
次に、実施形態1に係るベンゾアゾール誘導体を燐光発光のためのホスト材料として用いた、本実施形態2に係る有機電界発光素子の発光原理について説明する。
【0116】
陽極として機能する透明電極と、陰極として機能する金属電極から、正孔及び電子を有機層に注入すると、正孔は正孔輸送層を介して、電子は電子輸送層及び正孔ブロック層を介して輸送され、発光層に到達し、正孔と電子は再結合する。この正孔と電子の再結合により、まず発光層中のホスト材料である前記ベンゾアゾール誘導体が励起状態となる。前述したように、この励起状態は、一重項励起状態が25%、三重項励起状態が75%となっていると考えられる。このような割合のホスト材料の励起エネルギーは、ドーパント材料に移動し、ドーパント材料は、それぞれ一重項励起状態及び三重項励起状態となる。ドーパント材料の一重項励起状態は、さらに三重項励起状態に移動し、最終的に三重項励起状態からの燐光発光が主となる。これによって、発生した励起状態のエネルギーのほぼ全てが発光エネルギーとして使用されることになる。
【0117】
本実施形態においては、前記ベンゾアゾール誘導体をホスト材料として使用すると、併用する燐光発光用ドーパント材料に応じて、青色、緑色、赤色の各燐光発光を高色純度、高効率で得ることができる。また、前記ベンゾアゾール誘導体の骨格上の置換基を変更することによって、ベンゾアゾール誘導体のバンドギャップの幅(吸収端の値)を調整することができ、青色、緑色、赤色の各燐光発光用ドーパント材料に最適化したホスト材料を設計することができる。特に、一般式(2)のベンゾオキサゾール誘導体はFIr6やFIrpicといった青色燐光発光用ドーパントのホスト材料として使用することができ、それが本発明のホスト材料の有する優れた特性を、活かすことができる、特に好ましい態様の1つである。
【0118】
また、一般式(2)のベンゾオキサゾール誘導体の中でも、2,2‐ビス[2‐(2‐トリフルオロメチル)フェニルベンゾオキサゾール‐5‐イル]1,1,1‐3,3,3‐ヘキサフルオロプロパンは、高いエネルギー効率、優れた耐久性を示す、特に優れた材料である。
【0119】
本発明の中でも、
一対の電極間に、少なくとも一層の有機発光層を有する、青色燐光発光を用いた有機電界発光素子であって、
有機電界発光素子が、さらに正孔輸送層、電子ブロック層、電子輸送層および正孔ブロック層を含み、
前記有機発光層にはホスト材料および青色燐光ドーパント材料を含み、
該ホスト材料が、下記式で表される2,2‐ビス[2‐(2‐トリフルオロメチル)フェニルベンゾオキサゾール‐5‐イル]1,1,1‐3,3,3‐ヘキサフルオロプロパン
【0120】
【化45】

【0121】
であり、
該青色燐光ドーパントが、下記式で表されるFIr6
【0122】
【化46】

【0123】
または下記式で表されるFIrpic
【0124】
【化47】

【0125】
である、青色燐光発光を用いた有機電界発光素子は、本発明のベンゾアゾール誘導体の特性を発揮することのできる、特に好ましい実施形態として挙げられる。
【0126】
また、本実施形態1に係るベンゾアゾール誘導体は、有機電界発光素子に限らず、表示素子,コンピュータ,テレビ,携帯電話,デジタルカメラ,PDA,カーナビゲーション等のディスプレイやバックライト;照明、インテリア、標識、交通信号機、看板など;CD,DVD等の記録光源、読み取り光源;複写機、スキャナ等の光源;CD−R,DVD−R等の記録用光ディスクの記録層用色素;レーザー色素;増感色素;医療診断用蛍光薬剤;等の幅広い分野に好適に使用することができる。
【0127】
また、本実施形態2に係る有機電界発光素子は、表示素子,コンピュータ,テレビ,携帯電話,デジタルカメラ,PDA,カーナビゲーション等のディスプレイ;バックライト等の光源;照明;インテリア;標識;交通信号機;看板などに好適に使用することができる。
【0128】
[実施例]
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<ベンゾアゾール誘導体の合成および固体物性評価>
【実施例1】
【0129】
2,2−ビス(2−フェニルベンゾオキサゾール−5−イル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンの合成
【0130】
【化48】

