説明

ボイラー給水の脱気の方法及び装置

ボイラー(38)に供給する前にボイラー給水(34)から酸素と二酸化炭素を分散し、除去するための脱気操作の間に脱気装置(10)内で用いるための窒素の掃気流(24)。窒素の掃気流(24)が給水系内の酸素と二酸化炭素の量を実質的に低減する。給水系は脱気ストリッパーに送られるか、又は、熱交換器を用いて加熱できる。加熱給水の流れを脱気水タンク(60)に直接送ることもできる。窒素の掃気流(24)はボイラー給水の流れに含まれる酸素量を7ppb未満に引下げて、二酸化炭素の量を検出不可能レベルまで低減する。窒素の掃気は、以前に窒素の掃気を用いていなかった既存の脱気装置に装備され、その一方で、その脱気装置を閉鎖しないで運転を行なえる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本発明は米国仮特許出願60/633,918の特典と優先権を主張している。
【技術分野】
【0002】
本発明は石油化学施設のための蒸気系統に関する。より特定すれば、本発明は脱気システムを用いることによりボイラー給水の流れからの酸素除去に関する。
【背景技術】
【0003】
脱気装置は石油化学、精製、発電の産業で広く用いられている。脱気装置はボイラー給水を加熱し、その水をボイラーに供給する前にボイラー給水から酸素及び二酸化炭素を除去するのに用いられる設備の機械的部分である。ボイラー給水の中に含まれる酸素及び二酸化炭素が蒸気系統即ちボイラー・チューブ(boiler tubes)、蒸気配管、凝縮水配管、伝熱機器内に有意な腐食を生じる。さらに、ボイラー給水がその中に酸素を有していると、その酸素が表面凝縮器に腐食を生じて、銅を遊離する。蒸気系統内で遊離した銅が、蒸気系統に修理用溶接部を作る必要があるときに大きな問題を生じることがある。脱気装置の使用が酸素と二酸化炭素の除去により蒸気系統内に生じる腐食量を実質的に低減する。
【0004】
脱気装置はボイラー給水内に含まれる酸素と二酸化炭素を放出させる機械的ストリッピング(stripping)機構を用いている。脱気装置用にいくつかのタイプのストリッピング機構が商用的に利用可能である。大容量の蒸気を必要とする大型プラント(plant)では棚段塔脱気装置が典型的に用いられる。蒸気の必要量が少ない小型プラントでは充填塔又は噴霧器付き脱気装置が用いられる。脱気装置は酸素と二酸化炭素の大部分を除去できるけれども、多くの場合、蒸気系統内の腐食を最小限にするのに十分な酸素と二酸化炭素を除去するのには、脱気装置の除去能力が不適当である。
【0005】
脱気装置はボイラー給水から酸素の一部を除去できるのみなので、多くの石油化学施設が、さらに、ボイラー給水内の酸素量を低減するために、「酸素スカベンジャー(scavengers)」と一般的に言われている薬品を用いている。酸素スカベンジャーの例には亜硫酸塩、タンニン、苛性をベースとした薬品が含まれる。酸素スカベンジャーは非常に高価であり、蒸気系統に相当の運転費用を追加する。
【0006】
酸素スカベンジャーのような薬品をボイラー給水から酸素を除去するのに利用可能であるけれども、多くのプラントが依然として脱気装置を必要としている。蒸気系統内で腐食を生じる要素を低減することに加えて、脱気装置を用いることには別の利点がある。さらに、脱気装置はボイラーからの排出ないし噴出蒸気からの熱の回収に有効な手段を提供することもできる。さらに脱気装置はボイラーに供給する必要がある補給水量を低減するために蒸気系統からの復水も回収できる。
【0007】
脱気装置の使用を補充ないし置換するためにボイラー給水から酸素を除去できる経済的プロセス(process)の必要性が存在する。蒸気系統内で腐食を生じる二酸化炭素のような他の気体も除去するプロセスには利点がある。そのプロセスが新しい脱気システム及び既存システム及び特に既存の運転システムと共に使用できる場合、さらに利点がある。
【発明の開示】
【0008】
