説明

ベータアミロイドペプチド産生阻害剤としての重水素化された新規アルファ−(N−スルホンアミド)アセトアミド化合物

本開示は新規重水素化アルファ−(N−スルホンアミド)アセトアミド化合物、それらの組成物、その製造工程、およびアルツハイマー病、頭部外傷、外傷性脳損傷、および/またはボクサー認知症および/または他のβアミロイドペプチドが関連する病態の治療方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米国仮出願シリアル番号61/161,629(2009年3月19日出願)の優先権の利益を主張する。
【0002】
本開示は薬物特性および生体作用特性を有する重水素化(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミド化合物、それらの医薬組成物、その製造方法および使用方法に関連する。該新規化合物はAβペプチド産生の特異な阻害を有し、故にAβペプチドの蓄積および/またはアミロイドタンパクの沈着の予防に作用し、アルツハイマー病(AD)、ダウン症および軽度認知障害、ならびに頭部外傷、外傷性脳損傷、ボクサー認知症、および/または他のβ−アミロイドペプチドが関連する病態の治療または発症の遅延に有用である。
【背景技術】
【0003】
(背景)
アルツハイマー病(AD)は進行性の神経変性疾患であり、記憶障害に始まり、重篤な認知障害、行動異常、および運動機能低下へと進行する(Grundman, M. et al., Arch. Neurol., 61:59-66 (2004); Walsh, D.M. et al., Neuron, 44:181-193 (2004))。それは最も多い形態の認知症であり、心臓障害および癌に続く3番目に多い死因となっている。ADの代償は甚大であり、患者およびその家族の苦しみならびに患者およびその介護者の生産性の低下が含まれる。ADを効果的に予防する、または臨床症状およびその原因となる病態生理を回復させる治療は今のところ存在しない。
【0004】
認知症患者のADの最終診断には、剖検における老人斑および神経原線維変化の数および局在の病理組織学的評価が必要である(Consensus recommendations for the postmortem diagnosis of Alzheimer’s disease. Neurobiol. Aging, 18:S1-S2 (1997))。同様の変化がトリソミー21(ダウン症)の患者に見られる。老人斑は主にβ−アミロイド(Aβ)ペプチドからなり、Aβは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)のβ−サイトAPP−切断酵素(BACE)(N−末端を形成)およびγ−セクレターゼ(C−末端を形成)による段階的なタンパク質分解的切断により産生される(Selkoe, D.J., Physiol Rev., 81:741-766 (2001))。γ−セクレターゼは膜貫通タンパク質複合体であり、ニカストリン、Aph−1、PEN−2、およびプレセニリン−1(PS−1)またはプレセニリン−2(PS−2)のいずれかを含む(Wolfe, M.S. et al., Science, 305: 1119-1123 (2004))。PS−1およびPS−2はγ−セクレターゼの活性部位を含むと考えられている。
【0005】
Aβ40は産生されるAβの最も多い形態であり(80−90%)、一方でAβ42はAD病変形成に最も密接に関連する。特に、稀な家族性の形態のADを引き起こすAPP、PS−1、およびPS−2遺伝子における変異は、Aβ42が主要な毒性種として凝集することで発症に関与する(Selkoe, D.J., Physiol. Rev., 81:741-766 (2001))。最近の証拠により、オリゴマー、プロトフィブリル、および細胞内Aβ42が疾患の過程に重要な役割を果たすことが示唆されている(Cleary, J.P. et al., Nat. Neurosci., 8:79-84 (2005))。Aβ42を形成する酵素、例えばγ−セクレターゼの阻害剤は、AD治療のための強力な疾患修飾薬となる可能性を有する。
【0006】
γ−セクレターゼはAPPに加え、様々なI型膜貫通タンパク質を切断する(Pollack, S.J. et al., Curr. Opin. Investig. Drugs, 6:35-47 (2005))。これらの切断の大半における生理的意義は不明であるが、遺伝学的証拠により、γ−セクレターゼによるNotchの切断がNotchシグナリングに必要であることが示唆されている(Artavanis-Tsakonas, S. et al., Science, 284(5415):770-776 (1999); Kadesch, T., Exp. Cell Res., 260(1):1-8 (2000))。γ−セクレターゼ阻害剤を投与したげっ歯類において、薬剤−関連毒性が消化管(GI)、胸腺、および脾臓で確認された(Searfoss, G.H. et al., J. Biol. Chem., 278: 46107-46116 (2003); Wong, G.T. et al., J. Biol. Chem., 279:12876-12882 (2004); Milano, J. et al., Toxicol. Sci., 82:341-358 (2004))。これらの毒性はNotchシグナリングの阻害に関連していると考えられる(Jensen, J. et al., Nat Genet., 24:36-44 (2000))。
【0007】
メカニズムに基づく毒性の同定は、許容可能な治療指数がγ−セクレターゼ阻害剤により達成できるかという疑問を呈する。Notch切断と比較してのAβ形成の選択的阻害、薬物動態、薬物蓄積および/または組織特異的な薬力が治療限界に影響し得る。
【0008】
γ−セクレターゼ阻害による脳内Aβレベルの減少がADの発症および進行を予防し得ることが証拠により示唆される(Selkoe, D., Physiol. Rev., 81:741-766 (2001); Wolfe, M., J. Med. Chem., 44:2039-2060 (2001))。他の疾患、例えば軽度認識障害(MCI)、ダウン症、脳アミロイド血管症(CAA)、レヴィー小体型認知症(DLB)、筋萎縮性側索硬化症(ALS−D)、封入体筋炎(IBM)、および加齢性黄斑変性症におけるAβの役割に関して新しいデータが出されている。有利なことに、γ−セクレターゼを阻害し、Aβ産生を減少させる化合物は、これらのまたは他のAβ−依存的疾患の治療に用いられ得る。
【0009】
Aβの過剰な産生および/またはクリアランスの減少はCAA(Thal, D. et al., J. Neuropath. Exp. Neuro., 61:282-293 (2002))を引き起こす。これらの患者において、血管アミロイド沈着が血管壁の変性を引き起こし、高齢患者における出血性卒中の10−15%の原因は動脈瘤である可能性がある。ADと同様に、Aβをコードする遺伝子における変異がオランダ型脳出血アミロイドーシスと呼ばれるCAAの早期発症を引き起こし、この変異タンパク質を発現するマウスは患者と同様のCAAを発症する。γ−セクレターゼを特異的な標的とする化合物はCAAを減弱または予防し得る。
【0010】
DLBは幻視、妄想、およびパーキンソニズムを症状とする。興味深いことに、Aβ沈着を引き起こす家族性AD変異は、レヴィー小体およびDLB症候をも引き起こし得る(Yokota, O. et al., Acta Neuropathol. (Berl.), 104:637-648 (2002))。さらに、孤発性DLB患者はADと同様のAβ沈着を有する(Deramecourt, V. et al., J. Neuropathol. Exp. Neurol., 65:278-288 (2006))。これらのデータに基づくと、AβはDLBにおけるレヴィー小体病理を促進すると考えられ、故にγ−セクレターゼ阻害剤はDLBを減弱または予防し得る。
【0011】
ALS患者の約25%が重篤な認知症または失語症を呈する(Hamilton, R.L. et al., Acta Neuropathol. (Berl.), 107:515-522 (2004))。これらの患者の大部分(〜60%)(ALS−Dとする)は主にTDP−43タンパクからなるユビキチン−陽性封入体を有する(Neumann, M. et al., Science, 314:130-133 (2006))。ALS−D患者の約30%がその認知症を引き起こすAβと一致するアミロイド斑を有する(Hamilton, R.L. et al., Acta Neuropathol. (Berl.), 107:515-522 (2004))。これらの患者はアミロイドイメージング試薬で同定可能であり、γ−セクレターゼ阻害剤で治療できる可能性が高い。
【0012】
IBMは稀な骨格筋の年齢依存的変性疾患である。IBMの筋肉におけるAβ沈着の出現および筋肉にAPPを過剰発現させたトランスジェニックマウスにおけるいくつかの病態の再現により、IBMにおいてAβが役割を有することが支持される(Murphy, M.P. et al., Neurology, 66:S65-S68 (2006)によりレビュー)。γ−セクレターゼを特異的な標的とする化合物はIBMを減弱または予防し得る。
【0013】
加齢性黄斑変性症において、Aβはドルーゼン、網膜色素上皮(RPE)下の細胞外沈着物のいくつかの成分に1つとして同定された(Anderson, D.H. et al., Exp. Eye Res., 78:243-256 (2004))。最近の研究により、マウスにおけるAβと黄斑変性の密接な関連が示された(Yoshida, T. et al., J. Clin. Invest., 115:2793-2800 (2005))。AD患者において、Aβ沈着および核白内障の増加が認められている(Goldstein, L.E. et al., Lancet, 361:1258-1265 (2003))。γ−セクレターゼを特異的な標的とする化合物は加齢性黄斑変性症を減弱または予防し得る。
【0014】
腫瘍形成におけるNotchシグナリングの役割に基づくと、γ−セクレターゼを阻害する化合物は癌の治療のための治療薬としても有効であり得る(Shih, I.-M. et al., Cancer Res., 67:1879-1882 (2007))。
【0015】
γ−セクレターゼを阻害する化合物は、例えば多発性硬化症などにおける髄鞘形成の減少に伴う症状の治療にも有効であり得る(Watkins, T.A. et al., Neuron, 60:555-569 (2008))。
【0016】
ジョージタウン大学メディカルセンターの研究者による最近の研究により、γ−セクレターゼ阻害剤が外傷性脳損傷における長期的な損傷を防止し得ることが示唆された(Loane, D.J., et al., Nat. Med., 1-3 (2009))。
【0017】
Smith et al.は国際出願WO 00/50391(2000年8月31日公開)において、様々な疾患、特にアルツハイマー病および他のアミロイド沈着に関連する疾患の治療方法としてアミロイドβタンパクの産生調節に働く一連のスルホンアミド化合物を開示する。
【0018】
特許第11343279号(1999年12月14日公開)は、自己免疫疾患の治療に有用なTNF−α阻害剤である一連のスルホンアミド誘導体を開示する。
【0019】
Parker et al.は国際出願WO 03/053912(2003年7月3日公開)において、アルツハイマー病および他のβ−アミロイドペプチドが関連する病態の治療に有用なβアミロイド阻害剤として一連のα−(N−スルホンアミド)アセトアミド誘導体を開示する。
【0020】
本開示は、アルツハイマー病および他のβ−アミロイドペプチドが関連する病態の治療に有用な化合物を提供する。
【発明の概要】
【0021】
本開示は、式(I)を有する重水素化(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミド、それらの医薬組成物、およびアルツハイマー病(AD)または他のβ−アミロイドペプチドが関連する障害に罹患している、または罹患しやすい患者においてAβ産生を阻害するためのそれらの使用に関連する。
【化1】

