説明

ホシアンズタケ新菌株及びその人工栽培方法

【課題】ホシアンズタケを季節に関係することなく周年栽培で施設において工業的に高品質かつ安価に、短期間に安定的に子実体を形成することが可能であるホシアンズタケの菌株及び人工栽培方法を提供する。
【解決手段】ホシアンズタケ(Rhodotus palmatus)UFC−2386株(FREM P−21134)、ホシアンズタケ(Rhodotus palmatus)UFC−2387株(FREM P−21135)及びこれらの変異株から選択されるホシアンズタケ新菌株並びにこれらのホシアンズタケ新菌株を菌床栽培してホシアンズタケの子実体を収穫することを特徴とするホシアンズタケの人工栽培方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、担子菌ホシアンズタケの新菌株及びその人工栽培方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホシアンズタケ(Rhodotus palmatus)は、分類学上キシメジ科(Tricholomataceae)、ホシアンズタケ属(Rhodotus)に属するキノコである。ヨーロッパや北アメリカ、日本に分布することが報告されており、日本国内においては、永らく北海道でのみの発生記録しか確認されていなかったが(例えば、非特許文献1参照)、近年本州でも採集の報告がなされ、青森県、栃木県、長野県で発生が報告されている。
【0003】
本種は木材腐朽性のキノコであり、オヒョウ(Ulmus laciniata (Trautv.) Mayr)、ハルニレ(Ulmus davidiana Planch. var. japonica (Rehder) Nakai)、ヤチダモ(Fraxinus mandshurica Rupr. var. japonica Maxim.)の腐朽木上で発生することが知られている。また自然界においては、5月から9月にかけて発生し(例えば、非特許文献2、3参照)、海外では、食用不明とされているが(例えば、非特許文献4参照)、国内では柑橘系果実香りを有する優れた食用キノコの一つとして愛好者に好まれてきたキノコである。また独特の食感を有しており今後有望な食用キノコの一つとして注目されている。
【0004】
ホシアンズタケの人工栽培方法として、発明者らが北海道で採集された野生のホシアンズタケ菌株を用いてケヤキ(Zelkova serrata (Thunb.) Makino)を用いた栽培方法を報告している(例えば、非特許文献5、6参照)。これらの栽培は、直径15cm、高さ20cmに玉切りした原木を用いた方法であり、当該栽培方法では野外で多くの原木を供給しなければならず、量産に適した方法ではない。原木栽培は、現在でもシイタケなどのキノコで生産されている一般的な方法であるが、工業的なキノコ生産の現場において、取扱いや原木の安定供給の点において困難である。また、実験的な例として、寒天培地上で菌糸体に波長の異なる光を照射することによって子実体原基形成を誘導する方法について報告されているが(例えば、非特許文献7参照)、工業的に安定的に子実体形成をさせることについては言及されていない。
【非特許文献1】伊藤誠也著、「日本菌類誌」第二巻、第五号、養賢堂、昭和34年10月27日発行、p.252−253
【非特許文献2】今関六也、本郷次雄共著、「原色日本新菌類図鑑II」、保育社、平成元年5月31日発行、p.115
【非特許文献3】今関六也、大谷吉雄、本郷次雄著、「カラー名鑑日本のきのこ」、山と渓谷社、1998年11月10日、p.137
【非特許文献4】「カンザス州のキノコ(A Guide to Kansas Mushrooms)」、University Press of Kansas Bruce Horn,Richard Kay and Dean Abel、1993、p.137
【非特許文献5】埼玉新聞県北版(1991年7月21日)、15面、「熊谷農高科学部 ホシアンズタケを人工栽培本州未発見、初めて成功」
【非特許文献6】読売新聞埼玉県版(1991年7月12日)、24面、「珍種キノコの栽培に成功 ホシアンズタケ 熊谷農高の生徒ら」
【非特許文献7】Miller Jr., OK., Palmer,JG.,and Gillman,L.S.「培養下におけるホシアンズタケの子実体形成と発達(The fruiting and development of Rhodotus palmatus in culture)」、Mycotaxon 11:409−419(330)、1980
