ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物、発光素子用材料、発光素子、発光装置、電子機器及び照明装置
【課題】青色として優れた色純度を与える広いバンドギャップを有したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物の提供。更にベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を用いた信頼性の高い発光素子、発光装置及び電子機器の提供。
【解決手段】(G1)で表されるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物。但し、式中、Anは、下記一般式(An−1)又は(An−2)で表されるアントリル基を表し、α1及びα2は、下記一般式(α−1)〜(α−3)で表される、置換又は無置換のフェニレン基のいずれか一を表し、R1〜R9は、水素、又は炭素数1〜4のアルキル基のいずれか一を表す。また、一般式(G1)中、n及びmは0又は1である。
【解決手段】(G1)で表されるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物。但し、式中、Anは、下記一般式(An−1)又は(An−2)で表されるアントリル基を表し、α1及びα2は、下記一般式(α−1)〜(α−3)で表される、置換又は無置換のフェニレン基のいずれか一を表し、R1〜R9は、水素、又は炭素数1〜4のアルキル基のいずれか一を表す。また、一般式(G1)中、n及びmは0又は1である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物及びそれを含む発光素子用材料、及び発光素子に関する。また、当該発光素子を有する発光装置、電子機器及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロルミネッセンス(EL;Electroluminescence)を利用した発光素子の研究開発が盛んに行われている。これら発光素子の基本的な構成は、一対の電極間に発光性の物質を含む層を挟んだものである。この素子に電圧を印加することにより、発光性の物質からの発光を得ることができる。
【0003】
このような発光素子は自発光型であるため、液晶ディスプレイに比べ画素の視認性が高く、バックライトが不要である等の利点があり、フラットパネルディスプレイ素子として好適であると考えられている。また、このような発光素子は、薄型軽量に作製できることも大きな利点である。さらに非常に応答速度が速いことも特徴の一つである。
【0004】
そして、これらの発光素子は膜状に形成することが可能であるため、面状の発光を容易に得ることができる。よって、面状の発光を利用した大面積の素子を形成することができる。このことは、白熱電球やLEDに代表される点光源、あるいは蛍光灯に代表される線光源では得難い特色であるため、照明等に応用できる面光源としての利用価値も高い。
【0005】
エレクトロルミネッセンスを利用した発光素子は、発光性の物質が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって大別できるが、発光性の物質に有機化合物を用いる場合、発光素子に電圧を印加することにより、一対の電極から電子およびホール(正孔)がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、それらキャリア(電子およびホール(正孔))が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。なお、有機化合物が形成する励起状態の種類としては、一重項励起状態と三重項励起状態が可能であり、一重項励起状態からの発光が蛍光、三重項励起状態からの発光が燐光と呼ばれている。
【0006】
このような発光素子に関しては、その素子特性を向上させる上で、物質に依存した問題が多く、これらを克服するために素子構造の改良や物質開発等が行われている(例えば特許文献1参照。)。
【0007】
発光素子の発光波長は、発光素子中に含まれる発光分子の励起状態から基底状態のエネルギー差、すなわちバンドギャップによって決定される。従って、発光分子の構造を工夫することで、種々の発光色を得ることが可能である。そして光の三原色である赤、青、緑の発光が可能な発光素子を用いて発光装置とすることで、フルカラーの発光装置を作製することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開2010−036027号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、フルカラーの発光装置が抱える問題点は、色純度に優れた発光素子を作製することが、必ずしも容易でないことである。これは、優れた色再現性を有する発光装置を作製する為には、色純度に優れた赤、青、緑の発光素子が必要であるものの、信頼性が高く、かつ色純度に優れた発光素子の実現が困難である為である。この課題は、特に青色の発光素子に関して未だ達成度が低い。
【0010】
上記問題を鑑みて、青色として優れた色純度を与える広いバンドギャップを有したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を提供することを課題の一とする。また該ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を用いた信頼性の高い発光素子、発光装置及び電子機器を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は、5位に炭素数1乃至4のアルキル基以外の置換基を有さず、6位にキャリア輸送性のアントリル基を有する。
【0012】
本発明の一態様は、一般式(G1)で表されるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物である。
【0013】
【化1】
【0014】
但し、一般式(G1)中、Anは、下記一般式(An−1)又は(An−2)で表されるアントリル基を表し、α1及びα2は、下記一般式(α−1)〜(α−3)で表される、置換又は無置換のフェニレン基のいずれか一を表し、R1〜R9は、水素、又は炭素数1〜4のアルキル基のいずれか一を表す。また、一般式(G1)中、n及びmは0又は1である。
【0015】
【化2】
【0016】
但し、一般式(G1)において、一般式(An−1)及び(An−2)中、R10〜R27は、水素、又は炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜13の置換もしくは無置換のアリール基を表す。また、R10〜R27は、2つ以上の置換基を有する場合、置換基同士が互いに結合して環を形成していても良い。また、R10〜R27が2つ以上の置換基を有する場合、1つの炭素が2つの置換基を有していてもよく、この場合置換基同士が互いに結合して、スピロ環を形成していても良い。
【化3】
【0017】
但し、一般式(G1)において、一般式(α−1)〜(α−3)中、R28〜R39は、水素、又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
【0018】
本発明の一態様は、一般式(G2)で表されるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物である。
【0019】
【化4】
【0020】
但し、一般式(G2)中、Anは、下記一般式(An−1)又は(An−2)で表されるアントリル基を表し、α1及びα2は、下記構造式(α−4)〜(α−6)で表される、フェニレン基のいずれか一を表す。また、一般式(G2)中、n及びmは0又は1である。
【0021】
【化5】
【0022】
但し、一般式(G2)において、一般式(An−1)及び(An−2)中、R10〜R27は、水素、又は炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜13の置換もしくは無置換のアリール基を表す。また、R10〜R27は、2つ以上の置換基を有する場合、置換基同士が互いに結合して環を形成していても良い。また、R10〜R27が2つ以上の置換基を有する場合、1つの炭素が2つの置換基を有していてもよく、この場合置換基同士が互いに結合して、スピロ環を形成していても良い。
【0023】
【化6】
【0024】
本発明の一態様は、一般式(G3)で表されるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物である。
【0025】
【化7】
【0026】
但し、一般式(G3)中、Anは、下記一般式(An−1)又は(An−2)で表されるアントリル基を表し、α1は、下記構造式(α−4)又は(α−5)で表される、フェニレン基を表す。また、一般式(G3)中、nは0又は1である。
【0027】
【化8】
【0028】
但し、一般式(G3)において、一般式(An−1)及び(An−2)中、R10〜R27は、水素、又は炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜13の置換もしくは無置換のアリール基を表す。また、R10〜R27は、2つ以上の置換基を有する場合、置換基同士が互いに結合して環を形成していても良い。また、R10〜R27が2つ以上の置換基を有する場合、1つの炭素が2つの置換基を有していてもよく、この場合置換基同士が互いに結合して、スピロ環を形成していても良い。
【0029】
【化9】
【0030】
本発明の一態様は、一般式(G4)で表されるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物である。
【0031】
【化10】
【0032】
但し、一般式(G4)中、Anは、下記一般式(An−3)又は(An−4)で表されるアントリル基を表し、α1は、下記構造式(α−4)又は(α−5)で表される、フェニレン基を表す。また、一般式(G4)中、nは0又は1である。
【0033】
【化11】
【0034】
但し、一般式(G4)において、一般式(An−3)及び(An−4)中、R13、R18、R27は、水素、又は炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜13の置換もしくは無置換のアリール基を表す。また、R13、R18、R27は、2つ以上の置換基を有する場合、置換基同士が互いに結合して環を形成していても良い。また、R13、R18、R27が2つ以上の置換基を有する場合、1つの炭素が2つの置換基を有していてもよく、この場合置換基同士が互いに結合して、スピロ環を形成していても良い。
【0035】
【化12】
【0036】
また、本発明の別の一態様は、上記のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を含む発光素子用材料である。
【0037】
また、本発明の別の一態様は、上記のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を含む発光素子である。該発光素子において、上記のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を発光層に含むことができる。発光層において、上記のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は、ホスト材料として含まれる構成でもよいし、発光中心材料として含まれる構成でもよい。
【0038】
また、本発明の別の一態様は、上記の発光素子を有する発光装置である。
【0039】
また、本発明の別の一態様は、上記の発光装置を搭載した電子機器又は照明装置である。
【0040】
なお、本明細書中における発光装置とは、画像表示デバイス、発光デバイス、光源を含む。また、パネルにコネクター、例えばFPC(Flexible Printed Circuit)もしくはTAB(Tape Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、又は発光素子にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。
【発明の効果】
【0041】
本発明の一態様である、5位に炭素数1乃至4のアルキル基以外の置換基を有さず、6位にキャリア輸送性のアントリル基を有するベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は、バンドギャップが大きいため、比較的短波長の発光を得ることが可能であり、色純度の良い青色発光を高効率で得ることができるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物である。また、本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は電気化学的安定性が高い。
【0042】
本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は5位に炭素数1乃至4のアルキル基以外の置換基を有さず、6位にキャリア輸送性のアントリル基を有する構造である。5位にアリール基やヘテロアリール基等のπ電子を有する大きな置換基を有さないため、6位にアントリル基のようなフェニル基より大きなアリール基を導入しても、合成方法が煩雑化することなく、様々な構造の多様化に容易に対応することができる。よって、高い生産性及び低コストで作製することができるため、高純度化が可能となり高品質なベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を安価で提供することが可能となる。
【0043】
また、本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物で構成される層中に、そのベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物よりも小さなバンドギャップを有する発光材料(以下、ドーパントと記す)を添加し、ドーパントからの発光を得ることができる。本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は、450nm〜700nmあたりに発光極大を有するドーパントから効率よく発光を得ることができる。本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物はバンドギャップが大きいため、比較的短波長な発光を有するドーパントを用いても、ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物からの発光ではなく、ドーパントからの発光を効率よく得ることができる。具体的には、450〜470nmあたりに発光極大を有する発光材料が優れた青色の色純度を示すが、このような材料をドーパントとして用いても、色純度の良い青色の発光を得ることが可能な発光素子を得ることが可能である。
【0044】
また、本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を、そのベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物よりも大きなバンドギャップを有する材料(以下、ホストと記す)よりなる層中に添加した発光素子を作製することで、本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物からの発光を得ることができる。すなわち、本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物はドーパントとしても機能する。このとき、本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は大きなバンドギャップを有し、比較的短波長な発光を示すため、色純度の良い青色の発光を高効率で得ることができる発光素子を作製することが可能である。
【0045】
本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は、バンドギャップが広く、電子及び正孔の注入輸送性の高いバイポーラ材料である。よって、本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物はキャリア輸送層としても用いることができ、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、又は電子注入層として機能する。したがって、本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を、発光素子に用いることにより、キャリアバランスのよい低電圧駆動が可能な発光素子を得ることができる。
【0046】
また、上記ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を含む本発明の一態様である発光素子は、青色として優れた色純度を与えることができる発光素子である。また、上記ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を含む本発明の一態様である発光素子は、劣化しにくく長寿命な発光素子であり、信頼性が高い。
【0047】
また、上記発光素子を含む本発明の一態様としての発光装置は、色再現性の高い発光装置であり、また、表示品質の高い発光装置である。また、上記発光素子を含む本発明の一態様である発光装置は、信頼性の高い発光装置である。また、上記発光素子を含む本発明の一態様である発光装置は、低消費電力な発光装置である。
【0048】
また、上記発光素子を含む本発明の一態様である電子機器は、色再現性の高い電子機器である、また、表示品質の高い電子機器である。また、上記発光素子を含む本発明の一態様である電子機器は、信頼性の高い電子機器である。また、上記発光素子を含む本発明の一態様である電子機器は、低消費電力な電子機器である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一態様の発光素子を説明する図。
【図2】本発明の一態様の発光素子を説明する図。
【図3】本発明の一態様の発光装置を説明する図。
【図4】本発明の一態様の発光装置を説明する図。
【図5】本発明の一態様の電子機器及び照明装置を説明する図。
【図6】本発明の一態様の電子機器を説明する図。
【図7】本発明の一態様の電子機器及び照明装置を説明する図。
【図8】実施例の発光素子を説明する図。
【図9】2mBnfPPAのNMRチャート図。
【図10】2mBnfPPAのトルエン溶液の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図。
【図11】2mBnfPPAの薄膜の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図。
【図12】mBnfPAのNMRチャート図。
【図13】mBnfPAのトルエン溶液の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図。
【図14】mBnfPAの薄膜の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図。
【図15】2BnfPPAのNMRチャート図。
【図16】2BnfPPAのトルエン溶液の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図。
【図17】2BnfPPAの薄膜の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図。
【図18】BnfPAのNMRチャート図。
【図19】BnfPAのトルエン溶液の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図。
【図20】BnfPAの薄膜の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図。
【図21】発光素子1−1(2mBnfPPA)の電流密度−輝度特性を示す図。
【図22】発光素子1−1(2mBnfPPA)の電圧−輝度特性を示す図。
【図23】発光素子1−1(2mBnfPPA)の輝度−電流効率特性を示す図。
【図24】発光素子1−1(2mBnfPPA)の電圧−電流特性を示す図。
【図25】発光素子1−1(2mBnfPPA)の発光スペクトルを示す図。
【図26】発光素子1−1(2mBnfPPA)の信頼性試験の結果を示す図。
【図27】発光素子1−2及び1−3(2mBnfPPA)の電流密度−輝度特性を示す図。
【図28】発光素子1−2及び1−3(2mBnfPPA)の電圧−輝度特性を示す図。
【図29】発光素子1−2及び1−3(2mBnfPPA)の輝度−電流効率特性を示す図。
【図30】発光素子1−2及び1−3(2mBnfPPA)の電圧−電流特性を示す図。
【図31】発光素子1−2及び1−3(2mBnfPPA)の発光スペクトルを示す図。
【図32】発光素子1−2及び1−3(2mBnfPPA)の信頼性試験の結果を示す図。
【図33】発光素子2(mBnfPA)の電流密度−輝度特性を示す図。
【図34】発光素子2(mBnfPA)の電圧−輝度特性を示す図。
【図35】発光素子2(mBnfPA)の輝度−電流効率特性を示す図。
【図36】発光素子2(mBnfPA)の電圧−電流特性を示す図。
【図37】発光素子2(mBnfPA)の発光スペクトルを示す図。
【図38】発光素子2(mBnfPA)の信頼性試験の結果を示す図。
【図39】発光素子3−1(2BnfPPA)の電流密度−輝度特性を示す図。
【図40】発光素子3−1(2BnfPPA)の電圧−輝度特性を示す図。
【図41】発光素子3−1(2BnfPPA)の輝度−電流効率特性を示す図。
【図42】発光素子3−1(2BnfPPA)の電圧−電流特性を示す図。
【図43】発光素子3−1(2BnfPPA)の発光スペクトルを示す図。
【図44】発光素子3−1(2BnfPPA)の信頼性試験の結果を示す図。
【図45】発光素子3−2(2BnfPPA)の電流密度−輝度特性を示す図。
【図46】発光素子3−2(2BnfPPA)の電圧−輝度特性を示す図。
【図47】発光素子3−2(2BnfPPA)の輝度−電流効率特性を示す図。
【図48】発光素子3−2(2BnfPPA)の電圧−電流特性を示す図。
【図49】発光素子3−2(2BnfPPA)の発光スペクトルを示す図。
【図50】発光素子4−1(BnfPA)の電流密度−輝度特性を示す図。
【図51】発光素子4−1(BnfPA)の電圧−輝度特性を示す図。
【図52】発光素子4−1(BnfPA)の輝度−電流効率特性を示す図。
【図53】発光素子4−1(BnfPA)の電圧−電流特性を示す図。
【図54】発光素子4−1(BnfPA)の発光スペクトルを示す図。
【図55】発光素子4−1(BnfPA)の信頼性試験の結果を示す図。
【図56】発光素子4−2(BnfPA)の電流密度−輝度特性を示す図。
【図57】発光素子4−2(BnfPA)の電圧−輝度特性を示す図。
【図58】発光素子4−2(BnfPA)の輝度−電流効率特性を示す図。
【図59】発光素子4−2(BnfPA)の電圧−電流特性を示す図。
【図60】発光素子4−2(BnfPA)の発光スペクトルを示す図。
【図61】X線結晶構造解析による分子投影図。
【図62】2BnfPAのNMRチャート図。
【図63】2BnfPAのトルエン溶液の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図。
【図64】2BnfPAの薄膜の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図。
【図65】発光素子5(2BnfPA)の電流密度−輝度特性を示す図。
【図66】発光素子5(2BnfPA)の電圧−輝度特性を示す図。
【図67】発光素子5(2BnfPA)の輝度−電流効率特性を示す図。
【図68】発光素子5(2BnfPA)の電圧−電流特性を示す図。
【図69】発光素子5(2BnfPA)の発光スペクトルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0051】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様に係るベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物について説明する。
【0052】
本発明の一態様に係るベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は、下記一般式(G1)で表されるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物である。
【0053】
【化13】
【0054】
但し、一般式(G1)中、Anは、下記一般式(An−1)又は(An−2)で表されるアントリル基を表し、α1及びα2は、下記一般式(α−1)〜(α−3)で表される、置換又は無置換のフェニレン基のいずれか一を表し、R1〜R9は、水素、又は炭素数1〜4のアルキル基のいずれか一を表す。また、一般式(G1)中、n及びmは0又は1である。
【0055】
【化14】
【0056】
但し、一般式(G1)において、一般式(An−1)及び(An−2)中、R10〜R27は、水素、又は炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜13の置換もしくは無置換のアリール基を表す。また、R10〜R27は、2つ以上の置換基を有する場合、置換基同士が互いに結合して環を形成していても良い。また、R10〜R27が2つ以上の置換基を有する場合、1つの炭素が2つの置換基を有していてもよく、この場合置換基同士が互いに結合して、スピロ環を形成していても良い。
【0057】
【化15】
【0058】
但し、一般式(G1)において一般式(α−1)〜(α−3)中、R28〜R39は、水素、又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
【0059】
本発明の一態様は、一般式(G2)で表されるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物である。
【0060】
【化16】
【0061】
但し、一般式(G2)中、Anは、下記一般式(An−1)又は(An−2)で表されるアントリル基を表し、α1及びα2は、下記構造式(α−4)〜(α−6)で表される、フェニレン基のいずれか一を表す。また、一般式(G2)中、n及びmは0又は1である。
【0062】
【化17】
【0063】
但し、一般式(G2)において、一般式(An−1)及び(An−2)中、R10〜R27は、水素、又は炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜13の置換もしくは無置換のアリール基を表す。また、R10〜R27は、2つ以上の置換基を有する場合、置換基同士が互いに結合して環を形成していても良い。また、R10〜R27が2つ以上の置換基を有する場合、1つの炭素が2つの置換基を有していてもよく、この場合置換基同士が互いに結合して、スピロ環を形成していても良い。
【0064】
【化18】
【0065】
本発明の一態様は、一般式(G3)で表されるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物である。
【0066】
【化19】
【0067】
但し、一般式(G3)中、Anは、下記一般式(An−1)又は(An−2)で表されるアントリル基を表し、α1は、下記構造式(α−4)又は(α−5)で表される、フェニレン基を表す。また、一般式(G3)中、nは0又は1である。
【0068】
【化20】
【0069】
但し、一般式(G3)において、一般式(An−1)及び(An−2)中、R10〜R27は、水素、又は炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜13の置換もしくは無置換のアリール基を表す。また、R10〜R27は、2つ以上の置換基を有する場合、置換基同士が互いに結合して環を形成していても良い。また、R10〜R27が2つ以上の置換基を有する場合、1つの炭素が2つの置換基を有していてもよく、この場合置換基同士が互いに結合して、スピロ環を形成していても良い。
【0070】
【化21】
【0071】
本発明の一態様は、一般式(G4)で表されるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物である。
【0072】
【化22】
【0073】
但し、一般式(G4)中、Anは、下記一般式(An−3)又は(An−4)で表されるアントリル基を表し、α1は、下記構造式(α−4)又は(α−5)で表される、フェニレン基を表す。また、一般式(G4)中、nは0又は1である。
【0074】
【化23】
【0075】
但し、一般式(An−3)及び(An−4)中、R13、R18、R27は、水素、又は炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜13の置換もしくは無置換のアリール基を表す。また、R13、R18、R27は、2つ以上の置換基を有する場合、置換基同士が互いに結合して環を形成していても良い。また、R13、R18、R27が2つ以上の置換基を有する場合、1つの炭素が2つの置換基を有していてもよく、この場合置換基同士が互いに結合して、スピロ環を形成していても良い。
【0076】
【化24】
【0077】
R1〜R9及びR28〜R39の具体的構造としては、下記構造式(R−1)乃至(R−9)等が例示できる。
【0078】
【化25】
【0079】
R10〜R27が炭素数6〜13のアリール基の場合、さらに置換基を有していてもよい。なお、本明細書中で示すアリール基の炭素数は、環を形成する炭素数を示しており、それに結合する置換基の炭素数を含むものではない。R10〜R27が置換基を有する炭素数6〜13のアリール基の場合の置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基等が例示できる。なお、R10〜R27が炭素数6〜13のアリール基であって、さらに置換基を有する場合には、置換基同士が互いに結合して環を形成してもよく、環構造としては、スピロ環でもよい。
【0080】
R10〜R27の具体的構造としては、下記構造式(R−1)乃至(R−24)等が例示できる。なお、R10〜R27が炭素数6〜13のアリール基であって、さらに置換基を有する場合の具体例が構造式(R−14)乃至(R−24)である。また、置換基同士が互いに結合してスピロ環構造を形成する場合の具体例が構造式(R−21)である。
【0081】
【化26】
【0082】
本発明の一態様である、5位に炭素数1乃至4のアルキル基以外の置換基を有さず、6位にキャリア輸送性のアントリル基を有するベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は、バンドギャップが大きいため、比較的短波長の発光を得ることが可能であり、色純度の良い青色発光を高効率で得ることができるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物である。また、本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は電気化学的安定性が高い。
【0083】
本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は5位に炭素数1乃至4のアルキル基以外の置換基を有さず、6位にキャリア輸送性のアントリル基を有する構造である。5位にアリール基やヘテロアリール基等のπ電子を有する大きな置換基を有さないため、6位にアントリル基のようなフェニル基より大きなアリール基を導入しても、合成方法が煩雑化することなく、様々な構造の多様化に容易に対応することができる。よって、高い生産性及び低コストで作製することができるため、高純度化が可能となり高品質なベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を安価で提供することが可能となる。
【0084】
一般式(G1)乃至(G4)で表されるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物の具体例としては、構造式(100)〜構造式(156)で表されるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を挙げることができる。但し、本発明はこれらに限定されない。
【0085】
【化27】
【0086】
【化28】
【0087】
【化29】
【0088】
【化30】
【0089】
【化31】
【0090】
【化32】
【0091】
【化33】
【0092】
【化34】
【0093】
【化35】
【0094】
【化36】
【0095】
なお、特に本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物において、アントリル基が2位で置換した構造であると、該材料を用いた発光素子を長寿命化できるために好ましい。
【0096】
本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物の合成方法としては種々の反応を適用することができる。例えば、下記の合成スキーム(A−1)〜(A−5)に示す合成反応を行うことによって、一般式(G1)および(G2)で表される本発明の一態様のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を合成することができる。なお、本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物の合成方法は、以下の合成方法に限定されない。
【0097】
<一般式(G1)で表されるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物の合成方法1>
【0098】
【化37】
【0099】
まず、ハロゲン基を有するβ−ナフトール誘導体(a3)は合成スキーム(A−1)のようにして合成することができる。すなわち、β−ナフトール誘導体のハロゲン化合物もしくはトリフラート基を持つ化合物(a1)と、ハロゲン基を有するアリール誘導体の有機ホウ素化合物又はボロン酸(a2)とを、パラジウム触媒を用いた鈴木・宮浦反応によりカップリングすることで、ハロゲン基を有するβ−ナフトール誘導体(a3)を得ることができる。
【0100】
合成スキーム(A−1)において、R1乃至R9はそれぞれ独立に水素、又は炭素数1から4のアルキル基のいずれかを表す。R10乃至R11は水素、又は炭素数1から6のアルキル基のいずれかを表し、R10乃至R11は同じであっても異なっていても良く、互いに結合して環を形成していても良い。また、X1はハロゲン、又は、トリフラート基を表し、X1がハロゲンの場合は特に臭素、ヨウ素が好ましい。また、X2はハロゲンを表し、フッ素、塩素、ヨウ素、臭素が好ましく、より好ましくはフッ素である。
【0101】
合成スキーム(A−1)において、用いることができるパラジウム触媒としては、酢酸パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等が挙げられる。また、合成スキーム(A−1)において、用いることができるパラジウム触媒の配位子としては、トリ(オルト−トリル)ホスフィンや、トリフェニルホスフィンや、トリシクロヘキシルホスフィン等が挙げられる。また、用いることができる塩基としては、ナトリウム tert−ブトキシド等の有機塩基や、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基等が挙げられる。また、用いることができる溶媒としては、トルエン、キシレン、エタノール等のアルコール、トルエンとエタノール等のアルコールとの混合溶媒、キシレンとエタノール等のアルコールとの混合溶媒、トルエンと水の混合溶媒、トルエンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、キシレンと水の混合溶媒、キシレンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、ベンゼンと水の混合溶媒、ベンゼンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類と水の混合溶媒などが挙げられる。また、トルエンと水、又はトルエンとエタノールと水の混合溶媒がより好ましい。
【0102】
また、このカップリングにおいてβ−ナフトール誘導体のX1に変えてホウ素が結合した有機ホウ素化合物、又はボロン酸と、アリール誘導体のホウ素が結合している炭素がハロゲン化されたジハロゲン化合物との組み合わせを、鈴木・宮浦反応によりカップリングさせてもよい。また、このカップリングにおいてβ−ナフトール誘導体のX1に変えてホウ素が結合した有機ホウ素化合物、又はボロン酸と、アリール誘導体のホウ素が結合している炭素がトリフラート基を有する化合物との組み合わせを、鈴木・宮浦反応によりカップリングさせてもよい。
【0103】
【化38】
【0104】
次に、ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物(a4)は合成スキーム(A−2)のようにして合成することができる。すなわちβ−ナフトール誘導体(a3)をWilliamsonエーテル合成によりエーテル結合を作ることで分子内環化し、ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン環を形成させ、ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物(a4)を得ることができる。
【0105】
合成スキーム(A−2)において、用いることができる塩基としては、水素化ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基等が挙げられるが、これらに限られるものではない。また、ヨウ化ナトリウム等の塩を加えても良い。また、用いることができる溶媒としては、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−ピロリドン(NMP)などの非プロトン性極性溶媒や、シクロヘキサノンや2−ブタノン、アセトンなどのケトン類を用いることができるが、これらに限られるものでは無い。
【0106】
【化39】
【0107】
次に、ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物のボロン酸、又は有機ホウ素化合物(a5)は合成スキーム(A−3)のようにして合成することができる。すなわち、ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物(a4)をアルキルリチウム試薬とホウ素試薬を用いてボロン酸化、又は、有機ホウ素化することにより、ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物のボロン酸(a5)を得ることが出来、化合物(a5)がボロン酸の場合、R12乃至R13は水素を表す。また、化合物(a5)のボロン酸は、エチレングリコール等により保護されていても良く、この場合、化合物(a5)におけるR12乃至R13は炭素数1から6のアルキル基を表す。また、化合物(a5)が有機ホウ素化合物の場合、R12乃至R13は同じであっても異なっていても良く、互いに結合して環を形成していても良い。
【0108】
合成スキーム(A−3)において、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒を用いることができる。ただし、用いることができる溶媒はこれらに限られるものでは無い。また、アルキルリチウム試薬は、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム等が挙げられるが、これに限られるものではない。また、これらのアルキルリチウム試薬に配位性の添加剤を加えることで、反応性を向上させることができる。用いることができる配位性添加剤としては、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)などが挙げられるが、これに限られるものではない。また、ホウ素試薬としてはホウ酸トリメチルや、ホウ酸トリイソプロピルなどが挙げられるが、用いることができるホウ素試薬はこれに限られるものではない。
【0109】
【化40】
【0110】
次に、本発明の一態様のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物(G1)は、合成スキーム(A−4)のようにして合成することができる。すなわち、アントラセン誘導体のハロゲン化合物もしくはトリフラート基を持つ化合物(a6)と、ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物のボロン酸、又は有機ホウ素化合物(a5)とを、パラジウム触媒を用いた鈴木・宮浦反応によりカップリングすることで、本発明の一態様のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物(G1)を得ることができる。
【0111】
合成スキーム(A−4)において、Anは下記一般式に示した(An−1)および(An−2)で表される、置換もしくは無置換のアントラセニル基のいずれかを示す。また、R14乃至R31はそれぞれ独立に水素又は炭素数1から6のアルキル基、炭素数6から13の置換又は無置換のアリール基のいずれかを表す。
【0112】
【化41】
【0113】
また、X3はハロゲン、又は、トリフラート基を表し、X3がハロゲンの場合は特に塩素、臭素、ヨウ素が好ましい。また、α1及びα2は、それぞれ独立に、下記一般式に示した(α−1)−(α−3)で表される、置換又は無置換のフェニレン基のいずれかを示す。また、R32乃至R43はそれぞれ独立に水素、又は炭素数1から4のアルキル基のいずれかを表す。また、n又はmは、0又は1である。
【0114】
【化42】
【0115】
合成スキーム(A−4)において用いることができるパラジウム触媒としては、酢酸パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等が挙げられる。また、合成スキーム(A−4)において、用いることができるパラジウム触媒の配位子としては、トリ(オルト−トリル)ホスフィンや、トリフェニルホスフィンや、トリシクロヘキシルホスフィン等が挙げられる。また、用いることができる塩基としては、ナトリウム tert−ブトキシド等の有機塩基や、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基等が挙げられる。また、用いることができる溶媒としては、トルエン、キシレン、エタノール等のアルコール、トルエンとエタノール等のアルコールとの混合溶媒、キシレンとエタノール等のアルコールとの混合溶媒、トルエンと水の混合溶媒、トルエンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、キシレンと水の混合溶媒、キシレンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、ベンゼンと水の混合溶媒、ベンゼンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類と水の混合溶媒などが挙げられる。また、トルエンと水、又はトルエンとエタノールと水の混合溶媒がより好ましい。
