説明

ペプチド生成物

【課題】有用なペプチド生成物を提供する。
【解決手段】ペプチド Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号1)の結晶塩であって、該ペプチドの塩が塩酸塩又は酢酸塩から選ばれる、結晶塩;該ペプチドの塩が酢酸塩である上記結晶塩;酢酸塩がペプチドの50モル%/モル未満の濃度で存在する、上記結晶塩;該ペプチドの塩が塩酸塩である、上記結晶塩;該ペプチドの塩酸塩がHPLCによる少なくとも98.5%の純度を有する、上記結晶塩;HPLCによる少なくとも98.5%の純度を有する、ペプチド Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号1)の単離された塩酸塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のオクタペプチドの製造方法、特に精製ステップを含んでなる方法に関する。本発明はさらにペプチド生成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コレラ菌(Vibrio cholerae)により産生されるエンテロトキシンである密着帯毒素(「zot」)が、密着帯の構造に可逆的に作用することにより透過性を増加させる事実は、国際公開第9637196号パンフレット(メリーランド大学(UNIVERSITY OF MARYLAND)(米国)に初めて記載された。その真核性ヒト類縁体ゾヌリン(zonulin)の1つとの配列比較は、DIピエロ(DI PIERRO)ら、「密着帯毒素構造−機能の分析(Zonula Occludens Toxin Structure−Function Analysis.)」J.biol.chem.2001年、276巻、22号、19160−19165頁によって記載され、推定上の結合ドメイン(GXXXVGXG)において、8つのアミノ酸共通モチーフが明らかになっている。
【0003】
以下の配列:Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly (配列番号1)のオクタペプチド(ゾヌリン中に存在)は、国際公開0007609号パンフレット(メリーランド大学(UNIVERSITY OF MARYLAND)(米国)においてファサノ(Fasano)により、また、ワング(WANG)ら、「ヒトゾヌリン、腸密着帯の有能な調節因子(Human Zonulin, a Potential Modulator of Intestinal Tight Junctions.)」Journal of Cell Science.2000年、113巻、4435−4440頁により、密着帯毒素受容体に対するゾヌリン結合のペプチドアンタゴニストとして記載されている。胃腸炎症、ならびに脳血管関門の破壊に関連した病態の治療方法におけるその適用を、Fasanoが開示している。ファサノ(Fasano)らはまた、米国特許第7,026,294B号明細書(メリーランド大学(UNIVERSITY OF MARYLAND)(米国))において、糖尿病発症の遅延方法におけるその使用を記載している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このオクタペプチドは、自己免疫疾患(腹腔病および1型糖尿病)に至る発達障害および腸障害などの細胞内伝達障害、組織炎症、悪性転換、および転移などの種々の疾患の治療分野においてきわめて有望であると思われる。上記文献で、このオクタペプチドの合成に関する方法を記載しているものはない。本発明は、ここでその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願人は、オクタペプチドGly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号1)の合成方法を本明細書に記載しているが、これにより、良好な収率および高品質の純度レベルでの前記オクタペプチドの効率的な製造を可能にする一方で、生産性および必要な製造設備の点で利点を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号1)の合成
本発明は、溶液中で実施される少なくとも1つのペプチドカップリングステップを含んでなる、Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Glyオクタペプチド(配列番号1)の合成方法に関する。
【0007】
本発明による方法によって、ステップの数が限定された収束合成方法の使用が可能になり、また、連続的な保護/脱保護反応が避けられる。
【0008】
驚くべきことに、本発明による方法によって、実質的な副産物の形成またはラセミ化なしに、工業的規模での前記オクタペプチドの提供が可能になる。さらに、本発明による方法の間に形成する可能性のある副産物は、特異的な精製法により、最終オクタペプチドから容易に分離できる。また、本発明により、Lアミノ酸とDアミノ酸双方の立体配置を含むペプチドの合成が可能になる。さらに、本発明による方法の中間体および生成物は、沈降および結晶化などの固体/液体分離法によって容易に単離および精製できることが判明した。さらに本発明による方法により、所望の場合、クロマトグラフィーなどの時間のかかる精製ステップを実際に避けることが可能である。これはオクタペプチドの合成の枠組みでは異例であり、予想外のことである。
【0009】
第1の特定の態様において、本発明による方法は、式:
Val−Gln−Pro−Gly−Y(配列番号2)
(C末端アミノ酸がカルボン酸保護基Yによって保護されている)のペプチドと、式:
X−Gly−Gly−Val−Leu(配列番号3)、X−Gly−Val−LeuおよびX−Val−Leu
から選択されることが好ましいロイシンまたはC末端ロイシンペプチドとをカップリングさせることを含んでなり、前記ロイシンまたはC末端ロイシンペプチドは、カルボン酸活性化剤によって任意に活性化される。
【0010】
カルボン酸保護基Yは、アルキルエステル、アリールエステル、アラルキルエステルおよびシリル基から選択されることが好ましい。Yは、アルキルエステルおよびシリル基から選択されることがより好ましい。優れた結果が、アルキルエステル、特に、Val−Gln−Pro−Glyペプチドのt−ブチルエステルによって得られた。
【0011】
一方、アミノ保護基Xは、アリルオキシカルボニル基、t−ブチルオキシカルボニル(BOC)、ベンジルオキシカルボニル(Z)、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、4−ニトロベンゼンスルホニル(Nosyl)、2−ニトロベンゼンスルフェニル(Nps)および任意にそれらの置換誘導体から選択されることが好ましい。優れた結果が、t−ブチルオキシカルボニル(BOC)基によって得られた。
【0012】
本発明の目的に関して、用語「ペプチド」とは、モノマーがアミド結合によって共に共有結合しているアミノ酸であるポリマーのことである。ペプチドは、2つ、またはしばしばそれ以上のアミノ酸モノマーの長さである。また、ペプチド配列は全て、左から右の方向が慣例的にアミノ末端からカルボキシ末端への方向である式によって表される。
【0013】
本発明の目的に関して、用語「アミノ酸」とは、少なくとも1つのNR1R2基、好ましくはNH2基、および少なくとも1つのカルボキシル基を含んでなる任意の化合物のことである。本発明のアミノ酸は、天然でも合成でもよい。天然のアミノ酸は、グリシンを除いて、キラル炭素原子を含有する。別様に特に指示しない限り、Lの立体配置を有する天然アミノ酸を含有する化合物が好ましい。アミノ酸残基は、本出願を通して以下のとおり略号化されている:グリシンはGlyまたはG;バリンはValまたはV;ロイシンはLeuまたはL;グルタミンはGlnまたはQ;プロリンはProまたはP;ピログルタミン酸(またはピロリドンカルボン酸)はGlp。
【0014】
本発明の目的に関して、用語、ペプチドの「C末端」とは、遊離カルボキシル基(−COOH)を末端とするアミノ酸鎖の端末のことである。他方、用語「N末端」とは、遊離アミン基(−NH2)を有するアミノ酸を末端とするペプチド端のことである。
【0015】
本発明の目的に関して、用語「カップリング」とは、アミノ酸のカルボキシル基または第1のペプチドのC末端と、他のアミノ酸のアミノ基または第2のペプチドのN末端との間の反応のことである。言い換えると、カップリング時、2つのペプチド中間体断片、または1つのペプチド中間体断片と反応性アミノ酸とが、一般に、適切な溶媒中、通常はカップリング反応の効率および品質を促進する追加試薬の存在下で、結合する。ペプチド中間体断片は、1つの断片のN末端が他の断片のC末端とカップリングするか、またはその逆になるように調整される(reactively arranged)。
【0016】
さらなる特定の態様において、本発明による方法は、式Val−Gln−Pro−Gly−Y(配列番号2)のペプチドと式X−Gly−Gly−Val−Leu(配列番号3)のペプチドとのカップリングを含んでなる。
【0017】
本発明において、保護基とは、それが付加する原子または部分、例えば酸素または窒素が、処理および合成の間、望ましくない反応に寄与することを防ぎ得る任意の種類の基である。保護基としては、側鎖保護基ならびにC末端またはN末端の保護基が挙げられる。保護基はまた、カルボン酸、チオールなどの反応または結合を防ぐことができる。
【0018】
用語「アミノ保護基X」とは、アミノ基の求核性を減少させる目的で、アミノ基の酸性プロトンを置換するために本発明において使用できる保護基のことである。本明細書において下記に示されるように、アミノ保護基Xは、次のアミノ酸の引き続いての可能な付加の前に、脱保護反応において、適切な場合は除去することができる。
【0019】
アミノ保護基Xは、立体障害性であることが好ましい。用語「立体障害性である」とは特に、少なくとも1つの第二級、第三級または第四級の炭素原子を含む、少なくとも3つの炭素原子、特に少なくとも4つの炭素原子を含んでなる置換基を意味する。立体障害性基は多くて100、好ましくは多くて50の炭素原子を含んでなることが多い。
【0020】
本発明による方法に使用できる、本明細書においてXで表された好適なアミノ保護基の非限定的な例としては、特に、ホルミル、アクリロイル(Acr)、ベンゾイル(Bz)、アセチル(Ac)、トリフルオロアセチルなどのアシルタイプの置換基または非置換基、ベンジルオキシカルボニル(Z)基、p−クロロベンジルオキシカルボニル基、p−ブロモベンジルオキシカルボニル基、p−ニトロベンジルオキシカルボニル基、p−メトキシベンジルオキシカルボニル基、ベンズヒドリルオキシカルボニル基、2−(p−ビフェニリル)イソプロピルオキシカルボニル基、2−(3,5−ジメトキシフェニル)イソプロピルオキシカルボニル基、p−フェニルアゾベンジルオキシカルボニル基、トリフェニルホスホノエチルオキシカルボニル基または9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)などのアラルキルオキシカルボニルタイプの置換基または非置換基、t−ブチルオキシカルボニル(Boc)基、t−アミルオキシカルボニル基、ジイソプロピルメチルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、2−メチルスルホニルエチルオキシカルボニル基または2,2,2−トリクロロエチルオキシカルボニル基などのアルキルオキシカルボニルタイプの置換基または非置換基、シクロペンチルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、アダマンチルオキシカルボニル基またはイソボルニルオキシカルボニル基などのシクロアルキルオキシカルボニルタイプの基、およびベンゼンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基、メシチレンスルホニル基、メトキシトリメチルフェニルスルホニル基、2−ニトロベンゼンスルホニル基、2−ニトロベンゼンスルフェニル基、4−ニトロベンゼンスルホニル基または4−ニトロベンゼンスルフェニル基などのヘテロ原子を含有する基を挙げることができる。これらの基Xの中で、カルボニル基、スルフェニル基またはスルホニル基を含んでなる基が好ましい。アミノ保護基Xは、アリルオキシカルボニル基、t−ブチルオキシカルボニル(Boc)基、ベンジルオキシカルボニル(Z)基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基、4−ニトロベンゼンスルホニル(Nosyl)基、2−ニトロベンゼンスルフェニル(Nps)基および置換誘導体から選択されるのが好ましい。アミノ保護基Xは、t−ブチルオキシカルボニル(BOC)であることがより好ましい。
