説明

ホース巻取り装置及びホース巻取り軸構造

【課題】 ホースを容易に堅く巻き取ることができるホース巻取り装置を提供する。
【解決手段】 装置本体4と、装置本体4の一端部に旋回自在に装着された旋回アーム52と、旋回アーム52の先端部に設けられた巻取りハウジングと、巻取りハウジングに回転自在に支持されたホース巻取り軸60と、ホース巻取り軸60を回転駆動させるための回転操作ハンドル66と、旋回アーム52の基端部に設けられた把持アーム54と、装置本体4に回転自在に支持された案内支持ローラ20と、を備える。ホース14を巻き取るときには、ホース14の一端部が案内支持ローラ20の上を通してホース巻取り軸60に保持され、把持アーム54を持ち上げることにより装置本体4の一端部側が上方に起こされる。旋回アーム54が近接方向に旋回されてホース14の所定部位が案内支持ローラ20に接触乃至押圧され、この状態を保ちながら回転操作ハンドル66が所定方向に回転される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば消防用ホースや排水用ホースなどのホースを巻き取るためのホース巻取り装置及びホース巻取り軸構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば消防用ホースや排水用ホースなどのホースを巻き取るためのホース巻取り装置が利用されている(例えば、特許文献1参照)。従来のホース巻取り装置は装置本体を備え、この装置本体は、上下に延びる略逆U字状の主フレームと、主フレームの上端部より斜め下方に延びる一対の傾斜フレームと、主フレーム及び一対の傾斜フレームの各下端部を相互に連結する一対の連結フレームと、を有している。一方の傾斜フレームには巻取り金具が回転自在に支持され、この巻取り金具には一対のピンが設けられている。また、一方の傾斜フレームには、回転操作ハンドルと、回転操作ハンドルの回転を巻取り金具に伝達するための駆動伝達機構とが設けられている。更に、装置本体の下端部には、この装置本体を移動自在に支持するための複数の車輪が設けられている。
【0003】
このホース巻取り装置では、次のようにしてホースが巻き取られる。ホースの一端部(接続金具)を一対のピン間に引っ掛けた後に、ホースが延びている方向に装置本体を移動させながら、回転操作ハンドルを所定方向に回転させる。このように回転させると、回転操作ハンドルの回転が巻取り金具に伝達されることにより、巻取り金具が所定方向に回転され、ホースが一対のピンに巻き取られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−171834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来のホース巻取り装置では、次のような問題がある。ホースが延びている方向に装置本体を移動させながらホースを一対のピンに巻き取るので、ホースに巻き取り張力が作用しない状態でホースが巻き取られるようになる。それ故に、ホースを堅く巻き取ることができず、巻き崩れが生じるおそれがある。また、ホースの一端部は一対のピン間に単に引っ掛けられているだけであるので、ホースの巻き取り中に、ホースの一端部が一対のピン間から外れるおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、ホースを容易に堅く巻き取ることができるホース巻取り装置を提供することである。
【0007】
また、本発明の他の目的は、ホースの一端部を確実に固定保持することができるホース巻取り軸構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載のホース巻取り装置では、ホースを巻き取るためのホース巻取り装置であって、
装置本体と、前記装置本体の一端部に旋回自在に装着された旋回アームと、前記旋回アームの先端部に設けられた巻取りハウジングと、前記巻取りハウジングに回転自在に支持されたホース巻取り軸と、前記ホース巻取り軸を回転駆動させるための回転操作ハンドルと、前記旋回アームの基端部に設けられた把持アームと、前記装置本体に回転自在に支持され、前記ホースを案内するための案内支持ローラと、を備え、前記旋回アームは、前記ホース巻取り軸が前記案内支持ローラに近接する近接方向と、前記ホース巻取り軸が前記案内支持ローラより離隔する離隔方向とに旋回自在に構成され、