【0022】
(発明の詳細な説明)
本開示の態様の1つにおいて、式(I−A)に示されるように、重水素はオキサジアゾール環に付加される。
【化2】

【0023】
別の実施態様の1つにおいて、本開示は、治療上有効量の重水素化(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミド化合物を医薬的に許容されるアジュバント、担体または希釈剤と共に含む医薬組成物を提供する。
【0024】
別の実施態様の1つにおいて、本発明は治療上有効量の重水素化(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミドまたはその溶媒和物または水和物を一般的なアジュバント、担体または希釈剤と共に投与することを特徴とする、β−アミロイドペプチドが関連する障害、特にアルツハイマー病、脳アミロイド血管症、軽度認知障害およびダウン症の治療、緩和またはその発症の遅延のための方法を提供する。
【0025】
別の態様の1つにおいて、本発明は、不活性な有機溶媒中、塩基、好ましくは炭酸セシウムなどの不活性な塩基の存在下において(R)−2−(4−クロロフェニルスルホンアミド)−5,5,5−トリフルオロペンタンアミドを3−(4−(ブロモメチル)−3−フルオロフェニル)−5−重水素−1,2,4−オキサジアゾールと反応させる工程を含む(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−5−重水素−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミドの製造方法を提供する。
【0026】
別の態様の1つにおいて、本開示は、
(a) (R)−2−(4−クロロ−N−(4−シアノ−2−フルオロベンジル)フェニルスルホンアミド)−5,5,5−トリフルオロペンタンアミドをヒドロキシルアミンと反応させる工程、および
(b) 得られた(R)−2−(4−クロロ−N−(2−フルオロ−4−(N’−ヒドロキシカルバムイミドイル)ベンジル)フェニルスルホンアミド)−5,5,5−トリフルオロペンタンアミドを不活性な有機溶媒中、酸触媒の存在下においてオルトギ酸トリエチル−Dで処理する工程
を含む(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−5−重水素−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミドの製造方法を提供する。
【0027】
本発明の化合物は不斉炭素原子を有するため、本発明は式(I)の化合物のラセミ体および個々のエナンチオマーならびに本明細書中に記載の中間体のキラル体およびラセミ体を包含する。単一の記号、例えば(R)または(S)の使用は、通常1つの立体異性体を含むよう意図される。異性体の混合物は、例えば分別結晶化、クロマトグラフィ吸着または別の分離方法などの周知の方法により個々の異性体に分離することができる。得られたラセミ体は、適切な塩形成基の導入後に通常の方法により、例えば光学活性な塩形成剤を用いてジアステレオマー塩の混合物を形成し、混合物をジアステレオマー塩に分離し、分離した塩を遊離化合物に変換することにより対掌体に分離することができる。エナンチオマー体は、キラル高圧液体クロマトグラフィカラムによる分画によっても分離することができる。式またはスキームにおける重水素の取り込みは、記号「D」、「d」または「2H」の使用により示されることは、理解されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の方法において、用語「治療上有効量」は意義のある患者利益を示す、例えばβ−アミロイドが関連する病態の治癒に十分な、該方法における各成分の総量を意味する。個々の活性成分に適用される場合、該用語はその成分単独を意味する。組み合わせに適用される場合、該用語は、組み合わせ、連続または同時に投与されるかどうかにかかわらず、治療効果をもたらす活性成分の合計量を意味する。本明細書中および請求項で用いられる用語「治療する、治療の、治療」は、β−アミロイド関連の疾患の予防、遅延、抑制または改善を意味する。
【0029】
本発明の別の実施態様の1つにおいて、式(I)の化合物は、式(I)の化合物が有用な疾患または病態の治療/予防/抑制または改善に使用される別の薬剤と組み合わせて用いられてもよい。かかる別の薬剤は、それらが通常用いられる経路および投与量において、本発明の化合物と同時に、または時間差で用いられてもよい。式(I)の化合物が1つまたはそれ以上の別の薬剤と同時に用いられる場合、式(I)の化合物に加えてかかる薬剤を含む医薬組成物が好ましい。かくして、本発明の医薬組成物は、式(I)の化合物に加えて1つまたはそれ以上の別の活性成分を含む医薬組成物を包含する。アルツハイマー病の治療のために(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−5−重水素−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミドとの組み合わせで用いられ、別々のまたは同一の医薬組成物において投与され得る別の活性成分の例は、これらに限定されないが、コリンエステラーゼ阻害剤に分類される薬剤、例えばドネペジル(ARICEPT(登録商標))、リバスチグミン(EXELON(登録商標))、ガランタミン(REMINYL(登録商標)、現RAZADYNE(登録商標));NMDAアンタゴニストである別の薬剤、例えばメマンチン(NAMENDA(登録商標))およびPDE4阻害剤、例えばシロミラスト(ARIFLO(登録商標));NSAID類、例えばR−フルルビプロフェン(FLURIZAN(登録商標));コレステロール低下スタチン薬剤、例えばプラバスタチン、シンバスタチンおよびアトルバスタチン;抗アミロイドおよび抗Aβ免疫療法;Aβの凝集を阻害する薬剤、例えばシロイノシトール(scylloinositol)およびクリキノール;Aβ産生または切断を阻害または調節する別の化合物、例えばγ−セクレターゼ阻害剤、β−セクレターゼ阻害剤、γ−セクレターゼモジュレーター(modulator)、Aβモジュレーター、およびGSK−3阻害剤;Aβのターンオーバーを制御する化合物、例えばPAI−1阻害剤;タウのリン酸化を制御する化合物、例えばGSK−3およびCDK−5阻害剤;PPARγアゴニスト、例えばロシグリタゾン;タウもしくはリン酸化タウのターンオーバーまたはオリゴマー化を制御する化合物、例えばHSP90阻害剤、HDAC阻害剤および抗タウ免疫療法;および微小管を安定化または微小管と結合する化合物、例えばタキサン誘導体およびエポチロン誘導体;およびミトコンドリア機能を制御する化合物、例えばDimebonである。
【0030】
癌の治療において、本発明の化合物は既知の抗癌剤または抗癌療法と共に用いられてもよい。かかる薬剤および治療方法は、例えば細胞障害性/細胞増殖抑制剤、アンドロゲン受容体モジュレーター、エストロゲン受容体モジュレーター、レチノイド受容体モジュレーター、プレニル化タンパク転移酵素阻害剤、血管新生阻害剤、細胞周期チェックポイントに干渉する薬剤、および放射線療法である。さらに、本発明の化合物はループスなどの免疫障害の治療においても有効であり得る。
【0031】
上記の薬剤は、本発明の化合物との組み合わせで用いられる場合、例えばPhysicians’ Desk Reference(PDR)で指示される量(適用可能であるか、さもなければ当業者により決定される)において用いられ得る。
【0032】
しかしながら、実際に投与される量は、関連する状況、例えば治療目的の症状、投与する化合物の選択、選択される投与経路、個々の患者の年齢、体重、ならびに反応、および患者の症候の重症度を考慮して医師により決定されることは理解されるべきである。
【0033】
一般的な反応スキーム
本開示の化合物は有機合成分野の当業者に周知の数多くの方法により製造され得る。式(I)の化合物は以下の反応スキーム1−5に記載される方法により製造することができる。記載の方法の合理的な変法および当業者に明らかな合成方法は、本開示の範囲に包含されるよう意図される。
【0034】
反応スキーム1
【化3】

