説明

ペーパーディスペンサー

【課題】手指に力がない使用者にとっても、容易に紙製シートを切り取ることが可能なペーパーディスペンサーを提供する。
【解決手段】回転軸を中心に回転可能に構成され、紙製シートの幅よりも離間した一対の回転盤と、一対の回転盤の端部に狭持されたペーパー固定ロールと、一対の回転盤の外面に一端が連結され、切り取り刃の幅よりも離間した一対の連結棒と、一対の連結棒の他端に狭持された負荷伝達ロールと、を備え、ペーパー固定ロールと負荷伝達ロールとの間に紙製シートを通過させる通過空間を形成する。そして、紙製シートを負荷伝達ロールに押し付けると、当該負荷伝達ロールに対する上方向への圧力により一対の回転盤が回転し、一対の回転盤の回転に連動して切り取り刃の方向へとペーパー固定ロールが移動して、通過空間を通過した紙製シートを切り取り刃の刃先に押し当てた状態で固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペーパーディスペンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長尺の紙製シート(例えば、ロールタオル等)を収容する筐体の取出口から紙製シートを所望の長さ引き出した後、当該紙製シートを取出口近傍に取り付けられた切り取り刃に押し当てて、幅方向に沿って引き裂くことにより、紙製シートを切り取ることが可能なペーパーディスペンサーが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−283280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、取出口から引き出した紙製シートを取出口近傍に取り付けられた切り取り刃に押し当てて引き裂くには手指に力を要するため、手指に力がない老人や子供、障害者にとっては紙製シートの切り取り作業が困難であった。
【0005】
本発明は、手指に力がない使用者にとっても、容易に紙製シートを切り取ることが可能なペーパーディスペンサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、長尺の紙製シートを収容する筐体に設けられた取出口から前記紙製シートを所望の長さ引き出した後、前記取出口近傍に取り付けられた切り取り刃により前記紙製シートを切り取ることが可能なペーパーディスペンサーにおいて、
回転軸を中心に回転可能に構成され、前記紙製シートの幅よりも離間した一対の回転盤と、
前記一対の回転盤の端部に狭持されたペーパー固定ロールと、
前記一対の回転盤の外面に一端が連結され、前記切り取り刃の幅よりも離間した一対の連結棒と、
前記一対の連結棒の他端に狭持された負荷伝達ロールと、を備え、
前記ペーパー固定ロールと前記負荷伝達ロールとの間に前記紙製シートを通過させる通過空間が形成され、
前記紙製シートを前記負荷伝達ロールに押し付けると、当該負荷伝達ロールに対する上方向への圧力により前記一対の回転盤が回転し、前記一対の回転盤の回転に連動して、前記一対の回転盤と前記負荷伝達ロールとの間を挿通するように設けられた前記切り取り刃の方向へと前記ペーパー固定ロールが移動して、前記通過空間を通過した前記紙製シートを前記切り取り刃の刃先に押し当てた状態で固定するように構成したことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のペーパーディスペンサーにおいて、前記一対の回転盤の上方に設けられ、前記ペーパー固定ロールと平行な駆動ロールと、
前記駆動ロールと協働して前記紙製シートを挟みこむペーパー押えロールと、を更に備え、
