説明

ホイール式作業車両の油圧駆動装置

【課題】走行用油圧ポンプと走行用油圧モータに高圧が作用する頻度を抑えつつ、作業装置用油圧ポンプの吐出圧力に応じて走行駆動力を制限でき、かつ、走行駆動力の上限をオペレータの意思に基づき変更できるホイール式作業車両の油圧駆動装置を提供すること。
【解決手段】走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmと作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwとの和が基準値以上である場合に、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが高いほど走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmが低下するように、カットオフ弁61の第1,第2パイロットポート66,67にパイロット圧として吐出圧力Pm,Pwを供給して走行用油圧ポンプ11の押し退け容積を制御する。ダイヤル80の操作位置に応じてコントローラ85が圧力制御弁83を制御することでカットオフ弁61の第3パイロットポート68に対するパイロット圧Pcを設定し、これによってカットオフ弁61の始動圧力Ps(基準値)を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行用油圧ポンプと作業装置用油圧ポンプに対し同じ原動機の出力を伝達して駆動するものであって、走行用油圧ポンプの吐出圧力と作業装置用油圧ポンプの吐出圧力との和が基準値以上である場合に、作業装置用油圧ポンプの吐出圧力が高いほど走行用油圧ポンプの吐出圧力が低下するように、走行用油圧ポンプの押し退け容積を制御することによって、走行用油圧ポンプと作業装置用油圧ポンプとに対するエンジン出力の配分を設定するホイール式作業車両の油圧駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ホイール式作業車両の油圧駆動装置は、原動機と、この原動機の出力を伝達されて駆動される可変容量型の走行用油圧ポンプと、走行用油圧ポンプと閉回路接続された走行用油圧モータと、走行用油圧ポンプを駆動する原動機と同じ原動機の出力を伝達されて駆動される作業装置用油圧ポンプと、この作業装置用油圧ポンプの吐出油により駆動され、走行用油圧モータとの複合操作が可能な作業装置用油圧アクチュエータとを備える。この油圧駆動装置では、走行用油圧ポンプと作業装置用油圧ポンプとが同じ原動機の出力を伝達されて駆動されるものであるため、ホイール式作業車両に作業装置の動作と走行とを並行して行わせる場合に、原動機の出力の範囲内で作業装置の駆動力と走行駆動力との関係を設定する必要がある。
【0003】
そこで、特許文献1に開示された油圧駆動回路は、ホイール式作業車両が作業装置の動作と走行とを並行させるとき、走行用油圧ポンプの吐出圧力と作業装置用油圧ポンプ(作業用油圧ポンプ)の吐出圧力との和が基準値(所定値)を超えた場合に、作業装置用油圧ポンプの吐出圧力が高いほど走行用油圧ポンプの吐出圧力が低下するように、走行用油圧ポンプの押し退け容積を制御する走行用ポンプ圧制御手段(走行用油圧ポンプ圧力制御手段)とを備える。ここで「()」内は特許文献1での用語である。
【0004】
ところで、作業装置の駆動力および走行駆動力のそれぞれの必要度(必要とする割合)は、ホイール式作業車両に行わせる作業の内容、ホイール式作業車両が走行する場所によって異なる。例えば、ホイール式作業車両であるホイールローダにおいては、バケットに土砂等の荷が積載された状態でリフトアームを上昇させながら走行する場合には、リフトアームを上昇させるための駆動力の必要度は走行駆動力よりも大きいため、走行駆動力を抑える必要がある。また、バケットを地山に貫入しながら上向きにする場合には、ホイールがスリップしないように走行駆動力を抑える必要があるため、走行駆動力の必要度は走行を単独で行う場合よりも小さい。また、ホイール式作業車両に砂地、凍結地、積雪地などスリップしやすい場所を走行させる場合には、スリップしないように走行駆動力を抑える必要があるため、ホイール式作業車両にスリップしやすくない場所を走行させる場合よりも走行駆動力の必要度は小さい。また、作業車両が登坂する場合には走行駆動力と走行速度を十分に確保する必要があるため、平地を走行する場合よりも走行駆動力の必要度が大きい。このため、ホイール式作業車両に行わせる作業の内容および作業車両が走行する場所に応じて、走行駆動力の上限を変更できることが要望されていた。
【0005】
その要望に応えるために、特許文献2に開示された油圧駆動車両は、傾転角の電子制御が可能な斜軸式の可変容量型油圧モータから成る走行用油圧モータと、切換スイッチと、この切換スイッチの操作に応じて、アクセルペダルの最大踏込み量に対応する走行用油圧モータの傾転角を設定するコントローラとを備える。この油圧駆動車両のオペレータは、切換スイッチを操作してアクセルペダルの最大踏込み量に対応する走行用油圧モータの傾転角を所望の値に設定することによって、走行駆動力の上限を、油圧駆動車両に行わせる作業の内容および作業車両が走行する場所に適した値に設定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2679757号公報
【特許文献2】特許第4208179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に開示の油圧駆動車両は、アクセルペダルの最大踏込み量に対応する走行用油圧モータの傾転角、すなわち押し退け容積を変更することによって、走行駆動力の上限を変更するものである。このため、走行用油圧ポンプと走行用油圧モータに高圧が作用する頻度が多く、走行用油圧ポンプおよび走行用油圧モータの短命化、走行用油圧ポンプおよび走行用油圧モータにおける不具合発生のリスクの上昇が懸念される。
【0008】
本発明は前述の事情を考慮してなされたものであり、その目的は、走行用油圧ポンプと走行用油圧モータに高圧が作用する頻度を抑えつつ、作業装置用油圧ポンプの吐出圧力が高いほど走行駆動力を制限でき、かつ、走行駆動力の上限をオペレータの意思に基づき変更できるホイール式作業車両の油圧駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の目的を達成するために本発明に係るホイール式作業車両の油圧駆動装置は次のように構成されている。
【0010】
〔1〕 本発明に係るホイール式作業車両の油圧駆動装置は、原動機と、この原動機の出力を伝達されて駆動される可変容量型の走行用油圧ポンプと、この走行用油圧ポンプと閉回路接続された走行用油圧モータと、前記原動機の出力を伝達されて駆動される作業装置用油圧ポンプと、この作業装置用油圧ポンプの吐出油により駆動され、走行用油圧モータとの複合操作が可能な作業装置用油圧アクチュエータと、前記走行用油圧ポンプの吐出圧力と前記作業装置用油圧ポンプの吐出圧力との和が基準値以上である場合に、前記作業装置用油圧ポンプの吐出圧力が高いほど前記走行用油圧ポンプの吐出圧力が低下するように、前記走行用油圧ポンプの押し退け容積を制御する走行用ポンプ圧制御手段とを備える作業車両の油圧駆動装置において、前記走行用ポンプ圧制御手段は、操作部材と、この操作部材の操作に応じて前記基準値を設定する基準値設定手段を備えることを特徴とする。
【0011】
この「〔1〕」に記載のホイール式作業車両の油圧駆動装置においては、走行用油圧ポンプの吐出圧力と作業装置用油圧ポンプの吐出圧力との和が基準値以上である場合に、作業装置用油圧ポンプの吐出圧力が高いほど走行用油圧ポンプの吐出圧力が低下するように、走行用ポンプ圧制御手段が走行用油圧ポンプの押し退け容積を制御する。これによって、「〔1〕」に記載のホイール式作業車両の油圧駆動装置は、走行用油圧ポンプと走行用油圧モータに高圧が作用する頻度を抑えつつ、作業装置用油圧ポンプの吐出圧力が高いほど走行駆動力を制限できる。
【0012】
「〔1〕」に記載のホイール式作業車両の油圧駆動装置は、操作部材の操作に応じて基準値設定手段により基準値を設定するので、走行駆動力の上限をオペレータの意思に基づき変更できる。
【0013】
〔2〕 本発明に係るホイール式作業車両の油圧駆動装置は「〔1〕」に記載のホイール式作業車両の油圧駆動装置において、前記走行用油圧ポンプは、押し退け容積を可変にする可変機構部と、この可変機構部を駆動するサーボピストンとを備え、前記走行用ポンプ圧制御手段は、前記走行用油圧ポンプの吐出圧力と前記作業装置用油圧ポンプの吐出圧力との和が前記基準値以上である場合に作動して前記サーボピストンに作用する圧力を制御する油圧パイロット式のカットオフ弁を備え、このカットオフ弁はパイロット圧が高いほど前記走行用油圧ポンプの押し退け容積が減少するよう、前記サーボピストンに作用する圧力を制御するものであり、前記基準値設定手段は、前記カットオフ弁を作動させる最低圧力である始動圧力を前記操作部材の操作に応じて設定することにより、前記基準値を設定するものであることを特徴とする。
【0014】
この「〔2〕」に記載のホイール式作業車両の油圧駆動装置において、走行用油圧ポンプの吐出圧力と作業装置用油圧ポンプの吐出圧力との和が基準値以上である場合に、カットオフ弁は作動し、作業装置用油圧ポンプの吐出圧力が高いほど走行用油圧ポンプの押し退け容積が減少するよう、サーボピストンに作用する圧力を制御する。この結果、走行用油圧ポンプの吐出圧力は低下し、これに伴って走行駆動力が制限される。したがって、「〔2〕」に記載のホイール式作業車両の油圧駆動装置は、走行用油圧ポンプと走行用油圧モータに高圧が作用する頻度を抑えつつ、作業装置用油圧ポンプの吐出圧力に応じて走行駆動力を制限できる。
【0015】
また、「〔2〕」に記載のホイール式作業車両の油圧駆動装置においては、基準値設定手段が操作部材の操作に応じてカットオフ弁の始動圧力を設定することにより基準値が設定される。これによって、「〔2〕」に記載のホイール式作業車両の油圧駆動装置は、走行駆動力の上限をオペレータの意思に基づき変更できる。
【0016】
〔3〕 本発明に係るホイール式作業車両の油圧駆動装置は「〔2〕」に記載のホイール式作業車両の油圧駆動装置において、前記カットオフ弁は、このカットオフ弁の弁体の初期位置を規定するリターンスプリングと、パイロット圧を導入する第1〜第3パイロットポートとを備え、前記弁体は、前記第1パイロットポートから導入されたパイロット圧が作用する第1受圧部と、前記第2パイロットポートから導入されたパイロット圧が作用する第2受圧部と、前前記第3パイロットポートから導入されたパイロット圧が作用する第3受圧部とを備え、前記第1パイロットポートには前記走行用油圧ポンプの吐出圧力がパイロット圧として導入され、前記第2パイロットポートには前記作業装置用油圧ポンプの吐出圧力がパイロット圧として導入され、前記第1〜第3受圧部はいずれも、前記リターンスプリングによる前記弁体の押圧方向に抗する方向のパイロット圧が作用するよう設けられ、前記基準値設定手段は、前記第3パイロットポートと、前記第3受圧部とを含み、前記第3パイロットポートに対するパイロット圧を前記操作部材の操作に応じて設定することによって前記始動圧力を設定するものであることを特徴とする。
【0017】
この「〔3〕」に記載のホイール式作業車両の油圧駆動装置のカットオフ弁において、第3パイロットポートを通じて弁体の第3受圧部に作用する圧力の方向は、その弁体の第1,第2受圧部に作用する圧力の方向と同じく、リターンスプリングによる弁体の押圧方向に抗する方向である。したがって、第3パイロットポートに対するパイロット圧を高く制御するほど、カットオフ弁の始動圧力を、すなわち走行用油圧ポンプの吐出圧力と作業装置用油圧ポンプの吐出圧力との和の基準値を、最高値よりも低い値に設定できる。