反応スキーム1で説明される1つの製造方法において、実質的に鏡像的純粋な形態で用いられる式(II)の開始物質は、トリフルオロブチルアルデヒドを式(II)の(α−アミノ)アセトアミドに変換する反応スキーム3に記載される不斉ストレッカー合成方法などの文献的に周知の方法により製造されてもよく、あるいは、(R)−5,5,5−トリフルオロノルバリン(Ojima, I., J. Org. Chem., 54:4511-4522 (1989)を参照)から、反応スキーム4に記載の方法、次いでアミド製造の一般的方法(Larock, R.C., Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers, New York, pp. 972-976 (1989))により製造されてもよい。式(II)の(α−アミノ)アセトアミドを適切な塩基で処理し、室温に近い温度下などにおいてCHClなどの適切な非プロトン性溶媒中でp−クロロスルホニルクロリドによりスルホニル化すると、式(III)の(α−スルホンアミド)アセトアミドが得られる。適切な塩基は、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ピリジンなどである。
【0035】
式(III)の化合物の式(I−A)のスルホンアミドへの変換は、塩基の存在下、適切な非プロトン性溶媒中において、加熱または非加熱下で式(III)の(α−スルホンアミド)アセトアミドを式(IV)の重水素化オキサジアゾールフルオロベンジルアルカリ化試薬と反応させることにより行われる。式(IV)の重水素化フルオロベンジルオキサジアゾールは、当業者に周知の方法および反応スキーム6に記載の方法により(ここで、Xは脱離基である)容易に製造され得る。このアルキル化における適切な塩基は、例えば炭酸カリウムおよび炭酸セシウムである。好ましい溶媒は、例えばDMFおよびアセトニトリルである。該反応を実施するための温度範囲は、典型的には20℃から100℃である。
【0036】
反応スキーム2
【化4】

反応スキーム2で説明される別の製造方法において、式(I−A)の1,2,4−オキサジアゾール化合物は、式(III)の化合物を適切な溶媒中で式(VI)の2−シアノ−4−フルオロベンジル誘導体(ここで、Xは脱離基である)でアルキル化し、式(VII)のニトリル化合物を得ることにより製造される。次いで、目的の式(I−A)の化合物は、式(VII)のニトリル化合物から当業者に周知の方法を用いて製造される(参考文献:Joule, J.A. et al., Heterocyclic Chemistry, 3rd ed., Chapman & Hall, London, pp. 452-456 (1995)およびその文献中の引用文献)。例えば、メタノールまたはエタノールなどのアルコール溶媒中、最高で還流温度までにおける式(VII)のニトリル化合物とヒドロキシルアミンの反応により、中間体アミドオキシムが得られ、それを次いで、トリフルオロ酢酸または三フッ化ホウ素エーテルなどの酸源の存在下、CHCl、アセトニトリル、テトラヒドロフランなどの不活性有機溶媒中で重水素−オルトギ酸エステル(例えばオルトギ酸トリエチル−Dまたはオルトギ酸トリメチル−D)で処理することにより、式(I−A)の1,2,4−オキサジアゾールが得られる。
【0037】
反応スキーム3
【化5】

反応スキーム3は、市販のトリフルオロブチルアルデヒドおよび(R)−α−メチルベンジルアミンを開始物質とし、ストレッカー(Strecker)条件下において、酢酸、およびシアン化ナトリウム、シアン化カリウムまたはトリメチルシリルシアニドなどのシアン化物源を用い、メタノールなどの適切な溶媒中で式(VIII)のアミノニトリルをジアステレオマーの混合物として得る式(II)の(α−アミノ)アセトアミドの製造を示す。開始物質トリフルオロブチルアルデヒドはトリフルオロブタノールを酸化して製造されてもよい。式(VIII)のアミノニトリルの対応する式(IX)のアミドへの加水分解は、硫酸を用い、反応物を中和し、次いで酸性化し、メタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、メチル tert−ブチルエーテル、またはそれらの混合物などの適切な溶媒中で再結晶化することにより行われ、式(X)のアミドが>99%のジアステレオマー過剰率において得られる。次いで、水酸化パラジウムまたはパラジウム炭素などの適切な触媒の存在下における水素付加によりベンジル基を除去することができ、式(II)のアミノアミドが得られ、それをp−クロロスルホニルクロリドでスルホン化することにより式(III)のスルホンアミドが得られる。
【0038】
反応スキーム4
【化6】

別の製造方法において、式(II)の(α−アミノ)アセトアミドは、反応スキーム4で説明されるように、5,5,5−トリフルオロ−2−オキソペンタン酸を開始物質とする酵素過程により立体選択的に製造することができる。式(XIV)の(R)−5,5,5−トリフルオロノルバリンは、式(XIII)の化合物から、市販の酵素(R)−アミノトランスフェラーゼを用い、当業者に周知の方法により、鏡像異性的に非常に純度の高い形態で製造され得る。あるいは別の方法において、酵素過程は市販の(R)−アミノ酸デヒドロゲナーゼによって行われてもよい。酵素過程は以下に記載の方法および当業者に周知の方法により行われる。式(XIV)の(R)−5,5,5−トリフルオロノルバリンの式(II)の化合物への変換は、当業者に周知のアミド製造の一般的工程を用いて行われる。
【0039】
反応スキーム5
【化7】

式(VIa)のベンジルブロミドは、反応スキーム5で説明されるように、ジクロロメタン、ジクロロエタンまたは四塩化炭素などの適切な溶媒中で、AIBNなどのイニシエーターを用いて市販の2−フルオロ−4−シアノトルエンをN−ブロモスクシンイミドでブロム化することにより製造することができる。ブロム化は高収率で進行し、必要なら、当業者に周知の方法により、式(VIa)の化合物は直ちに式(VI)の化合物(ここで、Xは脱離基である)に変換することができる。
【0040】
反応スキーム6
【化8】

