説明

ホスホネート化合物

【課題】骨粗鬆症及びその他の骨代謝障害、癌、ウイルス感染症などのような医学障害の治療のためのホスホネート化合物の提供。
【解決手段】下式構造を有する化合物。


式中、R3は、任意のリンカーL上の官能基またはCα上の利用可能な酸素原子に連結された、薬学的に活性を有する化合物のホスホネート誘導体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、新規ホスホネート化合物、それらを含有する組成物、それらの製造法、ならびに例えば骨粗鬆症およびその他の骨代謝障害、癌、ウイルス感染症などのような、様々な医学的障害の治療のためのそれらの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ホスホネート化合物は、様々な治療的恩典を提供することが以前より知られている。治療上の恩典を有するホスホネート化合物の特定の種類は、ビスホスホネート、すなわちピロリン酸結合の中心酸素原子が炭素により置換されているピロホスホネート類似体である。様々な置換基を、この中心炭素原子に結合し、異なる程度の薬効を有するビスホスホネート化合物誘導体を生成することができる。これらの誘導体は、下記の一般構造を有する:
【化3】

式中、RaおよびRbは、独立して、ヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、ハロゲン、または様々なアルキルもしくはアリール基、またはこのような基の組合せより選択することができ、これらはさらに置換することができる。例としては、エチドロネート(式中、RaはCH3であり、およびRbはOHである);クロドロネート、ジクロロメチレンビスホスホン酸(Cl2MDP)(式中、RaおよびRbはClである);パミドロネート、3-アミノ-1-ヒドロキシプロピリデンビスホスホン酸(式中、Raはエチルアミノであり、かつRbはヒドロキシルである);アレンドロネート、4-アミノ-1-ヒドロキシブチリデンビスホスホン酸(式中、Raはプロピルアミノであり、およびRbはヒドロキシルである);オルパドロネート(Olpadronate)、3-ジメチルアミノ-1-ヒドロキシプロピリデンビスホスホン酸(式中、RaはジメチルアミノエチルでありおよびRbはヒドロキシルである);ならびに、アミノ-オルパドロネート(IG-9402)、3-(N,N-ジメチルアミノ)-1-アミノプロピリデンビスホスホネート(式中、RaはN,N-ジメチルアミノエチルであり、およびRbはNH2である)を含む。
【0003】
ビスホスホネートおよびそれらの置換された誘導体は、インビボにおける骨吸収を阻害するという固有の特性を有する。ビスホスホネートはさらに、造骨細胞においてアポトーシス(プログラムされた細胞死)を阻害することにより作用する。従ってそれらの用途についての適応症は、骨粗鬆症の治療および予防、ページェット病、転移性骨癌、副甲状腺機能亢進症、リウマチ様関節炎、疼痛性ジストロフィー、胸骨-肋骨鎖骨骨過形成(sterno-costoclavicular hyperostosis)、ゴーシェ病、エンゲルマン病、およびある種の骨格筋以外の障害の治療を含む(Papapoulos, S. E.、Osteoporosis、R. Marcus、D. FeldmanおよびJ. Kelsey編集、Academic Press社、San Diego、1996年、1210頁、表1(非特許文献1))。
【0004】
ビスホスホネートは治療的恩典を有する特性があるにもかかわらず、経口投与される物質としては薬学的欠点がある。ひとつの欠点は経口利用能が低いことであり:消化管から吸収されるのは経口投与用量の0.7%〜5%のような少量である。経口吸収は、食物と同時摂取された場合はさらに低下する。さらにいくつかの現在入手可能なビスホスホネート、例えばFOSAMAX(商標)(Merck社;アレンドロネートナトリウム)、SKELID(商標)(Sanofi社、チルドロネート)およびACTONE(商標)(Procter and Gamble社、リセドロネート)は、局所毒性を有し、食道過敏および潰瘍を生じることが知られている。アミノ-オルパドロネートのようなその他のビスホスホネートは、抗吸収作用(anti-resorptive effect)は持たないが(Van Beek, E.ら、J. Bone Miner Res.、11(10):1492-1497(1996)(非特許文献2))、骨細胞アポトーシスを阻害し、かつ正味の骨形成(net bone formation)を刺激することができる(Plotkin, L.ら、J. Clin. Invest.、104(10):1363-1374(1999)(非特許文献3)および米国特許第5,885,973号(特許文献1))。従って、親化合物の薬学的に活性を維持または増強する一方で、それらの望ましくない副作用を除去または軽減するような、化学的に修飾されたビスホスホネート誘導体を開発することは有用であると思われる。
【0005】
ビスホスホネートに加えて、モノホスホネートも、治療的恩典を提供することが知られている。治療的恩典を有するモノホスホネートのひとつのクラスは、例えばシドフォビル、環状シドフォビル、アデフォビル、テノフォビルなどの、抗ウイルス性ヌクレオチドホスホネートに加え、アジドチミジン、ガンシクロビル、アシクロビルなどの5'-ホスホネートおよびメチレンホスホネートである。この種の化合物において、糖部分の5'-ヒドロキシル、または完全な糖部分を含まない非環式ヌクレオシド(ガンシクロビル、ペンシクロビル、アシクロビル)におけるそれらの同等物は、リン−炭素結合で置換される。メチレンホスホネートの場合、メチレン基は、5'-ヒドロキシルまたはその同等物で置換され、かつその炭素原子は次にホスホネートと共有結合する。本発明の実施における使用のために考案された化合物を含む、様々なAZT構造を以下に示す。AZTそれ自身は左側に示している。化合物Aは、AZT-モノホスホネートであり、これは糖とリン酸の間に通常のホスホジエステル結合を有している。対照的に、化合物B(ALT 5'-ホスホネート)および化合物C(AZT 5'-メチレンホスホネート)においては、3'-アジド2',3'-ジデオキシリボースの5'-ヒドロキシルが存在せず、かつリン−炭素結合(AZTホスホネート)またはリン−炭素結合により連結されたメチレン(AZTメチレンホスホネート)のいずれかにより置換されている。化合物Bおよび化合物Cは、本発明の実施において有用な化合物の例である。
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【0006】
この種の化合物は、抗増殖性または抗ウイルス性のヌクレオチドとして活性を有する可能性がある。細胞代謝において、2個の追加のリン酸化が生じ、ヌクレオシド三リン酸の同等物を示しているヌクレオチドホスホネート二リン酸を形成する。抗ウイルス性ヌクレオチドホスホネート二リン酸は、ウイルスRNAもしくはDNAポリメラーゼまたは逆転写酵素の選択的阻害剤である。すなわちウイルスポリメラーゼに対するそれらの阻害作用は、哺乳類細胞のDNAポリメラーゼα、βおよびγまたは哺乳類RNAポリメラーゼのそれらの阻害の程度よりも遙かに大きい。逆に、抗増殖性ヌクレオチドホスホネート二リン酸は、癌細胞のDNAおよびRNAポリメラーゼを阻害し、かつ正常細胞のDNAおよびRNAポリメラーゼに対する非常に低い選択性を示し得る。ヌクレオチドホスホネートは、消化管からの吸収が悪いので、これらは頻繁な非経口投与が必要とされる(例えばシドフォビル)。さらに、負に帯電したホスホネート部分は、細胞侵入を妨げ、低下された抗ウイルスまたは抗増殖活性をもたらす。驚くべきことに、本発明の化合物は、この種の物質の欠点を克服している。
【0007】
抗ウイルス性ホスホネートの薬学的に活性を有する物質が公知である;下記の米国特許に、ヌクレオチドホスホネート類似体に関する研究が開示されている:第5,672,697号(特許文献2)(ヌクレオシド-5'-メチレンホスホネート)、第5,922,695号(特許文献3)(抗ウイルス性ホスホノメトキシヌクレオチド類似体)、第5,977,089号(特許文献4)(抗ウイルス性ホスホノメトキシヌクレオチド類似体)、第6,043,230号(特許文献5)(抗ウイルス性ホスホノメトキシヌクレオチド類似体)、第6,069,249号(特許文献6)。これまでに、アミノ、カルボキシル、ヒドロキシルまたはスルフヒドリル官能基を有するホスホネート非含有薬物に共有結合したアルキルグリセロールリン酸の調製および使用が、明らかにされている。これらのプロドラッグは、選択的に該薬物とアルキルグリセロールリン酸の間にリンカー基または1個もしくは2個の追加のリン酸エステルを含む(米国特許第5,411,947号(特許文献7)および米国特許出願第08/487,081号(特許文献8))。クロロメタンジホスホン酸の不完全なエステル(partial ester)が公知であり(米国特許第5,376,649号(特許文献9))およびクロドロネートの二無水物が報告されている(Ahlmarkら、J. Med. Chem.、42:1473-1476(1999)(非特許文献4))。しかし、これらの不完全なエステルは、化学的または生化学的転換により活性ビスホスホネートを放出しないことが知られている(Niemi, R.ら、J. Chrom. B.、701:97-102(1997)(非特許文献5))。抗ウイルス性ヌクレオシドに結合されているアルキルグリセロールリン酸残基を含有するプロドラッグ(米国特許第5,223,263号(特許文献10))、またはホスホノカルボキシレートを含有するプロドラッグ(米国特許第5,463,092号(特許文献11))も開示されている。
【0008】
従って、ウイルス感染症および不適切な細胞増殖により惹起されたもの(例えば癌)のような、様々な疾患を治療するための、より毒性が低く、より効果的な薬剤が依然として必要とされている。従って本発明の目的は、例えば抗ウイルス性および抗新生物性薬剤のような、薬学的に活性を有する物質の化学的に修飾されたホスホネート誘導体を開発することである。これらの修飾された誘導体は、親化合物の効力を増強する一方で、それを必要とする被験者に投与した場合の有害な副作用を最小化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,885,973号
【特許文献2】米国特許第5,672,697号
【特許文献3】米国特許第5,922,695号
【特許文献4】米国特許第5,977,089号
【特許文献5】米国特許第6,043,230号
【特許文献6】米国特許第6,069,249号
【特許文献7】米国特許第5,411,947号
【特許文献8】米国特許出願第08/487,081号
【特許文献9】米国特許第5,376,649号
【特許文献10】米国特許第5,223,263号
【特許文献11】米国特許第5,463,092号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Papapoulos, S. E.、Osteoporosis、R. Marcus、D. FeldmanおよびJ. Kelsey編集、Academic Press社、San Diego、1996年、1210頁、表1
【非特許文献2】Van Beek, E.ら、J. Bone Miner Res.、11(10):1492-1497(1996)
【非特許文献3】Plotkin, L.ら、J. Clin. Invest.、104(10):1363-1374(1999)
【非特許文献4】Ahlmarkら、J. Med. Chem.、42:1473-1476(1999)
【非特許文献5】Niemi, R.ら、J. Chrom. B.、701:97-102(1997)
【発明の概要】
【0011】
発明の簡単な説明
本発明は、ホスホネート化合物の類似体を提供する。本発明に従い使用するために考案されたホスホネート化合物は、骨吸収を低下させるか、または骨芽細胞もしくは骨細胞のアポトーシスを阻害するようなものに加え、癌、様々なウイルス感染症などの治療に有用であるようなヌクレオチドホスホネート類似体の生体活性、選択性、または生物学的利用能を改良するものを含む。本発明の化合物は、置換または非置換のアルキルグリセロール、アルキルプロパンジオール、アルキルエタンジオール、または関連した部分に共有結合した(直接的またはリンカー分子を介して間接的)ホスホネートを含んでいる。本発明の別の局面において、本明細書に記載されたホスホネート化合物の類似体を含有する薬学的製剤が提供される。
【0012】
本発明の別の局面において、様々な治療法、例えば哺乳類において骨吸収を治療または予防するための方法、骨芽細胞および骨細胞のアポトーシスを妨げることにより骨形成を増加させる方法、骨量および強度を増加させる方法、ウイルス感染症を治療する方法、例えば癌のような不適切な細胞増殖により引き起された障害を治療する方法などが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る化合物1-O-ヘキサデシルオキシプロパンアレンドロネートにおける、MLO-Y4骨細胞のデキサメタゾン誘導性のアポトーシスに対する作用を要約する。線分は、3回の個別の測定値の平均±SDを表している。白抜きの棒はデキサメタゾンが存在しないことを表し、黒棒は10-4Mのデキサメタゾンが存在することを示す。
【図2】本発明に係る化合物1-O-ヘキサデシルオキシプロパンアレンドロネートにおける、頭蓋冠細胞のデキサメタゾン誘導性のアポトーシスに対する作用を要約する。線分は、3回の個別の測定値の平均±SDを表している。灰色の棒はデキサメタゾンが存在しないことを表し、黒棒は10-4Mのデキサメタゾンが存在することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
本発明のホスホネート化合物は下記の構造を有する:
【化8】


