説明

ボイラの強制冷却方法

【課題】貫流ボイラにおいて実施されるボイラの強制冷却方法であって、ボイラの温度降下率が一定以上となるように制御された強制冷却方法を提供すること。
【解決手段】火力発電設備において、ボイラ1の消火後に行われるボイラ1の強制冷却方法であって、空気供給ファンを作動させて、継続的に一定量の空気を供給すると共に、ボイラ1の温度が180℃以上となる条件では、第一の流量の給水を各種熱交換器、起動バイパス経路18、及び復水・給水管に流通させ、ボイラ1の温度が180℃未満となる条件では、第一の流量よりも小さい第二の流量の給水を各種熱交換器、起動バイパス経路18、及び復水・給水管に流通させる、ボイラ1の強制冷却方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電設備におけるボイラの強制冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電設備においては、ボイラにより給水を加熱・過熱し、過熱蒸気を蒸気タービンに送り込むことによって蒸気タービンに仕事をさせ、発電を行っている。ここで、火力発電設備は、消費電力量に応じて低負荷運転や運転の休止を行うことがあり、また、定期点検等を行うために、一定期間ごとに運転を休止することがある。このような、火力発電設備の運転休止時においては、ボイラ内への化石燃料の供給を停止して消火し、次いで送風、及び水管への給水の供給によりボイラを強制冷却する。ボイラの強制冷却を行う際には、過熱された設備への損傷を防止するため、温度降下率を一定以下に保つことが必要とされる。
【0003】
ところで、火力発電設備において用いられるボイラとしては、貫流ボイラ、及び循環ボイラ等が知られているが、近年最もよく用いられているボイラは貫流ボイラである。貫流ボイラはボイラ内に備えられる水管の一端から給水を供給し、給水を予熱し、蒸発させ、次いで過熱して、他端から過熱蒸気を排出する構造を有するボイラである。貫流ボイラは、ボイラ内に汽水分離を行うための蒸気ドラムを有していないため、一次過熱器に到達した余剰の給水を、蒸気タービン等を経由せずに、フラッシュタンク、次いで復水器に流通させるための起動バイパス経路を備えている。
【0004】
上述したボイラの強制冷却に関しては、ボイラの種類によって、その方法は異なるものである。例えば、再循環形ボイラの強制冷却方法としては、特許文献1に、再循環形ボイラのボイラ強制冷却時、ボイラの火炉パス出口温度を検出し、該火炉パス出口温度からボイラ再循環流路のQ弁の開度をプログラム設定して再循環流量を制御すると共に、前記火炉パス出口温度が設定した温度下降率となるように前記Q弁の開度を調整することを特徴とするボイラ強制冷却制御方法が開示されている。
【0005】
特許文献1に記載のボイラ強制冷却制御方法によれば、火炉パス出口温度が設定した温度下降率になるようにQ弁の開度を調整して再循環流量を制御するようにしているので、ボイラの強制冷却を、安定させて安全性を保持しつつ、最短時間内において効率的に行うことができる優れた効果を奏しうるものとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平8−006981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、再循環流量と給水流量を制御することにより、ボイラの強制冷却の制御を行うものであり、そもそも給水の再循環を行わない貫流型ボイラに対しては適用できるものではない。また、特許文献1に記載の発明は、ボイラの温度下降率が一定以下となるように再循環流量と給水流量の制御を行っているものの、具体的に給水流量をどのような値に制御するかについては実施可能な程度に開示されておらず、このような点において、更なる検討が必要となるものである。
【0008】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、貫流ボイラにおいて実施されるボイラの強制冷却方法であって、ボイラの温度降下率が一定以下となるように制御された強制冷却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、火力発電設備に備えられるボイラにおいて、空冷、及び水冷によりボイラを強制冷却する際に、水管内に流通させる給水の流量を、所定の値に変動させることにより、安定してボイラを強制冷却できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
