説明

ホース製造用の樹脂マンドレルの接合方法及びこれに用いる接合装置

【課題】接続金具を用いることなくマンドレルを接合し得、その際に接合部にバリや芯ずれを発生させず、接合部の強度も高強度となし得るマンドレルの接合方法を提供する。
【解決手段】接続金型10の挿入孔16に熱可塑性樹脂からなる一対のマンドレル15Aを、互いに逆方向から嵌合状態に挿入して、マンドレル15Aの各端面を加圧下に付き合せるとともに、各マンドレル15Aの各端面を含む軸方向の所定長を接合金型10の加熱部12にて外周面から加熱し溶融させる一方、マンドレル15Aの挿入孔16内の端部の部分を冷却部14で冷却して軟化防止し、一対のマンドレル15Aを溶融一体化して接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ホース製造用の樹脂マンドレルの接合方法及びこれに用いる接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、押出成形にてホースを製造するに際し、ホースの内面成形,内径規制等のために芯体としてのマンドレルが用いられている。
従来、かかるマンドレルとして熱可塑性樹脂から成る樹脂マンドレルが広く用いられている。
【0003】
ところで実際のホースの製造では、押出機からホースを長尺(例えば1500mの長さ)に連続押出成形し、加硫後に一定の単位長さ(例えば100m)ごとに切断して樹脂マンドレル(以下単にマンドレルとする)を抜き出し、そして単位長さのホースを更に目的とする製品長さに切断するといったことが行われている。
【0004】
一方マンドレルは当初長さが例えば110m(単長で110m)程度の長さであり、そこでこれを軸方向に多数接合して、上記長尺の連続押出成形に使用可能な一本の長尺のマンドレルとする。
その接合方法として、従来にあっては図6に示しているように単位長さの(単長の)マンドレル200Aの各端面に接続金具202を取り付けて、この接続金具202にて一対のマンドレル200A同士を接合し、これを多数のマンドレル200Aごとに行って、全体として一本の長尺のマンドレル200とする方法が用いられていた。
【0005】
しかしながらこの接合方法の場合、マンドレル200Aに対し接続金具202を取り付けるために、先ずマンドレル200Aの端面に下穴加工して、そこに接続金具202をねじ込まなければならず、接続金具202が余分な部品として必要であるのに加えて、接続金具202の取付けのための手間がかかってしまう外、この接続金具202の部分で成形されたホースは製品とは成り得ず、これが製品のロスとなってしまう問題がある。
【0006】
また接続金具202の部分で成形されたホースが誤って製品となって出荷されてしまうことがないように、接続金具202の部分で成形されたホースに対して、マーキングを付す等して監視することが必要で、このことがホース製造に際しての工程数の増加をもたらし、生産能力を低下させる要因ともなっていた。
【0007】
また図6に示す接合方法で接合したマンドレル200を用いた場合、ホースの製品長はマンドレル200Aの長さで決まってしまうため、ホース製品のうち定尺から外れた部分が製品と成り得ずに廃却され、このこともまたホース製品のロスを生ぜしめる原因となる。
例えばホースの定尺が100mであるとすると、マンドレル200Aにて成形されるホース長が105mである場合、5m分は製品とならないために廃却されてしまうことになる。
【0008】
マンドレル200は、ホースを長尺に連続押出成形し製造するごとに、接続金具202による接続部分を切断して除去し、その後再び切断したマンドレル200Aを接続金具202にて接続し再使用するが、マンドレル200Aはその切断を行うごとに長さが短くなって行く。
【0009】
而してその長さが予め定められた一定長さ(例えば90m)未満になると、規格外のマンドレルとして再使用できず、これを廃却することとなる。
この場合多大にマンドレルが廃却されることとなって、このことがマンドレルロスとなり、マンドレルに要する費用、即ちホースの製造コストを高める要因となる
【0010】