式中、
R1およびR1'は、独立して、-H、任意に置換された-O(C1-C24)アルキル、-O(C1-C24)アルケニル、-O(C1-C24)アシル、-S(C1-C24)アルキル、-S(C1-C24)アルケニル、または-S(C1-C24)アシルであり、ただし少なくとも1個のR1およびR1'はHではなく、かつ該アルケニルまたはアシル部分は任意に1〜6個の二重結合を有し;
R2およびR2'は、独立して、-H、任意に置換された-O(C1-C7)アルキル、-O(C1-C7)アルケニル、-S(C1-C7)アルキル、-S(C1-C7)アルケニル、-O(C1-C7)アシル、-S(C1-C7)アシル、-N(C1-C7)アシル、-NH(C1-C7)アルキル、-N((C1-C7)アルキル))2、オキソ、ハロゲン、-NH2、-OH、または-SHであり;
R3は、任意のリンカーL上の官能基またはCα上の利用可能な酸素原子に連結された、薬学的に活性を有するホスホネート、ビスホスホネートまたは薬学的に活性を有する化合物のホスホネート誘導体であり;
Xは、存在する場合には、
【化9】


であり;
Lは、原子価結合または式-J-(CR2)t-G-の二官能連結分子であり(式中、tは1〜24の整数であり、JおよびGは、独立して、-0-、-S-、-C(O)O-、または-NH-であり、かつRは、-H、置換もしくは非置換のアルキル、またはアルケニルである);
mは0〜6の整数であり;および
nは0または1である。
【0015】
好ましい態様において、m=0、1または2である。これらの好ましい態様において、R2およびR2'は、好ましくは-Hであり、その結果プロドラッグは、治療用ホスホネートのエタンジオール、プロパンジオールまたはブタンジオール誘導体である。好ましいエタンジオールホスホネート種は下記の式を有する:
【化10】

式中、R1、R1'、R3、Lおよびnは先に定義したものである。
【0016】
好ましいプロパンジオール種は下記の式を有する :
【化11】

式中、m=1であり、およびR1、R1'、R3、Lおよびnは先の一般式において定義したものである。
【0017】
好ましいグリセロール種は下記の式を有する:
【化12】

式中、m=1、R2=H, R2'=OH、ならびにCα上のR2およびR2'は両方とも-Hである。グリセロールは光学活性分子である。グリセロールの立体特異性番号順転換(stereospecific numbering convention)を用いると、sn-3位は、グリセロールキナーゼによりリン酸化される位置である。グリセロール残基を有する本発明の化合物において、-(L)n-R3部分は、グリセロールのsn-3またはsn-1位のいずれかに結合することができる。
【0018】
本発明の薬学的に活性を有する物質の全ての種において、R1は好ましくは、式-O-(CH2)t-CH3を有するアルコキシ基である(式中、tは0〜24である)。より好ましくは、tは11〜19である。最も好ましくは、tは15または17である。
【0019】
好ましいR3基は、臨床的に有用であることが知られているビスホスホネートを含み、例えば下記の化合物を含む:
エチドロネート:1-ヒドロキシエチリデンビスホスホン酸(EDHP);
クロドロネート:ジクロロメチレンビスホスホン酸(Cl2MDP);
チルドロネート:クロロ-4-フェニルチオメチレンビスホスホン酸;
パミドロネート:3-アミノ-1-ヒドロキシプロピリデンビスホスホン酸(ADP);
アレンドロネート:4-アミノ-1-ヒドロキシブチリデンビスホスホン酸;
オルパドロネート:3-ジメチルアミノ-1-ヒドロキシプロピリデンビスホスホン酸(ジメチル-APD);
イバンドロネート:3-メチルペンチルアミノ-1-ヒドロキシプロピリデンビスホスホン酸(BM21.0955);
EB-1053:3-(1-ピロリジニル)-1-ヒドロキシプロピリデンビスホスホン酸;
リセドロネート:2-(3-ピリジニル)-1-ヒドロキシ-エチリデンビスホスホン酸;
アミノ-オルパドロネート:3-(N,N-ジイメチルアミノ-1-アミノプロピリデン)ビスホスホネート(IG9402)など。
【0020】
R3も同様に、様々なホスホネート含有ヌクレオチド(または、それらの対応するホスホネートに誘導され得るヌクレオシド)より選択することができ、これも本明細書において使用することが考案されている。好ましいヌクレオシドは、不適切な細胞増殖により惹起された障害の治療に有用なもの、例えば2-クロロ-デオキシアデノシン、1-β-D-アラビノフラノシル-シチジン(シタラビン、ara-C)、フルオロウリジン、フルオロデオキシウリジン(フロクスウリジン)、ゲムシチビン、クラドリビン、フルダラビン、ペントスタチン(2'-デオキシコフォルマイシン)、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、および置換または非置換の1-β-D-アラビノフラノシル-グアニン(ara-G)、1-β-D-アラビノフラノシル-アデノシン(ara-A)、1-β-D-アラビノフラノシル-ウリジン(ara-U)などを含む。
【0021】
ウイルス感染症の治療に有用なヌクレオシドも、R3基として使用するためにそれらの対応する5'-ホスホネートに転換され得る。このようなホスホネート類似体は、典型的には抗ウイルス性ヌクレオシドの5'-ヒドロキシルが置換されたホスホン酸基(-P03H2)またはメチレンホスホン酸基(-CH2P03H2)のいずれかを含む。5'-ヒドロキシルの-P03H2置換により誘導された抗ウイルス性ホスホネートの例のいくつかを以下に示す:
【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【0022】
5'-ヒドロキシルの-CH2-P03H2置換により誘導された抗ウイルス性ホスホネートの例のいくつかを以下に示す:
【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

