説明

ペースト状またはゲル状の粘稠度の顔料調製物

【課題】ペースト状またはゲル状の粘稠度の顔料調製物を提供する。
【解決手段】本発明は、石灰仕上げおよび/またはセメント仕上げ建築材料、アスファルト、塗料、ワニス、紙またはプラスチックを着色するためのペースト状またはゲル状の顔料調製物、さらにはそれらを調製するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石灰仕上げおよび/またはセメント仕上げ建築材料、アスファルト、塗料、ワニス、紙またはプラスチックを着色するためのペースト状またはゲル状の顔料調製物、さらにはそれらを調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この数十年来、我々の環境における着色デザインが増加した結果、顔料の使用が急激に増えてきた。多くの着色材料には少なくとも部分的にでも無機顔料が含まれているために、それらに対する需要もまた堅調に増加している。今日では、日常生活の多くの分野において、無機顔料に遭遇する。それらは、例えば、コンクリートおよびアスファルト、エマルション塗料、ワニス、紙ならびにプラスチックのような建築材料を着色するために使用されている。無機有彩顔料の中でも今日最も大量に使用されている酸化鉄顔料は、有史以前から使用されてきた。約15000年も昔のアルタミラ(スペイン)およびラスコー(フランス)の洞窟壁画から、顔料として天然由来の酸化鉄が使用されたことが判る。古代エジプト人、ギリシャ人およびローマ人もまた、着色剤として天然由来の酸化鉄顔料を使用していた。現代にいたるまでずっと、特に性能面における質的な要求が継続的、持続的に高まっているところから、天然産物ではこの需要をまかなうことがもはや不可能となってきている。合成的に製造された顔料は、不透明性、色の明度、および品質にばらつきが無い点で、それらの天然対応品よりもかなり優れている。
【0003】
顔料の加工において、理想的な色を得ようとすると、顔料を摩砕して一次粒子とする必要がある。そのために、近代的な顔料製造プロセスには通常、そのような摩砕操作が含まれる。しかしながら、それらが微細に粉砕された性質を有しているために、そうして得られた顔料は極めてほこりっぽくて、包装や機械部品に付着しやすく、サイロで貯蔵する場合も同様である。したがって、毒性学的に有害物質である場合には、形成されるダストによるヒトおよび環境に対する危険性を避けるために、加工の際には手段を講じなければならない。しかしながら、酸化鉄顔料のような害のない不活性物質の場合においても、例えば、ダスト公害を回避することは、市場の要請として強くなってきている。
【0004】
建築材料を着色するための供給形態:
コンクリート製品などの建築材料を着色するためには、例えば、顔料は主として粉体の形態で使用される。それらが摩砕された形態では、容易に分散させることが可能であるという利点を有している。そのような顔料粉体の完全かつ均質な分布は、コンクリートミキサーの中で短時間、一般的には数分以内で起こさせることができる。それらの微細な粉体の欠点は、それらが良好な流動特性を有さず、しばしば凝集塊を形成し、貯蔵の間に塊状物を形成する。このことは、加工の際の正確な計量の妨げとなる。粉体のさらなる欠点は、それらがダストを形成しやすいことである。
【0005】
建築材料を着色させるために顔料を適用する際に、ダストを防止し、計量性を改良することは、重要な目標である。1980年代終わりころから、顔料に対して粒状化法を適用することによって、この目標は多少なりとも達成されてきた。そのような粒状化法の例としては、凝集粒状化およびスプレー乾燥粒状化などが挙げられる。
【0006】
スプレー乾燥粒状化は、顔料の懸濁物から開始し、それに対して粒状化バインダーを添加する。スプレー乾燥法による粒状化は、単一流体または二流体ノズルを通すか、あるいはアトマイズ乾燥機を通して、並流または向流で実施し、平均粒子サイズ50〜500μmを有する粒状物を製造する。これに相当する方法は、多くの特許に記載されていて、当業者には公知である。これらの方法においては、主として水溶性バインダーが使用される。したがって、(特許文献1)、(特許文献2)および(特許文献3)は、有機物質、例えば、リグニンスルホネート、ホルムアルデヒド縮合物、グルコン酸およびスルホン化ポリグリコールエーテルから出発しているし、それに対して(特許文献4)および(特許文献5)では、同様にして無機塩、例えばケイ酸塩およびリン酸塩の使用が可能であることを教示している。より最近では、水不溶性バインダーを用いた粒状物もまた提案されている。例えば、(特許文献6)および(特許文献7)では、親水性クレーバインダー、好ましくはアルミノシリケートまたはプゾランを添加している。(特許文献8)には、コンクリートのような建築材料を着色するために使用される物質の中でも、分散性の顔料濃縮物が開示されているが、このものには、少なくとも1種の顔料とさらに、所望により、バインダー、分散剤および湿潤剤を含み、そして解砕助剤を含んでいるが、これは(充分な量の)水と接触すると機械的な力を加えなくてもその濃縮物の一次構造を、1分以内に、実質的に完全に解砕させて、顔料を放出させる。使用される解砕助剤としては、10〜2000μmの間の粒子サイズを有するセルロース繊維が好ましい。(特許文献9)には、粒状物を製造する際に解砕剤を使用することがすでに開示されていて、建築材料またはアスファルトを着色させるのに好適であるとされている。解砕剤には、しかるべき大きな水吸収能力を有する、高度に親水性のポリマーが通常含まれている。(特許文献10)および(特許文献11)においても同様に、粒状物の製造における解砕剤の使用がすでに開示されている。
【0007】
液滴を生成させる段階が存在するために、スプレー粒状化では、高度に流動性のある、別の言い方をすれば、高度に易動性の懸濁物を使用する必要がある。この乾燥操作には、比較的大量の水を蒸発させることが含まれるので、この方法は極めてエネルギー消費量が大きく、そのため環境および気候保護の見地からは望ましくない。例えば、か焼プロセスのような乾燥製造プロセスによって製造された顔料の場合、例えば、スプレー粒状化では、高いエネルギーコストを必要とする追加の工程が含まれることになるが、その理由は、すでに乾燥状態で得られている顔料を、もう一度水中に懸濁させて、乾燥させなければならないからである。さらに、スプレー粒状化の場合においては、ダストフィルターに捕捉される微細な物質が多少なりとも実質的な割合で存在し、それらは製造操作にリサイクルしなければならない。
【0008】
凝集粒状化は、顔料粉体から出発して、高乱流を有するミキサー中、流動層法中、またはそうでなければロータリープレート(ペレット化プレート)もしくはロータリードラム(ペレット化ドラム)中で、実施することができる。それらの方法すべてに共通する特徴は、バインダー(通常は水)を高いレベルで必要とし、その結果、必然的にさらなる工程として乾燥が必要となることである。この場合もまた、粉体の量に対してバインダーが不足であったり、実際の分散が最適でなかったりした場合には特に、異なったサイズの粒状物が得られる。その場合、粒状粒子のある程度の割合のものが大きくなりすぎ、その反面で過度の小さな画分も存在し、結果としてさらなるダストが形成される。したがって、生成した粒状物を分級して、過大物および過小物を戻してやる必要がある。ロータリープレート(ペレット化プレート)における粒状化では、粒子サイズの分布が広くなる。これが望ましくない場合には、過大粒子の分散性が乏しいために、最適な粒状物を製造しようとすると、作業員を集中的に使用して粒状化操作をモニターする必要が生じ、シードの量を手動で調節してやらなければならない。この場合もまた、典型的には、その製品を分級して、過大物および過小物をリサイクルする。
【0009】
凝集粒状化およびスプレー乾燥粒状化と同様に、その他の粒状化法もまた従来技術において記述されている。したがって、例えば、(特許文献12)には、スプレー粒状化と凝集粒状化とを組み合わせたものが開示されている。(特許文献1)および(特許文献2)にも、圧縮法の適用以外は同様の開示がある。
【0010】
近年になって、ブリケッティングおよび圧縮法によって製造された粒状物が、建築材料を着色する目的の市場の中でそれら自体の地位を次第に確保できるようになってきた。(特許文献13)および(特許文献14)には、乾燥顔料を含む無機顔料粒状物、例えば、1種または複数の補助剤とのブレンド、圧縮、ならびにさらなる工程、例えば微粉砕、篩別および過大物および/または微細物のリサイクルをすることによる出来合いの製品(ready-produced product)が記載されている。そのようにして得られた粒状物は、安定性を向上させ、加工における助剤として役立つ、さらなるコーティングを用いて包み込むことも可能である。それ以来、それらの粒状物は建築材料の着色において、大規模な市場的成功を得てきた。この方法の欠点は、予め摩砕された乾燥顔料粉体を出発原料とすることにある。別の言い方をすれば、この場合もまた、エネルギー消費量の大きな製造工程が必要となり、それは環境および気候保護の見地からは望ましいものではない。
【0011】
(特許文献15)には、乾燥顔料を含む無機顔料、例えば、バインダーとブレンドし、圧縮し、篩別造粒機中でトレッド(tread)し、さらにはロータリープレート上またはロータリードラム中での凝集粒状化をさせることによる出来合いの製品が記載されている。このようにして製造された顔料粒状物は、コンクリートまたはアスファルトのような建築材料を着色するのに適している。上述の、粒状物を圧縮およびブリケッティングする文脈においてすでに述べたような欠点が、この場合にも同様にあてはまる。
【0012】
当業者は、建築材料の着色などの用途に適した無機顔料粒状物を調製するためのさらなる方法に注目している。(特許文献16)には、粒状化助剤を用いて流動層で顔料を粒状化することが記載されていて、そこでは水を用いて乾燥顔料粉体をスプレーしている。(特許文献17)には、押出し法についての開示があり、そこでは顔料を1%〜25重量%の水と混合して、湿り気のある粉体とする。少なくとも一つの開口部を有するダイを通して、その湿り気のある粉体を押出し加工する。得られた粒状物を、残存水分1重量%未満となるまで乾燥させ、微粉砕し、篩別する。この押出し法によって調製した押出し加工粒状物は、コンクリートを着色させるのに適している。(特許文献18)にも、それに極めて類似した方法が記載されている。それには、押出し法と圧縮法を組み合わせたものが含まれている。顔料と水からの湿り気のある混合物を少なくとも一つのダイを通過させて、同時にその混合物を圧縮化させる。次いでその粒状物を乾燥させて、残存水分含量が5重量%未満となるようにする。最後に述べた三つの方法は、コストおよび環境保護の面からは極めて好ましくないものであるが、その理由は、乾燥させた顔料を大量の水と混合するが、製造プロセスの後の工程でその水を再び追い出さなければならないからであり、すなわち、この場合もまた、エネルギー消費量の多い、コストの高い乾燥工程を必要としている。
【0013】
1980年代の初頭に開発された、建築材料を着色するための顔料のためのダストフリーで、自動計量可能なまた別な供給形態は液状着色剤であって、これはスラリーとも呼ばれる。その顔料は、多くのアジュバントの助けを借りて、水の中に分散されている。それらのアジュバントは本質的には湿潤および分散用添加物であって、それらによって、比較的低い粘度を有しながらも高い顔料含有量を有する液状着色剤を製造することが可能となっている。比較的低い粘度とする理由は、その液状着色剤が効果的に計量できるようにするためである。市販されている液状着色剤の固形分含量は一般に、55%以下である。それと同時に、それらの湿潤および分散用添加物は、沈降が起きる傾向を大いに抑制し、それによって、長期に貯蔵した場合でも、充分な安定性が達成できることも意図されている。粉体顔料に比較しての、付随的な改良点は実質的にダストが発生せず、計量がはるかに容易であることである。液状着色剤のさらなる利点は、液状着色剤を製造する工程に含まれる分散操作によって、それらの顔料が少なくとも部分的には微粉砕されてそれらの一次粒子となることである。その結果、その液状着色剤を建築材料混合物の中に組み入れた場合に、極めて速やかに完全な色の濃さに着色できる。しかしながら、液状着色剤にはいくつかの欠点もある。粉体または粒状物のような固体顔料の形態とは対照的に、液状着色剤では、限定された期間しか貯蔵できない。時間が経過すると分離する傾向がある、すなわち、顔料が容器の底に沈降する。この沈降によって、液状着色剤において望ましくない不均一性が生じ、容器の底部の方が上部よりも顔料の含有量が高くなる。この理由から、製造業者は、貯蔵期間が長引いた場合および使用前には必ず、液状着色剤を均一化させることを推奨している。この目的のためには、その液状着色剤を撹拌するかまたは容器の中に圧縮空気を吹き込んで、撹拌することで、顔料の懸濁物を再均質化させる。液状着色剤の水分含量が高いために、特に冬期の凍結温度では問題が生じる。このことによって、日程計画および倉庫保管が困難となる。液状着色剤についてのもう一つの欠点は、その容器が破損した場合である。液状着色剤が漏れだして、環境および作業者に対する汚染を招く。
【0014】
液状着色剤に代わる形態としては、使用者自身が使用直前に水を用いて顔料を混合することによって調製する液状着色剤があり、これはオンサイトスラリー(on-site slurry)として知られている。使用者は製造業者から、顔料の粉体または粒状物を入手し、それらをオンサイトで水中撹拌し、次いでその懸濁物を建築材料混合物の中に計量添加する。そのような懸濁物には通常さらなるアジュバントは含まれていないので、それらは沈降に対しては安定ではなく、そのため撹拌中でも常に不均一特性を示す。この形態の液状着色剤は、最近では衰退してきている。
【0015】
(特許文献19)には、セメント仕上げ建築材料を黒色に着色するためのサーマルブラックの記載がある。(特許文献19)の教示に従えば、粉体または粒状物よりも水性の液状懸濁物(スラリー)を使用する方が有利である。(特許文献20)には、セメント質の物品を黒色に着色するための、サーマルブラックをベースとする高粘度ペースト状水性スラリーが開示されている。その高粘度ペースト状水性スラリーは、50%を超える極めて高い固形分含量を有している。それにも関わらず、それらはポンプ輸送が可能であり、容易かつ信頼性の高い計量が可能である。しかしながら、そのように固形分含量が高いと、湿潤剤および分散剤を添加することによって安定化させなければならない。
【0016】
(特許文献21)には、粉体様、ビーズ様、または液体的な特性を有する、水性で、非ダスト性で、容易に分散可能なカーボンブラック調製物を製造するための方法が記載されていて、その水分含量を調節して、その調製物が30%〜80%の間の水分を含むようにしてある。そのカーボンブラック調製物を製造する場合に、湿潤剤および/または分散剤を使用することもまた可能である。そのカーボンブラック調製物は、紙、板紙およびセメント産業において着色剤として使用することができる。しかしながら、開示されている製造方法は、他の顔料の場合には適用できない。
【0017】
市販されている水性顔料調製物には、加工を可能とするために許容される粘度を維持しながらも、極めて高い固形分含量を有する懸濁物を得る目的で、湿潤剤および分散剤が含まれている。分散剤を添加すると、コンクリート混合物の中では可塑剤として作用する。それらはコンクリートの凝固を抑制し、さらに、水−セメント比に影響を与え、コンクリートの粘稠度にも関係する。
【0018】
アスファルトを着色するための供給形態:
無機顔料粒状物を用いてアスファルトを着色するための方法をその記述に含む、上述の(特許文献15)、およびアスファルト、ビチューメン、ビチューメン系物質およびタールを着色するための顔料粒状物を開示している、上述の(特許文献22)と同様に、(特許文献23)にも、顔料粒状物のためのバインダーとしてオイルを使用した無機顔料粒状物を用いて、アスファルトを着色させるための方法が開示されている。これは、単純な粒状化法である。これらの場合も、上述の粒状化法の欠点を免れ得ない。
【0019】
上述の(特許文献9)には、粒状物を製造する際に解砕剤を使用することが開示されているが、それらはアスファルトを着色させる場合に、とりわけ適していると言われている。解砕剤には通常、それ相応の大きな水吸収能力を有する、高度に親水性のポリマーが含まれている。アスファルトを加工する場合、水分がまったく存在しないために、そのタイプの粒状物はアスファルト混合物の中に、迅速、充分には分散しないであろう。
【0020】
従来技術において、アスファルトを着色させるための多くの顔料粒状物や、各種の製造方法が記載されてはいるものの、アスファルト産業では依然として、付随する欠点があったとしても、顔料としては粉体の形態で全面的に使用されている。この分野においては、粒状物の地位は確立されていない。
【0021】
