説明

ホログラム記録媒体作製方法、ホログラム記録媒体およびホログラム記録媒体作製装置

【課題】マスターホログラム原版を用いて新たな記録媒体を作製する場合に、極力ノイズを低減した状態で新たな記録媒体を作製し、新たな記録媒体に目的の干渉縞を正確に記録するとともに、新たな記録媒体の再生時に再生エラーが生じるのを回避する。
【解決手段】作製するホログラム記録媒体33の干渉縞の最大多重度Sよりも小さい最大多重度M1、M2のマスターホログラム原版31・32を用い、各マスターホログラム原版31・32を順次交換しながらそれぞれに対して可干渉性の光を照射することにより、作製するホログラム記録媒体33に干渉縞を多重記録する。各マスターホログラム原版31・32は、最大多重度Sのマスターホログラム原版に比べて、隣り合う干渉縞とのノイズが元々少ない状態で干渉縞が記録されているので、各マスターホログラム原版31・32の個々に対して可干渉性の光を照射しても、これらから再生されるノイズ光は少ない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラム光記録メモリーなどのホログラム記録媒体を作製するホログラム記録媒体作製方法と、その作製方法によって作製されたホログラム記録媒体と、そのホログラム記録媒体を作製するためのホログラム記録媒体作製装置とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホログラム記録媒体であるホログラム光記録メモリーは、デジタル情報を2次元化して1枚のページデータとしたイメージ情報(ページ情報)を持つレーザー光(情報光)と、他のレーザー光(参照光)とを干渉させ、その干渉縞を体積ホログラムとして記録媒体に書き込むことによって作製されるものである。一般的には、この干渉縞を各ページデータごとに順次記録することにより、1枚の記録メディアが作製される。つまり、ページデータの数だけ複数回ホログラムを記録することにより、1枚の記録メディアの全領域にホログラムが記録される。
【0003】
近年では、このような記録メディアを複製する、すなわち、ある記録メディアに記録さされた記録情報と同一の記録情報を持つ記録メディア(ROM)を作製する手法が提案されている。例えば、非特許文献1では、情報が記録された1枚の記録メディアをマスターホログラム原版とし、このマスターホログラム原版と対物レンズ等の光学系を介して対向する位置に未記録の記録媒体を配置し、マスターホログラム原版にレーザー光を照射したときに再生される光(情報光および参照光)を未記録媒体に照射することにより、未記録媒体に干渉縞を記録し、複製を行うようにしている。
【0004】
【非特許文献1】H.Horimai et al., “Duplication Technology for Secured Read-Only Holographic Versatile Disk”, International Symposium on Optical Memory and Optical Data Storage, July 10-14, 2005, Hawaii, ISBN#1-55752-794-6
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ホログラム記録媒体においては、その記録容量を高める観点から、レーザー光の多重露光により、複数の干渉縞を多重記録することが一般的に行われている。しかし、このようなホログラム記録媒体では、ある干渉縞の記録情報には、これと隣り合う干渉縞(または同一位置の干渉縞)とのノイズがどうしても含まれてしまう。
【0006】
したがって、複数の干渉縞が多重記録されたホログラム記録媒体を1枚、マスターホログラム原版として用い、非特許文献1の手法で新たな記録媒体を作製しようとすると、マスターホログラム原版にレーザー光を照射したときに、マスターホログラム原版からは必要な光(記録情報を持つ光)の他に、上記ノイズに相当する光も多数発生する。そのため、そのようなノイズも併せて新たな記録媒体に記録されてしまう。その結果、新たな記録媒体に目的とした干渉縞を正確に記録できなかったり、新たな記録媒体の再生時に上記ノイズ光により再生エラーが生じやすいという問題が生ずる。
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、マスターホログラム原版を用いて新たな記録媒体を作製する場合でも、極力ノイズを低減した状態で新たな記録媒体を作製することができ、これによって、新たな記録媒体に目的の干渉縞を正確に記録できるとともに、新たな記録媒体の再生時に再生エラーが生じるのを回避できるホログラム記録媒体作製方法と、その作製方法によって作製されたホログラム記録媒体と、そのホログラム記録媒体を作製するホログラム記録媒体作製装置とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のホログラム記録媒体作製方法は、干渉縞が記録されたマスターホログラム原版に可干渉性の光を照射することによって得られる再生光を用いて、同一箇所に複数の干渉縞が多重記録されたホログラム記録媒体を作製するホログラム記録媒体作製方法であって、nを2以上の自然数とすると、マスターホログラム原版をn枚用い、各マスターホログラム原版の干渉縞の最大多重度をM1、M2、・・・Mn、作製するホログラム記録媒体の干渉縞の最大多重度をSとすると、M1<S、M2<S、・・・Mn<Sとなる最大多重度で干渉縞が記録された複数枚のマスターホログラム原版を順次交換しながらそれぞれに対して可干渉性の光を照射することにより、作製するホログラム記録媒体に干渉縞を多重記録することを特徴としている。
【0009】
上記の作製方法では、マスターホログラム原版に可干渉性の光を照射することによって得られる再生光を用いて、作製するホログラム記録媒体に干渉縞が記録される。例えば、マスターホログラム原版に可干渉性の光として参照光を照射したときに、マスターホログラム原版から記録情報を持つ情報光が上記再生光として再生されると、この情報光と上記参照光とが干渉することにより、作製するホログラム記録媒体に干渉縞が記録される。また、マスターホログラム原版に可干渉性の光として参照光(第2の参照光)を照射することにより、記録情報を持つ情報光と上記参照光とは異なる参照光(第1の参照光)とが上記再生光として再生される場合には、上記情報光と上記異なる参照光とが干渉することにより、作製するホログラム記録媒体に干渉縞が記録される。
【0010】
ここで、本発明においては、マスターホログラム原版を用いて新たなホログラム記録媒体を作製する際に、作製するホログラム記録媒体の最大多重度Sよりも少ない最大多重度M1、M2、・・・Mnで干渉縞が記録されたマスターホログラム原版を複数枚(n枚)用いる。そして、各マスターホログラム原版を順次交換しながらそれぞれに対して可干渉性の光を照射する。各マスターホログラム原版の最大多重度M1、M2、・・・Mnは、作製するホログラム記録媒体の最大多重度Sよりも低いので、各マスターホログラム原版は、作製するホログラム記録媒体の最大多重度Sと同じ最大多重度のマスターホログラム原版に比べて、隣り合う干渉縞(または同一位置の干渉縞)とのノイズが元々少ない状態で干渉縞が記録されているものと言える。したがって、このような複数枚のマスターホログラム原版の個々に対して可干渉性の光を照射しても、各マスターホログラム原版から再生されるノイズ光は少ない。
【0011】
よって、最大多重度がM1<S、M2<S、・・・Mn<Sとなる複数枚のマスターホログラム原版を用い、各マスターホログラム原版を順次交換しながらそれぞれに対して可干渉性の光を照射して新たなホログラム記録媒体を作製することにより、新たなホログラム記録媒体において極力ノイズを低減した状態で同一箇所に複数の干渉縞を最大多重度Sで多重記録することができる。その結果、新たなホログラム記録媒体に目的の干渉縞を正確に記録することができるとともに、新たなホログラム記録媒体の再生時に再生エラーが生じるのを回避することができる。
【0012】
ここで、本発明においては、nは、2以上S以下の自然数であることが望ましい。2枚以上S枚以下の範囲で用いるマスターホログラム原版の枚数を設定すれば、各マスターホログラム原版の最大多重度を低くして、再生されるノイズ光を確実に低減することができる。また、マスターホログラム原版の枚数を上記範囲で極力少なくすれば、その交換回数を減らすことができるので、新たなホログラム記録媒体を簡便に作製することができる。
【0013】
また、本発明においては、同一のマスターホログラム原版で互いに異なる位置に記録されている複数の干渉縞は、波長が一定の可干渉性の光の照射により当該マスターホログラム原版に記録されていてもよい。
【0014】
この場合、シフト多重方式、角度多重方式、波長多重方式のいずれの方式でマスターホログラム原版が作製されていても、例えば、光束径の広い可干渉性の光を上記一定の波長でマスターホログラム原版に照射することにより、マスターホログラム原版に記録された複数の干渉縞と同じ記録情報を持つ複数の干渉縞を一度にホログラム記録媒体に記録することができ、簡便にホログラム記録媒体を作製することができる。
【0015】
また、本発明においては、同一のマスターホログラム原版で互いに異なる位置に記録されている複数の干渉縞は、入射角度が一定の可干渉性の光の照射により当該マスターホログラム原版に記録されていてもよい。
【0016】
この場合、シフト多重方式、角度多重方式、波長多重方式のいずれの方式でマスターホログラム原版が作製されていても、例えば、光束径の広い可干渉性の光を上記一定の入射角度でマスターホログラム原版に照射することにより、マスターホログラム原版に記録された複数の干渉縞と同じ記録情報を持つ複数の干渉縞を一度にホログラム記録媒体に記録することができ、簡便にホログラム記録媒体を作製することができる。
【0017】
また、本発明においては、各マスターホログラム原版において、複数の干渉縞は、互いにオーバーラップせずに記録されていてもよい。この場合、各マスターホログラム原版においては、同一箇所に複数の干渉縞が多重記録されていないので、各マスターホログラム原版から再生されるノイズ光をより一層確実に低減することができる。
【0018】
また、本発明においては、各マスターホログラム原版において、複数の干渉縞は、1つのページデータを記録した干渉縞スポットと隣り合う1つのページデータを記録した干渉縞スポットとの中心間距離が、そのスポット径以下となるよう記録されていてもよい。このように、いわゆるシフト多重方式で複数の干渉縞が多重記録された各マスターホログラム原版を用いても、M1<S、M2<S、・・・Mn<Sである限り、新たなホログラム記録媒体に目的の干渉縞を正確に記録することができるとともに、新たなホログラム記録媒体の再生時に再生エラーが生じるのを回避することができる。
【0019】
このとき、各マスターホログラム原版において、複数の干渉縞は、一定の周期で記録されていてもよい。この場合、各マスターホログラム原版を用いて、一定周期ごとの複数の干渉縞を記録したホログラム記録媒体を作製することができる。
【0020】
