説明

ペルアンヒドロシクロデキストリン含有医薬組成物

本発明は、ペルアンヒドロシクロデキストリン、薬剤および担体を含む医薬組成物、ペルアンヒドロシクロデキストリンの薬剤輸送増加剤(例えば浸透増加剤)としての使用、および医薬組成物の製造におけるペルアンヒドロシクロデキストリンの共同的補助系としての使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、ペルアンヒドロシクロデキストリン(peranhydrocyclodextrin)、薬剤および担体を含む医薬組成物、ペルアンヒドロシクロデキストリンの薬剤輸送増加剤(例えば浸透増加剤)としての使用、および医薬組成物の製造におけるペルアンヒドロシクロデキストリンの共同的補助系としての使用に関する。
【0002】
ペルアンヒドロシクロデキストリンの合成は、1991年から記載されており(Gadelle A. and Defaye J., Angew. Chem. Int. Ed. Engl., (1991), 30, 78-79; Ashton P. R., Ellwood P., Staton I. and Stoddart J. F. Angew. Chem. Int. ed. Engl., (1991) 30, 80-81)、著者らはこれらの誘導体が水および有機溶媒の両方において興味深い溶解性を有することを記載している。
【0003】
本明細書で使用する、ペルアンヒドロシクロデキストリン類は、シクロデキストリンがα、βまたはγもしくはこれらの混合物であってよく、そして、各分子が少なくとも5個の3,6−アンヒドロ−グルコピラノース単位を有する、ペル(3,6−アンヒドロ)シクロデキストリン類を意味する。該ペルアンヒドロシクロデキストリン類の代表例は、ヘキサキス(3,6−アンヒドロ)−α−シクロデキストリン、ヘプタキス(3,6−アンヒドロ)−β−シクロデキストリン、オクタキス(3,6−アンヒドロ)−γ−シクロデキストリンである。
【0004】
典型的に、本発明のα、βまたはγシクロデキストリン類のペル(3,6−アンヒドロ)シクロデキストリン類は、少量の1個の非脱水グルコピラノース単位および微量の2個の非脱水グルコピラノース単位を含み得る。
【0005】
ペル(3,6−アンヒドロ)シクロデキストリンの量は、典型的に、全組成物の0.0001−80重量%、好ましくは0.001−70重量%、より好ましくは0.01−65%およびまた0.1−60重量%の範囲である。
【0006】
薬学的に有効な薬剤、ペルアンヒドロシクロデキストリンおよび担体を含む医薬組成物は、当分野で記載されていない。
【0007】
したがって、第一の局面において、本発明は、薬学的に有効な薬剤、ペル(3,6−アンヒドロ)シクロデキストリンおよび担体を含む医薬組成物に関する。好ましい医薬組成物は、局所投与用医薬組成物である。より好ましいのは、眼用組成物である。
【0008】
本発明の組成物は、例えばヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリンのような先行技術と比較して、高い浸透促進効果を有すると考えられる。
【0009】
したがって本発明の他の対象は、事実上すべての哺乳類組織を通る、浸透増加剤および/または薬剤輸送増加剤としてのペルアンヒドロシクロデキストリンの使用である。したがって、ペルアンヒドロシクロデキストリン類は、任意の薬学的に有効な薬剤の生体内利用能の増強に有用である。
【0010】
一つの態様において、本発明はペル(3,6−アンヒドロ)シクロデキストリンの、薬学的に有効な薬剤の生体内利用能の増強のための使用に関する。
【0011】
ペル(3,6−アンヒドロ)シクロデキストリンの、薬学的に有効な薬剤の生体内利用能の増強のための医薬品の製造における使用にも関する。
【0012】
本発明はまた、細胞膜を通る薬剤浸透を増強するためのペル(3,6−アンヒドロ)シクロデキストリンの使用であり、ここで、該膜は好ましくは眼の膜であり、該薬剤は好ましくは該細胞膜に局所的に投与される。
【0013】
さらに、局所投与により処置可能な疾患の処置のための局所医薬の製造におけるペル(3,6−アンヒドロ)シクロデキストリンの使用にも関し、ここで、該医薬はペル(3,6−アンヒドロ)シクロデキストリン、担体および薬剤を含む。
【0014】
本発明は、さらに(哺乳類)組織を通る(細胞膜を通る)薬剤透過性を改善する方法であり、
