説明

ペリクル用枠体及びペリクル

【課題】加熱テスト後の枠体の撓み量が少ない大型ペリクル用枠体を提供する。
【解決手段】平面視矩形状の開口部(4)を備えるペリクル用枠体(2)であって、端部同士が接合されることにより開口部(4)の周縁を形成する複数の部材(41a、41b、41c、41d)を有する。接合される一方の部材(41a、41b)の端部には、接合される他方の部材(4c、4d)に向けて突出する少なくとも一つの凸部(P)を設け、他方の部材(4c、4d)の端部には、凸部(P)を嵌合させる凹部(C)を設け、凸部(P)を凹部(C)に嵌合させることにより一方の部材(41a、41b)の端部を他方の部材(4c、4d)の端部に接合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばIC(Integrated Circuit:集積回路)、LSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)、TFT型LCD(Thin Film Transistor,Liquid Crystal Display:薄膜トランジスタ液晶ディスプレイ)等の半導体装置を製造する際のリソグラフィ工程で使用されるフォトマクスやレティクルに異物が付着することを防止するために用いる大型ペリクル用枠体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体回路パターン等の製造においては、フォトマスクやレティクルの両面側にペリクルと称する防塵手段を配置して、フォトマスクやレティクルへの異物の付着を防止することが行われている。
【0003】
ペリクルの一般的な構造としては、金属、セラミックス、またはポリマー製の枠体の一方の縁面に、ポリマーまたはガラス等の透明な薄膜を貼り付け、他方の縁面に、マスクに貼り付けるための貼着剤層(粘着材)を設けたものが挙げられる。例えば、ペリクルは、フォトマスクやレティクルの形状に合わせた形状を有する厚さ数ミリ程度の枠体の一方の縁面に、厚さ10μm以下のニトロセルロースまたはセルロース誘導体等の透明な高分子膜から成るペリクル膜を展張して接着し、且つ枠体の他方の縁面に粘着材を介してフォトマスクやレティクルの表面に貼着している。
【0004】
フォトマスクやレティクルの表面に異物が付着した場合、その異物が半導体ウエハ上に形成されたフォトレジスト上に結像して回路パターン欠陥の原因となるが、フォトマスクやレティクルの少なくともパターン面にペリクルを配置した場合、ペリクルの表面に付着した異物はフォーカス位置がずれるため、半導体ウエハ上に形成されたフォトレジスト上に結像することがなく、回路パターンに欠陥を生じさせることがない。
【0005】
また、近年では、各種のマルチメディアの普及により、高画質、高精細表示が可能な大型のカラーTFT型LCDのフォトリソグラフィ工程で使用される大型のフォトマスクに適用できる大型ペリクルが要望されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、大型のフォトマスクに適用できる大型ペリクルが提案されている。また、特許文献2には、大型ペリクル用枠体の撓みや歪みに対応するために、枠体と枠体より弾性係数の大きい補強材を利用した枠体も提案されている。さらに、特許文献3には、高解像度を必要とする露光において使用される200nm以下の紫外光露光に利用されるペリクル枠体であって、マスクの平坦性の精度に影響しないペリクル枠体として、弾性率が異なる2種類以上の材料を枠体の厚さ方向に接合した枠体を利用することも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−109135号公報
【特許文献2】特開2006−284927号公報
【特許文献3】特開2009−063740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところでペリクル枠体は、1枚のシート状母材からの打ち抜きにより、枠体1本を切り出すことが多い。これは、ペリクルの平坦性を確保する観点等に基づくものである。そのため、平坦性を有する母材は多く存在するものの、ペリクル枠体が大型化すればするほど、枠体の平坦性の精度を出すことは容易ではなく、製造工程にも手間がかかるため、歩留まり低下や、枠体のコスト高の原因になっている。
【0009】
また、大型化すれば、枠体自体の自重、ペリクル膜の張力、温度変化に起因する応力といった各種要因により、枠体に撓みや歪みが発生する可能性があるため、剛性の高い1枚のシート状母材からの打ち抜きにより作製された枠体を一般的に使用している。このような撓みや歪みは、ペリクル膜を張り付けた後のフレームに、膜の張力により内側に向かって生じるが、フォトマスクメーカーの露光面積を確保したいという要求のため、撓みや歪みを出来るだけ小さくする必要がある。そこで、枠体の断面積を大きくしてペリクル枠体の剛性を向上させる方法があるが、有効露光面積等を考慮すると好ましくない。
【0010】
上記のような理由より、コストの面から大型ペリクルで分割した枠体(以下、分割枠体という)を利用したい反面、分割した枠体では枠体に撓みや歪みが発生する可能性があり、また、剛性が実用のための特性を充たさず、商品として実用化されていないのが現状である。
【0011】