前述の見解から本発明はボイラー給水の流れから酸素を除去する有利な方法を提供している。その方法には、給水の流れを脱気ストリッパー(stripper)に供給して、その給水の流れを加熱し、その中に含まれる酸素の少なくとも一部を、又、二酸化炭素の少なくとも一部を除去するステップが含まれる。給水の流れは脱気ストリッパーから脱気タンクに下降する。代わりに、熱交換器等を用いることにより給水の流れを加熱でき、又、脱気ストリッパーを用いないで、脱気タンクに供給できる。
【0009】
そして、脱気装置の作動中に窒素の掃気流が脱気水タンクに供給される。それにより、窒素の掃気流が給水の流れの中に残った酸素を拡散して、残りの酸素の実質的な部分が給水の流れから除去されて、給水の流れに含まれる酸素を低減する。さらに、窒素の掃気流が給水の流れの中に含まれる残りの二酸化炭素を実質的に除去する。そして、給水の流れに含まれる酸素を低減して、その中に含まれる酸素と二酸化炭素が実質的に低減した給水の流れとしてボイラーに供給される。窒素の掃気流が脱気装置の作動中は維持されて、給水の流れから酸素と二酸化炭素を除去する。
【0010】
方法の実施態様に加えて、脱気装置も本発明の実施態様として有利に提供される。
【0011】
本発明が好ましい実施態様と関連させて示されているけれども、本発明をその実施態様に限定することを意図しないことを理解されたい。そうではなく、添付した請求項により定義されているように本発明の精神と範囲に含まれる全ての代替策、修正、均等物をカバーすることを意図している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1を参照して、ボイラー給水の流れ36から酸素を除去する方法を有利に示している。本発明の好ましい実施態様で、その方法には給水の流れ18を脱気ストリッパー14に供給するステップが含まれている。給水の流れ18は好ましくは脱塩した給水の流れ18、凝縮水の戻り又はリサイクル(recycle)の流れ22、外部の流れ、及び、それらの組合わせから成る群から選択される。本発明では種々のタイプの脱気ストリッパーを使用できる。給水の流れ18を脱気ストリッパー14に供給できる。脱気ストリッパー14は噴霧塔、棚段塔又は充填塔でありうる。脱気ストリッパーの他の適当なタイプは当業の技術者には明らかであり、本発明の範囲内にあると見なすべきである。
【0013】
1500psigの蒸気を生じるために、脱塩水のような高純度の給水が給水の流れ18のために必要とする。高純度の給水の流れ18を生ずるために、未処理給水の流れを、脱塩用樹脂層を通して陽イオンと陰イオンを除去するように処理でき、電導度を5マイクロモル以下にする。貯蔵タンクが大気圧下にあるので、この時点では、酸素、窒素、二酸化炭素の溶解したガス量により依然として飽和状態になっている。それに加えて、脱塩した給水の流れ18、凝縮水の戻り又はリサイクル(recycle)の流れ22も脱気ストリッパー14に送られる。
【0014】
2種の水源、脱塩した給水の流れ18と凝縮水の戻りの流れ22(以後合わせて「給水の流れ18」と呼ぶ)が脱気ストリッパー14、好ましくは脱気ストリッパー14の上方部分に入る。脱気ストリッパー14は典型的に脱気水タンク12(これはボイラー給水貯蔵タンクとも呼ぶ)の上部に位置している。
【0015】
脱気ストリッパー14内で、給水の流れ18内に含まれる酸素及び二酸化炭素の少なくとも一部が、水の流れ28に含まれる酸素を減少させるために、脱気ストリッパー14を通り上昇した蒸気と向流接触により除去される。低圧蒸気流30が脱気ストリッパー14の下方部分に送られるのが好ましい。給水の流れ18と蒸気の間の向流接触は、棚段又は充填塔(packing)のような物質移動のメカニズムで生じる。低圧蒸気流30の少なくとも一部が脱気ストリッパー14の上部から脱気ストリッパー・オーバーヘッド(overhead)流20として流出し、給水の流れ18から溶解しているガスを除去する。脱気ストリッパー・オーバーヘッド流20の流量は低圧蒸気流30の流量の約0.5%から約1.0%である。給水の流れ18の水温が上昇すると共に、溶解度が低くなるので、脱気ストリッパー14により除去される溶解ガスの量が給水の流れ18の温度上昇の程度に依存して変化する。脱気ストリッパー14は約20psigから約45psigの範囲内で好ましく作動する。
