説明

ペースト組成物、磁性体組成物およびインダクタ

【課題】高透磁率、低磁気損失の特性と、リフロー耐性を備えた磁性体組成物を提供すること。
【解決手段】(A)二次粒子の数平均粒径が300nm以上1000nm以下である磁性粒子、(B)重量平均分子量20万以上の樹脂を含有することを特徴とするペースト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パソコン、自動車、携帯電話や携帯情報端末、フラットパネルディスプレイ、ゲーム機器、高度道路情報システム、無線LANなどの高周波機器用の電子部品に備えることで、部品を小型化、低損失化することができる磁性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高速インターネット利用を始めとして、パソコン、自動車、携帯電話や携帯情報端末、フラットパネルディスプレイ、高度道路情報システム、無線LANなどのワイヤレス機器等、GHz帯の高周波を利用した情報通信機器が普及してきている。これらの情報通信機器の高機能化、高速化に伴い、部品の小型化と信号の損失低減が強く求められるようになってきている。
【0003】
部品の小型化と信号の損失低減を行うためには、高透磁率で低tanδの材料が必要になると考えられている。一般に、高透磁率を得るために金属磁性粒子を有機樹脂に分散させた磁性体組成物が用いられるが、高周波磁場中では塗膜の渦電流のために損失が生じ、tanδが高くなるという問題があった。
【0004】
膜全体の電気抵抗を高めることで塗膜の渦電流を抑制することを目的として、粒子表面を有機樹脂や無機塩、無機酸化物等で被覆する技術が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。また、tanδをさらに小さくするために、単一粒子内を流れる渦電流も抑制することを目的としてサブミクロンメートルからナノメートルオーダーの磁性粒子を用いた磁性体組成物の開発もなされており、1GHzでのtanδが0.1を下回るような材料も得られるようになってきている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−87366号公報
【特許文献2】特開平11−260619号公報
【特許文献3】特開2003−297634号公報
【特許文献4】特開2008−181905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の磁性体組成物の作製に用いられるマトリックス樹脂は、電子部品実装時のリフロー工程で軟化し、変形するなど耐熱性に問題があった。本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、低磁気損失の特性と、リフロー耐性を備えた磁性体組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(A)平均二次粒径が300nm以上1000nm以下である磁性粒子、(B)重量平均分子量20万以上の樹脂を含有することを特徴とするペースト組成物である。
【発明の効果】
【0008】
分散性の高いペースト組成物を得ることができ、粒子同士の電気的接触による渦電流を抑制してtanδの小さい材料を得ることができる。また、電子部品実装時のリフロー工程にも耐えられる、耐熱性の高い硬化物を得ることができる。さらに、塗液の垂れ広がりがおきにくく厚膜作製に適した高粘度ペースト組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のペースト組成物について説明する。本発明のペースト組成物は、(A)平均二次粒径が300nm以上1000nm以下である磁性粒子、および(B)重量平均分子量20万以上の樹脂を含有する。
【0010】
磁性粒子(A)は、軟磁性金属やフェライトなどが挙げられる。軟磁性金属は電気抵抗が小さく、高周波帯域では渦電流の発生により急激に透磁率が低下するといった特徴がある。また、フェライトは軟磁性金属に比べ電気抵抗は高いものの、材料本来の透磁率が低いといった特徴がある。本発明においては、Fe(カルボニル鉄)、Co、Ni、Fe−Ni合金、Fe−Ni−Mo合金、Fe−Co合金、Fe−Cr合金、Fe−Si合金、Fe−Al合金、Fe−Cr−Si合金、Fe−Cr−Al合金、Fe−Al−Si合金などのFe合金類、Fe基アモルファス、Co基アモルファスなどのアモルファス合金、Mg−Znフェライト、Mn−Znフェライト、Mn−Mgフェライト、Cu−Znフェライト、Mg−Mn−Srフェライト、Ni−Znフェライト、Baフェライトなどのフェライトを用いることが好ましい。これらの粒子を単独で、または複数種を混合して用いることができる。
【0011】
磁性粒子の作製方法としては、固相反応法、水熱合成法、超臨界水熱合成法、ゾルゲル法、しゅう酸塩法、乾式法、湿式法、共沈法および噴霧熱分解法など公知の方法が挙げられる。得られた磁性体無機粒子は、ハンマーミル、ロールミル、ボールミル、遊星式ボールミル等によって粉砕され、目的の粒径を有する磁性体無機粒子が得られる。これらの形状を単独で、または複数種を混合して用いることができる。
【0012】
本発明に用いられる磁性粒子は、平均一次粒径が500nm以下であることが好ましい。ここで、平均一次粒径とは一次粒子の平均粒径を指す。また、一次粒子とは凝集が完全にほぐれた状態にある粒子である。磁性粒子の平均一次粒径が500nm以下であると、ペースト組成物および磁性体組成物の各形態においての膜の平坦性が良好となり、膜厚のばらつきを小さくすることができる。具体的には、平均一次粒径が250nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以下である。一方、磁性粒子同士の凝集が抑制され、磁性体組成物とした時の膜のクラックを抑制できる点から、平均一次粒径は10nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましい。
【0013】
また、本発明に用いられる磁性粒子は、平均二次粒径が300nm以上、1000nm以下である。ここで、平均二次粒径とは一次粒子および二次粒子を合わせたものの平均粒径を指す。また、二次粒子とは複数個の一次粒子が凝集した状態にある粒子である。平均二次粒径を300nm以上とすることで二次粒子が安定に存在でき、再凝集が起こりにくくなる。より好ましくは400nm以上、さらに好ましくは500nm以上である。一方、1000nm以下とすることで、得られる磁性体組成物のクラックが抑制され、基板への密着性が向上する。さらに、磁性体組成物の強度が向上することから、900nm以下とすることが好ましく、800nm以下とすることがより好ましい。
【0014】
ここで、本発明における磁性粒子の平均粒径とは、平均一次粒径、平均二次粒径のいずれも数平均粒径である。ペースト組成物中の磁性粒子の平均粒径を測定する方法は以下の通りである。ペースト組成物を任意の基板上に塗布し、後述の方法で磁性体組成物としてから、これをSEM(走査型電子顕微鏡)やTEM(透過型電子顕微鏡)により少なくとも100個の粒子が観測できる程度の倍率で観察したときの視野における粒子を観察し、無作為に選んだ100個の粒子を球形近似し、その粒径の数平均を計算して求めることができる。なお、平均一次粒径を求める場合は100個の一次粒子について数平均を計算する。平均二次粒径を求める場合は一次粒子と二次粒子を合わせて100個無作為に選び、その数平均を計算する。
【0015】
本発明のペースト組成物のうち、揮発成分を除く固形成分に対して磁性粒子(A)が占める割合が50重量%以上95重量%以下であることが望ましい。固形成分に対する磁性粒子(A)の含有量が50重量%以上であると、得られる磁性体組成物の透磁率を大きくすることができる。また、低線膨張率や高弾性率を実現できる。固形成分に対する磁性粒子(A)の含有量が95重量%以下であると、絶縁性が高く、基板への密着性が十分に高い材料とすることができる。固形成分に対する磁性粒子の含有量は、より好ましくは80重量%以上93重量%以下である。