【0018】
〔4〕 本発明に係るホイール式作業車両の油圧駆動装置は「〔3〕」に記載のホイール式作業車両の油圧駆動装置において、前記基準値設定手段は、前記第3パイロットポートに対するパイロット圧を無段階に変更可能な圧力制御弁と、この圧力制御弁を前記操作部材の操作に応じて無段階で制御することによって前記始動圧力を無段階で設定する弁制御手段とを備えることを特徴とする。
【0019】
この「〔4〕」に記載のホイール式作業車両の油圧駆動装置は、弁制御手段がカットオフ弁の始動圧力を操作部材の操作に応じて無段階で設定するので、走行駆動力の上限を微細に変更できる。
【0020】
〔5〕 本発明に係るホイール式作業車両の油圧駆動装置は「〔3〕」または「〔4〕」に記載のホイール式作業車両の油圧駆動装置において、前記基準値設定手段は、前記作業装置用油圧ポンプの吐出圧力が予め設定された作業装置用基準値よりも低い場合に、前記カットオフ弁の前記第3パイロットポートに対するパイロット圧を予め設定された最低値に制御する手段を備えることを特徴とする。作業装置用基準値は、作業装置の動作速度を走行速度よりも優先する場合の作業装置用油圧ポンプの吐出圧力の最低値として予め設定されたものである。
【0021】
この「〔5〕」に記載のホイール式作業車両の油圧駆動装置において、基準値設定手段は、作業装置用油圧ポンプの吐出圧力が予め設定された作業装置用基準値よりも低い場合に、すなわち作業装置の動作速度を走行速度よりも優先する必要がない場合に、カットオフ弁の第3パイロットポートに対するパイロット圧を、予め設定された最低値に制御することによって、カットオフ弁の始動圧力を、すなわち、走行用油圧ポンプの吐出圧力と作業装置用油圧ポンプの吐出圧力との和の基準値を、最高値に設定することができる。つまり、「〔5〕」に記載のホイール式作業車両の油圧駆動装置は、操作部材の状態が基準値を最高値よりも低下させる位置に操作された状態であっても、作業装置の動作速度を走行速度よりも優先する必要がない場合には、走行用油圧ポンプの吐出圧力と作業装置用油圧ポンプの吐出圧力との和の基準値を、その操作部材の状態に対応する基準値よりも高く設定して、走行駆動力の上限を設定することができる。
【0022】
〔6〕 本発明に係るホイール式作業車両の油圧駆動装置は「〔3〕」または「〔4〕」に記載のホイール式作業車両の油圧駆動装置において、前記基準値設定手段は、前記作業装置用油圧ポンプの吐出圧力が予め設定された作業装置用基準値よりも低い場合に、前記カットオフ弁の前記第2パイロットポートに対するパイロット圧を前記作動油タンクに排出する手段と、前記作業装置用油圧ポンプの吐出圧力が予め設定された作業装置用基準値よりも低い場合に、前記カットオフ弁の前記第3パイロットポートに対するパイロット圧を、予め設定された最低値に制御する手段とを備えることを特徴とする。作業装置用基準値は、作業装置の動作速度を走行速度よりも優先する場合の作業装置用油圧ポンプの吐出圧力の最低値として予め設定されたものである。
【0023】
この「〔6〕」に記載のホイール式作業車両の油圧駆動装置において、基準値設定手段は、作業装置用油圧ポンプの吐出圧力が予め設定された作業装置用基準値よりも低い場合に、すなわち作業装置の動作速度を走行速度よりも優先する必要がない場合に、カットオフ弁の第2パイロットポートに対するパイロット圧を作動油タンクに排出することによって、作業装置用油圧ポンプの吐出圧力をカットオフ弁の作動に関与させないようにする。さらに、基準値設定手段は、カットオフ弁の第3パイロットポートに対するパイロット圧を、予め設定された最低値に制御することによって、カットオフ弁の始動圧力を最高値に設定する。
【0024】
したがって、カットオフ弁は始動圧力を最高値に設定された状態で、第1〜第3パイロットポートのうちの第1パイロットポートのみに対するパイロット圧(走行用油圧ポンプの吐出圧力)によって作動する状態となる。これにより、走行用油圧ポンプの吐出圧力は、作業装置用油圧ポンプの吐出圧力の変化に関係なく最高値に設定される。つまり、「〔6〕」に記載のホイール式作業車両の油圧駆動装置は、作業装置の動作速度を走行速度よりも優先する必要がない場合には、操作部材の操作に関係なく、走行用油圧ポンプの吐出圧力を最高値に設定して、走行駆動力を最大値に設定することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るホイール式作業車両の油圧駆動装置は、走行用油圧ポンプと走行用油圧モータに高圧が作用する頻度を抑えつつ、すなわち、走行用油圧ポンプおよび走行用油圧モータの短命化、走行用油圧ポンプおよび走行用油圧モータにおける不具合発生を抑えつつ、作業装置用油圧ポンプの吐出圧力に応じて走行駆動力を制限でき、かつ、走行駆動力の上限をオペレータの意思に基づき変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るホイール式作業車両の一例であるホイールローダの側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る油圧駆動装置の油圧回路図である。
【図3】図2に示した油圧駆動装置において規定された作業装置用油圧ポンプの吐出圧力に対する走行用油圧ポンプの吐出圧力の上限の特性を示す図である。
【図4】図2に示した油圧駆動装置において規定された作業装置用油圧ポンプの吐出圧力に対する走行駆動力の上限の特性を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る油圧駆動装置を示す油圧回路図である。
【図6】図5に示した油圧駆動装置において規定された作業装置用油圧ポンプの吐出圧力に対する走行用油圧ポンプの吐出圧力の上限の特性を示す図である。
【図7】図5に示した油圧駆動装置において規定された作業装置用油圧ポンプの吐出圧力に対する走行駆動力の上限の特性を示す図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る油圧駆動装置を示す油圧回路図である。
【図9】図8に示した油圧駆動装置において規定された作業装置用油圧ポンプの吐出圧力に対する走行用油圧ポンプの吐出圧力の上限の特性を示す図である。
【図10】図8に示した油圧駆動装置において規定された作業装置用油圧ポンプの吐出圧力に対する走行駆動力の上限の特性を示す図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係る油圧駆動装置を示す油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の第1〜第4実施形態に係るホイール式作業車両の油圧駆動装置について説明する。
【0028】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る油圧駆動装置について、図1〜図4を用いて説明する。
【0029】
第1実施形態に係る油圧駆動装置は、図1に示すホイールローダ1に備えられる。このホイールローダ1は、運転室3、左右1対の前輪4と、左右1対の後輪5とが設けられた本体2と、この本体2の前部に装備された作業装置6とを備える。
【0030】
作業装置6は、本体2に対し上下方向に回動可能に結合したリフトアーム7と、このリフトアーム7に対し上下方向に回動可能に結合したバケット8とを備える。作業装置6を駆動する作業装置用油圧アクチュエータは、リフトアームシリンダ7aとバケットシリンダ8aである。
【0031】
リフトアームシリンダ7aの一端は本体2に回動可能に結合している。リフトアームシリンダ7aの他端はリフトアーム7に回動可能に結合している。リフトアーム7は、リフトアームシリンダ7aの伸長により本体2に対して上方向に回動し、リフトアームシリンダ7aの収縮により本体2に対して下方向に回動する。バケットシリンダ8aの一端はリフトアーム7に回動可能に結合している。バケットシリンダ8aの他端はリンク機構8bを介してバケット8に結合している。バケットシリンダ8aの伸長によりバケット8はリフトアーム7に対して上方向に回動し、バケットシリンダ8aの収縮によりリフトアーム7に対して下方向に回動する。
【0032】
図2に示すように、第1実施形態に係る油圧駆動装置は、原動機であるディーゼルエンジン10と、このディーゼルエンジン10の出力を伝達されて駆動される可変容量型の走行用油圧ポンプ11と、この走行用油圧ポンプ11と1対の走行用駆動管路12,13により閉回路接続された可変容量型の走行用油圧モータ30とを備える。
【0033】
走行用油圧ポンプ11は、作動油の吸入口または吐出口となる1対の入出口11a,11bと、押し退け容積を可変にする両傾転型の可変機構部14と、この可変機構部14の傾転角を制御するレギュレータ20とを備える。走行用油圧ポンプ11が入出口11bから作動油を吸入して入出口11aから吐出した場合にホイールローダ1は前進する。逆に、走行用油圧ポンプ11が入出口11aから作動油を吸入して入出口11bから吐出した場合にホイールローダ1は後進する。
【0034】
レギュレータ20は、傾転制御圧を受ける1対の受圧部22,23を有するサーボピストン21と、傾転制御圧を導入する1対の傾転制御圧室24,25と、サーボピストン21を走行用油圧ポンプ11の押し退け容積が減少する方向に付勢する1対のリターンスプリング26,27とを備える。サーボピストン21の1対の受圧部22,23の受圧面積および1対のリターンスプリング26,27の設定荷重は、1対の受圧部22,23に作用する圧力が同圧のときにサーボピストン21が傾転角を最小とする位置、すなわち、走行用油圧ポンプ11の押し退け容積を略0とする位置に保持されるよう設定されている。
【0035】
走行用油圧モータ30は、相反する2方向に回転可能な可逆油圧モータであり、ホイールローダ1の後輪5に動力伝達機構(図示省略)を介して接続されている。
【0036】
第1実施形態に係る油圧駆動装置はさらに、ディーゼルエンジン10により駆動されるパイロットポンプ31(定容量型油圧ポンプ)と、このパイロットポンプ31に管路32を介して接続された油圧回路である傾転制御圧発生部33と、この傾転制御圧発生部33とレギュレータ20の間に介在して設けられた走行用方向制御弁34とを備える。
【0037】
傾転制御圧発生部33は、運転室3内に設けられたアクセルペダル(図示省略)の踏込み量に比例した傾転制御圧を、パイロットポンプ31の吐出圧力を1次圧として発生させるものである。
【0038】
走行用方向制御弁34は、スプリングセンタ式の3位置弁であり、弁位置を中立位置35、第1作動位置36および第2作動位置37に切換可能なものである。中立位置35は、レギュレータ20の傾転制御圧室24(サーボピストン21の受圧部22側)と傾転制御圧室25(サーボピストン21の受圧部23側)の両方を作動油タンク38に連通させる弁位置、すなわち、走行用油圧ポンプ11の押し退け容積を0(最小値)にする弁位置である。第1作動位置36は、傾転制御圧発生部33からの傾転制御圧を一方の傾転制御圧室24に導き、他方の傾転制御圧室25を作動油タンク38に連通させる弁位置、すなわち、レギュレータ20のサーボピストン21をF方向に駆動し、走行用油圧ポンプ11にホイールローダ1を前進させるための圧油を吐出させる弁位置である。第2作動位置37は、傾転制御圧発生部33からの傾転制御圧を他方の傾転制御圧室25に導き、一方の傾転制御圧室24を作動油タンク38に連通させる弁位置、すなわち、レギュレータ20のサーボピストン21をB方向に駆動して走行用油圧ポンプ11にホイールローダ1を後進させる方向の圧油を吐出させる弁位置である。走行用方向制御弁34の弁位置は、運転室3内に設けられた前後進切換レバー(図示省略)の操作に基づき制御されるようになっている。
【0039】