以上のように、図6の接続金具202によるマンドレル200Aの接合方法の場合には様々な問題があり、そこでこの問題を解決するためのマンドレルの接合方法として、マンドレル200Aの端面を加熱により溶着し、そして溶着した端面同士を接合する方法が考えられている。
【0011】
図7はこの接合方法を具体的に示したものである。
この方法は、一対のマンドレル200Aの端面を熱板204に押し当てて、それら端面を加熱により溶融させ、その後熱板204を取り除いた上で各端面同士を付き合せ、一対のマンドレル200Aを溶融一体化して接合するものであるが、この方法の場合、同図に示しているように付き合せによってバリ206が発生したり、或いはマンドレル200Aと200Aとが芯ずれし易いといった問題がある。
【0012】
而してマンドレル200Aが芯ずれした状態で接合されたマンドレル200は使用することができないために、再び接合をやり直すことが必要となり、また芯ずれしない状態で接合されたものにおいても、バリ206を除去することが必要で、そのために多くの手間がかかってしまうといった問題が生ずる。
尚このようにマンドレル200Aの端面を熱板204で加熱して溶融させ、一対のマンドレル200A同士を接合する接合方法については、下記特許文献1に開示されている。
【0013】
そこで本発明らは、一対のマンドレル200Aの接合端面でのバリ206の発生や、芯ずれの問題を解決すべく、マンドレル200Aの外径と同等内径を有する挿入孔を有する金型を用い、その挿入孔に一対のマンドレル200Aを互いに逆方向から挿入し付き合せた状態で、全体が加熱状態にある金型にて、挿入孔に挿入したマンドレルの全体を加熱し溶融接合を試みたところ、この方法もまた良好にマンドレル200A同士を接合することのできないものであった。
【0014】
即ちこの接合方法にてマンドレル200Aの接合を行った場合、図8に示しているように挿入孔の両端の部分でマンドレル200にラッパ状の拡がり変形部208が生じてしまう。
これは、マンドレル200Aの接合金型の挿入孔に入っている部分がすべて溶融してしまうことから生じたものである。
【0015】
尚、マンドレルの他の接合方法として、特許文献2にはワイヤー入りのマンドレルを、ワイヤーを一定長露出させた状態でインジェクション成形型にセットし、一対のマンドレル間に樹脂材料を射出成形して一対のマンドレル同士を接合する方法が開示されている。
しかしながらこの接合方法は、ワイヤー入りのマンドレルといった特殊なマンドレルでなければ適用できない問題がある。
【0016】
【特許文献1】特開2001−71382号公報
【特許文献2】特開平5−169546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は以上のような事情を背景とし、接続金具を用いることなくマンドレルを接合し得、その際に接合部分にバリを発生させず、また接合金型の端部近傍でラッパ状の拡がり変形部も生ぜしめず、且つ接合部分の強度も高強度となし得るマンドレルの接合方法及びこれに用いる接合装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
而して請求項1は接合方法に関するもので、マンドレルの外径と同等内径を有する貫通のマンドレル挿入孔を有する接合金型の該挿入孔に、熱可塑性樹脂からなる一対の樹脂マンドレルを互いに逆方向から嵌合状態に挿入し、挿入部分を該挿入孔により拘束した状態で各マンドレルに逆方向に加えた軸方向の押圧力の下で各端面を加圧下に付き合せるとともに、各マンドレルの各端面及び該端面から軸方向に所定距離離隔した部位までを前記接合金型の加熱部による外周面からの加熱により溶融させる一方、該マンドレルの該挿入孔内の且つ該挿入孔の端部側の他部を該接合金型の冷却部による外周面からの冷却により軟化防止して一対のマンドレルを溶融一体化して接合し、その後該マンドレルの該挿入孔への挿入部分を冷却して前記接合金型から取り出すことを特徴とする。
【0019】
