説明

ホールプラグおよびホールプラグの製造方法

【課題】ホールへの密着性を保ちつつ熱軟化性部材の量を少なくし、軽量化したホールプラグを提供する。
【解決手段】ホールプラグ10において、円筒形状の外胴部24は、取付対象に形成されたホールに挿入される。フランジ部30は、外胴部24の一方の第1外周端52から径方向外向きに延出し、他方の第2外周端54に向かって傾斜する。突出部は、外胴部24の外周に形成され、他方の第2外周端54より径方向に突出する。係止部は、ホールの縁に係止する。第1熱軟化性部材60は、突出部と第1外周端52との間の胴部の外周面に取り付けられ、ホールの内周側に位置するように設けられる。突出部はホールの上側に位置し、フランジ部30はホールの下側に位置するように、取付対象に取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱軟化性部材を備えるホールプラグおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の車体などの板状部材には、製造工程において用いられるホールが形成される。このホールを閉塞するため、ホールプラグがホールに挿入され車体に固定される。このようなホールプラグにおいて、プラグ本体より低い温度で融解する熱軟化性樹脂部材を用いて、ホールの周囲に熱軟化性樹脂部材を固着させることでシール性を高めてホールを塞ぐものがある。
【0003】
特許文献1には、ホールに挿入される円筒形状の挿入部と、挿入部から延出するカバーフランジ部と、カバーフランジ部の周縁に装着される熱軟化性樹脂部材と、を備えるホールプラグが開示されている。カバーフランジ部はホールより大径で、車体に取り付けるとホールを覆うように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−128422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、ホールの径方向外側に熱軟化性樹脂部材を配置し、その位置で車体と熱軟化性樹脂部材とが固着するように構成されているため、熱軟化性樹脂部材が多く必要となる。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ホールへの密着性を保ちつつ熱軟化性部材の量を少なくし、軽量化したホールプラグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のホールプラグは、取付対象に形成されたホールに挿入される円筒形状の胴部と、胴部の一方の端部から径方向外向きに延出し、他方の端部に向かって傾斜するフランジ部と、胴部の外周に形成され、他方の端部より径方向に突出する突出部と、ホールの縁に係止する係止部と、突出部と一方の端部との間の胴部の外周面に取り付けられ、ホールの内周側に位置するように設けられた熱軟化性部材と、を備える。このホールプラグにおいて、突出部はホールの上側に位置し、フランジ部はホールの下側に位置するように、取付対象に取り付けられる。
【0008】
この態様によると、ホールプラグをホールに取り付けた際にホールの内周側に熱軟化性部材が位置するため、熱軟化性部材を融解させると、ホールの内周面と熱軟化性部材とが固着する。熱軟化性部材をホールの径方向外側に配置する場合と比べて、熱軟化性部材の量を少なくすることができ、ホールプラグを軽量化することができる。また、フランジ部はホールの下側に位置しているため、熱軟化性部材を融かした場合に、フランジ部が受け皿として機能し、融解して熱軟化性材料が下に垂れるのを防ぐことができる。
【0009】
本発明の別の態様は、ホールプラグの製造方法である。この方法は、円筒形状の胴部と、胴部の周端から径方向外向きに延出するフランジ部と、胴部の外周に形成された周状凹部と、フランジ部または胴部に周状凹部と連結する溝部と、を備えるホールプラグの一次成形品を用意する。次に、フランジ部に対して胴部を下方に位置するようにしてフランジ部の上側から一次成形品に嵌合される成形固定型、フランジ部の下側から一次成形品に嵌合される成形可動型、および胴部の外周に配置される複数の成形スライド型により形成される金型空間内に一次成形品を配置する。次に、成形スライド型と成形可動型とにより形成されて溝部上の空間と連結する注入流路に熱軟化性部材を注入し、溝部および周状凹部上の空間に熱軟化性部材を注入してホールプラグの二次成形品を形成する。次に、成形可動型を二次成形品とともに成形固定型から離れる方向に移動させると、溝部上の熱軟化性部材と流路の熱軟化性部材との連結が、溝部上の空間と流路との連結部分で切れる。
