説明

ホルマリン固定およびパラフィン包埋された組織においてMetを結合するモノクローナル抗体および関連する方法

多様なヒト固形腫瘍において、侵襲性の、転移性の表現型および芳しくない予後が受容体チロシンキナーゼMetの発現に関連する。(a)Metに特異的であるMet4と称されるモノクローナル抗体、および(b)Met4を生成するハイブリドーマ細胞系が本明細書にて開示される。Met4抗体はホルマリン固定組織においてMetを検出するためにとりわけ有用である。検出、診断、予後診断および治療効果の評価のためにMet4抗体を使用する方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分子診断および医薬の分野である。
【背景技術】
【0002】
c−Met受容体キナーゼは発達および恒常性維持の間の細胞増殖、遊走、分化および分枝形態形成を調節する1−3。Metはまた種々のヒト原発性固形腫瘍およびその転移物の細胞表面上でも発現される(http://www.vai.org/met/)。ヒトMetの細胞外ドメインのアミノ酸配列を配列番号:1、アミノ酸25−567にて提供する。その活性化状態では、Met受容体が複数のシグナル伝達経路を通して癌細胞の成長、浸潤および転移を制御する。いくつかの癌細胞系では、サイレンシングによるMet発現の喪失がアポトーシスを促進し、Metが生存に必要であることを実証している5−7。Met活性はキナーゼまたは膜近傍ドメインにおける変異により8−11、過剰発現により12,13、またはそのリガンド、肝細胞成長因子(HGF/SF)への結合により14、15増大する。リガンド非依存性Met活性化を刺激する、生殖系列におけるMetの活性化変異は遺伝性乳頭状腎細胞癌の発達の原因である10。癌細胞では、変異Metアレルの選択的な増幅が全体的なMetキナーゼ活性をさらに増強する16。Met発現の大きさにより多くの癌型の侵襲性が予測される(http://www.vai.org/met/)。Metタンパク質発現の正確な検出および定量が、Met阻害剤に応答する可能性のある癌を同定するために必要であり、そしてかかる分子診断の開発は薬物開発に大きく遅れを取る。
【0003】
c−Metの高レベル発現は、乳房、胃、子宮頸部、肝細胞ならびに頭頸部を含む多くの癌型における芳しくない予後に関連している17−22。卵巣癌のおよそ25%および神経膠腫の11%が高レベルのc−Metを発現する。乳癌では、Her2に非依存性の癌のサブセットにおいてc−Met発現が観察されるが、細胞増殖の増大に関連する23、24。乳管癌では、シンデカン−1、E−カドヘリンおよびc−Metの同時発現が血管新生およびリンパ脈管新生を増強する25。c−Met発現に関連する任意の疾患を本明細書では「Met−関連疾患」と称する。しかしながら免疫組織化学研究の信頼性は、たいていの研究で用いられている、c−Met受容体におけるC末端ペプチドに対して上昇させた抗血清のロット間変動性に鑑みて疑問視されている26。たいていの市販により入手可能なMet抗体は信頼できない(またはその信頼性に関して厳密に試験されていない)。c−Met発現の増大に加えて、腫瘍微小環境におけるHGF/SF濃度の上昇もまた悪性の転帰に関連している。例えば膵臓癌における低酸素性腫瘍間質細胞はHGF分泌を増大させ、そして膵臓癌進行を加速させる27
【0004】
操作されたc−MetおよびHGF発現を伴う間葉細胞系は高度に転移性であり、そして細胞系における変異体c−Met受容体の発現またはc−Met遺伝子座の増幅は癌の増殖性、浸潤性および転移性表現型を増大させる6、28−30。野生型c−MetはMycと一緒に乳房の発癌を引き起こす31。c−Metは進行したヒト癌において最も頻繁に遺伝的に改変されているか、またはそうでなければ調節不全になっている受容体チロシンキナーゼ(RTK)の1つであり、そして故に魅力的な処置標的を表す。キナーゼ活性化c−Met変異は孤発性腎、肺、頭頸部、肝細胞癌腫、非小細胞肺癌(NSCLC)、胃癌およびメラノーマにおいて観察される13、32−35。さらにc−Met遺伝子座の増幅は胃、転移性結腸直腸および食道腺癌12、13、さらなるMet関連疾患において検出されている。癌細胞におけるc−Metの活性化はVEGFAおよびIL−8のような血管新生因子の分泌を誘起し、そしてトロンボスポンジン−1、抗血管新生因子の合成を阻害する36、37。加えて、内皮細胞におけるc−Met活性化は血管新生を引き起こす。Met活性阻害の細胞毒性効果は、活性化c−Metを伴う癌においてのみ生じ得るが、血管新生効果はさらに頻繁に存在し得る。
【0005】
経口で生理活性のあるc−Metの小型分子阻害剤(「Met阻害薬」)の開発と共に大きな進歩を生じた。これらの阻害剤のうち、PF−2341066はc−Metおよび未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)の阻害に関する特異性を実証し、そして50 mg/kg/日の用量でGTL−16胃癌異種移植片およびNCI−H441 NSCLC異種移植片の退縮に至る38。この用量で、c−Metは完全に阻害され、そして長期間の最大薬物効果が達成される。単腕抗c−Met抗体および小型分子キナーゼ阻害剤での前臨床研究7、39、40、ならびに患者における初期臨床研究により種々の癌型に対するc−Met阻害剤の有望性、その好ましい薬物動態特性および低い毒性がさらに強調される。故に活性なMetを枢軸とする癌を処置するために使用する場合、これらの薬物は多くの癌患者にとって実に利益になり得る。しかしながら活性Met経路を保有する癌を同定するために利用可能な分子診断手段はない。
【0006】
発現を検出し、そしてキナーゼ阻害剤の処置標的の活性化状態を決定するための分子診断が癌患者の処置を改善するために緊急に必要とされる。細胞表面受容体に結合するか、または細胞に浸透し、そして受容体および非受容体キナーゼを阻害する薬物は臨床において多大な有望性を示すが、ヒト癌における対応する標的の検出は大きな挑戦をもたらす。Her−2/Neu発現の定量的測定のためのハーセプト(Hercept)試験は日常的な臨床試料における使用およびFDA承認のために、長期にわたり、そして厄介な開発を必要とするのに加えて、受容体または非受容体タンパク質キナーゼ発現に関して検証された、利用可能な診断試験はない。これらの診断試薬の開発における困難は、キナーゼの低レベル発現、不安定な活性化状態に起因し、それはタンパク質リン酸化、およびキナーゼ活性を示すたいていのホスホエピトープに対する抗体の芳しくない特異性に依存する。結果的にたいていの受容体チロシンキナーゼ(RTK)には、患者の癌から最も一般的に得られる組織調製物であるホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織における発現測定のための検出試薬がない。キナーゼ阻害剤での処置に関する患者の満足は、この群の薬剤の抗新生物活性での成功に極めて重要であることがますます明白になってきている。所定の固形腫瘍型に関して、薬物応答性標的タンパク質を発現する癌の頻度は小さい。故に処置のための患者が注意深く選択されない場合、多くの薬剤がフェーズIIおよびフェーズIII臨床試験で有効性を実証するのに失敗するであろう。
【0007】
芳しくない試薬選択、FFPE組織におけるc−Met抗体の性能の不十分な検証およびホルマリン固定に対するc−Metの感受性のために、c−Met受容体はFFPE組織において測定することがとりわけ困難である。臨床における新規c−Met阻害剤が有望であるとすると、これらの薬剤から利益を得る可能性のある患者を同定するためにコンパニオン診断が必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はAmerican Type Culture Collectionに受け入れ番号PTA−7680で寄託されたハイブリドーマ細胞系により生成されたモノクローナル抗体「Met4」を含む。本発明はまた該Met4抗体の抗原結合フラグメントまたは誘導体を含む。また本発明はMetに対する結合に関してMet4と競合する抗Met抗体または該抗体のフラグメントもしくは誘導体を含む。さらに本発明はAmerican Type Culture Collectionに受け入れ番号PTA−7680で寄託されたハイブリドーマ細胞系により生成されたモノクローナル抗体の同定的な生物学的特徴を全て有するモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントもしくは誘導体;Metに特異的なモノクローナル抗体、ここで該抗体の重鎖および/もしくは軽鎖可変領域または該可変領域の抗原結合部位はAmerican Type Culture Collectionに受け入れ番号PTA−7680で寄託されたハイブリドーマ細胞系により生成されたモノクローナル抗体の対応する領域または部位の同定的な生物学的または構造的特徴を全て有する;American Type Culture Collectionに受け入れ番号PTA−7680で寄託されたハイブリドーマ細胞系により生成されたモノクローナル抗体が結合するエピトープと同じエピトープに結合するMetに特異的なモノクローナル抗体(または該抗体の抗原結合フラグメントもしくは誘導体);配列番号:1で236−242として同定されたアミノ酸を含むポリペプチドに結合するモノクローナル抗体または該抗体の抗原結合フラグメントもしくは誘導体;および配列番号:1で236−239として同定されたアミノ酸を含むポリペプチドに結合するモノクローナル抗体または該抗体の抗原結合フラグメントもしくは誘導体を含む。
【0009】
別の発明は先行の段落にて記載されたモノクローナル抗体、フラグメントまたは誘導体のいずれかを含んでなる組成物を含む。この組成物のモノクローナル抗体、フラグメントまたは誘導体を検出可能な部分に連結させることができる。
【0010】
さらに本発明は先行の段落の組成物を伴う診断的に有用な組成物;および診断的に許容される担体または賦形剤を含む。またこの組成物と共にモノクローナル抗体、フラグメントまたは誘導体を検出可能な部分に連結させることができる。
【0011】
さらなる発明は:(a)American Type Culture Collectionに受け入れ番号PTA−7680で寄託されたハイブリドーマ細胞系により生成されたモノクローナル抗体またはそのフラグメントもしくは誘導体を伴う第1容器;(b)診断的に、または医薬的に許容される担体または賦形剤を伴う第2容器;および(c)Metを検出、診断、予後診断またはMet阻害薬を評価するために抗体を使用するための説明書;を有するキットを含む。このキットを用いてモノクローナル抗体、フラグメントまたは誘導体を検出可能な部分に連結させることができる。またこのキットは第2モノクローナル抗体、フラグメントまたは誘導体を含むことができ;その第2モノクローナル抗体、フラグメントまたは誘導体は第1容器からのモノクローナル抗体、フラグメントまたは誘導体に結合し、そして第2抗体を検出可能な部分で標識できる。さらにこれはまたMet阻害薬を含むこともできる。
【0012】
本発明はまたいくつかの方法を含む。第1はMetを発現することが疑われる組織または生物学的試料中のMetの存在を検出するための方法であり、(a)Metを発現することが疑われる組織または試料を提供すること;(b)本明細書に記載される本発明の組成物を提供すること;(c)組織または試料をこの組成物と接触させること;および(d)組織または試料中のMetの存在を検出すること;の工程を含んでなる。第2は:(a)Met関連疾患を有するかまたは有することが疑われる患者から組織または生物学的試料を入手すること;(b)本明細書に記載される本発明の組成物を提供すること;(c)組織または生物学的試料をこの組成物と接触させること;(d)組織または試料中のMetの発現レベルを決定すること;および(e)発現レベルを適当な対照と比較すること;の工程を含んでなる、該患者におけるMet関連疾患を診断または予後診断する方法である。Met関連疾患は癌でよく、そして癌は卵巣癌でよい、最後は:(a)Met関連の癌を有する患者から第1組織試料を入手すること;(b)Met阻害薬で患者を処置すること;(c)患者から処置後組織を入手すること;(d)本明細書に記載される本発明の組成物を提供すること;(e)第1組織または生物学的試料および処置後組織または試料の各々をこの組成物と接触させること;(f)第1組織または生物学的試料および処置後組織または試料の各々におけるMetの発現レベルを決定すること;ならびに(g)第1組織または生物学的試料のMet発現レベルを処置後組織または試料のMet発現レベルと比較して該Met阻害薬の有効性を決定すること;の工程を含んでなる、Met阻害薬の有効性を決定するための方法である。これらの方法の各々において、組織または生物学的試料もしくは複数の試料はホルマリン固定されていてよい。