【0116】
また、このカップリングにおいてアントラセン化合物のX3に変えてホウ素が結合した有機ホウ素化合物、又はボロン酸と、ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物のホウ素が結合している炭素がハロゲン化されたハロゲン化合物との組み合わせを、鈴木・宮浦反応によりカップリングさせてもよい。また、このカップリングにおいてアントラセン化合物のX3に変えてホウ素が結合した有機ホウ素化合物、又はボロン酸と、ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物のホウ素が結合している炭素がトリフラート基を有する化合物との組み合わせを、鈴木・宮浦反応によりカップリングさせてもよい。
【0117】
<一般式(G1)で表されるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物の合成方法2>
【0118】
【化43】
【0119】
本発明の一態様のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物(G1)は、合成スキーム(A−5)のようにしても合成することができる。すなわち、アントラセン誘導体のハロゲン化合物もしくはトリフラート基を持つ化合物(a7)と、ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物のボロン酸、又は有機ホウ素化合物(a8)とを、パラジウム触媒を用いた鈴木・宮浦反応によりカップリングすることでも、本発明の一態様のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物(G1)を得ることができる。
【0120】
合成スキーム(A−5)において、R44乃至R45は水素、又は炭素数1から6のアルキル基のいずれかを表し、R44乃至R45は同じであっても異なっていても良く、互いに結合して環を形成していても良い。また、X4はハロゲン、又は、トリフラート基を表し、X4がハロゲンの場合は特に塩素、臭素、ヨウ素が好ましい。
【0121】
合成スキーム(A−5)において、用いることができるパラジウム触媒としては、酢酸パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等が挙げられる。また、合成スキーム(A−5)において用いることができるパラジウム触媒の配位子としては、トリ(オルト−トリル)ホスフィンや、トリフェニルホスフィンや、トリシクロヘキシルホスフィン等が挙げられる。また、用いることができる塩基としては、ナトリウム tert−ブトキシド等の有機塩基や、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基等が挙げられる。また、用いることができる溶媒としては、トルエン、キシレン、エタノール等のアルコール、トルエンとエタノール等のアルコールとの混合溶媒、キシレンとエタノール等のアルコールとの混合溶媒、トルエンと水の混合溶媒、トルエンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、キシレンと水の混合溶媒、キシレンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、ベンゼンと水の混合溶媒、ベンゼンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類と水の混合溶媒などが挙げられる。また、トルエンと水、又はトルエンとエタノールと水の混合溶媒がより好ましい。
【0122】
また、このカップリングにおいてアントラセン化合物のX4に変えてホウ素が結合した有機ホウ素化合物、又はボロン酸と、ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物のホウ素が結合している炭素がハロゲン化されたハロゲン化合物との組み合わせを、鈴木・宮浦反応によりカップリングさせてもよい。また、このカップリングにおいてアントラセン化合物のX4に変えてホウ素が結合した有機ホウ素化合物、又はボロン酸と、ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物のホウ素が結合している炭素がトリフラート基を有する化合物との組み合わせを、鈴木・宮浦反応によりカップリングさせてもよい。
【0123】
<一般式(a11)で表されるβ−ナフトール化合物の合成方法>
【0124】
【化44】
【0125】
合成スキーム(A−1)における、β−ナフトール誘導体のハロゲン化合物もしくはトリフラート基を持つ化合物(a1)の代わりに、アルコキシド基を持つナフタレン誘導体のハロゲン化合物もしくはトリフラート基を持つ化合物(a9)を用いることで、(a1)におけるヒドロキシル基の保護をすることができ、β−ナフトール誘導体のハロゲン化合物もしくはトリフラート基を持つ化合物(a3)への置換基の導入をより容易にすることが出来る。
【0126】
アルコキシド基を持つナフタレン誘導体のハロゲン化合物もしくはトリフラート基を持つ化合物(a10)は、合成スキーム(A−6)のようにして合成することができる。すなわち、アルコキシド基を持つナフタレン誘導体のハロゲン化合物もしくはトリフラート基を持つ化合物(a9)と、ハロゲン基を有するアリール誘導体の有機ホウ素化合物又はボロン酸(a2)とを、パラジウム触媒を用いた鈴木・宮浦反応によりカップリングすることで、ナフタレン誘導体のアルコキシド化合物(a10)を得ることができる。
【0127】
合成スキーム(A−6)において、R46は炭素数1から6のアルキル基を示す。また、R47乃至R51はそれぞれ独立に水素、又は炭素数1から4のアルキル基のいずれかを表す。また、X5はハロゲン、又は、トリフラート基を表し、X5がハロゲンの場合は特に塩素、臭素、ヨウ素が好ましい。
【0128】
合成スキーム(A−6)において、用いることができるパラジウム触媒としては、酢酸パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等が挙げられる。また、合成スキーム(A−6)において、用いることができるパラジウム触媒の配位子としては、トリ(オルト−トリル)ホスフィンや、トリフェニルホスフィンや、トリシクロヘキシルホスフィン等が挙げられる。また、用いることができる塩基としては、ナトリウム tert−ブトキシド等の有機塩基や、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基等が挙げられる。また、用いることができる溶媒としては、トルエン、キシレン、エタノール等のアルコール、トルエンとエタノール等のアルコールとの混合溶媒、キシレンとエタノール等のアルコールとの混合溶媒、トルエンと水の混合溶媒、トルエンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、キシレンと水の混合溶媒、キシレンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、ベンゼンと水の混合溶媒、ベンゼンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類と水の混合溶媒などが挙げられる。また、トルエンと水、又はトルエンとエタノールと水の混合溶媒がより好ましい。
【0129】
また、このカップリングにおいてナフタレン誘導体のアルコキシド化合物のX5に変えてホウ素が結合した有機ホウ素化合物、又はボロン酸と、アリール誘導体のホウ素が結合している炭素がハロゲン化されたハロゲン化合物との組み合わせを、鈴木・宮浦反応によりカップリングさせてもよい。また、このカップリングにおいてナフタレン誘導体のアルコキシド化合物のX5に変えてホウ素が結合した有機ホウ素化合物、又はボロン酸と、アリール誘導体のホウ素が結合している炭素がトリフラート基を有する化合物との組み合わせを、鈴木・宮浦反応によりカップリングさせてもよい。
【0130】
【化45】
【0131】
次に、アルコキシド基を持つナフタレン化合物(a10)の脱保護の方法を説明する。ハロゲン基を有するβ−ナフトール誘導体(a11)は、合成スキーム(A−7)のようにして合成することができる。すなわち、アルコキシド基を持つナフタレン誘導体のハロゲン化合物もしくはトリフラート基を持つ化合物(a10)を、ルイス酸により脱保護することで、ハロゲン基を有するβ−ナフトール誘導体(a11)を得ることができる。
【0132】
合成スキーム(A−7)において、用いることができるルイス酸としては、R46がメチル基の場合、三臭化ホウ素、トリメチルヨードシラン等が好ましい。またR46がtert−ブチル基の場合、トリフルオロ酢酸、4mol/L塩酸・酢酸エチル溶液等が好ましい。また、用いることができる溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン系溶媒や、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒が挙げられるが、これに限られるものではない。
【0133】
以上によって、本実施の形態のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を合成することができる。
【0134】
本実施の形態におけるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物はバンドギャップが非常に大きいことから青色の発光を色純度良く得ることが可能である。また、本実施の形態におけるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は、ホール輸送性及び電子輸送性を有するバイポーラ材料である。また、本実施の形態におけるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は電気化学的安定性及び熱的安定性の高いベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物である。
【0135】
本実施の形態におけるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は、単独で発光中心材料として発光物質を含む層(発光層)に用いることのできる他、ホスト材料として用いることもでき、本実施の形態におけるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物に発光物質となるドーパント材料を分散させた構成とすることで、発光物質となるドーパント材料からの発光を得ることができる。本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物をホスト材料として用いる場合は、450nm〜700nmあたりに発光極大を有するドーパントから効率よく発光を得ることができる。本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は、短波長の青色の発光も色純度良く得ることが可能となる。
【0136】
また、本実施の形態におけるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物よりも大きなバンドギャップを有する材料(ホスト)に、本実施の形態におけるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を分散させてなる層を発光物質を含む層に用いることができ、本実施の形態におけるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物からの発光を得ることができる。すなわち、本実施の形態におけるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物はドーパント材料としても機能する。このとき、本実施の形態におけるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は非常に大きなバンドギャップを有し、短波長に発光を示すため、色純度の良い青色の発光を得ることができる発光素子を作製することが可能である。
【0137】
本実施の形態におけるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は、キャリア輸送材料として発光素子の機能層に用いることができる。例えば、キャリア輸送層である正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、又は電子注入層として用いることができる。したがって、本実施の形態におけるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を、発光素子に用いることにより、キャリアバランスのよい低電圧駆動が可能な発光素子を得ることができる。
【0138】
また、本実施の形態におけるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を含む発光素子は、劣化しにくく長寿命な発光素子であり、信頼性が高い。
【0139】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
【0140】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様として、実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を用いた発光素子について図1を用いて説明する。
【0141】
本実施の形態の発光素子は、一対の電極間に、少なくとも発光層を有するEL層を挟持して形成される。EL層は、発光層の他に複数の層を有してもよい。当該複数の層は、電極から離れたところに発光領域が形成されるように、つまり電極から離れた部位でキャリアの再結合が行われるように、キャリア注入性の高い物質やキャリア輸送性の高い物質からなる層を組み合わせて積層されたものである。当該複数の層としては、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層など有していても良い。
【0142】
図1(A)に示す本実施の形態の発光素子において、第1の電極101及び第2の電極103の一対の電極間に、EL層102が設けられている。また、EL層102は、正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115を有している。なお、本実施の形態に示す発光素子において、第1の電極101は陽極として機能し、第2の電極103は陰極として機能する。
【0143】
基板100は発光素子の支持体として用いられる。基板100としては、例えばガラス、石英、又はプラスチックなどを用いることができる。また可撓性基板を用いてもよい。可撓性基板とは、曲げることができる(フレキシブル)基板のことであり、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォンからなるプラスチック基板等が挙げられる。また、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、ポリ塩化ビニル等からなるフィルム、又は無機蒸着フィルムなどを用いることもできる。なお、発光素子の作製工程において支持体として機能するものであれば、これら以外のものでもよい。
【0144】
第1の電極101としては、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、導電性化合物、及びこれらの混合物などを用いることが好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム−酸化スズ、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム等が挙げられる。これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタにより成膜されるが、ゾル−ゲル法などを応用して作製しても構わない。例えば、酸化インジウム−酸化亜鉛は、酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウムは、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。この他、金、白金、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、パラジウム、又は金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)、グラフェン等が挙げられる。
【0145】
但し、EL層102のうち、第1の電極101に接して形成される層が、後述する有機化合物と電子受容体(アクセプター)とを混合してなる複合材料を用いて形成される場合には、第1の電極101に用いる物質は、仕事関数の大小に関わらず、様々な金属、合金、導電性化合物、及びこれらの混合物などを用いることができる。例えば、アルミニウム、銀、アルミニウムを含む合金(例えば、Al−Si)等も用いることもできる。
【0146】
第1の電極101上に形成されるEL層102において、少なくとも発光層113は、本発明の一態様のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を含んで形成される。また、本発明の一態様のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は、バイポーラ性を有する材料であるから、EL層102のキャリア輸送層(正孔輸送層、電子輸送層など)の材料として用いることも可能である。また、EL層102の一部には公知の物質を用いることもでき、低分子系化合物及び高分子系化合物のいずれを用いることもできる。なお、EL層102を形成する物質には、有機化合物のみから成るものだけでなく、無機化合物を一部に含む構成も含めるものとする。
【0147】
正孔注入層111は、正孔注入性の高い物質を含む層である。正孔注入性の高い物質としては、例えば、モリブデン酸化物、チタン酸化物、バナジウム酸化物、レニウム酸化物、ルテニウム酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物、銀酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等の金属酸化物を用いることができる。また、フタロシアニン(略称:H2Pc)、銅(II)フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の化合物を用いることができる。
【0148】
また、低分子の有機化合物である4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’−ビス(N−{4−[N’−(3−メチルフェニル)−N’−フェニルアミノ]フェニル}−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等の芳香族アミン化合物等を用いることができる。
【0149】
さらに、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を用いることもできる。例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)などの高分子化合物が挙げられる。また、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリ(スチレンスルホン酸)(PAni/PSS)等の酸を添加した高分子化合物を用いることができる。
【0150】
また、正孔注入層111として、有機化合物と電子受容体(アクセプター)とを混合してなる複合材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子受容体によって有機化合物に正孔が発生するため、正孔注入性及び正孔輸送性に優れている。この場合、有機化合物は、発生した正孔の輸送に優れた材料(正孔輸送性の高い物質)であることが好ましい。
【0151】
複合材料に用いる有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合物を用いることができる。なお、複合材料に用いる有機化合物としては、正孔輸送性の高い有機化合物であることが好ましい。具体的には、10−6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。また、実施の形態1で示したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を用いることもできる。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。以下では、複合材料に用いることのできる有機化合物を具体的に列挙する。
【0152】
本発明の一態様のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は、正孔輸送性の高い有機化合物であるため、複合材料に好適に用いることができる。そのほか、複合材料に用いることのできる有機化合物としては、例えば、TDATA、MTDATA、DPAB、DNTPD、DPA3B、PCzPCA1、PCzPCA2、PCzPCN1、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)等の芳香族アミン化合物や、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)、1,4−ビス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−2,3,5,6−テトラフェニルベンゼン等のカルバゾール誘導体を用いることができる。
【0153】
また、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2−tert−ブチル−9,10−ビス(4−フェニルフェニル)アントラセン(略称:t−BuDBA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuAnth)、9,10−ビス(4−メチル−1−ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]−2−tert−ブチルアントラセン、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン、9,9’−ビアントリル、10,10’−ジフェニル−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス(2−フェニルフェニル)−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス[(2,3,4,5,6−ペンタフェニル)フェニル]−9,9’−ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン、ペンタセン、コロネン、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等の芳香族炭化水素化合物を用いることができる。
【0154】
また、複合材料に用いる電子受容体としては、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F4−TCNQ)、クロラニル等の有機化合物や、遷移金属酸化物を挙げることができる。また、元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0155】
なお、上述したPVK、PVTPA、PTPDMA、Poly−TPD等の高分子化合物と、上述した電子受容体を用いて複合材料を形成し、正孔注入層111に用いてもよい。
【0156】
正孔輸送層112は、正孔輸送性の高い物質を含む層である。正孔輸送性の高い物質としては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)やN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物等を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。また、実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を用いることもできる。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0157】
また、正孔輸送層112として、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)等の高分子化合物を用いることもできる。
【0158】
発光層113は、発光物質を含む層(発光層ともいう)である。本実施の形態では、発光層113は実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を用いて形成する。実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は、青色の発光を示すため、発光物質として発光素子に好適に用いることができる。
【0159】
また、発光層113を、実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物はホストとして用いることもでき、実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物に発光物質となるドーパントを分散させた構成とすることで、発光物質となるドーパントからの発光を得ることができる。実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は、450nm〜700nmあたりに発光極大を有するドーパントから効率よく発光を得ることができる。実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物はバンドギャップが大きいため、比較的短波長な発光を有するドーパントを用いても、ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物からの発光ではなく、ドーパントからの発光が効率よく得ることができる。具体的には、450〜470nmあたりに発光極大を有する発光材料が優れた青色の色純度を示すが、このような材料をドーパントとして用いても、色純度の良い青色の発光を得ることが可能な発光素子を得ることが可能である。
【0160】
実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を他の発光物質を分散させる材料として用いる場合、発光物質に起因した発光色を得ることができる。また、実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物に起因した発光色と、ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物中に分散されている発光物質に起因した発光色との混色の発光色を得ることもできる。
【0161】
また、実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を、実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物よりも大きなバンドギャップを有する材料(ホスト)よりなる層中に添加した発光素子を作製することで、実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物からの発光を得ることができる。すなわち、実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物はドーパントとしても機能する。このとき、実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は非常に大きなバンドギャップを有し、短波長に発光を示すため、色純度の良い青色の発光を得ることができる発光素子を作製することが可能である。
【0162】
ここで、実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物に分散させる発光物質としては、種々の材料を用いることができる。具体的には、蛍光性化合物としては、例えば、青色系の発光材料として、N,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA2S)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)などが挙げられる。また、緑色系の発光材料として、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCABPhA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)]−N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアントラセン−2−アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9−トリフェニルアントラセン−9−アミン(略称:DPhAPhA)などが挙げられる。また、黄色系の発光材料として、ルブレン、5,12−ビス(1,1’−ビフェニル−4−イル)−6,11−ジフェニルテトラセン(略称:BPT)などが挙げられる。また、赤色系の発光材料として、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)テトラセン−5,11−ジアミン(略称:p−mPhTD)、7,14−ジフェニル−N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)アセナフト[1,2−a]フルオランテン−3,10−ジアミン(略称:p−mPhAFD)などが挙げられる。
【0163】
また、実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物に分散させる発光物質において、燐光性化合物としては、例えば、赤色系の発光材料として、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナト−N,C3’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(btp)2(acac))、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)2(acac))、(ジピバロイルメタナト)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)2(dpm))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)等の有機金属錯体が挙げられる。また、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:Tb(acac)3(Phen))、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(DBM)3(Phen))、トリス[1−(2−テノイル)−3,3,3−トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)3(Phen))等の希土類金属錯体は、希土類金属イオンからの発光(異なる多重度間の電子遷移)であるため、燐光性化合物として用いることができる。
【0164】
また、発光物質として高分子化合物を用いることができる。具体的には、青色系の発光材料として、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)(略称:PFO)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(2,5−ジメトキシベンゼン−1,4−ジイル)](略称:PF−DMOP)、ポリ{(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−[N,N’−ジ−(p−ブチルフェニル)−1,4−ジアミノベンゼン]}(略称:TAB−PFH)などが挙げられる。また、緑色系の発光材料として、ポリ(p−フェニレンビニレン)(略称:PPV)、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−alt−co−(ベンゾ[2,1,3]チアジアゾール−4,7−ジイル)](略称:PFBT)、ポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニレン)−alt−co−(2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシロキシ)−1,4−フェニレン)]などが挙げられる。また、橙色〜赤色系の発光材料として、ポリ[2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキソキシ)−1,4−フェニレンビニレン](略称:MEH−PPV)、ポリ(3−ブチルチオフェン−2,5−ジイル)(略称:R4−PAT)、ポリ{[9,9−ジヘキシル−2,7−ビス(1−シアノビニレン)フルオレニレン]−alt−co−[2,5−ビス(N,N’−ジフェニルアミノ)−1,4−フェニレン]}、ポリ{[2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシロキシ)−1,4−ビス(1−シアノビニレンフェニレン)]−alt−co−[2,5−ビス(N,N’−ジフェニルアミノ)−1,4−フェニレン]}(略称:CN−PPV−DPD)などが挙げられる。
【0165】
また、発光層113のホスト材料は複数種用いることができる。例えば、実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物に加えて、結晶化を抑制するためにルブレン等の結晶化を抑制する物質をさらに添加してもよい。また、ゲスト材料へのエネルギー移動をより効率良く行うためにNPB、あるいはAlq等をさらに添加してもよい。
【0166】
ゲスト材料をホスト材料に分散させた構成とすることにより、発光層113の結晶化を抑制することができる。また、ゲスト材料の濃度が高いことによる濃度消光を抑制することができる。
【0167】
なお、発光層113は、2層以上を積層させた構成としてもよい。その場合、少なくとも1層に本発明の一態様のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を含む構成とすればよい。なお、発光層113を2層以上の積層構造とする場合、各層の発光色は同じであってもよいし、異なる発光色を呈する層を積層させてもよい。また、発光物質として蛍光性化合物を含む層と、蛍光物質として燐光性化合物を含む層を積層させることも可能である。
【0168】
電子輸送層114は、電子輸送性の高い物質を含む層である。電子輸送性の高い物質としては、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格又はベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等が挙げられる。また、この他ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX)2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ)2)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)なども用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質である。また、実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を用いることもできる。また、電子輸送層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0169】
電子注入層115は、電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入層115には、リチウム、セシウム、カルシウム、フッ化リチウム、フッ化セシウム、フッ化カルシウム、リチウム酸化物等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、又はそれらの化合物を用いることができる。また、フッ化エルビウムのような希土類金属化合物を用いることができる。また、上述した電子輸送層114を構成する物質を用いることもできる。
【0170】
あるいは、電子注入層115に、有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子供与体によって有機化合物に電子が発生するため、電子注入性及び電子輸送性に優れている。この場合、有機化合物としては、発生した電子の輸送に優れた材料であることが好ましく、具体的には、例えば上述した電子輸送層114を構成する物質(金属錯体や複素芳香族化合物等)を用いることができる。電子供与体としては、有機化合物に対し電子供与性を示す物質であればよい。具体的には、アルカリ金属やアルカリ土類金属や希土類金属が好ましく、リチウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、エルビウム、イッテルビウム等が挙げられる。また、アルカリ金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物が好ましく、リチウム酸化物、カルシウム酸化物、バリウム酸化物等が挙げられる。また、酸化マグネシウムのようなルイス塩基を用いることもできる。また、テトラチアフルバレン(略称:TTF)等の有機化合物を用いることもできる。
【0171】
実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は、バンドギャップが広く、電子及び正孔の注入輸送性の高いバイポーラ材料である。よって、実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物はキャリア輸送層としても用いることができ、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、又は電子注入層として機能する。したがって、実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を用いた本実施の形態における発光素子は、キャリアバランスがよく低電圧駆動が可能である。
【0172】
また、実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を含む本実施の形態における発光素子は、劣化しにくく長寿命な発光素子であり、信頼性が高い。
【0173】
なお、上述した正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115は、それぞれ、蒸着法(真空蒸着法を含む)、インクジェット法、塗布法等の方法で形成することができる。
【0174】
第2の電極103は、第2の電極103が陰極として機能する際は仕事関数の小さい(好ましくは3.8eV以下)金属、合金、導電性化合物、及びこれらの混合物などを用いて形成することが好ましい。具体的には、元素周期表の第1族又は第2族に属する元素、すなわちリチウムやセシウム等のアルカリ金属、及びマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム等のアルカリ土類金属、及びこれらを含む合金(例えば、Mg−Ag、Al−Li)、ユーロピウム、イッテルビウム等の希土類金属及びこれらを含む合金の他、アルミニウムや銀などを用いることができる。
【0175】
但し、EL層102のうち、第2の電極103に接して形成される層が、上述する有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合材料を用いる場合には、仕事関数の大小に関わらず、アルミニウム、銀、酸化インジウム−酸化スズ、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、グラフェン等様々な導電性材料を用いることができる。
【0176】
なお、第2の電極103を形成する場合には、真空蒸着法やスパッタリング法を用いることができる。また、銀ペーストなどを用いる場合には、塗布法やインクジェット法などを用いることができる。
【0177】
上述した発光素子は、第1の電極101と第2の電極103との間に生じた電位差により電流が流れ、EL層102において正孔と電子とが再結合することにより発光する。そして、この発光は、第1の電極101又は第2の電極103のいずれか一方又は両方を通って外部に取り出される。従って、第1の電極101又は第2の電極103のいずれか一方、又は両方が可視光に対する透光性を有する電極となる。
【0178】
なお、第1の電極101と第2の電極103との間に設けられる層の構成は、上記のものに限定されない。発光領域と金属とが近接することによって生じる消光を防ぐように、第1の電極101及び第2の電極103から離れた部位に正孔と電子とが再結合する発光領域を設けた構成であれば上記以外のものでもよい。
【0179】
つまり、層の積層構造については特に限定されず、電子輸送性の高い物質、正孔輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、正孔注入性の高い物質、バイポーラ性の物質(電子及び正孔の輸送性の高い物質)、又は正孔ブロック材料等から成る層を、発光層と自由に組み合わせて構成すればよい。
【0180】
図1(B)に示す発光素子は、基板100上において、第1の電極101及び第2の電極103の一対の電極間に、EL層102が設けられている。EL層102は、正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115を有している。図1(B)における発光素子は、基板100上に、陰極として機能する第2の電極103と、第2の電極103上に順に積層した電子注入層115、電子輸送層114、発光層113、正孔輸送層112、正孔注入層111と、さらにその上に設けられた陽極として機能する第1の電極101から構成されている。
【0181】
以下、具体的な発光素子の形成方法を示す。
【0182】