【0041】
反応スキーム7
【化9】

当業者に明らかなように、重水素原子は式(I)の化合物の製造に用いられる様々な開始物質に組み込まれていてもよい。例えば、スキーム7に示されるように、アミノアミドIIのスルホニル化に1つまたはそれ以上の重水素原子を組み込んだスルホニルクロリドを用いることにより重水素化スルホンアミドIII-dが得られ、それを式(I−B)の化合物の製造に用いることができる。かかる方法は、式(I)の化合物の目的の位置に1つまたはそれ以上の重水素原子を組み込ませることに用いられてもよい。DE10162121A1は、スルホンアミドフェニル環に重水素を含む式(I)の化合物の製造に有用な2,3,5,6−テトラ重水素−4−クロロベンゼンスルホニルクロリドの合成を提供する。
【0042】
別の実施態様の1つにおいて、本開示は、式(I)の化合物を医薬的アジュバント、担体または希釈剤との組み合わせで含む医薬組成物を包含する。
【0043】
別の実施態様の1つにおいて、本開示は、治療上有効量の式(I)の化合物またはその溶媒和物もしくは水和物を哺乳類の対象に投与することを特徴とする、治療が必要な哺乳類におけるβ−アミロイド阻害に応答する障害の治療方法に関連する。
【0044】
別の実施態様に1つにおいて、本開示は、治療上有効量の式(I)の化合物またはその溶媒和物もしくは水和物を患者に投与することを特徴とする、治療が必要な患者におけるアルツハイマー病、脳アミロイド血管症、全身性アミロイドーシス、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型)、多発脳梗塞性認知症、軽度認知障害およびダウン症の治療、改善または発症の遅延のための方法に関連する。
【0045】
別の実施態様の1つにおいて、本発明は、治療上有効量の式(I)の化合物またはその溶媒和物もしくは水和物を治療が必要な哺乳類の対象に投与することを特徴とする、頭部外傷、外傷性脳損傷、および/またはボクサー認知症の治療のための方法に関連する。
【0046】
別の実施態様の1つにおいて、本発明は、治療上有効量の式(I)の化合物またはその溶媒和物もしくは水和物を治療が必要な哺乳類の対象に投与することを特徴とする、頭部外傷の治療のための方法に関連する。
【0047】
別の実施態様の1つにおいて、本発明は、治療上有効量の式(I)の化合物またはその溶媒和物もしくは水和物を治療が必要な哺乳類の対象に投与することを特徴とする、外傷性脳損傷の治療のための方法に関連する。
【0048】
別の実施態様の1つにおいて、本発明は、治療上有効量の式(I)の化合物またはその溶媒和物もしくは水和物を治療が必要な哺乳類の対象に投与することを特徴とする、ボクサー認知症の治療のための方法に関連する。
【0049】
治療を目的とした使用において、医薬的に活性な式(I)の化合物は、通常、少なくとも1つのかかる化合物を不可欠な活性成分として、固形もしくは液状の医薬的に許容される担体ならびに医薬的に許容されるアジュバントおよび賦形剤を標準的かつ一般的な技術を用いて適宜共に含有させた医薬組成物として投与される。
【0050】
該医薬組成物は、経口、非経口(例えば皮下、筋肉内、皮内および静脈)、皮内、舌下、気管支または経鼻に適した投与剤形を含む。故に、固形の担体が用いられた場合、錠剤、硬ゼラチンカプセル内の粉剤もしくはペレット剤形、またはトローチ剤もしくは薬用キャンディーの剤形として製造されてもよい。固形の担体は一般的な賦形剤、例えば結合剤、充填剤、錠剤化滑沢剤、崩壊剤、湿潤剤などを含んでいてもよい。錠剤は、必要な場合、一般的な技術により薄膜でコーティングされてもよい。経口用投与剤形は、ゼラチン製押し出しカプセル、およびグリセロールもしくはソルビトールによるコーティングを有するゼラチン製の軟性の被覆カプセル(scaled capsule)を含む。押し出しカプセルは充填剤または結合剤(例えば乳糖もしくはデンプン)、滑沢剤(例えばタルクもしくはステアリン酸マグネシウム)、および適宜安定化剤と混合した活性成分を含み得る。軟性のカプセルにおいて、活性成分は安定化剤の存在下または不存在下で適切な液体(例えば脂肪油、液体、または液体ポリエチレングリコール)に溶解または懸濁されてもよい。液体の担体が用いられた場合、剤形はシロップ剤、エマルジョン剤、ソフトゼラチンカプセル、注射用の滅菌媒体、水性または非水性の液体懸濁剤、または使用前に水もしくは適切な別の媒体で再構成する乾燥製剤の形でもよく、液体製剤の剤形は一般的な添加剤、例えば懸濁化剤、乳化剤、湿潤剤、非水性媒体(例えば食用油)、保存剤ならびに香料および/または着色剤を含んでいてもよい。非経口投与において、媒体は通常大部分において滅菌水を含むが、生理食塩水、グルコース溶液などを利用してもよい。注射可能な懸濁剤もまた用いられ得るが、この場合、一般的な懸濁化剤を用いてもよい。一般的な保存剤、緩衝剤などもまた、非経口投与剤形に用いられ得る。局所的または経鼻投与において、特定のバリアーの透過に適した浸透剤または透過剤を製剤に用いてもよい。かかる浸透剤は技術的に周知である。該医薬組成物は、本発明による式(I)の化合物である活性成分を含む目的の製剤に適した一般的な技術により製造される(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, PA, 17th edition (1985)参照)。
【0051】
治療効果を達成するための式(I)の化合物の投与量は、患者の年齢、体重および性別ならびに投与方法などの因子だけでなく、目的とするAβ阻害の度合いおよび考慮する具体的な障害または疾患における式(I)の化合物の能力に依存する。治療および式(I)の化合物の用量は単位投与剤形で投与してもよく、単位投与剤形は活性の相対的レベルを反映するよう当業者により適宜調整され得ることも意図される。用いられる具体的用量(および一日あたりの投与回数)の決定は医師の裁量の範囲内であり、目的の治療効果を提供するための、具体的状況に対する本発明の用量の設定により変化し得る。
【0052】
哺乳類、例えば本明細書中に記載されるAβペプチド産生が関連するいずれの病態に罹患している、または罹患していると思われるヒトに対する本発明の化合物、またはその医薬組成物の適切な用量は、通常、非経口投与の場合、1日あたり約0.01mg/kgから約10mg/kgであり、好ましくは約0.1から2mg/kgである。経口投与の場合、用量は約0.01から約20mg/kgの範囲であり、好ましくは0.1から10mg/kg体重である。活性成分は、好ましくは1日あたり1から4回、等量を投与される。しかしながら、通常は低用量が投与され、治療下の対象における最適の用量が決定されるまで用量は徐々に増加する。良好な臨床的実践に従い、いずれの有害または厄介な副作用を引き起こすことなしに効果的な抗アミロイド効果をもたらすような濃度レベルにおいて本発明の化合物を投与することが望ましい。しかしながら、実際に投与される該化合物の量は、治療する病態、投与する化合物の選択、投与経路の選択、個々の患者の年齢、体重および応答、ならびに該患者の症状の重篤度といった関連する状況に応じて医師により決定されることは理解されるべきである。
【実施例】
【0053】
(生物学的データ)
(インビトロにおける薬理)
培養細胞におけるAβ形成の阻害
H4 APP751 SWEクローン8.20(Bristol−Myers Squibbで開発)およびスウェーデン変異型APP751を安定的に発現するH4神経膠腫細胞株を用いて、細胞における化合物のAβ40およびAβ42阻害について化合物のアッセイを行った。1:20の希釈における継代を週2回行い、細胞を対数期に維持した。IC50を決定するために、30μLの細胞(1.5x10細胞/ウェル)を0.0125%BSA(Sigma A8412)含有DMEM培地において、0.1μLのDMSOにより段階希釈された化合物を含む384−ウェルの化合物プレート(Costar 3709)に直接播種した。次いで、5%CO、37℃において19時間インキュベートし、プレートを簡単に遠心した(1000rpm、5分間)。抗体カクテルを40mM Tris−HCl(pH7.4、0.2%BSA)に新しく希釈することにより調製し、アッセイプレートに加えた。Aβ42の測定用には、Aβ42ネオエピトープ特異的抗体(565、Bristol−Myers Squibbで開発;Wallac試薬(Perkin Elmer)とコンジュゲート)およびAβのN−末端配列特異的抗体(26D6、SIBIA/Bristol−Myers Squibbで開発;APC(Perkin Elmer)とコンジュゲート)を混合し、20μLの混合物をインキュベートした細胞プレートの各ウェルに加え、最終濃度を0.8ng/ウェル(565)および75ng/ウェル(26D6)とした。抗体を含むアッセイプレートをアルミホイルで密閉し、終夜4℃でインキュベートした。シグナルはViewluxカウンター(Perkin Elmer)を用いて測定し、IC50値はCurveMaster(Excelフィットに基づく)によるカーブフィッティングを用いて決定した。
【0054】
(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−5−重水素−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミドは、H4−8Sw細胞においてAβ42の形成を強力に阻害した。分析により、Aβ42阻害のIC50=0.12±0.01nM(平均±SD、n=2)を得た。
【0055】
上記の結果により、(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−5−重水素−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミドが強力なγ−セクレターゼ阻害剤であることが確認された。これらの結果は、(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−5−重水素−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミドのアルツハイマー病、頭部外傷、外傷性脳損傷、ボクサー認知症、および/または他のβ−アミロイドペプチドが関連する障害の治療方法としての使用を支持する。
【0056】
以下の実施例は説明のために提供され、いかなる形においても本発明を限定すると解釈されることはなく、それは本発明の精神の範囲内において本発明の改変が可能であるからである。
【0057】
本発明の化合物は有機合成分野の当業者に周知の数多くの方法により製造可能である。本発明の化合物は、以下の方法、および有機化学合成の分野において周知の方法、または当業者により成されるそれらの変法により製造され得る。好ましい方法は、限定されないが、以下に記載する方法である。本明細書中に引用される全ての引用文献は、引用によりその全体をここに取り込むものとする。
【0058】
化合物はこのセクションに記載される反応および技術を用いて製造されてもよい。反応は用いる試薬および原料にてきした溶媒中で行われ、行われる変換に適切なものである。また、以下に記載する合成方法の記載において、提案される全ての反応条件、例えば溶媒の選択、反応雰囲気、反応温度、実験期間およびワークアップ過程はその反応において標準的なものとして選択され、それは当業者に容易に認識されるべきであることは自明である。該分子の様々な位置に存在する官能基が提案される試薬および反応に準拠したものでなくてはならないことは、有機合成分野の当業者に理解されるべきである。該反応条件に準拠する置換基に対するかかる制限は当業者に容易に理解され、代わりの方法が用いられるはずである。
【0059】
(具体的実施態様の説明)
以下の実施例において、全ての温度は摂氏で提供される。融点はThomas Scientific Unimelt毛細管融点装置で記録され、校正は行わなかった。プロトン磁気共鳴(1H NMR)スペクトルはBruker Avance 300、Bruker Avance 400、またはBruker Avance 500分光計で記録した。全てのスペクトルは示された溶媒中で決定され、化学シフトは内部標準テトラメチルシラン(TMS)から低磁場へのδ単位で記録され、プロトン間結合定数はヘルツ(Hz)で記録される。多重度パターンを以下のように示す:s、一重線;d、二重線;t、三重線;q、四重線;m、多重線;br、ブロードなピーク;dd、二重の二重線;br d、ブロードな二重線;dt、二重の三重線;br s、ブロードな一重線;dq、二重の四重線。臭化カリウム(KBr)または塩化ナトリウムフィルムを用いた赤外線(IR)スペクトルはポリスチレンフィルムの1601cm−1吸収にキャリブレートした4000cm−1から400cm−1のJasco FT/IR−410またはPerkin Elmer 2000 FT−IR分光計を用いて決定し、波数(cm−1)で記録した。施光度[α]Dは、Rudolph Scientific Autopol IV旋光計を用い、示された溶媒中で測定した;濃度はmg/mLで記される。低解像度質量分析(MS)および見かけの分子(MH)または(M-H)はFinnegan SSQ7000で測定した。高解像度質量分析はFinnegan MAT900で測定した。液体クロマトグラフィ(LC)/質量分析はWater Micromass ZQに装着したShimadzu LCを用いて行った。
【0060】
以下の略語を用いた:DMF(ジメチルホルムアミド);THF(テトラヒドロフラン);DMSO(ジメチルスルホキシド)、Leu(ロイシン);TFA(トリフルオロ酢酸);MTBE(メチル tert−ブチルエーテル);DAST(フッ化ジエチルアミノ硫黄)、HPLC(高圧液体クロマトグラフィ);rt(室温);aq.(水溶液);AP(面積パーセント)。
【0061】
製造A
(R)−2−アミノ−5,5,5−トリフルオロペンタンアミド 塩酸塩
工程A.4,4,4−トリフルオロブタナール
【化10】