具体的には、本発明は以下のものを目的とする。
【0011】
(1) 化石燃料を燃焼させ燃焼熱を発生させるボイラと、前記ボイラ内に設けられ、給水を流通させて加熱するための節炭器と、前記ボイラ内に設けられ、前記節炭器を流通させた給水を流通させて加熱するためのボイラ水壁と、前記ボイラ内に設けられ、前記ボイラ水壁を流通させた給水を過熱して蒸気を発生させるための一次過熱器と、海水により蒸気を冷却して復水を生成するための復水器と、前記一次過熱器から前記復水器へ給水を流通させるための起動バイパス経路と、前記復水器から前記節炭器へ復水・給水を流通させるための、復水・給水管と、前記ボイラに燃焼を補助するための空気を供給する空気供給ファンと、を備える火力発電設備において、前記ボイラの消火後に行われるボイラの強制冷却方法であって、前記空気供給ファンを作動させて、継続的に一定量の空気を供給すると共に、前記ボイラの温度が180℃以上となる条件では、第一の流量の給水を前記節炭器、前記ボイラ水壁、及び前記一次過熱器、並びに前記起動バイパス経路、及び前記復水・給水管に流通させ、前記ボイラの温度が180℃未満となる条件では、第一の流量よりも小さい第二の流量の給水を前記節炭器、前記ボイラ水壁、及び前記一次過熱器、並びに前記起動バイパス経路、及び前記復水・給水管に流通させる、ボイラの強制冷却方法。
【0012】
ここで、第一の流量は、例えば150T/H以上250T/H以下であり、第二の流量は、例えば130T/Hである。
【0013】
(1)に記載の発明は、特に貫流ボイラにおける強制冷却方法に関するものである。貫流ボイラにおいては、水管の損傷を防ぐために、ボイラの消火後においても節炭器、ボイラ水壁、及び一次過熱器に給水を流通させなくてはならない。一方、一次過熱器で発生した蒸気を過熱するための二次過熱器や、二次過熱器で発生した蒸気の圧力により回転する蒸気タービンにおいては、蒸気のみを流通させる構造となっており、給水の流入を防ぐ必要がある。ボイラを消火した状態で、節炭器、ボイラ水壁、及び一次過熱器に給水を流通させ、更に二次過熱器、及び蒸気タービンへの給水の流入を防止するためには、一次過熱器から汽水分離を行うためのフラッシュタンクに、更に復水器へといたる起動バイパス経路に給水を流通させる必要がある。
【0014】
即ち、(1)に記載の発明は、ボイラの消火後において、各種熱交換器、及び起動バイパス経路に循環させる給水を利用してボイラを強制冷却するものである。これによれば、ボイラの強制冷却方法を実施するにあたって既存の設備を用いることができ、更に、給水の循環にあたっては、通常運転時や低負荷運転時に行われる制御機構を利用して循環量を制御することができるため、設備投資のコストを低減させることができる。加えて、ボイラの水冷と同時に行われるボイラの空冷は、ボイラに通常設けられている空気供給ファンを用いるため、この点においても設備投資のコストを低減させることができる。
【0015】
(1)に記載の発明においては、ボイラの温度が180以上となる条件下では、各種熱交換器、起動バイパス経路、及び復水・給水管を流通する給水の流量を第一の流量とし、180℃未満となる条件下では、各種熱交換器、起動バイパス経路、及び復水・給水管を流通する給水の流量を第一の流量よりも小さい、第二の流量とする。ボイラの強制冷却を行う際、温度が低下した条件下では、この時期に各種熱交換器を流通させる給水の流量を低減させることにより、給水系統の各種調整弁への負担を増加させることなくボイラを冷却することができる。
【0016】
(2) 前記ボイラの温度が180℃以上となる条件において、前記第一の流量を段階的に増加させる、(1)に記載のボイラの強制冷却方法。
【0017】
ボイラの温度の低下に伴い、各種熱交換器内部に大量の給水を流通させた場合、ボイラの温度の降下率が急激に増大する危険性がある。このような場合、ボイラに備えられる水管に、局部的な温度差による歪が生じ、水管を損傷する事態にもなりかねない。第一の流量を段階的に増加させることにより、ボイラの温度降下率の急激な変動を防ぐことができ、ボイラの強制冷却を安全に実施することができる。
【0018】
(3) 前記ボイラの温度が180℃以上となる条件において、給水を流通させる水圧を第一の水圧とし、前記ボイラの温度が180℃未満となる条件において、給水を流通させる水圧を第一の水圧よりも小さい第二の水圧とする、(1)又は(2)に記載のボイラの強制冷却方法。