本実施の形態の発光素子は一対の電極間にEL層が挟持される構造となっている。電極(第1の電極及び第2の電極)、及びEL層は液滴吐出法(インクジェット法)、スピンコート法、印刷法などの湿式法を用いて形成してもよく、真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法などの乾式法を用いて形成してもよい。湿式法を用いれば、大気圧下で形成することができるため、簡易な装置及び工程で形成することができ、工程が簡略化し、生産性が向上するという効果がある。一方乾式法は、材料を溶解させる必要がないために溶液に難溶の材料も用いることができ、材料の選択の幅が広い。
【0183】
発光素子を構成する薄膜のすべての形成を湿式法で行ってもよい。この場合、湿式法で必要な設備のみで発光素子を作製することができる。また、発光層を形成するまでの積層を湿式法で行い、発光層上に積層する機能層や第1の電極などを乾式法により形成してもよい。さらに、発光層を形成する前の第2の電極や機能層を乾式法により形成し、発光層、及び発光層上に積層する機能層や第1の電極を湿式法によって形成してもよい。もちろん、本実施の形態はこれに限定されず、用いる材料や必要とされる膜厚、界面状態によって適宜湿式法と乾式法を選択し、組み合わせて発光素子を作製することができる。
【0184】
以上のように、本発明の一態様のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を用いて発光素子を作製することができる。
【0185】
なお、本実施の形態で示した発光素子を用いて、パッシブマトリクス型の発光装置や、トランジスタによって発光素子の駆動が制御されたアクティブマトリクス型の発光装置を作製することができる。
【0186】
本実施の形態で示した発光素子を含む発光装置は、色再現性の高い発光装置であり、また、表示品質の高い発光装置である。また、本実施の形態で示した発光素子を含む発光装置は、信頼性の高い発光装置である。また、本実施の形態で示した発光素子を含む発光装置は、低消費電力な発光装置である。
【0187】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
【0188】
(実施の形態3)
本実施の形態は複数の発光ユニットを積層した構成の発光素子(以下、積層型素子という)の態様について、図2を参照して説明する。この発光素子は、第1の電極と第2の電極との間に複数の発光ユニットを有する発光素子である。
【0189】
図2(A)において、第1の電極301と第2の電極303との間には、第1の発光ユニット311と第2の発光ユニット312が積層されている。本実施の形態において、第1の電極301は陽極として機能する電極であり、第2の電極303は陰極として機能する電極である。第1の電極301と第2の電極303は実施の形態2と同様なものを適用することができる。また、第1の発光ユニット311と第2の発光ユニット312は同じ構成であっても異なる構成であっても良い。また、第1の発光ユニット311と、第2の発光ユニット312は、その構成として、実施の形態2の発光層113と同様なものを適用しても良いし、いずれかが異なる構成であっても良い。
【0190】
また、第1の発光ユニット311と第2の発光ユニット312の間には、電荷発生層313が設けられている。電荷発生層313は、第1の電極301と第2の電極303に電圧を印加したときに、一方の発光ユニットに電子を注入し、他方の発光ユニットに正孔を注入する機能を有する。本実施の形態の場合には、第1の電極301に第2の電極303よりも電位が高くなるように電圧を印加すると、電荷発生層313から第1の発光ユニット311に電子が注入され、第2の発光ユニット312に正孔が注入される。
【0191】
なお、電荷発生層313は、光の取り出し効率の点から、可視光に対する透光性を有することが好ましい。また、電荷発生層313は、第1の電極301や第2の電極303よりも低い導電率であっても機能する。
【0192】
電荷発生層313は、正孔輸送性の高い有機化合物と電子受容体(アクセプター)とを含む構成であっても、電子輸送性の高い有機化合物と電子供与体(ドナー)とを含む構成であってもよい。また、これらの両方の構成が積層されていても良い。なお、電子受容体や電子供与体は、少なくとも電界のアシストにより電子を授受するものであればよい。
【0193】
正孔輸送性の高い有機化合物に電子受容体が添加された構成とする場合において、正孔輸送性の高い有機化合物としては、本発明の一態様のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を用いることができる。そのほか、例えば、NPBやTPD、TDATA、MTDATA、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物等を用いることができる。
【0194】
また、電子受容体としては、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F4−TCNQ)、クロラニル等を挙げることができる。また、遷移金属酸化物を挙げることができる。また元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため、好ましい。
【0195】
一方、電子輸送性の高い有機化合物に電子供与体が添加された構成とする場合において、電子輸送性の高い有機化合物としては、例えば、Alq、Almq3、BeBq2、BAlqなど、キノリン骨格又はベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等を用いることができる。また、Zn(BOX)2、Zn(BTZ)2などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、PBDやOXD−7、TAZ、BPhen、BCPなども用いることができる。また、本発明の一態様のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を用いてもよい。
【0196】
また、電子供与体としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、又は元素周期表における第13族に属する金属及びその酸化物、炭酸塩などを用いることができる。具体的には、リチウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、イッテルビウム、インジウム、酸化リチウム、炭酸セシウムなどを用いることが好ましい。また、テトラチアナフタセンのような有機化合物を電子供与体として用いてもよい。
【0197】
なお、上述した材料を用いて電荷発生層313を形成することにより、EL層が積層された場合における駆動電圧の上昇を抑制することができる。
【0198】
本実施の形態では、2つの発光ユニットを有する発光素子について説明したが、同様に、図2(B)に示すように、3つ以上の発光ユニットを積層した発光素子も適用することが可能である。本実施の形態に係る発光素子のように、一対の電極間に複数の発光ユニットを電荷発生層で仕切って配置することで、電流密度を低く保ったまま、高輝度で発光する長寿命素子を実現できる。
【0199】
また、それぞれの発光ユニットの発光色を異なるものにすることで、発光素子全体として、所望の色の発光を得ることができる。例えば、2つの発光ユニットを有する発光素子において、第1の発光ユニットの発光色と第2の発光ユニットの発光色を補色の関係になるようにすることで、発光素子全体として白色発光する発光素子を得ることも可能である。なお、補色とは、混合すると無彩色になる色同士の関係をいう。補色の関係としては、青色と黄色、あるいは青緑色と赤色などが挙げられる。また、3つの発光ユニットを有する発光素子の場合、例えば、第1の発光ユニットの発光色が赤色であり、第2の発光ユニットの発光色が緑色であり、第3の発光ユニットの発光色が青色である場合、発光素子全体としては、白色発光を得ることができる。
【0200】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【0201】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光装置について図3を用いて説明する。なお、図3(A)は、発光装置を示す上面図、図3(B)は図3(A)をA−B及びC−Dで切断した断面図である。
【0202】
図3(A)において、点線で示された401は駆動回路部(ソース側駆動回路)、402は画素部、403は駆動回路部(ゲート側駆動回路)である。また、404は封止基板、405はシール材であり、シール材405で囲まれた内側は、空間になっている。
【0203】
なお、引き回し配線408はソース側駆動回路401及びゲート側駆動回路403に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)409からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPC又はPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0204】
次に、断面構造について図3(B)を用いて説明する。素子基板410上には駆動回路部及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース側駆動回路401と、画素部402中の一つの画素が示されている。
【0205】
なお、ソース側駆動回路401はnチャネル型TFT423とpチャネル型TFT424とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路は、TFTで形成される種々のCMOS回路、PMOS回路又はNMOS回路で形成しても良い。また、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバ一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、駆動回路を基板上ではなく外部に形成することもできる。
【0206】
また、画素部402はスイッチング用TFT411と、電流制御用TFT412とそのドレインに電気的に接続された第1の電極413とを含む複数の画素により形成される。なお、第1の電極413の端部を覆って絶縁物414が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂膜を用いることにより形成する。
【0207】
また、被覆性を良好なものとするため、絶縁物414の上端部又は下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物414の材料としてポジ型の感光性アクリルを用いた場合、絶縁物414の上端部のみに曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物414として、光の照射によってエッチャントに不溶解性となるネガ型、或いは光の照射によってエッチャントに溶解性となるポジ型のいずれも使用することができる。
【0208】
第1の電極413上には、EL層416及び第2の電極417がそれぞれ形成されている。第1の電極413、EL層416及び第2の電極417の材料としては、実施の形態2で示した材料をそれぞれ適用することが可能である。なお、EL層416は少なくとも発光層を含み、当該発光層は、実施の形態1で示したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を含む。本実施の形態においては、第1の電極413が陽極として機能し、第2の電極417が陰極として機能する。また、EL層がキャリア輸送層を含む場合、該キャリア輸送層(正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、又は電子注入層)に実施の形態1で示したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を用いることができる。
【0209】
さらにシール材405で封止基板404を素子基板410と貼り合わせることにより、素子基板410、封止基板404、及びシール材405で囲まれた空間407に発光素子418が備えられた構造になっている。なお、空間407には、充填材が充填されており、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材405で充填される場合もある。
【0210】
なお、シール材405にはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板404に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステル又はアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0211】
以上のようにして、本発明の一態様の発光素子を有するアクティブマトリクス型の発光装置を得ることができる。
【0212】
また、本発明の発光素子は、上述したアクティブマトリクス型の発光装置のみならずパッシブマトリクス型の発光装置に用いることもできる。図4に本発明の一態様の発光素子を用いたパッシブマトリクス型の発光装置の斜視図及び断面図を示す。なお、図4(A)は、発光装置を示す斜視図、図4(B)は図4(A)をX−Yで切断した断面図である。
【0213】
図4において、基板501上の第1の電極502と第2の電極503との間にはEL層504が設けられている。第1の電極502の端部は絶縁層505で覆われている。そして、絶縁層505上には隔壁層506が設けられている。隔壁層506の側壁は、基板面に近くなるに伴って、一方の側壁と他方の側壁との間隔が狭くなるような傾斜を有する。つまり、隔壁層506の短辺方向の断面は、台形状であり、底辺(絶縁層505の面方向と同様の方向を向き、絶縁層505と接する辺)の方が上辺(絶縁層505の面方向と同様の方向を向き、絶縁層505と接しない辺)よりも短い。このように、隔壁層506を設けることで、クロストーク等に起因した発光素子の不良を防ぐことができる。
【0214】
以上により、本発明の一態様の発光素子を有するパッシブマトリクス型の発光装置を得ることができる。
【0215】
なお、本実施の形態で示した発光装置(アクティブマトリクス型、パッシブマトリクス型)は、いずれも本発明の一態様の発光素子を用いて形成される。
【0216】
また、本実施の形態で示した発光装置は、色再現性の高い発光装置であり、また、表示品質の高い発光装置である。また、本実施の形態で示した発光装置は、信頼性の高い発光装置である。また、本実施の形態で示した発光装置は、低消費電力な発光装置である。
【0217】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【0218】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明を適用した一態様である発光装置を用いて完成させた様々な電子機器および照明器具の一例について、図5乃至図7を用いて説明する。
【0219】
発光装置を適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等のカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。これらの電子機器および照明器具の具体例を図5に示す。
【0220】
図5(A)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置7100は、筐体7101に表示部7103が組み込まれている。表示部7103により、映像を表示することが可能であり、発光装置を表示部7103に用いることができる。また、ここでは、スタンド7105により筐体7101を支持した構成を示している。
【0221】
テレビジョン装置7100の操作は、筐体7101が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機7110により行うことができる。リモコン操作機7110が備える操作キー7109により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部7103に表示される映像を操作することができる。また、リモコン操作機7110に、当該リモコン操作機7110から出力する情報を表示する表示部7107を設ける構成としてもよい。
【0222】
なお、テレビジョン装置7100は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線又は無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)又は双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0223】
図5(B)はコンピュータであり、本体7201、筐体7202、表示部7203、キーボード7204、外部接続ポート7205、ポインティングデバイス7206等を含む。なお、コンピュータは、発光装置をその表示部7203に用いることにより作製される。
【0224】
図5(C)は携帯型遊技機であり、筐体7301と筐体7302の2つの筐体で構成されており、連結部7303により、開閉可能に連結されている。筐体7301には表示部7304が組み込まれ、筐体7302には表示部7305が組み込まれている。また、図5(C)に示す携帯型遊技機は、その他、スピーカ部7306、記録媒体挿入部7307、LEDランプ7308、入力手段(操作キー7309、接続端子7310、センサ7311(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン7312)等を備えている。もちろん、携帯型遊技機の構成は上述のものに限定されず、少なくとも表示部7304および表示部7305の両方、又は一方に発光装置を用いていればよく、その他付属設備が適宜設けられた構成とすることができる。図5(C)に示す携帯型遊技機は、記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出して表示部に表示する機能や、他の携帯型遊技機と無線通信を行って情報を共有する機能を有する。なお、図5(C)に示す携帯型遊技機が有する機能はこれに限定されず、様々な機能を有することができる。
【0225】
図5(D)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機7400は、筐体7401に組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機7400は、発光装置を表示部7402に用いることにより作製される。
【0226】
図5(D)に示す携帯電話機7400は、表示部7402を指などで触れることで、情報を入力することができる。また、電話を掛ける、或いはメールを作成するなどの操作は、表示部7402を指などで触れることにより行うことができる。
【0227】
表示部7402の画面は主として3つのモードがある。第1は、画像の表示を主とする表示モードであり、第2は、文字等の情報の入力を主とする入力モードである。第3は表示モードと入力モードの2つのモードが混合した表示+入力モードである。
【0228】
例えば、電話を掛ける、或いはメールを作成する場合は、表示部7402を文字の入力を主とする文字入力モードとし、画面に表示させた文字の入力操作を行えばよい。この場合、表示部7402の画面のほとんどにキーボード又は番号ボタンを表示させることが好ましい。
【0229】
また、携帯電話機7400内部に、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサを有する検出装置を設けることで、携帯電話機7400の向き(縦か横か)を判断して、表示部7402の画面表示を自動的に切り替えるようにすることができる。
【0230】
また、画面モードの切り替えは、表示部7402を触れること、又は筐体7401の操作ボタン7403の操作により行われる。また、表示部7402に表示される画像の種類によって切り替えるようにすることもできる。例えば、表示部に表示する画像信号が動画のデータであれば表示モード、テキストデータであれば入力モードに切り替える。
【0231】
また、入力モードにおいて、表示部7402の光センサで検出される信号を検知し、表示部7402のタッチ操作による入力が一定期間ない場合には、画面のモードを入力モードから表示モードに切り替えるように制御してもよい。
【0232】
表示部7402は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部7402に掌や指で触れ、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。また、表示部に近赤外光を発光するバックライト又は近赤外光を発光するセンシング用光源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
【0233】
図5(E)は、照明装置の一例を示している。照明装置7500は、筐体7501に光源として本発明の一態様の発光装置7503a〜7503dが組み込まれている。照明装置7500は、天井や壁等に取り付けることが可能である。
【0234】
また、本発明の一態様の発光装置は、発光素子が薄膜状であるため、曲面を有する基体に貼り付けることで、曲面を有する発光装置とすることができる。また、その発光装置を、曲面を有する筐体に配置することで、曲面を有する電子機器又は照明装置を実現することができる。
【0235】
図6は車両の運転席周辺の内部図である。図6において、ダッシュボードには表示装置600が設置され、フロントガラスには表示装置602が設置された例を示している。図6に示す表示装置600は、曲面を有する筐体に表示部604が組み込まれており、表示部604により、映像を表示することが可能である。表示装置600において、本発明の一態様の発光装置を表示部604に用いることができる。
【0236】
また、図6に示す表示装置602は、曲面を有する筐体に表示部606が組み込まれており、本発明の一態様の発光装置を表示部606に用いることができる。本発明の一態様に係る発光装置は、発光装置に含まれる発光素子の一対の電極及びその支持体に、透光性を有する材料を用いることで、発光装置の上面及び下面の双方から外部に発光を取り出すことができる。従って、この発光装置を表示部606に適用することで、表示部606からフロントガラスを通して外部を視認することができる。同様に、外部からフロントガラスを通して表示部606に表示される画像を視認することもできる。
【0237】
なお、図6に示す表示装置600又は表示装置602を、照明装置として用いることも可能である。
【0238】
図7は、発光装置を、室内の照明装置801として用いた例である。発光装置は大面積化も可能であるため、大面積の照明装置として用いることができる。その他、曲面を有する筐体を用いることで、発光領域が曲面を有する照明装置803とすることもできる。本実施の形態で示す照明装置に含まれる発光素子は薄膜状であり、筐体のデザインの自由度が高い。したがって、様々な意匠を凝らした照明装置とすることができる。
【0239】
また、本発明の一態様を適用した照明装置を用いた部屋に、図5(A)で一例を示したような、テレビジョン装置7100aを設置することも可能である。テレビジョン装置7100aは、通常の2次元表示に加えて3次元表示機能を有していてもよい。図7においては、3次元表示観賞用のメガネ805を用いて3次元表示された画像を鑑賞することができる。
【0240】
以上のようにして、発光装置を適用して電子機器や照明器具を得ることができる。発光装置の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。
【0241】
また、本発明の一態様を適用した電子機器は、色再現性の高い電子機器である、また、表示品質の高い電子機器である。また、本発明の一態様を適用した電子機器は、信頼性の高い電子機器である。また、本発明の一態様を適用した電子機器は、低消費電力な電子機器である。
【0242】
なお、本実施の形態に示す構成は、実施の形態1乃至実施の形態4に示した構成を適宜組み合わせて用いることができる。
【実施例1】
【0243】
本実施例では、実施の形態1において構造式(100)で表される6−[3−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン(略称:2mBnfPPA)を合成する例を示す。
【0244】
[ステップ1]ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン−6−ボロン酸の合成
【0245】
(合成例1)
ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン−6−ボロン酸の合成例1を説明する。
【0246】
[ステップ1−1−1]1−(2−フルオロフェニル)−2−ナフトールの合成
【0247】
1.4g(10mmol)の2−フルオロフェニルボロン酸と、2.2g(10mmol)の1−ブロモ−2−ナフトールと、153mg(0.50mmol)のトリ(オルト−トリル)ホスフィンと、25mLのトルエンと、25mLのエタノールと、5.0mLの2M炭酸カリウム水溶液を200mL三ツ口フラスコへ入れた。この混合物を減圧脱気し、系内を窒素置換した。この混合物を80℃で撹拌し、23mg(0.10mmol)の酢酸パラジウム(II)を加え、約100℃で6.5時間還流した。還流後、この混合物を水で洗浄し、水層を酢酸エチルで抽出した。得られた抽出溶液と有機層を合わせて、飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層を硫酸マグネシウムにより乾燥した。この混合物を自然濾過し、得られた濾液を濃縮したところ、褐色油状物を得た。この油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン)により精製したところ、目的物の褐色油状物を1.6g、収率69%で得た。上述の合成スキームを下記(B−1)に示す。
【0248】
【化46】
【0249】
[ステップ1−1−2]ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フランの合成
【0250】
1Lの三口フラスコに15g(63mmol)の1−(2−フルオロフェニル)−2−ナフトールと、300mLのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)と、18g(130mmol)の炭酸カリウムを入れた。このフラスコを窒素気流下、150℃で6時間攪拌した。攪拌後、この混合物を室温まで放冷し、約500mLの水に加えた。この混合物の水層を酢酸エチルで抽出し、抽出溶液と有機層を合わせて水と飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムにより乾燥し、乾燥後、この混合物を自然濾過した。得られた濾液を濃縮したところ、油状物を得た。得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン)で精製したところ、油状物を得た。得られた油状物を減圧乾燥して、目的物の無色透明油状物を11.8g、収率86%で得た。上述の合成スキームを下記(B−2)に示す。
【0251】
【化47】
【0252】
[ステップ1−1−3]ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン−6−ボロン酸の合成
【0253】
500mL三口フラスコを窒素置換してから、5.8g(50mmol)のテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)と、180mLのテトラヒドロフラン(THF)を加えて、この溶液を−80℃に冷却した。この溶液に50mL(50mmol)のsec−ブチルリチウム(1.0mol/Lシクロヘキサン、n−ヘキサン溶液)を、シリンジにより滴下して加えた。滴下後、この溶液を同温度で30分間攪拌した。攪拌後、この溶液に70mLのTHFに溶解した10g(45mmol)のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フランを滴下ロートにより滴下して加えた。滴下後、この溶液を同温度で2時間攪拌した。攪拌後、この溶液に11mL(100mmol)のホウ酸トリメチルを加え、室温に戻しながら2日間攪拌した。攪拌後、この混合物の水層を酢酸エチルで抽出し、抽出溶液と有機層を合わせて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムにより乾燥し、乾燥後、この混合物を自然濾過した。得られた濾液を濃縮したところ、白色固体を得た。得られた固体にトルエン/ヘキサンを加えて超音波を照射し、固体を吸引濾過により回収した所、目的物の白色粉末を9.2g、収率78%で得た。上述の合成スキームを下記(B−3)に示す。
【0254】
【化48】
【0255】
(合成例2)
ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン−6−ボロン酸の合成例2を説明する。
【0256】
[ステップ1−2−1]1−(2−フルオロフェニル)−2−メトキシナフタレンの合成
【0257】
500mL三口フラスコに8.7g(35mmol)の1−ブロモ−2−メトキシナフタレンと、5.0g(35mmol)の2−フルオロフェニルボロン酸を入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物に、120mLのトルエンと、60mLのエタノールと、40mLの炭酸ナトリウム水溶液(2.0mol/L)を加えた。この混合物を減圧しながら攪拌することで脱気した。この混合物に2.0g(1.7mmol)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を加え、窒素気流下、80℃で8時間攪拌した。得られた混合物の水層をトルエンで抽出し、抽出溶液と有機層を合わせて、飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムにより乾燥し、この混合物を自然濾過した。得られた濾液を濃縮して得た油状物を約30mLのトルエンに溶解し、この溶液をセライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)、アルミナ、フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540−00135)を通して吸引濾過した。得られた濾液を濃縮して得た油状物を減圧乾燥したところ、目的物の淡黄色油状物を5.3g、収率60%で得た。上述の合成スキームを下記(C−1)に示す。
【0258】
【化49】
【0259】
[ステップ1−2−2]1−(2−フルオロフェニル)−2−ナフトールの合成
【0260】
500mL三口フラスコに5.3g(21mmol)の1−(2−フルオロフェニル)−2−メトキシナフタレンと、150mLのジクロロメタンを入れた。この溶液に窒素気流下、0℃で45mL(45mmol)の三臭化ホウ素(1M ジクロロメタン溶液)を、滴下ロートを用いて滴下した。滴下後、同温度で6時間攪拌した。攪拌後、この溶液を室温で2日間攪拌した。攪拌後、この溶液に約100mLの水を入れて1時間攪拌した。攪拌後、約100mLの飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて1時間攪拌した。攪拌後、この混合物の水層をジクロロメタンで抽出し、抽出溶液と有機層を合わせて、水と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムにより乾燥し、乾燥後この混合物を自然濾過した。得られた濾液を濃縮したところ、油状物を得た。得られた油状物を減圧乾燥したところ、目的物の褐色固体を4.8g、収率97%で得た。上述の合成スキームを下記(C−2)に示す。
【0261】
【化50】
【0262】
合成例2のその後のステップは、上述の合成例1のステップ1−1−2、1−1−3と同様に行う。よって、詳細な説明は省略する。
【0263】
ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フランをボロン酸化合物にする反応により得られた化合物を用いて、ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フランがボロン酸化する位置を特定するために、以下の合成スキーム(D−1)により得られた化合物をX線構造解析した。
【0264】
【化51】
【0265】
200mL三口フラスコに0.90g(5.7mmol)のブロモベンゼンと、1.5g(5.7mol)のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン−6−ボロン酸を入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物に20mLのトルエンと、10mLのエタノールと、6.0mLの炭酸ナトリウム水溶液(2.0mol/L)を加えた。この混合物を減圧しながら攪拌することで脱気した。この混合物に0.33g(0.28mmol)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を加え、窒素気流下、80℃で2時間攪拌した。攪拌後、この混合物の水層をトルエンにより抽出し、抽出溶液と有機層を合わせて、飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムにより乾燥し、この混合物を自然濾過した。得られた濾液を濃縮して得た油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:トルエン=19:1)で精製したところ、白色固体を得た。得られた固体をトルエン/ヘキサンで再結晶したところ、目的物の白色針状結晶を0.95g、収率56%で得た。
【0266】
得られた白色針状結晶をX線結晶構造解析した結果を図61に示す。図61は分子投影図(Oak Ridge Thermal Elliposid Plot(ORTEP図))である。図61より、合成スキームB−3によって、ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フランの6位がボロン酸化される事を確認した。
【0267】
[ステップ2]6−[3−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン(略称:2mBnfPPA)の合成
【0268】
50mL三口フラスコに1.1g(2.4mmol)の2−(3−ブロモフェニル)−9,10−ジフェニルアントラセンと、0.63g(2.4mmol)のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン−6−ボロン酸を入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物に10mLのトルエンと、4.0mLのエタノールと、3.0mLの炭酸ナトリウム水溶液(2.0mol/L)を加えた。この混合物を減圧しながら攪拌することで脱気した。この混合物に0.14g(0.12mmol)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を加え、窒素気流下、80℃で3時間攪拌した。攪拌後、この混合物の水層をトルエンにより抽出し、抽出溶液と有機層を合わせて、飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムにより乾燥し、この混合物を自然濾過した。得られた濾液を濃縮して得た油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:トルエン=5:1)で精製したところ、油状物を得た。得られた油状物をトルエン/ヘキサンで再結晶したところ、目的物の淡黄色粉末を1.0g、収率66%で得た。
【0269】
得られた淡黄色粉末状固体1.0gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製条件は、圧力2.2Pa、アルゴンガスを流量5.0mL/minで流しながら、290℃で淡黄色粉末状固体を加熱した。昇華精製後、2mBnfPPAの淡黄色固体を0.91g、回収率91%で得た。上述の合成スキームを下記(E−1)に示す。
【0270】
【化52】
【0271】
核磁気共鳴法(NMR)によって、この化合物が目的物である6−[3−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン(略称:2mBnfPPA)であることを確認した。
【0272】
得られた化合物の1H NMRの測定データを以下に示す。
1H NMR(CDCl3,300MHz):δ=7.33(d,J=3.0Hz,1H),7.35(d,J=3.0Hz,1H),7.49−7.75(m,20H),7.83(d,J=9.3Hz,1H),7.94(d,J=7.5Hz,1H),8.01−8.07(m,3H),8.14(s,1H),8.43−8.47(m,1H),8.66(d,J1=8.4Hz,1H)
【0273】
また、1H NMRチャートを図9(A)、(B)に示す。なお、図9(B)は、図9(A)における7.2ppm〜8.75ppmの範囲を拡大して表したチャートである。
【0274】
また、得られた2mBnfPPAに対して、熱重量測定−示差熱分析(TG−DTA:Thermogravimetry−Differential Thermal Analysis)を行った。示差熱熱重量同時測定装置(セイコー電子株式会社製,TG/DTA 320型)により測定したところ、大気圧下で測定開始時における重量に対し95%の重量になる温度(以下、「5%重量減少温度」と示す。)は429℃であった。この結果から、2mBnfPPAは良好な耐熱性を有する材料であることが分かった。
【0275】
また、2mBnfPPAのトルエン溶液の吸収スペクトルを図10(A)に、発光スペクトルを図10(B)にそれぞれ示す。また、2mBnfPPAの薄膜の吸収スペクトルを図11(A)に、発光スペクトルを図11(B)にそれぞれ示す。吸収スペクトルの測定には紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用いた。溶液は石英セルに入れ、薄膜は石英基板に蒸着してサンプルを作製して測定を行った。吸収スペクトルは、溶液については石英セルにトルエンのみを入れて測定した吸収スペクトルを、薄膜については石英基板の吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを示した。図10(A)及び図11(A)において横軸は波長(nm)、縦軸は吸収強度(任意単位)を表す。また、図10(B)及び図11(B)において横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度(任意単位)を表す。トルエン溶液の場合では285、364、384、及び406nm付近に吸収ピークが見られ、発光波長のピークは423及び446nm(励起波長385nm)であった。また、薄膜の場合では244、263、290、347、366、391、及び413nm付近に吸収ピークが見られ、発光波長のピークは440、及び458nm(励起波長414nm)であった。
【0276】
また、2mBnfPPAの薄膜状態におけるHOMO準位とLUMO準位の測定を行った。HOMO準位の値は、大気中の光電子分光装置(理研計器社製、AC−2)で測定したイオン化ポテンシャルの値を、負の値に換算することにより得た。また、LUMO準位の値は、図11(A)に示した2mBnfPPAの薄膜の吸収スペクトルのデータを用い、直接遷移を仮定したTaucプロットから吸収端を求め、その吸収端を光学的エネルギーギャップとしてHOMO準位の値に加算することにより得た。その結果、2mBnfPPAのHOMO準位は、−5.73eVであり、エネルギーギャップは、2.85eVであり、LUMO準位は、−2.88eVであった。
【実施例2】
【0277】
本実施例では、実施の形態1において構造式(124)で示す、6−[3−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン(略称:mBnfPA)を合成する例を示す。
【0278】
6−[3−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン(mBnfPA)の合成
【0279】
50mL三口フラスコに1.5g(3.8mmol)の9−(3−ブロモフェニル)−10−フェニルアントラセンと、1.0g(3.8mmol)の実施例1のステップ1を用いて合成したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン−6−ボロン酸と、0.29g(0.95mmol)のトリ(オルト−トリル)ホスフィンを入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物に15mLのトルエンと、5.0mLのエタノールと、4.0mLの炭酸カリウム水溶液(2.0mol/L)を加えた。この混合物を減圧しながら攪拌することで脱気した。この混合物に43mg(0.19mmol)の酢酸パラジウム(II)を加え、窒素気流下、80℃で4時間攪拌した。攪拌後、この混合物の水層をトルエンにより抽出し、抽出溶液と有機層を合わせて、飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムにより乾燥し、この混合物を自然濾過した。得られた濾液を濃縮して得た油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:トルエン=5:1)で精製したところ、油状物を得た。得られた油状物をトルエン/ヘキサンで再結晶したところ、目的物の白色粉末を1.4g、収率67%で得た。
【0280】
得られた白色粉末状固体1.1gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製条件は、圧力2.2Pa、アルゴンガスを流量5.0mL/minで流しながら、270℃でmBnfPAを加熱した。昇華精製後、mBnfPAの淡黄色固体を1.0g、回収率90%で得た。上述の合成スキームを下記(F−1)に示す。
【0281】
【化53】
【0282】
核磁気共鳴法(NMR)によって、この化合物が目的物である6−[3−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン(mBnfPA)であることを確認した。
【0283】
得られた化合物の1H NMRの測定データを以下に示す。
1H NMR(CDCl3,300MHz):δ=7.34−7.44(m,4H),7.48−7.63(m,9H),7.69−7.74(m,4H),7.83(t,J=7.5Hz,1H),7.96(dd,J1=1.8Hz,J2=7.8Hz,2H),8.04(d,J=7.8Hz,1H),8.13(s,1H),8.15(t,J=1.5Hz,1H),8.26(d,J=7.8Hz,1H),8.43−8.46(m,1H),8.66(d,J=7.8Hz,1H)
【0284】
