説明

ホイール等洗浄ブラシ及び洗車機

【課題】ブラシ片の毛腰を強く設定しても、被洗浄面である車体のホイール等に傷を付けることが無く、高い洗浄性が発揮されるホイール等洗浄ブラシ及びそのホイール等洗浄ブラシを搭載した洗車機を提供する。
【解決手段】 自動車のホイールあるいはタイヤの被洗浄面に付着した汚れ等を洗浄する為のホイール等洗浄ブラシにおいて、前記ホイール等洗浄ブラシは、台座及びブラシ部を有し、前記ブラシ部は、複数のブラシ片にて前記台座の上部に植毛されてあり、前記ブラシ片の少なくとも1つは、異なる硬度を有して長手方向に分子配向された少なくとも2種以上の多層被覆線材にて形成されてあると共に、前記線材の外周面の少なくとも一部が被覆されてあるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、自動車あるいは車両の外面、ホイール等の被洗浄面に付着した汚れ等を洗浄する為の洗車機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のホイール等洗浄ブラシ、及びそのホイール等洗浄ブラシは、さまざまな改良がなされ、例えば、自動車用車輪洗浄装置において、前記車輪洗浄ブラシは、前記ブラシ支持軸に支持されたブラシ台と、このブラシ台に取り付けられていて長いブラシ群とそれよりも短いブラシ群とがブラシ台の回転方向に交互に取り付けられたブラシ毛とから構成された車輪洗浄ブラシが、特許第3696585号に開示されてある。
【0003】
【特許文献1】特許第3696585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のホイ−ル等洗浄ブラシは、例えば、上記の如くの特徴を有する技術が開示されてあるが、特許第3696585号公報に開示されてある技術においては、長いブラシ群と短いブラシ群が回転方向に交互にブラシ台に取り付けられていた為、前記ホイールキャップに長いブラシ群と短いブラシ群が回転方向に交互に接触を繰り返すと、前記ホィールキャップに掛かる付勢が一定ではなくなり、ブラシがノッキングしホイールキャップを躍らせた後に、ホイールからホイールキャップが脱落するという課題を有していた。また、ブラシの製造工程において、ブラシの毛丈を揃える為、ブラシの先端を切り揃える工程を有するが、前記の如く、自動車用車輪洗浄装置において、前記車輪洗浄ブラシは、前記ブラシ支持軸に支持されたブラシ台と、このブラシ台に取り付けられていて長いブラシ群とそれよりも短いブラシ群とがブラシ台の回転方向に交互に取り付けられたブラシ毛とから構成されてある為、同時に前記車輪洗浄ブラシの先端を切り揃える作業が行えず、ブラシ群毎に先端を切り揃える作業が必要となっていた。その為、ブラシが高価になる問題があった。また、前記の如く、長いブラシ群とそれよりも短いブラシ群とがブラシ台の回転方向に交互に取り付けられたブラシ毛とから構成されてある為、相互のブラシ群は段差が形成されてある。その為、洗浄残りが発生する課題を有していた。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決する為になされたもので、ホイ−ル等洗浄ブラシの毛腰を強く設定しても、被洗浄面であるホイール等に傷を付けることが無く、高い洗浄性が発揮されるホィール等洗浄ブラシ及びそのホィール等洗浄ブラシを搭載した洗車機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成する為に、第1の課題解決手段は、自動車のホイールあるいはタイヤの被洗浄面に付着した汚れ等を洗浄する為のホイール等洗浄ブラシにおいて、前記ホイール等洗浄ブラシは、台座及びブラシ部を有し、前記ブラシ部は、複数のブラシ片にて前記台座の上部に植毛されてあり、前記ブラシ片の少なくとも1つは、異なる硬度を有して長手方向に分子配向された少なくとも2種以上の多層被覆線材にて形成されてあると共に、前記線材の外周面の少なくとも一部が被覆されてある構成としたものである。