【0131】
BIS-AP-AF(3.67 g, 10 mmol)、安息香酸(2.68 g, 22 mmol)、ホウ酸(1.29 g, 21 mmol)の混合物にキシレン(170 mL)を入れ、42時間加熱還流した。反応終了後、不溶分をろ過により除き、ろ液を濃縮した。残渣をジクロロメタンと水で分液、MgSO4で乾燥、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1)により目的化合物である白色固体(2.58 g, 48%)を得た。
【0132】
1H NMR(400 MHz, CDCl3):d 8.26(dd, JHH = 1.2 Hz, 8.0Hz, 4H), 7.95(s,2H), 7.59-7.52(m, 8H), 7.39(d, JHH = 8.8 Hz, 2H). 19F NMR (76 MHz, CDCl3):d - 64.07(s).EI MS m/z 538(M+).
【実施例2】
【0133】
2,2‐ビス[2‐(3‐ピリジン‐1‐イル)ベンゾオキサゾール‐5‐イル]1,1,1‐3,3,3‐ヘキサフルオロプロパンの合成
【0134】
【化49】

【0135】
BIS-AP-AF(1.83 g, 5.00 mmol)とニコチン酸 (1.29 g, 10.50 mmol)の混合物にポリリン酸 (10 mL)を加え、200℃で6時間撹拌した。水を加えて固体を析出させ、アンモニア水を加えて塩基性にし、濾過を行った。得られた固体をクロロホルムに溶かし、硫酸ナトリウムで乾燥、濃縮し、ジクロロメタンで洗浄した。室温でクロロホルム-ヘキサンから再結晶を行ったところ目的物(2.36 g, 4.37 mmol)を得た(87%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): d 9.48 (dd 3JHH= 1.2 Hz, 2.4 Hz, 2H), 8.80 (dd 3JHH= 1.6 Hz, 4.8 Hz, 2H), 8.51 (ddd 3JHH= 1.6 Hz, 2.4 Hz, 8.0 Hz, 2H), 7.97 (s, 2H), 7.62 (d 3JHH= 8.8 Hz, 2H), 7.50 (ddd 3JHH = 1.2 Hz, 4.8 Hz, 8.0 Hz, 2H), 7.44 (d 3JHH = 8.8 Hz, 2H). 19F NMR (76 MHz, CDCl3): d -64.07. EI MS: m/z 540.5 [M+]
【実施例3】
【0136】
2,2‐ビス[2‐(2‐メチル‐3‐ピリジン‐1‐イル)ベンゾオキサゾール‐5‐イル]1,1,1‐3,3,3‐ヘキサフルオロプロパンの合成
【0137】
【化50】

【0138】
BIS-AP-AF(3.66 g, 10.00 mmol)と2-メチルニコチン酸 (2.88 g, 21.00 mmol)の混合物にポリリン酸 (20 mL)を加え、200℃で4時間撹拌した。水を加えて固体を析出させ、アンモニア水を加えて塩基性にし、濾過を行い、得られた固体を酢酸エチルに溶かした。水を加えて分液後、硫酸ナトリウムで乾燥、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサンのみ)で分離し、さらにGPC-HPLC (LC-9204, CHCl3)により精製を行い目的物 (4.57 g, 8.04 mmol)を得た(80%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): d 8.67 (dd 3JHH= 1.6 Hz, 4.8 Hz, 2H), 8.46 (dd 3JHH= 1.6 Hz, 8.0 Hz, 2H), 7.99 (s, 2H), 7.62 (d 3JHH = 8.8 Hz, 2H), 7.45 (d 3JHH = 8.8 Hz, 2H), 7.33 (dd 3JHH = 4.8 Hz, 8.0 Hz, 2H), 3.07 (s, 6H). 19F NMR (76 MHz, CDCl3): d -62.30. EI MS: m/z 568.4 [M+]
【実施例4】
【0139】
2,2‐ビス[2‐(2‐トリフルオロメチル)フェニルベンゾオキサゾール‐5‐イル]1,1,1‐3,3,3‐ヘキサフルオロプロパンの合成
【0140】
【化51】