請求項2のものは、請求項1において、前記接合金型とは別体の加熱手段にて前記加熱部を加熱するようにし、前記各マンドレルを溶融一体化して接合した後に、前記加圧状態を維持したまま、該加熱手段による加熱に代えて該加熱部を含む前記接合金型の全体を冷却することを特徴とする。
【0020】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記挿入孔は、前記マンドレルの曲り癖に対応した形状で軸方向に沿って湾曲した形状となしてあることを特徴とする。
【0021】
請求項4のものは、請求項1〜3の何れかにおいて、前記接合金型は、前記加熱部の前記挿入孔の軸心と直角方向の断面積が前記冷却部に対して小となしてあり、且つ該冷却部は該加熱部に対し体積が大となしてあることを特徴とする。
【0022】
請求項5のものは、請求項4において、前記接合金型は、前記加熱部と冷却部との間に、前記加熱部よりも更に前記軸直角方向の断面積の小さいくびれ部が設けてあることを特徴とする。
【0023】
請求項6は接合装置に関するもので、この接合装置は、(A)(イ)樹脂マンドレルの外径と同等内径を有し、一対のマンドレルを互いに逆方向から挿入させて嵌合し、挿入部分を拘束する貫通の挿入孔と、(ロ)各マンドレルの各端面から軸方向に所定距離離隔した部位までを加熱し溶融させる加熱部と、(ハ)各マンドレルの該挿入孔内の且つ該挿入孔の端部側の他部を冷却して軟化防止する冷却部と、を備えた接合金型と、(B)前記加熱部を加熱する加熱手段と、(C)前記冷却部を冷却する冷却手段と、を有していることを特徴とする。
【0024】
請求項7のものは、請求項6において、前記加熱手段は、前記接合金型の加熱部に対する加熱位置と、該加熱位置から離隔した退避位置との間で移動可能となしてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0025】
以上のように請求項1の接合方法は、マンドレルの外径と同等内径となるように接合金型に形成した挿入孔に、熱可塑性樹脂からなる一対のマンドレルを互いに逆方向から挿入し、その挿入部分を嵌合状態の挿入孔により拘束した状態で、マンドレルに逆方向に加えた軸方向の押圧力の下でマンドレルの各端面を加圧下に付き合せ、そしてマンドレルの各端面及びその端面から軸方向に所定距離離隔した部位までを、接合金型の加熱部による外周面からの加熱にて溶融させる一方、マンドレルの挿入孔内の且つ挿入孔の端部側の他部を接合金型の冷却部による外周面からの冷却により軟化防止し、その状態で一対のマンドレルを溶融一体化して接合した後に、マンドレルの挿入孔への挿入部分を冷却して接合金型から取り出すものである。
この接合方法によれば、一対のマンドレルを芯ずれなく接合することができるとともに、接合部にバリを生ぜしめることもなく、また接合部分の強度を母材強度と同等の高強度となすことができる。
【0026】
図7に示した端面の加熱のみによる接合方法の場合、マンドレルの各端部同士が十分に互いに融合一体化せず、接合部分の強度が低強度となってしまうが、この請求項1の接合方法によれば、端部のみならず接合側の部分が所定軸方向長に亘って溶融し互いに一体化するため、一対のマンドレル同士が良好に均等に融合一体化し、接合側の部分が所定軸方向長に亘って均一な組織状態となり、接合部の強度を母材強度と同程度の高強度となすことができる。
加えてこの接合方法によれば、挿入孔の各端部でマンドレルが溶融して、図8に示すようなラッパ状の拡がり変形部を生じることもない。
【0027】
かかる本発明の接合方法によれば、接合部がそれと分らないように良好に一対のマンドレルを接合することができ、接合部が外観的にもまた強度的にも不連続な個所とならず、一対のマンドレルが全体として単一の均一な連続したマンドレルとなる状態に、それら一対のマンドレルを良好に接合することができる。
【0028】
従ってこの接合方法にて接合した長尺マンドレルを用いてホース製造をした場合、接合部で成形したホースも製品となり得るものであり、接合部で成形したホースが製品とならずにこれを廃却することによるロスを生ぜしめず、ホース製造の歩留りが飛躍的に向上する。
【0029】
