説明

ペースト状石鹸組成物及びその製造方法

【課題】常温において柔らかいが流れることがなく、かつ分離することもなく、使用性に優れた石鹸組成物で、皮膚や目に対して刺激が少なく、環境にも優しく、高い起泡力を有するペースト状石鹸組成物及び、該ペースト状石鹸組成物を生産性良く製造する方法を提供する。
【解決手段】ペースト状石鹸組成物は、炭素数が12〜24の脂肪酸からなる混合脂肪酸を、水酸化カリウム/水酸化ナトリウムの重量比が90/10〜50/50である混合アルカリで鹸化して得られる石鹸17〜35重量%、ステアリン酸マグネシウムを0.5〜10重量%、多価アルコール類を16〜31重量、水分を28〜65重量%含み、所定の条件で測定した粘性の最大荷重が5℃で200〜8800g/cmであり25℃及び45℃で200〜3499g/cmであり、必要に応じてタルクを8重量%以下で配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚洗浄用のペースト状石鹸組成物及びその製造方法に関し、特に、常温で柔らかく使用性が改良され、高い起泡力を有するとともに皮膚や目に対して刺激が少なく、環境にも優しい、高級脂肪酸石鹸を主剤とする皮膚洗浄用のペースト状石鹸組成物及びその製造方法を提供することにある。
【背景技術】
【0002】
一般的には顔や身体などの皮膚洗浄用組成物は、脂肪酸または油脂を水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の苛性アルカリ、アルカノールアミン類や塩基性アミノ酸等によって中和またはケン化して得られる脂肪酸石鹸、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤及び/又は両イオン性界面活性剤等を少なくとも1種以上を混合して調製されており、更にソルビトール、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリアルキレングリコール等の多価アルコール類及び高分子系化合物などを配合して組成物の性能を向上させたり、組成物の粘度等状態を改良させたりするために用いられている。更に必要に応じて、色素、香料等を加熱混合し、溶解させて製造されている。
【0003】
皮膚洗浄用組成物の性能の向上、状態の改良のためには以下の種々の方法が提案されている。
例えば、特開2006−206525号公報(特許文献1)には、良好な水溶け、起泡性と保存安定性のために、高級脂肪酸のカリウム石鹸と低級アルコール、水を含有したペースト状皮膚洗浄剤を提案されている。
また、特開2002−322498号公報(特許文献2)には、炎天下での輸送等による高温下での組成物の分離を改善する方法として、ミリスチン酸とパルミチン酸およびステアリン酸の特定の範囲におかれたカリウム石鹸とプロピレングリコール、グリセリンおよび水の含有される範囲が提案されている。
【0004】
特開2004−210704号公報(特許文献3)には、皮膚洗浄剤の経時安定性、起泡性、洗浄効果、泡質等の向上、洗浄後の肌が滑らかになるソフニング効果を付与する組成物として、高級脂肪酸石鹸、アミノ酸系ポリマー及びイオン性のことなる二種以上の水溶性高分子を含有する皮膚洗浄組成物が提案されている。
更に、特開2011−121870号公報(特許文献4)には、メイクや皮脂の除去効果に優れたペースト状の皮膚洗浄剤として、硫酸基を有する陰イオン界面活性剤、高級脂肪酸又はその塩、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、(ジ)グリセリンモノ脂肪酸エステル又は(ジ)グリセリンモノアルキルエーテル及びアルキルポリグルコシドの配合物が提案されている。
【0005】
しかしながら、高級脂肪酸石鹸を主剤とする配合物で、環境にも優しく、しかも皮膚や目に対して刺激が少なく、常温において柔らかいが流れることがなく、また石鹸組成物が分離することもない、年間を通して使用性の改良された、高い気泡力を有するペースト状石鹸組成物の実現が期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−206525号公報
【特許文献2】特開2002−322498号公報
【特許文献3】特開2004−210704号公報
【特許文献4】特開2011−121870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、通常の石鹸組成物のように界面活性剤を含まず、常温において柔らかいが流れることがなく、石鹸組成物が分離することもなく、使用性に優れ、また皮膚や目に対して刺激が少なく、環境にも優しく、高級脂肪酸石鹸を洗浄成分とし、高い起泡力を有するペースト状石鹸組成物及び、該ペースト状石鹸組成物を生産性良く製造する方法を提供することにある。
