説明

ホログラム構造

【課題】 通常の照明や、太陽光では視認できないが、紫外線照射により、蛍光発色して、鮮明性に優れ、美観を有し、非常にセキュリティ性が高いホログラム構造を提供することを目的とする。
【解決手段】 基材2の一方の面に、ホログラム層3、反射層4、蛍光インキ層5が順次積層されたホログラム構造1において、前記反射層4がパターンで形成されていることを特徴とするホログラム構造を構成とする。また、上記構成のホログラム構造1において、蛍光インキ層5の上に粘着層6を設けてラベルとして利用できることを特徴とするホログラム構造の構成が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常の照明や、太陽光では視認できないが、紫外線照射により、蛍光発色して、鮮明性に優れ、美観を有し、非常にセキュリティ性が高いホログラム構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、経済的に価値の高い高額商品や、ID(Identification;照合一致)手段として用いると高い価値を生じるクレジットカードや、トラベラーズチェック、または金券類等には、それらの真偽性を判定するのに適したホログラム(ラベル)を付与させて、偽造を防止して、真正物として証明することが行われている。しかし、最近では、目視では本物と区別がつかないようなホログラムの製造が行われて、真正性を証明する新規なものが要求されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ホログラムパターンを有するホログラム層、紫外可視光線透過率が10〜40%の黒色反射層、及び隠しパターンの蛍光印刷層からなり、通常は視認できない隠しパターンが紫外線の照射で視認できるホログラムが提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、基材シート上に、ホログラム層を設け、さらに蒸着層を部分的に設けたものが示されている。
【特許文献1】特開2007−72188号公報
【特許文献2】特開平7−104188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記に挙げた従来のホログラム構造である積層体では、偽造防止対策が十分ではなく、また美観上でも十分なものではなかった。したがって、本発明は通常の照明や、太陽光では視認できないが、紫外線照射により、蛍光発色して、鮮明性に優れ、美観を有し、非常にセキュリティ性が高いホログラム構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、請求項1として、基材の一方の面に、ホログラム層、反射層、蛍光インキ層が順次積層されたホログラム構造において、前記反射層がパターンで形成されていることを特徴とするホログラム構造を構成とする。これにより、紫外線照射で、蛍光発色して、鮮明性に優れ、美観を有し、非常にセキュリティ性が高い物品が得られる。
【0007】
また、請求項2として、請求項1に記載するホログラム構造において、蛍光インキ層の上に粘着層を設けてラベルとして利用できることを特徴とするホログラム構造の構成とする。これにより、任意の物品に粘着層を介して、ホログラム構造を貼り付けることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、上記の構成のホログラム構造をとることにより、偽造防止が非常に困難であり、セキュリティ性が極めて高いものである。本発明のホログラム構造は、反射層がパターンで形成されているので、反射層の有無により、反射層の境界が鮮明となり、見た目のよいホログラムが得られる。さらに、反射層の隣接部には、紫外線照射により、蛍光インキ層からの蛍光が発色して、外観上、非常に美しく、また独自性が高く、偽造防止性の高いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明のホログラム構造1の一つの実施形態を示す概略の断面図である。基材2の一方の面に、ホログラム層3、反射層4、蛍光インキ層5が順次積層されたホログラム構造1であり、反射層4がパターンで形成されている。
【0010】