また長尺のホースの連続成形及び加硫後において、マンドレルをホースとともに切断した後においても、この接合方法によれば、切断部分で再びマンドレル同士を接合することができ、マンドレルを切断するごとにマンドレルが段々と短くなって行く問題を解決でき、所定寸法に満たなくなったマンドレルを廃却せざるを得なくなって、そのことによりマンドレルに要するコストが高くなり、ホース製造のコストを高めてしまう問題も解決することができる。
【0030】
また、たとえマンドレルが所定寸法に満たない短いものとなったとしても、本発明の接合方法によれば、再びこれを接合して使用することができる。
また本発明により接合した長尺マンドレルを用いた場合、図6に示す接合方法にて接合した長尺マンドレルを用いた場合のように、ホースの製品長さが単位長さのマンドレル200Aの長さで決まってしまうといった問題を生じず、任意の位置でホースをマンドレルごと切断することができるために、定尺に満たないホースが製品とならずにこれを廃却せざるを得ないといった問題も解決でき、このこともまたホース製品の歩留率を高めるのに寄与する。
【0031】
尚この請求項1の接合方法において、挿入孔の各端部でマンドレルが図8に示すようなラッパ状の拡がり変形部を生じないのは、挿入孔の端部においては接合金型の冷却部でマンドレルを冷却することによる。
【0032】
請求項2は、接合金型とは別体の加熱手段にて接合金型の加熱部を加熱し、そしてマンドレルを溶融一体化して接合した後に、マンドレルに対する加圧状態を維持したまま、加熱手段による加熱に代えて、加熱部を含む接合金型全体を冷却するものである。
【0033】
このようにすれば、一対のマンドレルの接合側の端部を溶融一体化して接合した後、速やかに挿入孔内のマンドレルの溶融部分を冷却し固化させることができるとともに、この冷却中もマンドレルを突き合せ方向に加圧状態に維持しているため、その冷却により溶融状態の樹脂のマンドレルが収縮してひけを生じるのを防止し得、接合部を高強度となすことができる。
【0034】
次に請求項3は、上記挿入孔をマンドレルの曲り癖に対応した形状で、軸方向に沿って湾曲した形状となしておくものである。
長尺に接合したマンドレルは、通常、渦巻状に皿の上に巻いた状態としておくため、長尺のマンドレルにはそれによる曲り癖が付いている。
従って挿入孔を厳密なストレート形状となしておくと、挿入孔へのマンドレルの挿入がしづらくなるとともに接合後においてマンドレルが部分的にストレート形状に変形した状態となってしまう。即ちマンドレルの接合部及び近傍部分がマンドレルの他の部分と連続した曲り形状ではなくなってしまう。
【0035】
しかるにこの請求項3の接合方法によれば、こうした不具合を発生させず、接合部を含むマンドレル全体を軸方向のなだらかな連続した曲り形状に保持することができる。
【0036】
次に請求項4は、接合金型における加熱部の挿入孔の軸心と直角方法の断面積を冷却部のそれに対して小となし、且つ冷却部はその加熱部に対し体積を大となしておくものである。
このようにしておけば、加熱手段により接合金型の加熱部を加熱する際の加熱効率を高めることができ、加熱部を目的とする高温度に容易に昇温させることができる。そしてこれによりマンドレルを十分に溶融させ接合一体化することができる。
【0037】
一方で冷却部の体積が大となしてあることから、加熱部からの熱が冷却部へと伝わって冷却部での冷却が不十分となり、そして冷却不十分によりマンドレルに変形が生じるのを良好に防止することができる。
【0038】
次に請求項5は、接合金型の加熱部と冷却部との間に、加熱部よりも更に軸直角方向の断面積の小さいくびれ部を設けておくもので、このようにしておけば、冷却部での冷却が加熱部にも及んでしまい、加熱部が十分に目的とする高温度に上昇せず、マンドレルの溶融が不十分となってしまう問題を回避することができる。
【0039】
次に請求項6は、上記の接合方法に用いる接合装置に関するもので、この請求項6の接合装置を用いることで、請求項1の接合方法を好適に実施することができる。
【0040】
