説明

ペルオキシダーゼ測定用化学発光試薬キット

【課題】
高精度に生体中の超微量物質を測定するための化学発光試薬キットを提供することである。
【解決手段】
フッ素原子含有界面活性剤(a)、2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン化合物(b)及び化学発光増強剤(c)を必須構成成分としてなる第1液と、
酸化剤(d)及び水(e)を必須構成成分としてなる第2液とを含んでなることを特徴とするペルオキシダーゼ測定用化学発光試薬キットを用いる。フッ素原子含有界面活性剤(a)は、パーフルオロアルキルアミンオキシド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物及びパーフルオロアルキルカルボン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペルオキシターゼ測定用化学発光試薬キットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生じる発光をより増強するために、界面活性剤を添加したペルオキシターゼ測定用化学発光試薬キット(特許文献1)、卵白アルブミンを添加したペルオキシターゼ測定用化学発光試薬キット(特許文献2)、フラーレンを添加したペルオキシターゼ測定用化学発光試薬キット(特許文献3)が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開平08−261943号公報
【特許文献2】特開2002−323495号公報
【特許文献3】特開2003−254973号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のペルオキシターゼ測定用化学発光試薬キットでは、近年益々超微量化する生体中の分析対象物質を正確に測定することが困難となってきている。すなわち本発明の目的は、高精度に生体中の超微量物質を測定するための化学発光試薬キットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のペルオキシダーゼ測定用化学発光試薬キットの特徴は、フッ素原子含有界面活性剤(a)、2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン化合物(b)及び化学発光増強剤(c)を必須構成成分としてなる第1液と、
酸化剤(d)及び水(e)を必須構成成分としてなる第2液とを含んでなることを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のペルオキシダーゼ測定用化学発光試薬キットを用いると、高精度に生体中の超微量物質を測定することができる。特に近年益々高感度が要求される前立腺摘出後患者血清中のPSA(ヒト前立腺特異抗原)の測定を高感度に行うことができ、たとえば、術後のPSA値のモニタリングに貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
フッ素原子含有界面活性剤(a)としては、フッ素原子を含む界面活性剤であれば制限なく使用できる。
フッ素原子含有界面活性剤(a)に含まれるフッ素原子の個数としては、7〜43が好ましく、さらに好ましくは11〜39、特に好ましくは15〜35である。
フッ素原子含有界面活性剤(a)としては、パーフルオロアルキル基を持つ界面活性剤等が含まれ、フッ素原子含有界ノニオン面活性剤(a1)及びフッ素原子含有アニオン界面活性剤(a2)及びこれらの混合物等が使用できる。
【0008】
フッ素原子含有ノニオン界面活性剤(a1)としては、パーフルオロアルキルアミンオキシド及びパーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物等が含まれる。
アルキル基としては、直鎖、分岐又は環状の何れでもよいが、直鎖アルキル及び分岐アルキルが好ましく、さらに好ましくは直鎖アルキルである(以下、同様である。)。
【0009】
パーフルオロアルキルアミンオキシドとしては、式(1)で表される化合物が含まれる。
【化1】

eは0〜20の整数を表し、1〜18の整数が好ましく、さらに好ましくは2〜12の整数である。また、fは0〜5の整数を表し、1〜4の整数が好ましく、さらに好ましくは1〜2の整数である。また、Rは炭素数1〜6のアルキルを表し、メチル、エチル及びプロピルが好ましく、さらに好ましくはメチルである(2つのRは同じでも異なってもよい)。Cは炭素原子、Fはフッ素原子、Hは水素原子、Nは窒素原子、Oは酸素原子を表す(以下同様である。)。
【0010】
パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物としては、式(2)で表される化合物が含まれる。
【化2】


gは0〜20の整数を表し、1〜18の整数が好ましく、さらに好ましくは2〜12の整数である。また、hは0〜5の整数を表し、1〜4の整数が好ましく、さらに好ましくは1〜2の整数である。また、iは1〜12の整数を表し、2〜10の整数が好ましく、さらに好ましくは2〜8の整数である。
【0011】
フッ素原子含有アニオン界面活性剤(a2)としては、パーフルオロアルキルカルボン酸塩及びパーフルオロアルキルリン酸エステル等が含まれる。
パーフルオロアルキルカルボン酸塩としては、式(3)で表される化合物が含まれる。
【化3】

jは0〜20の整数を表し、1〜18の整数が好ましく、さらに好ましくは2〜12の整数である。また、kは0〜5の整数を表し、1〜4の整数が好ましく、さらに好ましくは1〜2の整数である。また、Mはアルカリ金属(リチウム、カリウム及びナトリウム等)イオン、アンモニウムイオン、炭素数1〜8のアルキルアンモニウムイオン(メチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム等)を表し、アルカリ金属イオンが好ましく、さらに好ましくはナトリウムイオンである(以下、同様である。)。
【0012】
パーフルオロアルキルリン酸エステルとしては、式(4)で表される化合物が含まれる。
【化4】

mは0〜20の整数を表し、1〜18の整数が好ましく、さらに好ましくは2〜12の整数である。また、nは0〜5の整数を表し、1〜4の整数が好ましく、さらに好ましくは1〜2の整数である。
【0013】
これらのフッ素原子含有界面活性剤のうち、化学発光増強効果及び保存安定性等の観点から、パーフルオロアルキルアミンオキシド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物及びパーフルオロアルキルカルボン酸塩が好ましく、さらに好ましくはパーフルオロアルキルアミンオキシド及びパーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、特に好ましくはパーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物である。
【0014】
フッ素原子含有界面活性剤(a)の含有量はその種類及び適用する測定方法や測定条件等によって適宜設定されるが、化学発光増強効果及び保存安定性等の観点から、以下の範囲が好ましい。
すなわち、フッ素原子含有界面活性剤(a)の含有量(モル%)は、フッ素原子含有界面活性剤(a)、2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン化合物(b)及び化学発光増強剤(c)のモル数に基づいて、3〜54が好ましく、さらに好ましくは5〜51、特に好ましくは7〜48である。
【0015】
2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン化合物(b)としては、公知{たとえば、特開平2−291299号、特開平10−319015号、特開2000−279196号の各公報等}の化合物及びこれらの混合物等が使用できる。これらのうち、ルミノール、イソルミノール、N−アミノヘキシル−N−エチルイソルミノール(AHEI)、N−アミノブチル−N−エチルイソルミノール(ABEI)及びこれらの金属塩が好ましく、さらに好ましくはルミノール及びルミノールの金属塩、特に好ましくはルミノールのナトリウム塩である。
【0016】
2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン化合物(b)の含有量はその種類及び適用する測定方法や測定条件等によって適宜設定されるが、化学発光増強効果等の観点から、以下の範囲が好ましい。
すなわち、2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン化合物(b)の含有量(モル%)は、フッ素原子含有界面活性剤(a)、2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン化合物(b)及び化学発光増強剤(c)のモル数に基づいて、14〜95が好ましく、さらに好ましくは20〜92、特に好ましくは26〜89である。
【0017】
化学発光増強剤(c)としては、公知{例えば、特開昭59−500252号、特開昭59−171839号、特開平2−291299号の各公報等}の化合物及びこれらの混合物等が使用できる。これらのうち、化学発光増強効果等の観点から、フェノールが好ましく、さらに好ましくはP−ヨードフェノール、4−(シアノメチルチオ)フェノール及び4−シアノメチルチオ−2−クロロフェノール、特に好ましくは4−(シアノメチルチオ)フェノールである。