【0013】
別の発明はAmerican Type Culture Collectionに受け入れ番号PTA−7680で寄託されたハイブリドーマ細胞系を含む。
【0014】
本発明のこれらのおよびその他の特色、利点および目的は以下の明細書、請求の範囲および添付の図面を参照することにより当業者によりさらに理解され、そして認められよう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】Met4の特異性を示す。図1Aおよび1BはMet4(パネルA)またはC28(パネルB)で染色されたFFPE組織ブロックの切片を示す。Met発現は基底上皮細胞(長い矢軸で閉じた矢尻)、内皮細胞(閉じた矢尻、矢軸なし)において、および分泌細胞の側底膜(長い矢、および開いた矢尻)において特異的に生じる。図1Cから1FはMet4およびC28での免疫蛍光染色を示す。胃癌MKN45細胞(Met陽性)およびNIH3T3細胞(Met陰性)を同時培養し、そしてホルマリンで固定した。図1CはMet4を示し;図1Dは明視野(Brighfield)を示し;図1EはMet C28を示し;そして図1Fは図1Cおよび1Eの重ね合わせである。
【図2】Met4エピトープを特徴付けするウェスタンブロットである。Met陽性IGROV1またはMet陰性A2780卵巣癌細胞の細胞ライゼート中のタンパク質をウェスタンブロッティングした。ニトロセルロース膜を10%ホルマリンで処理するか、抗原回収溶液(retrieval solution)中で煮沸するか、または双方の処理に逐次的に供する。処理した膜をMet4でプロービングし、そして化学発光を用いて展開した。LC:負荷対照。
【図3A】ホルマリン固定卵巣癌細胞系におけるMet4およびMet C−28反応性を比較する。図3AはMet C−28でプロービングした卵巣癌細胞系のウェスタンブロットである。LC:負荷対照。観察されたタンパク質発現に応じたRNA発現結果を図6に示す。図3Bは卵巣癌細胞系からのFFPE細胞ペレットのC28およびMet4での免疫組織化学染色を示す。茶色は陽性Met受容体発現を示す。注目すべきことに、全ての細胞系がMet C−28で染色される。対照的にMet4反応性はウェスタンブロットで測定されたMet発現と相関する。図3Cはウェスタンブロットのシグナル強度とIHC測定値との間の相関性を示す。ウェスタンブロットを3D4モノクローナル抗体(Zymed)でプロービングし、そしてLICORシステムを用いてc−Met発現を定量した。1:500希釈(4 μg/ml)のMet4でIHCを実施した。ピアソン相関係数は0.602である。
【図3B】ホルマリン固定卵巣癌細胞系におけるMet4およびMet C−28反応性を比較する。図3AはMet C−28でプロービングした卵巣癌細胞系のウェスタンブロットである。LC:負荷対照。観察されたタンパク質発現に応じたRNA発現結果を図6に示す。図3Bは卵巣癌細胞系からのFFPE細胞ペレットのC28およびMet4での免疫組織化学染色を示す。茶色は陽性Met受容体発現を示す。注目すべきことに、全ての細胞系がMet C−28で染色される。対照的にMet4反応性はウェスタンブロットで測定されたMet発現と相関する。図3Cはウェスタンブロットのシグナル強度とIHC測定値との間の相関性を示す。ウェスタンブロットを3D4モノクローナル抗体(Zymed)でプロービングし、そしてLICORシステムを用いてc−Met発現を定量した。1:500希釈(4 μg/ml)のMet4でIHCを実施した。ピアソン相関係数は0.602である。
【図3C】ホルマリン固定卵巣癌細胞系におけるMet4およびMet C−28反応性を比較する。図3AはMet C−28でプロービングした卵巣癌細胞系のウェスタンブロットである。LC:負荷対照。観察されたタンパク質発現に応じたRNA発現結果を図6に示す。図3Bは卵巣癌細胞系からのFFPE細胞ペレットのC28およびMet4での免疫組織化学染色を示す。茶色は陽性Met受容体発現を示す。注目すべきことに、全ての細胞系がMet C−28で染色される。対照的にMet4反応性はウェスタンブロットで測定されたMet発現と相関する。図3Cはウェスタンブロットのシグナル強度とIHC測定値との間の相関性を示す。ウェスタンブロットを3D4モノクローナル抗体(Zymed)でプロービングし、そしてLICORシステムを用いてc−Met発現を定量した。1:500希釈(4 μg/ml)のMet4でIHCを実施した。ピアソン相関係数は0.602である。
【図4】ホルマリン固定細胞系におけるMet4結合の特異性を示す。図4AはMet C−28でプロービングした卵巣癌細胞系のウェスタンブロットである。β−チューブリンを負荷対照として用いる。図4BはMet4でのFFPE細胞ペレットの免疫組織化学染色を示す。茶色は陽性Met受容体発現を示す。U118:神経膠芽腫、SW1783:神経膠芽腫、U373:神経膠芽腫、NIH3T3:マウス線維芽細胞、DBTRG:神経膠芽腫、U87:神経膠芽腫、S114:HGF/SFに関するヒト遺伝子でトランスフェクトされたNIH3T3細胞、およびMet23、MCF7:乳癌。
【図5】卵巣癌および神経膠芽腫におけるMet4反応性を示す。卵巣癌の切片(図5A)または神経膠腫組織マイクロアレイ(図5B)をMet4で染色した。400倍の拡大率で画像を撮影した。前立腺組織の陰性および陽性対照を各染色に含め、そして図3B(右下パネル)に示す。組織染色の要旨を表2および3に示す。
【図6】卵巣癌細胞系におけるMet RNA発現を示すブロットである。卵巣癌細胞系からRNAを単離した。Metキナーゼドメイン内のフラグメントを逆転写されたRNAから増幅し、32サイクル増幅し、そしてアガロースゲル上で可視化した。
【図7】ファージディスプレイライブラリーでのパニングを示す。
【図8】Met4のエピトープをマッピングするための手順のフローダイアグラムである。
【図9】野生型M13と比較したファージディスプレイ12ライブラリーから回収されたMet4特異的ファージクローンのELISAからのOD450 nm値を示す棒グラフである。
【図10A】ペプチド1および2の存在下のMet4およびRA4Eの競合ELISAを示す。図10Aは連続希釈されたペプチド1の存在下のMet4(1:10000)ELISAを示す(モル比Met4の10から320倍)。
【図10B】ペプチド1および2の存在下のMet4およびRA4Eの競合ELISAを示す。図10Bはペプチド1および2の存在下のMet4 ELISAを示す。
【図10C】ペプチド1および2の存在下のMet4およびRA4Eの競合ELISAを示す。図10Cはペプチド1および2の存在下のRA4E ELISAを示す。
【図11】MKN45およびNIH3T3細胞上のMet4およびRA4Eの免疫蛍光染色を示す。図11A:赤、Met4;および緑、C28。図11B:赤、Met4;緑、RA4E。図11C:赤、Met4+ペプチド1;緑、RA4E+ペプチド1。
【発明を実施するための形態】
【0016】
好ましい実施態様の詳細な説明
本発明の好ましい実施態様は以下の具体的な実施態様の詳細な記載ならびに本明細書後記に含まれる実施例および配列表を参照することによりさらに容易に理解され得る。
【0017】
本出願で参照される全ての参考文献、特許、特許公報、論文およびデータベースは、各々があたかも具体的におよび個々に出典明示により本明細書の一部とされるように、その全てにおいて出典明示により本明細書の一部とされる。
【0018】
別に特記されない場合、本明細書にて使用される全ての技術的および科学的用語は本発明が属する分野の当業者により一般的に理解される意味を有する。
【0019】
任意の適当な方法(例えばBerzofskyら、「Antibody−Antigen Interactions」、Fundamental Immunology、Paul,WE編、Raven Press New York、ニューヨーク州(1984)、Kuby、Jams Immunology、WH Freeman and Company New York、ニューヨーク州(1992)およびそこに記載される方法)を用いて抗原に関する抗体の「親和性」または「結合力」を実験的に決定することができる。特定の抗体−抗原相互作用の測定された親和性は、異なる条件下(例えば塩濃度、pH)で測定された場合に異なり得る。故に親和性およびその他の抗原結合パラメーター(例えばK sub D、IC50)の測定値は好ましくは抗体および抗原の標準化された溶液および標準化されたバッファーで作成される。
【0020】
本明細書で使用される際には「生物学的試料」なる用語は、血液、血清、血漿、リンパ、尿、唾液、涙液、脳脊髄液、乳、羊水、胆汁、腹水、膿汁等のような、正常または疾患患者の身体から誘導される器官または組織抽出物および任意の液体またはその他の材料を意味する。
【0021】
「担体」なる用語はそれと共に化合物が投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤またはビヒクルを指す。かかる担体は落花生油、大豆油、鉱物油、ゴマ油等のような石油、動物、野菜または合成起源のものを含む水および油のような滅菌液体でよい。水または生理食塩水ならびに水性デキストロースおよびグリセロール溶液が担体として用いられるのが好ましい。
【0022】
「細胞」なる用語はその通常の生物学的意味で用いられ、そして多細胞生物全体を指すものではない。例えば細胞はインビトロで例えば細胞培養におけるものでよい。細胞は原核生物性(例えば細菌細胞)または真核生物性(例えば哺乳動物または植物細胞)でよい。
【0023】
「誘導体」とは、アミノ酸残基置換、欠失または付加の導入により改変されている親タンパク質またはポリペプチドのアミノ酸を含んでなるタンパク質またはポリペプチド(例えば抗体)のいずれかを指す。誘導体タンパク質またはポリペプチドは親ポリペプチドと類似のまたは同一の機能を保有する。
【0024】
「検出可能な部分」なる語句は、本明細書にて使用される際には本明細書に記載されるかまたは当業者に公知の手順またはモダリティによりエキソビボまたはインビトロで撮像および/または検出できる部分を指す。本明細書にて使用される際には検出可能な部分を直接的または間接的に本発明のMet4抗体に、抗Met4抗体、結合フラグメントまたはその誘導体に連結することができる。
【0025】
「診断用に標識された」なる用語は本発明の抗体、抗Met4抗体、結合フラグメントまたはその誘導体がそれに付着している診断用に検出可能な標識を有することを意味する。
【0026】
「ホルムアルデヒド」とは式CHOを有する有機化学物質を意味する。ホルムアルデヒドは水溶性である。「ホルマリン」とはホルムアルデヒドの水溶液を意味する。
【0027】
