説明

ホログラム転写箔及びスクラッチカード

【課題】 被転写体のカード基材として耐熱性の低い材料を使用しても、ホログラム転写の加熱温度で変形せず、また高意匠性を有しセキュリティ性も高く、効率よく製造できるホログラム転写箔及びその転写箔を使用して形成されるスクラッチカードを提供する。
【解決手段】 基材と、該基材の一方の面へ、ホログラム転写層を有するホログラム転写箔において、ホログラム転写層が少なくとも剥離層、ホログラム層、金属蒸着層、隠蔽層、接着層を順次形成したものからなり、該接着層が感熱接着剤と、フィラーを含有し、該感熱接着剤の融点が70〜85℃であることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード基材として耐熱性の低い材料を使用しても、ホログラム転写の際の加熱温度で変形することがなく、また高意匠性を有しセキュリティ性も高く、効率よく製造できるホログラム転写箔及びそのホログラム転写箔を使用して形成されるスクラッチカードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スクラッチカードは、くじ結果や個別情報等を隠蔽するためのスクラッチ層が設けられているが、該スクラッチ層は充分な隠蔽効果を持たせるために、印刷による厚い銀インキ層である。該銀インキ層はスクラッチカードの目立つ主要部分に設けられているが、地味で意匠性の低いものである。これを解消するために、スクラッチ層にホログラムを設けたものもあるが、生産効率が低いものであった。このスクラッチカードは、使用時に、スクラッチ層がコインや爪などで擦ることにより剥離層面から除去されて、個別情報などの印刷層を、隠蔽されていた状態から、目視で観察できるようになる。そこで、スクラッチカードは、高意匠性を有しセキュリティ性も高く、かつ、生産効率よく、歩留りの高く製造できるものが求められている。
【0003】
従来、スクラッチカードは、特許文献1、2に示されているように、個別情報等が印刷された印刷層、剥離層、スクラッチ層等とを備え、スクラッチ層は個別情報等を隠蔽すると共に、コイン等により削り取ることが可能な層で、剥離層はその上面に形成されたスクラッチ層を剥離可能にする層である。しかしながら、スクラッチ層は通常のインキ層であり、意匠性が低いという問題点がある。
【0004】
また、本出願人はセキュリティ性を高めるために、スクラッチ層の上側にホログラム層を形成したスクラッチカードを開示している(例えば、特許文献3参照)。しかし、スクラッチ層の上側にホログラム層を形成する方法が転写法であり、カード面へ予め設けたスクラッチ層の位置へ、ホログラム層を接着層を介して加熱接着させる際、100℃以上加熱することが条件となっている。カード基材が耐熱性の低い材料、例えば、生分解性プラスチック材料のポリ乳酸等である場合には、ホログラム転写時の上記加熱温度により、カード基材が変形してしまい、製品としての価値がなくなってしまう問題がある。
【特許文献1】実開平6−42229号公報
【特許文献2】特開2003−72268号公報
【特許文献3】特開2005−324521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、被転写体のカード基材として耐熱性の低い材料を使用しても、ホログラム転写の際の加熱温度で変形することがなく、また高意匠性を有しセキュリティ性も高く、効率よく製造できるホログラム転写箔及びそのホログラム転写箔を使用して形成されるスクラッチカードを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1の発明は、基材の一方の面に、ホログラム転写層を有するホログラム転写箔において、ホログラム転写層が少なくとも剥離層、ホログラム層、金属蒸着層、隠蔽層、接着層を順次形成したものからなり、該接着層が感熱接着剤と、フィラーを含有し、該感熱接着剤の融点が70〜85℃であることを特徴とするものである。また、請求項2は、前記の感熱接着剤が脂肪族ポリエステル系樹脂であり、かつフィラーがマイクロシリカであることを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、カード基材の上に、秘密情報の印刷層を設け、該印刷層を隠蔽し、スクラッチ可能なスクラッチ層を、剥離層を介して設け、さらに該スクラッチ層の上に、ホログラム転写層を設けたスクラッチカードにおいて、該ホログラム転写層が、請求項1または2記載のホログラム転写箔を用いて、転写形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のホログラム転写箔は、基材の一方の面に、ホログラム転写層を有する構成で、ホログラム転写層が少なくとも剥離層、ホログラム層、金属蒸着層、隠蔽層、接着層を順次形成したものからなり、該接着層が感熱接着剤と、フィラーを含有し、該感熱接着剤の融点が70〜85℃であるようにした。これにより、被転写体のカード基材が耐熱性の低い材料である場合でも、ホログラム転写時の加熱温度を従来は100℃以上であった条件から、加熱温度を80℃程度にすることができ、ホログラム転写層をカード基材に異常なく転写、接着させることができ、またカード基材が熱変形することを防止することができた。