【0016】
給水の流れ18から酸素及び二酸化炭素を除去することに加えて、給水の流れ18と蒸気の間の向流接触が給水の流れ18を華氏約250度から華氏約295度の範囲に加熱する。より好ましくは華氏約260度から華氏約290度の範囲に加熱する。減少した酸素を含む水の流れ28が脱気ストリッパー14から脱気水タンク(tank)12に下降する。
【0017】
低減した酸素を含む水の流れ28が一旦脱気水タンク12に入ると、窒素の掃気流24が脱器装置の運転中に脱気水タンク12に供給される。窒素の掃気流24が、低減した酸素を含む水の流れ28内で残った酸素を拡散して、低減した酸素を含む水の流れ28から残りの酸素の実質的部分を除去する。さらに、窒素の掃気流24が低減した酸素を含む水の流れ28内に残る二酸化炭素を拡散して、低減した酸素を含む水の流れ28から残りの二酸化炭素の実質的部分が除去される。窒素の掃気流24は間欠的に、実質的に連続的に、又は、連続的に供給されるが、実質的に連続的な、又は、連続的な操作が好ましい。
【0018】
脱気水タンク12は好ましくは脱気ストリッパー14よりも約1psigから約3psig低い圧力範囲で好ましく作動し、それで水が約17psigから約44psigの圧力で飽和状態になる。これは蒸気表で華氏約250度から華氏約295度に相当する。
【0019】
低減した酸素を含む水の流れ28が、含まれている酸素を実質的に低減した給水の流れ36としてボイラー38に供給される。脱気タンクの底部からの流れ34を、必要な場合、ボイラー給水ポンプを用いて圧送できる。本発明の好ましい実施態様では、低減した酸素を含む水の流れ28をボイラー38に供給するステップには、好ましくは約10億分の7部(7ppb)未満の酸素濃度を好ましくは有する低減した酸素を含む水の流れ28を供給することが含まれている。さらに、好ましい実施態様では、低減した酸素を含む水の流れ28をボイラー38に供給するステップが含まれ、より好ましくは、低減した酸素を含む水の流れ28が実質的に酸素を含まない。
【0020】
脱気水タンク12内の水位が典型的に約40%から約70%の範囲に維持され、脱気水タンク12に窒素の掃気流24を供給するのに適当な蒸気空間Vを確保する。蒸気空間Vは、脱気水タンク12内に含まれる低減した酸素を含む水の流れ28より上に位置している。
【0021】
低圧蒸気流30を脱気ストリッパー14に供給して、給水の流れ18内に含まれている酸素及び二酸化炭素の少なくとも一部を除去するステップを支援する。低圧蒸気流30は、給水の流れ18内に含まれる酸素及び二酸化炭素の少なくとも一部を除去するのに必要なストリッパー用蒸気の少なくとも一部を有利に供給する。低減した酸素を含む水の流れ28からの蒸気も脱気ストリッパー14内のストリッピング用蒸気の代替又は追加源を提供するために蒸気の戻り流26として送ることができる。
【0022】
図2に示すように、脱気ストリッパー14の代替的使用として、本発明は、加熱した給水の流れ18を生じるように給水の流れ11を加熱するステップを含めた実施態様も有利に提供する。給水の流れ18を加熱するステップは熱交換器17を用いて実現できる。給水の流れ11を加熱できる他の適当なタイプの機器は当業の技術者にとって明らかであり、本発明の範囲内と見なすべきである。低圧蒸気流50を利用して、給水11を加熱するのに必要な熱を十分に供給できる。そして戻りの低圧蒸気流52を脱気水タンク12に戻すことができる。次ぎに、加熱した給水の流れ18が脱気水タンク12に供給される。次ぎに、前述の実施態様のように、窒素の掃気流24が脱気水タンクに供給されて、給水の流れ18から酸素と二酸化炭素を除去して、それに含まれている酸素と二酸化炭素の量が実質的に低減しているボイラー給水の流れ36を生じさせる。
【0023】
他の方法の実施態様として、加熱した給水の流れ18を脱気水タンク12に供給できる。この実施態様では、他と同様に、窒素の掃気流24を脱気水タンク12に供給して、加熱した給水の流れ18内に含まれる酸素の実質的部分を除去し、内部の酸素量を実質的に低減したボイラー給水の流れ36を生じさせる。
