説明

ペリクルミラー及び撮像装置

【課題】基板のカールを防止するとともに簡便に作製することができるペリクルミラー及び該ペリクルミラーを用いた撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像装置の光学系に備えられ、撮影レンズの透過光を反射及び透過することにより分割するペリクルミラー100において、透明のプラスチックフィルム11と、前記プラスチックフィルム11の両面それぞれに設けられ該プラスチックフィルム11よりも高屈折率材料からなる単層膜12と、からなり、前記プラスチックフィルム11と単層膜12との屈折率差により前記透過光の反射率が制御されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックフィルムをベースとするペリクルミラー及び該ペリクルミラーを用いた撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の一眼レフカメラは、いわゆるクイックリターンミラーが採用され、撮影の時には直前にミラー構造が撮影光路外に待避し、撮影終了後ただちに光路内に復帰してファインダ光学系に被写体光を導く構造となっていることから、撮影中はファインダ像が消失し、撮影の瞬間の被写体を見ることができず、特に、被写体の動きの速いスポーツ、レース、動物写真等においては、連続的に撮影をしながら被写体に追従するような撮影が大変難しく、いわゆる決定的瞬間を見逃すことがあった。
【0003】
これに対し、ペリクルミラーを有する一眼レフカメラ(例えば、特許文献1〜3参照。)では、従来ファインダ系に光束を導くミラーを固定のハーフミラー(ペリクルミラー)とし、撮影光束を常にファインダ系とフィルム面方向に分割し、撮影中においても常にファインダにて被写体の状態を観察できるという利点が述べられている。
【0004】
また、特許文献4では、一眼レフカメラ用ハーフミラーの膜設計が提案されている。これは、ガラス上の片面に高屈折率材料と低屈折率材料を交互に合計5層、総膜厚で450nm程度成膜したものである。
【0005】
【特許文献1】特許第2801217号公報
【特許文献2】特開平8−254751号公報
【特許文献3】特開2006−350253号公報
【特許文献4】特開平3−109504号公報
【特許文献5】特許第2801217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献4の膜設計を極薄のプラスチックフィルム基板に適用した場合には、多層膜の大きな圧縮応力により、基板に大きなカールが発生し、取り扱いにくいことが考えられる。また、透過率、反射率の最適化のためには、各膜厚値の精密な制御が必要になるとともに、総膜厚も大きいことから生産性が悪く、コストが高くなる。さらに、プラスチックフィルム基板には、静電気発生によるゴミ付着の可能性が高い。
【0007】
また、発明者らが特許文献4の内容を元に、45°入射での透過率、反射率の可視光分布をシミュレーションした結果を図1に示す。ここでは、ガラス基板上にガラス基板側からZrO(膜厚144nm)/MgF(50nm)/ZrO(膜厚71nm)/MgF(111nm)/ZrO(膜厚71nm)を積層した、合計膜厚447nmの光学膜の場合を検討した(図1(a))。その結果(図1(b))、透過率分布では、短波長側や長波長側で急激に大きく上昇していることがわかる。波長400〜700nmの可視光領域において、予想される透過率ばらつきとしては、44.7〜62.7%であり、差は18%となる。また反射率ばらつきは37.3〜55.3%であり、差は同様に18%となり、それぞれのばらつきが非常に大きいことがわかった。
【0008】
本発明は、以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであり、基板のカールを防止するとともに簡便に作製することができるペリクルミラー及び該ペリクルミラーを用いた撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために提供する本発明は、撮像装置の光学系に備えられ、撮影レンズの透過光を反射及び透過することにより分割するペリクルミラーにおいて、透明のプラスチックフィルム(プラスチックフィルム11)と、前記プラスチックフィルムの両面それぞれに設けられ該プラスチックフィルムよりも高屈折率材料からなる単層膜(単層膜12)と、からなり、前記プラスチックフィルムと単層膜との屈折率差により前記透過光の反射率が制御されていることを特徴とするペリクルミラー100である(図2)。