【0010】
この態様によると、外胴部の外周に熱軟化性部材を配置することで、熱軟化性部材の量を少なくしたホールプラグを製造することができる。また、熱軟化性材料を注入した二次成形品を取り出す際に、成形可動型を移動させる工程で、流路側の熱軟化性部材と切断することができ、効率よく成形を進めることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱軟化性部材の量を少なくし、軽量化したホールプラグおよびその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態に係るホールプラグの表側からみた斜視図である。
【図2】実施形態に係るホールプラグの裏側からみた斜視図である。
【図3】(A)は図1に示すホールプラグのA−A線の断面図であり、(B)は、溶解後における図1のA−A線の断面図である。
【図4】図1に示すホールプラグのB−B線の断面図を示す図である。
【図5】実施形態に係るホールプラグの変形例を示す斜視図である。
【図6】図5に示すホールプラグのC−C線の断面図である。
【図7】実施形態に係るホールプラグを形成するための金型を示す図である。
【図8】実施形態に係るホールプラグの一次成形品と金型との位置関係について説明するための図である。
【図9】実施形態に係る注入流路を拡大して示す図である。
【図10】実施形態に係るホールプラグの第1変形例を示す図である。
【図11】実施形態に係るホールプラグの第2変形例を示す図である。
【図12】実施形態に係るホールプラグの第3変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、実施形態に係るホールプラグ10の表側からみた斜視図である。図2は、実施形態に係るホールプラグ10の裏側からみた斜視図である。ここで各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0014】
車両の組み立て工程において車体のボディパネルにホールが形成され、ホールプラグ10は取付対象となる車両のボディパネルに形成されたホールに取り付けられる。そのホールにホールプラグ10をホールの下側から挿入して一次固定することで、ホールを閉塞する。
【0015】
ホールプラグ10は、胴部20、フランジ部30、閉塞部40および熱軟化性部材を備える。胴部20、フランジ部30および閉塞部40は一体に成形され、これらを総称して本体部という。本体部と熱軟化性部材とは、異なる材料で形成され、熱軟化性部材は、本体部より低い温度、たとえば110度から180度程度で融解する樹脂材料である。熱軟化性部材はボディパネルを塗装する際の塗装炉の熱で融解する。熱軟化性部材が融解して熱軟化性部材が車体に密着した状態を二次固定という。二次固定により車体のホールを完全にシールし、水、ほこり、砂などがホールの内側に侵入しないようにする。
【0016】
胴部20は、円筒形状に形成され、内側に内胴部22、外側に外胴部24を有する。外胴部24の一方の第1外周端52からフランジ部30が延出する。他方の第2外周端54は、内胴部22に連結する。外胴部24の外周面には、拡径部25と、拡径部25よりフランジ側に位置する周状凹部28、周状凹部28に連結する溝部70とが形成される。なお、周状凹部28は後述する図3に示される。
【0017】
拡径部25は、第2外周端54から最大径部27まで拡径し、テーパ面を形成している。周状凹部28は、拡径部25と第1外周端52との間の外胴部24の外周に形成される。周状凹部28は、拡径部25に連接し、最大径部27より径方向に窪んだ形状である。溝部70は、周状凹部28から軸方向に沿って第2外周端54まで外胴部24の外周面を切り欠いたように形成され、拡径部25より窪んでいる。最大径部27は外胴部24において最大径を有する突出部として構成され、一次固定の際に外胴部24がホールから抜け落ちないようにホール径より大きな径をもつ。
【0018】
内胴部22の内周面には突起状の位置決め部50が形成される。位置決め部50はインサート成形する際の金型の位置決めに用いられる。外胴部24と連結する側とは逆側の内胴部22の内周端は、閉塞部40と連結する。閉塞部40は円板形状に形成される。
【0019】
フランジ部30は、第1外周端52から径方向外向きに延出し、第2外周端54に向かって傾斜している。フランジ部30は、外胴部24の一部を囲むように傾斜しており、フランジ裏面32の断面は凹んだ円弧形状に形成される。フランジ部の外側の先端部分がフランジ外端部34である。