ジクロロメタン(4.2L)をメカニカルスターラーおよび冷却槽を備えた20Lの四ツ口丸底フラスコに入れた。撹拌を開始し、反応混合物を0から−2℃に冷却した。4,4,4−トリフルオロブタノール(750.0g)を入れ、反応混合物をさらに−5から−8℃に冷却した。TEMPO;(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ、フリーラジカル)(9.15g)を加え、その間温度を−5から−8℃に保った。臭化カリウム水溶液(60g/1.17Lの水)を上の溶液に加え、温度を−5から−8℃に保った。NaOCl水溶液(8.8L、6−7重量%、炭酸水素ナトリウムによりpH=8.5に緩衝)を反応混合物に加え(注:発熱)、その間反応混合物の温度を5℃に保った。同様に、過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO)をNaOClの代わりに酸化剤として用いることができる。添加を完了後、ジクロロメタン層を分離し、水層をジクロロメタン(1x750mL)で洗浄した。ジクロロメタン層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾過し、4,4,4−トリフルオロブタナール溶液の濃度をNMRにより決定した。表題化合物を含む溶液をさらに加工することなく直接次の工程に用いた。
1H NMR (CDCl3) (400 MHz) δ 2.30 - 2.50 (m, 2H, CH2-CF3), 2.70 - 2.80 (m, 2H, CH2-CHO), 9.8 (s, 1H, CHO).
【0062】
工程B.5,5,5−トリフルオロ−2−(1−フェニルエチルアミノ)ペンタンニトリル(ジアステレオマー混合物)
【化11】

R−α−メチルベンジルアミン(528.5g)をメカニカルスターラーおよび冷却槽を備えた適切な容器に入れ、窒素ブランケット下に維持した。4,4,4−トリフルオロブチルアルデヒド溶液(工程Aから、550g)、次いでメタノール(3.3L)を入れた。次いで、反応混合物を約0から−3℃に冷却した。酢酸(氷酢酸、260mL)を滴下して加え、その間温度を0℃付近に保ち、次いでトリメチルシリルシアニド(581mL)を15分間かけて加えた。同様に、シアン化ナトリウム(NaCN)またはシアン化カリウムをシアニド源として用いることができる。反応混合物を25から27℃に昇温し、終夜撹拌した。反応の完了はTLCで決定した。冷却した水(10.0L)を反応混合物に入れ、反応混合物をジクロロメタン(1x10.0L)で抽出した。ジクロロメタン層を水(2x10.0L)、次いでブライン(1x5.0L)で洗浄した。ジクロロメタン層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮し、表題のアミノニトリル(ジアステレオマー混合物)を粘稠性の液体として得、平均収率は90%であった。
1H NMR (CDCl3) (400 MHz) δ 1.42 (d&m, 5H), 2.15 & 2.35 (two m, 1H each), 3.10 - 3.20 ( m, 1H), 4.10 - 4.15 (m,1H), 7.10 - 7.35 (m, 6H).
【0063】
工程C.5,5,5−トリフルオロ−2−(1−フェニルエチルアミノ)ペンタンアミド(ジアステレオマー混合物)
【化12】

メカニカルスターラーおよび冷却用の氷浴を備えた適切な容器内で、5,5,5−トリフルオロ−2−(1−フェニルエチルアミノ)ペンタンニトリル(工程Bからのジアステレオマーの粗混合物、1.10kg)をジクロロメタン(5.5L)に溶解し、窒素ブランケット下に維持した。撹拌を開始し、反応混合物を0から−5℃に冷却した。濃硫酸(1.75L)を上の混合物に温度を0℃以下に保ちながら1時間かけて滴下して加え;反応完了後に透明な溶液を得た。反応混合物の温度を25から27℃に昇温し、終夜撹拌した(12−14時間)。反応の完了はHPLCにより決定した。反応混合物を破砕した氷(〜15.0kg)にゆっくりと注ぎ、アンモニア水(〜25体積%)で中和した。水層を分離し、ジクロロメタン(2x3.0L)で抽出した。ジクロロメタン層を合わせ、水(1x12.0L)、次いでブライン(1x3.0L)で洗浄した。生成物に富んだ有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮し、0.85kg(72.0%)の粗表題化合物を得た。
1H NMR (CDCl3) (400 MHz) (Mixture of diasteromers) δ 1.36 (d&m, 4H, CH3 (J = 8.0 Hz & 1H of CH2), 1.90 (m, 1H of CH2), 2.15 & 2.35 (two m, 1H each of CH2-CF3), 2.80 - 2.90 ( m, 1H, CH-Ph), 3.60 - 3.70 (m,1H, -(CONH2)CH(NH), 5.90 & 6.45 (1H each of CONH2 with minor peaks for other diasteromer), 7.20 - 7.40 (m, 6H, Ar + NH).
【0064】
工程D.(R)−5,5,5−トリフルオロ−2−((R)−1−フェニルエチルアミノ)ペンタンアミド 塩酸塩
【化13】

5,5,5−トリフルオロ−2−(1−フェニルエチルアミノ)ペンタンアミド(ジアステレオマー混合物)(850g)をメカニカルスターラーおよび冷却槽を備えた適切な容器に入れた。メタノール(2.55L)、酢酸エチル(1.7L)および水(1.06L)を入れ、反応混合物を0から5℃に冷却した。HClのジオキサン溶液(4.5M、1.72L)を30から45分間かけて滴下して加えた。同様に、イソプロパノールおよびメチル tert−ブチルエーテルの混合物を溶媒として、HCl水溶液または濃HClをHCl源として用いることができる。次いで反応混合物の温度を25から27℃に昇温し、2時間撹拌した。反応の完了はTLCで決定した。沈殿した固形物を濾過し、該ケーキを適切な溶媒、例えば酢酸エチル(1.8L)、次いで石油エーテル(2.5L)、またはイソプロパノールおよびメチル tert−ブチルエーテルの混合物で洗浄した。固形物をオープントレイ上において周囲温度で乾燥し、表題R−アミノアミド(480g、収率50%、ジアステレオマー過剰率=99.9%)を得た。
1H NMR (CDCl3) (400 MHz) δ 1.73 (d, 3H, CH3, J = 8.0 Hz), 2.08 - 2.09 (m, 2H of CH2), 2.20 - 2.40 (m, 2H, CH2-CF3), 3.50 - 3.55 ( m, 1H, CH-Ph), 4.40 - 4.41 (m,1H, -(CONH2)CH(NH), 7.48 - 7.53 (br s, 5H, Ar).
【0065】
工程E.(R)−2−アミノ−5,5,5−トリフルオロペンタンアミド 塩酸塩
【化14】