液状着色剤は、それらが高い水分含量を有し、またアスファルトが親水性であるため、さらにはその加工温度が高く、水分が蒸発してしまって、その製造プロセスを困難とするために、アスファルトを着色するには適していない。
【0022】
エマルション塗料およびプラスチックを着色するための供給形態:
(特許文献24)には、オイルを添加することによる乾燥顔料から無機顔料粒状物を調製するための多段方法が開示されているが、これは、(特許文献15)に記載されている方法に類似している。この方法によって調製された顔料粒状物は、プラスチックを着色するため、および粉体コーティング物質を製造するためには好適である。(特許文献24)に開示されている方法は、(特許文献15)に関してすでに述べたのと同じ欠点を有している。
【0023】
プラスチックまたはワニスを着色するため、さらには水性のエマルション塗料または着色ペーストを製造するために好適な無機顔料粒状物が、(特許文献25)にも開示されている。それには、とりわけ、建築材料、ワニスおよびプラスチックを着色するため、ならびに水性エマルション塗料、着色ペーストおよびスラリーを製造することを目的とした無機顔料粒状物が記載されている。その粒状物には、1種または複数の、25℃で液状である水溶性、親水性もしくは疎水性/親水性の助剤、または、水溶性、親水性もしくは疎水性/親水性助剤の混合物であってその混合物が25℃で液体であるものが、0.1%〜10重量%の量で含まれている。それらの粒状物を調製するためには、例えば凝集粒状化法、スプレー乾燥粒状化法、さらには圧縮法など、各種の具体的な調製方法が存在する。
【0024】
(特許文献22)には、非極性媒体、例えばアスファルト、ビチューメン、ビチューメン系物質、タールおよびプラスチックを着色させるための顔料粒状物が開示されており、それらは、顔料、非極性媒体の中での顔料の着色と分散を促進させる少なくとも1種の助剤、および/または極性系のための少なくとも1種の分散剤、さらには(適切であるならば)溶媒を含む混合物から製造する。非極性媒体中での顔料の着色と分散を促進させる助剤は、例えばワックスの群から選択されるのが好ましい。(特許文献26)の場合と同様に、(特許文献22)にも、粒状物を調製するためのいくつもの方法が記載されている。しかしながら、それらの方法は、先に述べた方法、例えば圧縮およびブリケッティング法、スプレー乾燥による粒状化法、流動層粒状化法、または凝集粒状化法の一つに過ぎない。
【0025】
すでに述べたように、(特許文献8)には、少なくとも1種の顔料と、さらには、所望により、バインダー、分散剤および湿潤剤を含む分散性の顔料濃縮物が開示されており、それには解砕助剤が含まれていて、これは(充分な量の)水と接触すると機械的な力を加えなくてもその濃縮物の一次構造を、1分以内に、実質的に完全に解砕させて、顔料を放出させる。このタイプの顔料濃縮物は、プラスチックおよび合成樹脂を着色したり、塗料、ワニスなどを着色したりするのに好適であるとも言われている。使用される解砕助剤は、10〜2000μmの間の粒子サイズを有するセルロース繊維が好ましい。しかしながら、この種のサイズの粒子は、塗料、ワニスおよびプラスチックを製造するという文脈においては、適していない。
【0026】
プラスチックを着色するためには顔料粒状物が不利であるのは、それらの分散性が不充分であるからである。この理由のために、顔料粒状物は、プラスチックを着色させるという地位には今日にいたるまでつけなかった。プラスチックが調製される際に遭遇する加工温度が高いために、顔料粒状物が互いに焼結され、それによってその分散操作が阻害されることになる可能性がある。そうなると、その分散効果が、高品質のプラスチックを製造するためには充分とはもはや言えなくなる。
【0027】
液状着色剤は、それらの水分含量が高くそしてプラスチックが疎水性であるために、さらにはプラスチックの加工温度が高くて、その温度では水が蒸発して製造プロセスを困難としてしまうために、プラスチックを着色するには適切なものではない。
【0028】
塗料およびワニスを着色するための顔料粒状物は、その地位を確保するのが極めて遅れている。その理由の一つは、溶媒系および無溶媒系システムおよび粉体コーティング物質などがほとんど無限とも言えるくらい存在していることである。粒状物を製造しようとすると、ある種の助剤を必要とする。しかしながら、公知のことではあるが、一つのシステム(バインダー、充填剤、溶媒および添加剤)において極めて良好な分散性や製品品質の改良が得られるような助剤であっても、別なシステムにおいてはその効果が大幅に低下し、さらにある種の環境下では不相溶性が観察されることさえあり得る。したがって、例えば、溶媒系のワニスシステムの中に組み入れれば有利な疎水性助剤も、水性エマルション塗料の中に組み入れた場合には、その粒状物が水ではほとんど濡れないために支障が生じることになる。この理由から、塗料およびワニスの分野においては、それぞれの塗布媒体のために、その媒体にとって最適な助剤を用いて、特別仕様の粒状物を準備して使用することが必要となる。水系のシステムの場合についてだけは、近年、良好な分散性を有する粒状物の市場提供が見られるようになってきた。したがって、例えば、ランクセス・ドイチュラント・GmbH(Lanxess Deutschland GmbH)は、レバニル(LEVANYL)(登録商標)グラン(Gran)およびレバノックス(LEVANOX)(登録商標)グラン(Gran)を用いて、微小粒状形態の、一連の自己分散性で無溶媒の有機および無機顔料調製物を提供している。それらの製品は、各種の水系のシステム、例えば、塗料、洗剤または目地用モルタルなどに好適である。しかしながら、それらの製品における添加物の割合が極めて高い。そのために、それらのものはもはや純粋な顔料粒状物ではなく、直ぐに使用可能な形態をとった、固形顔料配合物と考えなければならない。同様なことは、ビー・エー・エス・エフ・AG(BASF AG)からのエックスファスト(Xfast)(商標)の商品名で知られるスターイン(stir-in)型顔料にもあてはまる。それらのスターイン型顔料は、粒状化された形態となっていて、直ぐに使用可能であり、そのためにその塗料は、撹拌しながら組み入れると、即座に均質に分散される。それらの製品もまた、添加物の割合が極めて高く、一般的には20%を超え、多くの場合実に30%にもなるので、これもまた、直ぐに使用可能な固形顔料配合物とみなすべきである。それらはほとんどの場合、水系の塗料およびワニスシステムのためだけに採用される。
【0029】
紙を着色するための供給形態:
今日でおいてさえ、紙を着色するためには、もっぱら粉体顔料が依然として使用されている。その理由は、粉体は別として、その他のすべての供給形態はある種の添加助剤を含んでいるからである。それらの助剤は、製紙における、ただでさえ極めて厄介なプロセスに対して妨害作用を有する。したがって、紙の着色ではほとんどの場合、粉体の形態の顔料が直接使用される。例外的な場合として、オンサイトスラリーが使用されることもあるが、その場合、顔料粉体をオンサイトでまず水の中に懸濁させてから、着色作業で使用する。
【0030】
原理的には、市場では、その顔料粒状物が得られるにいたった調製方法とはまったく関係なく、顔料粒状物について二つのまったく異なった性質が要求されている。それらの二つの性質とは、粒状物の面からは機械的な安定性、そして採用される媒体の面からは良好な分散性である。機械的な安定性は、製造業者と使用者の間の輸送と、その顔料を使用する際の効果的な計量性および流動性との両方で、良好な輸送性を得るために重要である。それは高い接着力の手段でもたらされ、例えば、バインダーの量と種類に依存する。その一方で、分散性は、粒状化(湿式および乾式摩砕)に先だっての、それぞれの塗布媒体の中に顔料を組み入れる際の機械的エネルギー(剪断力)によったり、媒体の中に組み入れると直ちにその粒状物における接着力を低下させる分散助剤によったりする、効果的な摩砕による影響を受ける。最適な色を得ようとすると、顔料粒状物を崩壊させて一次粒子を形成させる必要がある。無機顔料の場合、極端な量の分散助剤を適用することは、助剤/顔料のコスト比のために限度がある。さらに、助剤の割合を高くするとそれに対応して、色強度および/または散乱能の低下が起きてしまう。
【0031】
さらに、例えば粒状物または液状着色剤のようなある種の助剤を添加するための供給形態ではいずれの場合においても、その添加が、それらを着色のために使用する最終製品、別の言い方をすれば、建築材料、アスファルト、プラスチック、塗料、およびワニスの使用性能に悪影響を与えてはならないが、その様な性能の例を挙げれば、例えば、コンクリートの場合であれば、圧縮強度または凝固挙動;アスファルトの場合であれば、圧縮強度または摩擦抵抗;プラスチックの場合であれば、強度またはノッチ衝撃靱性;エラストマー(ポリマー)の場合であれば、弾性;そして塗料およびワニスの場合であれば、レオロジー的性質である。
【特許文献1】DE 3 619 363A1
【特許文献2】EP 0 268 645A1
【特許文献3】EP 0 365 046A1
【特許文献4】DE 3 918 694A1
【特許文献5】米国特許第5,215,583A1号明細書
【特許文献6】米国特許第6,596,072B1号明細書
【特許文献7】米国特許第6,695,990B1号明細書
【特許文献8】DE 103 19 483A1
【特許文献9】DE 197 31 698A1
【特許文献10】DE 100 02 559B4
【特許文献11】DE 100 66 190B4
【特許文献12】EP 0 507 046A1
【特許文献13】DE 196 38 042A1
【特許文献14】DE 196 49 756A1
【特許文献15】DE 4 336 613A1
【特許文献16】DE 28 44 710A1
【特許文献17】米国特許第6,758,893B2号明細書
【特許文献18】米国特許第6,562,120B1号明細書
【特許文献19】DE 299 10 022U1
【特許文献20】国際公開第01/55050号パンフレット
【特許文献21】DE 29 08 202A1
【特許文献22】DE 100 03 248A1
【特許文献23】DE 42 14 195A1
【特許文献24】DE 4 336 612A1
【特許文献25】DE 179 04 943A1
【特許文献26】DE 197 04 943A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
本発明の目的は、例えば粉体または粒状物のような無機顔料ための固体供給形態に加え、そして液体供給形態としての液状着色剤に加えて、有機および無機両方の顔料のための完全に新規な供給形態を提供することであったが、この新規な供給形態は、ダストフリーであり、液状着色剤のような欠点を有することなく、各種の適用媒体を着色するのに好適であり、そしてさらには容易に調製することができる。
【課題を解決するための手段】
【0033】
この目的は、石灰仕上げおよび/またはセメント仕上げ建築材料、アスファルト、塗料、ワニス、紙またはプラスチックを着色するための顔料調製物の手段によって達成されたが、それに含まれるのは、
−液体の中に分散された1種または複数の有機および/または無機顔料;および
−所望により、さらなる助剤および/または充填剤、であり
その顔料調製物が、
−ペースト状またはゲル状の粘稠度のものであり;
−相分離を起こす傾向がなく;そして
−乾燥した滑らかな表面上で着色効果をまったく示さない。
【0034】
本発明の目的とする石灰仕上げおよび/またはセメント仕上げ建築材料としては、コンクリート、セメントモルタル、セッコウおよびケイ灰れんがが好ましい。「アスファルト」という総称には、アスファルト、ビチューメン、すべてのビチューメン系物質、およびタールが包含される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
調製されたペースト状またはゲル状の顔料調製物が乾燥した滑らかな表面上で着色効果を示さないかどうかを確かめるための方法は、光輝引抜き(bright-drawn)V4A丸鋼(素材1.4571)から製造したボルトの助けを借りて実施するが、これは、「使用された測定および試験方法の記述」に関するセクションの項I.3において説明されている。同様にして、乾燥した滑らかな皮膚の上でも、適切な増粘剤および助剤を選択しさえすれば、顔料調製物はほんの低い着色効果を示すか、あるいは好ましくはまったく示さない。そのペースト状またはゲル状の顔料調製物は、手でつかんで、捏ねることができる。たとえ力を加えても、乾燥した手の内側表面の上にはそれらはまったく着色効果を示さない。問題となる表面から、付着した残存物もすべて容易にかつ通常は残すところ無く取り除くことができる。ペースト状またはゲル状の顔料調製物の内部で作用し、その内部においてネットワーク構造および/または水素結合を形成させるのに役立つ分子間力の方が、その顔料調製物が金属、ガラス、セラミック、織物、またはプラスチックのような滑らかで乾燥した表面に働きかけることができる接着力よりも強いからであると推察される。したがって、本発明の顔料調製物はダストフリーであるばかりではなく、清潔かつ何の問題もなく取り扱うことができる。湿気のある表面上だけには、ペースト状またはゲル状の顔料調製物の破壊が始まるための、幾分かの汚れが生じる可能性がある。
【0036】
本発明の顔料調製物の特徴の一つは、1種または複数の有機および/または無機顔料が、液体中の分散体の中に存在するということである。この場合、極性の液体、または極性の液体の混合物、別の言い方をすれば、少なくとも2種の極性液体の混合物を使用することができる。使用される液体としては、水であるか、水混和性の液体であるか、または少なくとも2種の水混和性の液体の混合物が好ましい。例えば、非極性のプラスチックまたはアスファルトを着色するために水のような極性の液体を使用するのは不利であるので、本発明の顔料調製物にはさらに、非極性の液体または非極性の液体混合物、別の言い方をすれば、少なくとも2種の非極性の液体の混合物を含んでいてもよく、その中に有機および/または無機顔料が分散体として存在している。使用される液体としては、水非混和性液体であるか、または少なくとも2種の水非混和性液体の混合物が好ましい。
【0037】
本発明の顔料調製物の中で液体中に分散される有機および/または無機顔料は、有彩顔料および無彩顔料(黒色顔料および白色顔料)のいずれであってもよい。使用する無機顔料としては、酸化鉄、酸化チタン、酸化クロム、酸化亜鉛およびルチル混合相顔料、ならびにカーボンブラック(炭素顔料)またはそれらの混合物が好ましい。しかしながら、充填剤を使用することもまた可能である。金属光輝顔料または効果顔料を使用することさえ可能である。使用する有機顔料としては、アゾ、キナクリドン、フタロシアニンおよびペリレン顔料ならびにインジゴイドまたはそれらの混合物が好ましい。1種または複数の有機顔料とブレンドした1種または複数の無機顔料を使用することもまた考えられる。
【0038】
本発明の顔料調製物の顔料含有量は、好ましくは少なくとも15重量%、より好ましくは少なくとも25重量%である。最大許容顔料含有量は、使用する液体と採用する顔料のタイプとに依存する。非常に重要な部分は顔料粒子のモルホロジー、ならびにさらにそれらのサイズと表面の性質である。顔料が粗いほど、別の言い方をすれば、その顔料の一次粒子が大きいほど、最大許容固形分含量が高くなる。最大で70%またはそれ以上の顔料含有量とすることができる。
【0039】
本発明の顔料調製物は、ペースト状またはゲル状の粘稠度を有する。本発明の目的においては、「ペースト状の粘稠度」という用語は、極めて粘稠、半固体状または餅状で、混練可能であるか容易に変形してその形状をとどめないことを意味している。本発明の目的においては、「ゲル状の粘稠度」という用語は、固体または容易に変形可能もしくは混練可能な組成物で、その形をとどめることを意味している。
【0040】
顔料調製物のペースト状またはゲル状の粘稠度は、少なくとも1種の増粘剤、および/または協働して固さを上昇させることが可能な1種または複数の化合物と組み合わせた少なくとも1種の増粘剤を添加することによってもたらされるのが好ましい。
【0041】
ペースト状またはゲル状の顔料調製物の粘稠度は、調製し終わった後でも、さらに変化する可能性がある。顔料調製物を調製後直ちに小分けし、数日間そのまま動かさずにおくと、多くの場合、その固さが増加する。この原因はおそらく、ネットワーク構造および/または水素結合、さらには顔料調製物中でのそれらの相互作用が、時間が経過してはじめて形成されることができ、外部からの機械的な作用によって崩壊される可能性があるからであろう。この理由から、顔料調製物の粘稠度は、調製された直後ではなく、最も早いとしても24時間の貯蔵時間をおいた後に評価するべきである。
【0042】
