説明

ペースト状梅漬

【課題】梅漬の食味を生かしながら細やかな粒状の食感があり、また調味料や副食材として加減しやすく取り扱いに適当な流動性があり、それにより他の食材と均質に混ぜることも可能な梅漬味の食品とすることである。
【解決手段】梅の果実をカルシウム塩で硬化処理し、次いで塩漬して硬質梅漬を調製し、梅漬を除核処理した後、調味液と混合しながら回転刃で微塵切りして粒子群の80%以上の粒径が1〜2mmの範囲に調整されている粒子群からなるペースト状梅漬とする。多数の粒子を同時に噛んで味わえるようになり、例えば解したタラコのようなプチプチとした食感が得られ、従来にない梅漬の新しい食感が得られる食品になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、粒子群からなるペースト状に調製されたペースト状梅漬およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品として周知の梅果実の可食部である梅肉は、例えば梅干や梅漬から核を除去して得られるものであり、そのまま食するか、または乾燥したものをふりかけなどの調理素材や調味料として様々な食品に用いている。因みに、梅肉を得る場合に除去する核は、果実の内果皮が硬化して、内部の種子を保護するものをいう。
【0003】
梅干の周知の製造方法として、先ず、果肉の柔らかな梅干を製造する方法があり、また第2の方法として、果肉にカリカリした歯応えのあるように梅漬を製造する方法が知られている。
【0004】
後者は、いわゆるカリカリ梅とも呼ばれる硬質梅漬であり、その製造方法として、未熟な梅を乳酸カルシウムなどのカルシウム塩で処理することによって、果肉に本来含有されているペクチンをペクチン酸カルシウムとし、すなわちペクチンによって梅果実の酵素による自然軟化現象を制限する製造方法である。
【0005】
このような硬質梅漬を適当な大きさにカットして汎用の食材として利用する場合は、硬質梅漬を半割し、除核してから梅肉を切断加工し、その際に、最大径が3〜10mmのランダムな形状に切断する。長期保存用とする場合は、さらにこれを乾燥させ、食する際には水分を吸収させてカリカリと噛みちぎる食感を楽しむため、吸水状態で前記所定寸法になるようにし、さらに水を再吸収させた際にも硬質の食感が得られるようにソルビトールその他の糖アルコールを添加していた(特許文献1)。
【0006】
【特許文献1】特開2004−113006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記した従来の梅漬は、特に粒径を揃えずに任意形状の断片にカットされたものであって、それを一粒づつ食した際の食感を楽しむために、一粒または一片の粒径を例えば3〜10mmというランダムな大粒径に設けており、特に粒径の分布を所定範囲にそろえたものではなかった。
【0008】
従って、そのような比較的大型の粒子径の梅漬は、他の食材と均質に混ぜることは困難であり、また歯応えを楽しむ程度の3mm以上の大きさでは、カリカリとした歯応えはあるが、多数の粒子を同時に噛めない。このような状態のものでは、プチプチとした細やかな食感はなく、また調味料として量的な加減をしやすい流動性はなかった。
【0009】
そこで、この発明の課題は、上記した問題点を解決して、本来の梅漬の食味を生かしながらいわゆるプチプチとした本来の梅漬けとは全く異なる細やかな粒状食感があり、また調味料や副食材として加減して取り扱いに便利な適度な流動性があるペースト状梅漬とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、この発明においては、自然軟化を制限した塩漬により製造された硬質梅漬の梅肉を微塵切りにした粒子群からなり、この粒子群の80%以上の粒径が1〜2mmの範囲に調整されている粒子群からなるペースト状梅漬としたのである。
【0011】
上記したように構成されるこの発明のペースト状梅漬は、硬質梅漬を粒子群の80%以上の粒径が1〜2mmの範囲であるように調整したので、多数の粒子を同時に噛んでその食感を味わえるようになり、例えば解したタラコのようなプチプチとした食感が得られ、従来にない梅漬の新しい食感が得られる食品になる。
【0012】
このような粒径の揃ったペースト状の梅漬は、調味料として加減しやすく取り扱いやすい流動性があり、例えばチューブに入れて絞り出して任意量を使用することもでき、また他の食材と均質に混ぜることも可能な梅漬味の食品になる。
【0013】
上記の作用を得るためにより好ましい構成としては、前記した粒子群が、果皮を含む粒子群と果肉のみの粒子群とからなり、果皮を含む粒子群の粒径が1〜5mmの範囲であり、かつ果肉のみの粒子群の粒径が1〜2mmの範囲であるペースト状梅漬とすることである。
【0014】
また、このような有利なペースト状梅漬を効率よく製造するためには、梅の果実をカルシウム塩で硬化処理し、次いで塩漬して硬質梅漬を調製し、梅漬を除核処理した後、調味液と混合しながら回転刃で微塵切りして粒径1〜2mmの範囲の粒子群を得ることからなるペースト状梅漬の製造方法を採用することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
この発明は、塩漬された硬質梅漬の梅肉を微塵切りにした粒子群とする際に、粒子群の80%以上の粒径を1〜2mmの範囲に調整したので、梅漬の食味を生かしながらいわゆるプチプチとした粒状の食感があり、また調味料や副食材として加減しやすく取り扱いに適当な流動性があり、それにより他の食材と均質に混ぜることも可能なペースト状梅漬であるという利点がある。
【0016】