前記駆動ロールは、前記ペーパー押えロールと協働して前記紙製シートを挟み込んだ状態で回転することにより、前記紙製シートを下方に向かうように繰り出させることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のペーパーディスペンサーにおいて、前記切り取り刃の刃先は、前記ペーパー固定ロールと接触する部分に、前記ペーパー固定ロールに向かって凹となるように曲面が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、ペーパー固定ロールと負荷伝達ロールとの間に紙製シートを通過させる通過空間が形成され、負荷伝達ロールに対する上方向への圧力により一対の回転盤が回転され、一対の回転盤の回転に連動して切り取り刃の方向へと移動したペーパー固定ロールにより、紙製シートが切り取り刃の刃先に押し当てられた状態で固定されるので、紙製シートに刃先を食い込ませ易くなり、手指に力がない使用者にとっても、紙製シートを容易に切り取ることができる。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、駆動ロールがペーパー押えロールと協働して紙製シートを挟み込んだ状態で回転することにより、紙製シートが下方に向かうように繰り出されるので、切り取られた後の紙製シートの先端部を所定量繰り出すことが可能となって、使用者が次に紙製シートを引き出す際に引き出し易くすることができる。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、切り取り刃の刃先は、ペーパー固定ロールと接触する部分に、ペーパー固定ロールに向かって凹となるように曲面が形成されているので、ペーパー固定ロールが通過空間を通過した紙製シートを切り取り刃の刃先に押し当てた状態で固定する際に、紙製シートを挟み込む範囲を広くすることができ、紙製シートを固定する力がより強くなるため、手指に力がない使用者にとっても、紙製シートを更に容易に切り取ることができる。また、使用者により切り取られた後の紙製シートの先端部は、ペーパー固定ロールと切り取り刃の刃先とで固定されていた部分の形状に反ることとなるので、使用者が次に紙製シートを引き出す際に、紙製シートの先端部が切り取り刃の刃先に引っ掛かる虞がなくなり、紙製シートを容易に引き出すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態に係るロールタオルディスペンサー100の外観斜視図である。
【図2】収納体11の内部に設けられた各構成部材について示した斜視図である。
【図3】収納体11の内部に設けられた各構成部材間をロールタオルPが繰り出されていく様子の一例について示した斜視図である。
【図4】第1実施形態に係る切り取り刃57周辺の拡大図である。
【図5】第1実施形態において、ロールタオルPの先端部P1が取出口3付近に引き出された状態の一例について示した、図1中のV−V線の断面図である。
【図6】第1実施形態において、ロールタオルPが正面方向に引き出され、負荷伝達ロール56に対して押し当てられた状態の一例について示した、図1中のV−V線の断面図である。
【図7】第1実施形態において、引き出されたロールタオルPによる負荷伝達ロール56に対する上方向への圧力により、一対の回転盤53,53が回転を始めた状態の一例について示した、図1中のV−V線の断面図である。
【図8】第1実施形態において、一対の回転盤53,53が回転することにより移動したペーパー固定ロール54と切り取り刃57により、ロールタオルPが固定された状態の一例について示した、図1中のV−V線の断面図である。
【図9】第2実施形態に係るロールタオルディスペンサー200の外観斜視図である。
【図10】第2実施形態に係る切り取り刃58周辺の拡大図である。
【図11】第2実施形態において、ロールタオルPの先端部P1が取出口3付近に引き出された状態の一例について示した、図9中のXI−XI線の断面図である。
【図12】第2実施形態において、ロールタオルPが正面方向に引き出され、負荷伝達ロール56に対して押し当てられた状態の一例について示した、図9中のXI−XI線の断面図である。
【図13】第2実施形態において、引き出されたロールタオルPによる負荷伝達ロール56に対する上方向への圧力により、一対の回転盤53,53が回転を始めた状態の一例について示した、図9中のXI−XI線の断面図である。
【図14】第2実施形態において、一対の回転盤53,53が回転することにより移動したペーパー固定ロール54と切り取り刃58により、ロールタオルPが固定された状態の一例について示した、図9中のXI−XI線の断面図である。