分割枠体を利用した文献としては、特許文献2等が紹介されており、文献によると、剛性を確保するために接合部に枠体より剛性の高い部材を用いて接着剤等を使用したり、摩擦攪拌溶接等の特殊な方法を使用したりする記載がある。しかし、接着剤を利用する場合は、接着剤溜りのような接合部に特殊な加工が必要であったり、露光中に接着剤からのアウトガス発生が懸念されたりする。また、摩擦攪拌溶接等には特殊な溶接技術が必要になる。
【0012】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、部材(接合部を有する枠体)を用いて大型のペリクル用枠体を構成するにあたり、接合部に枠体よりも剛性の高い部材や接着剤等を用いることなくペリクル用枠体として実用上問題のない剛性および寸法安定性を維持し、また、歩留まりを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上述の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、接合部に特定の構造を有するペリクル用枠体が上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明に係るペリクル用枠体は、平面視矩形状の開口部を備えるペリクル用枠体であって、端部同士が接合されることにより開口部の周縁を形成する部材を有し、接合される一方の部材の端部には、接合される他方の部材に向けて突出する少なくとも一つの凸部が設けられ、他方の部材の端部には、凸部を嵌合させる凹部が設けられ、凸部を凹部に嵌合させることにより一方の部材の端部が他方の部材の端部に接合されるものである。なお、本発明において「嵌合」とは、凸部が凹部よりも若干大きく形成されるか、凹部が凸部よりも若干小さく形成されるか、又は凸部と凹部とが同じ大きさで形成されており、凸部を凹部の内部に挿入して接合する際に凸部が凹部の内周面によって内方に圧縮変形させられるか又は圧縮変形がなくても凸部が凹部に隙間なく噛み合わせられるような状態を意味する。
【0015】
かかる構成を採用すると、枠体よりも剛性の高い補強材や接着剤、特殊な溶接技術等を使用することなく曲げ剛性やせん断剛性を実用上問題の無いレベルにすることが可能になる。また、このような枠体に膜を張り付けた後の膜張力による内側への撓み等により、接合部での応力集中が緩和されるため、接合部に隙間やガタ等が発生しにくく、寸法・形状が安定し、またガタ等による発塵の発生が少ないため好ましい。そのため、ハンドリング治具に大型ペリクルを固定して検品する際に様々な方向へ位置を変化させた場合においても、ペリクルがハンドリング治具から落ち難くなる。
【0016】
また、一枚物の母材からの切り出しよりも部材(接合部を有する枠体)を使用することにより、切削加工工数が少なくなり加工時にかかる枠体への残留応力が小さくなる。また、素材の異方性を考えると、分割枠体の方が同じ方向性の部材を使用可能とするため、枠体全体としての異方性が小さくなる。このように残留応力や異方性が小さくなるため、ペリクル製造工程内での加熱工程中での応力歪み等による開放が小さくなりペリクルとして寸法が安定するため好ましい。このため残留応力を開放するために事前に加熱処理等を行う必要がなくなり、工程数が減るといった製造上のメリットもでてくる。また、応力歪みは経時的に開放方向に向かうため、残留応力の小さい分割枠体の方が長期的に保管しても寸法が安定しているため好ましいことになる。
【0017】
さらに、複数の部材で枠体を形成することで、母材の平坦性の良い箇所の切り出しが可能になり、接合後の枠体の平坦性も向上することになる。小さな母材から大きな枠体を作製することも可能であり、コストダウンのメリットもある。
【0018】
これまで述べてきたように、ペリクルの平坦性を確保する観点等に基づき、ペリクル用枠体は1枚のシート状母材から打ち抜きにより切り出すことが多かった。本願発明はそのような技術常識に反してなされたものであるとともに、上述のような優れた効果を有するものである。
【0019】
前記ペリクル用枠体において、凸部の根元側の最大横寸法(t)を先端側の最大横寸法(v)よりも短くなるように形成することが寸法安定性の面から好ましい。さらに、凸部の根元側の最大横寸法(t)を、凸部が設けられる部材の幅に対して5%〜80%の長さに設定し、凸部の先端側の最大横寸法(v)を、凸部が設けられる部材の幅に対して10%〜90%の長さに設定することが好ましい。ここで、部材の幅方向の位置取りによって数値が変わる場合も想定されるが、幅方向の測定位置に特に制限はなく、幅方向のいずれかの測定位置によって上記条件を満たしていればよい。なお、幅に対する場合は、ペリクル膜面側の幅及びマスク粘着剤側の幅の何れか一方において上記数値範囲に入ればよい。
【0020】
また、前記ペリクル用枠体において、凸部の根元側の最大横寸法(t)を、凸部が設けられる部材の厚さに対して5%〜80%の長さに設定し、凸部の先端側の最大横寸法(v)を、凸部が設けられる部材の厚さに対して10%〜90%の長さに設定することが好ましい。ここで、部材の厚さ方向の位置取りによって数値が変わる場合も想定されるが、厚さ方向の測定位置に特に制限はなく、厚さ方向のいずれかの測定位置によって上記条件を満たしていればよい。
【0021】