また、本発明においては、各マスターホログラム原版において、同一箇所に、可干渉性の光の入射角度が互いに異なる複数のページデータが記録されていてもよい。このように、いわゆる角度多重方式で複数の干渉縞が多重記録された各マスターホログラム原版を用いても、M1<S、M2<S、・・・Mn<Sである限り、新たなホログラム記録媒体に目的の干渉縞を正確に記録することができるとともに、新たなホログラム記録媒体の再生時に再生エラーが生じるのを回避することができる。
【0021】
また、本発明においては、各マスターホログラム原版への干渉縞の記録時に照射される可干渉性の光の入射角度は、各マスターホログラム原版間で異なっていてもよい。この場合、ホログラム記録媒体の作製時には、用いるマスターホログラム原版ごとに可干渉性の光の入射角度を変化させて、作製するホログラム記録媒体に複数の干渉縞を簡便に多重記録することができる。
【0022】
また、本発明においては、各マスターホログラム原版において、同一箇所に、可干渉性の光の波長が互いに異なる複数のページデータが記録されていてもよい。このように、いわゆる波長多重方式で複数の干渉縞が多重記録された各マスターホログラム原版を用いても、M1<S、M2<S、・・・Mn<Sである限り、新たなホログラム記録媒体に目的の干渉縞を正確に記録することができるとともに、新たなホログラム記録媒体の再生時に再生エラーが生じるのを回避することができる。
【0023】
また、本発明において、各マスターホログラム原版への干渉縞の記録時に照射される可干渉性の光の波長は、各マスターホログラム原版間で異なっていてもよい。この場合、ホログラム記録媒体の作製時には、用いるマスターホログラム原版ごとに可干渉性の光の波長を変化させて、作製するホログラム記録媒体に複数の干渉縞を簡便に多重記録することができる。
【0024】
また、本発明においては、各マスターホログラム原版を交換するごとに、マスターホログラム原版を未記録のホログラム記録媒体と重ね合わせて近接配置し、上記可干渉性の光としての参照光を上記マスターホログラム原版に照射することにより、上記マスターホログラム原版から記録情報を持つ情報光を上記再生光として再生し、上記情報光と上記参照光とを干渉させることにより、上記ホログラム記録媒体に干渉縞を記録するようにしてもよい。
【0025】
マスターホログラム原版に参照光を照射したときに、マスターホログラム原版から情報光が再生されるということは、マスターホログラム原版には、情報光と参照光との2光束の干渉によって干渉縞が記録されていると言える。この場合、例えば、3光束(情報光と複数の参照光)の干渉によって干渉縞が記録されたものと比べて、マスターホログラム原版に記録されているノイズは少ない。
【0026】
よって、各マスターホログラム原版を交換するごとに、マスターホログラム原版を未記録のホログラム記録媒体と重ね合わせて近接配置し、可干渉性の光としての参照光を上記マスターホログラム原版に照射することにより、3光束を用いて作製されるマスターホログラム原版を用いてホログラム記録媒体を作製する場合よりも、作製するホログラム記録媒体にノイズの少ない状態で複数の干渉縞を記録することができる。
【0027】
また、本発明においては、各マスターホログラム原版を交換するごとに、マスターホログラム原版を未記録のホログラム記録媒体と重ね合わせて近接配置し、上記可干渉性の光としての参照光(第2の参照光)を上記マスターホログラム原版に照射することにより、上記マスターホログラム原版から記録情報を持つ情報光と、上記参照光とは異なる参照光(第1の参照光)とを上記再生光として再生し、上記情報光と上記異なる参照光とを干渉させることにより、上記ホログラム記録媒体に干渉縞を記録するようにしてもよい。
【0028】
マスターホログラム原版に第2の参照光を照射したときに、マスターホログラム原版から情報光と第1の参照光とが再生されるということは、マスターホログラム原版には、情報光、第1の参照光および第2の参照光の3光束の干渉によって干渉縞が記録されていると言える。この場合、例えば、2光束(情報光と参照光)の干渉によって干渉縞が記録されたものと比べると、マスターホログラム原版に記録されているノイズは多いものと思われる。
【0029】
しかし、本発明では、上述したように、最大多重度がM1<S、M2<S、・・・Mn<Sとなる複数枚のマスターホログラム原版、すなわち、ノイズが元々少ない状態で干渉縞が記録された複数枚のマスターホログラム原版を用いるので、上記のように3光束を用いて作製されるマスターホログラム原版を用いてホログラム記録媒体を作製する場合でも、作製するホログラム記録媒体にノイズの少ない状態で複数の干渉縞を記録することができる。つまり、ホログラム記録媒体を作製するにあたり、M<Sとなる最大多重度で干渉縞が記録された複数枚のマスターホログラム原版を用いる本発明の作製方法は、3光束で作製されるマスターホログラム原版を用いてホログラム記録媒体を作製する場合に非常に有効なものとなる。
【0030】
また、本発明においては、上記可干渉性の光として、上記マスターホログラム原版への干渉縞の記録時と同じ波長の光を用いることが望ましい。この場合、マスターホログラム原版が波長多重方式で作製されたものであっても、そのマスターホログラム原版から再生光を確実に得ることができ、この再生光を用いてホログラム記録媒体に干渉縞を確実に記録することができる。
【0031】
また、本発明においては、上記可干渉性の光として、上記マスターホログラム原版への干渉縞の記録時と同じ入射角度の光を用いることが望ましい。この場合、マスターホログラム原版が角度多重方式で作製されたものであっても、そのマスターホログラム原版から再生光を確実に得ることができ、この再生光を用いてホログラム記録媒体に干渉縞を確実に記録することができる。
【0032】
また、本発明においては、(ホログラム記録媒体作製時には、)1枚のマスターホログラム原版に対して、その全面に可干渉性の光を一度だけ照射するようにしてもよい。この場合、各マスターホログラム原版に対して一度の光照射で、作製するホログラム記録媒体に複数の干渉縞を簡便に記録することができる。
【0033】
また、本発明においては、(ホログラム記録媒体作製時には、)1枚のマスターホログラム原版を複数の領域に分割し、各領域ごとに可干渉性の光を照射するようにしてもよい。この場合、マスターホログラム原版において、一度に露光される干渉縞の数が少ないので、ノイズ光の発生をより低減することができる。
【0034】
また、本発明においては、マスターホログラム原版およびホログラム記録媒体を一体として、参照光に対して連続的に移動させながら上記ホログラム記録媒体に干渉縞を記録するようにしてもよい。この場合、1枚のページデータごとに干渉縞を記録する一般的なホログラム記録方法に比べて、同時に記録する干渉縞の数が多いので、ホログラム記録媒体を高速(短時間)で作製することができる。
【0035】
また、本発明においては、マスターホログラム原版およびホログラム記録媒体は同心円状の形状であり、上記両者を一体として、参照光に対して同心円の中心を回転中心として連続的に回転させながら上記ホログラム記録媒体に干渉縞を記録するようにしてもよい。このようにマスターホログラム原版およびホログラム記録媒体が同心円状の形状であっても、1枚のページデータごとに干渉縞を記録する一般的なホログラム記録方法に比べて、ホログラム記録媒体を高速(短時間)で作製することができる。
【0036】
また、本発明においては、作製するホログラム記録媒体に複数の干渉縞を体積位相型のホログラムとして記録するようにしてもよい。この場合、複数の干渉縞を高密度で多重記録することができる。
【0037】
また、本発明においては、上記ホログラムの感光材料として、フォトポリマーを用いるようにしてもよい。この場合、ホログラム記録媒体を安価に作製することができる。
【0038】
また、本発明のホログラム記録媒体は、上述した本発明のホログラム記録媒体作製方法により、複数の干渉縞が多重記録されて作製されていることを特徴としている。この構成によれば、作製されたホログラム記録媒体において、極力ノイズを低減した状態で同一箇所に複数の干渉縞が正確に多重記録されているので、その再生時に再生エラーが生じるのを回避することができる。
【0039】
また、本発明のホログラム記録媒体作製装置は、上述した本発明のホログラム記録媒体作製方法により、作製するホログラム記録媒体に複数の干渉縞を多重記録することを特徴としている。この構成によれば、極力ノイズを低減した状態で同一箇所に複数の干渉縞を正確に多重記録したホログラム記録媒体を作製することができるとともに、作製されたホログラム記録媒体の再生時に再生エラーが生じるのを回避することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、最大多重度がM1<S、M2<S、・・・Mn<Sとなる複数枚のマスターホログラム原版を用い、各マスターホログラム原版を順次交換しながらそれぞれに対して可干渉性の光を照射して新たなホログラム記録媒体を作製するので、新たなホログラム記録媒体において極力ノイズを低減した状態で複数の干渉縞を多重記録することができる。その結果、目的の干渉縞を正確に記録することができるとともに、新たなホログラム記録媒体の再生時に再生エラーが生じるのを回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
本発明は、マスターホログラム原版を用いて新たなホログラム記録媒体を作製する際に、作製するホログラム記録媒体の干渉縞の多重度よりも低い多重度で干渉縞が記録されたマスターホログラム原版を複数枚作製し、これらを用いてホログラム記録媒体を作製する点に特徴があるが、個々のマスターホログラム原版の詳細については後述することとし、まず、マスターホログラム原版の作製方法と、それを用いたホログラム記録媒体の作製方法とについて説明する。
【0042】
(1.マスターホログラム原版の作製方法)
図2は、マスターホログラム原版作製装置の概略の構成を示す説明図である。この装置は、例えば半導体レーザーからなる光源1と、アイソレータ2と、スペーシャルフィルタ3と、コリミネートレンズ4と、ビームスプリッタ5と、ミラー6・7と、空間光変調素子8と、フーリエ変換レンズ9と、リレーレンズ10とを有している。
【0043】
光源1から可干渉性の光が出射されると、この光はアイソレータ2を介してスペーシャルフィルタ3およびコリミネートレンズ4により整形され、ビームスプリッタ5で2光束に分岐される。上記のアイソレータ2を用いることにより、ビームが逆方向に伝播するのを防ぐことができ、特に本実施形態のように、光源1として半導体レーザーを用いる場合に有効である。
【0044】
ビームスプリッタ5にて分岐された2光束のうちの一方は、ミラー6で反射された後、空間光変調素子8により変調されて2次元ページデータ8a(図3参照)の情報を持つ情報光となり、フーリエ変換レンズ9を通ってマスターホログラム原版11のディスク面に到達する。なお、空間光変調素子8は、液晶表示素子やDMD(digital micromirror device;米国テキサスインスツルメント社製)で構成することが可能である。
【0045】
一方、ビームスプリッタ5にて分岐された2光束のうちの他方は、ミラー7で反射された後、リレーレンズ10を通り、参照光としてマスターホログラム原版11のディスク面に到達する。上記ディスク面では、情報光および参照光の2光束が干渉することにより、その干渉縞が記録される。このとき、シフト多重方式、角度多重方式、波長多重方式などの各多重方式を用いて干渉縞を複数回記録することで、マスターホログラム原版11が作製される。