【0024】
ここに示した方法の実施態様に加えて、さらに、本発明にはボイラー給水36から酸素を除去するために脱気装置10を有利には含む。この実施態様では、脱気装置10は脱気ストリッパー14と脱気水タンク12を好ましくは含んでいる。
【0025】
脱気ストリッパー14は、脱気ストリッパー14に供給する給水の流れ18からの酸素の少なくとも一部及び二酸化炭素の少なくとも一部を機械的に除去する。脱気ストリッパー14は低減した酸素を含む水の流れ28を生じ、それが脱気ストリッパー14から脱気水タンク12に下降する。ここで示すように、脱気ストリッパー14は好ましくは噴霧塔、棚段塔、もしくは充填塔、又は同様の装置である。
【0026】
脱気水タンク12は主として低減した酸素を含む水の流れ28を貯蔵するのに用いられる。脱気水タンク12は有利に、それぞれ、窒素の掃気流24を除去し、及び、酸素を含む窒素掃気流32を除去するために、窒素又は窒素ガスの供給用接続部40を含み、かつ、窒素戻り用接続部42を含むことができる。窒素供給用接続部40は好ましくはひとつの開口部であり、好ましくはタンク12の上方壁面60に設けられた小さな開口部であり、弁61を含んでも良い。同様に、窒素戻り用接続部42も好ましくは開口部であり、好ましくはタンク12の上方壁面60に設けられた小さな開口部であり、弁61を含んでも良い。窒素の掃気流24は、脱気水タンク12内に含まれる低減した酸素を含む水の流れ28内に残された酸素を拡散するために脱気装置の作動中に有利に使用される。窒素の掃気流24を用いた結果として、残留酸素の実質的部分が低減した酸素を含む水の流れ28から除去されて、その結果ボイラー給水の流れ36には実質的に酸素及び二酸化炭素が無くなる。窒素供給用接続部40及び窒素戻り用接続部42は、脱気水タンク12内に含まれる低減した酸素を含む水の流れ28の上に位置している蒸気空間V内に位置している。代わりに、窒素の掃気流24を除去するために、又、窒素の掃気流32に含まれる酸素を除去するために、窒素戻り用接続部42の代わりに蒸気の戻り流26を使用しうる。
【実施例1】
【0027】
エチレン製造プラントが、計装用空気系統が故障したときに、プラントの混乱を経験した。そのエチレン・プラントは脱気装置を用いて、ボイラー給水の流れから酸素と二酸化炭素を除去していた。計装用空気系統の故障に加えて、脱気ストリッパーの底部を流れる流入した蒸気の流れが、脱気ストリッパーの下方部分で棚を破損した。脱気ストリッパーの棚が破損したので、ボイラー給水が、希望する目標値の7ppbよりはるかに上の酸素濃度を有していた。損傷した棚がその運転中に正常な蒸気・水の接触を妨げた結果として酸素量が約300ppbから約500ppbの範囲の高さになっているとして検出された。棚の修理に費用がかかること、休止期間又は切離し期間が長くなることにより、プラント運転員が脱気ストリッパーの棚の修理を待つように決定した。ボイラー給水の流れの中の酸素濃度がそのように高くなっているので、改善措置をとらなければ、腐食が重大な懸念になった。
【0028】
ボイラー給水が7ppbを超える酸素濃度を有することは、蒸気系統内に有意な腐食を生じることが知られている。本発明の目標はボイラー給水の流れ36の酸素量を約7ppb未満に減少させ、さらに、ボイラー給水の流れ36の二酸化炭素を検出不能レベルに低減することである。これらのガスのいずれかが増加すると、蒸気系統が重大な腐食を受ける。
【0029】
蒸気系統内で受けた腐食量を低減するために、ボイラー及びボイラーに含まれる熱交換用チューブを守るために大量の酸素除去薬品が用いられた。酸素除去薬品を追加したけれども、蒸気系統内に含まれる2台の表面凝縮器で腐食を受けた。
【0030】
