説明

ボイラ廃熱利用システム

【課題】排ガス温度が所定値以下となることを防止しつつ、廃熱の利用率を向上させることのできるボイラ廃熱利用システムを提供する。
【解決手段】ボイラ廃熱利用システム1において、ブロア26により送られる空気22と燃料24とをバーナ28で燃焼させ、過熱器30で上記を発生させる蒸気ボイラ2の排ガス34から放熱される廃熱を煙道4に設置した熱電変換モジュール6により電気エネルギーとして取り出すと共に、給水ポンプ36から送られ、冷却水パイプ8内を流れる給水40に熱回収し、給水40を予熱する。この予熱後の給水40は、給水路38により蒸気ボイラ2へ送られる。ここで、熱電変換モジュール6及び冷却水パイプ8は脱着自在に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気ボイラの廃熱を給水の予熱に利用するエコノマイザを備えたシステムに係り、特に、熱電変換モジュールを用いて廃熱を電気エネルギーに変換利用するボイラ廃熱利用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼熱により蒸気を発生させる蒸気ボイラにおいて、排出される排ガスラインの下流側から放熱される廃熱を回収し、蒸気ボイラへの給水を予熱して運転効率を向上させる、いわゆるエコノマイザが一般に知られている。このような構成は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
図12は、従来の蒸気ボイラ101及びエコノマイザ102の周辺の概略構成を示している。この図12に示されているように、ガスタービン103から排出された排ガス104の流れる排ガスライン107に沿って、上流側から順に蒸気ボイラ101、エコノマイザ102が設けられている。また、給水管105を通じて給水がエコノマイザ102内に導入される。そして、エコノマイザ102内にて、排ガス104と給水との間で熱交換が行われる。このようにして、高温状態となった予熱水(給水)が給水管106を通って蒸気ボイラ101へ送られ、蒸気に変えられる。
【0004】
一方、焼却炉の冷却排水や蒸気、ガスタービン発電機で生じる排ガスの廃熱、温水の余熱などを熱源として利用し、熱電発電により電力を得る構成が知られている。このような構成は、例えば、特許文献2に開示されている。
【0005】
図13は、従来の熱電発電システム200を示している。この熱電発電システム200では、温排水が流れる排水パイプ201の外周に熱電変換モジュール202が密着状態で配置されている。この熱電変換モジュール202にはそれぞれ、一定数の熱電素子チップ203が高密度に実装されている。そして、排水パイプ201に取り付けられた熱電変換モジュール202の外側を覆うように、冷却水パイプ204が設けられている。ここでは図示しないが、これら熱電変換モジュール202は、熱電素子チップ203の表面が遮水シートで遮水されており、この遮水シートの外側を冷却水が流れる。このような構成により、内側の温排水から放熱される廃熱で高温状態となった熱電変換モジュール202の内側の温度と、冷却水により冷却された外側の温度との差を利用して熱が電気に変換される。
【0006】
以上のように、図12に示したエコノマイザの、余熱を回収する構成と、図13に示した熱電変換の構成とを合わせて、蒸気ボイラを通過した排ガスラインから給水予熱のための熱回収と熱電変換とができるので、エネルギーの有効利用が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−298308号公報
【特許文献2】特開2009−267316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、蒸気ボイラの排ガスラインから過度に吸熱を行うと、排ガス温度が許容範囲を超えて低下してしまう場合がある。
【0009】
燃料中には硫黄化合物が含まれており、これが燃焼によって亜硫酸ガスとなり、その一部が酸化されて無水硫酸になる。この状態で、硫酸の露点温度(130℃付近)を下回ると、無水硫酸が水分と結合して硫酸となる。そして、これが凝集して金属部材に付着すると、腐食が発生する。したがって、この露点温度を考慮して、例えば、油焚きの蒸気ボイラでは、煙突出口の排ガス温度の下限は150℃程度となるように設定されている。
【0010】
つまり、排ガスの温度が150℃よりも低温状態とならないように熱回収を行わなければならない。
【0011】
ところが、冷却水の温度は季節変動等の影響を受けるので、常に一定の温度に保たれている訳ではない。したがって、環境温度が低下すると、排ガス温度が露点温度の150℃より低下し易い状態となる。しかし、これを蒸気ボイラ側の制御のみで防止するのは容易ではない。
【0012】
そこで、本発明では、排ガス温度を所定値以上の状態に保持すると共に、廃熱の利用率を向上させることのできるボイラ廃熱利用システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明のボイラ廃熱利用システムは、蒸気ボイラの排ガスを排出する煙道で放熱される廃熱から回収した回収熱を利用して、蒸気ボイラへの給水を予熱するボイラ廃熱利用システムにおいて、それぞれ所定の熱抵抗値を有し、互いに脱着可能に連結されて煙道の外周に巻き付けられる、熱電素子チップから構成された熱電変換モジュールと、熱電変換モジュールに対して少なくとも一部が密着状態で脱着可能に配置される冷却水パイプと、冷却水パイプへ回収された回収熱を、給水の予熱用に蒸気ボイラへ伝達する熱伝達手段とを備えたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明のボイラ廃熱利用システムは、所定の熱抵抗値は、構成される熱電素子チップのチップ高さの違いにより複数種類設定されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明のボイラ廃熱利用システムでは、熱電変換モジュールは、冷却水パイプの配置されている領域のうち、煙道の上流側の一部分に装着されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明のボイラ廃熱利用システムは、冷却水パイプの、熱電変換モジュールを含む前記煙道に巻き付けられた領域の中間位置から分岐されたバイパスパイプと、バイパスパイプの流量を調節する流量調節手段とを備えたことを特徴とする。
【0017】
また、本発明のボイラ廃熱利用システムは、煙道に巻き付けられた熱電変換モジュールに対して、煙道の上流側及び下流側の少なくとも一方側に、熱電素子チップと略同じ高さの伝熱部が並設されていることを特徴とする。
【0018】
また、本発明のボイラ廃熱利用システムは、冷却水パイプは、所定幅で複数回往復して折り返され、平行に配列されたパイプ部と、所定幅の両端側で、パイプ部の折り返し部分をそれぞれ一体に形成し、互いに連結可能となる2つのパイプ連結部とを備え、パイプ部は、少なくとも煙道の外周に巻き付けられる可撓性を有していることを特徴とする。
【0019】
また、本発明のボイラ廃熱利用システムは、冷却水パイプは、所定長さの複数のパイプを平行に配列したパイプ部と、パイプ部の一方側のパイプの端部同士を一体に形成する第1の連結部と、パイプ部の他方側のパイプの端部同士を一体に形成し、第1の連結部と連結可能な第2の連結部とを備え、パイプ部は、少なくとも煙道の外周に巻き付けられる可撓性を有しており、第1の連結部と第2の連結部とは、隣り合うパイプの端部同士を連通させるように連結されることを特徴とする。
【0020】
また、本発明のボイラ廃熱利用システムは、冷却水パイプの上流側の流水を冷却し、下流側の流水を加熱するヒートポンプと、ヒートポンプに電力を供給すると共に、熱電変換モジュールから得た電気を蓄える蓄電池とを備え、熱伝達手段は、ヒートポンプにより加熱された加熱水の熱を、蒸気ボイラの給水路の給水へ伝達する給水加熱用熱交換器であることを特徴とする。
【0021】
また、本発明のボイラ廃熱利用システムは、熱電変換モジュールで変換された熱起電力を蓄える蓄電池と、熱起電力を蓄電池に蓄える充電状態とする充電側端子と前記蓄電池から熱電変換モジュール側に電力供給する放電状態とする放電側端子とを切り替える充放電スイッチとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、冷却水パイプを取り外すことにより熱電素子チップで構成された熱電変換モジュールを脱着することができる。また、互いに分離又は接続することにより必要な数の熱電変換モジュールを採用することができる。
【0023】
これにより、煙道から熱電変換モジュールへ流れる熱量を、熱電変換モジュールの数を変えて、全体の熱抵抗を変化させることにより調節することができ、排ガスの温度を調節することが可能となる。
【0024】
また、熱電変換モジュールの数と、構成される熱電素子チップの高さとを独立に選択して組み合わせることが可能となるので、熱電素子チップの高さの違いにより所定の熱抵抗値を有する熱電変換モジュールを所定数選択して配置し、全体としての熱抵抗を細かく調節することが可能となる。
【0025】
また、冷却水パイプの配置される煙道上の領域のうち、最も高温である煙道上流側の一部分に、熱電変換モジュールが装着されると、その領域内で最も大きい温度差を得ることができ、効率良く熱電変換を行うことが可能となる。
【0026】
更に、バイパスパイプに設けた流量調節手段による冷却水の流量調節により、バイパスパイプの分岐位置に対して、排ガス上流側と下流側との冷却水量に差を設けることができる。これにより、熱電変換モジュールを含む煙道から冷却水パイプへの回収熱量を調節することができる。すなわち、熱電変換モジュールの脱着作業を要せず、流量調節手段の操作のみにより排ガスの温度を調節することができるので、簡易且つ迅速に対応することが可能となる。
【0027】
また、冷却水パイプを、熱電素子チップの配置されている領域と、伝熱部が配置されている領域とに亘って配置することが可能になるので、伝熱部と熱電変換モジュールとのそれぞれを覆う割合を調節して設置することが可能である。すなわち、伝熱部及び熱電変換モジュールと冷却水パイプとの間のトータルの熱抵抗値を、冷却水パイプの設置位置により実質的に変化させ、これにより、排ガスの温度を所定の温度以上となるように調節することが可能となる。
【0028】
また、2つの連結部の接続及び分離により、冷却水パイプの巻き付け、取り外しが可能となるので、設置の際に、パイプを螺旋状に複数回周回させる必要がなく、脱着作業が短縮される。
【0029】
さらに、所定長さのパイプが順次隣のパイプに連通され、1本の螺旋状のパイプ部を形成するので、螺旋状に巻き付けられる1本のパイプを、煙道の周りに何回も周回させることにより巻き付けることなく、第1及び第2の連結部における着脱により、設置及び取り外しが可能で、脱着作業が短縮される。
【0030】
加えて、熱電変換モジュールから得られた電力が、蓄電池を介してヒートポンプへ供給される。また、ヒートポンプで消費されない電力は、蓄電池に蓄えられる。そして、ヒートポンプにより加熱された加熱水の熱で給水が予熱される。更に、ヒートポンプで冷却された流水が冷却水に導入されるので、熱電変換モジュールの煙道側と冷却水パイプ側との間の温度差が大きくなる。
【0031】
これにより、熱電変換モジュールから得られた電力は、冷却水ポンプに導入される冷却水の温度を下げて発電効率を向上させ、冷却水ポンプから排出された流水の温度を上昇させることにより、予熱温度を上昇させることが可能となる。また、冷却水の冷却や、予熱温度を上昇させる必要の無いときは、蓄電池に電力を蓄えることができ、他の用途に利用することも可能となる。
【0032】
また、充放電スイッチを備えた構成においては、充放電スイッチが充電側端子に設定されている場合、熱起電力が蓄電池に蓄えられる。また、充放電スイッチが放電側端子に設定されている場合、蓄電池からの電力供給に基づくペルチェ効果により、熱電変換モジュールにペルチェ熱が発生する。これにより、通常時は、排ガスから得られる熱エネルギーを電気エネルギーに変換して蓄電池に蓄え、寒冷期においては、蓄電池から熱電変換モジュール側へ電力を供給することにより、ペルチェ発熱による冷却水の解凍又は保温が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るボイラ廃熱利用システムの概略図である。
【図2】図1のボイラ廃熱利用システムの熱電変換モジュール周辺の拡大図である。
【図3】高さ0.5mmの熱電素子チップで構成された熱電変換モジュールについて、モジュール数と発電出力及び温度との関係を示した図である。
【図4】高さ1mmの熱電素子チップで構成された熱電変換モジュールについて、モジュール数と発電出力及び温度との関係を示した図である。
【図5】高さ1.5mmの熱電素子チップで構成された熱電変換モジュールについて、モジュール数と発電出力及び温度との関係を示した図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るボイラ廃熱利用システムの概略図である。
【図7】図6のボイラ廃熱利用システムの熱電変換モジュール周辺の拡大図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係るボイラ廃熱利用システムの概略図である。
【図9】本発明の第4の実施の形態に係るボイラ廃熱利用システムの概略図である。
【図10】螺旋型の冷却水パイプを示した斜視図である。
【図11】折り返し型の冷却水パイプを示した斜視図である。
【図12】従来の蒸気ボイラ及びエコノマイザの周辺構成について示した図である。
【図13】従来の熱電発電システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0035】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態によるボイラ廃熱利用システムの概略構成を示している。
【0036】
この図を参照して、このボイラ廃熱利用システム1は、蒸気ボイラ2の廃熱の一部を利用して、蒸気ボイラ2の給水の予熱を行うものである。給水40は、給水ポンプ36により送られ、給水路38(熱伝達手段)を通じて過熱器30へ導入される。なお、ここでは、便宜上給水路38と過熱器30との間の複雑な構成については説明及び図示を省略している。
【0037】
蒸気ボイラ2の下方に設けられたバーナ28では、外部から燃料24と、ブロア26により送られる空気22との混合気が燃焼される。そして、この燃焼熱により、過熱器30で蒸気32が発生する。この燃焼によって生じた高熱の排ガス34は、煙道4を通って外部へ排出される。
【0038】
ここで、本実施の形態におけるボイラ廃熱利用システム1では、煙道4の外周に熱電変換モジュール6(図中点線部分)が密着状態で巻き付けられて配置されている。この熱電変換モジュール6の具体的構成については、後述するが、一定数の熱電素子チップが高密度に実装され、煙道4の外周などの曲面に密着配置できる程度の可撓性を有しており、互いに脱着可能に連結される既存のものを利用することができる。
【0039】
そして、その熱電変換モジュール6の外側に、更に、給水ポンプ36から延びる冷却水パイプ8が密着状態で巻き付けられている。この冷却水パイプ8は、流れる冷却水の上流側が、排ガス34の下流側となるように配置されている。このように、排ガス34と冷却水との流れる方向を逆方向に設定することにより、熱電変換モジュール6の発電のための温度差を全域に亘って略均等に保持することができる。したがって、排ガス温度が下流側になるほど低下して、熱電発電の効率が低下することを防止することができる。
【0040】
このように構成することにより、煙道4から放熱される排ガス34の廃熱は、熱電変換モジュール6により電気に変換されると共に、この熱電変換モジュール6を介して設置される冷却水パイプ8中を流れる給水40へ予熱(回収熱)として回収される。そして、この予熱後の給水40は、加熱給水40aとして蒸気ボイラ2へ送られる。
【0041】
図2は、これら熱電変換モジュール6の周辺の構成について示した拡大図である。この図2に示すように、煙道4の外周には、熱電変換モジュール6の実装基板44側が密着するように巻き付けられている。そして、熱電変換モジュール6を構成する熱電素子チップ6bの外側端部と冷却水パイプ8との間には冷却プレート42が介装されている。これにより、煙道4の外周側の高温領域と、冷却水パイプ8の低温領域との温度差が場所によらず均等になり、熱電変換モジュール6は効率良く発電することができる。
【0042】
このように、本実施の形態に用いられる熱電素子チップ6bは、モジュールを構成しているので、煙道4に対して脱着が可能である。これにより、状況に応じて、チップ高さの異なる熱電素子チップ6bで構成された熱電変換モジュール6、すなわち、それぞれ異なった熱抵抗値(所定の熱抵抗値)に設定された熱電変換モジュール6に置き換えることが可能となる。
【0043】
また、モジュール数を様々に設定することにより、全体の熱抵抗値(所定の熱抵抗値)を調整することも可能である。
【0044】
したがって、排ガスの温度が、硫酸の露点温度を下回らない程度に、廃熱を最大限利用できるように調整することが可能である。
【0045】
また、蒸気ボイラ2の運転状態や、季節による温度変化に応じて、モジュール数及び熱電素子チップ6bのチップ高さを変更して調節することも可能である。
【0046】
ここで、様々なチップ高さの熱電変換モジュール6について、モジュール数に対する発電出力及び温度との関係を、図3から5に示したグラフを参照して説明する。
【0047】
図3から図5には、それぞれ異なるチップ高さの熱電素子チップ6bにより構成された熱電変換モジュール6についての特性が示されている。具体的には、図3は、チップ高さが0.5mm(1モジュール当りの熱抵抗が0.05℃/W)、図4は、チップ高さが1mm(1モジュール当りの熱抵抗が0.1℃/W)、また、図5は、チップ高さが1.5mm(1モジュール当りの熱抵抗が0.15℃/W)の熱電変換モジュール6に対する特性を示している。
【0048】
また、熱電素子チップ6bの材質については、アンチモンテルル(SbTe)やビスマステルル化合物(BiTe)などがあるが、これらの半導体のPN接合において、例えばP型にBi0.5Sb1.5Te 、N型にBiTe2.85Se0.51を用いることで、前記半導体のPN接合において温度差が例えば50℃以上と大きな温度差を得ることができ、図3から図5のそれぞれ異なるチップ高さの熱電素子チップ6bは、これらを用いた。
【0049】
いうまでもないが、熱電素子チップ6bの材質を替えることで、熱抵抗は変わり、熱電変換モジュール6の効率に大きく作用する。
【0050】
それぞれ、縦軸のうち主軸は発電出力(kW)を、第2軸は温度を、また、横軸はモジュール数を表している。この第2軸の温度は、熱電変換モジュール6より下流側の排ガス34の温度と、予熱された加熱給水40aの温度を示している。
【0051】
図3を参照して、先ず、グラフP1は、モジュール数に対する発電出力(kW)の関係を表している。モジュール数が0から10の範囲では、発電出力は右肩上がりの急勾配である。これに対し、モジュール数が10を越える辺りから緩やかな増加となっている。このチップ高さ0.5mmの熱電変換モジュール6の場合、モジュール数が50に対して、発電出力は約1.6kWとなっている。
【0052】
次に、グラフG1は、モジュール数に対する排ガス34の温度の関係を表している。また、グラフW1は、モジュール数に対する加熱給水40aの温度の関係を表している。モジュール数が増加すると、煙道4に対する熱電変換モジュール6の接触面積が増大するので、熱の回収量が増加し、その増加分に応じて排ガス34の温度は低下する。そして、その回収熱を利用して予熱される給水40の温度も、モジュール数の増加と共に上昇する。いずれも、モジュール数が0から10の範囲では急勾配のカーブを描いて変化するが、モジュール数が10から50の範囲では、緩やかに変化している。具体的数値を挙げれば、モジュール数が50の時、排ガス34の温度は約148℃であり、加熱給水40aの温度は約63℃となっている。
【0053】
ここで、排ガスの温度低下と給水温度上昇との比率について具体例を示す。例えば、エコノマイザが設けられている小型の蒸気ボイラで、そのボイラ効率が90%の性能を発揮するものでは、蒸気発生量500kg/hの場合、排ガス量500Nm/hとすると、給水1℃上げる熱量は、500×1=500kcal/hとなる。そこで、500kcal/hで排ガスがΔt℃下がるとすると、500Nm/h×Δt×0.31kcal/Nm3℃=500kcal/hの式が成り立つ。これにより、Δt=3.2℃となり、給水を1℃上昇させるときに排ガスは約3℃低下することがわかる。また、ボイラ効率が85%の性能のものは、前記ボイラ効率が90%のものより廃熱量が大きいため給水の温度が1℃上昇した場合の排ガスの温度低下は約2℃である。図3から図5に示したグラフは、ボイラ効率が85%の性能のものである。
【0054】
一般に、モジュール数が増加すると、変換されて取り出される電流は増加し、発電出力も増大する。しかし、モジュール数が増加すると、接合箇所が増加して内部抵抗も増大する。また、煙道4の外周に設置される熱電変換モジュール6の接触面積も増大する。したがって、これらの構成により、モジュール数の増加に対しては、変換効率を低下させる作用も生じる。
【0055】
図3では、高さ0.5mm、縦横の大きさが100×100mmの熱電素子チップで構成された熱電変換モジュールについて、高温側と低温側との温度差が約150℃のときの結果が表されている。また、源排ガス温度は約230℃、源給水温度は約20℃である。
【0056】
図4は、上述の図3の条件のうち、チップ高さのみを1mmに変更したときの状態を表している。グラフP2は、モジュール数に対する発電出力の変化を、グラフG2は、モジュール数に対する排ガス34の温度変化を、また、グラフW2は、モジュール数に対する加熱給水40aの温度変化を表している。
【0057】
これらの傾向は、図3と略同じであるが、何れも、図3の発電特性及び温度変化に比べて、全体的に緩やかな曲線を描いている。そして、発電出力はモジュール数50のときに約1.2kWであり、図3のチップ高さ0.5mmの熱電変換モジュール数50に対する発電出力の約1.6kWよりも低下している。
【0058】
また、モジュール数50に対する排ガス34の温度は約160℃となって、図3の場合よりも上昇しており、一方、加熱給水40aの温度は約57℃となって、図3の場合よりも降下している。
【0059】
図5は、上述の図3の条件のうち、チップ高さのみを1.5mmに変更したときの状態を表している。グラフP3は、モジュール数に対する発電出力の変化を、グラフG3は、モジュール数に対する排ガスの温度変化を、また、グラフW3は、モジュール数に対する加熱給水40aの温度変化を表している。これらグラフは、何れも、図4よりも更に緩やかなカーブを描いている。そして、発電出力はモジュール数50のときに約0.9kWであり、図4のチップ高さ1mmの場合に比べて、更に低下している。
【0060】
また、モジュール数50に対する排ガス34の温度は約170℃となって、図4の場合よりも更に上昇している。一方、加熱給水40aの温度は約50℃となって、図4の場合よりも更に降下している。
【0061】
以上、図3から図5に表れているように、チップ高さが増加すると、内部抵抗が増大するので、熱電変換効率が低下する。また、本実施の形態における熱電変換モジュール6では、チップ高さの増大に比例して、1モジュール当りの熱抵抗も増大しているため、チップ高さが増すに連れて、煙道4からの熱の回収量は減少し、排ガス34の温度は高くなる。また、熱の回収量が減少することにより、給水40に与える予熱も減少するので、チップ高さが増すに連れて、加熱給水40aの温度は低くなる。
【0062】
このように、本実施の形態によれば、チップ高さの異なる熱電変換モジュールを複数種類備えておき、これらを適当数組み合わせることで、排ガス温度が所定の温度(硫酸の露点温度)以上の状態を維持するように設定することが可能となる。
【0063】
また、本実施の形態に示すボイラ廃熱利用システムの構成を、ボイラ安定運転のために利用することも可能である。具体的には、例えば、燃料制御系統が故障し、現象として負荷が減少したにもかかわらず、燃料流量を絞る制御が異常な動作(故障)をした場合、蒸気消費が減少したにもかかわらず、排ガス温度は上昇する。このような状態においても、熱電変換モジュールで発生する起電力が上昇する。この起電力の変化を捉えて、燃料供給装置の異常を発見する用途にも利用できる。いわば経済的な燃料消費の二重安全の効果も兼ね備えている。
【0064】
(第2の実施の形態)
図6は、本発明の第2の実施の形態に係るボイラ廃熱利用システムの概略を示した図である。本実施の形態におけるボイラ廃熱利用システム1Aは、第1の実施の形態において図1に示したボイラ廃熱利用システム1と比較して、蒸気ボイラ2については同様の構成であるが、煙道4の外周に設置された冷却水パイプ8Aの周辺の構成が異なっている。ここでは、この相違点について詳細に説明する。
【0065】
本実施の形態における構成では、第1の実施の形態とは異なり、冷却水パイプ8Aの上流側を煙道4の上流側に向けて配置した例を図6に示している。そして、この図6に示されているように、熱電変換モジュール6は、この冷却水パイプ8Aの配置されている領域のうち、上流側の一部に配置されている。
【0066】
このように、熱電変換モジュール6は、冷却水パイプ8Aが装着されている領域のうち、排ガス34の温度が最も高い煙道4の上流側と、冷却水の温度が最も低い冷却水パイプ8Aの上流側との間に装着されている。すなわち、この熱電変換モジュール6は、表裏の温度差が最も大きくなる領域に配置されているので、熱電変換効率が最も良い状態となる。
【0067】
また、図6に示されるように、冷却水パイプ8Aは、煙道4に巻き付けられた領域の中間位置で分岐され、バイパスパイプ10へ繋がっている。そして、このバイパスパイプ10には流量調節手段としてのバイパスバルブ10aが設けられている。この分岐されたバイパスパイプ10は、冷却水パイプ8Aの下流側から延びる流路と合流し、蒸気ボイラ2へ延びる給水路38へ繋がっている。なお、ここでは分岐位置が中間位置であるとしたが、これは中心位置に限らず、両端を含まない、領域の間の位置を示している。
【0068】
このように構成することにより、本実施の形態では、排ガス34の温度が許容値(硫酸の露点温度)を超えて低下する虞があるとき、バイパスバルブ10aを開放することにより、バイパスパイプ10への分岐位置に対して下流側の流量を減少させることができる。これにより、熱電変換モジュール6及び煙道4を介して冷却水パイプ8へ回収される回収熱量を減少させることができるので、排ガス温度の低下を抑えることが可能となる。
【0069】
図7は、冷却水パイプ8Aの周辺の構成を拡大して示している。この図7に示すように、煙道4の外周には熱電変換モジュール6が巻き付けられている。そして、これに加えて、熱電変換モジュール6に対して排ガス34の下流側には、熱電素子チップ6bのチップ高さと略同じ高さの伝熱板46(伝熱部)が設置されており、これら熱電変換モジュール6と伝熱板46とを覆うように、冷却プレート42が設けられている。また、この冷却プレート42の設けられている領域に、冷却水パイプ8Aが密着状態で配置されている。
【0070】
このように構成することにより、本実施の形態に係るボイラ廃熱利用システム1Aでは、バイパスパイプ10を流れる流量の調節とは独立に、冷却水パイプ8Aが伝熱板46及び熱電変換モジュール6のそれぞれを覆う領域の面積割合を調節することによっても、排ガス34の温度を調節することが可能である。
【0071】
すなわち、伝熱板46及び熱電変換モジュール6と冷却水パイプ8Aとの間の、実質的な熱抵抗を、冷却水パイプ8Aを設置する位置により調節し、冷却水側へ回収される熱量を調節することが可能である。
【0072】
これにより、例えば、季節変動により冷却能力(温度)を調整するというような長期的な設定に対しては、伝熱板46及び熱電変換モジュール6上の冷却水パイプ8の位置により調整し、また、蒸気ボイラ2の運転状況に応じて熱の回収量を調節するといった短期的な設定変更に対しては、バイパスパイプ10のバイパスバルブ10aの開閉により対応する、といった使い分けを行うことも可能である。
【0073】
さらに、伝熱板46及び熱電変換モジュール6に対する冷却水パイプ8Aの密着状態を良好に保持したまま、冷却水パイプ8Aを煙道の延びる方向へスライド可能な機構を設け、バイパスバルブ10の調節と合わせて、排ガス温度に基づいてフィードバック制御するという構成を用いれば、より細かな調整を随時行うことができるので、無駄なく余熱を利用することが可能である。
【0074】
(第3の実施の形態)
図8は、本発明の第3の実施の形態に係るボイラ廃熱利用システム1Bの概略を示した図である。本実施の形態におけるボイラ廃熱利用システム1Bでは、第1の実施の形態に加えて熱電変換モジュール6から得られた電気を蓄える蓄電池18が設けられている。このような構成により、スイッチ48(充放電スイッチ)を充電側端子48cに切り替えて熱電変換モジュール6から蓄電池18への充電し、また、スイッチ48を放電側端子48dに切り替えて蓄電池18からの放電により熱電変換モジュール6に電力を供給することが可能となる。
【0075】
これにより、通常時は排ガス34の温度が許容値を下回らない範囲で熱を回収し、電気エネルギーを得ることができる上に、寒冷期においては、ボイラ運転停止時等の、給水パイプに凍結が発生しやすい温度状況下で、スイッチ48を逆に切り替えて熱電変換モジュール6に電力を供給し、ペルチェ発熱を生じさせることができ、給水40の凍結を防止することが可能となる。
【0076】
(第4の実施の形態)
図9は、本発明の第4の実施の形態に係るボイラ廃熱利用システム1Cの概略を示している。本実施の形態におけるボイラ廃熱利用システム1Cでは、蒸気ボイラ2の周辺の構成については、第1の実施の形態と同様であるが、冷却水パイプ8Cの上流側及び下流側の流水路上にヒートポンプ16が設けられている点で異なっている。なお、ここでは、排ガス34の流れ方向の上流側が、冷却水パイプ8Cを流れる冷却水の上流側となっている。
【0077】
このヒートポンプ16は、熱電変換モジュール6により変換されて蓄電池18に蓄えられた電力により駆動される。そして、ヒートポンプ16は、冷却水パイプ8の上流側の流水を冷却し、下流側の流水を加熱する。
【0078】
これにより、冷却水パイプ8へ送られる流水の温度を下げ、煙道4側と冷却水パイプ8C側との温度差を拡大することができるので、熱電変換モジュール6による発電効率を向上させることが可能となる。
【0079】
また、ヒートポンプ16により加熱された流水は、給水加熱用熱交換器20(熱伝達手段)へ送られる。そして、この給水加熱用熱交換器20において、給水路38との間で熱交換が行われ、給水40が予熱されて加熱給水40aとなる。
【0080】
上述のように、本実施の形態におけるボイラ廃熱利用システム1Cでは、廃熱から得られる電気エネルギーを利用してエネルギー消費効率の優れたヒートポンプ16を駆動し、給水40の予熱を行うことにより蒸気ボイラ2の効率を向上させると共に、冷却水パイプ8Cの上流側の流水を冷却することにより熱電変換モジュール6の発電効率も向上させることが可能となる。
【0081】
また、冷却水パイプ8の流水の冷却や、給水40の予熱の必要性があまり高くない状況では、蓄電池に電気を蓄えることができるので無駄がない。
【0082】
(第5の実施の形態)
図10は、本発明の第5の実施の形態に係るボイラ廃熱利用システムの冷却水パイプを示した斜視図である。(a)は煙道に巻き付ける前(設置前)の状態を示し、(b)は煙道に巻き付けた後(設置後)の状態を示している。なお、ここでは、熱電変換モジュール及び煙道は図示を省略している。
【0083】
図10(a)に示されるように、冷却水パイプ8Dは、等長のパイプ50(パイプ部)を複数平行に配列して構成されている。そしてこのように並列状態となったパイプ50の端部同士は、それぞれ両端側で連結部52a及び52b(パイプ連結部)により一体に形成されている。これら連結部のうち、連結部52aは上流側へ繋がる接続部53aを有し、また、連結部52bは下流側へ繋がる接続部53bを有している。
【0084】
また、これらパイプ50は、少なくとも、煙道の外周に巻き付け、取り外すことが可能な程度の屈曲性又は可撓性を有している。パイプ50の材質については、伝熱性、屈曲性等を考慮すると、金属製パイプ(又は、チューブ)が望ましい。したがって、基本的には銅系の材質が採用されるが、耐食性ほか特殊な要求がある場合にはステンレス製が採用される。
【0085】
図10(b)に示したようにパイプ50を熱電変換モジュールの外周に密着させるように湾曲させ、連結部52a(第1の連結部)の連結面に並んだパイプ50の一方側の開口端と、連結部52b(第2の連結部)の連結面に並んだパイプ50の他方側の開口端とを連結して配置される。ここで、連結部52a側のパイプ50の一方側の開口端は、連結部52b側の他方側の開口端に対して、隣に並んだパイプ50のうち下側へ一つ分スライドさせて連結されている。これにより、10本のパイプ50は、螺旋状の1本のパイプとして直列に連結され、上流側端部は接続部53aに、また、下流側端部は接続部53bに連結される。
【0086】
このように、本実施の形態における冷却水パイプ8Dでは、煙道(熱電変換モジュール)の外側に取り付ける際、煙道の周りにパイプを何回も周回させることなく、連結部52a、52b同士の連結動作のみにより、1本のパイプを形成することができる。
【0087】
これにより、熱電変換モジュールのメンテナンスの際に容易に冷却水パイプ8Dを脱着することが可能となり、作業効率が飛躍的に向上する。すなわち、チップ高さの異なる熱電素子チップで構成される熱電変換モジュールに交換する場合や、熱電変換モジュールの数を変更する場合の作業が軽減されるので、排ガスの温度調節が容易になる。
【0088】
(第6の実施の形態)
図11は、本発明の第6の実施の形態に係るボイラ廃熱利用システムの冷却水パイプ8Eの分離状態を示した斜視図である。(a)は煙道に巻き付ける前(設置前)の状態を示し、(b)は煙道に巻き付けた後(設置後)の状態を示している。なお、ここでは、図10と同様に、熱電変換モジュール及び煙道の図示を省略している。
【0089】
図11(a)に示されるように、冷却水パイプ8Eは、1本のパイプ51(パイプ部)を、煙道の外周を覆うことのできる所定長さLで往復して折り返され、平行となるように形成されている。そして、両端の折り返し部分は、それぞれ連結部54a及び54b(パイプ連結部)で一体的に形成されている。
【0090】
これら連結部のうち、連結部54aの上端には、上流側へ繋がる接続部55aを有し、また、下端には、下流側へ繋がる接続部55bを有している。
【0091】
このように構成されることにより、上記第5の実施の形態と同様に、冷却水パイプ8Eの設置及び取り外しが容易になり、熱電変換モジュールの組合せを変更する際の作業性を向上させることが可能となる。
【0092】
尚、上記第1の実施の形態では、熱電変換モジュールの所定の熱抵抗値を、熱電素子チップのチップ高さの違いにより複数種類備える構成を例として示したが、これに限らず、熱電変換モジュールの熱抵抗値を複数種類構成できるのであれば、チップ寸法又は、電極と熱電素子との接触熱抵抗値など、その他の熱抵抗値に影響を及ぼす構成要素の違いにより、所定の熱抵抗値を複数設定しても構わない。
【0093】
また、第1の実施の形態では、熱電変換モジュール6の上流側に伝熱板46が設置された構成を例として示したが、これに限らず、下流側であっても、両側に設置されていても構わない。このように構成すると、図7の例と同様に、回収される熱量や、熱電変換の効率を変化させることが可能となる。
【0094】
さらに、第2の実施の形態において、バイパスパイプ10は、冷却水パイプ8Aが熱電変換モジュール6の少なくとも一部を含んで煙道4の外周に巻き付けられた領域のうち、熱電変換モジュール6に重なる位置から分岐された例を示した。しかし、これに限らず、煙道4に巻き付けられた領域の中間位置であれば、熱電変換モジュール6と重なる領域以外の位置から分岐されていても構わない。すなわち、熱電変換モジュール6と重なる領域から分岐した場合は、冷却水パイプに回収される回収熱の量を調節するとともに、その分岐位置から下流側の熱電変換の効率も調節することが可能となる。
【0095】
また、第2の実施の形態において、バイパスパイプ10は、1本のみ設けられている構成を例として示したが、これに限らず、複数本設けられた構成であっても良い。この複数のバイパスパイプのうち、熱電変換モジュール上で分岐するものと、熱電変換モジュールと重ならない領域から分岐するものを備えておけば、それぞれ独立に操作することにより、回収熱の量と熱電変換効率とを細かく調整することが可能となる。さらに、この構成において、それぞれのバイパスバルブの開閉操作を、排ガス温度や熱電変換効率の情報に基づいてフィードバック制御するように構成しても良い。
【0096】
また、第2の実施の形態において、冷却水パイプ8Aの中間領域にバイパスパイプ10を設けた例を示したが、このバイパスパイプ10を設けなくても構わない。このようなバイパスパイプ10を用いない構成では、冷却水パイプに回収される回収熱の量の調節に対して即時対応性は若干失われるが、冷却水パイプに対する熱電変換モジュールの配置領域を自由に選択することにより、熱電変換効率や回収熱量を様々に調節するという効果は同様に得ることができる。
【0097】
例えば、熱電変換モジュール6を配置する場所を、冷却水パイプの配置されている領域のうち、排ガス上流側(煙道の上流側)に選ぶと、煙道側の温度が最も高温であるため、冷却水パイプ側との間の温度差を大きくすることができ、熱電変換効率が良くなる。特に、冷却水パイプの上流側を煙道の上流側に向けて配置すると、さらに温度差が大きくなり、最も熱電変換効率が向上することは上記第2の実施の形態で説明した通りである。
【0098】
また、第2の実施の形態において、冷却水パイプ8Aの上流側は、排ガスの流れ方向の上流側に配置された例を示したが、これに限らず、排ガスの流れ方向の下流側に配置されていても構わない。
【0099】
また、第6の実施の形態において、上流側及び下流側の水路へ接続するための接続部55a及び55bが、共に連結部54a側へ設けられている例を示したが、これに限らず、パイプ51の折り返し端が連結部54aと連結部54bとに分かれる場合には、接続部55a及び55bも、それぞれの連結部に分かれて設けられていても良い。
【0100】
また、上記各実施の形態では、冷却水パイプは、断面が略円形のパイプを例として示したが、これに限らず、熱電変換モジュール又は、熱電変換モジュールとの間に介装される冷却プレートと密着可能な形状であれば、例えば楕円等の断面形状であっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0101】
熱電変換モジュールと冷却水パイプとが、曲面に沿ってフレキシブルに変形し、密着配置できるので、蒸気ボイラの排ガスを排出する煙道以外にも、廃熱が回収される対象の温度を一定に保持する必要がある構成において有用である。例えば、ゴミ焼却施設に並設された温水プールに送られる温水を一定以上の温度に保ちながら、余熱を回収するシステムに利用することができる。
【符号の説明】
【0102】
1、1A、1B、1C ボイラ廃熱利用システム
2 蒸気ボイラ
4 煙道
6 熱電変換モジュール
6b 熱電素子チップ
8、8A、8B、8C、8D、8E 冷却水パイプ
10 バイパスパイプ
10a バイパスバルブ(流量調節手段)
16 ヒートポンプ
18 蓄電池
20 給水加熱用熱交換器(熱伝達手段)
34 排ガス
38 給水路(熱伝達手段)
46 伝熱板(伝熱部)
48 スイッチ(充放電スイッチ)
48c 充電側端子
48d 放電側端子
50、51 パイプ(パイプ部)
52 連結部(パイプ連結部)
54 連結部(第1の連結部)
56 連結部(第2の連結部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気ボイラの排ガスを排出する煙道で放熱される廃熱から回収した回収熱を利用して、前記蒸気ボイラへの給水を予熱するボイラ廃熱利用システムにおいて、
それぞれ所定の熱抵抗値を有し、互いに脱着可能に連結されて前記煙道の外周に巻き付けられる、熱電素子チップから構成された熱電変換モジュールと、
前記熱電変換モジュールに対して少なくとも一部が密着状態で脱着可能に配置される冷却水パイプと、
前記冷却水パイプへ回収された前記回収熱を、前記給水の予熱用に前記蒸気ボイラへ伝達する熱伝達手段とを備えた
ことを特徴とするボイラ廃熱利用システム。
【請求項2】
前記所定の熱抵抗値は、構成される前記熱電素子チップのチップ高さの違いにより複数種類設定されている
ことを特徴とする請求項1に記載のボイラ廃熱利用システム。
【請求項3】
前記熱電変換モジュールは、前記冷却水パイプの配置されている領域のうち、前記煙道の上流側の一部分に装着されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のボイラ廃熱利用システム。
【請求項4】
前記冷却水パイプの、前記熱電変換モジュールを含む前記煙道に巻き付けられた領域の中間位置から分岐されたバイパスパイプと、
前記バイパスパイプの流量を調節する流量調節手段とを備えた
ことを特徴とする請求項1から3の何れかの請求項に記載のボイラ廃熱利用システム。
【請求項5】
前記煙道に巻き付けられた前記熱電変換モジュールに対して、前記煙道の上流側及び下流側の少なくとも一方側に、前記熱電素子チップと略同じ高さの伝熱部が並設されている
ことを特徴とする請求項1から4の何れかの請求項に記載のボイラ廃熱利用システム。
【請求項6】
前記冷却水パイプは、
所定幅で複数回往復して折り返され、平行に配列されたパイプ部と、
前記所定幅の両端側で、前記パイプ部の折り返し部分をそれぞれ一体に形成し、互いに連結可能となる2つのパイプ連結部とを備え、
前記パイプ部は、少なくとも前記煙道の外周に巻き付けられる可撓性を有している
ことを特徴とする請求項1に記載のボイラ廃熱利用システム。
【請求項7】
前記冷却水パイプは、
所定長さの複数のパイプを平行に配列したパイプ部と、
前記パイプ部の一方側の前記パイプの端部同士を一体に形成する第1の連結部と、
前記パイプ部の他方側の前記パイプの端部同士を一体に形成し、前記第1の連結部と連結可能な第2の連結部とを備え、
前記パイプ部は、少なくとも前記煙道の外周に巻き付けられる可撓性を有しており、
前記第1の連結部と前記第2の連結部とは、隣り合う前記パイプの端部同士を連通させるように連結される
ことを特徴とする請求項1に記載のボイラ廃熱利用システム。
【請求項8】
前記冷却水パイプの上流側の流水を冷却し、下流側の前記流水を加熱するヒートポンプと、
前記ヒートポンプに電力を供給すると共に、前記熱電変換モジュールから得た電気を蓄える蓄電池とを備え、
前記熱伝達手段は、前記ヒートポンプにより加熱された加熱水の熱を、前記蒸気ボイラの給水路の給水へ伝達する給水加熱用熱交換器である
ことを特徴とする請求項1に記載のボイラ廃熱利用システム。
【請求項9】
前記熱電変換モジュールで変換された熱起電力を蓄える蓄電池と、
前記熱起電力を前記蓄電池に蓄える充電状態とする充電側端子と、前記蓄電池から前記熱電変換モジュール側に電力供給する放電状態とする放電側端子とを切り替える充放電スイッチとを備えた
ことを特徴とする請求項1から8の何れかの請求項に記載のボイラ廃熱利用システム。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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