説明

ペットフード用肉類の処理方法

【課題】ペットフード用肉類について、肉種の違いによる栄養素含量の差をなくすことができ、アレルギー等で使用可能な肉種が限られる場合でも栄養の偏りをきたさず、肉類による不足栄養分を野菜類等で補う際の調合量を容易に調整でき、ペットの個体状況に応じた適切な給餌を可能にする処理方法を提供する。
【解決手段】細かく刻んだ肉素材に、栄養素及び結合剤水溶液を混合し、混合物を成形容器に収容して冷凍することによって厚板状に成形したのち、凍結状態の厚板状成形物を定形の角小片に裁断分離し、角小片を所要量ずつ包装して冷凍保存する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、犬や猫等のペットに与えるペットフード用肉類の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、犬や猫の食材として極めて多種多様なペットフードが市販されているが、食材の選択は殆ど専門知識のない飼い主の好みや主観に任されるため、食餌量の過不足に加え、栄養面での偏りや過不足を生じ易い。特に犬猫の主食材となる肉類については、冷凍パックや缶詰として馬肉、鶏肉、羊肉、鹿肉等をサイコロ状に裁断したものが一般的であるが、肉種によるミネラルやビタミン類等の栄養分含量の差が大きいため、個々のペットによってアレルギー等で使用できる肉種が限られる場合に栄養の偏りをきたし易く、不足栄養分を野菜類等の調合で補うにしても肉量に対応した調合量の調整が容易でなく、ペットの個体状況に応じた適切な給餌をより困難にしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上述の情況に鑑み、ペットフード用肉類の処理方法として、肉種の違いによる栄養素含量の差をなくすことができ、もってアレルギー等で使用可能な肉種が限られる場合でも栄養の偏りをきたさず、また肉類による不足栄養分を野菜類等で補う際の調合量を容易に調整でき、ペットの個体状況に応じた適切な給餌を可能にする方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本願明の請求項1に係るペットフード用肉類の処理方法は、細かく刻んだ肉素材に、栄養素及び結合剤水溶液を混合し、この混合物を成形容器に収容して冷凍することによって厚板状に成形したのち、この凍結状態の厚板状成形物を定形の角小片に裁断分離し、これら角小片を所要量ずつ包装して冷凍保存することを特徴としている。
【0005】
請求項2の発明は、上記請求項1のペットフード用肉類の処理方法において、肉素材が挽き肉であり、栄養素がミネラル及びビタミン類である構成としている。
【0006】
請求項3の発明は、上記請求項1又は2のペットフード用肉類の処理方法において、結合剤水溶液がゼラチン又は寒天の温水溶液である構成を採用している。
【0007】
請求項4の発明は、上記請求項1〜3のいずれかの記載のペットフード用肉類の処理方法において、上記の角小片が一辺5〜20mmの略立方体である構成としている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明に係るペットフード用肉類の処理方法によれば、肉素材に予め栄養素を混合して成形するから、異なる肉種間で栄養含有量の差をなくすることができ、これによってペットのアレルギー等で使用できる肉種が限られる場合でも、肉種の違いによる栄養の偏りを防止できると共に、肉類による不足栄養分を野菜類等の調合で補う際にも、野菜類等の調合量を肉種の違いに関係なく一律に設定でき、もってペットの個体状況に応じた適切な給餌が可能になる。また、角小片が定形であるから、その個数により、例えば中型犬には15個、小型犬には10個というように、ペットの体格や年齢、成長期か否か、健康状態等に対応して使用量を簡単に設定でき、秤で重量を計りつつ使用量を加減するような煩わしい手間が不要となる。
【0009】
そして、この処理方法では、細かく刻んだ肉素材に栄養素及び結合剤水溶液を混合したものを厚板状に凍結させ、この凍結状態で定形の角小片に裁断分離するため、角小片への成形を非常に簡単に行える上、得られた冷凍状態の角小片は加温加水で容易に融解するから、給餌に際してペットが食べ易い柔かな状態に手早く戻すことができる。
【0010】
請求項2の発明によれば、肉素材が挽き肉でサイズ的に均一であるため、栄養素及び結合剤水溶液との混合で均質な混合物を調製でき、また栄養素としてミネラル及びビタミン類を配合するから、異なる肉種でも実質的に栄養面で均等な肉類成形物を提供できる。