【0141】
BIS-AP-AF(1.83 g, 5.00 mmol)と2-(トリフルオロメチル)安息香酸 (2.00 g, 10.50 mmol)の混合物にポリリン酸 (10 mL)を加え、90℃で21時間撹拌した。水を加えて固体を析出させ、アンモニア水を加えて塩基性溶液にし、希塩酸を加えて再び酸性にした。析出した固体を濾取してトルエンに溶かし、硫酸ナトリウムで乾燥、濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエンのみ)で分離し、さらにGPC-HPLC (LC-9204, CHCl3)により精製を行い目的物 (1.07 g, 1.60 mmol)を得た(32%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): d 8.16 (dd 3JHH= 1.6 Hz, 3.2 Hz, 2H), 8.03 (s, 2H), 7.90 (dd 3JHH= 1.6 Hz, 7.2 Hz, 2H), 7.72 (m, 4H), 7.62 (dd 3JHH= 0.4 Hz, 4.8 Hz, 2H), 7.44 (d 3JHH = 4.8 Hz, 2H). 19F NMR (76 MHz, CDCl3): d -59.94, -64.07. EI MS: m/z 674.4 [M+]
【実施例5】
【0142】
2,2‐ビス[2‐(6‐トリフルオロメチル‐3‐ピリジン‐1‐イル)ベンゾオキサゾール‐5‐イル]1,1,1‐3,3,3‐ヘキサフルオロプロパンの合成
【0143】
【化52】

【0144】
BIS-AP-AF(1.83 g, 5.00 mmol)と4-(トリフルオロメチル)ニコチン酸 (2.87 g, 15.00 mmol)の混合物にポリリン酸 (15 mL)を加え、200℃で4時間撹拌した。水を加えて固体を析出させ、アンモニア水を加えて塩基性にし、濾過を行い、得られた固体をトルエンに溶かした。水を加えて分液後、硫酸ナトリウムで乾燥、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン-酢酸エチル)で分離し、さらにGPC-HPLC (LC-9204, CHCl3)により精製を行い目的物 (2.33 g, 3.45 mmol)を得た(69%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): d 9.48 (s, 2H), 8.99 (d 3JHH = 4.8 Hz, 2H), 8.05 (s, 2H), 7.78 (d 3JHH = 4.8 Hz, 2H), 7.66 (d 3JHH = 4.8 Hz, 2H), 7.49 (d 3JHH= 8.8 Hz, 2H). 19F NMR (76 MHz, CDCl3): d -62.36, -64.01. EI MS: m/z 676.4 [M+]
【実施例6】
【0145】
2,2‐ビス[2‐(2‐ブロモ)フェニルベンゾオキサゾール‐5‐イル]1,1,1‐3,3,3‐ヘキサフルオロプロパンの合成
【0146】
【化53】

【0147】
BIS-AP-AF(21.69 g, 59.22 mmol)と2-ブロモ安息香酸 (25.00 g, 124.37 mmol)の混合物にポリリン酸 (120 mL)を加え、200℃で4時間撹拌した。水を加えて固体を析出させ、アンモニア水を加えて塩基性にし、濾過を行い、得られた固体をトルエンに溶かした。硫酸ナトリウムで乾燥、濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエンのみ)で分離し、 目的物 (39.23 g, 56.26 mmol)を得た(95%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): d 8.10 (dd 3JHH= 1.6 Hz, 8.0 Hz, 2H), 8.04 (s, 2H), 7.79 (dd 3JHH= 1.2 Hz, 8.0 Hz, 2H), 7.62 (d 3JHH = 8.8 Hz, 2H), 7.48 (td 3JHH = 1.2 Hz, 8.0 Hz, 2H), 7.44 (d 3JHH= 8.8 Hz, 2H), 7.39 (td 3JHH = 1.6 Hz, 8.0 Hz, 2H). 19F NMR (76 MHz, CDCl3): d -64.02. EI MS: m/z 696.0 [M+]
【実施例7】
【0148】
2,2‐ビス[2‐(2‐クロロ‐3‐ピリジン‐1‐イル)ベンゾオキサゾール‐5‐イル]1,1,1‐3,3,3‐ヘキサフルオロプロパンの合成
【0149】
【化54】