【0021】
アミノ保護基Xは、種々の方法により、例えば、カルボベンゾキシルクロリドなどの好適な酸ハロゲン化物、または無水酢酸などの酸無水物との反応により導入することができる。他方、アミノ保護基Xは、例えば、アシドリシス、水素化分解、希釈水酸化アンモニウムによる処理、ナトリウムによる処理、ナトリウムアミドによる処理、ヒドラジンによる処理、または酵素的加水分解によって除去できる。
【0022】
用語「カルボン酸保護基Y」とは、カルボン酸の酸性プロトンを置換するために本発明において使用できる保護基のことである。好ましい基は、任意に置換されたアルキル基、アリール基、アラルキル基、および好ましくはシリル基から選択される。トリアルキルシリル基は特にいっそう好ましい。このような基の例としては、メトキシメチル基、メチルチオメチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、2−ハロエチル基、2−(トリメチルシリル)エチル基、t−ブチル基、アリール基、アルキル基、アラルキル基、アリル基、ベンジル基、トリフェニルメチル(トリチル)基、ベンズヒドリル基、p−ニトロベンジル基、p−メトキシベンジル基、ならびにトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、i−プロピル−ジメチルシリル基などのトリアルキルシリル基が挙げられる。トリメチルシリル基が特にいっそう好ましい。本発明による方法において、Val−Gln−Pro−Glyペプチドは、過シリル化(persilylated)誘導体およびアルキルエステルから選択される基によって保護されることがより好ましい。MSA(N−メチル−N−トリメチルシリルアセトアミド)の使用によって、良好な結果が得られた。アミノ酸の、またはペプチドの過シリル化(persilylation)は、例えば、欧州特許第184243B号明細書(ソルベイ(SOLVAY))に記載された方法によって実施することができる。Val−Gln−Pro−Gly−Yペプチド(Yがt−ブチルエステル基である)を用いても優れた結果が得られている。
【0023】
カルボン酸保護基Yは、エステル化およびシリル化など、種々の方法によって導入することができる。他方、カルボン酸保護基Yの除去は、例えば、加水分解、鹸化、アシドリシス、水素化分解または酵素的加水分解によってもたらされ得る。
【0024】
本発明による方法によってカップリングさせる中間体ペプチド、すなわちアミノ酸の適切な配列を有するオクタペプチドよりも短いペプチドは、所望の場合、ペプチド合成の固相法を用いて調製できることは理解されるであろう。このような方法では、C末端アミノ酸のカルボン酸保護基は通常樹脂に結合させる。
【0025】
本発明の他の特定の態様において、上記の方法はしたがって、カルボン酸活性化剤の存在下で実施できる。
【0026】
本発明の目的に関して、「カップリング剤」とも称される用語「カルボン酸活性化剤」とは、求核置換され易い好適な遊離基によって、カルボン酸のヒドロキシル基を置換する試薬であり、アミノ酸またはペプチドの遊離カルボキシ基を、別のアミノ酸またはペプチドの遊離アミノ基とカップリングさせて反応物間にアミド結合を形成する。
【0027】
本発明において有用なカルボン酸活性化剤および活性化される基の例としては、カルボジイミド、カルボニルジイミダゾール、ハロゲン化カルボニル、特に、ハロゲン化アシルまたはハロホルミエート、アジド、ホスホニウム塩ならびにウロニウム塩またはグアニジニウム塩、対称酸無水物もしくは混合酸無水物または活性エステルが挙げられる。このようなカルボン酸活性化剤は、活性化されたペプチド誘導体を単離するためにカップリングステップ前に使用できるか、または遊離アミノペプチド誘導体の導入前にインサイチュで使用できる。
【0028】
このようなカルボン酸活性化剤の非限定的な具体的な例としては、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(「WSC」とも称されるEDCI)などのカルボジイミド試薬、1,1’−カルボニルジイミダゾール(CDI)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCDI)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)またはそれらの誘導体などのカルボジイミダゾール試薬;(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリス−(ジメチルアミノ)ホスホニウム(BOP)、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、(7−アザベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyAOP)、ブロモ−トリス−ピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBroP)、クロロ−トリス−ピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyCloP)などのホスホニウム塩類またはそれらの誘導体;o−ベンゾトリアゾール−N,N,N’,N’−テトラメチル−ウロニウム−ヘキサフルオロ−ホスフェート(HBTU)、o−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、2−(7−アザ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−ビス(テトラメチレン)ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HAPyU)などのウロニウム塩類もしくはグアニジニウム塩類またはそれらの誘導体;イソブチルクロロホルメート(iBCF)、塩化ピバロイル(PivCl)、t−ブチルクロロホルメート(TBCF)、エチルクロロホルメート(ECF)などのハロゲン化アシル類またはそれらの誘導体;ペンタフルオロフェノール(PfP)、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)またはそれらの誘導体などのエステル化試薬;ジフェニルホスホリルアジド(DPPA)またはその誘導体などのアジド化試薬が挙げられる。予め活性化したアミノ酸またはN−カルボキシ酸無水物形態、特にウレタン−N−カルボキシ酸無水物(UNCAのもの)の形態もまた、カルボキシ酸活性化剤の良好な例である。
【0029】
カルボキシ酸活性化剤は、好ましくは、カルボジイミド、カルボニルジイミダゾール、ハロゲン化アシル、ホスホニウム塩ならびにウロニウム塩またはグアニジニウム塩から選択され、より好ましくは、クロロ蟻酸イソブチルおよびピバロイルクロリドから選択される。ハロゲン化カルボニル、より具体的には、ハロゲン化アシル、特に上記の塩化アシルカップリング剤が好ましい。第三級ハロゲン化アシルが特により好ましい。第三級ハロゲン化アシルの例には、とりわけ、塩化1−アダマントイル、塩化2,2−ジメチルブチロイルおよび塩化ピバロイルがある。塩化ピバロイルはカルボキシ酸活性化剤として特により好ましい。
【0030】
ラセミ化、特に本明細書で先に記載したLeuまたはLeu−C末端断片をカップリングする際の任意のLeu基のラセミ化をほとんど完全に避けることが、特にカルボキシ酸活性化剤を慎重に選択することによって可能であることが判明したことは驚くべきことである。さらに、全体的に高生産性を可能にし、特に所望のオクタペプチドが得られる一方で優れた光学的純度を維持するカップリング条件が確定された。これは本明細書に後に記載される。
【0031】
副反応を減少させ、および/または反応効率を増加させるさらなる試薬を用いると良好な結果が得られることが多い。例えば、ホスホニウム塩およびウロニウム塩は、第三級塩基、例えば、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)およびトリエチルアミン(TEA)の存在下、保護アミノ酸を活性化アミノ酸に変換することができる(例えば、BOP、PyBOP、HBTU、およびTBTUは全て、HOBtエステルを生成することができる)。ラセミ化を防ぐのを助ける他の試薬としては、補助的な求核試薬(例えば、1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール(HOBt)、3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン(HOOBT)、1−ヒドロキシ−アザベンゾトリアゾール(HOAt)またはHOSu)を加えたカルボジイミド(例えば、DCCまたはWSCDI)またはそれらの誘導体が挙げられる。利用できる他の試薬はTBTUである。補助的な求核試薬を加え、または加えずに、クロロ蟻酸イソブチルを用いた混合酸無水物法もまた、低ラセミ化が得られるため、アジド法のように用いられる。これらのタイプの化合物はまた、カルボジイミド媒介カップリング率を高めると共に、Asn残基およびGln残基の脱水を防ぐ。
【0032】
このようなカルボキシ酸活性化剤を用いる場合、カップリング反応は、追加試薬として塩基の存在下で実施されることが多い。したがって、本発明の他の特定の態様において、カップリング反応は塩基の存在下で実施される。塩基は、N−メチルモルホリン(NMM)、ピリジン、トリエチルアミン(TEA)、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)などの第三級及び複素環式芳香族のアミン、またはそれらの混合物から選択されることが好ましい。より好ましくは、N−メチルモルホリンおよびジイソプロピルエチルアミンから選択される。
【0033】
本発明の他の特定の態様において、上記のペプチドカップリングは極性有機溶媒中で実施される。特定の好ましい実施形態において、極性有機溶媒により、形成されたペプチド結合のラセミ化、ペプチドおよび/またはペプチド断片の溶解性、およびカップリング反応率の特に有効な制御が可能になる。極性有機溶媒は、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル(AcOEt)、ジクロロメタン(DCM)、メチレンクロリド、ピリジン、クロロホルム、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)などのアミドタイプの溶媒、またはそれらの混合物から選択されることが好ましい。より好ましくは、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、N−メチルピロリドン(NMP)およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)から選択される。極性有機溶媒はN,N−ジメチルアセトアミド(DMA)であることが最も好ましい。
【0034】
本発明において、カップリング反応は一般に−45℃以上の温度で実施される。この反応は、―25℃以上で実施されることが多い。この温度は−20℃以上であることが好ましい。本発明による方法において、前記反応は一般に+45℃以下で実施される。この反応は、+5℃以下で実施されることが多い。この温度は0℃以下であることが好ましい。
【0035】
