説明

ボイラー燃料投入量の決定方法

【課題】 フィードバック補正後と補正前における値を基にして、ボイラー効率の変化を考慮したボイラーへの適正燃料投入量に補正でき、ボイラーへの燃料過投入を抑制して、例えば、ボイラーからの排ガス量の増加又はボイラーの熱効率の低下を抑制可能なボイラー燃料投入量の決定方法を提供する。
【解決手段】 入力要求負荷量Aによりボイラーに供給する燃料投入量を求め、この投入量に対応してボイラーに燃料を供給し、更にボイラーで発生した蒸気圧力を測定し、その測定蒸気圧力と設定蒸気圧力からフィードバック補正量を求めてボイラーへの燃料投入量を補正する方法において、フィードバック補正後と補正前の値の比又は差を逐次更新しつつ複数記憶し、この記憶した複数の値から燃料補正係数を求め、この補正係数でフィードバック補正後の値を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラーへの燃料投入量を補正し、ボイラーの要求負荷量に応じた適正燃料量を決定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、ボイラー設備を使用して行われる発電は、ボイラー(火炉)に燃料(固体燃料、気体燃料、又は液体燃料)を供給して燃焼させ、その熱を熱交換器で吸収し、発生した蒸気をタービンへ供給して、発電機から出力して行っている(例えば、特許文献1参照)。なお、ボイラーへの燃料投入量は、要求負荷量(例えば、要求蒸気量)とボイラーへの燃料投入量との関数に基づく、予め設定された関係式(以下に一般式を示す)により決定される。
Y=∫(k・X)
ここで、Yは燃料投入量、Xは要求負荷量、kはボイラー効率(ボイラー熱効率)及び単位の変換値によって決まる値である。
【0003】
しかし、このボイラーの使用にあっては、例えば、ボイラー伝熱面の汚れ、燃料性状、及びその他の要因により、ボイラー効率が変動するため、前記した関係式のkに誤差が生じ、必要とする要求蒸気量を得ることができなかった。このため、例えば、発電機で発生する発電量、ボイラーで発生する主蒸気圧力、及びボイラーへの燃料供給流量は、目標値に対して変動していた。
そこで、前記関係式を使用して求めた燃料投入量に対応してボイラーに燃料を供給し、ボイラーで発生した主蒸気圧力を測定して、その測定主蒸気圧力と設定主蒸気圧力からPID制御によってフィードバック補正量を求め、このフィードバック補正量を前記要求負荷量に加算して、ボイラーへの燃料投入量を補正する方法が一般的に採られていた。
【0004】
【特許文献1】特開平9−250734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、使用するボイラーの熱容量は大きいため、ボイラーへの燃料投入量の調整から主蒸気圧力の変化発生に至るまでに長時間を要する。このため、従来からのフィードバック制御では、PIDゲイン(PIDの補正幅)を大きくして、主蒸気圧力変動に対する燃料投入量の追従性を向上させている。
このように、PIDフィードバック制御のゲインを大きくすることで、例えば、石炭を燃料とする燃焼灰によるボイラー伝熱面の汚れ影響により、ボイラー設備の実際の熱効率変化が著しくなり、予め設定したボイラー効率に対して差異が生じる。
この結果、例えば、ボイラー負荷変更時又は燃料性状(カロリー)変化時における燃料投入量の追従性制御が悪化(大きなハンチングが発生)し、ボイラーへの燃料過投入(燃料投入量の過多及び過少を含む)が発生して、例えば、ボイラーからの排ガス量の増加又はボイラーの熱効率の低下を招いている。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、フィードバック補正後と補正前における値を基にして、ボイラー効率の変化を考慮したボイラーへの適正燃料投入量に補正でき、ボイラーへの燃料過投入を抑制して、例えば、ボイラーからの排ガス量の増加又はボイラーの熱効率の低下を抑制可能なボイラー燃料投入量の決定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う第1の発明に係るボイラー燃料投入量の決定方法は、入力要求負荷量により、ボイラーに供給する燃料投入量を求め、この求めた燃料投入量に対応して前記ボイラーに燃料を供給し、更に、該ボイラーで発生した蒸気圧力を測定し、その測定蒸気圧力と設定蒸気圧力からフィードバック補正量を求め、このフィードバック補正量で前記ボイラーへの燃料投入量を補正する方法において、
フィードバック補正後と補正前における値の比又は差を逐次更新しつつ複数記憶し、この記憶した複数の値から燃料補正係数を求め、この燃料補正係数で前記フィードバック補正後の値を補正する。
【0008】
前記目的に沿う第2の発明に係るボイラー燃料投入量の決定方法は、入力要求負荷量により、ボイラーに供給する燃料投入量を求め、この求めた燃料投入量に対応して前記ボイラーに燃料を供給し、更に、該ボイラーで発生した蒸気圧力を測定し、その測定蒸気圧力と設定蒸気圧力からフィードバック補正量を求め、このフィードバック補正量で前記ボイラーへの燃料投入量を補正する方法において、
フィードバック補正後の前記ボイラーの要求負荷量Bと、フィードバック補正前の前記ボイラーの入力要求負荷量Aの値の比又は差を逐次更新しつつ複数記憶し、この記憶した複数の値から燃料補正係数を求め、この燃料補正係数で前記フィードバック補正後の要求負荷量Bから求めた前記ボイラーへの燃料投入量を補正する。
【0009】
前記目的に沿う第3の発明に係るボイラー燃料投入量の決定方法は、入力要求負荷量により、ボイラーに供給する燃料投入量を求め、この求めた燃料投入量に対応して前記ボイラーに燃料を供給し、更に、該ボイラーで発生した蒸気圧力を測定し、その測定蒸気圧力と設定蒸気圧力からフィードバック補正量を求め、このフィードバック補正量で前記ボイラーへの燃料投入量を補正する方法において、
