説明

ベーンタイプ機械およびベーンタイプ機械を使用しながら廃熱を利用する方法

本発明は、ベーンタイプ機械(100)に関する。ハウジング(101)は、ベーンセル(102〜113)を収容する概して円筒状の空間と、入口開口(114)および出口開口(115)と、を有する。ハウジング内には、シャフト(116)が偏心的に配置される。シャフトに、互いに対して概して平行に配置される第1ガイドプレート(117)および第2ガイドプレートが設けられる。ハウジング(101)の内壁(118)の方向においてシャフト(116)に対して概して径方向に変位可能なスライド(119〜129)が、ガイドプレートによって案内され、ハウジングの内壁(118)の隣接する領域の2つのそれぞれの隣接するスライド(119、120;120、121;...)が関係して、ベーンセル(102〜113)が形成され、入口開口(114)の領域におけるベーンセルの体積は、出口開口(115)の領域におけるベーンセルの体積とは異なる。シャフト(116)の速度と使用される媒体の温度とを上昇させるため、したがって効率を向上させるため、スライド(119〜129)は、圧油によって潤滑されることが好ましく、それらは、ガイドウェイ(130)によって径方向かつ軸方向に案内され、ガイドウェイは、ハウジング(101)に対して固定され、同様に圧油によって潤滑されることが好ましい、ということが提案される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気、内燃機関からの排気ガス、蒸気媒体またはそれらの混合物等のガス媒体の膨張または圧縮のためのベーンセル機に関し、また、少なくとも1つのベーンセル機を使用することが好ましい廃熱利用の方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
ベーンセル機は、DE20117224U1から既知である。膨張プロファイルを、熱要件によりよく適合させることができるように、かつベーンセル機を低製造費で製造することができるように、回転方向にセル体積が増減するベーンセルユニットを備えたベーンセル機が提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が基づく目的は、信頼性が高くかつ効率的なベーンセル機と、廃熱を利用するまさにかかる方法と、を明示することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、それぞれの独立請求項の特徴によって達成される。有利な進展が、従属請求項の主題である。
【0005】
本発明によるベーンセル機は、空気、温度が最大500℃の内燃機関からの排気ガス、蒸気媒体またはそれらの混合物等のガス媒体の膨張または圧縮に役立つ。ベーンセル機は、ベーンセル機のベーンセルを受容する概して円筒状の空間または径が一定でない空間と、その空間に入口ポートおよび出口ポートと、を有するハウジングを有する。ハウジング内に、シャフトが偏心的に配置される。シャフトに、互いに本質的に平行に配置される第1ガイドプレートおよび第2ガイドプレートが設けられる。ガイドプレートは、ハウジングの内壁の方向においてシャフトに対して本質的に径方向に変位可能なスライドを案内する。2つの隣接するスライドとハウジングの内壁の隣接領域とにより、ベーンセルがそれぞれ形成される。入口ポートの領域におけるベーンセルの体積は、出口ポートの領域におけるベーンセルの体積と異なる。本発明によれば、ハウジングの内壁の方向において径方向に変位可能なスライドは、圧油で潤滑されガイドトラックによって径方向にかつ軸方向に案内されることが好ましい。ガイドトラックは、ハウジングに対して固定位置に構成され、同様に、圧油で潤滑されることが好ましい。
【0006】
本発明の好ましい実施形態では、第1連続ガイドトラックおよび/または第2連続ガイドトラックが設けられる。このガイドトラックまたはこれらガイドトラックは、ハウジングの内壁の方向において径方向に変位可能なスライドの移動を、それぞれ、スライドまたはスライドのハウジングの内壁に面する面、すなわちスライドの端面が、本質的に接触なしに、その移動の経路全体に沿って、ハウジングの内壁を通過して移動するように制限する。
【0007】