使用する増粘剤は、有機増粘剤および無機増粘剤のいずれであってもよい。増粘剤の活性は、各種の効果、例えば、膨潤、ゲル化、ミセルの会合、溶媒和、ネットワーク構造および/または水素結合の形成、それらの間の相互作用などによってもたらされる。増粘剤が、顔料調製物の粘稠度に影響を及ぼす。これは、ゲル構造の成長により、さらには必要に応じて、表面張力の低下によって、粘度が上昇することによって起きる。ゲル構造を成長させることを可能とするような増粘剤を使用することが好ましい。
【0043】
有機増粘剤、例えば、有機天然増粘剤、有機変性天然産物、有機全合成増粘剤、有機会合性(associative)増粘剤または低分子質量有機物を使用することが好ましい。好ましい有機天然増粘剤としては、例えば以下のものが挙げられる:アガロース、寒天、カラギーナン(イオタ、カッパまたはラムダ形)、トラガカント、アラビアゴム、アルギン、高エステル化度および低エステル化度のペクチン、ポリオース(polyose)、グアー粉、カルバイン(carubine)(イナゴマメ粉)、タラ粉(tara flour)、カラヤ、ゲラン、キサンタン、デンプン、リン酸デンプン、デキストリン、ゼラチン、またはカゼイン。アルギンは、褐藻類の細胞壁からの全多糖類成分の集合名と考えるべきである。これらには、アルギン酸およびその塩のアルギン酸塩、さらにはアルギン酸の誘導体が含まれる。市販されている製品は通常アルギン酸塩と呼ばれている。アガロースまたは寒天(agar−agar、短く呼べばagar)には、各種の紅藻類の細胞壁からの多糖類成分が包含される。寒天は二つの成分の混合物であって、その一つがゲル化効果を有し最高70%までの量で存在するアガロース、もう一つが非ゲル化性のアガロペクチン(最高30%まで)である。カラギーナンの名称には、カラギーナンと、さらには1種だけのイオンを有していて多くの場合カラギネート(carrag(h)eenate)と呼ばれている半合成製品とが包含される。それら三つの用語は、同意語である。
【0044】
ここで簡単に、好ましい有機天然増粘剤のいくつかと、それらの性質について詳細な説明をする。
【0045】
寒天は冷水には溶解しないが、加熱すると溶解し、冷却するとゲル化するが、これはカラギーナンも同様であって、似た画面を想像すると、二重らせんとらせんの会合の手段によって三次元のネットワークが形成される。それらのゲルは、水素結合によってのみその安定性が保たれる。寒天のゲルは、カチオンには関係なく、0.5%強度の水溶液である。そのゲルは、カラギーナンゲルよりは強度が高く、熱による可逆性がある。しかしながら、それらは極めて強いヒステリシスを示し、ゲルの軟化温度とゲル化温度との間には差が生じる。ゲル化温度は45℃であるのに対して、溶融させようとすると、90℃までの加熱が必要である。
【0046】
カラギーナンの場合においては、3種の主たる成分、カッパ、イオタおよびラムダカラギーナンを実質的に区別する。同様にしてギリシャ文字の、例えばアルファ、ベータ、パイ、またはオメガカラギーナンとして同定されている、さらなるカラギーナンのタイプについては、本明細書ではこれ以上扱わない。カラギーナンの場合には、そのゲルの強度は、二重らせん構造からもたらされる。カッパカラギーナンおよびイオタカラギーナンの場合、加熱溶液を冷却していくと、ダイエクアトリアル(diequatorial)なグリコシド結合が二重らせんの形成のための可能性を与えることが知られている。このようにして、凝集ゾーンが形成され、三次元ネットワークが出現して、ゲルが形成される。加熱すると、らせんが再びほどけて、分子のランダムな相互からみ合いが生じ、ゲルが融解する。カラギーナンを含むゲルは、ヒステリシスの程度が低いことで有名である。ゲルの状態では、らせんが互いに会合することができるが、これは、ネットワークが縮むことを意味していて、そのゲルがよりもろくなり、シネレシスを示す。カッパカラギーナンを用いて製造した水性ゲルはもろくて、濁りとシネレシスを起こしやすい。この現象は、イオタカラギーナンと混合する手段によって回避することができる。イオタカラギーナン単独では透明な水性ゲルを形成し、それはシネレシスを示さず、また極めてヒステリシスが低いが、かなり弱くもある。
【0047】
ペクチンは、高分子質量のグリコシド系植物成分であって、果実、根、および葉に広く分布している。ペクチンは、実質的にガラクツロン酸単位からなり、その酸基の20%〜80%がメタノールとのエステルになっている。ペクチンの内でも、エステル化度が50%を超える高エステル化ペクチンと、エステル化度が50%未満の低エステル化ペクチンとの間で区別がある。高速ゲル化ペクチン(エステル化度:72%〜74%)、通常ゲル化ペクチン(エステル化度:68%〜71%)、低速ゲル化ペクチン(エステル化度:61%〜68%)が区別される。高エステル化ペクチンのゲルは、熱可逆性がない。エステル化度が少なくとも20%である低エステル化ペクチンでは、ゲル化させるためにはカルシウムイオンが必要である。ペクチン酸カルシウムゲルは、熱可逆性である。
【0048】
グアー粉は、白色ないしは灰白色のコロイド状粉体であって、シアモプシス・テトラゴノロブス(Cyamopsis tetragonolobus)の種子の内胚乳を摩砕することにより得られる。ヒドロコロイドとして、グアー粉は水中で膨潤するが、きれいな溶液を形成することはなく、デンプンの約8倍の増粘力を有している。グアー粉の溶液は防腐処理をしなければならない。
【0049】
カルバイン(イナゴマメ粉)は、イナゴマメの木(セラトニア・シリクア(Ceratonia siliqua))の果実の種子の内胚乳を摩砕したものである。カルバインは白色ないしは白灰色の粉体である。20℃の水中にはほんの部分的にしか溶解しないが、80〜90℃では完全に溶解する。
【0050】
カラヤはカラヤゴムとも呼ばれ、白色ないしは褐色の粉体であって、水中で膨潤して60〜100倍の容積となり、強力な接着力を有する粘稠なゴム粘液を形成する。カラヤの水性懸濁物の粘度は、そのpH(pH7〜10以下)に依存するが、より酸性またはよりアルカリ性の媒体中では急激に減少する。
【0051】
タラ粉の物理的および化学的性質は、グアー粉およびカルバインとほとんど同じである。タラ粉は冷水中には完全には溶解しないが、同じ濃度のグアー粉またはカルバインの溶液よりは、顕著に高い粘度を有する。カルバインと同様に、タラ粉はキサンタンとのゲルを形成するが、それらのゲルは弱く、またその溶融点も低い。寒天やカラギーナンと組み合わせると、タラ粉は相乗的なゲル強度の向上を示す。
【0052】
ゲランゲルは広い温度およびpH範囲で安定であって、塩の濃度を変化させることによって、その固さを変えることができる。置換基もまた、そのゲル性能に影響を与え、酢酸塩を用いてエステル化されている天然のゲランは、柔らかなゲルを形成するが、その一方で非置換ゲランのゲルはしっかりしている。加熱後に冷却すると、ゲランが熱可逆性のゲルを形成するが、1価および2価のカチオンを存在は必須である。
【0053】
キサンタンは、適切な培養条件下でキサントモナス・カンペストリス(Xanthomonas campestris)によって分泌される、微生物系のアニオン性多糖類である。水溶液中では、キサンタンは、比較的剛直で、規則的ならせん構造をとっている。それらは、一重らせんであっても、二重らせんであってもよい。キサンタンは、熱水、冷水いずれにも容易に溶解する。その場合、らせんが三次元のネットワークを形成し、それが粘度の上昇をもたらす。キサンタンは、温度依存性が極めて低く、1〜11の広いpH範囲にわたって安定して存在する。
【0054】
好ましい有機変性天然物質の最も重要な代表例としては、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、またはその他のセルロースエーテル、などが挙げられる。水中におけるそれらの増粘効果は、水和と、分子間および分子内の水素結合、ならびに分子鎖の相互からみ合いの形成により達成される。
【0055】
好ましい有機全合成増粘剤は、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸およびポリメタクリル酸ならびにそれらの塩、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエーテルグリコール、スチレン−無水マレイン酸コポリマー、ならびにそれらの塩、などであってよい。ポリアクリル酸およびポリメタクリル酸ならびにそれらの塩にはさらに、アクリル酸およびメタクリル酸のコポリマーおよびターポリマーも含まれる。それらの増粘剤は、水溶液または酸性エマルションの形態で入手することができ、中和したときだけ、高度に粘稠な溶液に変化する。
【0056】
有機会合性増粘剤もまた好ましい。上述の有機変性天然産物および有機全合成増粘剤とそれらが異なっているのは、それらがその分子中に水溶化親水性基に加えて、疎水性末端基または側基も含んでいる点にある。このことが、会合性増粘剤に界面活性剤的な性質を与え、ミセルの形成を可能としている。会合性増粘剤の例を挙げれば、以下のようなものがある:疎水的に変性されたポリアクリレートであって、アニオン性のアクリレート増粘剤分子の中に組み入れられた非イオン性の親水性および疎水性基を含むもの;疎水的に変性されたセルロースエーテルであって、セルロースエーテル分子の中に組み入れられた長鎖のアルキルエポキシドまたはアルキルハライドを含むもの;疎水的に変性されたポリアクリルアミド;疎水的に変性されたポリエーテル;または会合性ポリウレタン増粘剤であって、親水性ポリエーテルセグメントからなり、ウレタン基を介して結合され、比較的に高分子質量であり、その少なくとも二つの末端疎水性分子基によって封止されているもの。この会合性増粘剤は、本発明の顔料調製物の中に疎水性で、水非混和性の液体が存在している場合に有利に使用することができる。増粘剤として機能することが可能な低分子質量の好ましい有機物の例としては、金属セッケン、水素化ヒマシ油、変性脂肪族誘導体またはポリアミドが挙げられる。好ましい金属セッケンは、8〜22個の炭素原子、および好ましくは12〜18個の炭素原子を有する有機カルボン酸から誘導される金属セッケン、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ラウリン酸亜鉛またはミリスチン酸マグネシウムである。
【0057】
使用される増粘剤は、無機増粘剤が好ましい。好ましい無機増粘剤は、例えば、シリカまたはポリシリカなどであってよい。水性または親水性の系の場合、フィロケイ酸塩も好ましく、このものは、充分な剪断力と適切なpH範囲であれば、水中でペースト状またはゲル状の構造を築く。フィロケイ酸塩の最も重要なサブグループはスメクタイトであり、さらにはモンモリロナイトおよびヘクトライトのサブグループである。四級アンモニウム化合物を用いて処理することによって、親水性スメクタイトから疎水性のオルガノフィロケイ酸塩を形成させると、有機親和性のシステムには好適となる。オルガノフィロケイ酸塩は、特に本発明の顔料調製物の中に疎水性で水非混和性の液体が存在している場合には、有利に使用することができる。
【0058】
互いに組み合わせることによって相乗的な効果が得られ、それらの増粘作用が強化されるような2種以上の増粘剤を使用することが好ましい。互いに組み合わせることによって相乗的な効果が得られる増粘剤の例としては、キサンタンとデキストリン特に、ガラクトマンナン、例えばカルバイン、グアー粉およびタラ粉との組合せだけを挙げておく。例えばカルバインを用いた場合、キサンタンが強度のある、ゴム状で熱可逆性のゲルを形成する。キサンタンの場合には、カラギーナンおよび寒天の場合と同様に、二重らせん構造がもたらされて、それによって優れた可塑性と降伏点が得られると考えられる。ガラクトマンナン分子が滑らかなセグメントを有しているために、二重らせんが結合されて三次元ネットワークを形成する。特に興味深いのは、カッパカラギーナンとカルバインとの間の相乗効果である。カラギーナンの一部を(それ自体はゲル化しない)カルバインで置き換えると、ゲルが強化され、その性能が改良されて、より弾性が高くなり、濁ったり、シネレシスを起こしたりする傾向がより低くなる。寒天もまた、カルバインとの相乗効果を示す。
【0059】
1種または複数の化合物を添加することによって、ペースト状またはゲル状の粘稠度を有する顔料調製物の固さを上昇させることが可能である。協働して固さを上昇させるような1種または複数の化合物と組み合わせた少なくとも1種の増粘剤を、顔料調製物を基準にして0.001%〜10重量%、より好ましくは0.1%〜5重量%の全量で使用することが好ましい。各種のポリヒドロキシ化合物、例えばポリビニルアルコールまたは多糖類、例えばカルバインを、小量のホウ砂またはホウ酸塩と組み合わせると、粘度がシャープに上昇し、最終的にはゲル化する傾向があることは、公知である。この現象は、水中だけで起きるのではなく、例えばホルムアミド中でも起きる。ペクチンの内でも、エステル化度が50%を超える高エステル化ペクチンと、エステル化度が50%未満の低エステル化ペクチンとの間で区別がある。高エステル化ペクチンの場合、水素結合が生成する結果として、ペクチン鎖の小領域において会合が存在し、それによって三次元のネットワークが形成される。分子の中に不規則性があると、短い点接着だけが生じる。それらを安定化させるためには、水の活性を低下させ、解離を抑制する必要がある。糖(、例えばスクロース)および酸(果実酸、例えば、クエン酸またはリンゴ酸)を添加することによって、そのいずれもが達成される。エステル化度が高いほど、ペクチンのゲル化傾向が早くなる。エステル化度が少なくとも20%ある、低エステル化ペクチンでは、ゲル化させるためにはカルシウムイオンが必要であって、それが、ガラクツロン酸単位のカルボキシル基およびヒドロキシル基と共に、軸−軸結合で結び合わされて、鎖の会合を形成する。カルシウムイオンは不足状態にとどめなければならず、ペクチン分子とは徐々に反応させるべきである。そのように徐々に反応させることは、例えばクエン酸塩またはリン酸塩のような不溶性のカルシウムの塩を使用することによって達成される。アミド化されたペクチンは、中程度の地位を占める。それらをゲル化させるにはカルシウムイオンを必要とするが、カルシウムが過剰に存在していても凝固する傾向は無い。アルギンの場合と同様に、ゲル化の文脈においては、カチオンが大きな役割を果たす。カルシウムイオンは小量であっても、錯体を形成する結果として、粘度をシャープに増大させることができる。この場合におけるカルシウムイオンに対する感度は、ペクチンの場合におけるよりもかなり高いが、それはおそらく、重合度が高いためであろう。その接着部位は、ペクチンの場合よりも強い。ペクチンの場合とは対照的に、アルギン酸カルシウムゲルは、糖が存在しない場合であっても熱可逆性はない。カラギーナンの場合には、そのゲルの強度は、二重らせん構造の結果としてもたらされる。この場合、そのゲルの強度にはカチオンの存在が極めて大きな影響を有している。カッパリッチなカラギーナン生成混合物の0.2%カリウム塩は、その濃度がちょうど0.5%のところで、水からの固体ゲルを生成し、そのゲル化温度は約40℃、溶融温度は約55℃である。カリウムイオン濃度を上げていくと、その水性ゲルの強度はシャープに上昇する。糖を添加した場合も同様に、ゲルの強度が上昇する。それらを添加することで、ゲル化温度のみならずゲルの溶融温度もまた上昇するが、いずれの場合においても、ヒステリシス、別の言い方をすればゲルの軟化温度とゲル化温度との差は、10〜15℃の間と低いまま保たれる。
【0060】
使用する増粘剤は、藻類抽出物、例えば寒天、イオタ、カッパもしくはラムダ形のカラギーナン、アルギン酸塩、例えばアルギン酸ナトリウムもしくはアルギン酸カルシウム、微生物または植物の滲出物、例えばキサンタンおよびその誘導体、ゲラン、アラビアゴム、トラガカント、カラヤゴムもしくはガッチゴム、果実または植物の種子の内胚乳、例えばグアー粉、カルバインもしくはタラ粉、果実抽出物、例えばペクチン、動物由来の増粘剤、例えば、タンパク質誘導体もしくはウシ、ブタ、魚からのゼラチン、さらにはカゼイン塩、またはそれらの化合物の混合物が好ましい。
【0061】
少なくとも1種の増粘剤と組み合わせて、協働して固さを上昇させるのに使用される1種または複数の化合物は、それぞれ、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、グリセロールリン酸塩、ホウ酸塩、塩化物、硝酸塩、リン酸塩、酢酸塩、1価、2価または3価の金属塩の水酸化物、さらには、α−ヒドロキシ酸の塩(クエン酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、およびリンゴ酸塩)または、果実酸の塩、またはアミノ酸の塩(アスパラギン酸塩、アルギン酸塩、グリコール酸塩およびフマル酸塩)であるのが好ましく、そして、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の塩、特にナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムもしくはストロンチウム塩、好ましくは硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ストロンチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、またはそれらの塩の混合物であると好ましい。その1種または複数の化合物の量は、顔料調製物の全重量を基準にして、0.001%〜3重量%の範囲が好ましく、そして0.1%〜1.5重量%の範囲であるとさらに好ましい。