フィードバック補正後の前記ボイラーの要求負荷量Bと、フィードバック補正前の前記ボイラーの入力要求負荷量Aの値の比又は差を逐次更新しつつ複数記憶し、この記憶した複数の値から燃料補正係数を求め、この燃料補正係数で前記入力要求負荷量A又は前記要求負荷量Bを補正する。
【0010】
前記目的に沿う第4の発明に係るボイラー燃料投入量の決定方法は、入力要求負荷量により、ボイラーに供給する燃料投入量を求め、この求めた燃料投入量に対応して前記ボイラーに燃料を供給し、更に、該ボイラーで発生した蒸気圧力を測定し、その測定蒸気圧力と設定蒸気圧力からフィードバック補正量を求め、このフィードバック補正量で前記ボイラーへの燃料投入量を補正する方法において、
フィードバック補正後の前記ボイラーの要求負荷量Bから求めた燃料投入量Bと、フィードバック補正前の前記ボイラーの入力要求負荷量Aから求めた燃料投入量Aの値の比又は差を逐次更新しつつ複数記憶し、この記憶した複数の値から燃料補正係数を求め、この燃料補正係数で前記燃料投入量Bを補正する。
【0011】
ここで、第4の発明に係るボイラー燃料投入量の決定方法において、前記燃料補正係数を、前記燃料投入量Bと前記燃料投入量Aの値の比又は差に基づいて求める場合、求めた燃料補正係数で前記入力要求負荷量Aを補正することが好ましい。
【0012】
前記目的に沿う第5の発明に係るボイラー燃料投入量の決定方法は、入力要求負荷量により、ボイラーに供給する燃料投入量を求め、この求めた燃料投入量に対応して前記ボイラーに燃料を供給し、更に、該ボイラーで発生した蒸気圧力を測定し、その測定蒸気圧力と設定蒸気圧力からフィードバック補正量を求め、前記ボイラーへの前記入力要求負荷量を前記燃料投入量に換算した後、このフィードバック補正量で前記ボイラーへの燃料投入量を補正する方法において、
フィードバック補正後と補正前の燃料投入量の比又は差を逐次更新しつつ複数記憶し、この記憶した複数の値から燃料補正係数を求め、この燃料補正係数で、前記フィードバック補正後の燃料投入量、前記フィードバック補正前の燃料投入量、及び前記入力要求負荷量のいずれか1を補正する。
【0013】
ここで、第1〜第5の発明に係るボイラー燃料投入量の決定方法において、前記燃料補正係数に、前記フィードバック補正後と補正前における値の比を使用する場合は、予め求めた値の比に更新する値の比を逐次乗算して記憶させ、前記フィードバック補正後と補正前における値の差を使用する場合は、予め求めた値の差に更新する値の差を逐次加算して記憶させ、この記憶させた値から前記燃料補正係数を求めることが好ましい。
【0014】
また、第1〜第5の発明に係るボイラー燃料投入量の決定方法において、前記燃料補正係数は、前記フィードバック補正後と補正前における値の比又は差を逐次移動平均して記憶させ、この記憶させた値から求めることが好ましい。
【0015】
そして、第1〜第5の発明に係るボイラー燃料投入量の決定方法において、前記フィードバック補正後と補正前における値の更新時期は、前記ボイラーに供給する燃料の反応時間に基づいて決定することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、フィードバック補正後と補正前における値を使用するので、現状のボイラー効率の変化を考慮した補正を逐次行い、ボイラーへの適正燃料投入量を決定できる。また、フィードバック補正後と補正前における値の比又は差を逐次更新しつつ複数記憶するので、予め設定したボイラー効率の変化に対する差異を無くし、この差異によって生じる燃料投入量のハンチングの変動幅を、従来よりも抑制できる。
これにより、ボイラーへの燃料過投入を抑制して、例えば、ボイラーからの排ガス量の増加又はボイラーの熱効率の低下を抑制できる。
【0017】
特に、燃料補正係数に、フィードバック補正前後における値の比又は差を使用し、予め求めた値の比に更新する値の比を逐次乗算、又は予め求めた値の差に更新する値の差を逐次加算して記憶する場合には、多大なデータ量を管理する必要性がなく、例えば、データ記憶のための記憶手段の容量を小さくできる。
【0018】
また、燃料補正係数を、フィードバック補正後と補正前における値の比又は差を逐次移動平均して記憶させこの記憶させた値から求める場合には、制御精度が良くなるので好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1は本発明の第1の実施の形態に係るボイラー燃料投入量の決定方法の説明図、図2は同ボイラー燃料投入量の決定方法を使用する演算装置の説明図、図3は同演算装置の演算フローの説明図、図4は同演算フローのプログラム演算部のフロー図、図5〜図8はそれぞれ第1〜第4の変形例に係るボイラー燃料投入量の決定方法の説明図、図9は本発明の第2の実施の形態に係るボイラー燃料投入量の決定方法の説明図、図10は第5の変形例に係るボイラー燃料投入量の決定方法の説明図である。
【0020】
本発明の第1の実施の形態に係るボイラー燃料投入量の決定方法は、図1、図2に示すように、ボイラー設備10に適用されるものであり、ボイラーの要求蒸気量(要求負荷量)に対応するボイラーへの燃料(例えば、石炭)投入量の関係に基づく予め設定した燃料関数F1(以下、単に設定燃料関数F1ともいう)を使用し、圧力補正前(フィードバック補正前)のボイラーへの入力要求蒸気量A(入力要求負荷量)と、圧力補正後(フィードバック補正後)の要求蒸気量B(要求負荷量)の比又は差を逐次更新して記憶し、この記憶した複数の比又は差により燃料補正係数を求め、この燃料補正係数により燃料投入量を補正する方法である。以下、詳しく説明する。
【0021】
まず、ボイラー燃料投入量の決定方法について、その概略を図1を参照しながら簡単に説明する。