【0016】
樹脂(B)の重量平均分子量は20万以上である。重量平均分子量を20万以上とすることで、耐熱性の高い磁性体組成物を作製することができる。さらに、ペースト組成物の粘度が上がり、磁性体組成物の厚膜化が可能となる。下限はより好ましくは35万以上、さらに好ましくは50万以上であり、上限は好ましくは200万以下、より好ましくは150万以下、より好ましくは120万以下、さらに好ましくは80万以下である。この範囲の樹脂を用いることで硬化物中における粒子の分散性が高くなり、膜厚ムラの小さい磁性体組成物を作製することができる。
【0017】
なお、本発明における重量平均分子量とは、GPC測定により求められるポリスチレン換算値である。例えば以下のように測定することができる。樹脂をNMPに溶解させ固形分濃度を0.1重量%にした液をGPC装置Waters2690(Waters(株)製)で測定してポリスチレン換算で重量平均分子量を算出する。GPC測定条件は、移動層をLiClとリン酸をそれぞれ濃度0.05mol/Lで溶解したNMPとし、展開速度を0.4ml/分とする。
【0018】
樹脂(B)としては、溶媒に可溶なものであれば特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えばポリアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド酸、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。樹脂(B)は重合性官能基を有することが好ましい。加熱により架橋することができるからである。重合性官能基としては付加重合性基、縮合重合性基のいずれでもよいが、付加重合性基であることが好ましい。付加重合性基の具体例は、アクリル基、メタクリル基、エポキシ基等が挙げられるがこれらに限られない。特に、エポキシ基を含有することで耐熱性を有する磁性体組成物を得ることができるので好ましい。エポキシ基含有樹脂として例えば、KH−LT(日立化成工業(株)製)、KH−8004(日立化成工業(株)製)、G−2050M(日油(株)製)、SG−P3(ナガセケムテックス(株)製)等が挙げられる。
【0019】
ペースト組成物中の樹脂(B)の含有量としては、1重量%以上20重量%以下が好ましい。1重量%以上とすることで、ペースト組成物の厚膜化が可能となる。また、20重量%以下とすることで、膜厚ムラをなくすことができる。
【0020】
粒子のペースト組成物中における分散性を向上させるために、分散剤を適宜用いることができる。分散剤としては、ポリマー系分散剤、モノマー系分散剤が挙げられる。ポリマー系分散剤として、酸価を主に有するBYK−102、BYK−110、BYK−111、BYK−P104、BYK−P104S、BYK−P105、BYK−220S(ビックケミージャパン(株)製)、AWS−0851(日油(株)製)や、アミン価と酸価を同等に有するBYK−106、BYK−140、BYK−142、BYK−145、BYK−180(ビックケミージャパン(株)製)、アミン価を主に有するBYK−108、BYK−109、BYK−130(ビックケミージャパン(株)製)等を好適に用いることができる。これら分散剤は単独で、または複数種で組み合わせて用いることができる。モノマー系分散剤として、ニッサンカチオン、ノニオン、ナイミーン、オレオイル(いずれも商品名、日油(株)製)等が挙げられる。これらの分散剤を用いることで、小さな粒径の粒子を分散安定化することができ、平均二次粒径が小さく膜の平滑性が高いペースト組成物を作製することができる。
【0021】
磁性粒子(A)100重量部に対する分散剤の含有量は、0.1重量部以上20重量部以下であることが好ましい。磁性粒子(A)100重量部に対して分散剤の量を0.1重量部以上とすることで良好な分散性を得ることができるので低tanδ材料とすることができ、20重量部以下とすることで、磁性体組成物中の磁性粒子の充填率を向上させ、透磁率を高くすることができる。好ましくは3重量部以上、15重量部以下である。
【0022】
本発明のペースト組成物には、硬化物の強度、耐熱性などを高めるために反応性の物質を含有させることができる。例えば重量平均分子量20万未満のエポキシ樹脂や、エポキシ樹脂の硬化剤として用いられるフェノール化合物、アミン化合物、各種イミダゾール、酸無水物等が挙げられる。
【0023】
重量平均分子量20万未満のエポキシ樹脂としては、例えばエピコート828、エピコート1002、エピコート1750、エピコート152、エピコート630、エピコート604、エピコート1002、エピコート1001、YX4000H、エピコート4004P、エピコート5050、エピコート154、エピコート157S70、エピコート180S70(以上商品名、三菱化学(株)製)、エピクロンHP−4032(以上商品名、大日本インキ化学工業(株)製)、テピックS、テピックG、テピックP(以上商品名、日産化学工業(株)製)、エポトートYH−434L(商品名、東都化成(株)製)、EPPN502H、NC3000(以上商品名、日本化薬(株)製)、エピクロンN965、エピクロンHP−7200(以上商品名、大日本インキ化学工業(株)製)などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂を単独で、または複数種で組み合わせて用いることができる。
【0024】
フェノール化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、フェノールノボラック、ビスフェノールAノボラック、o‐クレゾールノボラック、1,2‐ジヒドロキシナフタレン、1,3‐ジヒドロキシナフタレン、1,4‐ジヒドロキシナフタレン、アリル化ビスフェノールA等が挙げられる。
【0025】
アミン化合物としては例えば、1−アミノエタノール、3−モルホリノプロピルアミン、1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、ビス(4−アミノフェニル)エ−テル、ビス(3−アミノフェニル)エ−テル、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)メタン、ビス(3−アミノフェニル)メタン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼンなどが挙げられる。
【0026】
各種イミダゾールとしては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイトなどが挙げられる。
【0027】
酸無水物としては、ヘキサハイドロフタル酸無水物、メチルテトラハイドロフタル酸無水物、アデカハードナーEH−3326、アデカハードナーEH−703、アデカハードナーEH−705A(以上商品名、旭電化工業(株)製)、エピクロンB−570、エピクロンB−650(以上商品名、大日本インキ化学(株)製)などが挙げられる。
【0028】
粒子の樹脂に対する濡れ性を高めるために、カップリング剤、界面活性剤などによる表面処理を行っても良い。カップリング剤としては、例えばシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤等を用いることができる。界面活性剤としてはポリマー系、モノマー系のいずれでも用いることができ、アニオン系、カチオン系、ノニオン系等から粒子の表面状態に合わせて選択することができる。これらは単独で、または複数種を組み合わせて用いることができる。
【0029】
表面処理は上記カップリング剤、界面活性剤を用いて予め磁性粒子に対して実施しておいてもよいし、ペースト作製時にカップリング剤、界面活性剤を添加することで実施してもよい。
【0030】