【0062】
塩単独ではなく、増粘剤と組み合わせて固さを上昇させることも可能である。同様な効果が分子化合物についても知られているので、増粘剤と組み合わせて固さを上昇させるような分子化合物を使用することもさらに好ましい。先に述べたように、高エステル化ペクチンは、水素結合の手段によって三次元のネットワークを形成することができる。しかしながら、分子内に不規則性が存在するということは、その接着サイトが短くなるということを意味している。糖(、例えばスクロース)を添加することによって、さらに安定化させることができる。カラギーナンゲルの場合と同様に、糖を添加することによって、ゲルの強度を上げることができる。アガロースゲルも同様に、水素結合だけによって安定性を得ている。例えば2,3−ジブロモ−1−プロパノールを用いて架橋させることによって、さらなる安定化が達成される。
【0063】
増粘剤と組み合わせることによって固さを上昇させる化合物としては、塩と分子化合物だけではなく、金属の錯体化合物もまた使用することができる。元素周期律表の遷移族IV〜VIの元素、より具体的には、チタン、バナジウムおよびクロムの錯体を使用するのが好ましい。
【0064】
増粘剤と組み合わせることによって固さを上昇させる1種または複数の化合物の量は、顔料調製物の全重量を基準にして、0.001%〜3重量%の範囲であると好ましく、0.1%〜1.5重量%の範囲であるとさらに好ましい。
【0065】
使用する増粘剤は、完全に加水分解されたポリビニルアルコールおよびまたそれらの誘導体もしくは他のポリヒドロキシ化合物を、ホウ素化合物、好ましくはオルト−ホウ酸、テトラ−ホウ酸、メタ−ホウ酸もしくはそれらの塩と組み合わせるか、または、元素周期律表の遷移族IV〜VIの元素、好ましくはチタン、バナジウムおよびクロムの塩もしくは錯塩、例えばチタン(III)塩もしくはチタン(IV)−トリエタノールアミンと組み合わせたものが好ましいが、ここで、必要に応じて、そのpHを中性またはわずかにアルカリ性としておく。各種のホウ酸もしくはそれらの塩、ならびにホウ酸無水物またはフルオロホウ酸と同様に、有機ホウ素化合物、例えば、ジメチルエーテル、プロパノールまたは酢酸などとの、ホウ酸エステルもしくは三フッ化ホウ素の錯体などを使用すると好ましい。
【0066】
ポリビニルアルコール鎖の中で規則的に配列されたヒドロキシル基は、ある種の物質と共に、化学的な観点からすると多少なりとも安定であって、それらが混合された濃度に応じて、ポリビニルアルコール溶液の粘度を上昇させ、場合によってはさらにゲル化にまでいたらすような、錯体化合物または会合体を形成することができる。ポリビニルアルコールとの錯体形成の古典的な例は、一方ではホウ酸との反応であり、他方ではホウ酸の塩との反応である。ホウ酸との反応によって、モノジオール錯体が生成する。それらのモノジオール錯体の溶液の粘度は主として、そのポリビニルアルコールの鎖長および加水分解度に依存する。ポリビニルアルコール溶液をホウ酸の塩またはホウ酸を含む溶液と組み合わせて、そのpHがアルカリ性側にシフトした場合には、状況が異なってくる。この場合、高分子電解質として、ポリビニルアルコール−ホウ酸モノジオール錯体がポリビニルアルコール−ホウ酸ジジオール錯体を形成し、そこでは2本のポリビニルアルコール鎖が、ホウ酸を介して互いに結合している。しかしながら、この場合には、イオン結合を有する構造は同等であろうと考えられる。さらに、オルト−ホウ酸、テトラ−ホウ酸、メタ−ホウ酸もしくはそれらの塩、またはホウ酸無水物またはフルオロホウ酸、有機ホウ素化合物、例えばホウ酸エステルまたは三フッ化ホウ素の、例えばジメチルエーテル、プロパノールもしくは酢酸との錯体なども、同様に使用することが可能である。
【0067】
ポリビニルアルコール溶液の粘度は、ホウ酸およびその塩を用いてのみならず、元素周期律表の遷移族IV〜VIの元素の錯体形成性化合物を用いても、上昇させることができる。ある種の状況においては、粘度におけるこの増加は、溶液のゲル化にまで進行する。多くの場合、形成される錯体は、熱的に固定することができる。ポリビニルアルコール溶液との場合、チタン(IV)−トリエタノールアミン錯体は、高粘度ないしはゲル化したチタン(IV)錯体を生ずる。この錯体によって誘導される粘度の上昇は、pHにはほとんど無関係である。同様にして、チタン硫酸塩もまたポリビニルアルコール溶液と反応して、チタン(IV)−ポリビニルアルコール錯体を形成する。チタン(III)化合物、バナジウム化合物およびクロム化合物は、低い濃度であっても、ポリビニルアルコール溶液のゲル化を起こさせる。有機化合物も同様に、ポリビニルアルコール溶液の粘度を上昇させる。例えばホルムアルデヒドおよび(触媒としての)酸を用いてポリビニルアルコールのアセタール化もまた、この範疇に含まれる。小量でもポリビニルアルコール溶液の増粘をもたらし、場合によってはゲル化に達する。水性アルカリを用いてそのアセタール化反応を停止させると、その混合物の粘稠度がそれが到達した点に固定される。酸触媒を用いて、ポリビニルアルコールを2官能アルデヒド、例えばグリオキサールまたはグルタルアルデヒドでアセタール化させることにより、ゲルを調製することも可能である。多価フェノールおよび関連の化合物、例えば、レソルシノール、ピロカテコール、フロログルシノール、没食子酸、サリチルアニリド、および2,4−ジヒドロキシ安息香酸は、ポリビニルアルコールとは比較的ルーズな錯体(会合体)を形成することができる。それらの会合体は、熱的に可逆性であるが、これはすなわち、高温では液体となり、冷却すると再度固化するゲルを調製できるということである。
【0068】
1種または複数の有機および/または無機顔料がポリビニルアルコール溶液の中の分散体中に存在している場合であったとしても、驚いたことに、上述の物質を用いてそのポリビニルアルコール溶液のゲル化点まで粘度を上昇させることができる。ポリビニルアルコールまたはその誘導体は、本発明の顔料調製物を調製するには適しているのが非常に好ましい。水から出発し、部分的もしくは完全に加水分解されたポリビニルアルコールをオルト−ホウ酸、テトラ−ホウ酸、メタ−ホウ酸もしくはそれらの塩と共に添加して調製されたペースト状またはゲル状の顔料調製物は、多くの傑出した性能によって特徴づけられ、鎖長、ポリビニルアルコールの濃度および加水分解度、さらには添加するホウ酸もしくはその塩の量、または元素周期律表の遷移族IV〜VIの元素の錯体形成化合物の量などによって、顔料調製物の粘稠度を極めて広い範囲で変化させることが可能である。極めて軟らかく、ペースト状で洩糸性のある粘稠度を有する顔料調製物であっても、あるいは、決定的に硬くゴム弾性的な粘稠度を有する顔料調製物であっても、調製することが可能である。部分的もしくは完全に加水分解されたポリビニルアルコールとは別に、その他のポリヒドロキシ化合物をオルト−ホウ酸、テトラ−ホウ酸、メタ−ホウ酸もしくはそれらの塩と組み合わせても使用されるのが好ましい。そのような化合物としては、例えば、マンナン、ガラクトマンナン、例えばカルバイン、ポリマンヌロン酸、ポリガラクツロン酸、ラムノース、ガラクトース、ガラクツロン酸、アラビノース、キシロース、グルクロン酸、マンノース、グルコース、またはガラクタンをベースとした多糖類が挙げられる。それらの多糖類が、直鎖状、分岐状、あるいは高度に分岐状などの、どの形の巨大分子の形態をとっているかは、さほど重要ではない。上述のポリヒドロキシ化合物は、天然に産出されるものであって、例えばセラトニア・シリクア(Ceratonia siliqua)(カルバイン)、メディカゴ・サティバ(Medicago sativa)、グレジチア・トリアカンツス(Gleditsia triacanthus)、トリゴネラ・フェヌム・グラエクム(Trigonella foenum graecum)、シアモプシス・テトラゴノロブス(Cyamopsis tetragonolobus)(グアー粉)またはルピヌス・アルブス(Lupinus albus)の種子において産生される。それらはさらに、天然に、ゴム粘液の形態、例えば、ウルムス・フルバ(Ulmus fulva)の樹皮からのゴム粘液の形態、またはリヌム・ウシタティシマム(Linum usitatissimum)からもしくはタマリンドゥス・インディカ(Tamarindus indica)からのゴム粘液の形態で産生される。それらはさらに、天然にゴムの形態、例えばチェリーゴム(プルヌス・アビウム(Prunus avium))またはアラビアゴムの形態でも産生される。
【0069】
多くの増粘剤またはゲル形成剤は、水中だけではなく他の極性溶媒中でも機能する。例えば、高エステル化および低エステル化ペクチン、さらにはペクチン酸のアルカリ金属塩は、水の中に溶解するだけではなく、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドおよび熱グリセロール中にも溶解する。ホウ砂を用いると水溶液中でゲル化する多糖類は、ホルムアミド中でもこの現象を示す。ゼラチンもまた、エチレングリコール、グリセロール、およびホルムアミド中に溶解する。
【0070】
適当であるのならば、本発明の顔料調製物にはさらなる助剤が含まれていてもよい。使用する助剤としては、リン酸塩、ホスホン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、ケイ酸塩、アルミン酸塩、ホウ酸塩、チタン酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、ステアリン酸塩、酢酸塩の群からの塩、多糖類、例えばセルロース、セルロース誘導体、例えば、セルロースエーテルもしくはセルロースエステル、ホスホノカルボン酸、変性シラン、シリコーンオイル、生物学的栽培からの油(好ましくは、ナタネ油、ダイズ油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、ヤシ油、ヒマワリ油)、パラフィン系および/またはナフテン系ベースの精製石油オイル、合成的に製造されたオイル、アルキルフェノール、グリコール、ポリエーテル、ポリグリコール、ポリグリコール誘導体、エチレンオキシド−プロピレンオキシドコポリマー、タンパク質−脂肪酸縮合反応生成物、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、リグノスルホン酸塩、硫酸化ポリグリコールエーテル、メラミン−ホルムアルデヒド縮合物、ナフタレン−ホルムアルデヒド縮合物、グルコン酸、ポリアクリレート、ポリカルボキシレートエーテル、ポリヒドロキシ化合物、ポリヒドロキシアミノ化合物、またはそれらの溶液もしくは混合物もしくは懸濁物もしくはエマルションが好ましい。
【0071】
使用される助剤としては、湿潤剤および/または分散用添加物および/または乳化剤および/または防腐剤および/または脱泡剤および/または保存剤および/または沈降防止剤および/または付香剤が好ましい。
【0072】
好適な湿潤剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族アルコール硫酸塩、脂肪族アルコールエーテル硫酸塩、脂肪族アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、分岐状および/または非分岐状のアルカンスルホン酸塩もしくはオレフィンスルホン酸塩、分岐状および/または非分岐状のアルカン硫酸塩もしくはオレフィン硫酸塩、ならびにコハク酸塩が好ましい。
【0073】
使用する分散用添加物としては、リグノスルホン酸塩、メラミンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、セッケン、金属セッケン、ポリビニルアルコール、ポリビニル硫酸塩、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリカルボキシレートエーテル、中鎖および長鎖のアルカン硫酸塩もしくはアルカンスルホン酸塩もしくはアルカンスルホコハク酸塩、ならびに中鎖および長鎖のアルカンリン酸塩もしくはアルカンホスホン酸塩が好ましい。
【0074】
好適な乳化剤としては、コンクリートのような水性システムを用いた建築材料において使用するには、7〜40、好ましくは8〜18のHLB値を有し、例えば、アルキルラジカルもしくはアクリルラジカルおよび親水性ペンダント基および末端基、例えば、アミド、アミン、エーテル、ヒドロキシル、カルボキシレート、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、アミン塩、ポリエーテル、ポリアミド、ポリリン酸塩を含む乳化剤が好ましい。それらの物質は、それらのHLB値に応じて、単独で使用しても、組み合わせて使用してもよい。
【0075】
防腐剤を挙げれば、例えば、ホルムアルデヒド供与化合物、フェノール系化合物、またはイソチアゾリノン調製物などである。多くの場合それらのような防腐剤が推奨されるが、その理由は、多くの有機増粘剤が微生物の攻撃を受けやすく、防腐剤を添加することによって安定化させることが可能となるからである。
【0076】
さらに、脱泡剤を使用することも好ましい。脱泡剤は、泡の発生を防止することを目的とする物質である。それらは、ペースト状またはゲル状の顔料調製物と空気との界面に閉ざされた膜を形成することによって機能し、それにより、その中で脱気/脱泡が望まれる媒体が極めて短い時間の間に比較的小さな表面積をとるようにし、気泡を破壊して、比較的低いエネルギー状態を形成させる。脱泡剤は多くの場合、天然油脂から誘導されるが、そうでなければ、石油誘導体、変性シリコーンオイル、または変性ポリエーテルである。
【0077】
付香剤とみなされる物質はすべて、多少なりとも強い臭気を有していて、ヒトの嗅覚を刺激するようなものである。心地よい、または刺激的な方式でヒトの嗅覚に刺激を与える付香剤を使用することが好ましい。好ましい付香剤は、天然、半合成、もしくは全合成由来のものであってよく、天然由来の付香剤は植物または動物源から得られる。付香剤は単独で使用することも、相互に組み合わせて使用することもできる。
【0078】
それらの助剤は、顔料調製物を基準にして、0.001%〜10重量%、より好ましくは0.05%〜5重量%の全量で使用することが好ましい。
【0079】
本発明の顔料調製物は、好ましくは少なくとも2ヶ月の間、より好ましくは少なくとも6ヶ月の間にわたって相分離を起こす傾向はない。別の言い方をすれば、それらの期間の間は、その液相からペースト状またはゲル状の顔料調製物が分離することはない。ゲルの場合には、この現象はシネレシスと呼ばれている。シネレシスにおいては、液相が、ゲルからその構造を破壊することなく出てくる。これは「滲出」と呼ばれることもある。したがって、本発明のペースト状またはゲル状の顔料調製物は、好ましくは少なくとも2ヶ月の間、より好ましくは少なくとも6ヶ月の期間、変化することなくとどまる。調製されたペースト状またはゲル状の顔料調製物が液相を分離することによる相分離の傾向を有しているかどうかを確かめるための方法は、「使用された測定および試験方法の記述」に関するセクションの項I.4において説明されている。
【0080】
本発明の顔料調製物は、例えば金属、ガラス、セラミック、またはプラスチックのような乾燥した滑らかな表面上では着色効果を示さない。「使用された測定および試験方法の記述」に関するセクションの項I.3において説明するように、ボルトの質量の平均的な増加は、好ましくは0.07g以下、より好ましくは0.04g以下である。
【0081】
顔料調製物にはさらに、顔料調製物を基準にして、40重量%以下、好ましくは10重量%以下の量で、少なくとも1種の充填剤が含まれているのが好ましい。「充填剤」という用語は、顔料調製物にさらなる増粘性を与えることが可能であり、それに硬度、滑らかさ、艶消し、または光沢を付与することを目的とした、無色で無機または合成の、薄片状または非薄片状の粒子を意味している。充填剤は以下のものから選択するのが好ましい:タルク、雲母、シリカ、カオリン、ナイロン粉体、ポリ(β−アラニン)粉体、ポリエチレン粉体、テフロン(Teflon)(登録商標)、ラウロイルリシン、窒化ホウ素、ビスマスオキシクロリド、ポリテトラフルオロエチレン粉体、ポリメチルメタクリレート粉体、ポリウレタン粉体、ポリスチレン粉体、ポリエステル粉体、合成中空マイクロスフェア、マイクロスポンジ、シリコーン樹脂マイクロスフェア、亜鉛およびチタンの酸化物、ジルコニウムおよびセリウムの酸化物、沈降炭酸カルシウムまたはチョーク、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、中空シリカマイクロスフェア、ガラスまたはセラミックのマイクロカプセル、8〜22個の炭素原子、好ましくは12〜18個の炭素原子を有する有機カルボン酸から誘導される金属セッケン、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ラウリン酸亜鉛およびミリスチン酸マグネシウム、化合物SiO/TiO/SiO、TiO/CeO/SiOもしくはTiO/ZnO/タルク、ならびにさらには微小板の形態のポリエチレンテレフタレート/ポリメタクリレートポリマー。