【図15】第2実施形態において、ロールタオルPが切り取られた直後の状態の一例について示した、図9中のXI−XI線の断面図である。
【図16】切り取り刃57の変形例について示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、ペーパーディスペンサーとして、ロールタオルを収容したロールタオルディスペンサーを例示して説明を行う。
【0014】
(第1実施形態)
図1〜3に示すように、第1実施形態に係るロールタオルディスペンサー100は、長尺の紙製シート(ロールタオルP)を支持する収納体11と、収納体11の左右二つの側面11a,11a下部に一つずつ設けられたヒンジ部2,2により開閉可能に連結された蓋体12と、を備える筐体1内に、ロールタオルPを収容可能に構成されている。収納体11の後面11bは、キッチンや洗面所等の壁面に固定される。蓋体12は、ヒンジ部2を軸として回動させることで、正面方向(図中の矢印方向X)に向けて開閉自在となっている。使用者は、蓋体12を正面方向に向けて開けることで、ロールタオルPの収納体11への装填又は収納体11からの取り外しを自由に行うことができる。
また、収納体11の下面11cと蓋体12の下端部12aの合わせ目には取出口3が設けられている。使用者は、この取出口3を通じて、筐体1内に収容されたロールタオルPを引き出せるようになっている(図1参照)。
【0015】
収納体11は、左右二つの側面11a,11a中央部に一つずつ設けられたペーパー支持部4,4により、ロール状に巻かれた紙製のロールタオルPを回転可能に支持する。
また、収納体11の内部には、図2に示すように、ロールタオルPの正面方向(図中の矢印方向X)下方に設けられた駆動ロール51と、駆動ロール51の正面方向に略水平に設けられたペーパー押えロール52と、駆動ロール51及びペーパー押えロール52の下方に設けられた円盤状の一対の回転盤53,53と、一対の回転盤53,53の端部に狭持されたペーパー固定ロール54と、一対の回転盤53,53の外面に一端が連結された一対の連結棒55,55と、一対の連結棒55,55の他端に狭持された負荷伝達ロール56と、が備えられている。
【0016】
駆動ロール51は、一対の回転盤53,53の上方に設けられ、ロールタオルPを取出口3から筐体1外に繰り出すために図中の矢印Zの方向に回転可能に構成された駆動型ロールであり、図示しないモータによって回転する。駆動ロール51は、ペーパー固定ロール54と平行に位置する。
ペーパー押えロール52は、駆動ロール51と協働してロールタオルPを挟み込むことにより、ロールタオルPを下方に向かうように誘導するためのロールである。即ち、駆動ロール51は、ペーパー押えロール52と協働してロールタオルPを挟み込んだ状態で正面方向(図中の矢印方向Z)に回転することにより、ロールタオルPを下方に向かうように繰り出すことができる。
【0017】
一対の回転盤53,53は、回転軸53aを中心に回転可能に構成された円盤状の部材であり、回転盤53,53同士は、ロールタオルPの幅よりは離間して設けられている。
ペーパー固定ロール54は、一対の回転盤53,53の回転に伴い円弧状の軌跡を描くように移動し、切り取り刃57と協働してロールタオルPを狭持するためのロールである。
一対の連結棒55,55は、一対の回転盤53,53と、負荷伝達ロール56及び切り取り刃57と、を連結するための略棒状の部材である。一対の連結棒55,55は、一対の回転盤53,53のペーパー固定ロール54が狭持された位置と回転軸53aを挟んで略対向する位置で連結させることが好ましい。
負荷伝達ロール56は、一対の連結棒55,55を介して、一対の回転盤53,53を回転させるための負荷を伝達するためのロールである。
切り取り刃57は、鉛直方向よりも筐体1の内部方向(図中の矢印方向Y)に刃先が向かうように蓋体12に取り付けられており、ロールタオルPを切り取ることができるようになっている(後述する図5参照)。切り取り刃57は、一対の連結棒55,55の一端と他端との間、即ち、一対の回転盤53,53と負荷伝達ロール56との間を挿通するように設けられている(図2,3参照)。つまり、連結棒55,55同士は、切り取り刃57の幅よりは離間して設けられている。なお、切り取り刃57は、例えば鉄、亜鉛、ステンレスなどの金属、ABS樹脂などの樹脂で構成されるが、これに限定されるものではない。また、切り取り刃57を収納体11に取り付ける構成としてもよい。