【0150】
BIS-AP-AF(21.97 g, 60.00 mmol)と2-クロロニコチン酸 (19.85 g, 126.00 mmol)の混合物にポリリン酸 (120 mL)を加え、200℃で7時間撹拌した。水を加えて固体を析出させ、アンモニア水を加えて塩基性にし、濾過を行った。得られた固体をアセトンで洗浄、乾燥し、目的物 (29.30 g, 48.00 mmol)を得た(80%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): d 8.37 (dd 3JHH= 2.0 Hz, 7.2 Hz, 2H), 7.86 (d 3JHH = 8.8 Hz, 2H), 7.74 (m, 4H), 7.34 (d 3JHH = 8.8 Hz, 2H), 6.42 (dd 3JHH = 6.4 Hz, 7.2 Hz, 2H). 19F NMR (76 MHz, CDCl3): d -62.47. EI MS: m/z 572.4 [(M-Cl)+]
【実施例8】
【0151】
2,2‐ビス[2‐(ビフェニル‐2‐イル)ベンゾオキサゾール‐5‐イル]1,1,1‐3,3,3‐ヘキサフルオロプロパンの合成
【0152】
【化55】

【0153】
テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム (289 mg, 0.25 mmol)、実施例6のハロゲン化ベンゾオキサゾール誘導体(3.48 g, 5.00 mmol)、フェニルボロン酸 (1.83 g, 15.00 mmol)、炭酸カリウム(2.08 g, 15.00 mmol)をジメトキシエタン/水の混合溶媒に溶かし、17時間還流させた。室温に冷却し、セライトで濾過を行い、水を加えてジエチルエーテルで抽出、硫酸ナトリウムで乾燥、濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエンのみ)で分離し、さらにGPC-HPLC (LC-9204, CHCl3)により精製を行い目的物 (3.28 g, 4.75 mmol)を得た(95%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): d 8.12 (dd 3JHH= 1.2 Hz, 8.0 Hz, 2H), 7.84 (s, 2H), 7.61 (td 3JHH = 1.2 Hz, 7.6 Hz, 2H), 7.52 (m, 4H), 7.36 (m, 6H), 7.32 (m, 4H), 7.24 (t 3JHH= 8.8 Hz, 4H). 19F NMR (76 MHz, CDCl3): d -64.07. EI MS: m/z 690.4 [M+]
【実施例9】
【0154】
2,2‐ビス[2‐(3‐ピリジン‐1‐イル)フェニルベンゾオキサゾール‐5‐イル]1,1,1‐3,3,3‐ヘキサフルオロプロパンの合成
【0155】
【化56】

【0156】
テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム (289 mg, 0.25 mmol),実施例6のハロゲン化ベンゾオキサゾール誘導体(3.48 g, 5.00 mmol)、3−ピリジンボロン酸 (1.84 g, 15.00 mmol)、炭酸カリウム(2.08 g, 15.00 mmol)をジメトキシエタン/水の混合溶媒に溶かし、17時間還流させた。室温に冷却し、セライトで濾過を行い、水を加えてジエチルエーテルで抽出、硫酸ナトリウムで乾燥、濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエンのみ)で分離し、さらにGPC-HPLC (LC-9204, CHCl3)により精製を行い目的物 (3.15 g, 4.55 mmol)を得た(91%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): d 8.62 (dd 3JHH= 1.6 Hz, 4.8 Hz, 2H), 8.61 (dd 3JHH= 0.8 Hz, 2.4 Hz, 2H), 8.22 (dd 3JHH= 1.6 Hz, 8.0 Hz, 2H), 7.82 (s, 2H), 7.65 (m, 4H), 7.59 (td 3JHH= 0.8 Hz, 7.6 Hz, 2H), 7.47 (dd 3JHH= 1.6 Hz, 7.6 Hz, 2H), 7.34 (ddd 3JHH= 0.8 Hz, 4.8 Hz, 6.4 Hz, 2H), 7.26 (m, 4H). 19F NMR (76 MHz, CDCl3): d -64.07. EI MS: m/z 692.5 [M+]
【実施例10】
【0157】
2,2‐ビス[2‐(2‐ナフタレン‐1‐イル)フェニルベンゾオキサゾール‐5‐イル]1,1,1‐3,3,3‐ヘキサフルオロプロパンの合成
【0158】
【化57】