本発明によるベーンセル機は、空気、温度が最大500℃の内燃機関からの排気ガス、蒸気媒体またはそれらの混合物等のガス媒体の膨張または圧縮に役立つ。ベーンセル機は、ベーンセル機のベーンセルを受容する概して円筒状の空間または径が一定でない空間と、その空間に入口ポートおよび出口ポートと、を有するハウジングを有する。ハウジング内に、シャフトが偏心的に配置される。シャフトに、互いに本質的に平行に配置される第1ガイドプレートおよび第2ガイドプレートが設けられる。ガイドプレートは、ハウジングの内壁の方向においてシャフトに対して本質的に径方向に変位可能なスライドを案内する。2つの隣接するスライドとハウジングの内壁の隣接領域とにより、ベーンセルがそれぞれ形成される。入口ポートの領域におけるベーンセルの体積は、出口ポートの領域におけるベーンセルの体積と異なる。本発明によれば、ハウジングの内壁の方向において径方向に変位可能なスライドは、圧油で潤滑されガイドトラックによって径方向にかつ軸方向に案内されることが望ましい。ガイドトラックは、ハウジングに対して固定位置に構成され、同様に、圧油で潤滑されることが好ましい。
【0008】
本発明の好ましい実施形態では、第1連続ガイドトラックおよび/または第2連続ガイドトラックが設けられる。このガイドトラックまたはこれらガイドトラックは、ハウジングの内壁の方向において径方向に変位可能なスライドの移動を、それぞれ、スライドまたはスライドのハウジングの内壁に面する面、すなわちスライドの端面が、本質的に接触なしに、その移動の経路全体に沿って、ハウジングの内壁を通過して移動するように制限する。
【0009】
この接触のない移動は、本発明の好ましい実施形態において、非円筒状ハウジングと円形ガイドトラックとにより、または円筒状ハウジングと非円形ガイドトラックとにより、または特別な形態のハウジングおよびガイドトラックにより達成される。
【0010】
非円筒状ハウジングおよび円形ガイドトラックの場合、本発明の好ましい実施形態に到達するために、以下の式が、Rに従って数値的に解かれる。
【数1】

【0011】
2つの式のうちの高い方の値が、好ましい設計に使用される。
【0012】
この場合、以下の省略形が適用される。
x:シャフトの回転軸からハウジングの壁までの距離
t:スライドの端面における幅
b:スライド(140〜151)のガイドピンの中心点からスライドの端面までの距離
a:シャフトの回転軸と円形ガイドトラックの中心点との間の距離
φ:線xと、ロータの中心点およびシャフトとハウジングとの間の最短距離の点を通る直線と、の間の角度
r:ガイドトラックの半径
【0013】
円筒状ハウジングおよび非円形ガイドトラックの場合、本発明のさらに好ましい実施形態では、以下の式が適用される。
【数2】

の場合、
【数3】

であり、
【数4】

の場合、
【数5】

である。
【0014】
省略形の説明は以下の通りである。
y:シャフトの回転軸からガイドトラックの中心までの距離
R:円筒状ハウジングの半径
e:シャフトの回転軸と円筒状ハウジングの中心点との間の距離
t:スライドの端面における幅
φ:線yと、ロータの中心点およびシャフトとハウジングとの間の最短距離の点を通る直線と、の間の角度
b:スライドのガイドピンの中心点からスライドの端面までの距離
【0015】
円筒状ハウジングを備えかつ非円形ガイドトラックを備える本発明による実施形態が特に好ましい。
【0016】
本発明による方法により機械的接触がないため、各スライドの端面とハウジングの内壁との間に実質的に摩擦が発生しない。それにより、摩擦ベーンセル機に比較して、耐用年数が著しく延長されかつ効率が著しく向上する。機械的接触がないため、本発明によるベーンセル機のベーンホイールまたはベーンセルは、入口ポートと出口ポートとの間の差圧が著しく低い場合でさえも回転する。その結果、本発明によるベーンセル機により、以前は、従来のベーンセル機で利用することができなかった、周囲圧力に比較して差圧の低いエネルギー資源を使用することが可能になる。各スライドの端面とハウジングの内壁との間のわずかな間隙を介するベーンセル機のセル間の圧力等化は、実質的に無関係である。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、第1ガイドトラックが設けられる第1ガイドトラックプレートが設けられ、それは、シャフトとともに回転する第1ガイドプレートに対して概して平行である。第1ガイドトラックプレートは、ハウジングに対して回転しないように配置される。
【0018】
本発明のさらに好ましい実施形態では、第2ガイドトラックが設けられる第2ガイドトラックプレートが設けられ、それは、シャフトとともに回転する第2ガイドプレートに対して概して平行である。第2ガイドトラックプレートは、ハウジングに対して回転しないように配置される。
【0019】
