説明

ペースト状食品

【課題】本発明の目的は、澱粉又は小麦粉及び糖類を含むペースト状食品であって、澱粉に由来する特有の強い粘り感が極力抑えられた、口溶け、食感が良好で適度な硬さを有し、コク味と香りに優れたペースト状食品を提供する事にある。
【解決手段】本発明は、澱粉又は小麦粉、糖類及び乳酸醗酵乳を含むペースト状食品であって、pH5.5〜6.3に調整された乳酸醗酵乳を使用してなることを特徴とするペースト状食品であり、当該乳酸醗酵乳を5〜85重量%含み、油脂分3〜35重量%のペースト状食品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフラワーペースト類に代表されるペースト状食品に関し、詳細には澱粉性原料、糖類、油脂を含み、これにpH5.5〜6.3に微醗酵された乳酸醗酵乳を使用することにより得られた、食感がなめらかで口溶けが良好であって、醗酵によるムレ臭がなくコク味と香りに優れたペースト状食品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製菓・製パン製品のフィリング用、塗布用、サンド用に使用されるフラワーペースト類は小麦粉や澱粉等の澱粉性原料を主原料とし、これに糖類、油脂、乳製品、卵、その他風味原料を加え、加熱殺菌及び糊化して得られ、独特のボディを呈したペースト状食品である。そのため澱粉質特有の強い粘りを呈し、口溶けや食感の重いものが多い。
このような状況下で、特許文献1としてα化澱粉、卵黄、糖類、油脂、乳製品等からなる組成物を均質化後、マイクロ波により静置加熱し冷却するフラワーペーストの製造法が提案され、特許文献2として、澱粉類、糖類及び油脂、気泡を含んだ原液を密閉容器中にて静置状態で加熱して得られるフラワーペーストが提案されている。これらの提案はともにマイクロ波加熱や静置加熱の設備が別途必要であり不利である。又、特許文献3では、フラワーペースト類に水中油型乳化物を混合することを特徴とするクリーム組成物が提案されているが、両者を混合するための装置を必要とし不便である。
特許文献4では、必須成分として澱粉、糖質、油脂及び乳酸発酵乳を含むフラワーペースト類であって、当該フラワーペースト類全量に対し、油脂を15〜30重量%、乳酸発酵乳を20〜80重量%含む事を特徴とするフラワーペースト類が提案されているが、風味的にまだ充分満足できるものではなかった。
【0003】
【特許文献1】特開2002−354983号公報
【特許文献2】特開平9−275906号公報
【特許文献3】特開2003−265131号公報
【特許文献4】特開2000−279121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、澱粉性原料及び糖類を含むペースト状食品であって、澱粉に由来する特有の強い粘り感が極力抑えられた、口溶け、食感が良好で適度な硬さを有し、コク味と香りに優れたペースト状食品を提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意研究を行った結果、pH5.5〜6.3に微醗酵された乳酸醗酵乳を使用することで口溶け良好で醗酵的ムレ臭がなくコク味、香りに優れたペースト状食品が製造出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明の第1は、澱粉性原料、糖類及び乳酸醗酵乳を含むペースト状食品であって、pH5.5〜6.3に調整された乳酸醗酵乳を使用してなることを特徴とするペースト状食品である。第2は、乳酸醗酵乳を5〜85重量%含み、油脂分3〜35重量%である、第1記載のペースト状食品である。第3は、乳酸醗酵乳が微醗酵乳である、第1又は第2記載のペースト状食品である。第4は、乳酸醗酵乳の組成が蛋白質分0.5〜15重量%、油脂分0〜50重量%、水分40〜95重量%である、第1から第3何れか記載のペースト状食品である。第5は、ペースト状食品がフラワーペースト様食品である、第1から第4何れか記載のペースト状食品である。第6は、ペースト状食品用であって、組成が蛋白質分0.5〜15重量%、油脂分0〜50重量%、水分40〜95重量%であり、pH5.5〜6.3に調整された乳酸醗酵乳である。