また、1H NMRチャートを図12(A)、(B)に示す。なお、図12(B)は、図12(A)における7.2ppm〜8.75ppmの範囲を拡大して表したチャートである。
【0285】
また、得られたmBnfPAに対して、熱重量測定−示差熱分析(TG−DTA:Thermogravimetry−Differential Thermal Analysis)を行った。示差熱熱重量同時測定装置(セイコー電子株式会社製,TG/DTA 320型)により測定したところ、大気圧下で測定開始時における重量に対し95%の重量になる温度(以下、「5%重量減少温度」と示す。)は403℃であった。この結果から、mBnfPAは良好な耐熱性を有する材料であることが分かった。
【0286】
また、mBnfPAのトルエン溶液の吸収スペクトルを図13(A)に、発光スペクトルを図13(B)にそれぞれ示す。また、mBnfPAの薄膜の吸収スペクトルを図14(A)に、発光スペクトルを図14(B)にそれぞれ示す。吸収スペクトルの測定には紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用いた。溶液は石英セルに入れ、薄膜は石英基板に蒸着してサンプルを作製して測定を行った。吸収スペクトルは、溶液については石英セルにトルエンのみを入れて測定した吸収スペクトルを、薄膜については石英基板の吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを示した。図13(A)及び図14(A)において横軸は波長(nm)、縦軸は吸収強度(任意単位)を表す。また、図13(B)及び図14(B)において横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度(任意単位)を表す。トルエン溶液の場合では267、281、324、354、375、及び396nm付近に吸収ピークが見られ、発光波長のピークは411及び434nm(励起波長376nm)であった。また、薄膜の場合では268、328、359、381、及び402nm付近に吸収ピークが見られ、発光波長のピークは430及び442nm(励起波長402nm)であった。
【0287】
また、mBnfPAの薄膜状態におけるHOMO準位とLUMO準位の測定を行った。HOMO準位の値は、大気中の光電子分光装置(理研計器社製、AC−2)で測定したイオン化ポテンシャルの値を、負の値に換算することにより得た。また、LUMO準位の値は、図14(A)に示したmBnfPAの薄膜の吸収スペクトルのデータを用い、直接遷移を仮定したTaucプロットから吸収端を求め、その吸収端を光学的エネルギーギャップとしてHOMO準位の値に加算することにより得た。その結果、mBnfPAのHOMO準位は、−5.79eVであり、エネルギーギャップは、2.96eVであり、LUMO準位は、−2.83eVであった。
【実施例3】
【0288】
本実施例では、実施の形態1において構造式(116)で示す、6−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン(略称:2BnfPPA)を合成する例を示す。
【0289】
6−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン(略称:2BnfPPA)の合成
【0290】
50mL三口フラスコに1.8g(3.8mmol)の2−(4−ブロモフェニル)−9,10−ジフェニルアントラセンと、1.0g(3.8mmol)の実施例1のステップ1を用いて合成したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン−6−ボロン酸を入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物に15mLのトルエンと、5.0mLのエタノールと、4.0mLの炭酸ナトリウム水溶液(2.0mol/L)を加えた。この混合物を減圧しながら攪拌することで脱気した。この混合物に0.22g(0.19mmol)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を加え、窒素気流下、80℃で3時間攪拌したところ、固体が析出した。この混合物を室温まで冷却した後、析出した固体を吸引濾過により回収した。回収した固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:トルエン=5:1)で精製したところ、固体を得た。得られた固体をトルエン/ヘキサンで再結晶したところ、目的物の黄色粉末を1.4g、収率62%で得た。
【0291】
得られた黄色粉末状固体1.0gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製条件は、圧力2.7Pa、アルゴンガスを流量5.0mL/minで流しながら、295℃で2BnfPPAを加熱した。昇華精製後、2BnfPPAの黄色固体を0.85g、回収率85%で得た。上記合成法の反応スキームを下記(G−1)に示す。
【0292】
【化54】
【0293】
核磁気共鳴法(NMR)によって、この化合物が目的物である6−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン(略称:2BnfPPA)であることを確認した。
【0294】
得られた化合物の1H NMRの測定データを以下に示す。
1H NMR(CDCl3,300MHz):δ=7.34(d,J=3.3Hz,1H),7.36(d,J=3.3Hz,1H),7.49−7.85(m,21H),8.03−8.08(m,5H),8.44−8.47(m,1H),8.66(d,J1=7.8Hz,1H)
【0295】
また、1H NMRチャートを図15(A)、(B)に示す。なお、図15(B)は、図15(A)における7.2ppm〜8.75ppmの範囲を拡大して表したチャートである。
【0296】
また、得られた2BnfPPAに対して、熱重量測定−示差熱分析(TG−DTA:Thermogravimetry−Differential Thermal Analysis)を行った。示差熱熱重量同時測定装置(セイコー電子株式会社製,TG/DTA 320型)により測定したところ、大気圧下で測定開始時における重量に対し95%の重量になる温度(以下、「5%重量減少温度」と示す。)は435℃であった。この結果から、2BnfPPAは良好な耐熱性を有する材料であることが分かった。
【0297】
また、2BnfPPAのトルエン溶液の吸収スペクトルを図16(A)に、発光スペクトルを図16(B)にそれぞれ示す。また、2BnfPPAの薄膜の吸収スペクトルを図17(A)に、発光スペクトルを図17(B)にそれぞれ示す。吸収スペクトルの測定には紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用いた。溶液は石英セルに入れ、薄膜は石英基板に蒸着してサンプルを作製して測定を行った。吸収スペクトルは、溶液については石英セルにトルエンのみを入れて測定した吸収スペクトルを、薄膜については石英基板の吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを示した。図16(A)及び図17(A)において横軸は波長(nm)、縦軸は吸収強度(任意単位)を表す。また、図16(B)及び図17(B)において横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度(任意単位)を表す。トルエン溶液の場合では281、311、387、及び409nm付近に吸収ピークが見られ、発光波長のピークは427及び452nm(励起波長388nm)であった。また、薄膜の場合では245、280、316、333、394、及び416nm付近に吸収ピークが見られ、発光波長のピークは442、及び466nm(励起波長418nm)であった。
【0298】
また、2BnfPPAの薄膜状態におけるHOMO準位とLUMO準位の測定を行った。HOMO準位の値は、大気中の光電子分光装置(理研計器社製、AC−2)で測定したイオン化ポテンシャルの値を、負の値に換算することにより得た。また、LUMO準位の値は、図17(A)に示した2BnfPPAの薄膜の吸収スペクトルのデータを用い、直接遷移を仮定したTaucプロットから吸収端を求め、その吸収端を光学的エネルギーギャップとしてHOMO準位の値に加算することにより得た。その結果、2BnfPPAのHOMO準位は、−5.75eVであり、エネルギーギャップは、2.81eVであり、LUMO準位は、−2.94eVであった。
【実施例4】
【0299】
本実施例では、実施の形態1において構造式(134)で示す、6−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン(略称:BnfPA)を合成する例を示す。
【0300】
6−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン(略称:BnfPA)の合成
【0301】
100mL三口フラスコに1.8g(4.5mmol)の9−(4−ブロモフェニル)−10−フェニルアントラセンと、1.2g(4.5mmol)の実施例1のステップ1を用いて合成したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン−6−ボロン酸を入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物に15mLのトルエンと、7.0mLのエタノールと、5.0mLの炭酸ナトリウム水溶液(2.0mol/L)を加えた。この混合物を減圧しながら攪拌することで脱気した。この混合物に0.26g(0.22mmol)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を加え、窒素気流下、80℃で6時間攪拌したところ、固体が析出した。このフラスコを室温まで冷却し、この混合物を吸引濾過により濾過した。得られた固体を約500mLの熱したトルエンに溶解し、この溶液をセライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)、アルミナ、シリカゲル、フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540−00135)を通して吸引濾過した。得られた濾液を濃縮して得られた固体をトルエンで再結晶したところ、目的物の白色粉末を0.77g、収率31%で得た。
【0302】
得られた白色粉末状固体0.77gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製条件は、圧力2.7Pa、アルゴンガスを流量5.0mL/minで流しながら、275℃でBnfPAを加熱した。昇華精製後、BnfPAの淡黄色固体を0.70g、回収率90%で得た。上述の合成スキームを下記(H−1)に示す。
【0303】
【化55】
【0304】
核磁気共鳴法(NMR)によって、この化合物が目的物である6−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン(略称:BnfPA)であることを確認した。
【0305】
得られた化合物の1H NMRの測定データを以下に示す。
1H NMR(CDCl3,300MHz):δ=7.34−7.43(m,4H),7.50−7.66(m,8H),7.70−7.77(m,5H),7.80−7.84(m,1H),7.88−7.91(m,2H),8.15(d,J=7.8Hz,1H),8.27(t,J=7.8Hz,3H),8.49−8.52(m,1H),8.72(d,J=8.4Hz,1H)
【0306】
また、1H NMRチャートを図18(A)、(B)に示す。なお、図18(B)は、図18(A)における7.2ppm〜8.8ppmの範囲を拡大して表したチャートである。
【0307】
また、得られたBnfPAに対して、熱重量測定−示差熱分析(TG−DTA:Thermogravimetry−Differential Thermal Analysis)を行った。示差熱熱重量同時測定装置(セイコー電子株式会社製,TG/DTA 320型)により測定したところ、大気圧下で測定開始時における重量に対し95%の重量になる温度(以下、「5%重量減少温度」と示す。)は420℃であった。この結果から、BnfPAは良好な耐熱性を有する材料であることが分かった。
【0308】
また、BnfPAのトルエン溶液の吸収スペクトルを図19(A)に、発光スペクトルを図19(B)にそれぞれ示す。また、BnfPAの薄膜の吸収スペクトルを図20(A)に、発光スペクトルを図20(B)にそれぞれ示す。吸収スペクトルの測定には紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用いた。溶液は石英セルに入れ、薄膜は石英基板に蒸着してサンプルを作製して測定を行った。吸収スペクトルは、溶液については石英セルにトルエンのみを入れて測定した吸収スペクトルを、薄膜については石英基板の吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを示した。図19(A)及び図20(A)において横軸は波長(nm)、縦軸は吸収強度(任意単位)を表す。また、図19(B)及び図20(B)において横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度(任意単位)を表す。トルエン溶液の場合では281、323、355、376、及び396nm付近に吸収ピークが見られ、発光波長のピークは425nm(励起波長376nm)であった。また、薄膜の場合では208、223、268、327、359、381、及び403nm付近に吸収ピークが見られ、発光波長のピークは443nm(励起波長403nm)であった。
【0309】
また、BnfPAの薄膜状態におけるHOMO準位とLUMO準位の測定を行った。HOMO準位の値は、大気中の光電子分光装置(理研計器社製、AC−2)で測定したイオン化ポテンシャルの値を、負の値に換算することにより得た。また、LUMO準位の値は、図20(A)に示したBnfPAの薄膜の吸収スペクトルのデータを用い、直接遷移を仮定したTaucプロットから吸収端を求め、その吸収端を光学的エネルギーギャップとしてHOMO準位の値に加算することにより得た。その結果、BnfPAのHOMO準位は、−5.81eVであり、エネルギーギャップは、2.94eVであり、LUMO準位は、−2.87eVであった。
【実施例5】
【0310】
本実施例では、本発明の一態様の発光素子の作製方法および素子特性の測定結果を、図面を用いて説明する。
【0311】
本実施例の発光素子1−1乃至3、2、3−1、3−2、4−1、4−2、及び5の作製方法を、図8を用いて説明する。また、本実施例で用いた有機化合物(Alq、BPen、9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)、9−[4−(N−カルバゾリル)]フェニル−10−フェニルアントラセン(略称:CzPA)、N,N’−ビス〔4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル〕−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6FLPAPrn)、N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス〔3−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル〕−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn))の構造式を以下に示す。
【0312】
【化56】
【0313】
発光素子1−1乃至3、2、3−1、3−2、4−1、4−2、及び5において、ガラス基板である基板1100上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極1101を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。本実施例において、第1の電極1101は、陽極として用いた。
【0314】
次に、第1の電極1101が形成された面が下方となるように、第1の電極1101が形成された基板1100を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減圧した後、第1の電極1101上に、PCzPAと酸化モリブデン(VI)を共蒸着することで、正孔注入層1111を形成した。PCzPAと酸化モリブデンの比率は、重量比で4:2(=PCzPA:酸化モリブデン)となるように調節し、その膜厚は、発光素子1−1、2、3−1、3−2、4−1、4−2、及び5において50nmとし、発光素子1−2及び1−3において70nmとした。なお、共蒸着法とは、一つの処理室内で、複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法である。
【0315】
次に、正孔注入層1111上に、PCzPAを成膜し、正孔輸送層1112を形成した。その膜厚は、発光素子1−1、2、3−1、3−2、4−1、4−2、及び5において10nmとし、発光素子1−2及び1−3において30nmとした。
【0316】
発光素子1−1においては、正孔輸送層1112上に、実施例1にて合成した2mBnfPPAと1,6FLPAPrnとを、2mBnfPPA:1,6FLPAPrn=1:0.05(重量比)となるように共蒸着することにより、発光層1113を形成した。膜厚は30nmとした。
【0317】
発光素子1−2及び1−3においては、正孔輸送層1112上に、実施例1にて合成した2mBnfPPAと1,6mMemFLPAPrnとを、2mBnfPPA:1,6mMemFLPAPrn=1:0.03(重量比)となるように共蒸着することにより、発光層1113を形成した。膜厚は25nmとした。
【0318】
発光素子2においては、正孔輸送層1112上に、実施例2にて合成したmBnfPAと1,6FLPAPrnとを、mBnfPA:1,6FLPAPrn=1:0.05(重量比)となるように共蒸着することにより、発光層1113を形成した。膜厚は30nmとした。
【0319】
発光素子3−1においては、正孔輸送層1112上に、実施例3にて合成した2BnfPPAと1,6FLPAPrnとを、2BnfPPA:1,6FLPAPrn=1:0.05(重量比)となるように共蒸着することにより、発光層1113を形成した。膜厚は30nmとした。
【0320】
発光素子3−2においては、正孔輸送層1112上に、実施例3にて合成した2BnfPPAと1,6FLPAPrnとを、2BnfPPA:1,6FLPAPrn=1:0.03(重量比)となるように共蒸着することにより、発光層1113を形成した。膜厚は30nmとした。
【0321】
発光素子4−1及び4−2においては、正孔輸送層1112上に、実施例3にて合成したBnfPAと1,6FLPAPrnとを、BnfPA:1,6FLPAPrn=1:0.05(重量比)となるように共蒸着することにより、発光層1113を形成した。膜厚は30nmとした。
【0322】
発光素子5においては、正孔輸送層1112上に、実施例6にて合成した2mBnfPAと1,6FLPAPrnとを、2BnfPA:1,6FLPAPrn=1:0.05(重量比)となるように共蒸着することにより、発光層1113を形成した。膜厚は30nmとした。
【0323】
発光素子1−1、2、3−1、4−1、及び5において、発光層1113上に、Alqを膜厚10nmとなるように成膜し、第1の電子輸送層1114aを形成した。
【0324】
発光素子1−3、3−2、及び4−2において、発光層1113上に、CzPAを膜厚10nmとなるように成膜し、第1の電子輸送層1114aを形成した。
【0325】
発光素子1−1、1−3、2、3−1、3−2、4−1、4−2、及び5において、第1の電子輸送層1114a上にバソフェナントロリン(略称:BPhen)を膜厚15nmとなるように成膜し、第2の電子輸送層1114bを形成した。
【0326】
発光素子1−2においては電子輸送層を単層とし、発光層1113上に、BPhenを膜厚15nmとなるように成膜し、電子輸送層1114を形成した。
【0327】
発光素子1−1乃至3、2、3−1、3−2、4−1、4−2、及び5において、電子輸送層1114、又は第2の電子輸送層1114b上に、フッ化リチウム(LiF)を1nmの膜厚で蒸着し、電子注入層1115を形成した。
【0328】
発光素子1−1乃至3、2、3−1、3−2、4−1、4−2、及び5において、陰極として機能する第2の電極1103として、アルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着することで、本実施例の発光素子1−1乃至3、2、3−1、3−2、4−1、4−2、及び5を作製した。
【0329】
なお、上述した蒸着過程において、蒸着は全て抵抗加熱法を用いた。
【0330】
以上により得られた発光素子1−1乃至3、2、3−1、3−2、4−1、4−2、及び5の素子構造を表1に示す。
【0331】
【表1】
【0332】
発光素子−1乃至3、2、3−1、3−2、4−1、4−2、及び5を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子が大気に曝されないように封止する作業を行った後、それぞれの発光素子の動作特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0333】
それぞれの発光素子の電流密度−輝度特性を図21(発光素子1−1)、図27(発光素子1−2及び1−3)、図33(発光素子2)、図39(発光素子3−1)、図45(発光素子3−2)、図50(発光素子4−1)、図56(発光素子4−2)、及び図65(発光素子5)、電圧−輝度特性を図22(発光素子1−1)、図28(発光素子1−2及び1−3)、図34(発光素子2)、図40(発光素子3−1)、図46(発光素子3−2)、図51(発光素子4−1)、図57(発光素子4−2)、及び図66(発光素子5)、輝度−電流効率特性を図23(発光素子1−1)、図29(発光素子1−2及び1−3)、図35(発光素子2)、図41(発光素子3−1)、図47(発光素子3−2)、図52(発光素子4−1)、図58(発光素子4−2)、及び図67(発光素子5)、電圧−電流特性を図24(発光素子1−1)、図30(発光素子1−2及び1−3)、図36(発光素子2)、図42(発光素子3−1)、図48(発光素子3−2)、図53(発光素子4−1)、図59(発光素子4−2)、及び図68(発光素子5)にそれぞれ示す。
【0334】
図21、図27、図33、図39、図45、図50、及び図56では、横軸に電流密度(mA/cm2)、縦軸に輝度(cd/m2)を示し、図22、図28、図34、図40、図46、図51、及び図57では横軸に電圧(V)、縦軸に輝度(cd/m2)を示す。また、図23、図29、図35、図41、図47、図52、及び図58では、横軸に輝度(cd/m2)、縦軸に電流効率(cd/A)を示し、図24、図30、図36、図42、図48、図53、及び図59では、横軸に電圧(V)、縦軸に電流(mA)を示す。また、発光素子の発光スペクトルを、図25(発光素子1−1)、図31(発光素子1−2及び1−3)、図37(発光素子2)、図43(発光素子3−1)、図49(発光素子3−2)、図54(発光素子4−1)、図60(発光素子4−2)、及び図69(発光素子5)に示す。図25、図31、図37、図43、図49、図54、図60、及び図69において、横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度(任意単位)を示す。
【0335】
発光素子1−1からは、470nm付近にピークを有する1,6FLPAPrnからの良好な青色発光が得られたことがわかった。発光素子1−1は、輝度1145cd/m2のとき、CIE色度座標は(x=0.16、y=0.23)であり、良好な青色発光を示した。また、輝度1145cd/m2のときの電流効率は7.1cd/Aであり、外部量子効率は4.6%、電圧は4.4V、電流密度は16.1mA/cm2であり、パワー効率は5.1lm/Wであった。
【0336】
発光素子1−2からは、469nm付近にピークを有する1,6mMemFLPAPrnからの良好な青色発光が得られたことがわかった。発光素子1−2は、輝度1211cd/m2のとき、CIE色度座標は(x=0.14、y=0.17)であり、良好な青色発光を示した。また、輝度1211cd/m2のときの電流効率は11.9cd/Aであり、外部量子効率は10.2%、電圧は3.1V、電流密度は10.2mA/cm2であり、パワー効率は12.0lm/Wであった。
【0337】
発光素子1−3からは、470nm付近にピークを有する1,6mMemFLPAPrnからの良好な青色発光が得られたことがわかった。発光素子1−3は、輝度1106cd/m2のとき、CIE色度座標は(x=0.14、y=0.17)であり、良好な青色発光を示した。また、輝度1106cd/m2のときの電流効率は12.1cd/Aであり、外部量子効率は10.2%、電圧は3.3V、電流密度は9.1mA/cm2であり、パワー効率は11.6lm/Wであった。
【0338】
発光素子2からは、472nm付近にピークを有する1,6FLPAPrnからの良好な青色発光が得られたことがわかった。発光素子2は、輝度1018cd/m2のとき、CIE色度座標は(x=0.16、y=0.25)であり、良好な青色発光を示した。また、輝度1018cd/m2のときの電流効率は6.8cd/Aであり、外部量子効率は4.1%、電圧は4.6V、電流密度は15.0mA/cm2であり、パワー効率は4.7lm/Wであった。
【0339】
発光素子3−1からは、470nm付近にピークを有する1,6FLPAPrnからの良好な青色発光が得られたことがわかった。発光素子3−1は、輝度840cd/m2のとき、CIE色度座標は(x=0.16、y=0.25)であり、良好な青色発光を示した。また、輝度840cd/m2のときの電流効率は7.0cd/Aであり、外部量子効率は4.3%、電圧は4.0V、電流密度は12.0mA/cm2であり、パワー効率は5.5lm/Wであった。
【0340】
発光素子3−2からは、470nm付近にピークを有する1,6FLPAPrnからの良好な青色発光が得られたことがわかった。発光素子3−2は、輝度900cd/m2のとき、CIE色度座標は(x=0.15、y=0.22)であり、良好な青色発光を示した。また、輝度900cd/m2のときの電流効率は8.3cd/Aであり、外部量子効率は5.5%、電圧は3.1V、電流密度は10.8mA/cm2であり、パワー効率は8.5lm/Wであった。
【0341】
発光素子4−1からは、470nm付近にピークを有する1,6FLPAPrnからの良好な青色発光が得られたことがわかった。発光素子4−1は、輝度728cd/m2のとき、CIE色度座標は(x=0.15、y=0.21)であり、良好な青色発光を示した。また、輝度728cd/m2のときの電流効率は6.9cd/Aであり、外部量子効率は4.8%、電圧は4.4V、電流密度は10.6mA/cm2であり、パワー効率は4.9lm/Wであった。
【0342】
発光素子4−2からは、470nm付近にピークを有する1,6FLPAPrnからの良好な青色発光が得られたことがわかった。発光素子4−2は、輝度689cd/m2のとき、CIE色度座標は(x=0.15、y=0.21)であり、良好な青色発光を示した。また、輝度689cd/m2のときの電流効率は6.7cd/Aであり、外部量子効率は4.8%、電圧は3.4V、電流密度は10.2mA/cm2であり、パワー効率は6.2lm/Wであった。
【0343】
発光素子5からは、470nm付近にピークを有する1,6FLPAPrnからの良好な青色発光が得られたことがわかった。発光素子5は、輝度839cd/m2のとき、CIE色度座標は(x=0.17、y=0.27)であり、良好な青色発光を示した。また、輝度839cd/m2のときの電流効率は5.9cd/Aであり、外部量子効率は3.4%、電圧は3.8V、電流密度は14.1mA/cm2であり、パワー効率は4.9lm/Wであった。
【0344】
また、作製した発光素子1−1乃至3、2、3−1、3−2、及び4−1の信頼性試験を行った。信頼性試験とは以下のようにして行った。発光素子1−1、2、3−1、3−2、及び4−1では、初期状態において、1000cd/m2の輝度で発光させたときに発光素子1−1、2、3−1、3−2、及び4−1に流れている電流と同じ値の電流を流し続け、或る時間が経過する毎に輝度を測定した。発光素子1−2及び1−3では、初期状態において、5000cd/m2の輝度で発光させたときに発光素子1−2及び1−3に流れている電流と同じ値の電流を流し続け、或る時間が経過する毎に輝度を測定した。
【0345】
発光素子1−1乃至3、2、3−1、及び4−1の信頼性試験によって得られた結果を図26(発光素子1−1)、図32(発光素子1−2及び1−3)、図38(発光素子2)、図44(発光素子3−1)、及び図55(発光素子4−1)に示す。図26、図32、図38、図44、及び図55は輝度の経時変化を示している。なお、図26、図32、図38、図44、及び図55において横軸は通電時間(hour)、縦軸はそれぞれの時間における初期輝度に対する輝度の割合、すなわち規格化輝度(%)を表す。
【0346】
信頼性試験により、特にアントリル基が2位で置換した構造である2mBnfPPA、2BnfPPAを用いた発光素子1−1乃至3及び発光素子3−1において長寿命化が達成できており、高い信頼性を有することが確認できた。
【0347】
本実施例により、本発明の発光素子が、色純度のよい発光を高効率で得ることのできる発光素子として特性が得られ、十分機能することが確認できた。また信頼性試験の結果から、発光素子を連続点灯させた場合であっても、膜の欠陥等に由来する短絡が生じることがなく、信頼性の高い発光素子が得られたことがわかった。
【0348】
(参考例)
本参考例では、実施例5の発光素子で用いた材料について説明する。
【0349】
<1,6FLPAPrnの合成例>
発光素子1−1、2、3−1、3−2、4−1、及び4−2の材料に用いたN,N’−ビス〔4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル〕−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6FLPAPrn)を合成する例を示す。
【0350】
[ステップ1:9−(4−ブロモフェニル)−9−フェニルフルオレンの合成法]
【0351】
100mL三口フラスコにて、マグネシウムを1.2g(50mmol)減圧下で30分加熱撹拌し、マグネシウムを活性化させた。これを室温に冷まして窒素雰囲気にした後、ジブロモエタン数滴を加えて発泡、発熱するのを確認した。ここにジエチルエーテル10mL中に溶かした2−ブロモビフェニルを12g(50mmol)ゆっくり滴下した後、2.5時間加熱還流撹拌してグリニヤール試薬とした。
【0352】
4−ブロモベンゾフェノンを10g(40mmol)、ジエチルエーテルを100mLを500mL三口フラスコに入れた。ここに先に合成したグリニヤール試薬をゆっくり滴下した後、9時間加熱還流撹拌した。
【0353】
反応後、この混合液を濾過して濾物を得た。得られた濾物を酢酸エチル150mLに溶かし、1M塩酸を加えて2時間撹拌した。この液体の有機層の部分を水で洗浄し、硫酸マグネシウムを加えて水分を吸着させた。この懸濁液を濾過し、得られた濾液を濃縮し油状物を得た。
【0354】
500mLなすフラスコに、得られた油状物と、氷酢酸50mLと、塩酸1.0mLとを入れ、窒素雰囲気下、130℃で1.5時間加熱撹拌し、反応させた。
【0355】
反応後、この反応混合液を濾過して濾物を得た。得られた濾物を水、水酸化ナトリウム水溶液、水、メタノールの順で洗浄したのち乾燥させ、目的物の白色粉末11gを収率69%で得た。上記ステップ1の合成スキームを下記(I−1)に示す。
【0356】
【化57】
【0357】
[ステップ2:N,N’−ビス〔4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル〕−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6FLPAPrn)の合成法]
【0358】
1,6−ジブロモピレン0.4g(1.2mmol)、4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)ジフェニルアミン(略称:FLPA)1.0g(2.4mmol)、ナトリウム tert−ブトキシド0.3g(3.6mmol)を50mL三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物にトルエン11.5mLとトリ(tert−ブチル)ホスフィンの10%ヘキサン溶液0.2mLを加えた。この混合物を70℃にし、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)31.1mg(0.05mmol)を加え4.0時間攪拌した。攪拌後、フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540−00135)、セライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)、アルミナを通して吸引濾過し、濾液を得た。得られた濾液を濃縮した。得られた濾液を濃縮して得た固体を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒はクロロホルム)により精製し、得られたフラクションを濃縮し、黄色固体を得た。得られた固体を、トルエンとヘキサンの混合溶媒により洗浄した後、吸引濾過をおこない黄色固体を得た。得られた黄色固体をクロロホルムとヘキサンの混合溶媒で洗浄したところ、目的物の淡黄色粉末状固体0.8gを、収率68%で得た。
【0359】
得られた黄色固体0.8gを、トレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製条件は、圧力2.7Pa、アルゴンガスを流量5mL/minで流しながら、360℃で加熱した。昇華精製後、目的物を0.4g、収率56%で得た。上記ステップの合成スキームを下記(I−2)に示す。
【0360】
【化58】
【0361】
核磁気共鳴法(NMR)及びMSスペクトルによって、この化合物が目的物であるN,N’−ビス〔4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル〕−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6FLPAPrn)であることを確認した。
【0362】
得られた化合物の1H NMRデータを以下に示す。
1H NMR(CDCl3,300MHz):δ=6.88−6.91(m、6H)、7.00−7.03(m、8H)、7.13−7.40(m、26H)、7.73−7.80(m、6H)、7.87(d、J=9.0Hz、2H)、8.06−8.09(m、4H)
【0363】
<1,6mMemFLPAPrnの合成例>
発光素子1−2及び1−3の材料に用いたN’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス〔3−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル〕−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)を合成する例を示す。
【0364】
[ステップ1:3−メチルフェニル−3−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニルアミン(略称:mMemFLPA)の合成法]
【0365】
9−(3−ブロモフェニル)−9−フェニルフルオレン3.2g(8.1mmol)、ナトリウム tert−ブトキシド2.3g(24.1mmol)を200mL三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物にトルエン40.0mL、m−トルイジン0.9mL(8.3mmol)、トリ(tert−ブチル)ホスフィンの10%ヘキサン溶液0.2mLを加えた。この混合物を60℃にし、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)44.5mg(0.1mmol)を加え、この混合物を80℃にして2.0時間攪拌した。攪拌後、フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540−00135)、セライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)、アルミナを通して吸引濾過し、濾液を得た。得られた濾液を濃縮して得た固体を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒はヘキサン:トルエン=1:1)により精製し、トルエンとヘキサンの混合溶媒で再結晶し、目的の白色固体2.8gを、収率82%で得た。上記ステップ1の合成スキームを下記(J−1)に示す。
【0366】
【化59】
【0367】
[ステップ2:N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス〔3−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル〕−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)の合成法]
【0368】
1,6−ジブロモピレン0.6g(1.7mmol)、3−メチルフェニル−3−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニルアミン1.4g(3.4mmol)、ナトリウム tert−ブトキシド0.5g(5.1mmol)を100mL三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物にトルエン21.0mL、トリ(tert−ブチル)ホスフィンの10%ヘキサン溶液0.2mLを加えた。この混合物を60℃にし、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)34.9mg(0.1mmol)を加え、この混合物を80℃にして3.0時間攪拌した。攪拌後、トルエンを400mL加えて加熱し、熱いまま、フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540−00135)、セライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)、アルミナを通して吸引濾過し、濾液を得た。得られた濾液を濃縮して得た固体を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒はヘキサン:トルエン=3:2)により精製し、黄色固体を得た。得られた黄色固体をトルエンとヘキサンの混合溶媒で再結晶し、目的の黄色固体を1.2g、収率67%で得た。
【0369】
得られた黄色固体1.0gを、トレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製条件は、圧力2.2Pa、アルゴンガスを流量5.0mL/minで流しながら、317℃で黄色固体を加熱した。昇華精製後、目的物の黄色固体1.0gを、収率93%で得た。上記ステップ2の合成スキームを下記(J−2)に示す。
【0370】
【化60】
【0371】
核磁気共鳴法(NMR)によって、この化合物が目的物であるN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス〔3−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル〕−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)であることを確認した。
【0372】
得られた化合物の1H NMRデータを以下に示す。
1H NMR(CDCl3,300MHz):δ=2.21(s,6H)、6.67(d,J=7.2Hz,2H)、6.74(d,J=7.2Hz,2H)、7.17−7.23(m,34H)、7.62(d,J=7.8Hz,4H)、7.74(d,J=7.8Hz,2H)、7.86(d,J=9.0Hz,2H)、8.04(d,J=8.7Hz,4H)
【実施例6】
【0373】
本実施例では、実施の形態1において構造式(123)で表される6−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン(略称:2BnfPA)を合成する例を示す。
【0374】
50mL三口フラスコに1.5g(3.2mmol)の2−ヨード−9,10−ジフェニルアントラセンと、0.86g(3.2mmol)のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン−6−ボロン酸を入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物に10mLのトルエンと、5.0mLのエタノールと、4.0mLの炭酸ナトリウム水溶液(2.0mol/L)を加えた。この混合物を減圧しながら攪拌することで脱気した。この混合物に0.18g(0.16mmol)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を加え、窒素気流下、80℃で6時間攪拌したところ、固体が析出した。この混合物を室温まで冷却し、析出した固体を吸引ろ過により回収した。回収した固体を約30mLの熱したトルエンに溶解し、この溶液をセライト、アルミナ、フロリジールを通して吸引ろ過した。得られたろ液を濃縮して固体を得た。得られた固体をトルエン/ヘキサンで再結晶したところ、目的物の淡黄色粉末を1.0g、収率58%で得た。
【0375】
得られた淡黄色粉末状固体1.0gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製条件は、圧力10Pa、アルゴンガスを流量5.0mL/minで流しながら、290℃で2mBnfPPAを加熱した。昇華精製後、2mBnfPPAの淡黄色固体を0.91g、回収率91%で得た。上述の合成スキームを下記(K−1)に示す。
【0376】
【化61】
【0377】
核磁気共鳴法(NMR)によって、この化合物が目的物である6−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン(略称:2BnfPA)であることを確認した。
【0378】
得られた物質の1H NMRを測定した。以下に測定データを示す。
1H NMR(CDCl3,300MHz):δ=7.37(dd,J=3.6,3.3Hz,2H),7.45−7.79(m,17H),7.89(d,J=8.7Hz,1H),98(dd,J=9.0,1.8Hz,1H),8.04(t,J=4.5Hz,2H),8.42(dd,J=6.0,2.1Hz,1H),8.50(d,J=1.5Hz,1H),8.62(d,J=9.0Hz,1H).
