説明

ホームドア状態認識システム

【課題】システム構成および状態認識アプリケーションの柔軟性向上を実現したホームドア状態認識システムを得る。
【解決手段】ホームドアの動作状況および環境を検出する検出装置107と、検出装置107の検出情報に基づいて、ホームドアを含むシステム状態を認識する総合認識装置とを備えたホームドア状態認識システムにおいて、総合認識装置は、検出装置107の検出情報を所定の特徴量E、Gに変換して処理する特徴量抽出手段103、105と、特徴量E、Gに基づいてシステム状態を認識する総合システム状態認識手段100とを含む。これにより、柔軟な状態認識アプリケーションの導入や保守、ならびに、検査装置107の構成変更への対応が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、駅のプラットホームに設置されたホームドアの状態を認識して制御するシステムに関し、特に柔軟な状態認識アプリケーションの導入や保守を可能にしたホームドア状態認識システムの新規な改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のホームドア状態認識システムは、各種スイッチと個別制御盤上のアプリケーションとによって構成され、ホームドアを個別に開閉する個別制御盤と、ホームドアの動作状況を検出する各種スイッチ(戸開確認スイッチ、戸閉確認スイッチ、戸先スイッチ)ならびに、個別制御盤からの指令にしたがってモータ動作を制御するモータ制御盤を備えている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に記載の従来システムにおいては、ホームドア開指令が個別制御盤からモータ制御盤に出力されると、モータ制御盤は、各種スイッチの検出情報をモニタしつつモータを制御してホームドアの開閉を実行する。
たとえば、閉動作中に戸先スイッチがONした場合には、支障物が存在する(人が挟まっている可能性がある)ものと認識し、所定の時間、ホームドアを開く動作を実行した後に、再度、閉動作を実行する。
【0004】
上記従来システムにおいては、システム構成情報が一元管理され、システムを構成する機器のすべてがシステム構成情報を共有する形態をとっており、各種スイッチの検出情報を直接利用したホームドア状態認識が行われている。
また、システムを構成する各機器のインタフェースは、各機器の内部で情報を保持するメモリの物理的な構成を伝送している。
【0005】
【特許文献1】特開2000−198436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のホームドア状態認識システムでは、相互接続された各機器が、各機器内のメモリ構成および情報の配置を知り、各機器のメモリ番地を介した情報のみを操作および入手することができないので、ホームドア制御システムの変更や拡張(新しい検出装置や総合認識装置をシステムに追加する場合や、システムから削除する場合)に対する柔軟性が低くなるとともに、ホームドア状態認識アプリケーションの保守性も悪くなり、柔軟な状態認識アプリケーションの導入や保守、ならびに、検査装置の構成変更への対応が困難になるという課題があった。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、システム構成および状態認識アプリケーションの柔軟性向上を実現したホームドア状態認識システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明によるホームドア状態認識システムは、ホームドアの動作状況および環境を検出する検出装置と、検出装置の検出情報に基づいて、ホームドアを含むシステム状態を認識する総合認識装置とを備えたホームドア状態認識システムにおいて、総合認識装置は、検出装置の検出情報を所定の特徴量に変換して処理する特徴量抽出手段と、特徴量に基づいてシステム状態を認識する総合システム状態認識手段とを含むものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、動作状況ならびに環境を検出する検出装置と検出情報を基にしてシステムの状態を認識する総合認識装置とを備えたホームドア制御システムにおいて、検出装置の検出情報を所定の特徴量に変換して処理することにより、個々の検出装置の独立性を維持しながら総合認識装置の柔軟なシステム構成変更を可能にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
以下、図面を参照しながら、この発明の実施の形態1について詳細に説明する。
図1〜図3はこの発明の実施の形態1に係るホームドア状態認識システムを示すブロック図である。
【0011】
図1はこの発明の実施の形態1に係る総合システム状態認識装置100〜検出装置Eの機能構成を示している。
図2はこの発明の実施の形態1に係るホームドア制御システム全体構成を示し、総合状態認識部200〜制御対象205の関係を概略的に示している。