なお、凸部の根元側の最大横寸法(t)とは、部材の接合端面に凸部が接続されている根元部分の最大寸法(例えば平面視において図6(a)に示すような2点間の距離t)を意味しており、凸部の先端側の最大横寸法(v)とは、部材の長手方向に対して略直角な方向における凸部の先端側部分(根元部分を除く部分)の最大寸法を意味している。
【0022】
また、前記ペリクル用枠体において、接合部(嵌合部)は1箇所以上となるが、接合部が1箇所の場合、1枚の母材からの切削時に、1枚物ほどの平坦性や寸法精度を求めなくても接合部で調整可能になり、また、1本の部材を塑性変形させて枠体にすることも可能になるため母材の節約になる。さらに、接合部を2箇所以上とすることで、平坦性の調整が容易となるため好ましい。このように2箇所以上とすることで、ペリクル用枠体を構成する各々のパーツの加工精度を高めることで、1枚の母材からよりも容易に平坦性の精度を出すことが可能となり寸法精度が高まることになる。
【0023】
また、前記ペリクル用枠体において、凸部は、凹部との嵌合時に凹部の内周面によって内方に圧縮変形させられる余剰外周部分を有するか、又は、凹部が、凸部との嵌合時に凸部の外周面によって内方に圧縮変形させられる余剰外周部分を有することとする。かかる構成を採用すると、部材の端部同士を上下方向から嵌合させることで、余剰外周部分が押しつぶされて外方向へ膨出することにより、各接合部分が隙間なく密にしかも強固に接合されるため、曲げ剛性やせん断剛性等が枠体より剛性の高い補強材等を使用しなくても高くなる。また余剰外周部分があることで、接着剤が不要になり、露光中へのアウトガスの心配もない。余剰外周部分の寸法は、少なくとも0.001mm以上(例えば0.005mm以上0.1mm以下)であることが好ましい。なお、余剰外周部分がほぼ0mmである場合は、接着剤等を使用することもできる。
【0024】
また、本発明に係るペリクルは、前記ペリクル用枠体と、前記ペリクル用枠体の開口部を覆うように展張支持されたペリクル膜と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、枠体より剛性の高い部材や接着剤等を用いることもなくペリクル用枠体としての実用上問題のない剛性を維持し、寸法安定性に優れるペリクル用枠体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係るペリクルの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るペリクル用枠体の平面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るペリクル用枠体の角部の拡大斜視図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係るペリクル用枠体の平面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係るペリクル用枠体の平面図である。
【図6】図3又は図4に示すペリクル用枠体の接合部の構成を説明するための説明図である。
【図7】(a)は図5に示すペリクル用枠体の接合部の拡大図であり、(b)はその変形例を示す拡大図である。
【図8】(a)、(b)、(c)いずれも、本発明の各実施形態に係るペリクル用枠体の接合部の変形例の拡大図である。
【図9】比較例における接合部の拡大図である。
【図10】参考例における接合部の拡大図である。
【図11】参考例における接合部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態(実施形態)について詳細に説明する。なお、本発明は、下記実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0028】
最初に、本発明の実施形態に係るペリクルについて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る大型ペリクル1を示す斜視図である。大型ペリクル1は、大型ペリクル用枠体2と、大型ペリクル用枠体2の上縁面2eに接着された大型ペリクル膜3と、を備えている。なお、図示しないが、大型ペリクル1は、大型ペリクル用枠体2の下縁面に塗布された貼着剤層と、貼着剤層に粘着されこの貼着剤層を保護する保護フィルムと、をさらに備えている。
【0029】
大型ペリクル用枠体2は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金(5000系、6000系、7000系等)、鉄及び鉄系合金、セラミックス(SiC、AlN、Al2O3等)、セラミックスと金属との複合材料(Al−SiC、Al−AlN、Al−Al23等)、炭素鋼、工具鋼、ステンレスシリーズ、ポリマー等からなり、平面視略矩形状を呈している。
【0030】
枠体の表面処理としては、アルマイト処理、塗装、塗料コーティング、めっき処理、低融点ガラスフリット処理、CVD処理、スパッタ法などによるPVD処理などを採用することができる。大型ペリクル用枠体2は、一対の長辺2a,2bと、この長辺2a,2bよりも短い一対の短辺2c,2dと、から構成されており、矩形状の開口部4を有している。開口部4の開口面積は、1000cm2以上とされるのが好ましく、3000cm2以上とされるのがより好ましく、5000cm2以上とされるのがさらに好ましい。なお、開口部4の開口面積は、35000cm2以下とされるのが好ましい。
【0031】