本発明の他の特定の態様において、溶液、一般にはカップリングが生じた溶液は、カップリングステップ後に水相によって好適に処理して水相にカップリング生成物の溶液を提供し、次いでカップリング生成物を水相から有機溶媒中へと抽出することができる。この場合、水相のpH値は、好ましくは1以上になるように制御される。より好ましくは、これは1.5以上である。さらにいっそう好ましくは、これは2以上である。他方、水相のpHは、好ましくは9以下に制御される。いくつかの実施形態において、このpHは、好ましくは5以下に制御される。より好ましくはこの実施形態において、これは3.5以下である。さらにいっそう好ましくは、これは3以下である。水相のpH値が約2.5で優れた結果が得られた。
【0036】
本発明による方法において、上記で考慮されたpHでの洗浄操作を実施することによって、酸性または塩基性の不純物を除去する一方で、カップリング生成物の高品質、特にBoc基またはtBu基などのさらなるカップリングステップに任意に必要なGln部分または保護基などの感受性の基に関しての高品質を維持することが可能になる。
【0037】
本発明のさらに他の特定の態様において、溶液、一般にはカップリングが生じた溶液、特に、保護されたX−Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly−Yオクタペプチド(配列番号1)を生じさせる溶液は、所望の生成物を沈降させるために、水性溶媒中に直接注ぐことができる。他の実施形態において、所望の生成物を結晶化させるために、溶液、特に、保護されたX−Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly−Yオクタペプチド(配列番号1)の溶液に、水性溶媒を加えることができる。このような水性溶媒は、例えば、水、塩水または他の任意の水性鉱塩溶液であり得る。水のpHは、好ましくは1.5以上であり、より好ましくは2以上である。他方、水相のpH値は、好ましくは10以下になるように制御される。より好ましくは、9以下である。さらにいっそう好ましくは、8以下である。上記の塩水溶液に用いる好適な塩としては、アルカリまたはアルカリ土類塩化物、特に、塩化ナトリウムアルカリまたはアルカリ土類硫酸塩、特に硫酸カリウムアルカリまたはアルカリ土類炭酸水素塩、特に炭酸水素ナトリウムが挙げられる。好ましい水相は脱イオン水からなる。
【0038】
最も好ましい実施形態において、Boc−Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly−OtBuオクタペプチド(配列番号1)は、好ましくは、本発明による方法の好ましい態様に従ったカップリングにより得られ、より好ましくは、アミドタイプの溶媒を含んでなる溶液として、より好ましくはDMA中で得られ、水相、好ましくは、脱イオン水などの水、特に、約7のpHを有する品質の制御されたGMP品質の水を含んでなるか、またはそれから構成された水相を、保護ペプチドの溶液に加え、水相は一般に、20℃から70℃、好ましくは40℃から50℃の温度を有する。
【0039】
本明細書において先に記載された別の好ましい実施形態において、他の全ての好ましい点は最も好ましい実施形態のとおりにして、Boc−Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly−OtBuオクタペプチド(配列番号1)の有機溶液を水相に加える。
【0040】
この最も好ましい実施形態により、精製固体として高収率で単離できる保護ペプチドの特に高い純度および容易な分離が可能になる。
【0041】
通常、カップリングステップ後の反応生成物は、1種以上の保護基を含有する。このようなカップリング生成物の一例は、式X−Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly−Yのペプチド誘導体(XおよびYが上記で定義されたとおりである)である。所望の場合、保護基は、例えば選択的方法で除去することができる。したがって、引き続く反応の間、一定の保護基のみを除去し、他の保護基はそのまま保持することが可能である。
【0042】
本発明による方法の好ましい一態様において、式X−Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly−Yのペプチド誘導体はさらに、遊離のGly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Glyオクタペプチド(配列番号1)を提供するために、アミノ保護基Xと酸保護基Yを脱保護される。
【0043】
本発明の特定の好ましい態様において、式X−Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly−Y(配列番号1)(Yがカルボキシル基の任意の保護基である)のペプチド誘導体において、少なくともアミノ保護基Xを脱保護することを含んでなる脱保護法が提供される。好ましくは、Yは遊離のカルボキシル基または酸に不安定なカルボキシル保護基、例えば第三級ブチルエステルである。この実施形態において、Xは好ましくは酸に不安定な保護基、特にBoc基である。脱保護は有機酸または鉱酸によって実施することができる。有機酸は例えば、トリフルオロ酢酸(TFA)、トリフルオロメチルスルホン酸、ギ酸、p−トルエンスルホン酸およびメタンスルホン酸から選択することができる。脱保護は、好ましくは有機溶媒に溶解した鉱酸、特にHClによって実施することが好ましい。カルボン酸、好ましくは氷酢酸を含んでなる溶媒中のアミノ保護ペプチドの溶液を提供し、鉱酸、好ましくはHClを極性有機溶媒に加えることによって、良好な結果が得られる。第一の実施形態において、別の溶媒中のペプチド溶液、例えば、カップリングステップからのワークアップ溶液に有機溶媒を加えることによって、アミノ保護ペプチドの溶液が提供される。好ましい第二の実施形態において、アミノ保護ペプチドを第1のステップにおいて沈殿させるか、または結晶化させ、ろ過し、任意に洗浄し、第2のステップにおいて、溶媒、例えば氷酢酸中に溶解させる。極性有機溶媒または共同溶媒として、エーテル、特にジオキサンを用いることもできる。脱保護ステップは一般に、0℃から約45℃、好ましくは30℃から約45℃未満まで、最も好ましくは、約30℃の温度で実施される。一般に、脱保護ステップの反応媒体は、反応媒体の総質量に対して2質量%未満の水を含有して、実質的に無水である。好ましくは、この含量は1質量%以下、特に0.5質量%以下である。
【0044】
最も好ましい一実施形態において、上記のとおり好ましくは結晶化によって得られるBoc−Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly−OtBuオクタペプチド(配列番号1)を、氷酢酸を含んでなるか、またはそれから構成された溶媒に溶解させる。氷酢酸中のHCl溶液を加え、本明細書において先に記載した温度で脱保護を実施する。この最も好ましい実施形態において、保護ペプチド1分子当たり、一般に3〜12当量のHClが用いられ、好ましくは、保護ペプチド1分子当たり、5〜10当量、より好ましくは6〜8当量のHClが用いられる。保護ペプチド1分子当たり、約7当量のHClを用いることが特にいっそう好ましい。この最も好ましい実施形態において、脱保護反応の反応媒体は、上記のとおり実質的に無水であることが好ましい。
【0045】
特に、本明細書における先の最も好ましい実施形態によって、効率的な脱保護が可能になる一方で、Gln部分の脱アミド化の可能性を回避し、脱保護ステップの反応媒体から容易に回収できる固体の脱保護ペプチド塩の提供が可能になる。
【0046】
本発明による方法において、少なくとも1つのペプチドカップリングステップが溶液中で実施される。好ましくは少なくとも2つ、例えば、2つ、3つ、または4つ、より好ましくは少なくとも5つのペプチドカップリングステップ、例えば、5つ、6つ、または7つのカップリングステップが溶液中で実施される。さらにいっそう好ましくは、全てのカップリングステップが溶液中で実施される。本発明による方法において有用な具体的な溶液相カップリングステップはこの後のスキームでの合成から明らかである。
【0047】
第1の合成アプローチは、この後のスキーム1に詳述されている:
【化1】

【0048】
スキーム1による方法の特定の実施形態はスキーム2に従う。
【化2】

【0049】
スキーム1または2の断片3〜4、6〜7、6〜8および5〜8が過シリル化形体にある場合に良好な結果が得られた。別の好ましい実施形態において、スキーム1の8−Glyはカルボン酸エステル、特に第三級ブチルエステルとして保護される。
【0050】
さらなる合成アプローチは、この後のスキーム3に詳述されている:
【化3】

ここで、XおよびYは上記で一般に定義されたとおりである。
【0051】
スキーム2の8−Glyがカルボン酸エステル、特に第三級ブチルエステルとして保護されている場合に良好な結果が得られる。
【0052】
本発明による方法において、溶液相カップリングステップの圧力は一般に、その溶液を液体状態に維持するように選択される。大気圧(およそ101.3kPa)および超大気圧がきわめて好適である。
【0053】
反応生成物は、例えば、抽出、結晶化、凍結乾燥、スプレー乾燥、沈降またはクロマトグラフィー(例えば、薄層またはカラム)などの精製方法によって単離、かつ精製することができる。沈降または結晶化による単離および精製が好ましい。一実施形態において、少なくとも1つの中間体ペプチドまたは最終生成物が、沈降または結晶化により単離されかつ精製される。本発明による方法の特に好ましい実施形態において、全ての中間体および最終生成物が、所望の場合は、沈降または結晶化により単離されかつ精製される。中間体および最終生成物は、例えば、クロマトグラフィーのパラメーター(純度制御)、旋光性および可能性として分光学的データによって特性化できる。
【0054】
X−Val−Gln−Pro−Gly−Yペプチド(配列番号2)の合成
X−Val−Gln−Pro−Gly−Yペプチド(配列番号2)は種々の合成アプローチによって得ることができる。下記の2つのアプローチ、すなわち1+3および2+2のアプローチによって優れた結果が得られた。
【0055】
本発明のさらに別の特定の態様において、上記の方法は、X−ValとGln−Pro−Glyペプチドとのカップリングによる、X−Val−Gln−Pro−Glyペプチド(配列番号2)(Xは上記のアミノ保護基)の製造(1+3のアプローチ)を含んでなり得る。
【0056】
このようなテトラペプチド(配列番号2)の製造は、例えば活性化エステル形体におけるX−Valのカルボン酸官能基を、好ましくはN―ヒドロキシスクシンイミドによって活性化させることを含んでなることが好ましい。特に、Xはベンジルオキシカルボニル(Z)であり得る。
【0057】
本発明のさらに別の特定の態様において、上記の方法は、X−Val−GlnとPro−Glyペプチドとのカップリングによる、X−Val−Gln−Pro−Glyペプチド(配列番号2)(Xは上記のアミノ保護基)の製造(2+2のアプローチ)を含んでなり得る。
【0058】
X−Val−Glnジペプチドは、例えば活性化エステル形体におけるX−Valのカルボン酸官能基を、好ましくはN―ヒドロキシスクシンイミドによって活性化させることにより得られることが好ましい。特に、Xはベンジルオキシカルボニル(Z)であり得る。他方、X−Pro−Gly−Yは、X−ProとGly−Yとの間の反応によって得られることが好ましく、式中、Xはベンジルオキシカルボニル(Z)であることが好ましく、Yは第三級ブチルエステルであることが好ましい。このような反応は上記の古典的な活性化条件下、特に、カルボジイミド試薬およびN―ヒドロキシスクシンイミド試薬を用いて実施できる。
【0059】
得られたX−Pro−Gly−Yペプチドは、アシドリシス、水素化分解、希釈水酸化アンモニウムによる処理、ナトリウムによる処理、ナトリウムアミドによる処理、ヒドラジンによる処理、または酵素的加水分解によって、X基から脱保護できる。水素化分解によって除去することが好ましい。
【0060】