【0018】
また、切り取り刃57は、例えば図4(a)に示すように、刃元57aから刃先57bへの方向と水平面Zとで形成される俯角αが0°以上90°未満(0°≦α<90°)となるように取り付けられている。切り取り刃57を筐体1の内部方向(図中の矢印方向Y)に向けて取り付けたことで、使用者の手指が刃先57bに接触する虞が減少するため、使用者の安全を確保することができる。
【0019】
ここで、俯角αを0°以上としたのは、切り取り刃57を俯角αが0°未満(α<0°)で取り付けた場合、ロールタオルPを刃先57bに押し当てにくくなるため、ロールタオルPの切り取りが困難となるからである。
【0020】
さらに、例えば図4(b)に示すように、刃先57bを上方に反らすようにすることで、ロールタオルPの切り取り時にロールタオルPが刃先57bに食い込み易くなるため、ロールタオルP上を刃先57bが滑ることをさらに抑えることが可能となる。
【0021】
収納体11の内部に設けられた各構成部材は、通常時、図2,3に示したような位置関係を有する。
即ち、駆動ロール51の回転により下方に向かうように繰り出されたロールタオルPは、ペーパー固定ロール54と負荷伝達ロール56との間に形成された通過空間Sを通過するようになっている。
通過空間Sを通過したロールタオルPの先端部P1は、筐体1下面に設けられた取出口3を通じて、筐体1外に引き出されるようになっている(図1参照)。
使用者は、引き出したロールタオルPの所望の位置を切り取り刃57の刃先に押し当てた後、上方に引っ張ることで、ロールタオルPを切り取ることができる。
【0022】
なお、本実施形態に係る紙製シートは、例えば、バージンパルプ、古紙パルプまたはこれらの混合物のみを紙料として製造されたものである。古紙パルプを用いる場合、古紙パルプ100%またはバージンパルプを配合してもよい。また、パルプ繊維の種類は、特に限定されないが、針葉樹パルプを60〜100重量%、特に好適には80〜100重量% 用い、残量を広葉樹パルプとするのが好ましい。繊維の短い広葉樹パルプを高配合とすることで、繊維配向の影響が低減するとともに、より容易且つ緻密な引き裂きが可能になる。
【0023】
紙製シートの坪量は、例えばJIS P 8124(1998)に準じて測定した15〜65g/m2程度とすることができるが、1プライの場合、坪量が30〜60g/m2の厚手のものが好ましく、特に坪量が30〜50g/m2のものが好ましい。また、2プライの場合、1枚あたりの坪量が15〜30g/m2のものが好ましく、特に坪量が15〜25g/m2のものが好ましい。
【0024】
紙製シートは、JIS P 8113(1998)に規定される乾燥引張強度の縦横比が2.0以下であるのが好ましく、1.0〜1.8であるのが特に好ましい。この縦横比は、ワイヤーパートにおけるジェットワイヤー比等、各種抄造条件の変更により調整できる。乾燥引張強度の縦横比(縦方向/横方向)を低く抑えることで、縦裂けの発生が低減し、より直線状に近い引き裂きが可能となる。
【0025】
また、紙製シートは、JIS P 8113(1998)に規定される引張破断伸び(縦方向)が16%以下であるのが好ましく、13%以下であるのが特に好ましい。引張破断伸びは、クレープ加工の程度(所謂クレープ率)により調整することができる。引張破断伸びを低く抑えることにより、紙に加わる引裂力の方向が紙の伸びにより不規則に変化するのを防止し、縦や斜め方向への裂けの発生を低減することができる。
【0026】
より好ましい形態では、紙製シートは、JIS P 8116(2000)に規定される横方向の引裂強度が65gf以下とされる。また、引裂強度の縦横比は0.75以上、特に0.8以上が好ましい。横方向の引裂強度は、パルプの配合、叩解度(フリーネス)、引張破断伸び等を変更することにより調整できる。横方向の引裂強度ならびに引裂強度の縦横比がこの範囲内にあると、引き裂きに要する力が適切となるだけでなく、不要な力が不要な方向に作用し難くなり、より綺麗に引裂くことができるようになる。