図3はこの発明の実施の形態1に係る総合制御装置300および個別制御盤400からなるホームドア制御システム全体の機能構成を示している。
【0012】
図1において、ホームドア状態認識システムは、総合システム状態認識装置100と、システムレベル特徴量抽出装置103と、特徴量抽出装置105と、検出装置107とを備えている。
【0013】
総合システム状態認識装置100は、総合システム状態認識部101と、メッセージ通信手段102とを有する。
総合システム状態認識部101は、k個のシステムレベル特徴量G(G1、G2、・・・、Gk)を選択的に使用して、ホームドアの動作状態を含むシステム状態を総合的に判断する。総合システム状態認識部101の認識結果は、列車に乗る予定の乗客がホームドア付近にどの程度存在するかを示す情報として外部に出力される。
なお、システムレベル特徴量Gとしては、たとえば、混雑度を示す障害物の属性(絶対量、ホームドアからの距離、存在位置、存在分布など)、人の流れを示す障害物の属性(移動方向、移動速度、静止または停止位置など)、駅の雰囲気(明るさ分布、温度分布、湿度分布など)、列車の稼働状態(停止位置、移動速度、ドア状態)などがあげられる。
【0014】
システムレベル特徴量抽出装置103は、k個のシステムレベル特徴量抽出部F(F1、F2、・・・、Fk)と、メッセージ通信手段104とを有し、各システムレベル特徴量抽出部Fは、m個の特徴量E(E1、E2、・・・、Em)を選択的に使用して、k個のシステムレベル特徴量Gを抽出する。
特徴量Eとしては、たとえば、障害物の属性(絶対量、ホームドアからの距離、存在位置、存在分布、移動方向、移動速度、静止位置など)、明るさ、温度、湿度、列車の属性(位置、移動速度、ドアの開閉状態など)があげられる。
【0015】
特徴量抽出装置105は、m個の特徴量抽出部D(D1、D2、・・・、Dm)と、メッセージ通信手段106とを有し、各特徴量抽出部Dは、n個のセンサ前処理結果C(C1、C2、・・・、Cn)を選択的に使用して、m個の特徴量Eを抽出する。
センサ前処理結果Cとしては、たとえば、障害物センサ(光電センサ、超音波センサ、画像センサなど)、圧力センサ、音圧センサ、重量センサ、照度センサ、温度センサ、湿度センサなどの入力信号があげられる。
【0016】
検出装置107は、ホームドアの動作状況および環境を検出するn個のセンサA(A1、A2、・・・、An)と、n個のセンサ専用前処理装置B(B1、B2、・・・、Bn)と、メッセージ通信手段108とを有する。
各センサAのうち、センサA1、A2、・・・、An−1は、光電センサにより構成され、An−1は、人感センサにより構成されている。各センサ専用前処理Bは、それぞれ各センサAに対応している。
【0017】
また、メッセージ通信手段102、104、106、108は、相互通信可能に接続されており、各装置100、103、105、107においてメッセージ情報を共有可能にしている。
【0018】
図1のように、検出装置107と総合システム状態認識装置100との間には、特徴量抽出装置105およびシステムレベル特徴量抽出装置103が挿入されており、特徴量抽出装置105は、各センサ前処理結果Cを任意の組み合わせで選択使用して、各特徴量Eを抽出する。
同様に、システムレベル特徴量抽出装置103は、各特徴量Eを任意の組み合わせで選択使用して、各システムレベル特徴量Gを抽出する。
【0019】
図1に示すホームドア状態認識システムの各要素は、マイクロコンピュータにより構成されており、センサ前処理結果C、特徴量Eおよびシステムレベル特徴量Gは、マイクロコンピュータ内のメモリにデータとして格納される。
したがって、センサ前処理結果C、特徴量Eおよびシステムレベル特徴量Gは、システムのハードウェア構成などに依存せずに、使用要求に応じた選択組み合わせにより、任意のパラメータ値に設定可能になっている。
【0020】
なお、図1においては、すべてのセンサ前処理結果Cがすべての特徴量抽出部Dに入力され、すべての特徴量Eがすべてのシステムレベル特徴量抽出部Fに入力されている状態を示しているが、各抽出部D、Fで使用する各パラメータの組み合わせは、任意に設定され得ることは言うまでもない。
また、複数個を示すk、m、nは、任意の自然数である。
【0021】
図2はこの発明の実施の形態1に係るホームドア状態認識システムを含むホームドア制御システム全体の構成を示している。
図2において、ホームドア制御システムは、総合状態認識部200と、出力決定部201と、外部駆動処理機能部202と、ドア駆動モータ制御部203と、ドア駆動モータ204と、制御対象205とを備えている。
【0022】
総合状態認識部200は、図1の全体構成を含み、制御対象(ホームドア)205の動作状態を総合的に判断して、制御対象(ホームドア)205に対する出力制御パラメータを、認識結果として演算する。