本発明の実施において使用するために考案された他の好ましい抗ウイルス性ヌクレオチドホスホネートは、同様に、ddA、ddI、ddG、L-FMAU、DXG、DAPD、L-dA、L-dI、L-(d)T、L-dC、L-dG、FTC、ペンシクロビルなどを含む抗ウイルス性ヌクレオシドに由来している。
【0023】
加えて、シドフォビル、環式シドフォビル、アデフォビル、テノフォビルなどの抗ウイルス性ホスホネートは、本発明のR3基として使用することができる。
【0024】
本発明の特定の化合物は、例えば糖部分内のように、1個またはそれ以上のキラル中心を有し、従って光学活性体で存在することができる。同様に、これらの化合物がアルケニル基または不飽和のアルキルもしくはアシル部分を含むならば、該化合物のcis-およびtrans-異性体で存在する可能性がある。追加の不斉炭素原子は、アルキル基のように置換基中に存在することができる。ラセミ混合物に加え、cis-およびtrans-異性体混合物を含む、R異性体、S異性体、およびそれらの混合物が本発明により考察されている。このような異性体およびそれらの混合物は全て本発明に含まれることが意図される。特定の立体異性体が望ましい場合、不斉中心を含み、かつ既に分割されているような出発材料の立体特異性反応を使用することによる、当技術分野において公知の方法により、または代替的には、立体異性体の混合物および公知の方法による分割につながる方法により調製することができる。
【0025】
薬学的に活性を改変するかまたは経口吸収を増大させるために、本発明に従って誘導することができる多くのホスホネート化合物、例えば下記の特許に開示された化合物などが存在し、これらは各々その全体が本明細書に参照として組み入れられる:米国特許第3,468,935号(エチドロネート)、第4,327,039号(パルミドロネート)、第4,705,651号(アレンドロネート)、第4,870,063号(ビスホスホン酸誘導体)、第4,927,814号(ジホスホネート)、第5,043,437号(アジドジデオキシヌクレオシドのホスホネート)、第5,047,533号(非環式プリンホスホネートヌクレオチド類似体)、第5,142,051号(ピリミジンおよびプリン塩基のN-ホスホニルメトキシアルキル誘導体)、第5,183,815号(骨活性化物質)、第5,196,409号(ビスホスホネート)、第5,247,085号(抗ウイルス性プリン化合物)、第5,300,671号(Gem-ジホスホン酸)、第5,300,687号(トリフルオロメチルベンジルホスホネート)、第5,312,954号(ビス-およびテトラキス-ホスホネート)、第5,395,826号(グアニジンアルキル-1,1-ビスホスホネート誘導体)、第5,428,181号(ビスホスホネート誘導体)、第5,442,101号(メチレンビスホスホン酸誘導体)、第5,532,226号(トリフルオロメチルベンジルホスホネート)、第5,656,745号(ヌクレオチド類似体)、第5,672,697号(ヌクレオシド-5'-メチレンホスホネート)、第5,717,095号(ヌクレオチド類似体)、第5,760,013号(チミジレート類似体)、第5,798,340号(ヌクレオチド類似体)、第5,840,716号(ホスホネートヌクレオチド化合物)、第5,856,314号(チオ-置換された窒素を含有するヘテロ環式ホスホネート化合物)、第5,885,973号(オルパドロネート)、第5,886,179号(ヌクレオチド類似体)、第5,877,166号(鏡像異性体的に純粋な2-アミノプリンホスホネートヌクレオチド類似体)、第5,922,695号(抗ウイルス性ホスホノメトキシヌクレオチド類似体)、第5,922,696号(プリンのエチレン性およびアレン性ホスホネート誘導体)、第5,977,089号(抗ウイルス性ホスホノメトキシヌクレオチド類似体)、第6,043,230号(抗ウイルス性ホスホノメトキシヌクレオチド類似体)、第6,069,249号(抗ウイルス性ホスホノメトキシヌクレオチド類似体);ベルギー特許第672205号(クロドロネート);欧州特許第753523号(アミノ-置換されたビスホスホン酸);欧州特許出願第186405号(ゲミナルジホスホネート);など。
【0026】
ある種のビスホスホネート化合物は、ヒトを含む哺乳類においてスクアレンシンターゼを阻害する能力および血清コレステロールレベルを低下させる能力を有する。これらのビスホスホネートの例は、例えば、Paulsらの米国特許第5,441,946号および第5,563,128号「親油性アミンのホスホネート誘導体(Phosphonate derivatives of lipophilic amines)」に開示されており、これらは両方ともその全体が本明細書に参照として組み入れられる。本発明に係るこれらのスクアレンシンターゼ阻害化合物の類似体、およびヒトにおける脂質障害の治療におけるそれらの使用は、本発明の範囲内である。本発明のビスホスホネートを経口的または局所的に使用し、歯周病を予防または治療することができることが、米国特許第5,270,365号に開示されており、これはその全体が本明細書に参照として組み入れられる。
【0027】
本明細書において使用される「アルキル」という用語は、1〜24個の炭素原子の一価の直鎖もしくは分枝鎖または環式ラジカルであって、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ヘキシルなどを含むものを意味する。
【0028】
本明細書において使用される「置換されたアルキル」という用語は、さらにヒドロキシ、アルコキシ(低級アルキル基の)、メルカプト(低級アルキル基の)、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、ヘテロ環式、置換されたヘテロ環式、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、アリールオキシ、置換されたアリールオキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、ニトロン、アミノ、アミド、-C(O)H、アシル、オキシアシル、カルボキシル、カルバメート、スルホニル、スルホンアミド、スルフリルなどより選択される1個または複数の置換基を持つアルキル基を意味する。
【0029】
本明細書において使用される「アルケニル」という用語は、1個または複数の炭素-炭素二重結合を有し、かつ約2〜最大24個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のヒドロカルビル基を意味し、かつ「置換されたアルケニル」とは、前述の1個または複数の置換基をさらに有するアルケニル基を意味する。
【0030】
本明細書において使用される「アリール」という用語は、6個から最大14個の範囲の炭素原子を有する芳香族基を意味し、かつ「置換されたアリール」とは、前述の1個または複数の置換基をさらに有するアリール基を意味する。
【0031】
本明細書において使用される「ヘテロアリール」という用語は、環構造の一部として1個または複数のヘテロ原子(例えば、N、0、Sなど)を含み、かつ3個から最大14個の範囲の炭素原子を有する芳香族基を意味し、かつ「置換されたヘテロアリール」とは、前述の1個または複数の置換基をさらに有するヘテロアリール基を意味する。
【0032】
本明細書において使用される「結合」または「原子価結合」という用語は、電子対からなる原子間の連結を意味する。
【0033】
本明細書において使用される「薬学的に許容される塩」という用語は、酸および塩基の付加塩を意味する。
【0034】
本明細書において使用される「プロドラッグ」という用語は、化学的または代謝的に切断可能な基を有し、かつ加溶媒分解によりもしくはインビボの生理的条件下において薬学的に活性を有する化合物となる、薬学的に活性を有する化合物の誘導体を意味する。
【0035】
ホスホネート類似体は、ヒドロキシル基により、1-O-アルキルグリセロール、3-O-アルキルグリセロール、1-S-アルキルチオグリセロール、またはアルコキシ-アルカノールに共有結合された、治療的に有効なホスホネート(または治療的に有効な化合物のホスホネート誘導体)を含み、消化管において、親化合物よりもより効率的に吸収され得る。この類似体の経口投与用量は、哺乳類の消化管からそのまま取込まれ、かつこの活性薬物は、内在性酵素の作用により、インビボ放出される。本発明のホスホネート類似体は、対応する誘導されていない化合物よりもより高度な生物活性を有し得る。
【0036】
本発明の化合物は、ホスホネート含有部分がアルキル-グリセロールまたはアルコキシ-アルカノール部分に直接連結するため、およびホスホン酸結合の存在が酵素による遊離薬物への転換を妨害するために、先行技術において説明されたアルキルグリセロールリン酸プロドラッグよりも改良されている。これらの基の間のその他のリンカーは、改良された類似体において存在することができる。例えば、式-O-(CH2)n-C(O)O-を有する二官能リンカー(式中、nは1〜24である)は、ホスホネートをアルコキシ-アルカノールまたはアルキルグリセロール部分のヒドロキシル基に結合することができる。
【0037】
前述のことにより、本発明のホスホネートはより高度に経口吸収されうる。さらに血漿または消化管酵素ではなく、細胞の酵素が、この複合体を遊離ホスホネートへ転換すると考えられる。アルコキシ-アルカノールホスホネートの更なる利点は、同時投与される食物がホスホネート吸収を低下または除去する傾向が、非常に低下または除去され、その結果、より高度の血漿レベルおよびより良い患者の服薬遵守をもたらすことである。
【0038】
本発明の化合物は、錠剤、カプセル剤、液剤、乳剤もしくは懸濁剤、吸入される液剤もしくは固形粒子、スプレーのようなマイクロカプセル化した粒子、経皮貼付剤のような塗布による皮膚を介して、または経直腸的、例えば坐薬の形状で投与することができる。本発明の親油性プロドラッグ誘導体は、経皮吸収投与および送達系に特に良く適しており、かつ同じく練り歯磨きとして使用してもよい。投与はさらに、注射可能な液剤の形状で非経口的に投与することもできる。
【0039】
組成物は、例えばカプセル剤、錠剤、エアゾール、液剤、懸濁剤のような通常の形状で、または局所塗布用担体と共に調製することができる。本発明の化合物を含有する薬学製剤は、例えば「レミントンの薬科学(Remington's Pharmaceutical Science)」(1985年)に記載されたような常法に従い調製することができる。
【0040】
使用された薬学的担体または希釈剤は、通常の固形担体または液体担体であることができる。固形担体の例には、乳糖、ショ糖、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはセルロースの低級アルキルエーテルがある。液体担体の例は、シロップ、ピーナッツ油、オリーブ油、リン脂質、脂肪酸、脂肪酸アミン、ポリオキシエチレン、または水である。担体または希釈剤は、グリセリルモノステアレートまたはジステアレートのような、当技術分野において公知の持効性物質のいずれかを、単独でまたはワックスと混合して含むことができる。
【0041】
固形担体が経口投与のために使用される場合には、この調製物は、打錠されるか、または硬質ゼラチンカプセル内に粉末またはペレットの形状で入れることができる。固形担体の用量は広範に変動するが、通常約25mg〜約1gである。液体担体が使用される場合、その調製物は、シロップ剤、乳剤、軟質ゼラチンカプセル剤、または水性もしくは非水性の液体懸濁液または溶液であるような無菌の注射可能な溶液であることができる。
【0042】
錠剤は、活性成分(すなわち、1種または複数の本発明の化合物)と、薬学的に不活性の無機もしくは有機の担体、希釈剤、および/または賦形剤との混合により調製される。錠剤のために使用することができるこのような賦形剤の例は、乳糖、コーンスターチまたはそれらの誘導体、タルク、ステアリン酸、またはそれらの塩である。ゼラチンカプセル剤に適した賦形剤の例は、植物油、ワックス、脂肪、半固形、および液体ポリオールである。これらのビスホスホネートプロドラッグも、マイクロカプセル化した形状で製造することができる。
【0043】
点鼻投与については、調製物は、エアゾール適用のための液体担体、特に水性担体中に溶解または懸濁化された本発明の化合物を含有することができる。この担体は、プロピレングリコールのような可溶化剤、界面活性剤、レシチンまたはシクロデキストリンのような吸収増強剤、または保存剤を含んでもよい。
【0044】