第1実施形態に係る油圧駆動装置はさらに、走行用油圧ポンプ11と走行用油圧モータ30の間を循環する作動油を補充するチャージ回路40を備える。このチャージ回路40は、パイロットポンプ31と、このパイロットポンプ31の吐出圧力の上限を規定するリリーフ弁41と、パイロットポンプ31の吐出油を走行用駆動管路12に導くチェック弁42と、パイロットポンプ31の吐出油を走行用駆動管路13に導くチェック弁43とを備える。
【0040】
第1実施形態に係る油圧駆動装置はさらに、走行用油圧ポンプ11と同じディーゼルエンジン10の出力を伝達されて駆動される定容量型の作業装置用油圧ポンプ50と、この作業装置用油圧ポンプ50の吐出油により駆動されるリフトアームシリンダ7a(作業装置用油圧アクチュエータ)およびバケットシリンダ8a(作業装置用油圧アクチュエータ)と、作業装置用油圧ポンプ50からの延びた作業装置用駆動管路52に接続された作業装置用油圧制御回路51とを備える。作業装置用油圧制御回路51は、リフトアームシリンダ7aと作業装置用油圧ポンプ50との間に介在して設けられたリフトアーム用制御方向制御弁(図示省略)と、作業装置用油圧ポンプ50とバケットシリンダ8aの間に介在して設けられたバケット用方向制御弁(図示省略)を含むものである。リフトアーム用方向制御弁は、運転室3内に設けられたリフトアーム用操作装置(図示省略)の操作に応じて作動し、作業装置用油圧ポンプ50からリフトアームシリンダ7aに供給される圧油の流れの方向、すなわちリフトアーム7の動作方向を制御するものである。バケット用方向制御弁は、運転室3内に設けられたバケット用操作装置(図示省略)の操作に応じて作動し、作業装置用油圧ポンプ50からバケットシリンダ8aに供給される圧油の流れの方向、すなわちバケット8の動作方向を制御するものである。リフトアーム用操作装置およびバケット用操作装置の少なくとも一方と、アクセルペダルとが同時期に操作されると、リフトアームシリンダ7aおよびバケットシリンダ8aの少なくとも一方と、走行用油圧モータ30とが並行して動作する、いわゆる複合操作が行われることになる。
【0041】
第1実施形態に係る油圧駆動装置はさらに、走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pm(負荷圧力)と作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pw(負荷圧力)との和が基準値以上である場合に、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが高いほど走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmが低下するように、走行用油圧ポンプ11の押し退け容積を制御する走行用ポンプ圧制御手段60を備える。
【0042】
この走行用ポンプ圧制御手段60は、走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pm(負荷圧力)と作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pw(負荷圧力)との和が基準値以上である場合に作動する油圧パイロット式の2位置弁であるカットオフ弁61を備える。このカットオフ弁61は、このカットオフ弁61に供給されるパイロット圧が高いほど走行用油圧ポンプ11の押し退け容積が減少するよう、サーボピストン21に作用する圧力を制御するものである。
【0043】
カットオフ弁61は、このカットオフ弁61の弁体62の初期位置64(図2の左側の弁位置)を規定するリターンスプリング63と、弁体62に作用させるパイロット圧を導入する第1〜第3パイロットポート66〜68とを備える。弁体62は、第1パイロットポート66から導入されたパイロット圧が作用する第1受圧部69と、第2パイロットポート67から導入されたパイロット圧が作用する第2受圧部70と、第3パイロットポート68から導入されたパイロット圧が作用する第3受圧部71とを備える。第1パイロットポート66には走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmがパイロット圧として導入され、第2パイロットポート67には作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwがパイロット圧として導入される。第1〜第3受圧部69〜71はいずれも、リターンスプリング63による弁体62の押圧方向に抗する方向のパイロット圧が作用するよう設けられている。
【0044】
また、カットオフ弁61は、第1入出ポート72と第2入出ポート73を有し、弁体62が初期位置64にあるときに第1入出ポート72と第2入出ポート73の間は遮断され、弁体62が初期位置64から作動位置65の方向に変位するほど、第1入出ポート72と第2入出ポート73と間に形成される流路の断面が大きくなるものである。第1入出ポート72はレギュレータ20の一方の傾転制御圧室24と連通し、第2入出ポート73はレギュレータ20の他方の傾転制御圧室25に連通している。カットオフ弁61の弁位置が初期位置64(閉位置)の場合、レギュレータ20においてサーボピストン21の1対の受圧部22,23に作用する圧力は、走行用方向制御弁34のみによって制御されるとこになる。一方、カットオフ弁61が作動した場合、カットオフ弁61の弁体62が初期位置64(閉位置)から作動位置65(開位置)の方向に変位するほど、サーボピストン21において受圧部22に作用する圧力と受圧部23に作用する圧力との差が小さくなり、これに伴ってサーボピストン21がリターンスプリング26またはリターンスプリング27により傾転角を小さくする方向に、すなわち走行用油圧ポンプ11の押し退け容積を小さくする方向に押し動かされることになる。
【0045】
走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmは、走行用駆動管路12内の圧力と走行用駆動管路13内の圧力のうちの高圧側の圧力と等しく、高圧選択型シャトル弁77および第1パイロット管路74を介してカットオフ弁61の第1パイロットポート66に導かれるようになっている。作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwは、作業装置用駆動管路52から分岐した第2パイロット管路75を介して、カットオフ弁61の第2パイロットポート67に導かれるようになっている。
【0046】
走行用ポンプ圧制御手段60はさらに、「P」、「N」および「L」(それぞれPower,Normal,Low-Powerの略)と記された3つの位置に切換可能に設けられた操作部材であるダイヤル80と、このダイヤル80の操作に応じて、走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmと作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwとの和の基準値を設定する基準値設定手段81とを備える。
【0047】
基準値設定手段81は、カットオフ弁61の第3パイロットポート68と、カットオフ弁61の第3受圧部71を構成要素として含むものであるとともに、ダイヤル80の操作位置を操作位置検出信号(電気信号)に変換する変換装置82と、パイロットポンプ31の吐出圧力を1次圧としてパイロット圧Pcを発生させる比例電磁式の圧力制御弁83と、パイロット圧Pcをカットオフ弁61の第3パイロットポート68に伝達する第3パイロット管路76と、変換装置82からの操作位置検出信号に基づき圧力制御弁83を制御するコントローラ85とを備える。
【0048】
コントローラ85はCPU、ROM、RAMを備えるマイクロコンピュータであり、制御プログラムにより設定された手段である操作位置判定手段86と弁制御手段87とを備える。
【0049】
操作位置判定手段86は、変換装置82からの操作位置検出信号に基づき、ダイヤル80の操作位置が「P」,「N」,「L」のいずれであるかを判定するものである。
【0050】
弁制御手段87は、操作位置判定手段86により判定されたダイヤル80の操作位置に基づき圧力制御弁83を制御するものである。具体的には、弁制御手段87は、操作位置判定手段86による判定の結果が「P」の位置である場合に、第3パイロットポート71に対するパイロット圧Pcが予め設定された最低値Pcmin(=0)となるよう圧力制御弁83を制御し、操作位置判定手段86による判定の結果が「L」の位置である場合に、第3パイロットポート71に対するパイロット圧Pcが予め設定された最高値Pcmaxとなるよう圧力制御弁83を制御し、操作位置判定手段86による判定の結果が「N」の位置である場合に、第3パイロットポート71に対するパイロット圧Pcが最低値Pcminと最低値Pcmaxの間の値に予め設定された中間値Pcmidとなるよう圧力制御弁83を制御するものである。
【0051】
圧力制御弁83により生成されるパイロット圧Pcは、リターンスプリング63による弁体62の押圧方向に抗する方向でカットオフ弁61の弁体62の第3受圧部71に作用するため、パイロット圧Pcがカットオフ弁61の弁体62に作用した状態において、リターンスプリング63により弁体62に与えられる押圧力から、パイロット圧Pcにより第3受圧部71に与えられる押圧力を減算した押圧力は、カットオフ弁61を作動させる最小の押圧力であり、この最小の押圧力が弁体62に作用するよう第1,第2受圧部69,70を押圧する圧力は、カットオフ弁61を初期位置64から作動位置65の方向に作動させる最低の圧力、すなわち始動圧力Psである。つまり、パイロット圧Pcが最低値Pcminに設定された場合にカットオフ弁61の始動圧力Psは最高値Psmaxに設定されることになり、パイロット圧Pcが最高値Pcmaxに設定された場合にカットオフ弁61の始動圧力Psは最高値Psminに設定されることになり、パイロット圧Pcが中間値Pcmidに設定された場合にカットオフ弁61の始動圧力Psは最高値Psmaxと最低値Psminの間の値である中間値Psmidに設定されることになる。なお、第1実施形態に係る油圧駆動装置において、パイロット圧Pcminは0に設定されているため、カットオフ弁61の始動圧力Psの最高値Psmaxは、リターンスプリング63の設定荷重により規定されることになる。
【0052】
カットオフ弁61の弁体62の第1受圧部69に作用するパイロット圧は走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmであり、同第2受圧部70に作用するパイロット圧は作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwであるから、カットオフ弁61の始動圧力Psを設定することは、走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmと作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwとの和の基準値を設定することである。
【0053】
このように構成された第1実施形態に係る油圧駆動装置の動作について次に説明する。
【0054】
ホイールローダ1を前進させる場合、走行用方向制御弁34の弁位置は中立位置35から第1作動位置36に切り換えられる。これに伴い、傾転制御圧発生部33で発生された傾転制御圧は走行用方向制御弁34を介してレギュレータ20の一方の傾転制御圧室24に導かれ、これと並行して、他方の傾転制御圧室25内の圧力は走行用方向制御弁34を介して作動油タンク38に排出される。これにより、レギュレータ20のサーボピストン21は、一方の傾転制御圧室24内の圧力を一方の受圧部22で受けて矢印F方向に移動し、これに伴って走行用油圧ポンプ16の可変機構14は矢印F方向に駆動され、この結果、傾転角が決まる。そして、走行用油圧ポンプ16は入出口11bから作動油を吸入して入出口11aから吐出し、これに伴って走行用油圧モータ30がホイールローダ1を前進させる回転方向に駆動される。