本発明によるこれらの方法により、ベーンセル機のコンパクトな配置と、それでもなお、ベーンセル機のスライドの、ハウジングの内壁に対する接触のない正確な案内と、を達成することができる。2つのガイドトラックプレートを、互いに対して正確に調整することができる。その結果、スライドが傾きなしに径方向に移動する。第1ガイドトラックおよび適当な場合は第2ガイドトラックも、径方向に移動可能なスライドの端面のハウジングの内壁からの距離が、ベーンセル機の動作中に概して一定のままであるように、それぞれのガイドトラックプレートに設けられることが好ましい。第1ガイドトラックおよび適当な場合は第2ガイドトラックを、同様に、ハウジングの内壁からのスライドの端面の距離が、ベーンセルの回転移動とそれに伴う圧力増大中に低減し、すなわち圧力の増大により、隣接するベーンセルが互いからより有効に分離されるかまたは密閉されるように、ハウジングのシャフトの偏心配置に適合させてもよい。これは、ベーンセル機の効率に対し有利な効果がある。
【0020】
本発明の有利な実施形態では、第1ガイドトラックプレートおよび/または第2ガイドトラックプレートは、ハウジングにねじ留めされる。さらに、第1ガイドトラックプレートおよび/または第2ガイドトラックプレートは、ハウジングの第1端面および/または第2端面を形成してもよい。
【0021】
本発明の好ましい実施形態では、スライドに、それぞれ第1ガイドピンおよび/または第2ガイドピンが設けられ、それらはそれぞれ、それぞれシャフトに対して径方向に走りかつ第1ガイドプレートおよび/または第2ガイドプレートに設けられる長手方向溝内に導かれる。それにより、スライドの概して傾きのない径方向の変位を成し遂げることができる。
【0022】
本発明の好ましい実施形態では、ガイドピンに、三日月型ガイドトラックカマが設けられ、それは、その長手方向軸を中心に回転して移動可能であり、かつガイドトラックによって案内される。ガイドトラックは、圧油によって潤滑されかつ/または圧油を用いて取り付けられることが好ましい。ガイドトラックカマにより、スライドの径方向の変位中にガイドトラックに発生する力を、ガイドトラックのかつ/または適当な場合は油膜のより広い領域に分散させることができ、その結果、特に、摩擦損失、したがってあり得る摩耗を低減することができる。本発明による好ましい圧油潤滑および/または圧油取付により、回転取付と比較して、ベーンセル機のシャフトの回転速度を著しく増大させることができ、著しく高い温度の媒体さえも障害なしに使用することができる。ガイドトラックカマの圧油取付のために、回転取付とは対照的に、発生する軸方向の力もまた吸収することができる。これは、本発明によるベーンセル機の効率、全体サイズ、耐用年数および信頼性に対し好ましい効果を与える。
【0023】
本発明のさらなる実施形態では、第1ガイドトラックおよび/または第2ガイドトラックは、第1ガイドトラックプレートおよび/または第2ガイドトラックプレートの内面にフライス加工されることが好ましい連続ガイドトラック溝によって形成される。それにより、径方向かつ軸方向におけるスライドの費用効率よく、正確かつ確実な案内を達成することができる。
【0024】
一実施形態では、本発明によるベーンセル機は、潤滑油を搬送し、かつ潤滑油をガイドピンおよび/またはガイドトラックカマにかつ/またはそれぞれ第1ガイドプレートおよび/または第2ガイドプレートにおけるスライドの径方向に延在する溝に供給する、ダクトを有する。潤滑油の供給は、少なくとも1つのダクトがシャフトに潤滑油を搬送することによって発生することが好ましく、かつ/または潤滑油の排出は、第1ガイドプレートおよび/または第2ガイドプレートにおいて少なくとも1つのダクトが潤滑油を排出することによって発生することが好ましい。その結果、本発明によるベーンセル機における回転速度および使用される媒体の温度の上昇が可能となり、そのため、信頼性および効率を著しく向上させることができる。
【0025】
本発明による廃熱利用のための方法は、本発明による少なくとも1つのベーンセル機を使用して実装されることが好ましい。固定または可動燃料装置からの排気ガスは、第1熱伝達装置および/または排気ガスターボチャージャに供給される。第1ベーンセル機が、周囲圧力下の空気を圧縮し、圧縮空気は熱伝達装置に供給される。その後、排気ガスに含まれる熱エネルギーは、圧縮空気に供給される。第2ベーンセル機が、圧縮されかつ加熱された空気を、燃焼装置からの排気ガスの圧力を下回るか、または適当な場合は、ターボチャージャの出口における排気ガスの圧力を下回る圧力まで膨張させまたは減圧する。熱伝達装置または適当な場合は排気ガスターボチャージャから出る減圧空気および排気ガスは、第3ベーンセル機に供給される。第3ベーンセル機は、排気ガスおよび空気の混合物を周囲圧力まで膨張させ、同時に、有用な作業を行う。
【0026】