「フラグメント」とは親タンパク質またはポリペプチドのアミノ酸配列の少なくとも4アミノ酸残基(好ましくは少なくとも10アミノ酸残基、少なくとも15アミノ酸残基、少なくとも20アミノ酸残基、少なくとも25アミノ酸残基、少なくとも40アミノ酸残基、少なくとも50アミノ酸残基、少なくとも60アミノ酸残基、少なくとも70アミノ酸残基、少なくとも80アミノ酸残基、少なくとも90アミノ酸残基、少なくとも100アミノ酸残基、少なくとも125アミノ酸残基または少なくとも150アミノ酸残基)のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質またはポリペプチドのいずれかを指す。抗体の「抗原結合フラグメント」なる用語に包含される結合フラグメントの実例には、([ι])Fabフラグメント、VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる1価フラグメント、(n)F(ab’)2フラグメント、ヒンジ領域でジスルフィド橋により連結された2つのFabフラグメントを含んでなる2価フラグメント、(in)VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント、([ι]v)抗体の単腕のVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント、(v)VHドメインからなるdAbフラグメント(Wardら、Nature 341:544−46(1989))、ならびに(v[ι])単離された相補性決定領域(CDR)ラクダ抗体が含まれ、そしてラクダ抗体を使用することもできる。かかる抗体は、例えば本明細書に記載されるたった1つ可変ドメインからのCDRを含むことができる。さらにFvフラグメント、VLおよびVHの2つのドメインは別個の遺伝子によりコードされるが、組換法を用いてVLおよびVH領域が組み合わされて1価分子を形成する一本鎖タンパク質として作成することを可能にする合成リンカーによりそれらを結合させることができる(一本鎖Fv(scFv)として公知、例えばBirdら、Science 242:423−26(1988)、Hustonら、Proc Natl Acad Sci USA 85:5879−83(1988)参照)。かかる一本鎖抗体はまた抗体の「抗原結合フラグメント」なる用語に包含されるとも意図される。これらの抗体フラグメントは当業者に公知の従来の技術を用いて得られ、そしてフラグメントをインタクトな抗体と同じ様式で機能に関して評価する。
【0028】
「検出可能な部分に連結された」タンパク質または抗体は、タンパク質または抗体に結合している標識または検出可能な部分の存在を検出することによりタンパク質または抗体の存在を検出できるように、共有結合で、リンカーにより、またはイオン、ファンデルワールスもしくは水素結合により標識に結合しているものである。
【0029】
「モノクローナル抗体またはmAb」は本明細書にて使用される際には、単一のBリンパ球クローンの生成物である抗体の、全体的でない場合、実質的に均一な集団の一部である抗体を指す。mAbは当分野において周知であり、そして従来の方法を用いて作成される;例えばKohlerおよびMilstein、Nature 256:495−497(1975);米国特許第4376110号;Harlow,E.ら、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク州(1988);Monoclonal Antibodies and Hybridomas:A New Dimension in Biological Analyses、Plenum Press、ニューヨーク、ニューヨーク州(1980);H.Zolaら、Monoclonal Hybridoma Antibodies:Techniques and Applications、CRC Press(1982)参照。mAbを組換えにより、および例えば米国特許第4816567号に従って生成できる。
【0030】
「スクリーニング」または「診断」とは、患者(臨床試験の参加者を含む)を診断、予後診断、モニタリング、特徴付け、選択すること、および特定の障害もしくは臨床事象の危険があるかもしくはそれを有している患者、または特定の治療的処置に応答する可能性が最も高いものを同定すること、または特定の治療的処置に対する患者の応答を評価もしくはモニタリングすることを指す。
【0031】
「小型分子」とは3キロダルトン(kDa)未満、および好ましくは15キロダルトン未満、およびさらに好ましくは約1キロダルトン未満の分子量を有する組成物を指す。小型分子は核酸、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド擬似物質、炭水化物、脂質またはその他の有機(炭素含有)もしくは無機分子でよい。当業者には認められるように、本記載に基づいて、本発明のアッセイのいずれかを用いて化学的および/または生物学的混合物、しばしば真菌、細菌または藻類抽出物の大規模なライブラリーをスクリーニングできる。
【0032】
「対象」または「患者」とは、症状、障害または疾患のための処置を必要とする哺乳動物、好ましくはヒトを指す。
【0033】
「腫瘍細胞」なる用語はインビボ、エキソビボおよび組織培養のいずれかにおける、新しい遺伝材料の取り込みを伴う必要のない自然発生的な、または誘導された表現型変化を有する癌性、前癌性または形質転換された細胞を指す。形質転換ウイルスでの感染および新しいゲノム核酸の組み込み、または外因性核酸の取り込みから形質転換を生じることができるが、自然発生的に、または発癌性物質に暴露し、それにより内因性遺伝子を変異することに続いて生じることもできる。「腫瘍」には少なくとも1つの腫瘍細胞が含まれる。
【0034】
以下の記載では、免疫学、細胞生物学および分子生物学の分野の当業者に公知の種々の方法論を参照する。参照されるかかる公知の方法論を説明する出版物およびその他の資料を、あたかも全体が説明されるかのように、その全てにおいて出典明示により本明細書の一部とする。免疫学の一般的な原理を説明する標準的な参考研究には、A.K.Abbasら、Cellular and Molecular Immunology(第4版)、W.B.Saunders Co.、フィラデルフィア(2000);C.A.Janewayら、Immunobiology.The Immune System in Health and Disease(第4版)、Garland Publishing Co.、ニューヨーク(1999);Roitt,I.ら、Immunology(最新版)、C.V.Mosby Co.、セントルイス、ミズーリ州(1999);Klein,J.、Immunology、Blackwell Scientific Publications,Inc.、ケンブリッジ、マサチューセッツ州(1990)が含まれる。
【0035】
抗体は免疫グロブリン(Ig)分子としても公知のポリペプチドであり、それは具体的な抗原またはエピトープに対して結合特異性を呈する。ここでの「抗体」なる用語の使用は広く、従来のインタクトな4鎖Ig分子(IgG、IgAおよびIgE抗体の特徴)を超えて広がる。抗体はポリクローナル抗体(例えば分画または未分画免疫血清)またはmAb(以下を参照)の形態で生じ得る。1を超える抗原特異性を伴うIg分子(例えば2つの異なる抗体からの抗原結合領域または鎖を結合させることにより形成された二特異性抗体)もまた含まれる。抗体は典型的には具体的な抗原に対して結合特異性を呈するポリペプチドである。天然のIg分子は典型的にはヘテロ四量体糖タンパク質であり、2つの同一の軽(L)鎖および2つの同一の重(H)鎖から構成され、各L鎖は1つの鎖間ジスルフィド結合によりH鎖に連結されている。さらなるジスルフィド連結は2つのH鎖を架橋する。各HおよびL鎖は規則的な間隔の鎖内ジスルフィド結合を有する。各H鎖および各L鎖のN末端には可変(V)ドメインまたは領域(VおよびV)が含まれる。VドメインのC末端側は多くの定常(C)ドメイン(C)であり;L鎖はそのC末端で単一のCドメインのみを有する(Cと称される)。特定のアミノ酸残基がVHドメインとVLドメインの間でインターフェースを形成する。脊椎動物L鎖はそのCドメインのアミノ酸配列に基づいて、アイソタイプ、κおよびλとも称される2つの区別される型の1つに割り当てられる。そのCHドメインの配列に依存して、Igは各々γ、μ、α、εおよびδと称されるそのH鎖により同定される異なるクラス:IgG、IgM、IgA、IgEおよびIgD;のメンバーである。いくつかのサブクラスまたはアイソタイプもまた公知であり、例えばIgGアイソタイプ、IgG、IgG、IgGおよびIgG(各々γ1、ι2、γ3およびγ4として公知のH鎖を含んでなる)またはIgAアイソタイプ、IgAおよびIgA(各々H鎖alおよびα2を含んでなる)。
【0036】
抗体分子のドメインまたは領域を記載するために用いられる場合、「可変」なる用語は様々な抗体間で異なり、そして抗体の抗原特異性に寄与するアミノ酸配列を指す。可変性がV領域にわたって一様に分布されるが、典型的には3つの特定の領域でより大きい配列は相補性決定領域(CDR)または超可変領域と称され、VHおよびVLドメインに存在する。Vドメインのさらに高度に保存された部分はフレームワーク(FR)領域と称される。各VHおよびVLドメインは典型的には主としてβシート立体配置をとり、3つのCDRに結合する4つのFR領域を含んでなり、それはβシート構造を接続し、そして場合によってはβシート構造の一部を形成するループを形成する。各鎖におけるCDRはFR領域により極接近して維持され、そしてその他の鎖からのCDRを伴い、抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat,E.A.ら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、米国国立衛生研究所、ベセスダ、メリーランド州(1987))。Cドメインは直接抗原結合に関与しないが、オプソニン作用、補体結合および抗体依存性細胞毒性のような種々のエフェクター機能を呈する。
【0037】
抗体の定義には全て当分野において周知のFab、Fab’、F(ab’)、FvまたはscFvフラグメントを含むIg分子の抗原結合フラグメントもまた含まれる。FabおよびF(ab’)フラグメントはインタクトな抗体のFcフラグメントを欠如し、循環からより迅速に消え、そしてインタクトな抗体よりも非特異的組織結合が低いかもしれない(Wahlら、J.Nucl.Med.24:316−325(1983))。Fabフラグメントおよび単一の抗原結合部位のみを有する1価抗体のその他の形態は、特にインビボで抗体のMet担持細胞への内部移行またはMetの活性化およびその後のシグナル伝達経路を回避するかまたは制限するのが好ましい場合、その他の公知の利点を有する。
【0038】
Fab、F(ab’)、FvおよびscFvフラグメントまたは本発明において有用な抗体の形態を、インタクトな抗体と同じ様式でMetタンパク質を検出、定量または単離するために、およびMet発現腫瘍の診断または治療のために使用することができる。従来のフラグメントを典型的にはパパイン(Fabフラグメントのために)またはペプシン(F(ab’)フラグメントのために)のような酵素を使用してタンパク質分解性切断により生成する。FvフラグメントはHochman,J.ら、Biochemistry 12:1130−1135(1973);Sharon,J,ら、Biochemistry 15:1591−1594(1976)に記載される。scFvポリペプチドは目的のIgからの超可変領域を含み、そして天然のIgの抗原結合部位を再創成するが、インタクトなIgのほんのわずかな大きさである(Skerra,A.ら、Science 240:1038−1041(1988);Pluckthun,A.ら、Methods Enzymol.178:497−515(1989);Winter,G.ら、Nature 349:293−299(1991);Birdら、Science 242:423(1988);Hustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879(1988);米国特許第4704692号、第4853871号、第4946778号、第5260203号、第5455030号)。異なる特異性の抗体からの1を超える抗原結合抗体フラグメントを組み合わせることにより形成されたダイアボディーおよび多特異性抗体もまた抗体として含まれる。
【0039】
本発明はMetの細胞外ドメインにおけるエピトープに結合する「Met4」と称される抗体に関する。以下の実施例7に記載されるように、エピトープはヒトMetタンパク質のアミノ酸残基236−242のポリペプチドDVLPEFR(配列番号:1、表5参照)であるか、またはさらに具体的にはエピトープは配列番号:1のアミノ酸残基236−239のポリペプチドDVLP(表5)である。
【0040】