【0159】
テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム (289 mg, 0.25 mmol),実施例6のハロゲン化ベンゾオキサゾール誘導体(3.48 g, 5.00 mmol)、2−ナフタレンボロン酸 (2.58 g, 15.00 mmol)、炭酸カリウム(2.08 g, 15.00 mmol)をジメトキシエタン/水の混合溶媒に溶かし、18時間還流させた。室温に冷却し、セライトで濾過を行い、水を加えてジエチルエーテルで抽出、硫酸ナトリウムで乾燥、濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエンのみ)で分離し、さらにGPC-HPLC (LC-9204, CHCl3)により精製を行い目的物 (3.67 g, 4.65 mmol)を得た(93%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): d 8.17 (dd 3JHH= 1.2 Hz, 8.0 Hz, 2H), 7.89 (d 3JHH = 1.6 Hz, 2H), 7.86 (m, 4H), 7.80 (s, 2H), 7.77 (d 3JHH = 8.8 Hz, 2H), 7.60 (m, 6H), 7.50 (m, 4H), 7.32 (dd 3JHH= 2.0 Hz, 8.8 Hz, 2H), 7.20 (d 3JHH = 8.8 Hz, 2H), 7.13 (d 3JHH = 8.8 Hz, 2H). 19F NMR (76 MHz, CDCl3): d -64.09. EI MS: m/z 790.7 [M+]
<純青色燐光発光有機電界発光素子の評価>
【実施例11】
【0160】
ガラス基板上にITOの透明電極を100nmの膜厚で形成し、有機洗浄、純水洗浄、乾燥、UVオゾン処理を行った。その基板を直ちに真空チャンバへ導入後、ArとOのプラズマ処理を行った。
【0161】
真空蒸着(真空度6.7×10−5Pa)により、α−NPDを30nm堆積して、正孔輸送層を形成した。その後、電子ブロック層としてIrppzを10nm、その後、TCTAを10nm堆積した。次に、発光層のホスト材料として実施例4で合成した2,2‐ビス[2‐(2‐トリフルオロメチル)フェニルベンゾオキサゾール‐5‐イル]1,1,1‐3,3,3‐ヘキサフルオロプロパンを用い、ドーパント材料としてイリジウム錯体(FIr6)がホスト材料に対し8〜10重量%の割合となるように同時蒸着して、発光層を50nmの厚さに形成した。さらに、正孔ブロック層兼電子輸送層としてBCPを50nm堆積した。さらにこの後、電子注入層としてLiF層を0.5nm、金属電極としてAlを100nm蒸着した。以上により素子部を得た。
【0162】
このような素子部の形成された基板を連続して(in-situで)高真空に排気したチャンバへ搬送し、そのチャンバを孤立系にした後、1気圧の高純度窒素で置換した。その後、紫外線硬化樹脂を用いて封止ガラスの端部を端子部は透明電極と、端子部以外はガラス基板の素子形成側表面に接着し、UVランプを用いて紫外線をこの樹脂部に照射し、素子部を密封した。
【0163】
このようにして得られた有機電界発光素子に直流電流を印加し、連続駆動させてその発光効率及び発光スペクトルの測定を行った。純青色燐光材料(FIr6)からの青色発光(ピーク波長:459nm)が確認された。0.11mA/cmの注入電流密度において2.2 cd/Aであり、外部量子効率は最大1.2%に到達した。この効率は、全く同一条件でCBPをホスト材料とした比較例1(下記)の結果よりも、有意に高い値であった。
【0164】
[比較例1]
ホスト材料をCBPに代えた以外は、実施例14と同様にして有機電界発光素子を構成した。 外部量子効率は最大0.7%であり、実施例14より劣るものであった。
【0165】
<青色(水色)燐光発光有機電界発光素子の評価>
【実施例12】
【0166】
ドーパント材料をFIrpicに代えた以外は、実施例11と同様にして有機電界発光素子を構成した。青色(水色)燐光材料(FIrpic)からの水色発光が確認された。0.11mA/cm2の注入電流密度において9.1cd/Aであり、外部量子効率は最大4.3%であった。全く同一条件でCBPをホスト材料とした比較例2(下記)の結果よりも、有意に高い値であった。
【0167】
[比較例2]
ホスト材料をCBPに代えた以外は、実施例12と同様にして有機電界発光素子を構成した。外部量子効率は最大2.8%であり、実施例12より劣るものであった。
<蒸着膜の安定性評価>
【実施例13】
【0168】
石英基板上に真空蒸着により、実施例4で合成した2,2‐ビス[2‐(2‐トリフルオロメチル)フェニルベンゾオキサゾール‐5‐イル]1,1,1‐3,3,3‐ヘキサフルオロプロパンの層を100nmの厚さにして形成した。このオキサゾール誘導体の薄膜を形成した基板を室温下、大気中で放置したが、3ヶ月経過後も膜質の変化はなく良好であった。
【0169】
[比較例3]
実施例4のオキサゾール誘導体をCBPに代えた以外は、実施例13と同様にして形成した薄膜の室温下、大気中での安定性を評価した。室温で1ヶ月経過後に凝集がおこり膜質の変化が見られた。
【0170】
以上のように、本発明のオキサゾール系材料は、青色燐光発光用のホスト材料として有効に機能し、しかも従来知られていた青色燐光発光用のホスト材料であるCBP(カルバゾール基によりなるホスト材料)に比べて、外部量子効率が有意に優れることが判った。これは、本発明のホスト材料の、
(i)分子の中央におけるSp3カーボンの導入によるπ共役系の切断の効果、
(ii)該Sp3カーボンにトリフルオロメチル基を導入した効果、さらに
(iii)分子中にオキサゾール基を導入した効果、
の各効果が相乗した結果、青色燐光発光用にも十分なバンドギャップを持ち、なおかつ、エネルギー遷移が効率的に起こる発光素子が得られたことを示している。
【0171】
また、このオキサゾール系材料は、CBPよりも薄膜の安定性に優れることも判った。このことも、素子効率の向上に寄与していると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1】本発明の実施形態2に係る有機電界発光素子の概略構成を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極間に、少なくとも一層の有機発光層を有する有機電界発光素子であって、一般式(1)で表されるベンゾアゾール誘導体
【化1】