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記現状にかんがみ有用食用きのこであるホシアンズタケを季節に関係することなく周年栽培で施設において工業的に高品質かつ安価に、短期間に安定的に子実体を形成することが可能であるホシアンズタケの菌株を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
キノコは一般に、同じ種に属する菌株でありながら、採集された場所の違いにより菌糸体の生育速度及び、子実体形成能力は著しく異なることが知られている。本発明者らは、菌床人工栽培に適する菌株が自然界に必ず存在するはずであるとの考えに立ち、全国各地からホシアンズタケを収集し鋭意検討した。その結果、栃木県内の山中で広葉樹の倒木に発生していた子実体より分離培養し、その後純粋培養した後、作出というスクリーニングの工程を得て得られた菌株が、現在入手可能なホシアンズタケ菌株MAFF−430415、ATCC−38022及びATCC−60610と比較して、菌床人工栽培方法において優れた子実体形成能を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明の第一は、ホシアンズタケ(Rhodotus palmatus)UFC−2386株(FREM P−21134)、ホシアンズタケ(Rhodotus palmatus)UFC−2387株(FREM P−21135)及びこれらの変異株から選択されるホシアンズタケ新菌株を要旨とするものである。
【0008】
本発明の第二は、上記のホシアンズタケ新菌株を菌床栽培してホシアンズタケの子実体を収穫することを特徴とするホシアンズタケの人工栽培方法を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、安価な培地原料を用いた培養基で、形状に優れ美味なホシアンズタケの工業的栽培方法が可能となる。具体的には、本発明のホシアンズタケ新規株を用いることにより、施設栽培において子実体発生率90%以上、総栽培日数50日以下で、収量は850ml培養ビンの場合120g以上の天然物様の形状の良いホシアンズタケを効率よく発生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の詳細に説明する。
【0011】
菌株の検討は、以下の通りに実施した。1/2PDA培地(ポテトデキストロース((株)ニッスイ)を蒸留水1リットルに19.5g添加し、寒天((株)ニッスイ)10gを添加後、高圧蒸気滅菌し滅菌後pH5.5に調整)を用いて暗黒下23℃±1で培養した後、850ccポリプロピレン製の培養ビン(千曲化成(株))にブナ鋸屑(有限会社新井商店)100g、米糠(一井商店)25g、フスマ(豊橋飼料(株))25gに水350gを加えてよく混合し、湿潤状態にしたものを圧詰して、中央に直径1cmの穴を穿孔させ、打栓後120℃、60分間殺菌し、固形培養基を調整した。試験数は、32本試験を行った。これに上記の寒天培地で培養した種菌を接種し、暗黒下23℃、湿度55%条件化で培養基に見かけ上菌糸体が蔓延するまで培養し、さらに10日間培養を続け熟成させた。次に菌掻きをして培養基の上部から約1cmの菌糸体層を除いてから、照度20ルクス、温度20℃、湿度90%の条件化で子実体原基が形成されるまで培養を続け、ホシアンズタケの各菌株にける子実体収量、総栽培日数、子実体形状について調べた。なお、ホシアンズタケの公知の菌株としてMAFF−430415、ATCC−38022、ATCC−60610を入手し、同様に栽培を行った。その結果を表1に示す。なお、表1の子実体収量、子実体発生率、子実体の形状、総栽培日数は、32本の平均を示すものである。
【0012】
【表1】

表1において不可とは総栽培日数が100日を経過しても子実体が形成されない場合をいう。また、表1における形状とは◎は子実体の形が優れたもの、○は子実体の形が良いもの、×は子実体の形が劣るものを示す。
【0013】
表1で明らかなように、供試した菌株のうち、ホシアンズタケUFC−2386株(FREM P−21134)及びホシアンズタケUFC−2387株(FREM P−21135)は、子実体発生率が90%以上であり、総栽培日数が50日以下と短かった。収量も約120g以上と多く、子実体も傘色、柄色、形状等天然採取物と同等であり、特に優れた形状を示した。
【0014】
表1で示したホシアンズタケUFC−2386株(FREM P−21134)及びホシアンズタケUFC−2387株(FREM P−21135)の子実体及び胞子の形態的特徴は、以下の通りである。
【0015】