【0007】
また、第2の課題解決手段は、第1の課題解決手段のホイール等洗浄ブラシにおいて、少なくともブラシ部の外周に前記ブラシ片よりも大の機械的強度を有する補強部材が形成されてある構成としたものである。
【0008】
また、第3の課題解決手段は、第1から第2の課題解決手段のホイール等洗浄ブラシにおいて、前記補強部材は、前記ブラシ部の毛丈よりも低く形成されてあると共に、前記ブラシ片よりも毛腰が大である構成としたものである。
【0009】
また、第4の課題解決手段は、駆動源と、被洗浄面に散布する洗浄剤及び水を噴出させるノズルと、洗浄後の被洗浄面を乾燥させる乾燥手段を備えると共に、第1から第3の課題解決手段に記載のホイール等洗浄ブラシを搭載した洗車機としたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のホイール等洗浄ブラシは、台座及びブラシ部を有し、前記ブラシ部は、複数のブラシ片にて前記台座の上部に植毛されてあり、前記ブラシ片の少なくとも1つは、異なる硬度を有して長手方向に分子配向された少なくとも2種以上の多層被覆線材にて形成されてあると共に、前記線材の外周面の少なくとも一部が被覆されてある為、ブラシ片の長手方向の強度と剛性を高くでき毛倒れをし難くできるので、ブラシ用毛材の毛腰を強く設定した場合においても、被洗浄面である車体のホイール等にたいして、強い毛腰にて当接させることができると共に、ホィール等に傷を付着させることが無く、被洗浄面に付着している汚れを除去して高い洗浄性を発揮することができる非常に優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
第1の発明は、自動車のホイールあるいはタイヤの被洗浄面に付着した汚れ等を洗浄する為のホイール等洗浄ブラシにおいて、前記ホイール等洗浄ブラシは、台座及びブラシ部を有し、前記ブラシ部は、複数のブラシ片にて前記台座の上部に植毛されてあり、前記ブラシ片の少なくとも1つは、異なる硬度を有して長手方向に分子配向された少なくとも2種以上の多層被覆線材にて形成されてあると共に、前記線材の外周面の少なくとも一部が被覆されてある為、被洗浄面に当接する外層部を芯部よりも硬度が低く、且つ柔らかい形態を採用した場合には、被洗浄面にたいして柔軟にブラシ片が当接するので、被洗浄面にブラシ痕等の傷が入ることが無い。また、ブラシ片としての毛腰が保持されると共に、被洗浄面にたいして毛腰が強く設定される。その為、ブラシ片の毛腰を強く設定しても、被洗浄面である車体に傷を付けることが無く、外層部よりも硬い芯部によりブラシ片の毛腰が強く設定できるので、ブラシ片は高い洗浄性を発揮することができる。
【0012】
第2の発明は、請求項1記載の構成よりなるホイール等洗浄ブラシにおいて、少なくともブラシ部の外周に前記ブラシ片よりも大の機械的強度を有する補強部材が形成されてある為、被洗浄面にたいしてブラシ片が当接する際に、ブラシ片の毛倒れあるいは、毛癖の原因となる曲げ応力が常時加わり続けた場合においても、ブラシ部の外周に前記ブラシ片よりも大の機械的強度を有する補強部材が形成されてあるので、ホイール等洗浄ブラシのブラシ片は毛倒れあるいは、毛癖を発生しない。
【0013】
第3の発明は、請求項2記載の構成よりなるホイール等洗浄ブラシにおいて、前記補強部材は、前記ブラシ部の毛丈よりも低く形成されてあると共に、前記ブラシ片よりも毛腰が大である為、洗浄時には前記ブラシ片よりも毛腰が大の補強部材が毛丈を低く形成されてある為、補強部材が被洗浄面に直接接触する事が無い。その為、被洗浄面にブラシ痕等の傷が入ることが無い。また、被洗浄面にたいしてブラシ片が当接する際に、ブラシ片の毛倒れあるいは、毛癖の原因となる曲げ応力が常時加わり続けた場合においても、前記補強部材の毛腰が大の為、ホイール等洗浄ブラシのブラシ片は毛倒れあるいは、毛癖を発生しない。