【0018】
化学発光増強剤(c)の含有量はその種類及び適用する測定方法や測定条件等によって適宜設定されるが、化学発光増強効果等の観点から、以下の範囲が好ましい。
すなわち、化学発光増強剤(c)の含有量(モル%)は、フッ素原子含有界面活性剤(a)、2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン化合物(b)及び化学発光増強剤(c)のモル数に基づいて、2〜32が好ましく、さらに好ましくは3〜29、特に好ましくは4〜26である。
【0019】
第1液には、フッ素原子含有界面活性剤(a)、2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン化合物(b)及び化学発光増強剤(c)以外に、緩衝液及び/又はキレート剤等を含むことができる。
【0020】
緩衝液としては、公知(たとえば、特開平10−319015号公報又は特開2003−279489号公報)の緩衝液等が使用できる。これらのうち、化学発光増強効果及び保存安定性等の観点から、3−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]プロパンスルホン酸/水酸化ナトリウム緩衝液、2−ヒドロキシ−3−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]プロパンスルホン酸・1水和物/水酸化ナトリウム緩衝液及びピペラジニル−1,4−ビス(2−ヒドロキシ−3−プロパンスルホン酸)・2水和物/水酸化ナトリウム緩衝液が好ましく、さらに好ましくは3−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]プロパンスルホン酸/水酸化ナトリウム緩衝液及び2−ヒドロキシ−3−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]プロパンスルホン酸・1水和物/水酸化ナトリウム緩衝液、特に好ましくは3−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]プロパンスルホン酸/水酸化ナトリウム緩衝液である。
これらの緩衝液中の緩衝剤の濃度(mM:ミリモル/リットル)としては、1〜500が好ましく、さらに好ましくは5〜300、特に好ましくは10〜200である。
【0021】
緩衝液を含有する場合、この含有量(重量%)は、フッ素原子含有界面活性剤(a)の重量に基づいて、20〜10000が好ましく、さらに好ましくは100〜2000、特に好ましくは200〜1000である。この範囲であると、化学発光増強効果及び保存安定性がさらに良好となる。
【0022】
キレート剤としては、公知(たとえば、特開平9−75099号公報又は特開2003−279489号公報)のキレート剤が使用できる。これらのうち、化学発光増強効果及び保存安定性等の観点から、4配位キレート剤が好ましく、さらに好ましくはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びこの塩(エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸三ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二カリウム及びエチレンジアミン四酢酸三カリウム等)、並びにトランス−1,2ジアミノシクロヘキサン−N,N,N’,N’−四酢酸(CyDTA)、特に好ましくはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びこの塩である。
【0023】
キレート剤を含有する場合、この含有量(重量%)は、フッ素原子含有界面活性剤(a)の重量に基づいて、0.001〜4が好ましく、さらに好ましくは0.01〜2、特に好ましくは0.05〜1である。この範囲であると、化学発光増強効果及び保存安定性がさらに良好となる。
【0024】
第1液は、アルカリ性であることが好ましく、さらに好ましくはpH(20℃)7〜11であること、特に好ましくはpH(20℃)8〜10であることである。
なお、pHは、JIS K0400−12−10:2000に準拠して測定される。
【0025】
第1液は、フッ素原子含有界面活性剤(a)、2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン化合物(b)、化学発光増強剤(c)、並びに必要により、緩衝液及び/又はキレート剤を均一混合することにより容易に得られる。
