説明

ボタンスイッチ構造

【課題】電子機器において、ボタンキーの押し込みによって生ずる回路基板の変形を防止し、回路基板及び回路基板上に実装されている半導体素子等の破損を防止するボタンスイッチ構造を提供する。
【解決手段】ボタンスイッチ構造1は、ベース部材10と、該ベース部材に対して移動自在に設けられているボタンキー12と、回路基板と、該回路基板上に配されて被押圧部を有し、該被押圧部が押圧されるとスイッチングする押圧スイッチ20と、回路基板をベース部材から離間させかつこれに対向するように支持し、かつボタンキーが非動作状態にある場合に、回路基板がベース部材に対して平行に対向する静止位置にあるように回路基板をベース部材に対して弾性支持する弾性支持手段26と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボタンスイッチ構造に関し、特に電子機器に使用されるボタンスイッチ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の携帯電子機器では、ボタン操作の際に、IC等の電子部品が搭載されている基板上のスイッチの被押圧部へのボタンキーの押圧によって基板内に応力が生じて、基板の反りが発生していた。この基板の反りによって、基板と電子部品との間のはんだの破損または電子部品自身の破損が引き起こされることがあった。
【0003】
この基板の反りによるはんだの破損または電子部品の破損を防止するために、特許文献1には、回路基板に搭載されている回路素子の樹脂モールドと一体形成されており、シールドケースに当接しているリブ、及び当該シールドケース及び回路基板に当接している複数のポストを設けて、回路基板の反りを抑制するスイッチ装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、ボタンキーのフランジ部とフロントケースのストッパ部とによって、ボタンキーの押し込み量を制限して、基板の反りを抑制する構造を有する携帯電子機器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−287763号公報
【特許文献2】特開2002−133971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示されているスイッチ装置では、回路素子の樹脂モールドに形成されるリブ、及びシールドケース及び回路基板に当接しているポストを設けなければならない。このリブやポストが配線や部品配置を限定する要因になり、装置の小型化及び高密度化を阻害していた。
【0007】
また、特許文献2に示されている携帯電子機器では、フロントケースにストッパ部を形成しなければならない。これによって、フロントケースの構造が複雑となり、機器のコストダウン及び小型化が阻害されていた。
【0008】
本発明は、上記した点に鑑みてなされたものであり、例えば、構造を複雑化することなく、スイッチング操作による回路基板及び回路基板に実装されている素子への応力が生ずること防止することが可能なスイッチ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、ボタンスイッチ構造であって、ベース部材と、該ベース部材に対して移動自在に設けられているボタンキーと、回路基板と、該回路基板上に配されて被押圧部を有し、該被押圧部が押圧されるとスイッチングする押圧スイッチと、回路基板をベース部材から離間させかつこれに対向するように支持し、かつボタンキーが非動作状態にある場合に、回路基板がベース部材に対して平行に対向する静止位置にあるように回路基板をベース部材に対して弾性支持する弾性支持手段と、を有することを特徴とするボタンスイッチ構造である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1A】本発明の実施例1に係るボタンスイッチ構造のベース部材の平面図である。
【図1B】本発明の実施例1に係るボタンスイッチ構造の回路基板の平面図である。
【図1C】本発明の実施例1に係るボタンスイッチ構造の断面図である。
【図2】ボタンが押し込まれた際のボタンスイッチ構造の断面図である。
【図3】本発明の実施例1に係るボタンスイッチ構造の変形例の断面図である。
【図4】本発明の実施例2に係るボタンスイッチ構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
【実施例1】
【0012】
以下に、本発明の実施例1に係るボタンスイッチ構造1について、図1A、図1B及び図1Cを参照しつつ説明する。図1A及びBは、それぞれ本発明の実施例1に係るスイッチ構造1に含まれるベース部材10(ボタンキーは省略している)及び回路基板18の平面図であり、図1Cは、図1A及び図1Bにおける1C−1C線に沿った断面図である。
【0013】
ベース部材10は、例えば、携帯電子機器の操作面を有する盤状の部材であり、ボタンキー12と、ボタンキー12が配されているボタンキー孔14と、接続部固定孔16を有する部材である。ボタンキー孔14は、ベース部材の表面から裏面まで貫通しており、ベース部材10の中央部に、例えば、3行3列に形成されている。ボタンキー12は、ベース部材10に対して相対的に移動可能であり、押し下げられた位置、すなわちボタンキー12が動作状態である場合の動作位置から押し下げられる前の元の位置、すなわちボタンキー12が非動作状態の場合の非動作位置に戻るようにばね等(図示せず)によって付勢されている。接続部固定孔16は、例えば、ベース部材10の角部周辺の4点に設けられている。接続部固定孔16は、ベース部材10の回路基板18に対向している面に開口部を有する雌ねじを形成している。
