説明

ホイールモータ装置

【課題】 回転出力ユニットの回転駆動力を駆動車軸に減速伝達する減速伝達機構を備えたホイールモータ装置において、装置全体の構造簡略化及び小型化を図る。
【解決手段】 ハウジングと、回転出力ユニットと、回転出力ユニットによって作動回転される出力軸と、ハウジングに固定された固定ベベルギヤと、固定ベベルギヤとは異なる歯数を有し且つ歯部の一部が固定ベベルギヤと噛合する揺動ベベルギヤと、揺動ベベルギヤの回転を駆動車軸に伝達する自在継ぎ手機構とを備える。前記出力軸は、駆動車軸と同一軸線の基準回転軸線回りに回転駆動される基部と、基準回転軸線に対して所定角度傾斜された偏心軸線を有する偏心部とを含む。前記固定ベベルギヤは基準回転軸線上に配設される。前記揺動ベベルギヤはその回転中心が偏心軸線上に位置するように、前記偏心部に相対回転自在に支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動車軸毎に設けられるホイールモータ装置であって、回転出力ユニットの回転出力を減速して駆動車軸に伝達するように構成されたホイールモータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動車軸を独立駆動し得るように車輌に設置されるホイールモータ装置は、従来から公知である。
斯かるホイールモータ装置は、共働する油圧ポンプユニット等のアクチュエータとは離間された状態で、対応する駆動車軸に近接設置され得る為、一対の駆動車軸を差動的に接続するディファレンシャルギヤを備えたトランスアクスル装置に比して、車輌の設計自由度を向上させることができる。
例えば、一対の駆動車軸のそれぞれにホイールモータ装置を備え、該一対のホイールモータ装置を一対のアクチュエータと共働させることにより、前記一対の駆動車軸をそれぞれ独立して変速駆動することができ、従って、一対の駆動車軸の間に自由空間を確保しつつ、車輌の旋回性能、特に、小旋回性を向上させることができる。
【0003】
ところで、従来のホイールモータ装置のなかには、ハウジングと、該ハウジングに収容される油圧モータユニットと、該油圧モータユニットによって回転駆動されるモータ軸と、前記ハウジングに支持される駆動車軸とに加えて、前記モータ軸の回転動力を前記駆動車軸に減速伝達する減速ギヤトレーンを備えたものも提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0004】
この減速ギヤトレーンを備えたホイールモータ装置は、前記油圧モータユニットとして低トルク・高回転型油圧モータユニットを使用できる為、前記油圧モータ本体の小型化と共に、該油圧モータ本体からの作動油リーク量の減少を図ることができる。
しかしながら、従来の減速ギヤトレーン付ホイールモータ装置は、前記減速ギヤトレーンとして遊星歯車機構を用いている為、駆動車軸に対して所定の減速比(例えば15〜20)を得ようとすると1段だけでは機構上限界があり(例えば4〜5)どうしても2段の直列接続にせざるを得ず、軸方向に大型化すると共に該減速ギヤトレーンの部品点数が多くなり、これにより、コスト高と共に構造複雑化を招くという問題があった。
又、前記減速ギヤトレーンとして平行(外接)歯車機構を用いたホイールモータ装置も提案されているが、斯かるホイールモータ装置は径方向に大型化してしまうという問題がある。
【特許文献1】米国特許第6811510号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来技術に鑑みなされたものであり、回転出力ユニットの回転駆動力を駆動車軸に減速伝達する減速伝達機構を備えたホイールモータ装置において、前記減速伝達機構の部品点数の削減及び小型化を図り、これにより、小径のタイヤを備える小型車両にも充分適応できるように装置全体の構造簡略化及び小型化を達成し得るホイールモータ装置の提供を、一の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記目的を達成するために、駆動車軸の車輌幅方向内端部が内部空間に突入された状態で該駆動車軸を軸線回り回転自在に支持するハウジングと、前記ハウジングに支持される回転出力ユニットと、前記回転出力ユニットによって作動的に回転駆動される出力軸であって、前記駆動車軸と同一軸線の基準回転軸線回りに回転駆動される基部と、前記基準回転軸線に対して所定角度傾斜された偏心軸線を有する偏心部とを含む出力軸と、前記基準回転軸線上に位置するように、前記ハウジングに固定された固定ベベルギヤと、前記偏心軸線上にその回転中心が位置し且つ一部の歯部だけが前記固定ベベルギヤの歯部と噛合するように、前記出力軸の偏心部に相対回転自在に支持された揺動ベベルギヤであって、前記固定ベベルギヤとは異なる歯数を有する揺動ベベルギヤと、前記揺動ベベルギヤの回転を前記駆動車軸に伝達する自在継ぎ手機構とを備えたホイールモータ装置を提供する。
【0007】
又、本発明は、前記目的を達成する為に、駆動車軸の車輌幅方向内端部が内部空間に突入された状態で該駆動車軸を軸線回り回転自在に支持するハウジングと、前記ハウジングに支持される回転出力ユニットと、前記回転出力ユニットによって作動的に回転駆動される出力軸であって、前記駆動車軸と同一軸線の基準回転軸線回りに回転駆動される基部と、前記基準回転軸線に対して偏心配置された偏心部とを有する出力軸と、前記基準回転軸線上に位置するように、前記ハウジングに固定された固定ベベルギヤと、前記基準回転軸線に対して所定角度傾斜された偏心軸線上にその回転中心が位置し且つ一部の歯部だけが前記固定ベベルギヤの歯部と噛合するように、前記出力軸の偏心部に相対回転自在に支持された揺動ベベルギヤであって、前記固定ベベルギヤとは異なる歯数を有する揺動ベベルギヤと、前記揺動ベベルギヤの回転を前記駆動車軸に伝達する自在継ぎ手機構とを備えたホイールモータ装置を提供する。
【0008】
好ましくは、前記固定ベベルギヤと前記揺動ベベルギヤとの歯数差は1つとされる。
例えば、前記揺動ベベルギヤは前記固定ベベルギヤより歯数が多いものとされる。
斯かる場合には、前記駆動車軸は前記出力軸と同一方向に減速回転される。
これに代えて、前記揺動ベベルギヤは前記固定ベベルギヤより歯数が少ないものとされ得る。
斯かる場合には、前記駆動車軸は前記出力軸と反対方向に減速回転される。
【0009】
前記種々の態様において、好ましくは、前記自在継ぎ手機構は、前記揺動ベベルギヤが、前記基準回転軸線と前記偏心軸線との交点を中心として、前記駆動車軸に対して揺動自在となるように、該揺動ベベルギヤ及び該駆動車軸を連結するように構成され得る。
より好ましくは、前記揺動ベベルギヤにおける歯部のピッチ円錐の頂点及び前記固定ベベルギヤにおける歯部のピッチ円錐の頂点は共に、前記基準回転軸線及び前記偏心軸線の前記交点に位置される。
【0010】
前記種々の態様において、好ましくは、前記固定ベベルギヤ及び前記揺動ベベルギヤは、それぞれ、前記ハウジングを車輌に設置した状態において、歯部が車輌幅方向内方及び車輌幅方向外方を向いているものとされる。
【0011】
前記種々の態様において、好ましくは、前記出力軸は、前記偏心部の重心位置を前記基準回転軸線に近接させる為のバランス機構を有し得る。
【0012】
前記種々の態様において、好ましくは、前記固定ベベルギヤは、前記ハウジングの内周面に設けられた凹部に前記基準回転軸線回り回転自在に係合される。
そして、前記ハウジングには、外方からの人為操作に基づき、前記固定ベベルギヤと係合して該固定ベベルギヤを回転不能に係止する係止位置と、前記固定ベベルギヤとの係合を解除して該固定ベベルギヤを回転自在とする開放位置とをとり得る係脱部材が設けられる。
【0013】
例えば、前記回転出力ユニットは、油圧モータ本体と、該油圧モータ本体に対する給排油路が形成された油受継部材とを有する油圧モータユニットとされる。
斯かる態様において、好ましくは、前記ハウジングは、互いに分離可能に接合される第1及び第2ハウジング要素であって、それぞれ、前記出力軸及び前記駆動車軸を支持する第1及び第2ハウジング要素を含むものとされる。
前記第1ハウジング要素は、車輌設置状態において車輌幅方向外方側及び内方側に、それぞれ、前記出力軸を支持する端壁部及び前記油圧モータ本体が挿通可能な開口を有する。
前記油受継部材は、前記開口を閉塞するように前記第1ハウジング要素に連結される。
【0014】