【0055】
このように走行用油圧モータ30がホイールローダ1を前進させる回転方向に駆動されている状態において、走行用駆動管路12,13のうちの走行用駆動管路12内の圧力は、走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmと等しく、走行用駆動管路13内の圧力よりも高い。このため、走行用駆動管路12内の圧力(走行用油圧ポンプ13の吐出圧力Pm)は高圧選択側シャトル弁77および第1パイロット管路74を介してカットオフ弁61の第1パイロットポート66にパイロット圧として導かれ、カットオフ弁61の弁体62の第1受圧部69に作用する。
【0056】
ホイールローダ1を後進させる場合、走行用方向制御弁34の弁位置は中立位置35から第2作動位置37に切り換えられる。これに伴い、傾転制御圧発生部33で発生された傾転制御圧が走行用方向制御弁34を介してレギュレータ20の他方の傾転制御圧室25に導かれ、これと並行して、一方の傾転制御圧室24が走行用方向制御弁34を介して作動油タンク38に排出される。これにより、レギュレータ20のサーボピストン21は、他方の傾転制御圧室25内の圧力を他方の受圧部23で受けて矢印B方向に移動し、これに伴って走行用油圧ポンプ16の可変機構14は矢印B方向に駆動され、この結果、傾転角が決まる。そして、走行用油圧ポンプ16は入出口11aから作動油を吸入して入出口11bから吐出し、これに伴って走行用油圧モータ30はホイールローダ1を後進させる回転方向に駆動される。
【0057】
このように走行用油圧モータ30がホイールローダ1を後進させる方向に回転している状態においては、走行用駆動管路12,13のうちの走行用駆動管路13内の圧力は走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmと等しく、走行用駆動管路12内の圧力よりも高い。このため、走行用駆動管路13内の圧力(走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pm)は高圧選択側シャトル弁77および第1パイロット管路74を介してカットオフ弁61の第1パイロットポート66にパイロットとして導かれ、カットオフ弁61の第1受圧部69に作用する。
【0058】
また、作業装置6を動作させる場合、作業装置用油圧ポンプ50の吐出油は、作業装置用油圧制御回路51を介してリフトアームシリンダ7aおよびバケットシリンダ8aの少なくとも一方に供給される。作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwは、作業装置用駆動管路52から分岐した第2パイロット管路75を介してカットオフ弁61の第2パイロットポート67にパイロット圧として導かれ、カットオフ弁61の第2受圧部70に作用する。
【0059】
ダイヤル80が「L」の位置に操作された状態において、コントローラ85の操作位置判定手段86は変換装置82からの操作位置検出信号に基づきダイヤル80の操作位置を「L」と判定し、このことに基づきコントローラ85の弁制御手段87は圧力制御弁83にパイロット圧Pcmax(最高値)を生成させる。このパイロット圧Pcmaxは第3パイロット管路76および第3パイロットポート68を介してカットオフ弁61の第3受圧部71に伝達される。これにより、カットオフ弁61の始動圧力Psは、すなわち、走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmと作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwとの和の基準値は、最低値Psminに設定される。
【0060】
ダイヤル80が「N」の位置に操作された状態において、コントローラ85の操作位置判定手段86は変換装置82からの操作位置検出信号に基づきダイヤル80の操作位置を「N」と判定し、このことに基づきコントローラ85の弁制御手段87は圧力制御弁83にパイロット圧Pcmid(中間値)を生成させる。このパイロット圧Pcmidは第3パイロット管路76および第3パイロットポート68を介してカットオフ弁61の第3受圧部71に伝達される。これにより、カットオフ弁61の始動圧力Psは、すなわち、走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmと作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwとの和の基準値は、中間値Psmidに設定される。
【0061】
ダイヤル80が「P」の位置に操作された状態において、コントローラ85の操作位置判定手段86は変換装置82からの操作位置検出信号に基づきダイヤル80の操作位置を「P」と判定し、このことに基づきコントローラ85の弁制御手段87は圧力制御弁83にパイロット圧Pcmin(最低値)を生成させる。このパイロット圧Pcminは第3パイロット管路76および第3パイロットポート68を介してカットオフ弁61の第3受圧部71に伝達される。これにより、カットオフ弁61の始動圧力Psは、すなわち、走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmと作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwとの和の基準値は、最高値Psmaxに設定される。
【0062】
そして、カットオフ弁61の第1,第2受圧部69,70のそれぞれに作用するパイロット圧の和が、すなわち、走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmと作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwとの和が、前述のようにダイヤル80の操作位置に基づき設定された基準値以上である場合に、カットオフ弁61が作動する。このカットオフ弁61の弁位置は、走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmと作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwとの和が基準値よりも高くなるほど、初期位置64から作動位置65の方向に変位する。これに伴い、サーボピストン21の受圧部22に作用する圧力と、受圧部23に作用する圧力との差は小さくなり、この結果、サーボピストン21は走行用油圧ポンプ11の可変機構部14の傾転角を小さく、すなわち、走行用油圧ポンプ11の押し退け容積を小さく制御する。
【0063】
このようにして走行用油圧ポンプ11の押し退け容積が制御されることにより、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwに対する走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmの上限の特性および走行駆動力Dの上限の特性は、次のように規定される。
【0064】
ダイヤル80が「L」の位置に操作されたことに基づきカットオフ弁61の始動圧力Ps(基準値)が最低値Psminに設定された場合、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwに対する走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pm(負荷圧力)の上限の特性は、図3中の特性pl1に設定される。この特性pl1においては、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pw(負荷圧力)が0のときに、すなわちカットオフ弁61の第2パイロットポート67に対するパイロット圧が0ときに、カットオフ弁61は走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmのみによって、すなわち第1パイロットポート66に対するパイロット圧のみによって作動する状態となるため、走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pm(負荷圧力)の上限値は、特性pl1における最高値Pmmax1に設定される。また、特性pl1において、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが0よりも高い場合には、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが高くなるほど、すなわちカットオフ弁61の第2パイロットポート67に対するパイロット圧が高くなるほど、走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmの上限値は低く設定される。
【0065】
このように作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwに対する走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmの上限の特性が特性pl1に設定されることによって、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwに対する走行駆動力Dの上限の特性は図4中の特性dl1に設定される。この特性dl1においては、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pw(負荷圧力)が0のときに走行駆動力Dの上限値は特性dl1における最大値Dmax1に設定され、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが0よりも高い状態においては、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが高くなるほど走行駆動力Dの上限値は低く設定される。
【0066】
ダイヤル80が「N」の位置に操作されたことに基づきカットオフ弁61の始動圧力Ps(基準値)が中間値Psmidに設定された場合、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwに対する走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pm(負荷圧力)の上限の特性は、図3中の上限の特性pn1のように設定される。この上限の特性pn1においては、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pw(負荷圧力)が0のときに、すなわちカットオフ弁61の第2パイロットポート67に対するパイロット圧が0ときに、カットオフ弁61は走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmのみによって、すなわち第1パイロットポート66に対するパイロット圧のみによって作動する状態となるため、走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pm(負荷圧力)の上限値は、特性pn1における最高値Pmmax2に設定される。この最高値Pmmax2は、ダイヤル80が「L」の位置に操作された場合の特性pl1における最高値Pmmax1よりも高い。また、特性pn1において、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが0よりも高い場合には、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが高くなるほど、すなわちカットオフ弁61の第2パイロットポート67に対するパイロット圧が高くなるほど、走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmの上限値は低く設定される。