【0379】
また、1H NMRチャートを図62(A)、(B)に示す。なお、図62(B)は、図62(A)における7.2ppm〜8.7ppmの範囲を拡大して表したチャートである。
【0380】
また、2BnfPAのトルエン溶液の吸収スペクトルを図63(A)に、発光スペクトルを図63(B)にそれぞれ示す。また、2BnfPAの薄膜の吸収スペクトルを図64(A)に、発光スペクトルを図64(B)にそれぞれ示す。吸収スペクトルの測定には紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用いた。溶液は石英セルに入れ、薄膜は石英基板に蒸着してサンプルを作製して測定を行った。吸収スペクトルは、溶液については石英セルにトルエンのみを入れて測定した吸収スペクトルを、薄膜については石英基板の吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを示した。図63(A)及び図64(A)において横軸は波長(nm)、縦軸は吸収強度(任意単位)を表す。また、図63(B)及び図64(B)において横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度(任意単位)を表す。トルエン溶液の場合では289、303、318、332、365、386、及び408nm付近に吸収ピークが見られ、発光波長のピークは427及び447nm(励起波長387nm)であった。また、薄膜の場合では241、262、278、294、323、336、371、393、及び416nm付近に吸収ピークが見られ、発光波長のピークは363、457、474、及び457nm(励起波長415nm)であった。
【0381】
また、2BnfPAの薄膜状態におけるHOMO準位とLUMO準位の測定を行った。HOMO準位の値は、大気中の光電子分光装置(理研計器社製、AC−2)で測定したイオン化ポテンシャルの値を、負の値に換算することにより得た。また、LUMO準位の値は、図64(A)に示した2BnfPAの薄膜の吸収スペクトルのデータを用い、直接遷移を仮定したTaucプロットから吸収端を求め、その吸収端を光学的エネルギーギャップとしてHOMO準位の値に加算することにより得た。その結果、2BnfPAのHOMO準位は、−5.66eVであり、エネルギーギャップは、2.86eVであり、LUMO準位は、−2.80eVであった。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物及びそれを含む発光素子用材料、及び発光素子に関する。また、当該発光素子を有する発光装置、電子機器及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロルミネッセンス(EL;Electroluminescence)を利用した発光素子の研究開発が盛んに行われている。これら発光素子の基本的な構成は、一対の電極間に発光性の物質を含む層を挟んだものである。この素子に電圧を印加することにより、発光性の物質からの発光を得ることができる。
【0003】
このような発光素子は自発光型であるため、液晶ディスプレイに比べ画素の視認性が高く、バックライトが不要である等の利点があり、フラットパネルディスプレイ素子として好適であると考えられている。また、このような発光素子は、薄型軽量に作製できることも大きな利点である。さらに非常に応答速度が速いことも特徴の一つである。
【0004】
そして、これらの発光素子は膜状に形成することが可能であるため、面状の発光を容易に得ることができる。よって、面状の発光を利用した大面積の素子を形成することができる。このことは、白熱電球やLEDに代表される点光源、あるいは蛍光灯に代表される線光源では得難い特色であるため、照明等に応用できる面光源としての利用価値も高い。
【0005】
エレクトロルミネッセンスを利用した発光素子は、発光性の物質が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって大別できるが、発光性の物質に有機化合物を用いる場合、発光素子に電圧を印加することにより、一対の電極から電子およびホール(正孔)がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、それらキャリア(電子およびホール(正孔))が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。なお、有機化合物が形成する励起状態の種類としては、一重項励起状態と三重項励起状態が可能であり、一重項励起状態からの発光が蛍光、三重項励起状態からの発光が燐光と呼ばれている。
【0006】
このような発光素子に関しては、その素子特性を向上させる上で、物質に依存した問題が多く、これらを克服するために素子構造の改良や物質開発等が行われている(例えば特許文献1参照。)。
【0007】
発光素子の発光波長は、発光素子中に含まれる発光分子の励起状態から基底状態のエネルギー差、すなわちバンドギャップによって決定される。従って、発光分子の構造を工夫することで、種々の発光色を得ることが可能である。そして光の三原色である赤、青、緑の発光が可能な発光素子を用いて発光装置とすることで、フルカラーの発光装置を作製することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開2010−036027号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、フルカラーの発光装置が抱える問題点は、色純度に優れた発光素子を作製することが、必ずしも容易でないことである。これは、優れた色再現性を有する発光装置を作製する為には、色純度に優れた赤、青、緑の発光素子が必要であるものの、信頼性が高く、かつ色純度に優れた発光素子の実現が困難である為である。この課題は、特に青色の発光素子に関して未だ達成度が低い。
【0010】
上記問題を鑑みて、青色として優れた色純度を与える広いバンドギャップを有したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を提供することを課題の一とする。また該ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を用いた信頼性の高い発光素子、発光装置及び電子機器を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は、5位に炭素数1乃至4のアルキル基以外の置換基を有さず、6位にキャリア輸送性のアントリル基を有する。
【0012】
本発明の一態様は、一般式(G1)で表されるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物である。
【0013】
【化1】
【0014】
但し、一般式(G1)中、Anは、下記一般式(An−1)又は(An−2)で表されるアントリル基を表し、α1及びα2は、下記一般式(α−1)〜(α−3)で表される、置換又は無置換のフェニレン基のいずれか一を表し、R1〜R9は、水素、又は炭素数1〜4のアルキル基のいずれか一を表す。また、一般式(G1)中、n及びmは0又は1である。
【0015】
【化2】
【0016】
但し、一般式(G1)において、一般式(An−1)及び(An−2)中、R10〜R27は、水素、又は炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜13の置換もしくは無置換のアリール基を表す。また、R10〜R27は、2つ以上の置換基を有する場合、置換基同士が互いに結合して環を形成していても良い。また、R10〜R27が2つ以上の置換基を有する場合、1つの炭素が2つの置換基を有していてもよく、この場合置換基同士が互いに結合して、スピロ環を形成していても良い。
【化3】
【0017】
但し、一般式(G1)において、一般式(α−1)〜(α−3)中、R28〜R39は、水素、又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
【0018】
本発明の一態様は、一般式(G2)で表されるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物である。
【0019】
【化4】
【0020】
但し、一般式(G2)中、Anは、下記一般式(An−1)又は(An−2)で表されるアントリル基を表し、α1及びα2は、下記構造式(α−4)〜(α−6)で表される、フェニレン基のいずれか一を表す。また、一般式(G2)中、n及びmは0又は1である。
【0021】
【化5】
【0022】
但し、一般式(G2)において、一般式(An−1)及び(An−2)中、R10〜R27は、水素、又は炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜13の置換もしくは無置換のアリール基を表す。また、R10〜R27は、2つ以上の置換基を有する場合、置換基同士が互いに結合して環を形成していても良い。また、R10〜R27が2つ以上の置換基を有する場合、1つの炭素が2つの置換基を有していてもよく、この場合置換基同士が互いに結合して、スピロ環を形成していても良い。
【0023】
【化6】
【0024】
本発明の一態様は、一般式(G3)で表されるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物である。
【0025】
【化7】
【0026】
但し、一般式(G3)中、Anは、下記一般式(An−1)又は(An−2)で表されるアントリル基を表し、α1は、下記構造式(α−4)又は(α−5)で表される、フェニレン基を表す。また、一般式(G3)中、nは0又は1である。
【0027】
【化8】
【0028】
但し、一般式(G3)において、一般式(An−1)及び(An−2)中、R10〜R27は、水素、又は炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜13の置換もしくは無置換のアリール基を表す。また、R10〜R27は、2つ以上の置換基を有する場合、置換基同士が互いに結合して環を形成していても良い。また、R10〜R27が2つ以上の置換基を有する場合、1つの炭素が2つの置換基を有していてもよく、この場合置換基同士が互いに結合して、スピロ環を形成していても良い。
【0029】
【化9】
【0030】
本発明の一態様は、一般式(G4)で表されるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物である。
【0031】
【化10】
【0032】
但し、一般式(G4)中、Anは、下記一般式(An−3)又は(An−4)で表されるアントリル基を表し、α1は、下記構造式(α−4)又は(α−5)で表される、フェニレン基を表す。また、一般式(G4)中、nは0又は1である。
【0033】
【化11】
【0034】
但し、一般式(G4)において、一般式(An−3)及び(An−4)中、R13、R18、R27は、水素、又は炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜13の置換もしくは無置換のアリール基を表す。また、R13、R18、R27は、2つ以上の置換基を有する場合、置換基同士が互いに結合して環を形成していても良い。また、R13、R18、R27が2つ以上の置換基を有する場合、1つの炭素が2つの置換基を有していてもよく、この場合置換基同士が互いに結合して、スピロ環を形成していても良い。
【0035】
【化12】
【0036】
また、本発明の別の一態様は、上記のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を含む発光素子用材料である。
【0037】
また、本発明の別の一態様は、上記のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を含む発光素子である。該発光素子において、上記のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を発光層に含むことができる。発光層において、上記のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は、ホスト材料として含まれる構成でもよいし、発光中心材料として含まれる構成でもよい。
【0038】
また、本発明の別の一態様は、上記の発光素子を有する発光装置である。
【0039】
また、本発明の別の一態様は、上記の発光装置を搭載した電子機器又は照明装置である。
【0040】
なお、本明細書中における発光装置とは、画像表示デバイス、発光デバイス、光源を含む。また、パネルにコネクター、例えばFPC(Flexible Printed Circuit)もしくはTAB(Tape Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、又は発光素子にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。
【発明の効果】
【0041】
本発明の一態様である、5位に炭素数1乃至4のアルキル基以外の置換基を有さず、6位にキャリア輸送性のアントリル基を有するベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は、バンドギャップが大きいため、比較的短波長の発光を得ることが可能であり、色純度の良い青色発光を高効率で得ることができるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物である。また、本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は電気化学的安定性が高い。
【0042】
本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は5位に炭素数1乃至4のアルキル基以外の置換基を有さず、6位にキャリア輸送性のアントリル基を有する構造である。5位にアリール基やヘテロアリール基等のπ電子を有する大きな置換基を有さないため、6位にアントリル基のようなフェニル基より大きなアリール基を導入しても、合成方法が煩雑化することなく、様々な構造の多様化に容易に対応することができる。よって、高い生産性及び低コストで作製することができるため、高純度化が可能となり高品質なベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を安価で提供することが可能となる。
【0043】
また、本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物で構成される層中に、そのベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物よりも小さなバンドギャップを有する発光材料(以下、ドーパントと記す)を添加し、ドーパントからの発光を得ることができる。本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は、450nm〜700nmあたりに発光極大を有するドーパントから効率よく発光を得ることができる。本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物はバンドギャップが大きいため、比較的短波長な発光を有するドーパントを用いても、ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物からの発光ではなく、ドーパントからの発光を効率よく得ることができる。具体的には、450〜470nmあたりに発光極大を有する発光材料が優れた青色の色純度を示すが、このような材料をドーパントとして用いても、色純度の良い青色の発光を得ることが可能な発光素子を得ることが可能である。
【0044】
また、本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を、そのベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物よりも大きなバンドギャップを有する材料(以下、ホストと記す)よりなる層中に添加した発光素子を作製することで、本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物からの発光を得ることができる。すなわち、本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物はドーパントとしても機能する。このとき、本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は大きなバンドギャップを有し、比較的短波長な発光を示すため、色純度の良い青色の発光を高効率で得ることができる発光素子を作製することが可能である。
【0045】
本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は、バンドギャップが広く、電子及び正孔の注入輸送性の高いバイポーラ材料である。よって、本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物はキャリア輸送層としても用いることができ、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、又は電子注入層として機能する。したがって、本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を、発光素子に用いることにより、キャリアバランスのよい低電圧駆動が可能な発光素子を得ることができる。
【0046】
また、上記ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を含む本発明の一態様である発光素子は、青色として優れた色純度を与えることができる発光素子である。また、上記ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を含む本発明の一態様である発光素子は、劣化しにくく長寿命な発光素子であり、信頼性が高い。
【0047】
また、上記発光素子を含む本発明の一態様としての発光装置は、色再現性の高い発光装置であり、また、表示品質の高い発光装置である。また、上記発光素子を含む本発明の一態様である発光装置は、信頼性の高い発光装置である。また、上記発光素子を含む本発明の一態様である発光装置は、低消費電力な発光装置である。
【0048】
また、上記発光素子を含む本発明の一態様である電子機器は、色再現性の高い電子機器である、また、表示品質の高い電子機器である。また、上記発光素子を含む本発明の一態様である電子機器は、信頼性の高い電子機器である。また、上記発光素子を含む本発明の一態様である電子機器は、低消費電力な電子機器である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一態様の発光素子を説明する図。
【図2】本発明の一態様の発光素子を説明する図。
【図3】本発明の一態様の発光装置を説明する図。
【図4】本発明の一態様の発光装置を説明する図。
【図5】本発明の一態様の電子機器及び照明装置を説明する図。
【図6】本発明の一態様の電子機器を説明する図。
【図7】本発明の一態様の電子機器及び照明装置を説明する図。
【図8】実施例の発光素子を説明する図。
【図9】2mBnfPPAのNMRチャート図。
【図10】2mBnfPPAのトルエン溶液の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図。
【図11】2mBnfPPAの薄膜の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図。
【図12】mBnfPAのNMRチャート図。
【図13】mBnfPAのトルエン溶液の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図。
【図14】mBnfPAの薄膜の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図。
【図15】2BnfPPAのNMRチャート図。
【図16】2BnfPPAのトルエン溶液の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図。
【図17】2BnfPPAの薄膜の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図。
【図18】BnfPAのNMRチャート図。
【図19】BnfPAのトルエン溶液の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図。
【図20】BnfPAの薄膜の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図。
【図21】発光素子1−1(2mBnfPPA)の電流密度−輝度特性を示す図。
【図22】発光素子1−1(2mBnfPPA)の電圧−輝度特性を示す図。
【図23】発光素子1−1(2mBnfPPA)の輝度−電流効率特性を示す図。
【図24】発光素子1−1(2mBnfPPA)の電圧−電流特性を示す図。
【図25】発光素子1−1(2mBnfPPA)の発光スペクトルを示す図。
【図26】発光素子1−1(2mBnfPPA)の信頼性試験の結果を示す図。
【図27】発光素子1−2及び1−3(2mBnfPPA)の電流密度−輝度特性を示す図。
【図28】発光素子1−2及び1−3(2mBnfPPA)の電圧−輝度特性を示す図。
【図29】発光素子1−2及び1−3(2mBnfPPA)の輝度−電流効率特性を示す図。
【図30】発光素子1−2及び1−3(2mBnfPPA)の電圧−電流特性を示す図。
【図31】発光素子1−2及び1−3(2mBnfPPA)の発光スペクトルを示す図。
【図32】発光素子1−2及び1−3(2mBnfPPA)の信頼性試験の結果を示す図。
【図33】発光素子2(mBnfPA)の電流密度−輝度特性を示す図。
【図34】発光素子2(mBnfPA)の電圧−輝度特性を示す図。
【図35】発光素子2(mBnfPA)の輝度−電流効率特性を示す図。
【図36】発光素子2(mBnfPA)の電圧−電流特性を示す図。
【図37】発光素子2(mBnfPA)の発光スペクトルを示す図。
【図38】発光素子2(mBnfPA)の信頼性試験の結果を示す図。
【図39】発光素子3−1(2BnfPPA)の電流密度−輝度特性を示す図。
【図40】発光素子3−1(2BnfPPA)の電圧−輝度特性を示す図。
【図41】発光素子3−1(2BnfPPA)の輝度−電流効率特性を示す図。
【図42】発光素子3−1(2BnfPPA)の電圧−電流特性を示す図。
【図43】発光素子3−1(2BnfPPA)の発光スペクトルを示す図。
【図44】発光素子3−1(2BnfPPA)の信頼性試験の結果を示す図。
【図45】発光素子3−2(2BnfPPA)の電流密度−輝度特性を示す図。
【図46】発光素子3−2(2BnfPPA)の電圧−輝度特性を示す図。
【図47】発光素子3−2(2BnfPPA)の輝度−電流効率特性を示す図。
【図48】発光素子3−2(2BnfPPA)の電圧−電流特性を示す図。
【図49】発光素子3−2(2BnfPPA)の発光スペクトルを示す図。
【図50】発光素子4−1(BnfPA)の電流密度−輝度特性を示す図。
【図51】発光素子4−1(BnfPA)の電圧−輝度特性を示す図。
【図52】発光素子4−1(BnfPA)の輝度−電流効率特性を示す図。
【図53】発光素子4−1(BnfPA)の電圧−電流特性を示す図。
【図54】発光素子4−1(BnfPA)の発光スペクトルを示す図。
【図55】発光素子4−1(BnfPA)の信頼性試験の結果を示す図。
【図56】発光素子4−2(BnfPA)の電流密度−輝度特性を示す図。
【図57】発光素子4−2(BnfPA)の電圧−輝度特性を示す図。
【図58】発光素子4−2(BnfPA)の輝度−電流効率特性を示す図。
【図59】発光素子4−2(BnfPA)の電圧−電流特性を示す図。
【図60】発光素子4−2(BnfPA)の発光スペクトルを示す図。
【図61】X線結晶構造解析による分子投影図。
【図62】2BnfPAのNMRチャート図。
【図63】2BnfPAのトルエン溶液の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図。
【図64】2BnfPAの薄膜の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図。
【図65】発光素子5(2BnfPA)の電流密度−輝度特性を示す図。
【図66】発光素子5(2BnfPA)の電圧−輝度特性を示す図。
【図67】発光素子5(2BnfPA)の輝度−電流効率特性を示す図。
【図68】発光素子5(2BnfPA)の電圧−電流特性を示す図。
【図69】発光素子5(2BnfPA)の発光スペクトルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0051】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様に係るベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物について説明する。
【0052】
本発明の一態様に係るベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は、下記一般式(G1)で表されるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物である。
【0053】
【化13】
【0054】
但し、一般式(G1)中、Anは、下記一般式(An−1)又は(An−2)で表されるアントリル基を表し、α1及びα2は、下記一般式(α−1)〜(α−3)で表される、置換又は無置換のフェニレン基のいずれか一を表し、R1〜R9は、水素、又は炭素数1〜4のアルキル基のいずれか一を表す。また、一般式(G1)中、n及びmは0又は1である。
【0055】
【化14】
【0056】
但し、一般式(G1)において、一般式(An−1)及び(An−2)中、R10〜R27は、水素、又は炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜13の置換もしくは無置換のアリール基を表す。また、R10〜R27は、2つ以上の置換基を有する場合、置換基同士が互いに結合して環を形成していても良い。また、R10〜R27が2つ以上の置換基を有する場合、1つの炭素が2つの置換基を有していてもよく、この場合置換基同士が互いに結合して、スピロ環を形成していても良い。
【0057】
【化15】
【0058】
但し、一般式(G1)において一般式(α−1)〜(α−3)中、R28〜R39は、水素、又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
【0059】
本発明の一態様は、一般式(G2)で表されるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物である。
【0060】
【化16】
【0061】
但し、一般式(G2)中、Anは、下記一般式(An−1)又は(An−2)で表されるアントリル基を表し、α1及びα2は、下記構造式(α−4)〜(α−6)で表される、フェニレン基のいずれか一を表す。また、一般式(G2)中、n及びmは0又は1である。
【0062】
【化17】
【0063】
但し、一般式(G2)において、一般式(An−1)及び(An−2)中、R10〜R27は、水素、又は炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜13の置換もしくは無置換のアリール基を表す。また、R10〜R27は、2つ以上の置換基を有する場合、置換基同士が互いに結合して環を形成していても良い。また、R10〜R27が2つ以上の置換基を有する場合、1つの炭素が2つの置換基を有していてもよく、この場合置換基同士が互いに結合して、スピロ環を形成していても良い。
【0064】
【化18】
【0065】
本発明の一態様は、一般式(G3)で表されるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物である。
【0066】
【化19】
【0067】
但し、一般式(G3)中、Anは、下記一般式(An−1)又は(An−2)で表されるアントリル基を表し、α1は、下記構造式(α−4)又は(α−5)で表される、フェニレン基を表す。また、一般式(G3)中、nは0又は1である。
【0068】
【化20】
【0069】
但し、一般式(G3)において、一般式(An−1)及び(An−2)中、R10〜R27は、水素、又は炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜13の置換もしくは無置換のアリール基を表す。また、R10〜R27は、2つ以上の置換基を有する場合、置換基同士が互いに結合して環を形成していても良い。また、R10〜R27が2つ以上の置換基を有する場合、1つの炭素が2つの置換基を有していてもよく、この場合置換基同士が互いに結合して、スピロ環を形成していても良い。
【0070】
【化21】
【0071】
本発明の一態様は、一般式(G4)で表されるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物である。
【0072】
【化22】
【0073】
但し、一般式(G4)中、Anは、下記一般式(An−3)又は(An−4)で表されるアントリル基を表し、α1は、下記構造式(α−4)又は(α−5)で表される、フェニレン基を表す。また、一般式(G4)中、nは0又は1である。
【0074】
【化23】
【0075】
但し、一般式(An−3)及び(An−4)中、R13、R18、R27は、水素、又は炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜13の置換もしくは無置換のアリール基を表す。また、R13、R18、R27は、2つ以上の置換基を有する場合、置換基同士が互いに結合して環を形成していても良い。また、R13、R18、R27が2つ以上の置換基を有する場合、1つの炭素が2つの置換基を有していてもよく、この場合置換基同士が互いに結合して、スピロ環を形成していても良い。
【0076】
【化24】
【0077】
R1〜R9及びR28〜R39の具体的構造としては、下記構造式(R−1)乃至(R−9)等が例示できる。
【0078】
【化25】
【0079】
R10〜R27が炭素数6〜13のアリール基の場合、さらに置換基を有していてもよい。なお、本明細書中で示すアリール基の炭素数は、環を形成する炭素数を示しており、それに結合する置換基の炭素数を含むものではない。R10〜R27が置換基を有する炭素数6〜13のアリール基の場合の置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基等が例示できる。なお、R10〜R27が炭素数6〜13のアリール基であって、さらに置換基を有する場合には、置換基同士が互いに結合して環を形成してもよく、環構造としては、スピロ環でもよい。
【0080】
R10〜R27の具体的構造としては、下記構造式(R−1)乃至(R−24)等が例示できる。なお、R10〜R27が炭素数6〜13のアリール基であって、さらに置換基を有する場合の具体例が構造式(R−14)乃至(R−24)である。また、置換基同士が互いに結合してスピロ環構造を形成する場合の具体例が構造式(R−21)である。
【0081】
【化26】
【0082】
本発明の一態様である、5位に炭素数1乃至4のアルキル基以外の置換基を有さず、6位にキャリア輸送性のアントリル基を有するベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は、バンドギャップが大きいため、比較的短波長の発光を得ることが可能であり、色純度の良い青色発光を高効率で得ることができるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物である。また、本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は電気化学的安定性が高い。
【0083】
本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は5位に炭素数1乃至4のアルキル基以外の置換基を有さず、6位にキャリア輸送性のアントリル基を有する構造である。5位にアリール基やヘテロアリール基等のπ電子を有する大きな置換基を有さないため、6位にアントリル基のようなフェニル基より大きなアリール基を導入しても、合成方法が煩雑化することなく、様々な構造の多様化に容易に対応することができる。よって、高い生産性及び低コストで作製することができるため、高純度化が可能となり高品質なベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を安価で提供することが可能となる。
【0084】
一般式(G1)乃至(G4)で表されるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物の具体例としては、構造式(100)〜構造式(156)で表されるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を挙げることができる。但し、本発明はこれらに限定されない。
【0085】
【化27】
【0086】
【化28】
【0087】
【化29】
【0088】
【化30】
【0089】
【化31】
【0090】
【化32】
【0091】
【化33】
【0092】
【化34】
【0093】
【化35】
【0094】
【化36】
【0095】
なお、特に本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物において、アントリル基が2位で置換した構造であると、該材料を用いた発光素子を長寿命化できるために好ましい。
【0096】
本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物の合成方法としては種々の反応を適用することができる。例えば、下記の合成スキーム(A−1)〜(A−5)に示す合成反応を行うことによって、一般式(G1)および(G2)で表される本発明の一態様のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を合成することができる。なお、本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物の合成方法は、以下の合成方法に限定されない。
【0097】
<一般式(G1)で表されるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物の合成方法1>
【0098】
【化37】
【0099】
まず、ハロゲン基を有するβ−ナフトール誘導体(a3)は合成スキーム(A−1)のようにして合成することができる。すなわち、β−ナフトール誘導体のハロゲン化合物もしくはトリフラート基を持つ化合物(a1)と、ハロゲン基を有するアリール誘導体の有機ホウ素化合物又はボロン酸(a2)とを、パラジウム触媒を用いた鈴木・宮浦反応によりカップリングすることで、ハロゲン基を有するβ−ナフトール誘導体(a3)を得ることができる。
【0100】
合成スキーム(A−1)において、R1乃至R9はそれぞれ独立に水素、又は炭素数1から4のアルキル基のいずれかを表す。R10乃至R11は水素、又は炭素数1から6のアルキル基のいずれかを表し、R10乃至R11は同じであっても異なっていても良く、互いに結合して環を形成していても良い。また、X1はハロゲン、又は、トリフラート基を表し、X1がハロゲンの場合は特に臭素、ヨウ素が好ましい。また、X2はハロゲンを表し、フッ素、塩素、ヨウ素、臭素が好ましく、より好ましくはフッ素である。
【0101】
合成スキーム(A−1)において、用いることができるパラジウム触媒としては、酢酸パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等が挙げられる。また、合成スキーム(A−1)において、用いることができるパラジウム触媒の配位子としては、トリ(オルト−トリル)ホスフィンや、トリフェニルホスフィンや、トリシクロヘキシルホスフィン等が挙げられる。また、用いることができる塩基としては、ナトリウム tert−ブトキシド等の有機塩基や、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基等が挙げられる。また、用いることができる溶媒としては、トルエン、キシレン、エタノール等のアルコール、トルエンとエタノール等のアルコールとの混合溶媒、キシレンとエタノール等のアルコールとの混合溶媒、トルエンと水の混合溶媒、トルエンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、キシレンと水の混合溶媒、キシレンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、ベンゼンと水の混合溶媒、ベンゼンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類と水の混合溶媒などが挙げられる。また、トルエンと水、又はトルエンとエタノールと水の混合溶媒がより好ましい。
【0102】
また、このカップリングにおいてβ−ナフトール誘導体のX1に変えてホウ素が結合した有機ホウ素化合物、又はボロン酸と、アリール誘導体のホウ素が結合している炭素がハロゲン化されたジハロゲン化合物との組み合わせを、鈴木・宮浦反応によりカップリングさせてもよい。また、このカップリングにおいてβ−ナフトール誘導体のX1に変えてホウ素が結合した有機ホウ素化合物、又はボロン酸と、アリール誘導体のホウ素が結合している炭素がトリフラート基を有する化合物との組み合わせを、鈴木・宮浦反応によりカップリングさせてもよい。
【0103】
【化38】
【0104】
次に、ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物(a4)は合成スキーム(A−2)のようにして合成することができる。すなわちβ−ナフトール誘導体(a3)をWilliamsonエーテル合成によりエーテル結合を作ることで分子内環化し、ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン環を形成させ、ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物(a4)を得ることができる。
【0105】
合成スキーム(A−2)において、用いることができる塩基としては、水素化ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基等が挙げられるが、これらに限られるものではない。また、ヨウ化ナトリウム等の塩を加えても良い。また、用いることができる溶媒としては、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−ピロリドン(NMP)などの非プロトン性極性溶媒や、シクロヘキサノンや2−ブタノン、アセトンなどのケトン類を用いることができるが、これらに限られるものでは無い。
【0106】
【化39】
【0107】
次に、ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物のボロン酸、又は有機ホウ素化合物(a5)は合成スキーム(A−3)のようにして合成することができる。すなわち、ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物(a4)をアルキルリチウム試薬とホウ素試薬を用いてボロン酸化、又は、有機ホウ素化することにより、ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物のボロン酸(a5)を得ることが出来、化合物(a5)がボロン酸の場合、R12乃至R13は水素を表す。また、化合物(a5)のボロン酸は、エチレングリコール等により保護されていても良く、この場合、化合物(a5)におけるR12乃至R13は炭素数1から6のアルキル基を表す。また、化合物(a5)が有機ホウ素化合物の場合、R12乃至R13は同じであっても異なっていても良く、互いに結合して環を形成していても良い。
【0108】
合成スキーム(A−3)において、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒を用いることができる。ただし、用いることができる溶媒はこれらに限られるものでは無い。また、アルキルリチウム試薬は、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム等が挙げられるが、これに限られるものではない。また、これらのアルキルリチウム試薬に配位性の添加剤を加えることで、反応性を向上させることができる。用いることができる配位性添加剤としては、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)などが挙げられるが、これに限られるものではない。また、ホウ素試薬としてはホウ酸トリメチルや、ホウ酸トリイソプロピルなどが挙げられるが、用いることができるホウ素試薬はこれに限られるものではない。
【0109】
【化40】
【0110】
次に、本発明の一態様のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物(G1)は、合成スキーム(A−4)のようにして合成することができる。すなわち、アントラセン誘導体のハロゲン化合物もしくはトリフラート基を持つ化合物(a6)と、ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物のボロン酸、又は有機ホウ素化合物(a5)とを、パラジウム触媒を用いた鈴木・宮浦反応によりカップリングすることで、本発明の一態様のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物(G1)を得ることができる。
【0111】
合成スキーム(A−4)において、Anは下記一般式に示した(An−1)および(An−2)で表される、置換もしくは無置換のアントラセニル基のいずれかを示す。また、R14乃至R31はそれぞれ独立に水素又は炭素数1から6のアルキル基、炭素数6から13の置換又は無置換のアリール基のいずれかを表す。
【0112】
【化41】
【0113】
また、X3はハロゲン、又は、トリフラート基を表し、X3がハロゲンの場合は特に塩素、臭素、ヨウ素が好ましい。また、α1及びα2は、それぞれ独立に、下記一般式に示した(α−1)−(α−3)で表される、置換又は無置換のフェニレン基のいずれかを示す。また、R32乃至R43はそれぞれ独立に水素、又は炭素数1から4のアルキル基のいずれかを表す。また、n又はmは、0又は1である。
【0114】
【化42】
【0115】
合成スキーム(A−4)において用いることができるパラジウム触媒としては、酢酸パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等が挙げられる。また、合成スキーム(A−4)において、用いることができるパラジウム触媒の配位子としては、トリ(オルト−トリル)ホスフィンや、トリフェニルホスフィンや、トリシクロヘキシルホスフィン等が挙げられる。また、用いることができる塩基としては、ナトリウム tert−ブトキシド等の有機塩基や、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基等が挙げられる。また、用いることができる溶媒としては、トルエン、キシレン、エタノール等のアルコール、トルエンとエタノール等のアルコールとの混合溶媒、キシレンとエタノール等のアルコールとの混合溶媒、トルエンと水の混合溶媒、トルエンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、キシレンと水の混合溶媒、キシレンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、ベンゼンと水の混合溶媒、ベンゼンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類と水の混合溶媒などが挙げられる。また、トルエンと水、又はトルエンとエタノールと水の混合溶媒がより好ましい。
【0116】
また、このカップリングにおいてアントラセン化合物のX3に変えてホウ素が結合した有機ホウ素化合物、又はボロン酸と、ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物のホウ素が結合している炭素がハロゲン化されたハロゲン化合物との組み合わせを、鈴木・宮浦反応によりカップリングさせてもよい。また、このカップリングにおいてアントラセン化合物のX3に変えてホウ素が結合した有機ホウ素化合物、又はボロン酸と、ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物のホウ素が結合している炭素がトリフラート基を有する化合物との組み合わせを、鈴木・宮浦反応によりカップリングさせてもよい。
【0117】
<一般式(G1)で表されるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物の合成方法2>
【0118】
【化43】
【0119】
本発明の一態様のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物(G1)は、合成スキーム(A−5)のようにしても合成することができる。すなわち、アントラセン誘導体のハロゲン化合物もしくはトリフラート基を持つ化合物(a7)と、ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物のボロン酸、又は有機ホウ素化合物(a8)とを、パラジウム触媒を用いた鈴木・宮浦反応によりカップリングすることでも、本発明の一態様のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物(G1)を得ることができる。
【0120】
合成スキーム(A−5)において、R44乃至R45は水素、又は炭素数1から6のアルキル基のいずれかを表し、R44乃至R45は同じであっても異なっていても良く、互いに結合して環を形成していても良い。また、X4はハロゲン、又は、トリフラート基を表し、X4がハロゲンの場合は特に塩素、臭素、ヨウ素が好ましい。
【0121】