【0014】
回路基板18は、ベース部材10と対向してこれに平行に配されており、スイッチング部20、半導体素子22等を支持している。スイッチング部20は、回路基板18のベース部材10と対向している面に、ボタンキー12と対向してボタンキー12と同数設けられている。スイッチング部20と一体になっている被押圧部(図示せず)がボタンキー12によって押圧されるとスイッチング部20のスイッチング動作がもたらされる。半導体素子22は、通信または信号処理等の様々な処理を行うIC等の素子でありベース部材10と反対を向いた面、すなわち裏面に必要に応じて設けられている。貫通孔24は、接続部固定孔16と対向した位置に、回路基板18を貫通するように形成されている。貫通孔24は、ベース部材10から離れる方向において直径が大きくなるようにテーパが付けられている円錐台状の孔である。
【0015】
ベース部材10と回路基板18とを接続する弾性接続部26は、固定部26Aと、ストッパ26Bと、固定部26Aとストッパ26Bとを接続している弾性体26Cと、弾性体26Cの周囲に設けられているストッパ26D有している。固定部26Aは雄ねじであり、雌ねじであるベース部材10の接続部固定孔16に締結固定されている。弾性体26Cは、貫通孔24のベース部材10と対向している開口部の直径よりも小さい直径を有し、一方の端が固定部26Aを介して接続部固定孔16に支持されており、他方の端が貫通孔24内部に達している例えばコイルばねである。ストッパ26Bは、弾性体26Cの当該他方の端部に設けられている。ストッパ26Dは、貫通孔24のベース部材10と対向している開口部の直径よりも小さく、ベース部材10と対向していない開口部の直径よりも大きい直径を有する球状の部材であり、貫通孔24の内面に接している。スペーサ26Dは、貫通孔24のベース部材10と対向している開口部の直径よりも大きい直径を有しておりかつ弾性体26Cを囲むように配されている、例えばプラスチック等の非弾性の円筒状位置決め部材である。スペーサ26Dは、ボタンキー12が非動作状態の場合に、スイッチ構造全体が揺動または上下反転した場合でも、ベース部材10と回路基板18との距離が所定の距離以下にならないようにして、回路基板18を静止位置(ホーム位置)に維持するスペーサの役割を果たしている。スペーサ26Dの長さは、非動作状態のボタンキー12がスイッチング部20に触れないような距離に、ベース部材10と回路基板18との距離を保てる長さであればよい。尚、弾性接続部26は、全体として弾性支持手段を形成している。
【0016】
図2は、1つのボタンキー12が押し込まれて動作状態になっている際の、ボタンスイッチ構造1の断面図である。押し込まれた1つのボタンキー12によって1つのスイッチング部20のこれと一体的な被押圧部(図示せず)が押圧されている。スイッチング部20の被押圧部が押圧されると、回路基板18を介して弾性体26Cに引っ張り力がかかり、弾性部材26Cが伸張する。従って、回路基板18は、ボタンキー12による押圧によって傾くのみであり、回路基板18に反り等の変形は起きない。尚、弾性体26Cのばね定数は、スイッチング部が押圧された際に回路基板18が変形しない程度に低ければよい。例えば、弾性体26Cのばね定数は、回路基板18の表裏方向の力に対する曲げ弾性係数よりも低ければよい。
【0017】
本発明のボタンスイッチ構造は、回路基板と回路基板を支持するベース部材が弾性接続部によって接続されている。それにより、ボタンキーが押し込まれて動作状態になり、スイッチング部の被押圧部が押圧されてスイッチングがなされる際に、回路基板はベース部材に対して全体として傾き、回路基板が変形しない(反らない)。従って、回路基板自体、回路基板に実装されている回路部品、及びはんだ等を用いた回路基板18と部品との接続部に応力が加わることがない。また、回路基板の変形を防止するためにリブやポスト等の支持部材または補強部材を設ける必要がないため、回路構成の自由度が制限されずに小型高密度化が可能になり、ボタンに対する複雑なストッパ構造も必要ないため、ボタンスイッチ構造を有する機器の生産コストを削減することが可能である。
【0018】
尚、本実施例では、貫通孔24を円錐台状とし、ストッパ26Bを球状部材としているが、ベース部材10と回路基板18と相対的な移動が円滑に行われる形状なら他の形状が選択されてもよい。例えば、貫通孔24を円錐台状として、ストッパ26Bを回路基板に向かう方向に凸の半球形状等としてもよい。また、図3に示すように、貫通孔24を直径の一定な円柱状として、ストッパ26Bを貫通孔24の直径よりも大きな円板状等にしてもよい。
【実施例2】
【0019】
以下に、本発明の実施例2に係るボタンスイッチ構造2について、図4を参照しつつ説明する。図4は、本発明の実施例2に係るスイッチ構造2の断面図である。
【0020】
実施例2に係るボタンスイッチ構造2は、実施例1に係るボタンスイッチ構造1とほぼ同じであるが、回路基板18に貫通孔24の代わりに接続部固定孔24′が設けられており、弾性接続部26のストッパ26Bの代わりに固定部26B′が設けられている点でボタンスイッチ構造1と異なる。