【0046】
例えば、図3は、シフト多重方式により、マスターホログラム原版11に複数の干渉縞12を多重記録する様子を模式的に示す説明図である。また、図4は、複数の干渉縞12が多重記録されているマスターホログラム原版11の断面図を示している。シフト多重方式により、マスターホログラム原版11に複数の干渉縞12を多重記録する場合には、各干渉縞12の記録ごとにマスターホログラム原版11をほんの少しずつシフトさせる。これにより、干渉縞12の記録される位置(記録ビット)が、マスターホログラム原版11のディスク面の面内方向において互いにずれて重なる。したがって、より多くの情報を高密度にマスターホログラム原版11に記録することが可能となる。
【0047】
なお、角度多重方式により、マスターホログラム原版11に複数の干渉縞を多重記録する場合には、各干渉縞の記録ごとに、これに照射する参照光の入射角度を変化させることにより、同一箇所に複数の干渉縞を多重記録するが、この点については後述する実施の形態2で説明する。また、波長多重方式により、マスターホログラム原版11に複数の干渉縞を多重記録する場合には、各干渉縞の記録ごとに、光源1から出射されるレーザー光の波長を変化させることにより、同一箇所に複数の干渉縞を多重記録するが、この点については後述する実施の形態3で説明する。
【0048】
(2.ホログラム記録媒体の作製方法)
次に、ホログラム記録媒体の作製方法について説明する。図5は、ホログラム記録媒体作製装置の概略の構成を示す説明図である。この装置は、例えば半導体レーザーからなる光源21と、アイソレータ22と、スペーシャルフィルタ23と、コリミネートレンズ24と、ミラー25と、ビームエキスパンダ26とを有している。なお、アイソレータ22、スペーシャルフィルタ23、コリミネートレンズ24、ミラー25およびビームエキスパンダ26は、光源21から出射される可干渉性の光をマスターホログラム原版11に導く光学系27を構成している。
【0049】
この装置を用いてホログラム記録媒体28を作製する際には、まず、上述のようにして作製したマスターホログラム原版11に対して、未記録媒体であるホログラム記録媒体28を密着させ、光学系27の所定の位置に配置する。光源21から可干渉性の光が出射されると、この光はアイソレータ22を介してスペーシャルフィルタ23およびコリミネートレンズ24により整形され、ミラー25で反射された後、ビームエキスパンダ26でその光束径が拡大され、参照光としてマスターホログラム原版11に入射する。
【0050】
このとき、上記参照光を、マスターホログラム原版11の作製時に用いる参照光と同じ入射角度で、またはマスターホログラム原版11の作製時に用いる参照光の入射方向とは反対方向からマスターホログラム原版11に入射させる。すると、マスターホログラム原版11からは記録情報を持つ情報光が再生光として出射され、この情報光と上記参照光とが干渉することにより、ホログラム記録媒体28に干渉縞が記録される。この点について、より具体的に説明する。
【0051】
図6および図7は、マスターホログラム原版11が透過型である場合の、マスターホログラム原版11およびホログラム記録媒体28の位置関係を示す断面図である。マスターホログラム原版11が透過型である場合、未記録媒体であるホログラム記録媒体28は、マスターホログラム原版11に対して参照光の入射側とは逆側に配置される。なお、図示はしないが、マスターホログラム原版11が反射型である場合、ホログラム記録媒体28は、マスターホログラム原版11に対して参照光の入射側に配置される。
【0052】
参照光として、マスターホログラム原版11の作製時に用いた参照光と同一入射角度の光(図6参照)、あるいは、上記参照光と逆向きの光(図7参照)を用い、これをマスターホログラム原版11に照射することにより、マスターホログラム原版11から情報光を再生することができる。したがって、再生された情報光と上記参照光との2光束干渉により、マスターホログラム原版11に記録された情報と同一の情報を持つ複数の干渉縞29をホログラム記録媒体28に記録することができる。
【0053】
本実施形態のように、ビームエキスパンダ26によって参照光の光束径を拡大することにより、1枚のマスターホログラム原版11に対して、その全面に可干渉性の光(参照光)を一度だけ照射するようにすることができる。これにより、一度に複数の干渉縞29をホログラム記録媒体28に記録することができ、簡便(容易、高速)にホログラム記録媒体28を作製することができるとともに、ホログラム記録媒体28を容易に大量生産することができる。
【0054】
また、本実施形態では、複数の干渉縞29を、上述した2光束の干渉によって形成される体積位相型のホログラムとしてホログラム記録媒体28に記録している。体積位相型のホログラムでは、複数の干渉縞29を屈折率変調の形で記録するので、複数の干渉縞29を高密度に多重記録することができる。
【0055】
ここで、体積位相型のホログラムの感光材料としては、液晶系材料やフォトリフラクティブ材料、相変化型材料など種々挙げられるが、フォトポリマーであるのが最も望ましい。フォトポリマーを用いることにより、ホログラム記録媒体28を安価に作製することができる。また、フォトポリマーには、多くの波長に感度を持たせることができるので、特に後述する波長多重方式で複数の干渉縞29を記録する場合に有利となる。また、ホログラム感光材料としてフォトポリマーを用いた場合、記録情報の書き換えは不可であるが、その分、経時安定性がよい。さらに、フォトポリマーは、材料のバリエーションが豊富であり、高感度なもの、低収縮なものなどいろいろある。したがって、仕様に応じた材料を適切に選択することができるという利点もある。
【0056】
なお、媒体の厚さや屈折率、参照光の入射角や波長などにより、マスターホログラム原版11とホログラム記録媒体28とでは、記録されるホログラム干渉縞が異なる。したがって、実際には、ホログラム記録媒体28に最終的に必要とする干渉縞が記録されるように、上記のパラメータを適切に設定してマスターホログラム原版11を作製する必要がある。
【0057】
なお、以上では、マスターホログラム原版作製装置およびホログラム記録媒体作製装置を別々の装置としたが、これらは構成上共通部分が多いので、これらをまとめて同一の装置としてもよい。また、1枚のマスターホログラム原版11またはホログラム記録媒体28に対して露光光学系を複数用い、複数の領域に干渉縞を一度に記録して高速化を図ってもよい。
【0058】
(3.マスターホログラム原版について)
次に、本発明の最も特徴的な部分であるマスターホログラム原版について説明する。
図1は、本実施形態で用いるマスターホログラム原版31・32と、そのマスターホログラム原版31・32を用いて作製されるホログラム記録媒体33とを模式的に示す平面図である。本実施形態では、マスターホログラム原版として、2枚のマスターホログラム原版31・32を用いている。個々のマスターホログラム原版31・32の作製方法については、上述したマスターホログラム原版11の作製方法をそのまま適用することができる。つまり、上述したマスターホログラム原版11の作製方法において、マスターホログラム原版11をマスターホログラム原版31・32のそれぞれに置き換えて考えればよい。
【0059】
マスターホログラム原版31においては、上述したレーザー光の2光束干渉により、複数の干渉縞(例えば干渉縞41・43・45・47)が記録されている。ここでは、ある干渉縞においてこれと隣り合う干渉縞とのノイズが含まれるのを極力低減するために、複数の干渉縞は互いにオーバーラップせずに記録されているものとする。それゆえ、マスターホログラム原版31の最大多重度をM1とすると、M1=1である。
【0060】
なお、多重度とは、記録媒体の同一箇所に多重されている干渉縞の数、すなわち、記録媒体の同一位置に異なる干渉縞がいくつ記録されているかを示す数(自然数)を指し、最大多重度とは、1つの記録媒体に干渉縞が多重されている部分が複数ある場合に、多重度の最大値を指すものとする。
【0061】
一方、マスターホログラム原版32においては、同じく上述したレーザー光の2光束干渉により、複数の干渉縞(例えば干渉縞42・44・46)が記録されている。ここでは、上記と同様に、ある干渉縞においてこれと隣り合う干渉縞とのノイズが含まれるのを極力低減するために、複数の干渉縞は互いにオーバーラップせずに記録されているものとする。それゆえ、マスターホログラム原版32の最大多重度をM2とすると、M2=1である。
【0062】
また、本実施形態では、同一のマスターホログラム原版31で互いに異なる位置に記録されている複数の干渉縞41・43・45・47は、波長および入射角度が一定の可干渉性の光の照射によりマスターホログラム原版31に記録されている。同様に、同一のマスターホログラム原版32で互いに異なる位置に記録されている複数の干渉縞42・44・46は、波長および入射角度が一定の可干渉性の光の照射によりマスターホログラム原版32に記録されている。
【0063】
本実施形態では、このような複数枚のマスターホログラム原版31・32を用い、ホログラム記録媒体33を作製している。このときのホログラム記録媒体33の作製方法は、上述したホログラム記録媒体28の作製方法を適用することができる。
【0064】
つまり、上述したホログラム記録媒体28の作製方法において、ホログラム記録媒体28をホログラム記録媒体33に置き換え、マスターホログラム原版11をマスターホログラム原版31・32のそれぞれに置き換えればよい。ただし、マスターホログラム原版31・32を順次交換しながら、その交換ごとにマスターホログラム原版31または32を未記録のホログラム記録媒体33と重ね合わせて近接配置する。そして、マスターホログラム原版31・32のそれぞれに対して光源21から可干渉性の光(参照光)を照射することにより、マスターホログラム原版31に記録されている複数の干渉縞41・43・45・47と、マスターホログラム原版32に記録されている複数の干渉縞42・44・46とをホログラム記録媒体33に多重記録する。なお、上記参照光は、各マスターホログラム原版31・32への干渉縞41〜47の記録時に用いた参照光と同じ光である。
【0065】
図8(a)ないし図8(c)は、それぞれ、マスターホログラム原版31・32、ホログラム記録媒体33の模式的な断面図を示している。上記のようにしてホログラム記録媒体33に複数の干渉縞41〜47を多重記録することにより、ホログラム記録媒体33の最大多重度Sは、例えば2となっている。つまり、作製するホログラム記録媒体33の最大多重度Sよりも低い最大多重度M1、M2のマスターホログラム原版31・32を用いても、ホログラム記録媒体33に複数の干渉縞(干渉縞41〜47)を最大多重度Sで多重記録することができる。
【0066】