図2は、本発明のホログラム構造1の他の実施形態を示す概略の断面図である。基材2の一方の面に、ホログラム層3、反射層4、蛍光インキ層5、粘着層6、剥離紙7を順次設けた構成のホログラム構造1である。このホログラム構造1では、剥離紙7を剥がして、露出した粘着層6を介して、ホログラム構造1を任意の物品に貼り付けることができる。
【0011】
以下、本発明のホログラム構造1を構成する各層について、詳細に説明する。尚、本明細書において、配合を示す「比」、「部」、「%」などは特に断わらない限り質量基準であり、「/」印は一体的に積層されていることを示す。また、「PET」は「ポリエチレンテレフタレート」、「スタンパ」は「金型」、「UV」は「紫外線」の略語、機能的表現、通称、又は業界用語である。
【0012】
(基材)
基材2としては、用途に応じて種々の材料が適用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン6などのポリアミド系樹脂、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニルなどのビニル系樹脂、ポリメチルメタアクリレートなどのアクリル系樹脂、イミド系樹脂、ポリカーボネート、ABS樹脂などのスチレン系樹脂、セルローストリアセテートなどのセルロース系フィルム、などがある。該基材は、これら樹脂を主成分とする共重合樹脂、または、混合体(アロイでを含む)、若しくは複数層からなる積層体であっても良い。また、該基材は、延伸フィルムでも、未延伸フィルムでも良いが、強度を向上させる目的で、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムが好ましい。該基材の厚さは、通常、2.5〜100μm程度が適用できるが、4〜50μmが好適で、6〜25μmが最適である。
【0013】
該基材は、これら樹脂の少なくとも1層からなるフィルム、シート、ボード状として使用する。通常は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系のフィルムが、強度、耐熱性、価格面でバランスがよく、好適に使用され、特にポリエチレンテレフタレートが最適である。該基材は、塗布に先立って塗布面へ、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、プライマー(アンカーコート、接着促進剤、易接着剤とも呼ばれる)塗布処理、予熱処理、除塵埃処理、蒸着処理、アルカリ処理、などの易接着処理を行ってもよい。また、該樹脂フィルムは、必要に応じて、充填剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤などの添加剤を加えても良い。
【0014】
(ホログラム層)
ホログラム層3としては、無色または着色された透明または半透明なもので、単層であっても多層状であってもよく、凹凸を注型や型押しで再現できる熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、あるいは、光回折パターン情報に応じて硬化部と未硬化部とを成形することができる感光性樹脂組成物が利用できる。具体的には、例えば、ポリ塩化ビニル、アクリル(ポリメチルメタクリレート)、ポリスチレン、またはポリカーボネート等の熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル、メラミン、エポキシ、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、またはトリアジン系アクリレート等の熱硬化性樹脂であり、それぞれの単独、熱可塑性樹脂どうし、または熱硬化性樹脂同志の混合、もしくは熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の混合等であってもよい。ラジカル重合性不飽和基を有し、熱成形性を有するものや、ラジカル重合性不飽和モノマーを添加した電離放射線硬化性樹脂組成物も利用できる。電離放射線硬化樹脂としては、例えば、エポキシ変性アクリレート樹脂、ウレタン変性アクリレート樹脂、アクリル変性ポリエステル等が適用でき、好ましくはウレタン変性アクリレート樹脂である。
【0015】