子実体はホシアンズタケUFC−2386株(FREM P−21134)及びUFC−2387株(FREM P−21135)共にウラベニガサ型からヒラタケ型を呈し、全体が淡ピンク色、傘の表面は平滑から網目状(マスクメロン状)のしわを形成する。子実体は、吸水性を有し、傘下の表皮層直下がゼラチン化する。胞子紋は白色〜淡ピンク色、胞子は、球形で短い突起を有し、4−7μmである。ひだ実質は散開型、菌糸体はクランプを有する。
【0016】
上記の形態学的特徴に基づいて、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3及び非特許文献4により同定すると、本菌株がホシアンズタケであることは明らかである。なお、本菌は特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約下、平成18年12月15日に日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号に所在する独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにホシアンズタケ(Rhodotus palmatus)UFC−2386株(FREM P−21134)及びホシアンズタケ(Rhodotus palmatus)UFC−2387株(FREM P−21135)として寄託されている。
【0017】
次に、ホシアンズタケUFC−2386株(FREM P−21134)及びホシアンズタケUFC−2387株(FREM P−21135)の菌学的諸形質を以下に示す。
【0018】
〔ホシアンズタケUFC−2386株(FREM P−21134)〕
麦芽エキス寒天培地(23℃)における生育状態:10日目でコロニー径は35mm、白色で密な菌糸体、気中菌糸体は少ない。15日目でコロニー径は42mm、20日目でコロニー径は60mmとなり、菌糸体は、白色で密であり気中菌糸体は少ないが厚膜胞子を形成する。菌糸体伸長は放射状である。
バレイショ・ブドウ糖寒天培地(23℃)おける生育状態:10日目でコロニー径は38mm、白色で密な菌糸体、気菌糸体を少ない。15日目でコロニー径は45mm、20日目でコロニー径は61mmとなり、菌糸体白色で密な菌糸体。気中菌糸体は少なく、菌糸体伸長は放射状である。裏面の中心部がやや乳白色に着色する。
オートミール寒天培地(23℃)における生育状態:10日目でコロニー径は15mm、菌糸体は薄く放射状に伸びる。15日目でコロニー径は20mm、20日目でコロニー径は30mmとなり、菌糸体は白色で密であり放射状に伸長する。気中菌糸体は薄い。
Lフェノールオキシダーゼ検定用培地〔0.1%没食子酸添加ポテト・グルコース寒天培地〕(23℃)おける生育状態:10日目では発菌したに過ぎず菌糸体生長なほとんどしない。
最適生育温度:PGY寒天培地(PGY液体培地に寒天を加えたもの)に直径5±1mmの種菌を接種し、各温度でそれぞれ培養して、14日後に各コロニー直径を測定したところ、最適生育温度は15〜23℃であった。また、5℃では菌糸体が発菌するがほとんど生育せず、30℃では全く生育著しく悪かった。
最適生育pH:PGY液体培地20mlを殺菌後、1規定塩酸又は1規定水酸化ナトリウム溶液で無菌的にpH3.0〜10.0の範囲で0.5毎に調整、直径5mmの種菌を接種し、15日間静置後、各乾燥重量を測定したところ、最適生育pHは5.5付近であった。また本菌株の生育範囲はpH3.0〜7.5の範囲であった。
【0019】
〔ホシアンズタケUFC−2387株(FREM P−21135)〕
麦芽エキス寒天培地(23℃)における生育状態:10日目でコロニー径は37mm、白色で密な菌糸体、気中菌糸体は少ない。15日目でコロニー径は43mm、20日目でコロニー径は64mmとなり、菌糸体は、白色で密であり気中菌糸体は少ないが厚膜胞子を形成する。菌糸体伸長は放射状である。
バレイショ・ブドウ糖寒天培地(23℃)おける生育状態:10日目でコロニー径は40mm、白色で密な菌糸体、気菌糸体を少ない。15日目でコロニー径は48mm、20日目でコロニー径は65mmとなり、菌糸体白色で密な菌糸体。気中菌糸体は少なく、菌糸体伸長は放射状である。裏面の中心部がやや乳白色に着色する。
オートミール寒天培地(23℃)における生育状態:10日目でコロニー径は18mm、菌糸体は薄く放射状に伸びる。15日目でコロニー径は20mm、20日目でコロニー径は25mmとなり、菌糸体は白色で密であり放射状に伸長する。気中菌糸体は薄い。
