説明

ホール素子を用いた電動ファン付き呼吸用保護具

【課題】塵、埃、油等の汚れた環境においても誤作動を可及的に少なくした電動ファン付き呼吸用保護具の提供
【構成】電動ファン付き呼吸用保護具において、排気弁又は吸気弁の一部に磁石を設け、排気弁又は吸気弁の開閉をホール素子で検出し、呼吸に合わせた空気の供給制御を行うことを特徴とするホール素子を用いた電動ファン付き呼吸用保護具である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動ファン付き呼吸用保護具に関し、特に塵、埃、油等の汚れた環境においても誤作動を可及的に少なくした電動ファン付き呼吸用保護具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動ファン付き呼吸用保護具においては、常に一定流量で空気を供給するタイプと、呼吸に合わせて空気を供給するタイプがある。呼吸に合わせて空気を供給するタイプにはダイヤフラム等の圧力センサにより内圧で検知するもの、排気弁の開閉をフォトインタラプタで検知したもの等がある。
【0003】
特許文献1には排気弁の開閉をフォトインタラプタで検知した呼吸装置が開示されている。即ち、この呼吸装置は面体の前部に、排気時に開くと共に吸気時に閉じる排気弁と、排気時に閉じると共に吸気時に開く吸気弁とを設け、モータで駆動され、その通常作動時に前記吸気弁を通して外気を前記面体内に送り込むブロワーを設置した呼吸装置において、前記排気弁又は吸気弁の近傍に前記、排気弁又は吸気弁の位置を感知して、排気時又は吸気時に信号を発するフォトインタラプタを設置し、該センサからの信号により、吸気時には前記モータへ通常作動するよう電力供給されると共に、排気時にはモータへの電力供給が停止或いは減少されることを特徴とする呼吸装置が開示されている。
【特許文献1】特許3726886号公報
【0004】
しかし、フォトインタラプタを用いた呼吸装置では、フォトインタラプタの発光面、受光面及吸気弁または排気弁の表面(反射面)の汚れにより、ファンの動作不良が起こる可能性がある。また、経年劣化によるセンサの感度低下が起こり、同様の不具合が起こる可能性がある。
上述の不具合の原因となる塵、埃、油等が大量に存在している環境で使用する製品は、容易に故障しないような対策が必要である。
なお、汚れによる故障は、使用前後の点検、メンテナンスを行うことである程度は改善が可能であるが、使用者の呼吸保護を目的とした製品であるから、故障は好ましくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は故障を可及的に減少させたファン付き呼吸用保護具について種々検討した結果、本発明を完成させたもので、本発明の目的は塵、埃、油等の汚れによる誤作動の少ない、呼吸に合わせた空気の供給制御を行う電動ファン付き呼吸用保護具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨は、電動ファン付き呼吸用保護具において、排気弁又は吸気弁の一部に磁石を設け、排気弁又は吸気弁の開閉をホール素子で検出し、呼吸に合わせた空気の供給制御を行うことを特徴とするホール素子を用いた電動ファン付き呼吸用保護具である。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては電動ファン付き呼吸用保護具の排気弁又は吸気弁の開閉に、磁気センサーであるホール素子(ホールセンサー)を用いたものであって、これによってフォトインタラプタに比して塵、埃、油等の汚れによる誤作動の少ない電動ファン付き呼吸用保護具を提供することができたのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明における電動ファン付き呼吸用保護具とは全面形もしくは半面形の接顔面体に排気弁と吸気弁とを有し、電動ファンによって装着者の呼吸に合わせて空気を供給する呼吸保護具であって、本発明ではホール効果を利用したホール素子を有するホールセンサーをもって空気の供給制御を行うものである。即ち、ホール素子は、磁気を検出するのでフォトインタラプタに比べて、塵、埃、油等の汚れに強いことが特徴である。また、非接触で検出するため、機械式のリミットスイッチに比べて耐久性が高いので、呼吸用保護具を使用するような環境では有効なセンサーと言える。
本発明において、ホール素子の設置場所としては、従来製品のように排気弁(または吸気弁)でもよいし、専用の呼吸を検知するための部品を設けてもよい。
【実施例】
【0009】
本発明の実施例として図面を持って説明する。
図1は本発明にかかる電動ファン付き呼吸用保護具の構造図を示すものである。図1において、接顔体1には吸気弁座2と排気弁座8とが設けられている。ファンモーターカバー3内にはファンモーター5が取り付けられている。吸気時にはファンモーター5が作動すると共に吸気弁4が開きろ過材6を介して清浄な空気が送気される。
また、排気弁座8には排気弁9が排気時には開くと共に吸気時には閉じるように取り付けられている。排気弁9の任意の個所に磁石10が設けられていると共にこの磁石10に対向する位置の排気弁カバー7にホール素子11が取り付けられている。
呼吸による排気弁の動作を図2、図3に示す。
図2は、装着者が吸気しているときの排気弁9の状態であり、ホール素子と磁石は最大限に離れている。このとき、ホール素子が検知する磁束密度は小さいため、ホール素子の出力端子の電位差も小さくなる。電気回路は、ファンモーターが通常の送風を行うように制御する。
図3は、排気のときの排気弁9の状態であり、吸気時に比べてホール素子11と磁石10は近い位置関係になる。このとき、ホール素子が検知する磁束密度は大きくなるため、ホール素子の出力端子の電位差も大きくなる。電気回路は、ファンモーターの送風が、図2よりも減少する、或いは停止するように制御する。
【0010】
なお、微妙な送風の制御を行う場合には、ホール素子に対し、磁石の移動量に比例した磁束密度が得られるようにホールセンサーを設計することが望ましい。
図4に他の実施例を示す。ホール素子に対して垂直方向に移動する硬い樹脂等で出来た弁軸13に排気弁14を取り付けて、適当な弾力を持ったスプリング等12により排気弁14の開閉を行う構造である。排気弁の動きを図5、図6に示す。ファンモーターの動作は、上述と同じであるので省略する。
【産業上の利用可能性】
【0011】
以上述べたように、本発明ではホール素子を使用して外気を送入するようにしたので、フォトインタラプタに比べて、塵、埃、油等の汚れに強く、誤作動の少ない電動ファン付き呼吸用保護具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の電動ファン付き呼吸用保護具の断面図
【図2】図1の電動ファン付き呼吸用保護具の吸気時における排気弁の状態を示す断面図
【図3】図1の電動ファン付き呼吸用保護具の排気時における排気弁の状態を示す断面図
【図4】本発明の他の電動ファン付き呼吸用保護具の断面図
【図5】図4の電動ファン付き呼吸用保護具の吸気時における排気弁の状態を示す断面図
【図6】図4の電動ファン付き呼吸用保護具の排気時における排気弁の状態を示す断面図
【符号の説明】
【0013】
1 接顔体 2 吸気弁座 3 ファンモーターカバー
4 吸気弁 5 ファンモーター 6 ろ過材
7 排気弁カバー 8 排気弁座 9 排気弁
10 磁石 11 ホール素子 12 スプリング
13 弁軸 14 排気弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動ファン付き呼吸用保護具において、排気弁又は吸気弁の一部に磁石を設け、排気弁又は吸気弁の開閉をホール素子で検出し、呼吸に合わせた空気の供給制御を行うことを特徴とするホール素子を用いた電動ファン付き呼吸用保護具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−295922(P2008−295922A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−147779(P2007−147779)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(000145507)株式会社重松製作所 (17)
【Fターム(参考)】