【0027】
紙製シートは、紙製シートをロール状にしてなり、横方向に沿って引き裂いて使用するロール状製品、特にロール状のペーパータオルに好適である。このような製品では複数枚の紙シートを重ねて1枚として使用する形態があるが、このような形態では乾燥・湿潤引張強度、引張破断伸び、引裂強度等の試験値は1枚の状態における値を意味するものである。
【0028】
本発明は、ロール状ペーパータオルに限定されるものではないが、例えばJIS P 8124(1998)に準じて測定した30〜40g/m2程度のロール状ペーパータオルとする場合、紙厚の測定方法としては、JIS P 8111(1998)の条件下で、ダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて測定するものとし、140〜220μmとし、湿潤引張強度(JIS P 8135 1998))は縦方向が500〜1500cN/25mm、横方向が200〜100cN/25mmであるのが好ましく、吸水量は100mm四方に裁断した試験片を網に載せ、この網ごと水の入った容器に浮かせ、試験片に十分に水が浸透した後に引き上げ、30秒間放置した後の試験片の質量を測定した。この測定質量から乾燥時の質量を引き100倍し、1m2当たりの吸水量とした。100〜200g/m2であるのが好ましく、乾燥引張強度(JIS P 8113 1998)は上記縦横比を満たす範囲内で、縦方向が1400〜3000cN/25mm、横方向が600〜1700cN/25mmであるのが好ましい。
【0029】
次に、第1実施形態に係るロールタオルディスペンサー100において、使用者によりロールタオルPが切り取られる際の動作について、図5〜8を参照しながら説明する。なお、図5〜8は、図1中のV−V線の断面図である。
【0030】
ロールタオルPの先端部P1は、図5に示すように、取出口3付近に引き出された状態となっている。通常、使用者によりロールタオルPが切り取られると、ロールタオルPの切れ端(先端部P1)は、取出口3付近に位置することとなる。
ロールタオルPが切り取られた直後、ロールタオルPの先端部P1は切り取り刃57近傍に残ることとなり、使用者が次にロールタオルPを引き出す際に、場合によっては手指を傷つける虞もあるため、使用者の安全性に配慮して、使用時にロールタオルPの先端部P1を多少繰り出させることが望ましい。本実施形態では、特に図示はしないが、ロールタオルPが切り取られた後に、自動で駆動ロール51を回転させる機構を設けることで、ロールタオルPを所定量繰り出させるようにしている。また、使用時に使用者が図示しないセンサーに手をかざすことで、自動的にロールタオルPを所定量繰り出させる機構としてもよい。
なお、駆動ロール51を回転させる機構については、特に限定されるものではなく、例えば手動式の駆動モータ等により駆動ロール51の回転を制御する構成としてもよい。
【0031】
使用者によりロールタオルPが正面方向(図中の矢印方向X)に引き出されると、図6に示すように、ロールタオルPが負荷伝達ロール56に対して押し当てられる。
使用者によりさらにロールタオルPが引き出されると、図7に示すように、負荷伝達ロール56に対して上方向への圧力が加わる。
負荷伝達ロール56に上方向への圧力が加わると、負荷伝達ロール56から一対の連結棒55,55を介して、一対の回転盤53,53に圧力(負荷)が伝達されることで、一対の回転盤53,53が回転を始める。
【0032】
一対の回転盤53,53が回転することにより、図8に示すように、負荷伝達ロール56が上方向へと移動するとともに、一対の回転盤53,53の端部に狭持されたペーパー固定ロール54が円弧状の軌跡を描くように切り取り刃57の方向へと移動する。
そして、移動したペーパー固定ロール54と切り取り刃57により、ロールタオルPが狭持され、ロールタオルPを切り取り刃57の刃先に押し当てた状態で固定される。
【0033】
即ち、負荷伝達ロール56に対して上方向への圧力が加わると、一対の回転盤53,53が回転し、一対の回転盤53,53の回転に連動して切り取り刃57の方向へと移動したペーパー固定ロール54が、通過空間Sを通過したロールタオルPを切り取り刃57の刃先に押し当てた状態で固定する。
