説明

ベンゾキノリジン−2−カルボン酸のプロドラッグ

本発明は、光学的に純粋なベンゾキノリジン-2-カルボン酸の新規プロドラッグ及び該プロドラッグを含む医薬組成物に関する。具体的には、本発明は、S-(-)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸のL-アラニン及びL-バリンプロドラッグのスルホン酸塩に関する。本発明の化合物及び組成物を使用して、細菌性グラム陽性、グラム陰性及び嫌気性感染、特には、耐性グラム陽性菌及びグラム陰性菌により生じる感染、マイコバクテリア感染及び新生院内病原菌感染を治療することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、光学的に純粋なベンゾキノリジン-2-カルボン酸の新規プロドラッグ及び該プロドラッグを含む医薬組成物に関する。本発明の化合物及び組成物を使用して、細菌性グラム陽性、グラム陰性及び嫌気性感染、特には、耐性グラム陽性菌及びグラム陰性菌により生じる感染、マイコバクテリア感染及び新生院内病原菌感染を治療することができる。
発明の背景
プロドラッグは治療薬であり、それ自体、不活性であるが、インビボで、治療的に活性な親分子に転化される。プロドラッグにより、光学的な物理化学的、薬物動態学的及び薬力学的特性が提供される。それらは、医薬的、薬物動態学的又は薬力学的障害、例えば、不十分な経口吸収、難溶性、不十分な化学的安定性、許容できない風味(taste)若しくは臭い(odor)、刺激又は痛み、不適切な血液脳関門透過性、毒性及び顕著な前全身的代謝(presystemic metabolism)を克服するように設計することができる。
患者の便宜のため、ほとんどの薬が経口投与される。経口的な薬のデリバリーで直面する大きな障害があり、それは、投与された全ての化合物が、それが意図される作用部位に到達しないことを意味することが多い。化合物が、経口的な薬のデリバリーに対する障害を克服し及び体循環に到達し得る程度は、経口バイオアベイラビリティの用語により定められる。
【0002】
キラルフルオロキノロンS-(-)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸は、また、S(-)ナジフロキサシンとしても知られ、nihon tokkyo
JP63,192,753A(Japanese Patent JP63,192,753A)及びJP05,339,238(Japanese Patent JP05,339,238)に記載されている。
S-(-)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸には、その抗菌活性プロフィールから、商業的抗菌剤として有用である可能性がある。しかしながら、S-(-)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸ナトリウム塩は、静脈内注射によりラットにおいて静脈炎を生じる傾向が高い。また、S-(-)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸は、28℃で8.0〜9.5のpH範囲にわたり0.8〜2.0mg/mlの水溶解度を有し、従って、薬をタブレット又はカプセルとして配合する必要がある場合、又は経口投与(gavage)及び非経口的注射用配合物を製造する場合に問題が生じる。従って、上記問題を克服し得る適切な物質が、ヒト及び動物における全身的使用のために許容可能な投薬形態の開発の助けとなり得る。
【0003】
この方向で、S-(-)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸のL-アルギニン塩が、PCT出願WO 00/68229号公報に開示されるように、静脈内注射によりラットにおいて静脈炎を生じる傾向が低い、広域抗生物質であることが分かった。最も安定な塩形態であるS-(-)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸のL-アルギニン塩四水和物が、PCT出願WO 05/023805号公報(及び対応する米国特許第7,164,023号明細書)に開示されている。それは、水溶液を含む、安定な医薬投与形態を製造するのに有用である。注射剤型は、特に、pH9.5でのその有利な水溶解度、連続静脈内投与で静脈炎を生じない、その理想的な適合性、及びその安全性プロフィールの観点から、細菌感染により生じる疾患を治療するための長期静脈内療法に適する。
しかしながら、S-(-)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸及びS-(-)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸のL-アルギニン塩四水和物の経口バイオアベイラビリティが動物において低いことが分かった。S-(-)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸の低経口バイオアベイラビリティは、おそらく、不十分な溶解度によるものであり、従って、インビボでの吸収性が低い。ところが、S-(-)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸のL-アルギニン塩の低経口バイオアベイラビリティは、おそらく、化合物が、pHが1〜2まで(〜 1 to 2)である胃部を通過する間、その酸性pHにおいて沈殿する傾向によるものである。
【0004】