以上のように、本実施形態では、マスターホログラム原版31・32の最大多重度をM(Mは自然数)、作製するホログラム記録媒体33の最大多重度をS(Sは自然数)としたときに、M<Sとなる最大多重度でそれぞれ干渉縞が記録された複数枚のマスターホログラム原版31・32を用いている。最大多重度Mのマスターホログラム原版31・32は、最大多重度Sのマスターホログラム原版に比べて、多重度が低い分だけ隣り合う干渉縞とのノイズが元々少ない状態で干渉縞が記録されていると言える。したがって、マスターホログラム原版31・32の個々に対して可干渉性の光を照射しても、各マスターホログラム原版31・32から再生されるノイズ光は、最大多重度Sのマスターホログラム原版を用いる場合に比べて少ない。
【0067】
したがって、このような元々ノイズの少ない各マスターホログラム原版31・32を順次交換しながらそれぞれに対して可干渉性の光を照射することにより、ホログラム記録媒体33において極力ノイズを低減した状態で同一箇所に複数の干渉縞を多重記録することができる。その結果、ホログラム記録媒体33に目的の干渉縞を正確に記録することができるとともに、ホログラム記録媒体33の再生時に再生エラーが生じるのを回避することができる。
【0068】
ところで、用いるマスターホログラム原版の枚数を少なくすれば、その交換回数も少なくなるので、ホログラム記録媒体33の作製に要するトータルの時間がより短くなる。つまり、より短時間で未記録のホログラム記録媒体33に全ての干渉縞を記録することできる。一方、用いるマスターホログラム原版の枚数を多くすれば、個々のマスターホログラム原版の最大多重度を低くすることができ、可干渉性の光の照射時に個々のマスターホログラム原版からノイズ光が発生するのを抑制できる。したがって、これらのことを考慮すると、最適なマスター原版の枚数は、2枚以上S枚以下の範囲で設定されればよいと言える。ただし、この場合であっても、n枚のマスターホログラム原版の個々の最大多重度をM1、M2、・・・Mnとすれば、M1<S、M2<S、・・・Mn<Sである。
【0069】
特に、本実施形態のように、作製するホログラム記録媒体33の最大多重度Sと同じ枚数Sのマスターホログラム原版31・32を用いる、つまり、複数の干渉縞が互いにオーバーラップせずに記録されており、全く多重記録されていない(多重度1の)マスターホログラム原版31・32を用いることにより、最もノイズ光の発生を抑制してホログラム記録媒体33を作製することができる。
【0070】
また、本実施形態では、同一のマスターホログラム原版(例えばマスターホログラム原版31)で互いに異なる位置に記録されている複数の干渉縞(例えば干渉縞41・43・45・47)は、波長および入射角度が一定の可干渉性の光の照射により上記マスターホログラム原版に記録されている。これにより、光束径の広い参照光を一定の波長および入射角度でマスターホログラム原版に照射すれば、マスターホログラム原版と同じ記録情報を持つ複数の干渉縞を一度にホログラム記録媒体33に記録することができる。したがって、簡便にホログラム記録媒体33を作製することができる。
【0071】
また、本実施形態では、各マスターホログラム原版31・32を作製するにあたり、情報光と参照光との2光束を用いて干渉縞を記録しており、このようにして作製された各マスターホログラム原版31・32を用いてホログラム記録媒体33を作製している。2光束を用いて作製される各マスターホログラム原版31・32は、例えば3光束(情報光と複数の参照光)を用いて作製されるマスターホログラム原版に比べて、干渉に用いる光の数が少ない分だけ、記録されるノイズも少ない。
【0072】
したがって、2光束干渉で作製される各マスターホログラム原版31・32を用いてホログラム記録媒体33を作製することにより、3光束干渉で作製される複数のマスターホログラム原版を用いてホログラム記録媒体を作製する場合に比べて、ノイズの少ない状態で複数の干渉縞をホログラム記録媒体33に記録することができる。
【0073】
ところで、本実施形態では、マスターホログラム原版31・32の最大多重度M1、M2は、それぞれ1としたが、作製するホログラム記録媒体33の最大多重度Sの値によっては、2以上であってもよく、また、マスターホログラム原版31・32間で異なっていてもよい。
【0074】
例えば、図9は、各マスターホログラム原版31・32およびホログラム記録媒体33の他の例を模式的に示す平面図である。同図においては、各マスターホログラム原版31・32の複数の干渉縞は、1つのページデータを記録した干渉縞スポットと隣り合う1つのページデータを記録した干渉縞スポットとの中心間距離Dが、そのスポット径L以下となるよう記録されている。各マスターホログラム原版31・32において、複数の干渉縞がこのような状態で記録されていれば、各マスターホログラム原版31・32の最大多重度M1、M2は、2以上となり得ることになり、また、マスターホログラム原版31・32間で異なる値ともなり得る。ただし、同図においても、M1<S、M2<Sとする。
【0075】
このような場合であっても、最大多重度M1、M2が最大多重度Sよりも小さいことにより、各マスターホログラム原版31・32では、最大多重度Sのマスターホログラム原版に比べて、複数の干渉縞がノイズの少ない状態で記録されていることに変わりはない。それゆえ、シフト多重方式で複数の干渉縞が多重記録された各マスターホログラム原版31・32を用いても、ホログラム記録媒体33の同一箇所に複数の干渉縞を正確に多重記録することができるとともに、ホログラム記録媒体33の再生時に再生エラーが生じるのを回避することができる。
【0076】
このとき、各マスターホログラム原版31・32において、複数の干渉縞は、一定の周期(ピッチ)で記録されていてもよい。この場合は、各マスターホログラム原版31・32を用いて、一定周期ごとの複数の干渉縞をホログラム記録媒体33に記録することができる。
【0077】
ところで、作製するホログラム記録媒体33の最大多重度Sと、用いるマスターホログラム原版31・32の最大多重度M1、M2との関係は、S=M1+M2でなくてもよい。例えば、図10は、各マスターホログラム原版31・32および作製するホログラム記録媒体33の異なる領域における多重度と、そのときの最大多重度とを一例として示している。
【0078】
同図のように、マスターホログラム原版31の第1〜第3の領域に記録されている干渉縞の多重度が、それぞれ2、1、3であり、マスターホログラム原版32の第1〜第3の領域に記録されている干渉縞の多重度が、それぞれ1、5、2であるとすると、作製するホログラム記録媒体33の第1〜第3の領域に記録されている干渉縞の多重度は、各マスターホログラム原版31・32の対応する領域の多重度をそれぞれ足し合わせた3、6、5となる。しかし、各マスターホログラム原版31・32および作製するホログラム記録媒体33の最大多重度M1、M2およびSは、それぞれ3、5、6であり、S=M1+M2とはなっていない。この場合であっても、M1<S、M2<Sであることには変わりなく、それゆえ、作製するホログラム記録媒体33にノイズを極力低減した状態で干渉縞を多重記録することができる。
【0079】
なお、本実施形態では、M<Sとなる最大多重度で干渉縞が記録された透過型の複数枚のマスターホログラム原版を用いて、透過型のホログラム記録媒体を作製する場合について説明したが、M<Sとなる最大多重度で干渉縞が記録された反射型の複数枚のマスターホログラム原版を用いて、反射型のホログラム記録媒体も同様に作製することができ、この場合でも本実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0080】
なお、本発明のホログラム記録媒体作製装置は、以下のように表現することもできる。すなわち、本発明のホログラム記録媒体作製装置は、可干渉性の光を出射する光源と、干渉縞が記録されたマスターホログラム原版に上記可干渉性の光を導く光学系とを備え、上記可干渉性の光を上記マスターホログラムに照射することによって得られる再生光を用いて、同一箇所に複数の干渉縞が多重記録されたホログラム記録媒体を作製するホログラム記録媒体作製装置であって、nを2以上の自然数とし、マスターホログラム原版をn枚用いたときに、上記光源は、順次交換される各マスターホログラム原版のそれぞれに対して可干渉性の光を照射し、各マスターホログラム原版の干渉縞の最大多重度をM1、M2、・・・Mn、作製するホログラム記録媒体の干渉縞の最大多重度をSとすると、M1<S、M2<S、・・・Mn<Sとなる最大多重度で、各マスターホログラム原版に干渉縞が記録されている。
【0081】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、実施の形態1と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。本実施形態では、角度多重方式で作製された複数枚のマスターホログラム原版を用いてホログラム記録媒体を作製する方法について説明する。
【0082】
一般的に、角度多重方式では、空間光変調素子から出射される情報光と、これとは別経路で導かれる参照光とを干渉させる際に、参照光の入射角度を少しずつ変化させる。これにより、マスターホログラム原版の同一位置(記録ビット)に複数の干渉縞を記録することができ、より多くの情報(ページデータ)を高密度に記録することが可能となる。
【0083】
しかし、このように、マスターホログラム原版の同一位置に、参照光の入射角度が異なる多くの干渉縞が多重記録されていると、このマスターホログラム原版にある入射角度で参照光を照射したときに、同一位置の異なる干渉縞とのノイズ光が多く発生する。
【0084】
そこで、本実施形態では、角度多重方式によりM<Sとなる最大多重度で干渉縞が記録された複数枚のマスターホログラム原版を用い、作製するホログラム記録媒体に複数の干渉縞を多重記録する。以下、具体的に説明する。
【0085】
まず、各マスターホログラム原版の作製方法について説明する。図11(a)ないし図11(c)は、角度多重方式により、各マスターホログラム原版に複数の干渉縞を記録する様子を模式的に示す説明図である。なお、ここでは、複数のマスターホログラム原版として、マスターホログラム原版51・52・53の3枚を想定している。角度多重方式により各マスターホログラム原版51・52・53を作製する場合でも、図2に示したマスターホログラム原版作製装置を用いることができる。
【0086】
本実施形態では、空間光変調素子8(図2参照)から出射される情報光と、これとは別経路で導かれる参照光とを干渉させる際に、参照光の入射角度を各マスターホログラム原版51・52・53ごとに変化させている。つまり、マスターホログラム原版51・52・53に照射される各参照光の入射角度は、それぞれ、例えばA度、B度、C度である。なお、上記の入射角度とは、マスターホログラム原版51・52・53のディスク面(光入射側の面)に対する法線と各参照光の光軸とのなす角度を指すものとし、上記のA、BおよびCは互いに異なる値とする。
【0087】
そして、各マスターホログラム原版51・52・53に干渉縞を記録するごとに、各マスターホログラム原版51・52・53を所定ピッチでシフトさせる。なお、ここでは、ある干渉縞においてこれと隣り合う干渉縞とのノイズが含まれるのを極力低減するために、各マスターホログラム原版51・52・53において、複数の干渉縞は互いにオーバーラップせずに記録されているものとする。それゆえ、各マスターホログラム原版51・52・53の最大多重度M1、M2、M3は、それぞれ1である。