【0009】
また、ホログラム転写箔は、前記の感熱接着剤が脂肪族ポリエステル系樹脂であり、かつフィラーがマイクロシリカを用いることが好ましく、ホログラム転写層のカード基材への転写、接着性が向上する。本発明のスクラッチカードは、カード基材の上に、秘密情報の印刷層を設け、該印刷層を隠蔽し、スクラッチ可能なスクラッチ層を、剥離層を介して設け、さらに該スクラッチ層の上に、ホログラム転写層を設けた構成において、該ホログラム転写層が、上記のホログラム転写箔を用いて、転写形成されたものである。これにより、非常に意匠性が高く、またセキュリティ性も高く、個別情報等を示す印刷層がスクラッチ層により、確実に隠蔽されている。そして、そのスクラッチ層を削り取ることにより、隠蔽されていた印刷層が現れて、印刷層の情報を認識することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1は、本発明の1実施例を示すホログラム転写箔の断面図である。図示したホログラム転写箔1は、基材2の一方の面に、剥離層3、ホログラム層4、金属蒸着層5、隠蔽層6、接着層7を順次積層して形成された構成であり、この例では、剥離層3、ホログラム層4、金属蒸着層5、隠蔽層6、接着層7がホログラム転写層8として、被転写体へ転写されて利用される。
【0011】
図2は、本発明のスクラッチカードの1実施例を示す断面図である。図示したスクラッチカード10は、カード基材11の上に、秘密情報の印刷層12を設け、該印刷層12を覆うように、剥離層13、スクラッチ層14、ホログラム転写層8を積層した構成である。このスクラッチカード10の最表面層に位置しているホログラム転写層8は、図1に示したようなホログラム転写箔1を使用して、熱転写により、基材2から剥離、転写させて形成したものである。図2では、ホログラム転写層8として示しているが、詳しくはスクラッチ層と接するように、接着層があり、接着層/隠蔽層/金属蒸着層/ホログラム層/剥離層の順に積層したものである。
【0012】
本発明のホログラム転写箔を構成する各層について、以下に詳細に説明する。
(基材)ホログラム転写箔の基材2としては、耐熱性、機械的強度、耐溶剤性などがあれば、用途に応じて種々の材料が適用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート・ポリブチレンテレフタレート・ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニルなどのビニル系樹脂、アクリル系樹脂、イミド系樹脂、ポリアリレートなどのエンジニアリング樹脂、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン系樹脂、セロファンなどのセルロース系フィルムなどが挙げられる。該基材は、これら樹脂を主成分とする共重合樹脂、または、混合体(アロイでを含む)、若しくは複数層からなる積層体であっても良い。通常は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系のフィルムが、耐熱性、機械的強度がよいため好適に使用され、ポリエチレンテレフタレートが最適である。
【0013】
また、該基材は、延伸フィルムでも、未延伸フィルムでも良いが、強度を向上させる目的で、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムが好ましい。該基材の厚さは、通常、2.5〜50μm程度が適用できるが、2.5〜12μmが好適で、4〜6μmが最適である。該基材は、剥離層などの塗布に先立って塗布面へ、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、プライマー(アンカーコート、接着促進剤、易接着剤とも呼ばれる)塗布処理、予熱処理、除塵埃処理、蒸着処理、アルカリ処理、などの易接着処理を行ってもよい。また、必要に応じて、充填剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤などの添加剤を基材に加えても良い。