従って、プロドラッグのアプローチが、S-(-)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸の経口バイオアベイラビリティを改良すると予想された。S-(-)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸のプロドラッグが、本件発明者らの米国特許第6,750,224号明細書に開示されている。米国特許第6,750,224号明細書には、2つのタイプのプロドラッグ:2-カルボン酸でのプロドラッグ及びピペリジン側鎖の4-ヒドロキシでのプロドラッグが開示されている。開示された4-ヒドロキシピペリジンでのプロドラッグとしては、アミノ酸プロドラッグが挙げられる。これらのプロドラッグは、経口医薬組成物の開発を目的として研究された。その中に開示されたS-(-)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸のプロドラッグのいずれも、最適な特徴、例えば、実質的プロドラッグ効果を示すような、消化管にありがちな幅広いpH範囲にわたる適切な溶解度を有しておらず又はそのプロドラッグでは、S-(-)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸のL-アルギニン塩四水和物に比べ、S-(-)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸の経口バイオアベイラビリティを改良できなかった。アミノ酸プロドラッグのうち、L-アラニン及びL-バリンプロドラッグがまた開示されている。双方のプロドラッグで、水溶性が制限されている(<10mg/ml)。一般に、不十分な水溶性は、経口バイオアベイラビリティを制限する重要な因子であることが示唆されている。
本発明の目的は、消化管において起こりがちな、経口バイオアベイラビリティが強化され、幅広いpH範囲にわたり水溶性が改良された化合物を提供することである。
【0005】
発明の概要
本発明は、以下の式IのS-(-)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸のプロドラッグの塩及びそれらの医薬的に許容される溶媒和物、多形体又は水和物に関する:
【化1】

(式中、Rは、CH3又はCH(CH3)2であり;及び
R1は、C1-6アルキル、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ又はC1-6アルコキシより選ばれる1以上の置換基を有していてもよい、C1-6アルキル又はフェニルである)。
【0006】
本発明は、また、式Iの化合物の製造方法であって、以下の工程を含む方法に関する:
アミン保護されたL-アラニン又はL-バリンを、S-(-)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸とカップリングさせて、式IIの化合物を得る工程;式IIの化合物を脱保護する工程;及び本発明の式Iの化合物又はそれらの医薬的に許容される塩を単離する工程。
また、本発明は、本発明の式Iの化合物並びにそれらの多形体及び水和物を製造する方法を提供する。
本発明は、また、本発明の化合物を含む医薬組成物並びに本発明の化合物及び組成物を用いて細菌感染を治療又は予防する方法に関する。
本発明の1以上の実施態様の詳細を以下に記載する。本発明の他の特徴、対象体及び利点は、以下の記載及び請求の範囲から明らかであろう。
【0007】
発明の詳細な説明
本発明は、以下の式IのS-(-)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸及びそれらの医薬的に許容される溶媒和物、多形体又は水和物のプロドラッグに関する:
【化2】

(式中、
Rは、CH3又はCH(CH3)2であり;及び
R1は、C1-6アルキル、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ又はC1-6アルコキシより選ばれる1以上の置換基を有していてもよい、C1-6アルキル又はフェニルである)。水溶解度は、薬の経口バイオアベイラビリティについての重要なパラメータである。本発明の化合物の水溶解度は、pH7で>200mg/mlであることが分かり、それは、実質的に、遊離塩基又は塩酸塩のものより高い。
【0008】
式Iの化合物は、親化合物、即ち、S-(-)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸及びそのL-アルギニン塩と比べて、吸収性が特に良好であり、それは、ラットにおける経口ルートによるAUG及びCmaxの上昇に反映される。また、プロドラッグ、S-(-)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-L-アラニニルオキシピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸の塩酸塩と比べて、本発明の化合物は、ラットにおける経口ルートによるAUG及びCmaxの上昇を示す。更に、S-(-)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-L-アラニニルオキシピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸の塩酸塩の低溶解性により、胃部を通過する間、共通イオン効果の悩みが生じ得る。また、式Iの本発明の化合物は、齧歯類及び犬における高用量での耐容性が良好であることが分かった。
本発明の他の実施態様では、式Iの化合物の製造方法が提供される。式Iの化合物は、カップリング剤の存在下で、S-(-)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸を用いて、アミン保護されたアミノ酸をカップリングすることにより製造可能である。使用されるアミノ酸は、L-アラニン又はL-バリンである。式IIの化合物を脱保護して、式Iの本発明の化合物を得る。