[式中、R1は炭素数1〜18のアリール基、ヘテロアリール基、オリゴアリール基、オリゴヘテロアリール基、アセン基(ただし、これらは炭素数1〜6のアルキル基、パーフルオロアルキル基、アルコキシ基、パーフルオロアルコキシ基、アリールオキシ基、シアノ基、シリル基、アミノ基、ボリル基、スタンニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい)、水素原子、ハロゲン原子、またはその組み合わせからなり、YはO、S、またはN-R’[R’は炭素数1〜18のアリール基、ヘテロアリール基、オリゴアリール基、オリゴヘテロアリール基、アセン基(ただし、これらは炭素数1〜6のアルキル基、パーフルオロアルキル基、アルコキシ基、パーフルオロアルコキシ基、アリールオキシ基、シアノ基、シリル基、アミノ基、ボリル基、スタンニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい)、炭素数1〜6のアルキル基、パーフルオロアルキル基、アルコキシ基、パーフルオロアルコキシ基、アリールオキシ基、シアノ基、シリル基、アミノ基、ボリル基、スタンニル基、ニトロ基、水素原子、またはハロゲン原子を示す]
を、前記有機発光層中に含むことを特徴とする、有機電界発光素子。
【請求項2】
請求項1において、前記有機発光層にはホスト材料および青色燐光ドーパント材料を含み、該ホスト材料が、請求項1に記載のベンゾアゾール誘導体である、青色燐光発光を用いた有機電界発光素子。
【請求項3】
前記有機電界発光素子が、さらに正孔輸送層、電子ブロック層、電子輸送層および正孔ブロック層を含む、請求項2に記載の有機電界発光素子。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかにおいて、前記ベンゾアゾール誘導体が、一般式(2)
【化2】