なお、本発明において、「常温」とは5℃〜45℃までの温度を含むものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、通常使用されている界面活性剤を使用することなく、所定組成の混合脂肪酸、特に飽和脂肪酸を所定のアルカリで鹸化して得られた石鹸分と、ステアリン酸マグネシウムと、多価アルコールと、水とを所定量範囲で含有することで、常温で固形状や液状となることなく、上記課題を解決できるペースト状石鹸組成物及びその製造が可能となることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
即ち本発明のペースト状石鹸組成物は、炭素数が12〜24の脂肪酸からなる混合脂肪酸を、水酸化カリウム/水酸化ナトリウムの重量比が90/10〜50/50である混合アルカリで鹸化して得られる石鹸17〜35重量%、ステアリン酸マグネシウムを0.5〜10重量%、多価アルコール類を16〜31重量、水分を28〜65重量%含み、下記条件で測定した粘性の最大荷重が5℃で200〜8800g/cmであり、25℃及び45℃で200〜3499g/cmであることを特徴とする、ペースト状石鹸組成物である。
20mlのポリプロピレン製シリンジ(化粧S−詰め替え容器 No.403:発売元 株式会社大創産業:シリンジ出口直径:6.0mm)に所定の温度(5℃、25℃、45℃)の石鹸組成物を注入し、シリンジの注入棒の上に分銅を積載して、シリンジ出口より石鹸組成物が吐出するときの最大荷重を測定する。
【0010】
好適には、本発明のペースト状石鹸組成物は、上記本発明のペースト状石鹸組成物において、更にタルクを8重量%以下含み、前記脂肪酸は飽和脂肪酸であることを特徴とする、ペースト状石鹸組成物である。
【0011】
また、上記本発明のペースト状石鹸組成物の製造方法は、炭素数が12〜24の脂肪酸を2種以上、水、多価アルコール類及びステアリン酸マグネシウムを撹拌混合し、該混合液を60〜100℃で加熱しながら、水酸化カリウム/水酸化ナトリウムの重量比が90/10〜50/50である混合アルカリで鹸化することにより調製することを特徴とする、ペースト状石鹸組成物の製造方法である。
【0012】
好適には、上記本発明のペースト状石鹸組成物の製造方法は、前記本発明のペースト状石鹸組成物の製造方法において、更にタルクを、前記鹸化前又は鹸化後に添加配合することを特徴とする、ペースト状石鹸組成物の製造方法である。
【0013】
また本発明の他の上記ペースト状石鹸組成物の製造方法は、炭素数が12〜24の脂肪酸を2種以上と水及び多価アルコール類を撹拌混合し、該混合液を60〜100℃で加熱しながら、水酸化カリウム/水酸化ナトリウムの重量比が90/10〜50/50が90/10〜50/50である混合アルカリで鹸化し、次いでステアリン酸マグネシウムを添加して撹拌混合することにより調製することを特徴とする、ペースト状石鹸組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のペースト状石鹸組成物は、常温で固形化することがなく且つ柔らかい状態にはあるが流れ出したりするような流動性を抑制することができ、使用性に優れたペースト状とすることができる。
また、本発明のペースト状石鹸組成物は、脂肪酸石鹸分を洗浄成分とし界面活性剤を含むことがないため、皮膚への刺激が少なく、環境的にも優れている。
また、タルクを配合すると石鹸組成物のキメがより細かくなると同時に泡が安定化するという優れた効果がある。
また、本発明のペースト状石鹸組成物の製造方法は、上記本発明のペースト状石鹸組成物を効率よく製造することが可能である。
なお、本発明においてペースト状とは、20mlのポリプロピレン製シリンジ(化粧S−詰め替え容器 No.403、発売元 株式会社大創産業、シリンジ出口直径を6.0mmに調整)に所定の温度(5℃、25℃、45℃)の石鹸組成物を注入し、シリンジの注入棒の上に分銅を積載して、シリンジ出口より石鹸組成物が吐出するときの最大荷重を測定して、5℃での最大荷重が200〜8800g/cmであり25℃及び45℃で200〜3499g/cmであるものをペースト状というものとする。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を以下の好適例に基づいて説明するが、これらに限定されるものではない。