非経口注射用の本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容される滅菌された水性もしくは非水性の液体、分散体、懸濁液、または乳液に加え、使用直前に滅菌した注射用溶液または分散液中で再構成するための無菌散剤を含有することができる。
【0045】
溶液およびシロップ剤の調製に適当な賦形剤は、水、ポリオール、ショ糖、転化糖、ブドウ糖などである。注射用溶液の調製に適当な賦形剤には、水、アルコール、ポリオール、グリセロール、植物油などがある。
【0046】
医薬品には、さらに例えば保存剤、可溶化剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味剤、着色剤、香味剤、緩衝剤、コーティング剤、酸化防止剤、希釈剤などのような、様々な添加成分を含有することができる。
【0047】
選択的には、本発明の薬学的組成物は、例えば抗生物質または他の薬学的に活性を有する物質のような、様々な活性を示す1種または複数の化合物と組合せられた一般的処方に従って化合物を含有してもよい。このような組合せも本発明の範囲内である。
【0048】
本発明は、骨代謝、ウイルス感染症、不適切な細胞増殖などに関連した哺乳類の疾患を治療する方法を提供する。これらの方法は特に、治療的有効量の本発明のプロドラッグを、それらを必要とするヒトまたは他の哺乳類へ投与する段階を含む。このような治療に適した適応症は、老人性骨粗鬆症、閉経後またはステロイド誘導性の骨粗鬆症、ページェット病、転移性骨癌、副甲状腺機能亢進症、リウマチ様関節炎、疼痛性ジストロフィー、胸骨-肋骨鎖骨骨過形成、ゴーシェ病、エンゲルマン病、ある種の骨格筋以外の障害および歯周病、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザ、単純ヘルペスウイルス(HSV)、ヒトヘルペスウイルス6、サイトメガロウイルス(CMV)、B型肝炎ウイルス、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、水痘帯状疱疹ヘルペスウイルス、リンパ腫、白血病のような血液学的疾患などを含む。
【0049】
本発明のある局面において、哺乳類、特にヒトにおける骨量減少の予防または治療の方法が提供され、本方法は、治療的有効量の本発明の化合物をヒトまたは哺乳類に投与する段階を含む。本発明の骨吸収を阻害するビスホスホネートプロドラッグは、ビスホスホネートからプロドラッグが調製され、これが有効であることが知られている状態において、破骨細胞が媒介した骨吸収または骨量減少に対抗するため、治療において有用である。このような治療に適した適応症は、骨粗鬆症、特に閉経後の女性における骨粗鬆症、長期の糖質コルチコイド療法に随伴する骨粗鬆症、および骨ページェット病を含む。同じくビスホスホネート化合物クロドロネート(Ostac、Boehringer-Mannheim社、Mannheim、Germany)は、遠位部転移のリスクの高い乳癌患者において、内臓に加え骨への転移を低下させることが知られている(Diel, I.J.ら、 New Engl. J. Med.、339(60 357-363)(1998))。本発明のビスホスホネートプロドラッグの効能は、親化合物に関するものと同じ方法に従い評価することができる。これらは、腰椎、大腿骨頚部、転子、前腕および全身の骨塩密度の比較測定;椎骨骨折、骨粗鬆症における脊椎変形および身長の測定、転移性疾患における骨病巣の骨スキャニングまたはx線写真による確定などとの組合せを含む。
【0050】
本発明の別の局面において、骨芽細胞および骨細胞のアポトーシスを阻害し、より多い正味の骨形成率をもたらす一方で、実質的に破骨細胞の機能を変更しない本発明の骨同化作用促進性化合物を投与する段階により、哺乳類、特にヒトにおいて、骨量および強度を増す方法が提供される(Plotkinら、J. Clin. Invest.、104:1363-1374(1999)およびVan Beekら、J. Bone Min. Res.、11:1492(1996))。
【0051】
さらに別の本発明の局面において、ウイルス感染症により引き起された疾患を治療する方法が提供される。このような治療に適した適応症は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザ、単純ヘルペスウイルス(HSV)、ヒトヘルペスウイルス6、サイトメガロウイルス(CMV)、B型およびC型肝炎ウイルス、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、水痘帯状疱疹ヘルペスウイルス、およびオルトポックスウイルスにより惹起された疾患(例えば、大痘瘡および小痘瘡、ワクシニア、天然痘、牛痘、ラクダ痘疹、サル痘など)、エボラウイルス、パピローマウイルスなどのような易感染性ウイルスを含む。
【0052】
本発明のさらに別の局面において、例えば黒色種、肺癌、膵癌、胃癌、結腸癌および直腸癌、前立腺癌および乳癌、白血病およびリンパ腫などの癌のような、不適切な細胞増殖により惹起された疾患を治療する方法が提供される。本発明の化合物としての使用に関してそれらのヌクレオチドホスホネートに転換することができる抗癌剤には、シタラビン(ara-C)、フルオロウリジン、フルオロデオキシウリジン(フロクスウリジン)、ゲムシチビン、クラドリビン、フルダラビン、ペントスタチン(2'-デオキシコフォルマイシン)、6-メルカプトプリンおよび6-チオグアニン、ならびに置換または非置換のアラ-アデノシン(ara-A)、アラ-グアノシン(ara-G)、およびアラウリジン(ara-U)が含まれるが、これらに限定されることはない。本発明の抗癌化合物は、単独で、または他の代謝拮抗物質もしくはアルカロイド、トポイソメラーゼ阻害剤、アルキル化剤、抗腫瘍性抗生物質などのような他の種類の抗癌剤と組合わせて使用することができる。
【0053】
本発明のプロドラッグは、望ましい場合には、経口、非経口、局所的、経直腸的、および他の経路を介して、適当な単位用量で投与することができる。
【0054】
本明細書において使用される「非経口」という用語は、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内、もしくは硝子体内の注射、または点滴法を意味する。
【0055】
「局所的」という用語は、経直腸的および吸入スプレーによる投与、さらにはより一般的である口および鼻の皮膚および粘膜の経路、ならびに練り歯磨き中を包含している。
【0056】
「有効量」という用語は、本発明のホスホネートプロドラッグにおいて使用される場合、前述の疾患を予防または逆行させる用量である。特に骨代謝に関連した疾患に関しての有効量は、異常もしくは過剰な骨吸収、もしくは加齢、特に閉経後の女性において生じるような骨吸収を予防、減弱、または逆行させる用量、または乳癌において骨への転移および内臓への転移を予防もしくは対抗する用量である。
【0057】
ウイルス感染症または不適切な細胞増殖(例えば癌)に関連した疾患に関しての「有効量」とは、抗ウイルス性または抗癌性親化合物の推奨量を参照し決定される。選択された用量は、選択された化合物の活性、投与経路、治療される病態の重症度、ならびに治療される患者の状態および病歴に応じて変動すると思われる。しかし、所望の治療的効果を達成するのに必要とされる用量よりも低いレベルの化合物の用量で開始し、かつ所望の効果が達成されるまで用量を漸増することは当技術分野の範囲内である。望ましい場合には、一日の有効用量を、投与を目的とした多回用量、例えば1日2〜4回の用量に分割することができる。しかし、任意の特定の患者についての具体的服用量レベルは、体重、全身の健康状態、食事、時間、投与経路、併用薬、ならびに治療される疾患の重症度を含む、様々な要因により決定されることは理解されると思われる。
【0058】
一般に、本発明の化合物は、活性成分を1%〜100%含有する単位剤形に調剤される。治療用量の範囲は、患者、例えばヒトに薬物として投与される場合は、約0.01〜約1,000mg/kg/日であり、好ましくは約0.10mg/kg/日〜100mg/kg/日である。本発明の薬学的組成物中の活性成分の実際の用量レベルは、特定の患者について所望の治療的反応を達成するのに有効である活性化合物の用量を投与のために変動させることができる。
【0059】
多くの動物実験により、関連する臨床疾患を模倣するように設計された実験条件下で、骨量減少の防止においてビスホスホネートの効能が示されている。これらの試験を基に、ビスホスホネートの作用を評価するためのいくつかの小動物モデル系を利用することができる。これらの試験はさらに、本発明のビスホスホネートプロドラッグの比較のための効能の測定において有用である。ビスホスホネート治療の評価は、典型的には、処理動物群と非処理動物群の間での、大腿部の灰分質量および、例えば骨梁容積として測定されたような骨量の測定を必要とする。Thompson, D.ら、J. Bone and Mineral Res.、5(3):279-286(1990)は、アミノヒドロキシブタンビスホスホネートで処理した固定したラットにおける骨量減少の阻害を評価するためのこのような方法の利用を明らかにしている。Yamamoto, M.ら、Calcif Tissue Int.、53:278-282(1993)は、ラットにおいて甲状腺機能亢進症を引き起し、ヒトの甲状腺機能亢進におけるものと類似した骨の変化を生じ、従ってビスホスホネート処理群と非処理群を、オステオカルシン測定値を基に生化学的に、ならびに海綿質の骨容積の差を含む組織形態学的分析、および骨切片における類骨、破骨細胞および骨芽細胞表面の組織学的比較により比較した。Seedor, J.G.ら、J. Bone and Mineral Res.、6(4):339-346(1991)は、大腿部の灰分質量および脛骨の骨梁容積の組織形態学的分析による、卵巣摘出ラットにおける骨量減少に対抗するアレンドロネートの作用の試験を記載している。成長期ラットの骨端の組織学的試験を含むSchenkアッセイ法も、スクリーニングアッセイ法として使用することができる。様々な戦略により骨減少症とされた実験ラットにおける本発明の化合物の骨吸収対抗作用を評価するためのスクリーニング試験の例は、実施例14に示されている。
【0060】
本発明の化合物は、一般にはスキームI〜VIに示されたような、様々な方法で調製することができる。以下に説明された一般的ホスホンネートエステル化法は例証のみを目的と提供され、これらはいかなる意味においても本発明を制限するものとして構成されてはいない。実際、ホスホン酸のアルコールによる直接縮合に関していくつかの方法が開発されている(例えば、R. C. Larock、「Comprehensive Organic Transformations」、VCH、New York、1989年、966頁およびその中の参考文献を参照のこと)。これらの例において説明された化合物および中間体の単離および精製は、望ましい場合には、例えば濾過、抽出、結晶化、フラッシュカラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、蒸留またはこれらの手法の組合せのような、任意の適当な分離法または精製法により行うことができる。適当な分離法および単離法の詳細な説明は下記の実施例に示す。当然ながら、他の同等の分離法および単離法も使用することができる。
【0061】
スキームIは、パミドロネートまたはアレンドロネートのような、1級アミノ基を含むビスホスホネートプロドラッグの合成を概説している。実施例1は、1-O-ヘキサデシルオキシプロピル-アレンドロネート(HDP-アレンドロネート)または1-O-ヘキサデシルオキシプロピル-パミドロネート(HDP-パミドロネート)の合成の条件を提供する。本方法において、ピリジン溶液中のジメチル4-フタルイミドブタノイルホスホネート(1b、米国特許第5,039,819号に開示されたように調製)およびヘキサデシルオキシプロピルメチルホスファイト(2)の混合物を、トリエチルアミンにより処理し、ビスホスホネートテトラエステル3bを得て、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製する。中間体2は、Kers, A.、Kers, J.、Stawinski, I.、Sobkowski, M.、Kraszewski, A.、Synthesis、1995年4月、427-430頁に記載された、亜リン酸ジフェニルのエステル転移により得る。従って、ピリジン溶液中の亜リン酸ジフェニルを、最初にヘキサデシルオキシプロパン-1-オールで処理し、次にメタノールで処理し、化合物2が提供される。
【0062】
スキームI
【化21】