本発明のペースト組成物は有機溶媒を含有する。有機溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン(γ−BL)、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、乳酸エチル(EL)、1−エトキシ−2−プロパノール、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、ジアセトンアルコール(DAA)、テトラヒドロフルフリルアルコール(THFA)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、エチレングリコールモノメチルエーテル(EGME)などが挙げられる。
【0031】
次に、本発明のペースト組成物の作製方法について詳細に説明するが、ここで示す方法は一例であり、これに限定されない。このペースト組成物は、磁性粒子(A)の分散液と、樹脂(B)を含有するワニスとを混合して作製することができる。
【0032】
磁性粒子(A)の分散液は、磁性粒子、溶媒および必要に応じ分散剤やカップリング剤の混合物を超音波にかけたり、分散メディアと共に攪拌したりする等の方法で得る。
【0033】
分散メディアの素材として、ステンレス、鉄、銅、クロム、ニッケル、チタニア、窒化ケイ素、炭化ケイ素、アルミナ、ジルコニア、ケイ酸ジルコニウム、チタン酸バリウム、ケイ酸ガラス、石英等が挙げられる。ビーズの粒径は、磁性粒子の一次粒径の500〜10000倍が好ましい。ビーズの粒径を磁性粒子の一次粒径の500倍以上とすることで、ビーズの運動量が十分大きく、高い分散力を得ることができ、10000倍以下とすることで、粒子との衝突頻度を十分高くすることができる。
【0034】
ビーズを用いた分散方法としては、ボールミル、ホモジナイザ、ビーズミルなどを用いる方法が挙げられる。分散は小さいビーズで一度の処理で実施してもよく、段階的にビーズの大きさを変えて実施しても良い。
【0035】
ワニスは、容器の中に樹脂(B)、溶媒、および必要に応じてエポキシ樹脂、硬化剤、分散剤等の各種化合物を入れ、ボールミル、ハイブリッドミキサー、スターラー等を用いて撹拌することで作製できる。
【0036】
磁性粒子分散液とワニスを混合する際は、ビーズが入ったまま分散液とワニスを混合し、その後ビーズを除去するようにしてもよいし、予め分散液のビーズを除去してからワニスと混合してもよい。混合にはボールミル、ビーズミル、ホモジナイザ、ハイブリッドミキサー等を用いることができる。分散液またはペーストからのビーズの除去は、メッシュフィルタ等を用いて濾過することで実施できる。濾過の時間を短縮するために加圧濾過、吸引濾過等を行ってもよい。
【0037】
次に、得られたペースト組成物を用いて磁性体組成物を作製する方法を説明する。本発明の磁性体組成物の形態は特に限定はされず、膜状、球状、棒状など用途に合わせて選択することができるが、特に膜状であることが好ましい。ここでいう膜状とは、フィルム、シート、板、ペレットなども含まれる。
【0038】
ペースト組成物を塗布する被着体は、例えば、シリコンウエハー、ガラス類、セラミックス類、ガリウムヒ素、有機系回路基板、無機系回路基板、フィルム、およびこれらの基板に回路の構成材料が配置されたものから選択できるが、これらに限定されない。有機系回路基板の例としては、ガラス布・エポキシ銅張積層板などのガラス基材銅張積層板、ガラス不織布・エポキシ銅張積層板などのコンポジット銅張積層板、ポリエーテルイミド樹脂基板、ポリエーテルケトン樹脂基板、ポリイミド樹脂基板、ポリサルフォン系樹脂基板などの耐熱・熱可塑性基板、ポリエステル銅張フィルム基板、ポリイミド銅張フィルム基板などのフレキシブル基板が挙げられる。
【0039】
また、無機系回路基板の例は、アルミナ基板、窒化アルミニウム基板、炭化ケイ素基板などのセラミック基板、アルミニウムベース基板、鉄ベース基板などの金属系基板が挙げられる。回路の構成材料の例は、銀、金、銅などの金属を含有する導体、無機系酸化物などを含有する抵抗体、ガラス系材料および/または樹脂などを含有する低誘電体、樹脂や高誘電率無機粒子などを含有する高誘電体、ガラス系材料などを含有する絶縁体などが挙げられる。
【0040】
ペースト組成物を被着体に塗布する方法としてはスピナーを用いた回転塗布、スプレー塗布、ロールコーティング、スクリーン印刷、ブレードコーター、ダイコーター、カレンダーコーター、メニスカスコーター、バーコーターなどの方法がある。また、塗布膜厚は、塗布手法、組成物の固形分濃度、粘度などによって異なるが、通常、乾燥後の膜厚が、0.1μmから150μmになるように塗布する。
【0041】
次に基板上に塗布したペースト組成物膜から有機溶媒を除去する。有機溶媒を除去する方法としては、オーブン、ホットプレート、赤外線などによる加熱乾燥(プリベーク)や真空乾燥などが挙げられる。加熱乾燥は50℃から180℃の範囲で1分から数時間行うのが好ましい。
【0042】
次に、本発明のペースト組成物を用いてシートを作製する方法を説明する。ここでいうシートとはいわゆるBステージシートのことである。フィルムにバーコーター等を用いてペースト組成物を塗布し、加熱・乾燥させることでシートを得ることができる。こうして得られたシートは熱をかけて軟化させることができ、回路基板、電子部品に転写して用いることができる。基材となるフィルムとしては例えば、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム等のフッ素樹脂フィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム等が挙げられるが、これらに限られない。また、剥離性基材はシリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、脂肪族アミド系等の離型剤により離型処理が施されていてもよい。また、シートの別の面にカバーフィルムを付与することで、異物の付着を防ぐとともに作業時のべたつきを抑制することができる。
本発明のシートの使用方法を説明する。シートがカバーフィルムを有する場合にはこれを剥離し、シートと基板を対向させて熱圧着により貼り合わせる。熱圧着は、熱プレス処理、熱ラミネート処理、熱真空ラミネート処理等によって行うことができる。貼り付け温度は、基板への密着性、埋め込み性の点から40℃以上が好ましい。また、貼り付け時に温度が高くなると接着剤シートが硬化する時間が早くなり、作業性が低下するため貼り付け温度は250℃以下が好ましい。シートが支持体を有する場合、支持体は貼り合わせ前に剥離してもよいし、熱圧着工程のいずれかの時点または熱圧着後に剥離してもよい。
【0043】
用いたペースト組成物中またはシート中の樹脂の硬化機構に応じて、加熱処理や光照射などにより樹脂の硬化反応を進行させて磁性体組成物を得ることができる。この場合、光照射後に加熱処理をするなど硬化を完全に進めるために複数の処理を組み合わせてもよい。加熱処理温度は120℃から400℃の範囲内で、一定温度あるいは段階的に昇温し、処理時間は5分から5時間の範囲で実施することができる。
【0044】
次に、本発明のペースト組成物またはシートの用途として、磁性体組成物を有するインダクタについて説明する。なお近年は様々なインダクタが提案されており、本発明のペースト組成物またはシートの用途は以下に限定されるものではない。
【0045】
本発明の磁性体組成物の用途は、例えば、高透磁率を有するインダクタ用コアへの適用が好ましい。また、本発明でいうインダクタは、半導体素子、ICチップ、および回路基板に形成されたものであることが好ましい。
【0046】
本発明の磁性体組成物を有するインダクタの製造方法の例は以下の通りである。ICチップの電子回路が形成されていない面に渦巻き状の巻き線が平面内にスパイラルインダクタを形成する。スパイラルインダクタの製造方法は、公知の製造技術を用いて製造することができ、例えば電解メッキ法を用いて製造することができる。次に、そのスパイラルインダクタ上に本発明のペースト組成物を塗布し、乾燥する。あるいはスパイラルインダクタ上に本発明のシートを熱圧着する。その後、加熱処理することによって、本発明の磁性体組成物がコアとして用いられたインダクタが得られる。また、別の製造方法としては、例えば、フェライト粉末をポリイミド樹脂等でペースト状にして薄い中空を持つ膜を多数作り、それらの膜に導電パターンを印刷して、重ねて焼成してできたインダクタの中空部に、上記で作製したペースト組成物を塗布し、硬化させる。その結果、本発明の磁性体組成物がコアとして用いられたインダクタが得られる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中のペースト組成物の厚膜成形性は、1回の塗布で50μm以上の厚さを塗れたものを○と評価した。ヒビ割れの評価は、5cm四方のガラス基板に塗布した塗膜に、光が通過するヒビが目視で確認できなければ○とした。