X−Val−GlnとPro−Gly−Yとの間のカップリングもまた、種々の条件下で実施できる。ハロゲン化カルボニル、より具体的にはハロゲン化アシル、特に上記の塩化アシルカップリング剤が好ましい。ハロゲン化アシル、特に上記の塩化アシルカップリング剤が好ましい。第三級ハロゲン化アシルが特により好ましい。第三級ハロゲン化アシルの例にはとりわけ、1−アダマントイルクロリド、2,2−ジメチルブチロイルクロリドおよびピバロイルクロリドがある。ピバロイルクロリドを用いた際に優れた結果が得られた。クロロギ酸イソブチルもまたきわめて好適なカップリング剤である。
【0061】
驚くべきことに、特に、カルボン酸活性化剤を慎重に選択し、特に第三級ハロゲン化アシルを用いることにより、本明細書で先に記載したX−Val−Gln断片またはPro−Gly−Y断片をカップリングする際のラセミ化、特にGln基のラセミ化を実質的に完全に避けることが可能であることが分かった。より具体的には、GlnおよびPro部分の側鎖上の望ましくない副反応を実質的に避けることが可能である。さらに、全体的な高生産性および特に所望のテトラペプチドの高収率を可能にする一方で、優れた光学的純度を維持するカップリング条件が確立され、これらは本明細書に後で記載されている。
【0062】
上記のカップリングは一般に、−30℃以上の温度で実施される。この反応は、−10℃以上の温度で実施されることが多い。この温度は、−5℃以上の温度であることが好ましい。この反応は一般に、+45℃以下の温度で実施される。この反応は、+30℃以下の温度で実施されることが多い。この温度は、+25℃以下の温度であることが好ましい。
【0063】
上記のカップリングは溶液中で実施されることが好ましい。この場合、溶液を液体状態に維持するように圧力が選択される。大気圧(およそ101.3kPa)および超大気圧がきわめて好適である。本発明によるこのカップリングが溶液中で実施される場合、前記溶液はアセトニトリル(CH3CN)および/または水性媒体を好適に含んでなり得る。
【0064】
別の実施形態において、このカップリングは、酢酸エチル(AcOEt)などのアルキルエステル溶媒、ジクロロメタン(DCM)などの塩素化溶媒、およびN,N−ジメチルアセトアミド(DMA)およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などのアミドタイプの溶媒から選択されることが好ましい有機溶媒中で実施される。この実施形態において、特にアミドタイプの溶媒が用いられる場合、特にスキーム2または3に従った上記のさらなるカップリングステップにおいてテトラペプチドを単離することなく、任意の分離後、特に、水素化触媒などの任意に存在する固体のろ過後に、テトラペプチド溶液を用いることが可能である。
【0065】
次いで、結合生成物の溶液を水相に提供するために、カップリングステップ後に、反応媒体を水相で好適に処理でき、次いで、X−Val−Gln−Pro−Gly−Yペプチド(配列番号2)を水相から有機溶媒中へ抽出する。
【0066】
中間体断片およびX−Val−Gln−Pro−Gly−Yペプチド(配列番号2)を沈降および/または結晶化により回収できる。いくつかの場合、X−Val−Gln−Pro−Gly−Yペプチド(配列番号2)を一般に、第1の溶媒中の溶液として提供し、次いで、第1の溶媒よりもペプチドの溶解性が低い第2の溶媒に加えることによって沈降させる。他の場合では、X−Val−Gln−Pro−Gly−Yペプチド(配列番号2)を一般に、第1の溶媒中の溶液として提供し、次いで、第1の溶媒よりもペプチドの溶解性が低い第2の溶媒を加えることによって結晶化させる。
【0067】
第1の溶媒は、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、ジオキサン、メタノール、n―ブタノール、イソブタノール、2−ブタノール、2−プロパノール、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、およびそれらの混合物よりなる群から選択されることが有利である。ジクロロメタン/イソブタノールの混合物により良好な結果が得られている。
【0068】
第2の溶媒は、水、ジイソプロピルエーテル、アセトニトリル、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アセトン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタンまたはジオキサンから選択される少なくとも1種を含んでなることが有利である。ジイソプロピルエーテルによって良好な結果が得られている。
【0069】
Val−Gln−Pro−Glyテトラペプチド(配列番号2)の合成
本発明のさらに別の特定の態様において、上記の方法は、上記のX−Val−Gln−Pro−Gly−Yペプチドの製造がN末端のアミノ保護基Xの脱保護をさらに含んでなる、Val−Gln−Pro−Glyテトラペプチド(配列番号2)の製造を含んでなり得る。特に、Xはベンジルオキシカルボニル(Z)であり得る。
【0070】
このようなアミノ保護基Xは、アシドリシス、水素化分解、希釈水酸化アンモニウムによる処理、ナトリウムによる処理、ナトリウムアミドによる処理、ヒドラジンによる処理、または酵素的加水分解によって除去できる。水素化分解によって除去することが好ましい。
【0071】
X−Gln−Pro−Gly−Yトリペプチドの合成
本発明のさらに別の特定の態様において、上記の方法はさらに、アンモニアによるX−Glp−Pro−Gly−Yトリペプチドの開環によるX−Gln−Pro−Gly−Yトリペプチド(Xはアミノ保護基)の製造を含んでなる。
【0072】
Gly−Gly−Val−Leuテトラペプチド(配列番号3)の合成
本発明のさらに別の特定の態様において、上記の方法はさらに、Val−LeuジペプチドとX−Gly−GlyまたはX−GlyとのカップリングによるGly−Gly−Val−Leuテトラペプチド(配列番号3)の製造を含んでなる。
【0073】
一般にこのカップリングは、カルボン酸活性化剤の存在下で実施される。一実施形態において、カルボン酸活性化剤として一般に、カルボジイミド、ハロゲン化アシル、ホスホニウム塩、およびウロニウム塩またはグアニジニウム塩が好ましい。ハロゲン化カルボニル、より具体的にはハロゲン化アシル、特に上記の塩化アシルのカップリング剤が好ましい。第三級ハロゲン化アシルが特により好ましい。第三級ハロゲン化アシルの例の中でもとりわけ、1−アダマントイルクロリド、2,2−ジメチルブチロイルクロリドおよびピバロイルクロリドがある。カップリング剤は、クロロギ酸イソブチルおよびピバロイルクロリドから選択されることがより好ましい。
【0074】
別の実施形態において、カップリングは、好ましくはX−Gly−Glyの活性化エステル形体、より好ましくはN−ヒドロキシスクシンイミドによって実施される。
【0075】
ハロゲン化アシルがカルボン酸活性化剤として用いられる場合、このカップリングは一般に、追加試薬として塩基の存在下で実施される。これは、N−メチルモルホリン(NMM)、ピリジン、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)またはトリエチルアミン(TEA)から選択されることが好ましい。これはN−メチルモルホリン(NMM)であることがより好ましい。
【0076】
Val−LeuジペプチドとX−Gly−GlyまたはX−Glyとのカップリングは、溶液中で実施されることが好ましい。この場合、溶液を液体状態に維持するように圧力が選択される。大気圧(およそ101.3kPa)および超大気圧がきわめて好適である。この溶液は一般に、極性有機溶媒を含んでなる。極性有機溶媒は、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、ジクロロメタンまたはこれらの混合物から選択されることが好ましい。この溶液は、N,N−ジメチルアセトアミドまたは酢酸エチルを含んでなることがより好ましい。
【0077】
グリシンアミノ酸またはジペプチドGly−Glyは一般に、アミノ保護基Xにより保護される。アミノ保護基Xは、t−ブチルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル、2−ニトロベンゼンスルホニル、2−ニトロベンゼンスルフェニル、および置換誘導体から選択されることが好ましい。アミノ保護基Xは、t−ブチルオキシカルボニル(BOC)であることがより好ましい。
【0078】
Val−Leuジペプチドは一般に、カルボン酸保護基Yにより保護される。
【0079】
好ましいカルボン酸保護基Yは、アルキル、アリールおよびシリル化誘導体である。特定の好ましい変異体において、Val−Leuペプチド誘導体は過シリル化誘導体である。Val−Leuジペプチドの過シリル化は、例えば、本出願人名での欧州特許出願第184243A号明細書に記載された方法に従って実施することができる。これはMSAによって実施することが好ましい。
【0080】
Val−LeuジペプチドとX−Gly−GlyまたはX−Glyとのカップリングは一般に、−45℃以上の温度で実施される。この反応は、−25℃以上の温度で実施されることが多い。この温度は−20℃以上であることが好ましい。本発明による方法において、カップリングは一般に+45℃以下の温度で実施される。この反応は、+5℃以下の温度で実施されることが多い。この温度は0℃以下であることが好ましい。
【0081】
上記のとおり得られたテトラペプチドはさらに、アミノ保護基Xおよび酸保護基Yを脱保護して、遊離のGly−Gly−Val−Leuテトラペプチド(配列番号3)を提供することができる。
【0082】
次いで反応生成物を、例えば、抽出、結晶化、凍結乾燥、スプレー乾燥、沈降またはクロマトグラフィー(例えば、薄層またはカラム)などの精製法により、単離しかつ精製することができる。
【0083】
本発明の上記のカップリングステップは、過シリル化条件下で実施できる。言い換えると、本発明による方法に用いられるアミノ酸またはペプチドは、それらの過シリル化形体下で保護することができる。それらは、過シリル化形体下で保護されることが好ましい。
【0084】
本発明の別の態様は、本発明による方法において中間体として、それ自体で、またはそれらの保護形体で得ることのできる、式Glp−Pro−Glyのトリペプチドまたは式X−Glp−Pro−Gly(Xはアミノ保護基)の保護ペプチド、または式X−Glp−Pro−Gly−Yの保護ペプチド(Xはアミノ保護基で、Yはカルボン酸保護基)に、式Gln−Pro−Glyのトリペプチドまたは式X−Gln−Pro−Gly(Xはアミノ保護基)の保護ペプチドに、式Val−Gln−Pro−Gly(配列番号2)のテトラペプチドまたは式X−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号2)(Xはアミノ保護基)の保護ペプチドに、ならびに、Xが特にベンジルオキシカルボニルの場合、式Leu−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号4)のペンタペプチドに、式Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号5)のヘキサペプチドにおよび式Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号6)のヘプタペプチドに関する。
【0085】
他に、本発明はまた、本発明による方法において得ることのできる、式Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号7)のドデカペプチドに、式Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly−Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号8)のヘキサカイデカペプチドにおよび式CH3C(=O)−NH−Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号1)の修飾ペプチドに関する。
【0086】
本発明はまた、ペプチド合成における中間体として以下のペプチドの使用にも関する:
それ自体での、またはそれらの保護形体での
