説明

ベーンセルポンプ

本発明は、外側ロータ(8)、内側ロータ(16)および多数のベーン(20)を備えたベーンセルポンプであって、多数のベーンは内側ロータ(16)のほぼ半径方向のスロット(18)中に半径方向に変位可能に支持されかつ外側ロータ(8)に揺動可能に固定され、外側ロータ(8)はステータ(28)の内周面に沿って摺動し、ステータの軸と内側ロータ(16)の軸とが相互にずれを有し、ステータ(28)は内側ロータ(16)に対し半径方向に位置調整可能であることからずれは可変であり、かつステータ(28)はベーンセルポンプのハウジング内で揺動軸受(32)に支持されたクランプ(34)に部分的に取り囲まれ、クランプ(34)は、揺動軸受(32)の両側に突出したクランプアーム(36および38)を有し、クランプアームはそれぞれステータ(28)を部分的に取り囲んでいる、ベーンセルポンプに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外側ロータ、内側ロータおよび多数のベーンを備えたベーンセルポンプであって、この多数のベーンが内側ロータのほぼ半径方向のスロット中に半径方向に変位可能に支持されかつ外側ロータに揺動可能に固定され、外側ロータがステータの内周面に沿って摺動し、ステータの軸と内側ロータの軸が相互にずれを有し、ステータが内側ロータに対し半径方向に位置調整可能であり、そのことによりこのずれが可変であり、かつステータがベーンセルポンプのハウジング内で揺動軸受に支持されたクランプに部分的に取り囲まれているベーンセルポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、環状の内側ロータを備えたベーンセルポンプが開示されており、この内側ロータには半径方向外側に延びる多数のベーンエレメントが半径方向に変位可能に収容されている。ベーンエレメントの半径方向内側の端部領域は回転しないよう固定された中央部材に支持され、半径方向外側にある端部領域は回転しないよう固定された外側リングに支持されている。ロータは、中央部材および外側リングの中心軸に対してずれた回転軸を中心に回転させることができる。このように、ロータの回転運動によりベーンエレメント間は最初は大きくなり、次に再び小さくなる吐出しセルが形成される。吐出しセルの容積変化によって先ず流体は吐出しセルに吸い込まれ、次に再び吐出される。ベーンエレメントの端部領域は中央部材ないしは外側リング上を摺動する。このようなベーンエレメントは、簡単かつ経済的に製造することができる。
【0003】
特許文献2には、効率を高めるため、振子式スライドゲートバルブの形のベーンセルポンプが開示されている。この場合にはベーンエレメントは内側ロータには変位可能に収容され、その一方で環状の外側ロータには揺動可能に保持されている。内側ロータの回転軸が外側ロータの回転軸に対してずれ、それによって運転時に同様に先ず拡大し、そして次に再び縮小する吐出しセルが形成される。しかしながら、この特許文献2から既知の振子式スライドゲートバルブは複雑であり、したがって製造費用が高い。
【特許文献1】独国特許出願公開第10040711号明細書
【特許文献2】独国特許第19532703号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ポンプ出力が微細に調整可能であるベーンセルポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、本発明によれば冒頭に記載の種類のベーンセルポンプにおいて、クランプが揺動軸受の両側に突出したクランプアームを有しかつこのクランプアームがそれぞれステータを部分的に取り囲んでいることによって解決される。
【0006】
ベーンセルポンプの本発明による形態によって、ステータが1本のみのクランプアームで動かされること、このためにはステータがクランプアームと固く結合されなければならないばかりではなく、ステータを二又に取り囲んでいる2本のクランプアームによりステータが包み込まれることが可能となる。その際一実施形態ではクランプアームの一方のみに圧力をかけることができ、それに反してもう一方のクランプアームは他の方法で、例えばばねにより、動かされる。あるいは他の実施形態の場合には両方のクランプアームにそれぞれ圧力をかけることができ、したがってステータの位置はその両方の圧力により決定される。これにより、ゲインスケジューリング制御の際に必要とされるステータの著しく微細な調整ないしはポジショニングを達成することができる。両側のクランプアームがステータを反対方向に動かすため、ステータのポジショニングにおいてきわめて小さな圧力変化をも考慮に入れることができる。特にばね定数に対向して動作させる必要はなく、このことは、ばねの変化する力に対向して、すなわちばね定数に対向して動作させなければならないという欠点を有する。生じる圧力をステータの移動、しかも両方向への移動に直接使用することができる。