重要なことに、Met4はホルマリン処理Metに結合し、そしてホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織における変性Metの発現を正確に定量することができる。すなわちMet4は診断および予後診断用組織調製物において有用である。1つの実施態様では、Met4抗体はMet組織薬のためのコンパニオン診断用である。さらにMet4のMet発現細胞との反応性のために、Met4はまたインビボ分子撮像適用において有用である。
【0041】
Met4モノクローナル抗体は2006年6月29日にAmerican Type Culture Collection(ATCC)に受け入れ番号PTA−7680で寄託されたハイブリドーマ細胞系により生成される。ATCCの住所は10801 University Blve.,Manassas,VA,20110−2209である。FFPE前立腺組織におけるスクリーニングアッセイ、ならびに前立腺上皮および内皮細胞の特定の亜集団におけるc−Metの確立された特異的発現に基づいてMet4ハイブリドーマを単離した(図1AおよびB)。このスクリーニング研究法はFFPE組織においてc−Metと反応性がある抗Met抗体を入手するための機会を大きく増大させた。
【0042】
本発明はまたAmerican Type Culture Collectionに受け入れ番号PTA−7680で寄託されたハイブリドーマ細胞系により生成されたモノクローナル抗体と競合する抗Met抗体、またはその抗体のフラグメントもしくは誘導体をも含む。本明細書にて使用される際には「American Type Culture Collectionに受け入れ番号PTA−7680で寄託されたハイブリドーマ細胞系により生成されたモノクローナル抗体と競合する」なる語句はAmerican Type Culture Collectionに受け入れ番号PTA−7680で寄託されたハイブリドーマ細胞系により生成されたモノクローナル抗体と同じエピトープを認識する任意のモノクローナルまたはポリクローナル抗体(例えばマウス、ウサギまたはその他の生物により生成されたかどうか)を意味する。かかる抗Met抗体、そのフラグメントまたは誘導体がそのように競合するかどうかを、競合ELISAのような生物学的アッセイ法により実証することができる。例えばMetタンパク質に結合するMet4を間接的ELISAにより測定することができる。すなわち反応系に添加されたより高濃度のMet4は通常、定量的により高いOD(光学密度)値を生じる。ウサギポリクローナル抗Met抗体を異なるモル比のMet4と混合し、そしてOD値が低下する場合、それは、ウサギ抗体がAmerican Type Culture Collectionに受け入れ番号PTA−7680で寄託されたハイブリドーマ細胞系により生成されたモノクローナル抗体と競合することを意味する(以下の実施例7参照)。
【0043】
抗体、そのフラグメントおよび誘導体はFFPE組織におけるc−Met発現の測定に有用である。Met4はc−Metに関する独特の特異性を実証し、そしてMet4 IHCおよびウェスタンブロッティングシグナルの比較により評価されるように良好な精度でFFPEにおけるc−Met発現を定量する(δ=0.602)(図3)。同じ日、異なる日およびMet4の2つの別個のロットを比較する場合に、Met4染色は反復染色で再現性があった。
【0044】
FFPE組織におけるc−Met発現に関するたいていの研究はSanta Cruzからの抗Met C−28ポリクローナル抗体の種々のロットを用いる。AQUA(商標)テクノロジーを用いて3つのモノクローナル抗体およびC−28の2つの別個のロットを含む市販のc−Met抗体の系統的な比較により、乳癌組織マイクロアレイ研究において予測された量の変動性よりも大きいことが明確に実証された26。抗体の1つであるDO−24(Upstate)はc−Metの細胞外ドメインに結合するが、その他のものは細胞内エピトープを認識する。ウェスタンブロットで全ての抗体がMet受容体に結合するという事実にかかわらず、その組織反応性は同じ患者の乳癌試料間で一貫しなかった。ChemiconからのMAB3729およびC28の単一のロットを比較した場合、最も一貫した結果が得られた。MAB3729は良好な再現性を保有し、そして隣接するTMAスライド上の同じ細胞系からのコアに関して相関係数が0.94であった。C28の2つの異なるロットを比較した場合、かなりのロット間変動性が留意され、それはC−28の臨床利用性および比較によりその他のc−Met抗体を評価するその利用性を危うくする。それ故に現在のところFFPE組織調製物における新規c−Met反応性抗体の試験のための「究極の判断基準」はない。しかしながらウェスタンブロッティングによるc−Metの定量をIHC染色による定量と比較することにより、FFPE細胞ペレットにおいてMet4が検証されている(図3C)。
【0045】
Met4はMet受容体タンパク質の細胞外25から567アミノ酸におけるエピトープと反応する41。さらに具体的には、Met4はMetの細胞外236から242アミノ酸におけるエピトープと反応する。なおさらに具体的には、Met4はMetの細胞外236から239アミノ酸におけるエピトープと反応する(実施例6)。Met4結合部位はSDS試料バッファー中での煮沸による変性に感受性があるが、熱除去またはホルマリン固定のいずれかにより再確立される(図2)。同じ熱除去がホルマリン固定組織で正常に用いられ、そして抗体反応性を大いに改善する50。煮沸はホルマリン架橋により作成された結合を加水分解し、そしてまたタンパク質のリフォールディングを引き起こす。ホルマリン固定および熱除去の双方はウェスタンブロッティング後の変性Met受容体タンパク質内のMet4結合部位を再確立するのに有効であった。測定値を患者の処置決定に適用する場合、アッセイの信頼性はとりわけ重要である。それ故に細胞ペレットを使用してMet4 IHCアッセイのアッセイ内およびアッセイ間の変動性を、決定した。恐らく細胞ペレット中の細胞材料は単一の細胞型からなるので、組織切片におけるものよりもさらに均質である。しかしながら同じ組織ブロック内の隣接する切片から得られた細胞ペレットからのスライド間で有意な形態学的差異が観察された。この変動性はアッセイ内およびアッセイ間比較のCV%を増大させた。
【0046】
c−Metの細胞質ドメインに結合するいくつかのMet抗体は核エピトープと反応する。最近の研究により、Met細胞質ドメインを切断し、そして核に転位置させることができることが実証される51。しかしながらMet核フラグメントの生物学的機能、そのキナーゼ活性および標的、ならびに核Met発現の広い臨床的関連性は不明確である。乳癌TMAの切片においてMAB3729抗体を用いて測定されるMetの核発現は5年生存の75%から65%への低下に関連した26。バイオマーカーとしてのその役割を評価するためにc−Met核発現のさらなる研究が必要とされる。
【0047】
体細胞遺伝子変異または過剰発現によるc−Met活性化は特定の癌型において明らかに観察されているが、それらは原発性卵巣癌または神経膠腫において稀であるようである。二重微小染色体におけるc−Met遺伝子の複製によるc−Metの過剰発現は神経膠腫グレードIVで3/18に、そしてグレードIIで1/18に留意された52。異なるコホートでは、c−Met遺伝子増幅が神経膠腫の3/11で生じた53。本明細書の実施例で実証されるように、神経膠腫TMAの分析でグレードの高い神経膠腫においてc−Met発現の増大が確認された。しかしながら予想外にも、神経膠腫の腫瘍脈管構造における内皮細胞は必ずしもc−Met発現を実証しなかった。神経膠腫とは対照的に、全ての卵巣癌がc−Metを発現し、そして7/28が高いc−Met発現を実証した。この観察は、類内膜性卵巣癌におけるc−Met過剰発現が少なく、そしてその他の組織学的サブタイプわたってc−Met発現が10%高いことが観察された以前の研究とは異なる54。高いc−Met発現に寄与するメカニズムおよび卵巣癌におけるc−Metの活性化状態は未知である。この研究に関する細胞系パネルにおけるc−Met RNAおよびタンパク質発現の比較は芳しくない相関性を示した。卵巣癌細胞系では、c−Metタンパク質の高発現がc−Met遺伝子の増幅、c−Metタンパク質の転写または翻訳後の保持の増大のために生じるかどうかは明らかではない。卵巣癌におけるc−Met過剰発現の関連性およびMet阻害薬の治療的有効性に対するその関係性は、処置応答およびc−Met発現レベルを比較する臨床研究においてきっと評価されるであろう。
【0048】
本発明または生物学的試料中の腫瘍細胞のようなMetを発現することが疑われる細胞を検出するための方法にも関する。競合結合アッセイ、直接または間接サンドイッチアッセイおよび異種または同種相で行われる免疫沈殿アッセイのような当分野において公知の種々のイムノアッセイ技術を用いることができる。例えばZola、Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques、CRC Press,Inc.、147−158頁(1987)参照。直接的または間接的のいずれかで検出可能なシグナルを生成する検出可能な標識で、この様式で用いられる抗体を検出可能に標識できる。当業者はMet4抗体のための適当な検出薬または標識を容易に作成することができる。検出可能な部分をMet4抗体に(または抗Met4抗体に)連結させることにより、組織または試料中のMet4抗体を検出することができる。組織または試料を、検出可能に標識されたMet4抗体と(および、検出可能な部分が代わりに抗Met4抗体に連結されている場合は抗Met4抗体と)接触させ、そして組織または試料中の検出可能な部分の存在を検出する。
【0049】
当業者に公知の多くの様々な標識および標識する方法が存在する。本発明において使用することができる標識の型の実例には、放射性同位元素、常磁性性同位元素および陽電子放出断層撮影(PET)により撮像できる化合物が含まれる。本発明において使用される抗体に結合するためのその他の適当な標識は当業者に公知であるか、または日常的な実験により、そのように確認することができるであろう。診断用に標識された(例えば放射標識された)抗体が有効である。
【0050】
診断のために適当な検出可能な標識には放射活性、蛍光、蛍光発生性、発色性またはその他の化学的標識が含まれる。ガンマカウンター、シンチレーションカウンター、PETスキャニングまたはオートラジオグラフィーにより簡便に検出される有用な放射標識には、H、124I、125I、131I、35Sおよび14Cが含まれる。加えて131Iは有用な治療用同位元素である(以下を参照)。
【0051】
一般的な蛍光標識には、フルオレセイン、ローダミン、ダンシル、フィコエリスリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルアルデヒドおよびフルオレサミンが含まれる。ダンシル基のようなフルオロフォアは蛍光を発するために特定の波長の光により励起しなければならない。例えばHaugland、Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals(第6版)、Molecular Probes、ユージーン、オレゴン州(1996)参照。イソチオシアナート、スクシンイミジルエステルまたはジクロロトリアジニル反応基を使用してフルオレセイン、フルオレセイン誘導体およびOregon Green(商標)のようなフルオレセイン様分子、ならびにその誘導体、Rhodamine Green(商標)およびRhodol Green(商標)をアミン基に結合させる。同様にマレイミド、ヨードアセタミドおよびアジリジン反応基を使用してフルオロフォアをチオールに結合させることができる。基本的に窒素上に置換基を有するRhodamine Green(商標)誘導体である長波長ローダミン類は中でも最も光安定性のある公知の蛍光標識試薬である。そのスペクトルは4と10の間のpHの変化により影響を受けず、多くの生物学的適用のためにフルオレセイン類に優る重要な利点である。この群には、テトラメチルローダミン類、X−ローダミン類およびTexas Red(商標)誘導体が含まれる。本発明によるペプチドを誘導体化するためのその他の好ましいフルオロフォアは紫外光により励起されるものである。実例には、カスケードブルー、クマリン誘導体、ナフタレン類(ダンシルクロリドはそのメンバーである)、ピレン類およびピリジルオキサゾール誘導体が含まれる。最近記載されている2つの関連する無機材料:例えば硫酸カドミウムを含んでなる半導体ナノ結晶(Bruchez,M.ら、Science 281:2013−2016(1998))および量子ドット、例えば硫化亜鉛キャッピングされたセレン化カドミウム(Chan,W.C.W.ら、Science 281:2016−2018(1998))もまた標識として含まれる。