前記ホースを巻き取るときには、前記ホースの一端部又は二つ折りした前記ホースの中央部が前記案内支持ローラの上を通して前記ホース巻取り軸に保持され、前記把持アームを持ち上げることにより前記装置本体の一端部側が上方に起こされ、これにより前記旋回アームが前記近接方向に旋回されて前記ホースの所定部位が前記案内支持ローラに接触乃至押圧され、この接触乃至押圧状態を保ちながら前記回転操作ハンドルが所定方向に回転されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に記載のホース巻取り装置では、前記ホース巻取り軸は、前記回転操作ハンドルに駆動連結されるとともに前記巻取りハウジングに回転自在に支持された回転軸部と、前記回転軸部に支持された固定爪部と、前記固定爪部に傾動自在に支持された可動爪部と、前記回転操作ハンドルの回転を前記可動爪部の傾動に変換するための移動変換機構と、を備え、前記可動爪部は、その先端部が前記固定爪部に近接する保持方向と、その先端部が前記固定爪部より離隔する保持解除方向とに傾動自在に構成されており、
前記回転操作ハンドルが前記所定方向に回転されると、前記回転操作ハンドルの回転が前記移動変換機構を介して前記可動爪部の前記保持方向の傾動に変換され、これにより前記ホースの一端部が前記固定爪部と前記可動爪部との間に固定保持され、また前記回転操作ハンドルが前記所定方向と反対方向に回転されると、前記回転操作ハンドルの回転が前記移動変換機構を介して前記可動爪部の前記保持解除方向の傾動に変換され、これにより前記固定爪部及び前記可動爪部による前記ホースの一端部の固定保持が解除されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3に記載のホース巻取り装置では、前記装置本体の他端部側には、前記ホースの上流側における両側部を案内するための一対の上流側案内ローラが設けられ、前記一対の上流側案内ローラは、前記装置本体の一端部側且つ内側に向けてハの字状に延びていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項4に記載のホース巻取り装置では、前記装置本体には、前記ホースの下流側における両側部を案内するための一対の下流側案内ローラが設けられ、前記一対の下流側案内ローラは前記案内支持ローラに近接して且つその上流側に配設され、また、前記一対の下流側案内ローラの離間距離を調節するための離間距離調節手段が設けられていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項5に記載のホース巻取り装置では、前記装置本体の他端部側には支持フレームが設けられ、前記一対の下流側案内ローラと前記支持フレームとの間には、巻き取られた前記ホースを収容するためのホース収容部が形成され、前記装置本体の他端部には更に、前記装置本体を移動自在に支持するための車輪が設けられており、
巻き取られた前記ホースが前記ホース収容部に収容された状態で、前記把持アームを持ち上げることにより前記装置本体の一端部側が上方に起こされると、巻き取られた前記ホースが前記支持フレームによって下方より支持されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項6に記載のホース巻取り軸構造では、ホースを巻き取る際に、前記ホースの一端部を固定保持するためのホース巻取り軸構造であって、
巻取りハウジングと、前記巻取りハウジングに回転自在に支持された回転軸部と、前記回転軸部を回転駆動させるための回転操作ハンドルと、前記回転軸部に支持された固定爪部と、前記固定爪部に傾動自在に支持された可動爪部と、前記回転操作ハンドルの回転を前記可動爪部の傾動に変換するための移動変換機構と、を備え、前記可動爪部は、その先端部が前記固定爪部に近接する保持方向と、その先端部が前記固定爪部より離隔する保持解除方向とに傾動自在に構成されており、