【0020】
熱軟化性部材は第1熱軟化性部材60と第2熱軟化性部材62を有する。周状凹部28には第1熱軟化性部材60が設けられている。第1熱軟化性部材60は、円環形状に形成され、周状凹部28に固着されている。なお、図に示す第1熱軟化性部材60は、ホールに取り付け前の状態であって、ホールに取り付けたのち加熱され融解する。
【0021】
溝部70には、第2熱軟化性部材62が設けられている。第2熱軟化性部材62は、溝部70に固着され、第1熱軟化性部材60から突出するように形成され、周状凹部28と溝部70とに連続して熱軟化性部材が配置されている。
【0022】
図3(A)および(B)は、図1に示すホールプラグ10のA−A断面図を示す。また、図4は、図1に示すホールプラグ10のB−B断面図を示す。図3(A)および図4では、取付対象となるボディパネル12のホール14に取り付けた状態を示し、第1熱軟化性部材60および第2熱軟化性部材62に熱を与える前の状態を示す。図3(B)は、第1熱軟化性部材60および第2熱軟化性部材62に熱を与えた状態を示す。また図4は、溝部70が形成された部分の断面を示す。
【0023】
ホールプラグ10は、ユーザが指で閉塞部40を押しながらホール14の下側から挿入される。具体的には、外胴部24の第1外周端52から挿入され、ホール14の内周面が最大径部27を越えた周状凹部28まで挿入された位置で係止され、その係止位置でボディパネル12とフランジ部30のフランジ外端部34とが当接する。傾斜面26は、最大径部27から第1外周端52に向かって縮径している。傾斜面26は、第1熱軟化性部材60を介してホール14の縁に係止する係止部として機能してよい。最大径部27とフランジ外端部34との間にホール14が位置する。最大径部27がホール14の上縁に当接し、フランジ外端部34がボディパネル12の下面に当接し、ホールプラグ10がボディパネル12に一次固定される。これによりホールプラグ10を安定して一次固定することができる。
【0024】
最大径部27の外径はホール14の内径より大きく、第2外周端54の外径はホール14の内径より小さい。これによりホールプラグ10をホール14に容易に挿入して取り付けることができる。フランジ外端部34の外径はホール14の内径より大きく、フランジ外端部34がホール14の周りのボディパネル12に当接することで、ホールプラグ10の密着性を高め、ガタを抑えて安定して保持することができる。
【0025】
第1熱軟化性部材60および第2熱軟化性部材62は、胴部20がホール14に挿入された一次固定において加熱されて融け、ホール14の周囲に固着して密着する。このとき、第1熱軟化性部材60および第2熱軟化性部材62が融けて液化すると、垂れ落ちる可能性がある。実施形態のホールプラグ10では、拡径部25がホール14の上側に位置し、フランジ部30はホール14の下側に位置するように、ボディパネル12に取り付けられる。これにより、図3(B)に示すようにフランジ部30が第1熱軟化性部材60および第2熱軟化性部材62の受け皿となり、液化した第1熱軟化性部材60および第2熱軟化性部材が垂れ落ちることを防ぐことができる。
【0026】
熱軟化性部材を周状凹部28および溝部70に設けることでホール14の内周面に固着させるために必要な量の熱軟化性部材を用いることができ、熱軟化性部材の量を少なくでき、ホールプラグ10を軽量化できる。また外胴部24の外周面に環状に熱軟化性部材を形成することで、ボディパネル12と本体部との接触面積を小さくでき、熱による本体部の収縮の程度を抑えることができる。
【0027】
図4に示すように溝部70と対向する位置に位置決め部50が設けられている。第2熱軟化性部材62は溝部70に設けられ、第2熱軟化性部材62は、ホール14の上側の第2外周端54まで延在している。これにより、第2熱軟化性部材62を融かした際にホール14の上側からも固着することができる。また、溝部70および第2熱軟化性部材62を周状に複数設けてよい。これによりボディパネル12にいっそう強固に固着することができる。
【0028】
図5は、実施形態に係るホールプラグ10の変形例を示し、ホールプラグ10を裏側からみた斜視図である。また、図6は、図5に示すホールプラグ10のC−C断面図である。この変形例では、図1から図4に示すホールプラグ10と比べて溝部72の位置が異なる。
【0029】