本発明のボイラー燃料投入量の決定方法は、フィードバック補正量(補正前と後の値の差異)を基にして、ボイラー効率の変化に起因する設定燃料関数F1を、現状のボイラー効率を考慮した適正な燃料関数F1となるように(オンライン状態であたかも燃料関数F1を書換えしたように)、燃料補正係数によって逐次補正する方法である。この燃料関数F1の一般式は、前記したY=∫(k・X)で示され、このkがボイラー効率を示す。
これにより、適正な燃料関数F1と要求蒸気量から得られる燃料投入量P1は、設定燃料関数F1と要求蒸気量から得られる燃料投入量P2に、ボイラー効率kの変化に起因する燃料投入量P3を加算した量となる。従って、適正な燃料関数F1から得られる燃料投入量P1をボイラーへ供給することで、負荷出力相当のボイラー蒸気要求量に、偏差分の主蒸気圧力が加算された主蒸気圧力が発生する。
【0022】
なお、前記したように、燃料投入量がハンチングすることから、フィードバック補正量毎のみで設定燃料関数F1を補正すると、ハンチングの変動幅の差を含むことになる。そこで、このハンチングの変動幅の差を排除するために、過去のフィードバック補正量(補正前と後の値の差異)も複数記憶しておき、この過去の値を含めて、移動平均、乗算、又は加算して使用する。
なお、図1においては、説明の便宜上、要求蒸気量と燃料投入量との関係式を直線としているが、通常は、ボイラーの特性に応じて、曲線の関係式となっている。
以下、設定燃料関数F1で求めた燃料投入量を燃料補正係数により補正する方法について、詳細に説明する。
【0023】
図2、図3に示すように、常時は、必要となる発電量を発電機で出力するため、ボイラー設備10の操作部で、この発電機出力に相当するボイラー要求負荷量(指令)、即ち入力要求蒸気量Aを入力する。そして、燃料関数F1を設定入力している燃料投入量演算部20で、ボイラーへの入力要求蒸気量Aと設定燃料関数F1により、ボイラーに供給する燃料投入量が決定され、この燃料投入量がボイラーへ供給される。次に、ボイラーに設けられた例えば圧力計により、ボイラーで発生した蒸気の圧力が測定され、その圧力が主蒸気圧力発信器Pに入力される。主蒸気圧力発信器Pに入力された測定主蒸気圧力に基づき、PID制御部11により主蒸気圧力補正操作量が設定される。
【0024】
PID制御部11においては、例えば、ボイラーの状態(伝熱面の汚れ等)、燃料性状、及びその他の要因が維持された条件で得られる燃料関数F1であれば、設定値と実操業値との圧力差がほとんど無く、燃料関数F1から必要となる発電機出力が得られる。
しかし、前述したように、例えば、ボイラー設備10のボイラー状態変化、燃料性状、及びその他の要因変化に伴って、測定主蒸気圧力と設定主蒸気圧力とで圧力差(フィードバック補正量ともいう)が発生する。
【0025】
PID制御部11において、測定主蒸気圧力と設定主蒸気圧力とで圧力差が発生すると、まず、加算部12で燃料過不足により発生した主蒸気圧力の偏差(誤差量)を、入力要求蒸気量Aに加算する。
次に、除算部13で圧力補正前のボイラーへの入力要求蒸気量A(MWi)を分母に、圧力補正後の要求蒸気量B(MWii)を分子にして、入力要求蒸気量A(MWi)と要求蒸気量B(MWii)との比、即ち係数基準値(Ki)を算出する。
(MWii)/(MWi)⇒(Ki)
【0026】
この算出された係数基準値(Ki)を、プログラム演算手段14に入力する。
そして、このプログラム演算手段14においては、図3に示すように、一次遅れ補正部15で前記入力した係数基準値(Ki)を使用して、10秒間の一次遅れによる過渡的変動を抑えるため(ハンチングを抑制するため)、この係数基準値を一次遅れ補正する。これにより、係数基準値(Ki)に含まれるノイズをカットして、補正後の係数基準値の精度を向上できる。
(Ki)⇒(Ki1)
更に、プログラム演算手段14の移動平均算出部16で、上記補正後の係数基準値(Ki1)を含めて、30秒間の各係数基準値を移動平均して係数平均値(Kiε)を算出する。
(Ki1)⇒(Kiε)
【0027】
以上の方法で得られた係数平均値(Kiε)を、プログラム演算手段14のプログラム(PRG)演算部17に入力する。なお、入力要求蒸気量A(MWi)も、プログラム演算部17に入力されている。
このプログラム演算部17では、算出した係数平均値(Kiε)を使用して、燃料補正係数の前段階の適正補正値(Kipg)を算出する。なお、プログラム演算部17では、係数のリセット及び演算開始の設定も可能である(係数リセットトリガ、演算開始トリガ)。
以下、図4を参照しながら、適正補正値(Kipg)の算出方法について説明する。
【0028】
まず、ステップ1(ST1)で、作業者は演算装置の操作部(図示しない)を使用して、プログラム演算部17に、ボイラーの最大負荷(MWt:設定定数)、部分負荷(MWx:設定定数)、及び最低負荷(MWm:設定定数)をそれぞれ入力する。
次に、予め入力されたボイラーの入力要求蒸気量A、最低負荷、及び部分負荷を、最大負荷でそれぞれ除算して、現在の負荷率、最低負荷率、及び部分負荷率を求める。なお、部分負荷率は多数設置可能である。
(MWi)/(MWt)=(MWr)⇒現在の負荷率
(MWm)/(MWt)=(MWmr)⇒最低負荷率
(MWx)/(MWt)=(MWxr)⇒部分負荷率
【0029】
そして、求めた現在の負荷率と、最低負荷率及び部分負荷率との差をそれぞれ求める。
(MWr)−(MWmr)
(MWr)−(MWxr)
なお、上記した現在の負荷率とプログラム演算部17に入力された定数1との差も求める。
(MWr)−1
この定数1は最大負荷率である。
【0030】
ステップ2(ST2)においては、圧力偏差の大小に応じて、入力された係数平均値(Kiε)を更新するか否かの判定基準の一方側(条件B)を定める。