【0021】
接続部固定孔24′は、実施例1に係るスイッチ構造1の貫通孔24と同様に、回路基板18のベース部材10の接続部固定孔16と対向する位置に開口部を有する雌ねじを形成している。固定部26B′は、固定部26Aと同様に雄ねじであり、接続部固定孔24′に締結固定されている。
【0022】
尚、ボタンスイッチ構造2においては、弾性接続部26が回路基板18にも締結固定されているので、弾性体26Cのばね定数が十分に大きく、スイッチ構造全体が揺動または上下反転しても動作状態にないボタンキー12とスイッチング部20の被押圧部が接触しない場合には、スペーサ26Dは設けなくともよい。
【0023】
また、実施例2に係るスイッチ構造2においては、スペーサ26Dは、弾性体26Cに周囲を囲まれている、例えば棒状の部材でもよい。
【0024】
上記実施例1及び2では、ボタンキー12及びボタンキー孔14並びにスイッチング部20は、ベース部材10及び回路基板18に3行3列に9つ配されているが、ベース部材10及び回路基板18に任意の数だけ自由な位置に配置することも可能である。例えば、ボタンキー12及びボタンキー孔14並びにスイッチング部20をジグザグに配置してもよいし、円周状に配置等してもよい。
【0025】
上記実施例1及び2では、接続部固定孔16、24′は、開口部を1つ有する雌ねじ構造を形成しているが、ベース部材10または回路基板18を貫通するように形成されてもよい。また、接続部固定孔と16、24′及び固定部26Aは、それぞれ雌ねじ及び雄ねじを構成せずに、接着等で固定されていてもよい。
【0026】
上記実施例1及び2では、弾性接続部26はベース部材10及び回路基板18の角部周辺に4つ設けられているが、ボタンキー12が押し込まれていない非動作状態において、ベース部材10と回路基板18とが平行にかつ所望の静止位置(すなわちホーム位置)に保たれるならばどのように設けてもよい。例えば、弾性接続部26を、ベース部材10及び回路基板18の各辺の中点付近に1つずつ設けてもよいし、ベース部材10及び回路基板18の中央に1つだけ設けてもよい。
【0027】
上述の実施例では、スペーサ26Dは、独立した部材としているが、ベース部材10または回路基板18と一体に形成されていてもよい。また、スペーサ26Dは、非弾性部材としているが、コイルばね又は硬質ゴム等の弾性を有する部材を用いてもよい。スペーサ26Dを弾性部材とすることで、回路基板が非動作状態の静止位置すなわちホーム位置に戻ってスペーサ26Dに当接する際の衝撃を緩和させることが可能である。この場合、スペーサ26Dの弾性係数は、弾性体26Cの弾性係数よりも大きな値であるのが好ましい。
【0028】
上述した実施例における種々の材料、構成、形状等は、例示に過ぎず、用途等に応じて、適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0029】
1、2 ボタンスイッチ構造
10 ベース部材
12 ボタンキー
14 ボタンキー孔
16 接続部固定孔
18 回路基板
20 スイッチング部
22 半導体素子
24 貫通孔
24′ 接続部固定孔
26 弾性接続部
26A 固定部
26B ストッパ
26B′ 固定部
26C 弾性体
26D スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボタンスイッチ構造であって、
ベース部材と、
前記ベース部材に対して移動自在に設けられているボタンキーと、
回路基板と、
前記回路基板上に配されて被押圧部を有し、前記被押圧部が押圧されるとスイッチングする押圧スイッチと、
前記回路基板を前記ベース部材から離間させかつこれに対向するように支持し、かつ前記ボタンキーが非動作状態にある場合に、前記回路基板が前記ベース部材に対して平行に対向する静止位置にあるように前記回路基板を前記ベース部材に対して弾性支持する弾性支持手段と、
を有することを特徴とするボタンスイッチ構造。
【請求項2】
前記弾性支持手段は、少なくとも1つの弾性体を含み、前記弾性体はその一端において前記ベース部材に固着し、かつその他端において前記回路基板と結合していることを特徴とする請求項1に記載のボタンスイッチ構造。
【請求項3】
前記の弾性支持手段は、前記少なくとも1つの弾性体の各々を各々が囲んで、前記ベース部材と前記回路基板との間の距離を保つ少なくとも1つの筒状位置決め部材を含むことを特徴とする請求項2に記載のボタンスイッチ構造。
【請求項4】
前記回路基板が、前記ベース部材から離間する方向に直径が増大する円錐台状の貫通孔を有し、前記弾性体の他端が、前記貫通孔の一方の開口部よりも大きくかつ他方の開口部よりも小なる直径の球状部材を有して前記貫通孔の内壁に嵌合していることを特徴とする請求項3に記載のボタンスイッチ構造。
【請求項5】
前記少なくとも1つの筒状位置決め部材は前記少なくとも1つの弾性体の弾性係数よりも小なる弾性係数を有することを特徴とする請求項3または4に記載のボタンスイッチ構造。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−69479(P2013−69479A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205935(P2011−205935)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】