前記ホースを巻き取るときには、前記回転操作ハンドルが所定方向に回転されることにより、前記回転操作ハンドルの回転が前記移動変換機構を介して前記可動爪部の前記保持方向の傾動に変換され、これにより前記ホースの一端部が前記固定爪部と前記可動爪部との間に固定保持され、この固定保持状態にて前記回転操作ハンドルが前記所定方向に更に回転されると、前記固定爪部及び前記可動爪部が一体的に回転して前記ホースが巻き取られ、また巻き取った前記ホースを取り外すときには、前記回転操作ハンドルが前記所定方向と反対方向に回転されることにより、前記回転操作ハンドルの回転が前記移動変換機構を介して前記可動爪部の前記保持解除方向の傾動に変換され、これにより前記固定爪部及び前記可動爪部による前記ホースの一端部の固定保持が解除されることを特徴とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1に記載のホース巻取り装置によれば、ホースを巻き取る際には、把持アームを持ち上げて装置本体の一端部側を上方に起こすことにより、ホースの所定部位がその自重によって案内支持ローラに接触乃至押圧される。これにより、ホースに巻取り張力を作用させながらホースを巻き取ることができ、ホース内に残存する空気や消化剤、水などを抜きながら、ホースをホース巻取り軸に堅くきれいに巻き取ることができる。また、ホース巻取り軸に巻き取られたホースは、案内支持ローラによって下方より支持されるので、装置全体の重心を安定させることができる。
【0015】
また、本発明の請求項2に記載のホース巻取り装置によれば、回転操作ハンドルが所定方向に回転されると、回転操作ハンドルの回転が移動変換機構を介して可動爪部の保持方向の傾動に変換され、ホースの一端部が固定爪部と可動爪部との間に固定保持されるので、ホースの巻き取り中に、ホースの一端部がホース巻取り軸から外れるのを防止することができる。また、回転操作ハンドルが上記所定方向と反対方向に回転されると、回転操作ハンドルの回転が移動変換機構を介して可動爪部の保持解除方向の傾動に変換され、固定爪部及び可動爪部によるホースの一端部の固定保持が解除されるので、ホース巻取り軸に巻き取られたホースを容易に取り外すことができる。
【0016】
また、本発明の請求項3に記載のホース巻取り装置によれば、装置本体の他端部側には一対の上流側案内ローラが設けられているので、ホースを巻き取る際に、ホースの上流側における両側部が一対の上流側案内ローラにより案内され、これによりホースをきれいに揃えながら整然と巻き取ることができる。また、一対の上流側案内ローラは、装置本体の一端部側且つ内側に向けてハの字状に延びているので、装置本体の一端部側を上方に起こした際に、ホース巻取り軸から下方に延びるホースの上流側における両側部を効率良く案内することができる。
【0017】
また、本発明の請求項4に記載のホース巻取り装置によれば、装置本体には一対の下流側案内ローラが設けられているので、ホースを巻き取る際に、ホースの下流側における両側部が一対の下流側案内ローラにより案内され、これによりホースをきれいに揃えながら整然と巻き取ることができる。また、一対の下流側案内ローラの離間距離を調節するための離間距離調節手段が設けられているので、ホースの幅の大きさに応じて、一対の下流側案内ローラの離間距離を調節することができる。
【0018】
また、本発明の請求項5に記載のホース巻取り装置によれば、一対の下流側案内ローラと支持フレームとの間には、巻き取られたホースを収容するためのホース収容部が形成されるので、巻き取られたホースをホース収容部に収容して容易に運搬することができる。
【0019】
また、本発明の請求項6に記載のホース巻取り軸構造によれば、回転操作ハンドルが所定方向に回転されると、回転操作ハンドルの回転が移動変換機構を介して可動爪部の保持方向の傾動に変換され、ホースの一端部が固定爪部と可動爪部との間に固定保持されるので、ホースの巻き取り中に、ホースの一端部がホース巻取り軸から外れるのを防止することができる。また、回転操作ハンドルが上記所定方向と反対方向に回転されると、回転操作ハンドルの回転が移動変換機構を介して可動爪部の保持解除方向の傾動に変換され、固定爪部及び可動爪部によるホースの一端部の固定保持が解除されるので、固定爪部及び可動爪部に巻き取られたホースを容易に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態によるホース巻取り装置を示す斜視図である。
