説明

ホットメルト接着剤組成物

【課題】耐熱クリープ性に優れて自動車ヘッドランプの長時間点灯の際にもハウジングとレンズとの接着性に優れるうえ、水密性およびガス遮断性が改善された、ホットメルト接着剤組成物を提供する。
【解決手段】ブチルゴム9.9〜18.5重量%;エチレンプロピレンゴム9.9〜18.5重量%;SISゴムを含むスチレンブロックコポリマー6.6〜12.4重量%;アモルファスポリアルファオレフィン(amorphous poly-alpha-olefins、APAO)5.3〜9.9重量%;脂肪族石油樹脂、ロジンエステルおよびテルペン樹脂を含む粘着付与樹脂27〜49重量%;ポリイソブチレンを含む可塑剤6.6〜12.4重量%;無水マレイン酸−ポリプロピレン0.5〜7重量%;フェノール系酸化防止剤0.5〜2重量%;並びにUV安定化剤0.1〜0.7重量%を含んでなる、ホットメルト接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト接着剤組成物に係り、より具体的には、自動車ヘッドランプシーリング用ホットメルト接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットメルト接着剤は、現在産業現場で最も多く使用される溶剤型接着剤とは異なり、溶剤を使用しない無溶剤型接着剤であって、作業環境の改善が容易であり、作業工程の人力節減のための自動化作業が容易であるため、これに対する重要性が増大しつつある。
【0003】
現在最も一般に使用されるホットメルト接着剤は熱可塑性樹脂を主成分とするものであるが、この熱可塑性樹脂接着剤は、熱硬化性樹脂接着剤と同等の高い接着力を得ることができず、耐熱性が弱いため、大きい接着強度を要求しない一部の製品、例えば本、紙箱、不織布製オムツなどに局限されて使用されている。
【0004】
上述したように熱可塑性樹脂を主成分として用いるホットメルト接着剤は、熱可塑性樹脂の種類によって、ポリオレフィン系、ポリエステル系またはポリアミド系のホットメルト接着剤と呼ばれる。
【0005】
また、スチレンブタジエン共重合体(SBS)またはスチレンイソプレン共重合体(SIS)などのスチレンブロック共重合体を主成分として用いた熱可塑性エラストマーを主成分とするホットメルト接着剤も知られている。これらの中でも、ポリオレフィン系のホットメルト接着剤、特にエチレン酢酸ビニル共重合体(以下「EVA」という)に粘着付与樹脂またはワックスを配合したホットメルト接着剤は低廉であり、主成分EVAの酢酸ビニル含有量、分子量、配合処方の変更によって広範囲な用途として適用可能なホットメルト接着剤を調製することができるため、例えば包装用途、製本用途、合板木工接着用途などの広範囲な分野に用いられている。
【0006】
一方、粘着付与樹脂として芳香族石油樹脂を用いたEVA系ホットメルト接着剤は、加熱安定性および耐熱接着性の低下が問題点として指摘されている。加熱安定性の低下は、粘着付与樹脂が酸化劣化して炭化不溶融成分に変化してスキニング(skinning)を発生するので、ホットメルト接着剤塗布器のノズル詰まりなどの問題をもたらす。耐熱接着性の低下は、夏季に、接着した板紙包装物が接着層の軟化により開封されるという問題点を生じさせる。
【0007】
かかる問題点を解決するために、従来からホットメルト組成物に用いられるEVAの酢酸ビニル量、粘着付与樹脂およびワックスの種類、量などを最適化する検討が行われた。例えば、30重量%以上の酢酸ビニル含有量を有するEVA100重量部に対して、芳香族成分を含有する粘着付与樹脂50〜200重量部、およびパラフィンワックス2〜100重量部が含まれることを特徴とする、ホットメルト接着剤組成物(特許文献1)が開示されたことがある。ところが、これも粘着付与樹脂を最適化する検討は行われていない。
【0008】
前記文献の他にも、(1)特定の沸点範囲、ビニルトルエン含有率、石油系炭化水素類の熱分解によって得られる熱分解油蒸留分の重合可能成分、(2)特定のテレビン油、および(3)フェノール化合物を特定の比率としてフリーデル−クラフツ(Friedel-Crafts)型触媒を用いて共重合した変性芳香族石油樹脂を粘着付与樹脂として用いることが、特許文献2、特許文献3、および特許文献4に提案されている。ところが、市販の石油樹脂に対して単純にヒンダードアミン化合物を添加したことのみでは、加熱安定性の改良効果は不十分であった。
【0009】
一方、粘着付与樹脂として水素化した芳香族石油樹脂(以下、「水素添加石油樹脂」という)を用いて加熱安定性を改良する方法(特許文献5)が知られているが、芳香族石油樹脂をさらに水素化して製造するため、水素未添加石油樹脂に比べて水素添加用設備および水素添加用原料(水素、溶媒、触媒)が必要であって高価の生産費用をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】日本特許公開2001−59078号公報
【特許文献2】日本特開2002−69408公報
【特許文献3】日本特開平9−316294公報
【特許文献4】日本特開昭55−65248公報
【特許文献5】日本特開2000−103820公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明の目的は、耐熱クリープ性に優れて自動車ヘッドランプの長時間点灯の際にもハウジングとレンズとの接着性に優れるうえ、水密性およびガス遮断性が改善された、ホットメルト接着剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、ブチルゴム9.9〜18.5重量%;エチレンプロピレンゴム9.9〜18.5重量%;SIS(Styrene-Isoprene-Styrene)ゴムを含むスチレンブロックコポリマー6.6〜12.4重量%;アモルファスポリアルファオレフィン(APAO)5.3〜9.9重量%;脂肪族石油樹脂、ロジンエステルおよびテルペン樹脂を含む粘着付与樹脂27〜49重量%;ポリイソブチレンを含む可塑剤6.6〜12.4重量%;無水マレイン酸−ポリプロピレン(Maleic Anhydride Polypropylene)0.5〜7重量%;フェノール系酸化防止剤0.5〜2重量%;およびUV安定化剤0.1〜0.7重量%を含んでなる、ホットメルト接着剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0013】
