説明

ホログラフィック記録媒体

【課題】ホログラフィック記録に好適な記憶媒体の開発。
【解決手段】光学的透明プラスチック材料、光化学的活性色素及び光化学的活性色素のプロトン付加体を含み、光化学的活性色素のプロトン付加体は以下の式Iであり、光化学的活性色素は以下の式IIである。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラフィック記録媒体に関する実施形態を包含する。本発明は、プロトン付加ニトロン色素を含む組成物に関する実施形態を保愚案する。本発明は、ホログラフィック記録媒体を製造し使用する方法に関する実施形態を包含する。
【背景技術】
【0002】
ホログラフィック記録は、情報をホログラムの形態で記憶することである。情報は、バイナリデータ、画像、バーコード及び回折格子を含む様々な形態で記憶できる。ホログラムは三次元干渉パターンの画像である。これらのパターンは、2つの光ビームの交わりによって感光性媒体に生じさせることができる。表面ベースの記憶フォーマットに対する体積ホログラフィック記録の相違点は、多重化技法を用いて感光性媒体の同一体積に多数のホログラムをオーバーラップ方式で記憶できることである。このような多重化技法によれば、信号ビーム及び/又は参照ビームの角度、波長又は媒体位置を変化させることができる。しかし、実行可能な技法としてのホログラフィック記録の実現に対する障害は、好適な記憶媒体の開発であった。
【0003】
最近のホログラフィック記録材料研究は、色素ドープトポリマー材料の開発をもたらした。色素ドープトデータ記憶材料の感度は、色素の濃度、記録波長での色素の吸収断面積、光化学的遷移の量子効率、及び単位色素密度についての色素分子の屈折率変化に依存し得る。しかし、色素濃度と吸収断面積との積が増大するのに伴い、記憶媒体(例えば、光データ記憶ディスク)は不透明化することがあり、これが記録及び読出しの両方を面倒にすることがある。
【0004】
現在入手可能なものとは異なる特性及び性質を有するホログラフィック記録媒体を得ることは望ましいであろう。
【発明の概要】
【0005】
一実施形態では、ホログラフィック記録媒体を提供する。ホログラフィック記録媒体は光学的透明基板を含む。光学的透明基板は、光化学的活性色素及び光化学的活性色素のプロトン付加体を含む。光化学的活性色素のプロトン付加体は以下の式Iに示す構造の組成物であり、光化学的活性色素は以下の式IIに示す構造の組成物である。
【0006】
【化1】

【0007】
【化2】

式I及び式IIの両方において、R1及びR2は各々独立に炭素原子数1〜約10の脂肪族基、炭素原子数約3〜約10の脂環式基、又は炭素原子数約3〜約12の芳香族基であり、R3、R4及びR5は各々独立に水素原子、炭素原子数1〜約10の脂肪族基、炭素原子数約3〜約10の脂環式基、又は炭素原子数約3〜約12の芳香族基であり、R6及びR7は各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜約6の脂肪族基であり、Xはハロゲンであり、「n」は0〜約4の値を有する整数である。
【0008】
一実施形態では、ホログラフィック記録媒体を提供する。ホログラフィック記録媒体は光学的透明基板を含む。光学的透明基板は、光化学的活性色素、光化学的活性色素のプロトン付加体及び光化学的活性色素の光生成物を含む。光化学的活性色素のプロトン付加体は式Iに示す構造の組成物であり、光化学的活性色素は式IIに示す構造の組成物である。光学的透明基板で光生成物をパターン化することで、ホログラフィック記録媒体の体積に含まれる光学的に読取り可能なデータが得られる。
【0009】
一実施形態では、ホログラフィック記録媒体の使用方法を提供する。かかる方法は、光化学的活性色素を含む光学的透明基板を、約300〜約1000nmの範囲内の波長の入射光で照射する段階と、その結果として光学的に読取り可能なデータ及び光化学的活性色素の光生成物を含むホログラフィック記録媒体を形成する段階と、ホログラフィック記録媒体を酸に暴露する段階と、その結果として光化学的活性色素の少なくとも一部が光化学的活性色素のプロトン付加体を生成する段階とを含む。光化学的活性色素のプロトン付加体は式Iに示す構造の組成物であり、光化学的活性色素は式IIに示す構造の組成物である。
【0010】
一実施形態では、光学的書込み及び読取り方法を提供する。かかる方法は、データを有する信号ビーム及び参照ビームを同時に用いてホログラフィック記録媒体をパターン化することでホログラムを生み出し、それによって光化学的活性色素を部分的に光生成物に転化させる段階と、ホログラフィック記録媒体を酸に暴露する段階と、その結果として光化学的活性色素の少なくとも一部が光化学的活性色素のプロトン付加体を生成する段階と、信号ビーム中の情報をホログラフィック記録媒体にホログラムとして記憶する段階と、ホログラフィック記録媒体を読取りビームに接触させ、ホログラムからの回折光に含まれるデータを読み取る段階とを含む。ホログラフィック記録媒体は光学的透明基板を含む。光学的透明基板は、1種以上の光学的透明プラスチック材料及び光化学的活性色素を含む。光化学的活性色素のプロトン付加体は式Iに示す構造の組成物であり、光化学的活性色素は式IIに示す構造の組成物である。
【0011】
一実施形態では、ホログラフィック記録媒体物品中のホログラフィック記録媒体を、第1の波長を有する電磁放射を用いてパターン化する段階と、光化学的活性色素の1種以上の光生成物、及びホログラムとして記憶された1以上の光学的に読取り可能なデータを含む改質された光学的透明基板を形成する段階と、改質された光学的透明基板を酸に暴露する段階と、その結果として光化学的活性色素の少なくとも一部が光化学的活性色素のプロトン付加体を生成する段階と、物品中のホログラフィック記録媒体を、第2の波長を有する電磁エネルギーに接触させてホログラムを読み取る段階とを含んでなる方法を提供する。ホログラフィック記録媒体は光学的透明基板を含む。光学的透明基板は、光学的透明プラスチック材料及び光化学的活性色素を含む。光化学的活性色素は式IIに示す構造の組成物であり、光化学的活性色素のプロトン付加体は式Iに示す構造の組成物である。
【0012】
一実施形態では、ホログラフィック記録媒体が製造される。かかる製造方法は、光学的透明プラスチック材料及び光化学的活性色素を含む光学的透明基板のフィルム、押出品又は射出成形品を形成する段階と、フィルム、押出品又は射出成形品を酸に暴露する段階と、その結果として光化学的活性色素の少なくとも一部が光化学的活性色素のプロトン付加体を生成する段階とを含む。光化学的活性色素は式IIに示す構造の組成物であり、光化学的活性色素のプロトン付加体は式Iに示す構造の組成物である。
【0013】
一実施形態では、ホログラフィック記録媒体における永久ホログラムのレンダリング方法を提供する。かかる方法は、光化学的活性色素を含む光学的透明基板を、約300〜約1000nmの範囲内の波長の入射光で照射する段階と、データを有する信号ビーム及び参照ビームを同時に用いてホログラフィック記録媒体をパターン化することでホログラムを生み出し、それによって光化学的活性色素を部分的に光生成物に転化させる段階と、その結果として光学的に読取り可能なデータ及び光化学的活性色素の光生成物を含むホログラフィック記録媒体を形成する段階と、ホログラフィック記録媒体を酸に暴露する段階と、その結果として光化学的活性色素を光化学的活性色素のプロトン付加体に転化させる段階とを含む。光化学的活性色素は式IIに示す構造の組成物であり、光化学的活性色素のプロトン付加体は式Iに示す構造の組成物である。
【0014】
一実施形態では、ホログラフィック記録媒体を提供する。ホログラフィック記録媒体は光学的透明基板を含む。光学的透明基板は、光化学的活性色素、光化学的活性色素のプロトン付加体、光化学的活性色素の光生成物及び光化学的活性色素の光生成物のプロトン付加体を含む。光化学的活性色素のプロトン付加体は式Iに示す構造の組成物であり、光化学的活性色素は式IIに示す構造の組成物である。光学的透明基板で光生成物をパターン化することで、ホログラフィック記録媒体の体積に含まれる光学的に読取り可能なデータが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る光化学的活性色素の吸光度の変化を示す。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る光化学的活性色素の吸光度の変化を示す。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係る光化学的活性色素の屈折率の変化を示す。
【図4】図4は、本発明の一実施形態に係る感光性材料の屈折率変化を示す。
【図5】図5は、本発明の一実施形態に係る感光性材料の回折効率変化を示す。
【図6】図6は、本発明の一実施形態に係る物品のホログラム消去測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明はホログラフィック記録媒体に関する実施形態を含む。本発明は、プロトン付加ニトロン色素を含む組成物に関する実施形態を含む。本発明は、ホログラフィック記録媒体を製造し使用する方法に関する実施形態を含む。
【0017】
一実施形態では、組成物は以下の式Iに示す構造を有する。
【0018】
【化3】

式中、R1及びR2は各々独立に炭素原子数1〜約10の脂肪族基、炭素原子数約3〜約10の脂環式基、又は炭素原子数約3〜約12の芳香族基であり、R3、R4及びR5は各々独立に水素原子、炭素原子数1〜約10の脂肪族基、炭素原子数約3〜約10の脂環式基、又は炭素原子数約3〜約12の芳香族基であり、R6及びR7は各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜約6の脂肪族基であり、Xはハロゲンであり、「n」は0〜約4の値を有する整数である。構成部分の選択は得られる材料の1以上の性能特性に影響を及ぼすことがあり、得られる材料の達成又は得られる材料の使用のためにプロセスの変更を要求することがある。
【0019】
一実施形態では、R1は炭素原子数約5〜約12の芳香族基であり、R2は炭素原子数約5〜約12の芳香族基であり、R3、R4及びR5は各々独立に水素原子、炭素原子数1〜約10の脂肪族基、炭素原子数約3〜約10の脂環式基、又は炭素原子数約3〜約12の芳香族基である。一実施形態では、Xは塩素である。一実施形態では、Xは臭素である。一実施形態では、Xはヨウ素である。
【0020】
一実施形態では、R1は炭素原子数約6〜約10の芳香族基であり、R2は炭素原子数約6〜約10の芳香族基であり、R3、R4及びR5は各々独立に水素原子、炭素原子数1〜約5の脂肪族基、炭素原子数約4〜約8の脂環式基、又は炭素原子数約6〜約10の芳香族基であり、「n」は1〜3の値を有する整数である。
【0021】
一実施形態では、R1は以下の式のものからなる群から選択される構造を有する1以上の電子求引性置換基を含む。
【0022】
【化4】