【0019】
(4) 前記第一の水圧がボイラ定格圧力であり、前記第二の水圧が3.5MPaである(1)から(3)のいずれかに記載のボイラの強制冷却方法。
【0020】
(3)及び(4)に記載の発明は、(1)に記載の発明の具体的な実施方法を規定したものである。このため、(3)及び(4)に記載の発明によれば、(1)に記載の発明と同様の効果を得ることができる。
【0021】
なお、(4)に記載の発明において、ボイラ定格圧力とは、通常の火力発電設備においては15Mpa以上25Mpa以下である。
【0022】
(5) 前記空気供給ファンにより供給される空気の流量を、空気供給ファンの総出力の40%とする、(1)から(4)のいずれかに記載のボイラの強制冷却方法。
【0023】
ボイラを強制冷却する際には、水管内に給水を循環させることによるボイラの水冷に加え、空気供給ファンによるボイラの空冷を行うことが好ましい。(6)に記載の発明は、ボイラの空冷の際、空気供給ファンにより供給される空気の流量を、空気供給ファンの総出力の40%とするものである。これにより、ボイラ内部を効率的に冷却することができると共に、ボイラ内部を空冷しすぎることによる、ボイラ内部の配管等の損傷を未然に防ぐことができる。また、通常用いられる空気供給ファンの出力の面からも、送風される空気の流量を上記流量とすることが好ましい。
【0024】
なお、通常火力発電設備において用いられる空気供給ファンの総出力は、火力発電設備が定格出力での発電を行うのに必要な燃料を燃焼するのに必要な空気量の1.1倍程度の空気を供給するのに必要な出力である。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、貫流ボイラにおいて実施することができるボイラの強制冷却方法であり、本発明によれば、給水系統の各種調整弁に負担をかけることなく、安全にボイラを冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る火力発電設備を示す図面である。
【図2】本発明に係るボイラの強制冷却方法の概略を示す図面である。
【図3】本発明に係るボイラの強制冷却方法の概略を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0028】
<火力発電設備>
まず、本実施形態に係るボイラの強制冷却方法について説明する前に、本実施形態に係る火力発電設備について説明する。
【0029】
[火力発電設備の構成]
図1に本実施形態に係る火力発電設備を示す。本実施形態に係る火力発電設備は、化石燃料を燃焼させ燃焼熱を発生させるボイラ1と、ボイラ1内に設けられ、給水を流通させて加熱するための節炭器2と、ボイラ1内に設けられ、節炭器2を流通させた給水を流通させて加熱するためのボイラ水壁3と、ボイラ1内に設けられ、ボイラ水壁3を流通させた給水を過熱して蒸気を発生させるための一次過熱器4と、海水により蒸気を冷却して復水を生成するための復水器9と、一次過熱器4から復水器9へ給水を流通させるための起動バイパス経路18と、復水器9から節炭器2へ復水・給水を流通させるための、復水・給水管の一部である復水管12(復水器9から後述する脱気器13に至る経路)と、復水・給水管の一部である給水管16(後述する脱気器13から節炭器2に至る経路)と、ボイラ1に燃焼を補助するための空気を供給する空気供給ファン(図示せず)と、を備える。
【0030】
また、起動バイパス経路18について、詳細に説明すると、起動バイパス経路18は、二次過熱器5、高圧・中圧タービン6、再熱器7、及び低圧タービン8を経由せずに、給水を一次過熱器4から復水器9に流通させる経路であり、起動バイパス系路上には、通常運転時に起動バイパス経路18への給水の流入を防止するための起動バイパス経路弁17と、汽水分離を行うためのフラッシュタンク(図示せず)と、を備える。
【0031】
更に、本実施形態に係る火力発電設備は、一次過熱器4で発生した蒸気を加熱するための二次過熱器5と、二次過熱器5で発生した蒸気の圧力を利用して回転する高圧・中圧タービン6と、高圧・中圧タービン6から排出された蒸気を、ボイラ1で発生する熱により再過熱する再熱器7と、再熱器7で再過熱された蒸気の圧力を利用して回転する低圧タービン8と、復水に混入した空気を除去するための脱気器13と、低圧タービン8から抽気された抽気蒸気と復水との間での熱交換を行う低圧給水加熱器11と、高圧・中圧タービン6から抽気された抽気蒸気と復水との間での熱交換を行う高圧給水加熱器15と、復水を復水管12に送り出すための復水ポンプ10と、給水を給水管16に送り出すための給水ポンプ14と、を備える。