【0082】
本発明はさらに、顔料調製物を調製するための方法も提供し、
−所望により、さらに助剤および/または充填剤を含む液体中の、1種または複数の有機および/または無機顔料の分散体に、
−その分散操作の前、その間、またはその後に、少なくとも1種の増粘剤、および/または協働して固さを上昇させるような1種または複数の化合物と組み合わせた少なくとも1種の増粘剤を添加し、そして、
−そのペースト状またはゲル状の顔料調製物を充分に長時間かけて均質化させ、そして
−適切であるならば、最後にさらなる助剤を添加することを特徴とする。
【0083】
「分散体」という用語は、DIN EN 862:1995−10に従うと、2種以上の相から作られた系(分散系)を意味していて、それらの相の一つが連続であり(分散媒)(これはすなわち、本発明の意味合いにおいては、1種または複数の液体である)、少なくとも1種の他のものが、微細に分散されている(分散相、分散質)(別の言い方をすれば、本発明の意味合いにおいては、有機および/または無機の1種または複数の顔料である)。無機顔料は液体の中には不溶性であるために、「懸濁物」という用語は、「分散体」という用語と等価である。
【0084】
少なくとも1種の増粘剤、および/または協働して固さを上昇させるような1種または複数の化合物と組み合わせた少なくとも1種の増粘剤の添加は、室温または室温以上で実施するのが好ましい。
【0085】
有機または無機の増粘剤を使用することが好ましい。
【0086】
使用する有機増粘剤は、部分的または完全に加水分解されたポリビニルアルコールおよびまたそれらの誘導体もしくは他のポリヒドロキシ化合物を、ホウ素化合物、好ましくはオルト−ホウ酸、テトラ−ホウ酸、メタ−ホウ酸もしくはそれらの塩と組み合わせるか、または、元素周期律表の遷移族IV〜VIからの元素、例えばチタン、バナジウムおよびクロムの塩もしくは錯塩、好ましくはチタン(III)塩もしくはチタン(IV)−トリエタノールアミンと組み合わせたものとすることが好ましく、ここで、必要に応じて、そのpHを中性またはわずかにアルカリ性としておく。
【0087】
本発明の顔料調製物の調製は、乾燥した固形の顔料から出発しても、液相(分散体)から出発してもよい。
【0088】
前者の場合には、最初に1種または複数の有機および/または無機顔料を液体の中に分散させて、例えば顔料の粉体または粒状物の中に存在するある種の凝集塊を崩壊させてやる必要がある。液体中の1種または複数の有機および/または無機顔料の分散体は、それ以前に凝集されていた粒子の再分散体とすることが好ましい。使用する液体は、水であるか、水混和性の液体であるか、または少なくとも2種の水混和性の液体の混合物であるのが好ましい。例えば非極性であるプラスチックを着色するような場合においては、水のような極性の液体を使用することは不利であるので、非極性の液体または非極性の液体混合物、別の言い方をすれば少なくとも2種の非極性の液体の混合物を使用することも可能である。使用する液体は、水非混和性液体、または少なくとも2種の水非混和性液体の混合物であるのが好ましい。
【0089】
本発明の顔料調製物を調製するために乾燥顔料を使用するのは、その顔料が乾燥製造プロセスによって得られている場合には特に有利である。したがって、例えば二酸化チタン顔料、酸化クロム顔料、およびルチル混合相顔料は、高温のか焼プロセスによって調製される。赤色酸化鉄顔料の調製も同様に、黄色酸化鉄を脱水させるか、あるいは高温で黒色酸化鉄を酸化することによって実施することができる。液相中への固形顔料の分散は、例えば、二つの表面の間で顔料をこすり合わせたり、高速回転のディスクによって発生させた衝撃力および剪断力の手段によって顔料凝集体を崩壊させたりすることによって、実施してもよい。それら2種の手順を組み合わせることもまた可能である。当業者ならば、この原理に従って操作され、固形顔料を液相の中に分散させるのに適した装置については知っている。この点に関しては、ロールミル、ボールミル、ローターステーターミル、ディソルバー、撹拌ミル、およびコンパウンダーを挙げるにとどめておく。撹拌ミルは、摩砕媒体としてビーズまたは砂を用いたビーズミルまたはサンドミルとして操作することが可能であるが、それらは、摩砕容器が一つだけであってもよいし、あるいは、通常は直列に接続された二つ以上のミリング容器を有する、マルチチャンバーミルまたはモジュラーミルと呼ばれる形式であってもよい。本発明の文脈においては、コンパウンダーとは、粘稠、可塑性、または固形の物質を混合して、高粘度、可塑性、餅状、ペースト状またはゲル状の組成物を形成させるためのすべての装置を指している。コンパウンダーの混練用部材は、相互に対してもしくは固定された壁面に対して、ミリングされる物質に高いレベルの圧縮、分割、および層状の変位がもたらされるように運動させる。コンパウンダーは、Z形の混練羽根を備え、二重混練槽を有する羽根式コンパウンダーであるか、または混練用のアームまたはフックが遊星運動をしているプラネタリーコンパウンダーであるか、または単一または2本のスクリューシャフトを有するスクリューコンパウンダーであるか、またはローラーコンパウンダーであるかの、いずれかであってよい。混合および混練付属装置を取り付けたアジテーターを使用してもよい。分散装置の操作が連続的であるか、非連続的であるかについては、本発明では重要なことではない。適切であるならば、超音波の助けを借りて分散操作を実施するのも有利となるであろう。
【0090】
その出発点を液相とするのならば、その顔料調製物は、例えば、実際の顔料合成の直後にか、または顔料の仕上げ工程の間の濾過および洗浄の後で、乾燥させるより前に得られるタイプの、既存の顔料分散体から出発して調製してもよい。液体中の1種または複数の有機および/または無機顔料の分散体は、顔料製造プロセスで生成する分散体が好ましい。
【0091】
多くの無機顔料が、水相の中で調製される。この理由から、顔料分散体は顔料製造プロセスからの水性分散体が好ましい。顔料製造プロセスからの顔料分散体を使用する場合、顔料分散体がその顔料製造プロセスからどの時点で取り出されるかにもよるが、それらがすでに充分に分散されているのならば、顔料粒子を分散させなくとも、実施することが可能である。それにも関わらず、可能限り最良の分散体が必要とされる場合には、上述のような分散装置を採用するのが有利となるであろう。顔料製造プロセスからの顔料分散体を使用するのが特に有利であるが、その理由は、エネルギーを消費し、コストの高い顔料の乾燥工程を省略することが可能となるからである。
【0092】
分散操作の結果として、有機および/または無機の顔料が液体の中に充分に分散されたときに、増粘またはゲル化が起きて、その組成物の粘度を上昇させる。液体の中に1種または複数の有機および/または無機顔料を分散させる前、その間、またはその後に、少なくとも1種の有機または無機増粘剤、および/または協働して固さを上昇させるような1種または複数の化合物と組み合わせた少なくとも1種の増粘剤を、撹拌機、ミキサー、コンパウンダーまたはディソルバーの中に(適切であるならば、少しずつ)添加するのが好ましい。多くの撹拌機および撹拌機のメカニズムが、従来技術において記載されている。当業者ならば間違いなく、理想的な撹拌機または撹拌機のメカニズムを自分の用途に設置することができ、有機もしくは無機増粘剤、および/または協働して固さを上昇させるような1種または複数の化合物と組み合わせた少なくとも1種の増粘剤を顔料分散体の中に、充分かつ均質に組み入れるために、ペースト状またはゼラチン質の組成物を完全に撹拌して増粘させることができる。当業者ならばさらに、有機もしくは無機増粘剤、または協働して固さを上昇させるような1種または複数の化合物と組み合わせた少なくとも1種の増粘剤を顔料分散体の中に、充分かつ均質に組み入れるために、ペースト状またはゼラチン質の組成物を完全に混合してそれを増粘させるのに適した、各種のミキサーを知っている。混合および混練用付属部品を有する撹拌機のメカニズム、または有機もしくは無機増粘剤、および/または協働して固さを上昇させるような1種または複数の化合物と組み合わせた少なくとも1種の増粘剤を顔料分散体の中に、混練によって、充分かつ均質に組み入れるために、ペースト状またはゼラチン質の組成物を完全に混練させて、それを増粘させることが可能なコンパウンダーが特に好ましい。
【0093】
好ましくは、少なくとも1種の有機もしくは無機増粘剤、および/または協働して固さを上昇させるような1種または複数の化合物と組み合わせた少なくとも1種の増粘剤を(適切であるならば、少しずつ)添加した後に、そのペースト状またはゲル状の顔料調製物を、撹拌機、ミキサー、ニーダーまたはロールミルの中で、この場合もまた、必要に応じて減圧下で、均質化される。減圧下で操作することによって、気泡の混入を防止することができる。本発明の顔料調製物を石灰仕上げおよび/またはセメント仕上げ建築材料、アスファルト、塗料、ワニス、または紙を着色するのに使用する場合には、原理的には、偶発的に混入された気泡がトラブルを起こすことはない。それとは対照的に、エクストルーダー中でプラスチックを着色させる場合には、混入された気泡が破壊的な影響を与える。この特殊な用途のためには、予め気泡を除去しておくことが特に有利である。本発明の顔料調製物がペースト状の粘稠度を有している場合、混入した気泡は多くの場合、それを調製した後数時間または数日の内にいずれの場合も表面に上昇してくる。別の言い方をすれば、顔料調製物は自動的に脱気される。
【0094】
助剤または充填剤の添加は、原理的には、製造プロセスのどの時点で実施してもよい。製造プロセスの始めに、別の言い方をすれば、有機および/または無機顔料を液相の中に分散させる前またはその間に、それらを添加することが好ましい。製造プロセスの最後にそれらを添加することが好ましく、その場合には、ペースト状またはゲル状の顔料調製物の中に組み入れることになる。
【0095】
本発明にはさらに、石灰仕上げおよび/またはセメント仕上げ建築材料、アスファルト、塗料、ワニス、紙またはプラスチックを着色するための方法が包含されるが、その場合、本発明の顔料調製物を石灰仕上げおよび/またはセメント仕上げ建築材料、アスファルト、塗料、ワニス、紙またはプラスチックと混合することを特徴とする。
【0096】
顔料調製物を、石灰仕上げおよび/またはセメント仕上げ建築材料、アスファルト、塗料、ワニス、紙またはプラスチックにそれを添加する前またはその間に、および/または、石灰仕上げおよび/またはセメント仕上げ建築材料、アスファルト、塗料、ワニス、紙またはプラスチックと混合する間に液状化されるのが好ましいが、その液状化が
−1種または複数の液体の中への溶解、および/または
−酸もしくはアルカリの添加によるpHの変化、および/または
−化学反応、さらに詳しくはレドックス反応もしくは酵素反応、および/または
−熱、機械的エネルギーおよび/または超音波の供給、により実施される。
【0097】
したがって、本発明の顔料調製物の再液状化は各種の方法で可能である。水から出発して、オルト−ホウ酸、テトラ−ホウ酸、メタ−ホウ酸もしくはそれらの塩と組み合わせた部分的もしくは完全に加水分解されたポリビニルアルコールを添加して調製したペースト状またはゲル状の顔料調製物は、撹拌しながら水中に組み入れるときに傑出した再液状化を示す。その撹拌組入を、当業者の適切な方法で実施すると、その調製物は、短時間、通常は丁度60秒以内に水中に完全に溶解する。
【0098】
各種の増粘剤の増粘効果および/またはゲル化性能は、pHに依存する。したがって、本発明の顔料調製物は、pHを変化させる酸または水性アルカリの添加によっても再液状化させることができる。酸濃度および温度が高いと、例えばアルギンまたはアルギン酸エステルの定量的な脱炭酸反応を起こさせることができる。
【0099】
本発明の顔料調製物の再液状化は、化学反応、好ましくはレドックス反応または酵素反応の手段により実施することができる。1,2−グリコールを過ヨウ素酸塩に暴露させると、酸化的に開裂されることは公知である。多くの多糖類において、このグリコール開裂が最初に起きて、巨大分子が生成する。次いで過ヨウ素酸カリウムが、ホウ酸塩との錯体を形成させるために必要な、1,2−シス−ジオール残基の酸化的開裂を起こさせる。実際には、過ヨウ素酸カリウムをカルバイン溶液に添加した数分後に、酸化的分解反応の結果として粘度がほんのわずか低下するという事実があるにもかかわらず、ホウ砂を添加してもさらなるゲル化は起きない。次いで、カルバインはもはやゲルを生成させることができない。存在しているカルバイン−ホウ砂ゲルは、同様にして過ヨウ素酸カリウムを用いた滴定により再液状化させることが可能である。固体の過ヨウ素酸ナトリウムをカルバイン−ホウ砂ゲルの上に単に散布するか、あるいはカルバイン−ホウ砂ゲルに過ヨウ素酸塩の溶液をスプレーしても、同様の再液状化効果が起きる。直接作用する酸化剤、例えば、ハロゲンまたは過ヨウ素酸塩だけではなく、レドックスシステム、例えば、ポリフェノール、アスコルビン酸またはチオール化合物もまた、アルギンを分解させる。低粘度のアルギン酸塩を製造するためには、過酸化水素を使用する。キサンタンは、特に高温では、強い酸化剤、例えば次亜塩素酸塩または過硫酸塩によって分解される。細菌性アルギン酸解重合酵素もまた報告されている。多くの他の増粘剤、特にそれらが天然由来のものであった場合には、酵素を用いて分解させることによって、それらの活性を失わせることができる。
【0100】
先にも述べたように、熱を加えることによって多くのゲルは再液状化させることができる。それらは熱可逆性である、すなわち、高温では液体となり、冷却すると再固化するゲルを調製することが可能である。少なくとも20%のエステル化度を有する低エステル化ペクチンは、ゲル化させるのにはカルシウムイオンを必要とするが、ペクチン酸カルシウムゲルの形態で、熱可逆性である。加熱後に冷却すると、ゲランも同様に熱可逆性のゲルを形成するが、1価および2価のカチオンを存在させておく必要がある。キサンタンも同様に、カルバインと組み合わさって、強度のある、ゴム状で熱可逆性のゲルを形成する。多価フェノールおよび関連の化合物、例えば、レソルシノール、ピロカテコール、フロログルシノール、没食子酸、サリチルアニリド、および2,4−ジヒドロキシ安息香酸は、ポリビニルアルコールとは比較的ルーズな錯体(会合体)を形成することができる。それらの会合体は、熱可逆性である。
【0101】
熱を加えるのとは別に、本発明の顔料調製物の再液状化は、機械的エネルギー、例えば撹拌を加えることによっても達成することができる。本発明の顔料調製物の文脈において、チキソトロピー効果を利用できる場合には、機械的エネルギーを加えるのが特に有利となりうる。ある種のケースでは、超音波に暴露させることによって、本発明の顔料調製物を再液状化させることも可能である。
【0102】
顔料調製物は、石灰仕上げおよび/またはセメント仕上げ建築材料、アスファルト、塗料、ワニス、紙またはプラスチックと、混合物全体を基準にして、0.01%〜15重量%、好ましくは0.1%〜10重量%の量で混合するのが好ましい。
【0103】
本発明の顔料調製物には一連の利点がある。液相から出発して調製されるので、エネルギー消費量の高い乾燥工程を省略することが可能となる。言うまでもないことであるが、このことは、顔料そのものの調製を液相中で実施する場合には特に有利である。本発明の顔料調製物はダストフリーであるばかりではなく、清潔かつ何の問題もなく取り扱うことができる。さらに、各種の適用媒体中で、極めて分散性が高い。ペースト状またはゲル状の粘稠度を有しているために、本発明の顔料調製物は沈降を示さない。相分離することなく、その調製物は長期間にわたる貯蔵安定性を有し、いつでも使用することができる。したがって、それは常に、直ぐに使用することができる。さらに、本発明の顔料調製物は、乾燥して滑らかな表面の上には着色効果をまったく示さない。そのような顔料調製物の内部で作用し、その内部においてネットワーク構造および/または水素結合を形成させるのに役立つ分子間力の方が、その顔料調製物が金属、ガラス、セラミック、織物、またはプラスチックのような滑らかで乾燥した表面に働きかけることができる接着力よりも強いからであると推察される。
【0104】