【0048】
(磁性体組成物の耐熱性評価方法)
各実施例および比較例で作製した磁性体組成物を260℃のリフロー炉中で30秒間保持し、磁性体組成物のふくれや変形がなければ○とした。
【0049】
(磁性体組成物の透磁率測定)
各実施例および比較例で作製した磁性体組成物の、透磁率測定サンプルとして切り出す部分の膜厚を段差計(Ambios社製、XP−1)で測定した。その磁性体組成物を4mm角に切り出した後、そのサンプルを高周波薄膜透磁率測定装置((株)東栄科学産業製)に入れて、透磁率測定を行った。測定は、その薄膜試料をコイル中に配置し、コイル近傍のストリップ線路からコイルに磁束が鎖交するように10M〜2GHzまでの交流磁界をかけ、ネットワークアナライザーでSパラメータの伝達係数S21を測定し、試料をコイル中に配置しない場合と比べてS21がどの程度変化するかによって透磁率を求めた。なお、各実施例における透磁率は1GHzでの値を代表して示した。また、透磁率の補正には、測定で得られた伝達係数S11、S22等を用いた。透磁率は、μ=μ’+iμ”(μ’:実部、μ”:虚部)で表され、各実施例における透磁率はμ’の値を、また、tanδは、μ”/ μ’の値を記載した。
【0050】
(ペースト組成物中の磁性粒子の数平均粒径の測定方法)
ペースト中の粒径測定は以下のように行った。カーボンを蒸着したコロジオン膜上に、ペースト組成物を滴下し、有機溶媒を乾燥除去後、透過型電子顕微鏡(日立製作所(株)製、H−100FA)にて磁性粒子を観察した。観察倍率は、磁性粒子の粒径に応じて選択する。観察後はデジタル画像としてコンピュータに取り込み、画像処理ソフト((株)フローベル製、FlvFs)にて、観察された任意の100個の粒子に対し球形近似したときの粒径を求め、数平均粒径を算出した。なお、一次粒子も一つの粒子とみなして粒径を測定した。
【0051】
(磁性体組成物の膜厚の測定方法)
磁性体組成物の膜厚の測定は以下のように行った。接触式段差計 (Ambios社製、XP−1)を用いて測定を行った。膜厚の測定は3箇所の位置にて、膜を金属片などで削って除去し、生じた段差の高さを測定し、その平均値を膜厚とした。
【0052】
(磁性体組成物の膜厚ムラの測定方法)
磁性体組成物の膜厚ムラの測定は以下のように行った。接触式段差計 (Ambios社製、XP−1)を用いて2mmの距離を掃引し、測定点数を2000点として各点での膜厚を測定した。この2000点のデータの標準偏差σを膜厚の平均値d(前記2000点のデータによる平均値)で割った値(σ/d)を膜厚ムラとした。この値が小さいほど膜厚ムラが小さい。
(磁性体組成物の密着性の測定方法)
磁性体組成物の密着性の測定は以下のように行った。磁性体組成物の膜を4mm四方の25区画に区切った。ここにセロハンテープ(ニチバン(株)製、CT24)を貼り付け、消しゴムで膜に密着させてから剥離した。各区画の顕微鏡写真を10×10マスに分割し、マスの辺に磁性体組成物が残っていない場所は剥離が起こったと判断して数を数えた。100マスのうちの1/4以上が剥離した区画の数を数えて剥離数とした。この数値が小さいほど密着性が高い。
【0053】
用いた樹脂(B)とワニスの作製法を以下に示す。
【0054】
(樹脂1)
重量平均分子量136万のエポキシ基含有アクリル樹脂(日立化成工業(株)製、KH−LC)を樹脂1とした。
【0055】
(ワニス1)
プラスチック容器に樹脂1を9重量部、エピコート630(三菱化学(株)製)を4重量部、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(東京化成工業(株) 製)を5重量部、溶媒としてNMPを51.2重量部入れ、ボールミルで72時間撹拌し、ワニス1を作製した。
【0056】
(樹脂2)
重量平均分子量76万のエポキシ基含有アクリル樹脂(日立化成工業(株)製、KH−8004)を樹脂2とした。
【0057】
(ワニス2)
プラスチック容器に樹脂2を9重量部、エピコート630(三菱化学(株)製)を4重量部、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(東京化成工業(株) 製)を5重量部、溶媒としてNMPを51.2重量部入れ、ボールミルで72時間撹拌し、ワニス2を作製した。
【0058】
(樹脂3)
重量平均分子量25万のエポキシ基含有アクリル樹脂(日油(株)製、マープルーフG−2050M)を樹脂3とした。
【0059】
(ワニス3)
プラスチック容器に樹脂3を9重量部、エピコート630(三菱化学(株)製)を4重量部、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(東京化成工業(株) 製)を5重量部、溶媒としてNMPを51.2重量部入れ、ボールミルで72時間撹拌し、ワニス3を作製した。
【0060】
(樹脂4)
重量平均分子量10万のエポキシ基含有アクリル樹脂(日油(株)製、マープルーフG−1010S)を樹脂4とした。
【0061】
(ワニス4)
プラスチック容器に樹脂4を9重量部、エピコート630(三菱化学(株)製)を4重量部、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(東京化成工業(株) 製)を5重量部、溶媒としてNMPを51.2重量部入れ、ボールミルで72時間撹拌し、ワニス4を作製した。
【0062】
(樹脂5)
重量平均分子量5.9万のフェノキシ樹脂(三菱化学(株)製、jER4250)を樹脂5とした。
【0063】
(ワニス5)
プラスチック容器に樹脂5を9重量部、エピコート630(三菱化学(株)製)を4重量部、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(東京化成工業(株)製)を5重量部、溶媒としてNMPを51.2重量部入れ、ボールミルで72時間撹拌し、ワニス5を作製した。
【0064】
(磁性粒子1)
BASFジャパン(株)製の平均一次粒径1.2μmの鉄粒子を磁性粒子1とした。
【0065】
(磁性粒子2)
東邦チタニウム(株)製のニッケル粒子(平均一次粒径300nm)を磁性粒子2とした。
【0066】
(磁性粒子3)
戸田工業(株)製の平均一次粒径70nmの鉄粒子を磁性粒子3とした。
【0067】
(磁性粒子4)
DOWAエレクトロニクス(株)製の針状鉄粒子(長径40nm、アスペクト比2.8。平均一次粒径は14nm)を磁性粒子4とした。
【0068】
実施例1
ステンレスカップに磁性粒子3を15重量部、BYK−111を1.75重量部、溶媒としてTHFAを33.25重量部、0.05φジルコニアビーズを300重量部入れ、ホモジナイザを用いて6000rpmの回転数で3時間撹拌し、磁性粒子を30重量%含む分散液を作製した。
【0069】
プラスチック容器に得られた分散液を5重量部、ワニス1を1重量部入れ、ハイブリッドミキサーで撹拌(撹拌は1800rpmで3分間、脱泡は800rpmで2分間)し、ペースト組成物を作製した。
【0070】
作製したペースト組成物において磁性粒子の平均二次粒径は350nmであった。作製したペースト組成物をガラス板に1mmの厚さに塗布し、100℃で10分間乾燥させ、150℃で1時間硬化させた。得られた磁性体組成物にひび割れは生じず、評価は○とした。膜厚は81μmであったので厚膜化の評価は○とした。透磁率を測定したところ、1GHzでμ’=1.75、tanδ=0.062となった。耐熱性評価は○であった。膜厚ムラは0.0109であり、密着性試験での剥離数は0であった。
【0071】
実施例2