式Glp−Pro−Glyのトリペプチド;
式Val−Gln−Pro−Gly(配列番号2)のテトラペプチド;
式Leu−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号4)のペンタペプチド;
式Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号5)のヘキサペプチド;
式Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号6)のヘプタペプチド。
【0087】
精製
ペプチド合成における主要な問題点のうちの1つは、しばしば最終ペプチド生成物の収量減少の原因となるペプチドの単離と精製に関連する。
【0088】
したがって、本発明はまた、上記ペプチド自体、または保護された形体下でのペプチドの精製に関する。本発明による精製によって、特に、例えば、アセトニトリルのような有機溶媒などの有機不純物に関連した精製に関する規格を満たすことができ、産業化が可能になる。
【0089】
本発明による精製方法によって、前記精製オクタペプチドの効率的かつ低コストの製造が可能になる。
【0090】
Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号1)または式Val−Gln−Pro−Gly(配列番号2)もしくはX−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号2)(式中、Xがアミノ保護基である)、Leu−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号4)、Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号5)、Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号6)、Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号7)、Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly−Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号8)、およびCH3C(=O)−NH−Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号1)のいずれかのペプチドの、ペプチド自体、または保護された形体下での精製方法であって、ペプチドを第一の溶媒に溶解させ、次いで沈降または結晶化させる精製方法を提供することもまた本発明の目的である。沈降は、第一の溶媒中のペプチド溶液を、第一の溶媒よりもペプチドの溶解性が低い第二の溶媒に加えることによって実施する。結晶化は、第一の溶媒中のペプチド溶液に、第一の溶媒よりもペプチドの溶解性が低い第二の溶媒を加えることによって実施する。
【0091】
第一の溶媒を加えることによりペプチドを溶解することもできるし、または第一の溶媒中の溶液として処理後に直接ペプチドを得ることができる。後者の場合、第二の溶媒を加える前に溶液を減圧下で濃縮することができる。
【0092】
第一の溶媒および第二の溶媒の性質は、その等電点値およびその保護または無保護形体についてのペプチドの性質に依存する。ペプチドは、第二の溶媒に対するよりも第一の溶媒に対して溶解性がなければならない。
【0093】
一態様において、ペプチドが無保護である場合、第一の溶媒は、水性媒体であることが好ましく、第二の溶媒は、少なくとも1つの極性有機溶媒を含んでなることが好ましい。幾つかの場合、水性媒体のpHは、制御できることが好ましい。一方、保護ペプチドの場合、第一の溶媒は、少なくとも1つの極性有機溶媒を含んでなることが好ましいが、第二の溶媒は、水性媒体であることが好ましい。
【0094】
有機溶媒は、イソプロピルエーテル(IPE)、アセトニトリル(CH3CN)、メチルtブチルエーテル(MTBE)、酢酸エチル(AcOEt)、酢酸イソプロピル(AcOiPr)、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン(DCM)、ジオキサン、メタノール、t−ブタノール、イソプロパノール、エタノール、酢酸、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)など、またはそれらの混合物から選択されることが好ましい。イソプロピルエーテルおよび/またはアセトニトリルによって良好な結果が得られた。
【0095】
特定の一態様において、極性有機溶媒は、アセトニトリル(CH3CN)、酢酸エチル(AcOEt)、酢酸イソプロピル(AcOiPr)、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン(DCM)、ジオキサン、メタノール、t−ブタノール、イソプロパノール、エタノール、酢酸、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)など、またはそれらの混合物から選択されることが好ましい。
【0096】
以下の表は、種々の断片用に第一の溶媒および第二の溶媒の好ましい組合わせを示してある。
【0097】
【表1】

【0098】
【表2】

【0099】
塩形成(例えば、塩酸塩、酢酸塩、ジシクロヘキシルアンモニウム塩、シクロヘキシルアンモニウム塩またはトリフルオロ酢酸塩の形成)により、または両性イオン形成により所望のペプチド生成物を単離しかつ精製することは有利となり得る。
【0100】
このペプチドはまた、例えば、スプレー乾燥、ろ過またはデカント法により溶液から分離し、乾燥してから、他の成分との組合わせ、凍結乾燥、スプレー乾燥、包装および/または保存などのさらなる処理ステップに任意に供することができる。
【0101】
1つの好適なアプローチによれば、ろ過によってペプチドを集め、特に、存在する可能のある塩含量を減少させるために任意に洗浄してから乾燥する。
【0102】
本発明のさらなる特定の態様は、Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号1)、または式Val−Gln−Pro−Gly(配列番号2)もしくはX−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号2)(式中、Xがアミノ保護基である)、Leu−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号4)、Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号5)、Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号6)、Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号7)、Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly−Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号8)、およびCH3C(=O)−NH−Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号1)のいずれかのペプチドの、ペプチド自体、または保護された形体下での精製方法であって、前述のいずれかの配列の粗ペプチドをクロマトグラフィー操作に供することを含んでなる精製方法に関するものである。
【0103】
本発明において、クロマトグラフィーは、中圧液体クロマトグラフィー(MPLC)および高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)から選択されることが好ましい。
【0104】
この態様に置いて、ペプチドの任意の沈降または結晶化の前または後に、このクロマトグラフィー操作を実施することができる。
【0105】
クロマトグラフィー操作は、例えば、連続床を有するカラム(一体式カラム)上で処理することができる。この場合、順相固定相、例えば、シリカまたはアルミナを用いることができる。その場合、一般に無極性移動相を用いる。疎水的に修飾された無機支持体、典型的には、有機疎水性化合物をグラフトしたシリカなどの逆相固定相を使用することが好ましい。その場合、極性移動相は一般に、例えば、有機共溶媒、特にメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリルまたはジオキサンなどの極性有機溶媒を含有する水性移動相が用いられる。ジオール基、プロピルシアノ基またはアミノ基の結合したシリカなどの中等度の極性もまた、特に緩衝化された水性/有機移動相などの中程度極性移動相によって使用することができる。
【0106】
クロマトグラフィー操作は、中圧液体クロマトグラフィー(MPLC)であり得る。このようなクロマトグラフィー操作において、溶出液は、水、アセトニトリル(CH3CN)、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類を含むことができる。溶出液は、水(H2O)および/またはアセトニトリル(CH3CN)を含むことが好ましい。溶出液はまた、pH値を一定領域(緩衝液)に維持するために一定量の塩類を含むことができる。溶出液として酢酸アンモニウムの水溶液を用いた場合に、良好な結果が得られた。
【0107】
本発明のさらなる特定の態様は、水および極性有機溶媒を含んでなる溶媒混合物中、Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号1)、または式Val−Gln−Pro−Gly(配列番号2)もしくはX−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号2)(式中、Xがアミノ保護基である)、Leu−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号4)、Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号5)、Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号6)、Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号7)、Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly−Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号8)、およびCH3C(=O)−NH−Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号1)のいずれかのペプチドの、ペプチド自体、または保護された形体下での溶液に関する。
【0108】
本発明による上記の溶液は、アセトニトリルおよびメタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類を含んでなることが好ましい。このような溶液は、精製操作に使用することができる。
【0109】
本発明の別の好ましい態様は、種々の酢酸塩含量を有する酢酸塩含有Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Glyオクタペプチド(配列番号1)を提供することに関する。使用される単離方法に依って、それらの安定性について一定の利点を示し得る、最終ペプチド中の種々のモル含量の酢酸塩の獲得が可能であることが見出されている。
【0110】
第一の実施形態において、酢酸塩含有ペプチドは、凍結乾燥によりペプチド水溶液から単離される。凍結乾燥は、所望の物質を含有する水性媒体を凍結させ、水蒸気の低分圧に曝露することにより、氷を蒸気に直接昇華させることによって達成される、前記所望の物質を乾燥する手段を意味することが意図されている。この場合、酢酸塩含有ペプチドは一般に、ペプチドの少なくとも60モル%/モルまたはそれに等しい酢酸塩濃度を有する。