【0014】
(離型層、剥離層)ホログラム転写時の剥離性を向上させるために、基材とホログラム層との間に剥離層3を設け、必要に応じて、基材と剥離層との間に離型層も設けてもよく、離型層及び剥離層の両方を設けるとより転写性を向上できる。
【0015】
(離型層)離型層としては、通常、離型性樹脂、離型剤を含んだ樹脂、電離放射線で架橋する硬化性樹脂などがあるが、メラミン系樹脂を用い、後述するホログラム層又はハードコート層と組合わせることで、離型層との剥離性が安定し、転写時の転写性を向上させることができる。離型層の形成は、前記樹脂を溶媒へ分散又は溶解して、ロールコート、グラビアコートなどの公知のコーティング方法で、塗布し乾燥して、温度150℃〜200℃程度で焼き付ける。離型層の厚さとしては、通常は0.01μm〜5.0μm程度、好ましくは0.5μm〜3.0μm程度である。
【0016】
(剥離層)剥離層3としては、弗素系樹脂、シリコーン、各種のワックスなどの離型剤を添加または共重合させたアクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、繊維素系樹脂、ワックス、メラミン系樹脂等が例示でき、離型層及び剥離層の両方を設ける場合には、適宜組み合わせて用いればよい。いずれにしても、剥離層はホログラム転写後に、保護層としての機能を合わせ持つ。剥離層の形成法、厚さについては、上記の離型層の場合と同様である。
【0017】
(ホログラム層)ホログラム層4としては、少なくとも電離放射線硬化樹脂、反応性シリコーン及びポリエチレンワックスを含ませる。また、好ましくは、ホログラム層の材料としては、(1)分子中にイソシアネート基を3個以上有するイソシアネート類、
(2)分子中に水酸基を少なくとも1個と(メタ)アクリロイルオキシ基を少なくとも2個有する多官能(メタ)アクリレート類、又は(3)分子中に水酸基を少なくとも2個有する多価アルコール類の反応生成物であるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含有する電離放射線硬化性樹脂(本明細書では「電離放射線硬化性樹脂組成物M」と呼称する)、反応性シリコーン及びポリエチレンワックスを含むようにする。さらに好ましくは、(メタ)アクリレートオリゴマーも含ませて硬化させる。該組成物を塗布し乾燥して、ホログラム機能を発現する微細な凹凸レリーフを賦型した後に、電離放射線で硬化させればよい。尚、電離放射線硬化性樹脂は架橋性樹脂ともいわれる。
【0018】
(電離放射線硬化性樹脂組成物M)「電離放射線硬化性樹脂組成物M」としては、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含有する電離放射線硬化性樹脂の硬化物、具体的には、特開2001−329031号公報で開示されている光硬化性樹脂などが例示でき、実施例でも述べる。即ち、「電離放射線硬化性樹脂組成物M」(1)分子中にイソシアネート基を3個以上有するイソシアネート類、(2)分子中に水酸基を少なくとも1個と(メタ)アクリロイルオキシ基を少なくとも2個有する多官能(メタ)アクリレート類、又は(3)分子中に水酸基を少なくとも2個有する多価アルコール類の反応生成物である。
【0019】
((メタ)アクリレートオリゴマー)(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、耐熱性のあるオリゴマーであればよく、例えば、日本合成化学社の商品名;紫光6630B、7510B、7630Bなどが例示できる。
【0020】
(ポリエチレンワックス)ポリエチレンワックスとしては、ポリエチレン系樹脂の粒子やビーズが挙げられるが、好ましくは球状ビーズである。但し、ポリエチレンワックスを添加すると、箔切れ性は低下するので、その添加量は、電離放射線硬化樹脂100質量部に対して、0.01〜10質量部程度、好ましくは0.1〜5質量部とする。
【0021】
(反応性シリコーン)反応性シリコーンとしては、電離放射線で硬化時に樹脂と反応し結合して一体化するもので、アクリル変性、メタクリル変性、又はエポキシ変性などで変性した反応性シリコーンで、該反応性シリコーンを含有させる質量基準での割合としては「電離放射線硬化性樹脂組成物M」100に対して、0.1〜10部程度、好ましくは0.3〜5部である。この範囲未満ではレリーフの賦型時にプレススタンパとの剥離が不十分であり、プレススタンパの汚染を防止することが困難で賦型性が悪い。また、この範囲を超えてはホログラム層面への金属蒸着層の密着性が低く、ホログラム層と金属蒸着層との間で剥離し、商品価値を失ってしまう。従来のシリコーンオイルの添加では、金属蒸着層との密着性が悪い。