【0009】
本発明の化合物は、S-(-)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸から製造可能であり、これは、当該技術分野において知られる技術を用いて、カップリング剤の存在下で、N-t-ブトキシカルボニル-L-アラニン又はN-t-ブトキシカルボニル-L-バリンを用いて、該4-ヒドロキシ-ピペリジンをエステル化することによる。典型的には、カップリング反応を、カップリング剤の存在下において、適切な溶媒中において及び1以上の塩基の存在下において、-30〜+150℃の温度範囲で行って、式IIの化合物を得る。好ましいカップリング剤としては、カルボジイミド、2,4,6-トリクロロベンゾイル・クロライド及び塩化メタンスルホニルなどが挙げられる。カルボジイミド、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド又はN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N-エチルカルボジイミドを、カップリング剤として使用することができる。適切な溶媒は、ハロゲン化溶媒、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、又は双極性(dipolar)非プロトン性溶媒、例えば、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド又はそれらの混合物より選ばれる。1以上の塩基は、トリエチルアミン、N,N-ジメチルアミノピリジン又はヒューニッヒ塩基(N,N-ジイソプロピルエチルアミン)より選ばれる。
カップリング反応は、S-(-)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸を、N-t-ブトキシカルボニル-L-アラニン又はN-t-ブトキシカルボニル-L-バリンを用いて、ハロゲン化炭化水素、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム又は二塩化エチレン中において並びにN,N-ジメチルアミノピリジン及びカップリング剤であるジシクロヘキシルカルボジイミドの存在下において、-10〜0℃で処理することにより行う。あるいはまた、カップリング反応は、S-(-)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸を、N-t-ブトキシカルボニル-L-アラニン又はN-t-ブトキシカルボニル-L-バリンを用いて、テトラヒドロフラン及びジメチルホルムアミド中において、カップリング剤であるトリクロロベンゾイル・クロライドを用いて、N,N-ジメチルアミノピリジンの存在下において、-10〜0℃で処理することにより行うことができる。カップリング反応は、また、S-(-)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸を、N-t-ブトキシカルボニル-L-アラニン又はN-t-ブトキシカルボニル-L-バリンを用いて、テトラヒドロフラン及びジメチルホルムアミド中において、カップリング剤として塩化メタンスルホニルを用いて、トリエチルアミンの存在下で、-10〜0℃で処理することにより行うことができる。
【0010】
N-t-ブトキシカルボニル(BOC)の脱保護工程は、T. W. Greene及びP. G. M. Wutsの有機合成における保護基、第三版、John Wiley及びSons、ニューヨーク(1999)に記載された方法を用いて行うことができる。従って、脱保護は、式IIの化合物を、弱酸性条件を用いて、水溶液又は非水溶液中において処理することにより行うことができる。溶液中における脱保護工程のための、使用可能な溶媒は、有機溶媒の添加を伴う又は伴わない水性酸、又は非水性有機溶媒。酸性条件は、鉱酸、例えば、塩酸などを用いて、あるいはまた、他の有機酸、例えば、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-ニトロベンゼンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、酢酸、ギ酸又はそれらの混合物を用いて使用することができる。好ましくは、式IIの化合物を、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-ブロモベンゼンスルホン酸又はp-ニトロベンゼンスルホン酸を用いて、-10〜100℃の温度範囲において、アセトン又はアセトニトリル中において処理して、式Iの本発明の化合物を得る。
【0011】
【化3】

【0012】
本発明の別の態様では、式Iの本発明の化合物の粗生成物を精製する。本発明の化合物の精製は、有機溶媒中に不純物を溶解することによる不純物の除去により行う。使用される溶媒は、アセトン、ジエチルエーテル又はそれらの混合物である。
式Iの化合物の多形体は、種々の条件、例えば、温度、時間及び/又は特定の溶媒の使用の下での、式Iの化合物の結晶化により製造することができる。式Iの化合物の水和物は、当該技術分野における当業者に知られる方法により製造することができる。
用語“C1-6アルキル”は、炭素数が1〜6である、飽和の、直鎖又は分枝鎖炭化水素基を意味する。C1-6アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル及びそれらの分枝異性体、例えば、イソプロピル、イソブチル及びt-ブチルが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