そして、使用者が、ペーパー固定ロール54により固定された状態のロールタオルPを引っ張る動作を行うことで、ロールタオルPの刃先に押し当てられた部分から幅方向に沿って引き裂かれ、切り取られることとなる。
【0034】
このように、第1実施形態に係るロールタオルディスペンサー100は、ペーパー固定ロール54と負荷伝達ロール56との間に紙製シート(ロールタオルP)を通過させる通過空間Sが形成され、ロールタオルPを負荷伝達ロール56に押し付けると、当該負荷伝達ロール56に対する上方向への圧力により一対の回転盤53,53が回転し、一対の回転盤53,53の回転に連動して、一対の回転盤53,53と負荷伝達ロール56との間を挿通するように設けられた切り取り刃57の方向へとペーパー固定ロール54が移動して、通過空間Sを通過したロールタオルPを切り取り刃57の刃先に押し当てた状態で固定するので、ロールタオルPに刃先を食い込ませ易くなり、手指に力がない使用者にとっても、ロールタオルPを容易に切り取ることができる。
【0035】
また、第1実施形態に係るロールタオルディスペンサー100は、駆動ロール51がペーパー押えロール52と協働してロールタオルPを挟み込んだ状態で回転することにより、ロールタオルPを下方に向かうように繰り出させるので、切り取られた後のロールタオルPの先端部P1を所定量繰り出すことが可能となって、使用者が次にロールタオルPを引き出す際に引き出し易くすることができる。
なお、使用時に使用者が図示しないセンサーに手をかざすことで、自動的にロールタオルPを所定量繰り出させる機構とすることも可能である。
【0036】
(第2実施形態)
第2実施形態に係るロールタオルディスペンサー200は、第1実施形態に係るロールタオルディスペンサー100と比べ、切り取り刃の形状のみが異なる。従って、説明の簡略化のため、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0037】
第2実施形態に係るロールタオルディスペンサー200の切り取り刃58の刃先58bは、例えば図10(a)、(b)に示すように、ペーパー固定ロール54と接触する部分に、ペーパー固定ロール54に向かって凹となるように曲面が形成されている。ロールタオルディスペンサー200は、例えば図11〜14に示すように、ロールタオルPが負荷伝達ロール56に押し付けられると、当該負荷伝達ロール56に対する上方向への圧力により一対の回転盤53,53が回転し、一対の回転盤53,53の回転に連動して、一対の回転盤53,53と負荷伝達ロール56との間を挿通するように設けられた切り取り刃58の方向へとペーパー固定ロール54が移動して、ロールタオルPを切り取り刃58の刃先58bに押し当てた状態で固定するようになっている。本実施形態では、切り取り刃58の刃先58bのペーパー固定ロール54と接触する部分に、ペーパー固定ロール54に向かって凹となるように曲面が形成されているので、ペーパー固定ロール54と切り取り刃58の刃先58bとでロールタオルPを固定する際に、ロールタオルPを挟み込む範囲を広くすることができ、ロールタオルPを固定する力を強くすることができる。なお、ペーパー固定ロール54と切り取り刃58の刃先58bとの接触面積を最大とすべく、ペーパー固定ロール54の周面と切り取り刃58の刃先58bに形成される曲面の曲率が一致するように構成するとより好ましい。
【0038】
次に、第2実施形態に係るロールタオルディスペンサー200において、使用者によりロールタオルPが切り取られる際の動作について、図11〜15を参照しながら説明する。なお、図11〜15は、図9中のXI−XI線の断面図である。
【0039】
ロールタオルPの先端部P1は、図11に示すように、取出口3付近に引き出された状態となっている。通常、使用者によりロールタオルPが切り取られると、ロールタオルPの切れ端(先端部P1)は、取出口3付近に位置することとなる。