【0088】
図12(a)ないし図12(d)は、上記のようにして作製された各マスターホログラム原版51・52・53と、各マスターホログラム原版51・52・53を用いて作製されるホログラム記録媒体61とを模式的に示す斜視図である。同一のマスターホログラム原版51で互いに異なる位置に記録されている複数の干渉縞51a…は、波長が一定で入射角度も一定(A度)の可干渉性の光の照射によりマスターホログラム原版51に記録されている。同様に、同一のマスターホログラム原版52で互いに異なる位置に記録されている複数の干渉縞52a…は、波長が一定で入射角度も一定(B度)の可干渉性の光の照射によりマスターホログラム原版52に記録されており、同一のマスターホログラム原版53で互いに異なる位置に記録されている複数の干渉縞53a…は、波長が一定で入射角度も一定(C度)の可干渉性の光の照射によりマスターホログラム原版53に記録されている。
【0089】
各マスターホログラム原版51・52・53を用いてホログラム記録媒体61を作製する場合には、図5で示したホログラム記録媒体作製装置を用いることができる。その際に、マスターホログラム原版11の代わりに、マスターホログラム原版51・52・53を用いる。そして、マスターホログラム原版51・52・53を順次交換しながら、これらの交換ごとに、マスターホログラム原版51・52・53を未記録のホログラム記録媒体61と重ね合わせて近接配置し、マスターホログラム原版51・52・53のそれぞれに対して参照光を照射する。
【0090】
ここで、マスターホログラム原版51に参照光を照射するときは、入射角度が記録時と同じA度となるように参照光を照射する。そして、これをマスターホログラム原版52に交換した後は、入射角度が記録時と同じB度となるようにマスターホログラム原版52に参照光を照射する。さらに、これをマスターホログラム原版53に交換した後は、入射角度が記録時と同じC度となるようにマスターホログラム原版53に参照光を照射する。これにより、各マスターホログラム原版51・52・53からは情報光が再生されるので、この情報光と上記参照光とを干渉させることにより、ホログラム記録媒体61の同一位置61aに干渉縞51a・52a・53aと同じ情報を持つ複数の干渉縞が多重記録される。この例では、ホログラム記録媒体61の最大多重度Sは3となる。
【0091】
以上のように、本実施形態においても、M<Sとなる最大多重度で干渉縞が記録された複数枚のマスターホログラム原版51・52・53を用いているので、各マスターホログラム原版51・52・53は、最大多重度Sのマスターホログラム原版に比べて同一位置からのノイズが元々少ない状態で干渉縞が記録されているものと言える。したがって、複数枚のマスターホログラム原版51・52・53を用いてホログラム記録媒体61を作製することにより、ホログラム記録媒体61に目的の干渉縞を正確に記録することができるとともに、ホログラム記録媒体61の再生時に再生エラーが生じるのを回避することができる。
【0092】
また、例えば同じマスターホログラム原版51で互いに異なる位置に記録されている複数の干渉縞51a…は、入射角度が一定(A度)の参照光の照射により、マスターホログラム原版51に記録されている。これにより、光束径の広い参照光を上記入射角度でマスターホログラム原版51に照射すれば、複数の干渉縞51a…と同じ記録情報を持つ複数の干渉縞を一度にホログラム記録媒体61に記録することができる。なお、マスターホログラム原版52・53に参照光を照射してホログラム記録媒体61に複数の干渉縞を記録するときも同様である。したがって、簡便にホログラム記録媒体61を作製することができる。
【0093】
また、本実施形態では、各マスターホログラム原版51・52・53への干渉縞の記録時に照射される参照光の入射角度A、BおよびCは、各マスターホログラム原版51・52・53間で異なっている。この場合、ホログラム記録媒体61の作製時に、用いるマスターホログラム原版51・52・53ごとに参照光の入射角度を変化させればよいので、作製するホログラム記録媒体61に複数の干渉縞を簡便に多重記録することができる。
【0094】
また、本実施形態では、ホログラム記録媒体61の作製時にマスターホログラム原版51・52・53に照射する可干渉性の光として、マスターホログラム原版51・52・53への干渉縞の記録時と同じ入射角度の光を用いている。これにより、マスターホログラム原版51・52・53が角度多重方式で作製されたものであっても、そのマスターホログラム原版51・52・53から再生光を確実に得ることができ、この再生光を用いてホログラム記録媒体61に干渉縞を確実に記録することができる。
【0095】
ところで、本実施形態では、各マスターホログラム原版51・52・53の最大多重度M1、M2、M3が1の場合について説明したが、最大多重度M1、M2、M3は、作製するホログラム記録媒体61の最大多重度Sよりも小さければよく、最大多重度Sの値によっては、それぞれ2以上であっても構わない。また、最大多重度M1、M2、M3は、これらの間では互いに異なっていてもよい。さらに、用いるマスターホログラム原版は、2枚以上の複数枚であってもよい。
【0096】
例えば、図13(a)は、2つの入射角度A1、A2で順に照射される参照光と、情報光との干渉によって複数の干渉縞が記録されるマスターホログラム原版54を模式的に示す斜視図であり、図13(b)は、3つの入射角度B1、B2、B3で順に照射される参照光と、情報光との干渉によって複数の干渉縞が記録されるマスターホログラム原版55を模式的に示す斜視図である。このようなマスターホログラム原版54・55では、同一箇所に、可干渉性の光の入射角度が互いに異なる複数のページデータ(干渉縞)が記録されることになる。この例では、マスターホログラム原版54の最大多重度M1は2であり、マスターホログラム原版55の最大多重度M2は3である。
【0097】
上記のように角度多重方式で複数の干渉縞が多重記録された各マスターホログラム原版54・55を用いる場合でも、マスターホログラム原版54・55のそれぞれをホログラム記録媒体61に順に貼り合わせ、各マスターホログラム原版54・55への干渉縞の記録時と同じ入射角度の光をそれぞれのマスターホログラム原版54・55に対して順に照射することにより、マスターホログラム原版54・55からの再生光を用いてホログラム記録媒体61の同一位置に複数の干渉縞を多重記録することができる。
【0098】
上記の例では、ホログラム記録媒体61の最大多重度Sは5となるが、マスターホログラム原版54・55の最大多重度M1、M2とホログラム記録媒体61の最大多重度Sとの関係は、M1<S、M2<Sであることに変わりはない。それゆえ、角度多重方式で複数の干渉縞が多重記録されたマスターホログラム原版54・55を用いても、ホログラム記録媒体61に目的の干渉縞を正確に記録することができるとともに、ホログラム記録媒体61の再生時に再生エラーが生じるのを回避することができる。
【0099】
以上のことから、本発明のホログラム記録媒体作製方法は、以下のように表現することもできる。すなわち、本発明のホログラム記録媒体作製方法は、n枚のマスターホログラム原版に最大多重度M1、M2、・・・Mnの干渉縞をそれぞれ記録するにあたり、各マスターホログラム原版にM1種類、M2種類、・・・Mn種類の入射角度で可干渉性の光が各マスターホログラム原版において順に照射されているときに、ホログラム記録媒体作製時には、各マスターホログラム原版への干渉縞の記録時に照射される可干渉性の光の入射角度と同じ入射角度で、各マスターホログラム原版に可干渉性の光を順に照射するものである。
【0100】
なお、本実施形態では、M<Sとなる最大多重度で干渉縞が記録された透過型の複数枚のマスターホログラム原版を用いて、透過型のホログラム記録媒体を作製する場合について説明したが、M<Sとなる最大多重度で干渉縞が記録された反射型の複数枚のマスターホログラム原版を用いて、反射型のホログラム記録媒体も同様に作製することができ、この場合でも本実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0101】
〔実施の形態3〕
本発明のさらに他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、実施の形態1または2と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。本実施形態では、波長多重方式で作製された複数枚のマスターホログラム原版を用いてホログラム記録媒体を作製する方法について説明する。
【0102】
ホログラム記録媒体に干渉縞を多重記録する際には、上述してきたように、光源から出射される可干渉性の光を2光束に分岐し、その一方を空間光変調素子によってデジタル情報を2次元化して1枚のページデータとしたイメージ情報を持つ情報光とし、同じ光源から出射されて別経路で導いた他方の光を参照光とし、これらを干渉させることによって、その干渉縞(ホログラム)をホログラム記録媒体中に記録する。この際に、波長多重方式で多重記録を行う場合には、可干渉性の光を出射する光源として、例えば波長可変レーザーを用い、光源からの出射光の波長を少しずつ変化させる。これにより、ホログラム記録媒体の同一位置(記録ビット)に、より多くの情報(ページデータ)を高密度に記録することが可能となる。
【0103】
このような波長多重方式により、マスターホログラム原版を作製すると、作製されたマスターホログラム原版の同一位置に回折波長の異なる多くの干渉縞が多重記録されることになる。したがって、このマスターホログラム原版を用いて新たなホログラム記録媒体を作製すべく、マスターホログラム原版にある波長の参照光を照射すると、同一位置の異なる干渉縞とのノイズ光が多く発生する。
【0104】
そこで、本実施形態では、波長多重方式によりM<Sとなる最大多重度で干渉縞が記録された複数枚のマスターホログラム原版を用い、作製するホログラム記録媒体に複数の干渉縞を多重記録する。以下、具体的に説明する。
【0105】
まず、各マスターホログラム原版の作製方法について説明する。図14(a)ないし図14(c)は、波長多重方式により、各マスターホログラム原版に複数の干渉縞を記録する様子を模式的に示す説明図である。なお、ここでは、複数のマスターホログラム原版として、マスターホログラム原版71・72・73の3枚を想定している。波長多重方式により各マスターホログラム原版71・72・73を作製する場合でも、図2に示したマスターホログラム原版作製装置を用いることができる。ただし、図2の光源1は、波長可変レーザーで構成される。
【0106】
本実施形態では、光源1から出射される可干渉性の光の波長を各マスターホログラム原版71・72・73の作製ごとに変化させている。そして、各波長について、空間光変調素子8(図2参照)から出射される情報光と、これとは別経路で導かれる参照光とを干渉させている。つまり、マスターホログラム原版71・72・73に照射される光(情報光、参照光)の波長は、それぞれ、例えばλ1、λ2、λ3(単位はそれぞれnmとする)である。なお、λ1、λ2およびλ3は、互いに異なる値とする。
【0107】
