説明

ペンシルポイント針の誤穿刺防止具

【課題】 ペンシルポイント針の構造に適合した誤穿刺防止具を提案する。
【解決手段】 円柱部22と円錐部24とからなり、軸心に針挿通孔26を貫通した樹脂ガイド体20を形成し、筒状部34から先方へ延びる爪片35が先端を軸心に揃えて閉じた状態とし、同じく筒状部34から先方へ延び、軸心に向かって傾斜し、爪片35の先端位置から先方位置で頭部36aをくの字に曲げたストッパー片36を設けた金属保持体30を形成し、筒状部34が嵌入される筒状側壁部42と、中心に針貫通孔43を開孔した底壁44とからなる樹脂ケース体40を形成する。誤穿刺防止具は、金属保持体30に樹脂ガイド体20を嵌入し、これに樹脂ケース体40を被せて組み立て、ペンシルポイント針に装着し、ペンシルポイント針の使用後に針先へ移動させ、爪片35の先端が開口14内に没入して係止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、先端にペンシルポイント状の刃先を形成したペンシルポイント針に装着し、使用済みのペンシルポイント針の刃先を保護して誤穿刺事故を防ぐためのペンシルポイント針の誤穿刺防止具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療用麻酔針として、特許文献1や特許文献2に示すペンシルポイント針が用いられている。ペンシルポイント針は、外径が一様な直管部の先端に円錐状(ペンシルポイント状)の刃先を形成し、針先に近接した側壁に、薬液を吐出するやや長孔の開口を形成している。特許文献1に示すペンシルポイント針は、刃先から直管部に移行する部分に開口を形成し、特許文献2に示すペンシルポイント針は、開口全体を円錐状の刃先部分に形成したものである。
【0003】
一方、こうしたペンシルポイント針は、他の患者への感染・汚染を防ぐため、使い捨て廃棄処分されるが、使用済みのペンシルポイント針で医療従事者が誤穿刺事故を生じる危険がある。医療用穿刺針の誤穿刺防止手段としては、特許文献3に示すように、針先が貫通する針通路を形成した収納部材を針に装着する手段が一般に用いられている。これは、収納部材の針通路より針先が突出した使用位置の状態で針を患者等に穿刺し、使用後に、収納部材を移動させて使用済位置に位置させ、針先を収納部材内に収容することにより、誤穿刺事故を防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−277155号公報
【特許文献2】特開2008−237511号公報
【特許文献3】特開2010−300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
こうした針に装着した収納部材を移動させ、針先を収納して誤穿刺事故を防止する手段では、収納部材を使用済位置を越えて移動させると、収納部材が針先から脱落し、再び針先が露出してしまう。そのため、特許文献3では、針先の近接位置に環状突起を形成し、この環状突起に収納部材が係止されて針先からの脱落が防止されている。しかし、こうした手段をペンシルポイント針に適用するには針自体に加工を要するので不適であり、ペンシルポイント針の構造に適合した誤穿刺防止手段が求められている。
【0006】
この発明は、ペンシルポイント針に装着し、ペンシルポイント針の使用後に針先へ移動させて針先から脱落することがなく、針先が露出することもなく、医療従事者の誤穿刺事故を確実に防止することができるペンシルポイント針の誤穿刺防止具を提案することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
直管部10の先端に円錐状の刃先12を形成し、針先に近接した側壁に、薬液を吐出する開口14を形成したペンシルポイント針に装着する誤穿刺防止具であって、円柱部22と、この円柱部22から先細る円錐部24とからなり、軸心に針挿通孔26を貫通した樹脂ガイド体20を形成し、薄板金属板32で形成され、円柱部22が嵌入される筒状部34から先方へ延び、周方向に複数並んだ爪片35が先端を軸心に揃えて閉じた状態とするとともに、同じく筒状部34から先方へ延び、軸心に向かって傾斜し、爪片35の先端位置から間隔を有する先方位置で頭部36aをくの字に曲げたストッパー片36を設けた金属保持体30を形成し、筒状部34が嵌入される筒状側壁部42と、中心に針貫通孔43を開孔した底壁44とからなる樹脂ケース体40を形成する。金属保持体30に樹脂ガイド体20を嵌入し、これに樹脂ケース体40を被せ、樹脂ケース体40内に金属保持体30を収納し、円柱部22と筒状側壁部42とで筒状部34を挟持した状態で組み立てる。そして、直管部10が針挿通孔26及び針貫通孔43を貫通してペンシルポイント針に装着され、ペンシルポイント針の使用後に針先へ移動させ、爪片35の先端が開口14内に没入して係止され、この状態からペンシルポイント針を前進させると、針先が頭部36aに当接して前進を阻止するものである。
【0008】
また、上記の薄板金属板32としてステンレス鋼を用いるものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明のペンシルポイント針の誤穿刺防止具は、ペンシルポイント針の使用後に針先へ移動させ、爪片35の先端が開口14内に没入して係止され、誤穿刺防止具が確実な手応えを得て停止する。したがって、さらに誤穿刺防止具を移動させて針先から脱落することがない。この状態からペンシルポイント針を前進させると、針先が頭部36aに当接して前進が阻止され、針貫通孔43から刃先が突出することがない。このようにして使用済みのペンシルポイント針の刃先12が樹脂ケース体40内に収納された状態を保ち、医療従事者の誤穿刺事故を確実に防止することができる。
【0010】