【0063】
この方法の重要な局面は、他の長鎖のアルコールを、ヘキサデシルプロパン-1-オールの代わりに使用し、様々な本発明の化合物を生成することができることである。中間体3bのアセトニトリルを溶媒とするブロモトリメチルシランによる処理によって、メチルエステルが選択的に切断され、モノエステル4bが生じる。化合物4bの混合溶媒系(20%メタノール/80%1,4-ジオキサン)中のヒドラジンによる処理によって、示されるようにフタルイミド保護基の除去が行われる。所望のアレンドロネートプロドラッグを濾過により収集し、メタノール性アンモニア(methanolic ammonia)による処理によりトリアンモニウム塩へと転換する。
【0064】
スキームIIは、1級アミノ基を欠いているビスホスホネート類似体の合成を示す。この場合、処理工程は、フタルイミド基による保護と、それに続くヒドラジン分解による脱保護が不要であること以外は、スキームIと同様である。
【0065】
スキームII
【化22】

【0066】
アミノ-オルパドロネートのような1-アミノ基を有するビスホスホネートは、わずかに変更されたスキームIIIに示された方法を用いて、本発明のプロドラッグの類似体に転換することができる。
【0067】
スキームIII
【化23】

【0068】
化合物2および3-(ジメチルアミノ)プロピオニトリルの混合物を、無水HClにより処理し、続いて亜リン酸ジメチルを添加することによって、テトラエステル3を得る。ブロモトリメチルシランによる脱メチル化の後、ヘキサデシルオキシプロピル-アミノオルパドロネートが生じる。
【0069】
スキームIVは、脂質基が、ホスホネートエステルではなく、むしろ親化合物の1級アミノ基に結合されているビスホスホネート類似体の合成を例示する。
【0070】
スキームIV
【化24】

【0071】
スキームVは、シドフォビル、環式シドフォビル、および他のホスホネートエステルのアルキルグリセロールまたはアルキルプロパンジオール類似体の一般的合成を例示する。2,3-イソプロピリデングリセロール1をジメチルホルムアミド中のNaHにより処理し、続いてメタンスルホン酸アルキルとの反応によって、アルキルエーテル2が生じる。酢酸処理によるイソプロピリデン基の除去、それに続くピリジン中でのトリチルクロライドとの反応により、中間体3が生成する。中間体3とハロゲン化アルキルとのアルキル化により、化合物4が生じる。80%酢酸水溶液によるトリチル基の除去によって、O,O-ジアルキルグリセロール5が得られる。化合物5の臭素化、それに続く環式シドフォビルまたは他のホスホネート含有ヌクレオチドのナトリウム塩との反応によって、所望のホスホネート付加物7が生成する。環式付加物の開環は、水酸化ナトリウム水溶液との反応により達成される。好ましいプロパンジオール種は、スキームVの化合物5について1-O-アルキルプロパン-3-オールの置換により合成することができる。テノフォビルおよびアデフォビルの類似体は、スキームVの反応(f)において、cCDVをこれらのヌクレオチドホスホネートへ置換することにより合成することができる。同様に、本発明の他のヌクレオチドホスホネートもこの方法で生成することができる。
【0072】
スキームV
【化25】

試薬:a)NaH、R1OSO2Me、DMF;b)80%酢酸水溶液;c)トリチルクロライド、ピリジン;d)NaH、R2-Br、DMF;e)CBr4、トリフェニルホスフィン、THF;f)環式シドフォビル(DCMC塩)、DMF;g)0.5N NaOH
【0073】
スキームVIは、例として1-O-ヘキサデシルオキシプロピル-アデフォビルを用いる、本発明のヌクレオチドホスホネートの合成の一般的方法を例示する。ヌクレオチドホスホネート(5mmol)を、無水ピリジン中に懸濁し、アルコキシアルコールまたはアルキルグリセロール誘導体(6mmol)および1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、10mmol)を添加する。薄層クロマトグラフィーでモニタリングして縮合反応が完了するまで、この混合物を加熱還流し、激しく攪拌する。その後混合物を冷却し、濾過する。濾液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲル上に吸着させ、フラッシュカラムクロマトグラフィー(約9:1のジクロロメタン/メタノールによる溶離)により精製し、対応するホスホネートモノエステルを得る。
【0074】
スキームVI
【化26】

【0075】
本発明を実施例を参照してより詳細に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0076】
実施例1
1-O-ヘキサデシルプロパンジオール-3-アレンドロネートの合成
A. ヘキサデシルオキシプロピルメチルホスファイト(b)
ヘキサデシルオキシプロピルメチルホスファイトを、Kers, A.、Kers, I.、Stawinski, J.、Sobkowski, M.、Kraszewski, A.、Synthesis、1995年4月、427-430頁に記述された方法を用いて調製した。0℃に保った亜リン酸ジフェニル(14g、60mmol)のピリジン(50mL)溶液に、ヘキサデシルオキシプロパン-1-オール(6.0g、20mmol)のピリジン(25mL)溶液をゆっくり加えた。混合物を1時間撹拌した後、無水メタノール(10mL)を加えた。さらに1時間撹拌した後、残渣をシリカゲルに吸着して、勾配溶出法(ヘキサンから20%酢酸エチル/80%ヘキサン)を使用してクロマトグラフィーを行い、溶媒を蒸発させて、純粋な化合物2を蝋状の低融点の固体(4.5g、収率60%)として得た。

【0077】
B. ヘキサデシルオキシプロピルトリメチル4-フタルイミドブタノイルホスホネート(3b)
ジメチル4-フタルイミドブタノイルホスホネート(1b、3.0g、7.9mmol、米国特許第5,039,819号の記述により調製した)およびヘキサデシルオキシプロピルメチルホスファイト(2、2.9g、9mmol)のピリジン(50mL)溶液にトリエチルアミン(0.2g、2mmol)を加えた。混合物を室温で5時間撹拌した後、減圧下で溶媒を取り除いた。残渣をシリカゲルに吸着し、クロマトグラフィー(酢酸エチル)を行い、化合物3b(3.5g、63%)を粘性のあるオイルとして得た。

【0078】
C. ヘキサデシルオキシプロピル4-フタルイミドブタノイルホスホネート(4b)
上記で得た化合物3b(3.0g、4.3mmol)を乾燥したアセトニトリル(50mL)に溶解して0℃に冷却した。ブロモトリメチルシラン(3.9g、25.5mmol)のアセトニトリル(25mL)溶液をゆっくり加え、さらに2時間撹拌した。混合物を割った氷の中にゆっくり注いだ。生じた沈殿物を減圧濾過により回収し、減圧乾燥して、1.2gの4b(42%収率)を得た。