【0026】
酸化剤(d)としては、公知(たとえば、特開平8−261943号公報及び特開2000−279196号公報に記載)の酸化剤及びこれらの混合物等が使用できる。これらのうち、保存安定性等の観点から、過酸化水素、過ホウ酸ナトリウム及び過ホウ酸カリウムが好ましく、さらに好ましくは過酸化水素である。
【0027】
酸化剤(d)の濃度は、その種類及び適用する測定方法や測定条件等によって適宜設定されるが、化学発光増強効果等の観点から、以下の範囲が好ましい。
すなわち、第2液中の酸化剤(d)の濃度(mM;ミリモル/リットル)は、0.1〜50が好ましく、さらに好ましくは0.5〜20、特に好ましくは1〜10である。
【0028】
水(e)としては、蒸留水、逆浸透水及び脱イオン水等が挙げられる。これらのうち、化学発光増強効果及び保存安定性等の観点から、蒸留水及び脱イオン水が好ましく、さらに好ましくは脱イオン水である。
【0029】
第2液には、酸化剤(d)及び水(e)以外に、キレート剤等を含むことができる。
キレート剤を含有する場合、この含有量(重量%)は、酸化剤(d)の重量に基づいて、0.2〜100が好ましく、さらに好ましくは0.5〜20、特に好ましくは1〜10である。この範囲であると、化学発光増強効果及び保存安定性がさらに良好となる。
第2液は、酸化剤(d)をそのまま用いるか、水で濃度調整することにより、また必要によりキレート剤を加えて均一混合することにより容易に得られる。
【0030】
本発明のペルオキシダーゼ測定用化学発光試薬キットは、公知{たとえば、特開平2−291299号、特開平10−319015号、特開2000−279196号の各公報等}の化学発光試薬キットと同様にして使用できる。発光反応は、ペルオキシダーゼを含む検体に、第1液及び第2液を添加・混合することにより進行する。添加方法としては、ペルオキシダーゼを含む検体に、第1液を添加し、続いて第2液を添加する方法(1)、ペルオキシダーゼを含む検体に、第2液を添加し、続いて第1液を添加する方法(2)、ペルオキシダーゼを含む検体に、第1液及び第2液を同時に添加する方法(3)、第1液及び第2液を混合した後、この混合液を、ペルオキシダーゼを含む検体に添加する方法(4)が挙げられる。これらのうち、操作性及び化学発光増強効果等の観点から、ペルオキシダーゼを含む検体に、第1液及び第2液を同時に添加する方法(3)が好ましい。
第1液と第2液との液量比は、適用する測定方法や測定条件等によって適宜設定されるが、操作性等の観点から、同じ体積量とすることが好ましい。
【0031】
本発明の化学発光試薬キットは、ペルオキシダーゼを利用した測定法;酵素免疫測定法;核酸プローブを用いてゲノム中の標的核酸を化学発光で検出する方法;サザンブロット法及びノーザンブロット法に使用でき、これらのうち、酵素免疫測定法;サザンブロット法及びノーザンブロット法に好適であり、酵素免疫測定法に最適である。
【0032】
本発明のペルオキシダーゼ測定用化学発光試薬キットには、第1液及び第2液以外に、標識抗体試薬や抗体結合固相試薬等を含むことができる。例えば、ペルオキシダーゼを利用した酵素免疫測定法(特開2004−264294号、特開2004−208693号等)に使用される試薬等を含むことができる。
【0033】
ペルオキシターゼ測定に用いるペルオキシダーゼとしては、通常のもの{西洋ワサビ、微生物、牛乳、白血球等から抽出したペルオキシダーゼ}等が使用できる。これらのうち、西洋ワサビ由来のペルオキシダーゼである。
なお、ペルオキシダーゼは、遊離の状態であっても、免疫測定において用いられるような配位子(例えば、抗原、抗体、ハプテン、プロテインA、アビジン及びビオチン等)と結合した複合体の状態であってもよい。
【0034】
本発明のペルオキシダーゼ測定用化学発光試薬キットを用いると、高精度に生体中の超微量物質(数pg/mL〜数十pg/mL)を測定することができる。超微量物質としては、たとえば、PSA(ヒト前立腺特異抗原)、ProGRP(ガストリン放出ペプチド前駆体)及びBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)等含まれる。特に、PSAに関しては、前立腺摘出後患者のPSA値が術後の経過観察(モニタリング)に使用されており、近年益々高感度が要求されている。本発明の化学発光試薬キットを用いることにより、高精度なモニタリングができ、術後患者のケアに貢献できる。
【0035】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、特記しない限り、部は重量部、%は重量%を意味する。
<合成例1>
