説明

ペンタシル型ゼオライトの合成方法

【課題】 母液にアルコキシシランに由来する有機化合物を含まず、経済性に優れる。
【解決手段】 (a)(I)シリカ源として珪酸液、(II)有機構造規制剤、および(III)水を、(I)シリカ源のSiO21モルに対して、(II)有機構造規制剤を0.1〜0.6モル、水を10〜500モルとなるように混合してペンタシル型ゼオライト合成前駆体を調製する工程、(c)80〜250℃で水熱処理する工程、および、(d)得られたペンタシル型ゼオライトを分離する工程、を含むペンタシル型ゼオライトの合成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はペンタシル型ゼオライトの合成方法に関し、さらに詳しくは、シリカ源として従来から多用されていた高価なアルコキシシランに代えて、珪酸液を用いるペンタシル型ゼオライトの合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペンタシル型ゼオライトは、触媒、触媒担体、吸着剤等として用いられており、例えば、接触分解反応においてガソリン留分中の低オクタン価成分であるn−パラフィンを選択的に分解してオクタン価を向上させるための触媒としてZSM−5が用いられている。
また、シクロヘキサノンオキシムを気相にてベックマン転位反応させてε−カプロラクタムを製造する触媒としてシリカライトが用いられている(特開平2−250866号公報、特開平2−275850号公報)。
【0003】
ペンタシル型ゼオライトの合成には、多くの場合、シリカ源として有機アルコキシドが使用されている(特開2005−145799号公報、特開2003−176125号公報)。
しかしながら、有機珪素化合物はシリカ源として高価であることに加え、合成母液中に加水分解によって生成したアルコールを多量に含むので、排水中の有機物の規制によりこのような母液をそのまま廃棄することはできず、これを燃焼処理等するには大きな経費が掛かり、経済性に問題があった。
【0004】
また、シリカ源としてシリカゾルを用いることが知られており、この場合、合成母液中に有機物を含まないものの、シリカゾルもシリカ源としては高価であり、さらに経済性の改良が求められていた。さらに、シリカゾルを用いた場合、比較的平均粒子径の大きなペンタシル型ゼオライトが生成し、このような平均粒子径の大きなペンタシル型ゼオライトは触媒活性が不充分となったり、成形して用いる場合に強度に優れた成形触媒が得られない場合があった。
【0005】
【特許文献1】特開平2−250866号公報
【特許文献2】特開平2−275850号公報
【特許文献3】特開2005−145799号公報
【特許文献4】特開2003−176125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明者等は、鋭意検討した結果、シリカ源として珪酸液を使用することによって結晶性に優れたペンタシル型ゼオライトが合成できることを見いだして本発明を完成するに到った。
本発明は、シリカ源としてアルコキシシランに代えて珪酸液を使用するので母液にアルコキシシランに由来する有機化合物(アルコール)を含まず、このため環境問題もなく、廃水処理費用が低減できる経済性に優れたペンタシル型ゼオライトの合成方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るペンタシル型ゼオライトの合成方法は、下記の工程(a)、(c)および(d)を含むことを特徴としている。
(a)(I)シリカ源として珪酸液、(II)有機構造規制剤、および(III)水を、(I)シリカ源のSiO21モルに対して、(II)有機構造規制剤を0.1〜0.6モル、水を10〜500モルとなるように混合してペンタシル型ゼオライト合成前駆体を調製する工程
(c)80〜250℃で水熱処理する工程
(d)得られたペンタシル型ゼオライトを分離する工程
【0008】
前記(I)珪酸液が、珪酸アルカリ水溶液を陽イオン交換樹脂で脱アルカリしたものであることが好ましい。
前記工程(a)についで、下記の工程(b)を行うことが好ましい。
(b)10〜50℃で熟成する工程
【0009】
前記工程(a)において、さらに(IV)アルカリ金属水酸化物をM2O(Mはアルカリ金属を示す)に換算してシリカ源のSiO21モルに対して0.001〜0.1モルの範囲で含んでいてもよい。
前記工程(a)において、シリカ源として珪酸液以外にシリカゾルを含んでいてもよい。
【0010】
前記工程(a)において、さらに(V)周期律表の3B族、4A族、8族から選ばれる1種または2種以上の元素の化合物を、酸化物としてSiO21モルに対して0.001〜0.1モルの範囲で含んでいてもよい。
前記(V)に用いる化合物の元素がTi、Al、Ga、Zr、B、Feから選ばれる1種または2種以上であることが好ましい。