【図2】図1のホース巻取り装置を示す平面図である。
【図3】図1のホース巻取り装置を示す側面図である。
【図4】図1のホース巻取り軸の構造を示す部分断面図である。
【図5】図1のホース巻取り軸の構造を示す斜視図である。
【図6】消防用ホースの一端部をホース巻取り軸に固定保持させた状態を示す図である。
【図7】消防用ホースをホース巻取り軸に巻き取っている状態を示す図である。
【図8】消防用ホースをホース巻取り軸に巻き取った状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明に従うホース巻取り装置及びホース巻取り軸構造の一実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態によるホース巻取り装置を示す斜視図であり、図2は、図1のホース巻取り装置を示す平面図であり、図3は、図1のホース巻取り装置を示す側面図であり、図4は、図1のホース巻取り軸の構造を示す部分断面図であり、図5は、図1のホース巻取り軸の構造を示す斜視図であり、図6は、消防用ホースの一端部をホース巻取り軸に固定保持させた状態を示す図であり、図7は、消防用ホースをホース巻取り軸に巻き取っている状態を示す図であり、図8は、消防用ホースをホース巻取り軸に巻き取った状態を示す図である。
【0022】
図1〜図3を参照して、本実施形態のホース巻取り装置2は装置本体4を備えている。装置本体4は、相互に対向して延びる一対の主フレーム6,8と、各主フレーム6,8の一端部及び長さ方向中央部をそれぞれ相互に接続する第1及び第2接続フレーム10,12と、を有している。なお、以下の説明において、後述する消防用ホース14の巻取り方向に基づき、装置本体4の一端部(図2において右側の端部)側を「下流側」、その他端部(図2において左側の端部)側を「上流側」という。
【0023】
各主フレーム6,8の長さ方向中央部、より具体的には、第2接続フレーム12の下流側に隣接する部位には、一対の支持ブラケット16,18が相互に対向して設けられている。これら一対の支持ブラケット16,18には、略水平方向に延びる案内支持ローラ20が回転自在に支持されている。
【0024】
第2接続フレーム12の両端部には、装置本体4に対して略垂直方向に延びる一対の第1下流側案内ローラ22,24が回転自在に支持されている。これら一対の第1下流側案内ローラ22,24は、案内支持ローラ20に近接して且つその上流側に配設されている。なお、第2接続フレーム12の一端部(ホース巻取り軸60の基端部側における端部)には、複数の取付孔26a,26b,26c(離間距離調節手段を構成する)が所定の間隔を置いて設けられ、第1下流側案内ローラ22は、これら複数の取付孔26a,26b,26cのうち特定の取付孔に回転自在に且つ着脱自在に取り付けられる。巻き取るべき消防用ホース14の幅W(図4参照)の大きさに応じて、第1下流側案内ローラ22が取り付けられる取付孔を適宜変更することによって、一対の第1下流側案内ローラ22,24の離間距離D(図2参照)を調節することができる。例えば、消防用ホース14の幅Wが大きい場合には、第1下流側案内ローラ22を外側の取付孔26aに取り付ければよく、また、消防用ホース14の幅Wが小さい場合には、第1下流側案内ローラ22を中央の取付孔26b又は内側の取付孔26cに取り付ければよい。
【0025】
主フレーム8の長さ方向中央部、より具体的には、ホース巻取り軸60(後述する)の先端部側且つ案内支持ローラ20の下流側の部位には、支持ブラケット28が設けられている。この支持ブラケット28には、装置本体4に対して略垂直方向に延びる第2下流側案内ローラ30が回転自在に支持されている。
【0026】
また、各主フレーム6,8の他端部よりその長さ方向中央部側に幾分偏倚した部位には、一対の支持ブラケット32,34が相互に対向して設けられている。これら一対の支持ブラケット32,34にはそれぞれ、上流側案内ローラ36,38が回転自在に支持されている。一対の上流側案内支持ローラ36,38は、装置本体4の一端部側且つ内側にハの字状に延びるとともに、装置本体4より斜め上方(図3において上方)に幾分傾斜して延びている。