上述したように、本発明のホットメルト接着剤組成物は、優れた耐熱クリープ性および接着特性を示すので、自動車ヘッドランプシーリングのためのホットメルト接着剤組成物として有用に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
本発明のホットメルト接着剤組成物に用いられるブチルゴムは、気候の変化によく耐え、不飽和結合が少なくて熱またはオゾン酸化剤に強く、電気絶縁性に優れるうえ、衝撃をよく吸収して衝撃防止剤としても使用される。ブチルゴムは、ホットメルト接着剤組成物の接着力および耐寒性を増加させる役割を果たす。本発明のホットメルト接着剤組成物は、ブチルゴムを9.9〜18.5重量%含むが、ブチルゴムの含量が9.9重量%未満であれば、本発明で発揮されるブチルゴムの効果が微々であり、ブチルゴムの含量が18.5重量%超過であれば、粘度が増加して作業性が低下するという問題点が生ずる。
【0016】
一方、本発明に使用されたエチレンプロピレンゴム(EPDM rubber)は、主鎖に二重結合が存在しない非極性ゴム材料であって、耐老化、耐オゾン、極性液体に対する抵抗性、および電気的性質が良好であり、電線被覆、自動車のウォーターストリップ蒸気ホース、コンベヤーベルトなどに採用されている。本発明のホットメルト接着剤組成物は、エチレンプロピレンゴムを9.9〜18.5重量%含むが、エチレンプロピレンゴムの含量が9.9重量%未満であれば、本発明で発揮されるエチレンプロピレンゴムの効果が微々であり、エチレンプロピレンゴムの含量が18.5重量%超過であれば、添加量に比べて効果の増大が微々であって不経済的である。
【0017】
本発明で使用されたSIS(Styrene-Isoprene-Styrene)ゴムを含むスチレンブロックコポリマー(Styrene block copolymer)は、軽量性および柔軟性を向上させて作業の際に本発明の取り扱いを容易にする役割を果たす。本発明のホットメルト接着剤組成物は、SISゴムを含むスチレンブロックコポリマーを6.6〜12.4重量%含むが、6.6重量%未満であれば、本発明で発揮されるスチレンブロックコポリマーの効果が微々であり、12.4重量%超過であれば、ホットメルト接着剤組成物の流れ性および物性が著しく減少するという問題点が発生する。
【0018】
本発明で使用されるアモルファスポリアルファオレフィン(amorphous poly-alpha-olefins、APAO)は、本発明の接着力、耐熱性および耐寒性を向上させる役割を果たす。本発明のホットメルト接着性組成物は、アモルファスポリアルファオレフィン(APAO)を5.3〜9.9重量%含むが、5.3重量%未満であれば、本発明で発揮されるアモルファスポリアルファオレフィンの添加効果が微々であり、9.9重量%超過であれば、本ホットメルト接着剤組成物の粘度増大により作業性が低下するという問題点が発生する。
【0019】
本発明で使用される脂肪族石油樹脂、ロジンエステルおよびテルペン樹脂を含む粘着付与樹脂は、前記ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、スチレンブロックコポリマーおよびアモルファスポリアルファオレフィンと組み合わせて本発明のホットメルト粘着剤組成物の接着力を増大させる役割を果たす。本発明のホットメルト接着剤組成物は、脂肪族石油樹脂、ロジンエステルおよびテルペン樹脂を含む粘着付与樹脂を27〜49重量%含むが、27重量%未満であれば、本発明で発揮される粘着付与樹脂の効果が微々であり、49重量%超過であれば、組成物の硬度が高く、接着性が減少するという問題点がある。本発明で脂肪族石油樹脂、ロジンエステルおよびテルペン樹脂を含む粘着付与樹脂は、好ましくは脂肪族石油樹脂35〜65重量%、ロジンエステル15〜35重量%およびテルペン樹脂15〜35重量%からなることが良い。
【0020】
本発明で使用されるポリイソブチレンを含む可塑剤は、本発明に柔軟性を付与し、使用の際に接着剤のドライアウト現象を遅延させる役割を果たす。本発明のホットメルト接着剤組成物は、可塑剤を6.6〜12.4重量%含むが、6.6重量%未満であれば、本発明で発揮される可塑剤の効果が微々であり、12.4重量%超過であれば、接着剤組成物の流れ性が高くなり、接着力が減少するという問題点が発生する。
【0021】
本発明は、接着力、水密性およびガス遮断性が改善されたホットメルト接着剤組成物を提供するために、必ず無水マレイン酸−ポリプロピレン(Maleic Anhydride Polypropylene)を含有するが、無水マレイン酸−ポリプロピレンは、ポリプロピレン樹脂に親水性官能基の無水マレイン酸(MAH)をグラフト重合させることにより製造される。無水マレイン酸−ポリプロピレンは、本発明を成す構成成分を均一に分散させ且つ接着力を向上させる役割を果たす。本発明のホットメルト接着剤組成物は、無水マレイン酸−ポリプロピレンを0.5〜7重量%含むが、この範囲で耐熱性および接着強度の高いホットメルト接着剤組成物を製造することができる。これは下記実験例から確認された。
【0022】
本発明で使用されるフェノール系酸化防止剤は、本ホットメルト接着剤組成物の熱安定性を改善させる役割を果たす。本発明のホットメルト接着剤組成物は、フェノール系酸化防止剤を0.5〜2重量%含むが、0.5重量%未満であれば、本発明で発揮される酸化防止剤の効果が微々であり、2重量%超過であれば、添加量に比べて効果の増大が微々であって非効率的である。
【0023】
本発明で使用されるUV安定剤は、紫外線による変色および物性の変化などが起きないようにする。本発明のホットメルト接着剤組成物は、UV安定剤を0.1〜0.7重量%含むが、0.1重量%未満であれば、本発明で発揮される酸化防止剤の効果が微々であり、0.7重量%超過であれば、添加量に比べて効果の増大が微々であって非効率的である。
【0024】
一方、本発明のホットメルト接着剤組成物は、例えば、自動車ヘッドランプシーリング用として使用できる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明について下記実施例でさらに詳しく説明するが、本発明の権利範囲は、下記実施例に限定されず、これと等価の技術的思想の変形をも含む。
【0026】
実施例1〜7:ホットメルト接着剤組成物の製造
下記表1に示したような組成で通常の方法によってホットメルト接着剤組成物を製造した。表1はホットメルト接着剤組成物を100重量%としてそれぞれ成分の重量%で換算して示す。
【0027】
【表1】