【0111】
より好ましい第二の実施形態において、酢酸塩含有ペプチドは、例えば、蒸発により液体媒体を濃縮することによって液体媒体から沈降させる。この場合、酢酸塩含有ペプチドは一般に、ペプチドの30モル%/モルから60モル%/モル、好ましくは、約50モル%/モルの酢酸塩濃度を有する。好適な出発溶液は、例えば、上記の脱保護ステップから得られた粗製物のクロマトグラフィー、特にMPLCにより得ることができる。例えば、特にHClを用いる脱保護により得られた粗製物を、特に上記のクロマトグラフィー操作に供することができる。クロマトグラフィー操作から得られる、酢酸塩含有ペプチドおよび極性有機溶媒、特にアセトニトリルを含有する溶液を、例えば、好ましくは減圧下、好ましくは20℃から50℃の温度での蒸発により、濃縮することができる。溶液が濃縮されると、酢酸塩含有ペプチドは沈降を開始し、ろ過により回収することができる。例えば、濃縮液を、典型的には10℃未満の温度に冷却させることによって、沈降効率を高めることができる。
【0112】
最も好ましい第三の実施形態において、Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Glyオクタペプチド(配列番号1)の塩化物塩の塩素対イオンを酢酸イオンと交換することによって、酢酸塩含有ペプチドを液体媒体から結晶化させる。この場合、酢酸塩含有ペプチドは一般に、ペプチドの0モル%/モル超から50モル%/モル未満、好ましくはペプチドの20モル%/モルから30モル%/モルの酢酸塩濃度を有する。特に有利な態様において、上記の脱保護ステップから得られたGly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Glyオクタペプチド(配列番号1)の塩化物塩を水に溶解させることにより得られた液体媒体に、酢酸イオン源を加えることにより、酢酸塩含有ペプチドを結晶化させることが可能である。好適な酢酸塩源としては、酢酸塩類、例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムまたは酢酸アンモニウムが挙げられる。酢酸アンモニウムにより、良好な結果が得られた。結晶化の際のpHは、2.5から7.5の範囲に制御されることが好ましい。3.5から6.5のpHは、特により好ましい。約4.5のpHにより、良好な結果が得られた。この実施形態において、遊離ペプチドとして判定されたGly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Glyオクタペプチド(配列番号1)の初発濃度は一般に、前記塩化物塩および酢酸イオン源、および必要ならば、例えば、アンモニアなどの塩基のpH調整剤を含有し、好ましくは、全てを水に溶解させた液体媒体の全質量に比して2質量%から20質量%である。この初発濃度は、10質量%から15質量%であることが好ましい。結晶化の際の温度は一般に、5℃から35℃、好ましくは20℃から30℃である。
【0113】
第四の実施形態において、Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Glyオクタペプチド(配列番号1)の塩化物塩の水溶液のpHを、約6.0から7.0、より具体的には約6.5であるペプチドの等電点に調整することにより液体媒体から結晶化させることによって、好ましくは両性イオンの形体で無酢酸塩ペプチドを調製することが可能である。遊離ペプチドを所望する場合、酢酸塩などの補充対イオンの存在を回避することが好ましい。
【0114】
本発明はまた、前記酢酸塩含有ペプチドに関する。驚くべきことに、酢酸塩含量が減少する場合、またその製造方法によっても、ペプチドの安定性が改善されることが見出されている。上記の結晶化または沈降により得られた酢酸塩含有ペプチドは、凍結乾燥ペプチドよりも安定である。
【0115】
本発明はまた、示された方法による前記酢酸塩含有ペプチドの製造に関する。
【0116】
Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Glyオクタペプチド(配列番号1)の塩交換ステップに導入された塩化物塩が、少なくとも98,5%のHPLCによる純度を有することが好ましい。
【実施例】
【0117】
以下の実施例は、本発明の例示を意図したものであって、その範囲を限定するものではない。
【0118】
これらの実施例および本明細書を通して、使用される略語は以下のとおり定義される:AcOHは酢酸であり、AcOEtは酢酸エチルであり、AcOiPrは酢酸イソプロピルであり、Bocはt−ブトキシカルボニルであり、n−BuOHはn−ブタノールであり、Cbzはベンジルオキシカルボニルであり、DCCは1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドであり、DCMはジクロロメタンであり、DICは1,3−ジイソプロピルカルボジイミドであり、DIPEAはN,N−ジイソプロピルエチルアミンであり、DMAPAは3−ジメチルアミノプロピルアミンであり、DMFはN,N−ジメチルホルムアミドであり、DMAはN,N−ジメチルアセトアミドであり、Fmocはフルオレニルメチルオキシカルボニルであり、HBTUはN,N,N’,N’−テトラメチル−O−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)ウロニウム−ヘキサフルオロホスフェートであり、HOBTは1−ヒドロキシベンゾトリアゾールであり、HOOBTは3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジンであり、HPWは高純度水であり、IBCFはクロロギ酸イソブチルであり、PivClは塩化ピバロイルであり、i−BuOHはイソブタノールであり、IPEはジイソプロピルエーテルであり、MeCNはアセトニトリルであり、MeOHはメタノールであり、NMMはN−メチルモルホリンであり、NMPは1−メチル−2−ピロリドンであり、THFはテトラヒドロフランであり、MSAはN−メチル−N−トリメチルシリルアセトアミドであり、Tosはトシルであり、MTBEはメチル−t−ブチルエーテルである。
【0119】
実施例1から11:以下のスキーム4は、下記の実施例に詳述されるGly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Glyオクタペプチド(配列番号1)の第一の一般合成アプローチを表している。
【化4】

【0120】
実施例1:H−Val−Leu−OHの合成
純粋なMSA中に完全に溶解するまで、ロイシン(1.2当量)を最高50℃でシリル化し、次いでAcOEtで希釈した。35℃で攪拌下、ロイシン溶液をZ−Val−OSu溶液に移した。この反応を水でクエンチし、AcOEtで希釈し、有機相を、KHSO4とNaClとで洗浄した。溶媒を減圧留去し、MeOHで置換した。次にこのメタノール性溶液に水を加え、次いでパラジウム触媒を添加した。30℃でガス状水素を導入することによりZ基の脱保護を行った。反応が完了したら、触媒をろ過し、メタノールと水50/50の混合物で洗浄した。溶媒を蒸発させ、この混合物をイソプロパノールで希釈すると、ジペプチドが沈降した。次にろ過によりジペプチドを回収し、室温で、イソプロパノールで洗浄してから乾燥した。85%の収率でジペプチドを単離した。
【0121】
実施例2:H−Val−Leu−OHの合成
純粋なMSA中に完全に溶解するまで、ロイシン(1.2当量)を最高50℃でシリル化し、次いでAcOEtで希釈した。35℃で攪拌下、ロイシン溶液をZ−Val−OSu溶液に移した。未反応のZValOSuを、DMAPA(0.05当量)で中和し、この反応を水でクエンチし、AcOEtで希釈し、有機相を、KHSO4とNaClとで洗浄した。溶媒を減圧留去し、濃縮物中のAcOEt含量が≦5質量%になるまでiPrOHで置換した。次にこのペプチド溶液に水を加え、次いでパラジウム触媒を添加した。約35℃でガス状水素を導入することによりZ基の脱保護を行った。反応が完了したら、触媒をろ過し、水で洗浄した。ろ液を集めてイソプロパノールで希釈し、±5℃に冷却するとジペプチドが沈降した。次にろ過によりジペプチドを回収し、室温でイソプロパノールとMeCNとで洗浄してから乾燥した。85%の収率でジペプチドを単離した。
【0122】
実施例3:Boc−Gly−Gly−Val−Leu−OH(配列番号3)の合成
一方で、H−Val−Leu−OH(1当量)を、MSA(2.72当量)のAcOEt溶液に加えた。このスラリーを、溶液が得られるまで25℃で攪拌した。次にこの溶液を−15℃に冷却した。他方で、Boc−Gly−Gly−OH(1.05当量、市販品として入手可能)に、NMM(1.0当量)、AcOETおよびDMFを共に加えた。このスラリーを完全に溶解するまで攪拌してから、−25℃に冷却した。IBCF(1.0当量)をBoc−Gly−Gly−OH溶液に加えてカルボン酸官能基を活性化した。次にシリル化Val−Leuを加え、少なくとも30分間攪拌した。この反応混合物を25℃に調節してから、水の添加によりクエンチした。次いでこの混合物をAcOEtで希釈し、攪拌下、KHSO4溶液で洗浄した。水相を廃棄し、有機層をNaCl溶液で再度洗浄した。この有機相を最終的に濃縮し、5℃で少なくとも8時間、緩やかに攪拌して、テトラペプチドを結晶化した。この固体を、5℃で冷AcOEtで洗浄し、ろ過により回収した。減圧乾燥後、85%のBoc−Gly−Gly−Val−Leu−OH(配列番号3)を回収した。
【0123】
実施例4:Z−Glp−Pro−OHの合成
Z−Glp−OH.DCHA(市販品として入手可能、1当量)を、AcOEtに希釈し、KHSO4水溶液の添加により中和した。有機相を集め、水相を別の容量のAcOEtで抽出した。次いで有機相を合わせて水で洗浄し、溶媒(AcOEt)をMeCNにより置換した。Suc−OH(1.05当量)をZGlpOH溶液に溶解してから−5℃に冷却した。MeCNに溶解したDCC(1.1当量)を、5℃未満の反応温度を維持している溶液にゆっくりと加えた。この反応液を、少なくとも4時間かけて25℃に温めた。過剰のDCCをAcOH(0.05当量)で中和し、この懸濁液を10℃に冷却してから、沈降したDCUをろ過し、次いでMeCNで洗浄した。得られた溶液を25℃に温めた。H−Pro−OH(2.0当量)を、MeCNおよびMSA(1.9当量)の溶液に加えた。この懸濁液を45℃に加熱し、透明な溶液が得られるまで攪拌した。次にこの溶液を25℃に冷却した。シリル化されたプロリン溶液を、Z−Glp−OSu溶液に加え、25℃で少なくとも3時間攪拌した。このカップリング溶液を水で希釈し、最高温度65℃でMeCNを減圧蒸発させた。次いで残留スラリーを水で希釈し、沈降物を5℃で少なくとも10時間攪拌した。固体をろ過し、水で洗浄した。減圧乾燥後、80%のZ−Glp−Pro−OHを回収した。
【0124】
実施例5:Z−Glp−Pro−Gly−OHの合成
ペプチドカップリング前に2つの溶液を調製した。溶液A:H−Gly−OH(1.2当量)を、最高60℃でMSA(3.0当量)に溶解した。この懸濁液を25℃まで冷却し、DCMで希釈し、少なくとも8時間攪拌してから−15℃に冷却した。溶液Bでは、Z−Glp−Pro−OHのカルボン酸官能基を、DCMおよびNMM(1.05当量)と共に溶解した。この溶液を−15℃に冷却した。カルボン酸を、IBCF(1.05当量)で活性化し、次にこのスラリーにシリル化溶液Aを加えた。スラリーを少なくとも0.5時間攪拌し、25℃に温めた。混合物を水でクエンチし、攪拌下、KHSO4溶液の添加により、ペプチドを沈降させた。固体をろ過し、水で洗浄した。減圧乾燥後、80%のZ−Glp−Pro−Gly−OHを回収した。
【0125】
実施例6:H−Gln−Pro−Gly−OHの合成