合成スキーム(A−5)において、用いることができるパラジウム触媒としては、酢酸パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等が挙げられる。また、合成スキーム(A−5)において用いることができるパラジウム触媒の配位子としては、トリ(オルト−トリル)ホスフィンや、トリフェニルホスフィンや、トリシクロヘキシルホスフィン等が挙げられる。また、用いることができる塩基としては、ナトリウム tert−ブトキシド等の有機塩基や、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基等が挙げられる。また、用いることができる溶媒としては、トルエン、キシレン、エタノール等のアルコール、トルエンとエタノール等のアルコールとの混合溶媒、キシレンとエタノール等のアルコールとの混合溶媒、トルエンと水の混合溶媒、トルエンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、キシレンと水の混合溶媒、キシレンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、ベンゼンと水の混合溶媒、ベンゼンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類と水の混合溶媒などが挙げられる。また、トルエンと水、又はトルエンとエタノールと水の混合溶媒がより好ましい。
【0122】
また、このカップリングにおいてアントラセン化合物のX4に変えてホウ素が結合した有機ホウ素化合物、又はボロン酸と、ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物のホウ素が結合している炭素がハロゲン化されたハロゲン化合物との組み合わせを、鈴木・宮浦反応によりカップリングさせてもよい。また、このカップリングにおいてアントラセン化合物のX4に変えてホウ素が結合した有機ホウ素化合物、又はボロン酸と、ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物のホウ素が結合している炭素がトリフラート基を有する化合物との組み合わせを、鈴木・宮浦反応によりカップリングさせてもよい。
【0123】
<一般式(a11)で表されるβ−ナフトール化合物の合成方法>
【0124】
【化44】
【0125】
合成スキーム(A−1)における、β−ナフトール誘導体のハロゲン化合物もしくはトリフラート基を持つ化合物(a1)の代わりに、アルコキシド基を持つナフタレン誘導体のハロゲン化合物もしくはトリフラート基を持つ化合物(a9)を用いることで、(a1)におけるヒドロキシル基の保護をすることができ、β−ナフトール誘導体のハロゲン化合物もしくはトリフラート基を持つ化合物(a3)への置換基の導入をより容易にすることが出来る。
【0126】
アルコキシド基を持つナフタレン誘導体のハロゲン化合物もしくはトリフラート基を持つ化合物(a10)は、合成スキーム(A−6)のようにして合成することができる。すなわち、アルコキシド基を持つナフタレン誘導体のハロゲン化合物もしくはトリフラート基を持つ化合物(a9)と、ハロゲン基を有するアリール誘導体の有機ホウ素化合物又はボロン酸(a2)とを、パラジウム触媒を用いた鈴木・宮浦反応によりカップリングすることで、ナフタレン誘導体のアルコキシド化合物(a10)を得ることができる。
【0127】
合成スキーム(A−6)において、R46は炭素数1から6のアルキル基を示す。また、R47乃至R51はそれぞれ独立に水素、又は炭素数1から4のアルキル基のいずれかを表す。また、X5はハロゲン、又は、トリフラート基を表し、X5がハロゲンの場合は特に塩素、臭素、ヨウ素が好ましい。
【0128】
合成スキーム(A−6)において、用いることができるパラジウム触媒としては、酢酸パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等が挙げられる。また、合成スキーム(A−6)において、用いることができるパラジウム触媒の配位子としては、トリ(オルト−トリル)ホスフィンや、トリフェニルホスフィンや、トリシクロヘキシルホスフィン等が挙げられる。また、用いることができる塩基としては、ナトリウム tert−ブトキシド等の有機塩基や、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基等が挙げられる。また、用いることができる溶媒としては、トルエン、キシレン、エタノール等のアルコール、トルエンとエタノール等のアルコールとの混合溶媒、キシレンとエタノール等のアルコールとの混合溶媒、トルエンと水の混合溶媒、トルエンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、キシレンと水の混合溶媒、キシレンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、ベンゼンと水の混合溶媒、ベンゼンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類と水の混合溶媒などが挙げられる。また、トルエンと水、又はトルエンとエタノールと水の混合溶媒がより好ましい。
【0129】
また、このカップリングにおいてナフタレン誘導体のアルコキシド化合物のX5に変えてホウ素が結合した有機ホウ素化合物、又はボロン酸と、アリール誘導体のホウ素が結合している炭素がハロゲン化されたハロゲン化合物との組み合わせを、鈴木・宮浦反応によりカップリングさせてもよい。また、このカップリングにおいてナフタレン誘導体のアルコキシド化合物のX5に変えてホウ素が結合した有機ホウ素化合物、又はボロン酸と、アリール誘導体のホウ素が結合している炭素がトリフラート基を有する化合物との組み合わせを、鈴木・宮浦反応によりカップリングさせてもよい。
【0130】
【化45】
【0131】
次に、アルコキシド基を持つナフタレン化合物(a10)の脱保護の方法を説明する。ハロゲン基を有するβ−ナフトール誘導体(a11)は、合成スキーム(A−7)のようにして合成することができる。すなわち、アルコキシド基を持つナフタレン誘導体のハロゲン化合物もしくはトリフラート基を持つ化合物(a10)を、ルイス酸により脱保護することで、ハロゲン基を有するβ−ナフトール誘導体(a11)を得ることができる。
【0132】
合成スキーム(A−7)において、用いることができるルイス酸としては、R46がメチル基の場合、三臭化ホウ素、トリメチルヨードシラン等が好ましい。またR46がtert−ブチル基の場合、トリフルオロ酢酸、4mol/L塩酸・酢酸エチル溶液等が好ましい。また、用いることができる溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン系溶媒や、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒が挙げられるが、これに限られるものではない。
【0133】
以上によって、本実施の形態のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を合成することができる。
【0134】
本実施の形態におけるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物はバンドギャップが非常に大きいことから青色の発光を色純度良く得ることが可能である。また、本実施の形態におけるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は、ホール輸送性及び電子輸送性を有するバイポーラ材料である。また、本実施の形態におけるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は電気化学的安定性及び熱的安定性の高いベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物である。
【0135】
本実施の形態におけるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は、単独で発光中心材料として発光物質を含む層(発光層)に用いることのできる他、ホスト材料として用いることもでき、本実施の形態におけるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物に発光物質となるドーパント材料を分散させた構成とすることで、発光物質となるドーパント材料からの発光を得ることができる。本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物をホスト材料として用いる場合は、450nm〜700nmあたりに発光極大を有するドーパントから効率よく発光を得ることができる。本発明の一態様であるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は、短波長の青色の発光も色純度良く得ることが可能となる。
【0136】
また、本実施の形態におけるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物よりも大きなバンドギャップを有する材料(ホスト)に、本実施の形態におけるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を分散させてなる層を発光物質を含む層に用いることができ、本実施の形態におけるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物からの発光を得ることができる。すなわち、本実施の形態におけるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物はドーパント材料としても機能する。このとき、本実施の形態におけるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は非常に大きなバンドギャップを有し、短波長に発光を示すため、色純度の良い青色の発光を得ることができる発光素子を作製することが可能である。
【0137】
本実施の形態におけるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は、キャリア輸送材料として発光素子の機能層に用いることができる。例えば、キャリア輸送層である正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、又は電子注入層として用いることができる。したがって、本実施の形態におけるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を、発光素子に用いることにより、キャリアバランスのよい低電圧駆動が可能な発光素子を得ることができる。
【0138】
また、本実施の形態におけるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を含む発光素子は、劣化しにくく長寿命な発光素子であり、信頼性が高い。
【0139】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
【0140】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様として、実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を用いた発光素子について図1を用いて説明する。
【0141】
本実施の形態の発光素子は、一対の電極間に、少なくとも発光層を有するEL層を挟持して形成される。EL層は、発光層の他に複数の層を有してもよい。当該複数の層は、電極から離れたところに発光領域が形成されるように、つまり電極から離れた部位でキャリアの再結合が行われるように、キャリア注入性の高い物質やキャリア輸送性の高い物質からなる層を組み合わせて積層されたものである。当該複数の層としては、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層など有していても良い。
【0142】
図1(A)に示す本実施の形態の発光素子において、第1の電極101及び第2の電極103の一対の電極間に、EL層102が設けられている。また、EL層102は、正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115を有している。なお、本実施の形態に示す発光素子において、第1の電極101は陽極として機能し、第2の電極103は陰極として機能する。
【0143】
基板100は発光素子の支持体として用いられる。基板100としては、例えばガラス、石英、又はプラスチックなどを用いることができる。また可撓性基板を用いてもよい。可撓性基板とは、曲げることができる(フレキシブル)基板のことであり、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォンからなるプラスチック基板等が挙げられる。また、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、ポリ塩化ビニル等からなるフィルム、又は無機蒸着フィルムなどを用いることもできる。なお、発光素子の作製工程において支持体として機能するものであれば、これら以外のものでもよい。
【0144】
第1の電極101としては、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、導電性化合物、及びこれらの混合物などを用いることが好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム−酸化スズ、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム等が挙げられる。これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタにより成膜されるが、ゾル−ゲル法などを応用して作製しても構わない。例えば、酸化インジウム−酸化亜鉛は、酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウムは、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。この他、金、白金、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、パラジウム、又は金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)、グラフェン等が挙げられる。
【0145】
但し、EL層102のうち、第1の電極101に接して形成される層が、後述する有機化合物と電子受容体(アクセプター)とを混合してなる複合材料を用いて形成される場合には、第1の電極101に用いる物質は、仕事関数の大小に関わらず、様々な金属、合金、導電性化合物、及びこれらの混合物などを用いることができる。例えば、アルミニウム、銀、アルミニウムを含む合金(例えば、Al−Si)等も用いることもできる。
【0146】
第1の電極101上に形成されるEL層102において、少なくとも発光層113は、本発明の一態様のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を含んで形成される。また、本発明の一態様のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は、バイポーラ性を有する材料であるから、EL層102のキャリア輸送層(正孔輸送層、電子輸送層など)の材料として用いることも可能である。また、EL層102の一部には公知の物質を用いることもでき、低分子系化合物及び高分子系化合物のいずれを用いることもできる。なお、EL層102を形成する物質には、有機化合物のみから成るものだけでなく、無機化合物を一部に含む構成も含めるものとする。
【0147】
正孔注入層111は、正孔注入性の高い物質を含む層である。正孔注入性の高い物質としては、例えば、モリブデン酸化物、チタン酸化物、バナジウム酸化物、レニウム酸化物、ルテニウム酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物、銀酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等の金属酸化物を用いることができる。また、フタロシアニン(略称:H2Pc)、銅(II)フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の化合物を用いることができる。
【0148】
また、低分子の有機化合物である4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’−ビス(N−{4−[N’−(3−メチルフェニル)−N’−フェニルアミノ]フェニル}−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等の芳香族アミン化合物等を用いることができる。
【0149】
さらに、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を用いることもできる。例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)などの高分子化合物が挙げられる。また、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリ(スチレンスルホン酸)(PAni/PSS)等の酸を添加した高分子化合物を用いることができる。
【0150】
また、正孔注入層111として、有機化合物と電子受容体(アクセプター)とを混合してなる複合材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子受容体によって有機化合物に正孔が発生するため、正孔注入性及び正孔輸送性に優れている。この場合、有機化合物は、発生した正孔の輸送に優れた材料(正孔輸送性の高い物質)であることが好ましい。
【0151】
複合材料に用いる有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合物を用いることができる。なお、複合材料に用いる有機化合物としては、正孔輸送性の高い有機化合物であることが好ましい。具体的には、10−6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。また、実施の形態1で示したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を用いることもできる。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。以下では、複合材料に用いることのできる有機化合物を具体的に列挙する。
【0152】
本発明の一態様のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は、正孔輸送性の高い有機化合物であるため、複合材料に好適に用いることができる。そのほか、複合材料に用いることのできる有機化合物としては、例えば、TDATA、MTDATA、DPAB、DNTPD、DPA3B、PCzPCA1、PCzPCA2、PCzPCN1、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)等の芳香族アミン化合物や、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)、1,4−ビス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−2,3,5,6−テトラフェニルベンゼン等のカルバゾール誘導体を用いることができる。
【0153】
また、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2−tert−ブチル−9,10−ビス(4−フェニルフェニル)アントラセン(略称:t−BuDBA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuAnth)、9,10−ビス(4−メチル−1−ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]−2−tert−ブチルアントラセン、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン、9,9’−ビアントリル、10,10’−ジフェニル−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス(2−フェニルフェニル)−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス[(2,3,4,5,6−ペンタフェニル)フェニル]−9,9’−ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン、ペンタセン、コロネン、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等の芳香族炭化水素化合物を用いることができる。
【0154】
また、複合材料に用いる電子受容体としては、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F4−TCNQ)、クロラニル等の有機化合物や、遷移金属酸化物を挙げることができる。また、元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0155】
なお、上述したPVK、PVTPA、PTPDMA、Poly−TPD等の高分子化合物と、上述した電子受容体を用いて複合材料を形成し、正孔注入層111に用いてもよい。
【0156】
正孔輸送層112は、正孔輸送性の高い物質を含む層である。正孔輸送性の高い物質としては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)やN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物等を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。また、実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を用いることもできる。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0157】
また、正孔輸送層112として、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)等の高分子化合物を用いることもできる。
【0158】
発光層113は、発光物質を含む層(発光層ともいう)である。本実施の形態では、発光層113は実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を用いて形成する。実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は、青色の発光を示すため、発光物質として発光素子に好適に用いることができる。
【0159】
また、発光層113を、実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物はホストとして用いることもでき、実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物に発光物質となるドーパントを分散させた構成とすることで、発光物質となるドーパントからの発光を得ることができる。実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は、450nm〜700nmあたりに発光極大を有するドーパントから効率よく発光を得ることができる。実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物はバンドギャップが大きいため、比較的短波長な発光を有するドーパントを用いても、ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物からの発光ではなく、ドーパントからの発光が効率よく得ることができる。具体的には、450〜470nmあたりに発光極大を有する発光材料が優れた青色の色純度を示すが、このような材料をドーパントとして用いても、色純度の良い青色の発光を得ることが可能な発光素子を得ることが可能である。
【0160】
実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を他の発光物質を分散させる材料として用いる場合、発光物質に起因した発光色を得ることができる。また、実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物に起因した発光色と、ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物中に分散されている発光物質に起因した発光色との混色の発光色を得ることもできる。
【0161】
また、実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を、実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物よりも大きなバンドギャップを有する材料(ホスト)よりなる層中に添加した発光素子を作製することで、実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物からの発光を得ることができる。すなわち、実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物はドーパントとしても機能する。このとき、実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は非常に大きなバンドギャップを有し、短波長に発光を示すため、色純度の良い青色の発光を得ることができる発光素子を作製することが可能である。
【0162】
ここで、実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物に分散させる発光物質としては、種々の材料を用いることができる。具体的には、蛍光性化合物としては、例えば、青色系の発光材料として、N,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA2S)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)などが挙げられる。また、緑色系の発光材料として、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCABPhA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)]−N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアントラセン−2−アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9−トリフェニルアントラセン−9−アミン(略称:DPhAPhA)などが挙げられる。また、黄色系の発光材料として、ルブレン、5,12−ビス(1,1’−ビフェニル−4−イル)−6,11−ジフェニルテトラセン(略称:BPT)などが挙げられる。また、赤色系の発光材料として、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)テトラセン−5,11−ジアミン(略称:p−mPhTD)、7,14−ジフェニル−N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)アセナフト[1,2−a]フルオランテン−3,10−ジアミン(略称:p−mPhAFD)などが挙げられる。
【0163】
また、実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物に分散させる発光物質において、燐光性化合物としては、例えば、赤色系の発光材料として、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナト−N,C3’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(btp)2(acac))、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)2(acac))、(ジピバロイルメタナト)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)2(dpm))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)等の有機金属錯体が挙げられる。また、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:Tb(acac)3(Phen))、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(DBM)3(Phen))、トリス[1−(2−テノイル)−3,3,3−トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)3(Phen))等の希土類金属錯体は、希土類金属イオンからの発光(異なる多重度間の電子遷移)であるため、燐光性化合物として用いることができる。
【0164】
また、発光物質として高分子化合物を用いることができる。具体的には、青色系の発光材料として、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)(略称:PFO)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(2,5−ジメトキシベンゼン−1,4−ジイル)](略称:PF−DMOP)、ポリ{(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−[N,N’−ジ−(p−ブチルフェニル)−1,4−ジアミノベンゼン]}(略称:TAB−PFH)などが挙げられる。また、緑色系の発光材料として、ポリ(p−フェニレンビニレン)(略称:PPV)、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−alt−co−(ベンゾ[2,1,3]チアジアゾール−4,7−ジイル)](略称:PFBT)、ポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニレン)−alt−co−(2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシロキシ)−1,4−フェニレン)]などが挙げられる。また、橙色〜赤色系の発光材料として、ポリ[2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキソキシ)−1,4−フェニレンビニレン](略称:MEH−PPV)、ポリ(3−ブチルチオフェン−2,5−ジイル)(略称:R4−PAT)、ポリ{[9,9−ジヘキシル−2,7−ビス(1−シアノビニレン)フルオレニレン]−alt−co−[2,5−ビス(N,N’−ジフェニルアミノ)−1,4−フェニレン]}、ポリ{[2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシロキシ)−1,4−ビス(1−シアノビニレンフェニレン)]−alt−co−[2,5−ビス(N,N’−ジフェニルアミノ)−1,4−フェニレン]}(略称:CN−PPV−DPD)などが挙げられる。
【0165】
また、発光層113のホスト材料は複数種用いることができる。例えば、実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物に加えて、結晶化を抑制するためにルブレン等の結晶化を抑制する物質をさらに添加してもよい。また、ゲスト材料へのエネルギー移動をより効率良く行うためにNPB、あるいはAlq等をさらに添加してもよい。
【0166】
ゲスト材料をホスト材料に分散させた構成とすることにより、発光層113の結晶化を抑制することができる。また、ゲスト材料の濃度が高いことによる濃度消光を抑制することができる。
【0167】
なお、発光層113は、2層以上を積層させた構成としてもよい。その場合、少なくとも1層に本発明の一態様のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を含む構成とすればよい。なお、発光層113を2層以上の積層構造とする場合、各層の発光色は同じであってもよいし、異なる発光色を呈する層を積層させてもよい。また、発光物質として蛍光性化合物を含む層と、蛍光物質として燐光性化合物を含む層を積層させることも可能である。
【0168】
電子輸送層114は、電子輸送性の高い物質を含む層である。電子輸送性の高い物質としては、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格又はベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等が挙げられる。また、この他ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX)2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ)2)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)なども用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質である。また、実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を用いることもできる。また、電子輸送層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0169】
電子注入層115は、電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入層115には、リチウム、セシウム、カルシウム、フッ化リチウム、フッ化セシウム、フッ化カルシウム、リチウム酸化物等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、又はそれらの化合物を用いることができる。また、フッ化エルビウムのような希土類金属化合物を用いることができる。また、上述した電子輸送層114を構成する物質を用いることもできる。
【0170】
あるいは、電子注入層115に、有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子供与体によって有機化合物に電子が発生するため、電子注入性及び電子輸送性に優れている。この場合、有機化合物としては、発生した電子の輸送に優れた材料であることが好ましく、具体的には、例えば上述した電子輸送層114を構成する物質(金属錯体や複素芳香族化合物等)を用いることができる。電子供与体としては、有機化合物に対し電子供与性を示す物質であればよい。具体的には、アルカリ金属やアルカリ土類金属や希土類金属が好ましく、リチウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、エルビウム、イッテルビウム等が挙げられる。また、アルカリ金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物が好ましく、リチウム酸化物、カルシウム酸化物、バリウム酸化物等が挙げられる。また、酸化マグネシウムのようなルイス塩基を用いることもできる。また、テトラチアフルバレン(略称:TTF)等の有機化合物を用いることもできる。
【0171】
実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物は、バンドギャップが広く、電子及び正孔の注入輸送性の高いバイポーラ材料である。よって、実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物はキャリア輸送層としても用いることができ、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、又は電子注入層として機能する。したがって、実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を用いた本実施の形態における発光素子は、キャリアバランスがよく低電圧駆動が可能である。
【0172】
また、実施の形態1で説明したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を含む本実施の形態における発光素子は、劣化しにくく長寿命な発光素子であり、信頼性が高い。
【0173】
なお、上述した正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115は、それぞれ、蒸着法(真空蒸着法を含む)、インクジェット法、塗布法等の方法で形成することができる。
【0174】
第2の電極103は、第2の電極103が陰極として機能する際は仕事関数の小さい(好ましくは3.8eV以下)金属、合金、導電性化合物、及びこれらの混合物などを用いて形成することが好ましい。具体的には、元素周期表の第1族又は第2族に属する元素、すなわちリチウムやセシウム等のアルカリ金属、及びマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム等のアルカリ土類金属、及びこれらを含む合金(例えば、Mg−Ag、Al−Li)、ユーロピウム、イッテルビウム等の希土類金属及びこれらを含む合金の他、アルミニウムや銀などを用いることができる。
【0175】
但し、EL層102のうち、第2の電極103に接して形成される層が、上述する有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合材料を用いる場合には、仕事関数の大小に関わらず、アルミニウム、銀、酸化インジウム−酸化スズ、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、グラフェン等様々な導電性材料を用いることができる。
【0176】
なお、第2の電極103を形成する場合には、真空蒸着法やスパッタリング法を用いることができる。また、銀ペーストなどを用いる場合には、塗布法やインクジェット法などを用いることができる。
【0177】
上述した発光素子は、第1の電極101と第2の電極103との間に生じた電位差により電流が流れ、EL層102において正孔と電子とが再結合することにより発光する。そして、この発光は、第1の電極101又は第2の電極103のいずれか一方又は両方を通って外部に取り出される。従って、第1の電極101又は第2の電極103のいずれか一方、又は両方が可視光に対する透光性を有する電極となる。
【0178】
なお、第1の電極101と第2の電極103との間に設けられる層の構成は、上記のものに限定されない。発光領域と金属とが近接することによって生じる消光を防ぐように、第1の電極101及び第2の電極103から離れた部位に正孔と電子とが再結合する発光領域を設けた構成であれば上記以外のものでもよい。
【0179】
つまり、層の積層構造については特に限定されず、電子輸送性の高い物質、正孔輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、正孔注入性の高い物質、バイポーラ性の物質(電子及び正孔の輸送性の高い物質)、又は正孔ブロック材料等から成る層を、発光層と自由に組み合わせて構成すればよい。
【0180】
図1(B)に示す発光素子は、基板100上において、第1の電極101及び第2の電極103の一対の電極間に、EL層102が設けられている。EL層102は、正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115を有している。図1(B)における発光素子は、基板100上に、陰極として機能する第2の電極103と、第2の電極103上に順に積層した電子注入層115、電子輸送層114、発光層113、正孔輸送層112、正孔注入層111と、さらにその上に設けられた陽極として機能する第1の電極101から構成されている。
【0181】
以下、具体的な発光素子の形成方法を示す。
【0182】
本実施の形態の発光素子は一対の電極間にEL層が挟持される構造となっている。電極(第1の電極及び第2の電極)、及びEL層は液滴吐出法(インクジェット法)、スピンコート法、印刷法などの湿式法を用いて形成してもよく、真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法などの乾式法を用いて形成してもよい。湿式法を用いれば、大気圧下で形成することができるため、簡易な装置及び工程で形成することができ、工程が簡略化し、生産性が向上するという効果がある。一方乾式法は、材料を溶解させる必要がないために溶液に難溶の材料も用いることができ、材料の選択の幅が広い。
【0183】
発光素子を構成する薄膜のすべての形成を湿式法で行ってもよい。この場合、湿式法で必要な設備のみで発光素子を作製することができる。また、発光層を形成するまでの積層を湿式法で行い、発光層上に積層する機能層や第1の電極などを乾式法により形成してもよい。さらに、発光層を形成する前の第2の電極や機能層を乾式法により形成し、発光層、及び発光層上に積層する機能層や第1の電極を湿式法によって形成してもよい。もちろん、本実施の形態はこれに限定されず、用いる材料や必要とされる膜厚、界面状態によって適宜湿式法と乾式法を選択し、組み合わせて発光素子を作製することができる。
【0184】
以上のように、本発明の一態様のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を用いて発光素子を作製することができる。
【0185】
なお、本実施の形態で示した発光素子を用いて、パッシブマトリクス型の発光装置や、トランジスタによって発光素子の駆動が制御されたアクティブマトリクス型の発光装置を作製することができる。
【0186】
本実施の形態で示した発光素子を含む発光装置は、色再現性の高い発光装置であり、また、表示品質の高い発光装置である。また、本実施の形態で示した発光素子を含む発光装置は、信頼性の高い発光装置である。また、本実施の形態で示した発光素子を含む発光装置は、低消費電力な発光装置である。
【0187】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
【0188】
(実施の形態3)
本実施の形態は複数の発光ユニットを積層した構成の発光素子(以下、積層型素子という)の態様について、図2を参照して説明する。この発光素子は、第1の電極と第2の電極との間に複数の発光ユニットを有する発光素子である。
【0189】
図2(A)において、第1の電極301と第2の電極303との間には、第1の発光ユニット311と第2の発光ユニット312が積層されている。本実施の形態において、第1の電極301は陽極として機能する電極であり、第2の電極303は陰極として機能する電極である。第1の電極301と第2の電極303は実施の形態2と同様なものを適用することができる。また、第1の発光ユニット311と第2の発光ユニット312は同じ構成であっても異なる構成であっても良い。また、第1の発光ユニット311と、第2の発光ユニット312は、その構成として、実施の形態2の発光層113と同様なものを適用しても良いし、いずれかが異なる構成であっても良い。
【0190】
また、第1の発光ユニット311と第2の発光ユニット312の間には、電荷発生層313が設けられている。電荷発生層313は、第1の電極301と第2の電極303に電圧を印加したときに、一方の発光ユニットに電子を注入し、他方の発光ユニットに正孔を注入する機能を有する。本実施の形態の場合には、第1の電極301に第2の電極303よりも電位が高くなるように電圧を印加すると、電荷発生層313から第1の発光ユニット311に電子が注入され、第2の発光ユニット312に正孔が注入される。
【0191】
なお、電荷発生層313は、光の取り出し効率の点から、可視光に対する透光性を有することが好ましい。また、電荷発生層313は、第1の電極301や第2の電極303よりも低い導電率であっても機能する。
【0192】
電荷発生層313は、正孔輸送性の高い有機化合物と電子受容体(アクセプター)とを含む構成であっても、電子輸送性の高い有機化合物と電子供与体(ドナー)とを含む構成であってもよい。また、これらの両方の構成が積層されていても良い。なお、電子受容体や電子供与体は、少なくとも電界のアシストにより電子を授受するものであればよい。
【0193】
正孔輸送性の高い有機化合物に電子受容体が添加された構成とする場合において、正孔輸送性の高い有機化合物としては、本発明の一態様のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を用いることができる。そのほか、例えば、NPBやTPD、TDATA、MTDATA、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物等を用いることができる。
【0194】
また、電子受容体としては、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F4−TCNQ)、クロラニル等を挙げることができる。また、遷移金属酸化物を挙げることができる。また元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため、好ましい。
【0195】
一方、電子輸送性の高い有機化合物に電子供与体が添加された構成とする場合において、電子輸送性の高い有機化合物としては、例えば、Alq、Almq3、BeBq2、BAlqなど、キノリン骨格又はベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等を用いることができる。また、Zn(BOX)2、Zn(BTZ)2などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、PBDやOXD−7、TAZ、BPhen、BCPなども用いることができる。また、本発明の一態様のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を用いてもよい。
【0196】
また、電子供与体としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、又は元素周期表における第13族に属する金属及びその酸化物、炭酸塩などを用いることができる。具体的には、リチウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、イッテルビウム、インジウム、酸化リチウム、炭酸セシウムなどを用いることが好ましい。また、テトラチアナフタセンのような有機化合物を電子供与体として用いてもよい。
【0197】
なお、上述した材料を用いて電荷発生層313を形成することにより、EL層が積層された場合における駆動電圧の上昇を抑制することができる。
【0198】
本実施の形態では、2つの発光ユニットを有する発光素子について説明したが、同様に、図2(B)に示すように、3つ以上の発光ユニットを積層した発光素子も適用することが可能である。本実施の形態に係る発光素子のように、一対の電極間に複数の発光ユニットを電荷発生層で仕切って配置することで、電流密度を低く保ったまま、高輝度で発光する長寿命素子を実現できる。
【0199】