【0022】
このように、ホログラム層には、「電離放射線硬化性樹脂組成物M」、必要に応じて(メタ)アクリレートオリゴマー、反応性シリコーン、及びポリエチレンワックスを含ませることで、レリーフの賦型性がよく光回折効果が高く、かつ、ハードコート機能を兼ねさせることができる。特にポリエチレンワックスを含有させることで、耐擦傷性(耐スクラッチ性)が著しく向上する。
【0023】
(1)電離放射線硬化前の塗布状態のホログラム層の塗膜は指乾状態でべとつかず、ブロッキングせずに巻き取ることができるので、ロールツーロール加工ができる。
(2)ホログラム層へは反応性シリコーンを含ませると、塗布表面に集まりスタンパの凹凸からの剥離がよく賦型性が向上して、レリーフ構造を容易に賦型でき、賦型後には電離放射線で硬化すれば反応性シリコーンも硬化する。
(3)ポリエチレンワックスを含ませることで、極めて過酷な環境での使用、長期間にわたる使用、及び/又は多数回の繰り返し使用などでも、溶剤、機械的な摩擦、及び摩耗から、カード基材に設けた印刷層を保護し、傷付きにくく耐久性に優れる。
(4)ホログラム層は剥離層と界面を接しているので、ホログラム層と剥離層との間で剥離し、安定した剥離性を有するので、転写時には箔切れがよく、バリなどの発生も極めて少なくすることができる。
【0024】
(ホログラム層の形成)ホログラム層は、上記の電離放射線硬化性樹脂、必要に応じて(メタ)アクリレートオリゴマー、反応性シリコーン、及びポリエチレンワックスを含ませ、さらに必要に応じて光重合開始剤、可塑剤、安定剤、界面活性剤等を加え、溶媒へ分散または溶解して、ロールコート、グラビアコート、コンマコート、ダイコートなどの公知のコーティング方法で塗布し乾燥して塗膜を形成すれば良い。ホログラム層の厚さとしては、通常は0.5μm〜20μm程度、好ましくは1μm〜10m程度であり、複数回の塗布でもよい。
【0025】
(ホログラム)次に、ホログラム層の表面には、ホログラムなどの光回折効果の発現する所定のレリーフ構造を賦型し、硬化させる。ホログラムは物体光と参照光との光の干渉による干渉縞を凹凸のレリーフ形状で記録されたもので、例えば、フレネルホログラム等のレーザ再生ホログラム、及びレインボーホログラム等の白色光再生ホログラム、さらに、それらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータジェネレーティッドホログラム(CGH)、ホログラフィック回折格子などがある。レリーフ形状は凹凸形状であり、特に限定されるものではなく、微細な凹凸形状を有する光拡散、光散乱、光反射、光回折などの機能を発現するものでもよく、例えば、フーリエ変換やレンチキュラーレンズ、光回折パターン、モスアイ、が形成されたものである。また、光回折機能はないが、特異な光輝性を発現するヘアライン柄、マット柄、万線柄、干渉パターンなどでもよい。
【0026】
これらのレリーフ形状の作製方法としてはホログラム撮影記録手段を利用して作製されたホログラムや回折格子の他に、干渉や回折という光学計算に基づいて電子線描画装置等を用いて作製されたホログラムや回折格子をあげることもできる。また、ヘアライン柄や万線柄のような比較的大きなパターンなどは機械切削法でもよい。これらのホログラム及
び/又は回折格子の単一若しくは多重に記録しても、組み合わせて記録しても良い。これらの原版は公知の材料、方法で作成することができ、通常、感光性材料を塗布したガラス板を用いたレーザ光干渉法、電子線レジスト材料を塗布したガラス板に電子線描画装置を用いてパターン作製する電子線描画法をなどが適用できる。
【0027】
(レリーフの賦型)ホログラム層面へ、上記のレリーフ形状を賦形(複製ともいう)する。ホログラムの賦型は、公知の方法によって形成でき、例えば、回折格子やホログラムの干渉縞を表面凹凸のレリーフとして記録する場合には、回折格子や干渉縞が凹凸の形で記録された原版をプレス型(スタンパという)として用い、上記樹脂層(ホログラム層)上に前記原版を重ねて加熱ロールなどの適宜手段により、両者を加熱圧着することにより、原版の凹凸模様を複製することができる。
【0028】