CF3−(CF23−(CH22−OH{ダイキン化成品販売(株)製、2−(パーフルオロブチル)エタノール}100部及び水酸化カリウム{和光純薬工業(株)製、試薬特級}0.5部及びエチレンオキシド400部を用いて、常法により、160℃、3時間反応させた後、水酸化カリウムを吸着除去(キョーワード処理)して、パーフルオロアルキルエチレンオキシド8モル付加物(a11)を得た。
【0036】
<合成例2>
CF3−(CF23−(CH22−OH{ダイキン化成品販売(株)製、2−(パーフルオロブチル)エタノール}100部及び水900部及び水酸化カリウム{和光純薬工業(株)製、試薬特級}10部を混合し、次いで過マンガン酸カリウム{和光純薬工業(株)製、試薬特級}5部を用いて、常法により、120℃、5時間反応させた後、水酸化カリウム及び二酸化マンガン等を吸着除去(キョーワード処理)して、パーフルオロアルキルカルボン酸カリウム塩(a21)を得た。
【0037】
<合成例3>
合成例2で得られたパーフルオロアルキルカルボン酸カリウム塩(a21)100部及びエタノール20部及び硫酸{和光純薬工業(株)製、試薬特級}1部及びシクロヘキサン50部を用いて、常法により、75℃、6時間反応させ、蒸留操作によりパーフルオロアルキルカルボン酸エステルを得た。
次に、得られたパーフルオロアルキルカルボン酸エステル100部及びジメチルアミン塩酸塩{和光純薬工業(株)製、純度98%}20部を用いて、常法により、30℃、1時間反応させ、パーフルオロアルキルアミドを得た。
更に、得られたパーフルオロアルキルアミド100部及び水100部及び過酸化水素水{和光純薬工業(株)製、試薬特級、純度30%}10部を用いて、常法により、50℃、10時間反応させ、パーフルオロアルキルアミンオキシド化合物(a12)を得た。
【0038】
<合成例4>
CF3−(CF23−(CH22−OH{ダイキン化成品販売(株)製、2−(パーフルオロブチル)エタノール}100部及びオキシ塩化リン{ナカライテスク(株)製、試薬1級、純度98%}70部を混合し、常法により、20℃、1時間反応させた後、水100部を加え、パーフルオロアルキルリン酸を得た。次いで、水酸化ナトリウム{和光純薬工業(株)製、試薬特級}100部を加え、20℃、1時間反応させた後、パーフルオロアルキルリン酸ナトリウム塩(a22)を得た。
【0039】
<合成例5>
「CF3−(CF23−(CH22−OH」を「CF3−(CF29−(CH22−OH{ダイキン化成品販売(株)製、2−(パーフルオロデシル)エタノール}」に変更したこと以外、合成例1と同様にして、パーフルオロアルキルエチレンオキシド8モル付加物(a13)を得た。
【0040】
<合成例6>
「CF3−(CF23−(CH22−OH」を「CF3−(CF29−(CH22−OH{ダイキン化成品販売(株)製、2−(パーフルオロデシル)エタノール}」に変更したこと以外、合成例2と同様にして、パーフルオロアルキルカルボン酸カリウム塩(a23)を得た。
【0041】
<合成例7>
「CF3−(CF23−(CH22−OH」を「CF3−(CF29−(CH22−OH{ダイキン化成品販売(株)製、2−(パーフルオロデシル)エタノール}」に変更したこと、「エタノール20部」を「エタノール8部」に変更したこと、及び「ジメチルアミン20部」を「ジメチルアミン8部」に変更したこと以外、合成例3と同様にして、パーフルオロアルキルアミンオキシド化合物(a14)を得た。
【0042】
<合成例8>
「CF3−(CF23−(CH22−OH」を「CF3−(CF29−(CH22−OH{ダイキン化成品販売(株)製、2−(パーフルオロデシル)エタノール}」に変更したこと、及び「オキシ塩化リン70部」を「オキシ塩化リン28部」に変更したこと以外、合成例4と同様にして、パーフルオロアルキルリン酸ナトリウム塩(a24)を得た。
【0043】
<実施例1>
以下のようにして、本発明のペルオキシターゼ測定用化学発光試薬キットを得た{第1液、第2液、抗PSAポリクローナルウサギ抗体結合ビーズ試薬及びペルオキシダーゼ標識抗PSAポリクローナルウサギ抗体試薬から構成される。}。
1)第1液の調製
ルミノールのナトリウム塩(b1)2.8部、4−(シアノメチルチオ)フェノール(c1)0.56部、パーフルオロアルキルエチレンオキシド8モル付加物(a11)3部、3−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]プロパンスルホン酸/水酸化ナトリウム緩衝液(36.2mM、pH8.6)1000部を均一混合して、第1液(A1)を調製し、測定に用いるまで冷蔵(2〜10℃)保存した。
【0044】
2)第2液の調製