ペル(3,6−アンヒドロ)シクロデキストリン、有効量の薬剤、および担体を含む医薬組成物を、個々の成分の通常の混合により調製し;そして
該医薬組成物を該組織に投与する
ことを含む、方法に関する。
【0015】
出願人はいかなる仮説にも縛られることを願わないが、出願人は細胞膜浸透およびその増強に関する下記の態様を現在考慮している:
結局、本発明のペルアンヒドロシクロデキストリン類は、膜イオンチャネルおよびポンプの正常の生理学的機能を変えるためにカチオン結合シクロデキストリン類を利用し、本カチオン依存性エネルギー源が生体膜を通過する薬剤浸透の増強をもたらし得る。
【0016】
すべての膜輸送過程が下記を必要とすることが現在当分野で信じられている:
−脂質二層構造を通る物質の透過性、および
−輸送エネルギー源の有用性。
後者の因子は − 数ある中でとりわけ、そして、最先端で記載されているように − Ca++イオンに関連しているようである。なぜならCa++ATPアーゼ酵素が膜輸送過程のほとんどに関与する不可欠の膜タンパク質であるからである。
【0017】
生体膜の脂質二層構造は、イオンおよび極性分子に対して本質的に非透過性である。このような物質の透過性は、2タイプの膜タンパク質:ポンプとチャネルにより与えられる。
ポンプはイオンの輸送に自由エネルギー(主にATPから、能動輸送)を利用するようである。
チャネルは膜を急速に通過するイオンの流れを可能にするようである(例えば受動輸送)。
【0018】
本発明のアンヒドロ−シクロデキストリン誘導体は(浸透増加剤としてのその機能において)、これらの膜タンパク質−関連輸送過程に作用し、生体膜を通過する薬剤輸送の増強をもたらし得る。
【0019】
アンヒドロシクロデキストリン類の存在は、さらに、膜の外表面のイオン・ポテンシャルを変え、故に、細胞外および細胞内空間におけるイオン分布を変換させ得る。これは、膜生体機能の変化に至り、したがって、観察される増強された輸送をもたらし得る。
【0020】
経口投与が薬剤送達に最も一般的で簡便な経路であるため、低い経口生体内利用能に関連する様々な問題と取り組むための、多くの戦法が開発されている。
【0021】
これらの個々の戦法はある薬剤では適用が成功しているが、低い経口生体内利用能は非常にしばしば複数の因子に起因し、したがって、また明らかな改善が必要である。
【0022】
本発明は、医薬組成物においてペルアンヒドロ−シクロデキストリン類を使用することにより、上記の問題の解決を提供する。
【0023】
本発明の薬学的活性剤は、典型的に下記から選択される:
−血管新生阻害剤、例えば、VEGF阻害剤、PKC阻害剤、また、VEGF−またはPKC−受容体に選択性を有する抗体、抗体フラグメント、例えばN−ベンゾイルスタウロスポリン、1−(3−クロロアニリノ)−4−(4−ピリジルメチル)フタラジン、
−抗炎症剤、例えば、ステロイド、例えばデキサメタゾン、フルオロメトロン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン;またはいわゆる非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、例えばCOX阻害剤、例えばジクロフェナック、バルデコキシブ、ルミラコキシブ、ケトロラックまたはインドメタシン;
−例えばFK506、33−エピ−クロロ−33−デスオキシ−アスコマイシン、クロモリン、エマジン(emadine)、ケトチフェン、レボカバスチン、ロドキサミド、ノルケトチフェン、オロパタジン、およびリザベンから選択される抗アレルギー剤;
−例えばラタノプロスト、15−ケト−ラタノプロスト、ウノプロストンイソプロピル、ベタキソロール、クロニジン、レボブノロールおよびチモロールから選択される、緑内障(特に眼内圧処置)を処置するための薬剤;
−例えばシプロキサン、クロラムフェニコール、クロロテトラサイクリン、ゲンタマイシン、ロメフロキサシン、ネオマイシン、オフロキサシン、ポリミキシンBおよびトブラマイシンから選択される、抗感染症剤;
−例えばアンフォテリシンB、フルコナゾールおよびナタマイシンから選択される、抗菌剤;
−抗ウイルス剤、例えばアシクロビル、ホミビルセン(fomivirsen)、ガンシクロビル、およびトリフルウリジン(trifluridine);
−例えば塩酸コカイン、リドカイン、オキシブプロカインおよび塩酸テトラカインから選択される、麻酔剤;
