説明

ペットフードの製造方法

【課題】家畜及び/又は家禽の内臓肉を効率的に乾燥させ、保存性、嗜好性及び栄養性に優れたペットフードの製造方法を提供すること。
【解決手段】家畜及び/又は家禽の内臓肉を燻乾して水分含量2〜30質量%、油脂含量10〜22質量%とする。家畜及び/又は家禽の内臓肉は、煮熟もしくは蒸煮処理工程を経た後、30〜120℃での燻乾処理とあん蒸処理を交互に繰り返し、燻乾処理を3回以上行うことが好ましい。そして、燻乾した後、粉末状に加工するか、スライス状に加工することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜や家禽の内臓肉片を有効利用した保存性、嗜好性及び栄養性に優れたペットフードの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本来、自然界に住む、イヌやネコなどの肉食動物は、獲物を丸ごと食べることで、その中に含まれる天然のビタミン類・ミネラル・たんぱく質などをそのまま摂取していた。しかし、ペットとして人に飼われるようになった動物は、主としてペットフードを食べるようになったため、与えられるペットフードだけを食していても、バランスよく栄養が摂取でき、健康を保つことが必要である。
【0003】
例えば、牛、豚などの家畜や、鶏などの家禽の内臓肉は、安価に入手でき、しかも、ビタミンA、B1、B2、鉄、たんぱく質などの栄養素に富む優れた食材であるため、ペットフードとして利用されるのに適した食材の一つであり、下記特許文献1には、内臓肉片をペットフードとして用いることが開示されている。
【0004】
家畜や家禽の内臓をペットフードとするにあたっての加工処理方法としては、例えば熱風乾燥、ペースト処理、酵素処理などの方法が一般的である。
【0005】
一方、例えば下記特許文献2,3には、家禽の胸肉やささみ肉を燻乾処理することが記載されている。
【特許文献1】特開2001−258482号公報
【特許文献2】特開昭62−278968号公報
【特許文献3】特開2003−158992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
内臓肉は脂肪分が多いため、熱風乾燥による処理では乾燥効率が悪く、悪臭などを生じたりする問題があった。また、ペースト処理では、水分を多く含んでいることから、保存性が悪く、強い臭気を発生しやすいなど、衛生管理の問題があった。また、酵素処理では、多額の製造コストがかかる問題があった。
【0007】
このように、家畜や家禽の内臓肉はペットフードとしてよく利用されているものの、有効的な加工方法についてはほとんど研究されていなかった。
【0008】
また、上記特許文献2,3には、比較的脂肪分の少ない、胸肉やささみ肉などの可食肉を燻乾処理することは開示されているが、脂肪分の多い内臓肉を燻乾処理する試みはこれまで知られていない。
【0009】
したがって、本発明の目的は、家畜や家禽肉の内臓を有効利用し、保存性に優れ、ペットの嗜好性が高く、栄養バランスに優れたペットフードの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明のペットフードの製造方法は、家畜及び/又は家禽の内臓肉を燻乾して水分含量2〜30質量%、油脂含量10〜22質量%とすることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、家畜や家禽の内臓肉片を燻乾することにより、熱風乾燥よりも効率的に乾燥することができ、保存性を向上させることが可能である。さらに、家畜及び/又は家禽の内臓肉片が含有していた余分な油脂分等が排除され、味が淡白になり、香りにくせがないため、ペットフードとして栄養価に富み、ペットの嗜好性が高まる。
【0012】
また、本発明のペットフードの製造方法は、前記家畜及び/又は家禽の内臓肉を、煮熟もしくは蒸煮処理工程を経た後、30〜120℃での燻乾処理とあん蒸処理を交互に繰り返し、燻乾処理を3回以上行うことが好ましい。