ロールタオルPが切り取られた直後、ロールタオルPの先端部P1は切り取り刃58近傍に残ることとなり、使用者が次にロールタオルPを引き出す際に、場合によっては手指を傷つける虞もあるため、使用者の安全性に配慮して、使用時にロールタオルPの先端部P1を多少繰り出させることが望ましい。本実施形態では、特に図示はしないが、ロールタオルPが切り取られた後に、自動で駆動ロール51を回転させる機構を設けることで、ロールタオルPを所定量繰り出させるようにしている。また、使用時に使用者が図示しないセンサーに手をかざすことで、自動的にロールタオルPを所定量繰り出させる機構としてもよい。
なお、駆動ロール51を回転させる機構については、特に限定されるものではなく、例えば手動式の駆動モータ等により駆動ロール51の回転を制御する構成としてもよい。
【0040】
使用者によりロールタオルPが正面方向(図中の矢印方向X)に引き出されると、図12に示すように、ロールタオルPが負荷伝達ロール56に対して押し当てられる。
使用者によりさらにロールタオルPが引き出されると、図13に示すように、負荷伝達ロール56に対して上方向への圧力が加わる。
負荷伝達ロール56に上方向への圧力が加わると、負荷伝達ロール56から一対の連結棒55,55を介して、一対の回転盤53,53に圧力(負荷)が伝達されることで、一対の回転盤53,53が回転を始める。
【0041】
一対の回転盤53,53が回転することにより、図14に示すように、負荷伝達ロール56が上方向へと移動するとともに、一対の回転盤53,53の端部に狭持されたペーパー固定ロール54が円弧状の軌跡を描くように切り取り刃58の方向へと移動する。
そして、移動したペーパー固定ロール54と切り取り刃58により、ロールタオルPが狭持され、ロールタオルPを切り取り刃58の刃先に押し当てた状態で固定される。
【0042】
即ち、負荷伝達ロール56に対して上方向への圧力が加わると、一対の回転盤53,53が回転し、一対の回転盤53,53の回転に連動して切り取り刃58の方向へと移動したペーパー固定ロール54が、通過空間Sを通過したロールタオルPを切り取り刃58の刃先に押し当てた状態で固定する。
このとき、切り取り刃58は、刃先の形状がペーパー固定ロール54と嵌合するように形成されているので、ロールタオルPを固定する際に、ロールタオルPを挟み込む範囲を広くすることができる。
【0043】
そして、使用者が、ペーパー固定ロール54により固定された状態のロールタオルPを引っ張る動作を行うことで、ロールタオルPの刃先に押し当てられた部分から幅方向に沿って引き裂かれ、切り取られることとなる。
使用者により切り取られた後のロールタオルPの先端部P1は、図15に示すように、ペーパー固定ロール54と切り取り刃58の刃先とで固定されていた部分の形状に反っている。これにより、使用者が次にロールタオルPを引き出す際に、ロールタオルPの先端部P1が切り取り刃58の刃先に引っ掛かる虞がなくなるため、ロールタオルPを容易に引き出すことが可能となる。
【0044】
このように、第2実施形態に係るロールタオルディスペンサー200の切り取り刃58の刃先は、ペーパー固定ロール54と接触する部分に、ペーパー固定ロール54に向かって凹となるように曲面が形成されているので、ペーパー固定ロール54が通過空間Sを通過したロールタオルPを切り取り刃58の刃先に押し当てた状態で固定する際に、ロールタオルPを挟み込む範囲を広くすることができ、ロールタオルPを固定する力がより強くなるため、手指に力がない使用者にとっても、ロールタオルPを更に容易に切り取ることができる。また、使用者により切り取られた後のロールタオルPの先端部P1は、ペーパー固定ロール54と切り取り刃58の刃先とで固定されていた部分の形状に反ることとなるので、使用者が次にロールタオルPを引き出す際に、ロールタオルPの先端部P1が切り取り刃58の刃先に引っ掛かる虞がなくなり、ロールタオルPを容易に引き出すことが可能となる。
【0045】
以上、本発明に係る実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0046】