ステンレスカップに磁性粒子3を15重量部、BYK−111を1.75重量部、溶媒としてTHFAを33.25重量部、0.1φジルコニアビーズを200重量部入れ、ホモジナイザを用いて6000rpmの回転数で4時間撹拌し、磁性粒子を30重量%含む分散液を作製した。
【0072】
プラスチック容器に得られた分散液を5重量部、ワニス1を0.458重量部入れ、ハイブリッドミキサーで撹拌(撹拌は1800rpmで3分間、脱泡は800rpmで2分間)し、ペースト組成物を作製した。
【0073】
作製したペースト組成物において磁性粒子の平均二次粒径は531nmであった。作製したペースト組成物をガラス板に1mmの厚さに塗布し、100℃で10分間乾燥させ、150℃で1時間硬化させた。得られた磁性体組成物にひび割れは生じず、評価は○とした。膜厚は85μmであったので厚膜化の評価は○とした。透磁率を測定したところ、1GHzでμ’=1.92、tanδ=0.038となった。耐熱性評価は○であった。膜厚ムラは0.0185であり、密着性試験での剥離数は0であった。
【0074】
実施例3
プラスチックボトルに磁性粒子3を9重量部、BYK−111を1.05重量部、溶媒としてTHFAを19.95重量部入れ、超音波分散機を用いて90分間分散し、磁性粒子を30重量%含む分散液を作製した。
【0075】
プラスチック容器に得られた分散液を5重量部、ワニス1を1重量部入れ、ハイブリッドミキサーで撹拌(撹拌は1800rpmで3分間、脱泡は800rpmで2分間)し、ペースト組成物を作製した。
【0076】
作製したペースト組成物において磁性粒子の平均二次粒径は620nmであった。作製したペースト組成物をガラス板に1mmの厚さに塗布し、100℃で10分間乾燥させ、150℃で1時間硬化させた。得られた磁性体組成物にひび割れは生じず、評価は○とした。膜厚は63μmであったので厚膜化の評価は○とした。透磁率を測定したところ、1GHzでμ’=1.80、tanδ=0.043となった。耐熱性評価は○であった。膜厚ムラは0.0219であり、密着性試験での剥離数は1であった。
【0077】
実施例4
プラスチックボトルに磁性粒子3を9重量部、BYK−111を1.05重量部、溶媒としてTHFAを19.95重量部、5φジルコニアビーズを50重量部入れてボールミルで15時間撹拌した。その後ビーズを0.1φジルコニアビーズ50重量部に交換してボールミルで5時間撹拌を行い、磁性粒子を30重量%含む分散液を作製した。
【0078】
プラスチック容器に得られた分散液を5重量部、ワニス1を1重量部入れ、ハイブリッドミキサーで撹拌(撹拌は1800rpmで3分間、脱泡は800rpmで2分間)し、ペースト組成物を作製した。
【0079】
作製したペースト組成物において磁性粒子の平均二次粒径は809nmであった。作製したペースト組成物をガラス板に1mmの厚さに塗布し、100℃で10分間乾燥させ、150℃で1時間硬化させた。得られた磁性体組成物にひび割れは生じず、評価は○とした。膜厚は65μmであったので厚膜化の評価は○とした。透磁率を測定したところ、1GHzでμ’=1.65、tanδ=0.028となった。耐熱性評価は○であった。膜厚ムラは0.0432であり、密着性試験での剥離数は3であった。
【0080】
実施例5
プラスチックボトルに磁性粒子3を9重量部、BYK−111を1.05重量部、溶媒としてTHFAを19.95重量部、5φジルコニアビーズを50重量部入れてボールミルで90時間撹拌し、磁性粒子を30重量%含む分散液を作製した。
【0081】
プラスチック容器に得られた分散液を5重量部、ワニス1を1重量部入れ、ハイブリッドミキサーで撹拌(撹拌は1800rpmで3分間、脱泡は800rpmで2分間)し、ペースト組成物を作製した。
【0082】
作製したペースト組成物において磁性粒子の平均二次粒径は953nmであった。作製したペースト組成物をガラス板に1mmの厚さに塗布し、100℃の熱風オーブン中で10分間乾燥させ、150℃の熱風オーブン中で1時間硬化させた。得られた磁性体組成物にひび割れは生じず、評価は○とした。膜厚は68μmであったので厚膜成型性の評価は○とした。透磁率を測定したところ、1GHzでμ’=1.70、tanδ=0.028となった。耐熱性評価は○であった。膜厚ムラは0.0554であり、密着性試験での剥離数は5であった。
【0083】
実施例6
ワニス1の代わりにワニス2を用いたことを除けば、実施例1と同じ操作でペースト組成物を作製した。
【0084】
作製したペースト組成物において磁性粒子の平均二次粒径は310nmであった。作製したペースト組成物をガラス板に1mmの厚さに塗布し、100℃で10分間乾燥させ、150℃で1時間硬化させた。得られた磁性体組成物にひび割れは生じず、評価は○とした。膜厚は75μmであったので厚膜化の評価は○とした。透磁率を測定したところ、1GHzでμ’=1.64、tanδ=0.042となった。耐熱性評価は○であった。膜厚ムラは0.0029であり、密着性試験での剥離数は0であった。
【0085】
実施例1、6の対比より、平均二次粒径が同程度の粒子を含んでいても、重量平均分子量76万の樹脂を含むことで特に膜厚ムラが小さい磁性体組成物を形成可能であることが分かった。
【0086】
実施例7
ステンレスカップに磁性粒子4を15重量部、BYK−111を1.75重量部、溶媒としてTHFAを33.25重量部、0.05φジルコニアビーズを300重量部入れ、ホモジナイザを用いて6000rpmの回転数で3時間撹拌し、磁性粒子を30重量%含む分散液を作製した。
【0087】
プラスチック容器に得られた分散液を5重量部、ワニス2を1重量部入れ、ハイブリッドミキサーで撹拌(撹拌は1800rpmで3分間、脱泡は800rpmで2分間)し、ペースト組成物を作製した。
【0088】
作製したペースト組成物において磁性粒子の平均二次粒径は421nmであった。作製したペースト組成物をガラス板に1mmの厚さに塗布し、100℃で10分間乾燥させ、150℃で1時間硬化させた。得られた磁性体組成物にひび割れは生じず、評価は○とした。膜厚は65μmであったので厚膜化の評価は○とした。透磁率を測定したところ、1GHzでμ’=1.62、tanδ=0.018となった。耐熱性評価は○であった。膜厚ムラは0.0032であり、密着性試験での剥離数は0であった。
【0089】
実施例8
磁性粒子4の代わりに磁性粒子2を用いたことを除けば、実施例6と同じ操作でペースト組成物を作製した。
【0090】
作製したペースト組成物において磁性粒子の平均二次粒径は485nmであった。作製したペースト組成物をガラス板に1mmの厚さに塗布し、100℃で10分間乾燥させ、150℃で1時間硬化させた。得られた磁性体組成物にひび割れは生じず、評価は○とした。膜厚は72μmであったので厚膜化の評価は○とした。透磁率を測定したところ、1GHzでμ’=1.68、tanδ=0.095となった。耐熱性評価は○であった。膜厚ムラは0.0085であり、密着性試験での剥離数は0であった。
【0091】
実施例9
ワニス1の代わりにワニス2を用いたことを除けば、実施例2と同じ操作でペースト組成物を作製した。
【0092】
作製したペースト組成物において磁性粒子の平均二次粒径は524nmであった。作製したペースト組成物をガラス板に1mmの厚さに塗布し、100℃で10分間乾燥させ、150℃で1時間硬化させた。得られた磁性体組成物にひび割れは生じず、評価は○とした。膜厚は77μmであったので厚膜化の評価は○とした。透磁率を測定したところ、1GHzでμ’=1.94、tanδ=0.037となった。耐熱性評価は○であった。膜厚ムラは0.0166であり、密着性試験での剥離数は0であった。
【0093】
実施例10
プラスチックボトルに磁性粒子3を9重量部、BYK−111を1.05重量部、溶媒としてTHFAを19.95重量部、5φジルコニアビーズを50重量部入れてボールミルで15時間撹拌した。その後ビーズを0.4φジルコニアビーズ50重量部に交換してボールミルで10時間撹拌を行い、磁性粒子を30重量%含む分散液を作製した。
【0094】