本発明による方法は、高効率という特徴を有し、特に、本発明によるベーンセル機が使用される場合、本来は単純に望ましくない方法で環境に排出され使用されないエネルギー資源の好都合な利用が可能になる。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、本発明による第1ベーンセル機は、周囲圧力または大気圧下の空気を、燃焼装置の排気マニホルドにおける排気ガスの出口圧力の圧力のおよそ2倍まで、または適当な場合は、ターボチャージャの下流の排気ガスの出口圧力の圧力のおよそ2倍まで圧縮する。それにより、本発明の効率をさらに向上させることができる。
【0028】
本発明による方法の一実施形態では、燃焼装置に、第1ベーンセル機によって圧縮された圧縮周囲空気が供給される。その結果、適当な燃焼装置の場合、その効率を同様に向上させることができる。
【0029】
本発明の一実施形態では、第2熱伝達装置が提供され、それには、燃焼装置の冷却回路からの熱エネルギーと、第3ベーンセル機の排気ガス/空気混合物の残留熱とが供給される。第2熱伝達装置によって排出されるガス媒体は、第4ベーンセル機によって膨張され、同時に有用な作業を行う。本発明によるこの方法により、内燃機関の冷却回路の廃熱もまた有利に利用することができる。
【0030】
本発明による方法の一実施形態では、第2熱伝達装置は、液体貯蔵器から抽出されかつポンプによる圧力で作用される液体、特に水、二酸化窒素または環状シロキサンが供給される蒸発装置である。それにより、本発明による方法によってすでに達成可能な効率を、廃熱の利用においてさらに向上させることができる。
【0031】
本発明の一実施形態では、第4ベーンセル機によって膨張されるガス媒体は、凝縮装置に供給され、そこで、ガス媒体が凝縮し同時に熱を放出し、液体が液体貯蔵器に供給される。この方法により、排気ガス/空気混合物の残留熱と燃焼装置の冷却回路からの廃熱とを利用する有利な閉回路が達成される。
【0032】
本発明によるベーンセル機と本発明による廃熱利用の方法とについて、必ずしも比例尺ではない図面を使用して、例示的な実施形態により以下より詳細に説明する。同じ参照記号は同じかまたは同様に作用する要素を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
図1は、概略断面図を用いて、本発明による、空気、内燃機関からの排気ガス、蒸気媒体またはそれらの混合物等のガス媒体の膨張または圧縮のためのベーンセル機100の動作原理を示す。ベーンセル機100のハウジング101は、概して一部円形断面を有し、その概して円筒状の内部空間にベーンセル102〜113と、外側に入口ポート114および出口ポート115と、を有する。ハウジング101内に、駆動シャフトまたは被駆動シャフト116が偏心的に配置される。シャフト116に、第1ガイドプレート117および第2ガイドプレート(図示せず)が設けられる。ガイドプレートは、スライド119〜129を、それらが、ハウジング101の内壁118の方向においてシャフト116に対して本質的に径方向に移動することができるように案内する。
【0034】
シャフト116は、機械的に駆動されると、ハウジング内でガイドプレートとともに回転する。遠心力により、スライド119〜129は、回転中、径方向に外側に移動する。この場合、それらは、それぞれ、ガイドプレートに締結されかつシャフト116とともにベーンセル102〜113をシャフト116に対して閉鎖する(図示せず)、2つのガイド壁間で案内される(図示せず)。したがって、ベーンセルがハウジング101の内壁118の領域に位置しない限り、ベーンセルのそれぞれは、径方向において外側にのみ開放される。各スライド119〜126の端面131は、ハウジング101の内壁118からわずかな距離で、内壁を通過して移動し、すなわち、スライド119〜126、および後にはスライド127〜129も、好ましくは概してまたは完全に接触することなく、ハウジング101の内壁118を通過して移動する。この例示的な実施形態では、大気圧下の空気は、入口ポート114の領域に位置する。シャフト116が、機械的に、たとえば電気モータまたは内燃機関により右回りに回転180すると、空気は、入口ポート114を介して、後に概して閉鎖したベーンセル106内に進む。空気は、入口ポート114から出口ポート115まで進む間、ベーンセルの体積が低減することにより圧縮される。圧縮空気は、出口ポート115を介してベーンセル機から出る。圧縮空気の一部はベーンセル内に残り、本発明によれば、この空気は、出口ポート115から入口ポート114まで進む間に大気圧まで膨張される。
【0035】
対照的に、圧力の増大が、入口ポート114に比較して出口ポート115の領域で優勢となり、シャフト116が概して自由に回転することができる場合、出口ポート115はベーンセル機100の入口ポートになり、入口ポート114は出口ポートになる。この場合、逆のプロセスが発生し、ベーンセル機は入ってくるガス媒体を減圧する。この場合、シャフト116は左回りに回転181し、たとえば電気(モータ図示せず)を駆動し、すなわち、ベーンセル機またはそのシャフト116は作業を行う。