なお、本実施形態では、マスターホログラム原版71・72・73に対して、参照光を情報光の入射側とは反対側から照射しており、それゆえマスターホログラム原版71・72・73は反射型として作製される。
【0108】
そして、各マスターホログラム原版71・72・73に干渉縞を記録するごとに、各マスターホログラム原版71・72・73を所定ピッチでシフトさせる。なお、ここでは、ある干渉縞においてこれと隣り合う干渉縞とのノイズが含まれるのを極力低減するために、各マスターホログラム原版71・72・73において、複数の干渉縞は互いにオーバーラップせずに記録されているものとする。それゆえ、各マスターホログラム原版71・72・73の最大多重度M1、M2、M3は、それぞれ1である。
【0109】
図15(a)ないし図15(d)は、上記のようにして作製された各マスターホログラム原版71・72・73と、各マスターホログラム原版71・72・73を用いて作製されるホログラム記録媒体81とを模式的に示す斜視図である。同一のマスターホログラム原版71で互いに異なる位置に記録されている複数の干渉縞71a…は、波長が一定(λ1)で入射角度も一定の可干渉性の光の照射によりマスターホログラム原版71に記録されている。同様に、同一のマスターホログラム原版72で互いに異なる位置に記録されている複数の干渉縞72a…は、波長が一定(λ2)で入射角度も一定の可干渉性の光の照射によりマスターホログラム原版72に記録されており、同一のマスターホログラム原版73で互いに異なる位置に記録されている複数の干渉縞73a…は、波長が一定(λ3)で入射角度も一定の可干渉性の光の照射によりマスターホログラム原版73に記録されている。
【0110】
各マスターホログラム原版71・72・73を用いてホログラム記録媒体81を作製する場合には、図5で示したホログラム記録媒体作製装置を用いることができる。その際に、マスターホログラム原版11の代わりに、マスターホログラム原版71・72・73を用いる。そして、マスターホログラム原版71・72・73を順次交換しながら、これらの交換ごとに、マスターホログラム原版71・72・73を未記録のホログラム記録媒体81と重ね合わせて近接配置し、マスターホログラム原版71・72・73のそれぞれに対して参照光を照射する。
【0111】
ここで、マスターホログラム原版71に参照光を照射するときは、波長が記録時と同じλ1となる参照光を照射する。そして、これをマスターホログラム原版72に交換した後は、波長が記録時と同じλ2となる参照光をマスターホログラム原版72に照射する。さらに、これをマスターホログラム原版73に交換した後は、波長が記録時とλ3となる参照光をマスターホログラム原版73に照射する。これにより、各マスターホログラム原版71・72・73からは情報光が再生されるので、この情報光と上記参照光とを干渉させることにより、ホログラム記録媒体81の同一位置81aに干渉縞71a・72a・73aと同じ情報を持つ複数の干渉縞が多重記録される。この例では、ホログラム記録媒体81の最大多重度Sは3となる。
【0112】
以上のように、本実施形態においても、M<Sとなる最大多重度で干渉縞が記録された複数枚のマスターホログラム原版71・72・73を用いているので、各マスターホログラム原版71・72・73は、最大多重度Sのマスターホログラム原版に比べて同一位置からのノイズが元々少ない状態で干渉縞が記録されているものと言える。したがって、複数枚のマスターホログラム原版71・72・73を用いてホログラム記録媒体81を作製することにより、ホログラム記録媒体81に目的の干渉縞を正確に記録することができるとともに、ホログラム記録媒体81の再生時に再生エラーが生じるのを回避することができる。
【0113】
また、例えば同じマスターホログラム原版71で互いに異なる位置に記録されている複数の干渉縞71a…は、波長が一定(λ1)の光の照射により、マスターホログラム原版71に記録されている。これにより、光束径の広い参照光を上記波長でマスターホログラム原版71に照射することにより、複数の干渉縞71a…と同じ記録情報を持つ複数の干渉縞を一度にホログラム記録媒体81に記録することができる。なお、マスターホログラム原版72・73に参照光を照射してホログラム記録媒体81に複数の干渉縞を記録するときも同様である。したがって、簡便にホログラム記録媒体81を作製することができる。
【0114】
また、本実施形態では、各マスターホログラム原版71・72・73への干渉縞の記録時に照射される光の波長λ1、λ2およびλ3は、各マスターホログラム原版71・72・73間で異なっている。この場合、ホログラム記録媒体81の作製時に、用いるマスターホログラム原版71・72・73ごとに参照光の波長を変化させればよいので、作製するホログラム記録媒体81に複数の干渉縞を簡便に多重記録することができる。
【0115】
また、本実施形態では、ホログラム記録媒体81の作製時にマスターホログラム原版71・72・73に照射する可干渉性の光として、マスターホログラム原版71・72・73への干渉縞の記録時と同じ波長の光を用いている。これにより、マスターホログラム原版71・72・73が波長多重方式で作製されたものであっても、そのマスターホログラム原版71・72・73から再生光を確実に得ることができ、この再生光を用いてホログラム記録媒体81に干渉縞を確実に記録することができる。
【0116】
ところで、本実施形態では、各マスターホログラム原版71・72・73の最大多重度M1、M2、M3が1の場合について説明したが、最大多重度M1、M2、M3は、作製するホログラム記録媒体81の最大多重度Sよりも小さければよく、最大多重度Sの値によっては、それぞれ2以上であっても構わない。また、最大多重度M1、M2、M3は、これらの間では互いに異なっていてもよい。さらに、用いるマスターホログラム原版は、2枚以上の複数枚であってもよい。
【0117】
例えば、図16(a)は、2つの波長λ11、λ12で順に照射される参照光と、情報光との干渉によって複数の干渉縞が記録されるマスターホログラム原版74を模式的に示す斜視図であり、図16(b)は、3つの波長λ21、λ22、λ23で順に照射される参照光と、情報光との干渉によって複数の干渉縞が記録されるマスターホログラム原版75を模式的に示す斜視図である。このようなマスターホログラム原版74・75では、同一箇所に、照射される可干渉性の光の波長が互いに異なる複数のページデータ(干渉縞)が記録されることになる。この例では、マスターホログラム原版74の最大多重度M1は2であり、マスターホログラム原版75の最大多重度M2は3である。
【0118】
上記のように波長多重方式で複数の干渉縞が多重記録された各マスターホログラム原版74・75を用いる場合でも、マスターホログラム原版74・75のそれぞれをホログラム記録媒体81に順に貼り合わせ、各マスターホログラム原版74・75への干渉縞の記録時と同じ波長の光をそれぞれのマスターホログラム原版74・75に対して順に照射することにより、マスターホログラム原版74・75からの再生光を用いてホログラム記録媒体81の同一位置に複数の干渉縞を多重記録することができる。
【0119】
上記の例では、ホログラム記録媒体81の最大多重度Sは5となるが、マスターホログラム原版74・75の最大多重度M1、M2とホログラム記録媒体81の最大多重度Sとの関係は、M1<S、M2<Sであることに変わりはない。それゆえ、波長多重方式で複数の干渉縞が多重記録されたマスターホログラム原版74・75を用いても、ホログラム記録媒体81に目的の干渉縞を正確に記録することができるとともに、ホログラム記録媒体81の再生時に再生エラーが生じるのを回避することができる。
【0120】
以上のことから、本発明のホログラム記録媒体作製方法は、以下のように表現することもできる。すなわち、本発明のホログラム記録媒体作製方法は、n枚のマスターホログラム原版に最大多重度M1、M2、・・・Mnの干渉縞をそれぞれ記録するにあたり、各マスターホログラム原版にM1種類、M2種類、・・・Mn種類の波長で可干渉性の光が各マスターホログラム原版において順に照射されているときに、ホログラム記録媒体作製時には、各マスターホログラム原版への干渉縞の記録時に照射される可干渉性の光の波長と同じ波長で、各マスターホログラム原版に可干渉性の光を順に照射するものである。
【0121】
なお、本実施形態では、M<Sとなる最大多重度で干渉縞が記録された反射型の複数枚のマスターホログラム原版を用いて、反射型のホログラム記録媒体を作製する場合について説明したが、M<Sとなる最大多重度で干渉縞が記録された透過型の複数枚のマスターホログラム原版を用いて、透過型のホログラム記録媒体も同様に作製することができ、この場合でも本実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0122】
なお、実施の形態1〜3では、3種類の多重記録方式(シフト多重方式、角度多重方式、波長多重方式)で作製される複数枚のマスターホログラム原版を用いてホログラム記録媒体を作製する例について説明したが、各マスターホログラム原版における多重記録方式はこれらに限定されるわけではない。他の多重記録方式として、例えば、参照光の位相を変えて多重記録を行う位相多重方式を用いて各マスターホログラム原版を作製することも可能である。また、上記各多重記録方式をいくつか組み合わせた複雑な方式で各マスターホログラム原版を作製することも可能である。そして、これらの方式で作製された各マスターホログラム原版を用いても、本発明の方法を適用してホログラム記録媒体を作製することは勿論可能である。
【0123】
〔実施の形態4〕
本発明のさらに他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、実施の形態1ないし3と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
【0124】
上述した実施の形態1〜3では、説明を簡略化するために、作製するホログラム記録媒体の形状が長方形状(カード状、板状)である場合について示したが、作製するホログラム記録媒体の形状は、これに限定されるわけではなく、例えば円盤状であってもよい。本実施形態では、複数枚の円盤状のマスターホログラム原版を用いて円盤状のホログラム記録媒体を作製する方法について説明する。
【0125】
図17は、本実施形態で用いる円盤状のマスターホログラム原版91・92と、各マスターホログラム原版91・92を用いて作製される円盤状のホログラム記録媒体93とを模式的に示す斜視図である。マスターホログラム原版91には、後述の方法により、複数の干渉縞(例えば干渉縞101・103・105・107)が記録されており、マスターホログラム原版92には、後述の方法により、複数の干渉縞(例えば干渉縞102・104・106)が記録されている。なお、ここでは、ある干渉縞においてこれと隣り合う干渉縞とのノイズが含まれるのを極力低減するために、各マスターホログラム原版91・92では、複数の干渉縞は互いにオーバーラップせずに記録されているものとする。それゆえ、各マスターホログラム原版91・92の最大多重度をそれぞれM1、M2とすると、M1=M2=1である。
【0126】