ホウ素化合物、例えば、オルト−ホウ酸、テトラ−ホウ酸、メタ−ホウ酸もしくはそれらの塩と組み合わせるか、または、元素周期律表の遷移族IV〜VIの元素、好ましくはチタン、バナジウムおよびクロムの塩もしくは錯体、例えばチタン(III)塩もしくはチタン(IV)−トリエタノールアミンと組み合わせた、増粘剤としての、部分的もしくは完全に加水分解されたポリビニルアルコールおよびさらにはそれらの誘導体または他のポリヒドロキシ化合物をベースとして調製して、必要に応じてそのpHを中性もしくはわずかにアルカリ性としたペースト状顔料調製物は、さらなる性能的な利点を特徴としている。ポリビニルアルコールの適切な鎖長、濃度および加水分解度、さらにはホウ素化合物および/または錯化剤の正確な量を選択してやれば、乾燥した滑らかな皮膚上でのそれらの顔料調製物の着色効果を最小限にしたり、または完全に無くしたりすることができる。その顔料調製物は、手でつかんで、捏ねることができる。たとえ力を加えても、乾燥した手の内側表面の上にはそれらはまったく着色効果を示さない。それが極端に強い接着力を有していることは、他の現象からも示すことができる、すなわち、小さな断片に引き裂いた顔料調製物は、短時間の経過後には合体して、完全に均質な組成物を与える。さらに、それらの顔料調製物は水の中へ混ぜ込むと、優れた再液状化性を示す。その撹拌組入を、当業者の適切な方法で実施すると、それらは、短時間、通常は丁度60秒以内に水中に完全に溶解する。
【0105】
一つの好ましい実施態様においては、本発明の顔料調製物はゲル状であるためにその形状を保ち、そのため、その容器が破損した場合でも、製品が漏れることはなく、環境または作業員に汚染を与えることはない。
【0106】
本発明のペースト状またはゲル状の顔料調製物は、大きな容器や小さな容器に容易に小分けすることが可能である。小さな容器としては、例えば、チューブ、シリンジ、カートリッジ、フレキシブルパウチ、密閉袋、およびその他各種のペースト状またはゲル状製品のための当業者に公知の包装形態、例えばディスペンサーなどが挙げられる。それに対して、それらは大きな容器、例えばドラム、袋、さらにはバルクバッグなどの中にも小分けすることが可能である。
【0107】
本発明の主題は、個々の特許請求項の主題だけではなく、それら個々の特許請求項を互いに組み合わせたものからも明らかである。同様のことは、本明細書に開示されたすべてのパラメーターおよびいかなる形態であるかは問わずそれらを組み合わせたものにもあてはまる。
【0108】
以下に示す実施例によって本発明を説明するが、それらによって本発明が限定されることは、まったく意図されていない。
[実施例]
【0109】
I.使用された測定および試験方法の記述
I.1:建築材料着色試験
建築材料中における分散性をセメントモルタルで試験したが、それには、下記のデータで製造した白色セメントのブロックを視覚的に評価した。
【0110】
セメント対けい砂の比が1:4、水−セメント値が0.35、顔料着色のレベルがセメント基準で2.4%、RK・トニー・テクニーク(RK Toni Technik)(ベルリン(Berlin))製のミキサー使用(ミキシングパン5L、モデル1551、回転速度140rpm、1バッチ:1200gのけい砂(0.1〜1mm)、600gのけい砂(1〜2mm)、200gの微粉砕石灰石(90μm篩上残分5%未満)、500gの白色セメント。けい砂画分と微粉砕石灰石を合わせて、ミキシング容器に仕込む。次いで、それらを10秒間プレミックスする(ミキサー設定1:低速)。次いで、懸濁物の形態の水中溶液とした顔料調製物、または比較例の場合では水に懸濁させた顔料もしくは水に懸濁させたフィルターケーキを、初期混合物に添加するが、水の全量が175gになるように、そして水/顔料懸濁物がその混合物の中央に導入されるようにする。液体がしみこんでしまったら、セメントを加え、そのバッチを混合する(ミキサー設定1:低速)。100秒のミキシング時間の後、600gのサンプルを三つ取り出し、それを用いて加圧下(圧力:114kN、2秒)に3個の試験片(10×10×2.5cm)を製造する。それらの試験片を養生させて完全なブロックを得る(30℃、相対湿度95%で24時間、次いで60℃で4時間乾燥)。得られたブロックについて検査をした。
【0111】
I.2:エマルション塗料中への分散性の測定
エマルション塗料中への有彩顔料および黒色顔料の分散性を、ディソルバーを使用して測定する。採用する試験媒体は、顔料体積濃度55%(顔料/充填剤比:40/60)を有する、PVA分散体(酢酸ビニル/バーサチック酸ビニルエステル)ベースのエマルション塗料である。顔料を組み込むためには、最初に180gの白色エマルション塗料を導入してから、試験する6.0gの有彩顔料もしくは黒色顔料(または、その顔料含有量に換算したペースト状またはゲル状の顔料調製物の量、すなわちこの場合にも同様にして6.0gの顔料が存在する)を、撹拌しながら加える(二酸化チタン顔料:有彩顔料の重量比または二酸化チタン顔料:黒色顔料の重量比=5:1、使用する二酸化チタン顔料は、例えば、トロノックス社(Tronox Inc.)の市販製品であるトロノックス(Tronox)(登録商標)R−KB−2などであってよい)。ディソルバーディスク(直径4cm)を使用して以下の分散条件に設定する:
10分間 1000rpm(2.1m/s)、次いで
20分間 2000rpm(4.2m/s)、次いで
10分間 4500rpm(9.4m/s)。
【0112】
それぞれの分散時間の後に、それぞれの塗料を小量取り出し、湿時膜厚90μm(ドローバーのスロット高さ)を有するドローダウン(drawdown)を調製し、室温で乾燥させる。乾燥させた後、そのドローダウン(塗膜)を鋭利な刃を有する物体を使用して引っ掻いて、有彩顔料または黒色顔料の未分散顔料粒子が点または筋(ビット)としてその表面に現れるようにする。顔料に加わった分散エネルギーを、それぞれの引っ掻き傷の上に存在するビットの数で評価するが、それには、レベル1からレベル5までの評価スケールを使用する:
レベル1:ビットなし
レベル2:数個のビット
レベル3:中程度のビット
レベル4:多くのビット
レベル5:極めて多くのビット
【0113】
分散性が良好なのは評価レベルが1および2の場合のみであって、レベル3以上では、採用した分散エネルギーが不充分という評価になる。評価レベル1または2に達する段階が早いほど、別の言い方をすれば、用いた分散エネルギーが少ないほど、その試験をした顔料または顔料調製物の分散性が良好である。
【0114】
I.3:乾燥した滑らかな表面上への着色効果の試験
乾燥した滑らかな表面上への着色効果は、光輝引抜きV4A丸鋼(素材1.4571)から製造したボルトを使用して試験する。そのボルトは、直径が8mm、長さが200mmである。一端を長さ10mmにわたって機械加工して尖らせてある(図1参照)。顔料調製物を調製した直後に、それを適切な容器の中に小分けするが、その容器は、気密シールをすることが可能であり、またその体積の面から言えばその顔料調製物よりも実質的に大きくないものである。そのような容器は、例えば、充分に広い口を有する気密シール可能なポリエチレンボトル、または気密シール可能なプラスチックバケツなどであってよい。容器に充填する際には、容器内の充填レベルが50mmとなるようにしなければならない。顔料調製物が室温(20〜22℃)にまで冷えた後で、その容器を気密シールして、室温で保存する。24時間の貯蔵時間の後、そのペースト状またはゲル状の顔料調製物の乾燥した滑らかな表面上への着色効果についての試験をする。それには、清澄で乾燥したボルトを、尖った方を先にして、急速に(突然)そのペースト状またはゲル状の顔料調製物の中にボルトが容器の底に当たるまで押し込む。次いで、直ちにそれをペースト状またはゲル状の顔料調製物から急速に(突然)再び引き抜く。浸漬前後の重量の差を用いて、そのボルトに付着したペースト状またはゲル状の顔料調製物の質量を測定する。ボルトを清澄にして、このプロセスを合計3回実施するが、ボルトは、その都度場所を変えて、ペースト状またはゲル状の顔料調製物の中に浸漬させる。3回の秤量から、ボルトの質量増加の平均値を計算する。ボルトの質量増加の平均値が、0.07g以下、好ましくは0.04g以下であるならば、その顔料調製物は、本発明の文脈においては、乾燥した滑らかな表面上への着色効果を示していない。0.07g以下、好ましくは0.04g以下の質量増加の平均値が極めて小さいということを示すために、液体塗料を用いて比較する。バイフェロックス(Bayferrox)(登録商標)350液状物(ランクセス・ドイチュラント・GmbH(Lanxess Deutschland GmbH)の市販製品)は、建築材料を着色することを目的とした黒色酸化鉄顔料の水性懸濁物であって、50%〜55%の顔料含有量を有している。比較のために試験したバイフェロックス(Bayferrox)(登録商標)350液状物のサンプルは、53.9%の顔料含有量と1260mPasの粘度を有していた(ブルックフィールド粘度、20℃、No.4スピンドル、100rpmで測定)。ボルトを使用した上述の手順により、そのような懸濁物についての乾燥した滑らかな表面上への着色効果の試験を実施すると、その顔料懸濁物がボルトに付着した結果としてのボルトの質量増加の平均値は0.73gである。
【0115】
I.4:相分離についての試験
顔料調製物を調製した直後に、それを適切な容器の中に小分けするが、その容器は、気密シールをすることが可能であり、またその体積の面から言えばその顔料調製物よりも実質的に大きくないものである。このタイプの容器は、例えば、充分に広い口を有する気密シール可能なポリエチレンボトル、または気密シール可能なプラスチックバケツなどであってよい。顔料調製物が室温(20〜22℃)にまで冷えた後で、その容器を気密シールして、室温で保存する。少なくとも2ヶ月、好ましくは少なくとも6ヶ月の期間をおいた後で、相分離が起きたかどうか、別の言い方をすれば、その顔料調製物に上に上澄みの液相が形成されているかどうかをチェックする。特に寸法の選択が悪かったような場合には、容器の内側で、壁面上または蓋の上に小量の液滴が凝縮している可能性がある。この種の液状凝縮物は、無視するべきである。
【0116】
I.5:水中への分散性の測定
87.5gの水を150mLのガラスビーカー(広口)の中に入れる。タービン撹拌機(直径28mm)を用い600rpmの速度で撹拌しながら、その水の中にペースト状またはゲル状の顔料調製物をひとかたまり入れる。添加するペースト状またはゲル状の顔料調製物の量は常に、6gの顔料が含まれているように選択する。所定の時間の後に撹拌機を停止し、その顔料懸濁物をメッシュサイズ250μmの篩に通し、シャワー水を用いてその篩を簡単に洗い流す。篩上に顔料調製物の残分がまったく存在しない場合、別の言い方をすれば、顔料調製物の粒子がすべて250μmよりも小さい場合には、そのペースト状またはゲル状の顔料調製物は、充分に溶解されたとみなす。
【0117】
II.実施例1
735gの酸化クロムグリーンGN(ランクセス・ドイチュラント・GmbH(Lanxess Deutschland GmbH)の市販製品)および735gの水を使用し、湿潤および分散用添加物として、活性化合物含有量40%のポリアクリル酸ナトリウムの水溶液1.52gを添加して、50%の顔料含有量を有する分散体を製造した。次いで、防腐剤としてのプレベントール(Preventol)(登録商標)D6(ランクセス・ドイチュラント・GmbH(Lanxess Deutschland GmbH)の市販製品)の3滴と、増粘剤としての38.7gのピッグスキンゼラチン(240〜270g、ブルーム)とを加え、その分散体を45℃で30分間撹拌した。まだ熱いうちに、子供用のベーキングトレーも含めて、各種の容器にその分散体を注ぎ込み、冷却して室温としてから、気密シールした。約2時間後には、早くもゲルの顕著な形成が認められた。24時間後になると、ベーキングトレーを裏返すことも可能となった。得られた顔料調製物は、ゲル状の粘稠度を有していた。その寸法安定性を図2に示す。
【0118】
得られたゲル状顔料調製物は、そのボルトの質量増加の平均値が0.006gであったので、上述の試験方法に従った乾燥した滑らかな表面上への着色効果は示さなかった。さらに、それは、数ヶ月の期間をおいた後も、相分離は一切示さなかった。
【0119】
得られたゲル状顔料調製物は、単に35℃にまで穏やかに加熱するだけで再液状化させることが可能であり、再度冷却すればゲルが再生した。
【0120】
建築材料における試験:
そのゲル状顔料調製物の24gを、加熱により再液状化させ、163gの加熱水中に溶解させた。室温にまで冷却すると、得られた懸濁物はもはやゲルは形成せず、上述の建築材料着色試験に使用した。これにより、均一に緑色に着色されたブロックが得られた。
【0121】
III.実施例2(実施例1に対する比較例)
建築材料における試験:
比較のために、実施例1でゲル状顔料調製物を製造するために使用した酸化クロムグリーンGN粉体の12gを、同様にして撹拌しながら175gの水の中に分散させ、上述の建築材料着色試験に使用した。この場合もまた、均質な緑色の着色が得られた。実施例1からのゲル状顔料調製物を使用したブロックとは、見かけ上の差はなかった。
【0122】
IV.実施例3
550gのバイフェロックス(Bayferrox)(登録商標)330(黒色酸化鉄顔料、ランクセス・ドイチュラント・GmbH(Lanxess Deutschland GmbH)の市販製品)を450gの水中に分散させた。この分散体に、増粘剤としての6.8gのカッパ−カラギーナンと、防腐剤としてのプレベントール(Preventol)(登録商標)D6の3滴とを加え、その分散体を40℃で30分間撹拌した。まだ熱いうちに、子供用のベーキングトレーも含めて、各種の容器にその分散体を注ぎ込み、冷却して室温としてから、気密シールした。約1時間後には、早くもゲルの顕著な形成が認められた。24時間後になると、ベーキングトレーを裏返すことも可能となった。得られた顔料調製物は、ゲル状の粘稠度を有していた。その寸法安定性を図3に示す。
【0123】
得られたゲル状顔料調製物は、そのボルトの質量増加の平均値が0.004gであったので、上述の試験方法に従った乾燥した滑らかな表面上への着色効果は示さなかった。さらに、それは、数ヶ月の期間をおいた後も、相分離は一切示さなかった。
【0124】
得られたゲル状顔料調製物は、55℃にまで加熱することにより再液状化させることが可能であり、再度冷却すればゲルが再生した。
【0125】
建築材料における試験:
そのゲル状顔料調製物の24gを、加熱により再液状化させ、163gの加熱水中に溶解させた。室温にまで冷却すると、得られた懸濁物はもはやゲルは形成せず、上述の建築材料着色試験に使用した。これにより、均一の黒色に着色されたブロックが得られた。
【0126】
V.実施例4(実施例3に対する比較例)
建築材料における試験:
比較のために、実施例3でゲル状顔料調製物を製造するために使用したバイフェロックス(Bayferrox)(登録商標)330粉体の12gを、同様にして撹拌しながら175gの水の中に分散させ、上述の建築材料着色試験に使用した。この場合もまた、均質な黒色の着色が得られた。実施例3からのゲル状顔料調製物を使用したブロックとは、見かけ上の差はなかった。
【0127】
VI.実施例5
550gのバイフェロックス(Bayferrox)(登録商標)330を450gの水の中に分散させた。その分散体に、増粘剤としてのカッパ−カラギーナンおよびイオタ−カラギーナンの1:1混合物の6.8gと、防腐剤としてのプレベントール(Preventol)(登録商標)D6の3滴とを加え、その分散体を40℃で30分間撹拌した。まだ熱いうちに、実施例1および3での小熊の形のベーキングトレーも含めた各種の容器にその分散体を注ぎ、室温に冷却してから気密シールした。約2時間後には、早くもゲルの顕著な形成が認められた。24時間後になると、ベーキングトレーを裏返すことも可能となった。得られた顔料調製物は、ゲル状の粘稠度を有し、寸法安定性があった。
【0128】
調製されたそのゲル状顔料調製物は、実施例3から得られたものよりは柔らかかった。それは、ボルトの質量増加の平均値が0.013gであったので、上述の試験方法に従った乾燥した滑らかな表面上への着色効果は示さなかった。さらに、それは、数ヶ月の期間をおいた後も、相分離は一切示さなかった。
【0129】
得られたゲル状顔料調製物は、45℃にまで加熱することにより再液状化させることが可能であり、再度冷却すればゲルが再生した。
【0130】
VII.実施例6
750gの酸化クロムグリーンGNを、500gの水と、増粘剤としての15%強度のモウイオール(Mowiol)(登録商標)18−88溶液の150gとの混合物の中に分散させた(モウイオール(Mowiol)(登録商標)は、ポリビニルアルコールであって、クラレ・スペシャルティーズ・ヨーロッパ・GmbH(Kuraray Specialities Europe GmbH))の市販製品である)。その分散体をデュプレックス(DUPLEX)ブレードを備えたアイカ(IKA)(登録商標)HKD2.5水平コンパウンダーに移し、約5分間かけてそれを混練しながら、増粘剤と組み合わせることで協働して固さを上昇させる化合物としての、テトラ−ホウ酸カリウム五水和物の室温飽和溶液の40gを添加した。次いで、混練と均質化をさらに30分間続けた。これにより、ペースト状の粘稠度を有する顔料調製物が得られた。