また、好ましくは、ホログラム層の材料としては、(1)分子中にイソシアネート基を3個以上有するイソシアネート類、(2)分子中に水酸基を少なくとも1個と(メタ)アクリロイルオキシ基を少なくとも2個有する多官能(メタ)アクリレート類、又は(3)分子中に水酸基を少なくとも2個有する多価アルコール類の反応生成物であるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含有する電離放射線硬化性樹脂(本明細書では「電離放射線硬化性樹脂組成物M」と呼称する)、反応性シリコーン及びポリエチレンワックスを含むようにする。さらに好ましくは、(メタ)アクリレートオリゴマーも含ませて硬化させる。該組成物を塗布し乾燥して、ホログラム機能を発現する微細な凹凸レリーフを賦型した後に、電離放射線で硬化させればよい。電離放射線硬化性樹脂は架橋性樹脂ともいわれ、他の層でも同様である。
【0016】
「電離放射線硬化性樹脂組成物M」としては、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含有する電離放射線硬化性樹脂の硬化物、具体的には、特開2001−329031号公報で開示されている光硬化性樹脂などが例示でき、実施例でも述べる。即ち、「電離放射線硬化性樹脂組成物M」(1)分子中にイソシアネート基を3個以上有するイソシアネート類、(2)分子中に水酸基を少なくとも1個と(メタ)アクリロイルオキシ基を少なくとも2個有する多官能(メタ)アクリレート類、又は(3)分子中に水酸基を少なくとも2個有する多価アルコール類の反応生成物である。
【0017】
(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、耐熱性のあるオリゴマーであればよく、例えば、日本合成化学社の商品名;紫光6630B、7510B、7630Bなどが例示できる。
【0018】
ポリエチレンワックスとしては、ポリエチレン系樹脂の粒子やビーズが挙げられるが、好ましくは球状ビーズである。但し、ポリエチレンワックスを添加すると、箔切れ性は低下するので、その添加量は、電離放射線硬化樹脂100質量部に対して、0.01〜10質量部程度、好ましくは0.1〜5質量部とする。
【0019】
反応性シリコーンとしては、電離放射線で硬化時に樹脂と反応し結合して一体化するもので、アクリル変性、メタクリル変性、又はエポキシ変性などで変性した反応性シリコーンで、該反応性シリコーンを含有させる質量基準での割合としては「電離放射線硬化性樹脂組成物M」100部に対して、0.1〜10部程度、好ましくは0.3〜5部である。この範囲未満ではレリーフの賦型時にプレススタンパとの剥離が不十分であり、プレススタンパの汚染を防止することが困難で賦型性が悪い。また、この範囲を超えてはホログラム層面への反射層の密着性が低く、ホログラム層と反射層との間で剥離し商品価値を失ってしまう。従来のシリコーンオイルの添加では、反射層との密着性が悪い。
【0020】
このように、ホログラム層には、「電離放射線硬化性樹脂組成物M」、必要に応じて(メタ)アクリレートオリゴマー、反応性シリコーン、及びポリエチレンワックスを含ませることで、レリーフの賦型性がよく光回折効果が高く、かつ、ハードコート機能を兼ねさせることができる。特にポリエチレンワックスを含有させることで、耐擦傷性(耐スクラッチ性)が著しく向上する。
【0021】
(1)電離放射線硬化前の塗布状態のホログラム層の塗膜は指乾状態でべとつかず、ブロッキングせずに巻き取ることができるので、ロールツーロール加工ができる。
(2)ホログラム層15へは反応性シリコーンを含ませると、塗布表面に集まりスタンパの凹凸からの剥離がよく賦型性が向上して、レリーフ構造を容易に賦型でき、賦型後には電離放射線で硬化すれば反応性シリコーンも硬化する。
(3)ポリエチレンワックスを含ませることで、転写後にはホログラム層が最表面層となるが、極めて過酷な環境での使用、長期間にわたる使用、及び/又は多数回の繰り返し使用などでも、溶剤、機械的な摩擦、及び摩耗から被転写体に設けられた画像を保護し、傷付きにくく耐久性に優れる。
【0022】