【発明の効果】
【0006】
澱粉に由来する特有の強い粘り感が極力抑えられた、口溶け、食感が良好で適度な硬さを有し、コク味と香りに優れたペースト状食品を提供する事が可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のペースト状食品は、澱粉性原料、糖類及び乳酸醗酵乳を含むペースト状食品であって、pH5.5〜6.3に調整された乳酸醗酵乳を使用するものである。
本発明の澱粉性原料は澱粉、小麦粉が例示でき、澱粉としては、コーン、米、馬鈴薯、タピオカ、小麦、甘薯などから得られる澱粉類及びそれらのリン酸化澱粉、α化澱粉などの加工澱粉類が例示できる。これらの澱粉類は、その種類により、焼成後も良好な保形性を示す焼成用に適したものがあり、例えばリン酸化架橋澱粉が例示できる。
又は、小麦粉は、ロール粉砕とふすまの篩別および漂白など常法により製造されたものであればその種類に制限はなく、例えば強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、超薄力粉など含有グルテンの量を問わない。また、ローストした小麦粉でもよい。好ましくは、中力粉、薄力粉が好ましい。
【0008】
本発明の糖類は、蔗糖、マルトース、ブドウ糖、乳糖、果糖、ソルビトール、マルチトール等の如何なる糖質であっても良い。これら以外にも乳製品由来の乳糖であっても良い。
【0009】
本発明の乳酸醗酵乳は、天然の生クリーム又は、牛乳、加工乳、あるいは脱脂乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、酸カゼイン、レンネットカゼイン、若しくはカゼインナトリウム等のカゼイン類、または乳清蛋白質等に由来する乳蛋白質、その他各種動物性由来の蛋白質を含んだクリームミックスを使用できる。その他これら蛋白質と油脂原料を乳化させたクリームミックスを原料とし乳酸醗酵乳を調製することもできる。油脂原料としては例えば、ナタネ油、大豆油、ヒマワリ種子油、綿実油、落花生油、米糠油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、胡麻油、月見草油、パーム油、シア油、サル油、カカオ油、ヤシ油、パーム各油等の植物性並びに乳脂、牛脂、豚脂、魚油、鯨油等の動物性油脂が例示でき、上記油脂類の単独または混合油あるいはそれらの硬化、分別、エステル交換等を施した加工油脂等、如何なる油脂であっても良く、また、バター、生クリーム等を乳脂源として使用することもできる。
上記したようにクリームミックスを乳酸醗酵して乳酸醗酵乳を得るのであるが、これらの組成は略同じであって、乳酸醗酵乳の組成は、蛋白質分0.5〜15重量%、油脂分0〜50重量%、水分40〜95重量%のものが好ましい。
【0010】
このようにして調製される乳酸醗酵乳は、その無脂乳固形分が3〜30重量%が好ましく、より好ましくは5〜20重量%である。また、乳酸醗酵に供する乳酸菌の種類としては、代表的にはラクトバチルス属の単独菌、またはラクトバチルス属と高温菌に分類されるストレプトコッカス属の混合菌が例示できるが、その他、如何なる乳酸菌であってもよい。乳酸醗酵乳の醗酵は殺菌冷却後のpHが5.5〜6.3となるように微醗酵するのがよくpHが6.3を越えるとペースト状食品を製造した際醗酵による風味コク味が十分でなく、逆にpHが5.5未満であるとペースト状食品を製造した際、醗酵的ムレ臭が生じ特に昨今の潮流である香料を極力使用しない本格的カスタードクリームを製造する際に違和感が生じる。微醗酵乳とはすなわち乳酸菌による醗酵を終点まで行わず5.5〜6.3の限定したpH域にて醗酵停止次いで殺菌されたものを示す。実際の工業的には醗酵途中にある醗酵乳を可及的迅速に目的pHに醗酵停止した後殺菌する方法が理想的であり、醗酵タンク内に大型の攪拌羽根を設け攪拌しながらジャケットに冷媒を通し急冷する方法が望ましい。