このホールプラグ10は、フランジ部30のフランジ裏面32に周状凹部28と連結する溝部72を有する。溝部72は、周状凹部28の第1外周端52からフランジ外端部34まで延在している。この溝部72には第3熱軟化性部材64が設けられる。第3熱軟化性部材64は、第1熱軟化性部材60と連続して配置されている。第3熱軟化性部材64をフランジ外端部34まで設けることで、第3熱軟化性部材64が融けた際、フランジ外端部34にある第3熱軟化性部材64がボディパネル12に固着し、ホールプラグ10を安定して固定することができる。
【0030】
フランジ裏面32に設けた溝部72および第3熱軟化性部材64は、周状に複数配置されてよい。これにより、熱軟化性部材が融けた際、複数箇所でボディパネル12に固着し、ホールプラグ10をより安定して固定することができる。また、外胴部24に設けられた溝部70とフランジ部30に設けられた溝部72とを組み合わせてよい。これによりいっそう強固に車体に固定することができる。
【0031】
図7は、実施形態に係るホールプラグ10を形成するための金型を示す。この金型を用いてインサート成形を実行し、熱軟化性部材を注入する。熱軟化性部材を注入する前の状態のホールプラグ10の一次成形品が、この金型により形成される空間に配置される。
【0032】
金型は、成形の際に固定状態にある円筒形状の成形固定型110と、スライド可能な板状の成形スライド型120と、可動する成形可動型130を備える。なお、図7では、内部状態を示すため1つの成形スライド型120を省いて図示しているが、実際は対称形の成形スライド型120がもう1つ用いられる。成形スライド型120は板形状の一辺に半円弧形状の切り欠き126が形成されている。インサート成形する際には円弧形状の切り欠き126は外胴部24の外周に対向配置される。2つの成形スライド型120と成形可動型130により、熱軟化性部材の注入流路150が形成される。
【0033】
図8は、実施形態に係るホールプラグ10の一次成形品160と金型との位置関係について説明するための図である。一次成形品160は金型により形成される空間内に配置されている。適宜、図7も参照して説明する。
【0034】
成形固定型110は、フランジ部30に対して外胴部24を下方に位置するようにしてフランジ部30の上側から一次成形品160に嵌合される。すなわち成形固定型110は、一次成形品160の表側に位置する。また内胴部22および外胴部24の環状の隙間に成形固定型110の環状突部112が嵌合される。
【0035】
一方、成形可動型130は、一次成形品160を挟んで成形固定型110の逆側に位置し、フランジ部30の下側から一次成形品160に嵌合される。内胴部22の内側の空間の少なくとも一部に円柱突部132が嵌合される。
【0036】
成形スライド型120は、一部が成形固定型110と成形可動型130との間に位置し、周状凹部28上の熱軟化性部材が注入される空間、すなわち第1熱軟化性部材60が形成される空間を確保しつつ、外胴部24の外周に配置される。成形スライド型120はフランジ部30の裏側に位置し、成形スライド型120と成形固定型110によりフランジ部30を挟んでいる。図7に示すように成形スライド型120は成形可動型130上をスライドし、成形スライド型120の段部124が成形可動型130に当接してスライド位置を合わせる。成形スライド型120は最大径部27に当接し、第1熱軟化性部材60のための円環状の空間を形成する。また成形可動型130は、溝部70上の空間、すなわち第2熱軟化性部材62が形成される空間を形成する。
【0037】
熱軟化性部材の注入流路150の一端は、溝部70上の空間、すなわち、第2熱軟化性部材62が形成される箇所に連結する。注入流路150の他端は、外部に連結し、樹脂材料が注入される入り口となる。溝部70および第2熱軟化性部材62の数に応じて注入流路150は複数設けられてよく、これにより注入工程にかかる時間を短くすることができる。また、溝部72を有するホールプラグ10を製造する場合には、溝部72上の空間に連結する注入流路を形成する。
【0038】
図9は、実施形態に係る注入流路150の拡大図である。注入流路150は、成形可動型130の上面に窪んで形成された可動窪み部134と、2つの成形スライド型120の角に切り欠くように形成されたスライド窪み部122と、可動窪み部134に連結して形成された溝部70への注入口136とにより形成される。注入流路150と、溝部70上の空間の連結部分152は、穴部として形成される。
【0039】
注入口136は、可動窪み部134およびスライド窪み部122により形成される注入流路150の断面積より小さく、溝部70への連結部分に向かって先端が細くなっている。これにより、熱軟化性部材を注入した後、注入流路150内の熱軟化性部材と、溝部70に設けられた熱軟化性部材の切断が容易となる。次に、以下に製造工程の順序について説明する。