ホログラム層は、上記の電離放射線硬化性樹脂、必要に応じて(メタ)アクリレートオリゴマー、反応性シリコーン、及びポリエチレンワックスを含ませ、さらに必要に応じて光重合開始剤、可塑剤、安定剤、界面活性剤等を加え、溶媒へ分散または溶解して、ロールコート、グラビアコート、コンマコート、ダイコートなどの公知のコーティング方法で塗布し乾燥して塗膜を形成したりすれば良い。ホログラム層の厚さとしては、通常は0.5μm〜20μm程度、好ましくは1μm〜10m程度であり、複数回の塗布でもよい。
【0023】
次に、ホログラム層の表面には、ホログラムなどの光回折効果の発現する所定のレリーフ構造を賦型し、硬化させる。ホログラムは物体光と参照光との光の干渉による干渉縞を凹凸のレリーフ形状で記録されたもので、例えば、フレネルホログラム等のレーザ再生ホログラム、及びレインボーホログラム等の白色光再生ホログラム、さらに、それらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータジェネレーティッドホログラム(CGH)、ホログラフィック回折格子などがある。レリーフ形状は凹凸形状であり、特に限定されるものではなく、微細な凹凸形状を有する光拡散、光散乱、光反射、光回折などの機能を発現するものでもよく、例えば、フーリエ変換やレンチキュラーレンズ、光回折パターン、モスアイ、が形成されたものである。また、光回折機能はないが、特異な光輝性を発現するヘアライン柄、マット柄、万線柄、干渉パターンなどでもよい。
【0024】
これらのレリーフ形状の作製方法としてはホログラム撮影記録手段を利用して作製されたホログラムや回折格子の他に、干渉や回折という光学計算に基づいて電子線描画装置等を用いて作製されたホログラムや回折格子をあげることもできる。また、ヘアライン柄や万線柄のような比較的大きなパターンなどは機械切削法でもよい。これらのホログラム及び/又は回折格子の単一若しくは多重に記録しても、組み合わせて記録しても良い。これらの原版は公知の材料、方法で作成することができ、通常、感光性材料を塗布したガラス板を用いたレーザ光干渉法、電子線レジスト材料を塗布したガラス板に電子線描画装置を用いてパターン作製する電子線描画法をなどが適用できる。
【0025】
ホログラム層面へ、上記のレリーフ形状を賦形(複製ともいう)する。ホログラムの賦型は、公知の方法によって形成でき、例えば、回折格子やホログラムの干渉縞を表面凹凸のレリーフとして記録する場合には、回折格子や干渉縞が凹凸の形で記録された原版をプレス型(スタンパという)として用い、上記樹脂層上に前記原版を重ねて加熱ロールなどの適宜手段により、両者を加熱圧着することにより、原版の凹凸模様を複製することができる。
【0026】
ホログラム層は、スタンパでエンボス中、又はエンボス後に、電離放射線を照射して、電離放射線硬化性樹脂を硬化させる。上記の電離放射線硬化性樹脂は、レリーフを形成後に、電離放射線を照射して硬化(反応)させると電離放射線硬化樹脂(ホログラム層)となる。電離放射線としては、電磁波が有する量子エネルギーで区分する場合もあるが、本明細書では、すべての紫外線(UV−A、UV−B、UV−C)、可視光線、ガンマー線、X線、電子線を包含するものと定義する。従って、電離放射線としては、紫外線(UV)、可視光線、ガンマー線、X線、または電子線などが適用できるが、紫外線(UV)が好適である。電離放射線で硬化する電離放射線硬化性樹脂は、紫外線硬化の場合は光重合開始剤、及び/又は光重合促進剤を添加し、エネルギーの高い電子線硬化の場合は添加しないで良く、また、適正な触媒が存在すれば、熱エネルギーでも硬化できる。
【0027】
ホログラム層の絵柄は、特に限定されないが、擬似連続絵柄とすることが好ましい。擬似連続絵柄はプレス型(スタンパという)を作成する際に、小さなレリーフ版の複数を、精度よく突合せて、つなぎ目を目立たなくしたり、つなぎ目を樹脂で埋めたりすればよい。このように、擬似連続絵柄とすることで、できるだけ大きな面積、又は好ましくは全面とすることもできる。ホログラム層の絵柄は、個別の絵柄でもよく、この場合には絵柄と、隣接した絵柄に同調した見当合わせマークを形成しておき、被転写体の所望の位置へ貼着すればよい。
【0028】
(反射層)