実験例1:耐熱クリープ性および接着特性の測定
本実験例1では、実施例1〜7で製造されたホットメルト接着剤の耐熱クリープ性および接着特性を測定した。
耐熱クリープ性は、実施例1〜実施例7をそれぞれ用いてPC/PP接着させた後、指定温度で1時間以上放置し、しかる後に、200g重量の錘を吊り下げ、錘が落下するまでの時間を測定することにより確認した。
接着特性は、実施例1〜実施例7それぞれで接着されたPC/PP接着試片を指定温度で1時間以上放置した後、UTMで接着強度および剥離率を測定することにより確認した。
【0028】
【表2】

測定結果(表2)、実施例1〜7は、無水マレイン酸−ポリプロピレンの添加量が増大するほど耐熱クリープ性および接着特性が増加することと、大体において優れた耐熱クリープ性および接着特性を示すことを確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のホットメルト接着剤組成物は、優れた耐熱クリープ性および接着特性を持つため、自動車ヘッドランプの長時間点灯の際にハウジングとレンズとの接着性に優れて水密性およびガス遮断性が改善されるが、自動車ヘッドランプシーリングのためのホットメルト接着剤組成物として有用に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブチルゴム(Butyl rubber)9.9〜18.5重量%;エチレンプロピレンゴム9.9〜18.5重量%;SIS(Styrene-Isoprene-Styrene)ゴムを含むスチレンブロックコポリマー6.6〜12.4重量%;アモルファスポリアルファオレフィン(amorphous poly-alpha-olefins、APAO)5.3〜9.9重量%;脂肪族石油樹脂、ロジンエステルおよびテルペン樹脂を含む粘着付与樹脂27〜49重量%;ポリイソブチレンを含む可塑剤6.6〜12.4重量%;無水マレイン酸−ポリプロピレン(Maleic Anhydride Polypropylene)0.5〜7重量%;フェノール系酸化防止剤0.5〜2重量%;並びにUV安定化剤0.1〜0.7重量%を含んでなることを特徴とする、ホットメルト接着剤組成物。
【請求項2】
接着付与樹脂は、脂肪族石油樹脂35〜65重量%、ロジンエステル15〜35重量%、およびテルペン樹脂15〜35重量%から構成されることを特徴とする、請求項1に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項3】
ホットメルト接着剤組成物は自動車ヘッドランプシーリング用であることを特徴とする、請求項1に記載のホットメルト接着剤組成物。


【公開番号】特開2011−195797(P2011−195797A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68365(P2010−68365)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(510081469)オコン カンパニー リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】OKONG CO.,LTD
【Fターム(参考)】