用語“C1-6アルコキシ”は、アルキルである炭化水素鎖置換基を有する酸素ラジカル(即ち、-O-アルキル)を意味する。C1-6アルコキシの例は、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、ペンチルオキシ及びヘキシルオキシである。
本件明細書において使用される用語“ハロゲン”は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素より選ばれる原子を意味する。
用語“ニトロ”は、式-NO2-の基を意味する。
用語“アルキルスルホン酸”は、式(C1-6アルキル)-SO3H;例えば、メタンスルホン酸(CH3SO3H)及びエタンスルホン酸(CH3CH2SO3H)を意味する。
【0013】
本発明は、また、本発明のプロドラッグを含む液体及び固体医薬配合物、例えば、注射剤、サスペンション、エマルジョン、タブレット、被覆されたタブレット、被覆されたタブレットコア、カプセル、溶液、トローチ、分散体、ペレット、顆粒、座薬及びハード又はソフトゼラチンカプセルに関する。
医薬組成物を、当該技術分野における当業者により使用される従来の手順に従って製造して、安定性及び効果的組成物を得る。そのような方法は、活性成分を、医薬助剤、例えば、キャリヤー、希釈剤、溶媒又は賦形剤を用いて又はその中において、例えば、混合、攪拌、懸濁、分散、乳化及び溶解すること及び成分を、非経口投与、経口投与、鼻内への投与、口腔投与又は直腸投与用の医薬的に適切な形態にすることを含む。固体、液体、非経口的投薬形態においては、活性化合物又は活性成分の有効量は、所望の結果をもたらす任意の量である。本発明に従えば、本発明のプロドラッグの有利な溶解特性を、医薬的投薬形態の配合物に付与することができることを見い出した。また、それを使用して、湿式造粒法により;又は乾式造粒法によりタブレットを製造することができる。また、それを使用して、水性投薬形態物を製造することができる。
【0014】
投薬形態物は、当該技術分野において認識される従来技術により製造することができるが、好ましくは、本発明のプロドラッグを他の成分と混合することにより配合するであろう。固体経口投薬形態物を配合するのに利用される他の成分は、従来の不活性成分、例えば、微結晶性セルロース及びメチルセルロースなど、適切な甘味料、着色剤及び/又は香料添加剤、並びにそれらの防腐剤を必要に応じて含むであろう。サスペンションの製造に適する、そのような固体経口投薬形態物又は乾燥配合物は、それらが、有効投薬量の本発明の化合物を含むように配合する。一般には、100〜1500mgの本発明の化合物を含む固体投薬形態物が考慮される。経口サスペンションに適する製剤における投薬量も同様であろう。
医薬配合物は、通常は薬局(pharmacy)において使用される助剤及び添加剤、例えば、タブレットバインダー、充填剤、防腐剤、タブレット崩壊剤、流量調節剤、可塑剤、湿潤剤、分散剤、乳化剤、溶媒、pH変更剤及び香味料などと一緒に配合することができる。第二の好ましい方法は、筋内投与、静脈内投与又は皮下投与のための非経口的なものである。
医薬組成物を注射用製剤に配合する場合、医薬組成物を溶液又はサスペンションの形態物に配合する時、習慣的に当該技術分野において使用される全ての希釈剤を使用することが可能である。適切な希釈剤の例は、水、エチルアルコール、ポリプロピレングリコール、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステルである。塩化ナトリウム、グルコース又はグリセロールを治療剤に導入してもよい。注射用製剤における活性成分の濃度は、0.1〜100mg/mlの範囲内にあるのが好ましい。
【0015】
上記の一般的な投薬形態物に加えて、本発明の化合物は、また、制御された放出手段及び/又はデリバリーデバイス、例えば、米国特許第3,845,770号;第3,916,899号;第3,536,809号;第3,598,123号及び第4,008,719号明細書に記載されたものにより投与してもよく、それらの開示内容は、参考文献として本件明細書に組み込まれるものとする。
本発明のプロドラッグの一日当たりの総投与量範囲は、一般には、約200〜約5000mgである。好ましくは、本発明のプロドラッグの一日当たりの総投与量範囲は、300〜3000mgである。しかしながら、その投与量は、患者のニーズ及び状態に依存して、より高くても又はより低くてもよい。
本発明の抗菌化合物及び医薬組成物は、広範囲の細菌感染、例えば、膿痂疹、肺炎、気管支炎、咽頭炎、心内膜炎、尿路感染症、糖尿病による足の壊疽、胃腸感染症又は菌血症に罹患したヒト及び動物の治療において有用である。これらの細菌感染は、以下の細菌のいずれかにより引き起こされ得る:黄色ブドウ球菌、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、メチシリン耐性(resitant)黄色ブドウ球菌、メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、腸球菌、β型溶血連鎖球菌、ビリダンスレンサ球菌群(viridans group of streptococci)、多剤耐性ヒト型結核菌(M. tuberculosis)及び他の非定型抗酸菌、例えば、マイコバクテリウム・イントラセルラレ及びマイコバクテリウム・アビウムによるマイコバクテリア感染、並びに新生グラム陰性原因菌、例えば、クリセオバクテリウム・メニンゴセプチクム、クリセオバクテリウム・インドロゲネス(indologense)及び他のグラム陰性原因菌、例えば、大腸菌、クレブシエラ菌、プロテウス、セラチア、シトロバクター及びシュードモナス菌。
【0016】