本発明のペースト状石鹸組成物は、炭素数が12〜24の脂肪酸からなる混合脂肪酸を、水酸化カリウム/水酸化ナトリウムの重量比が90/10〜50/50である混合アルカリで鹸化して得られる石鹸17〜35重量%、ステアリン酸マグネシウムを0.5〜10重量%、多価アルコール類を16〜31重量、水分を28〜65重量%含み、下記条件で測定した粘性の最大荷重が5℃で200〜8800g/cmであり25℃及び45℃で200〜3499g/cmであることを特徴とする、ペースト状石鹸組成物である。
粘性を表す前記最大荷重は、20mlのポリプロピレン製シリンジ(化粧S−詰め替え容器 No.403、発売元 株式会社大創産業、シリンジ出口直径を6.0mmに調整)に所定の温度(5℃、25℃、45℃)の石鹸組成物試料を注入し、シリンジの注入棒の上に分銅を積載して、シリンジ出口より石鹸組成物が吐出するときの最大荷重を測定した値である。
好適には、更にタルクを8重量%以下含み、前記脂肪酸は飽和脂肪酸である、ペースト状石鹸組成物である。
かかる構成を有することで、常温、具体的には5〜45℃でペースト状を保持することができる。
【0016】
本発明のペースト状石鹸組成物に含まれる脂肪酸としては、炭素原子数12〜24の、飽和脂肪酸及び/又は不飽和直鎖脂肪酸の2種以上の混合脂肪酸である。
好ましくは、炭素数12〜18の飽和脂肪酸及び/又は不飽和直鎖脂肪酸が好適に使用でき、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸及びそれらの混合物である混合脂肪酸、更に、ヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、パーム油脂肪酸等の水素添加による半硬化及び/又は完全硬化脂肪酸の分留脂肪酸を単独でまたは混合脂肪酸として使用することができる。
また更に好適には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸の混合脂肪酸とすることが低臭気性、色相の経時安定性の点から望ましい。
上記脂肪酸を2種以上の混合脂肪酸としたのは、得られる石鹸組成物のペースト状態の安定性、良好な起泡性、泡の安定性、適度な洗浄力を発揮させる点から重要である。
【0017】
より好ましくは、本発明のペースト状石鹸組成物の石鹸分の原料となる混合脂肪酸の組成としては、脂肪酸中、ラウリン酸等の炭素原子数12の脂肪酸が0〜50重量%、ミリスチン酸等の炭素数14の脂肪酸が30〜80重量%、パルミチン酸等の炭素数16の脂肪酸が5〜30重量%、ステアリン酸やオレイン酸等の炭素数18の脂肪酸が0〜30重量%であることが、ペースト状態の安定性、良好な起泡性、泡の安定性、適度な洗浄力を発揮する石鹸組成物を製造できる点から好ましい。
【0018】
本発明のペースト状石鹸組成物製造方法において、上記混合脂肪酸を中和して脂肪酸石鹸を得るために使用するアルカリは、水酸化カリウム/水酸化ナトリウムの混合物であり、かかる水酸化カリウム/水酸化ナトリウムの重量比は90/10〜50/50である。これらの水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムは、別個に配合しても、または予め配合された混合アルカリを用いてもいずれでも良い。
特に好ましい水酸化カリウム/水酸化ナトリウムの重量比は、80/20〜60/40である。
水酸化カリウムの重量比率が90より高くなってしまうと、得られる石鹸組成物が常温においても流動性を有してしまいペースト状でなくなってしまい、また50より水酸化カリウムの比率が低くなると石鹸の硬度が上昇して柔らかさを失ってペースト状でなくなるとともに、使用時に水に早く溶けず起泡性が低くなる。
また、混合脂肪酸の中和には、かかるアルカリを予めアルカリ水溶液(例えば、有効分濃度48%を基準)として用いる方が短時間で均一な溶液を得ることができる。
【0019】
上記混合脂肪酸と混合アルカリを鹸化して得られた脂肪酸石鹸としては、例えば、ラウリン酸カリウム/ナトリウムの混合塩、ミリスチン酸カリウム/ナトリウムの混合塩、パルミチン酸カリウム/ナトリウムの混合塩、ステアリン酸カリウム/ナトリウムの混合塩及びオレイン酸カリウム/ナトリウムの混合塩等が挙げられ、これらを2つ以上混合して使用することが起泡性で且つ泡立ちの良いペースト状石鹸を製造できる点から望ましい。
より好ましくは、ラウリン酸カリウム/ラウリン酸ナトリウムの混合塩、ミリスチン酸カリウム/ミリスチン酸ナトリウムの混合塩、パルミチン酸カリウム/パルミチン酸ナトリウムの混合塩、ステアリン酸カリウム/ステアリン酸ナトリウムの混合塩などの、飽和脂肪酸カリウム/飽和脂肪酸ナトリウムの混合塩が、得られるペースト状石鹸組成物の臭気、酸化による色相の黄変などの経時変化が少ないために望ましい。