又、異なる態様においては、前記回転出力ユニットは、回転出力本体と、該回転出力本体の回転を出力する出力部と、該回転出力本体を収容するケースであって、前記ハウジングに外部から着脱自在に連結されるケースとを備え得る。
斯かる態様において、前記回転出力ユニットは、前記ケースを前記ハウジングに連結させることにより、前記出力部が前記出力軸に作動連結されるように構成され得る。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様においては、回転出力ユニットの回転を減速ギヤ機構によって駆動車軸に減速伝達するように構成されたホイールモータ装置において、前記回転出力ユニットによって作動的に回転駆動される出力軸を、前記駆動車軸と同一軸線の基準回転軸線回りに回転駆動される基部と、前記基準回転軸線に対して所定角度傾斜された偏心軸線を有する偏心部とを含むものとされている。
そして、前記減速ギヤ機構は、前記基準回転軸線上に位置するように、前記ハウジングに固定された固定ベベルギヤと、前記偏心軸線上にその回転中心が位置し且つ一部の歯部だけが前記固定ベベルギヤの歯部と噛合するように、前記出力軸の偏心部に相対回転自在に支持された揺動ベベルギヤであって、前記固定ベベルギヤとは異なる歯数を有する揺動ベベルギヤとによって構成されている。
【0016】
又、本発明の他態様においては、回転出力ユニットの回転を減速ギヤ機構によって駆動車軸に減速伝達するように構成されたホイールモータ装置において、前記回転出力ユニットによって作動的に回転駆動される出力軸を、前記駆動車軸と同一軸線の基準回転軸線回りに回転駆動される基部と、前記基準回転軸線に対して偏心配置された偏心部とを有するものとされている。
そして、前記減速ギヤ機構は、前記基準回転軸線上に位置するように、前記ハウジングに固定された固定ベベルギヤと、前記基準回転軸線に対して所定角度傾斜された偏心軸線上にその回転中心が位置し且つ一部の歯部だけが前記固定ベベルギヤの歯部と噛合するように、前記出力軸の偏心部に相対回転自在に支持された揺動ベベルギヤであって、前記固定ベベルギヤとは異なる歯数を有する揺動ベベルギヤとによって構成されている。
【0017】
斯かる構成の本発明によれば、前記減速ギヤ機構が遊星歯車機構によって構成された従来のホイールモータ装置に比して、部品点数の削減及び組立効率の向上によるコストの低廉化を図ることができる。
又、前記減速ギヤ機構が平行歯車機構によって構成されたホイールモータ装置に比して、径方向に小型化を図ることができると共に、部品点数の削減及び組立効率の向上によるコストの低廉化を図ることができる。
【0018】
又、本発明によれば、前記減速ギヤ機構を構成する前記揺動ベベルギヤが、前記固定ベベルギヤと対向する一側面にのみ歯部を有すれば良い為、該揺動ベベルギヤの構造簡略化による小型化及び低コスト化を図ることができる。
特に、該揺動ベベルギヤの小型化によって、該揺動ベベルギヤを偏心回転させる出力軸のアンバランスフォースを可及的に低減でき、これにより、騒音・振動を低下又は防止できる。
【0019】
さらに、前記自在継ぎ手機構が、前記基準回転軸線を基準にして、前記揺動ベベルギヤ及び前記固定ベベルギヤの噛合点より径方向内方において、径方向に開くスプラインを有するものとすれば、前記出力軸及び前記駆動車軸の対向端部を可及的に近接配置、若しくは、凹凸係合させることができる。
従って、基準回転軸線方向の装置長さの短縮化を図ることができる。
【0020】
前記ハウジングを車輌に設置した状態において、前記固定ベベルギヤ及び前記揺動ベベルギヤの歯部が、それぞれ、車輌幅方向内方及び車輌幅方向外方を向くように構成すれば、前記揺動ベベルギヤの歯部とは反対側にスペースを確保することができ、該スペースを利用して、ブレーキディスクやバランスウエイトを効率的に配置させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
実施の形態1
以下、本発明に係るホイールモータ装置の好ましい一実施の形態につき、添付図面を参照しつつ説明する。
図1に、本実施の形態に係るホイールモータ装置100が適用された車輌1Aの平面図を示す。
又、図2に、図1におけるII-II線に沿った前記車輌の縦断背面図を示す。
【0022】
図1及び図2に示すように、一対の駆動車軸50a,50bに、それぞれ、本実施の形態に係るホイールモータ装置100a,100bが設けられており、該ホイールモータ装置100a,100bは、それぞれ、対応する駆動車軸50a,50bを変速駆動するように構成されている。
【0023】
なお、本実施の形態においては、前記ホイールモータ装置100a,100bは、離間配置された油圧ポンプユニット500と共働してHSTを構成するように該油圧ポンプユニット500と一対の作動油ライン400を介して流体流体接続されており、前記油圧ポンプユニット500との共働下に、対応する駆動車軸50a,50bを変速駆動し得るように構成されている。
【0024】
まず、本実施の形態に係るホイールモータ装置100が適用される車輌1Aの一形態について説明する。
前記車輌1Aは、図1及び図2に示すように、車輌前後方向に沿って配設された一対のメインフレーム31及び該一対のメインフレーム31の間に延びるクロスメンバ32を有する機体フレーム30と、該機体フレーム30に支持されたエンジン(図示せず)と、該エンジンによって作動的に駆動される前記油圧ポンプユニット500と、一対の駆動輪60a,60bと、該一対の駆動輪60a,60bにそれぞれ相対回転不能に連結された一対の第1及び第2駆動車軸50a,50bと、前記第1及び第2駆動車軸50a,50bをそれぞれ駆動し得るように構成された本実施の形態に係る第1及び第2ホイールモータ装置100a,100bとを備えている。
【0025】
図示の形態においては、前記車輌1Aは、前記構成に加えて、機体フレーム30の前方に支持された一対の操舵輪70と、車輌前後方向に関し、前記一対の操舵輪70及び前記駆動輪60の間に配設されたモア装置80と、該モア装置80によって刈り取られた草を車輌後方へ搬送するための搬送経路を形成するダクト90と、作動油の油溜めとして用いられる外部タンク10とを備えている。
本発明に係る左右の第1及び第2ホイールモータ装置100a,100bは軸方向長さも短縮されているため、該ホイールモータ装置100a,100bが適用された前記車輌1Aにおいては、該ホイールモータ装置100a,100b間に形成される空間Sが広く形成され、該空間Sを横切る前記ダクト90や図13にて後述する作業機駆動体800を余裕をもって配置させることができる。
【0026】
前記油圧ポンプユニット500は、プーリー等の動力伝達機構を介して駆動源から動力伝達可能な状態で、前記一対のメインフレーム31に支持されている。
詳しくは、図1に示すように、該油圧ポンプユニット500は、前記エンジンの出力軸に作動連結される入力軸510と、前記入力軸510によって駆動される油圧ポンプ本体(図示せず)と、前記油圧ポンプ本体を囲繞すると共に、前記入力軸510を支持するポンプケース530を有している。
【0027】
本実施の形態においては、前記油圧ポンプユニット500は、外部操作に応じて、前記油圧ポンプ本体の吐出方向及び油量を変化させ得る可変容積型とされている。
即ち、該油圧ポンプユニット500は、前記構成に加えて、前記油圧ポンプ本体の吐出方向及び油量を変化させる可動斜板等の出力調整部材と、該出力調整部材の傾転位置を操作させる制御軸550(図1参照)とを有している。
前記制御軸550は、適宜のリンク機構を介して、運転席近傍に備えられた変速ペダル等の変速操作部材に連係されている。
【0028】
前記ポンプケース530は、前記油圧ポンプ本体を収容すると共に、該油圧ポンプ本体に流体接続された一対のポンプ側作動油ポート610P(図1参照)を有している。
詳しくは、該ポンプケース530は、前記油圧ポンプ本体が挿通し得る開口が設けられたケース本体と、前記開口を閉塞するように前記ケース本体に連結される油受継部材とを備えている。
前記油受継部材には、前記油圧ポンプ本体に対する給排油路が形成されている。
具体的には、前記油受継部材には、前記一対の作動油ライン400の一部を構成する一対のポンプ側作動油路であって、一端部が外表面に開口し、且つ、他端部が前記油圧ポンプ本体の吸引/吐出口に流体接続された一対のポンプ側作動油路が形成されている。