(レリーフの硬化)ホログラム層は、スタンパでエンボス中、又はエンボス後に、電離放射線を照射して、電離放射線硬化性樹脂を硬化させる。上記の電離放射線硬化性樹脂は、レリーフを形成後に、電離放射線を照射して硬化(反応)させると電離放射線硬化樹脂(ホログラム層)となる。電離放射線としては、電磁波が有する量子エネルギーで区分する場合もあるが、本明細書では、すべての紫外線(UV−A、UV−B、UV−C)、可視光線、ガンマー線、X線、電子線を包含するものと定義する。従って、電離放射線としては、紫外線(UV)、可視光線、ガンマー線、X線、または電子線などが適用できるが、紫外線(UV)が好適である。電離放射線で硬化する電離放射線硬化性樹脂は、紫外線硬化の場合は光重合開始剤、及び/又は光重合促進剤を添加し、エネルギーの高い電子線硬化の場合は添加しないで良く、また、適正な触媒が存在すれば、熱エネルギーでも硬化できる。
【0029】
(レリーフの絵柄)ホログラム層の絵柄は、特に限定されないが、擬似連続絵柄とすることが好ましい。擬似連続絵柄はプレス型(スタンパという)を作成する際に、小さなレリーフ版の複数を、精度よく突合せてつなぎ目を目立たなくしたり、つなぎ目を樹脂で埋めたりすればよい。このように、擬似連続絵柄とすることで、できるだけ大きな面積、又は好ましくは全面とすることもできる。
【0030】
(金属蒸着層)金属蒸着層5は、所定のレリーフ構造を設けたホログラム層4面のレリーフ面へ、金属蒸着層5を設けることにより、レリーフの反射及び/又は回折効果を高めるので、ホログラム層4の反射率より高れば、特に限定されない。
【0031】
金属蒸着層として、ほぼ無色透明な色相で、その光学的な屈折率がホログラム層のそれとは異なることにより、金属光沢が無いにもかかわらず、ホログラムなどの光輝性を視認できるから、透明なホログラムを作製することができる。例えば、ホログラム層よりも光屈折率の高い薄膜、および光屈折率の低い薄膜とがあり、前者の例としては、ZnS、TiO2、Al23、Sb23、SiO、SnO2、ITO等があり、後者の例としては、LiF、MgF2、AlF3がある。好ましくは、金属酸化物又は窒化物であり、具体的には、Be、Mg、Ca、Cr、Mn、Cu、Ag、Al、Sn、In、Te、Fe、Co、Zn、Ge、Pb、Cd、Bi、Se、Ga、Rb、Sb、Pb、Ni、Sr、Ba、La、Ce、Au等の酸化物又は窒化物他はそれらを2種以上を混合したもの等が挙げられる。またアルミニウム等の一般的な光反射性の金属薄膜も、厚みが200Å以下になると、透明性が出て使用できる。
【0032】
透明金属化合物の形成は、金属の薄膜と同様、ホログラム層のレリーフ面に、10〜2000nm程度、好ましくは20〜1000nmの厚さになるよう、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVDなどの真空薄膜法などにより設ければよい。さらには、ホログラム層と光の屈折率の異なる透明な合成樹脂を使用してもよい。
【0033】
(隠蔽層)
隠蔽層6は、カード基材上に設けた秘密情報の印刷層の隠蔽性を高めるための層であり、例えば、墨インキ等の暗色系の着色層である。この着色層は、炭素が含まれない非炭素インキとして構成した藍、黄、紅を混色したものや、導電性を有さない非導電性インキによって形成される。隠蔽層の厚みは、隠蔽性を十分に確保するため、0.5〜5.0μm程度が好ましい。
【0034】
(接着層)本発明の接着層7としては、感熱接着剤と、フィラーを含有したもので、該感熱接着剤の融点が70〜85℃である。該感熱接着剤は融点が70〜85℃である樹脂やワックスなどが挙げられるが、特に脂肪族ポリエステル系樹脂がホログラム転写層のカード基材への転写、接着性が向上するので、好ましく用いられる。その脂肪族ポリエステル系樹脂は、具体的にはポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート等が挙げられ、これらの一種または2種以上のブレンド体が使用できる。但し、接着層に含有する感熱接着剤の脂肪族ポリエステル系樹脂は、ブレンド体であっても、個々の樹脂の融点は全て70〜85℃の条件を満足するものである。
【0035】
また、接着層を構成する感熱接着剤が脂肪族ポリエステル系樹脂を主体にして、その他の感熱接着剤も使用することができる。該その他の感熱接着剤は、変性ポリオレフィン系樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ビニル系樹脂、アクリル系・メタクリル系などの(メタ)アクリル系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン系樹脂などが使用できる。また、接着層を構成する感熱接着剤が脂肪族ポリエステル系樹脂を主体にしている事ことが好ましく、その脂肪族ポリエステル系樹脂の融点は70〜85℃であり、接着層に含有するその他の感熱接着剤の融点は、70〜85℃の条件から外れてもよい。
【0036】