【0040】
まず、ホールプラグ10の一次成形品160を成形する。そして、一次成形品160を金型内の空間に配置する。具体的には、成形可動型130に嵌合した一次成形品160を移動して成形固定型110に嵌合し、成形スライド型120を成形可動型130上をスライドさせて一次成形品160の外胴部24の外周に配置する。なお、一次成形品160の一部は外部に露出してもよい。この金型の配置により注入流路150が形成される。
【0041】
次に、注入流路150に液状の熱軟化性部材が注入される。熱軟化性部材は注入口136から溝部70上に流入し、溝部70上から周状凹部28上に注入される。熱軟化性部材の温度が下がると、注入された熱軟化性部材が固まり、ホールプラグ10の二次成形品が形成される。なお、二次成形品の溝部70上の第2熱軟化性部材62と注入流路150内の熱軟化性部材とは連結したままである。
【0042】
次に、2つの成形スライド型120が成形可動型130の上面を互いに離間する方向にスライドする。これにより、注入流路150内の熱軟化性部材が一部露出する。
【0043】
次に、成形可動型130が下方に移動させられ、成形可動型130とともに二次成形品が移動させられる。第1熱軟化性部材60および第2熱軟化性部材62は移動する一方、注入流路150内の熱軟化性部材は、固まったままその場に残る。したがって、成形可動型130の移動により連結部分152を形成する穴部137も移動し、熱軟化性部材が引っ張られて第2熱軟化性部材62と注入流路150内の熱軟化性部材との連結部分152が切れる。連結部分152の断面積は注入流路150の断面積より小さく、引っ張るだけで切れうる。連結部分152は、成形可動型130の溝部対向部138によりきれいに切断されてよい。溝部対向部138は、溝部70に対向し、連結部分152に対して鋭角部分を有する。成形可動型130の移動により第2熱軟化性部材62と注入流路150内の熱軟化性部材との連結を切断することができるため、別途切断する工程を設けることなく効率よく成形を進めることができる。
【0044】
成形可動型130から二次成形品が外され、二次成形品がホールプラグ10の完成品として取り出される。以上のようにホールプラグ10を効率的に製造できる。
【0045】
図10は、実施形態に係るホールプラグ10の第1変形例を示す。図10(A)はホールプラグ10を車体12に一次固定した状態の断面図を示し、図10(B)は熱軟化性部材64を拡大した断面図を示す。第1変形例のホールプラグ10は、熱軟化性部材の流路が設けられていないタイプである。また、第1変形例のホールプラグ10の熱軟化性部材は、図3および図4に示す熱軟化性部材と形状が異なっている。
【0046】
図10(B)に示すように、熱軟化性部材64は円環部64aおよび、傾斜面26に沿って形成され、円環部64aから径方向外向きに張り出す張出部64bを備える。図10(A)に示すように、円環部64aの外径はホール14の内径と略同一に形成される。ホール14の内周面は円環部64aの外周に当接する。ホール14の上方に張出部64bが位置する。なおホール14の取り付けを容易にするため、円環部64aの外径はホール14の内径より少しだけ小さくなるように形成されてよい。
【0047】
図10(A)に示すように、ホール14の上方から径方向外側の車体12の上面側に張出部64bが張り出し、ホール14の内径より張出部64bの最大外径は大きくなるよう形成されている。これにより加熱した際にホール14周囲の車体12の上面に熱軟化性部材が固着して、シール性をいっそう高めることができる。また、一次固定において、ホール14の上側から張出部64bでホール14の縁を係止することも可能であり、より安定してホールプラグ10を取り付けることができる。
【0048】
図11は、実施形態に係るホールプラグ10の第2変形例を示す。図11(A)はホールプラグ10を車体12に一次固定した状態の断面図を示し、図11(B)は熱軟化性部材66を拡大した断面図を示す。第2変形例のホールプラグ10は円環部66aの下端から径方向外向きに延在する外延部66bを有する。
【0049】
外延部66bは、環状に形成され、フランジ裏面32に固着される。また、熱軟化性部材66は、フランジ外端部34まで延在し、車体12に一次固定した際に車体12に接触するように形成される。外延部66bを設けることで、ホールプラグ10を加熱した際に、車体12に外延部66bの端部が融着して、円環部66aに加えて2重にシールすることができ、シール性をいっそう高めることができる。