【0011】
前記(II)有機構造規制剤がテトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAOH)であることが好ましい。
前記(IV)アルカリ金属水酸化物が水酸化カリウムであることが好ましい。
前記工程(d)で分離した母液中に(II)有機構造規制剤に由来する炭素以外の炭素を実質的に含まないことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シリカ源としてアルコキシシラン等の有機珪素化合物に代えて珪酸液を使用するので母液にアルコキシシラン等に由来する有機化合物(アルコール)を含まず、このため環境問題もなく、廃水処理費用が低減できる経済性に優れたペンタシル型ゼオライトの合成方法を提供することができる。
また、シリカ源としてシリカゾルを用いた場合に比して粒子径の小さいペンタシル型ゼオライトが得られるので、触媒成形性、触媒性能等に優れたペンタシル型ゼオライトの合成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係るペンタシル型ゼオライトの合成方法について説明する。
本発明に係るペンタシル型ゼオライトの合成方法は、下記の工程(a)、(c)および(d)を含むことを特徴としている。
(a)(I)シリカ源として珪酸液、(II)有機構造規制剤、および(III)水を、(I)シリカ源のSiO21モルに対して、(II)有機構造規制剤を0.1〜0.6モル、水を10〜500モルとなるように混合してペンタシル型ゼオライト合成前駆体を調製する工程
(c)80〜250℃で水熱処理する工程
(d)得られたペンタシル型ゼオライトを分離する工程
【0014】
工程(a)
本発明には(I)シリカ源として珪酸液を用いる。
(I)シリカ源
この珪酸液は、珪酸アルカリ水溶液を陽イオン交換樹脂で脱アルカリした従来公知のケイ酸液が用いられる。珪酸アルカリ水溶液としては、珪酸ナトリウム水溶液、珪酸カリウム水溶液が挙げられる。
具体的には、SiO2濃度が概ね0.1〜10重量%の珪酸アルカリ水溶液を陽イオン交換樹脂と接触させることによって調製することができる。得られた珪酸液は、SiO2濃度が概ね0.1〜10重量%、pHが概ね1〜3の範囲にある。
本発明では、珪酸液をそのまま用いることもできるが、珪酸液を加熱して、あるいはアンモニア等のアルカリを加えてゲル化させ、必要に応じて熟成し、さらに、必要に応じて濃縮して用いることもできる。
また、珪酸液あるいは前記ゲル化させたシリカ源を噴霧乾燥して用いることもできる。
【0015】
本発明では、前記珪酸液に加えて、シリカゾルを配合して用いることもできる。シリカゾルとしては従来公知のシリカゾルを用いることができるが、日揮触媒化成(株)製のシリカゾル、カタロイドSI-550、SI-30、SI-45P、SI-80P等は好適に用いることができる。
シリカゾルのシリカ粒子の平均粒子径は概ね250nm以下であることが好ましい。シリカゾルのシリカ粒子の平均粒子径が250nmを越えると、結晶化に長時間を要したり、結晶性が不充分となる場合がある。
【0016】
シリカゾルを配合して用いる場合、珪酸液とシリカゾルに由来する全シリカ中におけるシリカゾルに由来するシリカの割合は50重量%以下、さらには30重量%以下であることが好ましい。シリカゾルに由来するシリカの割合が50重量%を越えると珪酸液を用いる経済的メリットが低減することに加えて、得られるペンタシル型ゼオライトの粒子径が大きくなりすぎて、触媒性能が不充分となる場合があり、また、成形して用いる場合に成形体の強度が不充分になる場合がある。
【0017】
このような観点から、本発明で得られるペンタシル型ゼオライトの平均粒子径は0.05〜1μm、さらには0.1〜0.5μmの範囲にあることが好ましい。
なお、本発明での平均粒子径は、ペンタシル型ゼオライトの電子顕微鏡写真を撮影し、100個の粒子について各粒子の最大径を測定し、これらを平均して求めることができる。
【0018】
(II)有機構造規制剤
有機構造規制剤としては、ペンタシル型ゼオライトの合成に用いられる従来公知の有機構造規制剤を用いることができる。
有機構造規制剤として、例えば、第4級アルキルアンモニウムハイドロオキサイドの他、モノエタノールアミン、ジモノエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
本発明ではテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド等のテトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAOH)が好適に用いられる。
【0019】