接着層には、箔切れ性を向上させるために、マイクロシリカ、マグネシア等のフィラーを含有させる。特に、箔切れ性の良好なマイクロシリカが好ましく用いられる。また、接着層の感熱接着剤の融点が、上記範囲未満であると、被転写体との接着性が不十分であり、また、融点が上記範囲を越えると、ホログラム転写層の加熱による転写性が不十分となる。接着層の形成は、上記の感熱接着剤、フィラーなどを溶剤に溶解または分散させて、公知のロールコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティングなどの方法で塗布し乾燥させる。接着層の厚さは1〜30μmである。
【0037】
以下に、本発明のスクラッチカードを構成する各層について、以下に詳細に説明する。
(カード基材)カード基材11としては、特に限定されず、例えば天燃繊維紙、コート紙、トレーシングペーパー、プラスチックフイルム、ガラス、金属、セラミックス、木材、布あるいは染料受容性のある媒体等いずれのものでもよく、用途によって、適宜選択すればよい。また、カード基材の媒体はその少なくとも1部が、画像、着色、印刷、その他の加飾が施されていてもよい。
【0038】
本発明では、上記に説明したホログラム転写箔を使用して、カード基材/印刷層/剥離層/スクラッチ層の構成のスクラッチカードにおけるスクラッチ層の上に、ホログラム転写層を転写形成する。特に、ホログラム転写時の加熱温度を従来は100℃以上であった条件から、本発明ではその加熱温度を80℃程度にすることができ、すなわちホログラム転写の加熱温度を低温化できるので、カード基材が耐熱性の低い材料、例えば、ポリ乳酸などの生分解性プラスチック材料でも使用することが可能となった。
【0039】
(印刷層)カード基材へ秘密情報を印刷し印刷層12を形成する。該印刷層は、カード基材の少なくとも一方の面に形成されており、適宜の秘密情報(例えば、くじの当否、くじの番号、個別情報、シリアルナンバー、可変ナンバー、文字データ、画像、コード、マーク等)が印刷された層である。オフセット印刷、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷などの公知の印刷法で形成すればよい。また、熱転写記録や、ドットインパクト記録等で、印字することにより、印刷層を形成してもよい。
【0040】
本発明のスクラッチカードは、カード基材の上に、上記の秘密情報の印刷層を設け、該印刷層を隠蔽し、スクラッチ可能なスクラッチ層を、剥離層を介して設け、さらに該スクラッチ層の上に、ホログラム転写層を設けた構成であるが、印刷層の上の剥離層は、上記ホログラム転写箔のホログラム転写層の構成要素である剥離層と同様の材料と、形成方法が適用できる。
【0041】
(スクラッチ層)
スクラッチ層14は、コイン等で削り取ることが可能な層であって、印刷層に印刷された秘密情報を隠蔽するために、印刷層を覆うように設ける。該スクラッチ層は、隠蔽性のあるインキを印刷すればよい。例えば、金属粉をインキ化した銀インキなどをオフセット印刷、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷などの公知の印刷法で形成すればよく、隠蔽性をあげるために、同一パターンで複数回、重ね印刷してもよい。
【実施例】
【0042】
次に、実施例を挙げて、本発明についてさらに具体的に説明する。
なお、以下、「部」又は「%」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
(実施例1)
基材2として厚さ25μmのPETフィルムを用い、該基材2の一方の面へ、グラビアコート法で、シリコーン系樹脂の塗工液を乾燥後2μmになるように塗布し乾燥して、剥離層3を形成した。
該剥離層3面へ、下記の電離放射線硬化性樹脂組成物をグラビアリバースコーターで
乾燥後の厚さが2μmになるように、塗工し100℃で乾燥させた。
【0043】
・<電離放射線硬化性樹脂組成物の作製手順>
まず、「電離放射線硬化性樹脂組成物M」は以下の手順で、生成した。撹拌機、還流冷却器、滴下漏斗及び温度計を取り付けた反応器に、酢酸エチル206.1g及びイソホロンジイソシアネートの三量体(HULS社製品、VESTANAT T1890、融点110℃)133.5gを仕込み、80℃に昇温して溶解させた。溶液中に空気を吹き込んだのち、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.38g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(大阪有機化学工業社製品、ビスコート300)249.3g及びジブチル錫ジラウレート0.38gを仕込んだ。80℃で5時間反応させたのち酢酸エチル688.9gを添加して冷却した。