請求項7は、接合装置における加熱手段を、接合金型の加熱部に対する加熱位置と、その加熱位置から離隔した退避位置との間で移動可能となしたもので、このようにしておけば、加熱手段による加熱後において、加熱手段を退避位置に退避させることで、容易且つ効果的に加熱部を含む接合金型全体を冷却することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10はマンドレル接合に用いられる接合金型で、ここでは上型10Aと、下型10Bとの2分割構造となっている。
ここで上型10Aと下型10Bとは上下対称形状,構造をなしている。
接合金型10は、中央部に加熱部12を、その左右の両側に冷却部14を有している。
またその内部には挿入孔16が形成されている。
【0042】
ここで挿入孔16は、互いに接合すべきマンドレル15Aと同じ断面形状の円形状をなしており、その内径はマンドレル15Aの外径と同等径とされている。
挿入孔16は、接合金型10を図中左右方向に貫通する形態で形成されており、その両端が開口とされている。
接合金型10は、この挿入孔16の上下の中心位置で上記の上型10Aと下型10Bとに分割されている。
【0043】
加熱部12は、後述のヒータブロック(加熱手段)からの熱によってマンドレル15Aの接合側の部分を加熱する部分であって、図中上下方向の肉厚Tが小とされ、また左右の冷却部14は上下方向の肉厚Tが加熱部Tに対して大とされている。
【0044】
冷却部14は、挿入孔16内部に挿入されたマンドレル15Aを冷却する部分であって、それぞれ上,下位置に冷却媒体を流通させる冷却孔18が図中前後方向に貫通して設けられている。
尚冷却孔18は、上型10Aと下型10Bとのそれぞれに設けられている。
この冷却孔18には配管20が接続されており、冷却媒体としてのエア又は水がこの配管20を通じて冷却孔18内に供給され、また冷却孔18を通過した冷却媒体が配管20を通じて外部へと流出するようになっている。
本実施形態では、配管20と冷却部14の冷却孔18とで冷却手段が構成されている。
【0045】
接合金型10は、冷却部14と加熱部12との前後方法の肉厚がTで同等とされているが、冷却部14は上下方向の肉厚Tが加熱部12の肉厚Tに対し大とされている結果、挿入孔16の軸心と直角方向の断面積が加熱部12において小、冷却部14において大とされている。
また加熱部12の全体積に比べ、各冷却部14のそれぞれの体積が大とされている。
加熱部12と冷却部14との間には切欠部22が形成されており、加熱部12と冷却部14とが小断面のくびれ部24にて互いに連結されている。
【0046】
図2に示しているように、上記挿入孔16は平面形状が軸方向に沿って湾曲した形状をなしている。詳しくはこの挿入孔16は、マンドレル15Aの曲り癖に対応して、マンドレル15Aの曲り形状と同じ曲率で軸方向に沿って大きく湾曲した形状をなしている。
【0047】
次にこの接合金型10を用いた本実施形態のマンドレル15Aの接合方法を以下に説明する。
本実施形態の接合方法では、図3(I)に示しているように接合金型10の加熱部12と左右の冷却部14との間に形成されている凹所に、上下一対のヒータブロック26をセットしてこれを加熱部12に当て、かかるヒータブロック26からの熱によって加熱部12を加熱する。
ここでヒータブロック26は、金属ブロックの内部に電気ヒータから成る棒ヒータ28を埋め込んで構成してある。
【0048】
図3(I)で示す工程では、接合金型10における加熱部12を約300℃となるまで加熱する。
一方冷却部14は、配管20を通じて冷却孔18に冷却媒体としてのエアを流すことによって冷却しておく。
このとき、冷却部14の温度はマンドレル15Aの軟化点(約180℃)未満の温度に冷却しておく。
【0049】
次に、図3(II)に示しているように熱可塑性樹脂から成る一対のマンドレル15Aを、接合金型10の挿入孔16に互いに反対側から逆向きに挿入する。
尚このとき、一対のマンドレル15Aを、その曲りの形状が挿入孔16の曲りの形状と合うようにして、挿入孔16に挿入する。
この実施形態において、樹脂マンドレル15AはTPX(ポリメチルペンテン樹脂)から成るもので、その軟化点は約180℃、融点は220〜240℃である。