【0020】
本発明のペースト状石鹸組成物中、脂肪酸石鹸分は、15〜35重量%、好ましくは17〜33重量%含む。
脂肪酸石鹸分が15重量%未満となると、使用時、充分な泡量が得られない場合があり、一方35重量%を超えると柔らかいペースト状組成物が得られなくなり、より硬くなってしまう。
【0021】
また、本発明のペースト状石鹸組成物には、ステアリン酸マグネシウムを0.5〜10重量%、好ましくは2〜8重量%含む。
ステアリン酸マグネシウムが1.5重量%未満となると、ペースト状石鹸組成物の流動性は大きくなり流れ出してしまい、一方10重量%を超えると、ペースト状組成物の流動性は減少するがペーストのキメが粗くなってしまう。
本発明のペースト状の石鹸組成物には、通常の石鹸組成物には含まれないステアリン酸マグネシウムを含むことで、常温(5〜45℃)における高温側でも流動性を抑制し、低温での硬化を抑制するという作用があり、また洗浄時において制泡性もなく潤滑性のある泡を提供できると共に洗浄後にしっとり感等良好な感触を与えることができる。
好ましくは、ステアリン酸マグネシウムの脂肪酸基は炭素数18のものを80重量%以上含んでいることが望ましい。炭素数18未満の脂肪酸基が多くなるとペースト状組成物の流動性が大きくなる傾向がある。
【0022】
ここで、本発明ペースト状石鹸組成物にはステアリン酸カルシウムは含まれず、ステアリン酸カルシウムは、ステアリン酸マグネシウムの代替として使用することはできない。 これは、ステアリン酸カルシウムでは、ペースト状石鹸組成物の流動性を抑制することができず、また低温での硬化を抑制することが難しいためである。
【0023】
また、本発明のペースト状石鹸組成物には、水が含まれ、該水は添加水及び各原料に含まれる水及び脂肪酸とアルカリとの中和によって生成する水分等が該当し、ペースト状石鹸組成物中、28〜65重量%、好ましくは35〜50重量%である。
水分は水酸化カリウム/水酸化ナトリウムの重量比が90/10から50/50になるにつれて、より多くの水分を含有することが必要となる。水酸化ナトリウムの使用割合が高くなるにつれて、鹸化によって生成する脂肪酸のナトリウム塩の濃度が高くなるが、生成する脂肪酸のナトリウム塩の水に対する溶解度が小さいためと考えられる。
水分が65重量%を超えると、使用時に満足する起泡性、泡量が得られにくくなり、一方28重量%未満となると、低温時で硬化しやすくなってしまう。
かかる範囲で水の含有量を調整すると、常温でペースト状となり、粘度も適正な範囲であり、流れ出す等の流動性を有さず、また硬く固形化することもない、ペースト状石鹸組成物を得ることができる。
【0024】
また、本発明のペースト状石鹸組成物には、多価アルコール類を含有する。
多価アルコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ソルビトール等が例示できる。
多価アルコール類は、本発明のペースト状石鹸組成物中、16〜31重量%、好ましくは17〜30重量%の割合で含有される。
含有量が16重量%未満では流動性のない柔らかいペースト状を得ることが難しく、31重量%を超えると高温側で流動性を抑制できなくなってしまう。
かかる含有割合で多価アルコール類を含むことにより、本発明の石鹸組成物の製造時に60〜100℃でゲル化することもなく容易に鹸化することができるばかりでなく、ペーストの水への溶解が速くなると同時に起泡しやすくなるという効果がある。
また、かかる糖類を含有することで、より高濃度の石鹸溶液を容易に製造できる。
【0025】
好適には、本発明のペースト状石鹸組成物には、タルクを含有する。
タルクは、本発明のペースト状石鹸組成物中に8重量%以下、好ましくは0.5〜8重量%の割合で含有される。
かかる含有割合でタルクを含むことにより、ペースト状石鹸組成物の状態が流れにくくなると同時に硬化を抑制するという効果がある。
【0026】
上記本発明のペースト状石鹸組成物を製造するには、以下の方法が例示できる。
まず、第1の製造方法は、炭素数が12〜24の脂肪酸を2種以上、水、多価アルコール類及びステアリン酸マグネシウムを撹拌混合し、該混合液を60〜100℃で加熱しながら、水酸化カリウム/水酸化ナトリウムの重量比が90/10〜50/50である混合アルカリで鹸化することにより調製する、上記本発明のペースト状石鹸組成物の製造方法である。
好ましくは、更にタルクを、前記鹸化前又は鹸化後に添加配合することで、上記本発明のペースト状石鹸組成物が得られる。