そして、前記一対のポンプ側作動油路の前記一端部が、前記一対のポンプ側作動油ポート610Pを形成している。
【0029】
なお、前記油受継部材には、前記一対のポンプ側作動油路に加えて、前記一対のポンプ側作動油路のそれぞれに作動油を補給する為のチャージ油路と、前記一対のポンプ側作動油路の間を連通するバイパス油路であって、該バイパス油路を連通/遮断するバイパス弁が介挿されたバイパス油路と、前記一対のポンプ側作動油路のうち前進時低圧側作動油路を油溜まりに連通するフラッシング油路であって、前進時高圧側作動油路の油圧に応じて該フラッシング油路を連通/遮断するフラッシング弁が介挿されたフラッシング油路とが形成されている。
【0030】
前記バイパス油路は、エンジンの故障時等において車輌を強制的に牽引する際において、前記バイパス弁を連通させることにより、前記一対の作動油ライン間に圧力差が生じることを防止する為に、備えられている。
【0031】
前記フラッシング油路は、前進時高圧側作動油路の油圧が所定値以上になると、前記一対のポンプ側作動油路のうち前進時低圧側作動油路の作動油を油溜まり(前記ポンプケースの内部空間)にドレンし、これにより、前記チャージ油路を介して供給される作動油補充を促進させて、前記一対の作動油ラインを流れる作動油の油量を確保しつつ、該作動油の高温化を有効に防止する為に、備えられている。
【0032】
次に、前記第1及び第2ホイールモータ装置100a,100bについて説明する。
図3に、前記第1ホイールモータ装置100aの縦断背面図を示す。又、図4に、図3におけるIV-IV線断面図を示す。
なお、前記第2ホイールモータ装置100bは、車輌の仮想中央長手線L(図1参照)を基準にして平面視において前記第1ホイールモータ装置100aと鏡像関係とされる点を除き、該第1ホイールモータ装置100aと実質的に同一構成を有している。
従って、該第2ホイールモータ装置100bについては、前記第1ホイールモータ装置100aにおける構成部材と同一符号を付し、若しくは、符号の末尾をbに代えて、適宜その詳細な説明を省略する。
【0033】
図2及び図3に示すように、前記第1ホイールモータ装置100aは、前記メインフレーム31に連結される第1ハウジング110aと、該第1ハウジング110aに支持される第1回転出力ユニットと、該第1回転出力ユニットによって作動的に回転駆動される第1出力軸200aと、前記第1出力軸200aの回転動力を減速させる第1減速ギヤ機構250aと、該第1減速ギヤ機構250aの出力を第1駆動車軸50aに伝達する第1自在継ぎ手機構300aとを備えている。
【0034】
前述の通り、本実施の形態においては、前記第1及び第2ホイールモータ装置100a,100bは、前記油圧ポンプユニット500と共働して、正逆可能な無段変速回転を出力するHSTを構成するように、前記回転出力ユニットとして、第1及び第2油圧モータユニット150a,150bを有している。
【0035】
図3に示すように、前記第1ハウジング110は、対応する第1駆動車軸50aの車輌幅方向内端部が内部空間に突入された状態で該第1駆動車軸50aを軸線回り回転自在に支持するように構成されている。
なお、前記第1駆動車軸50aは、車輌幅方向外端部に、駆動輪取付用ハブ51を有している。
【0036】
詳しくは、該第1ハウジング110aは、前記減速ギヤ機構250を収容するギヤ室110Gと、下記油圧モータ本体170を収容するモータ室110Mとを有している。
本実施の形態においては、前記第1ハウジング110aは、互いに分離可能に接合される第1及び第2ハウジング要素120,130であって、それぞれ、車輌幅方向外方側及び車輌幅方向内方側に位置する第1及び第2ハウジング要素120,130を有している。
【0037】
前記第1ハウジング要素120は、対応する前記第1駆動車軸50aを軸線回り回転自在に支持すると共に、前記ギヤ室110Gを形成している。
前記第2ハウジング要素130は、前記出力軸200を軸線回り回転自在に支持すると共に、前記モータ室110Mを形成している。
【0038】
具体的には、前記第1ハウジング要素120は、前記第1駆動車軸50aの軸線方向に延びる周壁部121を有し、車輌幅方向外方側及び内方側が共に開口とされた中空形状とされている。
前記第2ハウジング要素130は、車輌幅方向外方側(前記第1ハウジング要素120に近接する側)に前記出力軸を軸線回り回転自在に支持する端壁部131と、該端壁部131の周縁部から車輌幅方向内方へ延びる周縁部132とを有しており、車輌幅方向内方側(前記第1ハウジング要素から離間された側)は下記油圧モータ本体170が挿通可能な開口とされている。
即ち、本実施の形態においては、前記第1ハウジング110aは、内部空間のうち前記端壁部131より車輌幅方向外方側が前記ギヤ室110Gとされ、且つ、前記端壁部131より車輌幅方向内方側が前記モータ室110Mとされている。
【0039】
なお、前記第1ハウジング要素120には、前記周壁部121から径方向外方へ延在されたフランジ部122が設けられており、該第1ハウジング110は、前記フランジ部122に形成されたフレーム取付用孔123に挿通されるボルト等の締結部材124を介して、前記メインフレーム31に連結される(図2〜図4参照)。
【0040】
前記回転出力ユニットとして作用する前記第1及び第2油圧モータユニット150a,150bは、前記油圧ポンプユニット500と共働して正逆可能な無段変速回転を出力するHSTを形成するように、前記一対の作動ライン400を介して、該油圧ポンプユニット500に流体接続されている。
【0041】
詳しくは、本実施の形態においては、前記第1及び第2ホイールモータ装置100a,100bにおける各油圧モータユニット150a,150bは、前記一対の作動ライン400を介して、前記油圧ポンプユニット500に対して、並列に流体接続されるようになっている。
即ち、図1に示すように、前記一対の作動ライン400のうち前進時高圧側作動ライン400(F)は、一端部が前記油圧ポンプ本体520の前進時吐出口に流体接続され、且つ、他端部が前記第1油圧モータユニット150aにおける油圧モータ本体170の前進時吸引口と前記第2油圧モータユニット150bにおける油圧モータ本体170の前進時吸引口とに流体接続されている。
同様に、前記一対の作動ライン400のうち前進時低圧側作動ライン(後進時高圧側作動ライン)400(R)は、一端部が前記油圧ポンプ本体520の前進時吸引口に流体接続され、且つ、他端部が前記第1油圧モータユニット150aにおける油圧モータ本体170の前進時吐出口と前記第2油圧モータユニット150bにおける油圧モータ本体170の前進時吐出口とに流体接続されている。
【0042】
このように、前記第1及び第2油圧モータユニット150a,150bを、単一の油圧ポンプ本体を有する前記油圧ポンプユニット500に対して並列に流体接続することにより、前記油圧ポンプ本体から前記第1及び第2油圧モータユニット150a,150bの各油圧モータ本体170へ供給される作動油圧を、前記第1及び第2駆動輪60a,60bに掛かる負荷に応じて、自動的に分配させることができる。
従って、機械的なディファレンシャルギヤ機構を備えることなく、前記第1及び第2駆動軸50a,50bを差動的に駆動することが可能となる。
【0043】
詳しくは、前記第1油圧モータユニット150aは、図3及び図4に示すように、前記一対の作動ライン400の一部を構成する一対のモータ側作動油路410が形成された油受継部材160と、前記一対のモータ側作動油路410に対して給排可能なように前記油受継部材160に当接された状態で前記出力軸に相対回転不能に支持された油圧モータ本体170とを備えている。
【0044】
前記油受継部材160は、前記油圧モータ本体170を前記第1ハウジング110aの内部空間に収容させた状態で、前記第2ハウジング要素130に連結されている。
詳しくは、図3に示すように、前記油受継部材160は、前記第1出力軸200aを軸線回り回転自在に支持すると共に、前記油圧モータ本体170に対して油給排可能なように該油圧モータ本体170と当接した状態で、前記第2ハウジング要素130における前記開口を閉塞するように前記第2ハウジング要素130に連結されている。
【0045】
即ち、前記油受継部材160は、前記第2ハウジング要素130と共働して、前記油圧モータ本体170を収容するモータ室110Mを画するようになっている。