式中、R8、R9及びR10は各々独立に炭素原子数1〜10の脂肪族基、炭素原子数約3〜10の脂環式基、又は炭素原子数約3〜10の芳香族基である。
【0023】
本明細書で使用する「芳香族基」という用語は、1以上の芳香族原子団を含む原子価1以上の原子配列をいう。1以上の芳香族原子団を含む原子価1以上の原子配列は、窒素、硫黄、セレン、ケイ素及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよく、或いは炭素及び水素のみから構成されていてもよい。本明細書で使用する「芳香族基」という用語は、特に限定されないが、フェニル基、ピリジル基、フラニル基、チエニル基、ナフチル基、フェニレン基及びビフェニル基を包含する。上述の通り、芳香族基は1以上の芳香族原子団を含む。芳香族原子団は常に4n+2(式中、「n」は1以上の整数である。)の「非局在化」電子を有する環状構造であり、フェニル基(n=1)、チエニル基(n=1)、フラニル基(n=1)、ナフチル基(n=2)、アズレニル基(n=2)、アントラセニル基(n=3)などで例示される。芳香族基はまた、非芳香族成分も含み得る。例えば、ベンジル基はフェニル環(芳香族原子団)及びメチレン基(非芳香族成分)を含む芳香族基である。同様に、テトラヒドロナフチル基は非芳香族成分−(CH2)4−に縮合した芳香族原子団(C63)を含む芳香族基である。便宜上、本明細書での「芳香族基」という用語は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、ハロ芳香族基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えば、エステルやアミドのようなカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基などの広範囲の官能基を含むものと定義される。例えば、4−メチルフェニル基はメチル基を含むC7芳香族基であり、メチル基がアルキル基である官能基である。同様に、2−ニトロフェニル基はニトロ基を含むC6芳香族基であり、ニトロ基が官能基である。芳香族基は、4−トリフルオロメチルフェニル、ヘキサフルオロイソプロピリデンビス(4−フェン−1−イルオキシ)(即ち、−OPhC(CF3)2PhO−)、4−クロロメチルフェン−1−イル、3−トリフルオロビニル−2−チエニル、3−トリクロロメチルフェン−1−イル(即ち、3−CCl3Ph−)、4−(3−ブロモプロプ−1−イル)フェン−1−イル(即ち、4−BrCH2CH2CH2Ph−)などのハロゲン化芳香族基を包含する。芳香族基のさらに他の例には、4−アリルオキシフェン−1−オキシ、4−アミノフェン−1−イル(即ち、4−H2NPh−)、3−アミノカルボニルフェン−1−イル(即ち、NH2COPh−)、4−ベンゾイルフェン−1−イル、ジシアノメチリデンビス(4−フェン−1−イルオキシ)(即ち、−OPhC(CN)2PhO−)、3−メチルフェン−1−イル、メチレンビス(4−フェン−1−イルオキシ)(即ち、−OPhCH2PhO−)、2−エチルフェン−1−イル、フェニルエテニル、3−ホルミル−2−チエニル、2−ヘキシル−5−フラニル、ヘキサメチレン−1,6−ビス(4−フェン−1−イルオキシ)(即ち、−OPh(CH2)6PhO−)、4−ヒドロキシメチルフェン−1−イル(即ち、4−HOCH2Ph−)、4−メルカプトメチルフェン−1−イル(即ち、4−HSCH2Ph−)、4−メチルチオフェン−1−イル(即ち、4−CH3SPh−)、3−メトキシフェン−1−イル、2−メトキシカルボニルフェン−1−イルオキシ(例えば、メチルサリチル)、2−ニトロメチルフェン−1−イル(即ち、2−NO2CH2Ph)、3−トリメチルシリルフェン−1−イル、4−t−ブチルジメチルシリルフェン−1−イル、4−ビニルフェン−1−イル、ビニリデンビス(フェニル)などがある。「C3〜C10芳香族基」という用語は、3以上で10以下の炭素原子を含む芳香族基を包含する。芳香族基1−イミダゾリル(C322−)はC3芳香族基を代表する。ベンジル基(C77−)はC7芳香族基を代表する。
【0024】
本明細書で使用する「脂環式基」という用語は、環状であるが芳香族でない原子配列を含む原子価1以上の基をいう。本明細書で定義される「脂環式基」は、芳香族原子団を含まない。「脂環式基」は1以上の非環式成分を含み得る。例えば、シクロヘキシルメチル基(C611CH2−)は、シクロヘキシル環(環状であるが芳香族でない原子配列)及びメチレン基(非環式成分)を含む脂環式基である。脂環式基は、窒素、硫黄、セレン、ケイ素及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよく、或いは炭素及び水素のみから構成されていてもよい。便宜上、本明細書での「脂環式基」という用語は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えば、エステルやアミドのようなカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基などの広範囲の官能基を含むものと定義される。例えば、4−メチルシクロペント−1−イル基はメチル基を含むC6脂環式基であり、メチル基がアルキル基である官能基である。同様に、2−ニトロシクロブト−1−イル基はニトロ基を含むC4脂環式基であり、ニトロ基が官能基である。脂環式基は、同一又は異なる1以上のハロゲン原子を含み得る。ハロゲン原子には、例えば、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素がある。1以上のハロゲン原子を含む脂環式基には、2−トリフルオロメチルシクロヘキス−1−イル、4−ブロモジフルオロメチルシクロオクト−1−イル、2−クロロジフルオロメチルシクロヘキス−1−イル、ヘキサフルオロイソプロピリデン−2,2−ビス(シクロヘキス−4−イル)(即ち、−C610C(CF3)2610−)、2−クロロメチルシクロヘキス−1−イル、3−ジフルオロメチレンシクロヘキス−1−イル、4−トリクロロメチルシクロヘキス−1−イルオキシ、4−ブロモジクロロメチルシクロヘキス−1−イルチオ、2−ブロモエチルシクロペント−1−イル、2−ブロモプロピルシクロヘキス−1−イルオキシ(例えば、CH3CHBrCH2610O−)などがある。脂環式基のさらに他の例には、4−アリルオキシシクロヘキス−1−イル、4−アミノシクロヘキス−1−イル(即ち、H2NC610−)、4−アミノカルボニルシクロペント−1−イル(即ち、NH2COC58−)、4−アセチルオキシシクロヘキス−1−イル、2,2−ジシアノイソプロピリデンビス(シクロヘキス−4−イルオキシ)(即ち、−OC610C(CN)2610O−)、3−メチルシクロヘキス−1−イル、メチレンビス(シクロヘキス−4−イルオキシ)(即ち、−OC610CH2610O−)、1−エチルシクロブト−1−イル、シクロプロピルエテニル、3−ホルミル−2−テトラヒドロフラニル、2−ヘキシル−5−テトラヒドロフラニル、ヘキサメチレン−1,6−ビス(シクロヘキス−4−イルオキシ)(即ち、−OC610(CH2)6610O−)、4−ヒドロキシメチルシクロヘキス−1−イル(即ち、4−HOCH2610−)、4−メルカプトメチルシクロヘキス−1−イル(即ち、4−HSCH2610−)、4−メチルチオシクロヘキス−1−イル(即ち、4−CH3SC610−)、4−メトキシシクロヘキス−1−イル、2−メトキシカルボニルシクロヘキス−1−イルオキシ(2−CH3OCOC610O−)、4−ニトロメチルシクロヘキス−1−イル(即ち、NO2CH2610−)、3−トリメチルシリルシクロヘキス−1−イル、2−t−ブチルジメチルシリルシクロペント−1−イル、4−トリメトキシシリルエチルシクロヘキス−1−イル(例えば、(CH3O)3SiCH2CH2610−)、4−ビニルシクロヘキセン−1−イル、ビニリデンビス(シクロヘキシル)などがある。「C3〜C10脂環式基」という用語は、3以上で10以下の炭素原子を含む脂環式基を包含する。脂環式基2−テトラヒドロフラニル(C47O−)はC4脂環式基を代表する。シクロヘキシルメチル基(C611CH2−)はC7脂環式基を代表する。
【0025】
本明細書で使用する「脂肪族基」という用語は、環状でない線状又は枝分れ原子配列からなる原子価1以上の有機基をいう。脂肪族基は1以上の炭素原子を含むものと定義される。脂肪族基をなす原子配列は、窒素、硫黄、ケイ素、セレン及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよく、或いは炭素及び水素のみから構成されていてもよい。便宜上、本明細書での「脂肪族基」という用語は、「環状でない線状又は枝分れ原子配列」の一部として、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えば、エステルやアミドのようなカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基などの広範囲の官能基を含むものと定義される。例えば、4−メチルペント−1−イル基はメチル基を含むC6脂肪族基であり、メチル基がアルキル基である官能基である。同様に、4−ニトロブト−1−イル基はニトロ基を含むC4脂肪族基であり、ニトロ基が官能基である。脂肪族基は、同一又は異なる1以上のハロゲン原子を含むハロアルキル基であってもよい。ハロゲン原子には、例えば、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素がある。1以上のハロゲン原子を含む脂肪族基には、ハロゲン化アルキルであるトリフルオロメチル、ブロモジフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、ヘキサフルオロイソプロピリデン、クロロメチル、ジフルオロビニリデン、トリクロロメチル、ブロモジクロロメチル、ブロモエチル、2−ブロモトリメチレン(例えば、−CH2CHBrCH2−)などがある。脂肪族基のさらに他の例には、アリル、アミノカルボニル(即ち、−CONH2)、カルボニル、2,2−ジシアノイソプロピリデン(即ち、−CH2C(CN)2CH2−)、メチル(即ち、−CH3)、メチレン(即ち、−CH2−)、エチル、エチレン、ホルミル(即ち、−CHO)、ヘキシル、ヘキサメチレン、ヒドロキシメチル(即ち、−CH2OH)、メルカプトメチル(即ち、−CH2SH)、メチルチオ(即ち、−SCH3)、メチルチオメチル(即ち、−CH2SCH3)、メトキシ、メトキシカルボニル(即ち、CH3OCO−)、ニトロメチル(即ち、−CH2NO2)、チオカルボニル、トリメチルシリル(即ち、(CH3)3Si−)、t−ブチルジメチルシリル、3−トリメトキシシリルプロピル(即ち、(CH3O)3SiCH2CH2CH2−)、ビニル、ビニリデンなどがある。さらに他の例としては、C1〜C10脂肪族基は1以上で10以下の炭素原子を含む。メチル基(即ち、CH3−)はC1脂肪族基の例である。デシル基(即ち、CH3(CH2)9−)はC10脂肪族基の例である。
【0026】
一実施形態では、物品は式Iに示す構造の組成物を含む。一実施形態では、物品はホログラフィック記録媒体である。物品の非限定的な例には、光媒体記憶装置、生体認証カード及びクレジットカードがある。
【0027】
一実施形態では、式Iに示す構造の組成物は、以下の式IIに示す構造の組成物にプロトン付加することで製造できる。
【0028】
【化5】