また、それぞれの発光ユニットの発光色を異なるものにすることで、発光素子全体として、所望の色の発光を得ることができる。例えば、2つの発光ユニットを有する発光素子において、第1の発光ユニットの発光色と第2の発光ユニットの発光色を補色の関係になるようにすることで、発光素子全体として白色発光する発光素子を得ることも可能である。なお、補色とは、混合すると無彩色になる色同士の関係をいう。補色の関係としては、青色と黄色、あるいは青緑色と赤色などが挙げられる。また、3つの発光ユニットを有する発光素子の場合、例えば、第1の発光ユニットの発光色が赤色であり、第2の発光ユニットの発光色が緑色であり、第3の発光ユニットの発光色が青色である場合、発光素子全体としては、白色発光を得ることができる。
【0200】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【0201】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光装置について図3を用いて説明する。なお、図3(A)は、発光装置を示す上面図、図3(B)は図3(A)をA−B及びC−Dで切断した断面図である。
【0202】
図3(A)において、点線で示された401は駆動回路部(ソース側駆動回路)、402は画素部、403は駆動回路部(ゲート側駆動回路)である。また、404は封止基板、405はシール材であり、シール材405で囲まれた内側は、空間になっている。
【0203】
なお、引き回し配線408はソース側駆動回路401及びゲート側駆動回路403に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)409からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPC又はPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0204】
次に、断面構造について図3(B)を用いて説明する。素子基板410上には駆動回路部及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース側駆動回路401と、画素部402中の一つの画素が示されている。
【0205】
なお、ソース側駆動回路401はnチャネル型TFT423とpチャネル型TFT424とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路は、TFTで形成される種々のCMOS回路、PMOS回路又はNMOS回路で形成しても良い。また、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバ一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、駆動回路を基板上ではなく外部に形成することもできる。
【0206】
また、画素部402はスイッチング用TFT411と、電流制御用TFT412とそのドレインに電気的に接続された第1の電極413とを含む複数の画素により形成される。なお、第1の電極413の端部を覆って絶縁物414が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂膜を用いることにより形成する。
【0207】
また、被覆性を良好なものとするため、絶縁物414の上端部又は下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物414の材料としてポジ型の感光性アクリルを用いた場合、絶縁物414の上端部のみに曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物414として、光の照射によってエッチャントに不溶解性となるネガ型、或いは光の照射によってエッチャントに溶解性となるポジ型のいずれも使用することができる。
【0208】
第1の電極413上には、EL層416及び第2の電極417がそれぞれ形成されている。第1の電極413、EL層416及び第2の電極417の材料としては、実施の形態2で示した材料をそれぞれ適用することが可能である。なお、EL層416は少なくとも発光層を含み、当該発光層は、実施の形態1で示したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を含む。本実施の形態においては、第1の電極413が陽極として機能し、第2の電極417が陰極として機能する。また、EL層がキャリア輸送層を含む場合、該キャリア輸送層(正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、又は電子注入層)に実施の形態1で示したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を用いることができる。
【0209】
さらにシール材405で封止基板404を素子基板410と貼り合わせることにより、素子基板410、封止基板404、及びシール材405で囲まれた空間407に発光素子418が備えられた構造になっている。なお、空間407には、充填材が充填されており、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材405で充填される場合もある。
【0210】
なお、シール材405にはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板404に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステル又はアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0211】
以上のようにして、本発明の一態様の発光素子を有するアクティブマトリクス型の発光装置を得ることができる。
【0212】
また、本発明の発光素子は、上述したアクティブマトリクス型の発光装置のみならずパッシブマトリクス型の発光装置に用いることもできる。図4に本発明の一態様の発光素子を用いたパッシブマトリクス型の発光装置の斜視図及び断面図を示す。なお、図4(A)は、発光装置を示す斜視図、図4(B)は図4(A)をX−Yで切断した断面図である。
【0213】
図4において、基板501上の第1の電極502と第2の電極503との間にはEL層504が設けられている。第1の電極502の端部は絶縁層505で覆われている。そして、絶縁層505上には隔壁層506が設けられている。隔壁層506の側壁は、基板面に近くなるに伴って、一方の側壁と他方の側壁との間隔が狭くなるような傾斜を有する。つまり、隔壁層506の短辺方向の断面は、台形状であり、底辺(絶縁層505の面方向と同様の方向を向き、絶縁層505と接する辺)の方が上辺(絶縁層505の面方向と同様の方向を向き、絶縁層505と接しない辺)よりも短い。このように、隔壁層506を設けることで、クロストーク等に起因した発光素子の不良を防ぐことができる。
【0214】
以上により、本発明の一態様の発光素子を有するパッシブマトリクス型の発光装置を得ることができる。
【0215】
なお、本実施の形態で示した発光装置(アクティブマトリクス型、パッシブマトリクス型)は、いずれも本発明の一態様の発光素子を用いて形成される。
【0216】
また、本実施の形態で示した発光装置は、色再現性の高い発光装置であり、また、表示品質の高い発光装置である。また、本実施の形態で示した発光装置は、信頼性の高い発光装置である。また、本実施の形態で示した発光装置は、低消費電力な発光装置である。
【0217】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【0218】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明を適用した一態様である発光装置を用いて完成させた様々な電子機器および照明器具の一例について、図5乃至図7を用いて説明する。
【0219】
発光装置を適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等のカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。これらの電子機器および照明器具の具体例を図5に示す。
【0220】
図5(A)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置7100は、筐体7101に表示部7103が組み込まれている。表示部7103により、映像を表示することが可能であり、発光装置を表示部7103に用いることができる。また、ここでは、スタンド7105により筐体7101を支持した構成を示している。
【0221】
テレビジョン装置7100の操作は、筐体7101が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機7110により行うことができる。リモコン操作機7110が備える操作キー7109により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部7103に表示される映像を操作することができる。また、リモコン操作機7110に、当該リモコン操作機7110から出力する情報を表示する表示部7107を設ける構成としてもよい。
【0222】
なお、テレビジョン装置7100は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線又は無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)又は双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0223】
図5(B)はコンピュータであり、本体7201、筐体7202、表示部7203、キーボード7204、外部接続ポート7205、ポインティングデバイス7206等を含む。なお、コンピュータは、発光装置をその表示部7203に用いることにより作製される。
【0224】
図5(C)は携帯型遊技機であり、筐体7301と筐体7302の2つの筐体で構成されており、連結部7303により、開閉可能に連結されている。筐体7301には表示部7304が組み込まれ、筐体7302には表示部7305が組み込まれている。また、図5(C)に示す携帯型遊技機は、その他、スピーカ部7306、記録媒体挿入部7307、LEDランプ7308、入力手段(操作キー7309、接続端子7310、センサ7311(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン7312)等を備えている。もちろん、携帯型遊技機の構成は上述のものに限定されず、少なくとも表示部7304および表示部7305の両方、又は一方に発光装置を用いていればよく、その他付属設備が適宜設けられた構成とすることができる。図5(C)に示す携帯型遊技機は、記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出して表示部に表示する機能や、他の携帯型遊技機と無線通信を行って情報を共有する機能を有する。なお、図5(C)に示す携帯型遊技機が有する機能はこれに限定されず、様々な機能を有することができる。
【0225】
図5(D)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機7400は、筐体7401に組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機7400は、発光装置を表示部7402に用いることにより作製される。
【0226】
図5(D)に示す携帯電話機7400は、表示部7402を指などで触れることで、情報を入力することができる。また、電話を掛ける、或いはメールを作成するなどの操作は、表示部7402を指などで触れることにより行うことができる。
【0227】
表示部7402の画面は主として3つのモードがある。第1は、画像の表示を主とする表示モードであり、第2は、文字等の情報の入力を主とする入力モードである。第3は表示モードと入力モードの2つのモードが混合した表示+入力モードである。
【0228】
例えば、電話を掛ける、或いはメールを作成する場合は、表示部7402を文字の入力を主とする文字入力モードとし、画面に表示させた文字の入力操作を行えばよい。この場合、表示部7402の画面のほとんどにキーボード又は番号ボタンを表示させることが好ましい。
【0229】
また、携帯電話機7400内部に、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサを有する検出装置を設けることで、携帯電話機7400の向き(縦か横か)を判断して、表示部7402の画面表示を自動的に切り替えるようにすることができる。
【0230】
また、画面モードの切り替えは、表示部7402を触れること、又は筐体7401の操作ボタン7403の操作により行われる。また、表示部7402に表示される画像の種類によって切り替えるようにすることもできる。例えば、表示部に表示する画像信号が動画のデータであれば表示モード、テキストデータであれば入力モードに切り替える。
【0231】
また、入力モードにおいて、表示部7402の光センサで検出される信号を検知し、表示部7402のタッチ操作による入力が一定期間ない場合には、画面のモードを入力モードから表示モードに切り替えるように制御してもよい。
【0232】
表示部7402は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部7402に掌や指で触れ、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。また、表示部に近赤外光を発光するバックライト又は近赤外光を発光するセンシング用光源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
【0233】
図5(E)は、照明装置の一例を示している。照明装置7500は、筐体7501に光源として本発明の一態様の発光装置7503a〜7503dが組み込まれている。照明装置7500は、天井や壁等に取り付けることが可能である。
【0234】
また、本発明の一態様の発光装置は、発光素子が薄膜状であるため、曲面を有する基体に貼り付けることで、曲面を有する発光装置とすることができる。また、その発光装置を、曲面を有する筐体に配置することで、曲面を有する電子機器又は照明装置を実現することができる。
【0235】
図6は車両の運転席周辺の内部図である。図6において、ダッシュボードには表示装置600が設置され、フロントガラスには表示装置602が設置された例を示している。図6に示す表示装置600は、曲面を有する筐体に表示部604が組み込まれており、表示部604により、映像を表示することが可能である。表示装置600において、本発明の一態様の発光装置を表示部604に用いることができる。
【0236】
また、図6に示す表示装置602は、曲面を有する筐体に表示部606が組み込まれており、本発明の一態様の発光装置を表示部606に用いることができる。本発明の一態様に係る発光装置は、発光装置に含まれる発光素子の一対の電極及びその支持体に、透光性を有する材料を用いることで、発光装置の上面及び下面の双方から外部に発光を取り出すことができる。従って、この発光装置を表示部606に適用することで、表示部606からフロントガラスを通して外部を視認することができる。同様に、外部からフロントガラスを通して表示部606に表示される画像を視認することもできる。
【0237】
なお、図6に示す表示装置600又は表示装置602を、照明装置として用いることも可能である。
【0238】
図7は、発光装置を、室内の照明装置801として用いた例である。発光装置は大面積化も可能であるため、大面積の照明装置として用いることができる。その他、曲面を有する筐体を用いることで、発光領域が曲面を有する照明装置803とすることもできる。本実施の形態で示す照明装置に含まれる発光素子は薄膜状であり、筐体のデザインの自由度が高い。したがって、様々な意匠を凝らした照明装置とすることができる。
【0239】
また、本発明の一態様を適用した照明装置を用いた部屋に、図5(A)で一例を示したような、テレビジョン装置7100aを設置することも可能である。テレビジョン装置7100aは、通常の2次元表示に加えて3次元表示機能を有していてもよい。図7においては、3次元表示観賞用のメガネ805を用いて3次元表示された画像を鑑賞することができる。
【0240】
以上のようにして、発光装置を適用して電子機器や照明器具を得ることができる。発光装置の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。
【0241】
また、本発明の一態様を適用した電子機器は、色再現性の高い電子機器である、また、表示品質の高い電子機器である。また、本発明の一態様を適用した電子機器は、信頼性の高い電子機器である。また、本発明の一態様を適用した電子機器は、低消費電力な電子機器である。
【0242】
なお、本実施の形態に示す構成は、実施の形態1乃至実施の形態4に示した構成を適宜組み合わせて用いることができる。
【実施例1】
【0243】
本実施例では、実施の形態1において構造式(100)で表される6−[3−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン(略称:2mBnfPPA)を合成する例を示す。
【0244】
[ステップ1]ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン−6−ボロン酸の合成
【0245】
(合成例1)
ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン−6−ボロン酸の合成例1を説明する。
【0246】
[ステップ1−1−1]1−(2−フルオロフェニル)−2−ナフトールの合成
【0247】
1.4g(10mmol)の2−フルオロフェニルボロン酸と、2.2g(10mmol)の1−ブロモ−2−ナフトールと、153mg(0.50mmol)のトリ(オルト−トリル)ホスフィンと、25mLのトルエンと、25mLのエタノールと、5.0mLの2M炭酸カリウム水溶液を200mL三ツ口フラスコへ入れた。この混合物を減圧脱気し、系内を窒素置換した。この混合物を80℃で撹拌し、23mg(0.10mmol)の酢酸パラジウム(II)を加え、約100℃で6.5時間還流した。還流後、この混合物を水で洗浄し、水層を酢酸エチルで抽出した。得られた抽出溶液と有機層を合わせて、飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層を硫酸マグネシウムにより乾燥した。この混合物を自然濾過し、得られた濾液を濃縮したところ、褐色油状物を得た。この油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン)により精製したところ、目的物の褐色油状物を1.6g、収率69%で得た。上述の合成スキームを下記(B−1)に示す。
【0248】
【化46】
【0249】
[ステップ1−1−2]ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フランの合成
【0250】
1Lの三口フラスコに15g(63mmol)の1−(2−フルオロフェニル)−2−ナフトールと、300mLのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)と、18g(130mmol)の炭酸カリウムを入れた。このフラスコを窒素気流下、150℃で6時間攪拌した。攪拌後、この混合物を室温まで放冷し、約500mLの水に加えた。この混合物の水層を酢酸エチルで抽出し、抽出溶液と有機層を合わせて水と飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムにより乾燥し、乾燥後、この混合物を自然濾過した。得られた濾液を濃縮したところ、油状物を得た。得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン)で精製したところ、油状物を得た。得られた油状物を減圧乾燥して、目的物の無色透明油状物を11.8g、収率86%で得た。上述の合成スキームを下記(B−2)に示す。
【0251】
【化47】
【0252】
[ステップ1−1−3]ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン−6−ボロン酸の合成
【0253】
500mL三口フラスコを窒素置換してから、5.8g(50mmol)のテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)と、180mLのテトラヒドロフラン(THF)を加えて、この溶液を−80℃に冷却した。この溶液に50mL(50mmol)のsec−ブチルリチウム(1.0mol/Lシクロヘキサン、n−ヘキサン溶液)を、シリンジにより滴下して加えた。滴下後、この溶液を同温度で30分間攪拌した。攪拌後、この溶液に70mLのTHFに溶解した10g(45mmol)のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フランを滴下ロートにより滴下して加えた。滴下後、この溶液を同温度で2時間攪拌した。攪拌後、この溶液に11mL(100mmol)のホウ酸トリメチルを加え、室温に戻しながら2日間攪拌した。攪拌後、この混合物の水層を酢酸エチルで抽出し、抽出溶液と有機層を合わせて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムにより乾燥し、乾燥後、この混合物を自然濾過した。得られた濾液を濃縮したところ、白色固体を得た。得られた固体にトルエン/ヘキサンを加えて超音波を照射し、固体を吸引濾過により回収した所、目的物の白色粉末を9.2g、収率78%で得た。上述の合成スキームを下記(B−3)に示す。
【0254】
【化48】
【0255】
(合成例2)
ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン−6−ボロン酸の合成例2を説明する。
【0256】
[ステップ1−2−1]1−(2−フルオロフェニル)−2−メトキシナフタレンの合成
【0257】
500mL三口フラスコに8.7g(35mmol)の1−ブロモ−2−メトキシナフタレンと、5.0g(35mmol)の2−フルオロフェニルボロン酸を入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物に、120mLのトルエンと、60mLのエタノールと、40mLの炭酸ナトリウム水溶液(2.0mol/L)を加えた。この混合物を減圧しながら攪拌することで脱気した。この混合物に2.0g(1.7mmol)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を加え、窒素気流下、80℃で8時間攪拌した。得られた混合物の水層をトルエンで抽出し、抽出溶液と有機層を合わせて、飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムにより乾燥し、この混合物を自然濾過した。得られた濾液を濃縮して得た油状物を約30mLのトルエンに溶解し、この溶液をセライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)、アルミナ、フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540−00135)を通して吸引濾過した。得られた濾液を濃縮して得た油状物を減圧乾燥したところ、目的物の淡黄色油状物を5.3g、収率60%で得た。上述の合成スキームを下記(C−1)に示す。
【0258】
【化49】
【0259】
[ステップ1−2−2]1−(2−フルオロフェニル)−2−ナフトールの合成
【0260】
500mL三口フラスコに5.3g(21mmol)の1−(2−フルオロフェニル)−2−メトキシナフタレンと、150mLのジクロロメタンを入れた。この溶液に窒素気流下、0℃で45mL(45mmol)の三臭化ホウ素(1M ジクロロメタン溶液)を、滴下ロートを用いて滴下した。滴下後、同温度で6時間攪拌した。攪拌後、この溶液を室温で2日間攪拌した。攪拌後、この溶液に約100mLの水を入れて1時間攪拌した。攪拌後、約100mLの飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて1時間攪拌した。攪拌後、この混合物の水層をジクロロメタンで抽出し、抽出溶液と有機層を合わせて、水と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムにより乾燥し、乾燥後この混合物を自然濾過した。得られた濾液を濃縮したところ、油状物を得た。得られた油状物を減圧乾燥したところ、目的物の褐色固体を4.8g、収率97%で得た。上述の合成スキームを下記(C−2)に示す。
【0261】
【化50】
【0262】
合成例2のその後のステップは、上述の合成例1のステップ1−1−2、1−1−3と同様に行う。よって、詳細な説明は省略する。
【0263】
ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フランをボロン酸化合物にする反応により得られた化合物を用いて、ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フランがボロン酸化する位置を特定するために、以下の合成スキーム(D−1)により得られた化合物をX線構造解析した。
【0264】
【化51】
【0265】
200mL三口フラスコに0.90g(5.7mmol)のブロモベンゼンと、1.5g(5.7mol)のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン−6−ボロン酸を入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物に20mLのトルエンと、10mLのエタノールと、6.0mLの炭酸ナトリウム水溶液(2.0mol/L)を加えた。この混合物を減圧しながら攪拌することで脱気した。この混合物に0.33g(0.28mmol)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を加え、窒素気流下、80℃で2時間攪拌した。攪拌後、この混合物の水層をトルエンにより抽出し、抽出溶液と有機層を合わせて、飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムにより乾燥し、この混合物を自然濾過した。得られた濾液を濃縮して得た油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:トルエン=19:1)で精製したところ、白色固体を得た。得られた固体をトルエン/ヘキサンで再結晶したところ、目的物の白色針状結晶を0.95g、収率56%で得た。
【0266】
得られた白色針状結晶をX線結晶構造解析した結果を図61に示す。図61は分子投影図(Oak Ridge Thermal Elliposid Plot(ORTEP図))である。図61より、合成スキームB−3によって、ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フランの6位がボロン酸化される事を確認した。
【0267】
[ステップ2]6−[3−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン(略称:2mBnfPPA)の合成
【0268】
50mL三口フラスコに1.1g(2.4mmol)の2−(3−ブロモフェニル)−9,10−ジフェニルアントラセンと、0.63g(2.4mmol)のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン−6−ボロン酸を入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物に10mLのトルエンと、4.0mLのエタノールと、3.0mLの炭酸ナトリウム水溶液(2.0mol/L)を加えた。この混合物を減圧しながら攪拌することで脱気した。この混合物に0.14g(0.12mmol)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を加え、窒素気流下、80℃で3時間攪拌した。攪拌後、この混合物の水層をトルエンにより抽出し、抽出溶液と有機層を合わせて、飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムにより乾燥し、この混合物を自然濾過した。得られた濾液を濃縮して得た油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:トルエン=5:1)で精製したところ、油状物を得た。得られた油状物をトルエン/ヘキサンで再結晶したところ、目的物の淡黄色粉末を1.0g、収率66%で得た。
【0269】
得られた淡黄色粉末状固体1.0gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製条件は、圧力2.2Pa、アルゴンガスを流量5.0mL/minで流しながら、290℃で淡黄色粉末状固体を加熱した。昇華精製後、2mBnfPPAの淡黄色固体を0.91g、回収率91%で得た。上述の合成スキームを下記(E−1)に示す。
【0270】
【化52】
【0271】
核磁気共鳴法(NMR)によって、この化合物が目的物である6−[3−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン(略称:2mBnfPPA)であることを確認した。
【0272】
得られた化合物の1H NMRの測定データを以下に示す。
1H NMR(CDCl3,300MHz):δ=7.33(d,J=3.0Hz,1H),7.35(d,J=3.0Hz,1H),7.49−7.75(m,20H),7.83(d,J=9.3Hz,1H),7.94(d,J=7.5Hz,1H),8.01−8.07(m,3H),8.14(s,1H),8.43−8.47(m,1H),8.66(d,J1=8.4Hz,1H)
【0273】
また、1H NMRチャートを図9(A)、(B)に示す。なお、図9(B)は、図9(A)における7.2ppm〜8.75ppmの範囲を拡大して表したチャートである。
【0274】
また、得られた2mBnfPPAに対して、熱重量測定−示差熱分析(TG−DTA:Thermogravimetry−Differential Thermal Analysis)を行った。示差熱熱重量同時測定装置(セイコー電子株式会社製,TG/DTA 320型)により測定したところ、大気圧下で測定開始時における重量に対し95%の重量になる温度(以下、「5%重量減少温度」と示す。)は429℃であった。この結果から、2mBnfPPAは良好な耐熱性を有する材料であることが分かった。
【0275】
また、2mBnfPPAのトルエン溶液の吸収スペクトルを図10(A)に、発光スペクトルを図10(B)にそれぞれ示す。また、2mBnfPPAの薄膜の吸収スペクトルを図11(A)に、発光スペクトルを図11(B)にそれぞれ示す。吸収スペクトルの測定には紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用いた。溶液は石英セルに入れ、薄膜は石英基板に蒸着してサンプルを作製して測定を行った。吸収スペクトルは、溶液については石英セルにトルエンのみを入れて測定した吸収スペクトルを、薄膜については石英基板の吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを示した。図10(A)及び図11(A)において横軸は波長(nm)、縦軸は吸収強度(任意単位)を表す。また、図10(B)及び図11(B)において横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度(任意単位)を表す。トルエン溶液の場合では285、364、384、及び406nm付近に吸収ピークが見られ、発光波長のピークは423及び446nm(励起波長385nm)であった。また、薄膜の場合では244、263、290、347、366、391、及び413nm付近に吸収ピークが見られ、発光波長のピークは440、及び458nm(励起波長414nm)であった。
【0276】
また、2mBnfPPAの薄膜状態におけるHOMO準位とLUMO準位の測定を行った。HOMO準位の値は、大気中の光電子分光装置(理研計器社製、AC−2)で測定したイオン化ポテンシャルの値を、負の値に換算することにより得た。また、LUMO準位の値は、図11(A)に示した2mBnfPPAの薄膜の吸収スペクトルのデータを用い、直接遷移を仮定したTaucプロットから吸収端を求め、その吸収端を光学的エネルギーギャップとしてHOMO準位の値に加算することにより得た。その結果、2mBnfPPAのHOMO準位は、−5.73eVであり、エネルギーギャップは、2.85eVであり、LUMO準位は、−2.88eVであった。
【実施例2】
【0277】
本実施例では、実施の形態1において構造式(124)で示す、6−[3−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン(略称:mBnfPA)を合成する例を示す。
【0278】
6−[3−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン(mBnfPA)の合成
【0279】
50mL三口フラスコに1.5g(3.8mmol)の9−(3−ブロモフェニル)−10−フェニルアントラセンと、1.0g(3.8mmol)の実施例1のステップ1を用いて合成したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン−6−ボロン酸と、0.29g(0.95mmol)のトリ(オルト−トリル)ホスフィンを入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物に15mLのトルエンと、5.0mLのエタノールと、4.0mLの炭酸カリウム水溶液(2.0mol/L)を加えた。この混合物を減圧しながら攪拌することで脱気した。この混合物に43mg(0.19mmol)の酢酸パラジウム(II)を加え、窒素気流下、80℃で4時間攪拌した。攪拌後、この混合物の水層をトルエンにより抽出し、抽出溶液と有機層を合わせて、飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムにより乾燥し、この混合物を自然濾過した。得られた濾液を濃縮して得た油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:トルエン=5:1)で精製したところ、油状物を得た。得られた油状物をトルエン/ヘキサンで再結晶したところ、目的物の白色粉末を1.4g、収率67%で得た。
【0280】
得られた白色粉末状固体1.1gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製条件は、圧力2.2Pa、アルゴンガスを流量5.0mL/minで流しながら、270℃でmBnfPAを加熱した。昇華精製後、mBnfPAの淡黄色固体を1.0g、回収率90%で得た。上述の合成スキームを下記(F−1)に示す。
【0281】
【化53】
【0282】
核磁気共鳴法(NMR)によって、この化合物が目的物である6−[3−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン(mBnfPA)であることを確認した。
【0283】
得られた化合物の1H NMRの測定データを以下に示す。
1H NMR(CDCl3,300MHz):δ=7.34−7.44(m,4H),7.48−7.63(m,9H),7.69−7.74(m,4H),7.83(t,J=7.5Hz,1H),7.96(dd,J1=1.8Hz,J2=7.8Hz,2H),8.04(d,J=7.8Hz,1H),8.13(s,1H),8.15(t,J=1.5Hz,1H),8.26(d,J=7.8Hz,1H),8.43−8.46(m,1H),8.66(d,J=7.8Hz,1H)
【0284】
また、1H NMRチャートを図12(A)、(B)に示す。なお、図12(B)は、図12(A)における7.2ppm〜8.75ppmの範囲を拡大して表したチャートである。
【0285】
また、得られたmBnfPAに対して、熱重量測定−示差熱分析(TG−DTA:Thermogravimetry−Differential Thermal Analysis)を行った。示差熱熱重量同時測定装置(セイコー電子株式会社製,TG/DTA 320型)により測定したところ、大気圧下で測定開始時における重量に対し95%の重量になる温度(以下、「5%重量減少温度」と示す。)は403℃であった。この結果から、mBnfPAは良好な耐熱性を有する材料であることが分かった。
【0286】
また、mBnfPAのトルエン溶液の吸収スペクトルを図13(A)に、発光スペクトルを図13(B)にそれぞれ示す。また、mBnfPAの薄膜の吸収スペクトルを図14(A)に、発光スペクトルを図14(B)にそれぞれ示す。吸収スペクトルの測定には紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用いた。溶液は石英セルに入れ、薄膜は石英基板に蒸着してサンプルを作製して測定を行った。吸収スペクトルは、溶液については石英セルにトルエンのみを入れて測定した吸収スペクトルを、薄膜については石英基板の吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを示した。図13(A)及び図14(A)において横軸は波長(nm)、縦軸は吸収強度(任意単位)を表す。また、図13(B)及び図14(B)において横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度(任意単位)を表す。トルエン溶液の場合では267、281、324、354、375、及び396nm付近に吸収ピークが見られ、発光波長のピークは411及び434nm(励起波長376nm)であった。また、薄膜の場合では268、328、359、381、及び402nm付近に吸収ピークが見られ、発光波長のピークは430及び442nm(励起波長402nm)であった。
【0287】
また、mBnfPAの薄膜状態におけるHOMO準位とLUMO準位の測定を行った。HOMO準位の値は、大気中の光電子分光装置(理研計器社製、AC−2)で測定したイオン化ポテンシャルの値を、負の値に換算することにより得た。また、LUMO準位の値は、図14(A)に示したmBnfPAの薄膜の吸収スペクトルのデータを用い、直接遷移を仮定したTaucプロットから吸収端を求め、その吸収端を光学的エネルギーギャップとしてHOMO準位の値に加算することにより得た。その結果、mBnfPAのHOMO準位は、−5.79eVであり、エネルギーギャップは、2.96eVであり、LUMO準位は、−2.83eVであった。
【実施例3】
【0288】
本実施例では、実施の形態1において構造式(116)で示す、6−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン(略称:2BnfPPA)を合成する例を示す。
【0289】
6−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン(略称:2BnfPPA)の合成
【0290】
50mL三口フラスコに1.8g(3.8mmol)の2−(4−ブロモフェニル)−9,10−ジフェニルアントラセンと、1.0g(3.8mmol)の実施例1のステップ1を用いて合成したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン−6−ボロン酸を入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物に15mLのトルエンと、5.0mLのエタノールと、4.0mLの炭酸ナトリウム水溶液(2.0mol/L)を加えた。この混合物を減圧しながら攪拌することで脱気した。この混合物に0.22g(0.19mmol)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を加え、窒素気流下、80℃で3時間攪拌したところ、固体が析出した。この混合物を室温まで冷却した後、析出した固体を吸引濾過により回収した。回収した固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:トルエン=5:1)で精製したところ、固体を得た。得られた固体をトルエン/ヘキサンで再結晶したところ、目的物の黄色粉末を1.4g、収率62%で得た。
【0291】
得られた黄色粉末状固体1.0gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製条件は、圧力2.7Pa、アルゴンガスを流量5.0mL/minで流しながら、295℃で2BnfPPAを加熱した。昇華精製後、2BnfPPAの黄色固体を0.85g、回収率85%で得た。上記合成法の反応スキームを下記(G−1)に示す。
【0292】
【化54】
【0293】
核磁気共鳴法(NMR)によって、この化合物が目的物である6−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン(略称:2BnfPPA)であることを確認した。
【0294】
得られた化合物の1H NMRの測定データを以下に示す。
1H NMR(CDCl3,300MHz):δ=7.34(d,J=3.3Hz,1H),7.36(d,J=3.3Hz,1H),7.49−7.85(m,21H),8.03−8.08(m,5H),8.44−8.47(m,1H),8.66(d,J1=7.8Hz,1H)
【0295】
また、1H NMRチャートを図15(A)、(B)に示す。なお、図15(B)は、図15(A)における7.2ppm〜8.75ppmの範囲を拡大して表したチャートである。
【0296】
また、得られた2BnfPPAに対して、熱重量測定−示差熱分析(TG−DTA:Thermogravimetry−Differential Thermal Analysis)を行った。示差熱熱重量同時測定装置(セイコー電子株式会社製,TG/DTA 320型)により測定したところ、大気圧下で測定開始時における重量に対し95%の重量になる温度(以下、「5%重量減少温度」と示す。)は435℃であった。この結果から、2BnfPPAは良好な耐熱性を有する材料であることが分かった。
【0297】
また、2BnfPPAのトルエン溶液の吸収スペクトルを図16(A)に、発光スペクトルを図16(B)にそれぞれ示す。また、2BnfPPAの薄膜の吸収スペクトルを図17(A)に、発光スペクトルを図17(B)にそれぞれ示す。吸収スペクトルの測定には紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用いた。溶液は石英セルに入れ、薄膜は石英基板に蒸着してサンプルを作製して測定を行った。吸収スペクトルは、溶液については石英セルにトルエンのみを入れて測定した吸収スペクトルを、薄膜については石英基板の吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを示した。図16(A)及び図17(A)において横軸は波長(nm)、縦軸は吸収強度(任意単位)を表す。また、図16(B)及び図17(B)において横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度(任意単位)を表す。トルエン溶液の場合では281、311、387、及び409nm付近に吸収ピークが見られ、発光波長のピークは427及び452nm(励起波長388nm)であった。また、薄膜の場合では245、280、316、333、394、及び416nm付近に吸収ピークが見られ、発光波長のピークは442、及び466nm(励起波長418nm)であった。
【0298】
また、2BnfPPAの薄膜状態におけるHOMO準位とLUMO準位の測定を行った。HOMO準位の値は、大気中の光電子分光装置(理研計器社製、AC−2)で測定したイオン化ポテンシャルの値を、負の値に換算することにより得た。また、LUMO準位の値は、図17(A)に示した2BnfPPAの薄膜の吸収スペクトルのデータを用い、直接遷移を仮定したTaucプロットから吸収端を求め、その吸収端を光学的エネルギーギャップとしてHOMO準位の値に加算することにより得た。その結果、2BnfPPAのHOMO準位は、−5.75eVであり、エネルギーギャップは、2.81eVであり、LUMO準位は、−2.94eVであった。
【実施例4】
【0299】
本実施例では、実施の形態1において構造式(134)で示す、6−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン(略称:BnfPA)を合成する例を示す。
【0300】
6−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン(略称:BnfPA)の合成
【0301】
100mL三口フラスコに1.8g(4.5mmol)の9−(4−ブロモフェニル)−10−フェニルアントラセンと、1.2g(4.5mmol)の実施例1のステップ1を用いて合成したベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン−6−ボロン酸を入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物に15mLのトルエンと、7.0mLのエタノールと、5.0mLの炭酸ナトリウム水溶液(2.0mol/L)を加えた。この混合物を減圧しながら攪拌することで脱気した。この混合物に0.26g(0.22mmol)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を加え、窒素気流下、80℃で6時間攪拌したところ、固体が析出した。このフラスコを室温まで冷却し、この混合物を吸引濾過により濾過した。得られた固体を約500mLの熱したトルエンに溶解し、この溶液をセライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)、アルミナ、シリカゲル、フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540−00135)を通して吸引濾過した。得られた濾液を濃縮して得られた固体をトルエンで再結晶したところ、目的物の白色粉末を0.77g、収率31%で得た。
【0302】
得られた白色粉末状固体0.77gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製条件は、圧力2.7Pa、アルゴンガスを流量5.0mL/minで流しながら、275℃でBnfPAを加熱した。昇華精製後、BnfPAの淡黄色固体を0.70g、回収率90%で得た。上述の合成スキームを下記(H−1)に示す。
【0303】
【化55】
【0304】
核磁気共鳴法(NMR)によって、この化合物が目的物である6−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン(略称:BnfPA)であることを確認した。