ここで、前記プラスチックフィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET),シクロオレフィンポリマー(COP),ポリカーボネート(PC),ポリエーテルスルフォン(PES),ポリエチレンナフタレート(PEN),トリアセチルセルロース(TAC)のいずれかからなることが好ましい。
また、前記単層膜は、屈折率2以上の材料からなり、膜厚100nm以下の光学膜であることが好ましい。さらに、前記単層膜は、In23,SnO2,ZnO,ITOのいずれか又はこれらの合金、もしくはZnOにAlまたはGaをドープした透明導電性材料からなることが好適である。あるいは、前記単層膜は、Ta25,ZrO2,Nb25,TiO2のいずれかからなることがよい。
【0010】
また、前記課題を解決するために提供する本発明は、上述したいずれかのペリクルミラー(ペリクルミラー100)を備え、撮影レンズ(交換レンズ2)の透過光を該ペリクルミラーに入射させ、その反射光をファインダ光学系(ファインダ部102)に、透過光を撮像素子(撮像素子101)に導くことを特徴とする撮像装置(撮像装置1)である(図5)。
【発明の効果】
【0011】
本発明のペリクルミラーによれば、極薄フィルム両面に高屈折率材料の単層膜を成膜し、プラスチックフィルムおよび薄膜材料の屈折率を選択することで容易に所望の透過率値、反射率値に対応することができる。また、両面成膜のため、膜の圧縮応力により発生するカールを低減することができる。さらに、単層膜の成膜のため、特性ばらつきが小さく、生産性も高いため、低コストの作製が可能となる。
また、単層膜を透明導電性材料からなる膜とすると、表面の導電性を確保することができ帯電防止を実現できるため、撮像装置の光学系におけるゴミ付着防止に役立つ。
また、単層膜は、Ta25,ZrO2,Nb25,TiO2のいずれかからなる高屈折率膜とすると、透過率値、反射率値の設定の自由度が増す。
本発明の撮像装置によれば、極薄としたペリクルミラーを用いるので光学系の設計の自由度が増し、コンパクトなカメラとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明に係るペリクルミラー及び撮像装置について説明する。なお、本発明を図面に示した実施形態をもって説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、実施の態様に応じて適宜変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0013】
図1に、本発明に係るペリクルミラーの構成を示す。
本発明に係るペリクルミラー100は、撮像装置の光学系に備えられ、撮影レンズの透過光を反射及び透過することにより分割するペリクルミラーにおいて、透明のプラスチックフィルム11と、プラスチックフィルム11の両面それぞれに設けられプラスチックフィルム11よりも高屈折率材料からなる単層膜12と、からなり、プラスチックフィルム11と単層膜12との屈折率差により前記透過光の反射率が制御されていることを特徴とするものである。
【0014】
ここで、プラスチックフィルム11としては、可視光領域内で透明であり、目標とする透過率、反射率値に応じた屈折率を有する材料を選択すればよい。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET),シクロオレフィンポリマー(COP),ポリカーボネート(PC),ポリエーテルスルフォン(PES),ポリエチレンナフタレート(PEN),トリアセチルセルロース(TAC)のいずれかからなることが好ましい。このとき、単層膜12としてZrO2をプラスチックフィルム11の両面に膜厚70nm成膜するとした場合、屈折率n=1.6のPETフィルムでは可視光平均透過率68.3%であり、n=1.53のZEONORフィルム(日本ゼオン製フィルム)では66.1%、n=1.48のTACフィルムでは65.2%と、目標値に応じて、単層膜12の材料の屈折率およびプラスチックフィルム11の屈折率を選択すればよい。また、プラスチックフィルム11の厚みに関しては、像のぼやけを防ぐために、なるべく薄いほうがよいが、成膜や取り扱いを考慮すると25μm程度が好ましい。
【0015】