【0014】
第4の発明は、駆動源と、被洗浄面に散布する洗浄剤及び水を噴出させるノズルと、洗浄後の被洗浄面を乾燥させる乾燥手段を備えると共に、第1から3の発明に記載のホイール等洗浄ブラシを搭載した洗車機である為、被洗浄面にたいして、傷を付着させる事無く、毛腰を強く当接させることができる。その為、洗車機は、ホイール等洗浄ブラシを高速回転に設定すると共に、洗浄時間を短時間に設定した場合においても、被洗浄面に傷が付着する事無く、且つ洗浄残りの無い高い洗浄性が付与される。また、ホイール等洗浄ブラシの回転を、低速回転から高速回転等に急変させた場合においても、前記と同様の作用が洗車機に付与される。その為、被洗浄面である車体に傷を付ける事無く、非常に高い洗浄性が発揮できる洗車機を提供することができる。
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0016】
(実施例1)
図1から図5にて実施例1を示す。図1は、本発明のホイール等洗浄ブラシのブラシ片を前面側から見た斜視図である。図1において、1はブラシ片、10はホイール等洗浄ブラシ、11はブラシ部、12は台座、13は補強部材である。図2は、図1のブラシ片のA−A断面図である。図2において、1はブラシ片、10はホイール等洗浄ブラシ、11はブラシ部、12は台座、13は補強部材、14は取り付け穴である。図3は、本発明のホイール等洗浄ブラシのブラシ片を前面側から見た斜視図である。図3において、1はブラシ片、2は外層部、4は先割れ部、5は湾曲部である。図4は、図3のブラシ片の断面図である。図4において、3は芯部、7は側端部である。図5は、図3のブラシ片の他の実施の形態のブラシ片の正面図である。図5において、6はスリットである。
【0017】
ホイール等洗浄ブラシ10は、図1、及び図2の如く、円盤状の台座12の上面にたいして直交方向にブラシ部11が形成されてある。またブラシ部11は植毛穴にたいしてブラシ片1をナイロン等の引き込み線で押さえ込み、ブラシ片1を二つ折りにして、前記引き込み線を台座12の内周面に這わせて、ブラシ片1を台座12に固定する引き込み植毛してある。また、ブラシ部11の外周部には補強部材13が適宜の間隔で台座12に引き込み植毛してある。補強部材13は、例えば、ブラシ部11のブラシ片1より硬度が大きいナイロン樹脂が、毛丈が低く形成されてある。また、ホイール等洗浄ブラシ10は台座12に形成された取り付け穴14にて図6の駆動軸21に装着されてある。また、ブラシ片1は、図3、及び図4の如く、芯部3が外層部2にて、芯部3の外周面の全周を被覆されてある長尺形状にて形成されてあると共に、断面は概丸形の側端部7、及び湾曲部5を有する波形状にて形成されてある。また、ブラシ片1の材質は、外層部2に発泡エチレン酢酸ビニルを使用させてあり、芯部3には低密度ポリエチレン樹脂が使用されてある。また、長手方向の両端部には、先割れ部4が形成されてある。また、ブラシ片1は、先割れ部4の替わりに、図5の如く、スリット6を形成して使用しても差し支えない。ブラシ片1は、先割れ部4、あるいはスリット6を形成することにより、ホイール等の被洗浄面の細かな凹凸にたいして、先割れ部4、あるいはスリット6が柔軟に当接し、被洗浄面である車体に傷を付ける事無く、被洗浄面に付着している汚れを、先割れ部4、あるいはスリット6により掻き出して除去する事ができる。さらにまた、ブラシ片1は、スリット6を形成すると共に、スリット6の先端部に先割れ部4を形成する形態も採用できる。前記の形態を採用した場合には、ブラシ片1は、先端部に近づく程、毛腰が柔らかくなる為、被洗浄面に傷が付く事を防止、あるいは抑制する事ができる。また、ブラシ片1は、湾曲部5を有する為、洗車時に湾曲部5に水等を一時、溜めることができ、洗車時における保水性を高めることができる。さらに、断面の側端部7は、角部の無い概丸形である為、被洗浄面に対する傷の付着を抑えることができる。