一対の長辺2a,2bは、例えば幅が9.0mmの柱状部材からなり、その長さは、例えば800mmである。一対の短辺2c,2dは、幅が例えば7.0mmの柱状部材からなり、その長さは、例えば480mmである。つまり、短辺2c,2dの平面視(上面視)における幅は、長辺2a,2bの幅よりも狭い。大型ペリクル用枠体2の角部5の曲率は、例えば、R=2mmである。また、大型ペリクル用枠体2の短辺2c、2dの側面6には、溝部7が長手方向(辺方向)に沿って設けられている。
【0032】
大型ペリクル膜3は、例えばニトロセルロースやセルロース誘導体、フッ素系ポリマー、またはシクロオレフィン系ポリマー等の透明な高分子膜からなり、その厚さは、例えば0.1μm以上10μm以下が好ましい。この大型ペリクル膜3は、大型ペリクル用枠体2の開口部4を覆うように上縁面2eに展張され、ペリクル枠体2に貼着支持されている。
【0033】
大型ペリクル膜3を大型ペリクル用枠体2の上縁面2eに接着する接着剤としては、例えば、アクリル樹脂接着剤、エポキシ樹脂接着剤、シリコーン樹脂接着剤、または含フッ素シリコーン接着剤等のフッ素系ポリマーを用いることができる。また、貼着支持する粘着材としては、スチレンエチレンブチレンスチレン、スチレンエチレンプロピレンスチレン、もしくはオレフィン系等のホットメルト粘着材、シリコーン系粘着材、アクリル系粘着材、または発泡体を基材とした粘着テープを用いることができる。粘着材層の厚さは、大型ペリクル用枠体2の厚さと粘着材厚さの合計が、規定された大型ペリクル膜3とフォトマスクの距離を越えない範囲で設定されるのが好ましく、例えば、0.01mm以上10mm以下とされるのが好ましい。
【0034】
また、大型ペリクル膜3をフォトマスクに貼り付けた際に貼着剤層の内側に空間が存在すると、該空間に異物が滞留する可能性がある。そのため、大型ペリクル用枠体2の下縁面に粘着剤を塗布する際には、大型ペリクル1をフォトマスクに貼り付ける際の加圧で粘着剤層が潰れて広がることを考慮した上で、加圧時に開口部4に粘着剤がはみ出さない程度に大型ペリクル用枠体2の開口部4内側寄りに塗布することが好ましい。具体的には、貼着剤層内側の空間の幅が粘着剤層の塗布幅の0.35倍以内となるように塗布することが好ましい。粘着剤層の塗布幅は大型ペリクル用枠体2の各辺2a〜2dの幅に対し0.3〜0.6倍であることが好ましく、大型ペリクル用枠体2の各辺2a〜2dに沿って塗布することが好ましい。粘着材を保護する保護フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、またはポリエチレン樹脂からなるフィルムを用いることができる。また、粘着材の粘着力に応じて、離型剤、例えばシリコーン系離型剤、またはフッ素系離型剤を、保護フィルムの表面に塗布しても良い。保護フィルムの厚さは、例えば、0.01mm以上1mm以下が好ましい。
【0035】
次いで、本発明の実施形態に係るペリクル用枠体について説明する。
【0036】
まず、本発明の一実施形態に係る大型ペリクル用枠体2について、図2及び図3を参照しながら説明する。図2(8分割構造)は、図1に示すような大型ペリクルに用いられる大型ペリクル用枠体2を上から見た図(平面図)であり、図3は、図2の角部付近を示す拡大斜視図である。なお、図1では接合部の記載を省略している。
【0037】
大型ペリクル用枠体2において、開口部4の周縁部を構成する枠部は、一対の長辺2a、2bを各々構成する長辺用部材である分割枠体21a、21bと、分割枠体21a、21bの軸方向両端部に接合部を介して連設され、大型ペリクル用枠体2の有する4箇所の角部5を各々形成する角部用部材である分割枠体21e、21h、21f、21gと、分割枠体21e、21h、21f、21gの開放端同士を、接合部を介して架橋して一対の短辺2c、2dを各々構成する短辺用部材である分割枠体21c、21dと、から形成されている。すなわち、大型ペリクル用枠体2は、開口部4の周縁部を構成する枠部の軸方向に沿って、8箇所の接合部を有している。このように角部付近に接合部を設ける場合は、軸方向以外にも軸方向に垂直や斜めに対して設けてもよい。
【0038】
また、図2において大型ペリクル用枠体2は分割枠体21aを基点とし、開口部4の開口軸を基準とした時計回り方向に、分割枠体21e、分割枠体21d、分割枠体21f、分割枠体21b、分割枠体21g、分割枠体21c、分割枠体21h、分割枠体21aの順に接続されて形成されている。ここで、接合箇所の数としては、1箇所以上あればよいが、好ましくは、2〜30箇所、より好ましくは、2〜20箇所、さらに好ましくは、3〜15箇所である。
【0039】
大型ペリクル用枠体2において、長辺2aと長辺2bの長さは等しく形成されており、短辺2cと短辺2dの長さは等しく形成されている。また、分割枠体21aと分割枠体21bの形状は実質的に同一であり、分割枠体21cと分割枠体21dの形状は実質的に同一であり、さらに、角部5を各々形成する分割枠体21e、21h、21f、21gの形状も実質的に同一である。具体的には、図2において、分割枠体21a,21bの長さは、例えば700mmであり、分割枠体21c、21dの長さは、例えば380mmである。
【0040】