【0011】
請求項3の発明によれば、結合剤水溶液としてゼラチン又は寒天の温水溶液物を用いるから、結合剤成分が全く無害であることに加え、肉素材との混合物の冷凍による成形を迅速に行えると共に、冷凍状態が硬くなり過ぎず裁断容易であり、且つ給餌に際して加温加水で冷凍状態から迅速に融解できる。
【0012】
請求項4の発明によれば、角小片を特定サイズの略立方体とするから、加温加水で犬猫が食べ易くなると共に、個数によって適度に段階的な使用量設定を行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のペットフード用肉類の処理方法では、既述のように、細かく刻んだ肉素材に栄養素及び結合剤水溶液を混合し、この混合物を成形容器に収容して冷凍することによって厚板状に成形したのち、この凍結状態の厚板状成形物を定形の角小片に裁断分離し、これら角小片を所要量ずつ包装して使用時まで冷凍保存する。
【0014】
上記の細かく刻んだ肉素材としては、その刻み形態に特に制約はないが、均等なサイズのものが容易に得られる点から挽き肉が好適である。この挽き肉のサイズは、人間用の食材として市販されるのと同様な直径5mm程度でよい。また、肉の種類としては、魚肉を含めて特に制約はないが、馬や鹿の赤肉、羊の内臓肉、鶏のササミ等のペットフード用の肉類として一般的なものを好適に使用できる。
【0015】
しかして、肉に含まれるミネラルやビタミン類等の栄養素は当然に肉種によって含有量が異なるが、本発明では、栄養素としてミネラルやビタミン類等を予め添加配合するため、肉種の違いによる各栄養素の含有量の差を埋めて栄養面で均等化することが可能である。この均等化を行うには、各栄養素について、ペットフード用として用意する複数種の肉の内で最も含有量が高い肉種を基準とし、他の肉種に相対的不足分を補充する形にすればよい。
【0016】
例えば、図1のメッシュ地の棒グラフは、ある栄養素Aについて、4種の肉M1〜M4における含有量を示すが、その含有量に差があるために最も高い肉M1の含有量を基準レベルL1とする。そして、図2に示すように、他の肉M2〜M4に対してプレミックスP(梨地で表す)として不足分の当該栄養素Aを補充することにより、最終的に得る肉類成形物としての含有量を均等化する。なお、この栄養素Aについては肉M1へのプレミックスPを要さないが、栄養素の種類毎に肉M1〜M4の含有量が異なるから、通常では肉M1についても他の栄養素を含むプレミックスを行うことになる。
【0017】
プレミックスの栄養素は、前記結合剤水溶液に予め配合しておくか、該結合剤水溶液と肉素材との混合時に同時に添加混合する。なお、プレミックスには、ミネラルやビタミン類の他、肉種による脂肪含有量の差を埋めるために油脂を加えてもよい。
【0018】
なお、図1及び図2の仮想線で示すL2は当該栄養素Aの飼料全体としての必要量であり、例えば成犬や成長期の犬の食餌における各栄養素の必要量はAAFCO(米国フード検査官協会)にて規定されている。そして、この必要量L2と基準レベルL1との差に相当する栄養素は、肉類と共にペットフードに調合する野菜類や穀物類によって補充したり、更には追加配合として栄養素自体を加えて補充することになる。ただし、肉M1〜M4の間で含有量に差がある栄養素であっても、その最低含有量の肉の値が規定必要量L2以上になる場合は、当該栄養素を補充する必要はないし、当然ながら前記のプレミックスとしても配合する必要はない。
【0019】
前記結合剤水溶液の結合剤成分としては、ペットフードとしての安全性に問題がないものであれば特に制約はないが、とりわけゼラチン及び寒天が好適である。すなわち、これらゼラチンや寒天は、人間用の食材に汎用されているように安全である上、これらの温水溶液物を用いることで肉素材との混合物の冷凍による成形を迅速に行えると共に、その冷凍状態が硬くなり過ぎないため、角小片とする際の裁断が容易であり、且つ給餌に際して加温加水で冷凍状態から迅速に融解できるという利点がある。
【0020】
上記のゼラチン及び寒天の使用量は、肉素材100重量部に対して1〜20重量部程度とするのがよい。しかして、これらゼラチンや寒天は、使用前に予め少量の水を含侵させておき、使用時に温水を加えて溶解させて温水溶液を調製し、この温水溶液を肉素材に対して重量比1:1程度で混合すればよい。
【0021】