脱イオン水1Lに、過酸化水素{和光純薬工業(株)製、試薬特級、30%}を0.14部溶解して、第2液を調製し、測定に用いるまで冷蔵(2〜10℃)保存した。
【0045】
3)抗PSAポリクローナルウサギ抗体結合ビーズ試薬の調製
抗PSAポリクローナルウサギ抗体{ダコ・サイトメーション(株)製}をpH9の0.1M炭酸緩衝液に20μg/mLの濃度で溶解した。この溶液50mLに直径3.2mmのポリスチレンビーズ(イムノケミカル(株)製)2,000個を加え、48時間静置して、ポリスチレンビーズに抗PSAポリクロナールウサギ抗体を物理吸着させた。
その後、溶液をアスピレーターで吸引除去し、50mLの0.1%牛血清アルブミン含有リン酸緩衝液でビーズを2回洗浄し、抗PSAポリクロナールウサギ抗体結合ビーズを調製した。この抗PSAポリクロナールウサギ抗体結合ビーズを再度50mLの0.1%牛血清アルブミン含有リン酸緩衝液に浸漬し、抗PSAポリクローナルウサギ抗体結合ビーズ試薬を調製して、冷蔵(2〜10℃)保存した。
【0046】
4)ペルオキシダーゼ標識抗PSAポリクローナルウサギ抗体試薬の調製
抗PSAポリクローナルウサギ抗体{ダコ・サイトメーション(株)製}、西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼ(東洋紡(株)製)を用い、文献[エス・ヨシタケ、エム・イマガワ、イー・イシカワ、エトール;ジェイ.バイオケム,Vol.92(1982)1413−1424]に記載の方法でペルオキシダーゼ標識抗PSAポリクローナルウサギ抗体試薬を調製し、冷凍(−25〜−35℃)保存した。
【0047】
次いで、本発明のペルオキシターゼ測定用化学発光試薬キットを用いて、以下のようにして、化学発光量を測定し、その結果を表1に示した{以下、同様にして測定し、結果を表1に示した。}。
標準PSA溶液1μL(PSA濃度100ng/mL){三洋化成工業(株)製、商品名:スフィアライトPSAキャリブレーターセット}と、1%牛血清アルブミン含有リン酸緩衝液999μLとを混合し、測定用試料を調整した。この測定用試料300μLと、抗PSAポリクローナルウサギ抗体結合ビーズ試薬からピンセットを用いて取り出したビーズ1個とを、試験管(12×75mm)内で1時間反応(37℃)させた。
引き続き、試験管内から反応液をアスピレータで除去した後、生理食塩水1mLを加えてビーズを洗浄し、洗浄液をアスピレーターで除去して、反応ビーズを得た。
次に、ペルオキシダーゼ標識抗PSAポリクローナルウサギ抗体試薬を1%牛血清アルブミン含有リン酸緩衝液で抗体濃度として1μg/mLの濃度に希釈し、標識抗体液を調製した。この標識抗体液300μLを、反応ビーズの入った試験管に加え、37℃、1時間反応させた。反応液をアスピレーターで除去し、生理食塩水1mLを加えビーズを洗浄し、洗浄液をアスピレーターで除去して、洗浄ビーズを得た。
洗浄ビーズが入った試験管をアロカ社製ルミネッセンスリーダーBLR−201型のサンプルホルダーにセットし、試験管内に第1液200μL及び第2液200μLを同時に加え化学発光反応を開始した。
化学発光反応の開始40秒後から10秒間の発光量(積算量)を計測し、この積算量を酵素活性を示す発光量(C)とした。
なお、標準PSA溶液1μLの代わりに1%牛血清アルブミン含有リン酸緩衝液1μLを用いて同様に測定した場合の発光量を、ブランクの発光量(D)とした。また、酵素活性を示す発光量(C)を、ブランクの発光量(D)で除した比(C/D)を測定感度とした。
【0048】
<実施例2>
「パーフルオロアルキルエチレンオキシド8モル付加物(a11)」を「パーフルオロアルキルアミンオキシド化合物(a12)」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明のペルオキシターゼ測定用化学発光試薬キットを得た{第1液、第2液、抗PSAポリクローナルウサギ抗体結合ビーズ試薬及びペルオキシダーゼ標識抗PSAポリクローナルウサギ抗体試薬から構成される。}。
【0049】
<実施例3>
「パーフルオロアルキルエチレンオキシド8モル付加物(a11)」を「パーフルオロアルキルカルボン酸カリウム塩(a21)」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明のペルオキシターゼ測定用化学発光試薬キットを得た{第1液、第2液、抗PSAポリクローナルウサギ抗体結合ビーズ試薬及びペルオキシダーゼ標識抗PSAポリクローナルウサギ抗体試薬から構成される。}。
【0050】
<実施例4>
「パーフルオロアルキルエチレンオキシド8モル付加物(a11)」を「パーフルオロアルキルリン酸ナトリウム塩(a22)」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、