【0007】
他の形態では、2本のクランプアームが油圧もしくは空気圧により揺動可能であることが定められている。この場合、例えば系内のそのときの油圧をクランプアームの駆動に使用してもよいし、空気圧系の場合にはそのときの正圧もしくは負圧を駆動に使用してもよい。
【0008】
他の形態では、1本のクランプアームがばねにより揺動可能であることが定められている。一変形例では、ステータがばねにより位置調整可能であることが定められている。この特にプレテンションがかけられたばねは、クランプおよび/またはステータをポンプの最大吐出、すなわち最大圧力または最大負圧の方向に移動させる役割を担っている。これは、故障の際にクランプアームの空気圧もしくは油圧による駆動が行われなくなる場合に必要である。機械ばねによるクランプの駆動によって、必要な油圧もしくは空気圧の圧力または空気圧の負圧がその系に供給されることが保証される。その場合、ばねは螺旋コイルばね、板ばね、ねじりばねあるいはまた空気式クッションであればよい。
【0009】
クランプアームを簡単に駆動させるために、本発明によれば、クランプアームの自由端が圧力媒体のためのピストン面を有することが定められている。ピストン面の大きさによって位置調整力を決定することができ、したがって生じた圧力を直接ピストン面に導くことができる。
【0010】
好ましくは、ピストン面は、ベーンセルポンプのハウジング内に備えられたガイドで変位可能に支持されている。このガイドは一方でハウジングに対するピストンの密閉に使用され、他方でクランプアームの自由端の正確なガイドおよび支持に使用される。
【0011】
本発明の更なる利点、特徴および詳細は従属請求項ならびに次の記載に示され、この記載では図面に関連して2つの有利な実施例が詳説されている。図面に示されかつ請求項および記載に述べられた特徴は、それぞれそれのみ単独でも任意に組み合わされた形でも本発明を特徴付ける。
【0012】
本発明をより明確にするために、独国特許出願公開第102005048602号明細書が参照され、その内容は本明細書に組み込まれるため、上記明細書は本形態の構成要素である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、全体として符号12が付されたベーンセルポンプのハウジング10を概略的に示し、このベーンセルポンプ内に駆動シャフト14が回転可能に支持されている。この駆動シャフト14は内側ロータ16を駆動し、この内側ロータは多数の半径方向のスロット18を有し、これらスロット中にベーン20が半径方向に変位可能に支持されている。このベーン20は厚くなった自由端22を有し、この自由端にスライドシュー24が揺動可能に固定されている。これらスライドシュー24はステータ28の内周面26に密着し、かつ全体として符号8が付された外側ロータを形成している。内側ロータ16、2枚のベーン20、2つのスライドシュー24ならびにステータ28とでそれぞれ1つの作動チャンバ30が形成される。これは、図1のベーンセルポンプ12の切開された部分で明白に分かる。作動チャンバ30は内側ロータ16が回転すると拡大縮小し、それにより流体が送り出される。
【0014】
さらに図1では、ハウジングに固定された揺動軸受32に二又のクランプ34が揺動可能に支持され、この場合、クランプ34が2本のクランプアーム36および38を有し、これらクランプアームは少なくとも部分的にステータ28に密着しかつこれを包み込んでいることが分かる。これは図2および3からも明白に見て取れる。クランプアーム36および38の自由端40および42は、圧力室46および48内に存在している流体が作用するピストン面44を有する。クランプアーム36および38はガイド50をガイドされ、このガイドの全体にわたってクランプアームは流体が漏れないように密封され、ガイド50はシリンダ面となっている。
【0015】
例えばクランプアーム36の自由端40のピストン面44に圧力が作用すると、クランプアーム36、かつそれ故にクランプ34全体が揺動軸受32の揺動軸を中心に矢印52の方向に揺動し、それによりステータ28が矢印52の方向に移動する。図1に示された状態ではステータ28は、駆動シャフト40の軸56に対してずれ60を有する軸54を有する。矢印52の方向にステータ28が移動することによってこのずれ60は小さくなり、かつそれによりステータ28または外側ロータ8に対する内側ロータ16の偏心率が減少され、それによりベーンセルポンプ12の有効容積が減少される。
【0016】
有効容積の拡大は、圧力がクランプアーム38の端部42のピストン面44に作用することにより、クランプ34が矢印52の方向と反対に揺動されることによって生じる。したがってクランプ34に、ピストン面44にかかった圧力の結果生じた力が作用する。
【0017】