−近視予防/阻止剤、例えばピレンゼピン、アトロピンなど;
−例えばカルバコール、ピロカルピンおよびフィゾスチグミンから選択される、縮瞳剤;
−例えばアセタゾラミドおよびドルゾラミドから選択される、炭酸脱水酵素阻害剤;
−例えばアプラクロニジンおよびブリモニジンから選択される、α遮断剤;そして
−例えばアスコルビン酸、α−トコフェロール、酢酸α−トコフェロール、レチノール、酢酸レチノール、およびパルミチン酸レチノールから選択される、抗酸化剤および/またはビタミン。
【0024】
好ましい薬剤は:
血管新生阻害剤、抗炎症剤、抗アレルギー剤、緑内障を処置するための薬剤、および近視予防/阻止剤から選択される。
【0025】
さらに好ましいのは、血管新生阻害剤、抗炎症剤、抗アレルギー剤、緑内障を処置するための薬剤、抗感染症剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、麻酔剤、近視予防/阻止剤、縮瞳剤、炭酸脱水酵素阻害剤、α遮断剤、抗酸化剤および/またはビタミンである。
【0026】
本明細書で使用する、薬学的活性剤は、遊離形、塩形および/またはこれらの混合物としての薬剤である。
【0027】
本発明の医薬組成物は、例えば、約10%から約80%、好ましくは約20%から約60%の活性成分(薬剤)の、経腸または非経腸投与形を含む。経腸または非経腸投与用の本発明の医薬組成物は、例えば、糖衣錠、錠剤、カプセルまたは坐薬、およびまたアンプルのような単位投与形である。それらは、それ自体既知の方法で、例えば慣用の混合、造粒、糖衣、溶解または凍結乾燥法で製造する。例えば、経口投与用医薬組成物は、活性成分と固体担体を合わせ、望ましいならば得られた混合物を造粒し、望ましいならばまたは必要であれば適当な賦形剤の添加後、混合物または顆粒を、錠剤または糖衣錠コアに加工することにより得ることができる。
【0028】
適当な担体は、とりわけ、糖、例えばラクトース、サッカロース、マンニトールまたはソルビトール、セルロース製剤および/またはリン酸カルシウム、例えばリン酸三カルシウムまたはリン酸水素カルシウムのような増量剤、およびまた、例えば、コーン、小麦、コメまたはジャガイモデンプンを使用したデンプンペースト、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロースおよび/またはポリビニルピロリドンのような結合剤、望ましいならば、上記デンプン、またカルボキシメチルデンプン、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはアルギン酸ナトリウムのようなその塩のような崩壊剤である。賦形剤は、とりわけ流動剤、流動調節剤および滑剤、例えばケイ酸、タルク、ステアリン酸またはステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸カルシウムのようなその塩、および/またはポリエチレングリコールである。糖衣錠コアは、適当な、所望により腸溶性のコーティングを施され、それは、とりわけ、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタンを含み得る濃縮糖溶液、または、適当な有機溶媒または溶媒混合物中のコーティング溶液、または、腸溶性コーティングの調製のために、適当な酢酸フタル酸セルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートのようなセルロース製剤を使用する。色素または着色剤を、例えば、同定目的または活性成分の異なる量を示すために、錠剤または糖衣錠コーティングに添加し得る。
【0029】
他の適当な担体は、水、水と他の好ましい担体の混合物、水と、C−C−アルカノール、植物油または、0.5から5重量%ヒドロキシエチルセルロース、オレイン酸エチル、カルボキシメチル−セルロース、ポリビニル−ピロリドン、ならびに、例えば、メチルセルロース、カルボキシ−メチルセルロースのアルカリ金属塩、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピル−セルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースのようなセルロース誘導体、ポリアクリル酸もしくはアクリル酸エチルの塩のようなアクリレートまたはメタクリレート、ポリアクリルアミドのような医薬使用のための他の非毒性水溶性ポリマーのような水混和性溶媒との混合物から選択すべきである。