【0050】
そして一対のマンドレル15Aのそれぞれに加えた互いに逆向きの押圧力の下で、各マンドレル15Aの接合側の端面、即ち挿入孔16内に挿入された先端の端面を加圧下に付き合せるとともに、その加圧状態を保ったまま、接合金型10の加熱部12にてマンドレル15Aの各端面から軸方向に所定距離離隔した部位までを外周面から加熱し溶融させる。
図3(III)中30はその溶融部を表している。
【0051】
この加圧下での溶融により、一対のマンドレル15Aは各端面及び端面から所定距離離隔した部位までが互いに融合し一体化する。
このとき、一対のマンドレル15Aの挿入孔16内の端部側の部分は、冷却部14による冷却によって溶融及び軟化せず、固形の状態を保っている。
【0052】
一定時間かけて溶融接合した後、図4(IV)に示しているように一対のヒータブロック26を加熱部12に対する加熱位置から外して退避位置まで離隔させ、接合金型10に冷却エアを吹き付けて加熱部12を含む接合金型10の全体を冷却する。
このとき、冷却孔18に供給する冷却媒体をエアから水に切り換えておく。これは接合金型10の冷却を速やかに行うためである。
尚これらの冷却は、一対のマンドレル15Aを互いに付き合せ方向に加圧状態に保ったままで行う。
【0053】
この冷却により一対のマンドレル15Aの接合部が変形しない程度の温度(約100℃未満)まで下がったところで冷却を止め、接合金型10を開いて、詳しくは上型10Aと下型10Bとを上下に開いて、図4(V)に示しているように接合により一体化されたマンドレル15を接合金型10から取り出す。
【0054】
本実施形態の接合方法にて接合し一体化したマンドレル15は、様々な種類,形態のホースの製造に用いることができる。
以下にそのホースの一例が図5を参照して示してある。
尚図5において、40は内面ゴム層,42は外面ゴム層,44は断面の中間の補強層を、また46は補強層44と44との間の中間ゴム層をそれぞれ表している。
またDはホース外径を、Dはホース内径を表している。
【0055】
「A」:産業用建設機械,工作機械の油圧配管等に用いる産業用の高圧ホース
ホース外径D:9〜45mm
ホース内径D:5〜26mm
内面ゴム層40:
肉厚t=1〜2mm
材質:NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム),EPDM(エチレン-プロピレン-ジエンゴム),CR(クロロプレンゴム),SBR(スチレン-ブタジエンゴム)等
外面ゴム層42:
肉厚t=1〜2mm
材質:CR,SBR,EPDM,NBR/PVC(アクリロニトリル・ブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとのブレンド)等
補強層44:
ブレード編組又はスパイラル編組
層数:1〜6層の範囲内で選択される層数
材質:高鋼線ワイヤー又はポリエステル,ポリアミド,ポリビニールアルコール糸等
中間ゴム層(補強層間の層)46:
層数:補強層の数に対応した層数で補強層の数よりも1つ少ない層数
材質:CR,NBR,NR(天然ゴム)等
【0056】
「B」:自動車用ホース(自動車用パワステオイル,燃料,エアコン冷媒,オートマチックトランスミッション冷却用ホース等)
ホース外径D:10〜28mm
ホース内径D:5〜20mm
内面ゴム層40:
肉厚t=0.5〜2mm
材質:ポリアミド,IIR(ブチルゴム),CHC(エピクロルヒドリンゴム),FPM(フッ素ゴム),ACM(アクリルゴム),CR等
外面ゴム層42:
肉厚t=1〜2mm
材質:ACM,FPM,EPDM,CHC,EPM(エチレン-プロピレンゴム),CR等
補強層44:
ブレード編組又はスパイラル編組
層数:1〜2層の何れかの層数
材質:高鋼線ワイヤー又はポリエステル,ポリアミド,ポリビニールアルコール糸等
中間ゴム層46:
層数:0〜1層の何れかの層数
材質:CR,NBR,NR等
【0057】
以上のような本実施形態の接合方法によれば、一対のマンドレル15Aを芯ずれなく接合することができるとともに、接合部にバリを生ぜしめることもなく、また接合部の強度を母材強度と同等の高強度となすことができる。