【0018】
本発明のホイール等洗浄ブラシ10の動作、作用は下記の通りである。ブラシ部11を形成するブラシ片1は、洗浄時にホイール等の被洗浄面にたいして付勢をかけた状態で当接しながらホイール等洗浄ブラシ10が回転して被洗浄面に付着した汚れ等を除去している。このとき、ブラシ片1は横手方向に毛の倒れや毛癖の原因となる曲げ応力を常時受けている。ホイール等洗浄ブラシ10は、ブラシ片1を配している為、被洗浄面に直接、当接しないブラシ片1の芯部3においてブラシ片1の毛腰を強く設定し、芯部3より柔軟な外層部2が被洗浄面に当接する。従って、被洗浄面に傷をつけることが無く、且つ強い毛腰にて高い洗浄性を被洗浄面にたいして付与する事ができる。その為、被洗浄面であるホイール等の被洗浄面にたいする傷付きが無く、且つ高い洗浄性を兼ね備えたホイール等洗浄ブラシ10を提供することができる。
【0019】
また、ホイール等洗浄ブラシ10は、補強部材13がブラシ片1の外周部に形成されてある為、ブラシ片1が被洗浄面に付勢をかけられ当接したときに発生する曲げ応力を補強部材13により強く反発する事ができる。例えば、家屋の構造であれば、補強部材13は家屋の構造体の中で柱に相当する。ブラシ片1は、それ自体が大きい機械的強度を有する物であれば、毛癖や毛倒れを防止することが可能であるが、被洗浄面に傷を付ける問題があり、できうる限り柔軟であるものが望ましい。しかしながら、柔軟な部材は機械的強度が低く、毛癖や毛倒れが発生し易い問題がある。そこで、ブラシ片1よりも大の機械的強度補強部材13を柱にして、ホイール等洗浄ブラシ10の機械的強度を向上させると共に、被洗浄面に当接するブラシ片1を、柔軟な部材にする事で、被洗浄面にたいする傷付きを防止すると共に、毛癖や毛倒れが発生しないホイール等洗浄ブラシ10を提供することができる。なお、前記補強部材13は、薄板形状あるいは、単列の植毛ブラシ等の形態を採用できる。前記形態を採用した場合には、スペースを取る事無く前記ブラシ片1を補強できる。
【0020】
また、ブラシ片1の詳細な形状、寸法については、外層部2、及び芯部3の材質の選定、湾曲部5の形状等により、最適な形状、寸法が設定可能である。例えば、芯部3の材質として低密度ポリエチレン樹脂の分子間に共有架橋構造が形成された弾性体、外層部2の材質としてエチレン酢酸ビニル樹脂の分子間に共有架橋構造が形成された弾力性を有する発泡体を採用した場合においては、ブラシ片1の幅方向の長さは0.5mmから30mm、湾曲部5の上部頂点から下部底点までにおける厚みは0.5mmから3mmで、より好適には幅方向の長さは1mmから15mm、湾曲部5の上部頂点から下部底点までにおける厚みは0.7mmから1.5mmが望ましい。幅方向の長さや湾曲部5の上部頂点から下部底点までにおける厚みが0.5mmより小であると、被洗浄面に付着した汚れを除去する為に必要とされるブラシ片1の強度に比べて、強度が小になる場合があると共に、耐久性が劣化する場合がある。また、幅方向の長さが30mmより大であると被洗浄面の細部にまでブラシ片1が当接する事無く、洗い残しが発生して、洗浄性が劣る場合がある。また、湾曲部5の上部から下部底点までにおける厚みが3mmより大であると、被洗浄面に付着した汚れを除去する為に必要とされるブラシ片1の強度に比べて、強度が大になる為、被洗浄面に傷を付ける場合がある。
【0021】