本発明のペルオキシターゼ測定用化学発光試薬キットを得た{第1液、第2液、抗PSAポリクローナルウサギ抗体結合ビーズ試薬及びペルオキシダーゼ標識抗PSAポリクローナルウサギ抗体試薬から構成される。}。
【0051】
<実施例5>
「パーフルオロアルキルエチレンオキシド8モル付加物(a11)」を「パーフルオロアルキルエチレンオキシド8モル付加物(a13)」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明のペルオキシターゼ測定用化学発光試薬キットを得た{第1液、第2液、抗PSAポリクローナルウサギ抗体結合ビーズ試薬及びペルオキシダーゼ標識抗PSAポリクローナルウサギ抗体試薬から構成される。}。
【0052】
<実施例6>
「パーフルオロアルキルエチレンオキシド8モル付加物(a11)」を「パーフルオロアルキルアミンオキシド化合物(a14)」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明のペルオキシターゼ測定用化学発光試薬キットを得た{第1液、第2液、抗PSAポリクローナルウサギ抗体結合ビーズ試薬及びペルオキシダーゼ標識抗PSAポリクローナルウサギ抗体試薬から構成される。}。
【0053】
<実施例7>
「パーフルオロアルキルエチレンオキシド8モル付加物(a11)」を「パーフルオロアルキルカルボン酸カリウム塩(a23)」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明のペルオキシターゼ測定用化学発光試薬キットを得た{第1液、第2液、抗PSAポリクローナルウサギ抗体結合ビーズ試薬及びペルオキシダーゼ標識抗PSAポリクローナルウサギ抗体試薬から構成される。}。
【0054】
<実施例8>
「パーフルオロアルキルエチレンオキシド8モル付加物(a11)」を「パーフルオロアルキルリン酸ナトリウム塩(a24)」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明のペルオキシターゼ測定用化学発光試薬キットを得た{第1液、第2液、抗PSAポリクローナルウサギ抗体結合ビーズ試薬及びペルオキシダーゼ標識抗PSAポリクローナルウサギ抗体試薬から構成される。}。
【0055】
<比較例>
ルミノールのナトリウム塩2.8部、4−(シアノメチルチオ)フェノール0.56部、及び3−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]プロパンスルホン酸/水酸化ナトリウム緩衝液(36.2mM、pH8.6)1000部を均一混合して、第1液(H1)を調製し、測定に用いるまで冷蔵(2〜10℃)保存した。
この第1液を、実施例1の第1液と変更した以外、実施例1と同様にして、比較用のペルオキシターゼ測定用化学発光試薬キットを得た{第1液、第2液、抗PSAポリクローナルウサギ抗体結合ビーズ試薬及びペルオキシダーゼ標識抗PSAポリクローナルウサギ抗体試薬から構成される。}。
【0056】
【表1】

【0057】
本発明のペルオキシターゼ測定用化学発光試薬キットを用いると、比較用の化学発光試薬キットを用いた場合に比べて著しく発光量が高かった(高感度であった。)。特に実施例5〜6において、極めて高い感度を示した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素原子含有界面活性剤(a)、2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン化合物(b)及び化学発光増強剤(c)を必須構成成分としてなる第1液と、
酸化剤(d)及び水(e)を必須構成成分としてなる第2液とを含んでなることを特徴とするペルオキシダーゼ測定用化学発光試薬キット。
【請求項2】
フッ素原子含有界面活性剤(a)が、パーフルオロアルキルアミンオキシド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物及びパーフルオロアルキルカルボン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のペルオキシダーゼ測定用化学発光試薬キット。

【公開番号】特開2008−54585(P2008−54585A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−235603(P2006−235603)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】