本発明は、また、全身感染、特には、耐性グラム陽性菌感染、グラム陰性菌感染、マイコバクテリア感染及び院内病原菌感染の予防及び/又は治療が必要なヒト及び動物の治療のための抗感染組成物を包含し、その組成物は、本発明の化合物を、該感染を除去するのに実質的に十分であるが、過度の(undue)副作用は生じない量で含む。本発明の化合物及び組成物は、感染の危険性があるヒト及び動物に投与することができ、例えば、本発明の化合物又は組成物は、術前及び/又は術後の患者、医療従事者又は感染の危険性がある対象体に投与することができる。
本発明は、前記化合物をヒト又は動物対象体に投与することを包含する。本発明において使用される化合物及び組成物は、従って、医薬的に許容可能でなければならない。本件明細書において使用する“医薬的に許容される”成分は、正当な損益比に見合った、過度な副作用(例えば、毒性、炎症及びアレルギー反応)のない、ヒト及び/又は動物に対する使用に適するものである。本発明の化合物を使用することにより治療され得る動物としては、哺乳類、魚類及び鳥類が挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
以下の詳細な実施例は、本発明を、その範囲を制限することなしに、より十分に説明するためのものである。本発明のプラクティスにおける種々の他の実施態様及び変更が、上記の本発明の範囲及び精神を逸脱することなく、当該技術分野における当業者に明らかであり、及び彼らにより容易になされ得る。従って、本件に添付されるクレームの範囲は、上記の正確な記載に限定される訳ではなく、むしろ、クレームは、関連する技術分野における当業者により、それらの同等物として扱われるであろう特徴及び実施態様の全てを含む、本発明に属する特許性のある新規性の特徴の全てを包含するとして解釈されることが意図される。本発明の更なる説明を、以下の実験研究を参照して行う。
以下の詳細な実施例は、本発明を、その範囲を制限することなしに、より十分に説明するためのものである。
【0017】
実験:
(S)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]-キノリジン-2-カルボン酸を、Chem. Pharm. Bull. 1996, 44(4), 642-645に記載された手順により製造した。
実施例1
(2'S,5S)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-(N-t-ブトキシカルボニル-L-アラニニル-オキシ)-ピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸の製造:
方法1:ジクロロメタン(2 L)中のN-t-ブトキシカルボニル-L-アラニン(473 g)の混合物に対して、ジクロロメタン(2 L)中に溶解したジシクロヘキシルカルボジイミド(515 g)を、-10〜0℃で充填して、濁ったサスペンションを得た。その濁ったサスペンションに対して、300 gの(S)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-ヒドロキシ-ピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸を添加し、次いで、4-N,N-ジメチルアミノピリジン(58 g)を添加し及び反応混合物を、-10〜5℃で2時間攪拌した。サスペンションをろ過し及び固形物を500 mlのジクロロメタンで洗浄した。ろ液を水で洗浄した。ろ液を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥した有機層を、次いで、その容量が半分となるまで濃縮し、その結果、固形物が沈殿した。固形物をろ過し及び300 mlのジクロロメタンで洗浄した。透明な有機的ろ液を、油状塊が得られる乾燥度まで濃縮した。油状塊をジエチルエーテル(4 L)で摩砕(triturate)して、白色固形物を得た。固形物を吸引ろ過し及びジエチルエーテル(1 L)で洗浄して、415 g(94 %)の表題化合物を得た。
【0018】
方法2:テトラヒドロフラン(1050 ml)及びN,N-ジメチルホルムアミド(350 ml)混合物中のN-t-ブトキシカルボニル-L-アラニン(110 g)及びトリエチルアミン(98.0 ml)の混合物に対して、2,4,6-トリクロロベンゾイル・クロライド(100 ml)を添加した。得られた混合物を-5〜0℃の温度で5時間攪拌した。反応混合物に対して、4-N,N-ジメチルアミノピリジン(24 g)及び(S)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-ヒドロキシ-ピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸(70 g)を添加した。反応混合物を、更に7時間、-5〜0℃の温度で攪拌した。サスペンションを室温でろ過し及びろ液を、水の添加に、酢酸エチルで抽出した。減圧下での有機層の蒸発により、粘着性固形物を得、それをジエチルエーテルで摩砕して、85 gの白色固形物を得た。
方法3:テトラヒドロフラン(75 ml)及びN,N-ジメチルホルムアミド(25 ml)混合物中のN-t-ブトキシカルボニル-L-アラニン(7.9 g)の溶液に対して、-10〜0℃で、塩化メタンスルホニル(2.42 ml)を滴下した。上記溶液に対して、トリエチルアミン(8.7 ml)を、5分かけて滴下した。反応混合物を、-10〜0℃の温度を保ちながら1.5時間攪拌した。反応混合物に対して、(S)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-ヒドロキシ-ピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸(5.01 g)及び4-N,N-ジメチルアミノピリジン(1.70 g)を添加した。反応混合物を、更に1時間、-5〜0℃の温度で攪拌した。サスペンションを室温でろ過し並びにろ液を水(300 ml)で希釈し及び酢酸エチル(150 ml × 2)で抽出した。減圧下での有機層の蒸発により、粘着性固形物を得、それをジエチルエーテルで摩砕して、6.38 g(86 %)の白色固形物を得た。