なお、本発明ではTAAOHに対応するテトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラプロピルアンモニウムクロライド、テトラプロピルアンモニウムブロマイド等の塩を併用することもできる。
【0020】
シリカ源のSiO21モルに対して、(II)有機構造規制剤を0.1〜0.6モル、好ましくは0.2〜0.5モルの範囲で用いることが好ましい。
シリカ源のSiO21モルに対して、(II)有機構造規制剤が0.1モル未満の場合は、ペンタシル型ゼオライトが得られない場合や、得られたとしても結晶化に長時間を要したり、結晶性が不充分となる場合がある。
シリカ源のSiO21モルに対して、(II)有機構造規制剤が0.6モルを越えてもペンタシル型ゼオライトが得られない場合や、得られたとしても結晶性が不充分となる場合がある。
【0021】
(III)水
水の使用量は、シリカ源のSiO21モルに対して、10〜500モル、さらには15〜300モルの範囲にあることが好ましい。なお、ここで規定する水のモル比は、珪酸液、有機構造規制剤水溶液に含まれる水と、必要に応じて加える水を合計した量の水のモル比を意味している。
水の使用量が、SiO21モルに対して10モル未満の場合は、得られるペンタシル型ゼオライトが凝集したり、塊状になることがあり、用途が制限される。
水の使用量が、SiO21モルに対して500モルを越えると、結晶化に長時間を要したり、いわゆる固形分濃度が低いので、生産効率、過熱エネルギー効率等が低下し、経済性が問題となる。
【0022】
(IV)アルカリ金属水酸化物
本発明では、必要に応じてアルカリ金属水酸化物を用いることもできる。
アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好適である。
アルカリ金属水酸化物を含むと、シリカ源の溶解性、反応性が高くなるためか、結晶化時間を短縮したり、結晶性が向上する傾向があるので好ましい。
【0023】
アルカリ金属水酸化物の使用量は、アルカリ金属水酸化物をM2O(Mはアルカリ金属を示す)に換算してSiO21モルに対して0.001〜0.1モル、さらには0.005〜0.08モルの範囲で含んでいてもよい。
アルカリ金属水酸化物の使用量が、SiO21モルに対して0.001未満の場合は、ペンタシル型ゼオライトの種類によっては結晶化時間の短縮効果や結晶性の向上効果が十分に得られない場合がある。一方、0.1モルを越えるとペンタシル型ゼオライトが生成しない場合や他の結晶が副生する場合がある。
【0024】
(V)3B族、4A族、8族元素化合物
本発明では、必要に応じて周期律表の3B族、4A族、8族から選ばれる1種または2種以上の元素の化合物を用いることができる。
なかでも、Ti、Al、Ga、Zr、B、Feから選ばれる1種または2種以上の元素の化合物が好ましい。
具体的には、テトラブチルオルソチタネート、ペルオキソチタン酸、水酸化チタン、硫酸チタニル、アルミニウムイソプロポキシド、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、硫酸ジルコニル、水酸化ジルコニウム、硼酸、硼酸ナトリウム、硝酸ガリウム、塩化ガリウム、塩化第2鉄、水酸化鉄等が挙げられる。
【0025】
このような元素の化合物を用いると、ペンタシル型ゼオライトの骨格を形成する珪素(Si)の一部がこれら元素に置換した、触媒活性、選択性等に優れたペンタシル型ゼオライトが得られる場合がある。
なお、本発明では、前記元素を含む有機金属化合物あるいはこれらの有機溶媒溶液を用いることができるが、合成母液中の有機物を低減する観点からは塩、水酸化物、酸化物、酸化物ゾルを用いることが好ましい。
【0026】
周期律表の3B族、4A族、8族から選ばれる1種または2種以上の元素の化合物の使用量は、酸化物としてSiO21モルに対して0.001〜0.1モル、さらには0.005〜0.05の範囲で含んでいてもよい。
3B族、4A族、8族から選ばれる1種または2種以上の元素の化合物の使用量が酸化物としてSiO21モルに対して0.001モル未満の場合は前記したこれら元素を含む効果が充分得られない場合があり、0.1モルを越えると、前記骨格の珪素(Si)の置換に与らない元素が増加し、結晶性が低下するとともに触媒性能が不充分となる場合がある。
【0027】
工程(a)では、前記各原料を所定モル比となるように混合してペンタシル型ゼオライト合成前駆体を調製するが、例えば、有機構造規制剤水溶液、あるいはアルカリ金属水溶液を含む機構造規制剤水溶液に珪酸液あるいは、珪酸液とシリカゾルを、同時にあるいは別々に、連続的にあるいは断続的に添加することによって調製することができる。
また、3B族、4A族、8族元素を含むペンタシル型ゼオライト合成前駆体を調製する場合は、ついで、3B族、4A族、8族元素の化合物の水溶液あるいは有機溶媒溶液を添加する。