ここで、入力された係数平均値に圧力偏差が生じなければ1.0であり、圧力偏差が小さい0.99を超え1.01未満の許容範囲内においては、入力された係数平均値を使用しても問題ないため、この係数平均値を更新しない。一方、入力された係数平均値が0.99≧Kiε、又は1.01≦Kiεであれば、大きな圧力偏差が生じていることを示すため、係数平均値の許容範囲を逸脱し、入力された係数平均値を新たな係数平均値で更新する必要がある。
なお、係数平均値は、他の条件(オプション)によっても設定されるものであり、例えば、入力蒸気量(発電負荷)の変更時においては、係数平均値(Kiε)が0.99を超え1.01未満の許容範囲内であっても、その係数平均値の更新条件が成立する。
【0031】
前記したステップ1で求めた{(MWr)−(MWmr)}、{(MWr)−(MWxr)}、及び{(MWr)−1}は、以降略同様の処理がなされるため、ここでは{(MWr)−(MWxr)}についてのみ説明する。
まず、得られた{(MWr)−(MWxr)}の数値を、x2として設定する。
設定したx2が、ステップ3′(ST3′)で、−r2≦x2≦+r2(r2=0.1)であれば、次のステップ4′(ST4′)へ進む。ここで、x2が上記した条件範囲を満足しなければ、この処理を終了(END)する。
そして、ステップ4′において、ステップ3′の条件を満足した状態が安定して継続されなければ、即ちボイラーに供給する燃料の反応時間(ここでは5分)を経過しなければ、再びステップ3′へ戻る。一方、安定した状態が5分継続されて条件Aが成立し、且つ前記したようにKiεが許容値を逸脱したか、もしくはその他トリガリセット信号が成立して条件Bが成立した場合、入力セットしたy1〜y3のうちのy2のトリガ信号(デジタル指令)として、前記した係数平均値Kiε(新たに求めた値の比)をメモリ内既存係数Kiεx(予め求めた値の比)へ乗算し、更新保存する。ここで、反応時間は、ボイラーへの燃料投入量の調整から主蒸気圧力の変化発生に至るまでに要する時間に基づいて決定する。
【0032】
なお、{(MWr)−(MWmr)}及び{(MWr)−1}についても、それぞれx1及びx3としてステップ3′と同様の処理であるステップ3(ST3)及びステップ3″(ST3″)の処理(r1及びr3)がなされ、引き続きステップ4′と同様の処理であるステップ4(ST4)及びステップ4″(ST4″)の処理がなされる。これにより、前記した条件A及び条件Bが成立したことを条件とし、{(MWr)−(MWmr)}をy1のトリガ信号(デジタル指令)とし、前記した係数平均値Kiεをメモリ内既存係数Kiε1へ乗算し、更新保存する。同じく、{(MWr)−1}をy3のトリガ信号(デジタル指令)とし、前記した係数平均値Kiεをメモリ内既存係数Kiε3へ乗算し、更新保存する。
【0033】
ここで、部分負荷である(Kiεx)を考慮した場合、即ち(Kiε1)、(Kiεx)、及び(Kiε3)の3点以上を使用して適正補正値(Kipg)を算出することもできる。
なお、前記した(Kiε1)、(Kiεx)、及び(Kiε3)の各初期値(イニシャライズ)は1である。
これらの数値を使用して、ステップ5(ST5)で係数算出演算を行い、適正補正値(Kipg)を算出する。
ここで、部分負荷が無い場合には、(Kiε1)及び(Kiε3)の2点から、適正補正値(Kipg)を求めることができる。この2点を使用して適正補正値(Kipg)を算出する演算式を以下に示す。
{(Kiε3)−(Kiε1)}/{1−(MWmr)}・{(MWr)−(MWmr)}+(Kiε1)=(Kipg)
【0034】
また、部分負荷であるKiεxとして、Kiεx1、Kiεx2、及びKiεx3の3点を使用し、前記した(Kiε1)及び(Kiε3)を使用した合計5点から適正補正値(Kipg)を算出する演算式を以下に示す。なお、(Kiεx1)、(Kiεx2)、及び(Kiεx3)の部分負荷率を、それぞれ(MWxr1)、(MWxr2)、及び(MWxr3)とする。
MWr<MWmrの場合:(Kipg)=(Kiε1)
MWmr≦MWr<MWxr1の場合:(Kipg)={(Kiεx1)−(Kiε1)}/{(MWxr1)−(MWmr)}・{(MWr)−(MWmr)}+(Kiε1)
MWxr1≦MWr<MWxr2の場合:(Kipg)={(Kiεx2)−(Kiεx1)}/{(MWxr2)−(MWxr1)}・{(MWr)−(MWxr1)}+(Kiεx1)
MWxr2≦MWr<MWxr3の場合:(Kipg)={(Kiεx3)−(Kiεx2)}/{(MWxr3)−(MWxr2)}・{(MWr)−(MWxr2)}+(Kiεx2)
MWxr3≦MWr<1.0の場合:(Kipg)={(Kiε3)−(Kiεx3)}/{1.00−(MWxr3)}・{(MWr)−(MWxr3)}+(Kiεx3)
1.0≦MWrの場合:(Kipg)=(Kiε3)
【0035】
上記の複合演算により、部分負荷の適正値を導き出す。なお、部分負荷(Kiεx)は、必要に応じて無限大に増やすことができる。これにより、部分負荷の適正値の精度を更に高めることができる。
以上のように、(Kiε)を使用して、現状負荷に応じた適正補正値(Kipg)が得られる。
(Kiε)⇒(Kipg)
【0036】
ステップ5で得られた適正補正値(Kipg)は、図3に示すように、プログラム演算手段14の変化率制限部18で、ボイラー設備10での操業運転状態の急激な変動を考慮して、変化率の制限を設ける(例えば、0.02/分)。
これにより、燃料補正係数(Kipgε)が求められる。
(Kipg)⇒(Kipgε)
なお、システム異常(エラー)時及びイニシャライズ(初期設定)時には、燃料補正係数(Kipgε)の代わりに定数1を使用する。
【0037】
乗算部19で、設定燃料関数F1と圧力補正後の要求蒸気量Bから求めた補正後の燃料投入量(Fueli)に、燃料補正係数を乗算して、補正前の燃料投入量に近づけ、必要な主蒸気圧力に対応する適正な燃料投入量、即ち補正後の燃料投入量(Fuelii)を求める。ここで、補正後の燃料投入量は、燃料投入量演算部20により求められる。