【0019】
実施例2
(2'S, 5S)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-L-アラニニル-オキシ-ピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸のメタンスルホン酸塩の製造
アセトン(4.5 L)中の(2'S, 5S)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-N-t-ブトキシカルボニル-L-アラニニルオキシ-ピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸(415 g)の混合物に対して、メタンスルホン酸(66 ml)を充填した。反応混合物を65〜67℃の温度で一晩攪拌した。サスペンションを40〜45℃でろ過した。固形物をアセトン(1.5 L)で洗浄し、次いで、ジエチルエーテル(1.5 L)で洗浄した。オフ・ホワイトの固形物を、40〜45 mmの減圧下で、55〜60℃の温度で、3〜4時間乾燥した。表題化合物を、自由流動性オフ・ホワイト材料として得た(383.0 g、93 %)。
MFについて:C23H30FN3O8S, MS (ES+) m/z 432(MFについての遊離塩基として得た:C22H26FN3O5); M.P. 278.50 ℃(DSCによる)
【0020】
実施例3
(2'S, 5S)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-L-バリニルオキシ-ピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸のメタンスルホン酸塩の製造:
工程1:(2'S, 5S)-9-フルオロ-6, 7-ジヒドロ-8-{4-[N-t-ブチルオキシカルボニル-L-バリニルオキシ]-ピペリジン-1-イル}-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i, j]キノリジン-2-カルボン酸の製造:
テトラヒドロフラン(50 ml)及びN,N-ジメチルホルムアミド(15 ml)混合物中のN-t-ブチルオキシカルボニル-L-バリン(18 g)及びトリエチルアミン(14 ml)の混合物に対して、2,4,6-トリクロロベンゾイル・クロライド(14.3 ml)を添加した。得られた混合物を、-5〜0℃の温度で5時間攪拌した。反応混合物に対して、4-N,N-ジメチルアミノピリジン(3.4 g)及び(S)-9-フルオロ-6, 7-ジヒドロ-8-{4-ヒドロキシ-ピペリジン-1-イル}-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i, j]キノリジン-2-カルボン酸(10 g)を添加した。反応混合物を、更に7時間、-5〜0℃の温度で攪拌した。サスペンションを室温でろ過し及びろ液を、水の添加後、酢酸エチルで抽出した。減圧下での有機層の蒸発により、粘着性固形物を得、それをジエチルエーテルで摩砕して、12.5 gの白色固形物を得た。
工程2:(2'S, 5S)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-{4-L-バリニルオキシ-ピペリジン-1-イル}-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i, j]キノリジン-2-カルボン酸のメタンスルホン酸塩の製造:
アセトン(150 ml)中のメタンスルホン酸(1.81 ml)及び工程1で得た化合物(12 g)の混合物を、63〜65℃の温度で10時間攪拌した。サスペンションを室温でろ過し及び固形物をアセトンで洗浄して、9.8 gのオフホワイト固形物を得た。
【0021】
実施例4
(2'S,5S)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-{4-(L-アラニニルオキシ)-ピペリジン-1-イル}-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸のトルエンスルホン酸塩の製造:
アセトン(35 ml)中の(2'S, 5S)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-N-t-ブトキシカルボニル-L-アラニニルオキシ-ピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸(3.0 gm; 5.64 mol)の混合物に対して、p-トルエンスルホン酸一水和物(1.61 gm; 8.47 mol)を充填した。反応混合物を一晩還流させた。サスペンションを40〜45℃でろ過し及び得られた固形物をアセトンで洗浄し、次いで、ジエチルエーテルで洗浄した。固形物を、40〜45 mmの減圧下で、55〜60℃の温度で、3〜4時間乾燥して、表題化合物3.0 gm(88.23 %収率)を、オフ・ホワイト色の固形物として得た。MFについて:C29H34FN3O8S, MS (M + H) m/z 432(MFについての遊離塩基として得た: C22H26FN3O5); M.P. 232 ℃
実施例5