【0028】
ペンタシル型ゼオライト合成前駆体のpHは10〜14、さらには11〜14の範囲にあることが好ましい。
ペンタシル型ゼオライト合成前駆体のpHが10未満の場合はペンタシル型ゼオライトが得られない場合がある。
【0029】
工程(b)
ついで、必要に応じて10〜50℃、好ましくは20〜40℃で熟成する。熟成時間は熟成温度によっても異なるが、通常1〜48時間、好ましくは2〜24時間である。熟成は、撹拌しながらでもよく、静置してもよい。
このような熟成を行うと、工程(c)での結晶化時間を短縮できたり、結晶性の高いペンタシル型ゼオライトが得られたり、粒子径が小さく均一なペンタシル型ゼオライトが得られる傾向にある。
【0030】
工程(c)
ついで、80〜250℃、さらには95〜200℃で水熱処理する。
水熱処理温度が80℃未満の場合は結晶化時間に長時間を要したり、結晶性が不充分となる場合がある。
水熱処理温度が250℃を越えても、さらに結晶化時間が大幅に短くなることもなく、結晶性が向上することもなく、場合によってはペンタシル型ゼオライト以外の結晶が副生する場合がある。
【0031】
工程(d)
ついで、ペンタシル型ゼオライトを分離する。
分離する方法は、ペンタシル型ゼオライトを分離できれば特に制限はなく従来公知の方法を採用することができる。粒子径が大きい場合は濾過分離法を採用することができ、粒子径が小さい場合は遠心沈降法、限外濾過膜法、目開きの小さいセラミックフィルター等を採用することができる。
【0032】
本発明では、分離した一方の合成母液中に(II)有機構造規制剤に由来する炭素以外の炭素を実質的に含まないことが好ましい。ここで、実質的に含まないとは、前記シリカ源に珪酸液を使用し、珪素以外の元素の化合物としてもTi、Al、Zr等の金属アルコキシド等を使用せず、溶媒としても有機溶媒を使用しないことを意味している。
合成母液中に(II)有機構造規制剤に由来する炭素以外の炭素を含むと、炭素を燃焼して除去する必要があり、本発明における経済性の効果が充分得られない場合がある。
【0033】
分離したペンタシル型ゼオライトは、ついで従来公知の方法によって洗浄し、乾燥する。
乾燥した後は、触媒、触媒担体、吸着剤等として用いることができるが、使用に際しては、必要に応じて焼成して有機構造規制剤を除去したり、乾燥したペンタシル型ゼオライト粉体を成形し、ついで、焼成して有機構造規制剤を除去して用いることもできる。さらに、これらに、触媒成分を担持して用いることもできる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、以下の実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0034】
ペンタシル型ゼオライト(1)の合成
3号水ガラス(日揮触媒化成(株)製:SiO2濃度24重量%、Na2O/SiO2モル比3.1)938gに水3562gを加えてSiO2濃度5重量%の希釈水ガラス溶液を調製した。ついで、希釈水ガラス溶液を陽イオン交換樹脂にて処理し、SiO2濃度5重量%、pH2.67の珪酸液4500gを調製した。
【0035】
別途、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)水溶液(セイケムアジア(株)製:TPAOH濃度40重量%)434.5gに水酸化カリウム(和光純薬(株)製:K2O濃度83.5重量%)11.5gを溶解した。これに、上記で調製した珪酸液4354gを1.5時間で添加した。ついで、30℃で1時間撹拌した後、オートクレーブに充填し、撹拌下、2時間で150℃に昇温し、48時間水熱処理した。
【0036】
ついで、濾過して合成母液と分離し、合成母液を採取後、固形分を充分に洗浄し、120℃で2時間乾燥してペンタシル型ゼオライト(1)を合成した。ペンタシル型ゼオライト(1)について、結晶性、BET法比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示した。また、X線回折により測定した回折スペクトルを図1に示した。また、走査型電子顕微鏡写真(SEM)を図2に示した。
【0037】
また、結晶性は以下の方法によって評価した。
X線回折スペクトルにおける2θ=7.9°、8.8°、23.13°、23.93°、24.39°におけるピーク高の合計値を、後述する比較例1で得られたペンタシル型ゼオライト(R1)のピーク高の合計値と対比し、以下の基準で評価した。
ペンタシル型ゼオライト(R1)のピーク高の合計値と同程度である : ○
ペンタシル型ゼオライト(R1)のピーク高の合計値よりやや低い : △
ペンタシル型ゼオライト(R1)のピーク高の合計値より明らかに低い: ×