反射層4を、光を反射する金属等の材料から形成すると不透明タイプのホログラムを得ることができ、可視光透過性を有する材料から形成すると透明タイプのホログラムを得ることができる。なお、不透明な反射層をパターンで形成した場合は、反射層が積層されていない部分から、UV照射により蛍光インキ層を確認することが可能である。本発明では、反射層は不透明なものを使用することが、UV照射により蛍光インキ層の蛍光発色がパターンとして目立ち好ましい。
【0029】
本発明で使用される反射層は、パターンで形成されているが、そのパターンは、主に意匠的な観点から自由に決めることができ、星形、長方形等の幾何学形状の文字や記号、また幾何学形状以外の文字や記号であってもよく、任意の形状であってよい。また、パターンをホログラム層のホログラム形状に同調させたものとしてもよい。ここで、同調とは、例えば、ホログラム層によって現される絵柄と反射層のパターンにより現される絵柄とにより連続絵柄が形成されること、好ましくは両絵柄が一体となって1つの連続絵柄を形成していることをいう。
【0030】
反射層を形成するための金属材料としては、Al、Cr、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Ge、Mg、Sb、Pb、Cd、Bi、Sn、Se、In、Ga、もしくはRb等の金属、またはそれら金属の酸化物もしくは窒化物等を用いることができ、これらのうちから1種もしくは2種以上を組み合わせ用いることができる。これらの中でも、Al、Cr、Ni、Ag、またはAu等が特に好ましく、その膜厚としては1nm〜10,000nmが好ましく、より好ましくは2nm〜200nmである。
【0031】
また可視光透過性を有する反射層を形成するための材料としては、ホログラム層を構成する素材と光の屈折率の異なる透明材料を用いることができる。この透明材料の光の屈折率はホログラム層を形成する素材の光の屈折率より大きくてもよいし、小さくてもよいが、ホログラム層との光の屈折率の差が0.1以上であることが好ましく、より好ましくは0.5以上であり、特に好ましくは1.0以上である。好適に使用される素材の具体例としては、酸化チタン(TiO2)、硫化亜鉛(ZnS)、Cu・Al複合金属酸化物等を挙げることができる。なお、厚みが20nm以下の金属薄膜も透明性を有するので、ホログラム層とは光の屈折率の異なる透明層を構成する素材として使用できる。
【0032】
反射層を形成する方法としては、種々の方法が挙げられる。例えば、パターンマスクを介して、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などにより薄膜形成を行う方法、印刷法等を用いて、基材にパターンの反射層を直接することができる。また、反射層を基材の全面に形成した後、不要部分を除去する方法を用いることもできる。この反射層の不要部分を除去する方法としては、例えば、水洗い方式、エッチング方式等が挙げられる。
【0033】
水洗い方式は、ホログラム層の表面に、水溶性インキをパターン状に印刷で設け、さらに、その水溶性インキの印刷部の上に、例えば、蒸着等の手法を用いて金属層をベタ状に設ける。すなわち、水溶性インキを用いて、ホログラム層の表面をマスキングして、金属層を設ける。これを、水洗いすることにより、水溶性インキとこの上に設けられた金属層のみが洗浄除去され、水溶性インキの存在しなかった部分の金属層を残存させることにより、パターンを有する反射層を形成することができる。
【0034】
またエッチング方式は、ホログラム層の表面の全面に金属層を設けた後、耐酸性、耐アルカリ性の樹脂によりパターン層(レジスト層)を設け、エッチングする。この場合、レジスト層が存在する部分にパターン状に金属層を残存させることにより、パターンを有する反射層を形成することができる。
【0035】
(蛍光インキ層)
蛍光インキ層5は、蛍光物質と樹脂バインダとからなる組成物により、印刷形成することができる。蛍光物質は、無機蛍光物質と有機蛍光物質とに大別され、いずれのものでも使用できる。無機蛍光物質の例としては、タングステン酸カルシウム、タングステン酸マグネシウム、硫化カルシウム・ビスマス、硫化亜鉛・銀、硫化亜鉛・銅、硫化亜鉛・金・アルミニウム、バナジウム酸イットリウム・ユーロピウム、硫酸化イットリウム・テルビウム、硫酸化ランタン・テルビウム等が挙げられる。また、有機蛍光物質の例としては、ジアミノスチルベンゼンジスルホン酸誘導体、イミダゾール誘導体、クマリン誘導体、トリアゾール、カルバゾール、ピリジン、ナフタル酸、イミダゾロン等の誘導体、フルオレセイン、エオシン等である。