【0079】
D. 1-O-ヘキサデシルプロパンジオール-3-アレンドロネート(5b)
化合物4b(300mg、0.45mmol)を1,4-ジオキサン(20mL)およびメタノール(5mL)の混合物に溶解した。無水ヒドラジンを加えて、室温で4時間撹拌した。分離した沈殿物を減圧濾過により回収し、1,4-ジオキサンで洗浄した。固体をエタノールに懸濁して、メタノールアンモニア(3mL)を加えた。10分間撹拌した後、生じた固体を濾過により回収し、エタノールで洗浄し、減圧乾燥して、220mg HDP-アレンドロネート(5b)をトリアンモニウム塩として得た。FT-IRによる解析は、フタルイミド保護基が除去したことを示した。
エレクトロスプレーMS m/e 532(MH)、530(MH-)
【0080】
実施例2
1-O-ヘキサデシルプロパンジオール-3-パミドロネート(5a)の合成
1-O-ヘキサデシルプロパンジオール-3-パミドロネートは、3-フタルイミドプロパン酸を用いてジメチル3-フタルイミドプロパノイルホスホネート(1a)を調製する点を除いて、(スキーム1について)類似の方法によって調製される。化合物1aを化合物2で濃縮して、トリメチルビスホスホネート3aを得る。上記の段階Cおよび段階Dで脱保護して、示したようにHDP-パミドロネートを得る。
【0081】
実施例3
1-O-オクタデシル-2-O-メチルsn-グリセロ-3-アレンドロネートの合成
ヘキサデシルオキシプロピル以外の親油性基を持つプロドラックは、実施例1の段階Aでヘキサデシルオキシプロパン-1-オールを様々な長鎖アルコールに置き換えて調製される。例えば、1-O-オクタデシル-2-O-メチル-sn-グリセロールと亜リン酸ジフェニルをピリジン中で反応させた後、メタノール処理によって1-O-オクタデシル-2-O-メチル-sn-グリセリルメチルホスファイトを得る。このジアルキルホスファイトとホスホネート1bを濃縮した後、段階Cおよび段階Dで脱保護して、1-O-オクタデシル-2-O-メチル-sn-グリセロ-3-アレンドロネートを得る。スキーム2は、他のビスホスホネート複合体で側鎖に1級アミノ基を持たないものの合成を表している。この場合には、フタルイミド基での保護とヒドラジン分解は不要である。
【0082】
実施例4
HDP-アミノ-オルパドロネートの合成
スキーム3は、1-アミノビスホスホネート複合体の合成を示している。実施例1の化合物2、1-(ジメチルアミノ)プロピオニトリル、およびOrlovskii、V. V.; Vovsi、B. A.、J. Gen Chem. USSR(Engl. Transl.)1976、46:294-296に記述された手順を用いてビスホスホネートトリメチルエステル3を調製する。実施例1の段階Cに記述されるように、ブロモトリメチルシランで脱メチル化し、HDP-アミノ-オルパドロネートを得る。
【0083】
実施例5
1-O-ヘキサデシルプロパンジオール-3-スクシニル-アレンドロネートの合成
スキーム4は、親化合物の脂質基が1級アミノ基に結合しているビスホスホネート複合体の合成を示す。テトラメチル-(4-フタルイミド-1-ヒドロブチリデン)ビスホスホネート(2.0g、4.4mmol)を0.2Mメタノールヒドラジン(100mL)に溶解して、室温で3日間撹拌した。混合物を半分量に濃縮したら、固体が分離し始めた。その固体を濾過して除き、濾液を濃縮乾燥した。プロトンNMRは、この化合物がテトラメチル-(4-アミノ-1-ヒドロキシブチリデン)ビスホスホネートであることを示した。これを50℃で一晩、5酸化リンで乾燥させた。化合物1.2gをピリジン(25mL)およびN,N-ジメチルホルムアミド(25mL)の混合物に懸濁して、3-スクシニル-1-ヘキサデシルプロパン(1.76g、4.4mmol )を加えた。ジシクロヘキシルカルボジイミド(2.52g、12.21mmol)を加え、混合物を室温で2日間撹拌した。混合物を濾過して、濾液をシリカゲルに吸着し、ジクロロメタン(0%〜20%)によりメタノールの増加する勾配でフラッシュクロマトグラフィーをして、スクシニル化化合物を得た。これを、アセトニトリルに入れたトリメチルシリルブロマイドで脱保護することにより、メタノールから結晶化することにより精製した表題の化合物を得た。
【0084】
実施例6
アデフォビルヘキサデシルオキシプロピルエステル、および1-O-オクタデシル-sn-グリセリルエステルの合成
アデフォビル(1.36g、5mmol)および3-ヘキサデシルオキシ-1-プロパノール(1.8g、6mmol) を乾燥したピリジン中に混合して、DCC(2.06g、10mmol)を加えた。混合物を加熱還流して18時間攪拌した後、冷却して濾過した。濾液は、減圧下で濃縮して、残渣をシリカゲルのショートカラムに注いだ。9:1ジクロロメタン/メタノールでカラムの溶出を行い、ヘキサデシルオキシプロピル-アデフォビル(HDP-ADV)を白い粉末として得た。
【0085】
アデフォビル(1.36g、5mmol)および1-O-オクタデシル-sn-グリセロール(2.08g、6mmol)を乾燥したピリジン(30mL)中に混合して、DCC(2.06g、10mmol)を加えた。混合物を加熱還流して18時間撹拌した後、冷却して濾過した。濾液は、減圧下で濃縮して、残渣をシリカゲルのカラムに注いだ。9:1ジクロロメタン/メタノールでカラムの溶出を行い、1-O-オクタデシル-sn-グリセリル-3-アデフォビルを得た。
【0086】
実施例7
AZT-ホスホネートヘキサデシルオキシプロピルエステルの合成
AZT (3'-アジド-3'-5'-ジデオキシチミジン-5'-ホスホン酸) のホスホネート類似体は、公表された手順(Hakimelahi, G. H.; Moosavi-Movahedi, A. A.; Sadeghi, M. M.; Tsay, S-C.; Hwu, J. R. Journal of Medicinal Chemistry、1995 38、4648-4659)を用いて合成した。
【0087】
AZTホスホネート(1.65g、5mmol)を乾燥ピリジン(30mL)に懸濁した後、3-ヘキサデシルオキシ-1-プロパノール(1.8g、6mmol)およびDCC(2.06g、10mmol)を加えて、混合物を加熱還流して6時間撹拌した後、冷却して濾過した。その濾液を減圧下で濃縮して、残渣をシリカゲルカラムに注いだ。9:1ジクロロメタン/メタノールでカラムの溶出を行い、3'-アジド-3'-5'-ジデオキシチミジン-5'-ホスホン酸、ヘキサデシルオキシプロピルエステルを得た。
【0088】
実施例8
環式シドフォビルにおける、ヘキサデシルオキシプロピル、オクタデシルオキシプロピル、オクタデシルオキシエチル、およびヘキサデシルエステルの合成
シドフォビル(1.0g、3.17mmol)を撹拌したN,N-DMF(25mL)懸濁液に、 N,N-ジシクロヘキシル-4-モルフォリンカルボキシアミジン(DCMC、1.0g、3.5mmol)を加えた。混合物を一晩攪拌してシドフォビルを溶解した。この澄んだ溶液を他の漏斗に満たして、1,3-ジクロヘキシルカルボジイミド(1.64g、7.9mmol)を撹拌した熱いピリミジン溶液(25mL、60℃)に、ゆっくり(30分で)加えた。この反応混合液を100℃で16時間攪拌して室温に冷却して、減圧下で溶媒を取り除いた。残渣をシリカゲルに吸着して、勾配溶出法(CH2Cl2+MeOH)を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製した。そのUV活性産物を、最終的に5:5:1 CH2Cl2/MeOH/H2Oで溶出して、溶媒を蒸発させ、860mgの白い固体を得た。1Hおよび31P NMRスペクトルをとると、これが環式シドフォビルのDCMC塩(収率=44%)であることが示された。
【0089】
環式シドフォビル(DCMC塩)(0.5g、0.8mmol) の乾燥DMF(35mL)溶液に1-ブロモ-3-ヘキサデシルオキシプロパン(1.45g、4mmol)を加えて、混合液を80℃で6時間加熱して撹拌した。溶液を減圧中で濃縮して、残渣をシリカゲルに吸着し、勾配溶出法(CH2Cl2+EtOH)を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製した。アルキル化産物を90:10 CH2Cl2/EtOHで溶出した。精製産物を含む画分を蒸発させて、260mgのHDP-環式シドフォビル(収率55%)を得た。
【0090】
環式シドフォビル(DCMC塩)(1.0g、3.7mmol) の乾燥DMF(35mL)溶液に1-ブロモ-3-オクタデシルオキシプロパン(2.82g、7.2mmol)を加え、混合物を85℃で5時間加熱して撹拌した。溶液を減圧中で濃縮して、残渣をシリカゲルに吸着して、勾配溶出法(CH2Cl2+MeOH)を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製した。アルキル化産物を9:1 CH2Cl2/MeOHで溶出した。精製産物を含む画分を蒸発させて、450mgのODP-環式シドフォビルを得た。
【0091】
cCDV(DCMC塩)(1.0g、3.7mmol) の乾燥DMF(35mL)溶液に1-ブロモ-3-オクタデシルオキシエタン(3.0g、7.9mmol)を加えて、その混合物を80℃で4時間加熱して撹拌した。溶液を減圧中で濃縮して、残渣をシリカゲルに吸着して、勾配溶出法(CH2Cl2+MeOH)を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製した。アルキル化産物を9:1 CH2Cl2/MeOHで溶出した。精製産物を含む画分を蒸発させて、320mgのオクタデシルオキシエチル-cCDVを得た。
【0092】
環式シドフォビル(DCMC塩)(0.5g、0.8mmol) の乾燥DMF(35mL)溶液に1-ブロモヘキサデカン (1.2g、4mmol)を加えて、混合液を80℃で6時間加熱して撹拌した。溶液を減圧中で濃縮して、残渣をシリカゲルに吸着して、勾配溶出法(CH2Cl2+MeOH)を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製した。アルキル化産物を9:1 CH2Cl2/MeOHで溶出した。精製産物を含む画分を蒸発させて、160mgのヘキサデシル-cCDVを得た。
【0093】
実施例9
シドフォビルにおける、ヘキサデシルオキシプロピル、オクタデシルオキシプロピル、オクタデシルオキシエチル、およびヘキサデシルエステルの合成
上記のヘキサデシルオキシプロピル-環式CDVを0.5M NaOHに溶解して室温で1.5時間撹拌した。50%酢酸水を滴下してpHを約9に調整した。沈殿したHDP-CDVを濾過により単離した後、水で洗浄し乾燥して、(3:1 p-ジオキサン/水)で再結晶化してHDP-CDVを得た。
【0094】
同様に、オクタデシルオキシプロピル-、オクタデシルオキシエチル-、およびヘキサデシル-cCDVエステルを0.5M NaOHを用いて加水分解して精製し、対応するシドフォビルジエステルを得た。
【0095】
実施例10
環式-ガンシクロビルホスホネートヘキサデシルオキシプロピルエステルの合成
ガンシクロビルの環式ホスホネート類似体を公表された手順(Reist, E.J.; Sturm, P.A.; Pong, R.Y.; Tanga, M. J.およびSidwell, R.W.、「抗ウイルス剤の評価のためのアシクロヌクレオシドホスホネートの合成(Synthesis of acyclonucleoside phosphonates for evaluation as antiviral agents)」、17〜34頁、J, C. Martin(編)、抗ウイルス剤としてのヌクレオチド類似体(Nucleotide Analogues as Antiviral Agents)、American Chemical Society、Washington、D.C.)を用いて調製した。cGCVホスホネートをDMF中でDCMC塩に変換後、1-ブロモ-3-ヘキサデシルオキシプロパンで処理して、混合物を80℃で6時間加熱した。アルキル化産物をフラッシュクロマトグラフィーにより単離して、HDP-環式-GCVホスホネートを得た。
【0096】
実施例11
ガンシクロビルホスホネートヘキサデシルオキシプロピルエステルの合成
上記で得たHDP-環式-GCVホスホネートを0.5M NaOHに溶解して、室温で撹拌して非環式ジエステルに変換した。溶液を50%酢酸水で中和して、3:1 p-ジオキサン/水で再結晶化した産物を沈殿させた。
【0097】
実施例12
1-O-ヘキサデシルオキシプロパンアレンドロネートはMLO-Y4骨細胞のデキサメタソン誘導性のアポトーシスを阻害する
MLO-Y4骨細胞を指示された濃度の1-O-ヘキサデシルオキシプロパンアレンドロネート(HDP-アレンドロネート)により、1時間、前処理して、次にデキサメタソン(終濃度10-4M)存在下および非存在下で、6時間細胞をインキュベートした。死細胞率をトリパンブルーの取り込み(Plotkinら、J Clin Invest 104:1363-1374、1999)により決定した。その結果を図1に示す。線分は3回の独立した測定の平均±SDを表す。データを、一元配置分散分析(スチューデント-クルーズ-ニューマン(Student-Keuls-Newman)試験)により解析した。p<0.05。HDP-アレンドロネートはデキサメタソン誘導性のアポトーシスを10-8から10-5Mで阻害する。
【0098】
実施例13
1-O-ヘキサデシルオキシプロパンアレンドロネートは頭蓋冠細胞のデキサメタソン誘導性のアポトーシスを阻害する
頭蓋冠細胞を新生児C57 BL/6Jマウスから取り、組織培養へ移した。細胞を指示された濃度のHDP-アレンドロネートにより前処理を行い、次に10-4Mデキサメタソン存在下および非存在下で、6時間細胞をインキュベートした。死細胞率をトリパンブルーの取り込み(Plotkinら、J Clin Invest 104:1363-1374、1999)により決定した。その結果を図2に示す。線分は、3回の独立した測定の平均±SDを表す。データを一元配置分散分析(スチューデント-クルーズ-ニューマン試験)で解析した。p<0.05。HDP-アレンドロネートは10-8Mまたはそれより高濃度で、デキサメタソン誘導性の死細胞率の増加を阻害した(p=<0.05)。0.05μMのDEVD(アポトーシスのペプチド阻害剤)に細胞を曝して死細胞率の増加が示されなかったため、DEVDはデキサメタソン誘導性のアポトーシスを阻害することが示された。
【0099】
実施例14
1-O-ヘキサデシルオキシプロパンアレンドロネートによる卵巣摘出ラットの骨吸収の阻害
両卵巣の摘出手術をしたSprague-Dawley雌ラット(250gm〜280gm)群に4-アミノ-1-ヒドロキシブチリデン-1,1-ビスホスホン酸ジナトリウム塩又は1-O-ヘキサデシルプロパンジオール-3-アレンドロネートを4〜12週間、 0 mg/kg/日から8 mg/kg/日の用量で皮下注射する。12週目に、対照群に含まれるラットを屠殺し、それぞれ動物において大腿骨の灰分を回収する。または、投薬の方法は経口であってもよい。個体それぞれの大腿骨の灰分質量が測定され、各群の値が骨量の指標と比較されて、処理プロトコール中の骨の減少の相対的な阻害が測定される。1-O-ヘキサデシルプロパンアレンドロネートで処理された動物は対照の卵巣摘出動物に比べて骨量の減少が阻害されていることを表す。
【0100】
実施例15
1-O-オクタデシルオキシプロピル-アレンドロネートによるヒト骨粗鬆症における骨吸収の阻害
閉経後の女性の2つの群を、それぞれ偽薬または1-O-オクタデシルオキシプロピル-アレンドロネートで、0.1 mg/kg/日から100 mg/kg/日の経口用量で2〜3年にわたり処理する。処理群のそれぞれは、処理期間にわたり連続して、骨塩密度、脊椎骨折発生率、x線写真撮影試験による脊椎変形の進行、および身長の減少について観察される。様々な処理群において測定値を比較し、処理群間のアレンドロネート治療の形態における有効性を判定する。1-O-オクタデシルオキシプロピルアレンドロネートで処理された群は、偽薬群に比べて、骨折が減少し、骨密度の減少率が少ないと思われる。
【0101】
実施例16
1-O-オクタデシルオキシプロピル-アミノ-オルパドロネートによるステロイド誘導性のヒト骨粗鬆症における骨形成の刺激
ステロイド誘導性の骨粗鬆症に罹患した患者群を、1-O-オクタデシルオキシプロピル-アミノ-オルパドロネートまたは偽薬で、0.1mg/kg/日〜100mg/kg/日の経口用量で、1ヶ月から1年間の期間処理する。処理群のそれぞれは、この処理期間にわたって連続して、骨塩密度、脊椎骨折発生率、x線写真撮影試験による脊椎変形の進行、および身長の減少について観察される。様々な処理群において測定値を比較し、処理群間の1-O-オクタデシルオキシプロピル-アミノ-オルパドロネート治療の有効性を判定する。偽薬処理と比較したところ、1-O-オクタデシルオキシプロピル-アミノ-オルパドロネートで処理された患者では、骨密度が増大し、かつ骨折が減少している。
【0102】
実施例17
ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)に対するホスホネートヌクレオチド類似体の抗ウイルス活性および選択性
HCMV抗ウイルスアッセイ法:HCMV DNAに関する抗ウイルスアッセイ法は、Dankner, W.M.、Scholl, D.、Stanat, S.C.、Martin, M.、Souke, R.L.およびSpector, S.A.、J. Virol. Methods、21:293-298(1990)に記載されているように行った。簡単に述べると、24-ウェル培養皿中の亜集密なMRC-5細胞を、2%FBSおよび抗生物質を含有するイーグル(Eagle)最小必須培地(E-MEM)中の様々な濃度の薬物により、24時間、前処理した。この培地を除去し、HCMV株を、薬物非含有ウェルにおいて5日内に、3-4+細胞変性効果(CPE)を生じるような希釈で添加した。このウイルスを、37℃で1時間吸着させ、吸引し、かつ薬物希釈物を交換した。5日間インキュベーションした後、HCMV DNAを、Diagnostic Hybrids社(Athens、OH)のCMV抗ウイルス感受性試験キット(CMV Antivirus Susceptibility Test Kit)を用いる核酸ハイブリダイゼーションにより、3つ組で定量した。培地を除去し、かつ製造業者の指示に従い細胞を溶解した。Hybriwix(商標)フィルターに溶解液を吸着した後、60℃で一晩ハイブリダイズした。Hybriwix(商標)は、73℃で30分間洗浄し、かつガンマカウンターで計測した。結果を、EC50(50%阻害濃度)として示す。
【0103】
予備実験を、シドフォビルおよびアデフォビルの1-O-ヘキサデシルプロパンジオール(HDP)誘導体について行い、表1に示す。
【0104】
(表1)