式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、X及び「n」は式Iに関して上述したものと同じ意味を有する。
【0029】
一実施形態では、以下の式VIIIに示す構造の組成物を提供する。
【0030】
【化6】

一実施形態では、式VIIIに示す構造の組成物は、以下の式Xに示す構造の組成物にプロトン付加することで製造できる。
【0031】
【化7】

式VIIIで示される構造を有する組成物は、α−(4−ジメチルアミノスチリル)−N−フェニルニトロン塩酸塩ということもできる。式Xで示される構造を有する組成物は、α−(4−ジメチルアミノスチリル)−N−フェニルニトロンということもできる。一実施形態では、物品を提供する。かかる物品は、式VIII及び式Xに示す構造の組成物を含む。
【0032】
一実施形態では、以下の式IXに示す構造の組成物を提供する。
【0033】
【化8】

一実施形態では、式IXに示す構造の組成物は、以下の式XIに示す構造の組成物にプロトン付加することで製造できる。
【0034】
【化9】

式IXで示される構造を有する組成物は、α−(4−メチルアミノスチリル)−N−(4−カルベトキシフェニル)ニトロン塩酸塩ということもできる。式XIで示される構造を有する組成物は、α−(4−メチルアミノスチリル)−N−(4−カルベトキシフェニル)ニトロンということもできる。一実施形態では、物品は式IX及び式XIに示す構造の組成物を含む。組成物のプロトン付加は、式Iに示す構造の組成物を酸に暴露することで達成できる。一実施形態では、酸の種類はプロトン付加する必要がある色素の種類に依存する。酸の非限定的な例には、塩酸、臭化水素酸及びヨウ化水素酸がある。
【0035】
一実施形態では、光学的透明基板を含んでなるホログラフィック記録媒体を提供する。光学的透明基板は、光化学的活性色素及び光化学的活性色素のプロトン付加体を含む。光化学的活性色素のプロトン付加体は以下の式Iに示す構造の組成物であり、光化学的活性色素は以下の式IIに示す構造の組成物である。
【0036】
【化10】

【0037】
【化11】

式I及び式IIの両方において、R1及びR2は各々独立に炭素原子数1〜約10の脂肪族基、炭素原子数約3〜約10の脂環式基、又は炭素原子数約3〜約12の芳香族基であり、R3、R4及びR5は各々独立に水素原子、炭素原子数1〜約10の脂肪族基、炭素原子数約3〜約10の脂環式基、又は炭素原子数約3〜約12の芳香族基であり、R6及びR7は各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜約6の脂肪族基であり、Xはハロゲンであり、「n」は0〜約4の値を有する整数である。
【0038】
一実施形態では、光学的透明基板は約300〜約1000nmの範囲内の波長で約0.1を超える吸光度を有する。一実施形態では、光学的透明基板は約300〜約1000nmの範囲内の波長で約0.1〜約5の吸光度を有する。一実施形態では、光学的透明基板は約300〜約1000nmの範囲内の波長で約0.1〜約1、約1〜約2、約2〜約3、約3〜約4又は約4〜約5の吸光度を有する。一実施形態では、光学的透明基板は約300〜約400nm、約400〜約500nm、約500〜約600nm、約600〜約700nm、約700〜約800nm、約800〜約900nm又は約900〜約1000nmの範囲内の波長で約0.1を超える吸光度を有する。
【0039】
一実施形態では、光学的透明基板は約10%を超える回折効率を有し得る。一実施形態では、光学的透明基板は約10〜約50%の回折効率を有し得る。一実施形態では、光学的透明基板は約10〜約30%、約30〜約40%又は約40〜約50%或いはそれを超える回折効率を有し得る。報告する回折効率値は、バックグラウンド吸収及び表面反射について補正したものである。
【0040】
一実施形態では、ホログラフィック記録媒体は約1を超えるデータ記憶容量を有し得る。本明細書で定義されるデータ記憶容量という語句は、M/#で与えられるホログラフィック記録媒体の容量に関する。M/#は、所定の回折効率でデータ記録媒体の体積素子に記録できる多重化ホログラムの総数の関数として測定できる。M/#は、屈折率変化(Δn)、媒体の厚さ及び色素濃度のような様々なパラメーターに依存する。これらの用語は本明細書でさらに詳しく説明される。M/#は、以下の式1に示すように定義される。
【0041】
【数1】

式中、ηiはi番目のホログラムの回折効率であり、Nは記録されたホログラムの数である。選択された波長(例えば、532nm又は405nm)で試験試料に関するM/#を測定するための実験装置では、コンピューターによって制御される回転ステージ上に試験試料が配置される。回転ステージは、高い角解像度(例えば、約0.0001度)を有する。M/#測定は2つの段階、即ち記録及び読出しを含む。記録時には、同一試料上の同一位置に複数の平面波ホログラムが記録される。平面波ホログラムは、信号ビーム及び参照ビームによって生み出される記録干渉パターンである。信号ビーム及び参照ビームは互いにコヒーレントである。これらは共に、同一の電力及びビームサイズを有し、試料上の同一位置に入射し、同一方向に偏光された平面波である。試料を回転させることで複数の平面波ホログラムが記録される。2つの隣接したホログラム間の角間隔は約0.2度である。この間隔は、追加のホログラムを多重化した場合に以前に記録したホログラムへの影響が最小になると同時に、媒体の全容量の使用が効率的になるように選択されている。M/#測定では、各ホログラムに関する記録時間は一般に同一である。読出し時には、信号ビームは遮断される。参照ビーム及び増幅光検出器を用いて回折信号が測定される。約0.004度のステップサイズで記録角範囲にわたって試料を回転させることで回折出力が測定される。読出しのために使用される参照ビームの電力は、記録時に使用されるものより約2〜3桁小さいことがある。これは、測定可能な回折信号を維持しながら読出しに際してのホログラム消去を最小限に抑えるためである。回折信号からは、ホログラム記録角における回折ピークに基づいて多重化ホログラムを識別できる。次いで、以下の式2を用いてi番目のホログラムの回折効率(ηi)が計算される。
【0042】
【数2】

式中、ηi,diffractedはi番目のホログラムの回折出力である。次に、ホログラムの回折効率及び式1を用いてM/#が計算される。このように、ホログラフィック平面波特性決定システムを用いてデータ記憶材料(特に多重化ホログラム)の特性を試験できる。さらに、回折効率を測定することによってもデータ記憶材料の特性を決定できる。
【0043】
本明細書で使用する「体積素子」という用語は、光学的透明基板又は改質された光学的透明基板の全体積の三次元的な一部分を意味する。「光学的透明」とは、光が可視光範囲内の所定波長を有する場合、約90%以上の光を透過させる性質をいう。ホログラムは回折パターンである。
【0044】
本明細書で定義される「光学的に読取り可能なデータ」という用語は、第1の光学的透明基板又は改質された光学的透明基板の体積素子であって、記憶すべきデータの「ホログラム」を含む1以上の体積素子から構成されるものをいう。電磁放射に暴露されていない体積素子の場合、或いは光化学的活性色素が体積素子全体にわたって同じ程度に反応した体積素子の場合のように、個々の体積素子内の屈折率は体積素子全体にわたって一定であることがある。ホログラフィックデータ書込みプロセス中に電磁放射に暴露された若干の体積素子は、複雑なホログラフィックパターンを含むことがある。そして、体積素子内の屈折率は体積素子を横切って変化することがある。体積素子内の屈折率が体積素子を横切って変化する場合、体積素子は、照射前の対応する体積素子の屈折率と比較できる「平均屈折率」を有すると見なすのが好都合である。かくして、一実施形態では、光学的に読取り可能なデータは、照射前の光学的透明基板の対応する体積素子の屈折率と異なる屈折率を有する1以上の体積素子を含む。かくして、一実施形態では、光学的に読取り可能なデータは、照射前の光学的透明基板の対応する体積素子の屈折率と異なる屈折率を有する1以上の体積素子を含む。データ記憶は、離散した段階的な変化ではなくなだらかな変化(連続した正弦的変化)をなすようにデータ記録媒体の屈折率を局部的に変化させ、次いで誘起された変化を回折光学要素として使用することで達成される。
【0045】
データをホログラムとして記憶する容量(M/#)は、データを読み取るために使用する波長での単位色素密度当たりの屈折率変化(Δn/N0)とデータをホログラムとして書き込むために使用する所定波長での吸収断面積(σ)との比に正比例し得る。単位色素密度当たりの屈折率変化は、照射前の体積素子の屈折率から照射後の同じ体積素子の屈折率を引いた差と色素分子の密度との比で与えられる。単位色素密度当たりの屈折率変化はcm3の単位を有する。かくして、一実施形態では、光学的に読取り可能なデータは、1以上の体積素子の単位色素密度当たりの屈折率変化と1種以上の光化学的活性色素の吸収断面積との比がcm単位で表して約10-5以上である1以上の体積素子を含む。
【0046】
感度(S)は、一定量の光フルエンス(F)を用いて記録されたホログラムの回折効率の尺度である。光フルエンス(F)は、光強度(I)と記録時間(t)との積で与えられる。数学的には、感度は以下の式3で表すことができる。
【0047】
【数3】