ペリクル用枠体2の各辺2a〜2dの幅は、露光面積を確保する観点からは細ければ細いほど好ましいが、細すぎるとペリクル膜3の展張時にペリクル膜3の張力でペリクル用枠体2が撓んでしまうという問題が生じるおそれがある。各辺の長さに対して剛性を考慮した幅の太さになるため、3mm〜25mm程度とすることができる。また、ペリクル用枠体2の厚さに関しても薄ければ薄いほど軽くて扱いやすい大型ペリクル1となるが、薄すぎるとペリクル膜3の展張時にペリクル膜3の張力でペリクル用枠体2が撓んでしまうという問題が生じるおそれがある。各辺2a〜2dの長さに応じて両者のバランスから、ペリクル用枠体2の厚さは好ましくは3.5mm〜12mm程度とすることができる。
【0041】
図4は、図2と異なる分割枠体を使用して構成したペリクル用枠体の一例(他の実施形態)を示すものである。図4は4分割枠体の例であって、大型ペリクル用枠体2において、開口部4の周縁部を構成する枠部は、一対の長辺4a、4bを各々構成する部材である分割枠体41a、41bと、一対の短辺4c、4dを各々構成する部材である分割枠体41c、41dと、から形成されている。すなわち、大型ペリクル用枠体2は、開口部4の周縁部を構成する枠部の軸方向に沿って、4箇所の接合部を有している。大型ペリクル用枠体2において、長辺4aと長辺4bの長さは等しく形成されており、短辺4cと短辺4dの長さは等しく形成されている。
【0042】
図5もまた、図2と異なる分割枠体を使用して構成したペリクル用枠体の一例(他の実施形態)を示すものである。図5は8分割枠体の例であって、大型ペリクル用枠体2において、開口部4の周縁部を構成する枠部は、一対の長辺5a、5bを各々構成する部材である分割枠体51a、51a´、51b、51b´と、一対の短辺5c、5dを各々構成する部材である分割枠体51c、51c´、51d、51d´と、から形成されている。即ち、大型ペリクル用枠体2は、開口部4の周辺部を構成する枠部の軸方向に沿って、8箇所の接合部を有している。大型ペリクル用枠体2において、長辺5aと長辺5bの長さは等しく形成されており、短辺5cと短辺5dの長さは等しく形成されている。
【0043】
図2〜図4に示す実施形態に係るペリクル用枠体においては、接合部を角部付近に設けた形状を例として図示したが、図5に示すように、各辺の各々必要箇所に設けてもよい。各辺の各々必要箇所に設ける場合は、ペリクル作製工程内の加熱等による熱膨張を接合部で緩和できるため好ましいが、角部付近に接合部を設ける方がより好ましい。
【0044】
図2に示す実施形態に係るペリクル用枠体においては、対向する一対の長辺を構成する2本の長辺用部材と、対向する一対の短辺を構成する2本の短辺用部材と、4つの角部を構成する角部用部材と、を採用し、長辺用部材及び短辺用部材の端部を各々角部用部材に接合し、角部用部材を介して長辺用部材及び短辺用部材を連結することにより平面視長方形状の枠体としてもよい。また、図3または図4に示す実施形態に係るペリクル用枠体においては、対向する一対の長辺を構成する2本の長辺用部材と、対向する一対の短辺を構成する2本の短辺用部材と、を採用し、長辺用部材及び短辺用部材の端部同士を接合して平面視長方形状の枠体としてもよい。このようにすると、平面視長方形状の枠体の角部付近に接合部を配置することができ、接合部を角部付近に設ける場合は、一本の辺を切り出すため、生産性が高くなるとともに、剛性の高い角部付近を接合することで一枚の母材からの切り出し物と同等の剛性を保つことができ、さらには、角部が直角性を保つため露光中の有効露光面積を保つことができるため好ましい。
【0045】
図6は、図3及び図4に示す実施形態に係るペリクル用枠体の接合部の拡大図である。また、図7(a)は、図5に示す実施形態に係るペリクル用枠体の接合部の拡大図であり、図7(b)はその変形例である。図8は、各実施形態に係るペリクル用枠体の接合部の変形例の拡大図である。図8においては、(a)、(b)、(c)いずれかの形状を取ることができる。また、これらはあくまで例示であって、接合部の形状を制限するものではない。
【0046】
図6(a)に示すように、本発明の各実施形態に係るペリクル用枠体においては、接合される一方の部材(分割枠体)の端部に、接合される他方の部材(分割枠体)に向けて突出する少なくとも一つの凸部Pが設けられており、他方の部材(分割枠体)の端部には、この凸部Pを嵌合させる凹部Cが設けられている。そして、凸部Pを凹部Cに嵌合させることにより一方の部材(分割枠体)の端部が他方の部材(分割枠体)の端部に接合されるようになっている。
【0047】
本発明は接合部が嵌合部とされてなることを特徴とする大型ペリクル用枠体であるが、このような形状にすることで、接合部の曲げ剛性やせん断剛性が実用上問題のないレベルになり、ペリクル膜を張り付けた際に枠体が内側へ撓むが、その場合も応力集中が緩和されるため、接合部での隙間やガタ等が発生しにくくなり、分割枠体を利用しても寸法が安定するため好ましい。
【0048】
本実施形態に係るペリクル用枠体においては、図6に示すように、一方の部材の端部(接合部端面s)に設けられた凸部Pの根元側部分の最大横寸法tが、この凸部Pの先端側部分(他方の部材の接合部内部uに形成された凹部Cに嵌まる部分)の最大横寸法vよりも短くなるように設定することが好ましい。このような構造は、部材(分割枠体)の幅方向にあってもよく、厚さ方向にあってもよい。幅方向にあった場合は、膜を展張した後の枠体の内側への撓みを防止するためにより好ましく、厚さ方向にあった場合は、もし内壁や外壁に盛り上がりがあっても、マスク粘着材や膜接着剤が塗布される幅方向は平坦になるため好ましい。