Z−Glp−Pro−Gly−OH(1当量)を、DMA中25℃で攪拌しながら溶解し、NH4OH25%(6当量)を、温度が30℃を超えないようにして加えた。この混合物を、25℃で少なくとも4時間攪拌した。この溶液のpHが≦3になるまで減圧濃縮した。濃縮物を、NaCl水溶液で希釈し、pHを、KHSO4溶液により2.5に調整した。得られた水溶液をIPEで2回洗浄し、次いで25℃でn−BuOHにより3回抽出した。有機層を合わせて水で洗浄した。得られた有機溶液を減圧下で濃縮した。濃縮溶液を、20℃においてエタノールと水とで希釈し、Pd/C(0.02当量)をこのペプチド溶液に加えた。溶液を20℃で攪拌し、次いで加圧(0.3バール)下で水素を導入した。溶液を、少なくとも2時間攪拌し、反応の完了をHPLCによりチェックした。溶液をろ過して触媒を除去し、脱イオン水で一度洗浄後、溶液のpHを、NaHCO3の水溶液で6.0≦pH≦6.5に調整した。次に遊離トリペプチドを、エタノールの添加により沈降させた。この溶液を25℃で3時間熟成させた。固体をろ過し、エタノールで洗浄した。減圧乾燥後、60%のH−Gln−Pro−Gly−OHを回収した。
【0126】
実施例7:H−Val−Gln−Pro−Gly−OH(配列番号2)の合成
H−Gln−Pro−Gly−OH(1当量)を、DIPEA(2.00当量)を含有するH2Oに加えた。このスラリーを、透明溶液が見られるまで25℃で攪拌し、次いで0℃に冷却した。Z−Val−OSu溶液(1.1当量)を、透明溶液が得られるまで25℃でMeCN中に溶解し、次いで0℃に冷却した。Z−Val−OSu溶液を、温度が5℃を超えないようにしてH−Gln−Pro−Gly−OH(配列番号2)の溶液に加えた。次にこの混合物を少なくとも2時間攪拌した。ペプチド溶液を濃縮してから、KHSO4溶液で希釈し、数分間攪拌した。この水溶液を、IPEおよびAcOEtの混合物で2回洗浄した。有機相を廃棄し、水相をDCM溶液中20%のi−BuOHで2回抽出した。有機相を集め、濃縮物中の水含量が≦1質量%になるまで減圧下で濃縮した。次に保護テトラペプチド溶液を、25℃でIPE中に沈降させた。Z−Val−Gln−Pro−Gly−OH(配列番号2)をろ過により集め、IPEで洗浄し、ペプチド中のIPE含量が≦5質量%になるまで減圧乾燥した。保護断片を、30℃でメタノールに溶解し、Pd/C(0.02当量)をこのペプチド溶液に加えた。溶液を20℃で攪拌し、次いで加圧(0.3バール)下で水素を導入した。3時間攪拌後、溶液をろ過して触媒を除去し、これをメタノールで洗浄した。蒸発後、この溶液を10℃でMeCN中に移すことにより遊離テトラペプチドを沈降させた。固体をろ過し、MeCNで洗浄した。減圧乾燥後、60%のH−Val−Gln−Pro−Gly−OH(配列番号2)を回収した。
【0127】
実施例8:AcOH.H−Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly−OH(配列番号1)の合成
H−Val−Gln−Pro−Gly−OH(配列番号2)(1.0当量)を、透明溶液が見られるまで温度≦40℃で、MSA(3.2当量)を含有するDMA溶液に加えることによりシリル化した。次にこの溶液を−15℃に冷却した。Boc−Gly−Gly−Val−Leu−OH(1.05当量(配列番号3))を、透明溶液が得られるまでDipea(1.05当量)と共にDMA中に溶解した。溶液を−15℃に冷却した。ピリジン(1.0当量)およびPivCl(1.0当量)を、Boc−Gly−Gly−Val−Leu−OH(配列番号3)の溶液に加えて酸官能基を活性化した。次にシリル化H−Val−Gln−Pro−Gly−OH(配列番号2)の溶液を、出来るだけ速やかに活性化テトラペプチド溶液に移した。この反応媒体を、少なくとも0.5時間攪拌し、−5℃に温まるまで静置した。反応混合物を、−5℃で5%のKHSO4の添加により中和してから減圧濃縮した。この溶液を、水とi−BuOHとで連続希釈した。5%のKHSO4水溶液の制御された添加によりpHを2.5に調整し、次いでDCMを導入してオクタペプチドを抽出した。水溶液を廃棄し、有機相をNaCl溶液で一度洗浄した。次に有機相を減圧濃縮し、濃縮物中の水分含量が≦2質量%およびi−BuOH含量が≦2質量%になるまで、この溶媒を氷AcOHで置換した。例えば、脱保護混合物のゲル化などの生じ得る問題を回避するために、保護オクタペプチド(配列番号1)を、25℃でIPEおよびMeCNの混合物中にペプチド溶液を移し沈降させることにより単離した。Boc−Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly−OHをろ過により回収し、IPEで洗浄し、IPE含量が≦5質量%になるまで乾燥した。次に脱保護ステップを実施するため、オクタペプチドを室温でAcOHに溶解させた。
【0128】
Boc基を除去するために、ジオキサン中4MのHCl(約3.5当量)をペプチド溶液に加え、混合物を最高45℃で少なくとも2時間攪拌した。最終ペプチドは、25℃でIPEおよびMeCNの混合物中での沈降により回収した。固体をろ過し、IPEおよびMeCNで洗浄した。40℃で減圧乾燥後、80%のHCl.H−Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly−OH(配列番号1)を回収した。ペプチドを、0.05Mの酢酸アンモニウム緩衝液中25℃で溶解し、25%のNH3液で4.5≦pH≦5.0に調整してからMeCNで希釈した。この溶液をろ過し、実施例7に記載されたとおりに精製した。
【0129】
実施例9:AcOH.H−Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly−OH(配列番号1)の精製
クロマトグラフィーは、移動相として:50/50のHPW/MeCN中、A=「水性」:0.05MのNH4OAc(pH約7.5)およびB=「有機」:0.05MのNH4OAcを用いて、Amberchrom CG161m上で操作した。固定相は、最初に10%溶液のBで調節し、次に実施例7で得られた粗生成物を固定相に注入し、10%の溶液Bで洗浄した。次いで溶出液(22%のB)を加えてから、固定相を100%の溶液Bで洗浄した。精製により得られたプールされた純粋フラクションを集めて水(HPW)で2倍に希釈した。精製ステップでは同じ固定相を用い、2種の新規な移動相:A=1000/0/6のHPW/MeCN/AcOH(v/v)およびB=700/300/6のHPW/MeCN/AcOH(v/v)を調製した。プールされたフラクションを、前もって移動相Aで平衡にしたカラム上に装填した。次にカラムを、移動相Aの4カラム容量で再度洗浄してから、ペプチドを移動相Bで溶出させた。
【0130】
実施例10:AcOH.H−Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly−OH(配列番号1)の凍結乾燥
実施例9で得られたペプチド溶液を減圧濃縮し、Gore(商標)LYOGUARD(登録商標)の凍結乾燥用トレーで凍結乾燥した。ペプチド溶液を、凍結乾燥用凍結乾燥器(GT4 Edwards/Kniese)内に入れた。凍結乾燥用トレーを、−40℃に3時間冷却し、次いで減圧(0.22ミリバール)下、温度を20℃に17時間上昇させた。主要な乾燥を終了後、0.02ミリバールに調整された減圧下で温度を20℃に4時間維持した。白色粉末のAcOH.H−Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly−OH(配列番号1)を得た。
【0131】
実施例11:AcOH.H−Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly−OH(配列番号1)の沈降
実施例9で得られたペプチド溶液を減圧条件下で濃縮し、ろ過により沈降物を集め、減圧乾燥した。白色粉末のAcOH.H−Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly−OH(配列番号1)を得た。
【0132】
実施例12〜13:第二の合成アプローチを説明部分のスキーム3に記載し、その特定の実施形態を以下のスキーム5に示す。このアプローチは、以後の実施例により説明する。
【化5】

【0133】
実施例12:Z−Val−Gln−OHの合成
H−Gln−OH(2当量)およびNaHCO3(2当量)を、最高45℃で水中に攪拌しながら溶解してから、約5℃に冷却した。ZValOSu(1当量)をMeCNに溶解し、これを、温度が10℃超に上昇しないようにして水溶液を加えた。この混合物を、±5℃で少なくとも1時間攪拌してから、少なくとも2時間室温に温めた。ペプチド溶液を、減圧濃縮し、水で希釈し、AcOEtで2回洗浄した。次に水相をi−BuOHで希釈し、pHをKHSO4溶液で2.5に調整した。次いでDCMを加えてペプチドを有機相に抽出し、5質量%のNaCl溶液で洗浄し、最後に水で洗浄した。有機相を集めて、濃縮物中の水分含量が≦1質量%になるまで減圧濃縮した。濃縮物を、熱酢酸イソプロピルで希釈し、緩やかな攪拌下25℃に冷却してペプチドを結晶化させた。固体をろ過により回収し、25℃でAcOiPrにより一度洗浄し、ペプチド中のAcOiPr含量が≦5質量%になるまで減圧乾燥した。減圧乾燥後、70%以上のZ−Val−Gln−OHを回収した。
【0134】
実施例13:H−Val−Gln−Pro−Gly−OH(配列番号2)の合成
H−Pro−Gly−OH(1.15当量)を、完全に溶解するまで水中でDipea(1.05当量)と混合し、次いでDMAを添加した。溶液を−10℃に冷却した。Z−Val−Gln−OHをDMAに溶解し、得られた溶液を−15℃に冷却した。Dipea(1.05当量)を導入してカルボン酸官能基を中和してから、ピリジン(1.05当量)およびPivClを導入して酸官能基を活性化した。Pro−Gly溶液を、出来るだけ速やかに活性化ジペプチドに移し、このスラリーを少なくとも0.5時間攪拌し、室温に静置して温めた。反応混合物を、水を加えて中和し、NaHCO3の5%水溶液で希釈し、AcOEtで3回洗浄した。次に5%KHSO4でpHを2.5に調整し、ペプチドを、DCM溶液中20%のi−BuOHで3回抽出した。有機相を集め、濃縮物中の水分含量が≦1質量%になるまで減圧濃縮した。次に保護テトラペプチド溶液を、25℃でIPE中に沈降させた。ろ過によりZ−Val−Gln−Pro−Gly−OH(配列番号2)を集め、IPEで洗浄し、ペプチド中のIPE含量が≦5質量%になるまで減圧乾燥した。この保護断片を、iPrOHとAcOEtの混合物中で再結晶してから、脱保護ステップに進んだ。Z−Val−Gln−Pro−Gly−OH(配列番号2)を30℃でメタノールに溶解し、このペプチド溶液にPd/C(0.02当量)を加えた。この溶液を30℃で攪拌し、次いで加圧(0.3バール)下で水素を導入した。溶液を、少なくとも3時間攪拌し、HPLCにより反応完了をチェックした。溶液をろ過して触媒を除去し、メタノールで洗浄した。蒸発後、この溶液を10℃でMeCN中に移すことによって遊離テトラペプチドを沈降させた。この溶液を、10℃で少なくとも30分間熟成させた。固体をろ過し、MeCNで洗浄した。減圧乾燥後、60%以上のH−Val−Gln−Pro−Gly−OH(配列番号2)を回収した。この生成物を、上記の実施例8に記載されたとおりにカップリングさせてH−Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly−OH(配列番号1)を提供することができる。
【0135】
実施例14〜19:第三の合成アプローチを説明部分のスキーム3に記載し、その別の特定実施形態を以下のスキーム6に示す。このアプローチは、以後の実施例により説明する。
【化6】

【0136】
実施例14:Boc−Gly−Gly−OSuの合成
Boc−Gly−Gly−OHおよびSuc−OH(1.1当量)をiPrOHに溶解し、この溶液にDIC(ジイソプロピルカルボジイミド)(1.1当量)を約25℃でゆっくりと加えた。この反応液を25℃で少なくとも4時間攪拌してから、懸濁液を5℃に冷却した。5℃でのろ過により活性化ジペプチドを回収し、冷iPrOHで洗浄した。乾燥後、85%の収率でBoc−Gly−Gly−OSuを単離した。
【0137】
実施例15:Boc−Gly−Gly−OSuを介したBoc−Gly−Gly−Val−Leu−OH(配列番号3)の合成