【0131】
得られたペースト状の顔料調製物は、そのボルトの質量増加の平均値が0.00gであったので、上述の試験方法に従った乾燥した滑らかな表面上への着色効果は一切示さなかった。さらに、それは、数ヶ月の期間をおいた後も、相分離は示さなかった。上述の手順に従って水中における分散性を試験すると、60秒以内に完全に溶解した。
【0132】
建築材料における試験:
24gのペースト状顔料調製物を、撹拌しながら163gの水の中に溶解させ、得られた懸濁物を上述の建築材料の着色試験に使用した。結果として、均質に緑色に着色されたブロックが得られた。
【0133】
エマルション塗料における試験:
製造されたペースト状の顔料調製物12gを使用して、上述のエマルション塗料中における分散性の試験を行った。結果は以下の通りであった:
1000rpmで10分間 評価レベル:1
2000rpmで20分間 評価レベル:1
4500rpmで10分間 評価レベル:1
【0134】
1000rpmでは10分間で評価レベル1に達した。したがって、最低の分散エネルギーであっても、このペースト状の顔料調製物は極めて良好な分散性を示した。
【0135】
VIII.実施例7(実施例6に対する比較例)
建築材料における試験:
比較のために、実施例6でペースト状顔料調製物を製造するために使用した酸化クロムグリーンGN粉体の12gを、撹拌しながら175gの水の中に分散させ、上述の建築材料着色試験に使用した。この場合もまた、均質な緑色の着色が得られた。実施例6からのペースト状顔料調製物を使用したブロックとは、見かけ上の差はなかった。
【0136】
エマルション塗料における試験:
比較のために、実施例6でペースト状顔料調製物を製造するために使用した酸化クロムグリーンGN粉体の6gを、上述のエマルション塗料における分散性の試験に使用した。結果は以下の通りであった:
1000rpmで10分間 評価レベル:5
2000rpmで20分間 評価レベル:4
4500rpmで10分間 評価レベル:2
【0137】
使用された酸化クロムグリーンGN粉体の場合、効果的な分散(評価レベル2)を達成するためには、極めて強力な分散条件を選択する必要があった。したがって、使用した酸化クロムグリーンGN粉体は、実施例6からのペースト状顔料調製物よりは分散させることがはるかに困難であった。
【0138】
IX.実施例8
実施例6からのペースト状の顔料調製物を、気密シール可能な容器の中で、−11℃で60時間凍結させた。次いで、それを再び解凍させて室温とした。その再解凍させたペースト状顔料調製物は、元の顔料調製物とは何の違いも示さなかった。水の分離もまったく無かった。上述の手段に従って水中への分散性を測定すると、それはまだ60秒以内に完全に溶解した。
【0139】
建築材料における試験:
24gの再解凍させたペースト状顔料調製物を、撹拌しながら163gの水の中に溶解させ、得られた懸濁物を上述の建築材料の着色試験に使用した。結果として、この場合もまた、均質に緑色に着色されたブロックが得られた。実施例6からのブロックと実施例7からのブロックでは、差はまったく認められなかった。
【0140】
したがって、製造されたペースト状顔料調製物は、冷凍および解凍の結果としては何の支障も受けなかった。
【0141】
X.実施例9
1000gのバイフェロックス(Bayferrox)(登録商標)130M(赤色酸化鉄顔料、ランクセス・ドイチュラント・GmbH(Lanxess Deutschland GmbH)の市販製品)を、516gの水、いずれの場合も増粘剤としての、67gの15%強度のモウイオール(Mowiol)(登録商標)18−88溶液および83gの8%強度モウイオール(Mowiol)(登録商標)40−88溶液、の混合物中に分散させた。その分散体をデュプレックス(DUPLEX)ブレードを備えたアイカ(IKA)(登録商標)HKD2.5水平コンパウンダーに移し、約5分間かけてそれを混練しながら、増粘剤と組み合わせることで協働して固さを上昇させる化合物としての、テトラ−ホウ酸カリウム五水和物の室温飽和溶液の30gを添加した。次いで、混練と均質化をさらに30分間続けた。これにより、ペースト状の粘稠度を有する顔料調製物が得られた。
【0142】
得られたペースト状の顔料調製物は、そのボルトの質量増加の平均値が0.00gであったので、上述の試験方法に従った乾燥した滑らかな表面上への着色効果は一切示さなかった。さらに、それは、数ヶ月の期間をおいた後も、相分離は示さなかった。上述の手順に従って水中における分散性を試験すると、60秒以内に完全に溶解した。
【0143】
エマルション塗料における試験:
製造されたペースト状の顔料調製物10gを使用して、上述のエマルション塗料中における分散性の試験を行った。結果は以下の通りであった:
1000rpmで10分間 評価レベル:1
2000rpmで20分間 評価レベル:1
4500rpmで10分間 評価レベル:1
【0144】
1000rpmでは10分間で評価レベル1に達した。したがって、最低の分散エネルギーであっても、このペースト状の顔料調製物は極めて良好な分散性を示した。
【0145】
XI.実施例10
実施例9からのペースト状の顔料調製物を、気密シール可能な容器の中で、−11℃で60時間凍結させた。次いで、それを再び解凍させて室温とした。その再解凍させたペースト状顔料調製物は、元の顔料調製物とは何の違いも示さなかった。水の分離もまったく無かった。上述の手段に従って水中への分散性を測定すると、それはまだ60秒以内に完全に溶解した。
【0146】
エマルション塗料における試験:
再解凍されたペースト状の顔料調製物10gを使用して、上述のエマルション塗料中における分散性の試験を行った。結果は以下の通りであった:
1000rpmで10分間 評価レベル:1
2000rpmで20分間 評価レベル:1
4500rpmで10分間 評価レベル:1
【0147】
1000rpmでは10分間で評価レベル1に達した。したがって、最低の分散エネルギーであっても、このペースト状の顔料調製物は傑出した分散性を示した。エマルション塗料の中での分散性は、冷凍および解凍の結果としては損なわれることはなかった。
【0148】
XII.実施例11(実施例9および10に対する比較例)
エマルション塗料における試験:
比較のために、実施例10でペースト状顔料調製物を製造するために使用したバイフェロックス(Bayferrox)(登録商標)130Mの粉体の6gを、上述のエマルション塗料における分散性の試験に使用した。結果は以下の通りであった:
1000rpmで10分間 評価レベル:5
2000rpmで20分間 評価レベル:5
4500rpmで10分間 評価レベル:4
【0149】
評価レベル1または2に達することができなかったので、使用したバイフェロックス(Bayferrox)(登録商標)130M粉体は充分な分散性を有していなかった。したがって、使用したバイフェロックス(Bayferrox)(登録商標)130M粉体は、これから製造された実施例9および10からのペースト状顔料調製物よりも、分散させることがはるかに困難であった。
【0150】
XIII.実施例12
沈降法によって製造した黄色酸化鉄顔料を合成後に濾過し、塩がなくなるまで洗浄した。得られたフィルターケーキの固形分含量は51.4%であった。242gの水、155gの15%強度のモウイオール(Mowiol)(登録商標)18−88溶液、および58gの8%強度のモウイオール(Mowiol)(登録商標)40−88溶液の混合物の中に、まず、さらなる増粘剤として1.39gのワロセル・CRT(Walocel CRT)40000GA(カルボキシメチルセルロースナトリウム、ウォルフ・セルロシックス・GmbH・アンド・カンパニー・KG(Wolff Cellulosics GmbH & Co.KG)からの市販製品)を溶解させた。この溶液の中に973gのフィルターケーキを分散させて、35%の顔料含有量を有する分散体を得た。その顔料懸濁物を、デュプレックス(DUPLEX)ブレードを備えたアイカ(IKA)(登録商標)HKD2,5水平コンパウンダーに移し、それを混練しながら約5分間かけて、増粘剤と組み合わせることで協働して固さを上昇させる化合物としての、テトラ−ホウ酸カリウム五水和物の室温飽和溶液の40gを添加した。次いで、混練と均質化をさらに30分間続けた。これにより、ペースト状の粘稠度を有する顔料調製物が得られた。
【0151】
得られたペースト状の顔料懸濁物は、バルクの質量増加の平均値が0.00gであったので、上述の試験方法に従った乾燥した滑らかな表面上への着色効果は一切示さなかった。さらに、それは、数ヶ月の期間をおいた後も、相分離はまったく示さなかった。上述の方法に従って水中における分散性を試験すると、100秒以内に完全に溶解した。
【0152】
建築材料における試験:
34.3gのペースト状顔料調製物を、撹拌しながら152gの水の中に溶解させ、得られた懸濁物を上述の建築材料の着色試験に使用した。結果として、均質に黄色に着色されたブロックが得られた。
【0153】
エマルション塗料における試験:
製造されたペースト状の顔料調製物17.1gを使用して、上述のエマルション塗料中における分散性の試験を行った。結果は以下の通りであった:
1000rpmで10分間 評価レベル:1
2000rpmで20分間 評価レベル:1
4500rpmで10分間 評価レベル:1
【0154】
1000rpmでは10分間で評価レベル1に達した。したがって、最低の分散エネルギーであっても、このペースト状の顔料調製物は極めて良好な分散性を示した。
【0155】
XIV.実施例13(実施例12に対する比較例)
建築材料における試験:
比較のために、実施例12のペースト状顔料調製物を製造するために使用したフィルターケーキの23.3gを、撹拌しながら163.7gの水の中に溶解させ、得られた懸濁物を上述の建築材料着色試験のために使用した。この場合もまた、均質な黄色の着色が得られた。しかしながら、それらのブロックは、黄色の色合いがはるかに低いために、実施例12からのものに比較して、輝度が実質的に低かった。
【0156】
エマルション塗料における試験:
比較のために、実施例12でペースト状顔料調製物を製造するために使用したフィルターケーキの11.7gを、上述のエマルション塗料における分散性の試験に使用した。結果は以下の通りであった:
1000rpmで10分間 評価レベル:5
2000rpmで20分間 評価レベル:5
4500rpmで10分間 評価レベル:4
【0157】
使用したフィルターケーキは、評価レベル1または2を得ることが不可能であったので、充分な分散性ではなかった。すべての分散条件下で、用いた分散エネルギーでは不充分であった。したがって、使用したフィルターケーキは、それから製造された実施例12からのペースト状顔料調製物よりも、分散させるのがはるかに困難であった。
【0158】
XV.実施例14
沈降法によって製造した黒色酸化鉄顔料を合成後に濾過し、塩が無くなるまで洗浄し、ディスクスプレー乾燥機を用いて乾燥させた。次いで、22.3kgの水と8.55kgの8%強度のモウイオール(Mowiol)(登録商標)40−88溶液との混合物の中に、いずれの場合においても増粘剤としての39.5gのワロセル・CRT(Walocel CRT)40000GAの混合物を溶解させた。この溶液の中に、33.75kgの乾燥黒色顔料粉体を撹拌しながら加え、それを、1mmの酸化ジルコニウムの摩砕ビーズを用いたビーズミルを使用して分散させると、52%の顔料含有量を有する分散体が得られた。この分散体の1.44kgを、デュプレックス(DUPLEX)ブレードを備えたアイカ(IKA)(登録商標)HKD2,5水平コンパウンダーに移し、混練をしながら約5分間かけて、増粘剤と組み合わせることで協働して固さを上昇させる化合物としての、テトラ−ホウ酸カリウム五水和物の室温飽和溶液の30gを添加した。次いで、混練と均質化をさらに30分間続けた。これにより、ペースト状の粘稠度を有する顔料調製物が得られた。
【0159】
得られたペースト状の顔料調製物は、バルクの質量増加の平均値が0.00gであったので、上述の試験方法に従った乾燥した滑らかな表面上への着色効果は一切示さなかった。さらに、それは、数ヶ月の期間をおいた後も、相分離はまったく示さなかった。上述の方法に従って水中における分散性を試験すると、60秒以内に完全に溶解した。
【0160】
建築材料における試験:
23gのペースト状顔料調製物を、撹拌しながら164gの水の中に溶解させ、得られた懸濁物を上述の建築材料の着色試験に使用した。結果として、均質に黒色に着色されたブロックが得られた。
【0161】
エマルション塗料における試験:
製造されたペースト状の顔料調製物11.5gを使用して、上述のエマルション塗料中における分散性の試験を行った。結果は以下の通りであった:
1000rpmで10分間 評価レベル:1
2000rpmで20分間 評価レベル:1
4500rpmで10分間 評価レベル:1
【0162】
1000rpmでは10分間で評価レベル1に達した。したがって、最低の分散エネルギーであっても、このペースト状の顔料調製物は極めて良好な分散性を示した。
【0163】
XVI.実施例15
実施例14からのペースト状の顔料調製物を、気密シール可能な容器の中で、−11℃で60時間凍結させた。次いで、それを再び解凍させて室温とした。その解凍させたペースト状顔料調製物は、元の顔料調製物とは何の違いも示さなかった。水の分離もまったく無かった。上述の手段に従って水中への分散性を測定すると、それはまだ60秒以内に完全に溶解した。
【0164】
建築材料における試験:
23gの再解凍させたペースト状顔料調製物を、撹拌しながら164gの水の中に溶解させ、得られた懸濁物を上述の建築材料の着色試験に使用した。結果として、この場合もまた、均質に黒色に着色されたブロックが得られた。実施例14からのブロックとは見かけ上の差はなかった。
【0165】
エマルション塗料における試験:
解凍されたペースト状の顔料調製物11.5gを使用して、上述のエマルション塗料中における分散性の試験を行った。結果は以下の通りであった:
1000rpmで10分間 評価レベル:1〜2
2000rpmで20分間 評価レベル:1
4500rpmで10分間 評価レベル:1
【0166】
1000rpmでは10分間で評価レベル1〜2に達した。したがって、最低の分散エネルギーであっても、このペースト状の顔料調製物は傑出した分散性を示した。
【0167】
したがって、製造されたペースト状顔料調製物は、冷凍および解凍の結果としては損なわれることはなかった。
【0168】
XVII.実施例16(実施例14および15に対する比較例)
建築材料における試験:
比較のために、実施例14のペースト状顔料調製物を製造するために使用した乾燥黒色顔料粉体の12gを、175gの水の中で撹拌して分散させ、得られた懸濁物を使用して、上述の建築材料着色試験を実施した。この場合もまた、均質な黒色の着色が得られた。実施例14および15からのゲル状顔料調製物を使用して着色したブロックと、見かけ上の差はなかった。
【0169】
エマルション塗料における試験:
比較のために、実施例14でペースト状顔料調製物を製造するために使用した乾燥黒色顔料の粉体の6gを、上述のエマルション塗料における分散性の試験に使用した。結果は以下の通りであった:
1000rpmで10分間 評価レベル:5
2000rpmで20分間 評価レベル:4〜5
4500rpmで10分間 評価レベル:2
【0170】
使用した乾燥黒色顔料粉体では、効果的な分散(評価レベル2)を達成するためには、極めて強い分散条件を選択する必要があった。したがって、使用した黒色顔料粉体は、実施例14および15からのペースト状顔料調製物よりも、分散させるのがはるかに困難であった。
【0171】
XVIII.実施例17
増粘剤としての、33gのモウイオール(Mowiol)(登録商標)8−88を、穏やかに加温しながら、656gの水の中に溶解させた。次いで、分散させながら、800gのトロノックス(Tronox)(登録商標)A−Z(二酸化チタン顔料、トロノックス社(Tronox Inc.)の市販製品)を添加した。その分散体を、デュプレックス(DUPLEX)ブレードを備えたアイカ(IKA)(登録商標)HKD2,5水平コンパウンダーに移し、増粘剤と組み合わせることで協働して固さを上昇させる化合物としての、固体のテトラホウ酸ナトリウム五水和物の25gを小量ずつ添加した。次いで、混練と均質化をさらに10分間続けた。これにより、ペースト状の粘稠度を有する顔料調製物が得られた。
【0172】
得られたペースト状の顔料調製物は、バルクの質量増加の平均値が0.012gであったので、上述の試験方法に従った乾燥した滑らかな表面上への着色効果は示さなかった。さらに、それは、数ヶ月の期間をおいた後も、相分離は一切示さなかった。
【0173】
XIX.実施例18