【0058】
この接合方法によれば、マンドレルの端面のみならず接合側の部分が所定軸方向長に亘って溶融し互いに一体化するため、一対のマンドレル15A同士が良好に均等に融合一体化し、接合部が所定軸方向長に亘って均一な組織状態となり、接合部の強度を母材強度と同程度の高強度となすことができる。
加えてこの接合方法によれば、挿入孔16の各端部でマンドレル15Aが溶融して、図8に示すようなラッパ状の拡がり変形部を生じることもない。
【0059】
かかる本実施形態の接合方法によれば、接合部がそれと分らないように良好に一対のマンドレル15Aを接合することができ、接合部が外観的にも、また強度的にも不連続な個所とならず、一対のマンドレル15Aが全体として単一の均一な連続したマンドレル15となる状態に、それら一対のマンドレル15Aを良好に接合することができる。
【0060】
従ってこの接合方法にて接合した長尺マンドレル15を用いてホース製造をした場合、接合部において成形したホースも製品となり得るものであり、ロスを生ぜしめず、ホース製造の歩留りを飛躍的に向上させることができる。
【0061】
また長尺のホースを連続成形及び加硫した後において、マンドレル15をホースとともに切断した後においても、この接合方法によれば、切断部分で再びマンドレル15A同士を接合することができ、マンドレル15を切断するごとにマンドレル15Aが段々と短くなって行く問題を解決でき、所定寸法に満たなくなったマンドレル15Aを廃却せざるを得なくなって、そのことによりマンドレルに要するコストが高くなり、ホース製造のコストを高めてしまう問題も解決することができる。
また、たとえマンドレル15Aが所定寸法に満たない短いものとなったとしても、本実施形態の接合方法によれば再びこれを接合して使用することができる。
【0062】
また本実施形態により接合した長尺マンドレル15を用いた場合、任意の位置でホースをマンドレル15ごと切断することができるために、定尺に満たないホースが製品とならずに、これを廃却せざるを得ないといった問題も解決でき、このこともまたホース製品の歩留率を高めるのに寄与する。
【0063】
本実施形態では、一対のマンドレル15Aの接合側の端部を溶融一体化して接合した後、接合金型10全体を冷却することにより速やかに挿入孔16内のマンドレル15Aの溶融部分を冷却し固化させることができるとともに、この冷却中もマンドレル15Aを突き合せ方向に加圧状態に維持するため、冷却により溶融状態の樹脂のマンドレル15Aが収縮してひけを生じるのを防止し得、接合部を高強度となすことができる。
【0064】
また挿入孔16を、マンドレル15Aの曲り癖に対応した形状で湾曲した形状となしてあるため、接合部を含むマンドレル15全体を軸方向のなだらかな連続した曲り形状に保持することができる。
【0065】
更に接合金型10の加熱部12の、挿入孔16の軸心と直角方法の断面積を冷却部14のそれに対して小となし、且つ冷却部14はその加熱部12に対し体積を大となしてあるため、ヒータブロック26より加熱部12を加熱する際の加熱効率を高めることができ、これによりマンドレル15Aの接合側の部分を十分に溶融させ、接合一体化することができる。
また一方で冷却部14の体積が大となしてあることから、加熱部12からの熱が冷却部14へと伝わって、冷却部14での冷却が不十分となってしまい、冷却不十分によりマンドレル15の変形が生じるのを良好に防止することができる。
【0066】
また接合金型10の加熱部12と冷却部14との間にくびれ部24が設けてあるため、冷却部14での冷却が加熱部12にも及んでしまい、加熱部12が十分に目的とする高温度に上昇せず、マンドレル15Aの接合側の部分が溶融不十分となってしまう問題も回避することができる。
【0067】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば本発明においてはヒータブロック26による加熱に代えて、高周波誘導加熱により加熱を行うようになすことも可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において、種々変更を加えた態様で実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施形態のマンドレルの接合方法に用いられる接合金型の図である。