【0305】
得られた化合物の1H NMRの測定データを以下に示す。
1H NMR(CDCl3,300MHz):δ=7.34−7.43(m,4H),7.50−7.66(m,8H),7.70−7.77(m,5H),7.80−7.84(m,1H),7.88−7.91(m,2H),8.15(d,J=7.8Hz,1H),8.27(t,J=7.8Hz,3H),8.49−8.52(m,1H),8.72(d,J=8.4Hz,1H)
【0306】
また、1H NMRチャートを図18(A)、(B)に示す。なお、図18(B)は、図18(A)における7.2ppm〜8.8ppmの範囲を拡大して表したチャートである。
【0307】
また、得られたBnfPAに対して、熱重量測定−示差熱分析(TG−DTA:Thermogravimetry−Differential Thermal Analysis)を行った。示差熱熱重量同時測定装置(セイコー電子株式会社製,TG/DTA 320型)により測定したところ、大気圧下で測定開始時における重量に対し95%の重量になる温度(以下、「5%重量減少温度」と示す。)は420℃であった。この結果から、BnfPAは良好な耐熱性を有する材料であることが分かった。
【0308】
また、BnfPAのトルエン溶液の吸収スペクトルを図19(A)に、発光スペクトルを図19(B)にそれぞれ示す。また、BnfPAの薄膜の吸収スペクトルを図20(A)に、発光スペクトルを図20(B)にそれぞれ示す。吸収スペクトルの測定には紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用いた。溶液は石英セルに入れ、薄膜は石英基板に蒸着してサンプルを作製して測定を行った。吸収スペクトルは、溶液については石英セルにトルエンのみを入れて測定した吸収スペクトルを、薄膜については石英基板の吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを示した。図19(A)及び図20(A)において横軸は波長(nm)、縦軸は吸収強度(任意単位)を表す。また、図19(B)及び図20(B)において横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度(任意単位)を表す。トルエン溶液の場合では281、323、355、376、及び396nm付近に吸収ピークが見られ、発光波長のピークは425nm(励起波長376nm)であった。また、薄膜の場合では208、223、268、327、359、381、及び403nm付近に吸収ピークが見られ、発光波長のピークは443nm(励起波長403nm)であった。
【0309】
また、BnfPAの薄膜状態におけるHOMO準位とLUMO準位の測定を行った。HOMO準位の値は、大気中の光電子分光装置(理研計器社製、AC−2)で測定したイオン化ポテンシャルの値を、負の値に換算することにより得た。また、LUMO準位の値は、図20(A)に示したBnfPAの薄膜の吸収スペクトルのデータを用い、直接遷移を仮定したTaucプロットから吸収端を求め、その吸収端を光学的エネルギーギャップとしてHOMO準位の値に加算することにより得た。その結果、BnfPAのHOMO準位は、−5.81eVであり、エネルギーギャップは、2.94eVであり、LUMO準位は、−2.87eVであった。
【実施例5】
【0310】
本実施例では、本発明の一態様の発光素子の作製方法および素子特性の測定結果を、図面を用いて説明する。
【0311】
本実施例の発光素子1−1乃至3、2、3−1、3−2、4−1、4−2、及び5の作製方法を、図8を用いて説明する。また、本実施例で用いた有機化合物(Alq、BPen、9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)、9−[4−(N−カルバゾリル)]フェニル−10−フェニルアントラセン(略称:CzPA)、N,N’−ビス〔4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル〕−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6FLPAPrn)、N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス〔3−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル〕−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn))の構造式を以下に示す。
【0312】
【化56】
【0313】
発光素子1−1乃至3、2、3−1、3−2、4−1、4−2、及び5において、ガラス基板である基板1100上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極1101を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。本実施例において、第1の電極1101は、陽極として用いた。
【0314】
次に、第1の電極1101が形成された面が下方となるように、第1の電極1101が形成された基板1100を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減圧した後、第1の電極1101上に、PCzPAと酸化モリブデン(VI)を共蒸着することで、正孔注入層1111を形成した。PCzPAと酸化モリブデンの比率は、重量比で4:2(=PCzPA:酸化モリブデン)となるように調節し、その膜厚は、発光素子1−1、2、3−1、3−2、4−1、4−2、及び5において50nmとし、発光素子1−2及び1−3において70nmとした。なお、共蒸着法とは、一つの処理室内で、複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法である。
【0315】
次に、正孔注入層1111上に、PCzPAを成膜し、正孔輸送層1112を形成した。その膜厚は、発光素子1−1、2、3−1、3−2、4−1、4−2、及び5において10nmとし、発光素子1−2及び1−3において30nmとした。
【0316】
発光素子1−1においては、正孔輸送層1112上に、実施例1にて合成した2mBnfPPAと1,6FLPAPrnとを、2mBnfPPA:1,6FLPAPrn=1:0.05(重量比)となるように共蒸着することにより、発光層1113を形成した。膜厚は30nmとした。
【0317】
発光素子1−2及び1−3においては、正孔輸送層1112上に、実施例1にて合成した2mBnfPPAと1,6mMemFLPAPrnとを、2mBnfPPA:1,6mMemFLPAPrn=1:0.03(重量比)となるように共蒸着することにより、発光層1113を形成した。膜厚は25nmとした。
【0318】
発光素子2においては、正孔輸送層1112上に、実施例2にて合成したmBnfPAと1,6FLPAPrnとを、mBnfPA:1,6FLPAPrn=1:0.05(重量比)となるように共蒸着することにより、発光層1113を形成した。膜厚は30nmとした。
【0319】
発光素子3−1においては、正孔輸送層1112上に、実施例3にて合成した2BnfPPAと1,6FLPAPrnとを、2BnfPPA:1,6FLPAPrn=1:0.05(重量比)となるように共蒸着することにより、発光層1113を形成した。膜厚は30nmとした。
【0320】
発光素子3−2においては、正孔輸送層1112上に、実施例3にて合成した2BnfPPAと1,6FLPAPrnとを、2BnfPPA:1,6FLPAPrn=1:0.03(重量比)となるように共蒸着することにより、発光層1113を形成した。膜厚は30nmとした。
【0321】
発光素子4−1及び4−2においては、正孔輸送層1112上に、実施例3にて合成したBnfPAと1,6FLPAPrnとを、BnfPA:1,6FLPAPrn=1:0.05(重量比)となるように共蒸着することにより、発光層1113を形成した。膜厚は30nmとした。
【0322】
発光素子5においては、正孔輸送層1112上に、実施例6にて合成した2mBnfPAと1,6FLPAPrnとを、2BnfPA:1,6FLPAPrn=1:0.05(重量比)となるように共蒸着することにより、発光層1113を形成した。膜厚は30nmとした。
【0323】
発光素子1−1、2、3−1、4−1、及び5において、発光層1113上に、Alqを膜厚10nmとなるように成膜し、第1の電子輸送層1114aを形成した。
【0324】
発光素子1−3、3−2、及び4−2において、発光層1113上に、CzPAを膜厚10nmとなるように成膜し、第1の電子輸送層1114aを形成した。
【0325】
発光素子1−1、1−3、2、3−1、3−2、4−1、4−2、及び5において、第1の電子輸送層1114a上にバソフェナントロリン(略称:BPhen)を膜厚15nmとなるように成膜し、第2の電子輸送層1114bを形成した。
【0326】
発光素子1−2においては電子輸送層を単層とし、発光層1113上に、BPhenを膜厚15nmとなるように成膜し、電子輸送層1114を形成した。
【0327】
発光素子1−1乃至3、2、3−1、3−2、4−1、4−2、及び5において、電子輸送層1114、又は第2の電子輸送層1114b上に、フッ化リチウム(LiF)を1nmの膜厚で蒸着し、電子注入層1115を形成した。
【0328】
発光素子1−1乃至3、2、3−1、3−2、4−1、4−2、及び5において、陰極として機能する第2の電極1103として、アルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着することで、本実施例の発光素子1−1乃至3、2、3−1、3−2、4−1、4−2、及び5を作製した。
【0329】
なお、上述した蒸着過程において、蒸着は全て抵抗加熱法を用いた。
【0330】
以上により得られた発光素子1−1乃至3、2、3−1、3−2、4−1、4−2、及び5の素子構造を表1に示す。
【0331】
【表1】
【0332】
発光素子−1乃至3、2、3−1、3−2、4−1、4−2、及び5を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子が大気に曝されないように封止する作業を行った後、それぞれの発光素子の動作特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0333】
それぞれの発光素子の電流密度−輝度特性を図21(発光素子1−1)、図27(発光素子1−2及び1−3)、図33(発光素子2)、図39(発光素子3−1)、図45(発光素子3−2)、図50(発光素子4−1)、図56(発光素子4−2)、及び図65(発光素子5)、電圧−輝度特性を図22(発光素子1−1)、図28(発光素子1−2及び1−3)、図34(発光素子2)、図40(発光素子3−1)、図46(発光素子3−2)、図51(発光素子4−1)、図57(発光素子4−2)、及び図66(発光素子5)、輝度−電流効率特性を図23(発光素子1−1)、図29(発光素子1−2及び1−3)、図35(発光素子2)、図41(発光素子3−1)、図47(発光素子3−2)、図52(発光素子4−1)、図58(発光素子4−2)、及び図67(発光素子5)、電圧−電流特性を図24(発光素子1−1)、図30(発光素子1−2及び1−3)、図36(発光素子2)、図42(発光素子3−1)、図48(発光素子3−2)、図53(発光素子4−1)、図59(発光素子4−2)、及び図68(発光素子5)にそれぞれ示す。
【0334】
図21、図27、図33、図39、図45、図50、及び図56では、横軸に電流密度(mA/cm2)、縦軸に輝度(cd/m2)を示し、図22、図28、図34、図40、図46、図51、及び図57では横軸に電圧(V)、縦軸に輝度(cd/m2)を示す。また、図23、図29、図35、図41、図47、図52、及び図58では、横軸に輝度(cd/m2)、縦軸に電流効率(cd/A)を示し、図24、図30、図36、図42、図48、図53、及び図59では、横軸に電圧(V)、縦軸に電流(mA)を示す。また、発光素子の発光スペクトルを、図25(発光素子1−1)、図31(発光素子1−2及び1−3)、図37(発光素子2)、図43(発光素子3−1)、図49(発光素子3−2)、図54(発光素子4−1)、図60(発光素子4−2)、及び図69(発光素子5)に示す。図25、図31、図37、図43、図49、図54、図60、及び図69において、横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度(任意単位)を示す。
【0335】
発光素子1−1からは、470nm付近にピークを有する1,6FLPAPrnからの良好な青色発光が得られたことがわかった。発光素子1−1は、輝度1145cd/m2のとき、CIE色度座標は(x=0.16、y=0.23)であり、良好な青色発光を示した。また、輝度1145cd/m2のときの電流効率は7.1cd/Aであり、外部量子効率は4.6%、電圧は4.4V、電流密度は16.1mA/cm2であり、パワー効率は5.1lm/Wであった。
【0336】
発光素子1−2からは、469nm付近にピークを有する1,6mMemFLPAPrnからの良好な青色発光が得られたことがわかった。発光素子1−2は、輝度1211cd/m2のとき、CIE色度座標は(x=0.14、y=0.17)であり、良好な青色発光を示した。また、輝度1211cd/m2のときの電流効率は11.9cd/Aであり、外部量子効率は10.2%、電圧は3.1V、電流密度は10.2mA/cm2であり、パワー効率は12.0lm/Wであった。
【0337】
発光素子1−3からは、470nm付近にピークを有する1,6mMemFLPAPrnからの良好な青色発光が得られたことがわかった。発光素子1−3は、輝度1106cd/m2のとき、CIE色度座標は(x=0.14、y=0.17)であり、良好な青色発光を示した。また、輝度1106cd/m2のときの電流効率は12.1cd/Aであり、外部量子効率は10.2%、電圧は3.3V、電流密度は9.1mA/cm2であり、パワー効率は11.6lm/Wであった。
【0338】
発光素子2からは、472nm付近にピークを有する1,6FLPAPrnからの良好な青色発光が得られたことがわかった。発光素子2は、輝度1018cd/m2のとき、CIE色度座標は(x=0.16、y=0.25)であり、良好な青色発光を示した。また、輝度1018cd/m2のときの電流効率は6.8cd/Aであり、外部量子効率は4.1%、電圧は4.6V、電流密度は15.0mA/cm2であり、パワー効率は4.7lm/Wであった。
【0339】
発光素子3−1からは、470nm付近にピークを有する1,6FLPAPrnからの良好な青色発光が得られたことがわかった。発光素子3−1は、輝度840cd/m2のとき、CIE色度座標は(x=0.16、y=0.25)であり、良好な青色発光を示した。また、輝度840cd/m2のときの電流効率は7.0cd/Aであり、外部量子効率は4.3%、電圧は4.0V、電流密度は12.0mA/cm2であり、パワー効率は5.5lm/Wであった。
【0340】
発光素子3−2からは、470nm付近にピークを有する1,6FLPAPrnからの良好な青色発光が得られたことがわかった。発光素子3−2は、輝度900cd/m2のとき、CIE色度座標は(x=0.15、y=0.22)であり、良好な青色発光を示した。また、輝度900cd/m2のときの電流効率は8.3cd/Aであり、外部量子効率は5.5%、電圧は3.1V、電流密度は10.8mA/cm2であり、パワー効率は8.5lm/Wであった。
【0341】
発光素子4−1からは、470nm付近にピークを有する1,6FLPAPrnからの良好な青色発光が得られたことがわかった。発光素子4−1は、輝度728cd/m2のとき、CIE色度座標は(x=0.15、y=0.21)であり、良好な青色発光を示した。また、輝度728cd/m2のときの電流効率は6.9cd/Aであり、外部量子効率は4.8%、電圧は4.4V、電流密度は10.6mA/cm2であり、パワー効率は4.9lm/Wであった。
【0342】
発光素子4−2からは、470nm付近にピークを有する1,6FLPAPrnからの良好な青色発光が得られたことがわかった。発光素子4−2は、輝度689cd/m2のとき、CIE色度座標は(x=0.15、y=0.21)であり、良好な青色発光を示した。また、輝度689cd/m2のときの電流効率は6.7cd/Aであり、外部量子効率は4.8%、電圧は3.4V、電流密度は10.2mA/cm2であり、パワー効率は6.2lm/Wであった。
【0343】
発光素子5からは、470nm付近にピークを有する1,6FLPAPrnからの良好な青色発光が得られたことがわかった。発光素子5は、輝度839cd/m2のとき、CIE色度座標は(x=0.17、y=0.27)であり、良好な青色発光を示した。また、輝度839cd/m2のときの電流効率は5.9cd/Aであり、外部量子効率は3.4%、電圧は3.8V、電流密度は14.1mA/cm2であり、パワー効率は4.9lm/Wであった。
【0344】
また、作製した発光素子1−1乃至3、2、3−1、3−2、及び4−1の信頼性試験を行った。信頼性試験とは以下のようにして行った。発光素子1−1、2、3−1、3−2、及び4−1では、初期状態において、1000cd/m2の輝度で発光させたときに発光素子1−1、2、3−1、3−2、及び4−1に流れている電流と同じ値の電流を流し続け、或る時間が経過する毎に輝度を測定した。発光素子1−2及び1−3では、初期状態において、5000cd/m2の輝度で発光させたときに発光素子1−2及び1−3に流れている電流と同じ値の電流を流し続け、或る時間が経過する毎に輝度を測定した。
【0345】
発光素子1−1乃至3、2、3−1、及び4−1の信頼性試験によって得られた結果を図26(発光素子1−1)、図32(発光素子1−2及び1−3)、図38(発光素子2)、図44(発光素子3−1)、及び図55(発光素子4−1)に示す。図26、図32、図38、図44、及び図55は輝度の経時変化を示している。なお、図26、図32、図38、図44、及び図55において横軸は通電時間(hour)、縦軸はそれぞれの時間における初期輝度に対する輝度の割合、すなわち規格化輝度(%)を表す。
【0346】
信頼性試験により、特にアントリル基が2位で置換した構造である2mBnfPPA、2BnfPPAを用いた発光素子1−1乃至3及び発光素子3−1において長寿命化が達成できており、高い信頼性を有することが確認できた。
【0347】
本実施例により、本発明の発光素子が、色純度のよい発光を高効率で得ることのできる発光素子として特性が得られ、十分機能することが確認できた。また信頼性試験の結果から、発光素子を連続点灯させた場合であっても、膜の欠陥等に由来する短絡が生じることがなく、信頼性の高い発光素子が得られたことがわかった。
【0348】
(参考例)
本参考例では、実施例5の発光素子で用いた材料について説明する。
【0349】
<1,6FLPAPrnの合成例>
発光素子1−1、2、3−1、3−2、4−1、及び4−2の材料に用いたN,N’−ビス〔4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル〕−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6FLPAPrn)を合成する例を示す。
【0350】
[ステップ1:9−(4−ブロモフェニル)−9−フェニルフルオレンの合成法]
【0351】
100mL三口フラスコにて、マグネシウムを1.2g(50mmol)減圧下で30分加熱撹拌し、マグネシウムを活性化させた。これを室温に冷まして窒素雰囲気にした後、ジブロモエタン数滴を加えて発泡、発熱するのを確認した。ここにジエチルエーテル10mL中に溶かした2−ブロモビフェニルを12g(50mmol)ゆっくり滴下した後、2.5時間加熱還流撹拌してグリニヤール試薬とした。
【0352】
4−ブロモベンゾフェノンを10g(40mmol)、ジエチルエーテルを100mLを500mL三口フラスコに入れた。ここに先に合成したグリニヤール試薬をゆっくり滴下した後、9時間加熱還流撹拌した。
【0353】
反応後、この混合液を濾過して濾物を得た。得られた濾物を酢酸エチル150mLに溶かし、1M塩酸を加えて2時間撹拌した。この液体の有機層の部分を水で洗浄し、硫酸マグネシウムを加えて水分を吸着させた。この懸濁液を濾過し、得られた濾液を濃縮し油状物を得た。
【0354】
500mLなすフラスコに、得られた油状物と、氷酢酸50mLと、塩酸1.0mLとを入れ、窒素雰囲気下、130℃で1.5時間加熱撹拌し、反応させた。
【0355】
反応後、この反応混合液を濾過して濾物を得た。得られた濾物を水、水酸化ナトリウム水溶液、水、メタノールの順で洗浄したのち乾燥させ、目的物の白色粉末11gを収率69%で得た。上記ステップ1の合成スキームを下記(I−1)に示す。
【0356】
【化57】
【0357】
[ステップ2:N,N’−ビス〔4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル〕−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6FLPAPrn)の合成法]
【0358】
1,6−ジブロモピレン0.4g(1.2mmol)、4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)ジフェニルアミン(略称:FLPA)1.0g(2.4mmol)、ナトリウム tert−ブトキシド0.3g(3.6mmol)を50mL三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物にトルエン11.5mLとトリ(tert−ブチル)ホスフィンの10%ヘキサン溶液0.2mLを加えた。この混合物を70℃にし、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)31.1mg(0.05mmol)を加え4.0時間攪拌した。攪拌後、フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540−00135)、セライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)、アルミナを通して吸引濾過し、濾液を得た。得られた濾液を濃縮した。得られた濾液を濃縮して得た固体を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒はクロロホルム)により精製し、得られたフラクションを濃縮し、黄色固体を得た。得られた固体を、トルエンとヘキサンの混合溶媒により洗浄した後、吸引濾過をおこない黄色固体を得た。得られた黄色固体をクロロホルムとヘキサンの混合溶媒で洗浄したところ、目的物の淡黄色粉末状固体0.8gを、収率68%で得た。
【0359】
得られた黄色固体0.8gを、トレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製条件は、圧力2.7Pa、アルゴンガスを流量5mL/minで流しながら、360℃で加熱した。昇華精製後、目的物を0.4g、収率56%で得た。上記ステップの合成スキームを下記(I−2)に示す。
【0360】
【化58】
【0361】
核磁気共鳴法(NMR)及びMSスペクトルによって、この化合物が目的物であるN,N’−ビス〔4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル〕−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6FLPAPrn)であることを確認した。
【0362】
得られた化合物の1H NMRデータを以下に示す。
1H NMR(CDCl3,300MHz):δ=6.88−6.91(m、6H)、7.00−7.03(m、8H)、7.13−7.40(m、26H)、7.73−7.80(m、6H)、7.87(d、J=9.0Hz、2H)、8.06−8.09(m、4H)
【0363】
<1,6mMemFLPAPrnの合成例>
発光素子1−2及び1−3の材料に用いたN’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス〔3−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル〕−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)を合成する例を示す。
【0364】
[ステップ1:3−メチルフェニル−3−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニルアミン(略称:mMemFLPA)の合成法]
【0365】
9−(3−ブロモフェニル)−9−フェニルフルオレン3.2g(8.1mmol)、ナトリウム tert−ブトキシド2.3g(24.1mmol)を200mL三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物にトルエン40.0mL、m−トルイジン0.9mL(8.3mmol)、トリ(tert−ブチル)ホスフィンの10%ヘキサン溶液0.2mLを加えた。この混合物を60℃にし、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)44.5mg(0.1mmol)を加え、この混合物を80℃にして2.0時間攪拌した。攪拌後、フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540−00135)、セライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)、アルミナを通して吸引濾過し、濾液を得た。得られた濾液を濃縮して得た固体を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒はヘキサン:トルエン=1:1)により精製し、トルエンとヘキサンの混合溶媒で再結晶し、目的の白色固体2.8gを、収率82%で得た。上記ステップ1の合成スキームを下記(J−1)に示す。
【0366】
【化59】
【0367】
[ステップ2:N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス〔3−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル〕−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)の合成法]
【0368】
1,6−ジブロモピレン0.6g(1.7mmol)、3−メチルフェニル−3−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニルアミン1.4g(3.4mmol)、ナトリウム tert−ブトキシド0.5g(5.1mmol)を100mL三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物にトルエン21.0mL、トリ(tert−ブチル)ホスフィンの10%ヘキサン溶液0.2mLを加えた。この混合物を60℃にし、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)34.9mg(0.1mmol)を加え、この混合物を80℃にして3.0時間攪拌した。攪拌後、トルエンを400mL加えて加熱し、熱いまま、フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540−00135)、セライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)、アルミナを通して吸引濾過し、濾液を得た。得られた濾液を濃縮して得た固体を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒はヘキサン:トルエン=3:2)により精製し、黄色固体を得た。得られた黄色固体をトルエンとヘキサンの混合溶媒で再結晶し、目的の黄色固体を1.2g、収率67%で得た。
【0369】
得られた黄色固体1.0gを、トレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製条件は、圧力2.2Pa、アルゴンガスを流量5.0mL/minで流しながら、317℃で黄色固体を加熱した。昇華精製後、目的物の黄色固体1.0gを、収率93%で得た。上記ステップ2の合成スキームを下記(J−2)に示す。
【0370】
【化60】
【0371】
核磁気共鳴法(NMR)によって、この化合物が目的物であるN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス〔3−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル〕−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)であることを確認した。
【0372】
得られた化合物の1H NMRデータを以下に示す。
1H NMR(CDCl3,300MHz):δ=2.21(s,6H)、6.67(d,J=7.2Hz,2H)、6.74(d,J=7.2Hz,2H)、7.17−7.23(m,34H)、7.62(d,J=7.8Hz,4H)、7.74(d,J=7.8Hz,2H)、7.86(d,J=9.0Hz,2H)、8.04(d,J=8.7Hz,4H)
【実施例6】
【0373】
本実施例では、実施の形態1において構造式(123)で表される6−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン(略称:2BnfPA)を合成する例を示す。
【0374】
50mL三口フラスコに1.5g(3.2mmol)の2−ヨード−9,10−ジフェニルアントラセンと、0.86g(3.2mmol)のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン−6−ボロン酸を入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物に10mLのトルエンと、5.0mLのエタノールと、4.0mLの炭酸ナトリウム水溶液(2.0mol/L)を加えた。この混合物を減圧しながら攪拌することで脱気した。この混合物に0.18g(0.16mmol)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を加え、窒素気流下、80℃で6時間攪拌したところ、固体が析出した。この混合物を室温まで冷却し、析出した固体を吸引ろ過により回収した。回収した固体を約30mLの熱したトルエンに溶解し、この溶液をセライト、アルミナ、フロリジールを通して吸引ろ過した。得られたろ液を濃縮して固体を得た。得られた固体をトルエン/ヘキサンで再結晶したところ、目的物の淡黄色粉末を1.0g、収率58%で得た。
【0375】
得られた淡黄色粉末状固体1.0gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製条件は、圧力10Pa、アルゴンガスを流量5.0mL/minで流しながら、290℃で2mBnfPPAを加熱した。昇華精製後、2mBnfPPAの淡黄色固体を0.91g、回収率91%で得た。上述の合成スキームを下記(K−1)に示す。
【0376】
【化61】
【0377】
核磁気共鳴法(NMR)によって、この化合物が目的物である6−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−ベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン(略称:2BnfPA)であることを確認した。
【0378】
得られた物質の1H NMRを測定した。以下に測定データを示す。
1H NMR(CDCl3,300MHz):δ=7.37(dd,J=3.6,3.3Hz,2H),7.45−7.79(m,17H),7.89(d,J=8.7Hz,1H),98(dd,J=9.0,1.8Hz,1H),8.04(t,J=4.5Hz,2H),8.42(dd,J=6.0,2.1Hz,1H),8.50(d,J=1.5Hz,1H),8.62(d,J=9.0Hz,1H).
【0379】
また、1H NMRチャートを図62(A)、(B)に示す。なお、図62(B)は、図62(A)における7.2ppm〜8.7ppmの範囲を拡大して表したチャートである。
【0380】
また、2BnfPAのトルエン溶液の吸収スペクトルを図63(A)に、発光スペクトルを図63(B)にそれぞれ示す。また、2BnfPAの薄膜の吸収スペクトルを図64(A)に、発光スペクトルを図64(B)にそれぞれ示す。吸収スペクトルの測定には紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用いた。溶液は石英セルに入れ、薄膜は石英基板に蒸着してサンプルを作製して測定を行った。吸収スペクトルは、溶液については石英セルにトルエンのみを入れて測定した吸収スペクトルを、薄膜については石英基板の吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを示した。図63(A)及び図64(A)において横軸は波長(nm)、縦軸は吸収強度(任意単位)を表す。また、図63(B)及び図64(B)において横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度(任意単位)を表す。トルエン溶液の場合では289、303、318、332、365、386、及び408nm付近に吸収ピークが見られ、発光波長のピークは427及び447nm(励起波長387nm)であった。また、薄膜の場合では241、262、278、294、323、336、371、393、及び416nm付近に吸収ピークが見られ、発光波長のピークは363、457、474、及び457nm(励起波長415nm)であった。
【0381】
また、2BnfPAの薄膜状態におけるHOMO準位とLUMO準位の測定を行った。HOMO準位の値は、大気中の光電子分光装置(理研計器社製、AC−2)で測定したイオン化ポテンシャルの値を、負の値に換算することにより得た。また、LUMO準位の値は、図64(A)に示した2BnfPAの薄膜の吸収スペクトルのデータを用い、直接遷移を仮定したTaucプロットから吸収端を求め、その吸収端を光学的エネルギーギャップとしてHOMO準位の値に加算することにより得た。その結果、2BnfPAのHOMO準位は、−5.66eVであり、エネルギーギャップは、2.86eVであり、LUMO準位は、−2.80eVであった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(G1)で表されるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物。
【化1】
(但し、一般式(G1)中、Anは、下記一般式(An−1)又は(An−2)で表されるアントリル基を表し、α1及びα2は、下記一般式(α−1)〜(α−3)で表される、置換又は無置換のフェニレン基のいずれか一を表し、R1〜R9は、水素、又は炭素数1〜4のアルキル基のいずれか一を表す。また、一般式(G1)中、n及びmは0又は1である。)
【化2】
(但し、一般式(An−1)及び(An−2)中、R10〜R27は、水素、又は炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜13の置換もしくは無置換のアリール基を表す。また、R10〜R27は、2つ以上の置換基を有する場合、置換基同士が互いに結合して環を形成していても良い。また、R10〜R27が2つ以上の置換基を有する場合、1つの炭素が2つの置換基を有していてもよく、この場合置換基同士が互いに結合して、スピロ環を形成していても良い。)
【化3】
(但し、一般式(α−1)〜(α−3)中、R28〜R39は、水素、又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【請求項2】
一般式(G2)で表されるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物。
【化4】
(但し、一般式(G2)中、Anは、下記一般式(An−1)又は(An−2)で表されるアントリル基を表し、α1及びα2は、下記一般式(α−4)〜(α−6)で表される、フェニレン基のいずれか一を表す。また、一般式(G2)中、n及びmは0又は1である。)
【化5】
(但し、一般式(An−1)及び(An−2)中、R10〜R27は、水素、又は炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜13の置換もしくは無置換のアリール基を表す。また、R10〜R27は、2つ以上の置換基を有する場合、置換基同士が互いに結合して環を形成していても良い。また、R10〜R27が2つ以上の置換基を有する場合、1つの炭素が2つの置換基を有していてもよく、この場合置換基同士が互いに結合して、スピロ環を形成していても良い。)
【化6】
【請求項3】
一般式(G3)で表されるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物。
【化7】
(但し、一般式(G3)中、Anは、下記一般式(An−1)又は(An−2)で表されるアントリル基を表し、α1は、下記一般式(α−4)又は(α−5)で表される、フェニレン基を表す。また、一般式(G3)中、nは0又は1である。)
【化8】
(但し、一般式(An−1)及び(An−2)中、R10〜R27は、水素、又は炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜13の置換もしくは無置換のアリール基を表す。また、R10〜R27は、2つ以上の置換基を有する場合、置換基同士が互いに結合して環を形成していても良い。また、R10〜R27が2つ以上の置換基を有する場合、1つの炭素が2つの置換基を有していてもよく、この場合置換基同士が互いに結合して、スピロ環を形成していても良い。)
【化9】
【請求項4】
一般式(G4)で表されるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物。
【化10】
(但し、一般式(G4)中、Anは、下記一般式(An−3)又は(An−4)で表されるアントリル基を表し、α1は、下記一般式(α−4)又は(α−5)で表される、フェニレン基を表す。また、一般式(G4)中、nは0又は1である。)
【化11】
(但し、一般式(An−3)及び(An−4)中、R13、R18、R27は、水素、又は炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜13の置換もしくは無置換のアリール基を表す。また、R13、R18、R27は、2つ以上の置換基を有する場合、置換基同士が互いに結合して環を形成していても良い。また、R13、R18、R27が2つ以上の置換基を有する場合、1つの炭素が2つの置換基を有していてもよく、この場合置換基同士が互いに結合して、スピロ環を形成していても良い。)
【化12】
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を含む発光素子用材料。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を含む発光素子。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を発光層に含む発光素子。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を発光層のホスト材料として含む発光素子。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を発光中心材料として含む発光素子。
【請求項10】
請求項6乃至9に記載の発光素子を有する発光装置。
【請求項11】
請求項10に記載の発光装置を搭載した電子機器。
【請求項12】
請求項10に記載の発光装置を搭載した照明装置。
【請求項1】
一般式(G1)で表されるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物。
【化1】
(但し、一般式(G1)中、Anは、下記一般式(An−1)又は(An−2)で表されるアントリル基を表し、α1及びα2は、下記一般式(α−1)〜(α−3)で表される、置換又は無置換のフェニレン基のいずれか一を表し、R1〜R9は、水素、又は炭素数1〜4のアルキル基のいずれか一を表す。また、一般式(G1)中、n及びmは0又は1である。)
【化2】
(但し、一般式(An−1)及び(An−2)中、R10〜R27は、水素、又は炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜13の置換もしくは無置換のアリール基を表す。また、R10〜R27は、2つ以上の置換基を有する場合、置換基同士が互いに結合して環を形成していても良い。また、R10〜R27が2つ以上の置換基を有する場合、1つの炭素が2つの置換基を有していてもよく、この場合置換基同士が互いに結合して、スピロ環を形成していても良い。)
【化3】
(但し、一般式(α−1)〜(α−3)中、R28〜R39は、水素、又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【請求項2】
一般式(G2)で表されるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物。
【化4】
(但し、一般式(G2)中、Anは、下記一般式(An−1)又は(An−2)で表されるアントリル基を表し、α1及びα2は、下記一般式(α−4)〜(α−6)で表される、フェニレン基のいずれか一を表す。また、一般式(G2)中、n及びmは0又は1である。)
【化5】
(但し、一般式(An−1)及び(An−2)中、R10〜R27は、水素、又は炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜13の置換もしくは無置換のアリール基を表す。また、R10〜R27は、2つ以上の置換基を有する場合、置換基同士が互いに結合して環を形成していても良い。また、R10〜R27が2つ以上の置換基を有する場合、1つの炭素が2つの置換基を有していてもよく、この場合置換基同士が互いに結合して、スピロ環を形成していても良い。)
【化6】
【請求項3】
一般式(G3)で表されるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物。
【化7】
(但し、一般式(G3)中、Anは、下記一般式(An−1)又は(An−2)で表されるアントリル基を表し、α1は、下記一般式(α−4)又は(α−5)で表される、フェニレン基を表す。また、一般式(G3)中、nは0又は1である。)
【化8】
(但し、一般式(An−1)及び(An−2)中、R10〜R27は、水素、又は炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜13の置換もしくは無置換のアリール基を表す。また、R10〜R27は、2つ以上の置換基を有する場合、置換基同士が互いに結合して環を形成していても良い。また、R10〜R27が2つ以上の置換基を有する場合、1つの炭素が2つの置換基を有していてもよく、この場合置換基同士が互いに結合して、スピロ環を形成していても良い。)
【化9】
【請求項4】
一般式(G4)で表されるベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物。
【化10】
(但し、一般式(G4)中、Anは、下記一般式(An−3)又は(An−4)で表されるアントリル基を表し、α1は、下記一般式(α−4)又は(α−5)で表される、フェニレン基を表す。また、一般式(G4)中、nは0又は1である。)
【化11】
(但し、一般式(An−3)及び(An−4)中、R13、R18、R27は、水素、又は炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜13の置換もしくは無置換のアリール基を表す。また、R13、R18、R27は、2つ以上の置換基を有する場合、置換基同士が互いに結合して環を形成していても良い。また、R13、R18、R27が2つ以上の置換基を有する場合、1つの炭素が2つの置換基を有していてもよく、この場合置換基同士が互いに結合して、スピロ環を形成していても良い。)
【化12】
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を含む発光素子用材料。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を含む発光素子。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を発光層に含む発光素子。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を発光層のホスト材料として含む発光素子。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のベンゾ[b]ナフト[1,2−d]フラン化合物を発光中心材料として含む発光素子。
【請求項10】
請求項6乃至9に記載の発光素子を有する発光装置。
【請求項11】
請求項10に記載の発光装置を搭載した電子機器。
【請求項12】
請求項10に記載の発光装置を搭載した照明装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
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【図48】
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【図56】
【図57】
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【図59】
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【図58】
【図59】
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【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図65】
【図66】
【図67】
【図68】
【図69】
【公開番号】特開2012−149045(P2012−149045A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−277842(P2011−277842)
【出願日】平成23年12月20日(2011.12.20)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月20日(2011.12.20)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】
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