【0049】
凸部Pの根元側の最大横寸法tは、凸部Pが設けられる部材の幅に対して5%〜80%の長さに設定されることが好ましい。また、凸部Pの先端側の最大横寸法vは、凸部Pが設けられる部材の幅に対して10%〜90%の長さに設定されるのが好ましい。さらに、凸部Pの根元側の最大横寸法tは部材の幅に対して7%〜60%の長さに設定されるのがより好ましく、10%〜40%の長さに設定されるのがさらに好ましい。また、凸部Pの先端側の最大横寸法vは部材の幅に対して15%〜75%の長さに設定されるのがより好ましく、20%〜50%の長さに設定されるのがさらに好ましい。なお、上記のそれぞれの最大横寸法は、接合部の幅に対して複数個あった場合は、各々の最大接合距離の総和を示している。
【0050】
凸部Pの根元側の最大横寸法tが部材の幅に対して5%より小さい場合は、接合部(嵌合部)での引っ掛かりが弱く、左右の引っ張り強度が低くなる可能があったり、ペリクル膜を張り付けた時の枠体の内側への撓みの際に、接合端面接合部に集中応力が大きくかかり、隙間やガタが接合端面部に起こる可能性があったりするので好ましくない。また、凸部Pの根元側の最大横寸法tが部材の幅に対して80%より大きい場合は、上下からの嵌合時に、凸部Pが押しつぶされて外方向に膨出するため、枠体の内外側面が盛り上がる可能性があり好ましくない。さらに、凸部Pの先端側の最大横寸法vが部材の幅に対して10%より小さい場合は、接合部(嵌合部)での引っ掛かりが弱く、左右の引っ張り強度が低くなる可能があったり、ペリクル膜を張り付けた時の枠体の内側への撓みの際に、接合端面接合部に集中応力が大きくかかり、隙間やガタが接合端面部に起こる可能性があったりするので好ましくない。また、凸部Pの先端側の最大横寸法vが部材の幅に対して90%より大きい場合は、上下からの嵌合時に、凸部Pが押しつぶされて外方向に膨出するため、枠体の内外側面が盛り上がる可能性があり好ましくない。
【0051】
また、凸部Pの根元側の最大横寸法tは、凸部Pが設けられる部材(分割枠体)の厚さに対して5%〜80%の長さに設定されることが好ましい。また、凸部Pの先端側の最大横寸法vは、凸部Pが設けられる部材(分割枠体)の厚さに対して10%〜90%の長さに設定されるのが好ましい。さらに、凸部Pの根元側の最大横寸法tは部材の厚さに対して7%〜60%の長さに設定されるのがより好ましく、10%〜40%の長さに設定されるのがさらに好ましい。凸部Pの先端側の最大横寸法vは、部材の厚さに対して15%〜75%の長さに設定されるのがより好ましく、20%〜50%の長さに設定されるのがさらに好ましい。なお、上記のそれぞれの最大横寸法は、接合部の厚さに対して複数個あった場合は、各々の最大接合距離の総和を示している。
【0052】
凸部Pの根元側の最大横寸法tが部材の厚さに対して5%より小さい場合は、ペリクル膜の膜張力による内側への撓みの際に、接合部が弛みやすくなる可能性があるため好ましくない。また、凸部Pの根元側の最大横寸法tが部材の厚さに対して80%より大きい場合は、左右からの嵌合時に、凸部Pが押しつぶされて外方向に膨出するため、枠体の上下側面が盛り上がる可能性があり好ましくない。さらに、凸部Pの先端側の最大横寸法vが部材の厚さに対して10%より小さい場合は、ペリクル膜の膜張力による内側への撓みの際に、接合部が弛みやすくなる可能性があるため好ましくない。また、凸部Pの先端側の最大横寸法vが部材の厚さに対して90%より大きい場合は、左右からの嵌合時に、凸部Pが押しつぶされて外方向に膨出するため、枠体の上下側面が盛り上がる可能性があり好ましくない。上下側面が盛り上がる場合は、枠体の平坦性が悪くなり貼りつけ精度が悪くなる可能性もあるため好ましくない。
【0053】
凸部Pの形状としては、丸形のピアス形状、楔形状、角形状、三角形状、その他種々の形状(ジグゾーパズルで採用されているような形状等)を採用することができる。凸部Pの個数は、部材(分割枠体)の幅や厚さに対して1個から複数個存在してもよい。1個の場合は、枠体の内側への撓みに対して接合部端面からの始端部に応力が集中的にかかるため、接合部端面にガタや隙間が空く可能性もある。そのため、カシメや接着剤等で補助的に接合部端面を別な接合方法で接合しても良い。ペリクル枠体は幅や厚さがさほど大きくないため、1個〜4個がより好ましく、1個〜2個が更に好ましい。
【0054】
なお、図8(c)に示すような特殊な形状の凸部Pを採用した場合には、凸部Pの根元側部分の最大横寸法tを、凸部Pの先端側部分の最大横寸法vと同程度の長さに設定することもできる。
【0055】
また、本実施形態に係るペリクル用枠体において、接合される一方の部材の端部に設けられる凸部Pは、図6(b)に示すように、接合される他方の部材の端部に設けられる凹部Cとの嵌合時に凹部Cの内周面によって内方に圧縮変形させられる余剰外周部分(以下、「接合ギャップ」という)Gを有している。接合ギャップGの寸法は、0.1mm以下であることが好ましい。接合するときに、上下又は左右から嵌め合いを行うが、この接合ギャップGが嵌め合い時に潰れて外方向に膨出されるために密接に接合が可能になる。接合ギャップGの寸法が0.1mmより大きいと潰れる部分が大きくなり枠体の上下左右方向に盛り上がりがおこるため好ましくない。この接合ギャップGをもつことで、接着剤等が不要になり嵌め合いを行うだけで強固に接合が可能になる。接合ギャップGの寸法は、0.005mm〜0.06mmとされるのが好ましく、0.01mm〜0.04mmとされるのがさらに好ましい。