【0030】
好ましい担体は水、水と他の好ましい担体の混合物、水と水混和性溶媒の混合物であり得る。
【0031】
他の適当な担体は、例えば下記を含むか、下記から成る:
ポリ乳酸およびポリグリコール酸のようなポリヒドロキシ酸;ゼラチン、アルギネート、ペクチン、トラガカント、カラヤゴム、キサンタンガム、カラゲニン、寒天およびアカシアのような、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオルトエステル、ポリアンヒドライド、ポリシアノアクリレート天然ポリマー;カルボキシメチルセルロースのようなセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース;Eudragit、例えばEudragit RL PO、Eudragit RS POのようなメタクリル酸(コ)ポリマーからなる群から選択される生体内分解性ポリマー;および/または
マルトデキストリン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースのようなセルロース;キトサン;ヒアルロン酸;ポリアクリレート、例えばカルボポール;ポリカルボフィル、例えばNoveon AA-1;Mowiol 26-88のようなポリビニルアルコール;ポビドンK30のようなポリビニルピロリドン、重合シクロデキストリン(MWは10,000以上);ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキシドまたはこれらのポリマーの混合物のような合成品からなる群から選択される生体接着ポリマー。
【0032】
好ましい担体は、20,000から200,000の分子量を有する、グルコースの分枝ポリグリコリドラクチドエステルを含むポリマーである(星形高分子I)。
【0033】
他の好ましい担体は、分子量20,000から200,000を有する、ポリオールエステルを含むポリマーであり、該ポリオールエステルは本質的に下記から成る:
1)
i)4から30ヒドロキシル基を含む1から8グルコース単位を有する、環状構造、および
ii)3から6ヒドロキシル基を含むマンニトールの直鎖構造
からなる群から選択される、0.06%から10重量%のポリオール残基;そして
2)5,000から85,000の分子量を有するポリ乳酸またはコ−ポリ−乳酸残基〔該ポリオールエステルは少なくとも3個の該ヒドロキシル基をエステル化形で有し、星の形のポリマー構造を有し、ここで、該ポリオール残基は、該ポリ乳酸またはコ−ポリ−乳酸残基により囲まれる中心部分を構成し、そして該コ−ポリ−乳酸残基はグリコール酸を含む〕(星形高分子II)。
【0034】
他の好ましい担体は、2000から約7000の平均分子量を有するポリ乳酸を含む、ポリマーである。
【0035】
好ましい担体は、星形高分子I、星形高分子II、ポリ乳酸およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0036】
本発明の組成物で使用する担体の量は、0.01から約99重量%の範囲、好ましくは1−95重量%の範囲、より好ましくは10−90重量%の範囲、さらにより好ましくは15−85重量%の範囲、および20−80重量%の範囲である。
【0037】
他の経口投与可能な医薬組成物は、硬ゼラチンカプセルおよまた、ゼラチンとグリセロールまたはソルビトールのような可塑剤から成る軟、密封カプセルである。硬ゼラチンカプセルは、例えばラクトースのような増量剤、デンプンのような結合剤および/またはタルクまたはステアリン酸マグネシウムのような流動促進剤、および望むならば安定化剤と混合された、顆粒の形の活性成分を含み得る。軟カプセルにおいて、活性成分は、好ましくは脂肪油、パラフィン油または液体ポリエチレングリコールのような適当な液体に溶解または懸濁しており、同様に安定化剤を添加することが可能である。
【0038】
適当な直腸投与可能な医薬組成物は、例えば、活性成分と坐薬基剤の組み合わせから成る、坐薬である。適当な坐薬基剤は、例えば、天然または合成トリグリセリド、パラフィン炭化水素、ポリエチレングリコールまたは高級アルカノールである。活性成分と基剤物質の組み合わせを含む、ゼラチン直腸カプセルも使用し得る。適当な基剤物質は、例えば、液体トリグリセリド、ポリエチレングリコールおよびパラフィン炭化水素を含む。