プラスチック容器に得られた分散液を5重量部、ワニス2を1重量部入れ、ハイブリッドミキサーで撹拌(撹拌は1800rpmで3分間、脱泡は800rpmで2分間)し、ペースト組成物を作製した。
【0095】
作製したペースト組成物において磁性粒子の平均二次粒径は755nmであった。作製したペースト組成物をガラス板に1mmの厚さに塗布し、100℃で10分間乾燥させ、150℃で1時間硬化させた。得られた磁性体組成物にひび割れは生じず、評価は○とした。膜厚は62μmであったので厚膜化の評価は○とした。透磁率を測定したところ、1GHzでμ’=1.77、tanδ=0.030となった。耐熱性評価は○であった。膜厚ムラは0.0346であり、密着性試験での剥離数は1であった。
【0096】
実施例11
ワニス1の代わりにワニス2を用いたことを除けば実施例5と同じ方法でペーストを作製した。
【0097】
作製したペースト組成物において磁性粒子の平均二次粒径は936nmであった。作製したペースト組成物をガラス板に1mmの厚さに塗布し、100℃の熱風オーブン中で10分間乾燥させ、150℃の熱風オーブン中で1時間硬化させた。得られた磁性体組成物にひび割れは生じず、評価は○とした。膜厚は75μmであったので厚膜成型性の評価は○とした。透磁率を測定したところ、1GHzでμ’=1.77、tanδ=0.030となった。耐熱性評価は○であった。膜厚ムラは0.0485であり、密着性試験での剥離数は4であった。
【0098】
実施例1〜5および6〜11より、同じ分子量の樹脂を用いた場合であっても、平均二次粒径が小さいほど膜厚ムラが小さく、基板への密着性が高いことが分かった。
【0099】
実施例12
ワニス1の代わりにワニス3を用いたことを除けば、実施例2と同じ操作でペースト組成物を作製した。
【0100】
作製したペースト組成物において磁性粒子の平均二次粒径は512nmであった。作製したペースト組成物をガラス板に1mmの厚さに塗布し、100℃で10分間乾燥させ、150℃で1時間硬化させた。得られた磁性体組成物にひび割れは生じず、評価は○とした。膜厚は56μmであったので厚膜化の評価は○とした。透磁率を測定したところ、1GHzでμ’=1.93、tanδ=0.034となった。耐熱性評価は○であった。膜厚ムラは0.0196であり、密着性試験での剥離数は0であった。
【0101】
実施例2、9、12の対比より、同程度の平均二次粒径の粒子を含んでいても、重量平均分子量76万の樹脂を含むことで膜厚ムラの小さい磁性体組成物を形成可能であることが分かった。
【0102】
実施例13
ワニスとしてワニス3を用いたことを除けば実施例11と同じ操作でペースト組成物を得た。
【0103】
作製したペースト組成物において磁性粒子の平均二次粒径は610nmであった。作製したペースト組成物をガラス板に1mmの厚さに塗布し、100℃で10分間乾燥させ、150℃で1時間硬化させた。得られた磁性体組成物にひび割れは生じず、評価は○とした。膜厚は69μmであったので厚膜化の評価は○とした。透磁率を測定したところ、1GHzでμ’=1.73、tanδ=0.057となった。耐熱性評価は○であった。膜厚ムラは0.0256であり、密着性試験での剥離数は2であった。
【0104】
実施例14
プラスチックボトルに磁性粒子3を9重量部、BYK−106を1.05重量部、溶媒としてTHFAを19.95重量部、5φジルコニアビーズを50重量部入れてボールミルで15時間撹拌した。その後ビーズを0.1φジルコニアビーズ50重量部に交換してボールミルで5時間撹拌を行い、磁性粒子を30重量%含む分散液を作製した。
【0105】
プラスチック容器に得られた分散液を5重量部、ワニス1を1重量部入れ、ハイブリッドミキサーで撹拌(撹拌は1800rpmで3分間、脱泡は800rpmで2分間)し、ペースト組成物を作製した。
【0106】
作製したペースト組成物において磁性粒子の平均二次粒径は601nmであった。作製したペースト組成物をガラス板に1mmの厚さに塗布し、100℃で10分間乾燥させ、150℃で1時間硬化させた。得られた磁性体組成物にひび割れは生じず、評価は○とした。膜厚は77μmであったので厚膜化の評価は○とした。透磁率を測定したところ、1GHzでμ’=1.83、tanδ=0.033となった。耐熱性評価は○であった。膜厚ムラは0.0204であり、密着性試験での剥離数は0であった。
【0107】
実施例15
ステンレスカップに磁性粒子3を15重量部、BYK−106を1.75重量部、溶媒としてNMPを33.25重量部、0.05φジルコニアビーズを200重量部入れ、ホモジナイザを用いて6000rpmの回転数で4時間撹拌し、磁性粒子を30重量%含む分散液を作製した。
【0108】
プラスチック容器に得られた分散液を5重量部、ワニス2を0.458重量部入れ、ハイブリッドミキサーで撹拌(撹拌は1800rpmで3分間、脱泡は800rpmで2分間)し、ペースト組成物を作製した。
【0109】
作製したペースト組成物において磁性粒子の平均二次粒径は423nmであった。作製したペースト組成物をガラス板に1mmの厚さに塗布し、100℃で10分間乾燥させ、150℃で1時間硬化させた。得られた磁性体組成物にひび割れは生じず、評価は○とした。膜厚は78μmであったので厚膜化の評価は○とした。透磁率を測定したところ、1GHzでμ’=1.84、tanδ=0.038となった。耐熱性評価は○であった。膜厚ムラは0.0056であり、密着性試験での剥離数は0であった。
【0110】
実施例16
ワニス1の代わりにワニス2を用いたことを除けば実施例14と同じ操作でペースト組成物を作製した。
【0111】
作製したペースト組成物において磁性粒子の平均二次粒径は592nmであった。作製したペースト組成物をガラス板に1mmの厚さに塗布し、100℃で10分間乾燥させ、150℃で1時間硬化させた。得られた磁性体組成物にひび割れは生じず、評価は○とした。膜厚は61μmであったので厚膜化の評価は○とした。透磁率を測定したところ、1GHzでμ’=1.85、tanδ=0.033となった。耐熱性評価は○であった。膜厚ムラは0.0195であり、密着性試験での剥離数は0であった。
【0112】
実施例17
ステンレスカップに磁性粒子2を15重量部、BYK−106を1.75重量部、溶媒としてNMPを33.25重量部、0.05φジルコニアビーズを300重量部入れ、ホモジナイザを用いて6000rpmの回転数で3時間撹拌し、磁性粒子を30重量%含む分散液を作製した。
【0113】
プラスチック容器に得られた分散液を5重量部、ワニス2を1重量部入れ、ハイブリッドミキサーで撹拌(撹拌は1800rpmで3分間、脱泡は800rpmで2分間)し、ペースト組成物を作製した。
【0114】
作製したペースト組成物において磁性粒子の平均二次粒径は605nmであった。作製したペースト組成物をガラス板に1mmの厚さに塗布し、100℃で10分間乾燥させ、150℃で1時間硬化させた。得られた磁性体組成物にひび割れは生じず、評価は○とした。膜厚は75μmであったので厚膜化の評価は○とした。透磁率を測定したところ、1GHzでμ’=1.64、tanδ=0.096となった。耐熱性評価は○であった。膜厚ムラは0.0198であり、密着性試験での剥離数は0であった。
【0115】
実施例18
プラスチックボトルに磁性粒子3を9重量部、BYK−106を1.05重量部、溶媒としてNMPを19.95重量部、5φジルコニアビーズを50重量部入れてボールミルで15時間撹拌し、磁性粒子を30重量%含む分散液を作製した。
【0116】
プラスチック容器に得られた分散液を5重量部、ワニス2を1重量部入れ、ハイブリッドミキサーで撹拌(撹拌は1800rpmで3分間、脱泡は800rpmで2分間)し、ペースト組成物を作製した。
【0117】
作製したペースト組成物において磁性粒子の平均二次粒径は656nmであった。作製したペースト組成物をガラス板に1mmの厚さに塗布し、100℃で10分間乾燥させ、150℃で1時間硬化させた。得られた磁性体組成物にひび割れは生じず、評価は○とした。膜厚は74μmであったので厚膜化の評価は○とした。透磁率を測定したところ、1GHzでμ’=1.68、tanδ=0.034となった。耐熱性評価は○であった。膜厚ムラは0.0239であり、密着性試験での剥離数は1であった。