なお、前記第2ハウジング要素130の前記周壁部132には、前記モータ室110M内にリークして溜まった油を外部に取り出す為の取出ポート420Pが形成されており、該モータ室110Mは該取出ポート420Pに接続された外部配管425を介して前記外部タンク10に流体接続されている。
なお、本実施の形態では前記第1及び第2油圧モータユニット150a,150bのそれぞれから外部タンク10に向けて2本の外部配管425を延出させているが、外部タンク10に向けた外部配管425は1本だけとし、T形管継手を用いて該1本の外部配管と第1及び第2ホイールモータ装置における各モータ室110M内とを流体接続するようにしてもよい。
【0046】
前記一対のモータ側作動油路410は、図4に示すように、一端部が外表面(図示の形態においては、メインフレーム31に設置された状態において、車輌前方及び後方を向く外表面)に開口して一対のモータ側作動油ポート410Pを形成し、且つ、他端部が前記油圧モータ本体170に対して流体接続されるように前記油圧モータ本体170との当接面に開口している。
【0047】
前記油圧モータ本体170は、図3に示すように、前記一対のモータ側作動油路410に対して油給排可能なように前記油受継部材160に当接された状態で前記第1出力軸200aに相対回転不能に支持されたシリンダブロック171と、前記シリンダブロック171に対して軸線方向進退自在に収容されたピストンユニット172と、前記ピストンユニットとシュー179を介して当接することで該ピストンユニット172の進退範囲を画する斜板173とを有している。
【0048】
斯かる油圧モータ本体170は、前記一対のモータ側作動油路410を介して給排される作動油によって、前記ピストンユニット172が軸線方向に往復動し、これによって、前記シリンダブロック171及び前記第1出力軸200aを軸線回りに回転させるようになっている。
【0049】
なお、本実施の形態においては、前記油圧モータ本体170は、前記斜板173の前記第1出力軸200aに対する傾転位置が固定された固定容積型とされているが、当然ながら、無段変速領域を増やす為に、傾転位置を外部操作に基づき変更可能な可変容積型とすることも可能である。
【0050】
前記第1出力軸200aは、前記第1ハウジング110a内において、前記第1駆動車軸50aと対向するように、前記第2ハウジング要素130及び前記油受継部材160によって両持ち支持されている。
【0051】
詳しくは、前記第1出力軸200aは、図3に示すように、前記第2ハウジング要素130及び前記油受継部材160によって前記第1駆動車軸50aと同一軸線の基準回転軸線RL上に支持された状態で、前記油圧モータ本体170によって軸線回りに回転駆動される基部210と、前記ギヤ室110Gに位置するように前記基部210の車輌幅方向外方に位置する偏心部220とを有している。
なお、該偏心部220は前記基部210の軸端に機械加工で一体形成しても良いし、あるいは、該基部210とは別体で連接するようにして加工処理を省くようにしても良い。
【0052】
前記偏心部220は、前記基部210の基準回転軸線RLに対して偏心するように構成されている。
本実施の形態においては、図3に示すように、該偏心部220は、前記基準回転軸線RLに対して所定角度傾斜された偏心軸線EL上に位置するように前記基部210と一体形成されており、前記基部210が前記油圧モータ本体170によって基準回転軸線RL回りに回転されると、偏心軸線EL回りに「みそすり回転」するようになっている。
【0053】
即ち、前記偏心部220の外周面における任意の一点に着目すると、該一点は、前記基部210の基準回転軸線RL回りの回転に伴って、偏心軸線EL回りに回転しつつ、偏心軸線ELの基準回転軸線RLに対する傾斜角度に応じた範囲内において基準回転軸線RLに沿って往復動するようになっている。
【0054】
好ましくは、前記第1出力軸200aは、前記偏心部220から車輌幅方向外方に延びる先端部230であって、基準回転軸線RL回りに回転する先端部230を有し得る。
図3に示すように、該先端部230は、前記第1駆動車軸50aの対向端部(車輌幅方向内端部)に対して軸線回り相対回転自在に凹凸係合させて支持することができる。
斯かる構成を備えることにより、前記第1出力軸200a及び前記第1駆動車軸50aの回転ブレを防止して、両軸の回転を安定化させることができる。また、前記第1出力軸200aの前記2点支持個所における強度を高める必要を無くしている。
【0055】
前記第1減速ギヤ機構250aは、前述の通り、前記油圧モータ本体170の回転出力を、前記第1駆動車軸50aに大幅に減速させて伝達するように構成されている。
斯かる第1減速ギヤ機構250aを備えることにより、前記油圧モータ本体170として、信頼性の高い低トルク・高回転型モータの使用が可能となり、高トルク・低回転型モータに比して、コンパクト化を図れると共に、作動油のリーク量を減少させて伝動効率の向上を図ることができる。
【0056】
具体的には、該第1減速ギヤ機構250aは、前記第1出力軸200aの偏心部220に支持された揺動ベベルギヤ260と、前記基準回転軸線RL上に位置するように前記第1ハウジング110aに固定された固定ベベルギヤ270であって、前記揺動ベベルギヤ260の歯数とは異なる歯数を有する固定ベベルギヤ270とを備えている。
【0057】
前記固定ベベルギヤ270は、図3に示すように、前記第1ハウジング要素120の内周面に形成された凹部に係合されることで、前記基準回転軸線RL上に配置されている。
なお、本実施の形態においては、前記固定ベベルギヤ270は、ピン280によって、基準回転軸線RL回り回転不能に固定されている。
【0058】
前記揺動ベベルギヤ260は、歯部のうち前記固定ベベルギヤ270の歯部に最も近接する一部の歯部だけが該固定ベベルギヤ270の歯部と噛合するように、前記偏心部230に相対回転自在且つ軸線方向移動不能に支持されている。
即ち、前記揺動ベベルギヤ260は、歯部の一部が、基準回転軸線RL上に配置された固定ベベルギヤと噛合した状態で、前記偏心部230に相対回転自在且つ軸線方向移動不能に支持されている。
【0059】
斯かる揺動ベベルギヤ260は、前記第1出力軸200aが基準回転軸線RL回りに回転すると、基準回転軸線RLと偏心軸線ELとが交差する点を揺動中心Cとして、基準回転軸線RL回りに「みそすり回転」する。
詳しくは、前記固定ベベルギヤ270の歯数をZ1とし、且つ、前記揺動ベベルギヤ260の歯数をZ2とすると、前記揺動ベベルギヤ260は、前記第1出力軸200aの回転数に対して減速比R=1−Z1/Z2で減速された回転数で回転する。
即ち、(固定ベベルギヤ270の歯数Z1)<(揺動ベベルギヤ260の歯数Z2)とすると、前記揺動ベベルギヤ260は、前記第1出力軸200aの回転方向と同一方向に減速比Rで回転する。
これに代えて、(固定ベベルギヤ270の歯数Z1)>(揺動ベベルギヤ260の歯数Z2)とすると、前記揺動ベベルギヤ260は、前記第1出力軸200aの回転方向とは反対方向に減速比Rで回転する。
好ましくは、前記固定ベベルギヤ270の歯数Z1と前記揺動ベベルギヤ260の歯数Z2との差異を1とすることができ、これにより、前記揺動ベベルギヤ260の回転数をより低下させることができる。
【0060】
前記第1自在継ぎ手機構300aは、前記揺動ベベルギヤ260の前記揺動中心C回りの「みそすり回転」を前記第1駆動車軸50aに伝達して、該第1駆動車軸50aを基準回転軸線RL回りに回転させ得るように構成されている。
本実施の形態においては、前記揺動ベベルギヤ260は、前記偏心部230に支持される本体部261と、前記歯部262と、前記本体部261から車輌幅方向外方へ延び、前記第1駆動車軸50aの対向端部(車輌幅方向内端部)に外挿される筒状連結部263とを有している。
そして、該自在継ぎ手機構300aは、前記揺動ベベルギヤ260の前記筒状連結部263と、該筒状連結部263に挿入される前記第1駆動車軸50aとの間に設けられている。
【0061】
具体的には、前記自在継ぎ手機構300aは、図3に示すように、前記第1駆動車軸50aの外周面に形成されたスプライン310と、該スプライン310と係合するように前記揺動ベベルギヤ260の筒状連結部263に相対回転不能に設けられた係合凸部320とを有している。
【0062】
前記スプライン310は、縦断面視において、前記揺動ベベルギヤ260の揺動中心Cを中心点とする円弧状外周面を有している。