【0011】
本発明においては、乳酸醗酵乳はペースト状食品中に5〜85重量%、好ましくは10〜70重量%含まれるのが良い。乳酸醗酵乳の量が少なければ、ペースト状食品の口溶けが悪くなり、なめらかさが無くなる。又、風味面でもコクが無くなり、水臭い味となってしまう。逆に、多すぎると、糖質の含量が減る為、甘味質が少なくなる傾向を示す。
【0012】
本発明において、ペースト状食品中に油脂分は、3〜35重量%、好ましくは5〜35重量% 、更に好ましくは15〜30重量%含まれる様に使用するのが良い。油脂分が少なすぎると、製品に適度なボディー性を付与する事が困難となり、食感のなめらかさも低減する。逆に、多すぎると油脂分と乳酸醗酵乳に由来する蛋白質とのバランスが不均一になり、乳化状態や耐熱性の点で好ましくない。このような油脂原料として例えば、ナタネ油、大豆油、ヒマワリ種子油、綿実油、落花生油、米糠油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、胡麻油、月見草油、パーム油、シア油、サル油、カカオ油、ヤシ油、パーム各油等の植物性並びに乳脂、牛脂、豚脂、魚油、鯨油等の動物性油脂が例示でき、上記油脂類の単独または混合油あるいはそれらの硬化、分別、エステル交換等を施した加工油脂等、如何なる油脂であっても良く、また、バター、生クリーム等の乳製品を乳脂源として利用出来る。なお、上記油脂分としては乳酸醗酵乳に由来する油脂分が含まれる。
油脂分の測定は、「新食品分析ハンドブック、平成12年11月20日初版発行、発行所(株)KENPAKUSHA」のp57、58記載のエーテル抽出法により測定した。
【0013】
本発明においては、水分はペースト状食品中に40〜95重量%含まれるのがよく、これより少なすぎると乳化状態が不安定となり、また食感の水々しさが損なわれる傾向にある。逆に、多すぎると柔らかくなりすぎて、ボディー性が無くなり、パンに充填しにくくなる。
【0014】
ペースト状食品の製造法としては、各原料を混合し予備乳化を行い、次いで、均質化、殺菌(α化)、冷却の工程を経てペースト状食品を得ることができる。予備乳化の調合温度としては40〜70℃、好ましくは50〜60℃が望ましく、均質化圧力は0〜200Kg/cm2 、殺菌条件は80〜150 ℃、4秒〜20分が適している。また、冷却は冷蔵庫中での冷却で十分である。
【0015】
この様にして得られたペースト状食品は、なめらかな食感で充填適性、塗布適性を有するボディを示し、且つ、良好な風味を有している。これらの製品の硬さはレオメーター測定値として、30〜1000g/7.065cm2、好ましくは50〜600g/7.065cm2、さらに好ましくは100〜400g/7.065cm2(但し、測定条件: 品温20℃、直径3cm プランジャー、テーブルスピード5cm/分、不動工業(株)製) の範囲内にあるのが充填適性、塗布適性において好ましい。
【0016】
本発明のペースト状食品は、主原料としては澱粉性原料、糖類及び乳酸醗酵乳を使用するのであるが、これ以外の原料として油脂類、卵、チョコレート、ココア、アーモンド、ピーナッツ、胡麻、各種フルーツピューレ、フルーツ果汁、練乳、コーヒー、紅茶、抹茶、合成甘味料等の各種風味源を使用することが出来る。その際の添加時期については、先述の製造工程中の乳化混合時に添加を行うのが好ましい。 又、本発明のペースト状食品は少量のアルカリ塩、酸類にてpH5.5〜6.4にpH調整するのが好ましい。ペースト状食品の組成にもよるがアルカリ塩の添加量は目安としてペースト状食品中に0.15%以下に、酸類は目安としてペースト状食品中に0.3%以下に留めるのが望ましい。