【実施例2】
【0038】
ペンタシル型ゼオライト(2)の合成
実施例1において、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)水溶液(セイケムアジア(株)製:TPAOH濃度40重量%)260.6gを用いた以外は同様にしてペンタシル型ゼオライト(2)を合成した。ペンタシル型ゼオライト(2)について、結晶性、BET法比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示した。
【実施例3】
【0039】
ペンタシル型ゼオライト(3)の合成
実施例1において、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)水溶液(セイケムアジア(株)製:TPAOH濃度40重量%)695.0gを用いた以外は同様にしてペンタシル型ゼオライト(3)を合成した。ペンタシル型ゼオライト(3)について、結晶性、BET法比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示した。
【実施例4】
【0040】
ペンタシル型ゼオライト(4)の合成
実施例1において、水酸化カリウム(和光純薬(株)製:K2O濃度83.5重量%)3.8gを用いた以外は同様にしてペンタシル型ゼオライト(4)を合成した。ペンタシル型ゼオライト(4)について、結晶性、BET法比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示した。
【実施例5】
【0041】
ペンタシル型ゼオライト(5)の合成
実施例1において、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)水溶液(セイケムアジア(株)製:TPAOH濃度40重量%)434.5gの代わりにテトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド(TEAOH)水溶液(セイケムアジア(株)製:TEAOH濃度35重量%)358.7gを用いた以外は同様にしてペンタシル型ゼオライト(5)を合成した。ペンタシル型ゼオライト(5)について、結晶性、BET法比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示した。
【実施例6】
【0042】
ペンタシル型ゼオライト(6)の合成
実施例1において、105℃で48時間水熱処理した以外は同様にしてペンタシル型ゼオライト(6)を合成した。ペンタシル型ゼオライト(6)について、結晶性、BET法比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示した。
【実施例7】
【0043】
ペンタシル型ゼオライト(7)の合成
実施例1において、180℃で48時間水熱処理した以外は同様にしてペンタシル型ゼオライト(7)を合成した。ペンタシル型ゼオライト(7)について、結晶性、BET法比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示した。
【実施例8】
【0044】
ペンタシル型ゼオライト(8)の合成
実施例1において、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)水溶液(セイケムアジア(株)製:TPAOH濃度40重量%)434.5gに水酸化カリウム(和光純薬(株)製:K2O濃度83.5重量%)11.5gを溶解した溶液に、珪酸液2612.5gを1時間で添加し、ついで、シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:カタロイドSI-550、平均粒子径5nm、SiO2濃度20重量%)120.0gを0.2時間で添加した以外は同様にしてペンタシル型ゼオライト(8)を合成した。ペンタシル型ゼオライト(8)について、結晶性、BET法比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示した。
【実施例9】
【0045】
ペンタシル型ゼオライト(9)の合成
実施例1において、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)水溶液(セイケムアジア(株)製:TPAOH濃度40重量%)434.5gに水酸化カリウム(和光純薬(株)製:K2O濃度83.5重量%)11.5gを溶解した溶液に、珪酸液3918.7gを1.4時間で添加し、ついで、シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:カタロイドSI-550、平均粒子径5nm、SiO2濃度20重量%)30.0gを0.1時間で添加した以外は同様にしてペンタシル型ゼオライト(9)を合成した。ペンタシル型ゼオライト(9)について、結晶性、BET法比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示した。