円盤状の各マスターホログラム原版91・92は、図2で示したマスターホログラム原版作製装置を用いて作製することが可能である。つまり、図2のマスターホログラム原版11をマスターホログラム原版91・92のそれぞれに置き換え、各マスターホログラム原版91・92の記録位置を、各マスターホログラム原版91・92の回転によってシフトさせながら、干渉縞を記録していく。
【0127】
ただし、このようにして各マスターホログラム原版91・92に干渉縞を記録していく場合、各マスターホログラム原版91・92のディスク面に対して参照光が傾いて入射する構成では、各干渉縞の位置ごとに参照光の入射角度(入射方向)が異なる。この場合、1つの参照光の一度の照射で複数の干渉縞を未記録媒体に記録できるように、参照光の光路を設定することは難しい。
【0128】
そこで、円盤状の各マスターホログラム原版91・92を作製する場合には、各マスターホログラム原版91・92を、本来の情報光と参照光(第1の参照光)との2光束に加えて、第3の光(記録時参照光、第2の参照光)を用いて作製することが有効である。これにより、円盤状の各マスターホログラム原版91・92を用いてホログラム記録媒体93を作製する場合でも、各マスターホログラム原版91・92に記録された干渉縞と同一の記録情報を持つ干渉縞をホログラム記録媒体93に簡便に記録することができる。以下、この点について、より詳しく説明する。なお、以下では、マスターホログラム原版91の作製方法について説明するが、マスターホログラム原版92の作製についても同様である。
【0129】
図18は、マスターホログラム原版91を模式的に示す断面図である。マスターホログラム原版91に干渉縞を記録する際には、光源から出射される可干渉性の光を2光束に分岐して得られる一方の光を、空間光変調素子によってデジタル情報を2次元化して1枚のページデータ8aとしたイメージ情報を持つ情報光とし、同じ光源から出射されて別経路で導いた他方の光を第1の参照光とする。そして、これらの光(情報光、第1の参照光)に第2の参照光を加え、これらの3光束を干渉させることにより、その干渉縞91aをマスターホログラム原版91に記録する。このとき、第2の参照光は、円盤状のマスターホログラム原版91の回転とは独立して、常にある一方向からマスターホログラム原版91に照射されるようにしておく。
【0130】
なお、情報光と第1の参照光とは、光軸が同軸であってもよい。この場合は、光束の中心部を例えば情報光とし、光束の周辺部(断面ドーナツ状の部分)を例えば第1の参照光とすることができる。
【0131】
図19は、ホログラム記録媒体93を作製するときのマスターホログラム原版91およびホログラム記録媒体93の断面図である。上記のようにして作製されたマスターホログラム原版91・92を用いてホログラム記録媒体93を作製するときは、各マスターホログラム原版91・92を順次交換しながら、これらの交換ごとに、マスターホログラム原版91・92を未記録のホログラム記録媒体93と重ね合わせて近接配置し、マスターホログラム原版91・92のそれぞれに対して第2の参照光を照射する。
【0132】
この際に、第2の参照光の光束径を拡大し、記録時の照射方向と同じ方向から参照光を各マスターホログラム原版91・92の全面に照射することで、一度に多数の干渉縞をホログラム記録媒体93に記録することができる。つまり、例えばマスターホログラム原版91に第2の参照光を照射することで、マスターホログラム原版91の干渉縞91aからは情報光91a1と第1の参照光91a2とが再生光として再生され、これらの干渉により、ホログラム記録媒体93に干渉縞93aを記録することができる。同様に、マスターホログラム原版91の干渉縞91aとは異なる位置の干渉縞91bからは、第2の参照光の照射時に情報光91b1と第1の参照光91b2とが再生光として再生され、これらの干渉により、ホログラム記録媒体93に干渉縞93bを干渉縞93aと同時に記録することができる。
【0133】
各マスターホログラム原版91・92を順次交換しながら、上記の方法で各マスターホログラム原版91・92に第2の参照光を照射し、各マスターホログラム原版91・92から得られる再生光によってホログラム記録媒体93を作製することにより、図17で示すように、各干渉縞101〜107の最大多重度Sが例えば2のホログラム記録媒体93を得ることができる。
【0134】
以上のように、本実施形態では、可干渉性の光としての第2の参照光を各マスターホログラム原版91・92に照射することにより、各マスターホログラム原版91・92から記録情報を持つ情報光と第1の参照光とを再生光として再生し、情報光と第1の参照光とを干渉させることにより、作製するホログラム記録媒体93に干渉縞を記録している。
【0135】
本実施形態のように、各マスターホログラム原版91・92への干渉縞の記録時に、本来必要な2光束(情報光と第1の参照光)に加えて、第3の光(第2の参照光)を用いる場合、各マスターホログラム原版91・92に記録される干渉縞はより複雑なものとなる。したがって、各マスターホログラム原版91・92を用いてホログラム記録媒体93を作製すべく、各マスターホログラム原版91・92に第2の参照光を照射したときには、各マスターホログラム原版91・92からノイズ光も発生しやすい。
【0136】
しかし、マスターホログラム原版91・92は、M<Sとなる最大多重度で干渉縞が記録されたものであり、元々ノイズが少ない状態で干渉縞が記録されたものであるので、このようなマスターホログラム原版91・92を用いてホログラム記録媒体93を作製しても、作製するホログラム記録媒体93にノイズの少ない状態で複数の干渉縞を記録することができる。つまり、ホログラム記録媒体93を作製するにあたり、M<Sとなる最大多重度で干渉縞が記録されたマスターホログラム原版91・92を用いる本発明の作製方法は、3光束干渉で作製されるマスターホログラム原版を用いてホログラム記録媒体を作製する場合に非常に有効なものとなる。
【0137】
〔実施の形態5〕
本発明のさらに他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、実施の形態1ないし4と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
【0138】
本実施形態では、M<Sとなる複数枚のマスターホログラム原版を用いてホログラム記録媒体を作製する際に、1枚のマスターホログラム原版を複数の領域に分割し、各領域ごとに可干渉性の光としての参照光を照射するようにしている。
【0139】
例えば、図20(a)ないし図20(c)は、マスターホログラム原版111における各分割領域ごとの参照光の照射領域121・122・123を示す説明図である。ホログラム記録媒体の作製時に、図20(a)ないし図20(c)に示すマスターホログラム原版111の各照射領域121・122・123に順に参照光を照射することにより、マスターホログラム原版111の全面に参照光を一度に照射する場合に比べて、一度に露光する干渉縞112が少ないので、ノイズ光の発生をより抑制することができる。
【0140】
また、本実施形態の方法では、参照光の光束径を各ホログラム記録媒体の全面まで広げる必要がないので、照射光のパワーが弱い場合であっても、作製するホログラム記録媒体に複数の干渉縞を記録することができるとともに、装置(光学系)をコンパクトに構成することができる。さらに、一度に露光する面積が小さいので、低出力のレーザー光源を用いることができる。
【0141】
なお、以上では、長方形状のマスターホログラム原版111において、複数の干渉縞112が直線状に並んでいる例について説明したが、円盤状のマスターホログラム原版においては、例えば同心円状(リング状)に領域を分割したり、任意の回転角(中心角)ごとに領域を分割して、各分割領域ごとに参照光を照射し、ホログラム記録媒体に干渉縞を記録することも可能である。
【0142】
ところで、以上のように、1枚のマスターホログラム原版を複数の領域に分割し、各領域ごとに参照光を照射する場合においては、マスターホログラム原版とホログラム記録媒体とを一体として、参照光に対して連続的に移動させながらホログラム記録媒体に干渉縞を記録するようにしてもよい。
【0143】
例えば、図21(a)ないし図21(c)は、上記の手法でホログラム記録媒体113を作製する様子を模式的に示す斜視図である。このように、マスターホログラム原版111とホログラム記録媒体113とを一体として、参照光に対して連続的に移動させ、照射領域141を時間経過とともに移動させることにより、各照射領域141ごとに干渉縞112を連続的にホログラム記録媒体113に記録することができる。その結果、ホログラム記録媒体113に干渉縞112をより高速に記録することができる。
【0144】
また、1枚のページデータごとに順次記録する一般的なホログラム記録方法に比べて、事前に作製したマスターホログラム原版111を用いて作製するという手法を用いることで、上記のようにマスターホログラム原版111およびホログラム記録媒体113を一体として、連続的に移動させながら記録することができる。これにより、一度に多くのデータを記録することが可能となり、かつ光源のシャッタ制御(シャッタなどによる参照光の制御)が不要で、より簡便に短時間でホログラム記録媒体を作製することが可能となる。また、基板の駆動制御も容易である。
【0145】
ここで、マスターホログラム原版111およびホログラム記録媒体113が円盤状、すなわち、同心円状の形状である場合は、上記両者を一体として、参照光に対して同心円の中心を回転中心として連続的に回転させながらホログラム記録媒体113に干渉縞を記録するようにしてもよい。
【0146】
例えば、図22(a)および図22(b)は、上記の手法で同心円状のホログラム記録媒体113を作製する様子を模式的に示す斜視図である。このようにマスターホログラム原版111およびホログラム記録媒体113が円盤状であっても、両者を一体として連続的に回転させて、照射領域141を時間経過とともに移動させることにより、1枚のページデータごとに干渉縞を記録する一般的なホログラム記録方法に比べて、ホログラム記録媒体113を高速(短時間)で作製することができるなど、上記と同様の効果を得ることができる。また、既存の光ディスクの技術を円盤状のホログラム記録媒体113の作製に転用することが可能であるので、簡便である。さらに、基板を一定速度で回転させるだけでよく、動かしたり(平行移動させたり)スキップさせる必要がない。
【0147】
なお、以上の各実施の形態で説明した構成や方法を適宜組み合わせてホログラム記録媒体を作製することも勿論可能である。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】本発明の実施の一形態に係るホログラム記録媒体作製方法において用いる複数のマスターホログラム原版と、各マスターホログラム原版を用いて作製されるホログラム記録媒体とを模式的に示す平面図である。
【図2】マスターホログラム原版作製装置の概略の構成を示す説明図である。
【図3】シフト多重方式により、マスターホログラム原版に複数の干渉縞を多重記録する様子を模式的に示す説明図である。
【図4】複数の干渉縞が多重記録されているマスターホログラム原版の断面図である。
【図5】ホログラム記録媒体の作製装置の概略の構成を示す説明図である。
【図6】マスターホログラム原版が透過型である場合の、マスターホログラム原版とホログラム記録媒体との位置関係の一例を示す断面図である。