【0036】
本発明によれば、部分的に径が出口ポート115から入口ポート114まで増大する領域182を有する本質的に概して円形断面を備えたハウジング101が提供される。その結果、ベーンセル113に入り(シャフト116が左回り181に移動する場合)大気圧下にある空気は、より低い圧力、たとえば0.95バールまで膨張される。この圧力差により、軸の回転が促進され、したがって、ベーンセル機100の効率が向上する。
【0037】
ハウジング101の内壁118を通過する各スライドの端面131が概して接触しないで摺動するようにするために、本発明によれば、少なくとも1つのガイドトラック130が設けられる。概略的に示すガイドトラック130は、各スライド119〜129の径方向の位置を確定する。連続したガイドトラックは、ガイドトラックプレート(図示せず)の背面に位置するガイド溝またはガイドダクト(図示せず)であることが好ましく、ガイドトラックプレートは、シャフト116とともに回転するガイドプレート117に対して概して平行である。ガイドプレート117とは対照的に、ガイドトラックプレート(図示せず)は、ハウジング101に対して回転しないように配置される。ガイドトラックプレートは、ハウジングにねじ留めされ、ハウジングを下方に閉鎖することが好ましい。各スライド119〜129のガイドピン140〜151は、ガイドトラック130内を形態嵌合して通ることが好ましい。シャフトの回転中、ガイドピンが設けられた各スライドは、ガイドトラックおよびピンの形態嵌合を介して所定位置内に案内され、その結果、それぞれのベーンセルは、ハウジングの内壁に対して概して密封され、なおかつ、各スライドの端面のハウジングとのまたはハウジング壁との接触が概して回避される。それにより、ベーンセルの本質的に摩擦のない回転が達成され、これにより、隣接するベーンセル間に残っている間隙を介していかなる明確な圧力損失ももたらされない。全体的に、本発明によるベーンセル機100の効率は、既知の摩擦のあるベーンセル機より著しく高い。
【0038】
これは特に、入口ポートと出口ポートとの間の差圧が低い場合に当てはまる。それは、既知の高摩擦ベーンセル機とは対照的に、本ベーンセルは、本質的に摩擦がないために、この場合でさえも回転し作業を行うことができるためである。低差圧もまた利用することができるように、本発明によるベーンセル機またはそのベーンセルを、より大きい寸法で設計してもよい。対照的に、既知の摩擦ベーンセル機の寸法を増大することにより、克服すべきそれらの摩擦力も増大し、したがって、既知のベーンセル機では、この方法によって何も改善されない。
【0039】
本発明の好ましい実施形態(図示せず)では、ハウジングの下面にもまた、ハウジングにねじ留めされ、かつ同様にスライドに取り付けられる下部ピン(図示せず)を案内するガイドトラックを有する、ガイドトラックプレートが設けられる。
【0040】
2重の案内のために、スライドを、径方向に、概して傾きなしに案内することができる。さらに、本発明によれば、ピンに、ピンを中心に回転することができ、かつガイドトラックによって案内される、ガイドトラックカマを設けてもよい。ピンと比較して、ガイドトラックカマは、圧油によって潤滑されることが好ましいガイドトラックとの接触面が広く、その結果、表面圧力が降下し、摩擦がさらに低減し、信頼性が向上するかまたは耐用年数が延長される。
【0041】
スライドおよびガイドピンまたはガイドトラックカマは、潤滑油を搬送する適当なダクト(図示せず)を介してそれらの案内機構において潤滑されかつ/または取り付けられることが好ましい。好ましいことは、圧油潤滑または圧油取付であり、それは、たとえば回転取付より、回転速度を早くしかつ使用される媒体の温度を高くすることができ、その結果、効率が上昇し、構造的な寸法、したがって費用を低減させることができる。
【0042】
図2は、本発明による廃熱利用のための第1システムを示し、それを参照して、本発明による方法について説明する。本発明によるシステムは、燃焼装置201と、入口および出口を備えた第1熱伝達装置204と、排気ガスターボチャージャ205と、第1ベーンセル機206と、連結ライン210と、第2ベーンセル機211と、第3ベーンセル機214と、を有する。
【0043】