【実施例10】
【0046】
ペンタシル型ゼオライト(10)の合成
実施例1において、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)水溶液(セイケムアジア(株)製:TPAOH濃度40重量%)434.5gに水酸化カリウム(和光純薬(株)製:K2O濃度83.5重量%)11.5gを溶解した溶液に、上記で調製した珪酸液4354gを1.5時間で添加し、さらに、水7866.2gを添加してペンタシル型ゼオライト合成前駆体を調製し、この1/2をオートクレーブに充填し、150℃で96時間水熱処理した以外は同様にしてペンタシル型ゼオライト(10)を合成した。ペンタシル型ゼオライト(10)について、結晶性、BET法比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示した。
【実施例11】
【0047】
ペンタシル型ゼオライト(11)の合成
3号水ガラス(日揮触媒化成(株)製:SiO2濃度24重量%、Na2O/SiO2モル比3.1)938gに水3562gを加えてSiO2濃度5重量%の希釈水ガラス溶液を調製した。ついで、希釈水ガラス溶液を陽イオン交換樹脂にて処理し、SiO2濃度5重量%、pH2.67の珪酸液4500gを調製した。
【0048】
別途、35.7gの四塩化チタンを純水で希釈してTiO2として1.0重量%含有する水溶液を調製し、これを撹拌しながら、濃度15重量%のアンモニア水を添加し、pH9.5の白色スラリーを得た。このスラリーを濾過洗浄し、TiO2として濃度10.2重量%の水和酸化チタンゲルのケーキを得た。このケーキと濃度5%過酸化水素液400gを混合し、ついで80℃で2時間加熱して溶解し、TiO2として濃度2.0重量%のペルオキソチタン酸(POT)水溶液450gを得た。
【0049】
ついで、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)水溶液(セイケムアジア(株)製:TPAOH濃度40重量%)434.5gに、珪酸液4354gを1.5時間で添加し、ついでペルオキソチタン酸(POT)水溶液272.9gを0.2時間で添加した。
ついで、30℃で1時間撹拌した後、オートクレーブに充填し、撹拌下、2時間で160℃に昇温し、48時間水熱処理した。
【0050】
ついで、濾過して合成母液と分離し、合成母液を採取後、固形分を充分に洗浄し、120℃で2時間乾燥してペンタシル型ゼオライト(11)を合成した。ペンタシル型ゼオライト(11)について、結晶性、BET法比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示した。
【実施例12】
【0051】
ペンタシル型ゼオライト(12)の合成
3号水ガラス(日揮触媒化成(株)製:SiO2濃度24重量%、Na2O/SiO2モル比3.1)938gに水3562gを加えてSiO2濃度5重量%の希釈水ガラス溶液を調製した。ついで、希釈水ガラス溶液を陽イオン交換樹脂にて処理し、SiO2濃度5重量%、pH2.67の珪酸液4500gを調製した。
別途、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)水溶液(セイケムアジア(株)製:TPAOH濃度40重量%)434.5gに水酸化ナトリウム(M2O濃度37.2重量%)42.6gを溶解した。
【0052】
さらに、別途、イソプロピルアルコール(IPA)55.7gにアルミニウムイソプロポキシド(AIPO)(関東化学(株)製:Al23濃度50.0重量%)13.9gを溶解した。
ついで、上記で調製したテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイドと水酸化ナトリウムの混合水溶液に、珪酸液4354gを1.5時間で添加し、ついでIPAとAIPOの混合溶液69.6gを0.25時間で添加した。
【0053】
ついで、80℃で3時間撹拌してアルコールを蒸発させた後、オートクレーブに充填し、撹拌下、2時間で180℃に昇温し、48時間水熱処理した。
ついで、濾過して合成母液と分離し、合成母液を採取後、固形分を充分に洗浄し、120℃で2時間乾燥してペンタシル型ゼオライト(12)を合成した。ペンタシル型ゼオライト(12)について、結晶性、BET法比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示した。
【比較例1】
【0054】
ペンタシル型ゼオライト(R1)の合成
テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)水溶液(セイケムアジア(株)製:TPAOH濃度40重量%)434.5gに水1960gを添加し、水酸化カリウム(和光純薬(株)製:K2O濃度83.5重量%)11.5gを溶解した溶液に、テトラエチルオルソシリケート(TEOS)(多摩化学工業(株)製:SiO2濃度28.0重量%)721.4gを1時間で添加した。
【0055】
ついで、30℃で1時間撹拌した後、オートクレーブに充填し、撹拌下、2時間で150℃に昇温し、48時間水熱処理した。
ついで、濾過して合成母液と分離し、合成母液を採取後、固形分を充分に洗浄し、120℃で2時間乾燥してペンタシル型ゼオライト(R1)を合成した。ペンタシル型ゼオライト(R1)について、結晶性、BET法比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示した。
【比較例2】
【0056】
ペンタシル型ゼオライト(R2)の合成
テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)水溶液(セイケムアジア(株)製:TPAOH濃度40重量%)434.5gに水1481.9g、水酸化カリウム(和光純薬(株)製:K2O濃度83.5重量%)11.5gを溶解した溶液に、シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:カタロイドSI-30、平均粒子径30nm、SiO2濃度30重量%)682.2gを1時間で添加した。
【0057】
ついで、30℃で1時間撹拌した後、オートクレーブに充填し、撹拌下、2時間で150℃に昇温し、48時間水熱処理した。
ついで、濾過して合成母液と分離し、合成母液を採取後、固形分を充分に洗浄し、120℃で2時間乾燥してペンタシル型ゼオライト(R2)を合成した。ペンタシル型ゼオライト(R2)について、結晶性、BET法比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示した。
【比較例3】
【0058】
ペンタシル型ゼオライト(R3)の合成
テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)水溶液(セイケムアジア(株)製:TPAOH濃度40重量%)434.5gに水1140.9gを添加し、水酸化カリウム(和光純薬(株)製:K2O濃度83.5重量%)11.5gを溶解した溶液に、シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:カタロイドSS-300、平均粒子径300nm、SiO2濃度20重量%)1023.2gを1.5時間で添加した。
【0059】
ついで、30℃で1時間撹拌した後、オートクレーブに充填し、撹拌下、2時間で150℃に昇温し、48時間水熱処理した。
ついで、濾過して合成母液と分離し、合成母液を採取後、固形分を充分に洗浄し、120℃で2時間乾燥してペンタシル型ゼオライト(R3)を合成した。ペンタシル型ゼオライト(R3)について、結晶性を測定したところ実質的に無定型であった。
【比較例4】
【0060】
ペンタシル型ゼオライト(R4)の合成
テトラエチルオルソシリケート(TEOS)(多摩化学工業(株)製:SiO2濃度28.0重量%)721.3gにテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)水溶液(セイケムアジア(株)製:TPAOH濃度40重量%)434.5gを添加した。
別途、イソプロピルアルコール(IPA)93.0gにテトラブチルオルソチタネート(TBOT)(関東化学(株)製:TiO2濃度23.47重量%)23.25gを溶解した。
【0061】
ついで、TEOSとTPAOHとの混合(水)溶液にTBOTとIPAの混合溶液を15分間で添加し、ついで、水1243.7gを1時間で添加し後、80℃で3時間撹拌してアルコールを蒸発させ、ついで、オートクレーブに充填し、撹拌下、2時間で160℃に昇温し、48時間水熱処理した。
ついで、濾過して合成母液と分離し、合成母液を採取後、固形分を充分に洗浄し、120℃で2時間乾燥してペンタシル型ゼオライト(R4)を合成した。ペンタシル型ゼオライト(R4)について、結晶性、BET法比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示した。
【比較例5】
【0062】
ペンタシル型ゼオライト(R5)の合成
テトラエチルオルソシリケート(TEOS)(多摩化学工業(株)製:SiO2濃度28.0重量%)721.3gにテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)水溶液(セイケムアジア(株)製:TPAOH濃度40重量%)434.5gを添加し、水酸化ナトリウム(M2O濃度37.2重量%)42.6gを溶解した。