【0063】
前記係合凸部320は、好ましくは、前記円弧状スプライン310と係合する係合端部が、縦断面視において、円弧状の外周面を有するものとされる。
なお、本実施の形態においては、図3に示すように、前記係合凸部320は、前記筒状連結部263に形成された貫通孔及び前記駆動車軸に形成された前記スプラインの双方に係合するボール321と、該ボール321の脱離を防止する抑え部材322とによって構成されているが、当然ながら、該係合凸部320を前記筒状連結部263に一体形成することも可能である。
【0064】
好ましくは、図3に示すように、前記揺動ベベルギヤ260における歯部262のピッチ円錐の頂点及び前記固定ベベルギヤ270における歯部272のピッチ円錐の頂点が共に、前記揺動ベベルギヤ260の前記揺動中心C上に位置するように構成することができる。
斯かる構成を備えることにより、「みそすり回転」する前記揺動ベベルギヤ260と、前記第1ハウジング110aに固定された前記固定ベベルギヤ270との噛合関係の安定化を図ることができる。
なお、前記揺動ベベルギヤ260が「みそすり回転」するときに該揺動ベベルギヤ260には固定ベベルギヤ270とは反対方向(紙面左方)へのスラストが発生するため、該揺動ベベルギア260を支持する前記偏心部230上の軸受にはアンギュラ玉軸受が用いられている。このスラストは更に第1出力軸200aまで波及するため、該第1出力軸200aにおける基部210の出力端側の軸受にもアンギュラ玉軸受を用いて前記第2ハウジング要素130で受け止めている。
【0065】
なお、本実施の形態においては、前述の通り、前記揺動ベベルギヤ260が、前記第1駆動車軸50aの対向端部が挿入される筒状連結部263を有するものとし、前記第1自在継ぎ手機構300aが、該揺動ベベルギヤ260の筒状連結部263と該第1駆動車軸50aの外周面との間で両者を連結するものとしたが、本発明は斯かる形態に限定されるものではない。
例えば、図5に示すように、前記第1駆動車軸50aの対向端部が中空形状とされ、且つ、前記揺動ベベルギヤ260が、前記本体部261と、前記歯部262と、前記第1駆動車軸50aの中空部に挿入されるように前記本体部261から車輌幅方向外方に延びる連結部264とを有するものとされた第1ホイールモータ装置101aにおいては、前記自在継ぎ手機構300aは、前記連結部264の外周面に形成された円弧状スプライン323と、該円弧状スプライン323と噛合するように前記第1駆動車軸50aにおける中空部の内周面に形成されたスプライン311とを有するものとされる。
【0066】
図3に示すように、本実施の形態においては、前記固定ベベルギヤ270は、その歯部が車輌幅方向内方を向き、且つ、前記揺動ベベルギヤ260は、その歯部が車輌幅方向外方を向いている。
斯かる構成においては、前記ギヤ室110G内における前記揺動ベベルギヤ260の背面側(即ち、揺動ベベルギヤ260の車輌幅方向内方側)に、容易にスペースを確保することができる。
【0067】
本実施の形態に係るホイールモータ装置100a,101aは、図3に示すように、前記スペースを利用した湿式のブレーキユニット350aを備えている。
詳しくは、前記ブレーキユニット350aは、前記ギヤ室110Gにおける前記スペースに位置して溜まった油と接触するように前記第1出力軸200aの基部210に相対回転不能且つ軸線方向移動可能に支持されたブレーキディスク360と、該ブレーキディスク360の車輌幅方向一方側(図示の形態では車輌幅方向内方側)に設けられた制動面370と、前記ブレーキディスク360を挟んで車輌幅方向他方側に配設された押動部材380と、外部操作に基づき前記押動部材380を介して前記ブレーキディスク360を前記制動面370に押圧する操作部材390とを備えている。
なお、図3中の符号395は、前記操作部材390に相対回転不能に連結されたブレーキアームである。
【0068】
なお、本実施の形態においては、図3及び図5に示すように、前記スペースを前記ブレーキディスク360の設置スペースとして利用したが、これに代えて、図6に示すように、該スペースをバランスウエイト700の設置スペースとして利用することもできる。
該バランスウエイト700は、前記偏心部220の重心位置を前記基準回転軸線RLに近接させるような形状とされる。
斯かるバランスウエイト700を備えることにより、前記第1出力軸200aの回転を安定化させることができる。
【0069】
このように、前記スペースにバランスウエイト700を備えたホイールモータ装置102a(図6参照)や、何らかの理由によって前記スペースにブレーキディスク360を設置できないホイールモータ装置においては、前記ブレーキユニット350aに代えて、ブレーキユニット351aを備えることができる。
該ブレーキユニット351aは、図6に示すように、前記モータ室110M内において前記シリンダブロック171と前記斜板173との間で前記第1出力軸200aの基部210に相対回転不能且つ軸線方向移動可能に支持されたブレーキディスク361であって、前記ピストンユニット172が挿通可能な開口が設けられたブレーキディスク361と、該ブレーキディスク361の車輌幅方向一方側(図示の形態では車輌幅方向外方側)に配設された制動面371と、前記ブレーキディスク361を挟んで前記制動面371とは反対側に配設された押動部材381と、外部操作に基づき前記押動部材381を介して前記ブレーキディスク361を前記制動面371に押圧する操作部材391とを備えることができる。
【0070】
なお、図6に示すように、前記シリンダブロック171と前記斜板173との間で前記第1出力軸200aの基部210に支持された前記ブレーキディスク361を備えるホイールモータ装置102aにおいては、好ましくは、前記ピストンユニット172はシューレスタイプとされる(図6参照)。
即ち、シューレスタイプのピストンユニット172は、突出側端面が平坦に形成される為に、前記シリンダブロック171は、前記斜板173との間に前記第1出力軸200aの基部210が露出することを許容するように構成され得る。従って、無理なく前記ブレーキディスク361を位置させることが可能となる。
【0071】
さらに、前記ブレーキユニット351aは、前記第1出力軸200aの基部210に支持される前記ブレーキディスク361に代えて、前記シリンダブロック171に相対回転不能且つ軸線方向移動可能に支持されるブレーキディスク362を備えることも可能である(下記図8参照)。
【0072】
又、前記スペースにバランスウエイト700を備えたホイールモータ装置102aや、何らかの理由によって前記スペースにブレーキディスクを設置できないホイールモータ装置においては、前記第1出力軸200aの車輌幅方向内端部を前記油受継部材160より車輌幅方向内方へ突出させ、該突出部211(図6参照)に制動力を付加するように構成されたブレーキユニットを備えることも可能である。
【0073】
斯かる構成のホイールモータ装置においては、前記種々の効果に加えて、下記効果を奏することができる。
即ち、前記減速ギヤ機構として遊星歯車機構を備えたホイールモータ装置においては、減速ギヤ機構を構成する部品点数が多くなり、製造コスト及び組立コストが高騰化する。
前記遊星歯車機構に代えて、平行(外接)歯車機構によって前記減速ギヤ機構を構成することも考えられるが、これによると、減速ギヤ機構が径方向に大型化してしまう。
【0074】
これに対し、本実施の形態においては、前述の通り、前記減速ギヤ機構250a,250bを前記揺動ベベルギヤ260と前記固定ベベルギヤ270とによって形成している為、部品点数の削減及び組立効率の向上による低コスト化を図りつつ、該減速ギヤ機構250a,250bの小型化を図ることができる。
【0075】
さらに、本実施の形態においては、前述の通り、前記揺動ベベルギヤ260及び前記固定ベベルギヤ270が共に、一側面のみにしか歯部を有してない。
従って、該揺動ベベルギヤ260及び固定ベベルギヤ270の製造が容易で低コスト化及び軽量化を図ることができる。
特に、前記揺動中心Cを支点として「みそすり回転」する前記揺動ベベルギヤ260が一側面にしか歯部を有さない構造である為、該揺動ベベルギヤの可及的な軽量化を図ることができる。
従って、該揺動ベベルギヤ260の「みそすり回転」によって生じるアンバランスフォースを低減でき、振動及び騒音を可及的に防止又は低下させることができる。