また、構成が簡単で、3点の構成部材を嵌合させて簡単に組み立てられ、コストが安価である。さらに、小型であるからペンシルポイント針の有効長さを大きく損なうことがなく、特許文献1、2に示す開口位置が異なるペンシルポイント針に対しても、針の特別な加工を要せずにそのまま適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施例で、構成部材を分解した状態の側面図。
【図2】金属保持体の板取りを示す展開図。
【図3】組立状態の断面図。
【図4】ペンシルポイント針の針先部分の説明図。
【図5】ペンシルポイント針に装着した状態の断面図。
【図6】針先へ移動させた状態の断面図。
【図7】ペンシルポイント針を前進させた状態の断面図。の通水管の配置を説明するための平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、この発明の具体的な実施形態を図面を用いて説明する。
図面はこの発明の実施例で、図1に誤穿刺防止具の構成部材を示す。図に示すように、誤穿刺防止具は、樹脂ガイド体20、金属保持体30、樹脂ケース体40の部材で構成される。樹脂成形された樹脂ガイド体20は、フランジ部21に連続した円柱部22と、この円柱部22から先細る円錐部24とからなり、軸心に針挿通孔26が貫通されている。
【0013】
金属保持体30は、例えば耐薬品性に優れたステンレス鋼の薄板金属板32を、図2に示す形状に板取りし、これを一巻きして形成される。一巻きされた金属保持体30は、樹脂ガイド体20の円柱部22が嵌入される筒状部34から先方へ延びる爪片35が、周方向に複数並んで設けられ、爪片35は軸心に向かって曲げられて傾斜し、爪片35の先端が軸心に揃えて閉じた状態とされている。同じく筒状部34から先方へ延びる一片のストッパー片36が設けられ、ストッパー片36は、図2に示すように、爪片35より長く延びて先端に頭部36aが形成され、軸心に向かって傾斜し、爪片35の先端位置から間隔を有する先方位置で頭部36aを折曲線36bに沿ってくの字に曲げた状態で設けられている。
【0014】
樹脂成形された樹脂ケース体40は、筒状部34が嵌入される筒状側壁部42と、中心に針貫通孔43を開孔した底壁44とからなる。
【0015】
次に、この誤穿刺防止具の組み立てについて説明する。
金属保持体30の筒状部34側から樹脂ガイド体20を嵌入し、筒状部34の端縁をフランジ部21に当接させる。次に、樹脂ケース体40を、筒状部34が筒状側壁部42に嵌入されるように被せ、筒状側壁部42の開口端面をフランジ部21に当接させる。図3に示すように、樹脂ケース体40内に金属保持体30が収納され、円柱部22と筒状側壁部42とで筒状部34を挟持した状態で組み立てられ、金属保持体30は固定され、後述する動作において不要な動きが生じない。なお、より堅固に部材の固定を図るならば、接着手段を用いてもよい。
【0016】
次に、この誤穿刺防止具の動作について説明する。
誤穿刺防止具を装着するペンシルポイント針は、図4に示すように、外径が一様な直管部10の先端にペンシルポイント状の刃先12を形成し、刃先12から直管部10に移行する部分に開口14を形成している。図5に示すように、誤穿刺防止具は、直管部10が針挿通孔26及び針貫通孔43を貫通してペンシルポイント針に装着され、金属保持体30の爪片35の先端が開いた状態で、ストッパー片36は跳ね上げられた状態である。
【0017】
ペンシルポイント針の使用後に誤穿刺防止具を針先へ移動させる。図6に示すように、幾つかの爪片35の先端が開口14内に没入して係止され、誤穿刺防止具が確実な手応えを得て停止する。したがって、さらに誤穿刺防止具を移動させて針先から脱落することがない。
【0018】
この状態からペンシルポイント針を前進させると、図7に示すように、針先が頭部36aに当接して前進が阻止され、針貫通孔43から刃先12が突出することがない。このようにして使用済みのペンシルポイント針の刃先12が樹脂ケース体40内に収納された状態を保ち、廃棄処分される。
【符号の説明】
【0019】
10 直管部
12 刃先
14 開口
20 樹脂ガイド体
22 円柱部
24 円錐部
26 針挿通孔
30 金属保持体
32 薄板金属板
34 筒状部
35 爪片
36 ストッパー片
36a 頭部
40 樹脂ケース体
42 筒状側壁部
44 底壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直管部10の先端に円錐状の刃先12を形成し、針先に近接した側壁に、薬液を吐出する開口14を形成したペンシルポイント針に装着する誤穿刺防止具であって、
円柱部22と、この円柱部22から先細る円錐部24とからなり、軸心に針挿通孔26を貫通した樹脂ガイド体20を形成し、
薄板金属板32で形成され、円柱部22が嵌入される筒状部34から先方へ延び、周方向に複数並んだ爪片35が先端を軸心に揃えて閉じた状態とするとともに、同じく筒状部34から先方へ延び、軸心に向かって傾斜し、爪片35の先端位置から間隔を有する先方位置で頭部36aをくの字に曲げたストッパー片36を設けた金属保持体30を形成し、
筒状部34が嵌入される筒状側壁部42と、中心に針貫通孔43を開孔した底壁44とからなる樹脂ケース体40を形成し、
金属保持体30に樹脂ガイド体20を嵌入し、これに樹脂ケース体40を被せ、樹脂ケース体40内に金属保持体30を収納し、円柱部22と筒状側壁部42とで筒状部34を挟持した状態で組み立て、
直管部10が針挿通孔26及び針貫通孔43を貫通してペンシルポイント針に装着され、ペンシルポイント針の使用後に針先へ移動させ、爪片35の先端が開口14内に没入して係止され、この状態からペンシルポイント針を前進させると、針先が頭部36aに当接して前進を阻止するペンシルポイント針の誤穿刺防止具。
【請求項2】
薄板金属板32としてステンレス鋼を用いた請求項1記載のペンシルポイント針の誤穿刺防止具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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