【0027】
各主フレーム6,8の他端部には、略台形状に折り曲げられた一対の支持フレーム40,42が設けられている。支持フレーム40(42)の一端部は、主フレーム6(8)の他端部に取り付けられ、その他端部は、主フレーム6(8)の他端部よりその長さ方向中央部側に幾分偏倚した部位に取り付けられている。
【0028】
一対の第1下流側案内ローラ22,24と一対の支持フレーム40,42との間にはホース収容部44が形成され、このホース収容部44には、後述するようにして巻き取られた消防用ホース14が収容される。また、各主フレーム6,8の他端部には、一対の車輪46,48が回転自在に支持されている。
【0029】
また、主フレーム6の一端部には支持ブラケット50が設けられ、この支持ブラケット50には、旋回アーム52の基端部が旋回自在に装着されている。旋回アーム52の基端部には把持アーム54が設けられており、この把持アーム54は、旋回アーム52の基端部より斜め上方(図3において右斜め上方)に傾斜して延びている。把持アーム54の先端部には、幅方向内側に延びる把持部56が設けられている。旋回アーム52の先端部には、円筒スリーブ状の巻取りハウジング58が設けられ、この巻取りハウジング58にはホース巻取り軸60が回転自在に支持されている。旋回アーム52は、ホース巻取り軸60が案内支持ローラ20に近接する近接方向(図3において矢印Pで示す)と、ホース巻取り軸60が案内支持ローラ20より離隔する離隔方向(図3において矢印Qで示す)とに旋回自在に構成されている。
【0030】
図4及び図5を参照して、ホース巻取り軸60の構造について説明する。巻取りハウジング58の内部には、後述するシャフト75を介して回転軸部62が回転自在に支持されている。回転軸部62はボルトから構成され、回転軸部62の両端部はそれぞれ巻取りハウジング58の外部に延びている。回転軸部62の一端部(ボルトの先端部)には、ホース巻取り軸60を回転駆動させるための回転操作ハンドル66が設けられている。この回転操作ハンドル66の先端部には、幅方向外側に延びる把持部68が設けられている。回転操作ハンドル66の基端部は、回転軸部62の一端部に螺着された一対のナット70,72により挟持されることによって、回転軸部62の一端部に固定支持されている。
【0031】
回転軸部62の他端部には略L字状の固定爪部74が支持されており、固定爪部74の基端部には円筒状のシャフト75が延びて設けられている。このシャフト75は巻取りハウジング58内を貫通して延び、巻取りハウジング58内に一対の軸受64を介して回転自在に支持されている。シャフト75内には、回転軸部62が回転自在に挿入支持されている。また、この固定爪部74の基端部に設けられた軸部材76には、可動爪部78が傾動自在に支持されている。可動爪部78は、略L字状の爪本体部80と、爪本体部80の内側部より延びるストッパ部82と、を有している。回転軸部62の他端部は、爪本体部80の基端部に設けられた貫通孔(図示せず)に回転自在に挿入されている。回転軸部62の他端部にはナット84が螺着され、このナット84の片面は爪本体部80の基端部に連結されている。ストッパ部82の先端部には凹部86が設けられ、この凹部86にはナット84が収容保持されている(図5参照)。凹部86はナット84の形状に対応した形状を有しており、これによりストッパ部82に対するナット84の回転が拘束される。また、ナット84は、回転軸部62の他端部に設けられたボルトの頭部88によって、回転軸部62の他端部から外れるのが防止される。
【0032】
可動爪部78は、その爪本体部80の先端部が固定爪部74に近接する保持方向(図4において矢印Xで示す方向)と、その爪本体部80の先端部が固定爪部74より離隔する保持解除方向(図4において矢印Yで示す方向)との間を傾動自在に構成されている。
【0033】