また、単層膜12の膜厚としては、各境界面での反射波面を全て同位相にし、相加的に重なり合わせるため、1/4波長膜を形成すればいい。数式としては、膜厚d=λ/4nとなるが、透過率、可視光反射率のスペクトルが平坦となるような中心波長を選択すればよく、通常可視光域内に中心波長がくるため、2以上の屈折率を考慮すると、通常の膜厚は100nm以下になる。
【0016】
また、単層膜12は、In23,SnO2,ZnO,ITOのいずれか又はこれらの合金、もしくはZnOにAlまたはGaをドープした透明導電性材料からなることが好適である。あるいは、単層膜12は、Ta25,ZrO2,Nb25,TiO2のいずれかからなることがよい。
【0017】
なお、撮像装置においてフィルム状のペリクルミラーを冶具等によりペリクルミラーがカールしていても問題なく固定できる場合には、前記プラスチックフィルムの片面に単層膜を設けたペリクルミラーとしてもよい。
この場合には、前記単層膜は、屈折率2.3以上の材料からなり、膜厚100nm以下の光学膜であることが好ましく、例えばNb25,TiO2のいずれかからなることが好適である。
【0018】
つぎに、本発明に係る撮像装置について説明する。
本発明に係る撮像装置は、本発明のペリクルミラーを備え、撮影レンズの透過光を該ペリクルミラーに入射させ、その反射光をファインダ光学系に、透過光を撮像素子に導くことを特徴とするものである。
図3および図4は、本発明に係る撮像装置1の外観構成を示す図である。ここで、図3および図4は、それぞれ正面図および背面図を示している。
【0019】
撮像装置1は、例えば一眼レフレックスタイプのデジタルスチルカメラとして構成されており、カメラボディ10と、カメラボディ10に着脱自在な撮影レンズとしての交換レンズ2とを備えている。
【0020】
具体的には、図3に示されるように、カメラボディ10の正面側には、正面略中央に交換レンズ2が装着されるマウント部301と、マウント部301の右横に配置されたレンズ交換ボタン302と、把持可能とするためのグリップ部303と、正面左上部に配置されたモード設定ダイアル305と、正面右上部に配置された制御値設定ダイアル306と、グリップ部303の上面に配置されたシャッターボタン307とが設けられている。
【0021】
交換レンズ2は、撮影レンズであり、被写体からの光(被写体光)を取り込むレンズ窓として機能するとともに、当該被写体光をカメラボディ10の内部に配置されている撮像素子101に導くための撮影光学系として機能する。
【0022】
シャッターボタン307は、途中まで押し込んだ「半押し状態」と、さらに押し込んだ「全押し状態」とを検出可能な押下スイッチである。撮影モードにおいてシャッターボタン307が半押し(S1)されると、被写体の静止画を撮影するための準備動作(露出制御値の設定および焦点検出等の準備動作)が実行され、シャッターボタン307が全押し(S2)されると、撮影動作(撮像素子101(図5参照)を露光し、その露光によって得られた画像信号に所定の画像処理を施してメモリカード等に記録する一連の動作)が実行される。
【0023】
また、図4に示されるように、カメラボディ10の背面側には、表示部として機能するLCD(Liquid Crystal Display)311と、LCD311の上方に配設されたファインダ窓316と、ファインダ窓316の周囲を囲むアイカップ321と、ファインダ窓316の左方に配設されたメインスイッチ317と、ファインダ窓316の右方に配設された露出補正ボタン323およびAEロックボタン324と、ファインダ窓316の上方に配設されたフラッシュ部318および接続端子部319とが備えられている。また、カメラボディ10の背面側には、LCD311の左方に配置された設定ボタン群312と、LCD311の右方に配置された方向選択キー314と、方向選択キー314の中央に配置されたプッシュボタン315と、方向選択キー314の右下方に配置された表示切替スイッチ85とが備えられている。
【0024】
LCD311は、画像表示が可能なカラー液晶パネルを備えており、撮像素子101(図5参照)により撮像された画像の表示または記録済みの画像の再生表示等を行うとともに、撮像装置1Aに搭載される機能またはモードの設定画面を表示するものである。
【0025】
ファインダ窓(接眼窓)316は、光学ファインダ(OVF)を構成し、ファインダ窓316には、交換レンズ2を通過した被写体像を形成する光(被写体光)が導かれている。ユーザは、このファインダ窓316を覗くことによって、実際に撮像素子101にて撮影される被写体像を視認することができる。