外部駆動処理機能部202、ドア駆動モータ制御部203およびドア駆動モータ204は、制御対象(ホームドア)205の駆動部を構成している。
【0023】
出力決定部201は、総合状態認識部200の認識結果を受けて、制御対象(ホームドア)205の駆動部に出力する指令を決定する。
外部駆動処理機能部202は、出力決定部201から出力される指令を受けて、ドア開閉制御に関する外部機器の駆動処理を制御する。
【0024】
ドア駆動モータ制御部203は、外部駆動処理機能部202からの制御出力を受けて、ドア駆動モータ204を制御する。
ドア駆動モータ204は、ドア駆動モータ制御部203の制御下で動作し、制御対象(ホームドア)205を駆動する。
制御対象205およびその近傍にはセンサAが設置されており、センサAの検出情報は、総合状態認識部200にフィードバックされている。
【0025】
一方、図3において、この発明の実施の形態1に係るホームドア制御システムは、センタ側に設置された総合制御装置300と、各ホームドアの近傍に設置された複数の個別制御盤400とにより構成されている。
ここでは、代表的に単一の個別制御盤400のみを示している。
【0026】
総合制御装置300は、総合認識装置301と、入力部302と、伝送部303と、検出装置307と、監視制御部310とを備えている。
個別制御盤400は、総合認識装置401と、出力部402と、伝送部403と、検出装置407とを備えている。
【0027】
総合認識装置401には、必要に応じて、外部の検出装置507も接続されている。
検出装置307、407、507は、図1内の検出装置107に対応している。
また、総合制御装置300内の検出装置307は、たとえばプラットホーム上の総合的な乗客量を検出してもよい。
【0028】
総合制御装置300内の監視制御部310は、伝送部303および403を介して、個別制御盤400内の総合認識装置401と相互通信可能に接続されており、総合認識装置301および総合認識装置401と関連して、図2内の総合状態認識部200(図1のシステム)を構成している。
【0029】
総合制御装置300内の入力部302は、外部機器(図示せず)およびオペレータとの間の入出力インタフェースを構成している。
個別制御盤400内の出力部402は、図2内の出力決定部201、外部駆動処理機能部202、ドア駆動モータ制御部203およびドア駆動モータ204を構成している。
また、出力部402は、必要に応じてプリンタまたはディスプレイなどを含んでいてもよい。
さらに、伝送部303、403は、図1内のメッセージ通信手段102、104、106、108に対応している。
【0030】
次に、図2および図3を参照しながら、図1に示したこの発明の実施の形態1による動作について説明する。
図1内の検出装置107において、まず、光電センサおよび人感センサからなるn個のセンサAは、制御対象205に設置されたホームドアの動作状態を検出する。
各センサAで検出された情報は、各センサ専用前処理装置Bに入力され、特徴量抽出装置105において利用可能な処理データに変換され、n個のセンサ前処理結果Cとしてメモリ(図示せず)に格納される。
【0031】
続いて、特徴量抽出装置105内のm個の特徴量抽出部Dは、あらかじめ設定された任意の組み合わせで、n個のセンサ前処理結果Cを選択的に使用して、システムレベル特徴量抽出装置103において使用可能なデータを抽出し、m個の特徴量Eとしてメモリに格納する。
【0032】
次に、システムレベル特徴量抽出装置103内のk個のシステムレベル特徴量抽出部Fは、あらかじめ設定された任意の組み合わせで、m個の特徴量Eを選択的に使用して、総合システム状態認識装置100において使用可能なデータを抽出し、k個のシステムレベル特徴量Gとしてメモリに格納する。
【0033】
最後に、総合システム状態認識装置100内の総合システム状態認識部101は、あらかじめ設定された任意の組み合わせで、k個のシステムレベル特徴量Gを選択的に使用して、個別制御盤400に関連したすべてのホームドアの動作状態を認識する。
総合システム状態認識装置100の認識結果は、出力決定部201に送出される。
これにより、出力決定部201は、総合システム状態認識装置100の認識結果に基づいて、制御対象(ホームドア)205の駆動部に出力する指令を決定する。
【0034】
このように、すべての制御対象(ホームドア)205の動作状況および環境状態を検出する検出装置107(307、407、507)と、センサAの検出情報に基づいてシステム状態を認識する総合システム状態認識装置100(総合状態認識部200、総合認識装置301)との間に、特徴量抽出装置105とシステムレベル特徴量抽出装置103とを挿入し、検出装置107の検出情報を所定の特徴量E、Gに変換して処理することにより、個々の検出装置107の独立性を維持しながら、総合認識装置の柔軟なシステム構成変更を可能にすることができる。
【0035】