【0076】
さらに、前記揺動ベベルギヤ260と前記駆動車軸50とを連結する自在継ぎ手機構300a,300bを、前記揺動ベベルギヤ260及び前記固定ベベルギヤ270の噛合点より径方向内方に位置させ、且つ、径方向に開くスプライン310,311(図3及び図5参照)を用いて構成したので、装置全体の径方向拡大を招くことなく、前記出力軸200a,200b及び前記駆動車軸50a,50bの対向端部を可及的に近接配置させることができる。
従って、例えば、前記駆動車軸50a,50bを対応する前記第1ハウジング要素120に一対の軸受部材29を介して2点支持させたとしても、装置全体の径方向長さの拡大を招くことなく、軸線方向長さの可及的な短縮化を図ることができる。
【0077】
実施の形態2
以下、本発明に係るホイールモータ装置の好ましい他の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図7に、本実施の形態に係る第1ホイールモータ装置103aの部分縦断背面図を示す。
なお、図中、前記実施の形態1におけると同一部材には同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0078】
本実施の形態に係るホイールモータ装置103aは、前記固定ベベルギヤ270の支持構造だけが前記実施の形態1に係るホイールモータ装置100a〜102aと相違する。
即ち、該ホイールモータ装置103aにおいては、前記固定ベベルギヤ270は、外方からの人為操作に基づき、基準回転軸線RL回り回転自在な状態と、基準回転軸線RL回り回転不能な状態とをとり得るように構成されている。
【0079】
具体的には、前記固定ベベルギヤ270は、前記実施の形態1におけると同様に、前記第1ハウジング要素120の内周面に設けられた凹部に基準回転軸線RL回り回転自在に係合されている。
そして、図7に示すように、該第1ハウジング要素120には、外方からの人為操作に基づき、前記固定ベベルギヤ270と係合して該固定ベベルギヤ270を回転不能に係止する係止位置と、前記固定ベベルギヤ270との係合を解除して該固定ベベルギヤ270を回転自在とする開放位置とをとり得る係脱部材140が設けられている。
【0080】
本実施の形態においては、前記固定ベベルギヤ270の外周面に凹部275が設けられ、且つ、前記第1ハウジング要素120には、該凹部275に対応した位置において、ネジ孔が形成されている。
そして、前記係脱部材140は、前記係止位置において先端部が該凹部275に係入され、且つ、前記開放位置において先端部から該凹部から脱離されるように、前記ネジ孔に螺入されたネジ部材とされている。
【0081】
斯かる構成のホイールモータ装置103aにおいては、前記実施の形態1における効果に加えて、前記係脱部材140を開放位置に位置させることによって、対応する駆動車軸50aを前記減速ギヤ機構250aのかみ合い抵抗無く回転自在とさせることができる。
従って、車輌を強制牽引する際等における負荷をより低減させることができる。
【0082】
即ち、前記実施の形態1においては、前述の通り、前記バイパス弁が介挿された前記バイパス油路によって、車輌を強制牽引する際等において前記一対の作動油ライン400間に油圧差が生じることを防止していたが、斯かる形態においては、車輌の強制牽引に伴って前記駆動車軸50a,50bが回転すると前記出力軸200a,200b及び前記油圧モータ本体170も回転する。
特に、前記油圧モータ本体170は、前記油受継部材160に当接されている為、斯かる油圧モータ本体170の回転によって摩擦抵抗が生じることになる。
【0083】
これに対し、本実施の形態においては、前記係脱部材140によって前記固定ベベルギヤ270を回転自在な状態とすることができる。
従って、前記出力軸200a,200b及び前記油圧モータ本体170を回転させることなく、駆動車軸50a,50bのみを回転自在とすることができ、これにより、車輌の強制牽引の際の負荷を低減させることができる。よって、この形態を採用するときは前記油圧ポンプユニット500から前記バイパス油路や前記バイパス弁を不要とし得る。
【0084】
実施の形態3
以下、本発明に係るホイールモータ装置のさらに他の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図8に、本実施の形態に係るホイールモータ装置104aの部分縦断背面図を示す。
なお、図中、前記実施の形態1又は2におけると同一部材には同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0085】
本実施の形態に係るホイールモータ装置104aは、前記実施の形態1に係るホイールモータ装置101aにおいて、前記揺動ベベルギヤ260及び前記固定ベベルギヤ270に代えて、車輌幅方向内方を向く歯部を有する揺動ベベルギヤ260B及び車輌幅方向外方を向く歯部を有する固定ベベルギヤ270Bを備えている。
【0086】
図8に示すように、前記固定ベベルギヤ270Bは、前記揺動ベベルギヤ260Bより車輌幅方向内方に位置されており、歯部272が車輌幅方向外方を向くように前記第2ハウジング要素130の端壁部131にピンを介して固定支持されている。
一方、前記揺動ベベルギヤ206Bは、前記固定ベベルギヤ270Bより車輌幅方向外方に位置されており、歯部262が車輌幅方向内方を向く状態で、前記第1出力軸200aの偏心部220に相対回転自在且つ軸線方向移動不能に支持されている。
【0087】
斯かる構成のホイールモータ装置104aにおいても、前記実施の形態1におけると同様の効果を得ることができる。
【0088】
なお、本実施の形態においては、前述の通り、前記固定ベベルギヤ270Bが前記第2ハウジング要素130の端壁部131に固定連結されており、従って、前記ギヤ室110G内に前記ブレーキディスク360や前記バランスウエイト700を設置する為のスペースを確保することが困難である。
斯かる観点に鑑み、本実施の形態においては、前記シリンダブロック171に相対回転不能且つ軸線方向移動可能に支持されたブレーキディスク362を有するブレーキユニット352aを備えている。
【0089】
詳しくは、該ブレーキユニット352aは、前記油受継部材160の内表面と対向するように前記シリンダブロック171に相対回転不能且つ軸線方向移動可能に支持された前記ブレーキディスク362と、該ブレーキディスク362の軸線方向一方側に配設された制動面372と、前記ブレーキディスク362を挟んで前記制動面372とは軸線方向反対側に配設された押動部材382と、外部操作に基づき該押動部材382を介して前記ブレーキディスク362を前記制動面372に向けて押圧する操作部材391とを備えている。
なお、斯かるブレーキユニット352aに代えて、対応する前記第1出力軸200aの車輌幅方向内端部を前記油受継部材160より車輌幅方向内方へ突出させ、該突出部211に制動力を付加するように構成されたブレーキユニットを備えることも可能である。
【0090】
前述した前記揺動ベベルギヤ260B及び前記固定ベベルギヤ270Bの噛合関係にある場合、前記揺動ベベルギヤ260Bが「みそすり回転」するときに該揺動ベベルギヤ260Bには固定ベベルギヤ270Bとは反対方向(紙面右方)へのスラストが発生するため、該揺動ベベルギヤ260を支持する前記偏心部230上の軸受にはアンギュラ玉軸受が用いられている。このスラストは更に第1出力軸200aまで波及するため、該第1出力軸200aの偏心部220の端面に、第1駆動車軸50aの対向面に接触する球状突起を設けて斯かるスラストを前記第1ハウジング要素120で受け止めている。
【0091】
又、本実施の形態におけるように、前記固定ベベルギヤ270Bが車輌幅方向外方を向く歯部272を有し、且つ、前記揺動ベベルギヤ260Bが車輌幅方向内方を向く歯部262を有するホイールモータ装置104aにおいては、前記出力軸200aの偏心部220に空洞部221を設け、該空洞部221によって該偏心部220の重心位置を前記基準回転軸線RLに近接させることができる。
前記空洞部221は、例えば、前記偏心部220の端面から穿孔することによって形成される。
図9に、斯かる空洞部221を備えた本実施の形態に係るホイールモータ装置104aの変形例105aの部分縦断背面図を示す。