(Kipgε)・(Fueli)=(Fuelii)
なお、算出された燃料補正係数(Kipgε)の代わりに定数1を使用する場合、補正後の燃料投入量(Fuelii)は、以下の式で決定される。
1・(Fueli)=(Fueli)=(Fuelii)
この求めた燃料投入量だけ、ボイラーに燃料を供給して、必要な主蒸気圧力を得て発電量を得る。なお、求めた燃料投入量をボイラーに投入した後は、ボイラーの主蒸気圧力が測定され、この測定主蒸気圧力により、前記した手順を繰り返し行う。
【0038】
なお、前記した燃料補正係数は、前記した条件A及び条件Bが成立する毎に、即ち入力蒸気量の変更時、又は、係数平均値(Kiε)が許容範囲を逸脱する毎に、前記した方法により新たに求めた燃料補正係数で更新することが好ましい。このように、更新した燃料補正係数を使用して、燃料投入量を補正することにより、発電量のばらつきを更に抑制できる。
また、発電量の変更に伴う入力要求蒸気量Aの変更継続中は、燃料補正係数を更新することなくそのまま使用し、入力要求負荷量Aの変更終了後から燃料補正係数を更新することが好ましい。これにより、変動因子を増やすことなく、発電量のばらつきを更に抑制できる。
【0039】
以上の方法により、例えば、ボイラー負荷変更時又は燃料性状変化時における入力要求負荷変更の追従遅れを解消でき、燃料投入量のハンチングの変動幅を従来よりも抑制できる。
ここで、燃料投入量が、例えば、多種燃料配分及びカロリー変化により、予め設定した適正値を外れた場合においても、常に要求蒸気量と燃料投入量との関係を適正値に保つことができる。従って、主蒸気圧力偏差(操作量)による加算量を減少でき、安定した適正燃料の供給が可能になる。
また、このように、主蒸気圧力による補正値加算がほとんどなくなることにより、比例、微分、及び積分による修正加算動作、即ちPID制御部による演算操作を減少でき、燃料過投入(燃料投入量の過多及び過少を含む)が解消される。加えて、発電負荷の安定性も図れる。
【0040】
更に、燃料過投入の発生及び主蒸気圧力の偏差補正加算を解消できる。
燃料余剰分による蒸気量への影響(その他の要因)、及び適正燃料の相違による無駄な蒸気変動が解消され、燃料過投入も解消されることとなるため、ボイラーのランニングコストの低減に繋がる。加えて、常に主蒸気圧力偏差(操作量)は無に等しく、主たる燃料投入指令量は、主蒸気圧力の変動に左右されることなく、ボイラーの主蒸気圧力の安定性向上及び燃焼効率の向上に繋がる。
特に、ボイラー使用燃料の単位熱量(J/m3 、J/トン)を、適正な単位熱量(即ち、燃料関数F1のXに相当)に設定できていない燃料(例えば、石炭の単位熱量変動)でも、適正な燃料関数F1に補正できる。
従って、燃料投入量の過投入が解消されるに伴い、燃料の燃焼時に発生する排ガス量の低減に繋がるため、排出ガス規制の進む現在においては、環境保全に適した操業を実施できる。
【0041】
続いて、第1の実施の形態の変形例に係るボイラー燃料投入量の決定方法について、図5〜図8を参照しながら、以下説明する。
(第1の変形例)
図5に示すボイラー燃料投入量の決定方法は、燃料補正係数の算出に、図2に示す圧力補正後(フィードバック補正後)の要求蒸気量B(要求負荷量B)と圧力補正前(フィードバック補正前)のボイラーへの入力要求蒸気量A(入力要求負荷量A)との比又は差を使用し、求めた燃料補正係数により補正後における要求蒸気量Bを補正する方法である。
【0042】
ここで、燃料補正係数の算出に、除算部13で求めた要求蒸気量Bと入力要求蒸気量Aとの比を使用する場合、前記したプログラム演算手段14のプログラム演算部17では、係数平均値Kiε(新たに求めた値の比)をメモリ内既存係数Kiεx(予め求めた値の比)へ逐次乗算して更新保存する。そして、これから求めた燃料補正係数を、乗算部21で要求蒸気量Bに乗算する。
また、燃料補正係数の算出に、要求蒸気量Bと入力要求蒸気量Aとの差を使用する場合、プログラム演算部17では、係数平均値Kiεをメモリ内既存係数Kiεxへ逐次加算して更新保存する。そして、得られた燃料補正係数を、乗算部21の代わりに使用する加算部で要求蒸気量Bに加算する。
【0043】
なお、燃料補正係数の算出には、圧力補正後の要求蒸気量Bの代わりに、図5の一点鎖線で示す更新前の燃料補正係数を乗算して求めた要求蒸気量B′を使用することも可能である。この場合、前記したプログラム演算部17では、求めた係数平均値Kiεと複数のメモリ内既存係数Kiεxを使用して移動平均を求める。そして、得られた燃料補正係数を、乗算部21で更新前の燃料補正係数が乗算された要求蒸気量Bに乗算する。
また、燃料補正係数の算出に、要求蒸気量B′と入力要求蒸気量Aとの差を使用する場合、乗算部21の代わりに加算部で加算を行う。
【0044】
(第2の変形例)
図6に示すボイラー燃料投入量の決定方法は、燃料補正係数の算出に、図2に示す圧力補正後の要求蒸気量Bと圧力補正前のボイラーへの入力要求蒸気量Aとの比又は差を使用し、求めた燃料補正係数により圧力補正前における入力要求蒸気量A(入力要求負荷量A)を補正する方法である。
ここで、燃料補正係数の算出に、除算部13で求めた要求蒸気量Bと入力要求蒸気量Aとの比を使用する場合、前記したプログラム演算部17では、係数平均値Kiεをメモリ内既存係数Kiεxへ逐次乗算して更新保存する。そして、これから求めた燃料補正係数を、乗算部22で圧力補正前の入力要求蒸気量Aに乗算する。
また、燃料補正係数の算出に、要求蒸気量Bと入力要求蒸気量Aとの差を、除算部13の代わりに使用する減算部で求めて使用する場合、前記したプログラム演算部17では、係数平均値Kiεをメモリ内既存係数Kiεxへ逐次加算して更新保存する。そして、得られた燃料補正係数を、乗算部22の代わりに使用する加算部で、圧力補正前の入力要求蒸気量Aに加算する。
【0045】