上述したナット84、爪本体部80の基端部及びストッパ部82は、回転操作ハンドル66の回転を可動爪部78の傾動に変換するための移動変換機構を構成し、この移動変換機構は次のようにして動作される。例えば固定爪部74及び可動爪部78を手で押さえるなどして、回転軸部62に対する固定爪部74及び可動爪部78の回転を拘束した状態で、回転操作ハンドル66を所定方向(図4において矢印Uで示す方向)に回転させると、ナット84が回転軸部62上をその一端部側に移動する。このように移動すると、爪本体部80の基端部がナット84の移動に追従することにより、可動爪部78が保持方向に傾動される。また、固定軸部62に対する固定爪部74及び可動爪部78の回転を拘束した状態で、回転操作ハンドル66を上記所定方向と反対方向(図4において矢印Vで示す方向)に回転させると、ナット84が回転軸部62上をその他端部側に移動する。このように移動すると、爪本体部80の基端部がナット84の移動に追従することにより、可動爪部78が保持解除方向に傾動される。
【0034】
また、例えば固定爪部74及び可動爪部78から手を離すなどして、回転軸部62に対する固定爪部74及び可動爪部78の回転拘束を解除した状態で、回転操作ハンドル66を上記所定方向に回転させると、ナット84が回転軸部62と一体的に回転する。このように回転すると、ストッパ部82がナット84の回転に追従することにより、固定爪部74及び可動爪部78が回転軸部62と一体的に回転される。
【0035】
次に、図6〜図8をも参照して、上述したホース巻取り装置2を用いて消防用ホース14を巻き取る方法について説明する。なお、消防用ホース14の一端部には、消防設備などに着脱自在に接続される円筒スリーブ状の接続金具90が設けられ、その他端部には放水口92が設けられている。
【0036】
まず、旋回アーム52を離隔方向に旋回させた状態で、消防用ホース14の接続金具90を固定爪部74と可動爪部78との間に配設する。回転軸部62に対する固定爪部74及び可動爪部78の回転を拘束した状態で、回転操作ハンドル66を上記所定方向に回転させると、可動爪部78が保持方向に傾動され、これにより消防用ホース14の接続金具90が固定爪部74と可動爪部78との間に固定保持される(図6参照)。このように固定保持されることによって、消防用ホース14の巻き取り中に、消防用ホース14の接続金具90がホース巻取り軸60から外れるのが防止される。
【0037】
なお、接続金具90の外径が小さい場合には、図5において二点鎖線で示すように、可動爪部78(又は固定爪部74)の先端部における内側部にブロック状の補助部材94を着脱自在に装着することにより、接続金具90を補助部材94と固定爪部74(又は可動爪部78)との間に確実に固定保持することができる。
【0038】
その後に、旋回アーム52を近接方向に旋回させ、消防用ホース14を一対の上流側案内支持ローラ36,38の間を通してこれらの下側に配設させると、消防用ホース14は、ホース巻取り軸60より案内支持ローラ20の上を通り、一対の第1下流側案内ローラ22,24の間を通り、更に一対の上流側案内支持ローラ36,38の下側を通って下流側へ延びるようになる。かかる状態で、把持アーム54の把持部56を把持してこれを持ち上げることにより、装置本体4の一端部側が上方に起こされる。これにより、装置本体4は、一対の車輪46,48によって移動自在に支持されるようになる。
【0039】
更にその後、回転軸部62に対する固定爪部74及び可動爪部78の回転拘束を解除した状態で、装置本体4を消防用ホース14の延びている方向(図7において左方向)に移動させながら、回転操作ハンドル66を上記所定方向に更に回転させると、固定爪部74及び可動爪部78が一体的に回転され、消防用ホース14が固定爪部74及び可動爪部78に渦巻き状に巻き取られる(図7参照)。
【0040】
このように巻き取る際には、消防用ホース14の両側部は、一対の上流側案内ローラ36,38及び一対の第1下流側案内ローラ22,24に案内され、これにより消防用ホース14の両側部をきれいに揃えながら整然と巻き取ることができる。また、第2下流側案内ローラ30は、上述のように案内支持ローラ20の下流側且つホース巻取り軸60の先端部側に配設されているので、巻き取られた消防用ホース14がホース巻取り軸60の先端部側に偏倚されると、この巻き取られた消防用ホース14の一側部が第2下流側案内ローラ30に接触され、これにより消防用ホース14がホース巻取り軸60より外れるのが防止される。更に、装置本体4の一端部側を上方に起こすことによって、ホース巻取り軸60に巻き取られた消防用ホース14の所定部位が、その自重によって案内支持ローラ20に接触乃至押圧され、これにより消防用ホース14に巻き取り張力が作用するようになる。それ故に、消防用ホース14内に残存する空気や消化剤(又は水)などを抜きながら、消防用ホース14を堅くきれいに巻き取ることができる。