【0027】
また、第2の製造方法は、炭素数が12〜18の脂肪酸を2種以上と水及び多価アルコール類を撹拌混合し、該混合液を60〜100℃で加熱しながら、水酸化カリウム/水酸化ナトリウムの重量比が90/10〜50/50が90/10〜50/50である混合アルカリで鹸化し、次いでステアリン酸マグネシウムを添加して撹拌混合することにより調製する、上記本発明のペースト状石鹸組成物の製造方法である。
【0028】
なお、本発明の製造方法において、添加水は、最終的に得られる石鹸組成物が、下記条件で測定した粘性の最大荷重が5℃で200〜8800g/cmであり25℃及び45℃で200〜3499g/cmとなるように調整して配合されることによりペースト状とすることができる。
なお前記粘性は、20mlのポリプロピレン製シリンジ(化粧S−詰め替え容器 No.403、発売元 株式会社大創産業、シリンジ出口直径を切削調整して6.0mmとする)に所定の温度(5℃、25℃、45℃)の石鹸組成物試料を注入し、シリンジの注入棒の上に分銅を積載して、シリンジ出口より石鹸組成物が吐出するときの最大荷重を測定した値で示す。
【0029】
また、必要に応じて、上述した必須成分以外にも高級アルコール類、スクワラン、種々の液体状あるいは固体状脂肪酸エステル類、オリーブ油、ゴマ油等の各種精製天然油脂類などの油性成分、ポリオキシエチレンアルキル変性ジメチルシリコ―ンなどのシリコーン誘導体、各種水溶性高分子、各種キレート剤、各種防腐剤、各種紫外線防止剤、動植物由来の各種天然抽出物類、凝固点、硬度の調節に食塩、ボウ硝等の無機塩、酸化防止剤、色素類、香料類、その他を本発明の効果を損なわない程度の範囲内で任意に配合させることができる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を次の実施例、比較例及び試験例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
使用した配合原材料は下記のものである。
[配合成分]
(1)脂肪酸
ラウリン酸(MW200):商品名 IMEX C1299 InterMed
Sdn.Bhd
ミリスチン酸(MW228):商品名 IMEX C1499 InterMed
Sdn.Bhd
パルミチン酸(MW256):商品名 IMEX C1498 InterMed
Sdn.Bhd.
ステアリン酸(MW284):商品名 IMEX STEARIC ACID ST
InterMed Sdn.Bhd.
(2)アルカリ
水酸化ナトリウム:商品名 カセイソーダ液 含有量48% 純正化学株式会社
水酸化カリウム :商品名 カセイカリ液 含有量48% 純正化学株式会社製
(3)多価アルコール類
グリセリン:商品名 IMEX GLYCERINE 99.5 USP/BP
InterMed Sdn.Bhd.
ソルビトール:商品名 NEOSORB70/70 シンコー・サイエンス・
コーポレーション社製(70%水溶性液)
【0031】
ステアリン酸マグネシウム:商品名ダイワックス M 大日化学工業株式会社製
ステアリン酸カルシウム:商品名 ダイワックス CF 大日化学工業株式会社製
タルク:商品名 SWA−A TALC 浅田製粉株式会社製
精製水:商品名 日本薬局方 精製水 小堺製薬株式会社製
【0032】
(実施例1〜20・22〜32、比較例1〜50)
冷却還流管と攪拌機をつけた2Lのガラス製四つ口フラスコに、それぞれ、精製水、グリセリン、ソルビトール、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルクの各原料を、下記表1〜4に示す原料及び原料仕込配合割合でそれぞれ添加し、撹拌しながら60℃に加温して、次いで48%水酸化カリウム水溶液と48%水酸化ナトリウム水溶液を滴下しながら鹸化して、石鹸分(原料ソープ)を調製した。
次いで、85〜95℃、好ましくは90〜93℃で約30分以上あわ立たないように撹拌して、均一な混合物が得られるまで熟成した(約1時間程度)。
熟成後、養生用の容器に入れて冷却して、各石鹸組成物を得た。
【0033】
(実施例21・33〜34)
冷却還流管と攪拌機をつけた2Lのガラス製四つ口フラスコに、精製水、グリセリン、ソルビトール、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、タルクの各原料を、下記表3〜4に示す原料及び原料仕込配合割合でそれぞれ添加し、撹拌しながら60℃に加温して、次いで48%水酸化カリウム水溶液と48%水酸化ナトリウム水溶液を滴下しながら鹸化して、石鹸分(原料ソープ)を調製した。