Lフェノールオキシダーゼ検定用培地〔0.1%没食子酸添加ポテト・グルコース寒天培地〕(23℃)おける生育状態:10日目では発菌したに過ぎず菌糸体生長なほとんどしない。
最適生育温度:PGY寒天培地(PGY液体培地に寒天を加えたもの)に直径5±1mmの種菌を接種し、各温度でそれぞれ培養して、14日後に各コロニー直径を測定したところ、最適生育温度は15〜23℃であった。また、5℃では菌糸体が発菌するがほとんど生育せず、30℃では全く生育著しく悪かった。
最適生育pH:PGY液体培地20mlを殺菌後、1規定塩酸又は1規定水酸化ナトリウム溶液で無菌的にpH3.0〜10.0の範囲で0.5毎に調整、直径5mmの種菌を接種し、15日間静置後、各乾燥重量を測定したところ、最適生育pHは5.5付近であった。また本菌株の生育範囲はpH3.0〜7.5の範囲であった。
【0020】
次に、ホシアンズタケUFC−2386株(FREM P−21134)及びホシアンズタケUFC−2387株(FREM P−21135)と、他のホシアンズタケ菌株との異同を調べるため、以下のようにして対峙培養を行なった。供試したホシアンズタケ菌株は、表1に示した菌株すべてである。また、MAFF番号、ATCC番号が付与されているホシアンズタケ菌株についても同様に試験した。
【0021】
供試菌株の二核菌糸体を1/2PDA培地より5mm×5mm×5mmのブロックとして切り出し、それぞれを1/2PDA寒天培地の中央部に対峙して接種し(2cm間隔)、23℃、20日間暗黒条件下において培養後、両コロニー境界部に帯線が生じるか否かを判定した。結果を表2に示す。なお、帯線を生じた場合は+、帯線を生じない場合は−と表記した。なお、ここで、帯線には着色していない拮抗状態のものも含む。また、表2では、ホシアンズタケUFC−2386株(FREM P−21134)、ホシアンズタケUFC−2387株(FREM P−21135)の対峙培養について示したが、実際には供試した全ての菌株において対峙培養を実施した。
【0022】
【表2】

表2に示したように、ホシアンズタケUFC−2386株(FREM P−21134)、ホシアンズタケUFC−2387株(FREM P−21135)は、公知菌株を含む供試菌株すべてと帯線を形成し、同じ菌株間において対峙線の形成が見られなかったことから、ホシアンズタケUFC−2386株(FREM P−21134)、ホシアンズタケUFC−2387株(FREM P−21135)が新菌株であることが明らかになった。
【0023】
次に本発明の第二のホシアンズタケの人工栽培方法について説明する。上記した本発明のホシアンズタケUFC−2386株(FREM P−21134)及びホシアンズタケUFC−2387株(FREM P−21135)は、通常の菌床人工栽培方法で栽培することができる。
【0024】
本発明において、通常の菌床人工栽培方法とは、エノキタケ、ヒラタケ、ブナシメジなどのキノコ栽培に用いられている方法であって、ビン栽培、袋栽培、トロ箱栽培などがある。ここでは、一例として、ビン栽培について述べると、その方法とは、通常、「培地調製」、「ビン詰め」、「殺菌」、「接種」、「培養」、「菌かき」、「芽だし」、「生育」及び「収穫」の各工程からなる。
【0025】
「培地調整」とは、通常キノコの人工栽培に使用されている鋸屑と米糠、フスマ、穀類粉砕物などの混合物に水を加えて湿潤状態にする工程で、腐葉土、バーク堆肥、麦わら堆肥、廃オガ堆肥、コンポストなどを加えても良い。含水率は50−80%、好ましくは55−70%、より好ましくは60−65%が適当である。培地組成は、ホシアンズタケ子実体形成が良好な組成であればよいが、その一例を示せば、鋸屑、フスマやコーンマッシュの組み合わせがある。鋸屑は培地基材となり、フスマやコーンマッシュは栄養源として作用する。
【0026】
鋸屑は、針葉樹でも広葉樹由来のものでも良いが、好ましくは、植物分類学上、針葉樹であるマツ科(Pinaceae)、スギ科(Taxodiaceae)、広葉樹では、ヤマモモ科(MYRICACEAE)、クルミ科(JUGLANDACEAE)、クワ科(MORACEAE)、ヤマグルマ科(TROCHODENDRACEAE)、フサザクラ科(EUPTELEACEAE)、カツラ科(CERCIDIPHYLLACEAE)アケビ科(LARDIZABALACEAE)、メギ科(BERBERIDACEAE)、モクレン科(モクレン科)、クスノキ科(LAURACEAE)、ユキノシタ科(SAXIFRAGACEAE)、トベラ科(PITTOSPORACEAE)、マンサク科(HAMAMELIDACEAE)、スズカケノキ科(PLATANACEAE)、バラ科(ROSACEAE)、マメ科(FABACEAE)、