(R)−5,5,5−トリフルオロ−2−((R)−1−フェニルエチルアミノ)−ペンタンアミド 塩酸塩(1.50kg)をメタノール(15.0L)と共に適切な圧力容器に入れた。次いで、水(701.0mL)、これに次いで20%水酸化パラジウム/炭素(225g)を加えた。同様に、パラジウム炭素(Pd/C)を水素化触媒として用いることができる。容器に窒素を3回フラッシュし、次いで容器に水素ガスを60℃で加圧して注入した(3−4 kg/cm)。反応の完了はHPLCでモニターした。完了の際、反応混合物を30−35℃に冷却し、Celite(登録商標)パッドを通して濾過し、次いでメタノールで洗浄した。次いで、濾液を減圧濃縮した。濃縮完了後、残った反応混合物をジクロロメタン(2.5L/洗浄)で処理し、濾過し、45℃で12時間乾燥し、表題化合物(915g、91.0%;純度=97%)を得た。
1H NMR (DMSO-d6) (400 MHz) δ 2.00 (m, 2H, CH2), 2.30 - 2.40 (m, 2H of CH2-CF3), 3.85 - 3.88 (m,1H, -(CONH2)CH(NH), 7.64 & 8.11 (br s, 1H, each of CONH2), 8.44 (br s, 3H, NH3+). 13C NMR (DMSO-d6) (100.0 MHz) δ 169.57, 131.20, 128.45, 125.71, 122.97, 50.91, 29.46, 29.18, 28.89, 28.61, 23.56, 23.53.
【0066】
製造B
(R)−5,5,5−トリフルオロノルバリン
方法A.R−トランスアミナーゼ(BiocatalyticsおよびBMSトランスアミナーゼ)
5,5,5−トリフルオロ−2−オキソペンタン酸(100mg、0.588mmol)、R,S−アラニン(200mg、2.244mmol)、および0.02mM ピリドキサールリン酸を含む0.1M リン酸カリウムバッファー(pH7.5)溶液をBiocatalyticsからのR−トランスアミナーゼAT−103(5mg、44ユニット)、またはバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis) SC16569からクローン化されたR−トランスアミナーゼ(0.5mL、10ユニット、BMSトランスアミナーゼ)と共に、15mLのチューブ中5mLの総体積において30℃で44時間インキュベートした。(R)−5,5,5−トリフルオロ−2−アミノペンタン酸の反応収率は、AT−103およびBMSトランスアミナーゼについてそれぞれ49%および48%であった。両ケースにおいて、eeは100%であった。
【0067】
ピルビン酸を乳酸に還元する補助酵素を加えることにより、収率は上昇した。乳酸脱水素酵素は補因子としてNADHを必要とする。NADHは葉酸脱水素酵素を用いることで再生された。5,5,5−トリフルオロ−2−オキソペンタン酸(100mg、0.588mmol)、D,L−アラニン(200mg、2.244mmol)、0.02mM リン酸ピリドキサール、ギ酸ナトリウム(68mg、1mmol)、NAD(3.31mg、5μmol)、ウサギの筋肉からクローニングしたL−乳酸脱水素酵素(Biocatalytics LDH−103、0.107mg、15ユニット)、および葉酸脱水素酵素(0.5mL、15ユニット、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)からクローニングし、大腸菌(Escherichia coli)で発現)を含む0.1M リン酸カリウムバッファー(pH7.5)溶液をBiocatalyticsからのR−トランスアミナーゼ AT−103(5mg、44ユニット)またはバチルス・チューリンゲンシスからのR−トランスアミナーゼ SC16569(0.5mL、10ユニット)と共に、15mLのチューブ中5mLの総体積において30℃でインキュベートした。(R)−5,5,5−トリフルオロ−2−アミノペンタン酸の反応収率は、AT−103およびBMSトランスアミナーゼについてそれぞれ94%および91%であった。両ケースにおいて、eeは100%であった。
【0068】
方法B.(R)−アミノ酸脱水素酵素(BiocatalyticsおよびBMS)
手順1:5,5,5−トリフルオロ−2−オキソペンタン酸(60.00g、0.353mol)、NHCl(64.19g、1.2mol)、グルコース(86.4g、0.479mol)および水(975mL)を2-Lのジャケット付反応器に入れた。NaOH(10Nを36mL)を加え、マグネットを用いて混合物を30℃で撹拌し、固形物を溶解した。該pHは約7であった。NaCO(12.72g、0.12mol)を加えてpHを約8.5にした。NADP(458mg、0.60mmol)、グルコース脱水素酵素(33.7mg、5277ユニット、天野エンザイム株式会社から購入)、およびR−アミノ酸脱水素酵素(600mg D−AADH−102、Biocatalyticsから)を、この順番で加えた。10N NaOHを滴下して反応混合物のpHを9に調整した。反応混合物を30℃で撹拌し、pHスタットから5N NaOHを加えてpHを9.00に維持した。21時間後、(R)−5,5,5−トリフルオロ−2−アミノペンタン酸の溶液収量は51.1g、収率84.7%、100% eeであった。
【0069】
手順2:5,5,5−トリフルオロ−2−オキソペンタン酸(60.00g、0.353mol)、NHCl(64.19g、1.2mol)、グルコース(86.4g、0.479mol)および水(975mL)を2−Lのジャケット付反応器に入れた。NaOH(10Nを36mL)を加え、マグネットを用いて混合物を30℃で撹拌し、固形物を溶解した。該pHは約7であった。NaCO(12.72g、0.12mol)を加えてpHを約8.5に調整した。NADP(458mg、0.60mmol)、グルコース脱水素酵素(33.7mg、5277ユニット、天野エンザイム株式会社から購入)、およびD−アミノ酸脱水素酵素(1500ユニットを含む50mLの抽出物、BMS酵素)をこの順番で添加した。10N NaOHを滴下することにより、反応混合物のpHを9に調整した。反応混合物を30℃で撹拌し、pHスタットから5N NaOHを加えることによりpHを9に維持した。15時間後、(R)−5,5,5−トリフルオロ−2−アミノペンタン酸の溶液収量は51.04g、収率84.6%、99.1% eeであった。
【0070】
製造C
4−(ブロモメチル)−3−フルオロベンゾニトリル
【化15】