【0067】
このように作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwに対する走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmの上限の特性が特性pn1に設定されることによって、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwに対する走行駆動力Dの上限の特性は図4中の特性dn1に設定される。この特性dn1においては、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pw(負荷圧力)が0のときに走行駆動力Dの上限値は、特性dn1における最大値Dmax2に設定される。この最大値Dmax2は、ダイヤル80が「L」の位置に操作された場合の特性dl1における最大値Dmax1よりも高い。また、特性dn1において、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが0よりも高い場合には、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが高くなるほど走行駆動力Dの上限値は低く設定される。
【0068】
ダイヤル80が「P」の位置に操作されたことに基づきカットオフ弁61の始動圧力Ps(基準値)が最低値Psmaxに設定された場合、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwに対する走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pm(負荷圧力)の上限の特性は、図3中の特性pp1のように設定される。この特性pp1においては、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pw(負荷圧力)が0のときに、すなわちカットオフ弁61の第2パイロットポート67に対するパイロット圧が0ときに、カットオフ弁61は走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmのみによって、すなわち第1パイロットポート66に対するパイロット圧のみによって作動する状態となるため、走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pm(負荷圧力)の上限値は、特性pp1における最高値Pmmax3に設定される。この最高値Pmmax3は、ダイヤル80が「N」の位置に操作された場合の最高値Pmmax2よりも高く、第1実施形態に係る油圧駆動装置における走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmの最高値である。また、特性pp1において、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが0よりも高い場合には、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが高くなるほど、すなわちカットオフ弁61の第2パイロットポート67に対するパイロット圧が高くなるほど、走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmの上限値は低く設定される。また、特性pp1において、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが最高値Pwmaxのとき、走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmの上限値は、ダイヤル80が「N」の位置に操作された場合の最高値Pmmax2よりも高い値Pmmax3に設定される。
【0069】
このように作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwに対する走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmの上限の特性が特性pp1に設定されることによって、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwに対する走行駆動力Dの上限の特性は図4中の特性dp1に設定される。この特性dp1においては、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pw(負荷圧力)が0のときに走行駆動力Dの上限値は、特性dp1における最大値Dmax3に設定される。この最大値Dmax3は、ダイヤル80が「N」の位置に操作された場合の最大値Dmax2よりも高く、第1実施形態に係る油圧駆動装置における走行駆動力の最大値である。また、特性dp1において、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが0よりも高い場合には、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが高くなるほど走行駆動力Dの上限値は低く設定される。また、特性dp1において、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが最高値Pwmaxのとき、走行駆動力Dの上限値は、ダイヤル80が「N」の位置に操作された場合の特性dn1における最大値Dmax2よりも高い値Dmax3に設定される。
【0070】
つまり、第1実施形態に係る油圧駆動装置においては、ダイヤル80の操作に応じて、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwに対する走行駆動力Dの上限の特性が切り換えられる。
【0071】
なお、ダイヤル80が「P」の位置に操作される場合とは、例えばホイールローダ1に登坂させる場合のように、走行駆動力と走行速度の両方を十分に確保する必要がある場合である。また、ダイヤル80が「N」の位置に操作される場合とは、例えば、バケット8に土砂等の荷が積載された状態でリフトアーム7を上昇させながら走行するために作業装置6の駆動力を確保できる範囲に走行駆動力を抑える必要がある場合、および、バケットを地山に貫入しながら上向き動作させる際に後輪5がスリップしないように走行駆動力を抑える必要がある場合である。また、ダイヤル80が「L」の位置に操作される場合とは、砂地、凍結地、積雪地などスリップしやすい場所をホイールローダ1に走行させる場合のように、ホイールローダ1の走行駆動力をスリップしないように抑える必要がある場合である。
【0072】
第1実施形態に係る油圧駆動装置によれば次の効果を得られる。
【0073】
第1実施形態に係る油圧駆動装置においては、走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmと作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwとの和が基準値以上である場合(Pm+Pw≧PsminまたはPm+Pw≧PsmidまたはPm+Pw≧Psmax)に、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが高いほど走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmが低下するように、走行用ポンプ圧制御手段60が走行用油圧ポンプ11の押し退け容積を制御する。これによって、第1実施形態に係る油圧駆動装置は、走行用油圧ポンプ11と走行用油圧モータ30に高圧が作用する頻度を抑えつつ、すなわち、走行用油圧ポンプ11および走行用油圧モータ30の短命化、走行用油圧ポンプ11および走行用油圧モータ30における不具合発生を抑えつつ、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwに応じて走行駆動力Dを制限できる。
【0074】
第1実施形態に係る油圧駆動装置は、ダイヤル80の操作に応じてカットオフ弁61の始動圧力Psを最低値Psmin、中間値Psmidまたは最高値Psmaxに設定することで、走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmと作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwとの和の基準値を設定する。これにより、オペレータの意思に基づき走行駆動力Dの上限を変更することができる。
【0075】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る油圧駆動装置について、図5〜図7を用いて説明する。なお、図5に示すもののうち、図2に示したものと同等のものには、図2に付した符号と同じ符号を付してある。
【0076】
図5に示すように、第2実施形態に係る油圧駆動装置は、第1実施形態に係る油圧駆動装置における基準値設定手段81とは異なる基準値設定手段100を備える点で、第1実施形態に係る油圧駆動装置とは構成が異なり、その点以外の構成は第1実施形態に係る油圧駆動装置と同じである。
【0077】
第2実施形態に係る油圧駆動装置において、基準値設定手段100は、第3パイロット管路76上で圧力制御弁83とカットオフ弁61の第3パイロットポート68の間に介在して設けられた油圧パイロット式の切換弁101と、第2パイロット管路75から分岐して設けられ、切換弁101に作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwをパイロット圧として導く分岐パイロット管路104とを備える。切換弁101は、スプリングリターン式の2位置弁である。切換弁101の弁位置は、第3パイロットポート68を作動油タンク38に連通させる初期位置102と、圧力制御弁83の出口と第3パイロットポート68を連通させる作動位置103とに切換可能であり、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが予め設定された作業装置用基準値Pwc以上となった場合に、初期位置102から作動位置103に切り換わるよう設定されている。つまり、切換弁101は、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが予め設定された作業装置用基準値Pwcよりも低い場合に、カットオフ弁61の第3パイロットポート68に対するパイロット圧Pcを予め設定された最低値Pcmin(=0)に制御する手段を構成している。作業装置用基準値Pwcは、作業装置6の動作速度を走行速度よりも優先する場合の、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwの最低値として予め設定されたものである。
【0078】
このように構成された第2実施形態に係る油圧駆動装置の動作について次に説明する。
【0079】
作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが予め設定された作業装置用基準値Pwcよりも低い場合には、切換弁101の弁位置は初期位置102となるため、カットオフ弁61の第3パイロットポート68に対するパイロット圧は切換弁101を介して作動油タンク38に排出される。これにより、第3パイロットポート68に対するパイロット圧Pcは、ダイヤル80の操作位置に基づき圧力制御弁83により生成されたパイロット圧Pcが最低値Pcmin、中間値Pcmid、最高値Pcmaxのいずれであるかに関係なく、最低値Pcmin(=0)に制御される。この結果、カットオフ弁61の始動圧力Psは、すなわち、走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmと作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwとの和の基準値は、最高値Psmaxに設定される。