ミカン科(RUTACEAE)、センダン科(MELIACEAE)、トウダイグサ科(EUPHORBIACEAE)、ツゲ科(BUXACEAE)、モチノキ科(AQUIFOLIACEAE)、ニシキギ科(CELASTRACEAE)、トチノキ科(HIPPOCASTANACEAE)、アワブキ科(SABIACEAE)、クロウメモドキ科(RHAMNACEAE)、ブドウ科(VITACEAE)、アオイ科(MALVACEAE)、マタタビ科(ACTINIDIACEAE)、ツバキ科(THEACEAE)、イイギリ科(FLACOUTIACEAE)、キブシ科(STACHYURACEAE)、グミ科(ELAEGNACEAE)、ミソハギ科(LYTHRACEAE)、ザクロ科(PUNICACEAE)、ウコギ科(ARALIACEAE)、ミズキ科(CORNACEAE)、リョウブ科(CLETHRACEAE)、ツツジ科(ERICACEAE)、ヤブコウジ科(MYRSINACEAE)、カキノキ科(EBENACEAE)、ハイノキ科(SYMPLOCACEAE)、エゴノキ科(STYRACACEAE)、モクセイ科(OLEACEAE)、キョウチクトウ科(APOCYNACEAE)、クマツヅラ科(VERBENACEAE)、ノウゼンカズラ科(BIGNONIACEAE)、アカネ科(RUBIACEAE)、スイカズラ科(CAPRIFOLIACEAE)、より好ましくは、ヤナギ科(SALICACEAE)、ブナ科(Fragaceae)、シナノキ科(TILIACEAE)、カエデ科(ACERACEAE)、カバノキ科(BETULACEAE)、ニレ科(ULMACEAE)に分類される植物由来の鋸屑が好適に使用できる。
【0027】
栄養源の添加量は重量比として5%以上添加されれば良く、好ましくは5%−30%、好ましくは10−25%、より好ましくは15−20%の添加が好適に使用できる。
【0028】
「ビン詰め」とは、800〜1000ml、より好ましくは850mlのポリプロピレン製広口ビンに、調整した培地を400−750g、好ましくは450−700g、より好ましくは460−600g圧詰し、中央に1cm程度の穴を穿孔し、打栓する工程をいう。
【0029】
「殺菌」とは、蒸気により培地中のすべての微生物を死滅させる工程で、常圧殺菌では98℃、4〜5時間、高圧殺菌では120℃、30〜90分間行われる。
【0030】
「接種」とは、放冷された培地に種菌を植えつける工程で、種菌としてはホシアンズタケ菌株を1/2PDA液体培地で23℃、10〜15日間培養したものを用いることができ、1ビン当り100mlほど無菌的に植えつける。また、ここまで説明した工程で得られる液体種菌接種済みの培養基を、23℃で30〜40日間培養し、培養基全体にホシアンズタケの菌糸体がまん延したものを固体種菌として用いることができ、1ビン当り15gほど無菌的に植えつける。
【0031】
「培養」とは、接種済みの培養基を温度20〜23℃、湿度40〜70%において菌糸体をまん延させ、更に熟成をさせる工程で、25〜80日間、好ましくは30−70日間、より好ましくは40−60日間行われる。
【0032】
「菌かき」とは、種菌部分と培養基表面をかき取り、原基形成を促す工程で、菌かき後は、直ちにビン口まで水を入れ3〜5時間後排水する。
【0033】
「芽だし」とは、子実体原基を形成させる工程で、温度10〜20℃好ましくは15℃前後、湿度80%以上、好ましくは85〜95%、照度500ルックス以下、好ましくは50ルックス以下で培養を続けると、ホシアンズタケの原基が形成される。
【0034】
「生育」とは、子実体原基から成熟子実体を形成させる工程で温度10〜20℃、好ましくは12〜18℃、より好ましくは15〜17℃、湿度80%以上、好ましくは85〜95%、照度50ルックス以上、好ましくは200〜500ルックスで5〜15日間培養を続けると、ホシアンズタケの成熟子実体を得ることができ、「収穫」を行って栽培の全工程は終了する。
【0035】
以上、ビン栽培方法について説明したが、本発明はビン栽培に限定されるものではなく、袋栽培、トロ箱栽培においても同様の方法で実施できる。
【0036】
本発明の人工栽培方法で使用し得るホシアンズタケ菌株としては、ホシアンズタケUFC−2386株(FREM P−21134)、ホシアンズタケUFC−2387株(FREM P−21135)が最適であるが、これらの菌株に限定されるものではなく上記性質を有する菌株であれば、変異株であっても用いることができる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例の範囲のみに限定されるものではない。
【0038】