(2'S,5S)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-{4-(L-アラニニルオキシ)-ピペリジン-1-イル}-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸のベンゼンスルホン酸塩の製造:
アセトン(35 ml)中の(2'S, 5S)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-N-t-ブトキシカルボニル-L-アラニニルオキシ-ピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸(3.0 gm; 5.64 mol)の混合物に対して、ベンゼンスルホン酸(1.33 gm; 8.41 mol)を充填した。反応混合物を一晩還流させた。サスペンションを40〜45℃でろ過し及び得られた固形物をアセトンで洗浄し、次いで、ジエチルエーテルで洗浄した。固形物を、40〜45 mmの減圧下で、55〜60℃の温度で、3〜4時間乾燥して、表題化合物3.1 gm(90.0 %収率)を、淡黄色の固形物として得た。MFについて:C28H32FN3O8S, MS (M + H) m/z 432 (MFについての遊離塩基として得た: C22H26FN3O5); M.P. 229℃
【0022】
実施例6
(2'S,5S)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-{4-(L-アラニニルオキシ)-ピペリジン-1-イル}-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸のニトロベンゼンスルホン酸塩の製造:
アセトン(35 ml)中の(2'S, 5S)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-N-t-ブトキシカルボニル-L-アラニニルオキシ-ピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸(3.0 gm; 5.64 mol)の混合物に対して、p-ニトロベンゼンスルホン酸(1.73 gm; 8.47 mol)を充填した。反応混合物を一晩還流させた。サスペンションを40〜45℃でろ過し及び得られた固形物をアセトンで洗浄し、次いで、ジエチルエーテルで洗浄した。固形物を、40〜45 mmの減圧下で、55〜60℃の温度で、3〜4時間乾燥して、表題化合物3.3 gm(92.43 %収率)を、淡黄色の固形物として得た。MFについて:C28H31FN4O10S, MS (M + H) m/z 432 (MFについての遊離塩基として得た: C22H26FN3O5); M.P. 240 ℃
テスト例1
溶解度分析:25〜30℃の温度での、異なる生理学的pHでの水溶解度の測定方法:正確に秤量した試験物質に対して、特定の緩衝溶液の添加を、一部(約50マイクロリットル部)、25〜30℃の温度で、固形物が完全に溶解し及び透明溶液が得られるまで行った。
【0023】
表1:pH7での溶解度

【0024】
生物学的例
SDラットにおける薬物動態学的(PK)研究法:薬物動態学的研究を、一晩絶食させた、体重が200〜220 gの雄性SDラットにおいて行った。(2'S,5S)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-L-アラニニルオキシ-ピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]-キノリジン-2-カルボン酸のメタンスルホン酸塩(A)、(2'S,5S)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-L-アラニニルオキシ-ピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸の塩酸塩(B)及び(2'S,5S)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-L-バリニルオキシ-ピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸のメタンスルホン酸塩(C)をミリQ水に溶解した。化合物A、B及びCを、活性成分をベースとして計算した、50 mg/kgの投与量で経口投与した。(5S)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-ヒドロキシ-ピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H, 5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸のL-アルギニン塩(D)を使用前に1%トゥイーン(Tween)中に溶解した。化合物A及びDを、活性成分をベースとして計算した、200 mg/kgの投与量で経口投与した。投与量体積(dose volume)は、0.5 ml/200 gとした。血液サンプルを、所定時間間隔で、即ち、0、0.5、1、2、4、6及び8時間で、フッ化ナトリウムの10μl飽和溶液を含むエッペンドルフ型バイアル中に収集した。血漿を、10000 rpmで10分間の血液サンプルの遠心分離後に収集した。血漿サンプルを、薬物濃度を測定するためにHPLCにおいて分析した。PKパラメーター、AUC、Cmaxを、ウィンノリン(Winnonlin)ソフトウェアを用いることにより非コンパートメント解析により計算した。
【0025】
表2
経口量(oral dose)によるラットでの研究におけるCmax及びAUCの改良%


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式Iの構造を有する化合物及びそれらの医薬的に許容される溶媒和物、多形体又は水和物:
【化1】

(式中、Rは、CH3又はCH(CH3)2であり;及び
R1は、C1-6アルキル、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ若しくはC1-6アルコキシより選ばれる1以上の置換基を有していてもよい、C1-6アルキル又はフェニルである。)。
【請求項2】
R1が、C1-6アルキルである請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R1が、C1-6アルキル、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシル又はC1-6アルコキシより選ばれる1以上の置換基を有していてもよいフェニル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Rが、CH3又はCH(CH3)2であり及びR1が、メチル、エチル、フェニル、p-ニトロフェニル又はトリルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
式Iの化合物及びその医薬的に許容される溶媒和物、多形体又は水和物の製造方法であって、以下の工程a)〜c)を含む方法:
a)S-(-)-9-フルオロ-6,7-ジヒドロ-8-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-5-メチル-1-オキソ-1H,5H-ベンゾ[i,j]キノリジン-2-カルボン酸を、アミン保護されたL-アラニン又はL-バリンと、1以上の溶媒中においてカップリングさせて、式II:
【化2】

の保護された化合物を得る工程:
b)式IIの化合物を、一般式R1-SO3H(式中、R1は、請求項1において定義したものである)のスルホン酸で脱保護する工程;及び
c)式Iの化合物を単離する工程。
【請求項6】
カップリング反応をカップリング剤の存在下において行う、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
カップリング剤が、ジシクロカルボジイミド、2,4,6-トリクロロベンゾイルクロライド及び塩化メタンスルホニルの1以上を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
塩基の存在下においてカップリング反応を行うことをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
塩基が、トリエチルアミン、N,N-ジメチルアミノピリジン及びジイソプロピルエチルアミンの1以上を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
溶媒が、ジクロロメタン、クロロホルム、二塩化エチレン、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド及びそれらの混合物の1以上を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
カップリング反応を、約-10〜約0℃の温度で行う、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
使用されるスルホン酸が、アルキルスルホン酸である、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
スルホン酸が、メタンスルホン酸である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
治療的有効量の、1以上の、請求項1に記載の化合物を、医薬的に許容されるキャリヤー、賦形剤又は希釈剤と一緒に含む医薬組成物。
【請求項15】
細菌感染により生じる又は細菌感染が一因である状態の治療又は予防用薬剤を製造するための、請求項1に記載の化合物の使用であって、哺乳類に対して、治療的有効量の、1以上の、請求項1に記載の化合物を投与することを含む使用。
【請求項16】
状態が、膿痂疹、肺炎、気管支炎、咽頭炎、心内膜炎、尿路感染症、糖尿病による足部潰瘍、胃腸感染症又は菌血症より選ばれる、請求項15に記載の化合物の使用。
【請求項17】
細菌感染が、グラム陽性菌、グラム陰性菌又は嫌気性細菌により生じたものである、請求項15に記載の化合物の使用。
【請求項18】
グラム陽性菌、グラム陰性菌又は嫌気性細菌が、黄色ブドウ球菌、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、腸球菌、β型溶血連鎖球菌、ビリダンスレンサ球菌群、多剤耐性結核菌及び他の非定型抗酸菌、例えば、マイコバクテリウム・イントラセルラレ及びマイコバクテリウム・アビウムによるマイコバクテリア感染、並びに新生グラム陰性原因菌、例えば、クリセオバクテリウム・メニンゴセプチクム、クリセオバクテリウム・インドロゲネス及び他のグラム陰性原因菌、例えば、大腸菌、クレブシエラ菌、プロテウス、セラチア、シトロバクター及びシュードモナス菌より選ばれる、請求項17に記載の方法。

【公表番号】特表2009−529029(P2009−529029A)
【公表日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557843(P2008−557843)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際出願番号】PCT/IB2007/000484
【国際公開番号】WO2007/102061
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(506224012)ウォックハート リミテッド (3)
【Fターム(参考)】