【0105】
表1の結果として、1-O-ヘキサデシルプロパンジオール-3-環式CDV(HDPcCDV)は、CDVまたは環式CDVの>900倍以上の活性であることが示された。より細胞傷害性であるが、迅速に分裂している細胞におけるHCMVに対する選択性指標は、誘導されないCDVが1,900〜>2,100であるのに対し、>59,000であった。これらの有望な予備的結果を基に、追加実験を、追加の本発明の化合物を用いて行った。これらの追加実験を以下に示す。
【0106】
インビトロにおける被験化合物の細胞傷害性:24-ウェルプレート中の亜集密のヒト肺繊維芽細胞(MRC-5、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)、Rockvill、MD)を、2%ウシ胎仔血清および抗生物質を添加したE-MEM(Gibco BRL社、Grand Island、NY)中に希釈した薬物で処理した。37℃で5日間インキュベーションした後、細胞単層を、顕微鏡下で肉眼で検査し、細胞数の50%減少を生じた薬物濃度を推定した。
【0107】
これらの実験から得たデータを表2に示す。
【0108】
(表2) DNA減少によりアッセイされたMRC-5ヒト肺繊維芽細胞におけるヒトCMV複製の阻害

EC50−50%有効濃度;CC50 - 50%細胞傷害性濃度;選択性指標−CC50/EC50。EC50の結果は、ADVが2個組で1回反復し行われる以外は、3〜6回の測定の平均である。
【0109】
表2に示された結果のように、本発明の化合物は、誘導されていないシドフォビル、環式シドフォビルおよびアデフォビルよりも、一様により活性がありかつ選択性がある。
【0110】
実施例18
ポックスウイルス複製に対するHDP-cCDVのインビトロ作用
シドフォビル(CDV)、環式シドフォビル(cCDV)、および1-O-ヘキサデシルプロパンジオール-3-cCDV(HDP-cCDV)の活性を、ワクシニアウイルスまたは牛痘ウイルスに感染したヒト包皮繊維芽細胞における抗ウイルス活性について、細胞変性効果(CPE)の用量依存型の低下を測定することにより試験した。予備的ワクシニアおよび牛痘のEC50値を、ヒト包皮繊維芽細胞(HFF)のCPE減少アッセイ法において決定した。こうして得られたデータを表3に示す。
【0111】
(表3)

【0112】
表3に示したように、HDP-cCDVは、ワクシニアウイルスに対して高度に活性があり、IC50値は0.11μMであるのに対して、cCDVおよびCDVのそれは、各々、0.97および1.8μMであった。牛痘感染細胞において、HDP-cCDVは非常に効果的であり、IC50値は<0.03μMであるのに対して、cCDVおよびCDVのそれは、各々、0.72および2.1であった。これらの有望な予備的結果を基に、本発明のシドフォビル類似体における他のオルトポックスウイルスに対する作用を調べた。
【0113】
ポックスウイルスの抗ウイルス細胞変性効果(CPE)アッセイ法:各薬物濃度につき、Vero細胞を含有する3個のウェルを、オルトポックスウイルス1000pfu/ウェルで感染し、かつ別の3個は未感染のままとし、毒性を決定した。プレートを、ウイルス感染後に試験し、染色して、非処理の細胞は4+CPEを示した。ニュートラルレッドをこれらの培地に添加し、CPEを、540nmでのニュートラルレッドの取り込みについてアッセイした。50%阻害(EC50)および細胞傷害濃度(CC50)を、用量反応のプロットから決定した。結果を表4に示す。
【0114】
(表4)