外層部2は、エチレン酢酸ビニル樹脂を発泡化すると共に、発泡の際に、発泡剤に架橋剤を添加して、エチレン酢酸ビニル樹脂の分子間に共有架橋構造が形成された弾力性を有する発泡体にて構成されてある。前記の如く、エチレン酢酸ビニル樹脂等の樹脂の分子間に共有架橋構造が形成された弾力性を有する発泡体は、一般的には架橋発泡体と呼ばれている。外層部2の発泡倍率は、被洗浄面に傷を付けないという目的から2倍から15倍が好ましく、2.5倍から12倍にて調整されるのがより好ましい。発泡倍率が2倍未満の場合には、硬すぎて被洗浄面に傷を付けることになり、15倍より大の場合には、摩擦抵抗が大きくなり、洗浄時の洗浄音が大きくなると共に、被洗浄面にたいして傷を付けやすくなる。なお、外層部2に用いられる材質としては、前記エチレン酢酸ビニル樹脂の他、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレンメチルアクリレート樹脂、エチレンエチルアクリレート樹脂、エチレンブチルアクリレート樹脂等のポリオレフィン系樹脂を使用することもでき、前記の如くの材質は、単独で用いられても併用されても良い。
【0022】
また、前記発泡剤としては、従来から発泡体の製造に用いられているものであれば、特に限定されず、例えば、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、アゾジカルボンアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、トルエンスルホニヒドラジド、4,4−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド等の熱分解型発泡剤が好適に用いられ、前記材質は単独で用いられても併用されても構わない。
【0023】
また、前記架橋剤としては、従来から発泡体に弾力性を付与する目的で製造に用いられてあるものであれば、特に限定されず、例えば、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス−ターシャリーブチルパーオキシヘキセン、1,3−ビス−ターシャリーパーオキシイソプロピルベンゼン等の有機過酸化物が好適に用いられ、前記材質は単独で用いられても併用されても構わない。
【0024】
ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、エチレンメチルアクリレート樹脂、エチレンエチルアクリレート樹脂、エチレンブチルアクリレート樹脂等の樹脂にたいして弾力性を付与する方法は、上記の如くの共有架橋構造を形成する方法以外にも、エチレン−αオレフィン共重合体エラストマー、エチレン−αオレフィン架橋共重合体エラストマー、スチレン−エチレン−ブロック共重合体エラストマー等の熱可塑性エラストマーを配合する一般的に、ポリマーアロイと呼ばれている方法を用いる事もできる。また、ポリエチレンアイオノマー樹脂等のイオン架橋構造を有する樹脂を用いることにより、弾力性を付与する事もできる。
【0025】
芯部3は、低密度ポリエチレン樹脂の分子間に共有架橋構造が形成された弾性体にて構成されてある。芯部3の材質としては、前記低密度ポリエチレンの他、超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等のポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリシクロへキサンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46等のポリアミド系樹脂を単独、あるいは併用して形成することもできる。また、共有架橋構造を形成する架橋剤には、前記の如くのジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチルー2,5−ビス−ターシャリーブチルパーオキシヘキセン、1,3−ビス−ターチャリーパーオキシイソプロピルベンゼン等の有機過酸化物を用いることができる。