実施例1
1/2PD液体培地(蒸留水1リットルに対し、ジャガイモ200g(皮を剥いたもの)を采の目に細断後、1時間湯煎し、グルコース7.5g、寒天20g((株)和光)を添加し高圧蒸気滅菌後pH5.5に調整)100mlにホシアンズタケUFC−2386株(FREM P−21134)及びホシアンズタケUFC−2387株(FREM P−21135)をそれぞれ接種して、23℃で15日間培養し液体種菌とした。一方、ポリプロピレン製の広口培養ビン850ml(千曲化成(株))に、ブナ鋸屑100g(有限会社新井商店)、コーンマッシュ25g(豊橋飼料(株))、水350gを加えて良く混合し湿潤状態にしたものを圧詰して、中央に直径1cm程度の穴を開け、打栓後120℃、60分間高圧蒸気殺菌を行い、放冷して固形培養基とした。これに上記の液体種菌約20mlを接種し、まず暗所にて、温度23℃、湿度55%の条件下、培養基に見掛け上菌糸体がまわるまで25日間培養し、更に5日間培養を続け熟成させた。
【0039】
次に、照度20ルックス、温度15℃、湿度90%の条件下で10日間培養を続け、子実体原基を形成させた。原基が形成された培養基は、次に照度500ルックス、温度15℃、湿度90%の条件下5日間培養を続けて、成熟子実体を得た。収穫されたホシアンズタケは、天然に近い形状を呈し非常に美味であった。
【0040】
得られた子実体は、1ビン当りホシアンズタケUFC−2386株(FREM P−21134)で120g、ホシアンズタケUFC−2387株(FREM P−21135)で123gであり、総栽培日数は、ホシアンズタケUFC−2386株(FREM P−21134)で47日間、ホシアンズタケUFC−2387株(FREM P−21135)で48日間あった。
【0041】
実施例2
実施例1で使用したものと同様の1/2PD液体培地100mlにホシアンズタケUFC−2386株(FREM P−21134)及びホシアンズタケUFC−2387株(FREM P−21135)を接種して、23℃で15日間培養し液体種菌とした。一方、ブナ鋸屑100g(有限会社新井商店)、米糠75g(一井商店)、フスマ25g(豊橋飼料(株))、水350gを加えて良く混合し湿潤状態にしたものを圧詰して、中央に直径1cm程度の穴を開け、打栓後120℃、60分間高圧蒸気殺菌を行い、放冷して固形培養基とした。これに上記の液体種菌約20mlを接種し、まず暗所にて、温度23℃、湿度55%の条件下、培養基に見掛け上菌糸体がまわるまで25日間培養し、更に5日間培養を続け熟成させた。
【0042】
次に、照度20ルックス、温度15℃、湿度90%の条件下で10日間培養を続け、子実体原基を形成させた。原基が形成された培養基は、次に照度500ルックス、温度15℃、湿度90%の条件下5日間培養を続けて、成熟子実体を得た。
【0043】
得られた子実体は、1ビン当りホシアンズタケUFC−2386株(FREM P−21134)で121g、ホシアンズタケUFC−2387株(FREM P−21135)で122gであり、総栽培日数は、ホシアンズタケUFC−2386株(FREM P−21134)で49日間、ホシアンズタケUFC−2387株(FREM P−21135)で48日間であった。実施例2で得られた子実体の形状を図1に示す。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施例2で得られたホシアンズタケUFC−2386株(FREM P−21134)及びホシアンズタケUFC−2387株の子実体の形状を示す写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホシアンズタケ(Rhodotus palmatus)UFC−2386株(FREM P−21134)、ホシアンズタケ(Rhodotus palmatus)UFC−2387株(FREM P−21135)及びこれらの変異株から選択されるホシアンズタケ新菌株。
【請求項2】
請求項1記載のホシアンズタケ新菌株を菌床栽培してホシアンズタケの子実体を収穫することを特徴とするホシアンズタケの人工栽培方法。


【図1】
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【公開番号】特開2008−206464(P2008−206464A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−47201(P2007−47201)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】