方法A.NBS/AIBNブロム化
1,2−ジクロロエタン(151kg)を4−シアノ−2−フルオロトルエン(24kg)およびAIBN(2kg)と共に適切な容器に入れた。混合物を70〜74℃で加熱した。バッチ温度が70℃に達したら、温度を70〜74℃に維持しながら(47.4kg)を少量ずつ12kg/時の速度で加えた(発熱反応を避けるため、添加速度を制御することが重要である)。24kgのN−ブロモスクシンイミドを添加後、混合物をGC検出により検査し、反応の完了が観察されるまで反応混合物を70−74℃で加熱した。混合物を0−5℃に冷却し、さらに2時間おいた。混合物を濾過し、ケーキをMTBE(24kg)で洗浄した。濾液を水(3x65kg)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウム(10.3kg)で6時間乾燥し、濾過し、ケーキをMTBE(24kg)で洗浄した。溶液を減圧下でエバポレートし、エタノール(12kg)を加え、混合物を40−45℃で加熱し、次いでゆっくりと0−5℃に冷却し、この間、撹拌して結晶化させた。混合物を濾過し、ケーキを冷エタノール(5kg)で洗浄した。粗固形物を石油エーテルから再結晶化し、濾過し、石油エーテル(10kg)で洗浄し、表題化合物4−(ブロモメチル)−3−フルオロベンゾニトリルを灰白色の固形物(21kg、収率55%)として得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ ppm 4.46 - 4.50 (m, 2 H) 7.36 (dd, J=8.85, 1.32 Hz, 1H) 7.44 (dd, J=7.91, 1.32 Hz, 1 H) 7.52 (dd, J=7.91, 7.16 Hz, 1 H). 13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ ppm 23.65 (d, J=4.60 Hz, 1 C) 113.76 (d, J=9.77 Hz, 1 C) 117.09 (d, J=2.87 Hz, 1 C) 119.44 (d, J=24.71 Hz, 1 C) 128.44 (d, J=4.02 Hz, 1 C) 130.66 - 130.81 (s, 1 C) 130.81 - 131.06 (s, 1 C) 132.18 (d, J=3.45 Hz, 1 C) 159.86 (d, J=254.03 Hz, 1C). IR: (KBr) 3088, 3077, 3040, 2982, 2250, 1571, 1508, 1439, 1248 cm -1.
Anal. Calcd for C8H5BrFN: Calc.C,44.89; H, 2.35; N, 6.54; F, 8.88; Found: C, 44.94; H, 2.73; N, 6.56; F, 8.73.
【0071】
方法B.臭素酸ナトリウムブロム化
適切な反応器に、ジクロロメタン(40L)および3−フルオロ−4−メチルベンゾニトリル(4kg、18.7mol)、次いで臭素酸ナトリウムの水溶液(13.45kg、89.1molを53.6Lの水に溶解)を加えた。反応混合物を0−5℃に冷却した。亜硫酸水素ナトリウム溶液(9.25kgを42Lの水に溶解)を2−3時間かけて加え、この間バッチ温度を10−20℃に保った(該反応は発熱性である)。添加完了後、200Wのランプで反応器を照らし、バッチ温度を25−30℃に昇温した。ランプ照射および該温度をHPLCにより70−75%の生成物が確認されるまで続けた。ランプを取り外し、撹拌を停止し、反応液を15分間安定させた。有機層を除去し、残った水層をジクロロメタンで2回抽出した。有機層を合わせ、次いで10%チオ硫酸ナトリウム溶液で4回洗浄した。次いで、有機層をブライン(10L)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。有機層を濃縮し、石油エーテルを加え、2回蒸留して全てのジクロロメタンを除去した。石油エーテル(3L)を加え、スラリーを5−10℃で1時間冷却した。該スラリーを濾過し、冷却した石油エーテルで洗浄した。該生成物を真空オーブン内において40−45℃で乾燥し、表題化合物(3.2kg、収率50.4%)を灰白色の固形物として得た。
【0072】
母液から表題化合物を回収する代表的な方法:母液(300g)の濃縮から得られた粗物質(〜36%、4−(ブロモメチル)−3−フルオロベンゾニトリルおよび〜59% gem−ジブロミド)および2当量のジイソプロピルエチルアミン(gem−ジブロミドに基づく)をアセトニトリル(3L)および水(50mL)に溶解した。反応液を0−5℃に冷却し、亜リン酸ジエチル(169g、1.22mol)を30分間かけて加えた(添加は発熱性であった)。反応液を0−5℃で60−90分間撹拌し、反応をTLCでモニターした。TLCにおいてジブロミドが存在しなくなったら、水(3.3L)を加え、得られたスラリーを濾過した。濾過ケーキを水で洗浄し、真空オーブンで乾燥し(含水量が<1%になるまで)、202g(HPLCによると98 AP)のさらなる表題化合物を得た。
【0073】
製造D
(R)−2−(4−クロロフェニルスルホンアミド)−5,5,5−トリフルオロペンタンアミド
工程A.5,5,5−トリフルオロ−2−(1−フェニルエチルアミノ)ペンタンニトリル
(R)−フェネチルアミン(9.60g、79.4mmol)および酢酸(5.08g、79.6mmol)のMeOH(150mL)溶液にNaCN(3.88g、79.6mmol)を加えた。反応液を0℃に冷却し、4,4,4−トリフルオロブチルアルデヒド(10.0g、79.6mmol)のMeOH(50mL)溶液を加えた。該反応液を室温に昇温し、20時間撹拌した。反応液を水(400mL)で希釈し、CHCl(3x300mL)で抽出した。有機層を合わせ、NaSOで乾燥し、減圧濃縮し、アミノニトリル表題化合物(18.1g、89%、ジアステレオマーの4:1混合物)を淡黄色の油状物として得た。
1H NMR (300 MHz, CD3OD) δ 7.38-7.27 (m, 5H), 4.15-4.02 (m, 1H), 3.69 (t, J = 7.5 Hz, 0.22H), 3.18 (t, J = 7.5 Hz, 0.78H), 2.48-2.26 (m, 1H), 2.25-2.03 (m, 1H), 2.01-1.86 (m, 2H), 1.39 (d, J = 6.5 Hz, 2.34H), 1.36 (d, J = 6.5 Hz, 0.66H); ESI MS m/z 257 [C13H15F3N2 + H].
【0074】
工程B.(R)−5,5,5−トリフルオロ−2−((R)−1−フェニルエチルアミノ)ペンタンアミド塩酸塩
5,5,5−トリフルオロ−2−(1−フェニルエチルアミノ)ペンタンニトリル(18.0g、70.31mmol、ジアステレオマーの4:1混合物)のCHCl(100mL)溶液にHSO(100mL)を加えた。反応液を室温で22時間撹拌し、破砕した氷に注ぎ、NHOHで中和した。混合物をEtOAc(3x500mL)で抽出した。有機層を合わせ、NaSOで乾燥し、減圧濃縮し、表題化合物の遊離塩基をジアステレオマーの混合物(18.94g、98%)として、橙色の油状物として得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.40-7.18 (m, 5H), 6.78 (br s, 0.23H), 6.50 (br s, 0.77H), 6.00 (br s, 0.77H), 5.81 (br s, 0.23H), 3.82 (q, J = 6.5 Hz, 0.23H), 3.70 (q, J = 6.5 Hz, 0.77H), 3.14 (t, J = 6.0 Hz, 0.23H), 2.86 (t, J = 7.0 Hz, 0.77H), 2.35-1.86 (m, 2H), 1.84-1.64 (m, 2H), 1.39 (d, J = 6.5 Hz, 0.69H), 1.35 (d, J = 6.5 Hz, 2.31H); ESI MS m/z 275 [C13H17F3N2O + H].
【0075】
塩酸塩
ジアステレオマーの混合物としての表題化合物の遊離塩基(11.9g、43.4mmol)のEtO/MeOH(7:1、40mL)溶液に1N HClのEtO(70mL)溶液を加えた。混合物を加熱することにより、生じた白色の沈殿物を再溶解し、MeOHを加えた(EtO/MeOHの最終的な比が4:1になるように)。該溶液を室温に冷却し、終夜放置した。表題化合物のアミノアミド塩酸塩を単一のジアステレオマー(3.11g、23%)、白色の固形物として単離した。
1H NMR (300 MHz, CD3OD) δ 7.93 (br s, 1H), 7.69 (br s, 1H), 7.54-7.44 (m, 5H), 4.39 (q, J = 7.0 Hz, 1H), 3.50 (t, J = 6.5 Hz, 1H), 2.29-2.20 (m, 2H), 2.10-2.01 (m, 2H), 2.07 (d, J = 7.0 Hz, 3H); ESI MS m/z 275 [C13H17F3N2O + H].
【0076】
工程C.(R)−2−(4−クロロフェニルスルホンアミド)−5,5,5−トリフルオロペンタンアミド
(R)−5,5,5−トリフルオロ−2−((R)−1−フェニルエチルアミノ)ペンタンアミド 塩酸塩(3.10g、10.0mmol)のEtOH(100mL)溶液にPd(OH)(350mg)および水(10mL)を加えた。反応混合物を50℃で4時間水素化した(40psi)。Celite(登録商標)を通して反応物を濾過し、濾液を減圧濃縮し、中間体アミン塩酸塩を白色の固形物として得た。該アミンのCHCl(100mL)懸濁物にN,N−ジイソプロピルエチルアミン(5.25mL、30.0mmol)および4−クロロベンゼンスルホニルクロリド(2.53g、12.0mmol)を加えた。反応物を室温で18時間撹拌し、EtOAc(200mL)で希釈し、NaHCO(250mL)およびブライン(250mL)で洗浄し、NaSOで乾燥し、減圧濃縮した。残渣をCHCl/ヘキサン (2:1)でトリチュレートし、表題化合物(2.91g、84%)を白色の固形物として得た。
1H NMR (300 MHz, CD3OD) δ 7.84 (dt, J = 8.5, 2.0 Hz, 2H), 7.55 (dt, J = 8.5, 2.0 Hz, 2H), 3.85 (dd, J = 8.5, 5.0 Hz, 1H), 2.34-2.05 (m, 2H), 1.97-1.68 (m, 2H); ESI MS m/z 345 [C11H12ClF3N2O3S + H].
【0077】
製造E
(R)−2−(4−クロロ−N−(4−シアノ−2−フルオロベンジル)フェニルスルホンアミド)−5,5,5−トリフルオロペンタンアミド
工程A.4−(ブロモメチル)−3−フルオロベンゾニトリル
3−フルオロ−4−メチルベンゾニトリル(5.0g、0.23mol)の四塩化炭素(100mL)溶液にN−ブロモスクシンイミド(4.97g、0.28mol)およびAIBN(100mg、0.61mmol)を加え、混合物を6時間還流した。反応物を冷却し、濾過した。濾液を水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、溶媒を減圧除去し、5.44gの表題化合物を灰白色の固形物として得た。H NMRにより20%の開始物質が存在することが示された。
表題化合物の1H NMR (400 MHz, CDCl3) : δ 7. 54-7.30 (m, 3H), 4.83 (s, 2H).
【0078】
工程B.(R)−2−(4−クロロ−N−(4−シアノ−2−フルオロベンジル)フェニルスルホンアミド)−5,5,5−トリフルオロペンタンアミド
(R)−2−(4−クロロフェニルスルホンアミド)−5,5,5−トリフルオロペンタンアミド(6.88g、20.0mmol)および4−(ブロモメチル)−3−フルオロベンゾニトリル(6.43g、30mmol)のDMF(35mL)溶液に無水CsCO(19.56g、60mmol)を加えた。得られた混合物を室温で45分間撹拌し、EtOAc(200mL)で希釈し、水(100mLx4)で洗浄し、NaSOで乾燥した。生成物をBiotage(40+Mカラム、3%から80% EtOAc/ヘキサン、651mL)で精製した。表題化合物を白色の固形物として得た(6.50g、収率68.1%)。
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz) δ 7.80-7.88 (m, 3H), 7.70-7.75 (m, 2H), 7.67 (d, 2H, J=8), 7.60 (s, 1H), 7.26 (s, 1H), 4.99 (d, 1H, J=16), 4.68 (d, 1H, J=16), 4.14 (t, 1H, J=8), 1.99-2.17 (m, 2H), 1.80-1.94 (m, 1H), 1.40-1.56 (m, 1H). LC/MS M+H 478.14, 94%.
【0079】
製造F
(R)−2−(4−クロロフェニルスルホンアミド)−5,5,5−トリフルオロペンタンアミド
【化16】

乾燥した適切な容器に、(R)−2−アミノ−5,5,5−トリフルオロペンタンアミド 塩酸塩(199.52g、0.966mol、1.0当量)、次いで4−クロロベンゼンスルホニルクロリド(215.22g、0.989mol、1.02当量、97% w/w%)および1.6LのTHFを室温で加えた。トリエチルアミン(206.5g、2.04mol、2.1当量)を20分間かけて加え、ポット温度を15−25℃に維持し、得られた白色のスラリーを15−25℃で30分間撹拌した。水(1.4L、7容積)を反応混合物に20−25℃で加え、次いでTHF(1.4L、7容積)を減圧下における蒸留により除去した(蒸留過程中、ポット温度を250−400mmHgで40−60℃に維持した)。蒸留工程終了時に1.4L(7容積)の水を30分間かけて加え、この間ポット温度を50−60℃に維持し、得られたスラリーを50−60℃で30分間撹拌し、10℃に冷却した。スラリーを1時間以上撹拌し、生成物を濾過した。ケーキのpHが≧5となるまでケーキを水(600mL/各洗浄)で洗浄した。乾燥による損失が≦0.5 w/w%であるまで該ケーキを70℃以下(ジャケット温度)で減圧乾燥し、表題化合物を白色の固形物として得た(300g、収率91%)。
1H NMR (DMSO-d6) (400 MHz) δ 160 - 1.90 (two m, 1H each of CH2), 2.10 - 2.35 (m, 2H of CH2-CF3), 3.85 - 3.88 (m,1H, -(CONH2)CH(NH), 7.13 & 7.37 (br s, 1H, each of CONH2), 7.61 (m, 2H, Ar-Ha), 7.64 (m, 2H, Ar-Hb), 8.18 (d, 1H, J = 8.0 Hz, NH-SO2). 13C NMR (DMSO-d6) (100.0 MHz) δ 171.75, 140.27, 137.77, 131.71, 129.56, 128.95, 126.22, 55.12, 30.1, 29.82, 29.53, 29.25, 25.82, 25.79.
【0080】
実施例1
(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−5−重水素−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミド
工程A.(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][(4−シアノ−2−フルオロフェニル)メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミド
【化17】