脱気水タンクの蒸気空間内でガス・サンプル(gas samples)を採取した。ガス・サンプル内の水蒸気を凝縮して、残りのガスをガス・クロマトグラフ(gas chromatograph)により分析した。酸素と窒素の濃度は1:4の比であると考えられた。しかしながら、酸素:窒素の比は1:2.5に近かった。脱気水タンクは図1の12のような横型容器で、約40%から約70%の典型的水位範囲で運転されていた。プラントと脱気装置はタンクの一端で運転していたが、水タンク12の上方壁面60に開口部が作られていて、小さな弁61がその開口部に挿入されていた。僅かな窒素掃気の流れが弁61を通して加えられた(図1)。タンク12の反対側端部に別の弁62が設けられていて、脱気装置の運転を続けたままで、蒸気空間を窒素で掃気するために開いた。掃気をしたままCHEMetricsブランド(brand)の標準比色試験を用いてボイラー供給水液相の溶存酸素について検査した。その比色試験で、ガラス製アンプル(glass ampoule)にジエチレン・グリコール(diethylene glycol)希釈液が入っていて、溶存酸素を含む水にさらされるとピンク(pink)色になる。窒素の掃気流を用いる前に、プラントは0−1000ppbのカラーチャート(color chart)を用いていた。窒素で蒸気空間を掃気した後で、ボイラー給水の溶存酸素の含有量が5ppb以下に十分に低下した。
【0031】
ボイラー給水の流れ内の酸素量が低下したこととは別に、脱気装置の運転中に窒素の掃気流を用いた結果として、いくつかの他の利点が観察された。ここで論じたように、ボイラー給水内の酸素量を低減するために、ボイラー給水内の高い酸素量を補償するために、大量の酸素除去剤を用いてプラントを運転した。酸素除去剤の使用を増してプラントの多くの領域で腐食を防止した。華氏約120度から華氏約140度の温度範囲で真空下運転していた2台の表面凝縮器がアドミラルチ(admiralty)・チューブの腐食を経験し、蒸気凝縮系統に冷却水が漏れ込んでいた。その漏洩は表面凝縮器のサンプル(sample)を毎週検証し、シリカ(silica)、水の硬度、銅の汚染を検出した。表面凝縮器の腐食が2年間は見られなかったレベルに銅の腐食が低下したことを短期間で示した。窒素の掃気流の使用直後に採取した毎週のサンプルは窒素の掃気流の使用前に採取されたサンプルと比較して、銅の腐食が有意に低いことを示した。
【0032】
他の利点もプラント全体で決定された。窒素の掃気流の使用前は、凝縮水の戻り又はリサイクルの蒸気のpH制御に中和用アミン(amine)を必要とした。窒素の掃気流の使用後は、アミンの必要量が少なくとも40%だけ減少した。
【0033】
凝縮水戻りのpH制御に必要なアミン量の低減に加えて、酸素レベルを300−500ppbから5ppb以下に落ちるので、酸素除去薬品の必要量が80%だけ減少した。最後になるが、既存の脱気装置の修理及び追加の脱気装置を加える計画は次のプラントの定期休止まで遅らせた。本発明の大きな利点は、脱気装置を含む既存の運転中のプラントを、プラントと脱気装置の運転中に窒素の掃気流を供給するように変更でき、それにより、費用と時間がかかるプラント停止を避けられるということである。そのような停止はプラント生産量の損失により利益面で数百万ドルの支出になる。
【0034】
本発明の利点として、窒素の掃気流を伴う脱気装置を運転することは、典型的には蒸気系統の維持と関連した停止時間を有意に低減する。酸素及び二酸化炭素のレベルを低減することにより、蒸気系統の腐食が有意に低下すると考えられている。
【0035】
本発明の他の利点として、脱気系統の設計が実質的に単純化しうる。ストリッピング(stripping)のメカニズムがもはや必要がないので、可動部分が無い脱気系統を有することができ、その脱気系統を維持するのに必要な保守頻度を実質的に低減する。さらに、可動部分が無いことが、典型的にストリッパー部分を有する脱気装置の設置に関連した資本費用を低減する。
【0036】