なお、燃料補正係数の算出には、圧力補正前の入力要求蒸気量Aの代わりに、図6の一点鎖線で示す圧力補正前の入力要求蒸気量A′を使用することも可能である。この場合、圧力補正後の要求蒸気量Bは、更新前の燃料補正係数が乗算された値であるため、前記したプログラム演算部17では、求めた係数平均値Kiεと複数のメモリ内既存係数Kiεxを使用して移動平均を求める。そして、得られた燃料補正係数を乗算部22で入力要求蒸気量Aに乗算する。
また、燃料補正係数の算出に、要求蒸気量Bと入力要求蒸気量A′との差を使用する場合、乗算部22の代わりに加算部で加算を行う。
以上の図5及び図6に示すボイラー燃料投入量の決定方法においては、要求蒸気量を使用して求めた燃料補正係数を使用して、要求蒸気量を補正するので、結果的に燃料関数の蒸気量の軸のみの補正を行うことになり、その補正精度を向上できる。
【0046】
(第3の変形例)
図7に示すボイラー燃料投入量の決定方法は、燃料補正係数の算出に、除算部13で求めた圧力補正後(フィードバック補正後)の燃料投入量Bと圧力補正前(フィードバック補正前)の入力要求蒸気量Aから得られる燃料投入量Aとの比を使用する方法である。
なお、圧力補正後の燃料投入量Bは、燃料関数F1と要求蒸気量Bから求めた燃料投入量であり、図3及び図4に示すプログラム演算と同様に、係数平均値Kiεをメモリ内既存係数Kiεxへ乗算して得られた値から算出した燃料補正係数を乗算する前の値である。
また、燃料補正係数の算出には、圧力補正後の燃料投入量Bの代わりに、図7の一点鎖線で示す更新前の燃料補正係数を乗算部19で乗算して求めた燃料投入量B′を使用することも可能である。この場合、前記したプログラム演算部17では、求めた係数平均値Kiεと複数のメモリ内既存係数Kiεxを使用して移動平均を求める。そして、得られた燃料補正係数を、乗算部19で圧力補正後の燃料投入量Bに乗算する。
【0047】
なお、この燃料補正係数の算出に際して、圧力補正後の燃料投入量と入力要求蒸気量Aから得られる燃料投入量との差を使用する場合は、前記した第1の変形例と同様、乗算部19の代わりに加算部で加算を行う。
そして、圧力補正後の燃料投入量Bの代わりに、この燃料投入量Bを燃料関数F1の逆関数(x軸とy軸とを逆転)を使用して求めた蒸気量を使用し、除算して比を求めることも可能である。この場合、入力要求蒸気量Aから得られる燃料投入量の代わりに、入力要求蒸気量Aをそのまま使用する。
このボイラー燃料投入量の決定方法においては、燃料投入量を使用して求めた燃料補正係数を使用して、燃料投入量を補正するので、結果的に燃料関数の燃料投入量の軸のみの補正を行うことになり、その補正精度を向上できる。
【0048】
(第4の変形例)
図8に示すボイラー燃料投入量の決定方法は、燃料補正係数の算出に、図7に示す圧力補正後の燃料投入量Bと圧力補正前のボイラーへの燃料投入量Aとの比を使用し、求めた燃料補正係数により圧力補正前における入力要求蒸気量A(入力要求負荷量A)を補正する方法である。
ここでは、燃料補正係数の算出に、燃料投入量Bと、更新前の燃料補正係数を乗算して求めた圧力補正前の燃料投入量Aとの比を、除算部13で求めて使用するため、前記したプログラム演算部17では、係数平均値Kiεをメモリ内既存係数Kiεxへ逐次乗算して更新保存する。そして、これから求めた燃料補正係数を、乗算部22で圧力補正前の入力要求蒸気量Aに乗算する。
なお、燃料補正係数の算出には、更新前の燃料補正係数による補正後の燃料投入量Aの代わりに、図8の一点鎖線で示す更新前の燃料補正係数による補正前の入力要求蒸気量A′を使用することも可能である。この場合、前記したプログラム演算部17では、求めた係数平均値Kiεと複数のメモリ内既存係数Kiεxを使用して移動平均を求める。そして、得られた燃料補正係数を、乗算部22で圧力補正前の入力要求蒸気量Aに乗算する。
この図8においても、第3の変形例で説明した燃料関数F1の逆関数を使用できる。
【0049】
図9に示すように、本発明の第2の実施の形態に係るボイラー燃料投入量の決定方法は、ボイラーへの入力要求蒸気量A(入力要求負荷量A)を燃料関数F1により燃料投入量に換算した後、このフィードバック補正量でボイラーへの燃料投入量を補正する方法である。従って、図7に示す燃料関数F1の位置が圧力補正前の位置に配置され、圧力補正後の燃料投入量Bと補正前の燃料投入量Aとの比又は差を使用して燃料補正係数を求めること以外は、第3の変形例と略同様の手法で、ボイラーへの燃料投入量を補正できる。そして、この求めた燃料補正係数を、圧力補正後の燃料投入量Bに、乗算部19で乗算、又は乗算部19の代わりに使用する加算部で加算する。
なお、図9に示す一点鎖線についても、第3の変形例の一点鎖線と略同様である。
【0050】
(第5の変形例)
図10に示すボイラー燃料投入量の決定方法は、ボイラーへの入力要求蒸気量A(入力要求負荷量A)を燃料関数F1により燃料投入量に換算した後、このフィードバック補正量でボイラーへの燃料投入量を補正する方法である。なお、燃料補正係数の算出には、図9に示す圧力補正後の燃料投入量Bと補正前の燃料投入量Aとの比又は差を使用し、乗算部22(又は加算部)で求めた燃料補正係数により圧力補正前における入力要求蒸気量A(入力要求負荷量A)を補正する。
また、補正前の燃料投入量Aの代わりに、入力要求蒸気量Aを使用することもできる。そして、この場合、図10に示す乗算と燃料関数F1との位置を入れ換え、求めた燃料補正係数を乗算部22(又は加算部)で燃料投入量Aに乗算(又は加算)する。このとき、更に、燃料補正係数の算出に際し、燃料投入量Aを使用する代わりに、入力要求蒸気量Aを使用することもできる。
【0051】
なお、以上に示した燃料補正係数の算出に際し、乗算を使用する場合は、要求蒸気量毎に、燃料補正係数を区別して使用する方が好ましい。また、加算を使用する場合は、要求蒸気量毎に、燃料補正係数を区別することが必要である。