【0041】
上述のように巻き取られた消防用ホース14をホース巻取り軸60から取り外す際には、回転操作ハンドル66を上記所定方向とは反対方向に回転させ、可動爪部78を保持解除方向に傾動させる。これにより、固定爪部74及び可動爪部78による接続金具90の固定保持が解除され、消防用ホース14をホース巻取り軸60の先端部側にスライド移動させて引き抜くことができる。
【0042】
図8に示すように、取り外された消防用ホース14はホース収容部44に収容することができ、把持アーム54を持ち上げて装置本体4の一端部側を上方に起こすと、ホース収容部44に収容された消防用ホース14が一対の支持フレーム40,42によって下方より支持されるようになる。このようにして、ホース巻取り軸60に巻き取られた消防用ホース14及びホース収容部44に収容された消防用ホース14の二本の消防用ホース14を容易に運搬することができる。
【0043】
なお、本実施形態のホース巻取り装置2及びホース巻取り軸60の構造は、消防用ホース14を巻き取るのに適用したが、例えば排水用ホースなど種々のホースを巻き取るのにも適用することができる。また、本実施形態では、ホース巻取り軸60の構造をホース巻取り装置2に適用したが、例えばホース洗浄装置など種々の装置にも適用することができる。
【0044】
以上、本発明に従うホース巻取り装置及びホース巻取り軸構造の一実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0045】
例えば、上記実施形態では、消防用ホース14の一端部をホース巻取り軸60に固定保持させて一重巻きにて巻き取るようにしたが、次のような方法で巻き取るようにしてもよい。例えばホース巻取り軸60を一対のピンから構成し、二つ折りした消防用ホース14のほぼ中央部を一方のピンに差し込むとともに他方のピンに巻き掛けた状態にて、回転操作ハンドルを上記所定方向に回転させることにより、消防用ホース14が一対のピンに二重巻きにて巻き取られる。
【符号の説明】
【0046】
2 ホース巻取り装置
4 装置本体
14 消防用ホース
20 案内支持ローラ
22,24 第1下流側案内ローラ
36,38 上流側案内ローラ
40,42 支持フレーム
44 ホース収容部
52 旋回アーム
54 把持アーム
58 巻取りハウジング
60 ホース巻取り軸
62 回転軸部
66 回転操作ハンドル
74 固定爪部
78 可動爪部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホースを巻き取るためのホース巻取り装置であって、
装置本体と、前記装置本体の一端部に旋回自在に装着された旋回アームと、前記旋回アームの先端部に設けられた巻取りハウジングと、前記巻取りハウジングに回転自在に支持されたホース巻取り軸と、前記ホース巻取り軸を回転駆動させるための回転操作ハンドルと、前記旋回アームの基端部に設けられた把持アームと、前記装置本体に回転自在に支持され、前記ホースを案内するための案内支持ローラと、を備え、前記旋回アームは、前記ホース巻取り軸が前記案内支持ローラに近接する近接方向と、前記ホース巻取り軸が前記案内支持ローラより離隔する離隔方向とに旋回自在に構成され、
前記ホースを巻き取るときには、前記ホースの一端部又は二つ折りした前記ホースの中央部が前記案内支持ローラの上を通して前記ホース巻取り軸に保持され、前記把持アームを持ち上げることにより前記装置本体の一端部側が上方に起こされ、これにより前記旋回アームが前記近接方向に旋回されて前記ホースの所定部位が前記案内支持ローラに接触乃至押圧され、この接触乃至押圧状態を保ちながら前記回転操作ハンドルが所定方向に回転されることを特徴とするホース巻取り装置。
【請求項2】