【0026】
表示切替スイッチ85は、2点のスライドスイッチからなり、接点を上段の「光学」位置に設定すると光学ファインダモード(「OVFモード」とも称する)が選択され、光学ファインダ視野内に被写体像が表示される。これにより、ユーザは、ファインダ窓316を介して光学ファインダ視野内に表示される被写体像を視認することによって、構図決め操作(フレーミング)を行うことが可能になる。
【0027】
一方、表示切替スイッチ85の接点を下段の「モニタ」位置に設定すると電子ファインダモード(「EVFモード」または「ライブビューモード」とも称する)が選択され、LCD311において被写体像に係るライブビュー画像が動画的態様にて表示される。これにより、ユーザは、LCD311に表示されるライブビュー画像を視認することによって、フレーミングを行うことが可能になる。
【0028】
このように、ユーザは、表示切替スイッチ85の操作によって、ファインダモードを切り替えることが可能であり、撮像装置1では、ライブビュー表示が行われる電子ファインダ、或いは光学ファインダを用いて被写体の構図決めを行うことが可能である。
【0029】
次に、撮像装置1の内部構成について説明する。図5は、撮像装置1の縦断面図である。図5に示すように、カメラボディ10の内部には、撮像素子101、ファインダ部102(ファインダ光学系)、ペリクルミラー100等が備えられている。
【0030】
撮像素子101は、カメラボディ10に交換レンズ2が装着された場合の当該交換レンズ2が備えているレンズ群(撮影レンズ)の光軸LT上において、光軸LTに対して垂直に配置されている。撮像素子101としては、例えばフォトダイオードを有して構成される複数の画素がマトリクス状に2次元配置されたCMOSカラーエリアセンサ(CMOS型の撮像素子)が用いられる。また、撮像素子101は、その撮像面においてオートフォーカス(AF)制御のための位相差検出用の画素(AF画素)を有している。
【0031】
上記の光軸LT上において、撮影レンズの透過光である被写体光をファインダ部102へ向けて反射される位置には、本発明のペリクルミラー100が光軸LTに対して45°に傾斜して配置されている。交換レンズ2を通過した被写体光の一部はペリクルミラー100によって上方へ反射されるとともに、被写体光の残りはこのペリクルミラー100を透過する。すなわち、ペリクルミラー100が入射してきた被写体光を反射及び透過することにより分割して、その反射光をファインダ光学系(ファインダ部102)に、透過光を撮像素子101に導く。
【0032】
ファインダ部102は、ペンタプリズム105、接眼レンズ106およびファインダ窓316を備えている。ペンタプリズム105は、断面5角形を呈し、その下面から入射された被写体像を内部での反射によって当該光像の天地左右を入れ替えて正立像にするためのプリズムである。接眼レンズ106は、ペンタプリズム105により正立像にされた被写体像をファインダ窓316の外側に導く。このような構成により、ファインダ部102は、本撮影前の撮影待機時において被写界を確認するための光学ファインダとして機能する。
【0033】
あるいは、ペリクルミラー100を透過した被写体光により撮像素子101で順次に生成される画像信号に基づき、動画的態様にて被写体をLCD311に表示させるライブビュー(プレビュー)表示が可能となる。
【0034】
一方、ペリクルミラー100を透過した被写体光を撮像素子101において受光するが、その撮像面に組み込まれたAF画素からの出力信号を用いて位相差検出方式の自動合焦動作(撮像素子101による位相差AF動作)を実行することができる。すなわち、撮像素子101により位相差検出方式で焦点を検出し、交換レンズ2内のフォーカスレンズを光軸方向に移動させて焦点調整を行なうものである。
【0035】
また、撮影時には、ペリクルミラー100を透過した被写体光は撮像素子101上に届き、該撮影素子101が露光され、結像された被写体像に関するR(赤)、G(緑)、B(青)各色成分のアナログの電気信号(画像信号)を生成し、R、G、B各色の画像信号として出力する。その後、出力された画像信号について所定の画像処理が行なわれ、最終的に画像データが得られる。
【0036】