本発明の他の利点は、本発明の利用で、脱気ストリッパー14を通過する脱塩した給水の流れ18を通る脱塩した水量を増加できると考えられる。例えば、脱気ストリッパー14に便宜的に見いだされる棚及びスプレーノズルは典型的に蒸気/水の比を最大にするように設計されているので、脱気ストリッパー14による脱塩水の最大処理量で、脱気ストリッパー14が酸素濃度を希望の酸素濃度、例えば、約7ppb未満に低下できる。もし、脱塩水の処理量が最大設計量を超えた場合、酸素濃度が上昇し、腐食の問題を生じ得る。石油化学プラントのような、多くのプラントで、同じ設備を用いている間の処理量を増加する傾向がある。それで、脱気ストリッパー14は、設備寿命の遅い時期に希望の処理量増加のために、停止と変更を必要とする傾向がある。本発明の利用は、7ppb以下のような低い酸素濃度を得るために本発明の窒素の掃気流を用いることにより脱気ストリッパー14の設計限界を上回って脱塩水の処理量を将来増加可能と考えられている。この技術は脱気ストリッパー14の隘路解消に使用できる。
【0037】
明らかな修正及び均等技術は当業の技術者には明らかなので、本発明は、示され、記述されているような建設、運転、正確な材料又は実施態様の正確な詳細に限定されないと理解すべきである。例えば、脱気装置内部のストリッピング(stripping)メカニズムは棚、充填材、スプレーのメカニズムとしうる。さらに、水タンクへの窒素の掃気流の供給用及び戻り用接続部は任意の方法で設置できる。従って、それゆえ、本発明は添付請求項の範囲によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】脱気ストリッパーを有する脱気装置の部分的断面であり、その脱気装置が本発明の実施態様に基づく脱気操作中に窒素の掃気流を用いていることを示す。
【図2】脱気装置に加熱水を供給するために熱交換器を用いた脱気装置の部分的断面図であり、その脱気装置が本発明の実施態様に基づく脱気操作中に窒素の掃気流を用いていることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱気ストリッパーに給水の流れを供給すること、
給水の流れを加熱すること、及び、低減した酸素を含む水の流れを生じるために、給水の流れの中に含まれる酸素及び二酸化炭素の少なくとも一部を除去すること、その低減した酸素を含む水の流れがストリッパーから脱気水タンクに下降すること、
脱気装置の運転中に脱気水タンクに窒素の掃気を供給し、それにより、低減した酸素を含む水の流れの中に残る酸素を拡散して、残っている酸素の実質的部分を、低減した酸素を含む水の流れから除去すること、
その中に含まれる酸素を実質的に低減した給水の流れとして、その低減した酸素を含む水の流れをボイラーに供給すること、
のステップを含んで成るボイラー給水の流れから酸素を除去する方法。
【請求項2】
低減した酸素を含む水の流れをボイラーに供給するステップが、約7ppb未満の酸素濃度を有する、低減した酸素を含む水の流れを供給することを含むことを特徴とする請求項1の方法。
【請求項3】
低減した酸素を含む水の流れをボイラーに供給するステップが、実質的に酸素を含まない低減した酸素を含む水の流れを供給することを含むことを特徴とする請求項1の方法。
【請求項4】
給水の流れを脱気ストリッパーに供給するステップが、噴霧塔、棚段塔及び充填塔から成る群から選択された脱気ストリッパーに給水を供給するステップを含むことを特徴とする請求項1の方法。
【請求項5】
給水の流れを供給するステップが、脱塩した給水の流れ、凝縮水の戻りの流れ、外部の流れ及びそれらの組合わせから成る群から選択した給水の流れの供給を含むことを特徴とする請求項1の方法。
【請求項6】
さらに、脱気水タンク内の水位を約40%から約70%の範囲に維持するステップを含む請求項1の方法。
【請求項7】
脱気水タンクに連続的な窒素の掃気を供給するステップがその脱気水タンク内に含まれる低減した酸素を含む水の流れより上方に位置する蒸気空間に連続的な窒素の掃気を供給することを含むことを特徴とする請求項6の方法。
【請求項8】
さらに、給水の流れの中に含まれる酸素及び二酸化炭素の少なくとも一部を除去するステップを支援するために脱気ストリッパーに低圧蒸気の流れを供給するステップを含み、、その低圧蒸気の流れが、給水の流れの中に含まれる酸素及び二酸化炭素の少なくとも一部を除去するためにストリッパー用蒸気の少なくとも一部を供給する請求項1の方法。
【請求項9】
加熱した給水の流れを生じさせるために、給水の流れを加熱すること、