更に好ましくは、アルカリ塩又は酸類の調整なしで、pH5.5〜6.3に調整された乳酸醗酵乳を使用するのが好ましい。
このような調整をすることによって、口溶け、食感が良好で適度な硬さを有し、コク味と香りに優れたペースト状食品を得ることが出来る。
【0017】
本発明のフラワーペースト様食品とは、ペースト状食品の下位概念に属するものであって、一般に規定されているフラワーペースト類の一部又は大部分に乳酸醗酵乳を使用しているものをいう。
フラワーペースト類とは、小麦粉、澱粉、ナッツ類若しくはその加工品、ココア、チョコレート、コーヒー、果肉、果汁、いも類、豆類、又は野菜類を主要原料とし、これに砂糖、油脂、粉乳、卵等を加え加熱殺菌してペースト状とし、パン又は菓子に充填又は塗布して食用に供するものをいう。
【0018】
本発明の乳酸醗酵乳は、ペースト状食品用であって、上記の方法によって得るのであるが、組成が蛋白質分0.5〜15重量%、好ましくは1.0〜10重量%、さらに好ましくは1.5〜7重量%であり、油脂分0〜50重量%、好ましくは5〜25重量%、さらに好ましくは10〜20重量%であり、水分40〜95重量%、好ましくは50〜90重量%、さらに好ましくは60〜80%であり、pH5.5〜6.3、好ましくはpH5.6〜6.0に調整された乳酸醗酵乳である。
【実施例】
【0019】
以下に本発明の実施例を示し本発明をより詳細に説明するが、本発明の精神は以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、%及び部は、いずれも重量基準を意味する。
【0020】
実験例1
市販生クリーム25部と市販牛乳75部を混合、ホモミキサーで攪拌しながら加熱、70℃で30分予備乳化し、次いでホモゲナイザーで100 Kg/cm2の圧力下に均質化した後、20℃まで急冷してクリームミックスを調製した。このクリームミックスの組成は油分14.2%、蛋白質3.0%、水分77.9%であった。このようにして得たクリームミックス100部に対し乳酸菌バルクスターター1部(ストレプトコッカス・クレモリス及びストレプトコッカス・ラクティスの混合菌)を添加し、20℃で醗酵に供し醗酵開始後、4時間後から30分毎にpH測定を行いpH5.75となった時点で5℃まで急冷、醗酵停止させた。ついで直ちにこの醗酵物を80℃で30分加熱殺菌後、5℃まで急冷し「微醗酵乳1」を得た。この「微醗酵乳1」の殺菌冷却後のpHは5.81であった。
【0021】
実験例2
市販生クリーム25部と市販牛乳75部を混合、ホモミキサーで攪拌しながら加熱、70℃で30分予備乳化し、次いでホモゲナイザーで100 Kg/cm2 の圧力下に均質化した後、20℃まで急冷してクリームミックスを調製した。このクリームミックスの組成は油分14.2%、蛋白質3.0%、水分77.9%であった。このようにして得たクリームミックス100部に対し乳酸菌バルクスターター1部(ストレプトコッカス・クレモリス及びストレプトコッカス・ラクティスの混合菌)を添加し、20℃で醗酵に供し醗酵開始後、4時間後から30分毎にpH測定を行いpH6.20となった時点で5℃まで急冷、醗酵停止させた。ついで直ちにこの醗酵物を80℃で30分加熱殺菌後、5℃まで急冷し「微醗酵乳2」を得た。この「微醗酵乳2」の殺菌冷却後のpHは6.23であった。
【0022】
実験例3
市販生クリーム25部と市販牛乳75部を混合、ホモミキサーで攪拌しながら加熱、70℃で30分予備乳化し、次いでホモゲナイザーで100Kg/cm2 の圧力下に均質化した後、20℃まで急冷してクリームミックスを調製した。このクリームミックスの組成は油分14.2%、蛋白質3.0%、水分77.9%であった。このようにして得たクリームミックス100部に対し乳酸菌バルクスターター1部(ストレプトコッカス・クレモリス及びストレプトコッカス・ラクティスの混合菌)を添加し、20℃で醗酵に供し醗酵開始後、4時間後から30分毎にpH測定を行いpH5.5となった時点で5℃まで急冷、醗酵停止させた。ついで直ちにこの醗酵物を80℃で30分加熱殺菌後、5℃まで急冷し「微醗酵乳3」を得た。この「微醗酵乳3」の殺菌冷却後のpHは5.53であった。