別途、イソプロピルアルコール(IPA)55.68gにアルミニウムイソプロポキシド(AIPO)(関東化学(株)製:Al23濃度50.0重量%)13.9gを溶解した。
【0063】
ついで、TEOSとTPAOHとの混合溶液にAIPOのIPA溶液を15分間で添加した後、水2167.9gを1時間で添加した。ついで、80℃で3時間撹拌してアルコールを蒸発させた後、オートクレーブに充填し、撹拌下、2時間で180℃に昇温し、48時間水熱処理した。
ついで、濾過して合成母液と分離し、合成母液を採取後、固形分を充分に洗浄し、120℃で2時間乾燥してペンタシル型ゼオライト(R5)を合成した。ペンタシル型ゼオライト(R5)について、結晶性、BET法比表面積、平均粒子径を測定し、結果を表に示した。
【0064】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施例1で得られたペンタシル型ゼオライト(1)のX線回折スペクトルである。
【0066】
【図2】実施例1で得られたペンタシル型ゼオライト(1)の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程(a)、(c)および(d)を含むペンタシル型ゼオライトの合成方法。
(a)(I)シリカ源として珪酸液、(II)有機構造規制剤、および(III)水を、(I)シリカ源のSiO21モルに対して、(II)有機構造規制剤を0.1〜0.6モル、水を10〜500モルとなるように混合してペンタシル型ゼオライト合成前駆体を調製する工程
(c)80〜250℃で水熱処理する工程
(d)得られたペンタシル型ゼオライトを分離する工程
【請求項2】
前記(I)珪酸液が、珪酸アルカリ水溶液を陽イオン交換樹脂で脱アルカリしたものであることを特徴とする請求項1に記載のペンタシル型ゼオライトの合成方法。
【請求項3】
前記工程(a)についで、下記の工程(b)を行うことを特徴とする請求項1または2に記載のペンタシル型ゼオライトの合成方法。
(b)10〜50℃で熟成する工程
【請求項4】
前記工程(a)において、さらに(IV)アルカリ金属水酸化物をM2O(Mはアルカリ金属を示す)に換算してシリカ源のSiO21モルに対して0.001〜0.1モルの範囲で含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のペンタシル型ゼオライトの合成方法。
【請求項5】
前記工程(a)において、シリカ源として珪酸液以外にシリカゾルを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のペンタシル型ゼオライトの合成方法。
【請求項6】
前記工程(a)において、さらに(V)周期律表の3B族、4A族、8族から選ばれる1種または2種以上の元素の化合物を、酸化物としてSiO21モルに対して0.001〜0.1モルの範囲で含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のペンタシル型ゼオライトの合成方法。
【請求項7】
前記(V)に用いる化合物の元素がTi、Al、Ga、Zr、B、Feから選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のペンタシル型ゼオライトの合成方法。
【請求項8】
前記(II)有機構造規制剤がテトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAOH)であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のペンタシル型ゼオライトの合成方法。
【請求項9】
前記(IV)アルカリ金属水酸化物が水酸化カリウムであることを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載のペンタシル型ゼオライトの合成方法。
【請求項10】
前記工程(d)で分離した母液中に(II)有機構造規制剤に由来する炭素以外の炭素を実質的に含まないことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のペンタシル型ゼオライトの合成方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−126397(P2010−126397A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302709(P2008−302709)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】