【0026】
次に、ブラシ片1の製造方法に付いて説明する。ブラシ片1は、外層部2を形成するエチレン酢酸ビニル樹脂に、あらかじめ発泡剤、及び架橋剤を混入しておき、一方、芯部3を形成する低密度ポリエチレン樹脂に架橋剤を配合しておき、押出し機(図示せず)の先端に取り付けられた口金を通して外層部2、及び芯部3を同時に押し出す。押出し後、加熱しながら延伸機にて長手方向に延伸をかけ、延伸後、アニーリングと呼ばれる工程にて冷却固化させることにより形成される。ところで、一般的には、樹脂の成形技術には、溶融成形、固層成形、注型成形、射出成形、真空成形、圧空成形、プレス成形等があるが、前記の如くの製造方法は、溶融成形の一種の押出し成形と呼ばれている。
【0027】
また、長手方向に延伸させる上記の如くの方法は、一軸延伸と呼ばれている。一軸延伸とは、一方向にのみ延伸応力をかける加工方法であり、延伸方向にたいして平行の方向は、分子配向が起こるので、引張り強さが著しく向上するが、延伸方向にたいして直角の方向は、引っ張り強さが向上しない為、延伸方向にたいして平行の方向に、裂け易くなるという性質を有している。その為、ブラシ片1は、先割れ部4を形成することが可能となる。なお、分子配向とは、線状分子が溶融または、固体状態において、外力の作用により、一定方向に配列する事である。また、先割れ部4の形成方法は、ブラシ片1の両端部の所定長さを、所定回転速度の分割刃やカッターを有する細分割加工機にて細分割加工することにより形成される。
【0028】
また、ブラシ片1に、上記の如くの延伸をかけない場合においては、分子配向が起こらないので、ブラシ片1に先割れ部4を形成しにくいが、カッター等を用いてスリット6を形成することができる。
【0029】
本発明のホイール等洗浄ブラシを構成するブラシ片1の動作、作用は、下記の通りである。
【0030】
ブラシ片1を構成する外層部2は発泡体にて形成されてあると共に、前記外層部2の材質としてエチレン酢酸ビニル樹脂が使用されてある為、被洗浄面に接触する外層部2は発泡化されてある。その為、ブラシ片1は、被洗浄面からの衝撃力等の反力を吸収、分散でき、被洗浄面にたいして、より柔軟に当接すると共に、ブラシ片1は軽量化を図る事ができる。その為、ブラシ片1を被洗浄面にたいして深く押し込んで当接させても、被洗浄面である車体に傷が入ることが無い。さらに、発泡体に形成されている外層部2が被洗浄面からの衝撃力等の反力を吸収、分散することから、ブラシ片1が座屈等により破断することが無く、ブラシ片1は高い耐久性を有することができる。また、エチレン酢酸ビニル樹脂は吸水率が0%なので、ブラシ片1の洗車時における含水が抑えられる。その為、冬場にブラシ片1が凍結することが無く、凍結して硬くなったブラシ片1が車体に当接することが無いので、車体の傷付きによる損傷を防ぐことができ、傷付き防止効果が一段と向上する。
【0031】
また、ブラシ片1を構成する芯部3の材質として、外層部2よりも硬度が大の低密度ポリエチレン樹脂が使用されてある為、ブラシ片1は、前記材質の有する毛腰が保持されると共に、被洗浄面にたいして、芯部3の有する毛腰を付与できる。また、芯部3には、低密度ポリエチレン樹脂が使用されてある為、吸水率が0%、価格の低さ等の特性をブラシ片1は有する。
【0032】
また、前記外層部2と前記芯部3は形状復元力を有する弾性体にて形成されてある為、ブラシ片1に弾力性が付与される。すなわち、ブラシ片1は被洗浄面に当接する際、屈曲変形して当接した後、被洗浄面から離れると、屈曲変形した状態から屈曲していない元の状態に復元する。従って、ブラシ片1は、屈曲変形したままの状態で被洗浄面に当接を続けることが無いので、屈曲変形した部分において、ブラシ片1が疲労屈折して毛折れ、毛切れして破断することが無い。その為、ブラシ片1の耐久性が飛躍的に向上する。