増粘剤としての6.8gのカルバインを、675gの水の中に80℃よりも高温に加熱して溶解させた。そのカルバイン溶液を、デュプレックス(DUPLEX)ブレードを備えたアイカ(IKA)(登録商標)HKD2,5水平コンパウンダーに移し、防腐剤として1mLのプレベントール(Preventol)(登録商標)D6を添加した。次いで、さらなる増粘剤として、6.8gのケルザン(Kelzan)(登録商標)(キサンタン、シーピー・ケルコ・ジャーマニー・GmbH(CP Kelco Germany GmbH)の市販製品)を小量ずつ加えて、均質な組成物を形成させた。次いでこの組成物に、825gのバイフェロックス(Bayferrox)(登録商標)130(赤色酸化鉄顔料、ランクセス・ドイチュラント・GmbH(Lanxess Deutschland GmbH)の市販製品)を小量ずつ添加し、混練させることによって組み入れた。次いで、混練と均質化をさらに30分間続けた。これにより、ペースト状で、ゴム状の粘稠度を有する顔料調製物が得られた。さらに均質化させるために、その顔料調製物を、85〜90℃で短時間、密封した容器の中で加熱した。その顔料調製物が液状化したので、それを冷却すると、ペースト状でゴム状の粘稠度を有する顔料調製物が再び形成された。比較的高い温度で製造および均質化させた結果、水分の一部が蒸発し、得られたペースト状でゴム状の顔料調製物は58.6重量%の顔料含有量を有していた。
【0174】
得られたペースト状でゴム状の顔料調製物は、ボルトの質量増加の平均値が0.02gであったので、上述の試験方法に従った乾燥した滑らかな表面上への着色効果は一切示さなかった。さらに、それは、数ヶ月の期間をおいた後も、相分離は一切示さなかった。
【0175】
建築材料における試験:
20.4gのペースト状でゴム状の顔料調製物を10重量%の過ヨウ素酸ナトリウムと混合し、24時間静置した。この時間の間に、そのペースト状でゴム状の顔料調製物は再液状化した。その液状化したペースト状の顔料調製物を、撹拌しながら166.6gの水の中に懸濁させ、得られた懸濁物を用いて、上述の建築材料着色試験を行った。これにより、均質に赤色に着色したブロックが得られた。
【0176】
XX.実施例19(実施例19に対する比較例)
建築材料における試験:
比較のために、実施例18でゲル状顔料調製物を製造するために使用したバイフェロックス(Bayferrox)(登録商標)130粉体の12gを、同様にして撹拌しながら175gの水の中に分散させ、上述の建築材料着色試験に使用した。この場合もまた、均質な赤色の着色が得られた。実施例18からのゲル状顔料調製物を使用したブロックとは、見かけ上の差はなかった。
【0177】
XXII.実施例20
増粘剤としての3.75gのカルバインを、750g水の中に80℃よりも高温に加熱して溶解させた。そのカルバイン溶液を、デュプレックス(DUPLEX)ブレードを備えたアイカ(IKA)(登録商標)HKD2,5水平コンパウンダーに移し、防腐剤として1mLのプレベントール(Preventol)(登録商標)D6を添加した。次いで、さらなる増粘剤として、7.5gのケルザン(Kelzan)(登録商標)を小量ずつ添加し、均質な組成物を形成させた。次いでこの組成物に、750gのバイフェロックス(Bayferrox)(登録商標)130(赤色酸化鉄顔料、ランクセス・ドイチュラント・GmbH(Lanxess Deutschland GmbH)の市販製品)を小量ずつ添加し、混練させることによって組み入れた。最後に、さらに45gのエアロジル(Aerosil)(登録商標)200(親水性ヒュームドシリカ、デグッサ・GmbH(Degussa GmbH)の市販製品)を充填剤として添加した。次いで、混練と均質化をさらに30分間続けた。これにより、ペースト状で、ゴム状の粘稠度を有する顔料調製物が得られた。
【0178】
さらに均質化させるために、その顔料調製物を、85〜90℃で短時間、密封した容器の中で加熱した。冷却すると、数日以内にペースト状でゴム状の粘稠度を有する顔料調製物が再び形成された。
【0179】
得られたペースト状でゴム状の顔料調製物は、ボルトの質量増加の平均値が0.01gであったので、上述の試験方法に従った乾燥した滑らかな表面上への着色効果は一切示さなかった。さらに、それは、数ヶ月の期間をおいた後も、相分離は一切示さなかった。
【0180】
III.図面
乾燥した滑らかな表面上への着色効果を試験するためのボルトおよび顔料調製物の寸法安定性について、いくつかの図面を参照しながら説明する。この場合、それらの図面は、本発明の、発明として重要な特徴と利点を示している。
【図面の簡単な説明】
【0181】
【図1】直径8mm、長さ200mmの光輝引抜きV4A丸鋼(素材1.4571)のボルトを示す図である(そのボルトの一端が長さ10mmにわたって機械加工により尖らせてあり、そのボルトを、乾燥した滑らかな表面上への着色効果を試験するために使用する)。
【図2】実施例1からのゲル状顔料調製物を示す図である(この写真は、寸法安定性を示すことを目的とし、サイズの比較のために、1ユーロ硬貨を使用している)。
【図3】実施例3からのゲル状顔料調製物を示す図である(この写真は、寸法安定性を示すことを目的とし、サイズの比較のために、1ユーロ硬貨を使用している)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石灰仕上げおよび/またはセメント仕上げ建築材料、アスファルト、塗料、ワニス、紙またはプラスチックスを着色するための顔料調製物であって、
−液体の中に分散された1種または複数の有機および/または無機顔料;および
−所望により、さらなる助剤および/または充填剤、
を含み、
前記顔料調製物が、
−ペースト状またはゲル状の粘稠度のものであり;
−相分離を起こす傾向がなく;そして
−乾燥した滑らかな表面上で着色効果をまったく示さない、
顔料調製物。
【請求項2】
使用される前記液体が、水であるか、水混和性の液体であるか、または少なくとも2種の水混和性の液体の混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の顔料調製物。
【請求項3】
使用される前記液体が、水非混和性液体であるか、または少なくとも2種の水非混和性液体の混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の顔料調製物。
【請求項4】
使用される無機顔料が、酸化鉄、二酸化チタン、酸化クロム、酸化亜鉛およびルチル混合相顔料、ならびにカーボンブラック(炭素顔料)またはそれらの混合物であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の顔料調製物。
【請求項5】
使用される有機顔料が、アゾ、キナクリドン、フタロシアニンおよびペリレン顔料ならびにインジゴイドまたはそれらの混合物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の顔料調製物。
【請求項6】
前記顔料調製物が、少なくとも15重量%、特には少なくとも25重量%の顔料含有量を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の顔料調製物。
【請求項7】
前記顔料調製物のペースト状またはゲル状の粘稠度が、少なくとも1種の増粘剤、および/または協働して固さを上昇させるような1種または複数の化合物と組み合わせた少なくとも1種の増粘剤を添加することによってもたらされることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の顔料調製物。
【請求項8】
使用される前記増粘剤が、有機増粘剤、例えば有機天然増粘剤、有機変性天然物質、有機全合成増粘剤、有機会合性増粘剤、または低分子質量有機製品であることを特徴とする、請求項7に記載の顔料調製物。
【請求項9】
使用される前記増粘剤が、無機増粘剤であることを特徴とする、請求項7に記載の顔料調製物。
【請求項10】
協働して固さを上昇させるような1種または複数の化合物と組み合わせた少なくとも1種の増粘剤を、前記顔料調製物を基準にして、0.001〜10重量%、特には0.1〜5重量%の全量で使用することを特徴とする、請求項7〜9のいずれか一項に記載の顔料調製物。
【請求項11】
−使用される増粘剤が、藻類抽出物、例えば寒天、イオタ、カッパもしくはラムダ形のカラギーナン、アルギン酸塩、例えばアルギン酸ナトリウムもしくはアルギン酸カルシウム、微生物または植物の滲出物、例えばキサンタンおよびその誘導体、ゲラン、アラビアゴム、トラガカント、カラヤゴムもしくはガッチゴム、果実または植物の種子の内胚乳、例えばイナゴマメ粉、カルバインもしくはタラ粉、果実抽出物、例えばペクチン、動物由来の増粘剤、例えば、タンパク質誘導体もしくはウシ、ブタ、魚からのゼラチン、さらにはカゼイン塩、またはそれらの化合物の混合物であり:そして
−使用される、少なくとも1種の増粘剤と協働して固さを上昇させるような1種または複数の化合物が、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、グリセロールリン酸塩、ホウ酸塩、塩化物、硝酸塩、リン酸塩、酢酸塩、1価、2価もしくは3価の金属塩の水酸化物から、
より詳しくは、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の塩、特にナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムもしくはストロンチウム塩、例えば、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ストロンチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、またはそれらの塩の混合物からのものであり、
前記1種または複数の化合物の量が、前記顔料調製物の全重量を基準にして、0.001%〜3重量%の範囲、特には0.1%〜1.5重量%の範囲であることを特徴とする、請求項7に記載の顔料調製物。
【請求項12】
使用される前記増粘剤が、部分的または完全に加水分解されたポリビニルアルコールおよびまたそれらの誘導体もしくは他のポリヒドロキシ化合物を、ホウ素化合物、特にはオルト−ホウ酸、テトラ−ホウ酸、メタ−ホウ酸もしくはそれらの塩と組み合わせるか、または、元素周期律表の遷移族IV〜VIからの元素、特にはチタン、バナジウムおよびクロムの塩もしくは錯塩、例えばチタン(III)塩もしくはチタン(IV)−トリエタノールアミンと組み合わせたものであり、必要に応じて、そのpHを中性またはわずかにアルカリ性としておくことを特徴とする、請求項7に記載の顔料調製物。
【請求項13】
使用される助剤が、湿潤剤および/または分散用添加物および/または乳化剤および/または防腐剤および/または脱泡剤および/または保存剤および/または沈降防止剤および/または付香剤であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の顔料調製物。
【請求項14】
前記助剤が、前記顔料調製物を基準にして、0.001%〜10重量%、特には0.05%〜5重量%の全量で使用されることを特徴とする、請求項13に記載の顔料調製物。
【請求項15】
前記顔料調製物が、少なくとも2ヶ月、特には少なくとも6ヶ月の期間にわたって相分離の傾向を示さないことを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の顔料調製物。
【請求項16】
乾燥した滑らかな表面の上における着色効果についての記述で開示された試験方法において、前記ボルトの質量の平均増加量が0.07g以下、特には0.04g以下であることを特徴とする、請求項1に記載の顔料調製物。
【請求項17】
前記顔料調製物が、前記顔料調製物を基準にして、40重量%以下、特には10重量%以下の量で、少なくとも1種の充填剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一項に記載の顔料調製物。
【請求項18】
−所望により、さらに助剤および/または充填剤を含む液体中の、1種または複数の有機および/または無機顔料の分散体に、
−前記分散操作の前、その間、またはその後に、少なくとも1種の増粘剤、および/または協働して固さを上昇させるような1種または複数の化合物と組み合わせた少なくとも1種の増粘剤を添加し、そして、
−前記ペースト状またはゲル状の顔料調製物を充分に長時間かけて均質化させ、そして
−適切であるならば、最後にさらなる助剤を添加する、
ことを特徴とする、請求項1〜17のいずれか一項に記載の顔料調製物を調製するための方法。
【請求項19】
少なくとも1種の増粘剤、および/または協働して固さを上昇させるような1種または複数の化合物と組み合わせた少なくとも1種の増粘剤の添加を、室温または室温を超える温度で実施することを特徴とする、請求項18に記載の調製方法。
【請求項20】
有機または無機の増粘剤を添加することを特徴とする、請求項18〜19のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項21】
使用される有機増粘剤が、部分的または完全に加水分解されたポリビニルアルコールおよびそれらの誘導体もしくは他のポリヒドロキシ化合物を、ホウ素化合物、例えばオルト−ホウ酸、テトラ−ホウ酸、メタ−ホウ酸もしくはそれらの塩と組み合わせるか、または、元素周期律表の遷移族IV〜VIからの元素、特にはチタン、バナジウムおよびクロムの塩もしくは錯塩、例えばチタン(III)塩もしくはチタン(IV)−トリエタノールアミンと組み合わせたものであり、適切であれば、そのpHを中性またはわずかにアルカリ性としておくことを特徴とする、請求項20に記載の調製方法。
【請求項22】
液体中の1種または複数の有機および/または無機顔料の前記分散体が、前記顔料調製プロセスからの分散体であることを特徴とする、請求項18〜21のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項23】
液体中の1種または複数の有機および/または無機顔料の前記分散体が、それ以前に凝集された粒子の再分散体であることを特徴とする、請求項18〜21のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項24】
液体の中に1種または複数の有機および/または無機顔料を分散させる前、その間、またはその後に、少なくとも1種の有機または無機増粘剤、および/または協働して固さを上昇させるような1種または複数の化合物と組み合わせた少なくとも1種の増粘剤の添加を、適切であるならば小量ずつ、撹拌機、ミキサー、コンパウンダーまたはディソルバーの中で実施することを特徴とする、請求項18〜23のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項25】
前記ペースト状またはゲル状の顔料調製物の均質化を、撹拌機、ミキサー、コンパウンダーまたはロールミルの中で、適切であるならば減圧下で、実施することを特徴とする、請求項18〜24のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項26】
請求項1〜17のいずれか一項の記載によるか、または請求項18〜25のいずれか一項の記載により調製された前記顔料調製物を使用した、石灰仕上げおよび/またはセメント仕上げ建築材料、アスファルト、塗料、ワニス、紙またはプラスチックスの着色方法であって、
前記顔料調製物を、前記石灰仕上げおよび/またはセメント仕上げ建築材料、アスファルト、塗料、ワニス、紙またはプラスチックスと混合することを特徴とする、着色方法。
【請求項27】
前記顔料調製物を、石灰仕上げおよび/またはセメント仕上げ建築材料、アスファルト、塗料、ワニス、紙またはプラスチックにそれを添加する前またはその間に、および/または、石灰仕上げおよび/またはセメント仕上げ建築材料、アスファルト、塗料、ワニス、紙またはプラスチックと混合する間に液状化させるが、その液状化が
−1種または複数の液体の中への溶解、および/または
−酸もしくはアルカリの添加によるpHの変化、および/または
−化学反応、さらに詳しくはレドックス反応もしくは酵素反応、および/または
−熱、機械的エネルギーおよび/または超音波の供給
により実施されることを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記顔料調製物を、前記石灰仕上げおよび/またはセメント仕上げ建築材料、アスファルト、塗料、ワニス、紙またはプラスチックスと、前記混合物全体を基準にして、0.01%〜15重量%、特には0.1%〜10重量%の量で混合することを特徴とする、請求項26または27に記載の着色方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−1790(P2009−1790A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−134745(P2008−134745)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】