肉類成形物としての角小片は、一辺5〜20mm程度の略立方体とするのがよい。すなわち、このようなサイズの略立方体とすることにより、加温加水で融解させた状態で犬猫が食べ易くなると共に、その個数によって適度に段階的な使用量設定を行えるという利点がある。
【0022】
本発明のペットフード用肉類の処理方法は、ペットの個体状況に応じた適切な給餌を行うためのペットフードの調合システムに好適に利用できる。すなわち、この調合システムは、獣医や動物飼育の専門家等が個々のペットを診て給餌の栄養学的(あるいは病理学的)な指針を定め、その指針に沿った給餌の処方を指示するものであるが、本発明の処理方法によって異なる肉種で栄養的に均等化した複数種の肉類成形物を用意できるから、ペットのアレルギーや消化力の違いで肉腫を選択しても栄養の偏りがなくなり、穀物類や野菜類、更には追加栄養素との組合せによる適切な給餌内容を設定し易くなると共に、飼い主側で指示に基づいて給餌する場合にも調合が容易になる。なお、穀物類としては乾燥した膨化穀類、野菜類としてはフレーク状の乾燥野菜類が好適である。
【実施例】
【0023】
鶏肉(生・ササミ)、馬肉(生・赤肉)、鹿肉(生・赤肉)の3種の肉について、それそれ400g当たりのミネラル及びビタミン類の含有量を測定し、各栄養素の含有量が最大となる肉種を基準(当該栄養素のプレミックスなし)として、肉400g当たりのプレミックスの量を算定した。その結果を次の表1に示す。なお、ビタミンA、パントテン酸、ナイアシン、葉酸については、いずれの肉も規定必要量を越える含有量であったため、プレミックスは不要とした。







【0024】
【表1】


【0025】
前記3種の肉について、挽き肉機で径約5mmの挽き肉にした肉素材100重量部に対し、それぞれ魚由来のゼラチン粉末5重量部を50℃の温水100重量部に溶解した温水溶液に所要のプレミックス液を添加したものを混合し、この混合物を矩形成形皿に厚さ約20mmに敷き詰めて収容し、冷凍機内で−30℃以下で急速冷凍したのち、成形皿から取り出した厚板状の冷凍物を裁断して約10mm角のサイコロ状の肉類成形物とし、各々の所要量をポリエチレン袋に収容して冷凍保存した。なお、各肉素材に用いたプレミックス液の組成は、表1記載の栄養素を同表記載の比率となるように配合したものである。
【0026】
かくして、得られた冷凍状態の3種の肉類成形物は、前記栄養素のプレミックスによって各栄養素(当初から規定必要量を越える含有量の栄養素を除く)の含有量が均等化しているから、ペットのアレルギーや消化力等の個体状況によっていずれを給餌に選択しても栄養面での違いを生じないものとなっている。なお、これらの肉類成形物を使用に際して少量の温水を加えて軽く混ぜたところ、すぐに冷凍状態から融解して元の柔らかい挽き肉の状態に戻った。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】4種のペットフード用肉類における栄養素Aの含有量を例示する棒グラフである。
【図2】同ペットフード用肉類に本発明の処理方法によって栄養素をプレミックスした後の栄養素Aの含有量を例示する棒グラフである。
【符号の説明】
【0028】
A 栄養素
M1〜M4 肉
P プレミックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細かく刻んだ肉素材に、栄養素及び結合剤水溶液を混合し、この混合物を成形容器に収容して冷凍することによって厚板状に成形したのち、この凍結状態の厚板状成形物を定形の角小片に裁断分離し、これら角小片を所要量ずつ包装して冷凍保存することを特徴とするペットフード用肉類の処理方法。
【請求項2】
前記肉素材が挽き肉であり、栄養素がミネラル及びビタミン類である請求項1記載のペットフード用肉類の処理方法。
【請求項3】
結合剤水溶液がゼラチン又は寒天の温水溶液である請求項1又は2に記載のペットフード用肉類の処理方法。
【請求項4】
前記角小片が一辺5〜20mmの略立方体である請求項1〜3のいずれかに記載のペットフード用肉類の処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−5804(P2008−5804A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−181858(P2006−181858)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(501072094)レッドハート株式会社 (5)
【Fターム(参考)】