式中、「I」は記録ビームの強度であり、「t」は記録時間であり、Lは記録媒体(又はデータ記憶媒体)(例えば、ディスク)の厚さであり、ηは回折効率である。回折効率は以下の式4で与えられる。
【0048】
【数4】

式中、λは記録媒体における光の波長であり、θは媒体における記録角であり、Δnは色素分子が光化学的転化を受ける記録プロセスによって生み出される回折格子の屈折率コントラストである。
【0049】
吸収断面積は、原子又は分子が規定波長の光を吸収する能力の測定量であり、平方センチメートル/分子の単位で測定される。それは一般にσ(λ)で表され、光学的に薄い試料に関しては以下の式5で示されるようにランベルト−ベールの法則で支配される。
【0050】
【数5】

式中、N0は立方センチメートル当たりの分子数単位の濃度であり、Lはセンチメートル単位の試料厚さである。
【0051】
量子効率(QE)は、所定波長の各吸収光子に関する光化学的遷移の確率の尺度である。即ち、それは所定の光化学的転化(退色過程ともいう)を達成するために入射光が使用される効率の尺度を与える。QEは以下の式6で与えられる。
【0052】
【数6】

式中、「h」はプランク定数であり、「c」は光速であり、σ(λ)は波長λでの吸収断面積であり、F0は退色フルエンスである。パラメーターF0は、光の強度(I)と退色過程を特徴づける時定数(τ)との積で与えられる。
【0053】
一実施形態では、光学的透明基板に存在する光化学的活性色素は約0.1〜約20重量%である。一実施形態では、光化学的活性色素は、約0.1〜約2重量%、約2〜約4重量%、約4〜約6重量%、約6〜約8重量%、約8〜約10重量%、約10〜約12重量%、約12〜約14重量%、約14〜約16重量%、約16〜約18重量%又は約18〜約20重量%の量で光学的透明基板に存在している。本明細書で使用する「重量%」という用語は、光学的透明基板に含まれる色素の重量と光学的透明基板の(色素の重量を含めた)総重量との比をいう。例えば、光学的透明基板に配置された10重量%の色素とは、90gの基板に10gの色素が存在することを意味する。色素のパーセント添加量を調節することで、色素及び光学的透明基板の特性に基づく望ましい性質を得ることができる。
【0054】
光化学的活性色素は、最大吸収に関連する中心波長及び500nm未満のスペクトル幅(最大値の半値における全幅、FWHM)によって特徴づけられる光学吸収共鳴を有する色素分子として記述できる。加えて、光化学的活性色素分子は、吸収範囲内の波長の光に暴露された場合に部分的な光誘起化学反応を受けて1種以上の光生成物を生じることができる。様々な実施形態では、この反応は、酸化、還元又は結合切断による小さい成分の生成のような光分解反応、或いは例えばシグマトロピー転位のような分子転位、或いはペリ環状付加環化を始めとする付加反応であってもよい。かくして、一実施形態では、改質された光学的透明基板で光生成物が(例えば、なだらかな変化をなしながら)パターン化されて1以上の光学的に読取り可能なデータを生じるホログラムの形態でデータ記憶を達成できる。
【0055】
一実施形態では、式IIを有する光化学的活性色素の光生成物は下記に示されるような式を有し得る。
【0056】
【化12】

式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、X及び「n」は式IIに関して記載したものと同じ意味を有する。
【0057】
一実施形態では、ホログラム記録媒体は式VIIIに示す構造の組成物を含む。一実施形態では、式VIIIに示す構造の組成物を含むホログラム記録媒体は、式Xに示す構造の組成物を含むホログラム記録媒体を酸に暴露し、その結果として式VIII及び式Xに示す構造の組成物を含むホログラム記録媒体を得ることで製造できる。一実施形態では、ホログラム記録媒体は式Xに示す構造の組成物の光生成物を含み得る。光生成物は以下の式XIIに示す構造を有し得る。
【0058】
【化13】

一実施形態では、ホログラム記録媒体は式IXに示す構造の組成物を含む。一実施形態では、式IXに示す構造の組成物を含むホログラム記録媒体は、式XIに示す構造の組成物を含むホログラム記録媒体を酸に暴露し、その結果として式IX及び式XIに示す構造の組成物を含むホログラム記録媒体を得ることで製造できる。一実施形態では、ホログラム記録媒体は式XIVに示す構造の組成物の光生成物を含み得る。光生成物は以下の式XIIIに示す構造を有し得る。
【0059】
【化14】

一実施形態では、光学的透明基板は約20μmを超える厚さを有する。一実施形態では、約20〜約50μm、約50〜約100μm、約100〜約150μm、約150〜約200μm、約200〜約250μm、約250〜約300μm、約300〜約350μm、約350〜約400μm、約400〜約450μm、約450〜約500μm、約500〜約550μm、約550〜約600μm或いはそれ以上の厚さを有する。
【0060】
一実施形態では、光学的透明基板は、特に限定されないが、ガラス、プラスチック、インキ、接着剤又はこれらの組合せを含み得る。ガラスの非限定的な例には、石英ガラス及びホウケイ酸ガラスがある。プラスチックの非限定的な例には、有機ポリマーがある。好適な有機ポリマーには、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアクリレート及びポリオレフィンから選択される熱可塑性ポリマー並びに熱硬化性ポリマーがある。一実施形態では、光学的透明基板は、ガラスのような基板上に配置されたプラスチック、インキ又は接着剤のコーティングを含み得る。一実施形態では、光学的透明基板は反射コーティングで被覆できる。例えば、光学的透明基板がDVDのような光媒体であれば、DVDの表面の一方又は両方に反射コーティングを適用できる。反射コーティングの例には、銀コーティングのような金属コーティングがある。
【0061】
一実施形態では、ホログラフィック記録媒体の製造で使用する光学的透明基板は、ホログラフィック記録材料中のデータを読取り可能にするのに十分な光学的品質(例えば、低い散乱、低い複屈折、及び対象波長での無視できる損失)を有する任意のプラスチック材料を含み得る。例えば、オリゴマー、ポリマー、デンドリマー、イオノマー、コポリマー(例えば、ブロックコポリマー、ランダムコポリマー、グラフトコポリマー、スターブロックコポリマーなど)或いは上述のポリマーの1種以上を含む組合せのような有機ポリマー材料が使用できる。熱可塑性ポリマー又は熱硬化性ポリマーが使用できる。好適な熱可塑性ポリマーの例には、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリアリーレート、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリアリーレンエーテル、ポリエーテル、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルなど、或いは上述の熱可塑性ポリマーの1種以上を含む組合せがある。好適な熱可塑性ポリマーのさらに若干の使用可能な例には、特に限定されないが、非晶質及び半結晶質熱可塑性ポリマー並びにポリマーブレンド、例えば、ポリ塩化ビニル、線状及び環状ポリオレフィン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレンなど、水素化ポリスルホン、ABS樹脂、水素化ポリスチレン、シンジオタクチック及びアタクチックポリスチレン、ポリシクロヘキシルエチレン、スチレン−アクリロニトリルコポリマー、スチレン−無水マレイン酸コポリマーなど、ポリブタジエン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メチルメタクリレート−ポリイミドコポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル(特に限定されないが、2,6−ジメチルフェノールから導かれるもの及び2,3,6−トリメチルフェノールとのコポリマーを含む)など、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリ酢酸ビニル、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー、芳香族ポリエステル、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン及びポリ塩化ビニリデンがある。
【0062】
幾つかの実施形態では、本明細書に開示される方法で基板として使用する熱可塑性ポリマーはポリカーボネートからなる。ポリカーボネートは、芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、又は芳香族構造単位及び脂肪族構造単位の両方を含むポリカーボネートであってもよい。
【0063】
本明細書で使用する「ポリカーボネート」という用語は、以下の式XIVの構造単位を有する組成物を包含する。
【0064】
【化15】

式中、R11は脂肪族基、芳香族基又は脂環式基である。一実施形態では、ポリカーボネートは以下の式XVIの構造単位を含む。
【0065】
【化16】

式中、A1及びA2の各々は単環式二価アリール基であり、Y1はA1とA2とを0、1又は2原子で隔てる橋かけ基である。例示的な実施形態では、A1とA2とは1原子で隔てられている。かかる基の非限定的な例には、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)2−、−C(O)−、メチレン、シクロヘキシル−メチレン、2−エチリデン、イソプロピリデン、ネオペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン及びアダマンチリデンがある。かかるビスフェノール化合物の若干の例は、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルフェニルエーテルなどのビス(ヒドロキシアリール)エーテル、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルフィドなどのビス(ヒドロキシジアリール)スルフィド、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホキシドなどのビス(ヒドロキシジアリール)スルホキシド、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホンなどのビス(ヒドロキシジアリール)スルホン、及び上述のビスフェノール化合物の1種以上を含む組合せである。一実施形態では、A1とA2とを隔てる原子が存在せず、その実例はビフェノールである。橋かけ基Y1は、例えばメチレン、シクロヘキシリデン又はイソプロピリデンのような炭化水素基或いはアリール橋かけ基であってもよい。
【0066】
ポリカーボネートの製造には、当技術分野で公知のジヒドロキシ芳香族化合物のいずれかが使用できる。ジヒドロキシ芳香族化合物の例には、例えば、以下の式XVIIを有する化合物がある。
【0067】
【化17】

式中、R16及びR17は各々独立にハロゲン原子或いは脂肪族基、芳香族基又は脂環式基を表し、a及びbは各々独立に0〜4の整数であり、Tは以下の式XVIIIを有する基の1つを表す。
【0068】
【化18】