【0032】
[火力発電設備の動作]
ここで、本実施形態に係る火力発電設備の動作について説明すると、ボイラ1において、石油、石炭等の化石燃料が燃焼して燃焼熱を発生すると、給水は給水ポンプ14により、給水管16からボイラ1内に備えられる節炭器2、ボイラ水壁3、一次過熱器4、二次過熱器5へと順次送られ、燃焼熱によって加熱(過熱)される。一次過熱器4に達した給水は、化石燃料の燃焼熱により沸騰して蒸気となり、これが二次過熱器5に送られ、更に過熱される。過熱された蒸気は、まず高圧・中圧タービン6に送られ、これを高速で回転させる。高圧・中圧タービン6で仕事を終えた蒸気は、一旦、ボイラ1内の再熱器7に戻され、そこで再び過熱されて、低圧タービン8へと送られ、低圧タービン8を高速で回転させる。低圧タービン8で仕事を終えた蒸気は、復水器9に送られて海水により冷却され、復水となる。この復水は、復水ポンプ10により、再度復水管12に送り出され、ボイラ1内の熱交換器に達する。
【0033】
ここで、ボイラ1内の水管には、その破損を防止するため、常時、一定以上の水量の給水を循環させる必要がある。これに対し、高圧・中圧タービン6や低圧タービン8等には、必要とされる発電量等に応じて蒸気の流量を調整しなければならない。このため、火力発電設備の起動時や低負荷運転時等においては、ボイラ1内の水管を循環させる給水の流量に対して、高圧・中圧タービン6や低圧タービン8に流通させる蒸気の流量が少なくなる事態が想定される。このような場合、ボイラ1内の水管に送り込まれた余剰の給水は、起動バイパス経路弁17を開弁して起動バイパス経路18により、復水器9等へと送り出される。
【0034】
これについて更に詳細に説明すると、まず、一次過熱器4に達した余剰の給水は、起動バイパス経路18により、フラッシュタンクに送り込まれる。フラッシュタンク内においては、一次過熱器4よりも圧力が低く設定されており、高温の給水の一部はここで蒸気となり、二次過熱器5へと送られる。フラッシュタンク内で蒸発せずに残った給水は、起動バイパス経路18により、更に復水器9へと送られ、復水と混合される。
【0035】
<ボイラの強制冷却方法>
本実施形態に係るボイラ1の強制冷却方法は、空気供給ファンを作動させて、継続的に一定量の空気を供給すると共に、ボイラ1の温度が180℃以上となる条件では、第一の流量の給水を節炭器2、ボイラ水壁3、及び一次過熱器4、並びに起動バイパス経路18、復水管12、及び給水管16に流通させ、ボイラ1の温度が180℃以下となる条件では、第一の流量よりも小さい第二の流量の給水を節炭器2、ボイラ水壁3、及び一次過熱器4、並びに起動バイパス経路18、復水管12、及び給水管16に流通させるものである。
【0036】
ここで、本実施形態に係るボイラ1の強制冷却方法は、特に貫流ボイラにおける強制冷却方法に関するものである。貫流ボイラにおいては、水管の損傷を防ぐために、ボイラ1の消火後においても節炭器2、ボイラ水壁3、及び一次過熱器4に給水を流通させなくてはならない。一方、一次過熱器4で発生した蒸気を過熱するための二次過熱器5や、二次過熱器5で発生した蒸気の圧力により回転する蒸気タービンにおいては、蒸気のみを流通させる構造となっており、給水の流入を防ぐ必要がある。ボイラ1を消火した状態で、節炭器2、ボイラ水壁3、及び一次過熱器4に給水を流通させ、更に二次過熱器5、及び蒸気タービンへの給水の流入を防止するためには、一次過熱器4から汽水分離を行うためのフラッシュタンクに、更に復水器9へといたる起動バイパス経路18に給水を流通させる必要がある。
【0037】
本実施形態に係るボイラ1の強制冷却方法は、ボイラ1の消火後において、各種熱交換器、及び起動バイパス経路18に循環させる給水を利用してボイラ1を強制冷却するものである。これによれば、ボイラ1の強制冷却方法を実施するにあたって既存の設備を用いることができ、更に、給水の循環にあたっては、通常運転時や低負荷運転時に行われる制御機構を利用して循環量を制御することができるため、設備投資のコストを低減させることができる。加えて、ボイラ1の水冷と同時に行われるボイラ1の空冷は、ボイラ1に通常設けられている空気供給ファンを用いるため、この点においても設備投資のコストを低減させることができる。