【実施例】
【0052】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。ここで、図11(A)、(B)はそれぞれ本発明に係るボイラー燃料投入量の決定方法の適用前後における発電機出力の変動推移を示すグラフ、図12(A)、(B)はそれぞれ本発明に係るボイラー燃料投入量の決定方法の適用前後における発電機出力の推移を示すグラフ、図13(A)、(B)はそれぞれ本発明に係るボイラー燃料投入量の決定方法の適用前後における主蒸気圧力の推移を示すグラフ、図14(A)、(B)はそれぞれ本発明に係るボイラー燃料投入量の決定方法の適用前後における石炭供給流量の推移を示すグラフである。
【0053】
まず、本発明の適用前後における発電機出力の変動推移について説明する。なお、図11(A)、(B)に示す変動幅(%)は、予め設定した発電機出力に対する実操業時の発電機出力を示している。
本発明の適用前は、図11(A)に示すように、発電機出力の最大変動幅が6%程度であり、変動幅が0%から離れたところで推移していた。一方、本発明の適用後は、図11(B)に示すように、発電機出力の最大変動幅が4%程度であり、変動幅が0%近傍で推移した。
【0054】
また、本発明の適用前後における発電機出力の推移について説明する。なお、図12(A)、(B)に示す出力(%)は、発電機の最大出力に対する実操業時の発電機出力を示している。
本発明の適用前は、図12(A)に示すように、発電機の出力が低いところで、その変動が顕著であった。一方、本発明の適用後は、図12(B)に示すように、発電機の出力が低いところで、図12(A)に示す出力変動を小さくできた。
以上のことから、発電機出力を安定にできることを確認できた。
【0055】
次に、本発明の適用前後における主蒸気圧力の推移について説明する。なお、図13(A)、(B)に示す主蒸気圧力(%)は、ボイラーの最大主蒸気圧力に対する実操業時の主蒸気圧力を示している。
本発明の適用前は、図13(A)に示すように、主蒸気圧力が低いところで、その変動が顕著であった。一方、本発明の適用後は、図13(B)に示すように、発電機の出力が低いところで、図13(A)に示す圧力変動を小さくできた。
以上のことから、主蒸気圧力を安定にできることを確認できた。
【0056】
更に、本発明の適用前後における石炭供給流量の推移について説明する。なお、図14(A)、(B)に示す石炭供給流量(%)は、ボイラーへの最大石炭供給流量に対する実操業時の石炭供給流量を示している。
本発明の適用前は、図14(A)に示すように、石炭供給流量が低いところで、その変動が顕著であった。一方、本発明の適用後は、図14(B)に示すように、石炭供給流量が低いところで、図14(A)に示す流量変動を小さくできた。
以上のように、石炭供給流量を安定にできることから、排ガス量を1.7%、石炭を2質量%減少できることを確認できた。
【0057】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明のボイラー燃料投入量の決定方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
前記実施の形態においては、燃料として単一燃料である石炭を使用した場合について説明したが、例えば、固体燃料、気体燃料、及び液体燃料のいずれか1又は2以上を用いた複合燃料を使用することも可能である。
また、前記実施の形態においては、燃料関数F1で求めた燃料投入量を燃料補正係数で補正した場合について説明したが、燃料関数F1を燃料補正係数で補正することも勿論可能である。
【0058】
そして、前記実施の形態においては、ボイラーの要求負荷量を要求蒸気量として説明したが、ボイラーの蒸気量は発電量と略同様の推移を示すため、要求負荷量を要求発電量とすることも可能である。
更に、前記実施の形態においては、例えば、ステップ2における係数平均値(Kiε)の許容範囲、ステップ3〜ステップ3″におけるx1〜x3の許容範囲(r1〜r3)、及びステップ4〜ステップ4″における継続時間を、それぞれ特定の数値に設定して説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本発明のボイラー燃料投入量の決定方法を適用する設備の規模、及び操業条件により、この設備を安定に、更には経済的に操業できるならば、その操業範囲において種々変更することも勿論可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るボイラー燃料投入量の決定方法の説明図である。
【図2】同ボイラー燃料投入量の決定方法を使用する演算装置の説明図である。
【図3】同演算装置の演算フローの説明図である。
【図4】同演算フローのプログラム演算部のフロー図である。
【図5】第1の変形例に係るボイラー燃料投入量の決定方法の説明図である。
【図6】第2の変形例に係るボイラー燃料投入量の決定方法の説明図である。
【図7】第3の変形例に係るボイラー燃料投入量の決定方法の説明図である。
【図8】第4の変形例に係るボイラー燃料投入量の決定方法の説明図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係るボイラー燃料投入量の決定方法の説明図である。
【図10】第5の変形例に係るボイラー燃料投入量の決定方法の説明図である。
【図11】(A)、(B)はそれぞれ本発明に係るボイラー燃料投入量の決定方法の適用前後における発電機出力の変動推移を示すグラフである。
【図12】(A)、(B)はそれぞれ本発明に係るボイラー燃料投入量の決定方法の適用前後における発電機出力の推移を示すグラフである。
【図13】(A)、(B)はそれぞれ本発明に係るボイラー燃料投入量の決定方法の適用前後における主蒸気圧力の推移を示すグラフである。