式中、R14及びR15は各々独立に水素原子或いは脂肪族基、芳香族基又は脂環式基を表し、R16は二価炭化水素基である。好適なジヒドロキシ芳香族化合物の若干の非限定的な実例には、二価フェノール、及び米国特許第4,217,438号に名称又は構造(一般式若しくは特定式)で開示されているもののようなジヒドロキシ置換芳香族炭化水素がある。比較的安価でありかつ商業的に容易に入手できるという理由により、ビスフェノールAから導かれる構造単位を含むポリカーボネートが選択できる。構造(XVII)で表すことができる種類のビスフェノール化合物の具体例の非排他的リストには、以下のものが包含される。即ち、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以後は「ビスフェノールA」又は「BPA」)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−n−ブタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(以後は「DMBPA」)、1,1−ビス(4−ヒドロキシーt−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、4,4’−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンや1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン(以後は「DMBPC」)のようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカンなど、並びに上述のビスフェノール化合物の1種以上を含む組合せである。
【0069】
ポリカーボネートは、当技術分野で公知の方法のいずれかで製造できる。枝分れポリカーボネート並びに線状ポリカーボネートと枝分れポリカーボネートのブレンドも有用である。一実施形態では、ポリカーボネートはビスフェノールA系のものである。一実施形態では、ポリカーボネートの重量平均分子量は約5000〜約100000原子質量単位である。一実施形態では、ポリカーボネートの重量平均分子量は約5000〜約10000原子質量単位、約10000〜20000原子質量単位、約20000〜40000原子質量単位、約40000〜60000原子質量単位、約60000〜80000原子質量単位又は約80000〜100000原子質量単位である。ホログラフィックデータ記憶媒体を形成するために適した熱可塑性ポリマーの他の具体例には、ポリカーボネートであるLexan(登録商標)及び非晶質ポリエーテルイミドであるUltem(登録商標)があり、これらはいずれもSABIC IP社から商業的に入手できる。
【0070】
有用な熱硬化性ポリマーの例には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリシロキサン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、及び上述の熱硬化性ポリマーの1種以上を含む組合せからなる群から選択されるものがある。
【0071】
一実施形態では、光学的透明基板を含むホログラフィック記録媒体を提供する。光学的透明基板は、光化学的活性色素、光化学的活性色素のプロトン付加体及び光化学的活性色素の光生成物を含む。光化学的活性色素のプロトン付加体は式Iに示す構造の組成物であり、光化学的活性色素は式IIに示す構造の組成物である。光学的透明基板で光生成物をパターン化することで、ホログラフィック記録媒体の体積に含まれる光学的に読取り可能なデータが得られる。一実施形態では、光学的に読取り可能なデータは光学的透明基板の対応する体積素子と異なる平均屈折率を有する体積素子を含み、前記体積素子は1種以上の光生成物をパターン化する前の対応する体積素子の屈折率に対する平均屈折率の変化によって特徴づけられる。
【0072】
一実施形態では、ホログラフィック記録媒体の使用方法を提供する。かかる方法は、光化学的活性色素を含む光学的透明基板を、約300〜約1000nmの範囲内の波長の入射光で照射する段階と、その結果として光学的に読取り可能なデータ及び光化学的活性色素の光生成物を含むホログラフィック記録媒体を形成する段階と、ホログラフィック記録媒体を酸に暴露する段階と、その結果として光化学的活性色素の少なくとも一部が光化学的活性色素のプロトン付加体を生成する段階とを含む。光化学的活性色素のプロトン付加体は式Iに示す構造の組成物であり、光化学的活性色素は式IIに示す構造の組成物である。
【0073】
一実施形態では、光学的書込み及び読取り方法を提供する。かかる方法は、データを有する信号ビーム及び参照ビームを同時に用いてホログラフィック記録媒体をパターン化することでホログラムを生み出し、それによって光化学的活性色素を部分的に光生成物に転化させる段階と、ホログラフィック記録媒体を酸に暴露する段階と、その結果として光化学的活性色素の少なくとも一部が光化学的活性色素のプロトン付加体を生成する段階と、信号ビーム中の情報をホログラフィック記録媒体にホログラムとして記憶する段階と、ホログラフィック記録媒体を読取りビームに接触させ、ホログラムからの回折光に含まれるデータを読み取る段階とを含む。ホログラフィック記録媒体は光学的透明基板を含む。光学的透明基板は光化学的活性色素を含む。光化学的活性色素のプロトン付加体は式Iに示す構造の組成物であり、光化学的活性色素は式IIに示す構造の組成物である。一実施形態では、読取りビームは信号ビームの波長に対して約0.001〜約500nmの範囲内の量だけシフトした波長を有する。別の実施形態では、読取りビーム波長は信号ビームの波長に対してシフトしていない。
【0074】
一実施形態では、ホログラフィック記録媒体物品中のホログラフィック記録媒体を、第1の波長を有する電磁放射を用いてパターン化する段階と、1種以上の光化学的活性色素の1種以上の光生成物、及びホログラムとして記憶された1以上の光学的に読取り可能なデータを含む改質された光学的透明基板を形成する段階と、改質された光学的透明基板を酸に暴露する段階と、その結果として光化学的活性色素の少なくとも一部が光化学的活性色素のプロトン付加体を生成する段階と、物品中のホログラフィック記録媒体を、第2の波長を有する電磁エネルギーに接触させてホログラムを読み取る段階とを含んでなる方法を提供する。ホログラフィック記録媒体は光学的透明基板を含む。光学的透明基板は光化学的活性色素を含む。光化学的活性色素は式IIに示す構造の組成物であり、光化学的活性色素のプロトン付加体は式Iに示す構造の組成物である。
【0075】
一実施形態では、第2の波長は第1の波長に対して約0.001〜約500nmの範囲内の量だけシフトしている。一実施形態では、第1の波長は第2の波長と同一でない。一実施形態では、第1の波長は第2の波長と同一である。別の実施形態では、読取りビーム波長は信号ビームの波長に対してシフトしていない。
【0076】
様々な実施形態では、光化学的活性色素は、光への暴露時に色素の屈折率を変化させる能力、光が屈折率変化を生み出す効率、及び色素が最大吸収を示す波長とデータの記憶及び/又は読取りのために使用する(1以上の)所望波長との間隔を含むいくつかの特性に基づいて選択し使用することができる。光化学的活性色素の選択は、ホログラフィック記録媒体の感度(S)、光化学的活性色素の濃度(N0)、記録波長での色素の吸収断面積(σ)、色素の光化学的転化の量子効率(QE)、及び単位色素密度当たりの屈折率変化(即ち、Δn/N0)のような多くの因子に依存する。これらの因子のうち、QE、Δn/N0及びσは、感度(S)及び情報記憶容量(M/#)に影響を及ぼす重要な因子である。一実施形態では、単位色素密度当たりの高い屈折率変化(Δn/N0)、光化学的転化段階での高い量子効率、及び光化学的転化のために使用する電磁放射の波長での高い吸収断面積を示す光化学的活性色素が選択される。
【0077】
一実施形態では、光化学的活性色素は電磁放射による読取り及び書込みが可能なものである。一実施形態では、化学線(即ち、約300〜約1000nmの波長を有する放射)を用いて(信号ビームでの)書込み及び(読取りビームでの)読取りができる色素を使用することが望ましくあり得る。書込み及び読取りを実施し得る波長は、約300〜約800nmの範囲内にある。一実施形態では、書込み及び読取りは約400〜約500nmの波長、約500〜約550nmの波長、又は約550〜約600nmの波長で実施される。一実施形態では、読取り波長は、書込み波長に対して最小nmから約400nmまでの量だけシフトしている。書込み及び読取りを実施する例示的な波長は、約405nm及び約532nmである。
【0078】
一実施形態では、光化学的活性色素を他の添加剤と混合して光活性材料を形成できる。かかる添加剤の例には、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、帯電防止剤、離型剤、追加の樹脂、結合剤、発泡剤など、並びに上述の添加剤の組合せがある。一実施形態では、光活性材料はホログラフィック記録媒体を製造するために使用できる。
【0079】
一実施形態では、ホログラフィック記録媒体が製造される。かかる製造方法は、光学的透明プラスチック材料及び光化学的活性色素を含む光学的透明基板のフィルム、押出品又は射出成形品を形成する段階と、フィルム、押出品又は射出成形品を酸に暴露する段階と、その結果として光化学的活性色素の少なくとも一部が光化学的活性色素のプロトン付加体を生成する段階とを含む。光化学的活性色素は式IIに示す構造の組成物であり、光化学的活性色素のプロトン付加体は式Iに示す構造の組成物である。フィルム形成段階は熱可塑性樹脂の押出しを含み得る。フィルム形成段階は溶液流延を含み得る。フィルム形成段階は熱可塑性樹脂の成形を含み得る。
【0080】
一実施形態では、ホログラフィック記録媒体における永久ホログラムのレンダリング方法を提供する。かかる方法は、光化学的活性色素を含む光学的透明基板を、約300〜約1000nmの範囲内の波長の入射光で照射する段階と、データを有する信号ビーム及び参照ビームを同時に用いてホログラフィック記録媒体をパターン化することでホログラムを生み出し、それによって光化学的活性色素を部分的に光生成物に転化させる段階と、その結果として光学的に読取り可能なデータ及び光化学的活性色素の光生成物を含むホログラフィック記録媒体を形成する段階と、ホログラフィック記録媒体を酸に暴露する段階と、その結果として光化学的活性色素を光化学的活性色素のプロトン付加体に転化させる段階とを含む。光化学的活性色素は式IIに示す構造の組成物であり、光化学的活性色素のプロトン付加体は式Iに示す構造の組成物である。
【0081】
一実施形態では、ホログラフィック記録媒体を提供する。ホログラフィック記録媒体は光学的透明基板を含む。光学的透明基板は、光化学的活性色素、光化学的活性色素のプロトン付加体、光化学的活性色素の光生成物及び光化学的活性色素の光生成物のプロトン付加体を含む。光化学的活性色素のプロトン付加体は式Iに示す構造の組成物であり、光化学的活性色素は式IIに示す構造の組成物である。光学的透明基板で光生成物をパターン化することで、ホログラフィック記録媒体の体積に含まれる光学的に読取り可能なデータが得られる。
【実施例】
【0082】
以下の実施例は本発明に係る方法及び実施形態を例示するものであり、したがって特許請求の範囲に制限を加えるものと解すべきでない。特記しない限り、すべての成分は、Alpha Aesar社(米国マサチューセッツ州ウォードヒル)、Spectrum Chemical Mfg.社(米国カリフォルニア州ガーデナ)などの一般の化学薬品供給業者から商業的に入手できる。
【実施例1】
【0083】
実施例1:色素の製造
段階A:フェニルヒドロキシルアミンの製造
機械的撹拌機、温度計及び窒素入口を備えた1L三つ口丸底フラスコに、塩化アンモニウム(20.71g、0.39モル)、脱イオン水(380mL)、ニトロベンゼン(41.81g、0.34モル)及びエタノール(420mL、95%)を加える。得られた反応混合物を、氷水浴を用いて15℃に冷却する。亜鉛粉末(46.84g、0.72モル)を、温度が25℃を超えないようにしながら、少量ずつ約0.5時間にわたって冷却した混合物に添加する。亜鉛の完全な添加後、反応混合物を室温に加温する。加温した混合物を1/2時間撹拌し、次いで濾過して亜鉛塩及び未反応亜鉛を除去する。濾過ケーク(即ち、亜鉛塩)を先ず熱水(約200mL)で洗浄し、次いで塩化メチレン(約100mL)で洗浄する。濾液を塩化メチレン(約100mL)で抽出する。(濾過ケーク洗液及び濾液抽出液から得た)塩化メチレン層を合わせ、ブライン(約100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、塩化メチレンを蒸発させる。真空炉内で生成物を約24時間乾燥することで、17.82gのフェニルヒドロキシルアミンを綿毛状の淡黄色固体として得る。
【0084】
段階B:α−(4−ジメチルアミノ)スチリル−N−フェニルニトロンの製造
機械的撹拌機及び窒素入口を備えた1L三つ口丸底フラスコに、フェニルヒドロキシアミン(27.28g、0.25モル)、4−ジメチルアミノシンナムアルデヒド(43.81g、0.25モル)及びエタノール(250mL)を加えて鮮やかなオレンジ色の混合物を得る。得られた混合物に注射器を用いてメタンスルホン酸(250μL)を添加する。得られた混合物は、すべての固形分が溶解すると濃い赤色の溶液に変わる。約5分以内に、オレンジ色の固体が生じる。撹拌を容易にするため、混合物にペンタン(約300mL)を添加する。固体を濾別し、真空炉内において80℃で約24時間乾燥することで、55.91gのα−(4−ジメチルアミノ)スチリル−N−フェニルニトロンを鮮やかなオレンジ色の固体として得る。
【実施例2】
【0085】
実施例2:色素の製造
段階A:4−カルベトキシフェニルヒドロキシルアミンの製造
機械的撹拌機、温度計及び窒素入口を備えた500mL三つ口丸底フラスコに、塩化アンモニウム(9.2g、0.17モル)、脱イオン水(140mL)、p−ニトロエチルベンゾエート(29.28g、0.15モル)及びエタノール(150mL、95%)を加える。得られた反応混合物を、氷水浴を用いて15℃に冷却する。亜鉛粉末(21.82g、0.34モル)を、温度が15℃を超えないようにしながら、少量ずつ約0.25時間にわたって冷却混合物に添加する。亜鉛の完全な添加後、反応混合物を室温に加温する。加温した混合物を1時間撹拌し、次いで濾過して亜鉛塩及び未反応亜鉛を除去する。濾過ケーク(即ち、亜鉛塩)を先ず熱水(約200mL)で洗浄し、次いで塩化メチレン(約100mL)で洗浄する。濾液を塩化メチレン(約100mL)で抽出する。(濾過ケーク洗液及び濾液抽出液から得た)塩化メチレン層を合わせ、ブライン(約100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、塩化メチレンを蒸発させる。真空炉内で生成物を約24時間乾燥することで、20.04gの4−カルベトキシフェニルヒドロキシルアミンを綿毛状の淡黄色固体として得る。
【0086】
段階B:α−(4−ジメチルアミノ)スチリル−N−4−カルベトキシフェニルニトロンの製造
機械的撹拌機及び窒素入口を備えた100mL三つ口丸底フラスコに、4−カルベトキシフェニルヒドロキシアミン(4.53g、0.025モル)、4−ジメチルアミノシンナムアルデヒド(4.38g、0.025モル)及びエタノール(25mL)を加えて鮮やかなオレンジ色の混合物を得る。得られた混合物に注射器を用いてメタンスルホン酸(2μL)を添加する。得られた混合物は、すべての固形分が溶解すると濃い赤色の溶液に変わる。約5分以内に、赤色の固体が生じる。固体を濾別し、ペンタン(100mL)で洗浄し、真空炉内において50℃で約24時間乾燥することで、6.23gのα−(4−ジメチルアミノ)スチリル−N−4−カルベトキシフェニルニトロンを得る。
【実施例3】
【0087】
実施例3:溶液試料の調製手順
実施例1又は実施例2で製造した色素約2mgをアセトニトリル(100mL)に添加する。得られた混合物を、色素がアセトニトリルに完全に溶解するまで約2時間撹拌する。
【実施例4】
【0088】
実施例4:試料の評価−溶液試料
光化学的活性色素のUV−可視スペクトルを測定するための手順。すべてのスペクトルは、溶液を用いてCary/Varian 300 UV−可視分光光度計上で記録する。スペクトルは約300〜約800nmの範囲内で記録する。UV−可視測定のため、実施例2で製造した色素を用いて実施例3で調製した溶液試料を1cmの石英キュベットに取り、参照ビーム中に配置すべきブランク溶媒としてはアセトニトリルを使用する。試料溶液を含むキュベットにμLピペットで濃塩酸を添加する。キュベットへの濃塩酸の添加の前後に、各試料に関するUV−可視スペクトルを測定する。
【0089】
図1について述べれば、グラフ100は本発明の一実施形態に係る光化学的活性色素の吸光度の変化を示す。このグラフは、nm単位の光の波長112に対して吸光度110を示すものである。曲線114は、光退色前(即ち、UV暴露前)かつ濃塩酸添加前における可視域内の色素の吸光度である。曲線114は約441nmに吸収極大を有する。曲線116は、濃塩酸添加前における色素のUV暴露体の吸光度であって、約312nmに吸収極大を有する。曲線118は、光退色前かつ濃塩酸添加後における色素の吸光度であって、約548nmに吸収極大を有する。曲線120は、濃塩酸添加後における色素のUV暴露体の吸光度であって、約548nmに吸収極大を有する。このグラフは、色素が532nm及び405nmのレーザー光に対して感光性を有しており、UVに暴露されると急速に光退色されて吸収極大が約441nmから約312nmに減少することを表している。しかし、酸を用いて色素をプロトン付加すれば、UV−可視域内の吸収極大は約441nmから約548nmに増加する。また、プロトン付加色素をUVに暴露した場合、吸収極大はほとんど変化せず、これはプロトン付加形の色素の感光性が低下したことを表している。
【実施例5】
【0090】
実施例5:スピンコート試料の調製手順
スピンコート試料を調製するため、実施例2で製造した色素32mg及び1gのPMMAを10mLのテトラクロロエタンに溶解する。この溶液をスライドガラス上に注ぎ、1000rpmでスピンコートし、次いで45℃に維持したホットプレート上で約30分間乾燥する。真空炉内において試料を40℃で約12時間乾燥する。試料は実施例2で製造した色素をPMMA中に約3.2重量%含んでおり、約500nmの厚さにスピンコートされる。試料の光退色は、約365nm/30mWピーク出力を有するハンドヘルド広帯域UV−可視光源を用いて実施される。かかるフィルム試料を濃塩酸水溶液からの塩酸蒸気に暴露する。
【実施例6】
【0091】
実施例6:スピンコート試料の評価
スピンコート試料のUV−可視スペクトルを測定するための手順。時間分解UV−可視スペクトルを用いて記録するすべてのスペクトルは、約532nmでの同時レーザー照射の下でOcean Opticsファイバー結合USB2000分光計を用いて求める。吸収スペクトルは約200〜約800nmの範囲内で記録する。試料をプロトン付加するため、濃塩酸水溶液を含む瓶の口に試料を配置し、試料の厚さに応じて約2〜約30分間保持する。酸蒸気が試料中に拡散することで、試料中の色素をプロトン付加する。様々なレベルの色素添加量(即ち、0.45、1.06、1.64、3.22及び4.97)を使用しながら、約500nmの厚さを有する薄膜をシリコンウェーハ上にスピンコートすることで試料を調製する。約200〜約800nmの波長範囲にわたり複数の角度で試料を測定し、通例は一般振動子モデルを用いて分析を行う。屈折率は、モデル化吸収を測定吸収に当てはめることにより、Kramer−Kronigの関係式を用いて求める。フィルムは初期状態(即ち、プロトン付加前)及びプロトン付加後に測定する。
【0092】
図2について述べれば、グラフ200は本発明の一実施形態に係る光化学的活性色素の吸光度の変化を示す。このグラフは、nm単位の光の波長212に対して吸光度210を示すものである。曲線214は、光退色前かつ濃塩酸添加前における可視域内の色素の吸光度である。曲線214は約435nmに吸収極大を有する。曲線216は、濃塩酸添加前における色素のUV暴露体の吸光度であって、約390nmに吸収極大を有する。曲線218は、光退色前かつ濃塩酸添加後における色素の吸光度であって、約500nmに吸収極大を有する。曲線220は、濃塩酸添加後における色素のUV暴露体の吸光度であって、約500nmに吸収極大を有する。このグラフは、スピンコート試料中の色素が溶液試料に関して上述したのと同様な挙動を示すことを表している。このグラフは、色素が532nm及び405nmのレーザー光に対して感光性を有しており、UVに暴露されると光退色されて吸収極大が約435nmから約390nmに減少することを表している。しかし、酸を用いて色素をプロトン付加すれば、UV−可視域内の吸収極大は約435nmから約500nmに増加する。また、プロトン付加色素をUVに暴露した場合、吸収極大はほとんど変化せず、これはプロトン付加形の色素の感光性が低下したことを表している。
【0093】
表に報告する吸光度は、各試験試料に関する700〜800nmの範囲内の平均基線値を、405nm又は532nmで測定した吸光度から引くことで計算したものである。これらの化合物は700〜800nmの範囲内で吸収を示さないので、この補正はディスク表面からの反射によって引き起こされる見掛けの吸収を除去し、色素の吸光度の一層正確な表示を与える。これらの実施例で使用するポリマーは、405nm又は532nmで吸収をほとんど又は全く示さない。これらの測定の結果を図3、図4及び表1に示す。
【0094】
図3について述べれば、グラフ300は本発明の一実施形態に係る光化学的活性色素の屈折率の変化を示す。このグラフは、nm単位の光の波長312に対して屈折率310を示すものである。曲線314は、光退色前かつ濃塩酸添加前における可視域内の色素の屈折率であって、約1.535の最大屈折率を有する。曲線316は、濃塩酸添加前における色素のUV暴露体の屈折率であって、約1.525の最大屈折率を有する。曲線318は、光退色前かつ濃塩酸添加後における色素の屈折率であって、約1.539の最大屈折率を有する。
【0095】
図4について述べれば、グラフ400は本発明の一実施形態に係る感光性材料の屈折率変化を示す。このグラフは、nm単位の光の波長412に対して屈折率の差(ΔRI)410を示すものである。曲線414は、実施例5で調製したスピンコート試料に関する屈折率変化を示す。所定波長の光の活性化領域は、約405nmに下限416を有し、約532nmに上限418を有する。かかる上限及び下限は、プロトン付加形及び非プロトン付加形の色素が光を吸収して立体配座の変化を受けることでホスト物品の屈折率に影響を及ぼす場合に得られる色素のプロトン付加体と色素の退色体との間のRI差を含む領域を画成する。実施例5で調製したスピンコート試料を405nm及び532nmで測定した場合に得られる屈折率変化を下記表1に示す。表1は、未退色試料と退色試料との間の最大Δn及びプロトン付加試料と退色試料との間の最大Δnを含む。
【0096】
【表1】