【0080】
つまり、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが予め設定された作業装置用基準値Pwcよりも低い場合には、すなわち、作業装置6の動作速度を走行速度よりも優先する必要がない場合には、ダイヤル80の操作に関係なく、走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmと作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwとの和の基準値は、最高値に設定される。これによって、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwに対する走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmの上限の特性は、図6中の特性pp2(図3中の特性pp1と同じ)に設定され、これに伴って走行駆動力Dの上限の特性は、図7中の特性dp2(図4中の特性dp1と同じ)に設定される。
【0081】
一方、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが予め設定された作業装置用基準値Pwc以上の場合には、切換弁101の弁位置は作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwによって初期位置102から作動位置103に切り換えられるため、圧力制御弁83の出口と第3パイロットポート68は切換弁101を介して連通する。これにより、第3パイロットポート68に対するパイロット圧Pcは、ダイヤル80の操作位置に基づき圧力制御弁83により設定された最低値Pcmin、中間値Pcmidまたは最高値Pcmaxとなり、これも伴って、カットオフ弁61の始動圧力Pcは、すなわち、走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmと作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwとの和の基準値は、最高値Psmax、中間値Psmidまたは最低値Psminに設定される。
【0082】
つまり、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが予め設定された作業装置用基準値Pwc以上の場合には、すなわち、作業装置6の動作速度を走行速度よりも優先する必要がある場合には、ダイヤル80の操作位置(「P」,「N」または「L」の位置)に応じて走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmの上限の特性は、図6中の特性pp2(図3中の特性pp1と同じ)、特性pn2(図3中の特性pn1と同じ)または特性pl2(図3中の特性pl1と同じ)に設定され、これに伴って、走行駆動力Dの上限の特性は図7中の特性dp2(図4中の特性dp1と同じ)、特性dn2(図4中の特性dn1と同じ)または特性dl2(図4中の特性dl1と同じ)に設定される。
【0083】
第2実施形態に係る油圧駆動装置によれば次の効果を得られる。
【0084】
第2実施形態に係る油圧駆動装置においては、第1実施形態に係る油圧駆動装置と同じく、走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmと作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwとの和が基準値以上である場合(Pm+Pw≧PsminまたはPm+Pw≧PsmidまたはPm+Pw≧Psmax)に、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが高いほど走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmが低下するように、走行用ポンプ圧制御手段60が走行用油圧ポンプ11の押し退け容積を制御する。これによって、第2実施形態に係る油圧駆動装置は、走行用油圧ポンプ11と走行用油圧モータ30に高圧が作用する頻度を抑えつつ、すなわち、走行用油圧ポンプ11および走行用油圧モータ30の短命化、走行用油圧ポンプ11および走行用油圧モータ30における不具合発生を抑えつつ、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pmに応じて走行駆動力Dを制限できる。
【0085】
第2実施形態に係る油圧駆動装置も、第1実施形態に係る油圧駆動装置と同じく、ダイヤル80の操作に応じてカットオフ弁61の始動圧力Psを最低値Psmin、中間値Psmidまたは最高値Psmaxに設定することで、走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmと作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwとの和の基準値を設定する。これにより、オペレータの意思に基づき走行駆動力Dの上限を変更できる。
【0086】
特に第2実施形態に係る油圧駆動装置は、第1実施形態に係る油圧駆動装置と異なり、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが作業装置用基準値Pwsよりも低い場合に、すなわち、作業装置6の動作速度を走行速度よりも優先する必要がない場合、例えば作業装置6を停止させた状態で登坂する場合、および、作業装置6を微動作させながら登坂する場合に、切換弁101によりカットオフ弁61の始動圧力Psを、すなわち、走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmと作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwとの和の基準値を、最高値Psmaxに設定することができる。つまり、第2実施形態に係る油圧駆動装置は、ダイヤル80の状態が基準値を最高値よりも低下させる位置(「N」の位置または「L」の位置)に操作された状態であっても、作業装置6の動作速度を走行速度よりも優先する必要がない場合には、走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmと作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwとの和の基準値を、ダイヤル80の操作位置に対応する基準値よりも高く設定して、走行駆動力Dの上限を設定することができる。
【0087】
[第3実施形態]
第3実施形態に係る油圧駆動装置について、図8〜図12を用いて説明する。なお、図8に示すもののうち、図2に示したものと同等のものには、図2に付した符号と同じ符号を付してある。
【0088】
図8に示すように、第3実施形態に係る油圧駆動装置は、第1実施形態に係る油圧駆動装置における基準値設定手段81とは異なる基準値設定手段200を備える点で、第1実施形態に係る油圧駆動装置とは構成が異なり、その点以外の構成は第1実施形態に係る油圧駆動装置と同じである。
【0089】
第3実施形態に係る油圧駆動装置において、基準値設定手段200は、第2パイロット管路75上に設けられ、この第2パイロット管路75内の圧力、すなわち作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwをパイロット圧として作動する切換弁201を備える。この切換弁201は、スプリングリターン式の2位置弁である。切換弁201の弁位置は、カットオフ弁61の第2パイロットポート67を作動油タンク38に連通させる初期位置202と、第2パイロット管路75内の圧力(作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pw)を第2パイロットポート67に導く作動位置203とに切換可能であり、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが予め設定された作業装置用基準値Pwc以上となった場合に、初期位置202から作動位置203に切り換わるよう設定されている。つまり、切換弁201は、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが予め設定された作業装置用基準値Pwcよりも低い場合に、カットオフ弁61の第2パイロットポート67に対するパイロット圧を作動油タンク38に排出する、すなわち第2パイロットポート67に対するパイロット圧を0に設定する手段である。なお、作業装置用基準値Pwcは、前述のように作業装置6の動作速度を走行速度よりも優先する場合の作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwの最低値として予め設定されたものである。
【0090】
また、基準値設定手段200は、第1実施形態に係る油圧駆動装置におけるコントローラ85の替わりにコントローラ204を備えるとともに、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwを吐出圧力検出信号(電気信号)に変換してコントローラ204に出力する作業装置用吐出圧力センサ207とを備える。
【0091】
コントローラ204は、吐出圧力判定手段205と、第1実施形態における弁制御手段87とは異なる弁制御手段206とを備える。
【0092】
吐出圧力判定手段205は、作業装置用吐出圧力センサ207からの吐出圧力検出信号に示される作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが作業装置用基準値Pwcよりも低いか否かを判定するものである。
【0093】
弁制御手段206は、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが作業装置用基準値Pwcよりも低いと吐出圧力判定手段205により判定された場合には、圧力制御弁83にパイロット圧Pcを最低値Pcmin(=0)に設定させるものであるとともに、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが作業装置用基準値Pwc以上と吐出圧力判定手段205により判定された場合には、第1実施形態における弁制御手段87と同じく操作位置判定手段86によるダイヤル80の操作位置の判定の結果に基づき圧力制御弁83を制御するものである。
【0094】
作業装置用吐出圧力センサ207、吐出圧力判定手段205および弁制御手段206は、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが予め設定された作業装置用基準値Pwcよりも低い場合に、カットオフ弁61の第3パイロットポート68に対するパイロット圧を、予め設定された最低値Pcmin(=0)に制御する手段を構成している。
【0095】
このように構成された第3実施形態に係る油圧駆動装置の動作について次に説明する。
【0096】
作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが予め設定された作業装置用基準値Pwcよりも低い場合、切換弁201の弁位置は初期位置202となるため、カットオフ弁61の第2パイロットポート67に対するパイロット圧は切換弁201を介して作動油タンク38に排出され、0に設定される。これにより、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwはカットオフ弁61の作動に関与しなくなる。