なお、図9に示す形態においては、前記偏心部220に空洞部221を設けて、前記第1出力軸200aの回転安定化を図っているが、斯かる空洞部221に代えて、又は、加えて、比重の異なるバランスウエイト部材を埋め込むことも可能である。
【0092】
又、図9に示すホイールモータ装置105aにおいては、図5に示すホイールモータ装置101aと同様、記第1駆動車軸50aの対向端部が中空形状とされ、且つ、前記揺動ベベルギヤ260Bが、前記本体部261と、前記歯部262と、前記第1駆動車軸50aの中空部に挿入されるように前記本体部261から車輌幅方向外方に延びる連結部264とを有するものとされている。
更に、該連結部264の端面には、第1駆動車軸50aの対向面に接触する球状突起を設けてあり、前記揺動ベベルギヤ260で発生したスラストを該第1駆動車軸50aを通じて前記第1ハウジング要素120で受け止めるように構成されている。
そして、前記自在継ぎ手機構300aは、前記連結部264の外周面に形成された円弧状スプライン323と、該円弧状スプライン323と噛合するように前記第1駆動車軸50aにおける中空部の内周面に形成されたスプライン311とを有するものとされている。
【0093】
実施の形態4
以下、本発明に係るホイールモータ装置のさらに他の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図10に、本実施の形態に係るホイールモータ装置106aの部分縦断背面図を示す。
なお、図中、前記各実施の形態におけると同一部材には同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0094】
図10に示すように、本実施の形態に係るホイールモータ装置106aは、前記第1出力軸の偏心部の構造が、変更されている。
即ち、本実施の形態に係るホイールモータ装置106aは、前記第1出力軸200aに代えて、第1出力軸201aを有している。
該第1出力軸201aは、前記基部210と、前記基準回転軸線RLから偏心された位置で該基部210に支持された偏心部221とを有するものとされている。
【0095】
詳しくは、該ホイールモータ装置106aにおいては、前記基部210の車輌幅方向外端面に凹部が形成されている。
そして、前記偏心部221は、少なくとも一部が該凹部から外方へ突出するように該凹部に係入されたボール部材とされている。
【0096】
斯かる構成において、前記揺動ベベルギヤ260Bは、偏心軸線EL上に位置し且つ一部の歯部262だけが前記固定ベベルギヤ270Bの歯部272と噛合するように、前記ボール部材221の突出部に相対回転自在に支持されている。
【0097】
斯かる本実施の形態においても、前記各実施の形態におけると同様の効果を得ることができる。
なお、本実施の形態においては、車輌幅方向外方を向く歯部272を有する前記固定ベベルギヤ270Bと、車輌幅方向内方を向く歯部を有する前記揺動ベベルギヤ260Bとを備えた態様を例に説明したが、当然ながら、車輌幅方向内方を向く歯部272を有する前記固定ベベルギヤ270と、車輌幅方向外方を向く歯部262を有する前記揺動ベベルギヤ260とを備えた態様に適用することも可能である。
【0098】
実施の形態5
以下、本発明に係るホイールモータ装置のさらに他の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図11に、本実施の形態に係るホイールモータ装置107aの部分縦断背面図を示す。
なお、図中、前記各実施の形態におけると同一部材には同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0099】
本実施の形態に係るホイールモータ装置107aは、対応する回転出力ユニット151aがハウジング111aに対して、外部から設置され得るように構成されている。
【0100】
詳しくは、該ホイールモータ装置107aは、図11に示すように、前記メインフレーム31に連結される前記第1ハウジング111aと、該第1ハウジング111aの外部に連結支持される前記回転出力ユニット151aと、該回転出力ユニット151aによって作動的に回転駆動される第1出力軸205aと、該第1出力軸205aの回転動力を減速させる前記第1減速ギヤ機構250aと、該第1減速ギヤ機構250aの出力を第1駆動車軸50aに伝達する前記第1自在継ぎ手機構300aとを備えている。
【0101】
前記第1ハウジング111aは、前記第1ハウジング要素120と、該第1ハウジング要素120に分離可能に連結される第2ハウジング要素135とを有している。
図11に示すように、該第2ハウジング要素135は、前記第1ハウジング要素120の車輌幅方向内方側開口を閉塞する端壁部131であって、前記第1出力軸205aを基準回転軸線RL回り回転自在に支持する端壁部131を有している。
【0102】
前記回転出力ユニット151aは、図11に示すように、油圧モータ本体等の回転出力本体(図示せず)と、該回転出力本体の回転を出力するモータ軸等の出力部154と、前記回転出力本体を収容するケース155とを有している。
前記ケース155は、前記第1ハウジング111aに外部から着脱自在に連結され得るように構成されている。
【0103】
本実施の形態における前記第1出力軸205aは、基準回転軸線RL回りに回転駆動される基部215と、該基部215の基準回転軸線回りの回転に伴って該基準回転軸線RLに対して偏心回転する前記偏心部220とを有している。
前記基部215は、前記ケース155を前記第1ハウジング111aに連結させることにより、前記出力部154に作動連結されるように構成されている。
【0104】
本実施の形態においては、図11に示すように、前記第1出力軸205aの基部215には、車輌幅方向内方に開くスプライン付軸線孔が設けられており、前記ケース155を前記第1ハウジング111aに連結させると、前記出力部154が該基部215に対してスプライン連結されるようになっている。
【0105】
斯かる構成のホイールモータ装置107aにおいても、前記各実施の形態におけると同様の効果を得ることができる。
【0106】
なお、前記各実施の形態においては、本発明に係る第1及び第2ホイールモータ装置を、非駆動輪が、アッカーマン式操舵機構に用いる操舵輪70とされた前記車輌1Aに適用した場合を例に説明したが、当然ながら、本発明は他の形態の車輌に適用することも可能である。
例えば、非駆動輪がキャスタ輪75とされた車輌1Bであって、前記第1及び第2駆動輪60a,60bをそれぞれ独立して変速駆動するように構成された車輌に適用することも可能である。
【0107】
斯かる車輌1Bは、図12に示すように、単一の油圧ポンプ本体を有する前記油圧ポンプユニット500に代えて、第1油圧ポンプ本体を有する第1油圧ポンプユニット501aと、第2油圧ポンプ本体を有する第2油圧ポンプユニット501bとを備えている。
該車輌1Bにおいては、前記第1及び第2ホイールモータ装置100a,100bは、それぞれ、前記第1及び第2油圧ポンプユニット501a,501bに、一対の第1作動ライン400a及び一対の第2作動ライン400bを介して流体接続されており、前記第1駆動車軸50aを独立して逆転可能に無段変速駆動する第1HSTと、前記第2駆動車軸50bを独立して逆転可能に無段変速駆動する第2HSTとを有するものとされている。
【0108】
又、図13に示すように、前後輪間の中央位置且つ左右輪間の中央位置において垂直方向に沿うように配設された枢支軸35を介して前フレーム36及び後フレーム37が揺動自在に連結された胴体屈折式車輌1Cにおいて、前フレーム36に支持された一対の前方側駆動車軸55a,55b及び後フレーム37に支持された一対の後方側駆動車軸50a,50bを、それぞれ、前記ホイールモータ装置によって駆動させることも可能である。
斯かる胴体屈折式車輌1Cにおいては、油圧ポンプユニット500が支持されるフレーム(図13においては後フレーム37)とは反対側のフレーム(図13においては前フレーム36)に支持されるホイールモータ装置と該油圧ポンプユニット500との間は、途中に弾性パイプ450を有する作動油ライン400によって流体接続される。
なお、図13に示す車輌1Cは、車輌前方に作業機80を有している。