上述の通り、実施例2で製造した色素を理想的には532nmの光に暴露してホログラムを書き込み、次いで酸蒸気に2分間暴露することで屈折率を高めると同時に色素を不感光性にする。分光楕円偏光測定のための推奨読出し波長は450nmである。色素は532nm及び405nmのレーザー光に対して感光性を有しており、UVに暴露されると急速に光退色される。しかし、酸を用いて色素をプロトン付加すれば、感光性は劇的に低下し、長波長側への吸収バンドの強いシフトが認められる。
【実施例7】
【0097】
実施例7:色素−ポリマー混合物の調製
10kgのポリスチレンペレットPS1301(Nova Chemicals社から入手)をレッチュ(Retsch)ミル内で粉砕して粗大粉末にし、80℃に維持した空気循環炉内で12時間乾燥する。10Lヘンシェルミキサー内で、6.5kgの乾燥ポリスチレン粉末及び195gのα−(4−ジメチルアミノ)スチリル−N−フェニルニトロンをブレンドして均質なオレンジ色の粉末を形成する。粉末を185℃でPrism(16mm)二軸押出機に供給することで、約3重量%の色素含有量を有する濃いオレンジ色のペレット6.2kgを得る。押出しのために使用する条件を表2に示す。
【0098】
【表2】