【0056】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、各分割枠体の形状をある程度揃えているが、各分割枠体の形状が夫々相違していても差し支えない。
【実施例】
【0057】
次に、実施例及び比較例を挙げて本実施形態をより具体的に説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、下記の実施例に限定されるものではない。
【0058】
[実施例1]
大型ペリクル用枠体の材質(全ての分割枠体の材質)はアルミニウム合金、厚さを4.0mmとし、長辺は、幅が6.0mm、長さが430mmとした。また、短辺は、幅が6.0mm、長さが300mmで、短辺側全長に渡って溝が設けられており、溝の深さは2mm、溝の高さは1.5mmであった。また、角部は曲率がR=2mmであった。その他は、図2のとおりに大型ペリクル用枠体を形成した。分割枠体21a,21bの長さは370mmであり、分割枠体21c,21dの長さは240mmであった。接合部は、図6のように一方の部材の端部に丸形の凸部が1個設けられている形状とした。凸部の根元側の最大横寸法は1.6mmの長さに設定され、凸部の先端側の最大横寸法は3.0mmに設定され、接合ギャップの寸法を0.03mmに設定して、接着剤は使用せずに上下方向から嵌め合いを行った。目視検査をした結果、外観上は問題がなかった。
【0059】
(寸法安定測定)
上記の枠体の外形寸法測定を行い、ホットプレート上で140℃、10分間加熱処理を行った後、長辺中央部の外形寸法測定を行いその変形量を測定した。外形寸法測定は、ミツトヨ FAL―1600シリーズで測定した。その結果を表1に記載した。
【0060】
(接合強度テスト)
次に、接合強度テストを行った。上記と同様の接合形状部を含む100mmの棒状部材のサンプルを作製した。接合部は100mmの棒状部材の半分の50mmの位置とした。幅方向を上面に向けて、接合部から10mmあけてチャッキングを行い(チャッキングは、接合部から10mm〜30mmの範囲)、チャッキングした反対側を接合部から10mmの箇所に力を加えて測定した。測定装置は、イマダのデジタルフォースゲージを使用した。結果を表1に記載した。
【0061】
次に、この大型ペリクル用枠体に対し、粘着剤としてスチレンエチレンブチレンスチレン系のホットメルト粘着剤、厚さ1.4mmをペリクル枠体の各辺に沿って塗布した。 別途、基板上にセルロースエステルのペリクル膜をスピンコート法により成膜し、その膜を仮枠に接着させ、その後基板から剥離させた。この仮枠は、アルミニウム製のものを使用した。その後、前記ホットメルト粘着材を塗布した大型ペリクル用枠体に、ホットメルト粘着剤が塗布されていない反対側の面に、アクリル系の膜接着剤を塗布し、仮枠のペリクル膜を接着させ硬化し、余剰膜を切断してペリクルを作製し、目視により外観を検査し、問題のないことを確認した。切断後、枠体が内側に撓むため、形状が安定した後、接合部の接合面を目視により確認した。その結果は表1の通りである。
【0062】
[実施例2]
長辺の幅が9.0mm、長さが800mm、短辺の幅が7.0mm、長さが480mm、角部の曲率がR=0mmとなるように設定した。それ以外の溝の長さ深さ、枠体の厚さは実施例1と同様にした。今回は、図4のような分割枠体にし、41c、41dが480mm、41a、41bが790mmとした。接合部は、図7(a)のように一方の部材の端部に丸形の凸部が2個設けられている形状とした。凸部の根元側の最大横寸法は1.5mmの長さに設定され、凸部の先端側の最大横寸法は2.0mmに設定され、接合ギャップの寸法を0.02mmに設定して、接着剤は使用せずに上下方向から嵌め合いを行った。目視検査を行った結果、外観上は問題がなかった。その後、ホットメルト粘着材の厚さを2.0mmにした以外は実施例1と同様にペリクルを作製し、同じように評価を行った。その結果を表1に記載する。
【0063】
[実施例3]
長辺の幅が21.0mm、長さが2000mm、短辺の幅が19.5mm、長さが1800mm、角部の曲率がR=0mmとなるように設定し、枠体の厚さを6.0mmとした。それ以外の溝の長さ深さは実施例1と同様にした。今回は、図5のような分割枠体にし、51c、51c´、51d、51d´を各々900mmとし、51a、51a´、51b、51b´を各々982mmとした。接合部は、図8(a)のように台形形状の凸部が3個設けられている形状とした。凸部の根元側の最大横寸法は2.1mmの長さに設定され、凸部の先端側の最大横寸法は4.2mmに設定され、接合ギャップの寸法を0.015mmに設定して、接着剤は使用せずに上下方向から嵌め合いを行った。目視検査を行った結果、外観上は問題がなかった。その後、ホットメルト粘着材の厚さを2.0mmにした以外は実施例1と同様にペリクルを作製し、同じように評価を行った。その結果を表1に記載する。
【0064】
[比較例1]
接合部の無い、一枚の母材からの切り出し枠体を用意した。長辺の幅は9.0mm、長さは800mm、短辺の幅は7.0mm、長さは480mmとした。材質はアルミニウム合金、厚さを4.0mmの大型ペリクル用枠体を用いた。短辺側全長に渡って溝が設けられており、溝の深さは2mm、溝の高さは1.5mmであった。また、角部は曲率がR=2mmであった。それ以外は、実施例1と同様にペリクルを作製し、評価を同様に行った。その結果を表1に記載する。但し、接合部がないので接合強度テストは行っていない。