【0097】
これと並行して、コントローラ204においては、作業装置用吐出圧力センサ207からの吐出圧力検出信号に示される作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwを、吐出圧力判定手段205が作業装置用基準値Pwcよりも低いと判定し、このことに基づき、弁制御手段206が圧力制御弁83にパイロット圧Pcmin(最低値)を生成させ、これにより、カットオフ弁61の始動圧力Psが最高値Psmaxに設定される。
【0098】
したがって、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが予め設定された作業装置用基準値Pwcよりも低い場合には、カットオフ弁61は始動圧力Psを最高値Psmaxに設定された状態で、第1〜第3パイロットポート66〜68のうちの第1パイロットポート66のみに対するパイロット圧(走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pm)によって作動する状態になる。これにより、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwに対する走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmの上限の特性は、図9中の特性pp3aに示すように、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwの変化に関係なく走行用油圧ポンプの吐出圧力Pmが、第3実施形態に係る油圧駆動装置における最高値Pmmax3に設定されものとなる。これに伴って、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwに対する走行駆動力Dの上限の特性は、図10中の特性dp3aに示すように、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwの変化に関係なく走行駆動力Dが、第3実施形態に係る油圧駆動装置における最大値Dmax3に設定されるものとなる。
【0099】
つまり、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが予め設定された作業装置用基準値Pwcよりも低い場合には、すなわち、作業装置6の動作速度を走行速度よりも優先する必要がない場合には、ダイヤル80の操作に関係なく、走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmは第3実施形態に係る油圧駆動装置における最高値Pmmax3に設定され、これに伴って走行駆動力Dは第3実施形態に係る油圧駆動装置における最大値Dmax3に設定される。
【0100】
一方、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが予め設定された作業装置用基準値Pwc以上の場合、切換弁201の弁位置は作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwによって初期位置202から作動位置203に切り換えられるため、カットオフ弁61の第2パイロットポート67に作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwがパイロット圧として導かれる状態、すなわち、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが圧力制御弁83の作動に関与する状態となる。
【0101】
これと並行して、コントローラ204においては、作業装置用吐出圧力センサ207からの吐出圧力検出信号に示される作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwを、吐出圧力判定手段205が作業装置用基準値Pwc以上であると、このことに基づき、弁制御手段206が操作位置判定手段86によるダイヤル80の操作位置の判定の結果に基づいて圧力制御弁83にパイロット圧Pc(最低値Pcmin、中間値Pcmidまたは最高値Pcmax)を生成させる状態となる。
【0102】
つまり、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが予め設定された作業装置用基準値Pwc以上の場合には、すなわち、作業装置6の動作速度を走行速度よりも優先する必要がある場合には、ダイヤル80の操作位置(「P」,「N」または「L」の位置)に応じて走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmの上限の特性は図9中の特性pp3b(図3中の特性pp1と同じ)、特性pn3(図3中の特性pn1と同じ)または特性pl3(図3中の特性pl1と同じ)に設定され、これに伴って、走行駆動力Dの上限の特性は図10中の特性dp3b(図4中の特性dp1と同じ)、特性dn3(図4中の特性dn1と同じ)または特性dl3(図4中の特性dl1と同じ)に設定される。
【0103】
第3実施形態に係る油圧駆動装置によれば次の効果を得られる。
【0104】
第3実施形態に係る油圧駆動装置においては、第1実施形態に係る油圧駆動装置と同じく、走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmと作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwとの和が基準値以上である場合(Pm+Pw≧PsminまたはPm+Pw≧PsmidまたはPm+Pw≧Psmax)に、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが高いほど走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmが低下するように、走行用ポンプ圧制御手段60が走行用油圧ポンプ11の押し退け容積を制御する。これによって、第3実施形態に係る油圧駆動装置は、走行用油圧ポンプ11と走行用油圧モータ30に高圧が作用する頻度を増加させずに走行駆動力Dを制限できる。つまり、走行用油圧ポンプ11および走行用油圧モータ30の寿命が低下する事態の発生、走行用油圧ポンプ11および走行用油圧モータ30の不具合の発生のリスクが上昇する事態の発生を防止できる。
【0105】
第3実施形態に係る油圧駆動装置も、第1実施形態に係る油圧駆動装置と同じく、基準値設定手段81によりダイヤル80の操作に応じてカットオフ弁61の始動圧力Psを最低値Psminまたは中間値Psmidまたは最高値Psmaxに設定することにより、走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmと作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwとの和の基準値を設定するので、走行駆動力Dの上限を変更できる。
【0106】
特に第3実施形態に係る油圧駆動装置は、第1実施形態に係る油圧駆動装置と異なり、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが作業装置用基準値Pwsよりも低い場合に、すなわち、作業装置6の動作速度を走行速度よりも優先する必要がない場合、例えば作業装置6を停止させた状態で登坂する場合、および、作業装置6を微動作させながら登坂する場合に、切換弁201、作業装置用吐出圧力センサ207、吐出圧力判定手段205および弁制御手段206によって、ダイヤル80の操作位置に関係なく、走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmを、第3実施形態に係る油圧駆動装置における最高値(Pmmax3)に設定して、走行駆動力Dを第3実施形態に係る油圧駆動装置における最大値(Dmax3)に設定することができる。
【0107】
なお、前述の第3実施形態に係る油圧駆動装置は、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力が予め設定された作業装置用基準値Pwcよりも低い場合に、カットオフ弁61の第3パイロットポート68に対するパイロット圧を、予め設定された最低値Pcmin(=0)に制御する手段として、作業装置用吐出圧力センサ207、吐出圧力判定手段205および弁制御手段206を備えるものであったが、その手段の替わりに第2実施形態における切換弁101を備えてもよい。
【0108】
前述の第1〜第3実施形態に係る油圧駆動装置において、圧力制御弁83は比例電磁弁であり、第3パイロットポート68に対するパイロット圧を無段階に変更可能なものであるから、ダイヤルが無段階に切換操作可能なものであり、基準値設定手段のコントローラがダイヤルの操作位置に応じて、パイロット圧Pcを無段階に切換可能な弁制御手段を備えてもよい。また、ダイヤルが4段階以上の複数段階に切換操作可能なものであり、基準値設定手段のコントローラがダイヤルの操作位置に応じて、パイロット圧Pcを4段階以上の複数段階に切換可能な弁制御手段を備えてもよい。これらにより、走行駆動力の上限を微細に変更できる。
【0109】
[第4実施形態]
第4実施形態に係る油圧駆動装置について、図13を用いて説明する。なお、図13に示すもののうち、図2に示したものと同等のものには、図2に付した符号と同じ符号を付してある。
【0110】
図13に示すように、第4実施形態に係る油圧駆動装置は、第1実施形態に係る油圧駆動装置における走行用ポンプ圧制御手段60とは異なる走行用ポンプ圧制御手段300を備える点で、第1実施形態に係る油圧駆動装置とは構成が異なり、その点以外の構成は第1実施形態に係る油圧駆動装置と同じである。
【0111】
走行用ポンプ圧制御手段300は、第1実施形態におけるダイヤル80および基準値設定手段81の替わりに操作レバー302および基準値設定手段301を備える。基準値設定手段301は、操作レバー302に機械的に接続されたパイロット圧切換弁303を備えるものであり、第1実施形態における圧力制御弁83およびコントローラ85を備えない。
【0112】
パイロット圧切換弁303の弁位置は、カットオフ弁61の第3パイロットポート68内の圧力を作動油タンク38に排出する初期位置304と、パイロットポンプ31の吐出圧力を第3パイロットポート68に導く作動位置305とに切換可能である。
【0113】
操作レバー302が「P」の位置に操作されると、パイロット圧切換弁303の弁位置は初期位置304となる。これにより、第3パイロットポート68に対するパイロット圧Pcは作動油タンク38に排出され、0に設定される。このため、カットオフ弁61の始動圧力Psは、すなわち、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwと走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmとの和の基準値は、最高値Psmaxに設定される。この結果、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwに対する走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmの上限Pmの上限の特性は図3に示す特性pp1に設定され、これに伴い、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwに対する走行駆動力の上限Dの上限の特性は図4に示す特性dp1に設定される。