【0039】
輸液および/または注射による非経腸投与に適しているのは、とりわけ水溶性形、例えば水溶性塩の形の活性成分の水溶液、および、また、脂肪油、例えばゴマ油、または合成脂肪酸エステル、例えばオレイル酸エチルまたはトリグリセリドのような適当な親油性溶媒または媒体を使用する対応する油状懸濁液、または、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールおよび/またはデキストランのような増粘物質、および所望によりまた安定化剤を含む水性懸濁液のような活性成分の懸濁液である。
【0040】
本化合物は、また、局所的に眼内または眼の周りに、例えば、点眼剤、眼用懸濁液または軟膏として、結膜下、球周囲、球後または硝子体内注射として、場合により、結膜インサート、ミクロスフェアまたは他の眼周囲または眼内デポー・デバイスのような徐放デバイスを使用して、投与し得る。
【0041】
本発明の他の如何なる対象も、本願の何れかの独立および/または従属請求項だけに記載されていてよく、したがって、それらは追加的に本明細書の補正のための基礎を形成し得る。
【0042】
化学実施例:
実施例1. ヘキサキス(3,6−アンヒドロ)−α−シクロデキストリンカリウムクロライド十五水和物の製造。
【0043】
新たに乾燥させたα−シクロデキストリン(48.6g、0.050mol)を、新たに開けたジメチルホルムアミド(800cm)に室温で溶解する。N−ブロモスクシンイミド(142.4g、0.80mol)、およびトリフェニルホスフィン(TPP)(148.6g、0.57mol)を、該溶液に室温で一度に添加する。反応物の色は、TPPを添加すると、オレンジ色様になる。反応温度はTPP添加の最後には、約100℃まで上昇する。反応混合物を予熱した(60−70℃)油浴に浸し、3時間、80−85℃で撹拌する。反応が完了したとき、反応混合物を冷たい水(3000cm)に注ぐ。数分超音波処理し、結晶化のために静置する(一晩)。黄色固体を濾過し、水(3回、500cm、pH=2−3、3−4、4−5)で洗浄し、Pの存在下、減圧下(5−10kPa)、中位の温度(40−45℃)で乾燥させる。得られた固体(250.6g)は、TPPOおよび臭素化α−シクロデキストリン類を含む。生成物をアンヒドロ−α−シクロデキストリンの製造のために、さらに精製することなく使用する。
【0044】
水酸化カリウム(112.2g、2.0mol)を、3:1 MeOH/HO(1500cm)に室温で溶解し、テトラブロモ−α−シクロデキストリン(250.6g)をさらに冷却することなくスプーンで添加する。反応混合物の色が消え、次いで不透明になるかまたは沈殿が形成し、固体の再溶解が観察され、溶液は再び黄色になり、それは長時間の加熱により褐色に変わる。反応は、添加が終了すると、実質的に完了する。60分後、反応混合物を冷却し、スターラーを除き、メタノールを蒸発により除去する。メタノールが除去したら、200cm 水を添加する。反応混合物にMeOHがないため、室温に冷却し濃HClで中和する(pH:〜5.5)。炭(20g)を懸濁液に添加し、1時間撹拌する。濾過し、水(3回、40cm)で洗浄し、水を凍結乾燥により除去する(25℃/0.06−0.1Pa)。得られた固体(明褐色固体220g)はKClおよびKBrを含む。TLCは、高い無機塩含量のために、組成物に関する情報がほとんどない。得られた生成物(220g)をMeOH(550cm)と30分還流し、結晶化のために静置する(一晩)。
【0045】
沈殿を濾取し、MeOH(2×100cm)で洗浄し、MeOHを蒸発により除去する(55−60℃/10−15kPa、次いで95−100℃/0.05−0.1kPa、暗褐色固体泡状物29.8g)。蒸発により得られた固体(59.6g)を水(1200cm)に溶解する。溶液のpHを、1N HCl(62cm)で調整し(pH:8.7=>5.5)、炭(15g)で浄化させ、25℃で撹拌し(一晩)、濾過し、水で洗浄し(3回、100cm)、水を除去する(58g、40℃/1−2kPa、次いで95−100℃/1−2kPa)。得られた油状物を水(60cm)に溶解し、結晶化させる。濾過により、KCl含量<11%、および水含量<30.0%、Mp:246−247℃[分解]、[α]25=−73.5(空気乾燥物質)、1水溶液の伝導性:〜1100μS/cmの、白色、結晶性固体(11.2g)を得る。
【0046】