次いで、ステアリン酸マグネシウムを添加し、85〜95℃、好ましくは90〜93℃で約30分以上あわ立たないように撹拌して、均一な混合物が得られるまで熟成した(約1時間程度)。
熟成後、養生用の容器に入れて冷却して、各石鹸組成物を得た。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

【0037】
【表4】

【0038】
得られた各石鹸組成物について、粘性について試験して、5〜45℃でペースト状であるかを試験し、その結果も表に記載した。
(粘性試験)
20mlのポリプロピレン製シリンジ(化粧S−詰め替え容器 No.403、発売元 株式会社大創産業)の注入口を内径6.0mmの孔となるように切削処理して調整したシリンジ(シリンジ出口直径:6.00mm)を用いて、所定の温度(5℃、25℃、45℃)で恒温となった各石鹸組成物を上記シリンジに約15ml注入し、空気が入らないように出口を塞いで圧縮した後、各試料が円柱状に押出されたことを確認してから垂直に支持台に固定した。
次いで、シリンジの注入棒の上に設置したプラスチック製の箱(13g)の中に分銅を積載して、シリンジ内の各石鹸組成物試料の吐出が開始するときの最大荷重を測定して、粘性の試験を行った。その結果も上記表1〜4に示す。
但し、表1〜4中の粘性の評価は、以下の表5に示す評価基準とした。
【0039】
【表5】

【0040】
上記表1〜4の比較例1〜50より、配合成分が本件発明の範囲外であったり、その配合量が本件発明の範囲外等であると、得られる石鹸は、常温(5〜45℃)でペースト状とならず、流れ出したり、固形化することがわかる。
また、上記表1〜4より、ステアリン酸カルシウムを用いたものは、流動性の抑制効果が得られないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のペースト状石鹸は、顔や身体の皮膚洗浄用に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数が12〜24の脂肪酸からなる混合脂肪酸を、水酸化カリウム/水酸化ナトリウムの重量比が90/10〜50/50である混合アルカリで鹸化して得られる石鹸17〜35重量%、ステアリン酸マグネシウムを0.5〜10重量%、多価アルコール類を16〜31重量、水分を28〜65重量%含み、下記条件で測定した粘性の最大荷重が5℃で200〜8800g/cmであり25℃及び45℃で200〜3499g/cmであることを特徴とする、ペースト状石鹸組成物。
20mlのポリプロピレン製シリンジ(化粧S−詰め替え容器 No.403、発売元 株式会社大創産業、シリンジ出口直径:6.0mm)に所定の温度(5℃、25℃、45℃)の石鹸組成物を注入し、シリンジの注入棒の上に分銅を積載して、シリンジ出口より石鹸組成物が吐出するときの最大荷重を測定する。
【請求項2】
請求項1記載のペースト状石鹸組成物において、更にタルクを8重量%以下含み、前記脂肪酸は飽和脂肪酸であることを特徴とする、ペースト状石鹸組成物。
【請求項3】
炭素数が12〜24の脂肪酸を2種以上、水、多価アルコール類及びステアリン酸マグネシウムを撹拌混合し、該混合液を70〜100℃で加熱しながら、水酸化カリウム/水酸化ナトリウムの重量比が90/10〜50/50である混合アルカリで鹸化することにより調製する、請求項1記載のペースト状石鹸組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載のペースト状石鹸組成物の製造方法において、更にタルクを、前記鹸化前又は鹸化後に添加配合することを特徴とする、請求項2記載のペースト状石鹸組成物の製造方法。
【請求項5】
炭素数が12〜24の脂肪酸からなる脂肪酸を2種以上と水及び多価アルコール類を撹拌混合し、該混合液を70〜100℃で加熱しながら、水酸化カリウム/水酸化ナトリウムの重量比が90/10〜50/50が90/10〜50/50である混合アルカリで鹸化し、次いでステアリン酸マグネシウムを添加して撹拌混合することにより調製されることを特徴とする、請求項1記載のペースト状石鹸組成物の製造方法。

【公開番号】特開2013−28759(P2013−28759A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166975(P2011−166975)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(503174051)有限会社エス・ピー・エイチ (2)
【Fターム(参考)】