【0118】
実施例19
ワニス1の代わりにワニス3を用いたことを除けば実施例14と同じ操作でペースト組成物を作製した。
【0119】
作製したペースト組成物において磁性粒子の平均二次粒径は590nmであった。作製したペースト組成物をガラス板に1mmの厚さに塗布し、100℃で10分間乾燥させ、150℃で1時間硬化させた。得られた磁性体組成物にひび割れは生じず、評価は○とした。膜厚は53μmであったので厚膜化の評価は○とした。透磁率を測定したところ、1GHzでμ’=1.88、tanδ=0.032となった。耐熱性評価は○であった。膜厚ムラは0.0221であり、密着性試験での剥離数は0であった。
【0120】
実施例20
ステンレスカップに磁性粒子2を15重量部、溶媒としてTHFAを35重量部、0.05φジルコニアビーズを300重量部入れ、ホモジナイザを用いて6000rpmの回転数で3時間撹拌し、磁性粒子を30重量%含む分散液を作製した。
【0121】
プラスチック容器に得られた分散液を5重量部、ワニス2を1重量部入れ、ハイブリッドミキサーで撹拌(撹拌は1800rpmで3分間、脱泡は800rpmで2分間)し、ペースト組成物を作製した。
【0122】
作製したペースト組成物において磁性粒子の平均二次粒径は632nmであった。作製したペースト組成物をガラス板に1mmの厚さに塗布し、100℃で10分間乾燥させ、150℃で1時間硬化させた。得られた磁性体組成物にひび割れは生じず、評価は○とした。膜厚は69μmであったので厚膜化の評価は○とした。透磁率を測定したところ、1GHzでμ’=1.64、tanδ=0.098となった。耐熱性評価は○であった。膜厚ムラは0.0205であり、密着性試験での剥離数は3であった。
【0123】
実施例21
ステンレスカップに磁性粒子4を15重量部、溶媒としてTHFAを35重量部、0.05φジルコニアビーズを300重量部入れ、ホモジナイザを用いて6000rpmの回転数で3時間撹拌し、磁性粒子を30重量%含む分散液を作製した。
【0124】
プラスチック容器に得られた分散液を5重量部、ワニス2を1重量部入れ、ハイブリッドミキサーで撹拌(撹拌は1800rpmで3分間、脱泡は800rpmで2分間)し、ペースト組成物を作製した。
【0125】
作製したペースト組成物において磁性粒子の平均二次粒径は721nmであった。作製したペースト組成物をガラス板に1mmの厚さに塗布し、100℃で10分間乾燥させ、150℃で1時間硬化させた。得られた磁性体組成物にひび割れは生じず、評価は○とした。膜厚は68μmであったので厚膜化の評価は○とした。透磁率を測定したところ、1GHzでμ’=1.72、tanδ=0.032となった。耐熱性評価は○であった。膜厚ムラは0.0317であり、密着性試験での剥離数は3であった。
【0126】
実施例22
プラスチックボトルに磁性粒子3を9重量部、溶媒としてNMPを21重量部、5φジルコニアビーズを50重量部入れてボールミルで15時間撹拌し、磁性粒子を30重量%含む分散液を作製した。
【0127】
プラスチック容器に得られた分散液を5重量部、ワニス2を1重量部入れ、ハイブリッドミキサーで撹拌(撹拌は1800rpmで3分間、脱泡は800rpmで2分間)し、ペースト組成物を作製した。
【0128】
作製したペースト組成物において磁性粒子の平均二次粒径は813nmであった。作製したペースト組成物をガラス板に1mmの厚さに塗布し、100℃で10分間乾燥させ、150℃で1時間硬化させた。得られた磁性体組成物にひび割れは生じず、評価は○とした。膜厚は74μmであったので厚膜化の評価は○とした。透磁率を測定したところ、1GHzでμ’=1.64、tanδ=0.032となった。耐熱性評価は○であった。膜厚ムラは0.0418であり、密着性試験での剥離数は4であった。
【0129】
比較例1
ステンレスカップに磁性粒子1を15重量部、BYK−111を1.75重量部、溶媒としてTHFAを33.25重量部、5φジルコニアビーズを300重量部入れて、ホモジナイザを用いて6000rpmの回転数で3時間撹拌し、磁性粒子を30重量%含む分散液を作製した。
【0130】
プラスチック容器に得られた分散液を5重量部、ワニス2を1重量部入れ、ハイブリッドミキサーで撹拌(撹拌は1800rpmで3分間、脱泡は800rpmで2分間)し、ペースト組成物を作製した。
【0131】
作製したペースト組成物において磁性粒子の平均二次粒径は1200nmであった。作製したペースト組成物をガラス板に1mmの厚さに塗布し、100℃で10分間乾燥させ、150℃で1時間硬化させた。得られた磁性体組成物にひび割れは生じず、評価は○とした。膜厚は70μmであったので厚膜化の評価は○とした。透磁率を測定したところ、1GHzでμ’=4.18、tanδ=0.196となった。耐熱性評価は○であった。膜厚ムラは0.0589であり、密着性試験での剥離数は25であった。
【0132】
比較例2
プラスチックボトルに磁性粒子3を9重量部、BYK−111を1.05重量部、溶媒としてNMPを19.95重量部、5φジルコニアビーズを50重量部入れてボールミルで12時間撹拌し、磁性粒子を30重量%含む分散液を作製した。
【0133】
プラスチック容器に得られた分散液を5重量部、ワニス2を1重量部入れ、ハイブリッドミキサーで撹拌(撹拌は1800rpmで3分間、脱泡は800rpmで2分間)し、ペースト組成物を作製した。
【0134】
作製したペースト組成物の二次粒子の粒径は1215nmであった。作製したペースト組成物をガラス板に1.65mmの厚さに塗布し、100℃で10分間乾燥させ、150℃で1時間硬化させた。得られた磁性体組成物にはひび割れが生じており、評価は×とした。膜厚は63μmであったので厚膜化の評価は○とした。透磁率を測定したところ、1GHzでμ’=1.72、tanδ=0.145となった。耐熱性評価は○であった。膜厚ムラは0.0689であり、密着性試験での剥離数は20であった。
【0135】
比較例3
プラスチックボトルに磁性粒子3を9重量部、BYK−145を1.05重量部、溶媒としてTHFAを19.95重量部、5φジルコニアビーズを50重量部入れてボールミルで72時間撹拌し、磁性粒子を30重量%含む分散液を作製した。
【0136】
プラスチック容器に得られた分散液を5重量部、ワニス2を1重量部入れ、ハイブリッドミキサーで撹拌(撹拌は1800rpmで3分間、脱泡は800rpmで2分間)し、ペースト組成物を作製した。
【0137】
作製したペースト組成物において磁性粒子の平均二次粒径は1223nmであった。作製したペースト組成物をガラス板に1.65mmの厚さに塗布し、100℃で10分間乾燥させ、150℃で1時間硬化させた。得られた磁性体組成物にはひび割れが生じており、評価は×とした。膜厚は64μmであったので厚膜化の評価は○とした。ノイズが多く、透磁率は測定できなかった。耐熱性評価は○であった。膜厚ムラは0.0851であり、密着性試験での剥離数は25であった。
【0138】
比較例4
ワニス2の代わりにワニス3を用いたことを除けば比較例2と同じ操作でペースト組成物を得た。
【0139】
作製したペースト組成物において磁性粒子の平均二次粒径は1207nmであった。作製したペースト組成物をガラス板に1.65mmの厚さに塗布し、100℃で10分間乾燥させ、150℃で1時間硬化させた。得られた磁性体組成物にはひび割れが生じており、評価は×とした。膜厚は51μmであったので厚膜化の評価は○とした。透磁率を測定したところ、1GHzでμ’=1.71、tanδ=0.153となった。耐熱性評価は○であった。膜厚ムラは0.0368であり、密着性試験での剥離数は20であった。
【0140】
比較例5
プラスチックボトルに磁性粒子2を9重量部、BYK−111を1.05重量部、溶媒としてTHFAを19.95重量部、5φジルコニアビーズを50重量部入れてボールミルで15時間撹拌し、磁性粒子を30重量%含む分散液を作製した。
【0141】