[式中、R1は一般式(1)と同じ]で表されるベンゾオキサゾール誘導体であることを特徴とする、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
前記ベンゾオキサゾール誘導体が、下記式で表される2,2‐ビス[2‐(2‐トリフルオロメチル)フェニルベンゾオキサゾール‐5‐イル]1,1,1‐3,3,3‐ヘキサフルオロプロパン
【化3】

である、請求項4に記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
一対の電極間に、少なくとも一層の有機発光層を有する、青色燐光発光を用いた有機電界発光素子であって、
有機電界発光素子が、さらに正孔輸送層、電子ブロック層、電子輸送層および正孔ブロック層を含み、
前記有機発光層にはホスト材料および青色燐光ドーパント材料を含み、
該ホスト材料が、下記式で表される2,2‐ビス[2‐(2‐トリフルオロメチル)フェニルベンゾオキサゾール‐5‐イル]1,1,1‐3,3,3‐ヘキサフルオロプロパン
【化4】

であり、
該青色燐光ドーパントが、下記式で表されるFIr6
【化5】

または下記式で表されるFIrpic
【化6】

である、青色燐光発光を用いた有機電界発光素子。
【請求項7】
一般式(1)で表されるベンゾアゾール誘導体。
【化7】

[式中、R1は炭素数1〜18のアリール基、ヘテロアリール基、オリゴアリール基、オリゴヘテロアリール基、アセン基(ただし、これらは炭素数1〜6のアルキル基、パーフルオロアルキル基、アルコキシ基、パーフルオロアルコキシ基、アリールオキシ基、シアノ基、シリル基、アミノ基、ボリル基、スタンニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい)、水素原子、ハロゲン原子、またはその組み合わせからなり、YはO、S、またはN-R’[R’は炭素数1〜18のアリール基、ヘテロアリール基、オリゴアリール基、オリゴヘテロアリール基、アセン基(ただし、これらは炭素数1〜6のアルキル基、パーフルオロアルキル基、アルコキシ基、パーフルオロアルコキシ基、アリールオキシ基、シアノ基、シリル基、アミノ基、ボリル基、スタンニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい)、炭素数1〜6のアルキル基、パーフルオロアルキル基、アルコキシ基、パーフルオロアルコキシ基、アリールオキシ基、シアノ基、シリル基、アミノ基、ボリル基、スタンニル基、ニトロ基、水素原子、またはハロゲン原子を示す]
【請求項8】
請求項7に記載のベンゾアゾール誘導体であって、一般式(2)
【化8】

[式中、R1は一般式(1)と同じ]で表されるベンゾオキサゾール誘導体。
【請求項9】
請求項8に記載のベンゾオキサゾール誘導体であって、一般式(3)
【化9】

[式中、R2は炭素数1〜18のアリール基、ヘテロアリール基、オリゴアリール基、オリゴヘテロアリール基、アセン基、アルキル基、パーフルオロアルキル基、アルコキシ基、パーフルオロアルコキシ基、シリル基、スタンニル基、アミノ基、ホスフィノ基、ホスフィンオキサイド基、ボリル基、スルフィド基、水素原子またはハロゲン原子を示す。Z1〜Z4はそれぞれC−HまたはNであることを示す]で表されるベンゾオキサゾール誘導体。
【請求項10】
請求項8に記載のベンゾオキサゾール誘導体であって、一般式(4)
【化10】

[式中、R2は一般式(3)と同じ]で表されるベンゾオキサゾール誘導体。
【請求項11】
請求項8に記載のベンゾオキサゾール誘導体であって、一般式(5)
【化11】

[式中、R2は一般式(3)と同じ]で表されるベンゾオキサゾール誘導体。
【請求項12】
請求項8に記載のベンゾオキサゾール誘導体であって、下記式
【化12】

で表されるベンゾオキサゾール誘導体。

【図1】
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【公開番号】特開2008−130599(P2008−130599A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−310413(P2006−310413)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】