【図7】マスターホログラム原版が透過型である場合の、マスターホログラム原版とホログラム記録媒体との位置関係の他の例を示す断面図である。
【図8】(a)ないし(c)は、それぞれ、各マスターホログラム原版およびホログラム記録媒体の模式的な断面図である。
【図9】各マスターホログラム原版およびホログラム記録媒体の他の例を模式的に示す平面図である。
【図10】各マスターホログラム原版および作製するホログラム記録媒体の異なる領域における多重度と、そのときの最大多重度との一例を示す説明図である。
【図11】(a)ないし(c)は、本発明の他の実施の形態に係るホログラム記録媒体作製方法において用いる複数のマスターホログラム原版に、角度多重方式により複数の干渉縞を記録する様子を模式的に示す説明図である。
【図12】(a)ないし(c)は、上記各マスターホログラム原版を模式的に示す斜視図であり、(d)は、上記各マスターホログラム原版を用いて作製されるホログラム記録媒体を模式的に示す斜視図である。
【図13】(a)および(b)は、上記各マスターホログラム原版の他の例を模式的に示す斜視図である。
【図14】(a)ないし(c)は、本発明のさらに他の実施の形態に係るホログラム記録媒体作製方法において用いる各マスターホログラム原版に、波長多重方式により複数の干渉縞を記録する様子を模式的に示す説明図である。
【図15】(a)ないし(d)は、上記各マスターホログラム原版と、上記各マスターホログラム原版を用いて作製されるホログラム記録媒体とを模式的に示す斜視図である。
【図16】(a)および(b)は、上記各マスターホログラム原版の他の例を模式的に示す斜視図である。
【図17】本発明のさらに他の実施の形態に係るホログラム記録媒体作製方法において用いる複数の円盤状のマスターホログラム原版と、各マスターホログラム原版を用いて作製される円盤状のホログラム記録媒体とを模式的に示す斜視図である。
【図18】上記マスターホログラム原版の一つを模式的に示す断面図である。
【図19】円盤状のホログラム記録媒体を作製するときのマスターホログラム原版および上記ホログラム記録媒体の断面図である。
【図20】(a)ないし(c)は、本発明のさらに他の実施の形態に係るホログラム記録媒体作製方法において用いるマスターホログラム原版における各分割領域ごとの参照光の照射領域を示す説明図である。
【図21】(a)ないし(c)は、マスターホログラム原版とホログラム記録媒体とを一体的にシフトさせてホログラム記録媒体を作製する様子を模式的に示す斜視図である。
【図22】(a)および(b)は、マスターホログラム原版とホログラム記録媒体とを一体的に回転させてホログラム記録媒体を作製する様子を模式的に示す斜視図である。
【符号の説明】
【0149】
1 光源
11 マスターホログラム原版
12 干渉縞
27 光学系
28 ホログラム記録媒体
29 干渉縞
31 マスターホログラム原版
32 マスターホログラム原版
33 ホログラム記録媒体
41〜47 干渉縞
51 マスターホログラム原版
51a 干渉縞
52 マスターホログラム原版
52a 干渉縞
53 マスターホログラム原版
53a 干渉縞
54 マスターホログラム原版
55 マスターホログラム原版
61 ホログラム記録媒体
71 マスターホログラム原版
71a 干渉縞
72 マスターホログラム原版
72a 干渉縞
73 マスターホログラム原版
73a 干渉縞
74 マスターホログラム原版
75 マスターホログラム原版
81 ホログラム記録媒体
91 マスターホログラム原版
91a 干渉縞
91b 干渉縞
92 マスターホログラム原版
93 ホログラム記録媒体
93a 干渉縞
93b 干渉縞
101〜107 干渉縞
111 マスターホログラム原版
112 干渉縞
113 ホログラム記録媒体
M、M1〜Mn 最大多重度
S 最大多重度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
干渉縞が記録されたマスターホログラム原版に可干渉性の光を照射することによって得られる再生光を用いて、同一箇所に複数の干渉縞が多重記録されたホログラム記録媒体を作製するホログラム記録媒体作製方法であって、
nを2以上の自然数とすると、
マスターホログラム原版をn枚用い、
各マスターホログラム原版の干渉縞の最大多重度をM1、M2、・・・Mn、作製するホログラム記録媒体の干渉縞の最大多重度をSとすると、
M1<S、M2<S、・・・Mn<S
となる最大多重度で干渉縞が記録された複数枚のマスターホログラム原版を順次交換しながらそれぞれに対して可干渉性の光を照射することにより、作製するホログラム記録媒体に干渉縞を多重記録することを特徴とするホログラム記録媒体作製方法。
【請求項2】
nは、2以上S以下の自然数であることを特徴とする請求項1に記載のホログラム記録媒体作製方法。
【請求項3】
同一のマスターホログラム原版で互いに異なる位置に記録されている複数の干渉縞は、波長が一定の可干渉性の光の照射により当該マスターホログラム原版に記録されていることを特徴とする請求項1または2に記載のホログラム記録媒体作製方法。
【請求項4】
同一のマスターホログラム原版で互いに異なる位置に記録されている複数の干渉縞は、入射角度が一定の可干渉性の光の照射により当該マスターホログラム原版に記録されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のホログラム記録媒体作製方法。
【請求項5】
各マスターホログラム原版において、複数の干渉縞は、互いにオーバーラップせずに記録されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のホログラム記録媒体作製方法。
【請求項6】
各マスターホログラム原版において、複数の干渉縞は、1つのページデータを記録した干渉縞スポットと隣り合う1つのページデータを記録した干渉縞スポットとの中心間距離が、そのスポット径以下となるよう記録されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のホログラム記録媒体作製方法。
【請求項7】
各マスターホログラム原版において、複数の干渉縞は、一定の周期で記録されていることを特徴とする請求項6に記載のホログラム記録媒体作製方法。
【請求項8】
各マスターホログラム原版において、同一箇所に、可干渉性の光の入射角度が互いに異なる複数のページデータが記録されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のホログラム記録媒体作製方法。
【請求項9】
各マスターホログラム原版への干渉縞の記録時に照射される可干渉性の光の入射角度は、各マスターホログラム原版間で異なっていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のホログラム記録媒体作製方法。
【請求項10】
各マスターホログラム原版において、同一箇所に、可干渉性の光の波長が互いに異なる複数のページデータが記録されていることを特徴とする請求項1、2、4または5に記載のホログラム記録媒体作製方法。
【請求項11】
各マスターホログラム原版への干渉縞の記録時に照射される可干渉性の光の波長は、各マスターホログラム原版間で異なっていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のホログラム記録媒体作製方法。
【請求項12】
各マスターホログラム原版を交換するごとに、マスターホログラム原版を未記録のホログラム記録媒体と重ね合わせて近接配置し、
上記可干渉性の光としての参照光を上記マスターホログラム原版に照射することにより、上記マスターホログラム原版から記録情報を持つ情報光を上記再生光として再生し、上記情報光と上記参照光とを干渉させることにより、上記ホログラム記録媒体に干渉縞を記録することを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載のホログラム記録媒体作製方法。
【請求項13】
各マスターホログラム原版を交換するごとに、マスターホログラム原版を未記録のホログラム記録媒体と重ね合わせて近接配置し、
上記可干渉性の光としての参照光を上記マスターホログラム原版に照射することにより、上記マスターホログラム原版から記録情報を持つ情報光と、上記参照光とは異なる参照光とを上記再生光として再生し、上記情報光と上記異なる参照光とを干渉させることにより、上記ホログラム記録媒体に干渉縞を記録することを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載のホログラム記録媒体作製方法。
【請求項14】
上記可干渉性の光として、上記マスターホログラム原版への干渉縞の記録時と同じ波長の光を用いることを特徴とする請求項12または13に記載のホログラム記録媒体作製方法。
【請求項15】
上記可干渉性の光として、上記マスターホログラム原版への干渉縞の記録時と同じ入射角度の光を用いることを特徴とする請求項12から14のいずれかに記載のホログラム記録媒体作製方法。
【請求項16】
1枚のマスターホログラム原版に対して、その全面に可干渉性の光を一度だけ照射することを特徴とする請求項12から15のいずれかに記載のホログラム記録媒体作製方法。
【請求項17】
1枚のマスターホログラム原版を複数の領域に分割し、各領域ごとに可干渉性の光を照射することを特徴とする請求項12から15のいずれかに記載のホログラム記録媒体作製方法。
【請求項18】
マスターホログラム原版およびホログラム記録媒体を一体として、参照光に対して連続的に移動させながら上記ホログラム記録媒体に干渉縞を記録することを特徴とする請求項17に記載のホログラム記録媒体作製方法。
【請求項19】
マスターホログラム原版およびホログラム記録媒体は同心円状の形状であり、
上記両者を一体として、参照光に対して同心円の中心を回転中心として連続的に回転させながら上記ホログラム記録媒体に干渉縞を記録することを特徴とする請求項18記載のホログラム記録媒体作製方法。
【請求項20】
作製するホログラム記録媒体に複数の干渉縞を体積位相型のホログラムとして記録することを特徴とする請求項1から19のいずれかに記載のホログラム記録媒体作製方法。
【請求項21】
上記ホログラムの感光材料として、フォトポリマーを用いることを特徴とする請求項20に記載のホログラム記録媒体作製方法。
【請求項22】
請求項1から21のいずれかに記載のホログラム記録媒体作製方法により、複数の干渉縞が多重記録されて作製されていることを特徴とするホログラム記録媒体。
【請求項23】
請求項1から21のいずれかに記載のホログラム記録媒体作製方法により、作製するホログラム記録媒体に複数の干渉縞を多重記録することを特徴とするホログラム記録媒体作製装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2007−171266(P2007−171266A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−364924(P2005−364924)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】