【0065】
[比較例2]
接合部の形状を図9のような形状として、2液性の常温硬化型ウレタン接着剤を用いて接合した以外は、実施例1と同様にして大型ペリクル用枠体を作製した後、実施例1と同様にペリクルを作製し、評価を同様に行った。その結果を表1に記載する。大型ペリクル用枠体を作製後、目視検査を行ったところ、接着剤のダレが発生し、外観上も接着剤のダレによるシミ等が見受けられた。
【0066】
[参考例1]
接合部は、図10のように一方の部材の端部に正三角形状の凸部が2個設けられている形状とした。凸部の根元側の最大横寸法は2.0mmの長さに設定され、接合ギャップの寸法は0mmに設定され、レーザー溶接で接合して大型ペリクル用枠体を作製した後、実施例1と同様にペリクルを作製し、評価を同様に行った。その結果を表1に記載する。大型ペリクル用枠体の作製後、目視検査を行ったところ、接合部に溶接の後の凹凸が発生し、外観としてはよくないものであった。また、ペリクル作製後の外観も、凹凸部分がキラキラ光って異物に見えて、検査性も良くないものとなった。
【0067】
[参考例2]
接合部は、図11のように一方の部材の端部に台形形状の凸部が3個設けられている形状とした。凸部の根元側の最大横寸法は4.2mmの長さに設定され、凸部の先端側の最大横寸法は2.1mmの長さに設定され、接合ギャップの寸法は0mmに設定され、焼きバメを用いて接合して大型ペリクル用枠体を作製した。その後は、実施例3と同様にペリクルを作製し、評価を同様に行った。その結果を表1に記載する。大型ペリクル用枠体の作製後、目視検査を行ったところ、外観は良好であったが、接合強度が弱いため、ペリクル作製後の目視検査にて、隙間やガタが見受けられ、そこに異物が挟まっていた。また、形状が矩形状ではなくなっていた。
【0068】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、分割枠体を用いたペリクル枠体であって、大型ペリクルの分野で利用できる。
【符号の説明】
【0070】
1…ペリクル、2…ペリクル用枠体、2a・2b…長辺、2c・2d…短辺、3…ペリクル膜、4…開口部、4a・4b…長辺、4c・4d…短辺、5…角部、5a・5b…長辺、5c・5d…短辺、21a・21b…分割枠体(長辺用部材)、21c・21d…分割枠体(短辺用部材)、21e・21f・21g・21h…分割枠体(角部用部材)、41a・41b…分割枠体(長辺用部材)、41c・41d…分割枠体(短辺用部材)、41a・41b…分割枠体(長辺用部材)、41c・41d…分割枠体(短辺用部材)、C…凹部、G…接合ギャップ(余剰外周部分)、P…凸部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視矩形状の開口部を備えるペリクル用枠体であって、
端部同士が接合されることにより前記開口部の周縁を形成する部材を有し、
接合される一方の部材の端部には、接合される他方の部材に向けて突出する少なくとも一つの凸部が設けられ、
前記他方の部材の端部には、前記凸部を嵌合させる凹部が設けられ、
前記凸部を前記凹部に嵌合させることにより前記一方の部材の端部が前記他方の部材の端部に接合される、
ペリクル用枠体。
【請求項2】
前記凸部は、根元側の最大横寸法(t)が先端側の最大横寸法(v)よりも短くなるように形成される、
請求項1に記載のペリクル用枠体。
【請求項3】
前記凸部の根元側の最大横寸法(t)は、前記凸部が設けられる部材の幅に対して5%〜80%の長さに設定される、
請求項2に記載のペリクル用枠体。
【請求項4】
前記凸部の先端側の最大横寸法(v)は、前記凸部が設けられる部材の幅に対して10%〜90%の長さに設定される、
請求項2又は3に記載のペリクル用枠体。
【請求項5】
前記凸部の根元側の最大横寸法(t)は、前記凸部が設けられる部材の厚さに対して5%〜80%の長さに設定される、
請求項2から4の何れか一項に記載のペリクル用枠体。
【請求項6】
前記凸部の先端側の最大横寸法(v)は、前記凸部が設けられる部材の厚さに対して10%〜90%の長さに設定される、
請求項2から5の何れか一項に記載のペリクル用枠体。
【請求項7】
前記凸部は、前記凹部との嵌合時に前記凹部の内周面によって内方に圧縮変形させられる余剰外周部分を有する、
請求項1から6の何れか一項に記載のペリクル用枠体。
【請求項8】
前記余剰外周部分の寸法は、0.005mm以上0.1mm以下に設定される、
請求項7に記載のペリクル用枠体。
【請求項9】
請求項1から8の何れか一項に記載のペリクル用枠体と、
前記ペリクル用枠体の前記開口部を覆うように展張支持されたペリクル膜と、
を備える、
ペリクル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−53302(P2012−53302A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196223(P2010−196223)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【出願人】(595152162)株式会社村元工作所 (11)
【Fターム(参考)】