燃焼装置201は、周囲圧力または大気圧下の空気202を吸い込み、高温排気ガス203を排出する。高温排気ガスは、第1熱伝達装置204にその入口を介して供給される。大気圧下の空気207は、第1ベーンセル機206によって吸い込まれ、燃焼装置の排気マニホルドにおける排気ガスの出口圧力のおよそ2倍まで圧縮される。対照的に、燃焼装置が、図示するように排気ガスターボチャージャを有する場合、空気は、第1ベーンセル機によって、排気ガスターボチャージャの下流の排気ガスの出口圧力のおよそ2倍まで圧縮される。圧縮中、燃焼装置に対するタップ空気を、第1ベーンセル機から抽出してもよい(図示せず)。圧縮空気209は、第1ベーンセル機206の出口を第2ベーンセル機211の入口に連結する連結ライン210に導かれる。連結ライン210は、排気ガスに含まれる熱エネルギー208の大部分を、連結ライン210内に導かれる圧縮空気に伝達するために、熱伝達装置204の熱コイルの形態で配置される(図示せず)。熱伝達装置では、圧縮空気は、逆流原理に基づいて、およそ排気ガスの温度まで加熱され、排気ガスは、およそ圧縮空気の温度まで冷却される。加熱された圧縮空気は第2ベーンセル機211に入り、減圧された空気が第2ベーンセル機から出る。第2ベーンセル機211から出る空気は、燃焼装置から現れる排気ガスの圧力を下回るか、または図示するように排気ガスターボチャージャが存在する場合は、排気ガスターボチャージャから出る排気ガスの圧力を下回る圧力を有する。
【0044】
さらなる連結ラインが、熱伝達装置204の出口を排気ガスターボチャージャ205の入口に連結し、これに対し、燃焼装置からの冷却された排気ガスを供給する。排気ガスターボチャージャ205によって圧縮されターボチャージャの出口212から出る排気ガスは、第2ベーンセル機211から排出される圧縮空気と結合される。圧縮空気と圧縮排気ガスとの混合物213は、第3ベーンセル機214の入口に供給され、第3ベーンセル機214は、圧縮混合物を、大気圧を有する混合物215まで膨張させる。第3ベーンセル機214における減圧中、第3ベーンセル機214は、たとえば、第3ベーンセル機のシャフトにフランジ状に取り付けられる発電機を介して、作業を行う。
【0045】
図3は、本発明による、図2に示す第1システム200に関してさらに改善された廃熱利用のための第2システムを示す。第1システムに加えて、第2システム300は、第2熱伝達装置301と、燃焼装置201の冷却回路302と、第4ベーンセル機304と、液体貯蔵器305と、ポンプ306と、凝縮装置309と、を有する。
【0046】
第3ベーンセル機から出る空気と排気ガスとの膨張した混合物215と、第2熱伝達装置301を加熱する冷却回路302と、は、第2熱伝達装置に熱エネルギーを供給する。液体貯蔵器305に存在する蒸発可能な液体307は、ポンプ306によって第2熱伝達装置内に注入される。第2熱伝達装置301では、供給される液体は、冷却回路302と、膨張空気および膨張排気ガスの混合物215と、を介して供給される熱エネルギーのために蒸発する。蒸気は、液体貯蔵器305内の液体の圧力より高い圧力を有する。蒸気は、第4ベーンセル機304の入口に供給され、かつ第4ベーンセル機304の出口を介して、蒸気の膨張または減圧後に、凝縮装置309に供給される。凝縮装置において発生する液体308は、液体貯蔵器305内に再循環される。
【0047】
蒸気の膨張中、第4ベーンセル機304は、たとえば、ベーンセル機304のシャフトにフランジ状に取り付けられた発電機を介して、有用な作業を行う。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明により好ましいように、図2および図3に示すシステムに、本発明によるベーンセル機が提供される場合、システムは、特に、とりわけ高い効率という特徴を有する。さらに、作業を行うために、または電流を発生するために、さらに低い差圧を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明によるベーンセル機を、本発明による動作原理を示す断面図で示す。
【図2】本発明による廃熱利用のための第1システムを示し、それを参照して本発明による方法を説明する。
【図3】本発明による、第1システムに比較してさらに改良された廃熱利用のための第2システムを示す。
【符号の説明】
【0050】
100 ベーンセル機
101 ハウジング
102〜113 ベーンセル
114 入口ポート
115 出口ポート
116 シャフト
117 ガイドプレート
118 内壁
119〜129 スライド
130 ガイドトラック
131 端面
140〜151 ガイドピン
160〜171 長手方向溝
180 右回り回転
181 左回り回転
182 ハウジングの部分領域
200 本発明による廃熱利用のための第1システム
201 燃焼装置
202 大気圧下の空気
203 排気ガス
204 熱伝達装置
205 排気ガスターボチャージャ
206 第1ベーンセル機
207 大気圧下の空気
208 排気ガスに含まれる熱エネルギー
209 圧縮空気
210 連結ライン
211 第2ベーンセル機
212 排気ガスターボチャージャの出口