実施例2. ヘキサキス(3,6−アンヒドロ)−α−シクロデキストリンの製造。
ヘキサキス(6−デオキシ−6−ブロモ)−α−シクロデキストリン(15.1g、0.01mol)を、3:1 MeOH/HO(1500cm)に室温で懸濁し、水酸化リチウム(10.0g、0.4mol)を添加し、加熱還流した。反応が完了したとき(約20時間)、反応混合物をドライアイスの添加により冷却する。形成した炭酸リチウムを濾取し、溶媒を蒸発により除去する。得られた固体をアセトン(100cm)で処理し、次いでメタノール(100cm)に溶解し、イオンを強アニオン−(25g)、続いてカチオン交換体(40g)の添加により除去する。無イオン溶液を炭(2g)で浄化し、メタノールの除去により、ほとんど白色の固体(3.0g)を得る。Mp:230−235℃、[α]25=−82.5(空気乾燥物質)、1水溶液の伝導性:〜25μS/cm。
【0047】
実施例3. ヘプタキス(3,6−アンヒドロ)−β−シクロデキストリンの製造
新たに乾燥させたβ−シクロデキストリン(22.7g、0.020mol)を、新たに開けたジメチルホルムアミド(400cm)に室温で溶解する。ヨウ素(81.2g、0.32mol)、およびトリフェニルホスフィン(78.2g、0.30mol)を一度に溶液に室温で、外部から冷却しながら添加する。反応温度を約80℃まで加熱し、および4時間、80−85℃で撹拌する。反応が完了したとき、DMFの大部分を蒸留により除去し、次いでメタノール(2000cm)に注ぎ、1週間、室温で結晶化させる。黄色固体を濾過し、メタノール(3×200cm)で洗浄し、Pの存在下、減圧下(5−10kPa)、中位の温度(40−45℃)で乾燥させる。得られた固体(34.3g、理論的収量の90%)は、TPPOを含まない。
【0048】
ヘプタキス(6−デオキシ−6−ヨード)−β−シクロデキストリン(10.8g、0.005mol)をジメチルスルホキシドに溶解し、水酸化ナトリウム(7.0g、0.175mol)を、撹拌しながら、10時間、70℃で添加する。反応混合物を室温に冷却し、イオン交換体(100gの強アニオン−および100gの強カチオン−交換体)で処理し、イオン交換体を濾過により除去し、DMSO(3回、100cm)で洗浄し、次いでDMSOを真空で除去し、得られた蝋状固体をアセトンで処理した。固体を濾取し、アセトンで洗浄した(薄黄色、4.8g)。Mp:230−235℃、[α]25=−85.5(空気乾燥物質)、1水溶液の伝導性:〜20μS/cm。
【0049】
実施例4. オクタキス(3,6−アンヒドロ)−γ−シクロデキストリンの製造
新たに乾燥させたγ−シクロデキストリン(25.9g、0.020mol)を、新たに開けたジメチルホルムアミド(400cm)に室温で溶解する。N−ブロモスクシンイミド(57.0g、0.32mol)、およびトリフェニルホスフィン(78.2g、0.30mol)を、溶液に、室温で一度に添加する。反応物の色は、TPPを添加すると、オレンジ色様になる。反応温度はTPP添加の最後には、約60℃まで上昇する。反応混合物を予熱した(70−80℃)油浴に浸し、4時間、80−85℃で撹拌する。反応が完了したとき、反応混合物を冷たい水(3000cm)。に注ぐ。数分超音波処理し、結晶化のために静置する(一晩)。黄色固体を濾過し、水で洗浄し(3回、200cm、pH=2−3、3−4、4−5)、Pの存在下、減圧下(5−10kPa)、中位の温度(40−45℃)で乾燥させる。得られた固体(229g)はTPPOおよび臭素化γ−シクロデキストリン類を含む。生成物をメタノールに溶解し、溶液のpHをpH9−10にナトリウムメトキシドで調整する。このpH−シフトが生成物の結晶沈殿をもたらす。結晶物質を濾過により除去する(28.8g、理論的収量の80%)。
【0050】
オクタキス(6−デオキシ−6−ブロモ)−γ−シクロデキストリン(10.8g、0.006mol)をジメチルスルホキシドに溶解し、水酸化リチウム(6.0g、0.24mol)を10時間、70℃で撹拌しながら添加する。反応混合物を室温に冷却し、イオン−交換体(100gの強アニオン−および100gの強カチオン−交換体)で処理し、イオン−交換体を濾過により除去し、DMSO(3回、100cm)で洗浄し、次いでDMSOを真空で除去し、得られた蝋状固体をアセトンで処理した。固体を濾取し、アセトンで洗浄した(薄黄色、4.3g)。Mp:230−235℃、[α]25=−92.5(空気乾燥物質)、1水溶液の伝導性:〜10μS/cm。