例えば、上記実施形態では、駆動ロール51及びペーパー押えロール52を設ける構成としているが、これに限定されるものではない。例えば、ペーパー支持部4,4を自動又は手動で回転可能に構成することで、切り取られた後のロールタオルPの先端部P1を所定量繰り出させるようにしてもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、一対の回転盤53,53を円盤状の部材で構成しているが、これに限定されるものではない。回転軸53aを中心に回転可能で、ペーパー固定ロール54を狭持したり一対の連結棒55,55を連結したりすることが可能な構成であれば、いかなる形状であってもよい。
【0048】
また、上記第1実施形態では、切り取り刃57の形状について、図4(a)、(b)に示したように、刃先57bの先端が尖ったものを例示して説明しているが、これに限定されるものではない。例えば、図16(a)〜(d)に示すように、刃先57bの先端に向かうにつれて厚さが薄くなるように成型され、ロールタオルPの切り取りが可能なものであれば、いかなる形状であってもよい。
また、刃先57bの形状に関しても、特に限定されるものではなく、例えば、図4,16に示したような1枚刃であってもよいし、鋸状、円弧状など、切り取りに適した形状であればいかなる形状であってもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、紙製シートとして、ロール状に巻かれたロールタオルPを例示して説明しているが、これに限定されるものではない。取出口3から引き出し可能であれば、紙製シートが九十九折りされて重ねられたものであってもよい。
【符号の説明】
【0050】
100,200 ロールタオルディスペンサー
1 筐体
11 収納体
12 蓋体
2 ヒンジ部
3 取出口
4 ペーパー支持部
51 駆動ロール
52 ペーパー押えロール
53 回転盤
54 ペーパー固定ロール
55 連結棒
56 負荷伝達ロール
57,58 切り取り刃
P ロールタオル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の紙製シートを収容する筐体に設けられた取出口から前記紙製シートを所望の長さ引き出した後、前記取出口近傍に取り付けられた切り取り刃により前記紙製シートを切り取ることが可能なペーパーディスペンサーにおいて、
回転軸を中心に回転可能に構成され、前記紙製シートの幅よりも離間した一対の回転盤と、
前記一対の回転盤の端部に狭持されたペーパー固定ロールと、
前記一対の回転盤の外面に一端が連結され、前記切り取り刃の幅よりも離間した一対の連結棒と、
前記一対の連結棒の他端に狭持された負荷伝達ロールと、を備え、
前記ペーパー固定ロールと前記負荷伝達ロールとの間に前記紙製シートを通過させる通過空間が形成され、
前記紙製シートを前記負荷伝達ロールに押し付けると、当該負荷伝達ロールに対する上方向への圧力により前記一対の回転盤が回転し、前記一対の回転盤の回転に連動して、前記一対の回転盤と前記負荷伝達ロールとの間を挿通するように設けられた前記切り取り刃の方向へと前記ペーパー固定ロールが移動して、前記通過空間を通過した前記紙製シートを前記切り取り刃の刃先に押し当てた状態で固定するように構成したことを特徴とするペーパーディスペンサー。
【請求項2】
前記一対の回転盤の上方に設けられ、前記ペーパー固定ロールと平行な駆動ロールと、
前記駆動ロールと協働して前記紙製シートを挟みこむペーパー押えロールと、を更に備え、
前記駆動ロールは、前記ペーパー押えロールと協働して前記紙製シートを挟み込んだ状態で回転することにより、前記紙製シートを下方に向かうように繰り出させることを特徴とする請求項1に記載のペーパーディスペンサー。
【請求項3】
前記切り取り刃の刃先は、前記ペーパー固定ロールと接触する部分に、前記ペーパー固定ロールに向かって凹となるように曲面が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のペーパーディスペンサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−131567(P2012−131567A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24533(P2011−24533)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】