なお、ペリクルミラー100において目標となる透過率値、反射率は、ファインダ部102への光量と撮像素子101への光量のバランスを考慮する必要があり、製品の構成により様々であるが、透過率値70%、反射率値30%程度のものが、好適であると考えられる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明のペリクルミラーについて試験した例を説明する。
(試験例1)
本試験例では、ペリクルミラーに45°で可視光が入射した場合に、透過率70%、反射率30%の値を目標値とした。
図6(b)に、基板を25μm厚PETフィルム(屈折率1.6)とし、基板両面にZnO(屈折率2.0)を膜厚90nmで設けた場合(図6(a))の光学特性のシミュレーション結果を示す。45°入射において、波長400〜700nmの範囲内で、透過率ばらつき69.9〜74.8%でその差(ばらつきの大きさ)が4.9%、反射率ばらつき13.6〜27.8%でその差(ばらつきの大きさ)が14.2%と、従来例(図1)よりもフラットな可視光特性が予想された。
【0038】
そこでDCスパッタリング法により、基板としては、帝人デュポンフィルム製25μm厚PETフィルムを使用し、基板両面にZnOを膜厚90nmで実際に成膜した。図7に、そのサンプルを分光光度計により測定した結果を示す。45°入射において、波長400〜700nmの範囲内で、透過率ばらつき61.7〜71.4%でその差(ばらつきの大きさ)が9.7%、反射率ばらつき8.3〜30.5%でその差(ばらつきの大きさ)が22.2%とシミュレーション結果よりも大きい値となったが、透過率は従来例(図1)よりもフラットな可視光特性となった。
【0039】
なお薄いフィルムへのスパッタ成膜はフィルムの熱負けを考慮する必要があり、なるべく小さい投入電力で成膜することが望ましい。また、両面成膜を行うことで、カールが大幅に低減できることを確かめることができた。
【0040】
また、短波長吸収の影響による短波長での反射率低下が問題になる場合には、短波長吸収の少ない誘電体材料を選択すればよく、目標とする透過率、反射率値とプラスチックフィルムの屈折率を考慮して、高屈折率材料の屈折率値を選択すればよい。例えば、45°入射で透過率を70%、反射率を30%の値を目標値とし、プラスチックフィルムとしてn=1.6のPETフィルムを選択した場合は、屈折率としてn=2付近の高屈折率材料がよい。
【0041】
(試験例2)
試験例1におけるZnOに代えてZrO2をPETフィルム両面にそれぞれ70nm成膜した場合(図8(a))のシミュレーションを行なった。図8(b)に、その結果を示す。45°入射において、波長400〜700nmの範囲内で、透過率ばらつき66.1〜72.7%でその差(ばらつきの大きさ)が6.6%、透過率平均が68.3%であった。また、反射率ばらつき27.3〜33.9%でその差(ばらつきの大きさ)が6.6%、反射率平均が31.7%であった。可視光領域での透過率ばらつき、反射率ばらつきの両者を小さくすることができる。
【0042】
(試験例3)
試験例2におけるPETフィルムに代えて、ZEONORフィルム(日本ゼオン(株)製COPフィルム、屈折率1.53)、TACフィルム(屈折率1.48)とした場合(図9(a),(b))のシミュレーションを行なった。図9(c)に、その結果を試験例2の結果と合わせて示す。図中、透過率、反射率曲線ともに、ZEONORフィルムのものを「ZEONOR」と、TACフィルムのものを「TAC」と、PETフィルムのものを「PET」と記している。
45°入射において、ZEONORフィルムの場合、透過率ばらつき64.1〜71.6%でその差(ばらつきの大きさ)が7.5%、透過率平均が66.1%であった。また、反射率ばらつき28.4〜35.9%でその差(ばらつきの大きさ)が7.5%、反射率平均が33.9%であった。つぎに、TACフィルムの場合、透過率ばらつき62.7〜70.8%でその差(ばらつきの大きさ)が8.1%、透過率平均が65.2%であった。また、反射率ばらつき29.2〜37.3%でその差(ばらつきの大きさ)が8.1%、反射率平均が34.8%であった。
【0043】
(試験例4)
基板の片面に単層膜を成膜した場合を検討した。ここでは、45°入射で透過率を70%、反射率を30%の値を目標値とし、プラスチックフィルムとしてn=1.6のPETフィルムを選択した場合は、屈折率としてn=2.3付近の高屈折率材料からなる単層膜がよい。
【0044】