(R)−2−(4−クロロフェニルスルホンアミド)−5,5,5−トリフルオロペンタンアミド(3.444kg)、炭酸カリウム(2.774kg)、テトラブチルアンモニウム ブロミド(0.484kg)、および4−(ブロモメチル)−3−フルオロベンゾニトリル(2.092kg)を反応器に入れた。次いで、酢酸エチル(17.2L)および水(3.44L)を加え、HPLCで反応の完了が確認されるまで(開始物質が<1相対的APとなるまで)、バッチを50℃で加熱した。反応は通常約15時間以内に完了した。バッチを15−20℃に冷却し、水(6.88L)を加え、下層の水層を分離した。リン酸一ナトリウム溶液(0.2M/水、20.66L)を加え、下層の水層を分離し、pHを測定して<6.5であることを確認した(注:pHが>6.5の場合、さらに20.66Lの0.2M リン酸一ナトリウム溶液を加え、抽出およびpH測定を繰り返してもよい)。次いで、定積減圧蒸留(constant volume vacuum distillation)により溶媒を交換した。反応器を減圧下(270mmHg)に置き、ジャケットを75−80℃に加熱した。一旦酢酸エチルの蒸留が開始されると、イソプロパノール(41.34L)を蒸留物の回収と同じ速度で加え、全体のバッチ体積を同じレベルに維持した。全てのイソプロパノールを加え終わると、減圧を解除し、水(13.76L)を加えた。水を加える間、バッチ温度を約50℃に維持した。次いでバッチを15−20℃に冷却し、濾過した。湿ったケーキを50%(v/v)イソプロパノール水溶液(4x21.6kg)で洗浄し、50℃で減圧乾燥し、表題化合物を灰白色の固形物として得た(3.648kg、収率78%)。
1H NMR (300 MHz, DMSO- d6) δ ppm 1.42 - 1.55 (m, 1 H) 1.80 - 1.93 (m, 1 H) 2.00 - 2.15 (m, 2 H) 4.44 (dd, J=7.91, 1.13 Hz, 1 H) 4.68 (d, J=17.71 Hz, 1 H) 4.99 (d, J=17.71 Hz, 1 H) 7.26 (s, 1 H) 7.50 (s, 1 H) 7.63 -7.73 (m, 4 H) 7.78 - 7.87 (m, 3 H). 13C NMR (75 MHz, DMSO-d6) ppm 22.58 -22.97 (m, 1 C) 29.96 (d, J=29.09 Hz, 1 C) 41.46 (d, J=5.49 Hz, 1 C), 57.86, 110.97, 111.45 (d, J=10.43 Hz, 1 C), 117.58, 119.11 (d, J=25.80 Hz, 1 C), 124.89, 128.53, 128.56, 129.21, 131.17, 131.98, 137.44, 138.32, 158.99 (d, J=247.54 Hz, 2 C), 170.25. 19F NMR, (CDCl3, 282 MHz) δ: -116.5, -65.9. IR (KBr): 3443, 3342, 3210, 2955, 2245, 1699, 1577, 1476, 1163 cm -1. Anal. Calcd. for C19H16ClF4N3O3S Calc. C, 47.75; H, 3.37; N, 8.79; S, 6.71; F, 15.90; Cl, 7.41. Found: C, 47.95; H, 3.31; N, 8.67; S, 6.72; F, 15.59; Cl, 7.49.
【0081】
工程B.(R)−2−(4−クロロ−N−(2−フルオロ−4−(N’−ヒドロキシカルバムイミドイル)ベンジル)フェニルスルホンアミド)−5,5,5−トリフルオロペンタンアミド
【化18】

(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][(4−シアノ−2−フルオロフェニル)メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミド(399g)およびメタノール(1.6L)を反応器に入れ、次いでヒドロキシルアミン(50%溶液/水、93mL、1.8当量)を入れた。HPLCにより反応の完了が確認されるまで(開始物質の相対的APが<0.15となるまで)、混合物を45−50℃で加熱した。バッチ温度を30−50℃の間に維持しながら、水(0.5L)をゆっくりと加えた。結晶化が始まるまでバッチを静置し、次いで水(2.7L)を加えた。バッチを15−20℃に冷却し、濾過した。ケーキを2:1 MeOH:水(2L)で洗浄し、50℃で減圧乾燥し、表題化合物を白色の固形物として得た(415g、収率96%)。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.43 - 1.64 (m, 1 H) 1.77 - 1.93 (m, 1 H) 1.93 - 2.17 (m, 2 H) 4.41 (dd, J=8.48, 6.03 Hz, 1 H) 4.60 (d,J=17.14 Hz, 1 H) 4.94 (d, J=16.77 Hz, 1 H) 5.81 - 5.98 (m, 2 H) 7.19 - 7.27 (m, 1 H) 7.37 - 7.47 (m, 2 H) 7.52 (d, J=4.14 Hz, 2 H) 7.64 (d, J=8.67,Hz, 2 H) 7.85 (d, J=8.85 Hz, 2 H) 9.71 - 9.83 (m, 1 H).
IR (KBr): 3491, 3379, 1680, 1651, 1592, 1433, 1343.
Anal. Calcd. for C19H19ClF4N4O4S Calc. C, 44.66; H, 3.74; N, 10.96; S, 6.27; F, 14.87; Cl, 6.94. Found: C, 44.90; H, 3.91; N, 10.91; S, 6.41; F, 15.21; Cl, 6.95.
【0082】
工程C.(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−5−重水素−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミド
【化19】

(R)−2−(4−クロロ−N−(2−フルオロ−4−(N’−ヒドロキシ−カルバムイミドイル)ベンジル)−フェニルスルホンアミド)−5,5,5−トリフルオロペンタンアミド(500mg、0.98mmol)、オルトギ酸トリエチル−D(175mg、1.2mmol)のアセトニトリル(5ml)溶液(45℃)にTFA(3.8μl、0.049mmol)を加えた。混合物を60℃で90分間加熱し、次いで室温に冷却した。630mg(1.23mmol)の(R)−2−(4−クロロ−N−(2−フルオロ−4−(N’−ヒドロキシ−カルバムイミドイル)ベンジル)−フェニルスルホンアミド)−5,5,5−トリフルオロペンタンアミド、220mg(1.5mmol)のオルトギ酸トリエチル−Dおよび4.5μL(0.06mmol)のTFAのアセトニトリル(5mL)溶液、同じ条件を用いて、反応を繰り返した。反応混合物を合わせ、エバポレートし、得られた固形物をHPLC(Phenomenex Luna 100 x 30mM、0%MeOH−HO、0.1%TFAから100%MeOH−HO、0.1%TFA、15分間)で精製し、白色の固形物を得た(950mg、1.82mmol、83%)。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ ppm 8.0-7.9 (m, 1H), 7.8-7.7 (m, 3H), 7.7-7.6 (m, 1H), 7.6-7.5 (m, 2H), 6.4 (s, 1H), 5.4 (s, 1H), 4.7-4.6 (d, 1H), 4.6-4.5 (d, 1H), 4.5-4.3 (q, 1H), 2.3-2.2 (m, 1H), 2.1-1.9 (m, 1H), 1.9-1.8 (m, 1H), 1.6-1.5 (m, 1H). MS (LCMS) [M+H] = 521.98. 残存オキシアゾールのプロトンシグナルの積分により、〜1%の水素アイソトープアナログの存在が示唆された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−5−重水素−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミドである化合物。
【請求項2】
治療上有効量の(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−5−重水素−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミドを、医薬的に許容されるアジュバント、担体または希釈剤と共に含む医薬組成物。
【請求項3】
治療上有効量の(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−5−重水素−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミドを治療が必要な哺乳類に投与することを特徴とする、アルツハイマー病、脳アミロイド血管症、軽度認知障害および/またはダウン症の治療または発症の遅延のための方法。
【請求項4】
アルツハイマー病の治療のための請求項3の方法。
【請求項5】
治療上有効量の(2R)−2−[[(4−クロロフェニル)スルホニル][[2−フルオロ−4−(1,2,4−オキサジアゾール−5−重水素−3−イル)フェニル]メチル]アミノ]−5,5,5−トリフルオロペンタンアミドを治療が必要な哺乳類に投与することを特徴とする、頭部外傷、外傷性脳損傷、および/またはボクサー認知症の治療方法。
【請求項6】
頭部外傷の治療のための請求項5の方法。
【請求項7】
外傷性脳損傷の治療のための請求項5の方法。
【請求項8】
ボクサー認知症の治療ための請求項5の方法。

【公表番号】特表2012−520896(P2012−520896A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500955(P2012−500955)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/027780
【国際公開番号】WO2010/107984
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(391015708)ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニー (494)
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL−MYERS SQUIBB COMPANY
【Fターム(参考)】