【図14】(A)、(B)はそれぞれ本発明に係るボイラー燃料投入量の決定方法の適用前後における石炭供給流量の推移を示すグラフである。
【符号の説明】
【0060】
10:ボイラー設備、11:PID制御部、12:加算部、13:除算部、14:プログラム演算手段、15:一次遅れ補正部、16:移動平均算出部、17プログラム演算部、18:変化率制限部、19:乗算部、20:燃料投入量演算部、21、22:乗算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力要求負荷量により、ボイラーに供給する燃料投入量を求め、この求めた燃料投入量に対応して前記ボイラーに燃料を供給し、更に、該ボイラーで発生した蒸気圧力を測定し、その測定蒸気圧力と設定蒸気圧力からフィードバック補正量を求め、このフィードバック補正量で前記ボイラーへの燃料投入量を補正する方法において、
フィードバック補正後と補正前における値の比又は差を逐次更新しつつ複数記憶し、この記憶した複数の値から燃料補正係数を求め、この燃料補正係数で前記フィードバック補正後の値を補正することを特徴とするボイラー燃料投入量の決定方法。
【請求項2】
入力要求負荷量により、ボイラーに供給する燃料投入量を求め、この求めた燃料投入量に対応して前記ボイラーに燃料を供給し、更に、該ボイラーで発生した蒸気圧力を測定し、その測定蒸気圧力と設定蒸気圧力からフィードバック補正量を求め、このフィードバック補正量で前記ボイラーへの燃料投入量を補正する方法において、
フィードバック補正後の前記ボイラーの要求負荷量Bと、フィードバック補正前の前記ボイラーの入力要求負荷量Aの値の比又は差を逐次更新しつつ複数記憶し、この記憶した複数の値から燃料補正係数を求め、この燃料補正係数で前記フィードバック補正後の要求負荷量Bから求めた前記ボイラーへの燃料投入量を補正することを特徴とするボイラー燃料投入量の決定方法。
【請求項3】
入力要求負荷量により、ボイラーに供給する燃料投入量を求め、この求めた燃料投入量に対応して前記ボイラーに燃料を供給し、更に、該ボイラーで発生した蒸気圧力を測定し、その測定蒸気圧力と設定蒸気圧力からフィードバック補正量を求め、このフィードバック補正量で前記ボイラーへの燃料投入量を補正する方法において、
フィードバック補正後の前記ボイラーの要求負荷量Bと、フィードバック補正前の前記ボイラーの入力要求負荷量Aの値の比又は差を逐次更新しつつ複数記憶し、この記憶した複数の値から燃料補正係数を求め、この燃料補正係数で前記入力要求負荷量A又は前記要求負荷量Bを補正することを特徴とするボイラー燃料投入量の決定方法。
【請求項4】
入力要求負荷量により、ボイラーに供給する燃料投入量を求め、この求めた燃料投入量に対応して前記ボイラーに燃料を供給し、更に、該ボイラーで発生した蒸気圧力を測定し、その測定蒸気圧力と設定蒸気圧力からフィードバック補正量を求め、このフィードバック補正量で前記ボイラーへの燃料投入量を補正する方法において、
フィードバック補正後の前記ボイラーの要求負荷量Bから求めた燃料投入量Bと、フィードバック補正前の前記ボイラーの入力要求負荷量Aから求めた燃料投入量Aの値の比又は差を逐次更新しつつ複数記憶し、この記憶した複数の値から燃料補正係数を求め、この燃料補正係数で前記燃料投入量Bを補正することを特徴とするボイラー燃料投入量の決定方法。
【請求項5】
請求項4記載のボイラー燃料投入量の決定方法において、前記燃料補正係数を、前記燃料投入量Bと前記燃料投入量Aの値の比又は差に基づいて求める場合、求めた燃料補正係数で前記入力要求負荷量Aを補正することを特徴とするボイラー燃料投入量の決定方法。
【請求項6】
入力要求負荷量により、ボイラーに供給する燃料投入量を求め、この求めた燃料投入量に対応して前記ボイラーに燃料を供給し、更に、該ボイラーで発生した蒸気圧力を測定し、その測定蒸気圧力と設定蒸気圧力からフィードバック補正量を求め、前記ボイラーへの前記入力要求負荷量を前記燃料投入量に換算した後、このフィードバック補正量で前記ボイラーへの燃料投入量を補正する方法において、
フィードバック補正後と補正前の燃料投入量の比又は差を逐次更新しつつ複数記憶し、この記憶した複数の値から燃料補正係数を求め、この燃料補正係数で、前記フィードバック補正後の燃料投入量、前記フィードバック補正前の燃料投入量、及び前記入力要求負荷量のいずれか1を補正することを特徴とするボイラー燃料投入量の決定方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のボイラー燃料投入量の決定方法において、前記燃料補正係数に、前記フィードバック補正後と補正前における値の比を使用する場合は、予め求めた値の比に更新する値の比を逐次乗算して記憶させ、前記フィードバック補正後と補正前における値の差を使用する場合は、予め求めた値の差に更新する値の差を逐次加算して記憶させ、この記憶させた値から前記燃料補正係数を求めることを特徴とするボイラー燃料投入量の決定方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のボイラー燃料投入量の決定方法において、前記燃料補正係数は、前記フィードバック補正後と補正前における値の比又は差を逐次移動平均して記憶させ、この記憶させた値から求めることを特徴とするボイラー燃料投入量の決定方法。
【請求項9】
請求項7及び8のいずれか1項に記載のボイラー燃料投入量の決定方法において、前記フィードバック補正後と補正前における値の更新時期は、前記ボイラーに供給する燃料の反応時間に基づいて決定することを特徴とするボイラー燃料投入量の決定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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