【0038】
[空気供給ファンによる空気の供給]
空気供給ファンは、化石燃料等の燃焼を補助するための空気を供給するためのものであり、押込送風機等と称されるものである。空気供給ファンは、ボイラ1の消火時から、強制冷却終了時まで、一定の流量で空気を送風するものであり、これによりボイラ1内部を空冷する。空気供給ファンによりボイラ1内に送風される空気の流量は、空気供給ファンの総出力の40%であることが好ましい。これにより、ボイラ1内部を効率的に冷却することができると共に、ボイラ1内部を空冷しすぎることによる、ボイラ1内部の配管等の損傷を未然に防ぐことができる。なお、空気供給ファンの総出力は、火力発電設備が定格出力での発電を行うのに必要な燃料を燃焼するのに必要な空気量の1.1倍程度の空気を供給するのに必要な出力である。
【0039】
[給水の流通]
本実施形態に係るボイラ1の強制冷却方法においては、上述した空気供給ファンによる空気の供給を行うと共に、ボイラ1内の水管に給水を流通させてボイラ1の冷却を行う。即ち、給水は、ボイラ1の強制冷却時において、起動バイパス経路弁17が開弁されることにより、節炭器2、ボイラ水壁3、及び一次過熱器4、並びに、起動バイパス経路18、復水管12、及び給水管16に流通するものであるが、ボイラ1の温度に応じて、給水を流通させる際の流量が制御される。図2に示すように、ボイラ1の温度が180℃以上となる条件(図2の時間a以前に相当)においては、給水の流量は、第一の流量とし、ボイラ1の温度が180℃未満(図2の時間b以降に相当)となる条件では、給水の流量は第一の流量よりも小さい第二の流量とする。
【0040】
ここで、ボイラ1の温度が180℃以上となる条件下では、各種熱交換器、起動バイパス経路18、復水管12、及び給水管16を流通する給水の流量を第一の流量とし、ボイラ1の温度が180℃未満となる条件下では、各種熱交換器、起動バイパス経路18、復水管12、及び給水管16を流通する給水の流量を第一の流量よりも小さい、第二の流量とすることにより、ボイラ1の強制冷却を行う際、温度が低下した条件下において、給水系統の各種調整弁への負担を増加させることなくボイラを冷却することができる。
【0041】
給水の流量を制御する手段としては、特に限定されないが、例えば給水管16上に備えられる給水ポンプ14や、各種調節弁を挙げることができる。給水ポンプ14の出力や、各種調節弁の開度を調整することにより、所望の流量の給水を、ボイラ1内の水管に流通させることができる。
【0042】
ここで、ボイラ1内の水管に供給される給水の給水流量は、当該ボイラ1の備えられる火力発電設備の出力に応じて、異なるものであるが、一般的な火力発電設備においては、第一の流量を150T/H以上250T/Hとすることが好ましい。また、第二の流量の値は、例えば、130T/Hとすることが好ましい。ここで、第一の流量は、図3(時間a以前)に示すように、上記流量の範囲に収まる範囲内で、流量の値を段階的に増大させることが好ましい。即ち、給水の流量の急激な増加を抑えることにより、ボイラ1の温度効果率をより安定に、一定以上に維持することが可能となる。
【0043】
(給水を流通させる際の水圧)
給水を流通させる際の水圧は、ボイラ1の温度が180℃以上となる条件においては、第一の水圧とし、ボイラ1の温度が180℃未満となる条件において、第一の水圧よりも小さい第二の水圧とする。ボイラ1の温度の低下に伴って給水を流通させる水圧を低減させることにより、給水系統の各種調整弁への負担を増加させることなくボイラを冷却することができる。
【0044】
上記第一の水圧はボイラ定格圧力であることが好ましい。上記第二の水圧は3.5MPaであることが好ましい。ボイラ定格圧力は、通常の火力発電設備においては、例えば15Mpa以上25Mpa以下である。
【0045】
給水の水圧を制御する手段としては、特に限定されないが、例えば給水管16上に備えられる給水ポンプ14を挙げることができる。給水ポンプ14の出力を調整することにより、所望の水圧の給水を、ボイラ1内の水管に流通させることができる。
【0046】
(温度降下率)