プラスチック容器に得られた分散液を10.6重量部、ワニス3を1.4重量部入れ、ハイブリッドミキサーで撹拌(撹拌は1800rpmで3分間、脱泡は800rpmで2分間)し、ペースト組成物を作製した。
【0142】
作製したペースト組成物において磁性粒子の平均二次粒径は2200nmであった。作製したペースト組成物をガラス板に1mmの厚さに塗布し、100℃で10分間乾燥させ、150℃で1時間硬化させた。得られた磁性体組成物にひび割れは生じず、評価は○とした。膜厚は61μmであったので厚膜化の評価は○とした。透磁率を測定したところ、1GHzでμ’=2.03、tanδ=0.171となった。耐熱性評価は○であった。膜厚ムラは0.1332であり、密着性試験での剥離数は20であった。
【0143】
比較例1〜5より、平均二次粒径が1000nm以上の粒子を含んだペーストは密着性が低く膜厚ムラが大きくなることが分かった。
【0144】
比較例6
ワニス1の代わりにワニス4を用いたことを除けば、実施例1と同じ操作でペースト組成物を作製した。
【0145】
作製したペースト組成物において磁性粒子の平均二次粒径は395nmであった。作製したペースト組成物をガラス板に1mmの厚さに塗布し、100℃で10分間乾燥させ、150℃で1時間硬化させた。得られた磁性体組成物にはひび割れが生じており、評価は×とした。膜厚は29μmであったので厚膜化の評価は×とした。透磁率を測定したところ、1GHzでμ’=1.72、tanδ=0.051となった。耐熱試験後に塗膜にふくれが生じており、耐熱性評価は×であった。膜厚ムラは0.0316であり、密着性試験での剥離数は15であった。
【0146】
比較例7
分散剤としてBYK−111の代わりにBYK−106を用いたことを除けば、比較例6と同じ操作でペースト組成物を作製した。
【0147】
作製したペースト組成物において磁性粒子の平均二次粒径は620nmであった。作製したペースト組成物をガラス板に1mmの厚さに塗布し、100℃で10分間乾燥させ、150℃で1時間硬化させた。得られた磁性体組成物にはひび割れが生じており、評価は×とした。膜厚は31μmであったので厚膜化の評価は×とした。透磁率を測定したところ、1GHzでμ’=1.77、tanδ=0.057となった。耐熱試験後に塗膜にふくれが生じており、耐熱性評価は×であった。膜厚ムラは0.0497であり、密着性試験での剥離数は15であった。
【0148】
比較例8
プラスチック容器に磁性粒子3を5重量部、ワニス5を5.6重量部、溶媒としてNMPを3.3重量部いれ、ハイブリッドミキサーで撹拌(撹拌は1800rpmで3分間、脱泡は800rpmで2分間)した。これを3本ロールミルにかけ、ロール間ギャップを5μmとして400rpmで4回混練し、ペースト組成物を得た。
【0149】
作製したペースト組成物において磁性粒子の平均二次粒径は579nmであった。作製したペースト組成物をガラス板に1mmの厚さに塗布し、100℃で10分間乾燥させ、150℃で1時間硬化させた。得られた磁性体組成物はヒビが入り、ガラス板から剥がれ落ちたため、ひび割れと厚膜化の評価は共に×とした。透磁率も測定に至らなかった。耐熱試験後に塗膜にふくれが生じており、耐熱性評価は×であった。厚さが測れないため膜厚ムラは測定不可であり、密着性試験での剥離数は25であった。
【0150】
比較例9
プラスチックボトルに磁性粒子3を9重量部、BYK−111を1.05重量部、溶媒としてTHFAを19.95重量部、5φジルコニアビーズを50重量部入れてボールミルで72時間撹拌を行い、磁性粒子を30重量%含む分散液を作製した。
【0151】
プラスチック容器に得られた分散液を5重量部、ワニス5を1重量部入れ、ハイブリッドミキサーで撹拌(撹拌は1800rpmで3分間、脱泡は800rpmで2分間)し、ペースト組成物を作製した。
【0152】
作製したペースト組成物において磁性粒子の平均二次粒径は894nmであった。作製したペースト組成物をガラス板に1mmの厚さに塗布し、100℃で10分間乾燥させ、150℃で1時間硬化させた。得られた磁性体組成物にはひび割れが生じており、評価は×とした。膜厚は31μmであったので厚膜化の評価は×とした。透磁率を測定したところ、1GHzでμ’=1.76、tanδ=0.032となった。耐熱試験後に塗膜にふくれが生じており、耐熱性評価は×であった。膜厚ムラは0.0523であり、密着性試験での剥離数は6であった。
【0153】
比較例10
プラスチックボトルに磁性粒子3を9重量部、BYK−111を1.05重量部、溶媒としてTHFAを19.95重量部、5φジルコニアビーズを50重量部入れてボールミルで8時間撹拌を行い、磁性粒子を30重量%含む分散液を作製した。
プラスチック容器に得られた分散液を5重量部、ワニス5を1重量部入れ、ハイブリッドミキサーで撹拌(撹拌は1800rpmで3分間、脱泡は800rpmで2分間)し、ペースト組成物を作製した。
【0154】
作製したペースト組成物の二次粒子の粒径は921nmであった。作製したペースト組成物をガラス板に1mmの厚さに塗布し、100℃で10分間乾燥させ、150℃で1時間硬化させた。得られた磁性体組成物にはひび割れが生じており、評価は×とした。膜厚は35μmであったので厚膜化の評価は×とした。表面荒さのためにノイズが大きく、透磁率は測定できなかった。耐熱試験後に塗膜にふくれが生じており、耐熱性評価は×であった。膜厚ムラは0.1289であり、密着性試験での剥離数は10であった。
【0155】
比較例6〜10より、平均二次粒径が300nm〜1000nmの間の粒子であっても、分子量が20万未満の樹脂を用いることで硬化時にひび割れを生じ、密着性が低くなることが分かった。
【0156】
比較例11
ワニス2の代わりにワニス5を用いたことを除けば比較例2と同じ操作でペースト組成物を得た。
【0157】
作製したペースト組成物において磁性粒子の平均二次粒径は1201nmであった。作製したペースト組成物をガラス板に1.65mmの厚さに塗布し、100℃で10分間乾燥させ、150℃で1時間硬化させた。得られた磁性体組成物にはひび割れが生じており、評価は×とした。膜厚は31μmであったので厚膜化の評価は×とした。透磁率を測定したところ、1GHzでμ’=1.70、tanδ=0.140となった。耐熱試験後に塗膜にふくれが生じており、耐熱性評価は×であった。膜厚ムラは0.0598であり、密着性試験での剥離数は20であった。
【0158】
【表1】

【0159】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)平均二次粒径が300nm以上1000nm以下である磁性粒子、および(B)重量平均分子量20万以上の樹脂を含有することを特徴とするペースト組成物。
【請求項2】
前記樹脂が、重量平均分子量20万以上200万以下である請求項1に記載のペースト組成物。
【請求項3】
前記樹脂が、重量平均分子量20万以上150万以下である請求項1に記載のペースト組成物。
【請求項4】
前記磁性粒子が、Fe、CoもしくはNiの単体金属、Fe、CoもしくはNiを含む合金、またはFe、Co、Niのうち少なくとも1つを含む酸化物である請求項1〜3のいずれかに記載のペースト組成物。
【請求項5】
前記樹脂がエポキシ基を含有する請求項1〜4のいずれかに記載のペースト組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のペースト組成物を基材に塗布・乾燥させて得られるシート組成物。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載のペースト組成物または請求項6に記載のシートを硬化させて得られる磁性体組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の磁性体組成物を備えるインダクタ。

【公開番号】特開2012−227406(P2012−227406A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94708(P2011−94708)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】