前記ホース巻取り軸は、前記回転操作ハンドルに駆動連結されるとともに前記巻取りハウジングに回転自在に支持された回転軸部と、前記回転軸部に支持された固定爪部と、前記固定爪部に傾動自在に支持された可動爪部と、前記回転操作ハンドルの回転を前記可動爪部の傾動に変換するための移動変換機構と、を備え、前記可動爪部は、その先端部が前記固定爪部に近接する保持方向と、その先端部が前記固定爪部より離隔する保持解除方向とに傾動自在に構成されており、
前記回転操作ハンドルが前記所定方向に回転されると、前記回転操作ハンドルの回転が前記移動変換機構を介して前記可動爪部の前記保持方向の傾動に変換され、これにより前記ホースの一端部が前記固定爪部と前記可動爪部との間に固定保持され、また前記回転操作ハンドルが前記所定方向と反対方向に回転されると、前記回転操作ハンドルの回転が前記移動変換機構を介して前記可動爪部の前記保持解除方向の傾動に変換され、これにより前記固定爪部及び前記可動爪部による前記ホースの一端部の固定保持が解除されることを特徴とする請求項1に記載のホース巻取り装置。
【請求項3】
前記装置本体の他端部側には、前記ホースの上流側における両側部を案内するための一対の上流側案内ローラが設けられ、前記一対の上流側案内ローラは、前記装置本体の一端部側且つ内側に向けてハの字状に延びていることを特徴とする請求項1又は2に記載のホース巻取り装置。
【請求項4】
前記装置本体には、前記ホースの下流側における両側部を案内するための一対の下流側案内ローラが設けられ、前記一対の下流側案内ローラは前記案内支持ローラに近接して且つその上流側に配設され、また、前記一対の下流側案内ローラの離間距離を調節するための離間距離調節手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のホース巻取り装置。
【請求項5】
前記装置本体の他端部側には支持フレームが設けられ、前記一対の下流側案内ローラと前記支持フレームとの間には、巻き取られた前記ホースを収容するためのホース収容部が形成され、前記装置本体の他端部には更に、前記装置本体を移動自在に支持するための車輪が設けられており、
巻き取られた前記ホースが前記ホース収容部に収容された状態で、前記把持アームを持ち上げることにより前記装置本体の一端部側が上方に起こされると、巻き取られた前記ホースが前記支持フレームによって下方より支持されることを特徴とする請求項4に記載のホース巻取り装置。
【請求項6】
ホースを巻き取る際に、前記ホースの一端部を固定保持するためのホース巻取り軸構造であって、
巻取りハウジングと、前記巻取りハウジングに回転自在に支持された回転軸部と、前記回転軸部を回転駆動させるための回転操作ハンドルと、前記回転軸部に支持された固定爪部と、前記固定爪部に傾動自在に支持された可動爪部と、前記回転操作ハンドルの回転を前記可動爪部の傾動に変換するための移動変換機構と、を備え、前記可動爪部は、その先端部が前記固定爪部に近接する保持方向と、その先端部が前記固定爪部より離隔する保持解除方向とに傾動自在に構成されており、
前記ホースを巻き取るときには、前記回転操作ハンドルが所定方向に回転されることにより、前記回転操作ハンドルの回転が前記移動変換機構を介して前記可動爪部の前記保持方向の傾動に変換され、これにより前記ホースの一端部が前記固定爪部と前記可動爪部との間に固定保持され、この固定保持状態にて前記回転操作ハンドルが前記所定方向に更に回転されると、前記固定爪部及び前記可動爪部が一体的に回転して前記ホースが巻き取られ、また巻き取った前記ホースを取り外すときには、前記回転操作ハンドルが前記所定方向と反対方向に回転されることにより、前記回転操作ハンドルの回転が前記移動変換機構を介して前記可動爪部の前記保持解除方向の傾動に変換され、これにより前記固定爪部及び前記可動爪部による前記ホースの一端部の固定保持が解除されることを特徴とすることを特徴とするホース巻取り軸構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−260667(P2010−260667A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111137(P2009−111137)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(503309848)
【Fターム(参考)】