【0051】
生物学的実施例:
ジクロフェナック(ボルタレン)製剤での角膜浸透実験
1)チメロサール(thiomersal)を伴わないジクロフェナック0.1%(市販のVoltaren Ophtha製剤、SDUと類似)
【表1】

【0052】
2)2%HP−γ−CDを伴い、BACを伴わないジクロフェナック0.1%
【表2】

【0053】
3)2%ヘキサキス−(3,6−アンヒドロ)−α−CDを伴い、BACを伴わないジクロフェナック0.1%
【表3】

【0054】
4)2%ヘプタキス−(3,6−アンヒドロ)−β−CDを伴い、BACを伴わないジクロフェナック0.1%
【表4】

【0055】
5)2%オクタキス−(3,6−アンヒドロ)−γ−CDを伴い、BACをともなわn相ジクロフェナック0.1%
【表5】

BAC=塩化ベンザルコニウム
HP−γ−CD=ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン
QA−β−CD:4級アンモニウムβ−シクロデキストリン
【0056】
上記実験において[項目2)&項目3、4および5)]、薬剤浸透における効果を、先行文献の情況(HP−γ−CD)と、本発明の態様、すなわちヘキサキス−(3,6−アンヒドロ)−α−CD、ヘプタキス−(3,6−アンヒドロ)−β−CDおよびオクタキス−(3,6−アンヒドロ)−γ−CDに関して、直接比較可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペル(3,6−アンヒドロ)シクロデキストリン、薬学的に有効な薬剤および担体を含む、医薬組成物。
【請求項2】
該ペル(3,6−アンヒドロ)シクロデキストリンが、ヘキサキス(3,6−アンヒドロ)−α−シクロデキストリン、ヘプタキス(3,6−アンヒドロ)−β−シクロデキストリン、オクタキス(3,6−アンヒドロ)−γ−シクロデキストリン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
該組成物が局所投与に適している、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
該ペルアンヒドロシクロデキストリンの量が全組成物の0.01−80重量%である、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
該組成物が眼内または眼の周囲への投与に適している、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
薬学的に有効な薬剤の生体内利用能の増強における、ペル(3,6−アンヒドロ)シクロデキストリンの使用。
【請求項7】
薬学的に有効な薬剤の生体内利用能の増強のための、医薬の製造における、ペル(3,6−アンヒドロ)シクロデキストリンの使用。
【請求項8】
組織を通る薬剤透過性を改善する方法であり、
有効量のペル(3,6−アンヒドロ)シクロデキストリン、有効量の薬剤、担体、ならびに所望により緩衝剤、張性増強剤(tonicity enhancing agent)、防腐剤、可溶化剤、安定化剤/可溶化剤および錯化剤からなる群から選択される1個またはそれ以上のさらなる成分を通常の混合し;そして
該ペル(3,6−アンヒドロ)シクロデキストリンを含む該医薬組成物を、該組織に投与する:
工程を含む、方法。
【請求項9】
該組織が粘膜組織ならびに角膜上皮細胞および結膜細胞のような眼組織である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
有効量のペル(3,6−アンヒドロ)シクロデキストリン、有効量の薬剤、および担体を通常の混合することを含む、薬学的に有効な薬剤の生体内利用能を増強する方法。


【公表番号】特表2009−513511(P2009−513511A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518099(P2006−518099)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【国際出願番号】PCT/EP2004/007253
【国際公開番号】WO2005/004922
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】