【0023】
実験例4
菜種硬化油(融点10℃)15部、水75部をそれぞれ30℃に加温したものをホモミキサーで攪拌しながら脱脂粉乳10部を添加し十分分散溶解させた。ついで攪拌加熱し70℃で30分予備乳化し、次いでホモゲナイザーで100 Kg/cm2の圧力下に均質化した後、20℃まで急冷してクリームミックスを調製した。このクリームミックスの組成は油分15.1%、蛋白質3.4%、水分75.4%であった。このようにして得たクリームミックス100部に対し乳酸菌バルクスターター1部(ストレプトコッカス・クレモリス及びストレプトコッカス・ラクティスの混合菌)を添加し、20℃で醗酵に供し醗酵開始後、4時間後から30分毎にpH測定を行いpH5.70となった時点で5℃まで急冷、醗酵停止させた。ついで直ちにこの醗酵物を80℃で30分加熱殺菌後、5℃まで急冷し「微醗酵乳4」を得た。この「微醗酵乳4」の殺菌冷却後のpHは5.75であった。
【0024】
比較実験例1
市販生クリーム25部と市販牛乳75部を混合、ホモミキサーで攪拌しながら加熱、70℃で30分予備乳化し、次いでホモゲナイザーで100 Kg/cm2の圧力下に均質化した後、20℃まで急冷してクリームミックスを調製した。このクリームミックスの組成は油分14.2%、蛋白質3.0%、水分77.9%であった。このようにして得たクリームミックス100部に対し乳酸菌バルクスターター1部(ストレプトコッカス・クレモリス及びストレプトコッカス・ラクティスの混合菌)を添加し、20℃で醗酵に供し醗酵開始20時間後pH測定を行いpH4.65であることを確認5℃まで急冷、醗酵停止させた。ついで直ちにこの醗酵物を80℃で30分加熱殺菌後、5℃まで急冷し「醗酵乳1」を得た。この「醗酵乳1」の殺菌冷却後のpHは4.71であった。
【0025】
比較実験例2
市販生クリーム25部と市販牛乳75部を混合、ホモミキサーで攪拌しながら加熱、70℃で30分予備乳化し、次いでホモゲナイザーで100Kg/cm2の圧力下に均質化した後、20℃まで急冷してクリームミックスを調製した。このクリームミックスの組成は油分14.2%、蛋白質3.0%、水分77.9%であった。このようにして得たクリームミックス100部に対し乳酸菌バルクスターター1部(ストレプトコッカス・クレモリス及びストレプトコッカス・ラクティスの混合菌)を添加し、20℃で醗酵に供し醗酵開始後、4時間後から30分毎にpH測定を行いpH5.36となった時点で5℃まで急冷、醗酵停止させた。ついで直ちにこの醗酵物を80℃で30分加熱殺菌後、5℃まで急冷し「醗酵乳2」を得た。この「醗酵乳2」の殺菌冷却後のpHは5.39であった。
【0026】
比較実験例3
市販生クリーム25部と市販牛乳75部を混合、ホモミキサーで攪拌しながら加熱、70℃で30分予備乳化し、次いでホモゲナイザーで100Kg/cm2の圧力下に均質化した後、20℃まで急冷してクリームミックスを調製した。このクリームミックスの組成は油分14.2%、蛋白質3.0%、水分77.9%であった。このようにして得たクリームミックスを醗酵に供することなくそのまま5℃にて保管した。このようにして「未醗酵乳1」を得た。
【0027】
表1に実験例1〜4、比較実験例1〜3の結果を纏めた。
【表1】

【0028】
実施例1
実験例1で得られた「微発酵乳1」45部、菜種硬化油(融点10℃)10部、砂糖15部、澱粉(コーンスターチの化工澱粉)5部、卵黄1部、水24部、レシチン0.01部、カスタードフレーバー及びミルクフレーバー各0.1部を添加し、60℃で10分調合しさらに100Kg/cm2の圧力下に均質化した後、掻きとり式連続熱交換機に通して85〜90℃に加熱し殺菌するとともに澱粉のα化を行った後冷水にて急冷を行った。このようにして得られたペースト状食品は非常に口溶けがよくなめらかな食感を有しコク味、乳味に優れたペースト状食品であった。油脂分と硬さを測定し表2に纏めた。