【0013】
また、本発明のペットフードの製造方法は、前記家畜及び/又は家禽の内臓肉を燻乾した後、粉末状に加工するか、前記家畜及び/又は家禽の内臓肉を燻乾した後、スライス状に加工することが好ましい。
【0014】
また、本発明のペットフードの製造方法は、前記家禽の内臓肉として鶏レバーを用いることが好ましい。
【0015】
また、犬用もしくは猫用のペットフードであることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、家畜や家禽の内臓肉片を燻乾することにより、熱風乾燥よりも効率的に乾燥することができ、保存性を向上させることが可能である。さらに、家畜や家禽の内臓肉片が含有していた余分な油脂分等が排除され、味が淡白になり、香りにくせがないため、ペットフードとして栄養価に富み、ペットの嗜好性が高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明において、家畜とは、牛、豚、馬、羊などが挙げられ、また、家禽とは、鶏、アヒル、七面鳥、ウズラなど、食用とし得る鳥類が具体例として挙げられる。
【0018】
上記家畜及び/又は家禽の内臓肉としては、レバー、砂肝、ハツ、キンカン、ガラ等が挙げられ、特に、良質のタンパク質、ビタミン類、ミネラル類などを多量に含み、栄養価が高いという理由からレバーが望ましい。
【0019】
また、本発明のペットフードの対象となるペットとしては、犬、猫、猿などの肉食の愛玩動物が挙げられる。
【0020】
本発明のペットフードの製造方法は、まず、原料となる家畜及び/又は家禽の内臓肉を前処理する。前処理方法としては、例えば、煮熟、蒸煮、ロースト、ソテー等が挙げられ、前処理を施すことで、内臓肉中のタンパクが熱変性して型崩れし難くなる、水分及び余分な脂肪分が減少して乾燥が効率化するという効果が得られる。本発明においては、特に煮熟、蒸煮の前処理を好ましく用い、この前処理を施すことで効率的に内蔵肉全体を加熱することが可能であり、更に内臓肉の生臭みを低減させることが可能である。
【0021】
そして、前処理を行った原料肉に、チップを高温に熱した時に出る煙を当てて燻乾する。
【0022】
燻乾に用いるチップとしては、火持ちが良く、燻煙が程よく発生し、また良好な燻香を持つという点で、サクラ、リンゴ、ナラ、カシ、クヌギ、シイノキ等の堅木が好ましい。
【0023】
加工温度は、25〜120℃の煙で原料肉を燻すことが好ましく、25〜95℃の煙で燻すことがより好ましい。加工温度25℃未満であると温度が低く十分な乾燥を行うことができず、120℃を超えるとコゲ等が発生して風味不良が発生しやすくなる。
【0024】
加工時間は、温度条件によっても異なるが、例えば、上記温度で5〜10時間燻乾したのち、燻乾庫内もしくは外気中で14〜19時間あん蒸させ、この工程を繰り返す事により、内臓肉中の水分を均一に保ちながら乾燥することが可能である。燻乾回数は、3〜10回であることが好ましく、5〜9回がより好ましい。3回未満であると、原料肉から水分や油脂分を充分除去できない場合があり、10回を超えると、生産性が低下するという問題がある。
【0025】
このように燻乾することで、水分含量2〜30質量%、油脂含量10〜22質量%、好ましくは水分含量2〜20質量%、油脂含量10〜15質量%のペットフードを得ることができる。
【0026】
例えば、水分含量70〜80質量%、油脂含量2〜4質量%の内臓肉を煮熟した後、30〜95℃の温度条件で7時間の燻乾を5〜7回行うことにより、水分含量5〜15質量%、油脂含量6〜10質量%とすることができる。
【0027】
水分含量は低くなるにつれ、乾燥後の保存性が向上するため、本発明においては、上記範囲内で水分含量が低いほどより好ましい。
【0028】
そして、このように燻乾した内臓肉を、そのままペットフードとして用いてもよく、また、粉砕処理して粉末状に加工して用いても良く、スライス状に加工して用いてもよい。