加熱した給水の流れを脱気水タンクに供給すること、
脱気装置の運転中に脱気水タンクに窒素の掃気を供給して、それにより、加熱した給水の流れに含まれる酸素を拡散し、酸素の実質的部分を加熱した給水の流れから除去すること、
実質的に低減した酸素を含む給水の流れとして、加熱した給水の流れをボイラーに供給すること、
のステップを含んで成るボイラー給水の流れから酸素を除去する方法。
【請求項10】
給水の流れを供給するステップが、脱塩した給水の流れ、凝縮水の戻りの流れ、外部の流れ及びそれらの組合わせから成る群から選択された給水の流れの供給を含むことを特徴とする請求項9の方法。
【請求項11】
給水の流れを加熱するステップが、凝縮水の戻りの流れ、低圧蒸気の流れ、外部の流れ、それらの組合わせから成る群から選択された伝熱性の流れと接触した熱交換による給水の流れの加熱を含むことを特徴とする請求項9の方法。
【請求項12】
加熱した給水の流れを脱気水タンクに供給すること、
脱気装置の運転中に脱気水タンクに窒素の掃気を供給して、それにより、加熱した給水の流れに含まれる酸素を拡散し、酸素の実質的部分を加熱した給水の流れから除去すること、
実質的に低減した酸素を含む給水の流れとして、加熱した給水の流れをボイラーに供給すること、
のステップを含んで成るボイラー給水の流れから酸素を除去する方法。
【請求項13】
加熱した給水の流れを供給するステップが、加熱し、脱塩した給水の流れ、凝縮水の戻りの流れ、外部で加熱した流れ及びそれらの組合わせから成る群から選択された加熱した給水の流れの供給を含む請求項12の方法。
【請求項14】
脱気ストリッパーに供給された給水の流れから酸素の少なくとも一部及び二酸化炭素の少なくとも一部を機械的に除去する脱気ストリッパー、その脱気ストリッパーが、脱気ストリッパーから脱気水タンクに下降していて、低減した酸素を含む給水の流れを生じること、
低減した酸素を含む水の流れを蓄えるための脱気水タンク、その脱気水タンクが窒素供給用接続部と窒素戻り用接続部を含み、その脱気水タンク内に蓄えられ、低減した酸素を含む水の流れに残っている酸素を拡散するために窒素の掃気流を供給し、残りの酸素の実質的部分をその低減した酸素を含む水の流れから除去すること、
を含んで成るボイラー給水から酸素を除去するための脱気装置。
【請求項15】
脱気ストリッパーが、噴霧塔、棚段塔及び充填塔から成る群から選択されることを特徴とする請求項14の脱気装置。
【請求項16】
窒素供給用接続部と窒素戻り用接続部は、脱気水タンク内に含まれていて、低減した酸素を含む水の流れの上方に位置する蒸気空間内に位置している請求項14の脱気装置。
【請求項17】
(a)設備が作動している間、脱気装置の壁面に第一の開口部を形成すること、
(b)設備が作動している間、その第一の開口部と気体の伝送をする関係で窒素供給用接続部を提供すること、
(c)ボイラー給水の流れから酸素を除去するために脱気装置に窒素の掃気を供給すること、
のステップを含んで成る脱気装置を有する運転中の石油化学設備でボイラー給水の流れから酸素を除去する方法。
【請求項18】
(a)設備が作動している間、脱気装置の壁面に第二の開口部を形成すること、
(b)設備が作動している間、その第二の開口部と気体を伝送する関係で窒素戻り用接続部を提供すること、
のステップを含む請求項17の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−523349(P2008−523349A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545577(P2007−545577)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/044213
【国際公開番号】WO2006/063026
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(507188887)ウエストレイク・ペトロケミカルズ・エル・ピー (1)
【Fターム(参考)】