Nb25からなる単層膜(屈折率2.3)をPETフィルム(屈折率1.6)の片面に60nm成膜した場合(図10(a))のシミュレーションを行なった。図10(b)に、その結果を示す。45°入射において、波長400〜700nmの範囲内で、透過率ばらつき65.8〜70.1%でその差(ばらつきの大きさ)が4.3%、反射率ばらつき29.9〜34.2%でその差(ばらつきの大きさ)が4.3%となり、可視光領域での透過率ばらつき、反射率ばらつきの両者を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】従来のペリクルミラーの透過率・反射率シミュレーション結果を示す図である。
【図2】本発明に係るペリクルミラーの構成を示す断面図である。
【図3】本発明に係る撮像装置の構成を示す正面図である。
【図4】本発明に係る撮像装置の構成を示す背面図である。
【図5】本発明に係る撮像装置の構成を示す縦断面図である。
【図6】試験例1の透過率・反射率シミュレーション結果を示す図である。
【図7】試験例1の試作サンプルの透過率・反射率の測定結果を示す図である。
【図8】試験例2の透過率・反射率シミュレーション結果を示す図である。
【図9】試験例3の透過率・反射率シミュレーション結果を示す図である。
【図10】試験例4の透過率・反射率シミュレーション結果を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1・・・撮像装置、2・・・交換レンズ、10・・・カメラボディ、11・・・プラスチックフィルム、12・・・単層膜、85・・・表示切替スイッチ、100・・・ペリクルミラー、101・・・撮像素子、102・・・ファインダ部、105・・・ペンタプリズム、106・・・接眼レンズ、301・・・マウント部、302・・・レンズ交換ボタン、303・・・グリップ部、305・・・モード設定ダイアル、306・・・制御値設定ダイアル、307・・・シャッターボタン、311・・・LCD、312・・・設定ボタン群、314・・・方向選択キー、315・・・プッシュボタン、316・・・ファインダ窓、317・・・メインスイッチ、318・・・フラッシュ部、319・・・接続端子、321・・・アイカップ、323・・・露出補正ボタン、324・・・AEロックボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置の光学系に備えられ、撮影レンズの透過光を反射及び透過することにより分割するペリクルミラーにおいて、
透明のプラスチックフィルムと、前記プラスチックフィルムの両面それぞれに設けられ該プラスチックフィルムよりも高屈折率材料からなる単層膜と、からなり、
前記プラスチックフィルムと単層膜との屈折率差により前記透過光の反射率が制御されていることを特徴とするペリクルミラー。
【請求項2】
前記プラスチックフィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET),シクロオレフィンポリマー(COP),ポリカーボネート(PC),ポリエーテルスルフォン(PES),ポリエチレンナフタレート(PEN),トリアセチルセルロース(TAC)のいずれかからなることを特徴とする請求項1に記載のペリクルミラー。
【請求項3】
前記単層膜は、屈折率2以上の材料からなり、膜厚100nm以下の光学膜であることを特徴とする請求項1に記載のペリクルミラー。
【請求項4】
前記単層膜は、In23,SnO2,ZnO,ITOのいずれか又はこれらの合金、もしくはZnOにAlまたはGaをドープした透明導電性材料からなることを特徴とする請求項1に記載のペリクルミラー。
【請求項5】
前記単層膜は、Ta25,ZrO2,Nb25,TiO2のいずれかからなることを特徴とする請求項1に記載のペリクルミラー。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のペリクルミラーを備え、撮影レンズの透過光を該ペリクルミラーに入射させ、その反射光をファインダ光学系に、透過光を撮像素子に導くことを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−139885(P2009−139885A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−319153(P2007−319153)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】