【0052】
別の研究法では、蛍光生成物、例えばフルオレサミン、o−フタルジアルデヒドのようなジアルデヒド、ナフタレン−2,3−ジカルボキシラートおよびアントラセン−2,3−ジカルボキシラートを生じる試薬と抗体のアミノ基を反応させる。7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール(NBD)誘導体は、塩化物およびフッ化物の双方共に、アミンを修飾して蛍光生成物を生じるのに有用である。
【0053】
152Eu+またはランタニドシリーズのその他のもののような蛍光発光金属を使用して検出のために抗体を標識することもできる。ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)のような金属キレーティング基を使用して、これらの金属をペプチドに付着させることができる。無水物形態のDTPAはNH含有抗体を容易に修飾することができる。
【0054】
抗体をリン光性または化学発光性化合物に結合させることにより、抗体を検出可能にすることもできる。次いで化学反応の経過中に生じる発光の存在を検出することにより、化学発光タグ化ペプチドの存在を決定する。特定の有用な化学発光物質の実例はルミノール、イソルミノール、テロマティック(theromatic)アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルである。同様にペプチドを標識するために生物発光化合物を使用できる。生物発光は、触媒タンパク質が化学発光反応の効率を増大させる生物学的系において見出される化学発光の1つの型である。発光の存在を検出することにより生物発光タンパク質の存在を決定する。標識の目的のために重要な生物発光化合物はルシフェリン、ルシフェラーゼおよびエクオリンである。
【0055】
さらに別の実施態様では、高い減衰係数を有する発色団を有するかまたはそれをもたらす発色化合物に基づく比色検出を用いる。
【0056】
対象から組織学的標本を取り出し、そして標識を検出するためにそれを適切な条件下で顕微鏡により試験することにより、標識抗体のインサイチュ検出を達成できる。かかるインサイチュ検出を達成するために多様な組織学的方法(例えば染色手順)のいずれかを修飾できることは当業者に容易に受け入れられよう。
【0057】
抗体を標識するための1つの方式はそれを酵素に連結させ、そしてそれを酵素イムノアッセイ(EIA)または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)において使用することによる。かかるアッセイは:Butler,J.E.、「The Behavior of Antigens and Antibodies Immobilized on a Solid Phase」(第11章)、STRUCTURE OF ANTIGENS 1巻(Van Regenmortel,M.、CRC Press、ボッカラートン(1992)、209−259頁;Butler,J.E.、「ELISA」(第29章)、van Oss,C.J.ら(編)、IMMUNOCHEMISTRY、Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク(1994)759−803頁、Butler,J.E.(編)、IMMUNOCHEMISTRY OF SOLID−PHASE IMMUNOASSAY、CRC Press、ボッカラートン(1991);Voller,A.ら、Bull.WHO 53:55−65(1976);Voller,A.ら、J.Clin.Pathol.31:507−520(1978);Butler,J.E.、Meth.Enzymol.73:482−523(1981);Maggio,E.(編)、Enzyme Immunoassay、CRC Press、ボッカラートン(1980)、Ishikawa,E.ら(編)、Enzyme Immunoassay、Kagaku Shoin、東京(1981);においてさらに詳記される。今度は、後にその基質に暴露されるときにこの酵素は例えば分光光度分析、蛍光分析により、または視覚的手段により検出できる化学的部分を生成するためのような様式で基質と反応する。この目的のために一般的に使用される酵素には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、Δ−V−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、α−グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコアミラーゼおよびアセチルコリンエステラーゼが含まれる。
【0058】
抗Met抗体の共有結合を含む化学的修飾は本発明の範囲内である。ターゲティングされたアミノ酸残基を、選択された側鎖またはNもしくはC末端残基と反応することが可能である有機誘導体化剤と反応させることにより、修飾の1つの型を分子に導入する。
【0059】
二機能性薬剤での誘導体化は、抗体(またはフラグメントもしくは誘導体)を水不溶性支持体マトリックスまたは精製法(以下に記載)において使用するために表面に架橋するのに有用である。一般的に使用される架橋剤には、例えば1,1−ビス(ジアゾ−アセチル)−2−フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、例えば4−アジドサリチル酸とのエステル、3,3’−ジチオビス(スクシンイミジルプロピオナート)のようなジスクシンイミジルエステルおよびビス−N−マレイミド−1,8−オクタンのような二機能性マレイミドを含むホモ二機能性イミドエステルが含まれる。メチル−3−[(p−アジドフェニル)ジチオ]プロピオイミダートのような誘導体化剤は、光を照射された場合に架橋することができる光活性化可能な中間体を創成する。臭化シアン活性化された炭水化物のような反応性水不溶性マトリックスならびに米国特許第3969287号;第3691016号;第4195128号;第4247642号;第4229537号;および第4330440号に記載される反応性基質をタンパク質固定において使用する。
【0060】
その他の修飾にはグルタミニルおよびアスパラギニル残基の各々対応するグルタミルおよびアスパルチル残基への脱アミド化、プロリンおよびリジンの水酸化、セリルまたはスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニンおよびヒスチジン側鎖のアミノ基のメチル化(例えばT.E.Creighton、Proteins:Structure and Molecular Properties、W.H.Freeman&Co.、サンフランシスコ(1983))、N末端アミンのアセチル化、ならびに任意のC末端カルボキシル基のアミド化が含まれる。残基の修飾された形態は本発明の範囲内に入る。
【0061】
ポリペプチドの天然のグリコシル化パターンが改変されている抗体もまた本明細書に含まれる。これは天然のポリペプチド鎖に存在しない1つもしくはそれより多い炭水化物部分の欠失および/または1つもしくはそれより多いグリコシル化部位の付加を意味する。タンパク質グリコシル化は典型的にはN連結(Asp側鎖に付着)またはO連結(ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはSerまたはThrに付着;もしかしたら5−ヒドロキシProまたは5−ヒドロキシLys)されている。トリペプチドAsp−Z−SerおよびAsp−Z−Thr(ここでZは任意のアミノ酸であるがProではない)はAsp側鎖に対する炭水化物部分の酵素的付着のための認識配列である。これらの配列のいずれかの存在は潜在的なN−グリコシル化部位を創成する。O連結されたグリコシル化は通常N−アセチルガラクトサミン、ガラクトースまたはキシロースの結合を伴う。1つまたはそれより多い前記されたトリペプチド配列(N連結グリコシル化部位のために)を含むように天然のアミノ酸配列を改変すること、または1つもしくはそれより多いセリンもしくはスレオニンの付加もしくはそれによる置換(O連結グリコシル化部位のために)によりポリペプチドへのグリコシル化部位の付加を達成できる。DNAレベルでの変化を通して、例えば望ましいアミノ酸をコードするコドンを作成するために予め選択された塩基でIgポリペプチド鎖をコードするDNAを変異させることによりアミノ酸配列を改変できる。例えば米国特許第5364934号参照。
【0062】
グリコシドのポリペプチドへの化学的または酵素的結合を用いることもできる。用いられる結合に依存して、(複数の)糖を(a)アルギニンおよびHis;(b)遊離カルボキシル基;(c)遊離スルフヒドリル基、例えばCysのもの;(d)遊離ヒドロキシル基、例えばセリン、ThrもしくはヒドロキシProのもの;(e)芳香族残基、例えばPhe、TyrもしくはTrpのもの;または(f)Glnのアミド基;に付着させることができる。これらの方法は第WO87/05330号(1987年9月11日)およびAplinら、CRC Crit.Rev.Biochem.259−306(1981)に記載される。
【0063】
既存の炭水化物部分の除去を化学的もしくは酵素的に、または(前記されたような)コドンの変異置換により達成できる。例えばポリペプチドをトリフルオロメタンスルホン酸、または連結糖(N−アセチルグルコサミンまたはN−アセチルガラクトサミン)以外のたいていのまたは全ての糖を切断する均等な化合物に暴露するが、ポリペプチドはインタクトなままで残すことにより化学的脱グリコシル化を達成する。Hakimuddinら、Arch.Biochem.Biophys.259:52(1987);Edgeら、Anal.Biochem.118:131(1981)参照。ポリペプチドからの炭水化物部分の酵素的切断のために多くのエンドおよびエキソグリコシダーゼのいずれかが使用される(Thotakuraら、Meth.Enzymol.138:350(1987))。
【0064】
潜在的なグリコシル化部位でのグリコシル化をN−グリコシド連結の形成を遮断するツニカマイシンの使用により防御できる(Duskinら、J Biol Chem 257:3105(1982))。
【0065】
本抗体の化学的修飾の別の型は、米国特許第4640835号;第4496689号;第4301144号;第4670417号;第4791192号;および第4179337号ならびに第WO93/00109号に記載される様式の、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコールまたはポリオキシアルキレンのような多くの様々な非タンパク質性ポリマーのいずれか1つに対する結合を含んでなる。
【0066】
抗体ならびに担体および/または賦形剤を含む組成物において本発明の抗体を使用することができる。
【0067】
別の態様では、本発明は癌、例えば卵巣癌のようなMet関連疾患を診断または予後診断する方法に関する。方法はMet関連疾患を有するかまたは有することが疑われる患者からの組織または生物学的試料と共に、Met4抗体またはかかる抗体のフラグメントもしくは誘導体を利用する。方法はまたMet関連疾患を有するかまたは有することが疑われる患者からの組織または生物学的試料と共に、Metとの結合に関してMet4と競合する抗体、またはそのフラグメントもしくは誘導体を使用できる。抗Met4抗体、競合抗体またはそのフラグメントもしくは誘導体を検出可能な部分に連結する。患者からの組織または試料中の検出可能な部分の存在を検出し、そして組織または試料中のMet発現レベルを決定し、そして適当な対照と比較する。以下の実施例では、Met4抗体はいくつかの型の腫瘍においてMetの検出に有用であることが示される。以下の実施例で提示されたデータに基づいて、当業者はMetの発現に関する比較の参照点として適当な対照を容易に設定することができる。1つの適当な対照は、癌を有していないか、または特定の型の癌を有していない多数の患者の発現レベルの中央値または代表値である。対照としてMet発現の中央値または代表値レベルを確立するために、多くの患者を使用するほど、診断決定はより正確になる。好ましくは少なくとも25人、50人または100人の患者を使用して発現の対照レベルを確立する。
【0068】
本発明はまた、患者の細胞におけるMetが阻害または根絶されているかどうかを決定することにより、Met阻害癌処置の有効性をモニタリングまたは評価するための方法を含む。方法は検出可能な部分に連結されたMet阻害薬およびMet4またはそのフラグメントもしくは誘導体を投与されている患者の組織または生物学的試料と共にMet4抗体またはそのフラグメントもしくは誘導体を利用する。組織または試料中の検出可能な部分の存在を検出し、そして組織または試料中のMet発現レベルを決定し、そして患者におけるMetの前処置または初期処置レベルと比較して、患者の細胞におけるMetが阻害または根絶されているかどうかを決定する。
【0069】
ここで本発明を一般的に記載してきたが、例証のために提供され、そして特記しない場合、本発明の限定を意図するものではない以下の実施例を参照することにより、同一物がさらに容易に理解されよう。
【実施例】
【0070】
c−Metに関するMet4の特異性、c−Met定量の精度およびMet4染色アッセイの信頼性をホルマリン固定およびパラフィン包埋(FFPE)細胞ペレットにおいて評価した。Met4を使用して卵巣癌および神経膠腫の臨床組織試料のコホートにおけるc−Met発現を測定した。具体的には、22細胞系においてFFPE細胞ペレットの免疫組織化学分析からのMet4シグナルはc−Met発現のウェスタンブロット測定値と相関した(σ=0.603)。Met4とは対照的に、Santa CruzからのC−28抗体はc−Metを発現しない細胞系のFFPE細胞ペレットと反応した。反復するMet4染色アッセイの技術的な信頼性はアッセイ内でCV%=37%およびアッセイ間でCV%=21%になった。漿液性、類内膜性および明細胞組織学的サブタイプの卵巣癌はMet4で陽性染色され、そして25%でMet4シグナルが高かった。神経膠腫の63%の癌細胞においてMet4染色は陽性であったが、神経膠腫腫瘍脈管構造におけるMet4染色発現はたいていの症例で陰性であった。これらの結果に基づいて(すなわちFFPE組織においてMet4抗体は正確におよび再現性よくc−Met発現を測定したため)、Met4抗体は臨床の局面で組織または生物学的試料中のc−Met発現定量に有用である。
【0071】
実施例1
実施例1−5に関する材料および方法
モノクローナル抗体作成および検証:
Van Andel InstituteのDr.Eric Xuの研究室で組換えタンパク質Met25−567Hを調製した。Met25−567H構築物(配列番号:1、25−567位置のアミノ酸)および精製Met928タンパク質はCambridge Antibody TechnologyのDr.Ermanno Gheradiの研究室からのものである41。組換え融合タンパク質Met−IgGをR&D systems(ミネアポリス、ミネソタ州)から購入した。
【0072】
BALB/cマウスに完全フロイントアジュバント中天然および変性(SDS試料バッファー中で煮沸)Met25−567Hを腹腔内注射し、続いて不完全フロイントアジュバントをさらに2回注射することにより、Metに対するマウスモノクローナル抗体を生成した。1か月後、アジュバントを伴わずに腹腔内および静脈内に最終注射を行った。ホルマリン固定MKN45(Met陽性)およびNIH3T3(Met陰性)細胞での間接的な免疫蛍光により免疫マウスからのポリクローナル抗体抗血清を試験した。標準的な技術を用いて最終注射の後4日に、脾臓細胞をP3X63AF8/653骨髄腫細胞と融合させた。ELISAおよび免疫蛍光染色によりハイブリドーマ細胞をMetに対する反応性に関してスクリーニングした。
【0073】
10個の96ウェルプレートをコーティングバッファー(0.2M Na2CO3/NaHCO3、pH9.6;50 μl/ウェル)中2 μg/ml Met25−567Hで、4℃で一晩コーティングした。次いでプレートを1%BSA含有PBS(200 μl/ウェル)で、4℃で一晩遮断した。ハイブリドーマ上澄50 μlを室温(RT)で1.5時間ウェルに添加した。プレートを洗浄バッファー(0.05%Tween−20を伴うPBS)中で2回洗浄し、そしてアルカリ性ホスファターゼ結合ヤギ抗マウスIgG(Sigma)を1:2000希釈で、室温で1.5時間添加した(50 μl/ウェル)。洗浄バッファーでプレートを4回洗浄した後、ホスファターゼ基質CP−ニトロフェニルリン酸(Kirkegaard&Perry Laboratories)を30分間添加し、そして405nmで吸光度を測定した。Met25−567Hと強い反応性(OD値は2.0より大きい)を有する全部で34個のハイブリドーマを選択し、そしてELISAによりMet928に関して試験し、そしてそれらのうちの14個が陽性であった。Met25−567HおよびMet928の双方と反応する14個のクローンをELISAによりMet−IgGに対して試験した。7個のクローンが3つのMetタンパク質全てに対して陽性であることが見出され、そして免疫蛍光染色により試験された。
【0074】
MKN45およびNIH3T3細胞を混合し、そして10個の96ウェルプレートに蒔き、そして37℃で一晩培養した。細胞を洗浄し、そして翌日10%ホルマリンで固定した。7個のクローンからのハイブリドーマ上澄50 μlを、固定された細胞が入ったウェルに37℃で1.5時間添加した。プレートを洗浄バッファー(0.05%Tween−20を伴うPBS)中で2回洗浄し、そして1:100希釈のローダミンレッド抱合ヤギ抗マウスIgG(Jackson ImmunoResearch Lab)を37℃で1.5時間添加した(30 μl/ウェル)。洗浄バッファー中で2回洗浄した後、細胞を蛍光顕微鏡下で試験した。5個のクローンを陽性と見出し、そして取り、そして広げた。これらの5個のクローンに以前の融合からの3個のクローンを加えたものの上澄を、ホルマリン固定正常ヒト前立腺組織切片で、免疫組織化学により検証した。クローン8G6(Met4と称される)が最も強いシグナルを生じ、そして3つの組換えMetタンパク質に対するELISAにより検証された。バイオリアクターを使用してモノクローナル抗体を生成し、そしてプロテインGアフィニティーカラムを使用してFPLCにより精製した。
【0075】
免疫組織化学
細胞ペレット:NIH3T3、S114(HGF/SFおよびMetに関するヒト遺伝子でトランスフェクトされたNIH3T3細胞)23、SK−LMS−1/HGF(ヒトMetおよびヒトHGF/SFに関するヒト平滑筋肉腫細胞系オートクリン)24、SW−1783、U118、U87、U373、DBTRG(ヒト脳神経膠芽腫)、MCF−7(乳癌)、ES−2、CaOV3、OV−90、SKOV3、TOV−112DおよびTOV−21G(卵巣腺癌)細胞をATCCから入手し、そしてその培地規格に従って培養した。1847、2780、OVCAR10、OVCAR5、OVCAR3、PEO−1細胞系(卵巣腺癌)をPacific Ovarian Cancer Research Consortium(シアトル、ワシントン州)から入手した。2008をDr.George Coucos(ペンシルバニア大学)から入手した。細胞ライゼートを10%中性緩衝ホルマリン中で固定し、削り取り、そしてHistoGel(Richard−Allan Scientific)に包埋した。HistoGelペレットを大きな患者組織に関するものと同じ設定を用いて加工し、そしてパラフィンに包埋した。
【0076】
ヒト組織:卵巣癌のホルマリン固定およびパラフィン包埋切片をPacific Ovarian Cancer Research ConsortiumからIRB承認プロトコールの下で入手した。神経膠腫からの組織マイクロアレイをCybrdi(フレデリック、メリーランド州)から購入した。Black and Decker野菜用スチーマー中標的回収溶液(pH9)(DAKO、デンマーク)で20分間抗原回収を実施した。スライドをDakoオートステイナーに装着した。以下のインキュベーションを全てオートステイナー上で室温で実施した:内因性ペルオキシダーゼ活性を3%過酸化水素で8分間遮断し;次いでDako血清不含タンパク質遮断を使用するタンパク質遮断工程を10分間で完了した。モノクローナルマウス抗ヒトMet4抗体をTrisバッファー/1%BSA中、TMAスライドの染色のために1:150で、および細胞ペレットの染色のために1:500で希釈した。Santa Cruz抗Metポリクローナル抗体を1:300で希釈した。アイソタイプ対照のために精製マウスIgGを希釈してMet4濃度に合わせた。ビオチン化抗マウスまたは抗ウサギIgG(Vector Labs)二次抗体を1:200で希釈し、そして30分間適用した。次いでペルオキシダーゼ抱合ストレプトアビジン(Jackson ImmunoResearch)を1:2000で30分間使用した。最後にDako液体DAB+発色基質系を7分間適用した。スライドをDako自動ヘマトキシリンで2分間対比染色し、脱水し、そしてカバーガラスを載せた。
【0077】
記載されるように免疫組織化学的に染色された切片のスコア化を行った42。簡単には、陽性細胞のパーセンテージを染色強度で乗じることにより累積スコアを誘導した。累積スコアを0から3のカテゴリーに分けて、そして組織学的サブタイプ(卵巣癌)または腫瘍グレード(神経膠腫)により群分けした。
【0078】
ウェスタンブロット分析
サブコンフルエントの細胞を記載されるようなプロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤(Roche)バッファーを補充したRIPA中で溶解した43。Bradfordアッセイを使用して細胞系からのタンパク質ライゼートを測定した。同じ日に0から12 μg/mlの範囲にわたるBSA標準を使用して試料を測定した。試料1−2 mlが標準曲線の直線範囲内に測定値を提供するように試料を希釈した。試料(50mg)を4−15%グラジエントSDS−PAGE上で分離し、そしてImmobilon(商標)−P PVDF(Millipore、ビルリカ、マサチューセッツ州)またはニトロセルロース転写膜(Bio−Rad、ハーキュリーズ、カリフォルニア州)に移した。ホルマリン固定ウェスタンブロットのための膜を2%中性緩衝ホルマリンZ−fix(Anatech Ltd.、バトルクリーク、ミシガン州)中で20分間固定し、そしてPBS中で洗浄した。Black and Decker野菜用スチーマー中標的回収溶液(pH9)で20分間抗原回収を実施した。膜を5%乳遮断バッファーで室温で遮断し、そして5%BSA中1:250希釈でウサギ抗ヒトMetポリクローナル抗体C−28と共に室温で1.5時間、または1:1000希釈で一晩インキュベートした;これに代えて、Met4を1:1000で一晩、およびZymedマウス抗cMetクローン:3D4を1:500で使用した。ロバ抗ウサギIgG−HRP(Amersham)を1:5000で使用するか、またはAlexaFluor680ヤギ抗マウスIgG(Molecular Probes)を1:10000で使用した。化学発光試薬(Pierce)またはOdyssey(登録商標)赤外線撮像システム(LI−COR Biosciences、リンカーン、ネブラスカ州)によりタンパク質バンドを検出した。700 nmチャンネルを用いて5.0の強度でOdyssey(登録商標)赤外線撮像システムで画像をスキャンした。ImageQuant TLソフトウェアで1Dゲル分析を用いてMet特異的バンドのシグナル強度を測定した。「ローリングボール」手段を用いてバックグラウンドを減じた。
【0079】
IHC染色細胞ペレットのデジタル画像分析
CRI Nuanceカメラシステム(www.cri−inc.com)を使用してMet4で染色した細胞ペレットのスライドをスペクトル的に撮像した。各スライドから6−10個の画像を収集した。420 nmと720 nmの間で20 nm増で発光を測定した。得られた画像キューブを光学密度単位に変換し、そして対照標本から推定されるスペクトルを使用して、数学的に分解された(unmixed)その個々のDABおよびヘマトキシリン構成要素にし、そしてスペクトルライブラリーに保存した。DAB染色は対比を増大させるための擬似カラーの赤であった。ヘマトキシリンは擬似カラーの青であり、そして定量のために画像を擬似蛍光様式に変換した。
【0080】
次いで平均DAB光学密度およびバックグラウンドを超えるピクセル数を同定した(RidlerおよびCalvard44の自動閾値化アルゴリズムを使用して決定されるように)我々の研究室により開発されたソフトウェアでスペクトル的に分解された(unmixed)画像を定量した。そのヘマトキシリン光学密度がバックグラウンドを超えるピクセルで連結成分アルゴリズム45を使用して、核を計数することにより細胞数を同定した(ヘマトキシリン対比染色により同定されるように)。自動高域閾値フィルタを使用した後、核の全数を決定した。171強度単位の強度閾値フィルタ値を使用して陽性Met4染色に関する閾値を設定した。陰性対照細胞系(A2780、OVCAR10およびTOV−112D)を使用し、そして陽性ピクセル数を0.1%まで制限してこの閾値パラメーターを定義した。これはPPA統計に類似する46。次いでこれらの計数を用いて各試料ペレットに関する陽性Met4細胞のパーセントを決定した。
【0081】
統計分析
Microsoft(著作権) Excelソフトウェアを使用してピアソンの相関係数を計算した。
【0082】
実施例2
ホルマリン固定組織におけるc−Metの定量のための抗c−Metモノクローナル抗体の開発
たいていのインビトロおよび免疫組織化学研究においてMet発現を測定するために使用されている、Santa Cruzからのポリクローナル抗体であるC−28の制約は、我々がホルマリン固定組織における分子撮像および免疫組織化学を含む臨床適用のための患者の癌におけるc−Metタンパク質発現の測定のためのモノクローナル抗体(mAb)を開発することの同義付けとなった。Met受容体の細胞外ドメインと反応するc−Met抗体は細胞表面上のc−Met発現の存在量を評価するための最も直接的な測定を提供するので、これを入手するために免疫原を設計した。得られたmAbはC−28のロット間変動性およびMet細胞質ドメインに結合する抗体で観察される核反応性を克服する。
【0083】
ホルマリン固定およびパラフィン包埋(FFPE)組織におけるMet受容体に特異的に結合するモノクローナル抗体を同定するための最終スクリーニングとして、保存(archival)前立腺組織の切片をハイブリドーマ上澄で染色した(表1)。
【0084】
【表1】

前立腺におけるMet受容体発現の明確な細胞下のパターンに基づいて47、48、基底上皮細胞、萎縮管腔上皮細胞49および内皮細胞と反応し、そして分泌内皮細胞の基底管腔細胞膜を描写するモノクローナル抗体を選択した(図1AおよびB)。核タンパク質、分泌細胞における細胞質タンパク質に、または前立腺間質におけるタンパク質に散在的に結合する抗体を排除した。最も強力でそして特異的なシグナルを提供する抗体をMet4と称した。Met4は基底上皮細胞の細胞質および管腔上皮細胞の細胞膜と反応する(図1A、挿入)。10%ホルマリン中で固定されたMet反応性MKN45細胞および非反応性NIH3T3細胞の染色同時培養によりMet4をさらに検証した。免疫蛍光染色はMKN45細胞の膜に沿って特異的に観察され、そしてC−28(Santa Cruz)の免疫反応性と同時発生する(図1C−F)。
【0085】
実施例3
ホルマリン固定細胞におけるc−Metとの反応性に関するMet4の特異性
Met4のMet受容体タンパク質との反応性を確認するために、ウェスタンブロットをMet4でプロービングした。組織におけるホルマリン固定の再現条件により、ウェスタンブロット膜を10%ホルマリンで処理し、そして組織切片に適用していたのと同じ型の抗原回収を行った。多量のc−Metを発現するIGROV1卵巣癌細胞において、Met4は変性Met受容体タンパク質と反応しなかった。ホルマリン固定または抗原回収バッファー中の膜の煮沸はc−Metに対するMet4結合を増大させ、そして140 kDaのc−Metバンドを表した(図2)。Met4は低分子量バンドと非特異的に反応し、そのうちのいくつかはMet受容体陰性A2780細胞系においても現れた。免疫蛍光およびウェスタンブロッティング結果により、Met4が変性に感受性があり、そしてホルマリン固定または抗原回収により再確立されるMet上の特異的エピトープに結合することが実証される。
【0086】
ホルマリン固定細胞調製物におけるMet4の特異性をさらに検証するために、細胞系のパネルを分析した。Met発現レベルに基づいて細胞系を選択した。第1のパネルは14個の卵巣癌細胞系からなった。これらの細胞系は不定量のc−Metタンパク質を発現する。A2780、OVCAR10およびTOV−112DはMet RNAまたはタンパク質を発現せず(図3Aおよび図6)、そしてIGROV1およびOVCAR5細胞はMetを高度に発現する。ホルマリン固定調製物におけるMet4およびMet C−28の特異性を対応するウェスタンブロット結果と比較するために、各細胞系の細胞ペレットをヒト組織と正確に同じ方式で加工した。スライド上の細胞ペレットの平行切片をMet4またはC−28 Met抗体のいずれかで染色した。C−28 Metは全ての細胞系と無差別的に反応したが、Met4はウェスタンブロットおよびPCR分析でMet発現に関して陽性であったこれらの系のみを染色した(図3B)。ホルマリン固定組織におけるMet4の反応性がc−Metタンパク質の発現のレベルと比例するかどうかを決定するために、IHC染色切片からの染色強度のデジタル測定値をウェスタンブロットにおいて検出されたc−Metの量と比較した。細胞ペレット調製物中のHistogelの凝集塊に起因する異常値を除去した後、IHCとWBとの間のピアソン相関係数はs=0.602であった(図3C)。
【0087】
種々の非卵巣細胞系においてMet4の特異性をさらに試験し、そのほとんどが神経膠芽腫細胞系(図4)であり、そしてその結果により、Met4がc−Met発現ヒトと反応するが、c−Met陽性マウス細胞またはc−Met陰性ヒト細胞とは反応しないことが確認された。
【0088】
実施例4
Met4免疫組織化学測定の再現性
結果により、新規Met4抗体はFFPE細胞調製物においてc−Metと特異的に結合することが実証されるので、中間のレベルのc−Metを発現するTOV21D細胞における染色の再現性を試験した。アッセイ再現性は臨床試験のための抗体の開発において重要な因子である。同じ日の反復染色(アッセイ内変動性)および異なる3日間に染色したスライド(アッセイ間変動性)の間でMet4染色強度の一貫性をFFPE細胞ペレットにおいて分析した。加えて、Met4抗体の2つの別個のロットからの染色結果を比較した。ハイブリドーマ培養培地から別個に調製された精製抗体の2つのロットはs=0.75の相関係数を表した。アッセイ内およびアッセイ間変動性は生物学的および技術的(アッセイ)変動性の構成要素からなり、それをこの分析において分けることはできなかった。異なる日の細胞ペレットにおいてTOV21D細胞間でMet4の染色強度に影響する有意な形態学的差異が観察された。結果的にアッセイ内変動性に関して%CVは39%であった。別個の3日間に実施したMet4アッセイの変動性(アッセイ間変動性)は%CV=21%であった。アッセイ間変動性を日変動性の代表値から計算し、そしてアッセイ内変動性よりも小さかった。
【0089】
実施例5
卵巣癌および神経膠腫におけるMet発現
保存(archival)FFPE組織におけるMet4の特異性を評価するために、卵巣癌組織の切片および神経膠腫のTMAを分析した。Met4は卵巣癌細胞、内皮細胞、卵巣間質および形質細胞における細胞の集団に関して高い染色特異性を保有する。核染色は観察されなかった(図5A)。卵巣癌の組織学的サブタイプには、漿液性、類内膜性および明細胞が含まれるが、粘液性癌は含まれず、そして全ての癌はFIGOステージIII−IVであった。29個全ての卵巣癌がMet4反応性を示した(表2)。
【0090】
【表2】

卵巣癌の切片をMet4で染色する。全体のスコアはカテゴリースケール0−3の切片の染色強度代表値を表す(S−漿液性乳頭癌、EM−類内膜癌、CC−明細胞癌)。
【0091】
卵巣癌のサブタイプにわたるMet4染色強度において統計的に有意差は観察されなかった。最も侵襲性のサブタイプであると考えられる明細胞癌はその他の組織学的サブタイプよりも大きな反応性を実証しなかった。
【0092】
脳腫瘍におけるMet4の特異性およびc−Metの発現を評価するために、神経膠腫の組織アレイを染色した。組織マイクロアレイは3検体ずつのコアで18個の神経膠腫を表示した。加えて正常な脳組織の3例があった(表3、図5B)。
【0093】
【表3】

3検体ずつのコアで18個の神経膠腫の組織マイクロアレイをMet4抗体で染色した。相対染色強度を陽性細胞のパーセンテージで乗じることによりMet4反応性を評価する。全体のスコアをカテゴリースケール0から3で表現する。
【0094】
ニューロンおよび反応性アストロサイトはMet4で強く染色されたが、オリゴデンドロサイトはMet染色を示さなかった。驚くべきことに、腫瘍脈管構造の内皮細胞を含む内皮細胞はMet陽性で変動した。18個の神経膠腫のうちの5個はMet陰性であり、そして3/18個は強く染色された。3個全てが高いグレードの神経膠腫であった。要するに、神経膠腫の70%がc−Metを発現し、そしてc−Met発現レベルは腫瘍グレードと共に増大した。
【0095】
実施例6
Met4のエピトープのマッピング
材料および方法
Met4をPBS中2.0 mg/mlの濃度で調製した。Ph.D.−12およびPh.D.−7ファージディスプレイペプチドライブラリーをNew England Biolabsファージディスプレイペプチドライブラリーキットから入手した。−96gIIIシークエンシングプライマーおよび宿主株E.coli ER2738もまたこのキットから入手した。その他の全ての溶液をSIGMAの化学物質を用いて調製した。
【0096】
図8はMet4エピトープをマッピングするために使用した方法を示す。最初に各々異なるペプチド配列を表示するファージのライブラリーを、Met4抗体でコーティングしたプレートに暴露する。図7はファージディスプレイペプチドライブラリーでのバイオパニングを示す。ファージディスプレイは無作為ペプチド配列とこれらの配列をコードするDNAとの間の連結の存在を可能にする。バイオパニングは、ファージディスプレイされたペプチドを標的分子(酵素、抗体等)でコーティングされた表面に暴露する選択技術である。
【0097】
New England Biolabsファージディスプレイライブラリーペプチドキットに従ってM13ファージディスプレイライブラリーを使用してバイオパニングを実施した。60×15 mmペトリ皿を100 μg/ml Met4抗体でコーティングし、そしてプレートをおよそ1×10 11 pfuのM13ペプチドライブラリーに暴露する種々の工程が含まれた。未結合ファージをTBSTで洗い流し、そして特異的に結合したファージを10%グリシンHClおよびBSAで溶出した。以下にさらに詳記されるように溶出されたファージを増幅し;その過程を全部で3−4ラウンド繰り返し;そして最後にMet4抗体に関して陽性の個々のクローンを単離し、そしてシークエンシングした。
【0098】
ファージ増幅および沈殿のために、1:100希釈のER2738培養物を感染および増幅に使用した。ファージを20%ポリエチレングリコール、2.5M NaClで沈殿させた。数回の結合/増幅サイクルを通してMet4抗体に特異的なファージを取り出した。表4は、Ph.D.−12ライブラリーからの最初のインプットおよびMet4に対するパニングの各ラウンドに続くアウトプットに関するファージ数をpfuで示す。
【0099】
【表4】

最終ファージ単離体の力価決定および増幅を実施して、単一のDNA配列に相当する各ファージクローンを確実にした。
【0100】
以下の方法に従ってM13コロニーのELISAを実施した:Met4抗体を個々のM13ペプチドディスプレイクローンに暴露した。1%乳バッファー中1:5000希釈のHRP抱合抗M13抗体を二次抗体として使用した。使用した過酸化物基質をPierce TMB基質キットから入手した。KC4 PCプログラムを使用してプレートを450 nmで読んだ。図9は野生型M13と比較したファージディスプレイ12ライブラリーから回収されたMet4特異的ファージクローンのELISAからのOD450 nm値を示す棒グラフである。
【0101】
以下のようにM13からssDNAを単離した:ELISAから最高の吸光度の読みを有する8個のM13ファージクローンを選択し、そしてQIAGENによるQIAprep M13ハンドブックからのQIAprep Spin M13プロトコールを使用してそのssDNA分子を単離した。
【0102】
超特異的ファージクローンのDNAシークエンシングによりエピトープを特徴付けした。DNAシークエンシング以下のように実施した:各M13クローンから単離されたDNA2.0 μlをPCR管中28 gIIIシークエンシングプライマー1.0 μlと組み合わせた。試料をPCRに提示し、そしてシークエンシングを実施した。Simプログラムを使用して、シークエンシングされたMet4特異的M13ペプチド(ファージディスプレイ12ペプチドライブラリーから)をヒトMet細胞外HGF/SF結合ドメイン配列と比較した。アミノ酸配列間の類似性を表5にて太字で示す。
【0103】
【表5】

Met4のエピトープ:
DNA配列分析をヒトMetタンパク質上の(配列番号:1の)アミノ酸残基236−242のエピトープDVLPEFR(表5参照)に、またはさらに具体的にはヒトMetタンパク質上の(配列番号:1の)アミノ酸残基236−239のエピトープDVLP(表5参照)にマッピングした。
【0104】
実施例7
RA4Eウサギ抗Met抗体はMet4のエピトープに結合する
ヒトMetアミノ酸残基233−246からのペプチドSYIDVLPEFRDSYP(ペプチド1)およびMetアミノ酸478−491からの別のペプチドNFLLDSHPVSPEVI(ペプチド2)をGenemed Synthesis,Inc.により合成した。ペプチド1をKLHタンパク質に抱合させた。Pacific Immunology CorpによりSYIDVLPEFRDSYP−KLHに対してウサギポリ血清(polysera)が作成された。ポリクローナル抗体(「RA4E」と称される)を、ペプチド1を抱合させたアフィニティーカラムを通して精製した。
【0105】
RA4E抗Met抗体はMet4と競合する
ウサギ抗Met抗体RA4Eを競合ELISAにより特徴付けした。競合ELISAでは、96ウェルプレートを1 μg/mlのMet25−567タンパク質でコーティングした。Met4およびRA4Eを連結希釈のペプチド1およびペプチド2と混合し、そして混合物をMetコーティングプレート上で室温で1.5時間インキュベートした。洗浄後抗マウスまたは抗ウサギAP抱合体を1:2000希釈でプレートに添加した。展開させた後、ELISAリーダーにより405 nmで光学密度値を測定した。ペプチド1は用量依存的な様式でMetタンパク質に対するMet4およびRA4E双方の結合を遮断したが(図10A−C)が、ペプチド2は結合に影響を及ぼさなかった。
【0106】
MKN45およびNIH3T3細胞におけるMet4およびRA4Eの免疫蛍光染色
ウサギ抗Met抗体RA4Eを免疫蛍光染色によりさらに特徴付けした。MKN45およびNIH3T3細胞を8チャンバースライドにおいて37℃で一晩同時培養した。次いで細胞をPBSで洗浄し、そして10%ホルマリンで固定した。固定細胞をMet4およびRA4E(各々8 μg/ml)と共に4℃で一晩インキュベートした。C28(20 μg/ml)を陽性対照として使用した。洗浄後、抗マウスローダミンレッドおよび抗ウサギFITC抱合体を細胞に添加し、そしてスライドを室温(RT)で1.5時間インキュベートした。核をDAPIで染色した。Met4およびRA4EはMet発現MKN45細胞において共存することが見出されたが、Met陰性NIH3T3細胞においては見出されなかった(図11A−C)。RA4EはMet4に類似して10%ホルマリンで固定されたMet陽性MKN45細胞を染色したので、RA4EはMet4に類似する特性を有するはずである。すなわちこのデータにより、RA4EはMet4同様、免疫組織化学染色によるホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織切片に関する臨床診断に使用できることが示唆される。
【0107】
前記の記載は好ましい(複数の)実施態様の記載にすぎないと考えられる。当業者および本発明を作成または使用するものは本発明の修飾に気づくであろう。それ故に図面にて示された、および前記で記載された(複数の)実施態様は単なる例証目的のためであり、そして均等論を含む特許法の原理に従って解釈されるような請求の範囲により定義される本発明の範囲を限定することを意図するものではないことは理解される。
(参考文献)
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【0113】
【化6】

【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図1E】

【図1F】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
American Type Culture Collectionに受け入れ番号PTA−7680で寄託されたハイブリドーマ細胞系により生成されたモノクローナル抗体または該抗体のフラグメントもしくは誘導体。
【請求項2】
American Type Culture Collectionに受け入れ番号PTA−7680で寄託されたハイブリドーマ細胞系により生成されたモノクローナル抗体である第2抗体とMetに対する結合に関して競合する抗体または該抗体のフラグメントもしくは誘導体。
【請求項3】
請求項1に記載のモノクローナル抗体、フラグメントまたは誘導体の同定的な生物学的特徴を全て有するモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントもしくは誘導体。
【請求項4】
Metに特異的なモノクローナル抗体であって、該抗体の重鎖および/もしくは軽鎖可変領域または該可変領域の抗原結合部位が請求項1に記載のモノクローナル抗体の対応する領域または部位の同定的な生物学的または構造的特徴を全て有する、モノクローナル抗体。
【請求項5】
請求項1に記載のモノクローナル抗体が結合するエピトープと同じエピトープに結合する抗Met抗体Metまたは該抗体のフラグメントもしくは誘導体。
【請求項6】
配列番号:1でアミノ酸236−242として同定されたアミノ酸からなるポリペプチドに結合する抗体または該抗体のフラグメントもしくは誘導体。
【請求項7】
配列番号:1でアミノ酸236−239として同定されたアミノ酸からなるポリペプチドに結合する抗体または該抗体のフラグメントもしくは誘導体。
【請求項8】
請求項1〜7から選択されるモノクローナル抗体、フラグメントまたは誘導体を含む組成物。
【請求項9】
モノクローナル抗体、フラグメントまたは誘導体が検出可能な部分に連結されている請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
(a)請求項8に記載の組成物;および(b)担体;を含む診断的に有用な組成物。
【請求項11】
モノクローナル抗体、フラグメントまたは誘導体が検出可能な部分に連結されている請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
(a)請求項1に記載の抗体、フラグメントまたは誘導体を含む第1容器;(b)担体を含む第2容器;および(c)Metを検出、診断、予後診断またはMet阻害薬を評価するために抗体を使用するための説明書;を含むキット。
【請求項13】
前記モノクローナル抗体、フラグメントまたは誘導体が検出可能な部分に連結されている請求項12に記載のキット。
【請求項14】
前記第1容器からのモノクローナル抗体、フラグメントまたは誘導体に結合する第2のモノクローナル抗体、フラグメントまたは誘導体をさらに含む請求項12に記載のキット。
【請求項15】
前記第2抗体が検出可能な部分に連結されている請求項14に記載のキット。
【請求項16】
さらにMet阻害薬を含む請求項12に記載のキット。
【請求項17】
(a)Metを発現することが疑われる組織または試料を提供すること;(b)請求項8に記載の組成物を提供すること;(c)該組織または試料を請求項8に記載の組成物と接触させること;および(d)該組織または試料中のMetの存在を検出すること;の工程を含むMetを発現することが疑われる組織または生物学的試料中のMetの存在を検出するための方法。
【請求項18】
前記組織または生物学的試料がホルムアルデヒドの溶液中で固定されている請求項17に記載の方法。
【請求項19】
(a)Met関連疾患を有するかまたは有することが疑われる患者から組織または生物学的試料を入手すること;(b)請求項8に記載の組成物を提供すること;(c)該組織または生物学的試料を請求項8に記載の組成物と接触させること;(d)該組織または試料中のMetの発現レベルを決定すること;および(e)該発現レベルを適当な対照と比較すること;の工程を含む、該患者におけるMet関連疾患を診断または予後診断する方法。
【請求項20】
前記組織または生物学的試料がホルムアルデヒドの溶液中で固定されている請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記Met関連疾患が癌である請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記Met関連疾患が卵巣癌である請求項21に記載の方法。
【請求項23】
(a)Met関連の癌を有する患者から第1組織試料を入手すること;(b)Met阻害薬で患者を処置すること;(c)該患者から処置後組織を入手すること;(d)請求項8に記載の組成物を提供すること;(e)該第1組織または生物学的試料および該処置後組織または試料の各々を請求項8に記載の組成物と接触させること;(f)該第1組織または生物学的試料および該処置後組織または試料の各々におけるMetの発現レベルを決定すること;ならびに(g)該第1組織または生物学的試料のMet発現レベルを該処置後組織または試料のMet発現レベルと比較して該Met阻害薬の有効性を決定すること;の工程を含む、Met阻害薬の有効性を決定するための方法。
【請求項24】
前記第1組織または生物学的試料および前記処置後組織または試料の各々がホルムアルデヒドの溶液中で固定されている請求項23に記載の方法。
【請求項25】
American Type Culture Collectionに受け入れ番号PTA−7680で寄託されたハイブリドーマ細胞系。
【請求項26】
ホルムアルデヒド溶液で処理されている抗原に結合する抗体を同定する方法であって、抗原を提供すること;該抗原をホルムアルデヒド溶液で処理すること;該処理された抗原を抗体、そのフラグメントまたは誘導体と接触させること;および該抗体を試験して該抗体が該処理された抗原に結合するかどうかを決定すること;の工程を含む、方法。
【請求項27】
前記ホルムアルデヒド溶液がホルマリンである請求項26に記載の方法。

【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【公表番号】特表2010−536886(P2010−536886A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522103(P2010−522103)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/074249
【国際公開番号】WO2009/029591
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(505298467)ヴァン アンデル リサーチ インスティテュート (2)
【出願人】(506139369)フレッド ハッチンソン キャンサー リサーチ センター (11)
【Fターム(参考)】