【0033】
また、前記ブラシ片1の断面の側端部7は、概丸形にて形成されてある為、側端部7は角部が無いことから、被洗浄面にたいする傷の付着を抑えることができる。
【0034】
また、前記ブラシ片1の断面は波形状にて形成されてある為、波形状断面には湾曲部5が形成される。その為、ブラシ片1の波形状の湾曲部5には洗浄水の水滴等を一時、溜められる。また、波形状断面は、湾曲部5が被洗浄面に当接するので、当接した湾曲部5は、被洗浄面の汚れ等を的確に除去し、剥離する。その為、洗浄性を大幅に向上させることが可能となる。
【0035】
また、前記ブラシ片1は、長手方向の両端部に先割れ部4あるいはスリット6を有する為、ブラシ片1の先割れ部4、あるいはスリット6が被洗浄面にたいして、先割れ部4、あるいはスリット6が形成されていない場合に比べて、ブラシ片1は、より柔軟に当接すると共に、被洗浄面の細かな凹凸部分にも当接する。その為、被洗浄面である車体に傷を付けること無く、飛躍的に洗浄性を向上させることができる。
【0036】
なお、ブラシ片1の形状は、上記の如くの断面を有する長尺形状に限らず、断面形状が概丸形、三角形、四角形、六角形等の多角形状、あるいはM形、H形、ノコギリ形、十字形、三日月形等でも構わない。
【0037】
また、ブラシ片1を台座12に装着する構造に関しては、特に限定されるものではなく、上記の如くの構造以外にも、使用目的に応じて、適時、設定することができる。例えば、台座12の表面に、ブラシ片1を植え付ける植毛穴を設け、植毛穴にたいしてブラシ片1をステープルで挟み付け、ブラシ片1を二つ折りにして、植毛穴の底面にたいして打ち込み、ブラシ片1を台座12に固定する丸線型ブラシ、あるいは植毛穴にたいしてブラシ片1を薄い平板で押さえ込み、ブラシ片1を二つ折りにして、植毛穴の内周面に嵌合するように植毛穴の底面にたいして前記平板を打ち込み、ブラシ片1を台座12に固定する平線型ブラシ、あるいは上記の如く、植毛穴にたいしてブラシ片1をナイロン等の引き込み線で押さえ込み、ブラシ片1を二つ折りにして、前記引き込み線を台座12の内周面に這わせて、ブラシ片1を台座12に固定する引き込み型ブラシ等も採用できる。なお、前記の如くの植毛穴は、台座12の外周面に等分間隔で設けても良いし、千鳥状に設けても良い。植毛穴の穴径は、ブラシ片1の植毛量に応じて、適時、設定される。さらにまた、ブラシ片1の長手方向の中央部を折り込むと共に、リベット等にて台座12に固定する形態、あるいは台座12の表面に溝部を形成後、溝部に止め金具にてブラシ片1を固定する形態、あるいは溝部にブラシ片1を折り込んだチャンネルブラシを挿入して固定する形態も採用できる。
【0038】
(実施例2)
図6にて実施例2を示す。図6は、本発明のホイール等洗浄ブラシを配した洗車機の正面図である。図6において、10はホイール等洗浄ブラシ、21は駆動軸、22、102は駆動源、100は洗車機、103はノズル、104は乾燥機、105は洗浄ブラシである。
【0039】
洗車機100は、図6の如く、本発明のホイール等洗浄ブラシ10が搭載されてあり、ホイール等洗浄ブラシ10は、駆動源22により駆動軸21を介して回転される。また、洗浄ブラシ105は、駆動源102により回転される。ノズル103からは、被洗浄面にたいして、洗浄剤、及び水が散布され、車体の上面及び側面は、洗浄ブラシ105により、洗浄されると共に、ホイールは、ホイール等洗浄ブラシ10にて洗浄される。洗浄後は洗車機100の乾燥手段である乾燥機104により被洗浄面が乾燥される。
【0040】
本発明のホイール等洗浄ブラシ10を配した洗車機100の動作、作用は下記の通りである。
【0041】