又、図13中の符号45はエンジンプーリーであり、符号46はテンションプーリーである。符号800は作業機80へエンジン動力を伝達するための駆動体であり、その前記枢支軸35と同一軸線上に回転中心がある2連のPTO出力プーリーが配置され、該プーリーの一方にエンジンプーリー45からの駆動を受ける第1伝動ベルトが巻回され、他方に作業機入力プーリーとの間で第2伝動ベルトが巻回されている。
【0109】
さらに、前記各実施の形態においては、前記回転出力ユニットとして油圧モータユニットを例に説明したが、当然ながら、該油圧モータユニットに代えて電動モータユニットを用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】図1は、本発明に係るホイールモータ装置が適用された車輌の平面図である。
【図2】図2は、図1におけるII-II線に沿った前記車輌の縦断背面図である。
【図3】図3は、本発明の一実施の形態に係るホイールモータ装置の縦断背面図である。
【図4】図4は、図3におけるIV-IV線断面図である。
【図5】図5は、図3に示すホイールモータ装置の変形例の部分縦断背面図である。
【図6】図6は、図3に示すホイールモータ装置の他の変形例の縦断背面図である。
【図7】図7は、本発明の他の実施の形態に係るホイールモータ装置の部分縦断背面図である。
【図8】図8は、本発明のさらに他の実施の形態に係るホイールモータ装置の縦断背面図である。
【図9】図9は、図8に示すホイールモータ装置の変形例の部分縦断背面図である。
【図10】図10は、本発明のさらに他の実施の形態に係るホイールモータ装置の部分縦断背面図である。
【図11】図11は、本発明のさらに他の実施の形態に係るホイールモータ装置の部分縦断背面図である。
【図12】図12は、本発明に係るホイールモータ装置が適用された他の車輌の平面図である。
【図13】図13は、本発明に係るホイールモータ装置が適用されたさらに他の車輌の平面図である。
【符号の説明】
【0111】
1A,1B,1C 車輌
50a,50b 第1及び第2駆動車軸
100a,100b 第1及び第2ホイールモータ装置
101a〜107a 第1ホイールモータ装置
110a,110b 第1及び第2ハウジング
120 第1ハウジング要素
130 第2ハウジング要素
140 係脱部材
150a,150b 第1及び第2油圧モータユニット
160 油受継部材
170 油圧モータ本体
200a,200b 第1及び第2出力軸
210 基部
220 偏心部
221 空洞部(バランス機構)
260 揺動ベベルギヤ
270 固定ベベルギヤ
300a,300b 第1及び第2自在継ぎ手機構
700 バランスウエイト(バランス機構)
RL 基準回転軸線
EL 偏心軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動車軸の車輌幅方向内端部が内部空間に突入された状態で該駆動車軸を軸線回り回転自在に支持するハウジングと、
前記ハウジングに支持される回転出力ユニットと、
前記回転出力ユニットによって作動的に回転駆動される出力軸であって、前記駆動車軸と同一軸線の基準回転軸線回りに回転駆動される基部と、前記基準回転軸線に対して所定角度傾斜された偏心軸線を有する偏心部とを含む出力軸と、
前記基準回転軸線上に位置するように、前記ハウジングに固定された固定ベベルギヤと、
前記偏心軸線上にその回転中心が位置し且つ一部の歯部だけが前記固定ベベルギヤの歯部と噛合するように、前記出力軸の偏心部に相対回転自在に支持された揺動ベベルギヤであって、前記固定ベベルギヤとは異なる歯数を有する揺動ベベルギヤと、
前記揺動ベベルギヤの回転を前記駆動車軸に伝達する自在継ぎ手機構とを備えていることを特徴とするホイールモータ装置。
【請求項2】
駆動車軸の車輌幅方向内端部が内部空間に突入された状態で該駆動車軸を軸線回り回転自在に支持するハウジングと、
前記ハウジングに支持される回転出力ユニットと、
前記回転出力ユニットによって作動的に回転駆動される出力軸であって、前記駆動車軸と同一軸線の基準回転軸線回りに回転駆動される基部と、前記基準回転軸線に対して偏心配置された偏心部とを有する出力軸と、
前記基準回転軸線上に位置するように、前記ハウジングに固定された固定ベベルギヤと、
前記基準回転軸線に対して所定角度傾斜された偏心軸線上にその回転中心が位置し且つ一部の歯部だけが前記固定ベベルギヤの歯部と噛合するように、前記出力軸の偏心部に相対回転自在に支持された揺動ベベルギヤであって、前記固定ベベルギヤとは異なる歯数を有する揺動ベベルギヤと、
前記揺動ベベルギヤの回転を前記駆動車軸に伝達する自在継ぎ手機構とを備えていることを特徴とするホイールモータ装置。
【請求項3】
前記固定ベベルギヤと前記揺動ベベルギヤとの歯数差は1つであることを特徴とする請求項1又は2に記載のホイールモータ装置。
【請求項4】
前記自在継ぎ手機構は、前記揺動ベベルギヤが、前記基準回転軸線と前記偏心軸線との交点を中心として、前記駆動車軸に対して揺動自在となるように、該揺動ベベルギヤ及び該駆動車軸を連結していることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のホイールモータ装置。
【請求項5】
前記揺動ベベルギヤにおける歯部のピッチ円錐の頂点及び前記固定ベベルギヤにおける歯部のピッチ円錐の頂点は共に、前記基準回転軸線及び前記偏心軸線の前記交点に位置していることを特徴とする請求項4に記載のホイールモータ装置。
【請求項6】
前記自在継ぎ手機構は、前記基準回転軸線を基準にして、前記揺動ベベルギヤ及び前記固定ベベルギヤの噛合点より径方向内方において、径方向に開くスプラインを有していることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載のホイールモータ装置。
【請求項7】
前記ハウジングを車輌に設置した状態において、前記固定ベベルギヤ及び前記揺動ベベルギヤは、それぞれ、歯部が車輌幅方向内方及び車輌幅方向外方を向いていることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載のホイールモータ装置。
【請求項8】
前記出力軸は、前記偏心部の重心位置を前記基準回転軸線に近接させる為のバランス機構を有していることを特徴とする請求項1から7の何れかに記載のホイールモータ装置。
【請求項9】
前記固定ベベルギヤは、前記ハウジングの内周面に設けられた凹部に前記基準回転軸線回り回転自在に係合されており、
前記ハウジングには、外方からの人為操作に基づき、前記固定ベベルギヤと係合して該固定ベベルギヤを回転不能に係止する係止位置と、前記固定ベベルギヤとの係合を解除して該固定ベベルギヤを回転自在とする開放位置とをとり得る係脱部材が設けられていることを特徴とする請求項1から8の何れかに記載のホイールモータ装置。
【請求項10】
前記回転出力ユニットは、油圧モータ本体と、該油圧モータ本体に対する給排油路が形成された油受継部材とを有する油圧モータユニットとされており、
前記ハウジングは、互いに分離可能に接合される第1及び第2ハウジング要素であって、それぞれ、前記出力軸及び前記駆動車軸を支持する第1及び第2ハウジング要素を含み、
前記第1ハウジング要素は、車輌設置状態において車輌幅方向外方側及び内方側に、それぞれ、前記出力軸を支持する端壁部及び前記油圧モータ本体が挿通可能な開口を有しており、
前記油受継部材は、前記開口を閉塞するように前記第1ハウジング要素に連結されていることを特徴とする請求項1から9の何れかに記載のホイールモータ装置。
【請求項11】
前記回転出力ユニットは、回転出力本体と、該回転出力本体の回転を出力する出力部と、該回転出力本体を収容するケースであって、前記ハウジングに外部から着脱自在に連結されるケースとを備えており、
前記ケースを前記ハウジングに連結させることにより、前記出力部が前記出力軸に作動連結されるように構成されていることを特徴とする請求項1から9の何れかに記載のホイールモータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−176052(P2006−176052A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−373061(P2004−373061)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000125853)株式会社 神崎高級工機製作所 (210)
【Fターム(参考)】