EC50−50%有効濃度;CC50 - Vero細胞における50%細胞傷害性濃度;選択性指標−CC50/EC50。表2と同じ略号。結果は3回の測定の平均である。
【0115】
表4に示したように、本発明の化合物は、ワクシニア、牛痘、および様々な小痘瘡株に対して、誘導していないCDVまたはcCDVよりも、実質的により活性があった。
【0116】
実施例19
1-O-ヘキサデシルプロパンジオール-3-アデフォビル(HDP-ADV)のHIV-1複製に対するインビボ作用
本発明の化合物によるHIV-1複製の阻害における予備的実験は、下記のように行った。薬物アッセイ法は、Larderら、Antimicrobial Agents & Chemotherapy、34:436-441(1990)に既述のように行った。HIV-1LAI感染したHT4-6C細胞を、指示された薬物に曝露し、かつ37℃で3日間インキュベーションした。これらの細胞を、クリスタルバイオレットで固定し、プラークを可視化した。抗ウイルス活性は、薬物で処理した試料において測定した対照プラーク(薬物なし)に対する割合(%)として評価した。EC50は、プラーク数を50%減少するようなμM濃度である。HIV-1感染したHT4-6C細胞において、アデフォビルの活性を、AZT(シドブジン)および1-O-ヘキサデシルプロパンジオール-3-アデフォビル(HDPADV)と比較した。結果を表5に示す。
【0117】
(表5)

【0118】
アデフォビルは、EC50が16μMと、中程度の活性であった。AZTは、予想されたように高い活性であった(EC50は0.007μM)が、HDP-ADVはこれら3種の化合物の中で最も高い活性であり、EC50は0.0001μMであり、これはアデフォビルそれ自身よりも5 log倍より活性が高かった。これらの有望な予備的結果を基に、追加実験を以下のように行った。
【0119】
HIV-1抗ウイルスアッセイ法:CD4発現しているHeLa HT4-6C細胞におけるHIV複製に対する抗ウイルス化合物の作用を、プラーク減少アッセイ法により測定した(Larder, B.A.、Chesebro, B.およびRichman, D.D.、Antimirob. Agents Chemother.、34:436-441(1990))。簡単に述べると、HT4-6C細胞の単層を、24-ウェルマイクロ希釈プレート上で、1ウェル当り100〜300プラーク形成単位(PFU)のウイルスで感染した。前述のように、様々な濃度の薬物を、5%FBSおよび抗生物質を含有するダルベッコ(Dulbecco)改変イーグル培地である培養培地に添加した。37℃で3日後、単層を、リン酸-緩衝生理食塩水(PBS)を溶媒とする10%ホルムアルデヒド溶液で固定し、0.25%クリスタルバイオレットで染色して、ウイルスプラークを目視できるようにした。抗ウイルス活性を、薬物で処理した試料において測定した対照プラークに対する割合(%)として評価した。細胞傷害性は、Hostetlerらの方法(Antivirus Research、31:59-67(1996))によりアッセイした。結果を表6に示す。
【0120】
(表6) プラーク減少におけるHT4-6C細胞のHIV複製の阻害

EC50−50%有効濃度;CC50 - Vero細胞における50%細胞傷害性濃度;選択性指標−CC50/EC50。EC50値は、4回の実験の平均である。
【0121】
表6の結果により容易に示されるように、本発明の化合物1-O-ヘキサデシルプロパンジオール-3-ADVは、アデフォビルよりも、より活性および選択性を有する。
【0122】
実施例21
ヘルペスウイルス複製に対するシドフォビル類似体の作用
HSV-1抗ウイルスアッセイ法:24-ウェル培養皿中の亜集密なMRC-5細胞を、培地を除去し、HSV-1ウイルスを薬物添加していないウェルにおいて20〜24時間で3-4+ CPEの結果をもたらすように希釈して添加することにより接種した。これは、37℃で1時間吸収させ、吸引し、かつ2%FBSおよび抗生物質を含有するE-MEM中の様々な濃度の薬物と交換した。およそ24時間インキュベーションした後、HSV DNAを、Diagnostic Hybrids社(Athens、OH)のHSV抗ウイルス感受性試験キット(HSV Antivirus Susceptibility Test Kit)を用いて、核酸ハイブリダイゼーションにより3つ組で定量した。培地を除去し、細胞を製造業者の指示に従い溶解した。Hybriwix(商標)フィルターに溶解物を吸着した後、一晩60℃でハイブリダイズした。Hybriwixを、73℃で30分間洗浄し、ガンマカウンターで計測した。細胞傷害性は、実施例17に記したように評価した。こうして得られたEC50およびCC50を表7に示す。
【0123】
(表7) DNA減少によりアッセイされたMRC-5ヒト肺繊維芽細胞におけるヒトHSV複製の阻害

表2と同じ略号:EC50−50%有効濃度;CC50 - 50%細胞傷害性濃度;選択性指標−CC50/EC50。EC50値は、2つ組で1回測定したHDP-CDVを除いて、2回の実験の平均である。
【0124】
表7に示したように、全ての本発明の化合物は、HSV-1に対して、誘導していないヌクレオチドホスホネート、シドフォビル、または環式シドフォビルよりも、より活性を有する。
【0125】
前述の発明は、明確化および理解のために例証および実施例を用いて詳細に説明されているが、当業者には、本発明の内容に鑑みて、特許請求の範囲の精神または範囲を逸脱しない限りは、ある種の変更および修飾を行うことができることは明らかであると思われる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構造を有するホスホネート化合物:
【化1】

式中、
R1およびR1'は、独立して、-H、任意に置換された-O(C1-C24)アルキル、-O(C1-C24)アルケニル、-O(C1-C24)アシル、-S(C1-C24)アルキル、-S(C1-C24)アルケニル、または-S(C1-C24)アシルであり、ただし少なくとも1個のR1およびR1'はHではなく、かつ該アルケニルまたはアシルは任意に1〜約6個の二重結合を有し;
R2およびR2'は、独立して、-H、任意に置換された-O(C1-C7)アルキル、-O(C1-C7)アルケニル、-S(C1-C7)アルキル、-S(C1-C7)アルケニル、-O(C1-C7)アシル、-S(C1-C7)アシル、-N(C1-C7)アシル、-NH(C1-C7)アルキル、-N((C1-C7)アルキル))2、オキソ、ハロゲン、-NH2、-OH、または-SHであり;
R3は、任意のリンカーL上の官能基またはCα上の利用可能な酸素原子に連結された、薬学的に活性を有する化合物のホスホネート誘導体であり;
Xは、存在する場合には、
【化2】

であり;
Lは、原子価結合または式-J-(CR2)t-G-の二官能連結分子であり(式中、tは1〜24の整数であり、JおよびGは、独立して、-0-、-S-、-C(O)O-、または-NH-であり、かつRは、-H、置換もしくは非置換のアルキル、またはアルケニルである);
mは0〜6の整数であり;ならびに
nは0または1である。
【請求項2】
R3がビスホスホネートである、請求項1記載のホスホネート化合物。
【請求項3】
ビスホスホネートが、アレンドロネート、エチドロネート、チルドロネート、イバンドロネート、EB-1053、パミドロネート、オルパドロネート、アミノ-オルパドロネート、クロドロネート、またはリセドロネートである、請求項2記載のホスホネート化合物。
【請求項4】
R3が、抗ウイルス性ヌクレオシドのホスホネート誘導体である、請求項1記載のホスホネート化合物。
【請求項5】
ホスホネート誘導体が、アデフォビル、シドフォビル、環式シドフォビル、またはテノフォビルである、請求項4記載のホスホネート化合物。
【請求項6】
ホスホネート誘導体が、アジドチミジン(AZT)の誘導体である、請求項4記載のホスホネート化合物。
【請求項7】
R3が、抗新生物性ヌクレオシドのホスホネート誘導体である、請求項1記載のホスホネート化合物。
【請求項8】
ホスホネートが、シトシンアラビノシド、ゲムシタビン、5-フルオロデオキシウリジンリボシド、5-フルオロデオキシウリジンデオキシリボシド、2-クロロデオキシアデノシン、フルダラビン、または1-β-D-アラビノフラノシル-グアニンの誘導体である、請求項7記載のホスホネート化合物。
【請求項9】
請求項1記載のホスホネート化合物およびそれらの薬学的に許容される担体を含有する、薬学的組成物。
【請求項10】
哺乳類における骨粗鬆症の治療法であって、請求項1記載の有効量のホスホネート化合物を必要とする被験者に投与する段階を含む方法。
【請求項11】
骨塩密度を増加させる方法であって、請求項1記載の有効量のホスホネート化合物を必要とする被験者に投与する段階を含む方法。
【請求項12】
哺乳類において骨芽細胞および骨細胞のアポトーシスを防止する方法であって、請求項1記載の有効量のホスホネート化合物を必要とする被験者に投与する段階を含む方法。
【請求項13】
哺乳類においてウイルス感染症を治療する方法であって、請求項1記載の有効量のホスホネート化合物を必要とする被験者に投与する段階を含む方法。
【請求項14】
哺乳類において新生物の増殖を治療する方法であって、請求項1記載の有効量のホスホネート化合物を必要とする被験者に投与する段階を含む方法。
【請求項15】
細胞増殖を調節する方法であって、請求項1記載の有効量のホスホネート化合物を必要とする被験者に投与する段階を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−246475(P2011−246475A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153911(P2011−153911)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【分割の表示】特願2001−541459(P2001−541459)の分割
【原出願日】平成12年12月4日(2000.12.4)
【出願人】(502198135)ザ レジェンツ オブ ザ ユニバーシティー オブ カリフォルニア サン ディエゴ (1)
【Fターム(参考)】