213 空気および排気ガスの混合物
214 第3ベーンセル機
215 空気および排気ガスの膨張混合物
300 本発明による廃熱利用のための第2システム
301 第2熱伝達装置
302 冷却回路
303 ガス媒体
304 第4ベーンセル機
305 液体貯蔵器
306 ポンプ
307 液体
308 液体
309 凝縮装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気、内燃機関からの排気ガス、蒸気媒体またはそれらの混合物等のガス媒体の膨張または圧縮のためのベーンセル機(100)であって、前記ベーンセル機のベーンセル(102〜113)を受容する概して円筒状の空間と、また前記円筒状空間に入口ポート(114)および出口ポート(115)と、を有するハウジング(101)を備え、
前記ハウジング内に偏心的に配置されたシャフト(116)を備え、
前記シャフトに互いに対して本質的に平行に配置された第1ガイドプレートおよび第2ガイドプレート(117)を備え、
前記ガイドプレートによって案内され、かつ前記ハウジング(101)の内壁(118)の方向において前記シャフト(116)に対して本質的に径方向に変位可能なスライド(119〜129)を備え、ベーンセル(102〜113)が、2つの隣接するスライド(119、129;120、121;…)と前記ハウジングの前記内壁(118)の隣接領域とによってそれぞれ形成され、前記入口ポート(114)の領域における前記ベーンセルの体積が、前記出口ポート(115)の領域における前記ベーンセルの体積と異なる、ベーンセル機(100)であって、
前記ハウジング(101)の前記内壁(118)の方向において径方向に変位可能な前記スライド(119〜129)が、ガイドトラック(130)によって案内され、
前記ガイドトラックが前記ハウジング(101)に対して固定位置にあることを特徴とする、ベーンセル機(100)。
【請求項2】
前記ハウジングの前記内壁(118)の方向において径方向に変位可能な前記スライド(119〜129)の移動を、それぞれ、前記スライドまたは前記スライドの前記ハウジングの前記内壁に面する面、すなわち前記スライドの端面(131)が、本質的に接触なしに、その移動の経路全体に沿って、前記ハウジングの前記内壁を通過して移動するように制限する、第1連続ガイドトラック(130)および/または第2連続ガイドトラックを具備することを特徴とする、請求項1に記載のベーンセル機。
【請求項3】
前記第1ガイドトラック(130)が設けられ、前記ハウジング(101)に対して回転しないように配置され、かつ前記シャフト(116)とともに回転する前記第1ガイドプレート(117)に対して概して平行である、第1ガイドトラックプレートを具備することを特徴とする、請求項1または2に記載のベーンセル機。
【請求項4】
前記第2ガイドトラックが設けられ、前記ハウジングに対して回転しないように配置され、かつ前記シャフトとともに回転する前記第2ガイドプレートに対して概して平行である、第2ガイドトラックプレートを具備することを特徴とする、請求項2に記載のベーンセル機。
【請求項5】
前記第1ガイドトラックプレートおよび/または前記第2ガイドトラックプレートが、前記ハウジングにねじ留めされることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のベーンセル機。
【請求項6】
前記第1ガイドトラックプレートおよび/または前記第2ガイドトラックプレートが、前記ハウジングの第1端面および/または第2端面を形成することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のベーンセル機。
【請求項7】
前記スライド(119〜129)に、それぞれ第1ガイドピンおよび/または第2ガイドピンが設けられ、それらがそれぞれ、それぞれ前記シャフト(116)に対して径方向に走りかつ前記第1ガイドプレート(117)および/または前記第2ガイドプレートに設けられる長手方向溝(160〜171)内に導かれることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のベーンセル機。
【請求項8】
前記ガイドピンに、三日月型ガイドトラックカマが設けられ、それは、その長手方向軸を中心に回転して移動可能であり、かつ前記ガイドトラックによって案内されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のベーンセル機。
【請求項9】
前記第1ガイドトラックおよび/または前記第2ガイドトラックが、前記第1ガイドトラックプレートおよび/または前記第2ガイドトラックプレートの内面にフライス加工されることが好ましい連続ガイドトラック溝によって形成されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のベーンセル機。