【0050】
図12は、実施形態に係るホールプラグ10の第3変形例を示す。図12(A)はホールプラグ10を車体12に一次固定した状態の断面図を示し、図12(B)は熱軟化性部材68を拡大した断面図を示す。第3変形例のホールプラグ10は、図11に示す第2変形例に張出部68bをさらに有する。すなわち、このホールプラグ10は円環部68a、張出部68bおよび外延部68cを有する。
【0051】
ホール14の上方から径方向外側の車体12の上面側に張出部68bが張り出し、ホール14の内径より張出部68bの最大外径は大きくなるよう形成されている。これにより加熱した際にホール14周囲の車体12の上面に熱軟化性部材が固着して、シール性をいっそう高めることができる。
【0052】
本発明は上述の各実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施例に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施例も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0053】
10 ホールプラグ、 12 ボディパネル、 14 ホール、 20 胴部、 22 内胴部、 24 外胴部、 25 拡径部、 26 傾斜面、 27 最大径部、 28 周状凹部、 30 フランジ部、 32 フランジ裏面、 34 フランジ外端部、 40 閉塞部、 50 位置決め部、 52 第1外周端、 54 第2外周端、 60 第1熱軟化性部材、 62 第2熱軟化性部材、 70,72 溝部、 110 成形固定型、 120 成形スライド型、 130 成形可動型。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付対象に形成されたホールに挿入される円筒形状の胴部と、
前記胴部の一方の端部から径方向外向きに延出し、他方の端部に向かって傾斜するフランジ部と、
前記胴部の外周に形成され、前記他方の端部より径方向に突出する突出部と、
ホールの縁に係止する係止部と、
前記突出部と前記一方の端部との間の前記胴部の外周面に取り付けられ、ホールの内周側に位置するように設けられた熱軟化性部材と、を備え、
前記突出部はホールの上側に位置し、前記フランジ部はホールの下側に位置するように、取付対象に取り付けられることを特徴とするホールプラグ。
【請求項2】
前記突出部より径方向に凹み、前記熱軟化性部材が設けられた周状凹部を備え、
前記フランジ部または前記胴部には前記周状凹部と連結した溝部が形成され、
前記周状凹部と前記溝部とに連続して熱軟化性樹脂が配置されていることを特徴とする請求項1に記載のホールプラグ。
【請求項3】
前記熱軟化性部材は、円環部と、前記円環部から径方向外向きに張り出す張出部とを備えることを特徴とする請求項1に記載のホールプラグ。
【請求項4】
前記胴部の前記溝部は、前記他方の端部まで延在していることを特徴とする請求項2に記載のホールプラグ。
【請求項5】
前記フランジ部の前記溝部は、前記フランジ部の外端部まで延在していることを特徴とする請求項2に記載のホールプラグ。
【請求項6】
円筒形状の胴部と、前記胴部の周端から径方向外向きに延出するフランジ部と、前記胴部の外周に形成された周状凹部と、前記フランジ部または前記胴部に前記周状凹部と連結する溝部と、を備えるホールプラグの一次成形品を用意し、
前記フランジ部に対して前記胴部を下方に位置するようにして前記フランジ部の上側から前記一次成形品に嵌合される成形固定型、前記フランジ部の下側から前記一次成形品に嵌合される成形可動型、および前記胴部の外周に配置される複数の成形スライド型により形成される金型空間内に前記一次成形品を配置し、
前記成形スライド型と前記成形可動型とにより形成されて前記溝部上の空間と連結する注入流路に熱軟化性部材を注入し、前記溝部および前記周状凹部上の空間に熱軟化性部材を注入して前記ホールプラグの二次成形品を形成し、
前記成形可動型を前記二次成形品とともに前記成形固定型から離れる方向に移動させると、前記溝部の熱軟化性部材と前記流路の熱軟化性部材との連結が、前記溝部上の空間と前記流路との連結部分で切れることを特徴とするホールプラグの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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