【0044】
上記「電離放射線硬化性樹脂組成物M」と、造膜性樹脂(アクリル系オリゴマー)、反応性シリコーン、ポリエチレンワックス、光重合開始剤、及び溶媒を下記の組成で配合して電離放射線硬化性樹脂組成物を調製した。なお組成部は成分換算部であり以下同様である。
・<ホログラム層の電離放射線硬化性樹脂組成物>
「電離放射線硬化性樹脂組成物M」 25部
メタアクリレートオリゴマー(日本合成化学社製、商品名紫光6630B) 5部
反応性シリコーン(信越化学社製、商品名X−22−2445) 0.2部
ポリエチレンワックス(平均粒径2.0μm) 0.3部
光重合開始剤(チバ社製、商品名イルガキュア907) 0.9部
酢酸エチル 70部
【0045】
次に、該層面へ、2光束干渉法による回折格子から2P法で複製した擬似連続絵柄としたスタンパを複製装置のエンボスローラーに貼着して、相対するローラーと間で加熱プレス(エンボス)して、微細な凹凸パターンからなるレリーフを賦形させた。賦形後直ちに、高圧水銀灯を用いて紫外線を照射して硬化させた。該ホログラム層のレリーフ面へ真空蒸着法で厚さが50nmのアルミニウム薄膜を形成して金属蒸着層5を形成した。
【0046】
次に、該金属蒸着層5面へ、墨インキをグラビアコーターで乾燥後の塗布量が2μmになるように、塗工し乾燥させて、厚さ2μmの隠蔽層6を形成した。さらに、その隠蔽層の上に、下記の接着層組成物をグラビアコーターで乾燥後の塗布量が2μmになるように、塗工し100℃で乾燥させて、接着層7を形成した。
・<接着層組成物>
脂肪族ポリエステル系樹脂 140部
(融点75℃、大日精化(株)製、バイオテックカラーHGP)
変性ポリオレフィン樹脂 100部
(和信化学工業(株)製、プラスコートOP−2クリヤー)
マイクロシリカ(平均粒子径0.5μ) 15部
硬化剤(ザ・インクテック(株)製、グラビアA−50) 45部
酢酸エチル 90部
トルエン 45部
【0047】
以上のようにして、基材2/剥離層3/ホログラム層4/金属蒸着層5//隠蔽層6/接着層7の層構成からなるホログラム転写箔1を得た。(図1を参照)
【0048】
次に、以下に示す条件にて、スクラッチカードを作製した。
カード基材11として、厚さ188μmの生分解性プラスチックのポリ乳酸フィルムを用い、該カード基材上に、秘密情報として番号を墨インキで、オフセット印刷法で印刷して印刷層12を形成した。該印刷層12面の秘密情報である番号部分を充分に覆うように、シリコーン系インキを用いてシルクスクリーン印刷法で、剥離層13を形成した。その剥離層13面へ、昭和インキ(株)製シルクインキNo.2シルバーを用いてシルクスクリーン印刷法で、4.1g/m2の塗工量でスクラッチ層14を形成した。
【0049】
上記で得られたスクラッチ層14/剥離層13/印刷層12/カード基材11の層構成からなる積層体と、上記で作製したホログラム転写箔1を転写機へ装填した。積層体のスクラッチ層14面と、ホログラム転写箔1の接着層7面とを対峙させて、加熱したスタンパを降下させて押圧した後に、スタンパを上昇させ同時に、ホログラム転写箔1の基材2を引き上げて基材2のみを除去して、ホログラム転写層8をカード基材11の側へ転写して、実施例1のスクラッチカードを得た。但し、上記のホットスタンプの条件は、転写機として、NAVITAS(株)製HOT STAMPING MACHINE 08を用い、転写温度75℃、転写時間1.0〜1.5秒にて行なった。
【0050】
結果として、実施例1では、ホログラム転写箔を用いて、ホログラム転写層をカード基材のスクラッチ層の上に転写させる際に、箔切れ性が良好であり、予定通りの大きさのホログラム転写層がバリもなく、カード基材側に転写形成できた。そして、ホログラム転写層のスクラッチ層との密着性が高いものであった。また、カード基材として耐熱性の低い材料であるポリ乳酸を使用しても、ホログラム転写の際の加熱温度で変形することがなかった。また得られたスクラッチカードは高意匠性を有し、スクラッチ層をホログラム転写層とともに、コインで削り取ると、隠蔽されていた秘密情報としての番号が現れて、認識することができた。このいったん削り取られたスクラッチカードは元に戻ることはなく、セキュリティ性の高いものであった。
【0051】
(実施例2)
上記実施例1で作製したホログラム転写箔と同条件の転写箔を用い、スクラッチカードとしては、実施例1で作製した条件において、スクラッチ層の形成を以下の条件にした以外は、実施例1と同様にして、スクラッチカードを作製した。