一方で、H−Val−Leu−OH(1.05当量)を、MSA(2.7当量)のAcOEt溶液に加えた。このスラリーを、溶液が得られるまで25℃で攪拌した。他方で、Boc−Gly−Gly−OSu(1当量)を、AcOEtとDMAの混合物に部分的に溶解した。次にジペプチド溶液を、25℃での攪拌下、Boc−Gly−Gly−OSu溶液に移した。カップリングが完了したら(HPLCによりチェック)、未反応OSuエステルをDMAPA(0.05当量)で中和した。次に水の添加により反応をクエンチし、AcOEtで希釈し、攪拌しながらKHSO4溶液で洗浄した。水相を廃棄し、有機層を、NaCl溶液で再度洗浄し、最終的に水で洗浄した。最後に有機相を、濃縮物中の水分含量が≦1質量%になるまで減圧濃縮し、この溶液を熱イソプロピルエーテルで希釈し、緩やかに攪拌しながら25℃に冷却してペプチドを結晶化させた。ろ過により固体を回収し、25℃でIPEにより一度洗浄した。減圧乾燥後、80%のBoc−Gly−Gly−Val−Leu−OH(配列番号3)を回収した。
【0138】
実施例16
実施例15と同じ手法に従ったが、希釈および洗浄に関してIPEの代わりにMTBEを用いた。同じ収率のBoc−Gly−Gly−Val−Leu−OH(配列番号3)を回収したが、MTBEの方が、IPEよりも安価で安全である。
【0139】
実施例17:H−Val−Gln−Pro−Gly−OtBu(配列番号2)の合成
Z−Pro−Gly−OtBuを25℃でAcOEtに溶解し、このペプチド溶液にPd/C(0.02当量)を加えた。溶液を25℃で攪拌し、次いで加圧(0.3バール)下で水素を導入した。HPLCにより反応が完了したと考えられたら、溶液をろ過して触媒を除去し、AcOEtで洗浄した。H−Pro−Gly−OtBu(1.05当量)溶液を−15℃に冷却した。Z−Val−Gln−OHを、DMAとAcOEtの混合物に溶解し、得られた溶液を−15℃に冷却した。Dipea(1.05当量)を導入してカルボン酸官能基を中和してから、ピリジン(1.05当量)およびPivClを導入して酸官能基を活性化した。H−Pro−Gly−OtBu溶液を、出来るだけ早く活性化ジペプチドに移し、スラリーを少なくとも0.5時間攪拌し、室温に静置して温めた。水の添加により反応混合物を中和し、AcOEtで希釈し、有機相を、KHSO4の5%水溶液、NaHCO3の5%水溶液、NaClの5%水溶液、最後に水で洗浄した。有機相を集めて濃縮物中の水分含量が≦1質量%になるまで減圧濃縮した。濃縮物を、熱イソプロピルエーテルで希釈し、緩やかな攪拌下、25℃に冷却してペプチドを結晶化させた。ろ過により固体を回収し、熱IPEで一度洗浄し、ペプチド中のIPE含量が≦5質量%になるまで減圧乾燥した。Z−Val−Gln−Pro−Gly−OtBu(配列番号2)を、室温でエタノールに溶解し、Pd/C(0.02当量)をペプチド溶液に加えた。溶液を25℃で攪拌し、次いで加圧(0.3バール)下で水素を導入した。この溶液を少なくとも2時間攪拌し、HPLCにより反応の完了をチェックした。溶液をろ過して触媒を除去し、エタノールで洗浄した。蒸発後、−10℃でMTBE中にこの溶液を移すことにより遊離テトラペプチドを沈降させた。この溶液を、−10℃で少なくとも30分間熟成させた。固体をろ過してMTBEで洗浄した。減圧乾燥後、80%以上のH−Val−Gln−Pro−Gly−OtBu(配列番号2)を回収した。
【0140】
実施例18:HCl.H−Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly−OH(配列番号1)の合成
Z−Val−Gln−Pro−Gly−OtBuを25℃でDMAに溶解し、Pd/C(0.02当量)をペプチド溶液に加えた。この溶液を25℃で攪拌し、次いで加圧(0.3バール)下で水素を導入した。HPLCにより反応が完了したと考えられたら、溶液をろ過して触媒を除去し、DMAで洗浄した。Boc−Gly−Gly−Val−Leu−OH(1.05当量)(配列番号3)をDMAに溶解し、得られた溶液を−15℃に冷却した。Dipea(1.05当量)を導入してカルボン酸官能基を中和してから、ピリジン(1当量)およびPivClを導入して酸官能基を活性化した。−15℃に冷却したDMA中H−Val−Gln−Pro−Gly−OtBu(配列番号2)(1.0当量)の溶液を、出来るだけ速やかに活性化テトラペプチドに移し、スラリーを少なくとも0.5時間攪拌し、静置して約−5℃に温めた。反応混合物を水でクエンチしてから、熱水の添加により希釈してペプチドを沈降させた。スラリーを室温で攪拌し、固体をろ過し、KHSO4の水溶液、NaHCO3の水溶液、最後に水で洗浄した。固体を、水分含量が≦3質量%になるまで減圧乾燥した。Boc基を除去するために、保護オクタペプチド(配列番号1)をAcOHに溶解し、AcOH中1MのHCl(7当量)を加えた。この混合物を約30℃で約5時間攪拌した。MeCNとIPEの混合物中、25℃での沈降により最終ペプチドを回収した。固体をろ過し、IPEで数回、最後にMeCNで洗浄した。40℃で減圧乾燥後、80%のHCl.H−Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly−OH(配列番号1)を回収した。
【0141】
実施例19:H−Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly−OH(配列番号1)の合成
Boc−Gly−Gly−Val−Leu−OH(1.0当量)(配列番号3)、H−Val−Gln−Pro−Gly−OtBu(配列番号2)(1.0当量)およびHobt(1.1当量)を、透明な溶液が得られるまでDMA中室温で溶解した。溶液を約−5℃に冷却し、EDC(1.1当量)を溶液に加えてカップリングを開始させた。カップリングの完了まで(反応の進行はHPLCにより追跡した)、−5℃でこの混合物を攪拌した。反応混合物を水の添加により希釈し、ペプチドを沈降させた。固体をろ過し、KHSO4の水溶液、NaHCO3の水溶液、最後に水で洗浄した。固体を減圧乾燥した。Boc基を除去するために、保護オクタペプチド(配列番号1)をAcOHに溶解し、ジオキサン中4MのHCl(12当量)を加えた。この混合物を25℃で約2時間攪拌した。最終ペプチドを、IPE中25℃での沈降により回収した。固体をろ過し、IPEで数回、最後にMeCNで洗浄した。40℃で減圧乾燥後、80%のHCl.H−Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly−OH(配列番号1)を回収した。ペプチドを、25℃で0.05Mの酢酸アンモニウム緩衝液に可溶化し、25%のNH3液で4.5≦pH≦5.0に調整し、次いでMeCNで希釈した。この溶液をろ過し、実施例9に記載したとおりに精製した。
【0142】
実施例20:HCl.H−Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly−OH(配列番号1)の合成
Z−Val−Gln−Pro−Gly−OtBuを、25℃でDMAに溶解し、Pd/C(0.02当量)をペプチド溶液に加えた。この溶液を25℃で攪拌し、次いで加圧(0.3バール)下で水素を導入した。HPLCにより反応が完了したと考えられたら、溶液をろ過して触媒を除去し、DMAで洗浄した。Boc−Gly−Gly−Val−Leu−OH(1.05当量)(配列番号3)をDMAに溶解し、得られた溶液を−15℃に冷却した。Dipea(1.05当量)を導入してカルボン酸官能基を中和してから、ピリジン(1当量)およびPivClを導入して酸官能基を活性化した。−15℃に冷却したDMA中のH−Val−Gln−Pro−Gly−OtBu(配列番号2)(1.0当量)を、出来るだけ速やかに活性化テトラペプチドに移し、スラリーを少なくとも0.5時間攪拌し、約−5℃に温まるまで静置した。反応混合物を水でクエンチし、次いで熱脱イオン水の添加により希釈して、ペプチドを沈降させた。このスラリーを室温で攪拌し、固体をろ過し、KHSO4の水溶液、NaHCO3の水溶液、最後に水で洗浄した。水分含量が≦3質量%になるまで固体を減圧乾燥した。Boc基を除去するために、保護オクタペプチド(配列番号1)をAcOHに溶解し、AcOH中1MのHCl(7当量)を加えた。この混合物を約30℃で約5時間(HPLCによる反応完了時まで)攪拌した。最終ペプチドは、脱保護混合物にMeCNの添加、次いでIPEの添加による結晶化によって回収した。固体をろ過し、IPEで数回、最後にMeCNで洗浄した。40℃で減圧乾燥後、80%のHCl.H−Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly−OH(配列番号1)を回収した。
【0143】
実施例21:AcOH.H−Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly−OH(配列番号1)の結晶化
HCl.H−Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly−OH(配列番号1)を水に溶解し、この水溶液に、酢酸アンモニウム(±1.25当量)を25℃で加え、次いでペプチドを結晶化するために、NH3水溶液でpHを±4.5に調整した。25℃で数時間の攪拌後、固体をろ過し、水分含量が≦5.0質量%になるまで減圧乾燥した。減圧乾燥後、80%以上のAcOH.H−Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly−OH(配列番号1)を回収した。
【0144】
全対象の配列リスト
Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号1)
Val−Gln−Pro−Gly(配列番号2)
Gly−Gly−Val−Leu(配列番号3)
Leu−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号4)
Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号5)
Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号6)
Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号7)
Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly−Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号8)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチド Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号1)の結晶塩であって、該ペプチドの塩が塩酸塩又は酢酸塩から選ばれる、結晶塩。
【請求項2】
該ペプチドの塩が酢酸塩である、請求項1記載の結晶塩。
【請求項3】
酢酸塩がペプチドの50モル%/モル未満の濃度で存在する、請求項2記載の結晶塩。
【請求項4】
酢酸塩がペプチドの20〜30モル%/モルの濃度で存在する、請求項2記載の結晶塩。
【請求項5】
該ペプチドの塩が塩酸塩である、請求項1記載の結晶塩。
【請求項6】
該ペプチドの塩酸塩がHPLCによる少なくとも98.5%の純度を有する、請求項5記載の結晶塩。
【請求項7】
HPLCによる少なくとも98.5%の純度を有する、ペプチド Gly−Gly−Val−Leu−Val−Gln−Pro−Gly(配列番号1)の単離された塩酸塩。

【公開番号】特開2011−140526(P2011−140526A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93868(P2011−93868)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【分割の表示】特願2010−534495(P2010−534495)の分割
【原出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(591001248)ソルヴェイ(ソシエテ アノニム) (252)
【Fターム(参考)】