また、この発明の方法によれば、硬質梅漬を除核処理し、調味液と混合しながら回転刃で微塵切りして所定粒径範囲の粒子群とすることにより、上記利点のあるペースト状梅漬を効率よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この発明の実施形態では、予め調製された硬質梅漬を利用し、その梅肉を微塵切りにし、その際に粒子群の80%以上の粒径を1〜2mmの範囲に調整してペースト状梅漬を製造する。
【0018】
この発明に用いる硬質梅漬は、ある程度の硬さを必要とするため、原料の青梅を初期の塩漬け(塩水漬けの場合も含めて塩漬けと称する。)処理する際にカルシウム塩を溶解した塩水を供給し、充分に混合して果肉に本来含有されているペクチンをペクチン酸カルシウムとし、すなわちペクチンによって梅果実の酵素による自然軟化現象を制限して硬化処理をする。
【0019】
カルシウム塩としては、ペクチン酸カルシウムが得られるものであれば特に塩の種類を限定する必要はないが、乳酸カルシウムや消石灰を使用することが好ましい。消石灰を使用する場合の配合量としては、青梅の重量に対して0.8〜1.8重量%、より好ましくは1.0〜1.5重量%程度が好ましい範囲である。所定濃度未満の濃度の石灰水では、粒径を1〜2mmという小径にするための硬さになり難く、粒子群の80%以上を所定粒径に調整することが容易でなく、所定濃度を超える石灰水を用いても硬質化の効果に変化はなく、実用的でないからである。
【0020】
このような硬化処理を常温で1週間程度続けた後、処理液を全て交換して所定濃度の塩水または塩分含有の調味液に浸漬し、その際の塩分量(塩度)は15〜40重量%、より好ましくは20〜24重量%程度である。塩分量は、食する需要者の好みに応じて増減調整すればよいが、40重量%を超えて濃い塩分量では、梅漬の表面に皺ができる場合があって好ましくない。
【0021】
このようにして得られた硬質梅漬は、次に果肉等を効率よく微塵切りにするために半割り状態にして種を取り除く除核処理をする。除核処理は、常法により周知の種抜き機を利用して行なえばよい。その後は、種の破片その他の異物を除去する選別処理を適宜に含めて行なうことが好ましいのは勿論である。
【0022】
次に、果肉等を微塵切りにして粒状物を調製する。具体的に好ましい手段としては、最終製品となるように調整された調味液と混合しながら、フードカッターの回転刃で微塵切りして粒径1〜2mmの範囲の粒子群からなるペーストを得ることである。
【0023】
調味液は、食塩の量を適量(例えば10〜25重量%)とし、酢酸ナトリウムやミョウバンを添加した食塩水などを採用することができ、その他にも需要者の嗜好に合わせて適宜に酸味料や甘味料、塩分量、香料、アルコールなどの添加やその配合量の調整が可能である。
【0024】
フードカッターは、特に切れ味のよい回転カッター付きのものが好ましく、処理量と回転速度などを適宜に調整して粒径1〜2mmの範囲の粒子群が得られるようにして用いる。
【0025】
果肉などの粒状物は、梅の果皮を含む部分は回転カッターで充分に細かく粒状化し難く、一方、果肉のみの部分は短時間に粒状化しやすいため、果皮を含む粒子群の粒径が1〜5mmの範囲であり、かつ果肉のみの粒子群の粒径が1〜2mmの範囲であるものが得られれば満足できる食感のペースト状梅漬が得られる。
【実施例1】
【0026】
青梅1000kgに食塩18kg、ミョウバン5kg、酢酸ナトリウム3kgを添加して、タンク内に収容し、次に水500リットル、食塩25kg、消石灰13kgからなる石灰水を注入し、60〜72時間放置し、その後3日間、適宜にポンプで循環させながら硬化処理した。
【0027】
次に、タンク内の液を全量抜き取り、本漬液(水450リットル、食塩40kg、ミョウバン3kg、酢酸ナトリウム7kg)をタンクに投入し、隔日に2kgの食塩を添加し、タンク内液を6時間おきに循環させた。
【0028】
塩度が22度に達したら2日間放置し、その後、タンクから梅を取り出して異物を除去して塩水で洗浄し、種抜きし、半割り状態の梅漬とした。
【0029】
この梅漬24kgに対して調味液(塩分1重量%)6kgを配合し、フードカッターにて、回転数1690rpmで約1分間の混合粉砕処理を行ない、果皮を含む粒子群の粒径が1〜5mmの範囲であり、かつ果肉のみの粒子群の粒径が1〜2mmの範囲であるペースト状梅漬を得た。
【0030】
得られたペースト状梅漬は、解したタラコのようなプチプチとした食感が得られるものであり、チューブに入れて絞り出して任意量を使用することができ、また米飯や野菜その他の裁断された食材と手作業で簡単に均質に混ぜることができ、多様な食材に調味することができ、また副食材として盛り付けにも多様な態様が可能であった。
【0031】
[比較例1]
実施例1において、フードカッターの処理時間を調整して硬質梅漬の果肉のみの粒子群の粒径が1〜2mmの範囲のものが70%程度以下(すなわち、粒子群の30%以上の粒径が3〜4mmの範囲)であるように調整した。
得られたペースト状梅漬は、多数の粒子を同時に噛めないためプチプチとした食感は充分に得られず、また調味料として加減しやすく取り扱いやすい流動性のあるものではなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質梅漬の梅肉を微塵切りにした粒子群からなり、この粒子群の80%以上の粒径が1〜2mmの範囲に調整されている粒子群からなるペースト状梅漬。
【請求項2】
粒子群が、果皮を含む粒子群と果肉のみの粒子群とからなり、果皮を含む粒子群の粒径が1〜5mmの範囲であり、かつ果肉のみの粒子群の粒径が1〜2mmの範囲である請求項1に記載のペースト状梅漬。
【請求項3】
梅の果実をカルシウム塩で硬化処理し、次いで塩漬して硬質梅漬を調製し、梅漬を除核処理した後、調味液と混合しながら回転刃で微塵切りして粒径1〜2mmの範囲の粒子群を得ることからなるペースト状梅漬の製造方法。