すなわち、各センサAの情報を直接用いることなく、段階的に特徴量E、Gに変換し、各特徴量E、Gを任意の組み合わせで選択的に使用して、最終的に総合システム状態認識部101において総合的な判断を行うことにより、検出装置107の独立性を維持しながら、ホームドア情報認識システムの構成を柔軟に変更することができる。
したがって、柔軟な状態認識アプリケーションの導入や保守、および、検査装置107の構成変更への対応が可能になる。
【0036】
また、各センサAの検出情報は、検出装置107によりセンサ前処理結果Cに変換された後、段階的に、特徴量抽出装置105により特徴量Eに変換され、システムレベル特徴量抽出装置103によりシステムレベル特徴量Gに変換され、最終的に、総合システム状態認識装置100において、システムレベル特徴量Gを選択的かつ総合的に評価することにより、所望の状態認識結果を得ることができる。
また、段階的に特徴量を変換することにより、各段階での処理装置の構成や処理アルゴリズムを、前後の段階と独立して任意の時点で変更することができる。
【0037】
さらに、総合認識装置内の各装置100、103、105、107との間で相互に情報交換を可能にするメッセージ通信手段102、104、106、108を設けたので、各装置間100、103、105、107の情報交換をメッセージ通信として実現することができ、装置全体のレイアウトを柔軟に実現することができる。
【0038】
このとき、総合認識装置301(総合状態認識部200)は、各センサAとセンサ専用前処理部Bとから構成される検出装置107と、各センサ前処理結果Cを使用して特徴量Eを抽出する特徴量抽出装置105と、各特徴量Eを使用してシステムレベル特徴量Gを抽出するシステムレベル特徴量抽出装置103と、各システムレベル特徴量Gを選択的に使用してホームドアの動作状態を総合的に判断する総合システム状態認識装置100とに分割され、各装置が独立しているので、各装置間で情報交換されるデータ量(特徴量)は少なくて済む。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の実施の形態1に係るホームドア状態認識システムの機能構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るホームドア状態認識システムをホームドア制御システムとともに示すブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るホームドア状態認識システムをホームドア制御システムの機能構成とともに示すブロック図である。
【符号の説明】
【0040】
100 総合システム状態認識装置、101 総合システム状態認識部、102、104、106、108 メッセージ通信手段、103 システムレベル特徴量抽出装置、105 特徴量抽出装置、107、307、407、507 検出装置、200 総合状態認識部、201 出力決定部、202 外部駆動処理機能部、203 ドア駆動モータ制御部、204 ドア駆動モータ、205 制御対象(ホームドア)、300 総合制御装置、301、401 総合認識装置、303、403 伝送部、310 監視制御部、400 個別制御盤、A 各種センサ、B センサ専用前処理、C センサ前処理結果、D 特徴量抽出部、E 特徴量、F システムレベル特徴量抽出部、G システムレベル特徴量。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホームドアの動作状況および環境を検出する検出装置と、
前記検出装置の検出情報に基づいて、前記ホームドアを含むシステム状態を認識する総合認識装置と
を備えたホームドア状態認識システムにおいて、
前記総合認識装置は、
前記検出装置の検出情報を所定の特徴量に変換して処理する特徴量抽出手段と、
前記特徴量に基づいて前記システム状態を認識する総合システム状態認識手段と
を含むことを特徴とするホームドア状態認識システム。
【請求項2】
前記検出装置は、複数の検出装置により構成され、
前記特徴量抽出手段は、
前記複数の検出装置の各検出情報を複数の特徴量に変換する特徴量抽出手段と、
前記複数の特徴量を選択的かつ総合的に評価して複数のシステムレベル特徴量に変換するシステムレベル特徴量抽出手段とを含み、
前記総合システム状態認識手段は、前記複数のシステムレベル特徴量を選択的かつ総合的に評価して前記システム状態を認識することを特徴とする請求項1に記載のホームドア状態認識システム。
【請求項3】
前記検出装置、前記特徴量抽出手段および前記総合システム状態認識手段の各相互間の情報交換を可能にするメッセージ通信手段を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のホームドア状態認識システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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