【0029】
本発明においては、燻乾した内臓肉を粉砕する場合には、燻乾した後の水分含量を2〜15質量%とすることが好ましく、また、燻乾した内臓肉をスライス状に加工する場合には燻乾した後の水分含量を15〜30質量%とすることが好ましい。上記範囲外で粉砕処理を行った場合には、粒径が細かくなりにくい上に粉砕中にダマになりやすく、また上記範囲外でスライス状に加工した場合には、加工しにくい上に加工後の内臓肉の形状が崩れやすくなる。
【0030】
粉末状に加工することで、様々な食材に添加して用いたり、ペレット状に成形して用いることができるので、ペットフードとしても利用範囲が向上し、更には、保存性や輸送効率が向上する。また、スライス状に加工することで、ジャーキーに近い食感を備えるペットフードとすることができる。
【0031】
また、本発明においては、上記燻乾した内臓肉に、酵母カス、大豆カス、フスマ、トウモロコシ、小麦、糠、穀物類、コーンスターチ、タピオカ、果実の果皮・種子、チーズホエイ等、従来から用いられているペットフード原料を添加してもよい。
【0032】
本発明は、栄養価の高い内臓肉を、燻乾して水分含量2〜30質量%、油脂含量10〜22質量%としたので、栄養価が高く、保存性に優れたペットフードを安価に製造することができる。そして、燻乾したことで、様々なペットに対して優れた嗜好性を示し、特に犬および猫に対して優れた嗜好性を示すことから、犬用もしくは猫用のペットフードとして用いることが好ましい。
【実施例】
【0033】
(実施例1)
チキンレバー5kgをセイロに並べ、80℃のお湯に浸漬した後、95℃まで温度を上げ、1時間煮熟を行なった。お湯から引き上げ、50℃以下に放冷後、急造庫方式にて40〜80℃、8時間の燻乾を実施。一晩あん蒸を行った後、更に同様の条件で燻乾とあん蒸を5回繰り返し、水分10.5%、粗脂肪13.5%の乾燥品1.3kgを得た。得られた乾燥品を粉砕後、32メッシュ(開口500μm)を通し、粉末状のペットフードを得た。
【0034】
(実施例2)
チキンレバー5kgをセイロに並べ、80℃のお湯に浸漬した後、95℃まで温度を上げ、1時間煮熟を行なった。お湯から引き上げ、50℃以下に放冷後、急造庫方式にて40〜80℃、8時間の燻乾を実施。一晩あん蒸を行った後、更に同様の条件で燻乾とあん蒸を2回繰り返し、水分23.1%、粗脂肪11.6%の乾燥品1.5kgを得た。得られた乾燥品をスライサーにて5mm厚にカットし、スライス状のペットフードを得た。
【0035】
(試験例)
実施例1及び実施例2で得られたペットフードを、市販のドライタイプのペットフードに5%添加し、それぞれ無添加のものと同時に犬及び猫各20匹に与えて、どちらのペットフードを選択するか観察を行った。その結果、表1に示すように、犬、猫共に大半は、実施例1若しくは実施例2で得られたペットフードを添加したものを選択し、本発明のペットフードの嗜好性が確認された。
【0036】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜及び/又は家禽の内臓肉を燻乾して水分含量2〜30質量%、油脂含量10〜22質量%とすることを特徴とするペットフードの製造方法。
【請求項2】
前記家畜及び/又は家禽の内臓肉を、煮熟もしくは蒸煮処理工程を経た後、30〜120℃での燻乾処理とあん蒸処理を交互に繰り返し、燻乾処理を3回以上行う請求項1に記載のペットフードの製造方法。
【請求項3】
前記家畜及び/又は家禽の内臓肉を燻乾した後、粉末状に加工する請求項1又は2に記載のペットフードの製造方法。
【請求項4】
前記家畜及び/又は家禽の内臓肉を燻乾した後、スライス状に加工する請求項1又は2に記載のペットフードの製造方法。
【請求項5】
前記家禽の内臓肉として鶏レバーを用いる請求項1〜4のいずれか一つに記載のペットフードの製造方法。
【請求項6】
犬用もしくは猫用のペットフードである請求項1〜5のいずれか一つに記載のペットフードの製造方法。