以上のようにして実施されるボイラ1の強制冷却方法により、安定した温度降下率でボイラ1を冷却することができる。ボイラ1を強制冷却する際の温度降下率としては、火力発電設備に備えられるボイラ1の出力、ボイラ1の構成材料、及びボイラ1の構造に応じて、適宜定められるものであるが、80℃/h以上となることが好ましく、110℃/h程度となることが更に好ましい。本実施形態に係るボイラ1の強制冷却方法においては、温度降下率が上記の値となるよう、各種熱交換器、起動バイパス経路18、復水管12、及び給水管16に流通させる給水の流量を適宜、設定するものである。
【0047】
(目標の冷却温度)
本実施形態に係るボイラ1の強制冷却方法により冷却されるボイラ1は、一次過熱器4の入口において100℃以下となるまで冷却されることが好ましく、60℃以下となるまで冷却されることが更に好ましい。60℃以下となるまで冷却されることにより、例えば定期点検時においても、作業員がボイラ1内で作業を行うことも可能となる。
【0048】
なお、本明細書においては貫流ボイラの強制冷却方法を例にとって、ボイラの強制冷却方法について説明したが、貫流ボイラにおける強制冷却方法に限定されず、貫流ボイラとは構成の異なるドラムボイラにおいても、ドラムの上下及びドラムの内外における温度差に注意しながら同様に冷却することにより、降水管温度が130℃程度でブローを行って、ボイラの強制冷却方法を実施することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 ボイラ
2 節炭器
3 ボイラ水壁
4 一次過熱器
5 二次過熱器
6 高圧・中圧タービン
7 再熱器
8 低圧タービン
9 復水器
10 復水ポンプ
11 低圧給水加熱器
12 復水管
13 脱気器
14 給水ポンプ
15 高圧給水加熱器
16 給水管
17 起動バイパス経路弁
18 起動バイパス経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化石燃料を燃焼させ燃焼熱を発生させるボイラと、
前記ボイラ内に設けられ、給水を流通させて加熱するための節炭器と、
前記ボイラ内に設けられ、前記節炭器を流通させた給水を流通させて加熱するためのボイラ水壁と、
前記ボイラ内に設けられ、前記ボイラ水壁を流通させた給水を過熱して蒸気を発生させるための一次過熱器と、
海水により蒸気を冷却して復水を生成するための復水器と、
前記一次過熱器から前記復水器へ給水を流通させるための起動バイパス経路と、
前記復水器から前記節炭器へ復水・給水を流通させるための、復水・給水管と、
前記ボイラに燃焼を補助するための空気を供給する空気供給ファンと、を備える火力発電設備において、前記ボイラの消火後に行われるボイラの強制冷却方法であって、
前記空気供給ファンを作動させて、継続的に一定量の空気を供給すると共に、
前記ボイラの温度が180℃以上となる条件では、第一の流量の給水を前記節炭器、前記ボイラ水壁、及び前記一次過熱器、並びに前記起動バイパス経路、及び前記復水・給水管に流通させ、
前記ボイラの温度が180℃以下となる条件では、第一の流量よりも小さい第二の流量の給水を前記節炭器、前記ボイラ水壁、及び前記一次過熱器、並びに前記起動バイパス経路、及び前記復水・給水管に流通させる、ボイラの強制冷却方法。
【請求項2】
前記ボイラの温度が180℃以上となる条件において、前記第一の流量を段階的に増加させる、請求項1に記載のボイラの強制冷却方法。
【請求項3】
前記ボイラの温度が180℃以上となる条件において、給水を流通させる水圧を第一の水圧とし、
前記ボイラの温度が180℃未満となる条件において、給水を流通させる水圧を第一の水圧よりも小さい第二の水圧とする、請求項1又は2に記載のボイラの強制冷却方法。
【請求項4】
前記第一の水圧がボイラ定格圧力であり、前記第二の水圧が3.5MPaである請求項1から3のいずれかに記載のボイラの強制冷却方法。
【請求項5】
前記空気供給ファンにより供給される空気の流量を、空気供給ファンの総出力の40%とする、請求項1から4のいずれかに記載のボイラの強制冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−153786(P2011−153786A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16598(P2010−16598)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】