【請求項10】
潤滑油を搬送し、かつ潤滑油を前記ガイドピンおよび/または前記ガイドトラックカマおよび/またはそれぞれ前記第1ガイドプレートおよび/または前記第2ガイドプレートの前記スライドの径方向に走る溝に供給するダクトを具備し、前記潤滑油の供給が、少なくとも1つのダクトが前記シャフトに潤滑油を搬送することによって発生し、かつ/または潤滑油の排出が、前記第1ガイドプレートおよび/または前記第2ガイドプレートにおいて少なくとも1つのダクトが潤滑油を排出することによって発生することが好ましいことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のベーンセル機。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の少なくとも1つのベーンセル機(100)を使用するのが好ましい、廃熱利用方法であって、
固定または可動燃料装置(201)であって、そこからの排気ガス(203)が、第1熱伝達装置(204)にかつ/または排気ガスターボチャージャ(205)に供給される、固定または可動燃料装置(201)と、
周囲圧力の空気(202、207)を圧縮し、それを前記熱伝達装置(204)に供給する第1ベーンセル機(206)であって、前記熱伝達装置(204)において、前記排気ガスに含まれる熱エネルギー(208)が圧縮空気(209、210)に供給される、第1ベーンセル機(206)と、
第2ベーンセル機(211)が、前記圧縮されかつ加熱された空気を、前記燃焼装置(201)からの前記排気ガス(203)の圧力を下回るか、または適当な場合は前記排気ガスターボチャージャ(205)の出口(212)における前記排気ガスの圧力を下回る圧力まで膨張させまたは減圧し、
前記熱伝達装置(204)または適当な場合は前記排気ガスターボチャージャ(205)から出る前記減圧空気および前記排気ガス(213)が、第3ベーンセル機(214)に供給され、
前記第3ベーンセル機(214)が、前記排気ガスおよび空気の混合物(213)を周囲圧力まで膨張させ(215)、同時に作業を行うことを特徴とする、廃熱利用方法。
【請求項12】
前記第1ベーンセル機(206)が、前記周囲圧力または大気圧下の空気(207)を、前記燃焼装置(201)の排気マニホルドにおける排気ガス(203)の出口圧力の圧力のおよそ2倍まで、または適当な場合は、前記ターボチャージャ(205)の下流の排気ガス(212)の出口圧力の圧力のおよそ2倍まで圧縮することを特徴とする、請求項11に記載の廃熱利用方法。
【請求項13】
前記燃焼装置に、前記第1ベーンセル機によって圧縮された圧縮周囲空気が供給されることを特徴とする、請求項11または12に記載の廃熱利用方法。
【請求項14】
前記燃焼装置(201)の冷却回路(302)からの熱エネルギーと、前記第3ベーンセル機(214)の前記排気ガス/空気混合物(215)の残留熱とが供給される第2熱伝達装置(301)が提供され、
前記第2熱伝達装置(301)によって排出されるガス媒体(303)が、第4ベーンセル機(304)によって膨張され、前記第4ベーンセル機(304)が同時に作業を行うことを特徴とする、請求項11〜13のいずれか一項に記載の廃熱利用方法。
【請求項15】
前記第2熱伝達装置(301)が、液体貯蔵器(305)から抽出されかつポンプ(306)による圧力で作用される液体(307)、特に水、二酸化窒素または環状シロキサンが供給される蒸発装置であることを特徴とする、請求項11〜14のいずれか一項に記載の廃熱利用方法。
【請求項16】
前記第4ベーンセル機(304)によって膨張されるガス媒体が凝縮装置(309)に供給され、そこで前記ガス媒体が凝縮し同時に熱を放出し、液体(308)が前記液体貯蔵器(305)に供給されることを特徴とする、請求項11〜15のいずれか一項に記載の廃熱利用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−517580(P2009−517580A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541836(P2008−541836)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【国際出願番号】PCT/IB2005/053958
【国際公開番号】WO2007/063357
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(508157923)
【出願人】(508157934)