【0029】
実施例2
実験例2で得られた「微発酵乳2」45部、菜種硬化油(融点10℃)10部、砂糖15部、澱粉(コーンスターチの化工澱粉)5部、卵黄1部、水24部、レシチン0.01部、カスタードフレーバー及びミルクフレーバー各0.1部を添加し、60℃で10分調合した後、乳酸にてpHを6.0に調整を行いさらに100Kg/cm2の圧力下に均質化した後、掻きとり式連続熱交換機に通して85〜90℃に加熱し殺菌するとともに澱粉のα化を行った後冷水にて急冷を行った。このようにして得られたペースト状食品は実施例1のペースト状食品に比べて若干なめらかさの点で劣るものの、風味、口溶けの良好なペースト状食品であった。油脂分と硬さを測定し表2に纏めた。
【0030】
実施例3
実験例3で得られた「微発酵乳3」45部、菜種硬化油(融点10℃)10部、砂糖15部、澱粉(コーンスターチの化工澱粉)5部、卵黄1部、水24部、レシチン0.01部、カスタードフレーバー及びミルクフレーバー各0.1部を添加し、60℃で10分調合した後、炭酸NaにてpHを6.0に調整を行いさらに100Kg/cm2の圧力下に均質化した後、掻きとり式連続熱交換機に通して85〜90℃に加熱し殺菌するとともに澱粉のα化を行った後冷水にて急冷を行った。このようにして得られたペースト状食品は実施例1のペースト状食品に比べて若干塩味を感じるものの、醗酵的ムレ臭はなく風味、口溶けの良好なペースト状食品であった。油脂分と硬さを測定し表2に纏めた。
【0031】
実施例4
実験例4で得られた「微発酵乳4」45部、菜種硬化油(融点10℃)10部、砂糖15部、澱粉(コーンスターチの化工澱粉)5部、卵黄1部、水24部、レシチン0.01部、カスタードフレーバー及びミルクフレーバー各0.1部を添加し、60℃で10分調合しさらに100Kg/cm2の圧力下に均質化した後掻きとり式連続熱交換機に通して85〜90℃に加熱し殺菌するとともに澱粉のα化を行った後冷水にて急冷を行った。このようにして得られたペースト状食品は実施例1のペースト状食品に比べてあっさりした風味ではあるが、十分にコク味、乳味のある口溶け良好なペースト状食品であった。油脂分と硬さを測定し表2に纏めた。
【0032】
比較例1
比較実験例1で得られた「発酵乳1」45部、菜種硬化油(融点10℃)10部、砂糖15部、澱粉(コーンスターチの化工澱粉)5部、卵黄1部、水24部、レシチン0.01部、カスタードフレーバー及びミルクフレーバー各0.1部を添加し、60℃で10分調合した後、炭酸NaにてpHを6.0に調整を行いさらに100Kg/cm2の圧力下に均質化した後、掻きとり式連続熱交換機に通して85〜90℃に加熱し殺菌するとともに澱粉のα化を行った後冷水にて急冷を行った。このようにして得られたペースト状食品は実施例1〜3のペースト状食品に比べて塩味、醗酵的ムレ臭を強く感じるものとなった。
【0033】
比較例2
比較実験例1で得られた「発酵乳2」45部、菜種硬化油(融点10℃)10部、砂糖15部、澱粉(コーンスターチの化工澱粉)5部、卵黄1部、水24部、レシチン0.01部、カスタードフレーバー及びミルクフレーバー各0.1部を添加し、60℃で10分調合した後、炭酸NaにてpHを6.0に調整を行いさらに100Kg/cm2の圧力下に均質化した後、掻きとり式連続熱交換機に通して85〜90℃に加熱し殺菌するとともに澱粉のα化を行った後冷水にて急冷を行った。このようにして得られたペースト状食品は比較例1のペースト状食品ほどではないが実施例1〜3のペースト状食品に比べて塩味、醗酵的ムレ臭を強く感じるものとなった。
【0034】
比較例3
比較実験例3で得られた「未発酵乳1」45部、菜種硬化油(融点10℃)10部、砂糖15部、澱粉(コーンスターチの化工澱粉)5部、卵黄1部、水24部、レシチン0.01部、カスタードフレーバー及びミルクフレーバー各0.1部を添加し、60℃で10分調合した後、炭酸NaにてpHを6.0に調整を行いさらに100Kg/cm2の圧力下に均質化した後掻きとり式連続熱交換機に通して85〜90℃に加熱し殺菌するとともに澱粉のα化を行った後冷水にて急冷を行った。このようにして得られたペースト状食品は実施例1〜3のペースト状食品に比べて、コク味、乳味に欠け口溶けも劣っていた。
【0035】
表2に実施例1〜4、比較例1〜3の結果を纏めた。
【表2】

【0036】
実施例5
実験例1で得られた「微発酵乳1」6部、菜種硬化油(融点10℃)14部、砂糖15部、澱粉(コーンスターチの化工澱粉)5部、卵黄1部、脱脂粉乳4部、水55部、レシチン0.01部、カスタードフレーバー及びミルクフレーバー各0.1部を添加し、60℃で10分調合した後、乳酸にてpHを6.0に調整を行いさらに100Kg/cm2の圧力下に均質化した後、掻きとり式連続熱交換機に通して85〜90℃に加熱し殺菌するとともに澱粉のα化を行った後冷水にて急冷を行った。このようにして得られたペースト状食品は実施例1ほどでないが口溶けがよくなめらかな食感を有しコク味、乳味に優れたペースト状食品であった。油脂分と硬さを測定し表3に纏めた。
【0037】
実施例6
実験例1で得られた「微発酵乳1」84部、砂糖10部、澱粉(コーンスターチの化工澱粉)5部、卵黄1部、レシチン0.01部、カスタードフレーバー及びミルクフレーバー各0.1部を添加し、60℃で10分調合した後、炭酸NaにてpHを6.0に調整を行いさらに100Kg/cm2の圧力下に均質化した後、掻きとり式連続熱交換機に通して85〜90℃に加熱し殺菌するとともに澱粉のα化を行った後冷水にて急冷を行った。このようにして得られたペースト状食品は口溶けがよくなめらかな食感を有しコク味、乳味に優れたペースト状食品であった。油脂分と硬さを測定し表3に纏めた。
【0038】
表3に実施例5.6の結果を纏めた。
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、澱粉性原料、糖類、油脂を含み、これにpH5.5〜6.3に微醗酵された乳酸醗酵乳を使用することにより得られた、食感がなめらかで口溶けが良好であって、醗酵によるムレ臭がなくコク味と香りに優れたペースト状食品に関するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉性原料、糖類及び乳酸醗酵乳を含むペースト状食品であって、pH5.5〜6.3に調整された乳酸醗酵乳を使用してなることを特徴とするペースト状食品。
【請求項2】
乳酸醗酵乳を5〜85重量%含み、油脂分3〜35重量%である、請求項1記載のペースト状食品。
【請求項3】
乳酸醗酵乳が微醗酵乳である、請求項1又は請求項2記載のペースト状食品。
【請求項4】
乳酸醗酵乳の組成が蛋白質分0.5〜15重量%、油脂分0〜50重量%、水分40〜95重量%である、請求項1から請求項3何れか記載のペースト状食品。
【請求項5】
ペースト状食品がフラワーペースト様食品である、請求項1から請求項4何れか記載のペースト状食品。
【請求項6】
ペースト状食品用であって、組成が蛋白質分0.5〜15重量%、油脂分0〜50重量%、水分40〜95重量%であり、pH5.5〜6.3に調整された乳酸醗酵乳。

【公開番号】特開2006−320269(P2006−320269A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−147475(P2005−147475)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(000236768)不二製油株式会社 (386)
【Fターム(参考)】