【0036】
また、樹脂バインダとして、酸化重合タイプ、光硬化タイプ、熱硬化タイプ等の公知のインキ用樹脂バインダを使用することができる。蛍光インキ層は、上記に説明した蛍光物質と樹脂バインダを主成分とする蛍光インキを用いて、公知のスクリーン印刷やグラビア印刷法で印刷すればよい。この蛍光インキ層は、紫外線ランプの照射により蛍光発色が視認でき、また読み取り機での読み取りも可能にしてもよい。
【0037】
(粘着層)
本発明のホログラム構造は、蛍光インキ層の上に粘着層6を設けてラベルとして、任意の物品に貼り付けることができる。粘着層を構成する粘着剤としては、公知の感圧で接着する粘着剤が適用できる。粘着剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、天然ゴム系、ブチルゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリクロロプレン、スチレン−ブタジエン共重合樹脂などの合成ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリロニトリル、炭化水素樹脂、アルキルフェノール樹脂、ロジン、ロジントリグリセリド、水素化ロジンなどのロジン系樹脂が適用できる。
【0038】
(剥離紙)
剥離紙7は公知のものでよく、例えば上質紙、コート紙、含浸紙、又はプラスチックフィルムなどの基材の片面に離型層を有している。該離型層としては、離型性を有する材料であれば、特に限定されないが、例えば、シリコーン樹脂、有機樹脂変性シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アミノアルキド樹脂、ポリエステル樹脂などがある。これらの樹脂は、エマルジョン型、溶剤型又は無溶剤型のいずれもが使用できる。
【実施例】
【0039】
次に実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。以下、特に断りのない限り、部又は%は質量基準である。
(実施例1)
まず、基材2として、厚さ25μmのルミラーFタイプ(東レ社製、ポリエステルフィルム商品名)を用いた。この一方の面へ、下記の電離放射線硬化性樹脂組成物をグラビアリバースコーターで乾燥後の厚さが2μmになるように、塗工し100℃で乾燥して、ホログラム層3を形成した。
【0040】
・<電離放射線硬化性樹脂組成物の作製手順>
まず、「電離放射線硬化性樹脂組成物M」は以下の手順で、生成した。
撹拌機、還流冷却器、滴下漏斗及び温度計を取り付けた反応器に、酢酸エチル206.1g及びイソホロンジイソシアネートの三量体(HULS社製品、VESTANAT T1890、融点110℃)133.5gを仕込み、80℃に昇温して溶解させた。溶液中に空気を吹き込んだのち、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.38g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(大阪有機化学工業社製品、ビスコート300)249.3g及びジブチル錫ジラウレート0.38gを仕込んだ。80℃で5時間反応させたのち酢酸エチル688.9gを添加して冷却した。該「電離放射線硬化性樹脂組成物M」と、造膜性樹脂(アクリル系オリゴマー)、反応性シリコーン、ポリエチレンワックス、光重合開始剤、及び溶媒を下記の組成で配合して電離放射線硬化性樹脂組成物を調製した。
【0041】
・<ホログラム層の電離放射線硬化性樹脂組成物>
「電離放射線硬化性樹脂組成物M」 25質量部
メタアクリレートオリゴマー(日本合成化学社製、商品名紫光6630B) 5質量部
反応性シリコーン(信越化学社製、商品名X−22−2445) 0.2質量部
ポリエチレンワックス(平均粒径2.0m) 0.3質量部
光重合開始剤(チバ社製、商品名イルガキュア907) 0.9質量部
酢酸エチル 70質量部
【0042】