【実施例8】
【0099】
実施例8:色素−ポリマー混合物の調製
実施例7で得た押出ペレットを、真空炉内においてポリマーのガラス転移温度よりほぼ40℃低い温度で乾燥する。住友重機械工業(株)SD−40E全電動式CD/DVD(コンパクトディスク/ディジタルビデオディスク)射出成形装置を用いて(上述のようにして調製した)ブレンドを射出成形することで光学品質のディスクを作製する。成形ディスクは約500〜約1200μmの厚さを有する。両面に関してミラードスタンパーを使用する。サイクル時間は一般に約10秒に設定される。成形条件は、使用するポリマーのガラス転移温度及び溶融粘度並びに光化学的活性色素の熱安定性に応じて変化する。かくして、最高バレル温度は約200〜約375℃の範囲内にあるように制御される。成形ディスクを集め、暗所に貯蔵する。
【実施例9】
【0100】
実施例9:成形ディスクの作製
OQ(光学グレード)ポリスチレンを基材とする光化学的活性色素のブレンドを成形するために使用する条件を表3に示す。
【0101】
【表3】

【実施例10】
【0102】
実施例10:使用方法
ホログラムを記録するための手順。
【0103】
532nm又は405nmでホログラムを記録するため、参照ビーム及び信号ビームの両方を45度の傾斜角で試験試料に入射させる。試料はコンピューターによって制御される回転ステージ上に配置する。参照ビーム及び信号ビームは共に同一の光出力を有し、(試料表面に平行な)同一方向に偏光されている。ビーム直径(1/e2)は4mmである。バックグラウンド光からの光学ノイズを低減させるため、検出器の前に色フィルター及び小さいピンホールを配置する。レーザーの前の高速メカニカルシャッターによってホログラム記録時間を制御する。532nmの装置では、赤色の632nmビームを用いてホログラム記録中の動的変化をモニターする。各ビームに関する記録電力は1mWから100mWまで変化し、記録時間は10ミリ秒から約5秒まで変化する。試料ディスクを0.2〜0.4度ずつ回転させることで、記録されたホログラムからの回折出力をブラッグ離調曲線から決定する。報告される値は、試料表面からの反射について補正されている。ホログラムの読出しのために使用する電力は、読出しに際してのホログラム消去を最小限に抑えるため、記録電力より2〜3桁小さい。実施例1で製造しかつ実施例9でディスクを作製するために使用した色素のUV−可視吸収スペクトル測定結果及び回折効率を下記の表4に示す。
【実施例11】
【0104】
実施例11:試料の評価
実施例9で作製した試料をプロトン付加するため、HCl水溶液を含む瓶の口に試料を配置し、試料の厚さ/形状に応じて約2〜約30分間保持する。酸蒸気が試料中に拡散することで、それをプロトン付加する。実施例9で作製した試料の回折効率を初期状態(即ち、プロトン付加前)及びプロトン付加後に測定する。酸に暴露されると、長波長側への吸収バンドの強いシフトが起こって屈折率を高め、したがって回折効率を増加させることが認められる。また、酸への暴露は感光性を劇的に低下させ、したがってホログラムの安定性を高める。プロトン付加の前後における(実施例1で製造した色素を3重量%含む)成形ディスクについての回折効率測定値を表4及び図5に示す。
【0105】
【表4】

図5について述べれば、グラフ500は本発明の一実施形態に係る感光性材料の回折効率変化を示す。このグラフは、度単位の回折角512に対して回折効率510を示すものである。曲線514はプロトン付加前における実施例9で作製した成形ディスクの吸光度を示し、曲線516はプロトン付加後における実施例9で作製した成形ディスクの吸光度を示す。プロトン付加前に比べ、プロトン付加後の回折効率は顕著に増加している。
【実施例12】
【0106】
実施例12:溶液流延試料の作製手順
1gのポリスチレンペレットを10mLの塩化メチレンに溶解し、ポリスチレンペレットが塩化メチレンに完全に溶解するまで約2時間撹拌する。ポリマー溶液に(4−ジメチルアミノ)スチリル−N−フェニルニトロン(50mg)を添加し、ニトロンが塩化メチレンに完全に溶解するまで約2時間撹拌する。ガラス基板上に載せた金属リング(半径5cm)内に色素−ポリスチレン溶液を注入することで溶液流延試料を作製する。金属リングをガラス基板上に配置してなる集合体を、約40℃の温度に維持したホットプレート上に配置する。集合体を倒立した漏斗で覆うことで、塩化メチレンをゆっくりと蒸発させる。約4時間後に乾燥した色素ドープトポリスチレンフィルムを回収する。色素ドープトポリスチレンフィルムは5重量%の色素を含む。
【実施例13】
【0107】
実施例13:ホログラムを永久化する方法
プロトン付加前及びプロトン付加後に、フィルムを532nm/100mWのホログラム消去ビームに約30〜約400秒暴露する。表5に示される通り、プロトン付加試料の回折効率の減少はプロトン付加前の試料の回折効率の減少より少ない。プロトン付加前の試料及びプロトン付加後の試料に対するホログラム消去ビームの効果を図6に示す。
【0108】
【表5】

図6について述べれば、グラフ600は本発明の一実施形態に係る物品のホログラム消去測定結果を示す。このグラフは、秒単位のホログラム消去時間612に対して回折効率610を示すものである。曲線614は、プロトン付加前の試料をホログラム消去ビームに暴露した場合に認められる回折効率の経時変化である。曲線616は、プロトン付加後の試料をホログラム消去ビームに暴露した場合に認められる回折効率の経時変化である。プロトン付加前の試料中のホログラムを消去するために要する時間は約30秒であり、プロトン付加後の試料中のホログラムを消去するために要する時間は約380秒である。これは、プロトン付加が色素を退色波長に対して不感受性にし、それによってホログラムを永久化することを表している。
【0109】
冠詞“a”、“an”及び“the”で修飾された単数形は、前後関係から明らかでない限り、複数の場合も含めて意味する。「任意の」又は「任意には」という用語は、その用語に続いて記載された事象又は状況が起きても起きなくてもよいことを意味しており、かかる記載はその事象が起こる場合及びその事象が起こらない場合を包含する。本明細書及び特許請求の範囲を通じて使用される概略表現用語は、それが関係する基本機能の変化を生じることなしに変動することが許容される任意の数量表現を修飾するために適用できる。したがって、「約」及び「実質的に」のような用語で修飾された値は、明記された厳密な値に限定すべきでない。少なくとも若干の場合には、概略表現用語は値を測定するための計器の精度に対応することがある。本明細書及び特許請求の範囲を通じて、範囲の限界は結合及び/又は交換が可能であり、特記されない限り、かかる範囲は同一視されると共に、それに含まれるすべての部分範囲を包含する。本明細書に開示される分子量範囲は、ポリスチレン標準を用いるゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した分子量を指す。
【0110】
以上、幾つかの実施形態に関して本発明を詳しく説明してきたが、本発明はかかる開示された実施形態に限定されない。それどころか本発明は、これまで記載されていないが本発明の技術的範囲内に含まれる任意の数の変形、変更、置換又は同等な構成を組み込むように修正することができる。さらに、本発明の様々な実施形態を記載したが、本発明の態様は記載された実施形態の一部のみを含み得ることを理解すべきである。したがって、本発明は以上の記載によって限定されると解すべきでなく、特許請求の範囲のみによって限定されるものである。
【符号の説明】
【0111】
100 グラフ
110 吸光度
112 光の波長
114 酸転化前における光退色前の吸光度
116 酸転化前における光退色後の吸光度
118 酸転化後における光退色前の吸光度
120 酸転化後における光退色後の吸光度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光化学的活性色素及び光化学的活性色素のプロトン付加体を含む光学的透明基板を含んでなるホログラフィック記録媒体であって、
光化学的活性色素のプロトン付加体は以下の式Iに示す構造の組成物であり、
光化学的活性色素は以下の式IIに示す構造の組成物である、ホログラフィック記録媒体。
【化1】