スクラッチ層形成用インキとして、帝国インキ(株)製RUB−486を用いてシルクスクリーン印刷法で、4.7g/m2の塗工量でスクラッチ層を形成した。
【0052】
そして、上記のホログラム転写箔とスクラッチカードを用いて、実施例1におけるホログラム転写のホットスタンプの条件で、ホログラム転写層をスクラッチカードのスクラッチ層の上に転写した。但し、ホットスタンプの転写温度は85℃で行なった。結果として、実施例2では、ホログラム転写箔を用いて、ホログラム転写層をカード基材のスクラッチ層の上に転写させる際に、箔切れ性が良好であり、予定通りの大きさのホログラム転写層がバリもなく、カード基材側に転写形成できた。そして、ホログラム転写層のスクラッチ層との密着性が高いものであった。また、カード基材として耐熱性の低い材料であるポリ乳酸を使用しても、ホログラム転写の際の加熱温度で変形することがなかった。また得られたスクラッチカードは高意匠性を有し、スクラッチ層をホログラム転写層とともに、コインで削り取ると、隠蔽されていた秘密情報としての番号が現れて、認識することができた。このいったん削り取られたスクラッチカードは元に戻ることはなく、セキュリティ性の高いものであった。
【0053】
(比較例1)
上記実施例1におけるホログラム転写箔で、接着層組成物を下記組成に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1のホログラム転写箔を作製した。
・<接着層組成物>
変性ポリオレフィン樹脂 100部
(融点110℃、和信化学工業(株)製、プラスコートOP−16クリヤー)
マイクロシリカ(平均粒子径0.5μ) 15部
硬化剤(ザ・インクテック(株)製、グラビアA−50) 45部
酢酸エチル 90部
トルエン 45部
【0054】
また、スクラッチカードは、実施例1で用意したスクラッチカードの作製条件と同様にして、作製した。また、上記のホログラム転写箔とスクラッチカードを用いて、実施例1におけるホログラム転写のホットスタンプの条件で、ホログラム転写層をスクラッチカードのスクラッチ層の上に転写した。但し、ホットスタンプの転写温度は75〜85℃で行なうと、ホログラム転写層とスクラッチ層との密着性が低く、簡単に剥がれてしまうので、転写温度は110℃で行なった。
【0055】
結果として、比較例1では、ホログラム転写箔を用いて、ホログラム転写層をカード基材のスクラッチ層の上に転写させる際に、ホログラム転写層をカード基材側に転写形成できた。しかし、カード基材として耐熱性の低い材料であるポリ乳酸を使用しているので、ホログラム転写時の加熱温度により、カード基材が変形してしまい、スクラッチカード製品として実用できるものではなかった。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の1実施例を示すホログラム転写箔の断面図である。
【図2】本発明のスクラッチカードの1実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 ホログラム転写箔
2 基材
3 剥離層
4 ホログラム層
5 金属蒸着層
6 隠蔽層
7 接着層
8 ホログラム転写層
10 スクラッチカード
11 カード基材
12 印刷層
13 剥離層
14 スクラッチ層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の面に、ホログラム転写層を有するホログラム転写箔において、ホログラム転写層が少なくとも剥離層、ホログラム層、金属蒸着層、隠蔽層、接着層を順次形成したものからなり、該接着層が感熱接着剤と、フィラーを含有し、該感熱接着剤の融点が70〜85℃であることを特徴とするホログラム転写箔。
【請求項2】
前記の感熱接着剤が脂肪族ポリエステル系樹脂であり、かつフィラーがマイクロシリカであることを特徴とする請求項1に記載するホログラム転写箔。
【請求項3】
カード基材の上に、秘密情報の印刷層を設け、該印刷層を隠蔽し、スクラッチ可能なスクラッチ層を、剥離層を介して設け、さらに該スクラッチ層の上に、ホログラム転写層を設けたスクラッチカードにおいて、該ホログラム転写層が、請求項1または2記載のホログラム転写箔を用いて、転写形成されたことを特徴とするスクラッチカード。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−18468(P2009−18468A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182009(P2007−182009)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】