【0114】
一方、操作レバー302が「L」の位置に操作されると、パイロット圧切換弁303の弁位置が作動位置305となる。この状態においては、第3パイロットポート68に対するパイロット圧Pcがパイロットポンプ31の吐出圧力となり、これによって、カットオフ弁61の始動圧力Psは、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwと走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmとの和の基準値は、最低値Psminに設定される。この結果、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwに対する走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmの上限Pmの上限の特性は図3に示す特性pl1に設定され、これに伴い、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwに対する走行駆動力の上限Dの上限の特性は図4に示す特性dl1に設定される。
【0115】
つまり、第4実施形態に係る油圧駆動装置においては、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwに対する走行駆動力Dの上限の特性を、特性pp1および特性pl1のいずれに設定するかを、操作レバー302を「P」の位置および「L」の位置にいずれに操作するかによって切り換えられるのである。
【0116】
第4実施形態に係る油圧駆動装置によれば次の効果を得られる。
【0117】
第4実施形態に係る油圧駆動装置においては、走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmと作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwとの和が基準値以上である場合(Pm+Pw≧PsminまたはPm+Pw≧Psmax)に、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwが高いほど走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmが低下するように、走行用ポンプ圧制御手段60が走行用油圧ポンプ11の押し退け容積を制御する。これによって、第4実施形態に係る油圧駆動装置は、走行用油圧ポンプ11と走行用油圧モータ30に高圧が作用する頻度を抑えつつ、すなわち、走行用油圧ポンプ11および走行用油圧モータ30の短命化、走行用油圧ポンプ11および走行用油圧モータ30における不具合発生を抑えつつ、作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwに応じて走行駆動力Dを制限できる。
【0118】
第4実施形態に係る油圧駆動装置は、操作レバー302の操作に応じてカットオフ弁61の始動圧力Psを最低値Psminまたは最高値Psmaxに設定することで、走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmと作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwとの和の基準値を設定するので、オペレータの意思に基づき走行駆動力Dの上限を変更できる。
【0119】
第4実施形態に係る油圧駆動装置は、パイロット圧切換弁303の弁位置の切換えを機械的に行うものであるので、すなわち、第1実施形態に係る油圧駆動装置のようにコントローラを用いた電子制御により走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmと作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwとの和の基準値を設定するものではないので、電気系統の不具合で始動圧力の変更を行えなくなる事態が起こり得ない。
【0120】
なお、前述の第4実施形態に係る油圧駆動装置において、基準値設定手段301のパイロット圧切換弁303は、カットオフ弁61の第3パイロットポート68に対するパイロット圧を、作動油タンク38に排出する初期位置304と、パイロットポンプ31の吐出圧力に設定する作動位置305とに切換可能な2位置弁であり、これによってカットオフ弁61の始動圧力Psを、走行用油圧ポンプ11の吐出圧力Pmと作業装置用油圧ポンプ50の吐出圧力Pwとの和の基準値を2段階に切換可能なものであるが、カットオフ弁61の始動圧力Psを3段階以上に切換可能な弁であってもよい。
【0121】
前述の第4実施形態に係る油圧駆動装置に、第2実施形態に係る油圧駆動装置における切換弁101、すなわち第3パイロットポート68に対するパイロット圧Pcを最低値(=0)に制御する手段が付加されていてもよい。
【0122】
前述の第1〜第4実施形態に係る油圧駆動装置は、カットオフ弁61の弁体62の第3受圧部71が、第1,第2受圧部69,70に作用するパイロット圧の方向と同じ方向のパイロット圧が作用するよう設けられ、第3受圧部71に作用させるパイロット圧Pcが高いほどカットオフ弁61の始動圧力Ps(基準値)が低くなるものであったが、本発明それに限定されない。本発明は、第3受圧部が第1,第2受圧部に作用するパイロット圧の方向とは反対方向のパイロット圧が作用するように設けられ、第3受圧部に作用させるパイロット圧が高いほどカットオフ弁の始動圧力(基準値)が低くなるものであってもよい。
【符号の説明】
【0123】
1ホイールローダ
6 作業装置
10 ディーゼルエンジン
11 走行用油圧ポンプ
14 可変機構部
20 レギュレータ
21 サーボピストン
30 走行用油圧モータ
50 作業装置用油圧ポンプ
60 走行用ポンプ圧制御手段
61 カットオフ弁
62 弁体
63 リターンスプリング
64 初期位置
65 作動位置
66 第1パイロットポート
67 第2パイロットポート
68 第3パイロットポート
69 第1受圧部
70 第2受圧部
71 第3受圧部
80 ダイヤル
81 基準値設定手段
83 圧力制御弁
86 操作位置判定手段
87 弁制御手段
100 基準値設定手段
101 切換弁
104 分岐パイロット管路
200 基準値設定手段
201 切換弁
205 吐出圧力判定手段
206 弁制御手段
207 作業装置用吐出圧力センサ
300 走行用ポンプ圧制御手段
301 基準値設定手段
302 操作レバー
303 パイロット圧切換弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機と、この原動機の出力を伝達されて駆動される可変容量型の走行用油圧ポンプと、この走行用油圧ポンプと閉回路接続された走行用油圧モータと、前記原動機の出力を伝達されて駆動される作業装置用油圧ポンプと、この作業装置用油圧ポンプの吐出油により駆動され、走行用油圧モータとの複合操作が可能な作業装置用油圧アクチュエータと、前記走行用油圧ポンプの吐出圧力と前記作業装置用油圧ポンプの吐出圧力との和が基準値以上である場合に、前記作業装置用油圧ポンプの吐出圧力が高いほど前記走行用油圧ポンプの吐出圧力が低下するように、前記走行用油圧ポンプの押し退け容積を制御する走行用ポンプ圧制御手段とを備える作業車両の油圧駆動装置において、
前記走行用ポンプ圧制御手段は、操作部材と、この操作部材の操作に応じて前記基準値を設定する基準値設定手段を備える
ことを特徴とするホイール式作業車両の油圧駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載のホイール式作業車両の油圧駆動装置において、
前記走行用油圧ポンプは、押し退け容積を可変にする可変機構部と、この可変機構部を駆動するサーボピストンとを備え、
前記走行用ポンプ圧制御手段は、前記走行用油圧ポンプの吐出圧力と前記作業装置用油圧ポンプの吐出圧力との和が前記基準値以上である場合に作動して前記サーボピストンに作用する圧力を制御する油圧パイロット式のカットオフ弁を備え、このカットオフ弁はパイロット圧が高いほど前記走行用油圧ポンプの押し退け容積が減少するよう、前記サーボピストンに作用する圧力を制御するものであり、
前記基準値設定手段は、前記カットオフ弁を作動させる最低圧力である始動圧力を前記操作部材の操作に応じて設定することにより、前記基準値を設定するものである
ことを特徴とする作業機械の油圧駆動装置。
【請求項3】
請求項2に記載のホイール式作業車両の油圧駆動装置において、
前記カットオフ弁は、このカットオフ弁の弁体の初期位置を規定するリターンスプリングと、パイロット圧を導入する第1〜第3パイロットポートとを備え、
前記弁体は、前記第1パイロットポートから導入されたパイロット圧が作用する第1受圧部と、前記第2パイロットポートから導入されたパイロット圧が作用する第2受圧部と、前前記第3パイロットポートから導入されたパイロット圧が作用する第3受圧部とを備え、
前記第1パイロットポートには前記走行用油圧ポンプの吐出圧力がパイロット圧として導入され、前記第2パイロットポートには前記作業装置用油圧ポンプの吐出圧力がパイロット圧として導入され、
前記第1〜第3受圧部はいずれも、前記リターンスプリングによる前記弁体の押圧方向に抗する方向のパイロット圧が作用するよう設けられ、
前記基準値設定手段は、前記第3パイロットポートと、前記第3受圧部とを含み、前記第3パイロットポートに対するパイロット圧を前記操作部材の操作に応じて設定することによって前記始動圧力を設定するものであることを特徴とする。
ことを特徴とするホイール式作業車両の油圧駆動装置。
【請求項4】
請求項3に記載のホイール式作業車両の油圧駆動装置において、
前記基準値設定手段は、前記第3パイロットポートに対するパイロット圧を無段階に変更可能な圧力制御弁と、この圧力制御弁を前記操作部材の操作に応じて無段階で制御することによって前記始動圧力を無段階で設定する弁制御手段とを備える
ことを特徴とするホイール式作業車両の油圧駆動装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載のホイール式作業車両の油圧駆動装置において、
前記基準値設定手段は、前記作業装置用油圧ポンプの吐出圧力が予め設定された作業装置用基準値よりも低い場合に、前記カットオフ弁の前記第3パイロットポートに対するパイロット圧を予め設定された最低値に制御する手段を備える
ことを特徴とするホイール式作業車両の油圧駆動装置。
【請求項6】
請求項3または4に記載のホイール式作業車両の油圧駆動装置において、
前記基準値設定手段は、
前記作業装置用油圧ポンプの吐出圧力が予め設定された作業装置用基準値よりも低い場合に、前記カットオフ弁の前記第2パイロットポートに対するパイロット圧を前記作動油タンクに排出する手段と、
前記作業装置用油圧ポンプの吐出圧力が予め設定された作業装置用基準値よりも低い場合に、前記カットオフ弁の前記第3パイロットポートに対するパイロット圧を、予め設定された最低値に制御する手段と
を備える
ことを特徴とするホイール式作業車両の油圧駆動装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図2】
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【図5】
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【図8】
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【図11】
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