洗車機100は、被洗浄面に傷を付けること無く、高い洗浄性を有するホイール等洗浄ブラシ10が搭載されてあるので、被洗浄面にたいして、傷を付着させること無く、毛腰を強く当接させることができる。その為、洗車機100は、ホイール等洗浄ブラシ10を高速回転に設定すると共に、洗浄時間を短時間に設定した場合においても、被洗浄面に傷が付着すること無く、且つ洗浄残りの無い高い洗浄性が付与される。また、ホイール等洗浄ブラシ10の回転を、低速回転から高速回転等に急変させた場合においても、前記と同様の作用が洗車機100に付与される。その為、被洗浄面である車体に傷を付けること無く、非常に高い洗浄性が発揮できる洗車機100を提供することができる。また、洗車機100に搭載されるホイール等洗浄ブラシ10は、ブラシ片よりも硬度が大きい補強部材がブラシ部の外周部に形成されてある為、前記補強部材が柱の役目を果たし、ブラシ片にかかる常時曲げ応力を低減でき、毛の倒れや毛癖の発生しない洗車機を実現する。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のホイール等洗浄ブラシ10及び洗車機は、主に、自動車あるいは車両の外面、ホイール等の被洗浄面に付着した汚れ等を洗浄する為の洗車機として使用する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明のホイール等洗浄ブラシを前面側から見た斜視図
【図2】図1のホイール等洗浄ブラシの断面図
【図3】図1のブラシ片を前面側から見た斜視図
【図4】図3のブラシ片の断面図
【図5】図3のブラシ片の他の実施の形態のブラシ片を前面側から見た斜視図
【図6】本発明のホイール等洗浄ブラシを配した洗車機の正面図
【符号の説明】
【0044】
1 ブラシ片
2 外層部
3 芯部
4 先割れ部
5 湾曲部
6 スリット
7 側端部
10 ホイール等洗浄ブラシ
11 ブラシ部
12 台座
13 補強部材
14 取り付け穴
21 駆動軸
22、102 駆動源
100 洗車機
103 ノズル
104 乾燥機
105 洗浄ブラシ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のホイールあるいはタイヤの被洗浄面に付着した汚れ等を洗浄する為のホイール等洗浄ブラシにおいて、前記ホイール等洗浄ブラシは、台座及びブラシ部を有し、前記ブラシ部は、複数のブラシ片にて前記台座の上部に植毛されてあり、前記ブラシ片の少なくとも1つは、異なる硬度を有して長手方向に分子配向された少なくとも2種以上の多層被覆線材にて形成されてあると共に、前記線材の外周面の少なくとも一部が被覆されてあることを特徴とするホイール等洗浄ブラシ。
【請求項2】
請求項1記載の構成よりなるホイール等洗浄ブラシにおいて、少なくともブラシ部の外周に前記ブラシ片よりも大の機械的強度を有する補強部材が形成されてあることを特徴とするホイール等洗浄ブラシ。
【請求項3】
請求項2記載の構成よりなるホイール等洗浄ブラシにおいて、前記補強部材は、前記ブラシ部の毛丈よりも低く形成されてあると共に、前記ブラシ片よりも毛腰が大であることを特徴とするホイール等洗浄ブラシ。
【請求項4】
駆動源と、被洗浄面に散布する洗浄剤及び水を噴出させるノズルと、洗浄後の被洗浄面を乾燥させる乾燥手段を備えると共に、請求項1から3記載のホイール等洗浄ブラシを搭載した洗車機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−62746(P2008−62746A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−241591(P2006−241591)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【出願人】(391044797)株式会社コーワ (283)
【Fターム(参考)】