該ホログラム層3面へ、スタンパを加圧(エンボス)してレリーフを賦形する。別途レーザ光を用いて作ったマスターホログラムから、2P法で複製したスタンパを複製装置のエンボスローラーに貼着して、150℃で相対するローラー間を、ローラー回転速度2.0m/min、ローラー圧5.0kgf/cmで加熱プレス(エンボス)して、微細な凹凸パターンからなるホログラムのレリーフを賦形させた。賦形後直ちに、高圧水銀灯で波長が200〜400nmの紫外線を照射して硬化させた。
【0043】
前記のレリーフホログラムの賦型された面に、シルク印刷用水溶性インキを用いて多色シルク印刷機によりホログラム層の絵柄と同調するように反射層を形成したい部分以外の全面に印刷を行った。その後、印刷面を含むホログラム層全面に、真空蒸着法により、Al蒸着を行った後に水洗いすると、水溶性インキ層上のAl蒸着層は水溶性インキ層とともに除去された。これによりホログラム層の絵柄と同調するようにパターン化された厚さ350Å(35nm)の反射層4が得られた。
【0044】
上記の形成された反射層4及び反射層の無い部分は、ホログラム層3の上に、図1に示すように、蛍光インキ層を、ベタで、シルクスクリーン印刷法で、厚さ2μmで形成して、実施例1のホログラム構造1を作製した。
【0045】
得られたホログラム構造1は、反射層がパターンで形成されているので、反射層の有無により、反射層の境界が鮮明となり、またホログラム層の絵柄と同調した反射層であり、ホログラム層と反射層との両絵柄が一体となって1つの連続絵柄を形成し、見た目のよいホログラムが得られた。さらに、反射層の隣接部には、紫外線照射により、蛍光インキ層からの蛍光が発色して、外観上、非常に美しく、また独自性が高く、偽造防止性の高いものであった。
【0046】
(実施例2)
上記の実施例1で作製したホログラム構造1で、蛍光インキ層5の上に下記条件にて、粘着層6、剥離紙7を順次積層して、実施例2のホログラム構造1を作製した。
下記組成の粘着剤を乾燥後の膜厚が25μmになるように、バーコーターで塗布し乾燥し、厚さ50μmの商品名SP−PET(トーセロ社製、軽剥離タイプの剥離紙)をラミネートして、ラベル形態のホログラム構造とした。
【0047】
・<粘着層組成物>
商品名ニッセツPE118(日本カーバイド社製、アクリル系粘着剤) 100質量部
メチルエチルケトン 40質量部
酢酸エチル 15質量部
商品名ニッセツCK101(日本カーバイド社製、イソシアネート架橋剤) 2質量部
【0048】
得られたホログラム構造1は、実施例1の場合と同様に、反射層の有無により、反射層の境界が鮮明であり、またホログラム層の絵柄と同調した反射層であり、見た目のよいホログラムが得られた。さらに、反射層の隣接部には、紫外線照射により、蛍光インキ層からの蛍光が発色して、外観上、非常に美しく、また独自性が高く、偽造防止性の高いものであった。さらに、任意の物品に粘着層を介して、ホログラム構造を貼り付けることができ、非常に有用なものであった。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明のホログラム構造1の一つの実施形態を示す概略の断面図である。
【図2】本発明のホログラム構造1の他の実施形態を示す概略の断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 ホログラム構造
2 基材
3 ホログラム層
4 反射層
5 蛍光インキ層
6 粘着層
7 剥離紙


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の面に、ホログラム層、反射層、蛍光インキ層が順次積層されたホログラム構造において、前記反射層がパターンで形成されていることを特徴とするホログラム構造。
【請求項2】
請求項1に記載するホログラム構造において、蛍光インキ層の上に粘着層を設けてラベルとして利用できることを特徴とするホログラム構造。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−139910(P2010−139910A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317917(P2008−317917)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】