【化2】

(式I及び式IIの両方において、R1及びR2は各々独立に炭素原子数1〜約10の脂肪族基、炭素原子数約3〜約10の脂環式基、又は炭素原子数約3〜約12の芳香族基であり、R3、R4及びR5は各々独立に水素原子、炭素原子数1〜約10の脂肪族基、炭素原子数約3〜約10の脂環式基、又は炭素原子数約3〜約12の芳香族基であり、R6及びR7は各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜約6の脂肪族基であり、Xはハロゲンであり、「n」は0〜約4の値を有する整数である。)
【請求項2】
感光性色素が以下の式XIに示す構造の組成物であり、プロトン付加感光性色素が以下の式Xに示す構造の組成物である、請求項1記載のホログラフィック記録媒体。
【化3】

【化4】

【請求項3】
感光性色素が以下の式XIVに示す構造の組成物であり、プロトン付加感光性色素が以下の式XIIIを有する組成物である、請求項1記載のホログラフィック記録媒体。
【化5】

【化6】

【請求項4】
光化学的活性色素、光化学的活性色素のプロトン付加体及び光化学的活性色素の光生成物を含む光学的透明基板を含んでなるホログラフィック記録媒体であって、
光化学的活性色素のプロトン付加体は以下の式Iに示す構造の組成物であり、
光化学的活性色素は以下の式IIに示す構造の組成物であり、
光学的透明基板で光生成物をパターン化することで、ホログラフィック記録媒体の体積に含まれる光学的に読取り可能なデータが得られる、ホログラフィック記録媒体。
【化7】

【化8】

(式I及び式IIの両方において、R1及びR2は各々独立に炭素原子数1〜約10の脂肪族基、炭素原子数約3〜約10の脂環式基、又は炭素原子数約3〜約12の芳香族基であり、R3、R4及びR5は各々独立に水素原子、炭素原子数1〜約10の脂肪族基、炭素原子数約3〜約10の脂環式基、又は炭素原子数約3〜約12の芳香族基であり、R6及びR7は各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜約6の脂肪族基であり、Xはハロゲンであり、「n」は0〜約4の値を有する整数である。)
【請求項5】
光学的透明基板がガラス、プラスチック、インキ、接着剤又はこれらの組合せを含む、請求項1記載のホログラフィック記録媒体。
【請求項6】
ホログラフィック記録媒体の使用方法であって、当該方法は
光化学的活性色素を含む光学的透明基板を、約300〜約1000nmの範囲内の波長の入射光で照射する段階と、
その結果として光学的に読取り可能なデータ及び光化学的活性色素の光生成物を含むホログラフィック記録媒体を形成する段階と、
ホログラフィック記録媒体を酸に暴露する段階と、
その結果として光化学的活性色素の少なくとも一部が光化学的活性色素のプロトン付加体を生成する段階とを含んでなり、
光化学的活性色素のプロトン付加体は以下の式Iに示す構造の組成物であり、
光化学的活性色素は以下の式IIに示す構造の組成物である、方法。
【化9】

【化10】

(式I及び式IIの両方において、R1及びR2は各々独立に炭素原子数1〜約10の脂肪族基、炭素原子数約3〜約10の脂環式基、又は炭素原子数約3〜約12の芳香族基であり、R3、R4及びR5は各々独立に水素原子、炭素原子数1〜約10の脂肪族基、炭素原子数約3〜約10の脂環式基、又は炭素原子数約3〜約12の芳香族基であり、R6及びR7は各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜約6の脂肪族基であり、Xはハロゲンであり、「n」は0〜約4の値を有する整数である。)
【請求項7】
光学的書込み及び読取り方法であって、当該方法は
データを有する信号ビーム及び参照ビームを同時に用いてホログラフィック記録媒体をパターン化することでホログラムを生み出し、それによって光化学的活性色素を部分的に光生成物に転化させる段階と、
ホログラフィック記録媒体を酸に暴露する段階と、
その結果として光化学的活性色素の少なくとも一部が光化学的活性色素のプロトン付加体を生成する段階と、
信号ビーム中の情報をホログラフィック記録媒体にホログラムとして記憶する段階と、
ホログラフィック記録媒体を読取りビームに接触させ、ホログラムからの回折光に含まれるデータを読み取る段階とを含んでなり、
ホログラフィック記録媒体は光化学的活性色素及び光化学的活性色素のプロトン付加体を含む光学的透明基板を含み、光化学的活性色素のプロトン付加体は以下の式Iに示す構造の組成物であり、光化学的活性色素は以下の式IIに示す構造の組成物である、方法。
【化11】

【化12】

(式I及び式IIの両方において、R1及びR2は各々独立に炭素原子数1〜約10の脂肪族基、炭素原子数約3〜約10の脂環式基、又は炭素原子数約3〜約12の芳香族基であり、R3、R4及びR5は各々独立に水素原子、炭素原子数1〜約10の脂肪族基、炭素原子数約3〜約10の脂環式基、又は炭素原子数約3〜約12の芳香族基であり、R6及びR7は各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜約6の脂肪族基であり、Xはハロゲンであり、「n」は0〜約4の値を有する整数である。)
【請求項8】
ホログラフィック記録媒体物品の使用方法であって、当該方法は
光化学的活性色素を含む光学的透明基板を含むホログラフィック記録媒体を、第1の波長を有する電磁放射を用いてパターン化する段階と、
1種以上の光化学的活性色素の1種以上の光生成物、及びホログラムとして記憶された1以上の光学的に読取り可能なデータを含む改質された光学的透明基板を形成する段階と、
改質された光学的透明基板を酸に暴露する段階と、
その結果として光化学的活性色素の少なくとも一部が光化学的活性色素のプロトン付加体を生成する段階と、
物品中のホログラフィック記録媒体を、第2の波長を有する電磁エネルギーに接触させてホログラムを読み取る段階とを含んでなり、
光化学的活性色素のプロトン付加体は以下の式Iに示す構造の組成物であり、
光化学的活性色素は以下の式IIに示す構造の組成物である、方法。
【化13】

【化14】

(式I及び式IIの両方において、R1及びR2は各々独立に炭素原子数1〜約10の脂肪族基、炭素原子数約3〜約10の脂環式基、又は炭素原子数約3〜約12の芳香族基であり、R3、R4及びR5は各々独立に水素原子、炭素原子数1〜約10の脂肪族基、炭素原子数約3〜約10の脂環式基、又は炭素原子数約3〜約12の芳香族基であり、R6及びR7は各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜約6の脂肪族基であり、Xはハロゲンであり、「n」は0〜約4の値を有する整数である。)
【請求項9】
ホログラフィック記録媒体の製造方法であって、当該方法は
光学的透明プラスチック材料及び光化学的活性色素を含む光学的透明基板のフィルム、押出品又は射出成形品を形成する段階と、
フィルム、押出品又は射出成形品を酸に暴露する段階と、
その結果として光化学的活性色素の少なくとも一部が光化学的活性色素のプロトン付加体を生成する段階とを含んでなり、
光化学的活性色素は以下の式Iに示す構造の組成物であり、
光化学的活性色素は以下の式IIに示す構造の組成物である、方法。
【化15】

【化16】

(式I及び式IIの両方において、R1及びR2は各々独立に炭素原子数1〜約10の脂肪族基、炭素原子数約3〜約10の脂環式基、又は炭素原子数約3〜約12の芳香族基であり、R3、R4及びR5は各々独立に水素原子、炭素原子数1〜約10の脂肪族基、炭素原子数約3〜約10の脂環式基、又は炭素原子数約3〜約12の芳香族基であり、R6及びR7は各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜約6の脂肪族基であり、Xはハロゲンであり、「n」は0〜約4の値を有する整数である。)
【請求項10】
ホログラフィック記録媒体における永久ホログラムのレンダリング方法であって、当該方法は
光化学的活性色素を含む光学的透明基板を、約300〜約1000nmの範囲内の波長の入射光で照射する段階と、
データを有する信号ビーム及び参照ビームを同時に用いてホログラフィック記録媒体をパターン化することでホログラムを生み出し、それによって光化学的活性色素を部分的に光生成物に転化させる段階と、
その結果として光学的に読取り可能なデータ及び光化学的活性色素の光生成物を含むホログラフィック記録媒体を形成する段階と、
ホログラフィック記録媒体を酸に暴露する段階と、
その結果として光化学的活性色素を光化学的活性色素のプロトン付加体に転化させる段階とを含んでなり、
光化学的活性色素のプロトン付加体は以下の式Iに示す構造の組成物であり、
光化学的活性色素は以下の式IIに示す構造の組成物である、方法。
【化17】

【化18】

(式I及び式IIの両方において、R1及びR2は各々独立に炭素原子数1〜約10の脂肪族基、炭素原子数約3〜約10の脂環式基、又は炭素原子数約3〜約12の芳香族基であり、R3、R4及びR5は各々独立に水素原子、炭素原子数1〜約10の脂肪族基、炭素原子数約3〜約10の脂環式基、又は炭素原子数約3〜約12の芳香族基であり、R6及びR7は各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜約6の脂肪族基であり、Xはハロゲンであり、「n」は0〜約4の値を有する整数である。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−20307(P2010−20307A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−161288(P2009−161288)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】