図3に示した実施形態の場合には、ステータ28の下面に適当な方法で機械ばね58、特に螺旋コイルばねが作用し、この機械ばねがステータ28を矢印52の方向と反対にずらそうとする。このずらし方向がベーンセルポンプ12の最大吐出の方向に作用する。
【0018】
故障時にクランプアーム36のピストン面44にもクランプアーム38のピストン面44にも圧力がかかるべきではない場合には、ステータ28はいずれにせよ最大吐出の方向に動かされ、そのことによりベーンセルポンプ12がその吐出すべき流体または減圧を十分な程度に提供することが保証される。このばね58は、故障に対するベーンセルポンプ12の調整にのみ使用される。最大吐出の方向へのステータ28の制御された戻りは、圧力がクランプアーム38のピストン面44にかかることによって、あるいは圧力がクランプアーム36のピストン面44にかかることによって生じる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図面には次のとおり示されている。
【図1】部分的に切開されたベーンセルポンプの断面図。
【図2】第1の実施形態によるハウジングなしのベーンセルポンプの透視図。
【図3】第2の実施形態によるハウジングなしのベーンセルポンプの透視図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側ロータ(8)、内側ロータ(16)および多数のベーン(20)を備えたベーンセルポンプ(12)であって、
前記多数のベーンは前記内側ロータ(16)のほぼ半径方向のスロット(18)中に半径方向に変位可能に支持されかつ前記外側ロータ(8)に揺動可能に固定され、前記外側ロータ(8)はステータ(28)の内周面(26)に沿って摺動し、前記ステータ(28)の軸(54)と前記内側ロータ(16)の軸(56)とが相互にずれ(60)を有し、前記ステータ(28)は前記内側ロータ(16)に対し半径方向に位置調整可能であることから前記ずれ(60)は可変であり、かつ前記ステータ(28)は前記ベーンセルポンプ(12)のハウジング(10)内で揺動軸受(32)に支持されたクランプ(34)に部分的に取り囲まれ、
前記クランプ(34)は、前記揺動軸受(32)の両側に突出したクランプアーム(36および38)を有し、かつ前記クランプアーム(36および38)はそれぞれ前記ステータ(28)を部分的に取り囲んでいる、
ベーンセルポンプ。
【請求項2】
前記クランプ(34)は、前記クランプアーム(36および38)とともに二又に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のベーンセルポンプ。
【請求項3】
2本の前記クランプアーム(36および38)は、油圧もしくは空気圧により揺動可能であることを特徴とする、請求項1または2に記載のベーンセルポンプ。
【請求項4】
1本の前記クランプアームは、ばね(58)により変位可能であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のベーンセルポンプ。
【請求項5】
前記ステータ(28)は、前記ばね(58)により位置調整可能であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のベーンセルポンプ。
【請求項6】
前記ばね(58)にプレテンションがかけられていることを特徴とする、請求項4または5に記載のベーンセルポンプ。
【請求項7】
前記クランプアームおよび/または前記ステータ(28)は、前記ばね(58)により前記ベーンセルポンプ(12)の最大吐出の方向に位置調整可能であることを特徴とする、請求項4〜6のいずれか1項に記載のベーンセルポンプ。
【請求項8】
前記クランプアーム(36および38)の自由端(40および42)は、圧力媒体のためのピストン面(44)を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のベーンセルポンプ。
【請求項9】
前記ピストン面(44)は、前記ベーンセルポンプ(12)の前記ハウジング(10)内に備えられたガイド(50)で変位可能に支持されていることを特徴とする、請求項8記載のベーンセルポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−510330(P2009−510330A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533882(P2008−533882)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【国際出願番号】PCT/EP2006/007943
【国際公開番号】WO2007/039012
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(507320409)ヨーマ−ハイドロメカニック ゲーエムベーハー (6)
【Fターム(参考)】