【図2】同接合金型の下型を示した図である。
【図3】同実施形態のマンドレルの接合方法の工程図である。
【図4】図3に続く工程図である。
【図5】同実施形態で得たマンドレルを用いて製造可能なホースの例を示した図である。
【図6】従来のマンドレルの接合方法の一例を示した図である。
【図7】図6とは異なる従来のマンドレルの接合方法を示した図である。
【図8】比較例として本発明者等が実施したマンドレルの接合方法の不具合の説明図である。
【符号の説明】
【0069】
10 接合金型
12 加熱部
14 冷却部
15,15A マンドレル
16 挿入孔
24 くびれ部
26 ヒータブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンドレルの外径と同等内径を有する貫通のマンドレル挿入孔を有する接合金型の該挿入孔に、熱可塑性樹脂からなる一対の樹脂マンドレルを互いに逆方向から嵌合状態に挿入し、挿入部分を該挿入孔により拘束した状態で各マンドレルに逆方向に加えた軸方向の押圧力の下で各端面を加圧下に付き合せるとともに、各マンドレルの各端面及び該端面から軸方向に所定距離離隔した部位までを前記接合金型の加熱部による外周面からの加熱により溶融させる一方、該マンドレルの該挿入孔内の且つ該挿入孔の端部側の他部を該接合金型の冷却部による外周面からの冷却により軟化防止して一対のマンドレルを溶融一体化して接合し、その後該マンドレルの該挿入孔への挿入部分を冷却して前記接合金型から取り出すことを特徴とするホース製造用の樹脂マンドレルの接合方法。
【請求項2】
請求項1において、前記接合金型とは別体の加熱手段にて前記加熱部を加熱するようにし、前記各マンドレルを溶融一体化して接合した後に、前記加圧状態を維持したまま、該加熱手段による加熱に代えて該加熱部を含む前記接合金型の全体を冷却することを特徴とするホース製造用の樹脂マンドレルの接合方法。
【請求項3】
請求項1,2の何れかにおいて、前記挿入孔は、前記マンドレルの曲り癖に対応した形状で軸方向に沿って湾曲した形状となしてあることを特徴とするホース製造用の樹脂マンドレルの接合方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記接合金型は、前記加熱部の前記挿入孔の軸心と直角方向の断面積が前記冷却部に対して小となしてあり、且つ該冷却部は該加熱部に対し体積が大となしてあることを特徴とするホース製造用の樹脂マンドレルの接合方法。
【請求項5】
請求項4において、前記接合金型は、前記加熱部と冷却部との間に、前記加熱部よりも更に前記軸直角方向の断面積の小さいくびれ部が設けてあることを特徴とするホース製造用の樹脂マンドレルの接合方法。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかの方法を実施するためのホース製造用の樹脂マンドレルの接合装置であって
(A)(イ)樹脂マンドレルの外径と同等内径を有し、一対のマンドレルを互いに逆方向から挿入させて嵌合し、挿入部分を拘束する貫通の挿入孔と、(ロ)各マンドレルの各端面から軸方向に所定距離離隔した部位までを加熱し溶融させる加熱部と、(ハ)各マンドレルの該挿入孔内の且つ該挿入孔の端部側の他部を冷却して軟化防止する冷却部と、を備えた接合金型と
(B)前記加熱部を加熱する加熱手段と
(C)前記冷却部を冷却する冷却手段と
を有していることを特徴とするホース製造用の樹脂マンドレルの接合装置。
【請求項7】
請求項6において、前記加熱手段は、前記接合金型の加熱部に対する加熱位置と、該加熱位置から離隔した退避位置との間で移動可能となしてあることを特徴とするホース製造用の樹脂マンドレルの接合装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate