説明

ボウフラ駆除組成物

【課題】 ボウフラが湧いた雨水槽等に本品を投入する事により、ワサビ成分のアリルイソチオシアネートが水可溶性成分と共に水中に乳化されながら水中に拡散され、ワサビ成分のアリルイソチオシアネートによりボウフラを麻痺させる、又天然油脂の大部分は水中に乳化分散されることなく水中表面に広がる事により、ボウフラの呼吸を阻害するボウフラ駆除組成物を提供すること。
【解決手段】 天然油脂とわさび成分のアリルイソチオシアネート及びアリルイソチオシアネートにも天然油脂にも相溶する水可溶性成分を配合したボウフラ駆除組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボウフラ駆除組成物に関し、より詳しくは、天然油脂とわさび成分のアリルイソチオシアネート及びアリルイソチオシアネートにも天然油脂にも相溶する水可溶性成分を配合したボウフラ駆除組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
雨水槽や浄化槽内に発生するボウフラ、ユスリカ等の衛生害虫や不快害虫等を駆除するのに、殺虫性油剤を浄化槽内の空間部に噴霧したり、殺虫性乳剤を汚水に散布することが行われている。殺虫性乳剤は、有機リンや持続性の高いピレスロイド或いはピリプロキシフェンを界面活性剤とともに有機溶剤に溶かした乳剤の形で使われている。又一般家庭用向けにオルソジクロロベンゼンとクレゾールの組成物が知られている。又最近は有機溶剤を使用しない、臭いの少ない水性乳剤も登場し、噴霧器による散布も容易になったが、こうしたボウフラ駆除剤は毒性が強く安全性に問題があり使用が困難であった。
【0003】
しかしながら、浄化槽内の空間部に殺虫性油剤を噴霧しても、そのときにいる成虫の駆除はできてもそれ以後に発生する害虫の駆除までは充分にできず、繰り返し噴霧する必要があった。また、幼虫等を駆除するため殺虫性乳剤を汚水に多量に散布することは、乳剤中に含まれる乳化剤や溶剤が浄化槽内の活性汚泥に影響を及ぼし、浄化能を落とすことがあることから多量に散布するのが困難であった。
【0004】
特許文献1に開示される技術を用いたとしても、上述の課題を解決するものであり、20℃における蒸気圧が1.0×10−5〜5.0×10−2mmHg、好ましくは1.0×10−4〜1.0×10−2mmHgである殺虫性化合物が水溶性固体担体に保持されてなる浄化槽用害虫駆除剤および該害虫駆除剤を浄化槽内で用いる害虫駆除方法を提供するものである。即ち、特許文献1によれば水溶性固体担体に保持される殺虫性化合物が継続して常温で揮散し続けることにより、浄化槽内の害虫を長期間にわたって駆除することができると共に、特許文献1の浄化槽用害虫駆除剤は不要になったときにそのまま浄化槽内へ投棄することが可能であるという利点をも合わせ持つものであるが、使用している薬剤が安全の高いものでなく、殺虫剤乳剤を水溶性固体担体に保持しているだけのことで、安全性が高いと決して言えるものではなかった。
【0005】
又、特許文献2に開示される技術を用いたとしても、塩化カルシウムをボウフラ駆除に使用する特許文献2に係る家害虫駆除及び忌避剤に用いられる塩化カルシウムは安全性が高いものであるが、乾燥剤として用いられるほど吸湿性が強いため、誤って植物や農作物に拡散した場合に、植物や農作物が枯れてしまう恐れがある。従って、この家害虫駆除及び忌避剤を屋外等で使用する場合は、駆除及び忌避剤が植物や農作物に拡散しないように注意する必要があった。又塩化カルシウムは揮発性でなく雨水を貯める雨水槽につながる配管の水の溜まりに発生したボウフラの駆除迄は難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−92313号公報
【特許文献2】特開平8−352061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、ボウフラが湧いた雨水槽等に本品を投入する事により、ワサビ成分のアリルイソチオシアネートが水可溶性成分と共に水中に乳化されながら水中に拡散され、ワサビ成分のアリルイソチオシアネートによりボウフラを麻痺させる。又天然油脂の大部分は水中に乳化分散されることなく水中表面に広がる事により、ボウフラの呼吸を阻害するボウフラ駆除組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、天然油脂とわさび成分のアリルイソチオシアネート及びアリルイソチオシアネートにも天然油脂にも相溶する水可溶性成分を配合したボウフラ駆除組成物に関する。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記天然油脂が常温で液体である植物油と魚油を含む事を特徴とする請求項1記載のボウフラ駆除組成物に関する。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記水可溶性成分が天然油脂とアリルイソチオシアネートを可溶化する事を特徴とする請求項1記載のボウフラ駆除組成物に関する。
【0011】
請求項4に係る発明は、リモネンがアリルイソチオシアネートの刺激臭を緩和させることを目的として使用する事を特徴とするボウフラ駆除組成物に関する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、本発明は、ボウフラ駆除組成物に関し、より詳しくは、天然油脂100重量部に対しわさび成分のアリルイソチオシアネート0.5〜20重量部とアリルイソチオシアネートにも天然油脂にも相溶する水可溶性成分5〜60重量部を配合したボウフラ駆除組成物に関する。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、本発明は、天然油脂成分として常温で液体である油脂を使用する事により水中に添加する事により水面に単分子膜状に広がり、ボウフラの呼吸を妨げる効果がある。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、水、天然油脂、アリルイソチオシアネートを相溶する成分を使用する事によりアリルイソチオシアネートは水中に、天然油脂は水表面に単分子膜状に広がり、水中のボウフラにアリルイソチオシアネートが作用しボウフラを麻痺させ、かつ水表面に浮いた油によって、ボウフラの呼吸を妨げる事によりボウフラを駆除できる。又親の蚊による産卵・孵化を抑制する効果も得られる。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、アリルイソチオシアネートの臭いを緩和するリモネンオイルを加える事によりアリルイソチオシアネートの鼻を突くような刺激臭を緩和する事が出来る。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るボウフラ駆除組成物について詳細に説明する。
本発明に係るボウフラ駆除組成物は、蚊が発生する夏場に、雨水を溜めておく雨水槽や水溜りに液を添加し掻き混ぜて使用される。
【0017】
<ボウフラ駆除組成物について>
先ず、本発明に係るボウフラ駆除組成物について詳述する。
本発明に係るボウフラ駆除組成物は、わさびの成分のアリルイソチオシアネートと常温で液体の天然油脂とそれらを溶解させる水可溶性成分から構成される。天然油脂は1種或いは2種以上であっても良い。
【0018】
天然油脂は常温で液体であれば良く亜麻仁油、菜種油、オリーブ油、椰子油等の植物油及び魚油等が好適に使用し得る。
【0019】
天然油脂とアリルイソチオシアネートを溶解する水可溶成分としてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン亜麻仁油、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミネート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンラノリン、食品に使用することが認められているエタノール、プロピレングリコール等の安全性の高い物質が好適に使用できる。
【0020】
ボウフラ駆除組成物の配合は天然油脂100重量部に対しわさび成分のアリルイソチオシアネート0.5〜20重量部で、好ましくは5〜15重量部。0.5重量部以下だとボウフラに対する忌避効果が弱い。20重量部以上だとわさび成分の刺激臭が強く、取り扱いが難しい。又水可溶性成分は5〜60重量部で好ましくは10〜50重量部。5重量部以下だとアリルイソチオシアネートの水中への分散が悪くなり、60重量部以上だと天然油脂が水面に広がらず、乳化されてしまうので良くない。
【0021】
アリルイソチオシアネートの刺激臭はリモネンで緩和されるが、使用するリモネンの量はアリルイソチオシアネートの1〜2倍量が好ましい。
【0022】
(ボウフラ駆除剤の使用量)
使用される量は雨水槽や水たまりの水10Lに対し上記ボウフラ駆除組成物を10cc添加する。水中でのアリルイソチオシアネートの濃度は0.001〜0.015重量%が適量である。
【実施例】
【0023】
以下、本発明に係るボウフラ駆除組成物に関する実施例を示すことにより、本発明の効果をより明確なものとする。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0024】
(実施例)
実施例1
天然油脂として椰子油8重量部、菜種油92重量部に対しアリルイソチオシアネート5.5重量部、水可溶成分としてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(商品名:エマノーンCH-40、花王(株)社製)を24重量部、リモネン8重量部混合した液をボウフラ試験に供した。
ボウフラ試験は以下の方法で試験を行った。
雨水槽に溜まった雨水1Lを1Lの容器に入れ住化テクノサービス社製のアカイエカの幼虫(ボウフラ)を50頭入れ、上記ボウフラ駆除剤を1g添加しボウフラの経時変化を調べた。
【0025】
実施例2
天然樹脂として菜種油100重量部に対しアリルイソチオシアネート20重量部、水可溶成分としてポリオキシエチレン菜種油(商品名:ウォリーゾル30、Worlee社)を10重量部、リモネン40重量部混合した液を上記方法のボウフラ試験に供した。
【0026】
実施例3
天然樹脂としてオリーブ油100重量部に対しアリルイソチオシアネート16重量部、水可溶成分としてポリオキシエチレンラノリン(商品名:ソランA、クローダジャパン社製)を40重量部、リモネン32重量部混合した液を上記方法のボウフラ試験に供した。
【0027】
比較例1
天然油脂として椰子油8重量部、菜種油92重量部に対しアリルイソチオシアネート0.3重量部、水可溶成分としてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(商品名:エマノーンCH-40、花王(株)社製)を24重量部、リモネン8重量部混合した液を上記方法のボウフラ試験に供した。
【0028】
比較例2
天然樹脂としてオリーブ油100重量部に対しアリルイソチオシアネート23重量部、水可溶成分としてポリオキシエチレンラノリン(商品名:ソランA、クローダジャパン社製)を40重量部混合した液を上記方法のボウフラ試験に供した。
【0029】
比較例3
天然樹脂としてオリーブ油100重量部に対しアリルイソチオシアネート8重量部、水可溶成分としてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(商品名:エマノーンCH-40、花王(株)社製)を63重量部混合した液を上記方法のボウフラ試験に供した。
【0030】
比較例4
天然油脂を使用せずに、代わりに水100重量部を入れ、水可溶成分としてポリオキシエチレンラノリン(商品名:ソランA、クローダジャパン社製)24重量部にアリルイソチオシアネート5.5重量部混合した液を上記方法のボウフラ試験に供した。
【0031】
比較例5
ブランクとしてボウフラ駆除剤を入れないでボウフラ試験を行った。
【0032】
【表1】

【0033】
表1の結果より、実施例1〜3では、アリルイソチオシアネートの水中への分散による麻痺効果と天然油脂の水面への広がりによる呼吸阻害により、ボウフラに対する駆除効果が認められた。又リモネンの柑橘臭がアリルイソチオシアネートの刺激臭緩和に効果がある事が確認された。
【0034】
一方、比較例1はアリルイソチオシアネート量が少ない為ボウフラの駆除効果が見られなかった。比較例2はリモネンが入っていない為刺激臭を緩和する事が出来なかった。比較例3は水可溶化成分が多い為、ボウフラ駆除組成物を水中に投下しても、乳化され油脂の油膜が水面に出来ず、ボウフラ駆除効果も落ちた。又比較例4は油脂を使用しなかった為、比較例3と同様にボウフラ駆除の効き目が遅くなった。又比較例5のボウフラ駆除剤を入れないで試験したものは48時間経時しても駆除効果は確認出来なかった。
【0035】
以上の結果より、本特許にある天然油脂とアリルイソチオシアネートと水可溶成分の組み合わせでボウフラの駆除に効果が確認された。水中に分散したアリルイソチオシアネートのボウフラを麻痺させる効果と水面に広がった天然油脂成分によりボウフラの呼吸を阻害する効果が合わさり、良好なボウフラ駆除効果が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、ボウフラ等の衛生害虫やユスリカ等(不快害虫)の幼虫の駆除及び蚊やユスリカによる産卵・孵化を抑制する効果も得られる。又浄化槽の悪臭を消臭するのにも好適に利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然油脂とわさび成分のアリルイソチオシアネート及びアリルイソチオシアネートにも天然油脂にも相溶する水可溶性成分を配合したボウフラ駆除組成物。
【請求項2】
前記天然油脂が常温で液体である植物油と魚油を含む事を特徴とする請求項1記載のボウフラ駆除組成物。
【請求項3】
前記水可溶性成分が天然油脂とアリルイソチオシアネートを可溶化する事を特徴とする請求項1記載のボウフラ駆除組成物。
【請求項4】
リモネンがアリルイソチオシアネートの刺激臭を緩和させることを目的として使用する事を特徴とするボウフラ駆除組成物。

【公開番号】特開2012−180297(P2012−180297A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43016(P2011−43016)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(511053942)株式会社虎変堂 (1)
【Fターム(参考)】